説明

3つの形状を持つプラスチックの1ステッププログラミング方法

本発明はプログラムされた形状記憶ポリマーの製造方法であって、形状記憶ポリマーが第1の一時的形状と、そして少なくとも更に2つの、熱的に引き起こすことができる、記憶された形状、すなわち少なくとも第2の一時的形状と1つの定常的形状とを持つプログラムされた形状記憶ポリマーの製造方法であって、下記ステップ、(a)少なくとも2つのスイッチセグメント(A、B)を含み、相の分離によりそれぞれ転移温度(Ttrans,A、Ttrans,B)を持つスイッチ相を形成するステップ、(b)上の転移温度(Ttrans,A)より上の温度で1つ目の一時的形状に対応した形状に形状記憶ポリマーを変形するステップ、および(c)第1の一時的形状を固定しつつ、下の転移温度(Ttrans,B)より下の温度に冷却する冷却ステップを備える方法に関する。本発明による方法は、3つの形状を持つプラスチックの1−ステッププログラミング方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプログラムされた形状記憶ポリマー(3つの形状を持つプラスチック)の製造方法および形状記憶ポリマーのプログラミング方法に関する。この形状記憶ポリマーは、定常的形状の他に、温度に依存する少なくとも2つの一時的形状を取り得る。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、形状記憶ポリマーまたはSMPs(shape memory polymers)と呼ばれるものが知られている。この形状記憶ポリマーは、事前のプログラミングに対応して、適切な刺激により、一時的形状から定常的形状への形状変化を示す。この形状記憶ポリマーで最も良く見られるものは、熱によりその形状記憶効果が誘発されるもの、すなわち決まったスイッチ温度(Schalttemperature)を超えてポリマー材料を加熱すると、エントロピー弾性により駆動されて回復が起こるものである。形状記憶ポリマーは通常は高分子網目であり、化学的(共有結合的)または物理的(非共有結合的)架橋部位が定常的形状を決定する。プログラミングは、スイッチセグメントにより形成される相(スイッチ相)の転移温度より上でこのポリマー材料を変形し、そしてこれに続いて変形力を維持しながら、この温度以下に冷却し、この一時的な変形を固定することにより行われる。再びスイッチ温度より上に加熱することにより相転移が起こり、元の定常的形状が再現される。(スイッチ温度Tswは、転移温度Ttransとは異なり、マクロ的な形状変化を決定する機械的な運動に関連するので、これら2つの温度は互いに僅かに異なる可能性がある。)
【0003】
更に、最近、AB高分子網目(3つの形状を持つプラスチック(Dreiformenkunststof)または”triple−shape polymer”と呼ばれる)が発表されている(例えば国際出願公開第WO99/42528A号パンフレット)。これは2つの異なるスイッチセグメントからなる、異なる転移およびスイッチ温度を持つ相を示し、これらによって定常的な形状以外に2つの一時的形状を「形状記憶」に記憶する。この3つの形状を持つプラスチックは基本的に少なくとも2つの混ざり合わない分離された相を持ち、これらの相は各々の一時的形状を固定するのに利用することができる。ここで定常的形状は共有結合的架橋部位により固定され、これに対し2つの一時的形状は1つの(従来技術では2つのステップによる)熱機械的プログラミングプロセスにより定められる。温度に誘発されて2つの形状転移を続いて起こす能力、すなわち1つの一時的形状から2つめの一時的形状へ、またここから定常的形状への形状転移を起こす能力は、複雑な動作を可能とし、多様な応用可能性をもたらす。例えば医療における利用が可能である。
【0004】
このような形状記憶ポリマーは欧州特許出願公開第EP1362879A号公報明細書に記載されている(この場合は、相互貫入ネットワークIPNs、interpenetrierende Netzwerke)。この形状記憶ポリマーは共有結合的架橋によるポリマー成分で、とりわけカプロラクトン(Caprolacton−)、ラクチド(Lactid−)、グリコリド(Glycolid−)、またはp−ジオキサノン(p−Dioxanon)の単位をベースとするものと、非共有的結合で架橋されたポリエステルウレタン成分(Polyesterurethankomponente)からなるものである。このポリマーは2つの一時的形状を記憶し、そのスイッチ温度は約50℃と90℃であると記載されている。
【0005】
