説明

3−イソチアゾリノン誘導体およびその中間体生成物を連続的に生産する方法

本出願は、4つの工程、即ち、硫化、精製、アミノ化および塩素化を連続的に行うことを含む、3−イソチアゾリノン誘導体およびその中間体生成物を連続的に生産する方法を提供する。先行技術のバッチプロセスと比較して、本出願のプロセスは、製造デバイスの量を低下させ、エネルギー消費を降下させ、操作を単純化することができ、従って、大量生産に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
本出願は、本明細書において参照によりその全体が明示的に組み入れられる、「3−イソチアゾリノン誘導体を連続的に生産する方法」なる発明の名称の、2007年10月25日に出願された中国出願第200710163464.4号の全ての利益を主張する。
【0002】
本出願は、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法に向けられる。さらに詳しくは、本出願は、3−イソチアゾリノン誘導体およびその中間体生成物を連続的に生産する方法に向けられる。
【背景技術】
【0003】
イソチアゾリノン化合物は、高い有効性、広範囲の使用、低毒性、濃縮使用下での無害、環境における天然分解等を有する、新規な広範囲に使用される殺菌剤の種類に属する。従って、イソチアゾリノン化合物は、工業用水処理、製紙、化粧品、建築材料、結合接着剤、塗料、医療的処置および公衆衛生、テキスタイル、写真法、洗剤等の分野で広く用いられている。特に、2−アルキル−4,5−2置換−4−イソチアゾリン−3−オンは、より良好な殺菌剤および保存剤である。
【0004】
3−イソチアゾリノン誘導体の生産は、一般に、4つの工程、即ち、硫化、精製、アミノ化、および塩素化を含有する。対応する反応式は以下の通りである:
【化1】

式中、
【化2】

【0005】
先行技術においては、前記4つの工程の全ては、小規模の生産にとって容易かつ便宜であるバッチプロセスで行われる。しかしながら、バッチプロセス用のより大きな装置、大量のオンラインの原料および中間体、長い反応時間、高エネルギー消費および低い安全ケースのような問題が、生産が増大するにつれて現れる。
【発明の概要】
【0006】
先行技術に対して改良を行うために、本出願は、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法を提供する。該方法においては、3−イソチアゾリノン誘導体の生産における硫化、精製、アミド化および塩素化の全ての工程は連続プロセスで行われ、全ての工程は全体として一緒に合わされて、連続的生産プロセスを形成することができ、それにより、生産装置を小規模化し、エネルギー消費を低下させ、操作を単純化し、生産安全性を高める。
【0007】
1つの態様において、本出願は、式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式IIの化合物を調製する方法に向けられる。
【化3】

【0008】
好ましい実施形態において、該方法は:
i)式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えること;および
ii)第1の反応デバイスからオーバーフローする反応溶液を濾過して、固体および2相濾液を得ることを含み、ここに、該固体および水相は第1の反応デバイスに戻される。
【0009】
別の態様において、本発明は、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製する方法であって、該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む方法に向けられる。
【化4】

【0010】
好ましい実施形態において、該方法は:
1)該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第1の向流抽出カラムに連続的に加えること;ならびに
2)工程1)から得られた有機層および水を第2の向流抽出カラムに連続的に加えて、式IIの化合物を得ることを含む。
【0011】
なお別の態様において、本出願は、式IIの化合物および式IVの第一級アミンを連続的に第3の反応デバイスに加えて、以下の反応を行うことを含む、式Vの化合物を調製する方法に向けられる。
【化5】

式中、RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表わす。
【0012】
好ましい実施形態において、該方法は:
a)式IIの化合物および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、反応させること;ならびに
b)工程a)から得られた生成物を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ることを含み、該母液は該第3の反応デバイスに戻される。
【0013】
なお別の態様において、本出願は、式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式VIの化合物を調製する方法に向けられる。
【化6】

