説明

2連式注出器

【課題】シリンジへの着脱ができ、ノズル詰まりを回避し得る2連式注出器を提供。
【解決手段】2連式の注出器を、異なる内容物を充填する並列配置の空間領域M1を備えたシリンジ1と、このシリンジ1の各空間領域M1内に摺動可能に配置され押圧するピストン2aと、後端部分を鍔部4にて一体連結したプランジャー3a、3bと、シリンジ1の先端部に配置され、シリンジ1の先端部に設けた注出ノズル5とを備えたもので構成。注出ノズル5に天壁に各通路S1を合流させてその内部にて内容物を混合して出側通路を形成する単一の細径筒体5bを設け、ベース5aの対向側壁にそれぞれ押圧部8a、8bを有する弾性舌片7aを設け、シリンジ1に、該弾性舌片7aを通過させて注出ノズル5をシリンジの先端部に着脱自在に連係保持する貫通孔を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種類の異なる内容物を使用直前で混合、排出するのに適した2連式注出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科診療においては、充填剤や接着剤等、粘性の高いペースト状の材料が頻繁に使用されており、通常は、プランジャーを押圧して細径のノズルから該材料を注出する注射器タイプの注出器が使用されている。
【0003】
係る注出器は、シリンダーに充填した内容物を複数回に分けて注出するのが普通(材料を一度の治療でもって使い切ることはない。)であるが、近年では、種類の異なる材料をノズル部において混合して使用する商品も開発されてきており、これに対応する注出器として2連タイプの注出器が多数提案されている(例えば、特許文献1参照)ところ、この種の注出器にあっては、混合された内容物がノズル部において残存するため、使用状態のままで注出器を保管した場合に、ノズル部内の材料が固化してしまうことがあり、次回の使用に際しては内容物を注出することができないおそれがあった。
【特許文献1】特開2003-341749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記のような従来の問題を回避し得る新規な2連式注出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、種類の異なる内容物をそれぞれ充填する並列配置になる2つの空間領域を備えたシリンジと、このシリンジの各空間領域内にて摺動可能に配置され、内容物をシリンジの先端に設けた筒体に向けてそれぞれ押圧するピストンと、このピストンを支持するとともにその後端部分を鍔部にて一体連結して同期操作を可能としたプランジャーと、前記シリンジの先端部に配置され、シリンジの筒体を通して押し出された内容物を外界へ向けて排出する注出ノズルとを備え、
前記注出ノズルは、シリンジの各筒体につながる通路を有するベースと、このベースの天壁に設けられ、ベースの各通路を合流させてその内部にて内容物の出側経路を形成する単一の細径筒体からなり、
前記ベースの対向側壁にそれぞれ押圧部を有する弾性舌片を設け、
前記シリンジに、該弾性舌片を通過させて注出ノズルをシリンジの先端部に着脱自在に連係保持する貫通孔を設けたことを特徴とする2連式注出器である。
【0006】
上記の構成になる2連式の注出器においては、前記弾性舌片はそれぞれ異なる差込み幅を有し、前記貫通孔は弾性舌片の差込み幅に応じた開口幅を有するものを適用するのが好ましい。
【0007】
また、上記の構成になる2連式注出器においては、弾性舌片の差込み幅を同一とし、そのうちの少なくとも一方に縦リブを設け、貫通孔には、弾性舌片を通過させる際に縦リブを同時に通過させる切欠部を形成することができる。
【発明の効果】
【0008】
押圧部を押し込み注出ノズルを引き上げるだけで該注出ノズルをシリンジから取り外すことが可能であり、使用後における注出ノズルを洗浄して内部に残存する内容物を確実に取り除くことができる。
【0009】
弾性舌片の差込み幅を変更して、貫通孔の開口幅を差込み幅に合わせておくか、あるいは弾性舌片の一方に縦リブを設けておき、貫通孔に縦リブを通過させる切欠部を設けておくことで注出ノズルの位置合わせが簡単に行える。
【0010】