またリウ他の論文(Liu et al., Macromol. Rap. Comm.26, 2005, 649ff)にも、ポリメチルメタクリレート単位(Polymethylmethacrylateinheiten、PMMA)とポリエチレングリコール単位(Polyethylenglycoleinheiten、PEG)とからなる、SMPが記載されており(この場合は、半相互貫入ネットワークSIPN、semi−interpenetrierende Netzwerk)、これも同様に、2つのスイッチ温度(40℃と86℃)を持っている。この論文に記載されているプログラム方法では、しかしながら、1つの一時的形状の記憶のみ可能である。
【0006】
ベリン等の論文(Bellin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006, 103, 18043−18047)および未公開のドイツ出願DE102006017759号に、ポリエステルとポリアクリレートをベースにしたスイッチセグメントを持つ、3つの形状を持つプラスチックについて記載されており、特にポリε−カプロラクトン(Poly(ε−caprolacton)、PCL)とポリシクロヘキシルメタクリレート(Polycyclohexylmethacrylat、PCHMA)とこれらのプログラム方法が記載されている。2つの一時的形状を記憶するために、ここでは実質的に2ステップの熱機械的方法が示されており、この熱機械的方法ではこのポリマーは、第1の一時的形状の固定においては、上の転移温度以下の温度に冷却し、そしてこれに続いて、第2の一時的形状の固定においては、下の転移温度以下の温度に冷却される。この2ステッププログラミングは非常に良い結果をもたらすものの比較的時間がかかり、また温度操作と機械的変形を複雑に組み合わせる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、少なくとも2つの形状を記憶した形状記憶ポリマー(3つの形状を持つプラスチック)のプログラミング方法で、従来方法より速くかつ簡便に実施できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は請求項1に記載される特徴を持つ方法により解決される。本発明によるプログラムされた形状記憶ポリマー(3つの形状を持つプラスチック)を生成する方法、すなわち、第1の一時的形状を取り、そして少なくとも更に2つの、熱的に引き起こすことができる、記憶された形状、すなわち少なくとも第2の一時的形状と1つの定常的形状、を示すような形状記憶ポリマーの製造方法は、以下のステップを含む。
(a)少なくとも2つのスイッチセグメント(A、B)を含み、相分離によりそれぞれ転移温度(Ttrans,A、Ttrans,B)を持つスイッチ相(Schaltphase)を形成する形状記憶ポリマーを用意するステップ、
(b)上の転移温度(Ttrans,A)より上の温度で第1の一時的形状に対応した形状に形状記憶ポリマーを変形するステップ、および
(c)第1の一時的形状の固定においては、下の転移温度(Ttrans,B)より下の温度に冷却するステップ。
【0009】
従来方法ではプログラムを2ステップで行い、それぞれのステップで次のより低い転移温度より下に冷却することにより一時的形状が決められ、その間にすでに決定された変形が固定される。これに対し本発明によるプログラム方法では、このようなステップを1つのみ持ち、この1つのステップで2つの転移温度を飛び越えて冷却される。この単純化により、本方法は全体として速く、また少ない手間で実行することができる。このプログラム方法の結果は3つの形状を持つプラスチックであり、この3つの形状を持つプラスチックは第1の一時的形状を示し、またこの他に、架橋部位で定まる定常的形状に加えて、第2の一時的形状を形状記憶ポリマーに記憶する。これに続いて実施される、2つのスイッチセグメントのスイッチ温度を飛び越えて加熱することにより、第1の一時的形状から出発して、まず第2の一時的形状とこれに続く定常的形状が、次々に再現される。決まった形状ストレスをプログラミングで強制的に加えることなく、再現可能な第2の一時的形状の設定が、(漸次的あるいは段階的な)加熱の間に観察できるので、この1ステップでプログラミングが可能であることは予想外であった。
【0010】
ここで、スイッチセグメントとは、高分子網目のスイッチ相を形成する鎖状セグメントをいう。スイッチ相は固体中の高分子網目の種々の鎖状セグメントから相を抽出(分離)することにより形成される。これによりスイッチ相は材料特有の形態を形成するのに実質的に寄与する。このようにして、高分子網目が全体として材料特性(この材料特性は各々のスイッチ相に対応される)、特に2つ以上の、熱により誘発される効果による種々の転移およびスイッチ温度を示すようになる。ここで、それらの温度はガラス転移温度や溶融温度とは無関係であってもよい。
【0011】