式中、
【化7】

Rは、C〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表し、RおよびRは、独立してHまたは塩素を表わす。
【0014】
好ましい実施形態において、該方法は:
A)式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
B)該第4の反応デバイスからオーバーフローする反応溶液を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ることを含む。
【0015】
他の態様において、本出願は以下の4つの工程;
(1)式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物および式IIIの化合物を含有する第1の反応溶液を得る工程;
(2)該第1の反応溶液および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物を含有する第2の反応溶液を得る工程;
(3)該第2の反応溶液および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、式Vの化合物を得る工程;ならびに
(4)該式Vの化合物、および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、式VIの化合物を得る工程;
を連続的に行うことを含む3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法に向けられる。
【0016】
なお別の態様において、本発明は、前記した各工程におけるプロセスの2以上の所望による組合せを含む、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法に向けられる。
【0017】
なお別の態様において、本出願は、前記方法のいずれか1つから得られた生成物に向けられる。
【0018】
3−イソチアゾリノン誘導体を生産するための本出願の連続的方法を使用することによって、製造装置を軽減させ、エネルギー消費を降下させ、操作を単純化させ、および該生産の安全性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本出願による、式IIの化合物を調製する方法の好ましい実施形態のプロセスフローシート。
【0020】
【図2】本出願による、式IIの化合物および式IIIの化合物の混合物を精製する方法の好ましい実施形態のプロセスフローシート。
【0021】
【図3】本出願による、式Vの化合物を調製する方法の好ましい実施形態のプロセスフローシート。
【0022】
【図4】本発明による、式VIの化合物を調製する方法の好ましい実施形態のプロセスフローシート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の記載において、所定の具体的な詳細は、種々の開示された実施形態の十分な理解を供するために含められる。しかしながら、当業者であれば、これらの具体的な詳細の1以上がなくても、あるいは他のプロセス、成分、物質等があれば実施形態を実施することができるのを認識するだろう。
【0024】
文脈がそうでないことを要求しているのでなければ、以下の明細書および請求項を通じて、用語「含有する」および「含有し」や「含有している」のような変形は、「限定されないが、それを含む」のような、開放された包括的意味に解釈されるべきである。
【0025】
本明細書を通じて、「1つの実施形態」、または「ある実施形態」、また「別の実施形態において」、または「いくつかの実施形態」、または「いくつかの実施形態において」への言及は、該実施形態との関連で記載された特に言及された特性、構造、または特徴が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。かくして、本明細書を通じての、種々の個所における、フレーズ「1つの実施形態において」、または「ある実施形態において」、または「別の実施形態において」、または「いくつかの実施形態において」の出現は、必ずしも、全てが同一実施形態に言及しているのではない。さらに、特別な特性、構造または特徴は1以上の実施形態においていずれかの適当な様式で合わせてもよい。
【0026】
本明細書および添付の請求の範囲で用いるように、単数形「ある」および「該」は、文脈が明瞭にそうでないことを定めているのでなければ、複数の言及を含むことに注意すべきである。かくして、例えば、「ポリヒドロキシおよび/またはポリアミノ基を有する物質」を含有する溶媒への言及は、ポリヒドロキシおよび/またはポリアミノ基を有する単一の物質、あるいはポリヒドロキシおよび/またはポリアミノ基を有する2以上の物質を含む。また、用語「または」は、文脈が明瞭にそうでないことを定めているのでなければ、一般に、「および/または」を含めたその意味で使用されることにも注意すべきである。
【0027】
〔定義〕
本明細書中で命名されるある化学基には、示された化学基に見出されるべき炭素原子の合計数を示す簡潔な表記が先行する。例えば、C〜C12アルキルは、後に定義されるように、合計して7〜12の炭素原子を有するアルキル基を述べるものであり、C〜C12シクロアルキルアルキルは、後に定義されるように、合計して4〜12の炭素原子を有するシクロアルキルアルキル基を述べるものである。簡潔な表記における炭素の合計数は、記載された基の置換基に存在するかもしれない炭素を含まない。
【0028】
本明細書中で用いるように、「m」および「n」が整数である「C〜C」または「Cm〜n」とは、アルキルにおける炭素原子の数、またはシクロアルキル基の環中の炭素原子の数を言う。即ち、該アルキルまたは該シクロアルキルの環は、「m」〜「n」の炭素原子を含有することができる。かくして、例えば、「C〜Cアルキル」基とは、1〜4の炭素を有する全てのアルキル基、即ち、CH−、CHCH−、CHCHCH−、(CHCH−、CHCHCHCH−、CHCHCH(CH)−および(CHC−をいう。「m」および「n」がアルキルまたはシクロアルキル基に関して示されていないとき、これらの定義で記載される最も広い範囲は推定されるべきである。
【0029】
従って、明細書および添付の請求項で用いられるように、そうでないことが特定されているのでなければ、以下の用語は示された意味を有する。
【0030】
