説明

2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロール

【課題】電子情報材料として有用な新規2,4−二置換メタロールおよび2,3,5−三置換メタロールを提供する。
【解決手段】下記構造を有することを特徴とする2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロールである。


(式中、R1、R2、R4、R5は、置換基を表し、R3は水素または置換基を表し、Mは、Si,GeまたはSnを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子輸送性を有する発光材料、電子機能材料および光機能材料として適用可能なメタロール、および該メタロールを用いた電子情報材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シクロペンタジエン構造中にSiを有するシロール(シラシクロペンタジエン)誘導体は電子受容性や蛍光を示すことから、機能性材料としての有用性が着目されており、種々の構造のシロールやその合成方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、2,3,4,5−四置換シロールが開示されている。この特許文献1に開示されている方法によれば、2,5位に反応性置換基を導入し、そこから種々のシロールを合成することができるが、3,4位にフェニル基等の置換基の導入が必須構成となっている。特許文献2には、2,5位に置換基を有するテルロフェンを原料としてこれに塩基を作用させ、次いでシラン誘導体を作用させることで、2,5−二置換シラシクロペンタジエン(シロール)が得られることが開示されている。また、特許文献3には、2,2’−ジハロゲノ−1,1’−ビフェニル化合物を、n−ブチルリチウム等でジメタル化した後、シラン誘導体を作用させて得られるジベンゾシロールについて開示されている。さらに、特許文献4には、1−アルキニル−2−シリルベンゼン化合物を出発原料として合成される種々のベンゾシロール誘導体について開示されている。
【0004】
以上の例のように、これまで、種々の構造のシロールやその合成方法について検討が行われているが、機能性材料として利用することを考慮すると、シロール環の持つ電子受容性や蛍光といった特性をより効率よく活用すべきであり、この点からは、ベンゾシロール、ジベンゾシロールといった縮環構造を有するものよりも、縮環構造を持たない多置換シロールの方が有利である。
【0005】
ところで、縮環構造を持たない多置換シロールとして従来検討されてきたものは、上記特許文献1や特許文献2で紹介されているもののように、2位と5位、3位と4位、といった対称な位置に置換基を有するものに限られていた。このように対称性のよいシロールは一般的に結晶性が高いため、有機EL素子のようにアモルファス状態で安定に存在すること、すなわち高いガラス転移温度(Tg)が求められる分野へ適用するには不利であった。このような事情から、非対称な位置に置換基を持つシロールの開発が望まれていた。
【0006】
こうした中、2007年になって、本発明者等は、非対称な位置に置換基を有する2,4−二置換シロールの合成方法を発表した(非特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2005−104986号公報
【特許文献2】特開平11−246567号公報
【特許文献3】特開2004−83548号公報
【特許文献4】特開2005−154410号公報
【非特許文献1】「日本化学会第87春季年会講演予稿集」、発表番号3D8−11、2007年発行
【非特許文献2】「14th IUPAC Symposium on Organometallic Chemistry Directed Towards Organic Synthesis 講演予稿集」発表番号P−402、2007年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記2,4−二置換シロールの合成方法の詳細は後述するが、本発明者等は、この新たな合成方法を用いて、電子情報材料として有用な新規2,4−二置換メタロールおよび2,3,5−三置換メタロールを提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明は、下記構造を有する2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロールであるところに特徴を有する。
【0009】
【化1】

【0010】
[式(1)中、R1、R2はそれぞれ同一または異なって、アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基およびオキシアリーレン基のいずれかを介した/または介さない、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、スルファニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスファニル基、ホスフィニル基、ホスホリル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、カルバモイル基、ホルミル基、ホルミルオキシ基、シリル基、スタンニル基、ボリル基およびヘテロ環基からなる置換基群のいずれかを意味する。また、R3は、アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基、オキシアリーレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基のいずれかを介した/または介さない、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、スルファニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスファニル基、ホスフィニル基、ホスホリル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、カルバモイル基、ホルミル基、ホルミルオキシ基、ヘテロ環基、金属性置換基または半金属性置換基を意味する。R4、R5は、それぞれ同一もしくは異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、アミノ基またはシリル基を意味する。また、R4とR5は共同して、ヘテロ原子を介し/または介さずに、単環状/または縮合環状に結合していてもよい。Mは、Si、GeまたはSnである。]
【0011】
上記R1、R2およびR3の少なくとも1つが、電子求引性基を有する置換基であると、電子情報材料として一層有用である。
【0012】
上記2,3,5−三置換メタロールのR3が反応性置換基であると、反応性置換基を反応点として、さらに、新たな2,3,5−三置換メタロールを合成することができる。
【0013】
本発明には、2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロールを用いた電子情報材料も包含される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、化学構造的に非線対称の2,4−二置換メタロールおよび2,3,5−三置換メタロールを提供するものであるので、置換基の種類を種々変更することによって、機能性電子材料としての性能を自由にコントロールすることができる。従って、得られるメタロールは、有機EL素子の電子輸送層や、発光材料等の電気・光機能材料として適用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者等は、先に見出した2,4位という非対称な位置に特定の置換基を有するシロールの合成手法で得られたシロールが光電子物性に優れていること、またこの合成方法を応用することで、2,4位に各種置換基を導入したシロールが得られること、また、ケイ素の代わりに、金属元素をゲルマニウムやスズに代えることにより、新規な2,4−二置換メタロールが得られること、さらに、2,4−二置換メタロールにおける特定の位置(5位)に反応性置換基を導入したメタロール(ただし、2,4,5−三置換メタロールとはいわずに、2,3,5−三置換メタロールという)を原料として用いることにより、該反応性置換基位置(2位)に任意の置換基を導入した2,3,5−三置換メタロールや、分子内に二置換メタロール環を複数個有するポリメタロールが得られること、これらの2,4−二置換体や2,3,5−三置換体といった非対称メタロールおよびポリメタロールが電子物性に優れていること、導入する置換基の種類を制御することで、電子物性の制御されたメタロールが得られること等を見出し、本発明に至った。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の2,4−二置換メタロールは、下記式(1)におけるR3が水素である構造を有する。
【0017】
【化2】

