説明

2,6−ジメチルナフタレンの結晶大きさおよび結晶形状制御を通じた高純度分離および精製方法

本発明は2,6−ジメチルナフタレンの結晶形状と大きさの制御を通じた高純度分離・精製方法に関し、より詳しくは、2,6−ジメチルナフタレンが四角板状構造を形成するようにする溶媒を用いて結晶化を行う時に攪拌速度、冷却速度、溶媒と成分組成比などの結晶化操作変数を調節することにより、2,6−ジメチルナフタレンの形状および大きさを制御し、凝集現象を除去し、高純度の2,6−ジメチルナフタレン結晶を得る方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2,6−ジメチルナフタレンの結晶大きさおよび結晶形状を制御し、高純度に2,6−ジメチルナフタレンを分離・精製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンナフタレート(PolyEthylene Naphthalate;以下、「PEN」という)樹脂は、現在広く用いられているポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate、PET)樹脂より耐熱性、引張強度、衝撃強度、ガス遮断性などに優れた特性を有するため、繊維、特殊機能性ポリマー、耐熱瓶、フィルム、高分子液晶(Liquid crystal polymer)の原料としてよく知られている。このようなPEN樹脂を作るための原料として用いられる2,6−ナフタレンジカルボン酸(2,6−Naphthalene Dicarboxlic Acid;以下、「2,6−NDA」という)を製造する方法としては、2,6−ジメチルナフタレン(2,6−Dimethylnaphthalene;以下、「2,6−DMN」という)の酸化反応による2,6−NDAの製造方法が最もよく知られており、最も効果的な反応経路である。これにより、より効率的な2,6−DMNの製造方法に対する研究が持続的に求められてきた。2,6−DMNの酸化反応によって2,6−NDAを製造する場合、原料である2,6−DMNの純度によって生成物の品質が大きく影響を受け、微量の不純物が含まれている時、製造された2,6−NDAの物性、すなわち、色度などが大きく悪くなる。よって、2,6−NDAを製造するためには99重量%以上の純度を有する2,6−DMNが必要である。
【0003】
よく知られている2,6−DMNを製造する工程としては、オルト−キシレンとブタジエンを金属触媒(Na/K)存在下で反応させてオルト−トリルペンテンを作り、このオルト−トリルペンテンをゼオライト触媒を用いて環化反応させてジメチルテトラリンを作った後、ジメチルテトラリンの脱水素化反応によって1,5−ジメチルナフタレンを作る。このように作られた1,5−ジメチルナフタレンをゼオライト触媒下で異性化反応させて2,6−DMNを得る方法である。よって、上記一連の反応によって生成されたジメチルナフタレン混合物の中から2,6−DMNの分離を通じた精製過程は必須である。これは、現在まで知られた異性化反応によって得られた2,6−DMNの純度は20〜50重量%以下に転換されるためである。
【0004】
ジメチルナフタレン異性体の場合、沸点がほぼ262.0℃の近くに非常に近似し、一般的な蒸留によってはこの2つの物質を分離するのが非常に困難である。よって、2,6−DMNの分離には、低い回収量、高い純度を達成することに対する難しさ、および分離と精製における高費用の問題が必然的に伴われると知られている。現在、ジメチルナフタレン異性体の分離および精製に広く利用されている方法には、錯体生成を利用した分離法、吸着分離法、および分別再結晶法などがある。2,6−DMNを分離精製する方法と関連した従来技術を見てみれば次の通りである。
【0005】