用語「アルキル」は、本明細書中で用いられるように、いずれかの分岐していないまたは分岐した、置換されたまたは置換されていない飽和炭化水素を意味する。アルキル部位は分岐し、直鎖、または環状であってよい。アルキル基は1〜18の炭素原子を有してよい(例えば、「1〜18」といった数値範囲とは、それが本明細書において出現する場合には常に、与えられた範囲における各整数をいう;例えば、「1〜18の炭素原子」は、アルキル基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子等、18を含めた18までの炭素原子からなっていてよいが、本定義は、数値範囲が規定されていない用語「アルキル」の事象もカバーする。)。アルキル基は1〜10の炭素原子を有する中程度のサイズのアルキルであってもよい。アルキル基は1〜6の炭素原子を有する低級アルキルでもあり得る。アルキル基が「C〜Cアルキル」または同様な表記で表されてもよい。一例として、「C〜Cアルキル」は、アルキル鎖中に1〜4の炭素原子があることを示し、即ち、アルキル鎖はメチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチルおよびt−ブチルよりなる群から選択される。
【0031】
アルキル基は置換されていても、または置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基は置換されたまたは置換されていないシクロアルキル、置換されたまたは置換されていないアルコキシ、アルキルチオ、ハロ、カルボニル、ケト、ニトロ、シリル、トリハロメタンスルホニル、および2置換アミノ基を含めたアミノ基から個々にかつ独立して選択される1以上の基である。典型的なアルキル基として、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、ブチル、イソ−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。置換基が「所望により置換されていてもよい」と記載されている場合、置換基は前記置換基の1つで置換されていてもよい。
【0032】
用語「シクロアルキル」は、本明細書中で用いるように、単独でまたは基の一部として、完全に飽和された(二重結合無)単環または多環炭化水素環系をいう。2以上の環で構成される場合、該環は一緒に架橋されたまたはスピロ結合された様式で接合されていてもよい。本出願のシクロアルキル基はC〜C18の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、それはC〜C10の範囲であってよい。いくつかの実施形態において、それはC〜Cの範囲であってよい。シクロアルキル基は置換されているか、または置換されていなくてもよい。典型的なシクロアルキル基として、限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を含む。置換されているとき、置換基は、アルキルであるか、あるいはそうでないことが示されていない限り、アルキル基の置換に関して先に示されたものから選択されてよい。
【0033】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、臭化、塩化、フッ化またはヨウ化をいう。
【0034】
用語「所望による」または「所望により」は、引き続いて記載される状況の事象が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、明細書は該事象または状況が起こる場合およびそれが起こらない場合を含むことを意味する。
【0035】
そうでないことが述べられていない限り、1つの置換基が「所望により置換されていてもよい」とみなされる場合、該置換基は、シクロアルキル、アルキルチオ、アリールチオ、ハロ、カルボニル、シリル、トリハロメタンスルホニル、および2置換アミノ基を含めたアミノ基よりなる群から選択される1以上の置換基によって個々にかつ独立して置換されていてもよい。
【0036】
例えば、「所望により置換されていてもよいアリール」は、該アリールが置換されていてもよく、あるいは置換されていなくてもよいことを意味し、明細書は置換されたアリール基および置換基のないアリール基を含むことを意味する。
【0037】
本明細書中で用いるように、用語「反応デバイス」とは、単一の反応デバイス、あるいは直列または並列して連結された数個の反応デバイスから構成される反応デバイス系をいうことができる。
【0038】
本明細書中で用いるように、用語「リアクター」とは、これに限定されないが、かま、ポット、タンク、カラム等を含む、化学反応を行うのに適したデバイスをいうことができる。
【0039】
本出願中で用いられる「HS、第一級アミン、塩素」は、気体状または液状であってよい。
【0040】
本出願の分野においては、間欠的プロセスともいわれるバッチプロセスとは、全ての工程が同一の場所において、しかしながら異なる時間に行われることをいう。該プロセスの操作条件は、不安定であって、該プロセスのパラメータは経時的に変化する。例えば、物質の1バッチをデバイスに加える。生成物は、操作後にバッチに排出される。デバイスは、清浄化される。新しい物質が再度デバイスに加えられる。そのようなプロセスは、反復される。
【0041】
当該分野における連続プロセスとは、全ての工程が異なる場所においてであるが、同時に行われることをいう。操作条件は安定しており、原料が供給され、最終の生成物が連続的に得られる。操作の間、いずれかの場所における物質の種々のパラメータは、現実には一定のままである。連続プロセスでは、機械化および自動化を達成するのは容易である。該プロセスからの生成物は均一な品質を有し、該プロセスのためのデバイスはコンパクトである。また、該プロセスは、より大きな生産能力、仕事の激しさの軽減等の利点も有する。
【0042】
当該分野における半連続プロセスは、連続プロセスおよびバッチプロセスの組合せである。言い換えれば、全生産プロセスにおいて、いくつかの工程は連続プロセスで行われ、他方、他の工程はバッチプロセスで行われる。例えば、固体−液体分離沈降機において、薄い懸濁液である分離すべき液体混合物は、連続的に供給される。上澄み液体は、沈降機の頂部を連続的にオーバーフローし、他方、底に沈降した沈殿は、ある量まで蓄積された後に排出される。このプロセスは、半連続プロセスである。
【0043】
直列(直列に連結された反応デバイス)においては、一般に、先の反応デバイスを離れる物質が、次の反応デバイスの供給物であることを意味する。該物質は、第1の反応デバイスに連続的に加えられ、各反応デバイスを通って順次に流れ、最後の反応デバイスから排出される。
【0044】
並列(並列に連結された反応デバイス)においては、一般に、全ての反応デバイスの流入口パイプが一緒に接続され、流出口パイプもまた一緒に接続される。即ち、反応デバイスは、該反応デバイスが1つの地点から分離し、もう1つの地点で合流するように連結される。
【0045】
〔反応スキーム〕
従前に記載したように、3−イソチアゾリノン誘導体の生産は、一般には、4つの工程、即ち、硫化、精製、アミノ化および塩素化を含み、その全ては、先行技術においてはバッチプロセスで行われる。先行技術の欠陥を克服し、かつ3−イソチアゾリノン誘導体を生産するための修飾された方法を確立するために、本発明者等は、前記した4工程反応プロセスについて徹底的な研究を行った。
【0046】
硫化の反応プロセス:
【化8】

