説明

2H−ピラノ[3,2−c]ピリジン−5(6H)−オン誘導体

【課題】カルシウムシグナル伝達阻害作用等を有し、例えば抗腫瘍剤、免疫抑制剤、抗菌剤等として有用な2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体の提供。
【解決手段】下記式(I)(式中、R1およびR2は置換基)で表される2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩等に関する。
【背景技術】
【0002】
2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン骨格をその構造中に有する化合物としては、例えば下記の化合物等が知られている(特許文献1および非特許文献1〜6参照)。
【0003】
【化1】

【特許文献1】欧州特許出願公開259811号明細書
【非特許文献1】「ケミカル・コミュニケーションズ(Chemical Communications)」、2003年、第15巻、p.1868-1869
【非特許文献2】「ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ、パーキン・トランスアクションズ1:オーガニック・アンド・バイオオーガニック・ケミストリー(Journal of the Chemical Society, Perkin Transactions 1: Organic and Bio-Organic Chemistry)」、1980年、第2巻、p.522-528
【非特許文献3】「ケミカル&ファーマシューティカル・ブルティン(Chemical & Pharmaceutical Bulletin)」、1979年、第27巻、p.242-246
【非特許文献4】「ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサエティ、ケミカル・コミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society, Chemical Communications)」、1977年、第24巻、p.916-917
【非特許文献5】「カナディアン・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Canadian Journal of Chemistry)」、1976年、p.270-274
【非特許文献6】「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters)」、1973年、第52巻、p.5173-5176
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、例えばカルシウムシグナル(Ca2+シグナル)伝達阻害作用を有し、例えば抗腫瘍剤、免疫抑制剤、抗菌剤等として有用な2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)〜(8)に関する。
(1) 式(I)
【化2】

(式中、R1およびR2は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表される2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩。
【0006】
(2) R1およびR2が同一または異なって、水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルである上記(1)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩。
(3) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬品。
(4) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するカルシウムシグナル伝達に作用する薬剤。
(5) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するカルシウムシグナル伝達阻害剤。
【0007】
(6) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
(7) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する免疫抑制剤。
(8) 上記(1)または(2)記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗菌剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、例えばカルシウムシグナル伝達阻害作用を有し、例えば抗腫瘍剤、免疫抑制剤、抗菌剤等として有用な2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩等が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、一般式(I)で表される化合物を化合物(I)という。他の式番号の化合物についても同様である。
一般式(I)の各基の定義において、
(i) 低級アルキルおよび低級アルカノイルの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜10のアルキルがあげられ、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル等があげられる。
【0010】
(ii) 低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルケニルがあげられ、具体的にはビニル、アリル、1−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル等があげられる。
(iii) 低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜10のアルキニルがあげられ、具体的にはエチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等があげられる。
【0011】
(iv) アラルキルのアリール部分としては、例えば炭素数6〜10のアリールがあげられ、アラルキルのアルキレン部分としては、例えば炭素数1〜5のアルキレンがあげられ、アラルキルとしては具体的には例えばベンジル、フェネチル等があげられる。
(v) 置換低級アルキル、置換低級アルカノイル、置換低級アルケニルおよび置換低級アルキニルにおける置換基(A)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の置換基があげられ、具体的にはハロゲン、ヒドロキシ、ニトロ、アミノ、シアノ、カルボキシ、ホルミル、置換もしくは非置換の低級アルコキシ等があげられる。
置換基(A)で例示した置換低級アルコキシにおける置換基(a)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の置換基があげられ、具体的にはハロゲン等があげられる。
置換基(A)および置換基(a)で例示したハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味し、低級アルコキシは前記と同義である。
【0012】
(vi) 置換アラルキルにおける置換基(B)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の置換基があげられ、具体的には置換基(A)で例示した置換基、置換もしくは非置換の低級アルキル等があげられる。
置換基(B)で例示した置換低級アルキルにおける置換基(b)としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の置換基があげられ、具体的にはヒドロキシ、ハロゲン等があげられる。
置換基(b)で例示したハロゲンは前記と同義である。
【0013】
化合物(I)の中には、例えば幾何異性体、光学異性体、互変異性体等の立体異性体が存在し得るものもあるが、本発明は、これらを含め、全ての可能な異性体およびそれらの混合物を包含する。
化合物(I)の光学活性体としては、例えば鏡像異性体(エナンチオマー)、ジアステレオ異性体(ジアステレオマー)等の光学活性体、これらの混合物等があげられる。
化合物(I)もしくはその光学活性体の薬理学的に許容される塩は、例えば薬理学的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等を包含する。化合物(I)の薬理学的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩等があげられ、薬理学的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理学的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理学的に許容される有機アミン付加塩としては、例えばモルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理学的に許容されるアミノ酸付加塩としては、例えばリジン、グリシン、フェニルアラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の付加塩があげられる。
【0014】
本発明の化合物(I)により阻害される「カルシウムシグナル(Ca2+シグナル)伝達」の経路としては、下記の伝達経路(バイオサイエンス,バイオテクノロジー,アンド・バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)、第64巻、p.1942-1946(2000年);ネーチャー(Nature)、第393巻、p.303-306(1998年);日本農芸化学会誌、第76巻、p.38(2002年);エンボ・ジャーナル(ENBO J. 第20巻、p.1074-1085(2001年))があげられ、「カルシウムシグナル伝達」を阻害するものであれば、特に制限されない。本発明の化合物(I)による「カルシウムシグナル伝達」の阻害とは、例えばこれらの経路における「カルシウムシグナル伝達」に関わる、ひとつ以上の分子標的に作用することを意味する。
【0015】
【化3】

【0016】
該分子標的としては、例えば上記の*で示した部位があげられ、より具体的にはカルシニューリン(Calcineurin)、MAPキナーゼ(MAPK:Mitogen-Activated Protein Kinase)カスケード、プロテインキナーゼC、GSK-3(GSK-3:Glycogen Synthase Kinase 3)ファミリープロテインキナーゼ(エンボ・ジャーナル(ENBO J. 第20巻、p.1074-1085(2001年))、ヒートショックプロテイン90(Hsp90:Heat shock protein 90)(日本分子生物学会第24回年会要旨集(2001年度 3P-383))等の部位があげられる。つまり、本発明の化合物(I)は、例えばカルシニューリン阻害剤、MAPKカスケード阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、GSK-3ファミリープロテインキナーゼ阻害剤、Hsp90阻害剤等のカルシウムシグナル伝達に作用する薬剤として有用であると考えられる。
【0017】
次に化合物(I)の製造法について説明する。
化合物(I)は、公知の方法[例えば、コンプリヘンシブ・オーガニック・トランスフォーメーションズ第二版(Comprehensive Organic Transformations, second edition)、ラロック(R. C. Larock)著、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ・インコーポレイテッド(John Wiley & Sons Inc.)(1999年)等に記載の方法またはそれらに準じた方法]により、得ることができる。
【0018】
上記製造法における中間体および目的化合物は、有機合成化学で常用される分離精製法、例えば、濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。また、中間体においては特に精製することなく次の反応に供することも可能である。
本発明の化合物(I)もしくはその光学活性体の薬理学的に許容される塩を取得したいとき、化合物(I)もしくはその光学活性体が塩の形で得られるときはそのまま精製すればよく、また遊離の形で得られるときは、化合物(I)もしくはその光学活性体を適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて単離、精製すればよい。
また、本発明の化合物(I)もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これらの付加物も上記化合物またはその薬理学的に許容される塩に包含される。
【0019】
本発明によって得られる化合物の具体例を下記に示す。
【化4】

