説明

2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの製造方法

【課題】有機窒素塩基、水および有機溶媒等を用いず、飲料類、菓子類、スープなどに甘い香味・特徴を付与する食品香料素材として有用な、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを製造する方法および、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを多く含有する油脂を提供すること。
【解決手段】ラムノースをはじめとする6−デオキシヘキソースを可食性油脂で加熱することにより、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲食品類に好ましい甘い香味を付与する2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの製造方法および2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを多く含有する油脂またはこの油脂を用いた飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
食品香料(フレーバー)は飲食品などに香味をつけ、それによって嗜好性を高めたり香味を増強したりする効果を持つ。フレーバーは添加される食品の性質も多岐にわたるためいくつかの形態に分類される。水に溶解するもので希釈された水溶性フレーバー、水には難溶で油に溶解するもので希釈された油溶性フレーバー、必要な量のフレーバーが溶解しないときなどに乳化剤を含む香料で溶解性を増した乳化フレーバー、香料をデキストリンなどの担体に吸着させ粉末状とした粉末フレーバーなどに分類される。
【0003】
2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オン(「フラネオール」(登録商標)フィルメニッヒ社)はパイナップル果汁より見出されたイチゴ様の甘い香気を有する公知物質であり、フレーバーとしてフルーツフレーバー、コーヒーフレーバー、茶フレーバー、野菜フレーバー、香辛料フレーバー、調理肉フレーバーなどに使用されている。この独特の甘い香気は、水溶性フレーバーや油溶性フレーバーなど様々な形態のフレーバーで利用されている。
【0004】
2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンは、糖類とアミノ酸類を加熱させた時に生ずる化合物として知られ、この反応、すなわち、メイラード反応を利用した製造方法が提案されている。例えば、6−デオキシグルコースを有機窒素塩基及び有機カルボン酸と反応せしめることを特徴とする製造方法(特許文献1)、アルドペントース若しくは6−デオキシヘキソースを極性溶媒中、アクリル酸若しくはメタクリル酸とビニル化合物で構成される共重合体の存在下で有機窒素塩基と反応させることを特徴とする製造方法(特許文献2)、アミノ酸の存在下でペントース又は6−デオキシヘキソースを反応させ、減圧下で反応混合物を蒸留することにより、反応化合物から直接に分離することを特徴とする製造方法(特許文献3)などが提案されている。
【0005】
上記の提案は、糖類と、アミノ酸類およびアミン類をはじめとする有機窒素塩基とを含む混合物を水および有機溶媒等の存在下で加熱反応させることによって、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを得る方法である。しかしながら、これらの提案では、使用する有機窒素塩基および有機溶媒に食品で使用することが望ましくないものが存在する。また、これら有機窒素塩基および有機溶媒を除去するために、糖類と有機窒素塩基の反応混合物を抽出または蒸留をする必要があり、フレーバー素材としての有用な香気の損失、劣化を生ずるという不都合があった。また、特許文献1および特許文献2の製造方法は加熱反応時間に24時間を要し、工業的規模で製造するには適していないとの問題点があった。
【0006】
そこで、有機窒素塩基、水および有機溶媒を使用することなく、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを生成させ、該化合物を含有する反応生成物をそのまま食品素材として飲食品に添加、使用できる新たな製品の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭59−53916号公報
【特許文献2】特公平5−4390号公報
【特許文献3】特公平7−30065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有機窒素塩基、水および有機溶媒等を用いず、油脂中で2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを製造する方法、および、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを多く含有する油脂、またはこれを用いた飲食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、有機窒素塩基、水および有機溶媒等を用いず、アルカリ条件下、ラムノースをはじめとする6−デオキシヘキソースを可食性油脂溶媒中にて加熱することにより、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを製造する方法を見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、アルカリの存在下、6−デオキシヘキソースを可食性油脂中で加熱することを特徴とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの製造方法を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、アルカリがリン酸水素2ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸3ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれた少なくとも1種である上記に記載の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、アルカリが可食性油脂に対し0.1〜10質量%の範囲内である上記に記載の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、上記に記載の製造方法で得られた2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する可食性油脂を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明では、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含む可食性油脂を含有することを特徴とする飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、飲料類および菓子類にフルーツ感、スイート感、ロースト感;スープ類に、ロースト感、肉感、肉の甘み;その他、広範囲の飲食品に様々な香味・特徴を付与することのできる食品香料素材として有用な、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを、アミノ酸類およびアミノ酸などの有機窒素塩基、および、除去が必要な有機溶剤の代わりに可食性油脂を溶媒として使用し、極めて簡便な工程で製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0017】
本発明において使用するアルカリは、例えば、リン酸水素2ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸3ナトリウム、炭酸カリウムなどを挙げることができ、これらアルカリの1種または2種以上の混合物として使用することができるが、これらに限定されるものではない。アルカリの使用量は可食性油脂に対して0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%を例示することができる。
【0018】
本発明において使用する6−デオキシヘキソースは、例えば、ラムノース、フコースなどを挙げることができ、これら6−デオキシヘキソースの1種または2種以上の混合物として使用することができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの使用量は可食性油脂に対して2〜20質量%、好ましくは5〜12質量%を例示することができる。
【0019】