【0047】
反応がまに、硫化アンモニウムの水溶液および硫黄粉末が加えられた。得られた混合物は、冷却された。次いで、HSが導入されつつ、式Iの化合物が攪拌しながら滴加された。原料を数時間にわたって加えられた。得られた混合物は放置して分離され、式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物が得られた。クロマトグラフィー分析を介した反応のモニタリングを通じて、反応は数分間以内に完了して、式Iの化合物が反応がまに加えられた後に、式IIの化合物および式IIIの化合物が生じることが見出された。時間は、主として供給、冷却および分離で消費された。
【0048】
精製の反応プロセス:
【化9】

【0049】
反応がまに、式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物、および適当な量の亜硫酸ナトリウムの水溶液が加えられた。反応混合物が加熱され、数時間攪拌された。有機層が水で洗浄された。混合物が分離され、式IIの精製された化合物が得られた。クロマトグラフィー分析を介した反応のモニタリングを通じて、式IIIの化合物が、制御された温度範囲下で数十分以内に式IIの化合物に変換されることが見出された。従って、反応を数時間にわたって完了させる必要はなかった。
【0050】
アミド化の反応プロセス:
【化10】

式中、RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表わす。
【0051】
反応がまが冷却された。反応がまに、式IIの精製された化合物、およびアルコール中の式IVの第一級アミンの溶液が加えられた。得られた混合物が数十時間攪拌され、分離されて、98%を超える純度を有する式Vの化合物が得られた。クロマトグラフィー分析を介した反応のモニタリングを通じて、式Vの化合物の生成速度が反応の最初の10時間以内に最速となり、ほとんど一定であって、次いで、徐々に減少することが見出された。中間体の量は、反応から5時間後に最大に到達する。式IIの化合物は、反応の最初の10時間以内に約85%だけ消費された。残りの時間は、中間体への変換に際して式IIの化合物の残りの15%だけ、および式Vの化合物への変換に際して生じた中間体の約37%だけ消費されたに過ぎなかった(表1を参照)。
【表1】

【0052】
塩素化の反応プロセス:
【化11】

式中、
【化12】

RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表し、RおよびRは、独立して、Hまたは塩素を表わす。
【0053】
反応デバイスに酢酸エチルが加えられた。酢酸エチルが冷却された。式Vの化合物および塩素が、数時間以内に、攪拌しつつバッチにて同時に加えられた(例えば、R=CH)。混合物の固体−液体分離が行われ、式VIの化合物(例えば、R=CH、R=H、R=HまたはCl)が固体として得られた。クロマトグラフィー分析を介した反応のモニタリングを通じて、式Vの化合物が反応デバイスに加えられた後数分以内に反応が完了したことが見出された。硫化反応のように、供給および冷却が時間のほとんどを占めた。
【0054】
前記結果および多数の実験に基づき、発明者等は、結局、本出願の3−イソチアゾリノン誘導体を生産する連続的方法を完成した。
【0055】
〔実施形態〕
1つの態様において、本出願は、式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式IIの化合物を調製する方法に向けられる。
【化13】

【0056】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物を調製するための反応が、硫化アンモニウムの水溶液中で行われる。
【0057】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物を調製する方法は:
i)式Iの化合物、硫黄およびHSを、第1の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
ii)該第1の反応デバイスをオーバーフローする反応溶液を濾過して、固体および2相濾液を得ることを含み、ここに、該固体および水相は該第1の反応デバイスに戻される。
【0058】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物を調製する方法は:
i)式Iの化合物、硫黄およびHSを、硫化アンモニウムの水溶液中にて第1の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
ii)該第1の反応デバイスをオーバーフローする反応溶液を濾過して、固体および2相濾液を得ることを含み、ここに、該固体および水相は該第1の反応デバイスに戻される。
【0059】
いくつかのより好ましい実施形態において、式IIの化合物を調製する方法は:
i)式Iの化合物、硫化アンモニウムの水溶液、硫黄およびHSを連続的に第1の反応デバイスに加えること;
ii)該第1の反応デバイスの上部をオーバーフローする反応溶液を濾過して、固体および2相濾液を得、ここに、該固体および水相は該第1の反応デバイスに戻されること;ならびに
iii)工程ii)から得られた濾液を重力により分離して、硫化アンモニウムを含む上層液体、ならびに式IIの化合物および式IIIの化合物を含む下層液体を得ることを含み、ここに、該上層液体は該第1の反応デバイスに戻される。
【0060】
いくつかの実施形態において、硫化アンモニウムの水溶液の濃度は、約5〜20%である。
【0061】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物を調製するのに用いられるHSは、気体状または液状であってよい。
【0062】
いくつかの実施形態において、第1の反応デバイスは、数個のリアクターを含む。
【0063】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の反応デバイスは、1〜10の反応がまを含む。
【0064】
いくつかのより好ましい実施形態において、数個の反応がまは、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0065】
いくつかの好ましい実施形態において、第1の反応デバイスは、1〜4の連続的反応塔または抽出カラムを含む。
【0066】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物、硫化アンモニウム溶液、硫黄およびHSは、1分当たり1g〜100kgの全速度で反応デバイスに供給される。
【0067】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物について、硫化アンモニウム、硫黄、およびHSの化合物の質量比率は、約1:0.01〜0.25:0.2〜0.5:0.2〜0.3である。
【0068】
いくつかの好ましい実施形態において、式Iの化合物、硫化アンモニウム、硫黄およびHSの質量比率は、約1:0.065:0.26:0.22である。
【0069】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物を調製するための反応は、約15〜25℃で行われる。
【0070】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物を調製するための反応は、約5〜15時間行われる。
【0071】
図1に示すように、1つの特に好ましい実施形態において、式IIの化合物を調製する方法は:
式Iの化合物、硫黄、HSおよび硫化アンモニウムの水溶液を貯蔵タンクDから反応デバイスAへ連続的に加え;
反応デバイスAの上部をオーバーフローする反応溶液を濾過した後に、濾液を重力作用分離タンクCに流しつつ、固体を反応デバイスAに戻すこと;
重力作用分離タンクC中の上層液体を、硫化アンモニウムの水溶液のための貯蔵タンクDにまず流し(硫化アンモニウムの含有量のタイミング測定、および硫化アンモニウムの含有量が不十分な場合の補充)、次いで、得られた生成物を、下層液体を式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物のための貯蔵タンクEに流しつつ、反応デバイスAに加えることを含む。
【0072】
別の態様において、本出願は、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物、ならびに亜硫酸ナトリウム水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、該混合物を精製する方法に向けられる。
【化14】

