説明

3−アミノチエノピリドン誘導体の調製方法

本発明は7−位にアリール、複素アリール、シクロアルキル又は複素シクロアルキル基、そして2−位に特定の範囲の置換基により置換された3−アミノ−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン誘導体のクラスを提供する;またこれらの化合物の製造方法、及びあるp38 MAPキナーゼ阻害薬の製造における中間体としてそれらの使用が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アミノチエノピリドン誘導体、その調製方法及びp38キナーゼ(p38 MAPキナーゼとしても知られている)の阻害薬の製造中間体としてのその使用に関するものである。
【0002】
2003年12月31日にWO 2004/000846として公開された(UK特許出願GB 0214268.5に基づく)同時係属のPCT出願番号PCT/GB03/02667において、われわれは式(A)の一連の2環性複素環式誘導体を記述した。

【0003】
この化合物はp38キナーゼの強力にして選択的な阻害薬であり、自己免疫、炎症及びその他の疾患の治療に使用される。
【0004】
同時係属のPCT出願番号PCT/GB03/02667において、式(A)の化合物は一般的に、パラジウム触媒、ホスフィンリガンド及び塩基の存在下に、アミンArNHと式(B)の臭化物の反応により調製される。

【0005】
臭化物(B)は、一般的に式(C)のシアノピリジン又はシアノピリミジンから多段階で調製される。

【0006】
例えば、Aは−C(R)=基、Xは−O−若しくは−S−原子又は−NH−基、そしてYは置換基がエステル化されたカルボキシル基、例えば−COAlk基である置換炭素原子である式(B)の化合物は、式(C)の化合物と式HXCHCOEt(Etはエチル基そしてXは−O−若しくは−S−原子又は−NH−基)の試薬と反応させることにより開始する数ステップで調製することができ、式(D)のアミンを与える。

【0007】
得られた式(D)のアミンは、亜硝酸アルキル及び銅塩、例えば臭化銅(II)との反応により臭化物に変換することができる。次いで、得られた臭化物は酸化されてピリジン−N−オキシドを生じ、これは次いで転移を起こしてピリドンを生じ、次いでこれは最終的にN−アルキル化又はN−アリール化されて式(B)の目的とする臭化物を生じる。
【0008】
PCT出願番号PCT/GB03/02667の中の式(B)の臭化物に対する方法は、容認できる収率で式(A)の化合物を調製するには適しているが、われわれは、式(2)の中間体を使用する、臭化物のような一定のハロゲン化物を調製するための改良方法を今回発見した。従って、本発明の一態様において、われわれは、後に定義するような式(1)のハロゲン化物の製造に使用するために、式(2)の化合物及びその塩、溶媒和物、水和物、保護誘導体及びN−オキシドを提供する。


式中
Rは−CN、−NO、−COAlk、−COC1〜6アルキル又は−CONHet基であり;
Alkは任意に置換されたアルキル、アリールアルキル−、アリール、アリールオキシアルキル−、アルカノイルオキシアルキル−又はアロイルオキシアルキル−基であり;
NHetは窒素原子を介して−CO基に結合した任意に置換された4−から6−員環のヘテロシクロアルキル基であり;
は任意に置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル又はアルキル基であり;
は同一又は異なることができ、それぞれ水素原子又は水素原子前駆体である。
【0009】
式(2)の中間体アミンは新規化合物であり、本発明の別の態様を形成する。
【0010】
式(2)のアミンは多目的に使用される有用な化合物である。特に、式(1)の臭化物のようなハロゲン化物又は後に記述する式(1A)のアミンの調製に使用される。方法は簡単で、用途が広く、短く、そして操作が容易であり、特に目的化合物の大量合成に適している。
【0011】
従って本発明の他の態様により、われわれは、式(2)の中間体アミンのジアゾ化、その後のハロゲン化物の置換を含む、式(1)のハロゲン化物の製造方法を提供する。


式中R,R及びRは式(2)で定義されたとおりであり、Tはハロゲン原子である。
【0012】
本発明のこの態様による方法は、溶媒(例えばアセトニトリルのようなニトリル)が存在する中で、硫酸又は塩酸のような無機酸の存在下、ジアゾ化試薬(亜硝酸アルキル(例えば亜硝酸tert−ブチル)のような亜硝酸塩又は亜硝酸アルカリ金属(例えば亜硝酸ナトリウム)のような亜硝酸金属など)を存在させ、次いで銅塩、例えば臭化銅(II)、塩化銅(II)又はヨウ化銅(II)のようなハロゲン化物の原料を加えることにより、0℃から約65℃の温度において行うことができる。
【0013】
上記の方法に使用することに加えて、式(2)の化合物は、式(1A)の一定の化合物を直接調製するようなほかの目的にも使用することができる。本発明は、そのようなほかの使用にも拡大して適用され、特にわれわれは、既に定義した式(2)の化合物と化合物ArQ(Qは脱離基)を遷移金属触媒、例えばパラジウム触媒の存在下に反応させることを含む、式(1A)の化合物の調製方法を提供する。