また、注出ノズルを取り外したシリンジの筒体にレフィルタイプのキャップを取り付けておくことにより内容物の品質を長期間安定的に保持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1〜4は本発明にしたがう2連式注出器の実施の形態を示したものであり、図1は正面図(中心線を境にして紙面左側が外観を示した図であり、右側が断面を示した図である。)、図2は図1の右側の側面図(中心線を境にして紙面左側が外観を示した図であり、右側が図1のX-X断面を示した図である。)、図3(a)、(b)はシリンジの正面及び平面図((a)の左側が外観を示した図であり、右側が断面を示した図である。)、そして図4は注出ノズルの外観斜視図である。
【0012】
図における番号1はシリンジである。このシリンジ1は種類の異なる内容物をそれぞれ充填する並列配置になる2つの空間領域M、Mを備えた単一部材からなっている。シリンジ1の先端のフランジ部fには空間領域M、Mにつながる通路を有する筒体1a、1bが形成されており、その末端にはプランジャーを挿入する開口1c、1dと鍔部1eが形成されている。
【0013】
また、2a、2bはシリンジ1の空間領域M、M内に摺動可能に配置されたピストン、3a、3bはピストン2a、2bを支持するプランジャー、4はプランジャー3a、3bの後端部分を一体連結して該プランジャー3a、3bの同期操作(同時押し込み)を可能とする鍔部、5はシリンジ1の筒体1a、1bを通して押し出された内容物を外界へ向けて排出する注出ノズルである。
【0014】
注出ノズル5はシリンジ1の筒体1a、1bを取り囲むベース5aと、このベース5aの天壁5aに一体連結して内容物の出側通路を形成する単一の細径筒体5bからなる。ベース5a内にはシリンジ1の筒体1a、1bの通路につながる通路S、Sが設けられており(図1、2参照)、細径筒体5bの出側通路の入口(細径筒体5bの最下端)で合流している。
【0015】
6は細径筒体5bの出側通路内に配置されたスクリュー状のミキシング部材である。シリンジ1の各空間領域M、M内から押し出された内容物は細径筒体5bを通過する間にミキシング部材6により混合されてその先端部から外界へと排出される。
【0016】
さらに、7a、7bはベース5aの対向位置に設けられた弾性舌片である。この弾性舌片7a、7bはその下端部の外側面に爪部7a、7bを有している。8a、8bはベース5aにスリットtを形成することにより区画された押圧部である。この押圧部8a、8bは弾性舌片7a、7bにそれぞれつながっており、その部位をベース5aの内側に押圧することにより該弾性舌片7a、7bを変位させることができるようになっている。
【0017】
9a、9bはシリンジ1のフランジfに設けられた貫通孔である(図3(b)参照)。この貫通孔9a、9bは弾性舌片7a、7bを通過させ、弾性舌片7a、7bの爪部7a、7bをフランジfに係止することによって注出ノズル5をシリンジ1の先端部に連係保持する(図5参照)。
【0018】
さらに、図中の番号10はプランジャー3bの外表面にその軸芯に沿って設けられた凹凸、11はシリンジ1に設けられた弾性片である(図1参照)。この弾性片11の内壁面には凹凸10に適合する爪部11aが設けられており、プランジャー3a、3bの操作(押し込み操作)に際して該爪部11aを凹凸10に沿ってスライドさせることによりクリック感、クリック音を発生させるもので、このクリック感あるいはクリック音の回数を把握することで定量注出を可能とする。
【0019】
上記の構成になる2連式注出器は、ベース5aの弾性舌片7a、7bを、シリンジ1のフランジfに設けた貫通孔9a、9bに差し込むだけで注出ノズル5をシリンジ1に装着することが可能であり、また、押圧部8a、8bを図5(図1のY-Y断面の要部を示す。)の矢印の如くベース5aの内側へ向けて押圧し弾性舌片7a、7bを弾性変形させつつ該注出ノズル5を引き上げることによりシリンジ1との切り離しが可能となる。
【0020】