【0073】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製するための反応は、2〜6の連続的抽出カラムまたは反応塔中で行われる。
【0074】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製するための反応は、2〜10の反応がま中で行われる。
【0075】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製するための数個の連続的抽出カラムまたは反応塔あるいは反応がまは、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0076】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製する方法は:
1)該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第1の向流抽出カラムに連続的に加えること;ならびに
2)工程1)から得られた有機層および水を第2の向流抽出カラムに連続的に加えて、式IIの化合物を得ることを含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、亜硫酸ナトリウムの水溶液の濃度は、約1〜25%である。
【0078】
いくつかの実施形態において、混合物および亜硫酸ナトリウムの1〜25%水溶液は、毎分1g〜100kgの全速度で連続的抽出カラムまたは反応塔または反応がまに供給される。
【0079】
いくつかの好ましい実施形態において、混合物および亜硫酸ナトリウム(乾燥ベース)の質量比率は、約1:0.1〜1.0である。
【0080】
いくつかのより好ましい実施形態において、混合物および亜硫酸ナトリウム(乾燥ベース)の質量比率は、約1:0.36である。
【0081】
いくつかの好ましい実施形態において、混合物と亜硫酸ナトリウムおよび水との反応から得られた生成物は、約1:0.1〜10の質量比率にて、毎分1g〜100kgの全速度で抽出カラムまたは反応がまに供給される。
【0082】
いくつかの好ましい実施形態において、混合物と亜硫酸ナトリウムおよび水との反応から得られた生成物は、約1:1の質量比率にて、毎分1g〜100kgの全速度で抽出カラムまたは反応がまに供給される。
【0083】
いくつかの実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製するための反応は、約50〜70℃で行われる。
【0084】
図2に示されるように、1つの特に好ましい実施形態において、式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物、ならびに亜硫酸ナトリウムの水溶液は予熱され、向流抽出カラムFに加えられ、次いで、得られた式IIの化合物および水を含む有機層は、向流抽出カラムGに供給され、得られた精製された有機層は、式IIの化合物のための貯蔵タンクHに流れ込む。
【0085】
なお別の態様において、本出願は、式IIの化合物および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式Vの化合物を調製する方法に向けられる。
【化15】

式中、RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表わす。
【0086】
いくつかの実施形態において、式Vの化合物を調製する方法は:
a)式IIの化合物および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
b)工程a)から得られた反応生成物を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ることを含み、ここに、該母液は該第3の反応デバイスに戻される。
【0087】
いくつかの実施形態において、反応母液中の第一級アミンの含有量は、約5〜50%である。
【0088】
式Vの化合物を調製するのに用いることができる第一級アミンの典型的な例は、限定されないが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、エチレンジアミン等を含む。
【0089】
いくつかの好ましい実施形態において、式Vの化合物を調製するのに用いる第一級アミンは、メチルアミンである。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物、および5〜50%第一級アミンを含む反応母液は、毎分1g〜100kgの全速度で第3の反応デバイスに供給される。
【0091】
いくつかの好ましい実施形態において、式IIの化合物と、第一級アミンを含む(第一級アミンに基づく)反応母液のモル比率は、約1:0.2〜2.2である。
【0092】
いくつかの好ましい実施形態において、式Vの化合物を調製する方法で用いられる第3の反応デバイスは、数個のリアクターを含む。
【0093】
いくつかの好ましい実施形態において、反応デバイスは、1〜10の反応がまを含む。
【0094】
いくつかのより好ましい実施形態において、数個の反応がまは、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0095】
いくつかの好ましい実施形態において、反応デバイスは、1〜4の連続反応塔を含む。
【0096】
いくつかのより好ましい実施形態において、数個の連続反応塔は、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0097】
いくつかの好ましい実施形態において、式Vの化合物を調製する方法は、更に:
c)工程b)から得られた固体をアルコールで洗浄することを含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、工程b)から得られた固体を洗浄するのに用いられるアルコールは低級アルコールである。
【0099】
式Vの化合物を調製する方法において、工程b)から得られた固体を洗浄するのに用いることができるアルコールの典型的な例は、限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、t−ペンタノール、イソアミロール、ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、n−ノナノール、デカノール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ブタン−1,3−ジオール、ブタン−2,3−ジオール、グリセロール、ペンタ−1,5−ジオール、フルフリルアルコール、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール等を含む。
【0100】
いくつかの好ましい実施形態における、式Vの化合物を調製する方法において、b)からの固体を洗浄するのに用いることができるアルコールの典型的な例は、限定されないが、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール等を含む。
【0101】
いくつかの好ましい実施形態において、工程b)から得られた固体は、メタノールで洗浄される。
【0102】
いくつかの実施形態において、式Vの化合物を調製するための反応は、約0〜15℃で行われる。
【0103】
いくつかの実施形態において、式Vの化合物を調製するための反応は、10〜96時間行われる。
【0104】
図3に示すように、1つの特に好ましい実施形態において、該方法は、式IIの化合物とリアクターPからの反応母液を反応デバイスKに連続的に加え、反応デバイスKの上部をオーバーフローして固体−液体分離デバイスNに入る反応溶液を固体−液体分離に付し、リアクターP(式IVの第一級アミンはある速度でリアクターPに流れ込む)に入る分離後の母液を反応デバイスKまでポンプ送液すること;リアクターQに入る固体をメタノールで洗浄し、次いで、固体−液体分離デバイスRで固体−液体分離を行い、続いて、固体乾燥デバイスT中で得られた固体を乾燥して、式Vの化合物が得られ、これが貯蔵タンクUに入ることを含む。
【0105】
なお別の態様において、本出願は、式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式VIの化合物を調製する方法に向けられる。
【化16】