式中R,R及びRは式(2)で定義したとおりであり、Arは任意に置換された芳香族又は複素芳香族基である。
【0014】
反応は都合よくトルエンまたはエチレングリコールジメチルエーテルのような溶媒中で高温、例えば還流温度において、トリス(ジベンジリデンアセトン)−ジパラジウム(0)のような触媒、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル又はトリ−tert−ブチルホスフィンのようなホスフィンリガンド、及び炭酸セシウム又はリン酸三カリウムのような塩基を使用して行うことができる。そのほかに反応は、任意にアルコール(例えばイソプロパノール)又はエーテル(例えば1,4−ジオキサン)のような適当な溶媒中で、銅触媒(例えばヨウ化銅(I))の存在下に、塩基(例えばリン酸三カリウム)の存在下に行うことができる。エチレングリコール又はN,N−ジメチルエタノールアミンのようなキレート形成リガンドも使用することができる。
【0015】
式(2)の新規中間体は、この後に記述するように多数の方法により調製することができ、これらは本発明の別の態様を形成する。
【0016】
式(1)、(1A)及び(2)及び本明細書に記述されたほかの式における相当する化合物において各置換基を定義するために使用された種々の用語は、特記しない限り、この後に規定する意味を持つと解釈されるべきものである。
【0017】
式(1)、(1A)及び(2)の化合物は一つ以上のキラル中心を有し、エナンチオマー又はジアステレオマーとして存在することができることは正しく理解されるであろう。本発明は、このようなエナンチオマー、ジアステレオマー及びラセミ化合物を含む任意の比率のそれらの混合物全てに拡張されると理解されるべきものである。式(1)、(1A)及び(2)及び以降の式は、特別に記述されるか又は示される以外は、個別の異性体又はその混合物を全て示すことを意図している。さらに、式(1)、(1A)及び(2)の化合物は、互変異性体、例えばケト(CHC=O)−エノール(CH=CHOH)互変異性体として存在することができる。式(1)、(1A)及び(2)及び以降の式は、特記しない限り、個別の互変異性体及びそれらの混合物の全てを示すことが意図されている。
【0018】
さらに、用語「保護された誘導体」は、式(1)、(1A)及び(2)の化合物から容易に脱離することができるいずれかの基を含む関連化合物を意味することが意図されていることは当業者には理解されるであろう。通常の保護基を標準的な方法に従って使用することができる(例えば、Greene, T. W. in “Protective Groups in Organic Synthesis”, John Wiley and Sons,1999参照)。例としては、アミン保護基、例えばtert‐ブチルカルバメート(BOC)又はベンジルカルバメート(Cbz)のようなカルバメート、或いはアルコール保護基、例えばメチル又はエチルエステルのようなエステル、又は、例えばパラ‐メトキシベンジルエーテル又はベンジルエーテルのようなベンジルエーテル、又はテトラヒドロピラン‐2‐イルエーテルのようなエーテル、又は例えばメトキシのようなアルキルエーテルが含まれる。
【0019】
また、用語「水素原子前駆体」は、水素原子を得るために、式(1)、(1A)及び(2)の化合物又はそれに続く化合物のいずれかから容易に脱離することができる任意の原子又は基を含むことが意図されていることは理解されるであろう。適する例としては、塩素、臭素又はヨウ素のようなハロゲン原子、又は−COH、エステル(例えば−COAlk)、又は−CN基が含まれる。
【0020】
基Qによって示された脱離基の例としては、例えば臭素、ヨウ素又は塩素原子のようなハロゲン原子或いはアルキルスルホニルオキシ(例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシ)又はアリールスルホニルオキシ(例えばp−トルエンスルホニルオキシ基)のようなスルホニルオキシ基がある。特別な例はハロゲン原子、特に臭素又はヨウ素が含まれる。
【0021】
従って本明細書で使用する際、基又は基の一部を示す用語「アルキル」は、直鎖又は分枝のC1〜6アルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、sec−ブチル、イソブチル又はtert‐ブチル基のようなC1〜4アルキル基を含む。これらの基の上に存在する場合に任意の置換基は以降に記述されるような任意の置換基を含む。
【0022】
用語「アルキレン鎖」は、末端の水素原子が共有結合によって置換されて2価の鎖を生じている直前に記述されたアルキル基を含むことが意図されている。例としては、−CH−,−CHCH−,−CH(CH)CH−,−(CHCH−,−(CHCH−,−CH(CH)(CHCH−,−CHCH(CH)CH−,−C(CH−,−C(CHCH−,−CHC(CHCH−,−(CHCH(CH)CH−,−CH(CH)CHCH−,−CH(CH)CHCH(CH)CH−,−CHCH(CH)CHCH−,−(CHC(CHCH−,−(CHCH−又は−(CHCH−のような任意に置換されたC1〜6アルキレン鎖が含まれる。これらの鎖上に存在する場合に任意の置換基は以降に記述されるような任意の置換基を含む。
【0023】
用語ハロゲンはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子を含むことが意図されている。
【0024】
用語「ハロアルキル」は、直前に記述されたハロゲン原子の1個、2個又は3個により置換された、直前に記述されたアルキル基を含むことが意図されている。このような基の特別な例には、−CF,−CCl,−CHF,−CHCl,−CHF及び−CHCl基が含まれる。
【0025】
本明細書に使用されている用語「アルコキシ」は直鎖又は分枝C1〜6アルコキシ、例えばメトキシ、エトキシ、n‐プロポキシ、イソプロポキシ、n‐ブトキシ、sec−ブトキシ、イソブトキシ又はtert‐ブトキシ基のようなC1〜4アルコキシ基を含む。本明細書に使用されている用語「ハロアルコキシ」は上記したような1個、2個又は3個のハロゲン原子によって置換されたこれらアルコキシ基のいずれかを含む。特別な例は、−OCF,−OCCl,−OCHF,−OCHCl,−OCHF及び−OCHCl基を含む。
【0026】
本明細書に使用されている用語「アルキルチオ」は直鎖又は分枝のC1〜6アルキルチオ、例えばメチルチオ又はエチルチオのようなC1〜4アルキルチオを含むことが意図されている。
【0027】
アルキル基又はアルキレン鎖の上に存在することができる任意の置換基は、1、2、3又はそれ以上の置換基を含み、各置換基は同じか又は異なることができ、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素)或いは−OH、−COH、−CO(このRは任意に置換された直鎖又は分枝のC1〜6アルキル基)(例えば−COCH又は−COC(CH)、−CONHR(例えば−CONHCH)、−CON(R(例えば−CON(CH)、−COR(例えば−COCH)、C1〜6アルコキシ(例えばメトキシ又はエトキシ)、ハロC1〜6アルコキシ(例えばトリフルオロメトキシ又はジフルオロメトキシ)、チオール(−SH)、−S(O)R(例えば−S(O)CH)、−S(O)(例えば−S(O)CH)、C1〜6アルキルチオ(例えばメチルチオ又はエチルチオ)、アミノ、−NHR(例えば−NHCH)、又は−N(R(例えば−N(CH)の基から選択される。二つのR基が上記置換基のいずれかに存在する場合には、これらは同じであるか又は異なることができる。
【0028】
さらに二つのR基が直前に記述した任意の置換基のいずれかに存在する場合に、これらの基はそれらが結合している窒素原子とともに、複素環を形成することができる。このような複素環は、−O−,−S−,−N(R)−,−C(O)−及び−C(S)−基から選択される別のヘテロ原子又はヘテロ原子含有基により任意に中断することができる。このような複素環の特別な例には、ピペリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル及びピペラジニル環が含まれる。
【0029】
一般的に式(1)、(1A)及び(2)の化合物において、用語「シクロアルキル基」は任意に置換された非芳香族の環式又は多環式の飽和C3〜10環状構造、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロへプチル又はシクロオクチルを含む。特別な例として、任意に置換されたシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロへキシルのようなC3〜6シクロアルキル環状構造が含まれる。これらの基に存在する任意の置換基は後に記述する置換基を含む。
【0030】
用語「ヘテロシクロアルキル基」とは、1,2,3又は4個のヘテロ原子又は後に定義するヘテロ原子を含むリンカー基Lを含む、任意に置換された非芳香族の飽和3−から10−員単環式又は多環式の炭化水素環状構造のことである。特別な例には、1又は2個のヘテロ原子を含む3−から6−員単環式環状構造が含まれる。ヘテロシクロアルキル基に存在する任意の置換基は後に記述する置換基を含む。
【0031】
がリンカー原子又は基としてヘテロシクロアルキル基の中に存在する場合には、それは二価の連結原子又は基のいずれかであろう。特別な例として、−O−又は−S−原子、又は−C(O)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−C(S)−、−S(O)−、−S(O)−、−N(R)−(このRは水素原子又は直鎖又は分枝アルキル基)、−N(R)O−、−N(R)N−、−CON(R)−、−OC(O)N(R)−、−CSN(R)−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)O−、−N(R)CS−、−S(O)N(R)−、−N(R)S(O)−、−N(R)CON(R)−、−N(R)CSN(R)−又は−N(R)SON(R)−基が含まれる。Lが二つのR基を含む場合には、これらは同一でも異なっていてもよい。
【0032】
ヘテロシクロアルキル基の特別な例には、任意に置換されたテトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオフェニル、ピロリジニル、ピロリジノン、オキサゾリジニル、オキサゾリジノン、ジオキソラニル(例えば1,3−ジオキソラニル)、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロピリミジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ペペリジノン、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、モルホリノン、1,4−ジチアニル、チオモルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロイソチアゾール 1,1−ジオキシド(例えば2,3−ジヒドロイソチアゾール 1,1−ジオキシド)及びテトラヒドロピラジニル基が含まれる。
【0033】
シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基に存在できる任意の置換基には、ハロゲン原子、或いはC1〜6アルキル(例えばメチル又はエチル)、ハロC1〜6アルキル(例えば−C(OH)(CFのように、ヒドロキシルにより任意に置換された、ジフルオロメチル又はトリフルオロメチルのようなハロメチル又はハロエチル)、C1〜6アルコキシ(例えばメトキシ又はエトキシ)、ハロC1〜6アルコキシ(例えばジフルオロメトキシ又はトリフルオロメトキシのようなハロメトキシ又はハロエトキシ)、チオール、C1〜6アルキルチオール(例えばメチルチオール又はエチルチオール)、カルボニル(=O)、チオカルボニル(=S)、イミノ(=NR4a)(このR4aはOH基又はC1〜6アルキル基である)又は−(Alk基(この中のAlkは直鎖又は分枝C1〜3アルケン鎖であり、vは零又は整数1であり、RはC3〜8シクロアルキル、−OH、−SH、−N(R)(R)(このR及びRはそれぞれ独立して水素原子又は任意に置換されたアルキル又はC3〜8シクロアルキル基から選択される)、−OR、−SR、−CN、−NO、−CO、−SOR、−SO、−SO、−OCO、−C(O)R、−OC(O)R、−C(S)R、−C(O)N(R)(R)、−OC(O)N(R)(R)、−N(R)C(O)R、−C(S)N(R)(R)、−N(R)C(S)R、−SON(R)(R)、−N(R)SO、−N(R)C(O)N(R)(R)(このRはRについて定義したのと同じ)、−N(R)C(S)N(R)(R)或いは−N(R)SON(R)(R)基、或いは任意に置換された芳香族又は複素芳香族基から選択される1,2,3又はそれ以上の置換基が含まれる。
【0034】
−NHet基の例は後に定義される。
【0035】
Alk鎖の特別な例には、−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−及び−CH(CH)CH−鎖が含まれる。
【0036】
,R,R及び/又はRは、C3〜8シクロアルキル基として存在する場合には、それは、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基であり得る。このような基に存在することができる任意の置換基には、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子)、或いはヒドロキシ又はC1〜6アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ又はイソプロポキシ基)から選択され、同じであっても又は異なっていてもよい1,2又は3個の置換基が含まれる。
【0037】
基R及びR又はR及びRが共にアルキル基である場合に、これらの基は、それが結合しているN原子と共に複素環を形成することができる。このような複素環はさらに−O−、−S−、−N(R)−、−C(O)−及び−C(S)−基から選択されるヘテロ原子又はヘテロ原子を含む基により任意に中断することができる。このような複素環の特別な例には、ピペリジニル、ピラゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル及びピペラジニルリングが含まれる。
【0038】
が任意に置換された芳香族又は複素芳香族の基である場合は、後に記述されるような基とすることができる。
【0039】
用語「芳香族基」及び「アリール基」は、例えば任意に置換されたフェニルのような単環性C6−12芳香族基又は1−又は2−ナフチル基のような2環式縮合環C6〜12芳香族基を含むことが意図されている。
【0040】
用語「複素芳香族基」及び「ヘテロアリール基」は、例えば酸素、硫黄及び窒素原子(又はそれらの酸化体)から選択される1,2,3又は4個のヘテロ原子を含む、例えば、任意に置換されたC1〜9複素芳香族基を含むことが意図されている。一般的に、複素芳香族基は、例えば単環式又は2環式縮合環複素芳香族基であり得る。単環式芳香族基は、例えば酸素、硫黄、及び窒素原子から選択される1,2,3又は4個のヘテロ原子を含む5−又は6−員複素芳香族基を含む。2環性複素芳香族基は、例えば酸素、硫黄、及び窒素原子から選択される1,2個又はそれ以上のヘテロ原子を含む8−から13−員縮合複素芳香族基を含む。
【0041】
これらの芳香族又は複素芳香族基のそれぞれは、1,2,3個又はそれ以上の後に定義されるR10原子又は基によって任意に置換することができる。
【0042】
このタイプの単環式複素芳香族基の特別な例には、ピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、N−C1〜6アルキルイミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリミヂニル、ピリダジニル、ピラジニル、テトラゾリル及びトリアジニルが含まれる。
【0043】
このタイプの2環式複素環芳香族基の特別の例として、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリニル、ベンズイミダゾリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾピラニル、キナゾリニル、キノオキサリニル、ナフチリジニル、ピリド[3,4−b]ピリジル、ピリド[3,2−b]ピリジル、ピリド[4,3−b]ピリジル、キノリニル、イソキノリニル及びフタラジニルが含まれる。
【0044】
芳香族又は複素芳香族基に存在することができる任意の置換基には、原子又は基R10からそれぞれ選択される1,2,3又はそれ以上の置換基が含まれる。R10は、R10a又は−LAlk(R10aであり、式中R10aはハロゲン原子、或いはアミノ(−NH)、置換アミノ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル(−OH)、置換ヒドロキシル、ホルミル、カルボキシル(−COH)、エステル化されたカルボキシル、チオール(−SH)、置換チオール、−COR11[このR11は−LAlk(R10a、アリール又はヘテロアリール基]、−CSR11、−SOH、−SOR11、−SO11、−SO11、−SONH、−SONHR11、−SON(R11、−CONH、−CSNH、−CONHR11、−CSNHR11、−CON(R11、−CSN(R11、−N(R12)SO11(このR12は水素原子又は直鎖又は分枝アルキル基)、−N(SO11、−N(R12)SONH、−N(R12)SONHR11、−N(R12)SON(R11、−N(R12)COR11、−N(R12)CONH、−N(R12)CONHR11、−N(R12)CON(R11、−N(R12)CSNH、−N(R12)CSNHR11、−N(R12)CSN(R11、−N(R12)CSR11、−N(R12)C(O)OR11、−SONHet[この−NHetは1以上の別の−O−若しくは−S−原子又は−N(R12)−、−C(O)−又は−C(S)−基を任意に含む、任意置換C3〜7環状アミノ基である]、−CONHet、−CSNHet、−N(R12)SONHet、−N(R12)CONHet、−N(R12)CSNHet、−SON(R12)Het[この−Hetは1以上の別の−O−若しくは−S−原子又は−N(R12)−、−C(O)−、−S(O)−又は−S(O)−基を任意に含む、任意に置換された単環性C3〜7環状炭素基である]、−Het、−CON(R12)Het、−N(R12)CON(R12)Het、−N(R12)CSN(R12)Het、−N(R12)SON(R12)Het、アリール又はヘテロアリール基;Lは共有結合又はLについて以前に定義したリンカー原子又は基であり;Alkは任意に1、2又は3個の−O−若しくは−S−原子又は−S(O)−(このeは整数1又は2)又は−N(R12)−(例えば−N(CH)−基)によって任意に中断されている任意に置換された直鎖又は分枝C1〜6アルキレン鎖であり;rは零又は整数1、2又は3である。二つのR11又はR12基が上記置換基の一つの中に存在する場合には、R11及びR12基は同一であっても又は異ってもよいことは理解されるであろう。
【0045】
基−LAlk(R10aにおいてrが整数1,2又は3である場合は、その又は複数の置換基R10aは−Alkの中のいずれかの適当な炭素原子上に存在できることは理解されるべきである。1より多いR10a置換基が存在する場合は、それらは同一であっても又は異ってもよく、−Alkの中の同一又は異なる炭素原子上に存在することができる。明らかに、rが零であり置換基R10aが存在しない場合は、Alkによって示されるアルキレン鎖はアルキル基となる。
【0046】
10aが置換されたアミノ基である場合には、それは例えば基−NHR11(このR11は前に定義されたものである)又は基−N(R11(それぞれのR11は同一か又は異なる)であり得る。
【0047】
10aがハロゲン原子である場合には、それは例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子であり得る。
【0048】
10aが置換されたヒドロキシル又は置換されたチオール基である場合には、それぞれ例えば基−OR11又は−SR12であり得る。
【0049】
用語「アリールアルキル」とは、末端水素原子が本明細書において定義されたようなアリール基で置換されている本明細書において定義されているような直鎖又は分枝アルキル基のことである。
【0050】
用語「アリールオキシアルキル」は、末端水素原子がアリール−O−基(このアリール基は本明細書において定義されたものである)で置換されている本明細書において定義された直鎖又は分枝アルキル基を示すことが意図されている。
【0051】
用語「アルカノイルオキシアルキル」とは、末端水素原子がアルキル−C(O)O−基(このアルキル基は本明細書において定義したものである)で置換されている直鎖又は分枝アルキル基のことである。
【0052】
用語「アロイルオキシアルキル」とは、末端水素原子がアリール−C(O)O−基(このアリール基は本明細書において定義したものである)で置換されている直鎖又は分枝アルキル基のことである。
【0053】