本発明において使用される可食性油脂は、特には限定されず、中鎖脂肪酸トリグリセライド類、各種の動植物油脂類およびそれらの硬化油類などを挙げることができる。各種の動植物油脂類の例としては、大豆油、ゴマ油、米サラダ油、ピーナッツ油、コーン油、菜種油、ヤシ油、パーム油、オリーブ油などの植物性油脂類およびこれらの硬化油;牛脂、豚脂、鶏脂、魚油などの動物性油脂類およびこれらの硬化油などを挙げることができる。さらに、これら可食性油脂の1種または2種以上の混合物として使用することができる。
【0020】
本発明の2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの製造方法は、上述した6−デオキシヘキソースおよびアルカリを可食性油脂中に加え、さらには必要に応じて、糖およびアルカリの接触効果を高めるため、また焦げ付き防止のため分散剤を使用することが好ましい。分散剤としては、粉末セルロース、海砂、シリカゲルなどを挙げることができる。分散剤の使用量は特には制限されないが、通常、可食性油脂に対して1〜10質量%、好ましくは2〜6質量%程度を例示することができる。分散剤を加えて、密閉容器内で攪拌しながら95℃〜150℃、好ましくは110℃〜140℃の温度で1〜12時間、好ましくは2〜8時間加熱し、生成物を冷却後ろ過することにより得ることができる。
【0021】
本発明で得られた2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを多く含有する油脂は、それ自身フレーバーあるいはフレーバー素材として使用することができるが、フルーツ感、スイート感、ロースト感を感じさせる香料素材とあわせて使用することもできる。香料素材の具体例としては、例えば、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ油、ライム油、ペパーミント油、スペアミント油、シンナモン油、オールスパイス油、アニスシード油、バジル油、セロリ油、クローブ油、クミン油、ディル油、ガーリック油、ジンジャー油、オニオン油、パプリカ油、パセリ油、ブラックペッパー油、ナツメグ油、ローズマリー油などの天然精油類;リモネン、リナロール、ネロール、シトロネロール、ゲラニオール、シトラール、ヘキサノール、酢酸ペンチル、カプロン酸アリル、メントール、マルトール、バニリン、γ−ウンデカラクトン、オイゲノール、アネトール、シンナミックアルデヒド、2−アセチルフラン、フルフリルメルカプタンなどの合成香料類;およびこれらの天然精油、合成香料等を任意に組み合わせた調合香料と混合して使用することもできるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
また、これらのフレーバーおよびフレーバー素材に、パプリカ色素、β−カロチンなどの油溶性色素類;ビタミンA、ビタミンEなどの油溶性ビタミン類;その他の機能性素材を所望により添加することができる。
【0023】
さらには、該油脂を所望により、例えば、アラビアガム、澱粉、デキストリン、キサンタンガム、サイクロデキストリンなどの粉末化助剤と混合して噴霧乾燥、真空乾燥および凍結乾燥などの乾燥手段を用いて乾燥することにより、粉末香料として広範囲に使用することができる。
【0024】
本発明で得られた油脂は、例えば、コーヒー、ココア、乳飲料等の飲料類;チョコレート、キャンディー、クッキー、ケーキ、アイスクリーム等の菓子類;即席麺スープ、野菜スープなどのスープ類;その他広範囲の飲食品類用フレーバーとして甘い香気の増強や天然感あふれるバランス感の良い香味が付与される。
【0025】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。
【実施例】
【0026】
実施例1
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリとしてリン酸水素2ナトリウムを使用)
密閉容器内に中鎖脂肪酸トリグリセライド(MT−N、花王(株))150gにL−ラムノース16.4g、リン酸水素2ナトリウム2.0gおよび粉末セルロース(Fibra Cel BH−40、セライト・コーポレーション社)6.0gを混合し攪拌しながら130℃で加熱を行なった。加熱を5時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品1)を得た。
【0027】
実施例2
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用)
実施例1において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸ナトリウム0.75gを使用すること以外は実施例1と同じ条件で加熱を130℃で5時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品2)を得た。
【0028】
実施例3
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリとして炭酸水素ナトリウムを使用)
実施例1において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸水素ナトリウム1.2gを使用すること以外は実施例1と同じ条件で加熱を120℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品3)を得た。
【0029】
実施例4
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリとしてリン酸3ナトリウムを使用)
実施例1において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えてリン酸3ナトリウム5.4gを使用すること以外は実施例1と同じ条件で加熱を120℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品4)を得た。
【0030】
実施例5
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリとして炭酸カリウムを使用)
実施例1において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸カリウム2.0gを使用すること以外は実施例1と同じ条件で加熱を120℃で2時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品5)を得た。
【0031】
比較例1
(6−デオキシヘキソースとしてL−ラムノース、アルカリは不使用)
実施例1において、リン酸水素2ナトリウムを使用しない以外は実施例1と同じ条件で加熱を130℃で8時間行うことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する油脂(比較品1)を得た。
【0032】
比較例2
(L−ラムノースの代わりにD−グルコース、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用)
実施例1において、L−ラムノース16.4gに代えてD−グルコース18.0g、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸ナトリウム0.75gを使用すること以外は実施例1と同じ条件で加熱を130℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する油脂(比較品2)を得た。
【0033】
実施例6
本発明品1から5および比較品1から2に含まれる2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの濃度(ppm)をHPLC法にて測定した。分析結果を表1に示す。
【0034】
[HPLC法による2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの測定]
標準液調製
25mLのメスフラスコに2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを約0.1g精密に量りとり、エタノールでメスアップした後にさらにエタノールで適宜メスアップし、標準液を調製した。
HPLC測定試料調製
25mLメスフラスコに本発明品あるいは比較品を0.2〜0.3g精密に量りとり、エタノールでメスアップした後にPVDF膜フィルター(ミリポア社、孔径0.45μm)処理を行った。この調製液をHPLC分析に供した。
HPLC分析条件
機種:SHIMADZU LC20−T(島津製作所)
カラム:Inertsil ODS−3 Preparative Column(ジーエルサイエンス社)内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm
カラム温度:40℃
移動相:水:アセトニトリル:リン酸=800:200:1
流速:0.7mL/min
注入量:10μL
測定時間:20min
保持時間:7〜8min
検出器:分光光度計(測定波長:290nm)
【0035】
【表1】