分別再結晶法は、適当な溶媒を用いて結晶化−再結晶(crystallization−recrystallization)の過程を通じ、比較的に低い費用で2,6−ジメチルナフタレンを分離することができる。しかし、ジメチルナフタレンは一般的に共融混合物を形成すると知られている。例えば、2,6−ジメチルナフタレンと2,7−ジメチルナフタレンは41.5対58.5のモル比で二成分共融混合物を形成し、2,6−ジメチルナフタレンと2,3−ジメチルナフタレンは47.5対52.5のモル比で二成分共融混合物を形成する。理論的には、2,6−ジメチルナフタレンの生成量は物質組成に応じて決定されるため、再結晶法による通常的な2,6−ジメチルナフタレンの分離方法によっては高い分離生成率を得ることができない。また、分離過程が煩わしく、多くの時間がかかり、その最終純度が比較的に低いため、実用的な分離工程として検討された例は殆どなかった。
【0006】
ヨーロッパ特許公開公報EP 0 336 564 A1(1989年)には、原料であるナフタレン系混合物の前処理反応、蒸留、および加圧結晶の3ステップの工程からなる2,6−ジメチルナフタレンの分離方法が開示されているが、分離された2,6−ジメチルナフタレンの純度は98%以下であって、2,6−ナフタレンジカルボン酸の製造工程に用いられる純度の要件は満たしていない。
【0007】
大韓民国特許公開第2001−33746号では、ポリエチレンナフタレートの製造に用いられる2,6−DMNを、供給原料に存在する特定異性体に制限されることなく、一連の分画ステップ、結晶化ステップ、および吸着化ステップを通じ、DMN異性体混合物から高純度および高収率で2,6−DMNを製造する方法で、結晶化ステップを経た後、最終精製ステップとしてp−、o−キシレンに溶解させて2,6−DMNを吸着分離する工程を提案した。また、日本公開特許第1997−301900号では、DMNの異性化、結晶化によって2,6−DMNを析出させ、高純度の2,6−DMNを高収率で得、濾過性の良い好ましい2,6−DMN結晶を析出させ、高純度の2,6−DMNを工業的に有利に分離、回収する方法で、溶媒存在下でDMN異性化反応生成物から2,6−DMNを結晶化方法を通じて2,6−DMNを製造する方法を提案した。日本公開特許第1997−249586号には、DMN異性体混合物から結晶化によって2,6−DMNを析出させて得た高純度の2,6−DMNを長期間にかけて安定して所定以上の純度を維持できる工業的に有利な分離および回収する方法が開示されている。
【0008】
溶融結晶化方法は、米国特許第5,675,022号にスルザーケムテック(Sulzer Chemtech)装置を利用した溶融結晶化(dynamic melt crystallization)方法が提示されているが、強制対流方式は溶融液を冷却表面に液体膜形態で流れるようにしてなされる。しかし、このような方法は動的硬膜結晶化方法であって、多段結晶化(5ステップ)方法によって5回以上の結晶化を行わなければならず、付加装置が必要であるという短所がある。
【0009】
これらの方法中、結晶化による方法が最も簡単で、工業的な分離方法として好適であるとしているが、工程が複雑であり、収率が相対的に低く、高価な溶媒を用いるため、相対的に固定投資費用と生産費用が高いという問題がある。特に、結晶化を通じた分離工程を利用する場合も、詳しい言及はなく、単に冷却して結晶化する形態のものが大部分であり、結晶化工程よりは異性化工程や触媒を用いた吸着工程などに主眼をおいた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術では考慮したことのない2,6−DMNの結晶大きさと形状を制御し、より安価で連続的および工業的並びに効率的に2,6−ジメチルナフタレンを分離および精製する方法を提供しようとする。
【0011】
前述したように、従来技術は、結晶化方法は共通に利用しているが、結晶の純度に直接影響を及ぼす結晶の大きさおよび形態に関連した結晶製造条件に対しては考慮したことがない。本発明者らは、単に温度を下げて冷却結晶化する場合、鱗状の結晶が過量生成されて結晶が凝集する現象が発生し、不純物の精製が所望するほどなされず、溶液の粘度を大きくするため、濾過が難しく、表面に付着している母液の除去が非常に難しいということを発見した。このような理由により、従来の技術によって得られた2,6−ジメチルナフタレンの分離精製効率は非常に落ちる。
【0012】