基R10aによって示されるエステル化されたカルボキシ基には、式−COAlkの基(式中Alkは直鎖又は分枝の、任意に置換されたC1〜8アルキル基、例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル、イソブチル、sec−ブチル、又はtert‐ブチル基);C6〜12アリールC1〜8アルキル基(例えば任意に置換されたベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、1−ナフチルメチル又は2−ナフチルメチル基);C6〜12アリール基(例えば任意に置換されたフェニル、1−ナフチル又は2−ナフチル基);C6〜12アリールオキシC1〜8アルキル基(例えば任意に置換されたフェニルオキシメチル、フェニルオキシエチル、1−ナフチルオキシメチル又は2−ナフチルオキシメチル基);任意に置換されたC1〜8アルカノイルオキシC1〜8アルキル基(例えばピバロイルオキシメチル、プロピオニルオキシエチル又はプロピオニルオキシプロピル基);又はC6〜12アロイルオキシC1〜8アルキル基(例えば任意に置換されたベンゾイルオキシエチル又はベンゾイルオキシプロピル基)を含む。Alkに存在する任意の置換基は上記のR10a原子及び基が含まれる。
【0054】
Alkが置換基の中に又は置換基として存在する場合には、それは、例えば−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−CHCH−、−CHCHCH−、−CH(CH)CH−、−CHCHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CH(CH)CHCH−又は−C(CHCH−鎖であり得、1、2又は3個の−O−若しくは−S−原子又は−S(O)−、−S(O)−又は−N(R12)−(例えば−N(CH)−基)により中断されている。Alkにより示されたアルキレン鎖は、存在する可能性のあるR10a基のいずれかに加えて1、2又は3個のハロゲン原子により任意に置換されうる。
【0055】
−NHet又は−Hetが置換基の一部を形成している場合に、環−NHet又は−Hetの中に存在することができるヘテロ原子又はヘテロ原子含有基が親の炭素環の中の炭素原子の位置を占めることは理解されるであろう。
【0056】
従って、−NHet又は−Hetが置換基の一部を形成している場合に、それぞれは、例えば任意に置換されたピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピペリジニル又はチアゾリジニル基であり得る。さらに、−Hetは例えば任意に置換されたシクロペンチル又はシクロへキシル基を示すことができる。−NHetに存在することができる任意の置換基は、複素環式脂肪族基について上に記述した置換基を含む。
【0057】
10によって示される特に有用な原子又は基として、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子、或いはC1〜6アルキル(例えばメチル、エチル、n‐プロピル、イソプロピル、n‐ブチル又はtert‐ブチル)、任意に置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリル、フリル、チアゾリル又はチエニル、C1〜6ヒドロキシアルキル(例えばヒドロキシメチル又はヒドロキシエチル)、カルボキシC1〜6アルキル(例えばカルボキシエチル)、C1〜6アルキルチオ(例えばメチルチオ又はエチルチオ)、カルボキシC1〜6アルキルチオ(例えばカルボキシメチルチオ、2−カルボキシエチルチオ又は3−カルボキシプロピルチオ)、C1〜6アルコキシ(例えばメトキシ又はエトキシ)、ヒドロキシC1〜6アルコキシ(例えば2−ヒドロキシエトキシ)、任意に置換されたフェノキシ、ピリジルオキシ、チアゾリルオキシ、フェニルチオ又はピリジルチオ)、C3〜7シクロアルキル(例えばシクロブチル又はシクロペンチル)、C5〜7シクロアルコキシ(例えばシクロペンチルオキシ)、ハロC1〜6アルキル(例えばトリフルオロメチル)、ハロC1〜6アルコキシ(例えばトリフルオロメトキシ)、C1〜6アルキルアミノ(例えばメチルアミノ又はエチルアミノ)、ハロC1〜6アルキルアミノ(例えばフルオロC1〜6アルキルアミノ)、(アミノ)(ハロ)C1〜6アルキル(例えば−CH(CF)NH又は−C(CFNH)、アミノ(−NH)、アミノC1〜6アルキル(例えばアミノメチル、アミノエチル、−CH(CH)NH又は−C(CHNH)、C1〜6ジアルキルアミノ(例えばジメチルアミノ又はジエチルアミノ)、C1〜6アルキルアミノC1〜6アルキル(例えばエチルアミノエチル)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルキル(例えばジエチルアミノエチル)、アミノC1〜6アルコキシ(例えばアミノエトキシ)、C1〜6アルキルアミノC1〜6アルコキシ(例えばメチルアミノエトキシ)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルコキシ(例えばジメチルアミノエトキシ、ジエチルアミノエトキシ、ジイソプロピルアミノエトキシ又はジメチルアミノプロポキシ)、フタルイミド又はナフタルイミドのようなイミド(例えば1,8−ナフタルイミド)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル(−OH)、ホルミル[HC(O)−]、カルボキシル(−COH)、−COAlk(このAlkは既に定義したとおりである)、C1〜6アルカノイル、例えばアセチル、任意に置換されたベンゾイル、チオール(−SH)、チオC1〜6アルキル(例えばチオメチル又はチオエチル)、スルホニル(−SOH)、C1〜6アルキルスルホニル(例えばメチルスルホニル)、アミノスルホニル(−SONH)、C1〜6アルキルアミノスルホニル(例えばメチルアミノスルホニル又はエチルアミノスルホニル)、C1〜6ジアルキルアミノスルホニル(例えばジメチルアミノスルホニル又はジエチルアミノスルホニル)、フェニルアミノスルホニル、カルボキサミド(−CONH)、C1〜6アルキルアミノカルボニル(例えばメチルアミノカルボニル又はエチルアミノカルボニル)、C1〜6ジアルキルアミノカルボニル(例えばジメチルアミノカルボニル又はジエチルアミノカルボニル)、アミノC1〜6アルキルアミノカルボニル(例えばアミノエチルアミノカルボニル)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルキルアミノカルボニル(例えばジエチルアミノエチルアミノカルボニル)、アミノカルボニルアミノ、C1〜6アルキルアミノカルボニルアミノ(例えばメチルアミノカルボニルアミノ又はエチルアミノカルボニルアミノ)、C1〜6ジアルキルアミノカルボニルアミノ(例えばジメチルアミノカルボニルアミノ又はジエチルアミノカルボニルアミノ)、C1〜6アルキルアミノカルボニルC1〜6アルキルアミノ(例えばメチルアミノカルボニルメチルアミノ)、アミノチオカルボニルアミノ、C1〜6アルキルアミノチオカルボニルアミノ(例えばメチルアミノチオカルボニルアミノ又はエチルアミノチオカルボニルアミノ)、C1〜6ジアルキルアミノチオカルボニルアミノ(例えばジメチルアミノチオカルボニルアミノ又はジエチルアミノチオカルボニルアミノ)、C1〜6アルキルアミノチオカルボニルC1〜6アルキルアミノ(例えばエチルアミノチオカルボニルメチルアミノ)、−CONHC(=NN)NH、C1〜6アルキルスルホニルアミノ(例えばメチルスルホニルアミノ又はエチルスルホニルアミノ)、C1〜6ジアルキルスルホニルアミノ(例えばジメチルスルホニルアミノ又はジエチルスルホニルアミノ)、任意に置換されたフェニルスルホニルアミノ、アミノスルホニルアミノ(−NHSONH)、C1〜6アルキルアミノスルホニルアミノ(例えばメチルアミノスルホニルアミノ又はエチルアミノスルホニルアミノ)、C1〜6ジアルキルアミノスルホニルアミノ(例えばジメチルアミノスルホニルアミノ又はジエチルアミノスルホニルアミノ)、任意に置換されたモルホリンスルホニルアミノ又はモルホリンスルホニルC1〜6アルキルアミノ、任意に置換されたフェニルアミノスルホニルアミノ、C1〜6アルカノイルアミノ(例えばアセチルアミノ)、アミノC1〜6アルカノイルアミノ(例えばアミノアセチルアミノ)、C1〜6ジアルキルアミノC1〜6アルカノイルアミノ(例えばジメチルアミノアセチルアミノ)、C1〜6アルカノイルアミノC1〜6アルキル(例えばアセチルアミノメチル)、C1〜6アルカノイルアミノC1〜6アルキルアミノ(例えばアセトアミドエチルアミノ)、C1〜6アルコキシカルボニルアミノ(例えばメトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ又はtert−ブトキシカルボニルアミノ)、或いは任意に置換されたベンジルオキシ、ピリジルメトキシ、チアゾリルメトキシ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノC1〜6アルキル(例えばベンジルオキシカルボニルアミノエチル)、ベンゾチオ、ピリジルメチルチオ又はチアゾリルメチルチオ基が含まれる。
【0058】
望むならば、二つのR10置換基は共に結合して、環状エーテル、例えばメチレンジオキシ又はエチレンジオキシのようなC1〜6アルキレンジオキシ基のような環状の基を形成することができる。
【0059】
二つ以上のR10置換基が存在する場合には、これらは必ずしも同じ原子及び/又は基である必要がないことは理解されるであろう。一般的に、置換基は芳香族又は複素芳香族基の利用できる環の位置のいずれかに存在することができる。
【0060】
式(1)、(1A)及び(2)の化合物中にある置換基が存在することにより、化合物の塩の形成を可能にすることができる。適当な塩には、医薬として受容し得る塩、例えば無機又は有機酸に由来する酸付加塩、及び無機又は有機塩基に由来する塩が含まれる。
【0061】
酸付加塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、アルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩又はイソチオン酸塩、アリールスルホン酸塩、例えばp−トルエンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩又はナフタレンスルホン酸塩、リン酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマール酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩及び安息香酸塩がある。
【0062】
無機又は有機塩基に由来する塩としては、ナトリウム又はカリウム塩のようなアルカリ金属塩、マグネシウム又はカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、及びモルホリン、ピペリジン、ジメチルアミン又はジエチルアミン塩のような有機アミン塩がある。
【0063】
本発明による化合物の特別有用な塩は、医薬として受容し得る塩、特に医薬として受容し得る酸付加塩である。
【0064】
式(2)の化合物の特別な一群、及び後述する工程において、Rは任意に置換されたフェニル、単環式複素アリール又はC3〜7シクロアルキル基、特に任意に置換されたフェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、インドリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基である。特に望ましいのは、Rが任意に置換されたフェニル又はシクロプロピル基の場合である。
【0065】
望ましいRシクロアルキル基のそれぞれは置換されていなくてよい。置換基が存在する場合には、それらは特にハロゲン原子、特にフッ素、塩素若しくは臭素原子を含むか、又はC1〜6アルキル基、特にC1〜3アルキル基、最も特別にはメチル基、又はハロC1〜6アルキル基、特にフルオロC1〜6アルキル基、最も特別なのは−CF基を含むか、又はC1〜3アルコキシ基、特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ若しくはイソプロポキシ基を含むか、又はハロC1〜6アルコキシ基、特にフルオロC1〜6アルコキシ基、最も特別には−OCF基を含むか、又はシアノ(−CN)、エステル化されたカルボキシル(特に−COCH若しくは−COC(CH)、ニトロ(−NO)、アミノ(−NH)、置換アミノ(特に−NHCH若しくは−N(CH)、−C(O)R(特に−C(O)CH)、又は−N(R)C(O)R(特に−NHCOCH基)を含むことができる。
【0066】
芳香族又は複素芳香族基に存在することができる特に望ましい任意の置換基は、1,2又は3個の原子或いは本明細書においてすでに定義した基−R10a又は−LAlk(R10aである。特に有用な任意の置換基として、ハロゲン原子(特にフッ素、塩素又は臭素原子)又はC1〜6アルキル基(特にC1〜3アルキル基、最も特別にはメチル基)、又はハロC1〜6アルキル基(特にフルオロC1〜6アルキル基、最も特別には−CF基)、又はC1〜6アルコキシ基(特にメトキシ、エトキシ、プロポキシ又はイソプロポキシ基)、又はハロC1〜6アルコキシ基(特にフルオロC1〜6アルコキシ基、最も特別には−OCF基)、又はシアノ(−CN)、カルボキシル(−COH)、エステル化されたカルボキシル(−COAlk)(特に−COCH、−COCHCH、又は−COC(CH)、ニトロ(−NO)、アミノ(−NH)、置換アミノ(特に−NHCH又は−N(CH)、−COR11(特に−COCH)、又は−N(R12)COR11(特に−NHCOCH基)が含まれる。
【0067】
芳香族又は複素芳香族基に存在することができるそのほかの望ましい任意の置換基としては、式−LAlk(R10aの基がある。この式中のrは整数1又は2であり;Lは共有結合又は−O−若しくは−S−原子又は−N(R)−(特に−NH−)又は−N(CH)−、−C(O)−、−C(S)−、−C(O)O−、−OC(O)−、−N(R)CO−(特に−NHCO−)又は−CON(R)−(特に−CONH−基)であり;AlkはC1−6アルケン鎖(特に−CH−、−CHCH−、−CHCHCH−又は−CHCHCHCH−鎖)であり;R10aはヒドロキシル又は置換ヒドロキシル基(特に−OCH、−OCHCH又は−OCH(CH基)、又は−NH又は置換アミノ基(特に−N(CH又は−N(CHCH基)、又は−Het基(特に既に記述したように環構造内に、1、2又は3個の−O−、−S−、−N(R12)−(特に−NH−又は−N(CH)−)又は−C(O)−基を含む任意に置換されたC3〜7炭素環基、最も特別には任意に置換されたピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル(例えばN−メチルピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル又はピペラジニル基)などであるか、或いはR10aは任意に置換された複素芳香族基、特に酸素、硫黄および窒素原子から選択される1、2、3又は4個のヘテロ原子を含む5又は6員単環複素芳香族基(例えば任意に置換されたピロリル、フリル、チエニル、イミダゾリル、トリアゾリル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、ピリダジニル又はピラジニル基)である。ここで記述した−Het基の特に望ましい任意の置換基は、ヒドロキシル(−OH)及びカルボキシル(−COH)基が含まれ、特にRが環状アルキル基の場合は、基Rに関連してここで記述した任意の置換基が好ましい。
【0068】
式(2)の化合物の一つの特に望ましい基において、Rは任意に置換されたフェニル基、特に1,2又は3個の置換基で任意に置換されたフェニル基であり、その場合に少なくとも1個、望ましくは2個の置換基が式(2)の化合物の他の部分にRが連結している結合に対してオルトの位置にある。特に望ましいオルト置換基は、ハロゲン原子(特にフッ素又は塩素原子)又はC1〜3アルキル基(特にメチル基)又はC1〜3アルコキシ基(特にメトキシ)又はハロC1〜3アルキル基(特に−CF)又はハロC1〜3アルコキシ基(特に−OCF)又はシアノ(−CN)基を含む。このクラスの化合物において、第二又は第三の任意の置換基は、環Rのオルト位置以外の場所に存在する場合には、本明細書に一般的に及び特別に記述したような原子又は基−R10a又は−LAlk(R10aが望ましいであろう。その他の選択として、Rフェニル基は、式(2)の化合物の他の部分と連結する結合に対してパラの位置に置換基を持つことができる。特別なパラ置換基は、ここで記述した特に望ましいオルト置換基を含む。望むならば、パラ置換基は、ここで記述したようなオルト又はメタ置換基と共に存在することができる。
【0069】
基Rの典型的な例として、フェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−クロロフェニル及びシクロプロピルが含まれ、特にフェニルが含まれる。
【0070】
式(2)の化合物の一つの特別な基、及び後述する工程において、各Rは望ましくは水素原子である。
【0071】
基−COAlkの特別な例は、−COAlkについて既に記述したような基を含む。さらに特別に、式(2)の化合物中及び後述する工程において、Alkは望ましくはC1〜6アルキル基である。
【0072】
基Rの特別な例は、−CN、−NO、−CO1〜6アルキル、−COC1〜6アルキル及び−CONHet基を含む。式(2)の化合物及び後述する工程においてRは望ましくは−CN、−COCH、−COCHCH、−COCH又は−CONHetである。
【0073】
基−NHetの特別な例には、任意に置換されたピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル基が含まれる。化合物の一つの特別な群において、−NHetは任意に置換されたピロリジニル基である。化合物の別の特別な群において、−NHetは任意に置換されたピペラジニル基である。
【0074】
特別に望ましい−NHet置換基には、−OH、−(Alk3a)OH(Alk3aは直鎖又は分枝したC1〜4アルキレン鎖)、−OR7a(R7aは直鎖又は分枝したC1〜6アルキル基)、−(Alk3a)OR7a、−NR7b8a(R7b及びR8aは同一でも又は異なってもよく、それぞれ独立して水素原子又は直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基である)、−(Alk3a)NR7b8a又は直鎖若しくは分枝のC1〜6アルキル基、或いはそれらの保護誘導体から選択される1、2、3又は4個の基(同一又は異なることができる)が含まれる。各置換基は環の炭素原子のいずれかに存在することができる。式(2)の化合物の一つの特別なクラスにおいて、1又は2個の置換基が存在し、後者の場合に別々の環炭素に存在する。−NHetのさらに特別な置換基には、−OH、−CHOH、−CH(CH)OH及び−C(CHOH基、並びにそれら、特に−OH又は−CHOH基の保護誘導体が含まれる。適当な保護基の特別な例として、エステル(例えばメチル又はエチルエステル)又はベンジルエーテル(例えばパラ−メトキシベンジルエーテル又はベンジルエーテル)又はテトラヒドロピラン−2−イルエーテルのようなエーテル、又はアルキルエーテル(例えばメトキシ)が含まれる。典型的にヒドロキシ−保護基はC1〜6アルキル基(特にメチル)、ベンジル基、又はテトラヒドロピラン−2−イル基(特にテトラヒドロピラン−2−イル基)である。
【0075】
−NHetの置換基のその他の例はC1〜6アルキル、特にエチルである。
【0076】
基Rの典型的な例には、−CN、−COCHCH及び−COピロリジン−1−イルが含まれる。Rのその他の例には、−CO[3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)]ピロリジン−1−イル及び−CO[2−(ヒドロキシメチル)]ピロリジン−1−イルが含まれる。Rの他の例は−NOである。Rの追加の例は4−エチルピペラジン−1−イルである。特別な態様において、Rは−CNである。
【0077】
これらの特別な言及は式(1)の生成したハロゲン化物及び式(1A)の化合物にも適用できることは理解されるであろう。
【0078】
Arの適当な価値があるものには、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル又はインドリルが含まれ、これらは上に規定した置換基の1以上により任意に置換され得る。特別な態様において、Arは任意に置換されたフェニルを示す。
【0079】
Ar上の適当な任意の置換基の例にはハロゲン(特にフルオロ)及びC1〜6アルキル(特にメチル)が含まれる。
【0080】
一態様において、Arはフェニルである。別の態様において、Arはメチルフェニル、特に3−メチルフェニルである。また別の態様において、Arは(フルオロ)(メチル)フェニル、特に4−フルオロ−3−メチルフェニルである。
【0081】
式(2)の新規中間体はいずれかの数の工程により調製することができる。直ぐ後に記述される一つの特別な工程は、式(2a)のウラシル誘導体又は式(2b)のヒドロキシアクリル酸誘導体を使用する。
【0082】
従って、本発明の別の態様において、われわれは:
a)式(2a)又は(2b)の化合物を