【0020】
次に、化合物(I)の代表的な化合物の薬理作用について、試験例により説明する。
試験例1:カルシウムシグナル伝達阻害作用
Ca2+感受性の高い酵母変異株は、高濃度のCaCl2を培地に加えた場合、Ca2+シグナル伝達経路が高活性化される。その結果、酵母細胞は細胞周期 G2期でその増殖を停止する(ネーチャー(Nature)、第393巻、p.303-306(1998年))。この状態にある酵母に対して、Ca2+シグナル伝達阻害作用のある物質を添加すると、その酵母に細胞増殖能が賦与される。
本試験は、この機構を利用したポジティブスクリーニング系として確立された、例えばバイオサイエンス,バイオテクノロジー,アンド・バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)、第64巻、p.1942-1946(2000年);日本農芸化学会誌、第76巻、p.38(2002年)等に記載の方法に準じて実施した。該方法は、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae変異株(Δzds1Δsyr1)を用いて、Ca2+の作用により酵母細胞の増殖が阻害されている酵母に増殖能を賦与する物質をスクリーニングする方法である。つまり、該方法において、Ca2+シグナル伝達阻害作用を有する化合物は、酵母細胞を増殖させるものとして評価することができる。
【0021】
実験操作:
1%軟寒天および170 mmol/L CaCl2を含むYPD培地(DIFCO社製)に、出芽酵母Saccharomyces cerevisiae変異株(Δzds1Δsyr1:Swe1転写を負に制御する因子zds1および細胞膜エルゴステロールの生合成遺伝子 ERG1/SYR1 を破壊した株、バイオサイエンス,バイオテクノロジー,アンド・バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)、第64巻、p.1942-1946(2000年))、あるいは本変異株にさらなる変異を導入した薬剤高感受性変異株(Δzds1Δsyr1Δpdr1Δpdr3: 多剤耐性機能に関連する遺伝子発現を制御する主要な転写因子の遺伝子 PDR1、PDR3を破壊した株、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.)、第277巻、p.28810-28814(2002年))を、1×105 cells/mLの濃度になるように懸濁した。該懸濁液をプレートに播種した後、固めて寒天培地を作成した。該寒天培地上に、YCM1008Aの2.5 nmol/μLメタノール溶液の1μL(2.5 nmol/spot)または2μL(5 nmol/spot)をスポットし、28 ℃で2日間培養した。カルシウムシグナル伝達阻害活性を、出芽酵母の細胞増殖を示す生育円の大きさにより評価した。
【0022】
結果:
YCM1008Aをスポットした結果、表1に示すように、Δzds1Δsyr1株、Δzds1Δsyr1Δpdr1Δpdr3株のいずれにおいても、生育円、あるいは生育円および中心部に阻止円を持つ、ドーナツ状の増殖円が観察され、明瞭な細胞増殖が認められた。つまり、これら化合物の添加により、カルシウム伝達が著しく阻害された。また濃度によって観察された中心部での阻止円は、これら化合物が合わせて抗菌活性を有することも示している。
【0023】
【表1】

表中の数字は増殖円の直径をミリメートル(mm)単位で表し、括弧内は中心部の阻止円の直径をミリメートル(mm)単位で表す。
【0024】
本試験で使用したスクリーニング系において、例えばカルシニューリンを分子標的とすることが知られているFK506、サイクロスポリンA等の免疫抑制剤を有効に評価できることが知られている(バイオサイエンス,バイオテクノロジー,アンド・バイオケミストリー(Biosci. Biotechnol. Biochem.)、第64巻、p.1942-1946(2000年))。また、上記のスクリーニング系の原理から、例えばカルシニューリン、MAPKカスケード、プロテインキナーゼC、GSK-3ファミリープロテインキナーゼ等を阻害する免疫抑制剤、抗腫瘍剤、II型糖尿病、アルツハイマー病等のスクリーニング系として有効であると考えられている(日本農芸化学会誌、第76巻、p.734-735(2002年))。
一方、抗腫瘍剤として知られているラディシコール(radicicol)がタンパク質のシャペロンであるHsp90のATP結合部位に結合してその機能を阻害することによりその活性を示すこと(キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、第59巻、p.2931-2938(1999年))、および本試験で使用したスクリーニング系において、ラディシコールが有効に評価できたことが報告されている(日本分子生物学会第24回年会要旨集(2001年度 3P-383))。このことから、Hsp90阻害剤のスクリーニング系としても有効であると考えられている(日本分子生物学会第24回年会要旨集(2001年度 3P-383))。
【0025】
以上のことから、YCM1008A等の化合物(I)は、カルシウムシグナル伝達阻害剤として有効であることが判明した。つまり、YCM1008A等の化合物(I)は、カルシニューリン阻害剤、MAPKカスケード阻害剤、プロテインキナーゼC阻害剤、GSK-3ファミリープロテインキナーゼ阻害剤、Hsp90阻害剤等のカルシウムシグナル伝達に作用する薬剤として有効であることが判明した。また、YCM1008A等の化合物(I)は、例えば免疫抑制剤、抗腫瘍剤、II型糖尿病の治療剤、アルツハイマー病の治療剤等として有効であることが示唆された。さらに、YCM1008A等の化合物(I)は、抗菌剤として有効であることが判明した。
【0026】
化合物(I)もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩は、そのまま単独で投与することも可能であるが、通常各種の医薬製剤として提供するのが望ましい。また、それら医薬製剤は、動物または人に使用されるものである。
本発明に係わる医薬製剤は、活性成分として化合物(I)もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を単独で、または任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される1種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0027】
投与経路としては、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内などの非経口をあげることができる。
投与形態としては、例えば錠剤、注射剤などがあげられる。
経口投与に適当な、例えば錠剤などは、乳糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉などの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ヒドロキシプロピルセルロースなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造することができる。
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体などを用いて注射用の溶液を調製する。
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤および希釈剤、防腐剤、フレーバー類などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0028】
化合物(I)もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩は、上記の目的で用いる場合、通常、全身的または局所的に、経口または非経口の形で投与される。投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度などにより異なるが、通常経口の場合、成人1人あたり、1回につき0.1〜1000mg、好ましくは1〜100mgの範囲で、1日1回または数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、通常成人1人当り0.05〜1000mg、好ましくは0.5〜300mgを1日1回または数回投与するか、または1日1〜24時間の範囲で静脈内に持続投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0029】
続いて、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において、各種機器データの測定、分離精製は以下の条件を用いて行った。
1. 1H-NMRスペクトルおよび13C-NMRスペクトル
BRUKER AVANCE 600 、JEOL AL 400 の各スペクトルメーターを用いた。
内部標準にはテトラメチルシランを用いた。
2. マススペクトル
JEOL JMS-SX102A 、GC-mateII の各スペクトルメーターを用いた。
3. 薄層クロマトグラフィー
Merck 社製Silica gel 60 F254 (Art. 5715) を用い、可視化にはUVランプ(254 nm, 365 nm) および、リンモリブデン酸ナトリウムn水和物 - エタノール溶液、p-アニスアルデヒド - 酢酸 - 硫酸 - エタノール溶液、2,6-ジクロロフェノール - インドフェノールナトリウムn水和物 - エタノール溶液を用いた。
4. シリカゲルカラムクロマトグラフィー
(株) 富士シリシア化学社製シリカゲルBW-820MH を用いた。
5. 比旋光度
JASCO DIP-360 旋光度計を用いた。
6. 融点
Yanaco MP-S3 融点測定装置を用いた。補正はおこなっていない。
以下の実施例において、Me、Et、Bu、Allyl、Boc、TMS及びSEはそれぞれメチル、エチル、ブチル、アリル、tert-ブトキシカルボニル、トリメチルシリル及び2-(トリメチルシリル)エチルを表す。
【実施例1】
【0030】
YCM1008(1)の合成
工程1:化合物 3 の合成
【化5】