【0036】
実施例7
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリとしてリン酸水素2ナトリウムを使用)
密閉容器内に中鎖脂肪酸トリグリセライド(MT−N、花王(株))150gにL−フコース16.4g、リン酸水素2ナトリウム2.0gおよび粉末セルロース(Fibra Cel BH−40、セライト・コーポレーション社)6.0gを混合し攪拌しながら130℃で加熱を行なった。加熱を5時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品6)を得た。
【0037】
実施例8
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用)
実施例7において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸ナトリウム1.0gを使用すること以外は実施例7と同じ条件で加熱を130℃で5時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品7)を得た。
【0038】
実施例9
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリとして炭酸水素ナトリウムを使用)
実施例7において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸水素ナトリウム1.5gを使用すること以外は実施例7と同じ条件で加熱を120℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品8)を得た。
【0039】
実施例10
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリとしてリン酸3ナトリウムを使用)
実施例7において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えてリン酸3ナトリウム5.4gを使用すること以外は実施例7と同じ条件で加熱を120℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品9)を得た。
【0040】
実施例11
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリとして炭酸カリウムを使用)
実施例7において、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸カリウム2.0gを使用すること以外は実施例7と同じ条件で加熱を120℃で2時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する甘い香気の油脂(本発明品10)を得た。
【0041】
比較例3
(6−デオキシヘキソースとしてL−フコース、アルカリは不使用)
実施例7において、リン酸水素2ナトリウムを使用しない以外は実施例7と同じ条件で加熱を130℃で8時間行うことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する油脂(比較品3)を得た。
【0042】
比較例4
(L−フコースの代わりにD−フルクトース、アルカリとして炭酸ナトリウムを使用)
実施例7において、L−フコース16.4gに代えてD−フルクトース18.0g、リン酸水素2ナトリウム2.0gに代えて炭酸ナトリウム1.0gを使用すること以外は実施例7と同じ条件で加熱を130℃で6時間行なうことにより、目的とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する油脂(比較品4)を得た。
【0043】
実施例12
本発明品6から10および比較品3から4に含まれる2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの濃度(ppm)をHPLC法にて測定した。分析結果を表2に示す。2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの定量方法は実施例6と同様の方法で行なった。
【0044】
【表2】

