説明

2軸駆動装置

【課題】スムーズインパクト駆動機構で小型省スペースな2軸駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明の2軸駆動装置は、電圧の印加によって伸縮する圧電素子1a,1bと、圧電素子の伸縮によって変位する駆動軸2a,2bと、駆動軸に対して摩擦係合されて当該駆動軸の軸方向に移動する移動体4a,4bとを備え、各組の駆動軸の軸方向が互いに異なるとともに、各組の圧電素子同士が共通の電極3を介して互いに接合されて一体化されてなる。圧電素子はそれぞれ、その伸縮方向(X,Y)に対して斜めに形成された表面が前記電極に接合される。圧電素子は、直方体の4頂点と内部とを通る平面で前記電極を介して互いに接合された態様で直方体状に一体化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体をナノメートルのオーダーで制御しつつ往復運動させる駆動装置として、スムーズインパクト駆動機構(Smooth Impact Drive Mechanism)を備えた駆動装置(以下、SIDM装置とする。但し、「SIDM」はコニカミノルタオプト株式会社の登録商標)が提案されている(例えば、特許文献1−4参照)。
【0003】
近年、このようなSIDM装置は、例えば図5に示すように、電圧の印加によって伸縮する圧電素子100と、圧電素子100の伸縮によって変位する駆動軸101と、圧電素子100または駆動軸101を支持する支持部材102と、駆動軸101に対して摩擦係合されて当該駆動軸101の軸方向に移動する移動体103等とを備えており、圧電素子100の急峻な体積変化と、移動体103の慣性力及び摩擦力とを利用して、移動体103を駆動軸101の軸方向に移動させるようになっている。
【0004】
図5に示すSIDM装置では、移動体103は、駆動軸101の軸方向に延在する溝部104Aの設けられた略コ字状の移動体本体104と、駆動軸101を溝部104Aの底面側に付勢する板ばね105と、駆動軸101を溝部104Aの側壁面側に付勢するコイルばね106とを有している。また、板ばね105と駆動軸101との間,コイルばね106と駆動軸101との間には、駆動軸101に対して摺動する板状の摺動板107,108が介在している。
【0005】
SIDM装置は移動体を1つの駆動軸に沿って1軸方向に移動させる1軸駆動装置(1軸アクチュエータ)を基本とする。もちろん、図6に示すように2つのSIDM装置を用い、これらの駆動軸93,94を2軸方向に配設することにより、2軸駆動装置(2軸アクチュエータ)を構成することができる。この場合、各圧電素子91,92は、当該圧電素子に電圧を印加するための2電極(図示せず)をそれぞれ有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−236965号公報
【特許文献2】特開2005−333766号公報
【特許文献3】特開2009−229710号公報
【特許文献4】特開2009−244574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、以上の従来技術にあってもさらに次のような問題があった。
SIDM装置が利用される携帯電話や小型モバイルツールにあっては、より小型省スペースな2軸アクチュエータの要請がある。
図6に示したような従来採り得る2つのSIDM装置を2軸方向に配設する構成では、単純に2つのSIDM装置分のスペースが必要となる。
【0008】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、SIDM装置において、より小型省スペースな2軸駆動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、電圧の印加によって伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮によって変位する駆動軸と、
前記駆動軸に対して摩擦係合されて当該駆動軸の軸方向に移動する移動体とをそれぞれ2組備え、
各組の駆動軸の軸方向同士が互いに異なるとともに、
各組の圧電素子同士が共通の電極を介して互いに接合されて一体化されてなる2軸駆動装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記各組の圧電素子はそれぞれ、その伸縮方向に対して斜めに形成された表面が前記電極に接合されてなる請求項1に記載の2軸駆動装置である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記各組の圧電素子は、直方体の4頂点と内部とを通る面で前記電極を介して互いに接合された態様で直方体状に一体化されてなる請求項1又は請求項2に記載の2軸駆動装置である。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記各組の圧電素子のうち一方の圧電素子の伸縮方向が前記直方体の縦方向とされ、他方の圧電素子の伸縮方向が前記直方体の横方向とされてなる請求項3に記載の2軸駆動装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、それぞれ別の駆動軸を担当する2つの圧電素子が共通の電極を介して互いに接合されて一体化されてなるので、個々独立の1軸駆動装置を2組使用して構成した2軸駆動装置に比較して、より小型省スペースな2軸駆動装置を構成することができるという効果がある。共通の電極を有することによって配線も簡素化でき、実装においても省スペース化がさらに図られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る2軸駆動装置に属する圧電素子及び駆動軸のみを示した模式的斜視図(a)及び圧電素子の側面図(b)である。