そこで、本発明は、特定溶媒を用い、結晶化過程において、150〜300ミクロンの結晶粒子大きさを有し、四角板状に近い多面体形態の2,6−ジメチルナフタレン結晶を製造する条件を提供し、さらには、これを利用して2,6−ジメチルナフタレンに存在する他の異性体およびその他の不純物を同時に除去することができる精製方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明は、ジメチルナフタレンの異性体混合物から純度99.0重量%の2,6−ジメチルナフタレン結晶を分離・精製する方法であって、溶媒、結晶化温度、結晶化機の攪拌速度、および冷却速度を調節して結晶の形態を制御することを特徴とする2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法を提供する。
【0014】
本発明において、前記溶媒はメタノールまたはエタノールにすることが好ましい。
【0015】
本発明において、前記結晶化温度は−5〜−10℃に調節する。
【0016】
本発明において、前記結晶化機の攪拌速度は30〜100rpmに制御する。
【0017】
本発明において、前記冷却速度は0.01〜1℃/分に調節する。
【0018】
本発明において、前記結晶化機における結晶成長速度は1×10−7〜1×10−9m/sに調節することができる。
【0019】
本発明において、結晶化機には外部ジャケットがあり、外部ジャケットの温度を−30℃〜−5℃の範囲で調節することが好ましい。
【0020】
本発明において、ジメチルナフタレン異性体混合物と溶媒の重量組成は、2,6−DMNは0.5〜10%、エタノールは87〜98%、およびその他のDMN混合物は60%以内で調節することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、2,6−ジメチルナフタレンの結晶形状と粒子大きさの制御により、高純度の2,6−ジメチルナフタレンを1回の結晶化工程だけで純度99.0重量%以上に分離・精製する効果がある。また、本発明の2,6−DMNの分離および精製工程は、蒸留操作において利用する気化熱の約1/5である融解熱を利用するためにエネルギ―が節約され、単なる固液分離操作によって高純度の2,6−DMNを高収率に分離することができる。本発明は、分離および精製装置が簡単で、操業が単純で、固定投資費用と生産費用を低減させることができるので経済的にも有用な長所がある。また、溶液結晶化工程を付加的な工程で行い、高純度の2,6−DMNを効果的に分離できるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の結晶化法において、使用溶媒に応じた2,6−ジメチルナフタレン結晶形状を示す写真である。
【図2】エタノール溶媒、2,6−DMN、およびその他のDMN類の組成比に応じた結晶化において、2,6−ジメチルナフタレン結晶形状が四角板状構造を形成する領域を示す三成分系グラフである。
【図3】本発明による溶媒と原料物質の組成比(N1−N5)に応じた結晶化による2,6−ジメチルナフタレン結晶形状を示す写真である。
【図4】本発明の結晶化法において、攪拌速度に応じた2,6−ジメチルナフタレン結晶形状を示す写真である。
【図5】本発明の結晶化法において、結晶化温度に応じた2,6−ジメチルナフタレン結晶形状を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、2,6−ジメチルナフタレンは、ジメチルナフタレン異性体混合物と選択された溶媒を混合物の組成比に応じて溶媒を適切に混合し溶解するステップと、混合された混合物を連続的に結晶化機に移送し結晶化するステップと、適切な制御によって結晶化された2,6−ジメチルナフタレン結晶を母液から除去する分離ステップとからなる方法によって得られる。本発明の方法によれば、1回の結晶化だけで99.0重量%以上の高純度の2,6−ジメチルナフタレンを分離・精製することができる。
【0024】