【0031】
窒素雰囲気下、マロン酸 (2) 6.63 g (63.7 mmol) とアリルアルコール 3.36 g (57.9 mmol) をアセトニトリル 95.0 ml に溶解し、-20 ℃ にてジシクロヘキシルカルボジイミド 13.1 g (63.5 mmol) のアセトニトリル溶液 50.0 ml を滴加し、室温まで昇温させながら18 時間撹拌した。減圧下濃縮したのち、残留物をジエチルエーテルで希釈し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮したのち、酢酸エチル 20.0 ml と飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 50.0 ml を加え、分液操作をおこなった。水層を酢酸エチル 20.0 ml で洗浄したのち、酢酸エチル 140 ml および濃塩酸 20.0 ml を加え、分液操作をおこない、酢酸エチル 140 ml で2 回抽出した。合わせた有機層を減圧下濃縮し、無色油状物質としてハーフエステル 6.12 g (42.5 mmol, 収率 73.4%) を得た。
【0032】
窒素雰囲気下、ハーフエステル 3.86 g (26.8 mmol) とN-メトキシアミン塩酸塩 2.68 g (32.1 mmol) をジクロロメタン 40.0 ml に溶解し、氷冷下にてトリエチルアミン 8.20 ml (58.8 mmol) を加え、30 分間撹拌した。ジシクロヘキシルカルボジイミド 6.64 g (32.2 mmol) と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール一水和物 4.35 g (32.2 mmol) のジクロロメタン溶液 40.0 ml を滴加し、室温まで昇温させながら16 時間撹拌した。減圧下濃縮したのち、残留物をジエチルエーテルで希釈し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (140 g, トルエン - 酢酸エチル 1 : 1) により精製し、無色油状物質として化合物 3 を得た。収量 4.65 g (26.8 mmol, 収率 100%)
Rf値 : 0.50 (トルエン - アセトン 2 : 1)
HRFAB-MS (m/z) : 174.0764 [M+H]+ ; calcd. for C7H12NO4 : 174.0766
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 3.38 (2H, s), 3.78 (3H, s), 4.64 (2H, d, J = 6.0 Hz), 5.27 (1H, d, J = 11.0 Hz), 5.34 (1H, d, J = 17.0 Hz), 5.90 (1H, ddt, J = 6.0, 11.0 & 17.0 Hz), 9.65 (1H, br s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 39.8, 64.5, 66.4, 119.4, 131.0, 162.8, 168.3
【0033】
工程2:化合物 4 の合成
【化6】

【0034】
窒素雰囲気下、化合物 3 3.21 g (18.5 mmol) をジクロロメタン 65.0 ml に溶解し、氷冷下にてトリエチルアミン 2.80 ml (20.1 mmol)、4-ジメチルアミノピリジン 226 mg (1.85 mmol) を加えたのち、二炭酸ジ-tert-ブチル 4.30 ml (18.7 mmol) を滴加し、30 分間静置した。減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (150 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 5 : 1) により精製し、無色油状物質として化合物 4 を得た。収量 5.05 g (18.5 mmol, 収率 99.8%)
Rf値 : 0.42 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 2 : 1)
HRFAB-MS (m/z) : 274.1286 [M+H]+ ; calcd. for C12H20NO6 : 274.1291
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 1.55 (9H, s), 3.80 (3H, s), 3.85 (2H, s), 4.63 (2H, ddd, J = 1.0, 1.0 & 6.0 Hz), 5.24 (1H, ddt, J = 1.0, 3.0 & 11.0 Hz), 5.33 (1H, ddt, J = 1.0, 3.0 & 17.0 Hz), 5.89 (1H, ddt, J = 6.0, 11.0 & 17.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 27.9, 44.8, 63.4, 66.0, 85.2, 118.7, 131.5, 150.6, 163.5, 166.5
【0035】
工程3:化合物 8 の合成
【化7】

【0036】
アルゴン雰囲気下、化合物 6 25.4 g (197 mmol) をテトラヒドロフラン 380 ml に溶解し、-78 ℃ にて2.66 mol/l n-ブチルリチウム - n-ヘキサン溶液 78.0 ml (207 mmol) を滴加し、30 分間撹拌した。同温にて酪酸クロリド (7) 23.0 ml (220 mmol) を滴加し、30 分間撹拌した。酢酸 12.0 ml (210 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 24.0 ml を加えたのち、減圧下濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (1.20 kg, n-ヘキサン - 酢酸エチル 4 : 1) により精製し、無色油状物質として化合物 8 を得た。収量 39.2 g (197 mmol, 収率 100%)
Rf値 : 0.32 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 4 : 1)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) : δ (ppm) 0.87 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.92 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.98 (3H, t, J = 8.0 Hz), 1.70 (2H, m), 2.37 (1H, dqq, J = 4.0, 7.0 & 7.0 Hz), 2.83 (1H, ddd, J = 7.0, 8.0 & 17.0 Hz), 2.97 (1H, ddd, J = 7.0, 8.0 & 17.0 Hz), 4.20 (1H, dd, J = 3.0 & 9.0 Hz), 4.26 (1H, dd, J = 9.0 & 9.0 Hz), 4.43 (1H, ddd, J = 3.0, 4.0 & 9.0 Hz)
【0037】
工程4:化合物 9 の合成
【化8】

【0038】
アルゴン雰囲気下、化合物 8 22.7 g (114 mmol) をテトラヒドロフラン 340 ml に溶解し、-78 ℃ にて1.90 mol/l ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド - n-ヘキサン溶液 66.0 ml (125 mmol) を滴加し、30 分間撹拌した。同温にてヨードメタン 22.0 ml (353 mmol) を滴加し、2 時間撹拌した。酢酸 7.20 ml (126 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 15.0 ml を加えたのち、減圧下濃縮し、酢酸エチル 120 ml と水 70.0 ml を加え、分液操作をおこなった。酢酸エチル 120 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (1.20 kg, トルエン - クロロホルム 3 : 2) により精製し、淡黄色油状物質として化合物 9 10.2 g (47.8 mmol, 収率 42.0%) 、ジアステレオ混合物として 12.9 g (60.5 mmol, 53.1%) を得た。
Rf値 : 0.35 (トルエン - クロロホルム 1 : 1)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) : δ (ppm) 0.87 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.90 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.92 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.20 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.43 (1H, ddq, J = 7.0, 7.0 & 14.0 Hz), 1.75 (1H, ddq, J = 7.0, 7.0 & 14.0 Hz), 2.35 (1H, dqq, J = 4.0, 7.0 & 7.0 Hz), 3.66 (1H, ddq, J = 7.0, 7.0 & 7.0 Hz), 4.19 (1H, dd, J = 3.0 & 9.0 Hz), 4.26 (1H, dd, J = 9.0 & 9.0 Hz), 4.45 (1H, ddd, J = 3.0, 4.0 & 9.0 Hz)
【0039】
工程5:(R)-(+)-2-メチル-1-ブタノール (10) の合成
【化9】