式中、
【化17】

RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表し、RおよびRは独立して、Hまたは塩素を表わす。
【0106】
いくつかの実施形態において、式VIの化合物を調製する方法は:
A)式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
B)該第4の反応デバイスをオーバーフローする反応溶液を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ることを含む。
【0107】
いくつかの実施形態において、式VIの化合物を調製するための塩素化反応は、エステルの存在下で行われる。
【0108】
エステルの典型的な例として、限定されないが、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸イソプロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸イソペンチル、ギ酸ベンジル、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸メチルアミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸n−ペンチル、n−酪酸メチル、n−酪酸エチル、酪酸n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸ペンチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、シュウ酸ジペンチル、炭酸ジエチル、炭酸トリブチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル、サリチル酸エチル等を含む。
【0109】
いくつかの好ましい実施形態において、式VIの化合物を調製するための方法において、塩素化できるエステルの典型的な例は、限定されないが、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸s−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸メチルアミル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸n−ペンチル、n−酪酸メチル、n−酪酸エチル、酪酸n−ブチル、安息香酸エチル、安息香酸イソプロピル等を含む。
【0110】
いくつかの好ましい実施形態において、式VIの化合物を調製するための塩素化反応は、酢酸エチルの存在下で行われる。
【0111】
いくつかの実施形態において、式VIの化合物を調製する方法は:
A)式Vの化合物、エステルおよび塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えること;
B)該第4の反応デバイスの上部をオーバーフローする反応母液を固体−液体分離に付して、固体および母液を得、ここに、該母液は該第4の反応デバイスに戻されること;次いで、
C)工程B)から得られた固体を酢酸エチルで洗浄して、式VIの化合物を得ることを含む。
【0112】
いくつかの好ましい実施形態において、式Vの化合物、塩素およびエステルは、毎分1g〜100kgの全速度にて第4の反応デバイスに供給される。
【0113】
いくつかの好ましい実施形態において、式Vの化合物、塩素およびエステルの質量比率は、約1:0.5〜1.5:1〜10である。
【0114】
いくつかの実施形態において、第4の反応デバイスは、1〜10の反応がまを含む。
【0115】
いくつかの好ましい実施形態において、数個の反応がまは、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0116】
いくつかの実施形態において、第4の反応デバイスは、1〜4の連続反応塔を含む。
【0117】
いくつかの好ましい実施形態において、数個の連続反応塔は、直列または並列あるいは部分的に並列に連結されていてよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、式VIの化合物を調製すための反応は、10〜30℃で行われる。
【0119】
図4に示されるように、1つの特に好ましい実施形態において、該方法は、酢酸エチル、式Vの化合物および塩素を反応デバイスWに連続的に加え、該反応デバイスWの上部をオーバーフローする反応母液を固体−液体分離デバイスYに流し、次いで、固体を酢酸エチルで洗浄して、式VIの化合物を得ることを含む。
【0120】
なお別の態様において、本出願は、以下の4つの工程:
1.式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む第1の反応溶液を得る工程;
2.該第1の反応溶液、および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物を含む第2の反応溶液を得る工程;
3.該第2の反応溶液および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、式Vの化合物を得る工程;ならびに、
4.該式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、式VIの化合物を得る工程;
を連続的に行うことを含む、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法に向けられる。
【0121】
他の態様において、本出願は、前記した各工程において、プロセスの2以上の任意の組合せを含む、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法を提供する。
【0122】
いくつかの実施形態において、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法は、式IIの化合物および式IVの第一級アミンを含む反応溶液を反応デバイスに連続的に加えて、式Vの化合物を得ること、ならびに、該式Vの化合物および塩素を別の反応デバイスに連続的に加えて、式VIの化合物を得ることを含む。
【0123】
いくつかの実施形態において、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法は、式IIの化合物および式IIIの化合物を含む第1の反応溶液、ならびに亜硫酸ナトリウムの水溶液を連続的に反応デバイスに加えて、式IIの化合物を含む第2の反応溶液を得ること;該第2の反応溶液および式IVの第1級アミンを連続的に別の反応デバイスに加えて、式Vの化合物を得ること;次いで、式Vの化合物および塩素を別の反応デバイスに連続に加えて、式VIの化合物を得ることを含む。
【0124】
以下、本出願の種々の態様および利点の良好な理解のために、添付の図面に言及する以下の実施例を通じて詳細な説明が行われる。しかしながら、以下の実施例は非限定的であって、本出願のいくつかの実施形態を説明するためだけのものであることが認識されるであろう。
【実施例】
【0125】
〔硫化アンモニウム塩基溶液の調製〕
反応がまにまず水(820kg)が加えられ、次いで、0〜5℃の温度下で、NH(50kg)およびHS(55kg)が導入された。得られた混合物は、30分間攪拌されて、硫化アンモニウム塩基溶液が得られた。該塩基溶液のpHがテストされた(目標pH≦9.5)。
【0126】
〔実施例1〕
アクリル酸メチル(800g)、10%硫化アンモニウム塩基溶液(520g)、硫黄(210g)および液体HS(170g)が、毎分、底から反応がまA(50L)に連続的に供給された。得られた混合物は、攪拌されつつ16〜20℃の温度まで冷却された。反応がまAの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、底から反応がまA(50L)に流入された。得られた混合物は、攪拌されつつ16〜20℃の温度まで冷却された。反応がまAの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は濾過された。得られた固体は、測定される前に反応がまAに戻された。濾液は、タンクCの中央部から重力作用分離タンクC(100L)に流入された。得られた上層液体は、硫化アンモニウム水溶液用の貯蔵タンクD(50L)に流入され(硫化アンモニウムの含有量の適時の測定、および硫化アンモニウムの含有量が不十分な場合には、補充)、次いで、反応がまAに加えられた。得られた下層液体は、式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物用の貯蔵タンクEに流入された。実験は12時間行われ、式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物(クロマトグラフィー分析を介して式IIの化合物:68.5%および式IIIの化合物:26.4%)864kgが得られた。