【図2】本発明の一実施形態に係る2軸駆動装置の一実用例を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る2軸駆動装置の他の一実用例を示す平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る2軸駆動装置の他の一実用例を示す平面図である。
【図5】従来のSIDM装置を示す図であり、(a)は(b)のA−A断面図、(b)は側面図である。
【図6】従来のSIDM装置を2つ用いた2軸駆動装置の例を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の2軸駆動装置に属する2つの圧電素子1a,1bの伸縮方向及び駆動軸2a,2bは、互いに直交する方向に配置される。説明の便宜のため図1(a)中に直交3軸X−Y−Z座標を示し、図1(a)と共通のX−Y座標を図1(b)及び図2〜図4に示す。
一組の圧電素子1aの伸縮方向と駆動軸2aの軸方向は、X軸方向とされる。圧電素子1aと駆動軸2aとが連接されて、X軸方向駆動装置の基礎要素として構成される。
他の一組の圧電素子1bの伸縮方向と駆動軸2bの軸方向は、Y軸方向とされる。圧電素子1bと駆動軸2bとが連接されて、Y軸方向駆動装置の基礎要素として構成される。
各圧電素子は、層状の圧電体と電極とを交互に複数積層してなるものであり、図1に示すように圧電素子1aと圧電素子1bとで積層方向が直交している。そして、圧電素子1aと圧電素子1bとが接合面を介して互いに接合されて一体化されている。
圧電素子1a及び圧電素子1bの接合面は、圧電素子1a,1bの伸縮方向に対して斜め、すなわち、X軸及びY軸に対して斜めに形成された表面である。
【0017】
一方の圧電素子1aは、直角三角形を底面とした三角柱形状で構成される。他方の圧電素子1aも同様に、直角三角形を底面とした三角柱形状で構成される。2つの圧電素子1a,1bは、これらの三角柱において直角三角形の斜辺に相当する辺を2辺とする長方形表面同士を合わせた態様で直方体状に構成され、その伸縮方向同士は直交する。
言い換えれば、2つの圧電素子1a,1bは、直方体の4頂点と内部とを通る平面で互いに接合された態様で直方体状に一体化されている。このような形状とすることで、2つの圧電素子の形状やサイズを等価なものとすることができ、駆動制御が行いやすくなる。また、偏りのない形状であるため各軸方向への移動量の誤差も小さく、省スペース化にも適する。さらに、製造も容易になる。
図6に示した直方体の圧電素子91を、4頂点と内部とを通る平面で2つに切断し、その切断面同士を合わせた状態で切断面の中心を通る法線を回転軸として180度相対回転させて得られた直方体の態様で2つの圧電素子1a,1bは構成される。但し、実際には図1(b)に示すように、切断面の間にはグランド電極3が介在し、また、圧電素子内にはこのグランド電極3に電気的に接続する櫛歯状電極が設けられている。また、グランド電極3に接続する圧電素子内の櫛歯状電極と交互に組み合うように別の櫛歯状電極も設けられており、こちらはグランド電極と対向するように(図1(b)では圧電素子1aの底面及び圧電素子1bの側面に)配置された他方の電極20a、20bに電気的に接続されている。このように2つの駆動軸に対して斜めの接合面を設けることにより、各圧電素子の共通電極を容易に配置することができる。
実際に上述した手順で元々1体の圧電素子から2つの圧電素子1a,1bを製造してもよいし、2つの圧電素子1a,1bを別々に製造して組み合わせてもよい。前者の場合は、直方体の圧電素子を製造する際に予め切断ラインを考慮して圧電素子内の櫛歯状電極を配置し、切断後に共通電極に接続するべき内部電極が交互に切断面に現れるようにしておくとよい。
以上のような構成であるから、2つの圧電素子1a,1bのうち一方の圧電素子の伸縮方向が上記直方体の縦方向に相当し、他方の圧電素子の伸縮方向が上記直方体の横方向に相当する(但し、縦横の区別は不問である。)。
【0018】
図2〜図4に示すように、本2軸駆動装置20は、以上の2つの圧電素子1a,1bと、2つの駆動軸2a,2bと、共通のグランド電極3とに加え、各駆動軸2a,2bのそれぞれに摩擦係合されて当該駆動軸の軸方向に移動する移動体4a,4bを備える。駆動軸2a,2bと移動体4a,4bとの係合構造に関しては従来技術と同様に実施する。適宜にバネなどを付設して摩擦係合状態を得る。移動体4a、4bと圧電素子1a、1bとの間に両者が直接接触するのを防ぐためのストッパ5a、5bを設けている。図2〜図4では圧電素子1a、1b側に設けているが、移動体4a、4b側に設けてもよい。ストッパ5a、5bには各種の材料が使用できるが、樹脂や、ゴム等の弾性材料が好ましい。