本発明による1ステッププログラミングに特に適しているのは、AB−網目構造を有する形状記憶ポリマーであり、スイッチ相を形成するポリマー鎖(スイッチセグメント)の各々の鎖の両端は共有結合で高分子網目に結合されている。このようにして、2つのスイッチセグメントの変形により、1ステップのプログラミング方法によっても、2つの一時的形状を十分固定することができる。
【0012】
上記のステップ(b)で生じる変形、すなわち機械的変形を施して、ポリマー系をその定常的な形状から第1の一時的形状に変形することは、例えば少なくとも1つの空間方向への伸長か、少なくとも1つの空間方向への収縮か、または多少複雑な形状記憶ポリマーの屈曲を生じる。前記の変形の組み合わせもまた可能である。基本的に、記憶された形状を回復させるための加熱により引き起こされる、第2の一時的形状である記憶された形状は、第1の一時的形状と定常的な形状の中間的な形状を示す。例えば、形状記憶ポリマーが1つの空間方向へ伸長すると、第2の一時的形状は、第1の一時的形状と定常的な形状の中間的な長さとなる。この際、第1の一時的形状から第2の一時的形状へおよび/または第2の一時的形状から定常的な形状への、最も高い転移温度へ向かう加熱中に生じる、プログラムされた形状記憶ポリマーの回復の大きさは、少なくとも2つの分離された相の質量分率によりおおきく影響される。
【0013】
本発明の範囲においてとりわけ適合する形状記憶ポリマーは、転移温度の異なる少なくとも2つのスイッチ相を備え、これによりこのポリマー材料は温度に依存して、1つの定常的形状の他に、少なくとも2つの一時的形状を取ることができる。ここで、第1のスイッチ相を形成するスイッチセグメントは、好ましくは、一般式I、n=1...14を持つポリエステルかまたはこの誘導体をベースとし、または少なくとも2つのこのようなエステル単位が存在する、一般式I、n=1...14を持つコポリエステル、かまたはこれらの誘導体をベースとしている。ここで本発明の範囲において、式Iの構造のポリエステルの誘導体は、メチレン単位(−CH−)の1つ以上の水素残基が、非分岐または分岐状の、飽和または不飽和のC1−からC14までの残基と置換されている。本発明において、置換基の選択で最も重要なことは、スイッチセグメント固有の分離された相の形成が妨げられないことである。
【0014】
【化1】

【0015】
本発明の有利な実施形態では、第1のスイッチセグメントは、n=5のポリ(ε−カプロラクトン)セグメントまたはこれの誘導体であり、このスイッチセグメントでは脂肪族の炭素原子が互いに独立して、1つまたは2つの、非分岐または分岐状の、飽和または不飽和のC1からC14の残基と置換されていてもよい。とりわけ好ましくは、式(I)に基づくn=5の、誘導体でないポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)であり、すなわち置換基のないものである。
【0016】
更にもう1つの有利な実施形態では、第2のスイッチ相を形成するスイッチセグメントを有する第2の形状記憶ポリマーが用いられている。この第2の形状記憶ポリマーは実質的に一般式IIのポリアクリレートをベースとしている。ここで、RはHまたはCHであり、そしてRは飽和または不飽和の、環状のまたは脂肪族の、非置換または置換されたC1−C18の残基を意味する。
【0017】
【化2】

【0018】
本発明の更にもう1つの有利な実施形態では、第2のスイッチセグメントは、R=CHとR=C11(シクロヘキシル)を持つ式(II)のポリシクロヘキシルメタクリレート(Poly(Cyclohexylmethacrylat))のセグメント(PCHMA)か、またはR=HとR=C11を持つ式(II)のポリシクロヘキシルアクリレート(Poly(Cyclohexylacrylat))のセグメントである。これらの中でとりわけ好ましいものはポリシクロヘキシルメタクリレートである。式IIにおける、更にもう1つの有利なスイッチセグメントはポリメチルメタクリレート(Poly(methylmetacrylat))(PMMA)とポリ2−ヒドロキシエチルメタクリレート(Poly(2−hydroxyethylmethacrylat))(PHEMA)である。
【0019】
特に好ましい実施形態では、使用できる形状記憶ポリマーは、第1のスイッチセグメントが、n=1...14の一般式Iのポリエステルまたはコポリエステルであって、特にポリ(ε−カプロタクトン)である。そしてこの形状記憶ポリマーの第2のスイッチセグメントは、一般式IIのポリアクリレートであり、特にポリシクロヘキシルメタクリレートである。このような組成を用いると、適切なプログラミングにより、少なくとも2つの一時的形状を同時に固定し得る材料が得られる。この少なくとも2つの一時的形状は対応する2つの熱的刺激により活性化することにより再現することができる。前記のポリマー系の特に有利な特性はそれらのスイッチ温度であり、これらの温度差が互いに大きいことである。さらに好ましくは、式IとIIとによる2つのスイッチセグメントのスイッチ温度が互いに少なくとも40K異なり、好ましくは少なくとも50K異なり、とりわけ好ましくは少なくとも60K異なる。この材料の更にもう1つの有利な点は、特に残基Rと平均的な鎖長qに依存して、ポリメタクリレートのスイッチ温度が少なくとも110℃、特に少なくとも120℃であることにある。