【0040】
窒素雰囲気下、化合物 9 10.0 g (46.9 mmol) をテトラヒドロフラン 200 ml に溶解し、氷冷下にて水素化リチウムアルミニウム 5.36 g (141 mmol) を加え、1 時間撹拌した。テトラヒドロフラン水溶液 (テトラヒドロフラン - 水 1 : 1) 18.0 ml 、5.00 mol/l 水酸化ナトリウム水溶液 4.30 ml を加えたのち、セライトにてろ過した。ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (100 g, ジクロロメタン - ジエチルエーテル 8 : 1) により精製し、無色油状物質として(R)-(+)-2-メチル-1-ブタノール (10) を得た。収量 4.10 g (46.5 mmol, 収率 99.2 %)
Rf値 : 0.32 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 3 : 1)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) : δ (ppm) 0.90 (3H, t, J = 7.0 Hz), 0.91 (3H, d, J = 8.0 Hz), 1.14 (1H, ddq, J = 7.0, 7.0 & 14.0 Hz), 1.44 (1H, ddq, J = 7.0, 7.0 & 14.0 Hz), 1.53 (1H, m), 3.42 (1H, dd, J = 7.0 & 10.0 Hz), 3.51 (1H, dd, J = 7.0 & 10.0 Hz)
【0041】
工程6:化合物 11 の合成
【化10】

【0042】
窒素雰囲気下、(R)-(+)-2-メチル-1-ブタノール (10) 4.10 g (46.5 mmol) をジクロロメタン 35.0 ml に溶解し、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル,フリーラジカル 730 mg (4.67 mmol)、臭化カリウム 1.10 g (9.24 mmol) を加えたのち、氷冷下にて炭酸水素ナトリウム 5.85 g (69.6 mmol)、5.00% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液 83.0 ml (55.7 mmol) を加え、30 分間撹拌した。ジクロロメタン 40.0 ml を加え、分液操作をおこなったのち、ジクロロメタン 50.0 ml で2 回抽出した。合わせた有機層を1.00 mol/l 塩酸 20.0 ml 、10.0% よう化カリウム水溶液 10.0 ml 、10.0% チオ硫酸ナトリウム水溶液 10.0 ml にて順次洗浄し、硫酸ナトリウムにて乾燥したのち、減圧下濃縮し、次の反応に用いた。
窒素雰囲気下、塩化クロム(III) 31.3 g (223 mmol) をテトラヒドロフラン 350 ml に溶解し、氷冷下にて水素化リチウムアルミニウム 4.20 g (111 mmol) を加え、室温にて2 時間撹拌した。氷冷下にて先に合成したアルデヒドとヨードホルム 36.6 g (93.0 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 100 ml を滴下し、室温にて5 時間撹拌した。氷冷下にて水 20.0 ml を加えたのち、減圧下濃縮し、n-ヘキサン 200 ml と水 80.0 ml を加え、分液操作をおこなった。n-ヘキサン 100 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (100 g, n-ヘキサン) により精製し、無色油状物質として化合物 11 を得た。収量 3.22 g (15.3 mmol, 収率 33.0%)
Rf値 : 0.95 (n-ヘキサン)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz) : δ (ppm) 0.87 (3H, t, J = 7.0 Hz), 0.99 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.33 (2H, dq, J = 7.0 & 7.0 Hz), 2.08 (1H, ddtq, J = 1.0, 7.0, 7.0 & 8.0 Hz), 5.95 (1H, dd, J = 1.0 & 14.5 Hz), 6.40 (1H, dd, J = 8.0 & 14.5 Hz)
【0043】
工程7:化合物 13 の合成
【化11】

【0044】
アルゴン雰囲気下、2-プロピン-1-オール (12) 948 mg (16.9 mmol) を水素化トリ-n-ブチルすず 5.80 ml (22.1 mmol) に溶解し、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) 140 mg (0.853 mmol) を加え、80 ℃ にて3 時間撹拌した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (200 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 10 : 1) により精製し、無色油状物質としてヒドロすず体 3.58 g (10.3 mmol, 収率 61.0%) を得た。
窒素雰囲気下、ヒドロすず体 11.3 g (32.6 mmol) をn-ヘキサン 225 ml に溶解し、二酸化マンガン 56.6 g (651 mmol) を加え、室温にて24 時間撹拌した。セライトにてろ過し、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (150 g, n-ヘキサン - トルエン 1 : 2) により精製し、淡黄色油状物質として化合物 13 を得た。収量 11.2 g (32.5 mmol, 収率 99.7%)
Rf値 : 0.50 (n-ヘキサン - トルエン 1 : 2)
HRFAB-MS (m/z) : 345.1239 [M-H]+ ; calcd. for C15H29OSn : 345.1241
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.89 (9H, t, J = 7.0 Hz), 1.01 (6H, dt, J = 8.0 & 25.0 Hz), 1.31 (6H, tq, J = 7.0 & 7.0 Hz), 1.51 (6H, tt, J = 7.0 & 8.0 Hz), 6.62 (1H, ddd, J = 8.0, 19.0 & 24.0 Hz), 7.79 (1H, dd, J = 19.0 & 27.0 Hz), 9.41 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.8, 13.6, 27.2, 28.9, 147.6, 163.2, 193.7
【0045】
工程8:化合物 14 の合成
【化12】

【0046】
窒素雰囲気下、化合物 13 2.01 g (5.83 mmol) と化合物 11 1.59 g (7.57 mmol) をN,N-ジメチルホルムアミド 40.0 ml に溶解し、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) 410 mg (0.584 mmol) 、よう化銅(I) 222 mg (1.17 mmol) を加え、室温にて12 時間撹拌した。氷冷下にて水 80.0 ml を加えたのち、セライトにてろ過し、ろ液にn-ヘキサン 80.0 ml を加え、分液操作をおこなった。n-ヘキサン 80.0 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (26.0 g, n-ヘキサン - ジエチルエーテル 10 : 1) により精製し、黄色油状物質として化合物 14 を得た。収量 480 mg (3.47 mmol, 収率 59.6%)
Rf値 : 0.27 (n-ヘキサン - ジエチルエーテル 10 : 1)
[α]D25 -49.7 ° (c 1.05, MeOH)
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.88 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.05 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.40 (2H, dq, J = 7.5 & 7.5 Hz), 2.22 (1H, m), 6.09 (1H, dd, J = 8.0 & 15,0 Hz), 6.16 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.28 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.08 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 9.53 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.7, 19.3, 29.2, 39.0, 127.0, 130.1, 152.8, 153.1, 194.0
【0047】
工程9:化合物 15 の合成
【化13】