【0127】
〔実施例2〕
毎分、アクリル酸メチル(800g)、9.5〜10.5%硫化アンモニウムを含む塩基溶液(500g)、硫黄(220g)および液状HS(190g)の供給速度、ならびに18時間の供給時間にて、実施例1を反復した。式IIの化合物、および式IIIの化合物の液状混合物1309kgが、貯蔵タンクEから得られた。ガスクロマトグラフィー分析を介して、式IIの化合物:65.6%および式IIIの化合物:28.7%。
【0128】
〔亜硫酸ナトリウム溶液の調製〕
反応がまに水(2000L)が加えられた。水は、攪拌されつつ40〜45℃まで加熱された。反応がまに固体亜硫酸ナトリウム粉末(225kg)が加えられた。得られた混合物は、該混合物が完全に溶解するまで、約30分間保温された。
【0129】
〔実施例3〕
実施例1で調製された式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物、ならびに硫化ナトリウム水溶液(10%)が65℃まで予熱された。該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液は、各々、毎分1200gおよび4270gの速度で、60cmの直径および2.5mの高さを有する向流抽出カラムFに連続的に加えられた。得られた有機層および水は、さらに同一サイズを有する別の向流抽出カラムGに連続的に加えられ、式IIの化合物の精製された有機層が得られ、これが貯蔵タンクHに収集された。実験は10時間行なわれ、606kgの式IIの化合物(クロマトグラフィー分析を介して96.5%)が得られた。
【0130】
〔実施例4〕
式IIの化合物および式IIIの化合物の液状混合物、ならびに硫化ナトリウム(10%)の水溶液の速さは、各々、毎分1500gおよび5340gに調整された。実施例3の操作が反復された。該式IIの化合物および該式IIIの化合物の液状混合物を連続的に供給する時間は、やはり10時間であって、762kgの式IIの化合物(ガスクロマトグラフィー分析を介して、式IIの化合物:93.4%および式IIIの化合物:2.7%)を得た。
【0131】
〔メチルアミン溶液の調製〕
メタノール(360kg)が、ガラスライニングがまに加えられ、攪拌されて、冷却された。該かまが、0〜5℃まで冷却された。メチルアミン(180kg)が、3〜4時間以内に導入された。導入の後、混合物は保温しながら10分間攪拌された。得られた生成物は排出され、貯蔵のためにシールされた。
【0132】
〔実施例5〕
実施例2に従って調製された式IIの化合物、およびメチルアミンを含む反応母液(35%)は、各々、毎分1kgおよび毎分3kgの速さで底から反応がまK(50L)に連続的に加えられた。得られた生成物は、攪拌されつつ0〜8℃の温度まで冷却された。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、底から反応がまK(50L)に流入した。得られた混合物は、攪拌されつつ0〜8℃の温度まで冷却された。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、同様にかまKおよびKに流入した。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、固体−液体分離のために4kg/分の流速にて300mmの直径を有する遠心機N1およびN2に交互に流入した。母液は、反応がまP(50L)(ここに、液状メチルアミンは、0.26kg/分の速度にて底からかまに連続的に加えられた)に入った。得られた生成物は、引き続いて反応がまKに送液された。固体は、反応がまQ1およびQ2(50L)に入った。得られた混合物は、ほぼ等質量のメタノールで洗浄され、各々、遠心機R1およびR2(300mm)を介する固体−液体分離に付された。固体は、乾燥され、貯蔵タンクTに入れられた。実験は、20時間行われ、498kgの式Vの化合物(クロマトグラフィー分析を介して98.5%)を得た。
【0133】
〔実施例6〕
式IIの化合物、およびn−オクチルアミンを含む反応母液(25%)は、各々、1kg/分および8.7kg/分の速度で底から反応がまK(50L)に連続的に加えられた。得られた混合物を攪拌しつつ30〜35℃の温度まで冷却した。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、底から反応がまK(50L)に流入した。得られた混合物は、攪拌されつつ30〜35℃の温度まで冷却された。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、同様にかまKおよびKに流入した。反応がまKの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、固体−液体分離のために、9.7kg/分の流速にて、300mmの直径を有する遠心機N1およびN2に交互に流入した。母液は、反応がまP(50L)(n−オクチルアミンを、1.16kg/分の速度にて底からかまに連続的に加えた)に入った。得られた混合物は、引き続いて反応がまKに送液された。固体は、各々、反応がまQおよびQ(50L)に入った。得られた混合物は、ほぼ等質量のメタノールで洗浄され、各々、300mm遠心機R1およびR2を介する固体−液体分離に付された。固体は、乾燥され、貯蔵タンクTに入れられた。式IIの化合物およびn−オクチルアミンの供給を20時間継続して、貯蔵タンクT中に902kgの式Vの化合物(クロマトグラフィー分析を介して98.6%)を得た。反応母液を50時間リサイクルし続け、945kgの式Vの化合物(R=C17、クロマトグラフィー分析を介して98.4%)が貯蔵タンクTから得られた。
【0134】
〔実施例7〕
酢酸エチル(2.2kg)、実施例3に従って調製された式Vの化合物(0.4kg)、および液状塩素(0.52kg)は、毎分、底から反応がまU(500L)に連続的に加えられた。得られた混合物は、攪拌されつつ18〜22℃の温度まで冷却された。反応がまUの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、引き続いて、300mm遠心機Y1、Y2およびY3に流入した。母液は、貯蔵タンクZに流入した。次いで、反応混合物は、反応がまUに送液された。固体は、酢酸エチルで洗浄され、乾燥された。実験は、8時間行われ、315kgの式VIの化合物(クロマトグラフィー分析を介して98.7%)を得た。
【0135】
〔実施例8〕
酢酸エチル(2.2kg)、実施例6に従って調製された式Vの化合物R=C17(0.4kg)、および液状塩素(0.19kg)は、毎分、底から反応がまW(500L)に連続的に加えられた。得られた混合物は、攪拌されつつ40〜45℃の温度まで冷却された。反応がまWの上部(合計高さの5/6)をオーバーフローする反応溶液は、引き続いて、300mmの遠心機Y1、Y2およびY3に流入した。固体は、酢酸エチルで洗浄され、乾燥された。実験は、8時間行われ、215kgの式VIの化合物(R=C17、R=R=H;クロマトグラフィー分析を介して98.2%)を得た。
【0136】
当該出願の実施例は、本出願の理解のために非限定的説明として供するにすぎないことは認識されるだろう。当業者であれば、当該出願の精神および範囲を逸脱することなく種々の同等な置換および修飾を行うことができ、これらは、なお本出願の保護範囲に属する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式IIの化合物を調製する方法。
【化18】