(式中Rは本明細書に定義されたとおりであり、Rは任意に置換されたアルキル基であり、そしてWは水素原子、金属イオン又はアミン塩である);
式(3)の化合物と反応させ


(式中Rは本明細書に定義されたとおりである);
b)次いで式(5)の化合物と反応させる


(式中Rは本明細書に定義されたとおりであり、Zは脱離基である)
ステップを含む、式(2)の化合物の製造工程を提供する。
【0083】
本明細書に使用されている用語「脱離基」は、反応の過程において置換されるいずれかの基を含むことが意図されている。例としては、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素又はヨウ素)又はアルキルスルホニルオキシのようなスルホニルオキシ基(例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシ)、又はアリールスルホニルオキシ(例えばp−トルエンスルホニルオキシ基)が含まれる。特に望ましいZ基は、ハロゲン原子、特に塩素又は臭素である。
【0084】
式(5)の化合物中の基Wの例には、H、Li、Na又はKのような金属イオン及びトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン又はN−メチルモルホリンのようなアミン塩が含まれる。工程の一つの特別な態様において、Wは金属イオン、特にNaである。
【0085】
基Rの特別な例は、C1〜3アルキル基、特にメチル基である。
【0086】
従って、本発明の工程のステップa)において、式(2a)又は(2b)の化合物は式(3)のチオアミドと反応させられる。この反応は、塩基の存在下に行うことができる。適当な塩基としては、限定はしないが、リチウム塩基(例えばn−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム又はリチウムジイソプロピルアミド(LDA))又はシラザン(例えばリチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)又はナトリウムヘキサメチルジシラザン(NaHMDS))、又は炭酸塩(例えば炭酸カリウム)、又はアルコキシド(例えばナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド又はカリウムtert−ブトキシド)、又はヒドロキシド(例えばNaOH)、又はヒドリド(例えばナトリウムヒドリド)又は有機アミン(例えばトリエチルアミン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン)又は環状アミン(例えばN−メチルモルホリン又はピリジン)が含まれる。反応は、アミド、例えばN,N−ジメチルホルムアミドのような置換アミド、エーテル(例えばテトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンのような環状エーテル)、アルコール(例えばメタノール、エタノール又はプロパノール)、又はアセトニトリルのような有機溶媒中において、環境温度から還流温度の温度において行うことができる。一つの特別な態様において、反応は、アルコキシド塩基、特にナトリウムエトキシド又はナトリウムメトキシドを使用して、アルコール性溶媒、特にエタノール中還流温度において行われる。
【0087】
市販品を入手できない場合には、式(2a)の中間体は、標準的な方法を使用して調製することができる(例えば、Mir Hedayatullah,J.Heterocyclic Chem.,1981,18,339参照)。同様に、市販品を入手できない場合には、式(2b)の中間体は、標準的な方法を使用して調製することができる。例えば、エステル(例えば酢酸エチル)とナトリウムメトキシドのような塩基と、次いでギ酸エステル(例えばギ酸メチル)を加えることによる反応によりその場で調製することができる。
【0088】
同様に、市販品を入手できない場合には、式(3)の中間体は当業者に知られている方法を使用して調製することができる(例えば、Adhikari et al., Aust.J.Chem.,1999,52,63−67参照)。例えば、式RNCSのイソチオシアナートは、塩基、例えばNaHMDSの存在下に適当な溶媒、例えばテトラヒドロフラン中で低温、例えば−78℃付近において任意にアセトニトリルと反応させることができる。基Rの性質によっては、式(3)の中間体を、例えば本明細書に記述した方法を使用し、続いて式(2a)又は(2b)を加えることによりその場で調製することができる。
【0089】
この工程の進行中に式(4)の中間体が形成されている可能性がある:

【0090】
必要があれば、この中間体をステップa)の終了後単離し、次いで中間体(5)と反応させて、目的のアミンを形成することができる。しかし、一部の例では、式(4)の中間体を単離しないのが有利であり、ステップa)の反応混合物と直接反応を行うことができる。
【0091】
工程のステップb)において異なる溶媒が使用される場合には、第二段階に進む前に工程の第一段階から減圧下に溶媒を蒸発させる必要があるかもしれない。蒸発した後に、ステップa)の粗製固体は次の段階に使用することができ、或いはそれを例えば再結晶により精製して、式(4)の化合物のような単離中間体を得ることができる。
【0092】
工程のステップb)において、式(5)の中間体を次いで適当な溶媒中で、ステップa)の反応混合物に加えるか、又は粗製の固体に加えるか、又は精製産物に加えることができる。適当な溶媒としては、限定するものではないが、アミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミドのような置換アミド)、アルコール(例えばエタノール、メタノール又はイソプロピルアルコール)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン又は1,4−ジオキサンのような環状エーテル)及びアセトニトリルがある。この工程の一つの特別な態様において、反応はアセトニトリル中で行われる。反応は、環境温度から還流温度までの温度で行うことができる。
【0093】
ステップb)の過程において、基Rの性質によって、中間体(6):


が観察され或いは単離されることさえある。式(6)の中間体を、既に記述した方法を使用して式(1)の化合物に変換することができる。この場合に、反応を完全に進行させるために、塩基を加える必要があるかもしれない。適当な塩基としては、炭酸塩(例えば炭酸セシウム又は炭酸カリウム)又はアルコキシド(例えばカリウムtert−ブトキシド、又はヒドリド、例えばナトリウムヒドリド)、又は有機アミン(例えばトリエチルアミン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン)、又は環状アミン(例えばN−メチルモルホリン又はピリジン)がある。
【0094】
式(4)及び(6)の中間体は新規であり、それぞれは本発明のその他の態様を形成する。
【0095】
市販品が入手できない場合には、式(5)の中間体は当業者に知られている標準的方法を使用して調製できることは理解されるであろう。例えば、当業者に知られている条件を使用して、アルコール基を脱離基、例えばハロゲン原子又はスルホニルオキシ基に変換することができる。例えば、アルコールをハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン中でチオニルクロリドと反応させて、対応するクロリドを得ることができる。反応に塩基、例えばトリエチルアミンも使用することができる。
【0096】
中間体(2a)、(2b)、(3)又は(5)のような中間体は、市販品で入手できない場合には、Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds, Volumes 1−15 and Supplementals(Elsevier Science Publishers, 1989), Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, Volumes 1−19(John Wiley and Sons, 1999), Comprehensive Heterocyclic Chemistry, Ed, Katritzky et al, Volumes 1−8,1984, and Volumes 1−11, 1994(Pergamon), Comprehensive Organic Functional Group Transformations, Ed, Katritzky et al, Volumes 1−7, 1995(Pergamon), Comprehesive Organic Synthesis, Ed Trost and Fleming, Volumes 1−9(Pergamon, 1991), Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, Ed. Paquette, Volumes 1−8(John Wiley and Sons, 1995), Larock‘s Comprehensive Organic Transformations (VCH Publishers Inc., 1989) and March’s Advanced Organic Chemistry (John Wiley and Sons, 1992)のような参考文献に記載されている方法に従って当業者に知られている方法によっても調製できることは理解されるであろう
【0097】
望むならば、本発明による工程は、式(2)の化合物を別の式(2)の化合物に変換する1以上の連続する反応、例えば後に記述するような方法を任意に使用することにより拡張することができる。
【0098】
本発明による工程は、式(1)の一定のハロゲン化物を製造するのに特に有用である。次いでこれらは、以下のスキーム1に示すように、式(1A)の化合物に変換することができる。