【0048】
窒素雰囲気下、2-メチル-2-ペンテン酸 11.9 g (104 mmol) と2-(トリメチルシリル)エタノール 17.8 ml (125 mmol) をジクロロメタン 150 ml に溶解し、氷冷下にて4-ジメチルアミノピリジン 1.27 g (10.4 mmol) を加えたのち、ジシクロヘキシルカルボジイミド 25.8 g (125 mmol) のジクロロメタン溶液 90.0 ml を滴加し、室温まで昇温させながら4 時間撹拌した。減圧下濃縮したのち、残留物をn-ヘキサン - 酢酸エチル 1 : 1 溶液で希釈し、ろ過した。ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (450 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 25 : 1) により精製し、無色油状物質として2-(トリメチルシリル)エチルエステル 19.5 g (91.0 mmol, 収率 87.3%) を得た。
窒素雰囲気下、2-(トリメチルシリル)エチルエステル 19.5 g (91.0 mmol) をシクロヘキサン 400 ml に溶解し、N-ブロモスクシンイミド 16.2 g (91.0 mmol) 、2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル) 1.49 g (9.07 mmol) を加え、80 ℃ にて2 時間撹拌した。ろ過し、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (530 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 25 : 1) により精製し、無色油状物質としてブロモ体 23.1 g (78.8 mmol, 収率 86.6%) を得た。
窒素雰囲気下、ブロモ体 17.9 g (61.1 mmol) を亜リン酸トリエチル 180 ml (1.05 mol) に溶解し、140 ℃ にて24 時間静置した。減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (430 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 1 : 2) により精製し、淡黄色油状物質として化合物 15 を得た。収量 15.2 g (43.4 mmol, 収率 71.0%)
Rf値 : 0.38 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 2 : 3)
HRFAB-MS (m/z) : 351.1756 [M+H]+ ; calcd. for C15H32O5SiP : 351.1757
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.05 (9H, s), 1.03 (2H, m), 1.30 (6H, dt, J = 4.0 & 6.5 Hz), 1.34 (3H, dd, J = 7.0 & 15.0 Hz), 1.88 (3H, dd, J = 1.5 & 4.5 Hz), 2.95 (1H, m), 4.10 (4H, m), 4.23 (2H, m), 6.59 (1H, ddd, J = 1.5, 1.5 & 6.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) -1.48, 12.9, 14.3, 16.4, 16.5, 17.3, 32.9, 62.1, 62.3, 63.0, 130.2, 137.3, 167.7
【0049】
工程10:化合物 16 の合成
【化14】

【0050】
窒素雰囲気下、化合物 15 3.05 g (8.70 mmol) をテトラヒドロフラン 30.0 ml に溶解し、氷冷下にて水素化ナトリウム 350 mg (8.02 mmol) を加え、室温にて3 時間撹拌した。化合物 14 1.00 g (7.24 mmol) のテトラヒドロフラン溶液 15.0 ml を滴加し、3 時間撹拌した。氷冷下にて酢酸 630 μl (11.0 mmol) を加えたのち、減圧下濃縮し、ジエチルエーテル 15.0 ml と水 8.00 ml を加え、分液操作をおこなった。ジエチルエーテル 15.0 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (100 g, n-ヘキサン - ジエチルエーテル 30 : 1) により精製し、黄色油状物質として化合物 16 を得た。収量 1.18 g (3.53 mmol, 収率 48.8%)
Rf値 : 0.47 (n-ヘキサン - トルエン 1 : 1)
[α]D27 -33.3 ° (c 0.98, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 334.2348 [M]+ ; calcd. for C20H34O2Si : 334.2328
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.06 (9H, s), 0.87 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.05 (2H, m), 1.44 (2H, dq, J = 7.0 & 7.0 Hz), 2.01 (3H, s), 2.06 (3H, s), 2.12 (1H, m), 4.25 (2H, m), 5.69 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.14 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.27 (1H, d, J = 11.5 Hz), 6.32 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.43 (1H, dd, J = 11.5 Hz & 15.0 Hz), 7.18 (1H, s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) -1.45, 11.8, 14.4, 16.7, 17.4, 19.9, 29.7, 38.7, 62.9, 125.7, 126.4, 129.0, 133.1, 136.0, 142.6, 142.9, 169.4
【0051】
工程11:化合物 17 の合成
【化15】

【0052】
窒素雰囲気下、化合物 16 75.3 mg (225 μmol) をテトラヒドロフラン 1.50 ml に溶解し、1.00 mol/l テトラ-n-ブチルアンモニウムフルオリド - テトラヒドロフラン溶液450 μl (450 μmol) を加え、50 ℃ にて3 時間静置した。酢酸 35.0 μl (611 μmol) を加えたのち、減圧下濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (2.50 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 3 : 1) により精製し、黄色固体として化合物 17 を得た。収量 46.9 mg (200 μmol, 収率 89.0%)
Rf値 : 0.50 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 1 : 1)
[α]D27 -52.6 ° (c 0.91, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 234.1616 [M]+ ; calcd. for C15H22O2 : 234.1620
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.87 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.35 (2H, dq, J = 7.0 & 7.0 Hz), 2.04 (3H, s), 2.09 (3H, s), 2.12 (1H, m), 5.72 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.34 (1H, d, J = 11.5 Hz), 6.35 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.44 (1H, dd, J = 11.5 & 15.0 Hz), 7.32 (1H, s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.8, 14.0, 16.5, 19.9, 29.6, 38.7, 124.3, 126.3, 129.0, 133.0, 136.9, 137.6, 143.4, 145.2, 174.5
【0053】
工程12:化合物 18 の合成
【化16】

【0054】
アルゴン雰囲気下、化合物17 161 mg (685 μmol) をジクロロメタン 3.30 ml に溶解し、N,N-ジメチルホルムアミド 5.0 μl (65 μmol)、塩化オキサリル77.0 μl (89.8 μmol) を滴加し、40 ℃ にて2 時間静置した。減圧下濃縮したのち、次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、化合物4 244 mg (893 μmol) をテトラヒドロフラン 3.00 ml に溶解し、塩化マグネシウム 91.4 mg (960 μmol) を加えたのち、氷冷下にてN,N-ジイソプロピルエチルアミン 310 μl (1.78 mmol) を滴加し、2.5 時間撹拌した。氷冷下にて先に合成した酸塩化物のテトラヒドロフラン溶液 2.00 ml を滴加したのち、室温まで昇温させながら13 時間撹拌した。飽和硫酸水素カリウム水溶液 2.00 ml 、酢酸エチル 5.00 ml 、水 1.00 ml を加えたのち、分液操作をおこなった。酢酸エチル 5.00 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (10.0 g, トルエン - 酢酸エチル 25 : 1) により精製し、黄色油状物質として化合物18 を得た。収量 288 mg (588 μmol, 収率 85.7%)
Rf値 : 0.32 (トルエン - 酢酸エチル 20 : 1)
[α]D27 -25.0 ° (c 1.08, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 490.2804 [M+H]+ ; calcd. for C27H40NO7 : 490.2805
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.5 Hz), 1.35 (2H, dq, J = 7.5 & 7.5 Hz), 1.52 (9H, s), 2.04 (3H, s), 2.06 (3H, s), 2.13 (1H, m), 3.82 (3H, s), 4.68 (1H, dddd, J = 1.0, 1.0, 5.5 & 13.0 Hz), 4.71 (1H, dddd, J = 1.0, 1.0, 5.5 & 13.0 Hz), 5.23 (1H, ddd, J = 1.0, 2.5 & 10.5 Hz), 5.34 (1H, ddd, J = 1.0, 2.5 & 17.0 Hz), 5.73 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.88 (1H, s), 5.90 (1H, ddt, J = 5.5, 10.5 & 17.0 Hz), 6.15 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.31 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.36 (1H, dd, J = 10.5 & 14.5 Hz), 6.43 (1H, dd, J = 11.0 & 14.5 Hz), 6.84 (1H, s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm)・11.7, 13.4, 16.6, 19.8, 27.9, 29.6, 38.7, 62.4, 63.3, 66.5, 85.3, 118.9, 126.2, 128.9, 131.4, 132.8, 133.5, 137.4, 138.2, 143.8, 144.6, 150.8, 163.2, 165.3, 191.5
【0055】
工程13:化合物 19 の合成
【化17】