一般的に結晶化工程において、結晶の形態は、使用目的により、その模様が多様に要求される重要な結晶特性中の一つである。また、結晶形状の制御は、多成分系において、特定な物質だけを高純度に分離できる重要な手段である。特に、類似沸点を有する異性体の分離精製において、結晶化工程は、蒸留やその他の分離工程で分離し難い問題を解決する優れた分離精製手段である。例えば、生産された結晶の取り扱いや包装を容易にするためには、粒子の流れ性を向上させるために特定の球形の結晶が要求され、場合によっては、特別な目的のために針状や板状の結晶が必要な時もある。このような結晶の形態は、結晶の大きさおよび結晶大きさ分布(crystal size distribution、CSD)と共に結晶化機の設計および運転において大変重要な問題である。よって、ほぼ全ての結晶化工程においては、結晶の形態を調節するために特定方法による結晶形態の変形が必要となる。
結晶の形態が結晶の外形的な模様だけを示すことであれば、晶癖は結晶の各面の成長速度差によってできる結晶の形態をいう。晶癖変化は結晶化において基本的な関心分野であり、これに対する研究が活発に進行されてきた。結晶は一部面の新しい形成や消滅によって内部構造が変わることなく外形的な模様が変わることができ、各結晶面の成長速度は色々な結晶化条件によって影響を受ける。このような晶癖変化に影響を及ぼす要素としては、溶媒の種類、溶液の特性、不純物の種類および含量、過飽和度の程度など、その他の色々な結晶化条件がある。本発明においては、2,6−DMN結晶の多成分系における晶癖変化に対して実験して観察し、結晶形状と晶癖変化および結晶化特性を調べてみた結果、高純度に分離・精製できる方法を見出した。
【0025】
本発明において、選択された溶媒を用いる結晶化方法は、結晶の核生成と結晶成長速度を調節して飽和溶液から結晶を生成させる方法であって、結晶の純度および粒度大きさを調節する方法として利用され、飽和溶液から過飽和を形成させる条件が重要な操業変数として作用する。結晶の純度は結晶化過程で生成された結晶に含まれている母液または不純物によって低下し、これは、結晶化過程で核生成や結晶成長速度などの結晶化特性を調節することによって最適化することができる。結晶成長速度が減少するほど、そして物質伝達速度が増加するほど、結晶の中に不純物が含まれることを減少させるため、結晶の純度は増加する。結晶の純度は結晶の形状によっても影響を受け、針状結晶の場合が多面体結晶の場合より純度が低い。これは、針状の場合が結晶の表面積が大きく、付着された母液の量が多面体の場合より大きく、また、結晶の凝集が起こりやすいので不純物の内包が容易に発生する。結晶の純度は結晶の大きさにも影響を受ける。結晶の大きさが小さいほど、結晶の表面積が増加し、結晶外部に付着された不純な母液を除去し難いため、母液を結晶と分離した後にも不純物が付着している可能性が大きいので精製工程をさらに追加しなければならない。
【0026】
結晶成長モデルによれば、結晶成長は拡散と表面反応で構成される。この2つの要因のどの因子に支配を受けるかに応じて適切な結晶成長変数を制御し、結晶の純度を増加させ、所望の大きさと形態および純度を有する結晶を得ることができる。結晶化工程において、このような結晶成長の要因を制御できる変数は、冷却速度、攪拌速度、組成の変化、および溶媒の使用量などである。一般的に、溶媒を用いた結晶成長においては、表面反応よりは拡散に支配を受ける。結晶化工程において、冷却速度、攪拌速度、溶媒の種類、および滞留時間は結晶の拡散を制御するための重要な変数である。このような変数を適切に調節することにより、2,6−DMN結晶形状を制御して高純度に得ることができる。
【0027】
本発明の方法において、結晶大きさは、溶液の初期飽和温度、攪拌速度、冷媒の温度、および結晶化機内の滞留時間などに依存する。結晶の粒子大きさは核生成速度に反比例し、結晶成長速度に比例する。よって、核生成速度の調節は結晶の総粒子数を調節することであり、結晶の粒度調節に非常に重要な条件である。よって、本発明においては、2,6−ジメチルナフタレン結晶の成長条件、粒子形状、および粒度大きさを調節して2,6−ジメチルナフタレン結晶を高純度化する連続結晶化分離精製方法を提示する。
【0028】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0029】