【0018】
MがSiであれば、下記の2,4−二置換シロール(2)となる。以下、メタロールの代表としてシロールを中心に説明するが、MがGeのゲルモールやSnのスタンノールも、出発原料を相応のものに替えれば、各種シロールと同様に、各種ゲルモールおよび各種スタンノールを得ることができる。
【0019】
【化3】

【0020】
この2,4−二置換シロール(2)は、前記した非特許文献2に記載されたとおり、下記(アミノシリル)ピナコールボラン(3)と末端アルキン(4)を用いて合成することができる。(アミノシリル)ピナコールボラン(3)の使用によって、高い選択率で2,4−二置換シロールが得られ、副生成物である3,4−二置換シロールの生成率が小さくなる。(アミノシリル)ピナコールボラン(3)の合成方法は、Organometallics 2007,26,1291-1294に記載されている。
【0021】
【化4】

【0022】
【化5】

【0023】
2,4−二置換シロール(2)におけるR1とR2は、末端アルキン(4)のRに相当する。従って、末端アルキン(4)を1種類のみ用いれば、R1とR2は同じものとなるし、2種以上用いれば、R1とR2が異なる2,4−二置換シロールが得られる。
【0024】
R、R1、R2は、アルキレン基(−R”−)、アリーレン基(−Ar’−)、オキシアルキレン基(−OR”−)、オキシアリーレン基(−OAr’−)のいずれかを介した/または介さない、ハロゲン原子(−F,−Cl,−Br,−I)、アルキル基(−R’)、アリール基(−Ar)、アルコキシ基(−OR’)、アリールオキシ基(−OAr)、アルキニル基(−C≡C)、アルケニル基(−C=C)、フルオロアルキル基(アルキル基の水素の一部がFに置換されている基)、フルオロアリール基(アリール基の水素の一部がFに置換されている基)、パーフルオロアルキル基(アルキル基の水素が全部Fに置換されている基)、パーフルオロアリール基(アリール基の水素が全部Fに置換されている基)、アルキルカルボニル基(−C(=O)R’)、アリールカルボニル基(−C(=O)Ar)、アルキルカルボニルオキシ基(−OC(=O)R’)、アリールカルボニルオキシ基(−OC(=O)Ar)、アルキルオキシカルボニルオキシ基(−OC(=O)OR’)、アリールオキシカルボニルオキシ基(−OC(=O)OAr)、アミノ基(−NH2)、ニトロ基(−NO2)、ニトロソ基(−NO)、アゾ基(−N=NH)、スルファニル基(−SR’)、スルホニル基(−SO2R’)、スルフィニル基(−S(=O)R’)、ホスファニル基(−PR’2)、ホスフィニル基(−P(=O)R’2)、ホスホリル基(−P(=O)(OR’)2)、シアノ基(−CN)、イソシアノ基(−NC)、シアナト基(−OCN)、イソシアナト基(−NCO)、チオシアナト基(−SCN)、カルバモイル基(−C(=O)NH2)、ホルミル基(−CHO)、ホルミルオキシ基(−OC(=O)H)、シリル(Si)基、スタンニル(Sn)基、ボリル(B)基およびヘテロ環基からなる置換基群のいずれかである。
【0025】
上記例示において、R’は、炭素数1〜18程度までのアルキル基を意味し、直鎖状、分岐したもの、脂環構造を有するものの、いずれも含まれる。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等である。また、R”は、上記アルキル基から水素が1個外れた2価の基の意味である。Arは、芳香族性を有する5員環以上の環式化合物であって、ベンゼン、ナフタレン等の炭素環(ビフェニル等も含む)、O,N,S等のへテロ原子等を含む複素環等を意味する。Ar’は、上記Arを含む2価の基の意味である。この定義は、以下においても同様である。これらの環式化合物は上記置換基群のいずれか1種以上を有していてもよい。
【0026】
なお、「アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基およびオキシアリーレン基のいずれかを介した」におけるアルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基、オキシアリーレン基も、それぞれ置換基を有していてもよい。
【0027】