前記弾性舌片7a、7bはそれぞれ異なる差込み幅h、h(図4 参照)とし、貫通孔9a、9bを該弾性舌片7a、7bの差込み幅h、hに応じた開口幅h′、h′(図3(b)参照)に設定することにより注出ノズル5の位置合わせ(位置合わせとは、注出ノズル5を取り付ける向きを常に一定とすることをいうものとする。すなわち、通路Sで筒体1aを嵌合させ、通路Sで筒体1bを嵌合させるこというものとする。)が可能となる。注出ノズル5の位置位置合わせは弾性舌片7a、7bの差込み厚さを変更することによって対応してもよい。
【0021】
弾性舌片7a、7bの差込み幅を同じにする場合には、例えば、図6に示すように、一方の弾性舌片7aに爪部7aとともに縦リブrを設け、貫通孔9aには該縦リブrを通過させる切欠部9a′を形成することができ、これによっても注出ノズル5の位置合わせが可能となる。
【0022】
シリンジ1内の内容物の品質を長期にわたって維持するためには注出ノズル5を取り外したのち、図7(a)〜(c)に示すようなレフィルタイプのキャップを取り付けてシリンジ1の筒対1a、1bの先端開孔を密封することもできる。
【0023】
上掲図7(a)〜(c)に示したキャップはシリンジ1a、1bに嵌合する凸部12、13を備えたものであり、細径筒体5bを有しない他は基本的には注出ノズル5と同様の構成となる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
注出ノズルの簡便な着脱が可能な2連式注出器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明にしたがう2連式注出器の正面図である。
【図2】図1に示した注出器の側面図である(断面部分は図1のX-X断面)。
【図3】(a)(b)は図1に示した注出器のシリンジのみを取り出して示した図である。
【図4】図1に示した注出ノズルの外観斜視図である。
【図5】弾性舌片の変位状況を示した図である(図1のY-Y断面の要部拡大図)。
【図6】本発明にしたがう注出器の他の例を示した図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明に適用し得るレフィルタイプのキャップの構成を示した図である。
【符号の説明】
【0026】
1 シリンジ
2a、2b ピストン
3a、3b プランジャー
4 鍔部
5 注出ノズル
6 ミキシング部材
7a、7b 弾性舌片
8a、8b 押圧部
9a、9b 貫通孔
10 凹凸
11 弾性片
12 凸部
13 凸部
M、M 空間領域
S、S 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類の異なる内容物をそれぞれ充填する並列配置になる2つの空間領域を備えたシリンジと、このシリンジの各空間領域内にて摺動可能に配置され、内容物をシリンジの先端に設けた筒体に向けてそれぞれ押圧するピストンと、このピストンを支持するとともにその後端部分を鍔部にて一体連結して同期操作を可能としたプランジャーと、前記シリンジの先端部に配置され、シリンジの筒体を通して押し出された内容物を外界へ向けて排出する注出ノズルとを備え、
前記注出ノズルは、シリンジの各筒体につながる通路を有するベースと、このベースの天壁に設けられ、ベースの各通路を合流させてその内部にて内容物の出側経路を形成する単一の細径筒体からなり、
前記ベースの対向側壁に、押圧部を有する弾性舌片を設け、
前記シリンジに、該弾性舌片を通過させて注出ノズルをシリンジの先端部に着脱自在に連係保持する貫通孔を設けたことを特徴とする2連式注出器。
【請求項2】
前記弾性舌片はそれぞれ異なる差込み幅を有し、前記貫通孔は弾性舌片の差込み幅に応じた開口幅を有する請求項1記載の2連式注出器。
【請求項3】
前記弾性舌片はそれぞれ同一の差込み幅を有し、そのうちの少なくとも一方に縦リブを備え、前記貫通孔には、弾性舌片を通過させる際に縦リブを同時に通過させる切欠部を形成してなる、請求項1記載の2連式注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−35287(P2009−35287A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200141(P2007−200141)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】