本発明の2,6−DMN結晶の製造方法によれば、原料槽に一定の流量で原料DMN混合物と溶媒を供給して溶解させ、スクレイプが取り付けられたジャケット型並流式結晶化機に連続的に供給する。溶媒に溶解された原料DMN混合物は、結晶化機ジャケットを流れる冷媒を調節して結晶化機内部で結晶として形成させると同時にスクレイプを回転させ、形成された結晶を浮遊形態で結晶化機の排出口に沿って固/液分離装置に移動させた後、固/液分離装置を介して精製して高純度2,6−DMNとして得る。
【0030】
前記原料DMN混合物はジメチルナフタレン異性体混合物であり、異性化工程から得られるDMNの10個異性体、高沸点および低沸点の炭化水素を含む混合物であって、2,6−DMN、1,6−DMN、1,5−DMN、およびその他の混合物が各々次の表1に示す含量で含まれている。
【0031】
【表1】

【0032】
混合物重量対比35〜45重量%の2,6−DMNが含まれている混合物原料は、結晶化機の入口温度50〜60℃で溶解され、スクレイプが取り付けられた結晶化機に注入される。結晶化機は、ジャケットの温度を−30℃に調節し、並流で循環させながら結晶化機の内部に結晶を形成させ、結晶化機に取り付けられた内部スクレイプを回転させ、生成された結晶を押し出して結晶を分離・精製する。このような方式により、スクレイプが取り付けられた冷却並流式結晶化機において、150−300ミクロン大きさの四角板状の2,6−DMN結晶を連続的に生産することができる。
【0033】
並流式結晶化機の内部は準安定領域に該当する部分と成長区間に区分され、冷却速度プログラミングを調節して核発生と結晶成長を単一反応器で同時に起こるようにする。結晶化機外部ジャケットの温度は−30℃以下にし、結晶化機の内部に結晶が生成されるようにする。
【0034】
製造された結晶を、準安定領域から過飽和温度までプログラミングによって冷却速度を調節することによって結晶成長速度を調節する。結晶成長速度は1×10−9〜1×10−7m/sが好ましい。結晶化機内において、2,6−DMNは、核生成と結晶成長を経て、結晶化機の出口温度−10〜−5℃に制御されて排出される。
【0035】
スクレイプを回転して内部に生成された結晶を押し出す時、スクレイプの回転速度は結晶の大きさを決定する操作変数として用いられる。本発明において、結晶化機のスクレイプ攪拌器の回転速度は30〜100rpmに維持することが好ましい。
【0036】
前記結晶化機から150〜300ミクロンの2,6−DMN結晶を連続的に製造し、製造された結晶は固/液分離装置を介して結晶表面に付着された不純溶液を除去し、高純度の2,6−ジメチルナフタレンが得られる。
【0037】
本発明の長所は、2,6−DMN結晶の結晶成長速度を調節することによって結晶大きさおよび結晶形状を調節することができ、さらには、2,6−DMNに含まれた不純物を容易に除去して精製することができるという点である。結晶化速度は冷媒の温度、注入流量、および溶媒との混合比を調節することによって調節することができ、結晶化速度を調節して四角板状に近い粒子を得ることができる。
【0038】
以下、本発明の2,6−DMNの分離・精製方法を好ましい実施形態と共により詳しく説明する。
【0039】
1.本発明の結晶形状制御のための溶媒の選定
【0040】
本発明の結晶の形状制御を通じた高純度分離・精製方法では、結晶の固有晶癖を変化させて分離するので溶媒の選定が重要である。特定溶媒においては、一定の結晶形状に維持され分離されるために高純度の物質を分離することができる。溶媒は結晶化工程において溶解度と直結し、また、純度および収率にも影響を与えるだけでなく、晶癖にも変化を与え、特定形状の結晶に成長させるようにする。このような晶癖を利用して高純度の結晶を分離・精製することができる。よって、溶媒の選択は高純度の結晶を得るための重要な因子である。
【0041】
先ず、溶解度を実験して選択した溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、ヘキサン、ヘプタン、アセトン、トルエン、オルト−キシレン、メタ−キシレン、パラ−キシレン、およびジメチルテトラリンである。本発明では、このような溶媒中、特定な結晶形態に成長する溶媒を選択して結晶化に用いることによって高純度の結晶を得ることができた。
【0042】