【請求項2】
以下の工程を含む、請求項1記載の方法。
i)式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えること;および
ii)第1の反応デバイスからオーバーフローする反応溶液を濾過して、固体および2相濾液を得ること、ここで、該固体および水相は第1の反応デバイスに戻される。
【請求項3】
式Iの化合物について、硫化アンモニウム、硫黄、およびHSの化合物の質量比率が、約1:0.01〜0.25:0.2〜0.5:0.2〜0.3である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記反応が、約15〜25℃で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
式IIの化合物および式IIIの化合物を含む混合物を精製する方法であって、該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む方法。
【化19】

【請求項6】
以下の工程を含む、請求項5記載の方法。
1)該混合物および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第1の向流抽出カラムに連続的に加えること;ならびに
2)工程1)から得られた有機層および水を第2の向流抽出カラムに連続的に加えて、式IIの化合物を得ること
【請求項7】
前記混合物および亜硫酸ナトリウム(乾燥ベース)の質量比率が、約1:0.1〜1.0である請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記反応が、約50〜70℃で行われる請求項5記載の方法。
【請求項9】
式IIの化合物および式IVの第一級アミンを連続的に第3の反応デバイスに加えて、以下の反応を行うことを含む、式Vの化合物を調製する方法。
【化20】

式中、RはC〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表わす。
【請求項10】
以下の工程を含む、請求項9記載の方法。
a)式IIの化合物および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、反応させること;ならびに
b)工程a)から得られた生成物を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ること、ここで、該母液は該第3の反応デバイスに戻される。
【請求項11】
式IIの化合物と、第一級アミンを含む(前記第一級アミンに基づく)反応母液のモル比率が、約1:0.2〜2.2である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記反応が、約0〜15℃で行われる、請求項9記載の方法。
【請求項13】
前記第一級アミンが、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、エチレンジアミンよりなる群から選択される、請求項9記載の方法。
【請求項14】
前記第一級アミンが、メチルアミン、n−オクチルアミンよりなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記工程b)から得られた固体をアルコールで洗浄する工程c)を含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、以下の反応を行うことを含む、式VIの化合物を調製する方法。
【化21】

式中、
【化22】

Rは、C〜C18アルキルまたはC〜C18シクロアルキルを表し、RおよびRは、独立してHまたは塩素を表わす。
【請求項17】
以下の工程を含む、請求項16記載の方法。
A)式Vの化合物および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えること;ならびに
B)該第4の反応デバイスからオーバーフローする反応溶液を固体−液体分離に付して、固体および母液を得ること
【請求項18】
式Vの化合物、塩素およびエステルの質量比率が、約1:0.5〜1.5:1〜10である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記反応が、10〜50℃で行われる、請求項16記載の方法。
【請求項20】
以下の4つの工程を連続的に行うことを含む、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法。
(1)式Iの化合物、硫黄およびHSを第1の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物および式IIIの化合物を含有する第1の反応溶液を得る工程;
(2)該第1の反応溶液および亜硫酸ナトリウムの水溶液を第2の反応デバイスに連続的に加えて、式IIの化合物を含有する第2の反応溶液を得る工程;
(3)該第2の反応溶液および式IVの第一級アミンを第3の反応デバイスに連続的に加えて、式Vの化合物を得る工程;ならびに
(4)該式Vの化合物、および塩素を第4の反応デバイスに連続的に加えて、式VIの化合物を得る工程
【請求項21】
請求項1〜4のいずれか1の方法、請求項5〜8のいずれか1の方法、請求項9〜15のいずれか1の方法および請求項16〜19のいずれか1の方法、の2以上の所望による組合せを含む、3−イソチアゾリノン誘導体を生産する方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1の方法から得られた生成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−500735(P2011−500735A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530260(P2010−530260)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【国際出願番号】PCT/CN2008/072831
【国際公開番号】WO2009/056069
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(510114815)北京天▲チン▼化工有限責任公司 (3)
【Fターム(参考)】