2,4−二置換メタロールを電子情報材料として利用することを考慮すると、R1とR2は、(a)両方ともが電子求引性基を有する置換基、(b)R1が電子求引性基を有する置換基で、R2が電子供与性基を有する置換基、(c)R1が電子供与性基を有する置換基で、R2が電子求引性基を有する置換基、(d)両方ともが電子供与性基を有する置換基、のいずれかであることが好ましい。この中でも、(a)〜(c)のいずれかが好ましく、(a)が最も好ましい。2,4−二置換メタロールでは、上記式(1)におけるR3は水素であるが、2,3,5−三置換メタロールのR3は水素ではなく、電子供与性基を有する置換基の場合と、電子求引性基を有する置換基の場合がある。2,3,5−三置換メタロールにおいて、(d)の場合はR3が電子求引性基を有する置換基であることが好ましい。最も好ましいのは、2,3,5−三置換メタロールにおいて、上記(a)の場合で、かつ、R3が電子求引性基を有する置換基である場合である。なお、電子求引性や、電子供与性とは、水素原子に比べての相対的な性質を意味する。
【0028】
電子求引性基としては、ハロゲン原子、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。またこのような電子求引性基を含む置換基であってもよい。
【0029】
具体的な末端アルキン(4)としては、1−オクチン、1−デシン、4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ブト−1−イン、5−クロロヘプト−1−イン、フェニルアセチレン、4−メチルフェニルアセチレン、4−メトキシフェニルアセチレン、4−ジメチルアミノフェニルアセチレン、4−トリフルオロメチルフェニルアセチレン、2−メチルフェニルアセチレン、2,4,6−トリメチルフェニルアセチレン等が挙げられる。
【0030】
2,4−二置換シロール(2)のR4、R5は、(アミノシリル)ピナコールボラン(3)のSiに結合している置換基R4、R5に相当する。このR4、R5は、それぞれ同一もしくは異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、アミノ基またはシリル基を意味する。また、R4とR5は共同して、ヘテロ原子を介し/または介さずに、単環状/または縮合環状に結合していてもよい。
【0031】
(アミノシリル)ピナコールボラン(3)の窒素原子に結合しているR6、R7は、2,4−二置換シロールには結合しないが、シロール合成における反応性、位置選択性の点で、メチル基、エチル基等のアルキル基や、フェニル基、トリル基等のアリール基が好ましい。また、窒素原子とR6とR7とで環状構造となってピロリジノ基を形成しても良い。
【0032】
(アミノシリル)ピナコールボラン(3)の合成方法は、Organometallics 2007,26,1291-1294に記載されている。例えば、(ジエチルアミノジメチルシリル)ピナコールボランは、下記スキームで合成できる。
【0033】
【化6】

【0034】
また、例えば、(ジエチルアミノジフェニルシリル)ピナコールボランは、下記スキームで合成できる。
【0035】
【化7】

【0036】
(アミノシリル)ピナコールボラン(3)と末端アルキン(4)との反応は、パラジウム触媒を用いて行う。例えば、CpPd(η3−C35)やPd(dba)2(dbaはジベンジリデンアセトンの意味)と、配位子として、ジ(tert−ブチル)(2−ビフェニル)ホスフィン、ジ(tert−ブチル)(2−(2’−メチルビフェニル))ホスフィン、トリフェニルホスフィン(PPh3)等を用いることで、選択的に2,4−二置換シロールを合成することができる。
【0037】
上記反応は、溶媒中で行うことが好ましく、用い得る溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素類;オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジブチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられる。
【0038】
反応温度は特に限定されず、室温(23℃)程度でも充分反応が進行するので、0〜100℃で行うとよい。反応時間も特に限定されないが、3〜24時間程度である。反応後は、常法によって精製する。
【0039】
本発明の2,3,5−三置換メタロール(1)は、上記2,4−二置換メタロールの5位に置換基を導入することによって得ることができる。なお、命名法の規則で、2,4,5−三置換メタロールではなく、2,3,5−三置換メタロールとなる。
【0040】
【化8】