【0056】
アルゴン雰囲気下、化合物 18 314 mg (0.641 mmol) をテトラヒドロフラン 5.50 ml に溶解し、氷冷下にてトリエチルアミン270 μl (1.93 mmol)、ぎ酸71.0 μl (1.88 mmol) を滴加したのち、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) 14.8 mg (12.8 μmol) のテトラヒドロフラン溶液 1.00 ml を滴加し、30 分間静置した。減圧下濃縮したのち、酢酸エチル 5.00 ml 、水 2.00 ml を加え、分液操作をおこなった。酢酸エチル 5.00 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (10.0 g, n-ヘキサン - アセトン 5 : 1) により精製し、黄色油状物質として化合物 19 を得た。収量 258 mg (0.636 mmol, 収率 99.2%, ケト型 - エノール型 4 : 1)
Rf値 : 0.34 (n-ヘキサン - アセトン 5 : 1)
[α]D26 -31.3 ° (c 1.15, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 406.2594 [M+H]+ ; calcd. for C23H36NO5 : 406.2593
【0057】
<keto type>
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.87 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.35 (2H, m), 1.51 (9H, s, t-Bu), 2.02 (3H, s), 2.05 (3H, s), 2.13 (1H, m), 3.84 (3H, s), 4.26 (2H, s), 5.73 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.34 (1H, d, J = 10.5 Hz), 6.35 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.44 (1H, dd, J =10.5 & 15.0 Hz), 6.90 (1H, s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.7, 13.1, 16.7, 19.9, 27.9, 29.6, 38.7, 48.1, 63.3, 84.7, 126.2, 126.6, 128.9, 133.8, 137.2, 137.8, 143.7, 144.3, 150.7, 165.8, 195.0
<enol type>
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.35 (2H, m), 1.58 (9H, s), 2.01 (3H, s), 2.02 (3H, s), 2.13 (1H, m), 3.82 (3H, s), 5.68 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.14 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.27 (1H, m), 6.28 (1H, s), 6.32 (1H, d, J = 10.0 Hz), 6.38 (1H, m), 7.08 (1H, s), 13.72 (1H, s)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.7, 14.2, 17.1, 19.9, 28.1, 29.7, 38.7, 63.8, 84.4, 87.8, 126.6, 129.0, 132.9, 133.3, 135.5, 135.7, 138.6, 142.7, 150.2, 170.5, 176.6
【0058】
工程14:化合物 21a, 21b の合成
【化18】

【0059】
アルゴン雰囲気下、3-クロロ-アクリル酸 940 mg (8.83 mmol) をジクロロメタン 10.0 ml に溶解し、N,N-ジメチルホルムアミド 10.0 μl (0.130 mmol)、塩化オキサリル1.10 ml (12.6 mmol) を滴加し、40 ℃ にて2 時間静置した。減圧下濃縮したのち、次の反応に用いた。
アルゴン雰囲気下、化合物19 2.76 g (6.81 mmol) をテトラヒドロフラン 30.0 ml に溶解し、塩化マグネシウム 778 mg (8.17 mmol) を加えたのち、氷冷下にてN,N-ジイソプロピルエチルアミン 3.50 ml (20.1 mmol) を滴加し、3 時間撹拌した。氷冷下にて先に合成した3-クロロ-アクリル酸塩化物 20 のテトラヒドロフラン溶液 10.0 ml を滴加したのち、室温まで昇温させながら1.5 時間撹拌した。飽和硫酸水素カリウム水溶液 20.0 ml 、酢酸エチル 40.0 ml 、水 10.0 ml を加えたのち、分液操作をおこなった。酢酸エチル 40.0 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (65.0 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 8 : 1) により精製し、黄色油状物質としてトリケトン 2.16 g (4.37 mmol, 収率 64.2%) を得た。
アルゴン雰囲気下、トリケトン 2.16 g (4.37 mmol) をジクロロメタン 10.0 ml に溶解し、3,5-ジtert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン 4.0 mg (17.7 μmol)、アンバーリスト15 2.09 g を加え、室温にて16時間静置した。ろ過し、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (86.0 g, n-ヘキサン - 酢酸エチル 6 : 1) により精製し、黄色油状物質としてanti化合物 21a 590 mg (1.19 mmol, 収率 27.3%)、syn化合物 21b 580 mg (1.17 mmol, 収率 26.9%) を得た。
【0060】
<化合物 21a >
Rf値 : 0.50 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 4 : 1)
[α]D27 -18.9 ° (c 0.94, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 494.2295 [M+H]+ ; calcd. for C26H37ClNO6 : 494.2309
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz, 50 ℃) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.0 Hz,), 0.96 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.02 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.36 (2H, m), 1.51 (9H, s), 1.85 (3H, s), 2.13 (1H, m), 2.72 (1H, dq, J = 7.0 & 13.0 Hz), 3.87 (3H, s), 4.49 (1H, d, J = 13.0 Hz), 5.69 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.11 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.14 (1H, d, J = 10.0 Hz), 6.29 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.36 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.65 (1H, d, J = 13.0 Hz), 7.06 (1H, d, J = 13.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.5, 11.7, 19.9, 25.7, 27.9, 29.6, 38.6, 41.3, 63.5, 84.5, 90.1, 114.5, 124.8, 124.9, 128.5, 130.4, 131.9, 132.3, 136.3, 143.1, 150.5, 162.1, 163.2, 192.0
【0061】
<化合物 21b >
Rf値 : 0.42 (n-ヘキサン - 酢酸エチル 4 : 1)
[α]D27 -15.3 ° (c 1.06, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 494.2312 [M+H]+ ; calcd. for C26H37ClNO6 : 494.2309
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz, 50 ℃): δ (ppm) 0.88 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.02 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.03 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.36 (2H, m), 1.52 (9H, s), 1.77 (3H, s), 2.12 (1H, m), 2.58 (1H, dq, J = 3.0 & 7.0 Hz), 3.86 (3H, s), 4.20 (1H, br s), 5.68 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 6.12 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.26 (1H, d, J = 10.0 Hz), 6.30 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.38 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.68 (1H, d, J =13.0 Hz), 7.16 (1H, d, J = 13.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.4, 11.8, 14.0, 20.0, 28.0, 29.7, 38.7, 42.4, 63.7, 83.9, 84.5, 124.9, 125.2, 126.6, 128.7, 129.7, 132.0, 134.9, 140.2, 142.3, 150.5, 162.2, 162.7, 193.3
【0062】
工程15:化合物 22 の合成
【化19】