【0020】
用いられている鎖状セグメントの分子量、および前述のポリマーにおける、鎖状セグメントの質量分率、そして相対的質量比(スイッチセグメントA:スイッチセグメントB)は、好ましくは、前記のスイッチ温度が維持され、1ステッププログラミング後に、少なくとも2つのスイッチ転移で、明確な形状変化があるように定められる。有利なものは、スイッチ相Aを形成する(ポリエステルベースの)鎖状セグメントの平均的分子量が2,000から100,000g/molであり、とりわけ5,000から40,000g/molであり、好ましくは約10,000g/molである。好ましくは、形状記憶ポリマーのポリエステルセグメントの質量分率は30%から上および80%から下であり、とりわけ35%から60%までの範囲であり、好ましくは50%から60%までである。これに対応して、ポリアクリレートセグメントの質量分率は≦70%および≧20%であり、とりわけ65%から40%までの範囲であり、好ましくは50%から40%までの範囲である。
【0021】
前記の形状記憶ポリマーは以下の方法により有利に製造することができる。
−一般式Iaのポリエステルのマクロモノマーで、n=1...14であり、任意の結合残基Yが結合されているもの、または一般式Iaのコポリエステルで、nとYは上記と同様であり、少なくとも2つのエステル単位で異なるnとmのこれらの誘導体となっているものと、
【0022】
【化3】

【0023】
−一般式IIaのアクリレートモノマーで、RはHかまたはCHであり、Rは飽和または不飽和の、環状または脂肪族の、非置換または置換されたC1−C18の残基を示すものとが、互いに共重合される。
【0024】
【化4】

【0025】
ポリエステルとアクリレートモノマーの好ましい実施形態は上記記載に従い選択される。ここで、式Iaでp1とp2、すなわちポリエステルおよびコポリエステルの鎖長は、等しくとも等しくなくともよい。残基Yはもっぱら2つのポリエステル単位を鎖の方向を逆転させて結合し、架橋を形成する重合可能な末端基を両側から添加することができるようにするために機能している(下記参照)。
【0026】
ポリエステル成分の好適なマクロモノマーは、例えば、一般式Ibにおいて、r=2...8であり、X=OまたはNHのものに対応する。とりわけ好ましくは、r=2、p3=2、そしてX=Oの成分である。すなわち、ポリエステルマクロモノマーはジエチレングリコールHO−CH−CH−O−CH−CH−OHと、対応するエステルモノマーとの重合により得られる。
【0027】
【化5】

【0028】
好ましくは、第1のスイッチセグメントの第1の末端基Rおよび/または第2の末端基Rは互いに独立な重合可能な残基である。好ましくは、Rと同様にRもそれぞれ重合可能な残基である。特に好ましくい実施形態では、Rおよび/またはRにアクリル基またはメタクリル基の残基が用いられ、とりわけそれぞれメタクリル基の残基である。このようにして、2つの成分の共重合によりネットワークが得られ、これにポリエステルセグメントが両側から結合される。
【0029】
とりわけ好ましい実施形態では、アクリレート成分として式IIbのシクロヘキシルメタクリレートが用いられる。シクロヘキシルメタクリレートはその(単独)重合により式IIcのポリシクロヘキシルメタクリレートセグメントとなる。
【0030】
【化6】

【0031】
とりわけ好ましい実施形態では、オリゴマー(Oligomerer)の架橋剤として用いられる分子量約10,000g/molのマクロジメタクリレート(Makrodimethacrylat)、すなわち式Icのポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート(PCLDMA)が式IIbのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)のモノマーと共重合される。これにより、架橋されたABブロックコポリマーが得られ、このABブロックコポリマーには式Icのセグメントと式IIcのセグメントが含まれている。
【0032】
上記の形状記憶ポリマーは、建築技術における応用に対しとりわけ有利に適用される。例えば固定部材の用途としては、対応する熱的刺激を加えることにより、アンカー用の形状(Verankerungsform)に変形することができる。とりわけ本発明のポリマーは、プロセスに特有の比較的高い温度(100℃まで)が現れる領域で、ポリマーの定常的形状の完全な再現が望まれない場合に、有利である。
【0033】