【0041】
2,3,5−三置換メタロールの場合は、R3は水素ではない。5位(上記構造式では2位)に導入される置換基R3は、アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基、オキシアリーレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基のいずれかを介した/または介さない、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、スルファニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスファニル基、ホスフィニル基、ホスホリル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、カルバモイル基、ホルミル基、ホルミルオキシ基、ヘテロ環基、金属性置換基または半金属性置換基のいずれかである。
【0042】
上記において、アルケニレン基とは−CR’=CR’−であり(R’は、水素原子か、または前記R’と同じ意味であり、2つのR’は同一であっても異なっていてもよい。)、アルキニレン基とは、−C≡C−である。
【0043】
上記において、金属性置換基とは、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等のアルカリ金属原子等のように金属原子のみからなる基;MgBr等のように金属原子にハロゲン原子等の無機配位子が配位してなる基(無機錯体残基);トリアルキルスズ等の金属原子に有機配位子が配位してなる基(有機錯体残基)が挙げられる。無機錯体残基および有機錯体残基における金属原子としては、アルカリ金属原子、スズ等の典型金属原子、亜鉛やパラジウム等の遷移金属原子であれば、特に限定はなく、好ましく用いられる。また、半金属性置換基とは、ボリル基、シリル基、ゲルミル基、アルセニル基、テルロ基を表す。
【0044】
3が、ハロゲン原子、金属性置換基、半金属性置換基等の反応性置換基である場合は、この反応性置換基を反応点として、新たな置換基を有する2,3,5−三置換メタロールを容易に合成することができる。すなわち、R3が反応性置換基である2,3,5−三置換メタロールは、中間体として有用である。
【0045】
3の導入方法は、R3の種類に応じて、適切な公知の方法を選択すればよい。例えば、R3に臭素を導入する場合は、N−ブロモスクシンイミド(NBS)等のような臭素化剤を反応させれば得ることができる(下式)。
【0046】
【化9】

【0047】
こうして得られたR3が反応性置換基である2,3,5−三置換メタロールは、公知の方法によって、R3に所望の置換基を導入することができる。例えば、アルキニルスズ化合物を用いたStilleカップリング反応を用いれば、アルキニル基が導入でき、ビニル化合物を用いた溝呂木−Heck反応を用いれば、アルケニル基が導入でき、ボリルアリール化合物を用いた鈴木・宮浦カップリング反応を用いれば、アリール基が導入でき、グリニャール試薬を用いた熊田・玉尾・Corriuカップリング反応を用いれば、アルキル基やアリール基を導入できる。電子材料として好ましい2,3,5−三置換メタロールとするためには、R3の位置に導入する置換基の種類として、前記したとおり電子求引性基を選択することが好ましい。
【0048】
また、反応性置換基を有する2,3,5−三置換メタロールは、反応性置換基部分で、ホモカップリング反応やジボリルアリールとのクロスカップリング反応を起こすため、メタロールのオリゴマー化やポリマー化も可能となる。
【0049】
さらに、有機重合鎖に二置換メタロール環が2個以上直接または結合基を介して結合しているポリメタロールの合成も可能である。R3が反応性置換基である2,3,5−三置換メタロール(以下、反応性メタロールという)を原料とし、この反応性メタロールの反応性置換基を、後述する重合性基を有する置換基に置換したメタロール(以下、重合性メタロールという)を合成し、この重合性メタロールを重合することにより、重合性基からなる有機重合鎖に、2,4−(または3,5−)二置換メタロール環が結合したポリメタロールが得られる。有機重合鎖に結合した2,4−(または3,5−)二置換メタロール環は、同一であっても異なっていてもよい。なお、重合性基とは、ビニル基、(メタ)アクリロイル基等の不飽和二重結合を有する基である。
【0050】
2位および/または4位(または3位および/または5位)の置換基が異なる2種以上の反応性メタロールから得られる各種重合性メタロールを2種以上共重合することで、2種以上の2,4−(または3,5−)二置換メタロール環を有するポリメタロールを得ることができる。ポリメタロールにおけるメタロール環の含有量は1分子中に2個以上であれば特に限定されない。
【0051】
また、重合性メタロールと、メタロール環を有さない重合性有機モノマー(例えば、(メタ)アクリル酸(エステル)類や各種ビニル化合物類)との共重合体も、ポリメタロールということができる。
【0052】
ポリメタロールの重合度は2以上であればよく、特に限定されないが、20以上が好ましく、100以上がより好ましい。
【0053】
反応性メタロール、重合性メタロール、ポリメタロールは、いずれも本発明における2,4−二置換メタロール、2,3,5−三置換メタロールの好ましい実施形態として包含される。
【実施例】
【0054】
以下実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例で用いた測定機器は、次の通りである。
【0055】
[測定機器]
1H−NMR:
「Varian Mercury−400」(バリアン社製;400.44MHz)または「JEOL JNM−A500」(日本電子社製;500.00MHz)を用いた。
13C−NMR:
「Varian GEMINI−2000」(バリアン社製;75.45MHz)、「JEOL JNM−A500」(日本電子社製;125.65MHz)、または「JEOL JNM−A600」(日本電子社製;150.92MHz)を用いた。
29Si−NMR:
「JEOL JNM−A400」(日本電子社製;79.30MHz)を用いた。
【0056】
高分解能質量分析計(HRMS):
「JEOL JMS−MS700」(日本電子社製)を用い、化学イオン化法(CI)または電子イオン化法(EI)により測定した。
【0057】
実施例1(2,4−ジヘキシル−1,1−ジメチルシロールの合成)
【0058】
【化10】