【0099】
このようにスキーム1において、式(1A)の化合物は、遷移金属触媒、例えばパラジウム触媒の存在下に式(1)の化合物とアミンArNHの反応により調製することができる。この反応は、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)のような触媒、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル又はトリ−tert−ブチルホスフィンのようなホスフィンリガンド及び炭酸セシウム又は三カリウムリン酸のような塩基を使用して、トルエン又はエチレングリコールジメチルエーテルのような溶媒中で高温、例えば還流温度において簡便に行うことができる。必要があれば、例えば文献に記述されているようにその他の反応条件を使用することができる(Luker et al., Tetrahedron Lett.,2001,41,7731;Buckwald,S.L.,J.Org.Chem.,2000,65,1144;Hartwig,J.F.,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,1998,37,2046)。
【0100】
スキーム1の式(1)の中間体は、例えばザンドマイヤー反応によるような標準的方法により得ることができる。従って、例えば式(1)のハロゲン化物は、溶媒、例えばアセトニトリルのようなニトリルの存在下で約0℃から約65℃の温度において、酸、例えば硫酸又は塩酸の存在下に式(2)の化合物をジアゾ化試薬、例えば亜硝酸アルキル(例えば亜硝酸tert−ブチル又は亜硝酸ナトリウム)で処理し、次いで銅塩、例えば臭化銅(II)、塩化銅(II)又はヨウ化銅(II)のようなハロゲンの発生源を加えることにより調製することができる。工程の一つの特別な態様においてTは臭素原子である。
【0101】
また、本発明の別の態様において式(1A)の化合物は下記スキーム2に記述された反応によって調製することができる。

【0102】
従ってスキーム2において、式(1A)の化合物は、遷移金属触媒、例えばパラジウム触媒の存在下に式(2)の化合物と化合物ArQ(Qは脱離基)の反応により調製することができる。この反応はトルエン又はエチレングリコールジメチルエーテルのような溶媒中で高温、例えば還流温度において、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)のような触媒、2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル又はトリ−tert−ブチルホスフィンのようなホスフィンリガンド及び炭酸セシウム又は三カリウムリン酸のような塩基を使用して簡便に行うことができる。必要があれば、例えば文献に記述されているような別の反応条件を使用することができる(Luker et al., Tetrahedron Lett., 2001,41,7731;Buchwald,S.L.,J.Org.Chem.,2000,65,1144;Hartwig,J.F.,Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.,1998,37,2046)。この工程の一つの特別な態様において、Qはハロゲン原子、特に臭素原子である。
【0103】
その他の態様において、銅触媒、例えばヨウ化銅(I)を使用することができる。この反応は塩基、例えば三カリウムリン酸の存在下に、任意に適当なアルコール(例えばイソプロパノール)又はエーテル(例えば1,4−ジオキサン)のような溶媒中で行うことができる。エチレングリコール又はN,N−ジメチルエタノールアミンのようなキレート形成リガンドも使用することができる。このタイプの反応においてQは典型的にハロゲン原子、特にヨウ素原子である。
【0104】
式(1)又は(1A)の化合物、本明細書に定義した工程において形成される化合物又は先行する中間体は、上記の工程の間に置換、酸化、還元又は切断の反応を使用する1以上の標準的合成方法によりさらに異なる誘導体にすることができることは理解されるであろう。このような反応は上記の工程に対する任意の追加工程ステップであり、本発明がこのような追加ステップへ拡張されることは理解されるべきである。特別な置換方法としては、通常のアルキル化、アリール化、ヘテロアリール化、アシル化、チオアシル化、ハロゲン化、スルホニル化、ニトロ化、ホルミル化及びカップリング方法がある。これらの化合物に適当な官能基が存在する場合に、式(1)又は(1A)の化合物のいずれか又は先行中間体のいずれかのほかの化合物を得るために又は修飾するためにもこれらの方法を使用することができることは理解されるであろう。
【0105】
従って、例えば、基Rが存在する場合に、当業者に知られている標準的方法を使用して、これで除去して水素原子を与えることができる。例えば、キノリンの存在下に銅を使用する脱カルボキシル化はカルボン酸の除去に使用することができる。ハロゲン原子は、例えばフリーデル−クラフト触媒、例えばAlClを使用するか又は水素化により除去することができる。
【0106】
式(1)及び(1A)及びこれらの中間体の中の−COAlkのようなエステル基は、基Alkの性質によって酸又は塩基触媒による加水分解により対応する酸(−COH)に変換することができる。酸又は塩基触媒加水分解は、例えば有機又は無機の酸、(例えばトリフルオロ酢酸)を用い、有機溶媒(例えばジクロロメタン)中で処理することにより或いは1,4−ジオキサンのような溶媒中塩酸のような鉱酸を用い、又は水性アルコール(例えば水性メタノール)中水酸化アルカリ金属(例えば水酸化リチウム)で処理することにより行うことができる。
【0107】
アミドは対応する酸から標準的な方法を使用して調製することができる。例えば、酸クロリド−COCl(当業者に知られている方法を使用して対応する酸から調製される)を、ヒドリド(例えばナトリウムヒドリド)又はアミン(例えばトリエチルアミン又はN−メチルモルホリン)のような塩基の存在下に、ハロゲン化炭化水素(例えばジクロロメタン又は四塩化炭素)のような溶媒又はアミド(例えばN,N−ジメチルホルムアミド)のような双極性非プロトン性溶媒又はエーテル(例えばテトラヒドロフランのような環状エーテル)中で、例えば環境温度において、二級アミンと反応させることができる。そのほかには、酸を、縮合剤(例えば1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド又はN,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドのようなジイミド)の存在の下に、N−ヒドロキシ化合物(例えば1−ヒドロキシベンゾトリアゾールのようなN−ヒドロキシトリアゾール)などの触媒を存在させて、一級又は二級アミンと反応させることができる。その他に、二級アミンとの間に目的の反応を行う前に、酸をクロロギ酸エステル(例えばクロロギ酸エチルと反応させることができる。
【0108】
ニトリルを、例えば水及びアルコール(例えばエタノール)の中で、水酸化物(例えば水酸化ナトリウム)のような塩基を使用して加水分解し、第一級アミドを得ることができる。
【0109】
その他の相互変換は同時係属のPCT出願番号PCT/GB03/02667の中で考察した。
【0110】
N−オキシドは、例えば酢酸のような酸の存在下に、高温、例えば約70℃から80℃において、過酸化水素のような酸化剤を使用して対応する窒素塩基を酸化することによるか、或いは溶媒、例えばジクロロメタン中において環境温度で過酢酸のような過酸化物と反応させることにより調製することができる。
【0111】
塩は、通常の方法を使用して適当な溶媒、例えばエーテル(例えばジエチルエーテル)、又はアルコール(例えばエタノール)のような有機溶媒又は溶媒の混合物の中で適当な塩基と反応させて調製することができる。
【0112】
特別なエナンチオマーを得たい場合には、適当な通常のエナンチオマーを分離する方法のいずれかを使用して、対応するエナンチオマーの混合物から製造することができる。
【0113】
従って、例えばジアステレオマー誘導体(例えば塩)は、エナンチオマーの混合物(例えばラセミ化合物)と適当なキラル化合物(例えばキラル塩基)の反応により製造することができる。次いで、ジアステレオマーを、いずれかの簡便な方法、例えば再結晶により分離し、ジアステレオマーが塩の場合には、酸で処理することにより目的のエナンチオマーを回収することができる。
【0114】
その他の分離操作において、ラセミ化合物は、キラル高速液体クロマトグラフィーを使用して分離することができる。また、必要とする場合には、既に記述した本発明の工程の一つに適当なキラル中間体を使用することにより特別なエナンチオマーを得ることができる。その他に、特別なエナンチオマーをエナンチオマー特異的酵素による生物的変換、例えばエステラーゼを使用してエステル加水分解を行い、次いでエナンチオマー特異的に加水分解された酸のみを反応しなかったエステル対掌体から分離精製することにより得ることができる。
【0115】
本発明の特別な立体異性体を得るために必要な場合には、クロマトグラフィー、再結晶及びその他の通常の分離方法を中間体又は最終産物に使用することができる。
【0116】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これはいずれにしても本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0117】
温度は全て℃で示す。以下の略称を使用する:
EtOAc−酢酸エチル; DCM−ジクロロメタン;
MeOH−メタノール; MeCN−アセトニトリル;
EtOH−エタノール; EtO−ジエチルエーテル;
DMSO−ジメチルスルホオキシド THF−テトラヒドロフラン;
O−水; r.t.−室温;
NaHMDS−ナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド;
CDCl−重水素クロロホルム;
MIBK−4−メチル−2−ペンタノン;
DME−エチレングリコールジメチルエーテル;
BINAP−2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル;
Pd(dba)−トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0);
EDTA−エチレンジアミン四酢酸。
【0118】
NMRは全て300MHz又は400MHzにおいて記録した。中間体及び実施例は全てBeilstein Autonom(MDL Information Systems GmbH, Therdor−Heuss−Allee 108D, 60486, Frankfurt,Germanyより入手可能)を参考に命名した。
【0119】
引用されたLCMS保持時間(RT)は、Electrosprayによるイオン化及び以下のLC方法:Phenomenex Luna C18(2) 5μ 100 mm×4.6 mmカラム;移動相A=0.08%ギ酸/水;移動相B=0.08%ギ酸/MeCN;流速3.0 mLmin−1、カラム温度35℃を使用するHewlett Packard 1100/ThermoFinnigan LCD Duo LC/MS systemにより作成された。
グラジエント:−

【0120】
ガスクロマトグラフィーは、SGE 25QC2 BP5 1.0カラムを使用してPerkin Elmer Autosystem 装置で行った。初期温度は70℃、15℃/minで250℃まで加熱し、10分間維持した。注入温度は150℃、検出器温度は250℃。
【0121】
中間体1
2−シアノ−N−フェニルチオアセトアミド
表題化合物は、Adhikari et al.,Australian J.Chem.,1999,52,63−67に従って調製した。

【0122】
中間体2
2−クロロ−1−(ピロリジン−1−イル)エタノン
表題化合物はUS−2788202に従って調製した。

【0123】
中間体3
(R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン
冷却した(R)−ピロリジン−3−オル(25 g)のMeOH(12 ml)溶液中に、温度を15℃以下に維持して、15分間かけてギ酸メチル(23 ml)を滴加した。滴加終了後、反応液をさらに30分間攪拌した。GC分析は反応完結を示した。過剰のMeOH及びギ酸メチルを真空下にロータリーエバポレーターで濃縮して除去した。トルエン(50 ml)を加え、再度混合物を濃縮して完全に除去した。(R)−3−ヒドロキシピロリヂン−1−カルボアルデヒドが96%収率(32.3 g)で得られ、GC,RT 10.0 minにより99%純度であった。

【0124】
(R)−3−ヒドロキシピロリヂン−1−カルボアルデヒド(31 g)をジヒドロピラン(36.8 ml)及びp−トルエンスルホン酸(1g)で処理した。混合物を約1時間室温で攪拌し、その間に色が黄色から暗紫色に変化した。GC分析は反応完了を示した。飽和重炭酸ナトリウム溶液(90 ml)を加えて反応を停止した。水性層をDCM(3×90 ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和食塩液(90 ml)で洗い、ついでMgSO上で乾燥し、30℃以下で濃縮した。生成物、3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン−1−カルボアルデヒドが100%収率(54.5 g)で得られた。GC分析は隣接した2つのピーク(RT 14.45及び14.83 min)を示し、それぞれ49.7及び47.1%であった。