【0063】
窒素雰囲気下、anti化合物 21a 42.6 mg (86.2 μmol) を1,2-ジクロロエタン 860 μl に溶解し、1.00 mol/l クロロチタニウムトリイソプロポキシド - n-ヘキサン溶液 95.0 μl (95.0 μmol) を滴加し、室温にて12 時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 500 μl 、クロロホルム 200 μl を加えたのち、分液操作をおこなった。クロロホルム 1.00 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液で洗浄したのち、減圧下濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (500 mg, クロロホルム - アセトン 5 : 1) により精製し、黄色固体として化合物 22 を得た。収量 23.0 mg (64.4 μmol, 収率 74.7%)
窒素雰囲気下、syn化合物 21b 48.0 mg (97.2 μmol) を1,2-ジクロロエタン 970 μl に溶解し、1.00 mol/l クロロチタニウムトリイソプロポキシド - n-ヘキサン溶液 117 μl (117 μmol) を滴加し、室温にて12 時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 500 μl、クロロホルム 200 μl を加えたのち、分液操作をおこなった。クロロホルム 1.00 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を飽和酒石酸カリウムナトリウム水溶液で洗浄したのち、減圧下濃縮し、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (500 mg, クロロホルム - アセトン 5 : 1) により精製し、黄色固体として化合物 22 を得た。収量 11.9 mg (33.3 μmol, 収率 34.3%)
Rf値 : 0.29 (クロロホルム - アセトン 5 : 1)
[α]D25 -17.0 ° (c 0.90, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 358.2007 [M+H]+ ; calcd. for C21H28NO4 : 358.2018
mp : 100-101℃
【0064】
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.85 (3H, t, J = 7.0 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz,), 1.03 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.34 (2H, m), 1.84 (3H, s), 2.11 (1H, m), 2.75 (1H, dq, J = 7.0 & 12.5 Hz), 4.05 (3H, s), 4.51 (1H, d, J = 12.5 Hz), 5.67 (1H, dd, J = 8.0 & 14.5 Hz), [5.68 (1H, dd, J = 8.0 & 14.5 Hz)], 5.84 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.0 & 14.5 Hz), 6.13 (1H, d, J = 10.5 Hz), 6.29 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.35 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 7.59 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.8, 11.5, 11.7, 19.9, 29.6, 38.6, 42.1, 65.1, 90.2, 97.6, 108.3, 124.9, 128.5, 130.3, 132.2, 136.3, 139.8, 143.1, 155.2, 171.2
【0065】
工程16:化合物 23a, 23b の合成
【化20】

【0066】
アルゴン雰囲気下、化合物 22 15.0 mg (42.0 μmol) をジクロロメタン 300 μl に溶解し、-78 ℃ にて0.94 mol/l 水素化ジイソブチルアルミニウム - n-ヘキサン溶液 90.0 μl (84.6 μmol) を滴加し、1.5 時間撹拌した。さらに、水素化ジイソブチルアルミニウム - n-ヘキサン溶液 45.0 μl (38.7 μmol) を滴加し、30 分間撹拌した。硫酸ナトリウム十水和物 75.0 mg を加えたのち、室温にて1 時間撹拌した。セライトにてろ過し、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (500 mg, クロロホルム - アセトン 4 : 1) により精製し、無色粉末として化合物23a 6.0 mg (16.7 μmol, 収率 39.8%, α-OH) 、黄色油状物質として化合物 23b 4.1 mg (11.4 μmol, 収率 27.1%, β-OH) を得た。
【0067】
<化合物 23a >
Rf値 : 0.19 (クロロホルム - アセトン 4 : 1)
[α]D24 -25.1 ° (c 0.23, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 360.2170 [M+H]+ ; calcd. for C21H30NO4 : 360.2175
mp : 163-164℃ (dec.)
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.98 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.34 (2H, m), 1.78 (3H, s), 1.97 (1H, ddq, J = 3.0, 7.0 & 10.5 Hz), 2.10 (1H, m), 2.55 (1H, br s), 4.05 (3H, s), 4.38 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.77 (1H, d, J = 3.0 Hz), 5.64 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), [5.65 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz)], 5.87 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.25 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.37 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.36 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.4, 11.7, 11.9, 19.9, 29.6, 34.2, 38.6, 62.4, 64.9, 83.5, 99.8, 112.1, 125.4, 128.6, 131.1, 132.1, 134.1, 135.0, 142.1, 159.3, 161.5
【0068】
<化合物 23b >
Rf値 : 0.63 (クロロホルム - アセトン 4 : 1)
[α]D25 -20.9 ° (c 1.21, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 360.2172 [M+H]+ ; calcd. for C21H30NO4 : 360.2175
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 1.00 (6H, d, J = 7.0 Hz), 1.34 (2H, m), 1.79 (3H, s), 2.03 (1H, ddq, J = 7.0, 9.0 & 11.0 Hz), 2.10 (1H, m), 4.04 (3H, s), 4.12 (1H, d, J = 11.0 Hz), 4.54 (1H, J = 9.0 Hz), 5.56 (1H, s), 5.64 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), [5.65 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz)], 5.87 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.25 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.37 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.35 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.2, 11.7, 13.9, 19.9, 29.6, 35.9, 38.6, 65.1, 68.8, 87.9, 100.1, 111.6, 125.3, 128.6, 131.4, 131.8, 133.7, 135.3, 142.4, 159.5, 161.4
アルゴン雰囲気下、化合物 23b 27.9 mg (77.6 μmol, β-OH) をジクロロメタン 550 μl に溶解し、Dess-Martin 試薬 65.8 mg (155 μmol) を加え、室温にて4 時間撹拌した。飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液 500 μl 、クロロホルム 1.00 ml を加えたのち、分液操作をおこなった。クロロホルム 1.00 ml で2 回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (1.20 g, トルエン - アセトン 2 : 1) により精製し、黄色固体として化合物 22 を得た。収量 27.7 mg (77.5 μmol, 収率 99.9%)
【0069】
工程17:化合物 25, 25'の合成
【化21】

【0070】
窒素雰囲気下、化合物 23a 7.5 mg (21 μmol, α-OH) をジクロロメタン 200 μl に溶解し、ピリジン 17.0 μl (21.0 μmol) 、(-)-カンファン酸塩化物 13.6 mg (62.6 μmol) のジクロロメタン溶液 100 μl を滴加し、室温にて 12 時間静置した。減圧下濃縮したのち、酢酸エチル 300 μl、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 150 μlを加え、分液操作をおこなった。酢酸エチル 300 μl で2回抽出し、合わせた有機層を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (1.00 g, トルエン - ジエチルエーテル 1 : 4) により精製し、無色固体として化合物 25 3.4 mg (6.3 μmol, 収率 30%) 、無色油状物質として化合物 25' 3.6 mg (6.7 μmol, 収率 32%) 、化合物 25, 25' の混合物として 4.2 mg (7.8 μmol, 収率 38 %) を得た。
【0071】
<化合物 25 >
Rf値 : 0.14 (トルエン - ジエチルエーテル 1 : 4)
[α]D27 -16.5 ° (c 0.36, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 540.2961 [M+H]+ ; calcd. for C31H42NO7 : 540.2961
mp : 153℃ (dec.)
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.85 (6H, d, J = 7.0 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.04 (3H, s), 1.05 (3H, s), 1.10 (3H, s), 1.34 (2H, m), 1.68 (1H, ddd, J = 4.0, 9.5 & 13.0 Hz), 1.77 (3H, s), 1.91 (1H, ddd, J = 4.0, 11.0 & 13.0 Hz), 2.20-2.17 (3H, m), 2.45 (1H, ddd, J = 4.0, 10.5 & 13.0 Hz), 4.00 (3H, s), 4.24 (1H, d, J = 11.0 Hz), 5.60 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.84 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 10.5 Hz), 6.29 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.31 (1H, d, J = 3.0 Hz), 6.35 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 7.41 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.7, 11.1, 11.7, 11.9, 16.6, 16.7, 20.0, 29.0, 29.6, 31.1, 33.4, 38.7, 54.1, 54.8, 64.9, 65.5, 84.1, 91.3, 99.1, 107.4, 125.1, 128.6, 130.9, 132.0, 135.3, 135.6, 142.6, 158.0, 163.1, 166.4, 178.5
【0072】
<化合物 25' >
Rf値 : 0.18 (トルエン - ジエチルエーテル 1 : 4)
[α]D27 -0.72 ° (c 0.38, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 539.2882 [M]+ ; calcd. for C31H41NO7 : 539.2883
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.85 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.86 (3H, t, J = 7.0 Hz), 0.96 (3H, s), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.09 (3H, s), 1.10 (3H, s), 1.34 (2H, m), 1.66 (1H, ddd, J = 4.0, 9.5 & 13.0 Hz), 1.76 (3H, s), 1.92 (1H, ddd, J = 4.5, 10.5 & 13.0 Hz), 2.02 (1H, ddd, J = 4.5, 9.5 & 13.0 Hz), 2.11 (1H, m), 2.14 (1H, ddq, J = 3.5, 7.0 & 11.0 Hz ), 2.51 (1H, ddd, J = 4.0, 10.5 & 13.0 Hz), 3.97 (3H, s), 4.33 (1H, d, J = 11.0 Hz), 5.67 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.84 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.19 (1H, d, J = 10.5 Hz), 6.29 (1H, dd, J = 10.0 & 15.0 Hz), 6.34 (1H, d, J = 3.5 Hz), 6.35 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 7.40 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 9.72, 11.2, 11.7, 11.9, 16.4, 16.6, 19.9, 20.9, 29.6, 31.0, 33.5, 38.6, 54.6, 55.0, 64.9, 65.4, 83.8, 91.5, 99.1, 107.2, 123.9, 127.3, 128.6, 131.0, 135.3, 135.6, 142.6, 157.9, 163.2, 166.8, 179.0
【0073】
工程18:YCM1008A (1) の合成
【化22】