【0059】
まず、原料の(ジエチルアミノジメチルシリル)ピナコールボランを下記スキームに従って合成した(Organometallics 2007,26,1291-1294)。
【0060】
【化11】

【0061】
次いで、ジ(tert−ブチル)(2−ビフェニル)ホスフィン1.4mgとビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(Pd(dba)2)2.3mgを200μLのトルエンに溶解し、室温で5分間攪拌した。この溶液に、1−オクチン108mgと、(ジエチルアミノジメチルシリル)ピナコールボラン102mgを順に加え、室温で20時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、2,4−ジヘキシル−1,1−ジメチルシロール82mgを得た。
【0062】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 6.34(q,J=1.6Hz,1H),5.40(q,J=1.6Hz,1H),2.20−2.30(m,4H),1.41−1.52(m,4H),1.22−1.36(m,12H),0.87−0.91(m,6H),0.18(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 160.7,150.0,141.5,119.6,36.1,32.7,31.77,31.76,29.6,29,3,29.1,27.6,22.7,22.6,14.12,14.09,−4.3(2C,H3C−Si)
29Si−NMR(79MHz,CDCl3)の結果:
δ 3.8
HRMS(EI)の結果:
1834Si(M+):理論値:278.2430;実測値:278.2423
【0063】
実施例2(1,1−ジメチル−2,4−ジオクチルシロールの合成)
【0064】
【化12】

【0065】
1−オクチンに代えて、1−デシン134mgを用いたこと以外は実施例1と同様にして、22時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ジオクチルシロール94mgを得た。
【0066】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 6.33(q,J=1.6Hz,1H),5.40(q、J=1.6Hz、1H),2.28(dt,J=7.6,1.6Hz,2H),2.23(dt,J=7.6,1.6Hz,2H),1.42−1.52(m,4H),1.22−1.36(m,20H),0.89(t,J=6.8Hz,6H),0.18(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 160.7,150.0,141.5,119.6,36.1,32.7,31.91,31.90,31.6,29.68,29.66,29.50,29.49,29.39,29.32,29.28,27.7,22.68,22.67,14.1,−4.3(2C)
HRMS(EI)の結果:
2242Si(M+):理論値:334.3056;実測値:334.3054
【0067】
実施例3(2,4−ビス[2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル]−1,1−ジメチルシロールの合成)
【0068】
【化13】

【0069】
1−オクチンに代えて 4−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)ブト−1−イン178mgを用いたこと以外は実施例1と同様にして、22時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、2,4−ビス[2−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)エチル]−1,1−ジメチルシロール141mgを得た。
【0070】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 6.42(q,J=1.6Hz,1H),5.49(q,J=1.6Hz,1H),3.76(t,J=6.8Hz,2H),3.67(t,J=7.2Hz,2H),2.52(dt,J=7.2,1.6Hz,2H),2.48(dt,J=6.8,1.6Hz,2H),0.91(s,9H),0.89(s,9H),0.18(s,6H),0.08(s,6H),0.05(s,6H)
13C−NMR(75MHz,CDCl3)の結果:
δ 156.6,145.3,143.5,123.1,63.3,62.3,39.5,36.5,26.03(3C),25.97(3C),18.5,18.4,−4.7(2C),−5.16(2C),−5.23(2C)
元素分析の結果:
22462Si3:理論値:C61.90;H10.86;実測値:C61.63;H10.63
【0071】
実施例4(2,4−ビス(3−クロロプロピル)−1,1−ジメチルシロールの合成)
【0072】
【化14】

【0073】
ジ(tert−ブチル)(2−ビフェニル)ホスフィンに代えて、ジ(tert−ブチル)[2−(2’−メチルビフェニル)]ホスフィンを用いたこと、および1−オクチンに代えて、5−クロロヘプト−1−イン100mgを用いたこと以外は実施例1と同様にして、24時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=40:1)で精製し、2,4−ビス(3−クロロプロピル)−1,1−ジメチルシロール80mgを得た。
【0074】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 6.38(q,J=1.6Hz,1H),5.50(q,J=1.6Hz,1H),3.55(t,J=6.8Hz,2H),3.54(t,J=6.8Hz,2H),2.45(dt,J=7.6,1.6Hz,2H),2.40(dt,J=7.6,1.6Hz,2H),1.89−2.05(m,4H),0.20(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 158.1,148.3,142.1,121.5,44.7,44.5,32.9,32.3,30.5,29.5,−4.6(2C)
HRMS(CI)の結果:
1221Cl2Si(MH+):理論値:263.0790;実測値:263.0786
【0075】
実施例5(1,1−ジメチル−2,4−ジフェニルシロールの合成)
【0076】
【化15】