【0125】
水(50 ml)中KOH(5 g)の溶液を3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン−1−カルボアルデヒドに加えた。混合物を約1時間50℃に加熱した後、GC分析は反応完了を示した。室温に冷却した後、生成物をDCM(3×50 ml)で抽出した。有機層をMgSO上で乾燥し、濃縮した。表題化合物が100%収率(8.5 g)で得られた。GC分析、RT 10.4 min、96.6%純度。

【0126】
中間体4
2−クロロ−1−[(R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン−1−イル]エタノン
中間体3(2 g)をDCM(30 ml)に溶解し、氷水浴を使用して冷却した。ジイソプロピルエチルアミン(2.3 ml)を加えた。クロロアセチルクロリド(0.93 ml)を1時間かけて滴加し、温度を7℃以下に維持した。滴加が終了したとき、NaHCO(30 ml,5% w/v)を加えた。混合物を攪拌し、1時間で室温に温度を上昇させた。層を分離し、有機層をMgSO上で乾燥し、濃縮した。表題化合物が褐色油状物として93%収率(2.6 g)で得られた。

【0127】
中間体5
2−クロロ−1−((S)−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)エタノン
表題化合物は、Nicolaides et al.,J.Med.Chem.,1986,29,959−971に記載された方法に従って調製された。
【0128】
中間体6
2−クロロ−1−(4−エチルピペラジン−1−イル)エタノン
クロロアセチルクロリド(6.63 ml)及びトリエチルアミン(13.4 ml)のDCM(20 ml)溶液を、1−エチルピペラジン(10 g)のDCM(60 ml)溶液に窒素気流下で滴加した。混合物を17時間室温で攪拌した後、DCMとHO(100 ml)に分配した。水層を1M NaOHを使用して中和し、DCMで抽出した。有機層を乾燥(MgSO)し、真空下に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、0から5%MeOH/DCM)による精製により淡色油状物として表題化合物を得た(3.23 g,19%)。

【0129】
実施例1
3−シアノ−6−オキソ−1−フェニル−1,6−ジヒドロピリジン−2−チオール酸ナトリウム
方法A
ナトリウムメトキシドのMeOH溶液(30wt%,202.2 g)を無水EtOH(360 mL)に加え、次いで1,3−ジメチルウラシル(75 g)及び2−シアノ−N−フェニルチオアセトアミド(90 g)を加えた。生じた混合物を8時間還流加熱し、次いで終夜環境温度に冷却させた。次いで反応混合物を+5℃に冷却し、この温度に少なくとも1時間維持して、生成物を濾過により回収した。濾取した粗製物を冷却した(+5℃)無水EtOH(450 ml)で洗い、次いで真空下45℃で一定重量になるまで乾燥して表題化合物を淡桃色固体(130.0 g)として得た。このようにして得られた生成物は残留EtOH及びMeOHを含んでおり、1H NMRにより12.2 wt%と推定され、それによる修正収量は114.1 gであった。

【0130】
方法B
ナトリウムメトキシド(2.88 g)をEtOAc(8.7 mL)に加え、+14℃に冷却した。生じた懸濁に、反応温度を+14℃に維持して、4.3時間をかけてゆっくりとギ酸メチル(2.2 mL)を加えた。この後、温度を+25℃に調節して、この温度において反応を終夜攪拌し続けた。次いで無水EtOH(25 mL)及びナトリウムメトキシドのMeOH溶液(30 wt%、6.7 mL)、次いで2−シアノ−N−フェニルチオアセトアミド(5 g)を加え、生じた混合物を24時間加熱還流した。反応を+5℃に冷却し、濾過により生成物を回収した。濾取した粗成生物を冷却した(+5℃)無水EtOH(20 ml)で洗い、次いで真空下45℃において一定重量になるまで乾燥し、表題化合物を淡桃色固体として得た(2.77 g;純度100%で2.63 gに相当)。

【0131】
実施例2
1−(2−クロロフェニル)−3−シアノ−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−2−チオール酸ナトリウム
NaHMDS(13.2 mL,1.0 M/THF,13.2 mmol)を−78℃において徐々に2−クロロフェニルイソチオシアン酸(1.02 g,6.0 mmol)のTHF(50 mL)及びアセトニトリル(5 mL)の溶液に加えた。反応を1時間かけて室温に暖めた。N,N−ジメチルウラシル(841 mg,6.0 mmol)及びEtOH(75 mL)を加えて、混合物を4時間加熱還流した。真空下に揮発物を除去し、残留物を加熱EtOH(10 mL)に溶解した。EtO(約100 mL)を加えて、徐々に生成物を沈殿させた。固体を濾取し、EtO(2×30 mL)で洗い、乾燥して表題化合物(1.5 g,88%)(極めて吸湿性)を得た。

【0132】
実施例3
3−アミノ−6−オキソ−7−フェニル−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
実施例1(100%で100 g)及びクロロアセトニトリル(30.4 mL)の混合物をMeCN(500 mL)中で2時間加熱還流した。混合物を冷却し、最初は40℃において水(300 mL)を加え、次いで+10℃に冷却した。反応を少なくとも1時間+10℃に維持し、生成物を濾過により回収した。濾取した粗製物を冷HO(+10℃,500 mL)次いで冷却した(+10℃)MeCN及びHOの混合物(1:1,300 mL)で洗った。生成物を真空下50℃で一定重量まで乾燥し、オフホワイト固体として表題化合物(100.9 g)を得た。

【0133】
実施例4
3−アミノ−6−オキソ−7−フェニル−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチルエステル
実施例1(100%で0.34 g)及びブロモ酢酸エチル(0.197 mL)のEtOH(6 mL)中の混合物を室温で1時間攪拌した。次いでHO(10 mL)を加えた。固体を濾取し、さらにHO(2 mL)で洗った。生成物を真空下40℃で一定重量まで乾燥して、淡桃色固体として表題化合物(0.35 g)を得た。

【0134】
実施例5
3−アミノ−7−(2−クロロフェニル)−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
方法A
クロロアセトニトリル(0.35 mL,5.5 mmol)を実施例2(1.42 g,5.0 mmol)のMeCN(50 mL)溶液に加え、混合物を3時間40℃に加熱した。HO(100 mL)を加えて、混合物を真空下に濃縮してMeCNの一部を除去した(残留容積は約120 mL)。混合物を0℃に冷却し、固体を濾取し、HO(15 mL)及びEtO(2×15 mL)で洗い、乾燥して淡褐色固体として表題化合物(505 mg、32%)を得た。

【0135】
方法B
NaHMDS(100 mL,1.0 M/THF,100 mmol)のTHF(50 mL)溶液に−78℃においてMeCN(10 mL)を加えて、厚い白色沈殿を生じた。イソチオシアン酸2−クロロフェニル(7.72 g、45.45 mmol)を加えて褐色溶液を生じた。混合物を1時間かけて室温に温め、次いでEtOH(50 mL)で希釈した。N,N−ジメチルウラシル(6.4 g、45 mmol)を加えて、混合物を24時間還流加熱した。真空下に揮発物を除去し、残留物をMeCN(100 mL)に溶解した。クロロアセトニトリル(2.85 mL、45 mmol)を加えて、混合物を1時間50℃に加熱し、二度目のクロロアセトニトリル(2.85 mL,45 mmol)を加えて1.5時間加熱を継続した。MeCNの一部(約50 mL)を真空下に除去し、HOを加えて生成物を沈殿させた。褐色固体を濾取し、HO(50 mL)及びEtO(50 mL)で洗い、乾燥して褐色固体として表題化合物を得た(14.3 g、定量的)。

【0136】
実施例6
3−シアノ−1−(2−メチルフェニル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−2−チオール酸ナトリウム
NaHMDS(THF中1.0 M溶液の84 mL,84 mmol)の溶液を、THF(100 mL)中イソチオシアン酸o−トリル(5.0 g、33.5 mmol)及びMeCN(18 mL)の溶液に−78℃において加えた。混合物を3時間かけて室温に温めた。N,N−ジメチルウラシル(4.62 g、33 mmol)及びEtOH(75 mL)を加えて、混合物を3時間還流加熱し、次いで終夜室温で攪拌した。揮発物を真空下に除去した。残留物はそれ以上の精製をせずに粗製のままで次のステップに使用した。
【0137】
実施例7
3−アミノ−7−(2−メチルフェニル)−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
MeCN(25 mL)中の粗製実施例6(上記で得られた物質の半分)及びクロロアセトニトリル(1.94 mL)の混合物を5時間加熱還流した。揮発物を真空下に除去した。残留物をHOで処理して固体を得て、これを濾取し、乾燥して表題化合物(3.0 g)を得た。

【0138】
実施例8
3−シアノ−1−(4−メチルフェニル)−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−2−チオール酸ナトリウム
NaHMDS(36.8 mL、1.0 M/THF、36.8 mmol)を、イソチオシアン酸4−トリル(2.5 g、16.75 mmol)のTHF(30 mL)及びMeCN(5 mL)中の溶液に−78℃において徐々に加えた。1時間をかけて混合物を室温に温めた。N,N−ジメチルウラシル(2.35 g、16.75mmol)及びEtOH(20 mL)を加えて、混合物を4時間加熱還流した。揮発物を真空下に除去し、残留物をEtOH(6 mL)に溶解した。EtO(約60 mL)を徐々に加えて微細なオフホワイトの固体を生じた。懸濁を0℃に冷却し、固体を濾取し、EtOで洗い、乾燥してオフホワイト固体として表題化合物(1.7 g、39%)を得た。

【0139】
実施例9
3−アミノ−7−(4−メチルフェニル)−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
クロロアセトニトリル(0.41 mL、6.4 mmol)を、MeCN(40 mL)中の実施例8(1.7 g、6.44 mmol)の懸濁に加えた。混合物を2時間45℃に加熱した。真空下に溶媒を除去し、残った固体をHO(30 mL)に懸濁した。固体を濾取して、HO(3×10 mL)及びEtO(5 mL)で洗い、乾燥して、オフホワイト固体として表題化合物(1.22 g、67%)を得た。

【0140】
実施例10
3−ブロモ−6−オキソ−7−フェニル−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
MeCN(600 mL)中の無水臭化銅(II)(23.4 g)及びtert−ブチルニトリル(14.8 g)の室温の混合物に、実施例3(20 g)を少しずつ、内部の反応温度が25℃以下に保たれるように加えた。この添加に約1時間を要した。HPLCによる分析は、さらに30分の攪拌後に出発物質のほぼ完全な変換を示した。次いで反応混合物を500 mLの1 M HCl上に注いだ(注意:褐色の蒸気が発生する)。次いでこれをDCM(2×400 mL)で抽出した。次いで合併した有機抽出液を1 M HCl(3×300 mL)で洗い、MgSO上で乾燥し、蒸発乾固した。得られた粗製の生成物をMIBK(700 mL)から再結晶した。生成物を50℃において真空下に一定重量になるまで乾燥して淡褐色固体として表題化合物(15.14 g)を得た。

【0141】
実施例11
6−オキソ−7−フェニル−3−フェニルアミノ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
方法A
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した100 ml三つ首丸底フラスコにKPO(5.90 g)、tBuPh.BF(110 mg),実施例3(5.0 g)及びPd(dba)(85.5 mg)を加えた。この混合物に完全に脱気した無水DME50 mlを加えた。次いで反応混合物を真空下に置き、次いで窒素を流した。この反応混合物にシリンジを介してブロモベンゼン(3.25 g)を加えた。次いで反応を還流させた。5時間還流後に反応は完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、1時間この温度に保った。次いで固体を濾取した。次いで組成の固体を50 mlの1.0 N HCl中で1時間懸濁した。次いでベージュ色の固体を濾取し、HO(50 ml)で洗った。次いで生成物を真空下50℃において乾燥して淡褐色固体として表題化合物(5.27 g)を得た。