溶媒に応じた結晶形状は図1に示し、結晶形状の制御を通じた分離程度を示す純度変化は表2に示す。図1に示すように、エタノールとメタノールにおいて、四角板状構造の150〜500ミクロン大きさを有する結晶が成長し、高純度に分離できるということが分かる。
【0043】
【表2】

【0044】
2.本発明の結晶形状制御のためのDMN混合物原料の組成比
【0045】
DMN混合物原料の組成比は、結晶の形状、純度、収率、および経済性と直結する重要な変数である。溶媒エタノール、2,6−DMN、およびその他のDMN混合物との3成分系グラフを図2に示す。図2から分かるように、3成分の組成比が、2,6−DMN0.5〜10%、エタノール87〜98%、およびその他のDMN混合物類0〜60%以内である場合にのみ、四角板状の構造を有するために高純度に分離・精製されることを発見した。エタノールを溶媒として用いて結晶化する場合、四角板状の結晶として99.0重量%以上の高純度の2,6−DMNを得ることができる溶媒の混合比率範囲を探した。
【0046】
図3と表3には、冷却速度0.75℃/min、攪拌速度100rpmの条件下、−10℃で結晶化する条件において、混合物の組成比に対する影響を検討した。溶媒の組成比が増加すれば純度は高まるが、結晶の収率は相対的に減少する。溶媒の比重が高まれば相対的に分散密度(suspension density)が減少するために凝集が起こらず、また、結晶の大きさも小さい形態で成長することが分かる。凝集が起これば、結晶と結晶との間に溶媒が含まれ、他の不純物が捕獲され、純度を低下させる。よって、純度および収率を考慮して、適切な溶媒を用いて結晶化を行い、結晶形状を制御することによって高純度の結晶を得ることができる。
【0047】
表3において、組成比(N)はエタノール:2,6−DMN:その他のDMN類を含む不純物の比を意味する。各々、N1=83:7:10、N2=89:4:7、N3=92:3:5、N4=95:2:3、およびN5=92:1:2の組成比で混合された混合物である。
【0048】
【表3】

【0049】
3.本発明の結晶大きさの制御に及ぼす攪拌速度の影響
【0050】
形状制御領域は、結晶大きさにより、不純物を含むために結晶の純度を低下させる場合が発生する。よって、結晶大きさの制御も重要な変数である。
【0051】
2,6−DMN回分式冷却結晶化機において、攪拌速度は非常に重要な変数である。攪拌速度は、結晶化工程中、結晶化機全体において均一に過飽和が形成されるようにする。すなわち、結晶化工程の間、溶液内で溶質分子の均一な分布と無視できるほどの温度勾配を維持させる。その上、バルク溶液内で均一な固体浮遊密度を維持させ、結晶が均一に成長するための均一表面積を提供する。結晶化機内で局部的に過飽和が高ければ自発的な核生成が初期に引き起こされ、これは、平均大きさが小さい結晶の生成を誘発し、全体的に結晶の粒度分布を広くする結果を招く。よって、結晶の純度に影響を及ぼす。図4と表4は、注入組成2,6−DMNの含量が40.3重量%、結晶化温度0℃、溶媒比=20(DMN混合物に対するエタノールの比)、冷却速度=0.75K/minの条件において、攪拌速度に対する影響を検討したものである。表4と図4の(a)−(e)によれば、攪拌速度が低いほど純度が良い。特に無攪拌の場合が純度が最も良く、これは、核生成がより低い温度で起こり、また、攪拌をしないため、板状に生成される結晶が細かく砕けないためであると見られる。100rpm以上では攪拌速度が純度と収率に大きく影響を与えないと見られ、これは、2,6−DMNの結晶化工程においては大きい変数として作用しないと考えられる。
【0052】
攪拌速度に応じて得られた結晶の形状変化を見てみれば、攪拌速度が速くなれば結晶の大きさは小さくなり、砕けると見られる。これは、攪拌による板状構造の結晶が砕けてできたことであり、純度を低下させる原因でもある。
【0053】
攪拌速度30〜100rpmで結晶化することによって砕けることを防ぎ、DMN結晶が四角形の板状構造を維持し成長するようにすることによって高純度のDMNを得ることができる。
【0054】
【表4】

【0055】
4.本発明の結晶化に及ぼす冷却速度の影響
【0056】