【0077】
ジ(tert−ブチル)(2−ビフェニル)ホスフィンに代えて、トリフェニルホスフィンを用いたこと、および1−オクチンに代えてフェニルアセチレン249mgを用いたこと以外は実施例1と同様にして、5時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=40:1)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ジフェニルシロール242mgを得た。
【0078】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.62−7.65(m,2H),7.61(d,J=1.6Hz,1H),7.46−7.49(m,2H),7.31−7.42(m,6H),6.32(d,J=1.6Hz,1H),0.45(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ156.7,147.2,139.3,139.0,138.9,128.7(2C),128.4(2C),128.0,127.0,126.5(2C),126.0(2C),125.2,−3.7(2C)
元素分析の結果:
1818Si:理論値:C82.38;H6.91;実測値:C82.15;H7.00
【0079】
実施例6(1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−メチルフェニル)シロールの合成)
【0080】
【化16】

【0081】
フェニルアセチレンに代えて、4−メチルフェニルアセチレン114mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、3時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=40:1)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−メチルフェニル)シロール111mgを得た。
【0082】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.59(d,J=1.7Hz,1H),7.56(d,J=7.9Hz,2H),7.41(d,J=7.9Hz,2H),7.22(d,J=7.9Hz,2H),7.19(d,J=7.9Hz,2H),6.27(d,J=1.7Hz,1H),2.40(s,3H),2.38(s,3H),0.44(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 156.6,146.9,138.1,137.8,136.8,136.5,136.3,129.4(2C),129.1(2C),126.4(2C),125.9(2C),123.5,21.21,21.20,−3.6(2C)
HRMS(EI)の結果:
2022Si(M+):理論値:290.1491;実測値:290.1504
【0083】
実施例7(2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1−ジメチルシロールの合成)
【0084】
【化17】

【0085】
フェニルアセチレンに代えて、4−メトキシフェニルアセチレン126mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、24時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=40:1)で精製し、2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1−ジメチルシロール122mgを得た。
【0086】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.58−7.63(m,2H),7.51(d,J=1.6Hz,1H),7.42−7.47(m,2H),6.89−6.95(m,4H),6.16(d,J=1.6Hz,1H),3.86(s,3H),3,85(s,3H),0.44(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 159.5,158.8,156.2,146.5,136.8,132.0,131.8,127.6(2C),127.3(2C),121.5,114.1(2C),113.7(2C),55.2(2C),−3.5(2C)
HRMS(EI)の結果:
20222Si(M+):理論値:322.1389;実測値:322.1403
【0087】
実施例8(1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)シロールの合成)
【0088】
【化18】

【0089】
フェニルアセチレンに代えて、4−ジメチルアミノフェニルアセチレン137mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、48時間反応させた。1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)シロールを収率80%で得た。
【0090】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.57(d,J=8.8Hz,2H),7.50(d,J=1.6Hz,1H),7.41(d,J=8.8Hz,2H),6.74(d,J=8.8Hz,2H),6.73(d,J=8.8Hz,2H),6.02(d,J=1.6Hz,1H),3.00(s,6H),2.98(s,6H),0.41(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 156.7,150.2,149.6,146.4,134.8,127.4(2C),127.0(2C),117.8,112.6(2C),112.1(2C),40.5(2C),40.4(2C),−3.2(2C)
HRMS(EI)の結果:
22282Si(M+):理論値:348.2022;実測値:308.2016
【0091】
実施例9(1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)シロールの合成)
【0092】
【化19】

【0093】
フェニルアセチレンに代えて、4−トリフルオロメチルフェニルアセチレン126mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、22時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ビス(4−トリフルオロメチルフェニル)シロール116mgを得た。
【0094】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.72(d,J=8.3Hz,2H),7.66(d,J=8.3Hz,2H),7.60−7.63(m,3H),7.55(d,J=8.3Hz,2H),6.49(d,J=1.7Hz,1H),0.46(s,6H)
13C−NMR(151MHz,CDCl3)の結果:
δ 155.4,146.7,142.3,140.4,130.0(q,2CF=33Hz),129.0,128.9(q,1CF=271Hz),124.2(q,1CF=272Hz),−4.0(2C)
HRMS(EI)の結果:
20166Si(M+):理論値:398.0925;実測値:398.0912
【0095】
実施例10(1,1−ジメチル−2,4−ビス(2−メチルフェニル)シロールの合成)
【0096】
【化20】

【0097】
フェニルアセチレンに代えて、2−メチルフェニルアセチレン112mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、4時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=50:1)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ビス(2−メチルフェニル)シロール89mgを得た。
【0098】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.29−7.32(m,1H),7.20−7.25(m,4H),7.10−7.18(m,3H),6.84(d,J=1.7Hz,1H),5.99(d,J=1.7Hz,1H),2.38(s,3H),2.36(s,3H),0.39(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 158.5,147.5,145.1,141.3,140.4,135.0,134.8,130.4,130.3,128.2,128.0,127.9,127.4,126.0,125.7,125.5,21.3,20.5,−4.1(2C)
HRMS(EI)の結果:
2022Si(M+):理論値:290.1491;実測値:290.1486
【0099】
実施例11(1,1−ジメチル−2,4−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)シロールの合成)
【0100】
【化21】