【0142】
方法B
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した50 ml二首丸底フラスコにCsCO(1.38 g),(+/−)−BINAP(1.88 mg)、実施例10(1.00 g)及びPd(dba)(138.4 mg)を加えた。この混合物に20 mlの完全に脱気した無水トルエンを加えた。反応混合物を真空下に置き、次いで窒素を流した。この反応混合物にシリンジを介してアニリン(0.338 g)を加えた。次いで反応を還流させた。16時間還流後反応は完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、1時間この温度に保った。次いで固体を濾取した。次いで粗製の固体を10 mlの1.0 N HCl中で1時間懸濁した。次いでベージュ色の固体を濾取し、HO(10 ml)で洗った。次いで生成物を真空下50℃において乾燥して淡褐色固体として表題化合物(0.68 g)を得た。

【0143】
実施例12
6−オキソ−7−フェニル−3−フェニルアミノ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボキサミド
窒素の導入/排出口を装着した100 ml丸底フラスコに実施例11(1.45 g)及びHO(20 mL)に0.382 gのNaOHを溶解した溶液の13.3 mL、プラス無水EtOH(30 mL)を加えた。次いで反応を還流させた。約1時間還流後に反応は完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、1 M HCl(100 ml)上に注いだ。次いでこの混合物をDCM(2×75 mL)で抽出した。合併した有機層を1 M HCl(2×50 mL)で洗い、乾燥し(MgSO)、そして蒸発乾固した。得られた粗製の生成物をシリカカラムに通し、4:1 DCM:EtOAcで溶出した。生成物を真空下に50℃で乾燥して淡黄色固体として表題化合物(1.47 g)を得た。

【0144】
実施例13
3−ブロモ−7−(2−クロロフェニル)−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
実施例5(1.17 g、3.88 mmol)をMeCN(20 mL)に懸濁した。臭化銅(II)(953 mg、4.27 mmol)、次いでtert−ブチルニトリル(0.64 mL、5.43 mmol)を加えた。この混合物を室温で3時間攪拌し、次いで2 M HCl水溶液(100 mL)及びEtOAc(100 mL)に分配した。有機層を2 M HCl水溶液(50 mL)、2 M NaOH水溶液(50 mL)及び水(25 mL)で洗い、乾燥し(NaSO)、真空下に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、DCM中0から5%EtOH)により精製して淡褐色固体として表題化合物(980 mg、67%)を得た。

【0145】
実施例14
7−(2−クロロフェニル)−3−[(4−フルオロ−3−メチルフェニル)アミノ]−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
実施例13(500 mg、1.37 mmol)、4−フルオロ−3−メチルアニリン(206 mg、1.64 mmol)、CsCO(625 mg、1.92 mmol)、BINAP(85 mg、0.37 mmol,10 mol%)及びPd(dba)(63 mg、0.0685 mmol)の混合物をトルエン中18時間加熱還流した。2回目のBINAP(42 mg、5 mol%)及びトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(31.5 mg、2.5 mol%)を加えて、混合物をさらに4日間加熱還流した。混合物をDCM(100 mL)とHO(50 mL)に分配した。有機層を乾燥し(NaSO)、真空下に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、10%EtOAc/DCM)により精製し、オフホワイト固体として表題化合物(160 mg、28%)を得た。

【0146】
実施例15
7−(2−クロロフェニル)−3−[(4−フルオロ−3−メチルフェニル)アミノ]−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボキサミド
エタノール(6 mL)中の実施例14(136 mg,0.33 mmol)に水酸化ナトリウム(0.25 M水溶液の0.68 mL、0.17 mmol)を加え、混合物を1時間加熱還流した。混合物を真空下に濃縮し、残留物を水に懸濁し、固体を濾取し、乾燥した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、20%EtOAc/DCM)により精製して、淡黄色固体として表題化合物(65 mg,46%)を得た。

【0147】
実施例16
3−アミノ−7−フェニル−2−(ピロリジノ−1−カルボニル)−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
実施例1(0.5 g)及び中間体2(0.35 g)の混合物をMeCN(10 mL)中で1.5時間加熱還流した。水(2.5 ml)を加えて、生じた混合物を真空下に濃縮した。生じた固体沈殿を濾過により回収し、真空下に乾燥して6−オキソ−2−[2−オキソ−2−(ピロリジン−1−イル)エチルスルファニル]−1−フェニル−1,6−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(0.56 g)を得た。δH(DMSO−d6)7.998(1H,d,J9.5 Hz),7.75(3H,m),7.55(2H,m),6.85(1H,d,J9.5 Hz),3.86(2H,s),3.62−3.37(4H,m),2.15−1.90(4H,m)。この物質(0.38 g)及びKCO(0.31 g)の混合物をEtOH(7.5 mL)中で2.5時間加熱還流した。HO(10 mL)を加えて、混合物を真空下に濃縮した。生じた固体生成物を濾取し、水で洗い、真空下に乾燥してオフホワイト固体として表題化合物(0.37 g)を得た。

【0148】
実施例17
7−フェニル−3−フェニルアミノ−2−(ピロリジン−1−カルボニル)−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した50 ml三つ首丸底フラスコにKPO(94 mg)、tBuPh.BF(8.6 mg),実施例16(100 mg)及びPd(dba)(13.5 mg)を加えた。この混合物に完全に脱気した無水DME10 mlを加えた。次いで反応混合物を真空下に置き、次いで窒素を流した。この反応混合物にシリンジを介してブロモベンゼン(70 mg)を加えた。次いで反応を還流させた。5時間還流後に反応は完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、1時間この温度に保った。次いで反応混合物をHCl(20 ml,1.0 N)上に注ぎ、DCM(2×50 ml)で抽出した。合併した有機層を水(50 ml)で洗った。次いで有機層を乾燥し(MgSO)、蒸発して淡黄色固体として定量的に粗生成物を得た。MeOHから再結晶し、50℃で真空下に乾燥して、オフホワイトの固体として表題化合物(50 mg)を得た。

【0149】
実施例18
3−シアノ−1−シクロプロピル−6−オキソ−1,6−ジヒドロピリジン−2−チオール酸ナトリウム
NaHMDS(THF中1.0 M溶液の122 mL,122 mmol)の溶液を、THF(50 mL)中イソチオシアン酸シクロプロピル(4.85 g,48.9 mmol)及びMeCN(25.5 mL,10 eq)の溶液に−78℃において加えた。混合物を2時間かけて室温に温めた。N,N−ジメチルウラシル(5.9 g,49 mmol)及びEtOH(60 mL)を加えて、混合物を3時間加熱還流し、次いで終夜室温で攪拌した。揮発物を真空下に除去した。残留物をEtOH及びEtOAcの混合物に溶解し、次いでEtOを加えた。粘着性の固体を濾取し、乾燥して、表題化合物(11 g,粗製)を得たが、これはそれ以上の精製をせずに次のステップに使用した。
【0150】
実施例19
3−アミノ−7−シクロプロピル−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
粗製実施例18(9 g,推定42 mmol)及びクロロアセトニトリル(2.7 mL,42 mmol)の混合物をMeCN(100 mL)中で3時間加熱還流した。揮発物を真空下に除去した。残留物にHO(100 mL)を加えて得られた固体を濾取し、乾燥した。粗製の物質をHOとEtOAcに分配し、水層をEtOAcで抽出した。合併した有機層を真空下に濃縮した。残留物をEtOHに溶解し、溶液をEtOで処理して固体を得て、これを濾取し、乾燥して淡褐色固体として表題化合物(2.5 g)を得た。

【0151】
実施例20
3−ブロモ−7−シクロプロピル−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
臭化銅(II)(0.53 g,2.37 mmol)及びtert−ブチルニトリル(0.40 mL,3.02 mmol)を実施例19(0.5 g,2.16 mmol)のMeCN(15 mL)溶液に加えた。反応混合物を室温で4時間攪拌した。DCM(100 mL)を加えて、混合物を2 M HCl水溶液及び2 M NaOH水溶液で洗い、乾燥し(MgSO)、真空下に濃縮して表題化合物(400 mg,63%)を得た。

【0152】
実施例21
7−シクロプロピル−3−[(3−メチルフェニル)アミノ]−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
実施例20及びm−トルイジンから実施例14の方法により調製された。淡黄色固体。

【0153】
実施例22
7−シクロプロピル−3−[(3−メチルフェニル)アミノ]−6−オキソ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボキサミド
実施例21から実施例15の方法により調製された。淡黄色固体。

【0154】
実施例23
6−オキソ−7−フェニル−3−m−トリルアミノ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボニトリル
方法A
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した2 Lジャケット付き容器にKPO(120 g)、3−ブロモトルエン(69.7 g)及び実施例3(100.5 g)を加えた。この混合物に1 Lの無水DMEを加えた。次いで約1時間窒素ガスを激しく通気することにより反応混合物を完全に脱気した。反応混合物にtBuPH.BF(6.57 g)及びPd(dba)(2.59 g)をDME(50 ml)で洗い流して加えた。次いで反応を還流させた。還流約3時間後に反応は完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、次いで1 Lの0.1 M EDTA溶液上に注いだ。次いで生じた顆粒状固体を室温で1時間攪拌した。固体を濾取して集め、水(3×200 ml)で洗った。生成物を真空下50℃で乾燥してベージュ固体として表題化合物(122 g,92.0%)を得た。HPLCは、92.5%のPAR、及び5.0%のビス−アリール化産物を示した。これは酢酸から再結晶することにより精製して、表題化合物を得ることができた。

【0155】
方法B
乾燥した25 mlフラスコにKPO(1.69 g)、ヨウ化銅(I)(0.08 g)、エチレングリコール(0.50 g)、3−ヨードトルエン(1.75 g)及び実施例3(1.07 g)を入れた。これに予め脱気した無水1,4−ジオキサンを加え、この混合物に真空/窒素気流を行った。反応を窒素雰囲気中で加熱還流し、LCで監視した。1.5時間後に完全な変換が達成された。次いで反応を水(30 ml)に注ぎ、DCM(30 ml)で抽出した。DCMを2×30 mlの5%EDTA溶液で洗い、水層を合併して20 mlのDCMで抽出した。有機層を全て合併し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して、減圧下に濃縮した。残留物を室温において2時間10 mlのMeOH中に懸濁し、濾過し、MeOH(3×2 ml)で洗い、真空下に乾燥して表題化合物(0.74 g)を得た。

【0156】
方法C
実施例3の化合物(5.00 g)、3−ヨードトルエン(4.85 ml)、ヨウ化銅(I)(0.36 g)、KPO(7.90 g)及びN,N−ジメチルエタノールアミン(50 ml)を予め乾燥し、還流コンデンサーを装着した250 ml丸底フラスコに入れた。フラスコを閉じ、真空とし、窒素を充填する操作を3回行った。白色/桃色の懸濁をマグネチックスタラーバーの運動により攪拌し、80℃に加熱した。反応は褐色懸濁となり、次いで褐色溶液となった。この温度で1.5時間後、hplcにより完了したことが示された。反応を室温に冷却し、100 mlの水を添加することにより反応を停止し、さらに1時間室温で攪拌した。懸濁液を濾過し、さらに100 mlの水で洗い、乾燥後粗製の緑色/褐色固体(6.78 g)を得た。粗製産物(6.00 g)を4倍容量のAcOHから再結晶し、EtOAc(50 ml)で洗い、次いで真空下に乾燥して、黄色固体として表題化合物(4.16 g)を得た。

【0157】
実施例24
6−オキソ−7−フェニル−3−m−トリルアミノ−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボキサミド
KOH(12.69 g,85+%)の水(230 ml)溶液を実施例23(114 g)のEtOH(345 ml)中懸濁に加えた。生じた混合物を70分間加熱還流し、その時点において反応は完結した。冷却し、水(285 ml)を加えた。懸濁液を濾過し。水(200 ml)で洗った。生成物を真空下に乾燥して黄色固体として表題化合物(120 g)を得た。

【0158】
実施例25
3−アミノ−7−フェニル−2−[(R)−3−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン−1−カルボニル]−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
中間体4(11.6 g)、実施例1(100%で11.75 g)及びKCO(6.5 g)のアセトニトリル(135 ml)中懸濁を2時間加熱還流した。反応を環境温度に冷却し、水(270 ml)を加えた。混合物を45分攪拌して、濾過した。淡褐色固体を水で洗い、次いで40℃の真空オーブン中で乾燥した。表題化合物を73%の収率(15.1 g)で得た。