【0074】
窒素雰囲気下、化合物 25 12.2 mg (22.6 μmol) をメタノール 500 μl に溶解し、4.46 mol/l ナトリウムメトキシド - メタノール溶液 25.4 μl (113 μmol) を滴加し、室温にて16 時間撹拌した。CG50 120 mg を加え、ろ過したのち、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (500 mg, クロロホルム - アセトン 4 : 1) により精製し、淡黄色粉末としてYCM1008A (1) を得た。収量 6.4 g (17.8 mmol, 収率 78.8%)
Rf値 : 0.19 (クロロホルム - アセトン 4 : 1)
[α]D27 -66.0 ° (c 0.37, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 360.2170 [M+H]+ ; calcd. for C21H30NO4 : 360.2175
mp : 172-173 ℃ (dec.)
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.98 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.34 (2H, m), 1.78 (3H, s), 1.97 (1H, ddq, J = 3.0, 7.0 & 10.5 Hz), 2.10 (1H, m), 3.10 (1H, br s), 4.05 (3H, s), 4.38 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.77 (1H, d, J = 3.0 Hz), 5.64 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.87 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.25 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.37 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.36 (1H, d, J = 8.0 Hz)
1H-NMR (CD3OD, 600 MHz) : δ (ppm) 0.88 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.93 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.35 (2H, m), 1.77 (3H, s), 1.92 (1H, ddq, J = 3.0, 7.0 & 10.5 Hz), 2.10 (1H, m), 3.99 (3H, s), 4.39 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.67 (1H, d, J = 3.0 Hz), 5.63 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.90 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.14 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.28 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.42 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.73 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.4, 11.8, 11.9, 19.9, 29.7, 34.2, 38.6, 62.4, 64.9, 83.5, 99.8, 112.1, 125.4, 128.6, 131.1, 132.1, 134.1, 135.0, 142.1, 159.3, 161.5
13C-NMR (CD3OD, 150 MHz) : δ (ppm) 10.1, 10.8, 11.5, 19.2, 29.5, 34.3, 38.7, 61.5, 64.2, 83.4, 100.1, 111.1, 125.4, 129.0, 131.0, 132.2, 134.9, 135.1, 141.3, 159.4, 162.4
【実施例2】
【0075】
2,3,4-epi-YCM1008A (1') の合成
【化23】

【0076】
窒素雰囲気下、化合物 25' 11.8 mg (21.9 μmol) をメタノール 500 μl に溶解し、4.46 mol/l ナトリウムメトキシド - メタノール溶液 24.5 μl (109 μmol) を滴加し、室温にて12 時間撹拌した。CG50 120 mg を加え、ろ過したのち、ろ液を減圧下濃縮したのち、残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (500 mg, n-ヘキサン - アセトン 4 : 1) により精製し、無色粉末として2,3,4-epi-YCM1008A (1') を得た。収量 6.0 mg (16.7 μmol, 収率 76.3%)
Rf値 : 0.19 (クロロホルム - アセトン 4 : 1)
[α]D27 +16.4 ° (c 0.41, MeOH)
HRFAB-MS (m/z) : 360.2170 [M+H]+ ; calcd. for C21H30NO4 : 360.2175
mp : 183-184℃ (dec.)
【0077】
1H-NMR (CDCl3, 600 MHz) : δ (ppm) 0.86 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.98 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.00 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.34 (2H, m), 1.78 (3H, s), 1.97 (1H, ddq, J = 3.0, 7.0 & 10.5 Hz), 2.10 (1H, m), 3.10 (1H, br s), 4.05 (3H, s), 4.38 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.77 (1H, d, J = 3.0 Hz), 5.65 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.87 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.10 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.25 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.37 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.36 (1H, d, J = 8.0 Hz)
1H-NMR (CD3OD, 600 MHz) : δ (ppm) 0.88 (3H, t, J = 7.5 Hz), 0.93 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.10 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.35 (2H, m), 1.77 (3H, s), 1.92 (1H, ddq, J = 3.0, 7.0 & 10.5 Hz), 2.10 (1H, m), 3.99 (3H, s), 4.39 (1H, d, J = 10.5 Hz), 4.67 (1H, d, J = 3.0 Hz), 5.63 (1H, dd, J = 8.0 & 15.0 Hz), 5.90 (1H, d, J = 8.0 Hz), 6.14 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.15 (1H, d, J = 11.0 Hz), 6.28 (1H, dd, J = 10.5 & 15.0 Hz), 6.42 (1H, dd, J = 11.0 & 15.0 Hz), 7.73 (1H, d, J = 8.0 Hz)
13C-NMR (CDCl3, 150 MHz) : δ (ppm) 11.4, 11.7, 11.9, 19.9, 29.6, 34.2, 38.6, 62.4, 65.0, 83.5, 99.9, 112.1, 125.4, 128.6, 131.2, 132.1, 134.1, 135.0, 142.2, 159.3, 161.6
13C-NMR (CD3OD, 150 MHz) : δ (ppm) 10.1, 10.8, 11.5, 19.2, 29.5, 34.3, 38.7, 61.5, 64.2, 83.4, 100.1, 111.1, 125.4, 129.0, 131.0, 132.2, 134.9, 135.1, 141.3, 159.4, 162.4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(式中、R1およびR2は同一または異なって、水素原子、置換もしくは非置換の低級アルキル、置換もしくは非置換の低級アルケニル、置換もしくは非置換の低級アルキニル、置換もしくは非置換の低級アルカノイルまたは置換もしくは非置換のアラルキルを表す)で表される2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
R1およびR2が同一または異なって、水素原子または置換もしくは非置換の低級アルキルである請求項1記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬品。
【請求項4】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するカルシウムシグナル伝達に作用する薬剤。
【請求項5】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するカルシウムシグナル伝達阻害剤。
【請求項6】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗腫瘍剤。
【請求項7】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する免疫抑制剤。
【請求項8】
請求項1または2記載の2H-ピラノ[3,2-c]ピリジン-5(6H)-オン誘導体もしくはその光学活性体またはその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する抗菌剤。

【公開番号】特開2008−208098(P2008−208098A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48434(P2007−48434)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】