【0101】
フェニルアセチレンに代えて、2,4,6−トリメチルフェニルアセチレン139mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、20時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)シロール110mgを得た。
【0102】
1H−NMR(400MHz,C66)の結果:
δ 6.86(s,2H),6.84(s,2H),6.31(d,J=1.8Hz,1H),5.86(d,J=1.8Hz,1H),2.30(s,6H),2.25(s,6H),2.21(s,3H),2.20(s,3H),0.27(s,6H)
13C−NMR(126MHz,C66)の結果:
δ 158.5,149.0,146.4,139.2,137.8,136.1,134.8,134.6(2C),134.5(2C),128.51(2C),128.48(2C),127.5,21.1,21.03(2C),21.01,20.5(2C),−3.3(2C)
元素分析の結果:
2430Si:理論値:C83.17;H8.72;実測値:C83.46;H8.87
【0103】
実施例12(1,1−ジメチル−2,4−ジ(1−ナフタレニル)シロールの合成)
【0104】
【化22】

【0105】
フェニルアセチレンに代えて、1−エチニルナフタレン148mgを用いたこと以外は実施例5と同様にして、24時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で精製し、1,1−ジメチル−2,4−ジ(1−ナフタレニル)シロール109mgを得た。
【0106】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 8.15−8.20(m,2H),7.85−7.91(m,2H),7.83(d,J=8.0Hz,1H),7.75(d,J=8.0Hz,1H),7.57(dd,J=7.2,1.2Hz,1H),7.44−7.53(m,6H),7.32(dd,J=7.2,1.2Hz,1H),7.16(d,J=1.8Hz,1H),6.32(d,J=1.8Hz,1H),0.48(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 157.6,146.81,146.75,139.6,139.3,134.0,133.8,131.7,130.7,129.9,128.4,128.3,128.0,126.5,126.3,126.0,125.9,125.8,125.7,125.6,125.5,125.4,125.2,124.4,−4.0(2C)
HRMS(EI)の結果:
2622Si(M+):理論値:362.1491;実測値:362.1485
【0107】
実施例13(1,1,2,4−テトラフェニルシロールの合成)
【0108】
【化23】

【0109】
まず、原料の(ジエチルアミノジフェニルシリル)ピナコールボランを下記スキームに従って合成した(Organometallics 2007,26,1291-1294)。
【0110】
【化24】

【0111】
次いで、トリフェニルホスフィン1.3mgとビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム2.3mgを200μLのトルエンに溶解し、室温で5分間攪拌した。この溶液に、フェニルアセチレン98mgと、(ジエチルアミノジフェニルシリル)ピナコールボラン159mgを順に加え、50℃で18時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=20:1)で精製し、1,1,2,4−テトラフェニルシロール112mgを得た。
【0112】
1H−NMR(500MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.83(d,J=2.0Hz,1H),7.67−7.72(m,4H),7.16−7.49(m,16H),6.60(d,J=2.0Hz,1H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 158.8,145.2,141.5(2C),138.9,138.8,135.7(4C),131.9,130.1(2C),128.6(2C),128.5(2C),128.4(4C),128.2,127.3,127.0(2C),126.1(2C),123.0
HRMS(EI)の結果:
2822Si(M+):理論値:386.1491;実測値:386.1495
【0113】
実施例14(2−ブロモ−1,1−ジメチル−3,5−ジフェニルシロールの合成)
【0114】
【化25】

【0115】
実施例5で合成した1,1−ジメチル−2,4−ジフェニルシロール89mgを1.0mLのトルエンに溶解させた。この溶液に、N−ブロモスクシンイミド63mgを加えて、室温で24時間反応させた。揮発性物質を留去した後、残渣に、2.0mLのペンタンを加えて懸濁させ、これをセライト(Celite社の登録商標)No.535で濾過した。濾液を濃縮し、さらにHPLC(カラム:Cica−MERCK社製の「LiChrosorb(登録商標)CN」、溶離液:ヘキサン)で精製して、2−ブロモ−1,1−ジメチル−3,5−ジフェニルシロールを収率85%で得た。
【0116】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.57−7.60(m,2H),7.32−7.47(m,7H),7.29(s,1H),7.23−7.28(m,1H),0.50(s,6H)
13C−NMR(126MHz,CDCl3)の結果:
δ 151.9,144.4,141.3,138.4,137.6,128.9(2C),128.2(2C),128.1,127.9(2C),127.3,126.2(2C),121.9,−4.7
HRMS(EI)の結果:
1817BrSi(M+):理論値:340.0283;実測値:340.0292
【0117】
実施例15(1,1−ジメチル−3,5−ジフェニル−2−(フェニルエチニル)シロールの合成)
【0118】
【化26】