【0159】
実施例26
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニルアミノ)−7−フェニル−2−[(R)−(3−テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)ピロリジン−1−カルボニル]−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
方法A
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した100 ml二つ首丸底フラスコに実施例25(1 g)、KPO(0.72 g)、PBuH.BF(0.072 g)及びPd(dba)(0.105 g)を加えた。この混合物に5−ブロモ−2−フルオロトルエン(0.517 g)を無水DME(30 ml)溶液として加えた。この溶液を完全に脱気した。次いで反応混合物を真空下に置き次いで窒素を流した。反応を還流させた。還流21時間後反応は約98%完結した。反応混合物を環境温度に冷却し、次いでEDTA溶液(30 ml,5%)上に注ぎ、セライトを通して濾過した。これを次いでDCM(2×30 ml)で抽出した。合併した有機層を次いで水(50 ml)で洗い、MgSO上で乾燥し、蒸発させて褐色油状物を得た。次いでこれを3倍容量のEtOH中で攪拌して結晶化し、次いで真空下40℃で乾燥して淡黄色固体として表題化合物(0.70 g)を得た。

【0160】
方法B
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した100 ml三つ首丸底フラスコに実施例25(0.50 g)、KPO(0.484 g)及びCuI(0.024 g)を加えた。この混合物に充分に脱気した5−ヨード−2−フルオロトルエン(0.30 g)及びエチレングリコール(0.141 g)のイソプロパノール(20 ml)溶液を加えた。反応混合物を真空下に置き次いで窒素を流した。反応を還流させた。還流26時間後反応は約85%変換した。反応混合物を環境温度に冷却し、次いで1 M HCl溶液(25 ml)上に注いだ。次いでこれをDCM(2×50 ml)で抽出した。次いで合併した有機層を水(50 ml)で洗い、MgSO上で乾燥し、蒸発させて粗製の褐色油状物を得た。3倍容量のEtOHから再結晶して淡黄色固体として表題化合物(0.125 g)を得た。

【0161】
実施例27
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニルアミノ)−2−((R)−3−ヒドロキシピロリジン−1−カルボニル)−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
実施例26(5.8 g)のEtOH(180 g)中懸濁を1.3 M HCl(32 ml)で処理した。混合物を環境温度で終夜攪拌した。2 M水酸化ナトリウムを使用してpHを8に調節した。得られた混合物を濃縮してEtOHを除去し、固体を濾取し、水で洗い、次いで25 mlの水中に1時間懸濁した。懸濁を濾取し、水で洗い、生成物を45℃のオーブン中で終夜乾燥した。ベージュ色の固体を19倍容量のEtOHから再結晶して、結晶性固体として表題化合物(3.52 g)を得た。

【0162】
実施例28
3−アミノ−2−((S)−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボニル)−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
MeCN(10 ml)中の中間体5(1.2 g)、実施例1(100%で1.69 g)及びKCO(0.93 g)の混合物を2時間加熱還流した。水(10 ml)を加え、不溶性の物質を濾過により除いた。得られた濾液を真空下に濃縮し、次いでDCM(3×5 ml)で抽出した。合併した有機抽出液を食塩液(5 ml)で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させて黄色泡状物として表題化合物(1.34 g)を得た。

【0163】
実施例29
3−(4−フルオロ−3−メチルフェニルアミノ)−2−((S)−2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−カルボニル)−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
窒素の導入/排出口を装着した乾燥した25 mlフラスコにKPO(0.589 g)、エチレングリコール(0.178 g)、2−フルオロ−5−ヨードトルエン(0.368 g)、ヨウ化銅(I)(0.028 g)及び実施例28(0.516 g)を加えた。この混合物に予め脱気した無水プロパン−2−オル(10 ml)を加えた。次いでこれを窒素/真空サイクルにかけた。窒素雰囲気中で反応を17.5時間加熱還流した。この後反応を濾過し、濾液を水(50 ml)に注いだ。次いでこれをDCM(1×30 ml及び2×20 ml)で抽出し、有機層を合併して、1 Mアンモニア溶液(1×100 ml)で洗い、次いで1 Mアンモニア溶液(1×50 ml)及び水(1×50 ml)で洗った。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下に濃縮乾燥した。溶出液としてDCM/EtOAcを使用して残留物をシリカ(30 g)のカラムを通した。これにより0.140 gの表題化合物を得た。

【0164】
実施例30
3−ブロモ−6−オキソ−7−フェニル−6,7−ジヒドロチエノ[2,3−b]ピリジン−2−カルボン酸エチルエステル
1 lジャケット付き容器中窒素雰囲気において、tert−ブチルニトリル(90%工業規格、10 ml)及び臭化銅(II)(16.66 g)をMeCN(200 ml)中10℃で攪拌した。この冷却した混合物に実施例4(20 g)を約1 gずつ90分をかけて加えた。さらに1時間10℃に保った後、反応を室温に温めた。反応混合物を300 mlの1 M HClに注ぎ、30分間攪拌した(注意:褐色蒸気)。生じた緑色懸濁を濾過し、粗製の橙色固体を得て、これを水(2×200 ml)で洗った。粗製の固体を7倍容量のMIBKから再結晶して、黄/橙色固体として表題化合物(17.81 g)を得た。

【0165】
実施例31
3−アミノ−2−ニトロ−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
36.6 gの実施例1に400 mlのアセトニトリルを加えた。生じた懸濁を70℃に加熱し、22.5 gのブロモニトロメタンを20分かけて滴下して加えた。反応をさらに100分間加熱還流した後、氷浴中で冷却した。生じた沈殿を吸引により単離し、充分に水で洗った。真空下55℃において乾燥した後、35.9 gの表題化合物を得た。

【0166】
実施例32
3−ブロモ−2−ニトロ−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
500 mlフラスコに350 mlのアセトニトリルを入れた。窒素雰囲気中攪拌しつつtert−ブチルニトリル(15.1 g)及び臭化銅(II)(29.9 g)を加えた。得られた混合物を6℃に冷却し、実施例31(35 g)を少量ずつ4時間かけて加え、この間温度を10℃以下に保った。次いで反応を環境温度に上昇させて、16時間攪拌した。反応混合物を280 mlの2 M塩酸中に注ぎ、生成物を吸引により得て、水で洗った。乾燥後、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して黄色粉末として表題化合物(24.6 g)を得た。

【0167】
実施例33
3−アミノ−2−(4−エチルピペラジン−1−イルカルボニル)−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
アセトニトリル(50 ml)中の中間体6(1.5 g)、実施例1(100%で1.97 g)及びKCO(1.09 g)の混合物を6時間加熱還流し、次いで室温に冷却した。水(50 ml)を加えて、反応を室温で30分間攪拌した。混合物をDCM(2×100 ml)で抽出し、有機層を乾燥(MgSO)し、真空下に濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、5%MeOH/DCM)により精製して、暗褐色固体として表題化合物(1.58 g,53%)を得た。

【0168】
実施例34
3−ブロモ−2−(4−エチルピペラジン−1−イルカルボニル)−7−フェニル−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
アセトニトリル(10 ml)中の臭化銅(II)(1.1 g)及びtert−ブチルニトリル(0.40 ml)の中に10℃においてアセトニトリル(50 ml)中に実施例33(1.3 g)を懸濁して滴加した。混合物を室温で2時間攪拌し、次いで真空下濃縮し、残留した暗褐色油状物をDCM(100 ml)及び2 M HCl(100 ml)中で終夜攪拌した。有機層を乾燥し(MgSO)、真空下濃縮した。カラムクロマトグラフィー(シリカ、5%MeOH/DCM)で精製して黄色油状物として表題化合物(400 mg、30%)を得た。

【0169】
実施例35
2−(4−エチルピペラジン−1−イルカルボニル)−7−フェニル−3−フェニルアミノ−7H−チエノ[2,3−b]ピリジン−6−オン
乾燥した100 mlフラスコにCsCO(411 mg)、(+/−)―BINAP(56 mg)、Pd(dba)(触媒量)、アニリン(92 mg)及び実施例34(400 mg)を入れた。これに20 mlの予め脱気したトルエンを加えた。次いでこの混合物を真空/窒素通気のサイクルにかけた。次いで窒素雰囲気の下に反応を加熱還流した。約8時間後のLCMS分析は表題化合物への47%変換を示した。RT 1.83分、459(M+H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)の化合物及びその塩、溶媒和物、水和物、保護誘導体及びN−オキシド:


(式中
Rは、−CN、−NO、−COAlk、−COC1〜6アルキル又は−CONHet基であり;
Alkは、任意に置換されたアルキル、アリールアルキル−、アリール、アリールオキシアルキル−、アルカノイルオキシアルキル−又はアロイルオキシアルキル−基であり;
NHetは、基−COに窒素原子を介して結合した任意に置換された4から6員複素環式アルキル基であり;
は、任意に置換されたアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル又はヘテロシクロアルキル基であり;
は、同一でも、異なってもよく、それぞれ水素原子又は水素原子前駆体である)。
【請求項2】
が、任意に置換されている、フェニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、チエニル、インドリル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が、任意に置換されている、フェニル又はシクロプロピル基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
それぞれのRが水素原子である、請求項1から3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
AlkがC1〜6アルキル基である、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
Rが−CN、−COCH、−COCHCH、−COCH又は−CONHet基である、請求項1から4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
式(1)又は(1A)の化合物を製造するための請求項1に定義した式(2)の化合物の使用:


(式中R、R及びRは請求項1において定義したとおりであり、Tはハロゲン原子であり、Arは任意に置換された芳香族又は複素芳香族基である)。
【請求項8】
請求項1において定義した式(2)の化合物のジアゾ化と、その後のハロゲン置換とを含む、式(1)のハロゲン化物の製造方法:


(式中R,R及びRは請求項1において定義したとおりであり、Tは請求項7において定義したとおりである)。
【請求項9】
前記反応を、溶媒の存在する中で、酸の存在下にアルキルニトリル又は金属ニトリルを存在させ、次いで銅塩を加えることにより行う、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
遷移金属触媒の存在下、請求項1に定義した式(2)の化合物と化合物ArQ(このQは脱離基)を反応させることを含む、式(1A)の化合物の製造方法:


(式中R、R及びRは請求項1において定義した通りであり、Arは任意に置換された芳香族又は複素芳香族基である)。
【請求項11】
前記反応を、パラジウム触媒、ホスフィンリガンド及び塩基を使用して溶媒の存在下で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記反応を、銅触媒の存在下で行う、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
a)式(2a)又は(2b)の化合物を


(式中、Rは請求項1において定義した通りであり、Rは任意に置換されたアルキル基であり、Wは水素原子、金属イオン又はアミン塩である);
式(3)の化合物と反応させ


(式中Rは請求項1において定義した通りである);
b)次いで式(5)の化合物と


(式中Rは請求項1において定義した通りであり、Zは脱離基である);
反応させるステップを含む、請求項1に定義した式(2)の化合物の製造方法。
【請求項14】
Wが金属イオンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップa)が塩基の存在下に行われる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記塩基が、リチウム塩基、シラザン、炭酸塩、アルコキシド、ヒドロキシド、ヒドリド、有機アミン又は環状アミンから選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記反応を有機溶媒中で行う、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ステップa)及びステップb)が、それぞれ、アミド、エーテル、アルコール又はアセトニトリルから選択され、それぞれのステップにおいて同じであっても異なってもよい有機溶媒中で行われる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
式(4)の中間体をステップa)の後に単離する、請求項13から18のいずれか1項に記載の方法:


(式中R及びRは、請求項1において定義した通りであり、Wは請求項13において定義したとおりである)。
【請求項20】
式(4)の化合物:


(式中R及びRは、請求項1において定義した通りであり、Wは請求項13において定義した通りである)。
【請求項21】
式(6)の中間体をステップb)の間に単離する、請求項13から19のいずれか1項に記載の方法:


(式中、R、R及びRは請求項1において定義した通りである)。
【請求項22】
式(6)の化合物:


(式中、R、R及びRは請求項1において定義した通りである)。

【公表番号】特表2007−516163(P2007−516163A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516465(P2006−516465)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002680
【国際公開番号】WO2004/113349
【国際公開日】平成16年12月29日(2004.12.29)
【出願人】(501460693)セルテック アール アンド ディ リミテッド (29)
【Fターム(参考)】