冷却結晶化機において、冷却速度は過飽和を制御する最も一般的な方法である。過飽和度は、結晶の核生成と成長を決定する重要な変数である。表5は、注入組成41.2重量%、溶媒比20、攪拌速度100rpmの条件下において、冷却速度に対する影響を検討したものである。表から分かるように、冷却速度が速くなれば結晶の純度は減少した。これは、冷却速度が速くなれば、結晶の中に不純物が多く含まれるためである。しかし、相対的に収率は冷却速度に大きく影響を受けない。これは、結晶化は、結晶化温度に起因する関数の影響が大きいためであると思われる。
【0057】
【表5】

【0058】
5.本発明の結晶化に及ぼす結晶化温度の影響
【0059】
冷却結晶化工程において、純度と収率に対する最も大きい変数は冷却に応じた温度変数である。注入組成45重量%、冷却速度0.75℃/min、攪拌速度100rpm、溶媒比20の条件において、各々結晶化温度に応じた純度と収率を測定し、その結果を図5および表6に示す。結晶化温度が低くなれば、結晶の形状は砕けられ、相対的に小さい結晶の凝集現象を示す。よって、凝集による純度の低下が引き起こされることが分かった。
【0060】
【表6】

【0061】
以上、本発明の記載された具体的な例についてのみ詳細に説明したが、本発明の技術範囲内での様々な変形および修正が可能であるということは当業者であれば明らかであり、このような変形および修正が添付された特許請求の範囲に属するのは当然のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジメチルナフタレンの異性体混合物から純度99.0重量%以上の2,6−ジメチルナフタレン結晶を分離・精製する方法であって、溶媒、結晶化温度、結晶化機の攪拌速度、および冷却速度を調節して結晶の形態を制御することを特徴とする2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項2】
前記溶媒はメタノールまたはエタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項3】
前記結晶化温度は−5〜−10℃に調節することを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項4】
前記結晶化機の攪拌速度は30〜100rpmに制御することを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項5】
前記冷却速度は0.01〜1℃/分であることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項6】
前記結晶化機における結晶成長速度は1×10−7〜1×10−9m/sであることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項7】
結晶化機には外部ジャケットがあり、外部ジャケットの温度を−30℃〜−5℃の範囲で調節することを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項8】
ジメチルナフタレン異性体混合物と溶媒の重量組成は、2,6−DMNは0.5〜10%、エタノールは87〜98%、およびその他のDMN混合物は60%以内であることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。
【請求項9】
前記結晶は四角板状であり、その大きさが150〜300ミクロンであることを特徴とする、請求項1に記載の2,6−ジメチルナフタレンの分離・精製方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−536940(P2010−536940A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522827(P2010−522827)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005684
【国際公開番号】WO2009/054618
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(510053444)ヒョスン コーポレーション (6)
【Fターム(参考)】