【0119】
実施例14で合成した2−ブロモ−1,1−ジメチル−3,5−ジフェニルシロールに、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム3.9mg、トリ(tert−ブチル)ホスフィン1.6mg、トルエン1.0mL、(フェニルエチニル)トリブチル錫140mgを加えて室温で2時間反応させた。反応液を、ジエチルエーテル2.0mLで希釈し、フッ化カリウム310mgを加えた。得られた懸濁液をシリカゲルショートカラムに通して濾過した。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=40:1)で精製し、1,1−ジメチル−3,5−ジフェニル−2−(フェニルエチニル)シロール95mgを得た。
【0120】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ 7.93−7.96(m,2H),7.64(s,1H),7.28−7.51(m,13H),0.58(s,6H)
13C−NMR(151MHz,CDCl3)の結果:
δ 156.9,145.5,140.8,138.4,138.1,131.4(2C),128.9(2C),128.4,128.3(2C),128.1(2C),127.66(2C),127.65,127.4,126.6(2C),124.7,119.9,100.2,90.0,−4.0(2C)
HRMS(EI)の結果:
2622Si(M+):理論値:362.1491;実測値:362.1493
【0121】
実施例16(2−[(4−メトキシフェニル)エチニル]−1,1−ジメチル−3,5−ジフェニルシロールの合成)
【0122】
【化27】

【0123】
(フェニルエチニル)トリブチル錫に代えて、[(4−メトキシフェニル)エチニル]トリブチル錫276mgを用いたこと以外は実施例15と同様にして、2時間反応させた。揮発性物質を留去した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:ジエチルエーテル=40:1)で精製し、2−[(4−メトキシフェニル)エチニル]−1,1−ジメチル−3,5−ジフェニルシロール107mgを得た。
【0124】
1H−NMR(400MHz,CDCl3)の結果:
δ7.91−7.93(m,2H),7.62(s,1H),7.44−7.48(m,4H),7.33−7.38(m,5H),7.24−7.27(m,1H),6.83−6.87(m,2H),3.83(s,3H),0.55(s,6H)
13C−NMR(151MHz,CDCl3)の結果:
δ 159.3,156.0,144.9,141.0,138.6,138.2,132.9(2C),128.8(2C),128.2,128.1(2C),127.6(2C),127.3,126.5(2C),120.4,117.0,114.0(2C),100.5,88.9,55.3,−4.0(2C)
元素分析の結果:
2724OSi:理論値:C82.61;H6.16;実測値:C82.66;H6.22
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の2,4−二置換メタロールや2,3,5−三置換メタロールは、置換基を適宜選択することで、得られるメタロールの性能を自由にコントロールすることができる。よって、得られたメタロールは、電子材料、例えば有機EL素子、太陽電池、コンデンサ、燃料電池、二次電池、センサー、ディテクター、光回路、光導波路、トランジスタ、電気回路等の構成部材、有機EL素子の中間層(正孔輸送層または電子輸送層等)、太陽電池の光電変換層等の電気・光機能材料として適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造を有することを特徴とする2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロール。
【化1】

[式(1)中、R1、R2はそれぞれ同一または異なって、アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基およびオキシアリーレン基のいずれかを介した/または介さない、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、スルファニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスファニル基、ホスフィニル基、ホスホリル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、カルバモイル基、ホルミル基、ホルミルオキシ基、シリル基、スタンニル基、ボリル基およびヘテロ環基からなる置換基群のいずれかを意味する。また、R3は、アルキレン基、アリーレン基、オキシアルキレン基、オキシアリーレン基、アルケニレン基およびアルキニレン基のいずれかを介した/または介さない、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、フルオロアルキル基、フルオロアリール基、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、アゾ基、スルファニル基、スルホニル基、スルフィニル基、ホスファニル基、ホスフィニル基、ホスホリル基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、カルバモイル基、ホルミル基、ホルミルオキシ基、ヘテロ環基、金属性置換基または半金属性置換基を意味する。R4、R5は、それぞれ同一もしくは異なって、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキニル基、アルケニル基、アミノ基またはシリル基を意味する。また、R4とR5は共同して、ヘテロ原子を介し/または介さずに、単環状/または縮合環状に結合していてもよい。Mは、Si、GeまたはSnである。]
【請求項2】
上記R1、R2およびR3の少なくとも1つが、電子求引性基を有する置換基である請求項1に記載の2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロール。
【請求項3】
上記R3が、反応性置換基である請求項1または2に記載の2,3,5−三置換メタロール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の2,4−二置換または2,3,5−三置換メタロールを用いたことを特徴とする電子情報材料。

【公開番号】特開2009−84251(P2009−84251A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259162(P2007−259162)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】