X軸方向アクチュエータにおいては、グランド電極3と圧電素子1aの他電極20aとの間に所定周波数の駆動電圧が印加されて、圧電素子1aが伸縮し、圧電素子1aの伸縮方向の一端に連接された駆動軸2aが圧電素子1aの伸縮によってX軸方向に変位することにより、移動体4aの慣性力及び摩擦力とを利用して、移動体4aをX軸方向に移動させる。この移動原理に関しては従来技術と共通である。
Y軸方向アクチュエータにおいても同様に、グランド電極3と圧電素子1bの他電極20bとの間に所定周波数の駆動電圧が印加されて、圧電素子1bが伸縮し、圧電素子1bの伸縮方向の一端に連接された駆動軸2bが圧電素子1bの伸縮によってY軸方向に変位することにより、移動体4bの慣性力及び摩擦力とを利用して、移動体4bをY軸方向に移動させる。
なお、グランド電極3としては、例えば、導電性のプレートを両圧電素子の接合面に導電性接着剤で接着することで形成することができる。この場合、剛性の高い導電性プレートを使用し、圧電素子の接合面から一部が突き出すような形状としておくと、この突出した部分を固定部材30によって固定することで、伸縮を阻害することなく圧電素子を固定することができる。導電性接着剤そのものでグランド電極3を形成することもできる。
【0019】
図2に示す実用例にあっては、X軸方向移動体4aにレーザー出射装置等の光源装置6が固定され、Y軸方向移動体4bにプリズム型三角ミラー7が固定されている。図2においてL1は光源装置6からプリズム型三角ミラー7への入射光を、L2はプリズム型三角ミラー7からの出射光を示す。入射光L1と出射光L2とは90度に交わっている。
【0020】
図3に示す実用例にあっては、X軸方向移動体4aにプリズム型三角ミラー8が固定され、Y軸方向移動体4bにプリズム型三角ミラー9が固定されている。また、プリズム型三角ミラー10が設置される。図3においてL3はプリズム型三角ミラー8への入射光を、L4はプリズム型三角ミラー8からプリズム型三角ミラー10への入射光を、L4はプリズム型三角ミラー10からプリズム型三角ミラー9への入射光を、L6はプリズム型三角ミラー9からの出射光を示す。入射光L3と入射光L4とは90度に交わっている。入射光L4と入射光L5とは90度に交わっている。入射光L5と出射光L6とは90度に交わっている。
【0021】
図4に示す実用例にあっては、X軸方向移動体4aにX軸方向規制枠11が固定され、Y軸方向移動体4bにY軸方向規制枠12が固定されている。X軸方向規制枠11とY軸方向規制枠12とが交わってできる枠13内にレンズ14が保持されている。図4において14aはレンズ14の中心軸である。この構成においては、本2軸駆動装置20を駆動制御することによって、レンズ14をX−Y座標を制御することができる。
なお、上記の実施形態においては、2つの圧電素子が、直方体の4頂点と内部とを通る平面で互いに接合された態様で直方体状に一体化されたものを用いたが、本発明はこれに限られるものではなく、種々変更可能である。例えば、2つの圧電素子の接合面は平坦な面でなくても構わない。接合面を湾曲させたり、接合面に凹凸や段差を設けたりしてもよい。接合面が平坦でなくなることにより圧電素子同士の接合力が高められる。また、接合後の形状は必ずしも直方体である必要はなく、使用目的や設置スペース等を考慮して、適宜の形状にすればよく、移動量を大きく稼ぐ必要のある方向やスペースに余裕がある方向について大きくなるような形状としてもよい。さらに、接合面は直方体の4つの頂点を通る面でなくてもよく、直方体の3つの頂点を通るものでもよいし、頂点を通らない面で切断した形状の接合面を持つものであっても構わない。
【符号の説明】
【0022】
1a,1b 圧電素子
2a,2b 駆動軸
3 グランド電極
4a,4b 移動体
20 2軸駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加によって伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子の伸縮によって変位する駆動軸と、
前記駆動軸に対して摩擦係合されて当該駆動軸の軸方向に移動する移動体とをそれぞれ2組備え、
各組の駆動軸の軸方向同士が互いに異なるとともに、
各組の圧電素子同士が共通の電極を介して互いに接合されて一体化されてなる2軸駆動装置。
【請求項2】
前記各組の圧電素子はそれぞれ、その伸縮方向に対して斜めに形成された表面が前記電極に接合されてなる請求項1に記載の2軸駆動装置。
【請求項3】
前記各組の圧電素子は、直方体の4頂点と内部とを通る面で前記電極を介して互いに接合された態様で直方体状に一体化されてなる請求項1又は請求項2に記載の2軸駆動装置。
【請求項4】
前記各組の圧電素子のうち一方の圧電素子の伸縮方向が前記直方体の縦方向とされ、他方の圧電素子の伸縮方向が前記直方体の横方向とされてなる請求項3に記載の2軸駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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