【0045】
実施例13(キャンディーへの配合)
本発明品1から5及び比較品1から2を下記処方のキャンディー基材に添加し、常法によりキャンディーを調製した。同様の処方で実施品無添加のキャンディーも調製した。
【0046】
キャンディー配合処方 (質量部)
グラニュー糖 600
水飴(75%) 520
水 150
クエン酸 5
着色料 1
本発明品又は比較品 1
収量 約1000
これらのキャンディーを専門パネラー10人により官能評価を行なった。その平均的な香味評価結果を表3に示す。
【0047】
【表3】

【0048】
表3に示したとおり、本発明品1から5は、比較品1または2に比べて、明らかにストロベリー様の甘さのある、良好な香気が強調されているとの評価であった。
【0049】
実施例14(キャンディーへの配合)
本発明品6から10及び比較品3から4を実施例13と同様の処方のキャンディー基材に添加し、常法によりキャンディーを調製した。同様の処方で実施品無添加のキャンディーも調製した。
これらのキャンディーを専門パネラー10人により官能評価を行なった。その平均的な香味評価結果を表4に示す。
【0050】
【表4】

【0051】
表4に示したとおり、本発明品6から10は、比較品3または4に比べて、明らかにストロベリー様の甘さのある、良好な香気が強調されているとの評価であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリの存在下、6−デオキシヘキソースを可食性油脂中で加熱することを特徴とする2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンの製造方法。
【請求項2】
アルカリがリン酸水素2ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸3ナトリウムおよび炭酸カリウムから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
アルカリが可食性油脂に対し0.1〜10質量%の範囲内である請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の製造方法で得られた2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−2,3−ジヒドロフラン−3−オンを含有する可食性油脂。
【請求項5】
請求項4で得られた可食性油脂を含有することを特徴とする飲食品。

【公開番号】特開2011−225492(P2011−225492A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98141(P2010−98141)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000214537)長谷川香料株式会社 (176)
【Fターム(参考)】