本発明の更なる好ましい実施形態は、従属項に記載の他の特徴により示される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、PCLDMAのマクロモノマーとCHMAのモノマーを共重合して得られるAB高分子網目の構造の概略図であり、本発明によるプログラミング方法の実施例を説明する。
【図2】図2は、図1に示すAB高分子網目の構造的変化を示す図である。a)はPCHMA相(2つの形状の効果)による一時的形状の固定、b)はPCL相(2つの形状の効果)による一時的形状の固定、c)はPCHMA相とPCL相と(3つの形状の効果)による2つの一時的形状の固定を示す。
【図3】図3は、PCL−PCHMA網目の伸長の時間経過を示す図である。これは循環式熱機械的実験で4回目のサイクルで得られたものである。a)はT=70℃、T=150℃、b)はT=−10℃、T=70℃、c)はT=−10℃、T=150℃、である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明について実施例を、これに対応する図面を用いて、以下に説明する。
【0036】
本発明によるプログラミング方法を、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)とポリ(シクロヘキシルメタクリレート)(PCHMA)とから成るAB高分子網目の例において以下に説明する。このAB高分子網目は本発明のプログラミング方法に有利に適用できる。
【0037】
1.PCLDMAとCHMAの共重合によるAB高分子網目の合成
【0038】
ポリ(ε−カプロラクトン)ジメタクリレート(PCL10kDMA)はベリン等の論文(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 2006、 103、 18043−18047)およびドイツ特許出願公開第DE2006 017 759.2号公報明細書に記載されているように、平均的分子量が10,000g/molのポリ(ε−カプロラクトン)ジオール(PCL10k−diol)と塩化メタクリロイル(Methacryloylchlorid)とから生成される。H−NMR分光で測定されたメタクリレート化の割合は約85%であった。
【0039】
PCL10DMAとシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)(純度 ≧97%、Aldrich社)は、式IIb(前記参照)に従い、PCLDMAが10重量%と80重量%の間で種々の混合比となるよう秤量された。PCL10kDMAとCHMAの混合物は70℃の油浴でフラスコを用いて融解された。泡の無い均一な融解状態となった後、この混合物はグラスプレート(10×10cm)上に流し出され、PTFEのスペーサ(厚さ0.5mm)を周囲に挟みこんでもう1枚のグラスプレートを重ねることにより密閉された。この挟み込みで固定された形状は、光開始剤の添加無しで、高圧水銀蒸気ランプ(1800W)を備えたUV装置(F300M、Fusion UV社、Gaithersburg、MD)を用いて、フリーラジカルによる重合/架橋を生じるように、照射された。ランプ先端と試料の間隔は25cm(T=90℃)であった。この試料は硬化後、反応しなかった成分を取り除くため、クロロホルムで抽出され、重量が一定となるまで乾燥された。比較材料として純粋なPCL10kDMAを同様に光重合により架橋し、PCL10kDMAの単独重合高分子網目(Homopolymernetzwerk)を得た(表1のPCL(100))。
【0040】
H−HRMAS−NMR分光による分析(DCX300、Bruker社)で、高分子網目の組成が確認された。用いられたPCL10kDMAとCHMAはネットワークに定量的に組み込まれはしなかったが、実際の組成は使用された2つの成分の比に近い高分子網目に対応したものであった。
【0041】
図1は、このようにして得られた、全体が10で示されている、PCL−PCHMA高分子網目の理想的な構造を概略的に示す。ここで、12はセグメントB(ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)のセグメント、PCHMAのセグメント)であり、14はセグメントA(PCLのセグメント)を示す。PCHMAのセグメント12は、両端に結合されたPCL10kDMAの鎖14によって共有結合で架橋されている。PCLのセグメント14も同様であり、このPCLのセグメント14もまた両端で共有結合により結合されている(図示せず)。PCLのセグメント(単数)14の終端とPCHMAのセグメント(複数)12との間の架橋部位が16で示されている。
【0042】
2.PCLDMAとPCHMAとからなる高分子網目の特性解析
【0043】
実施例1に基づいてPCLのマクロモノマーとCHMAのモノマーとから生成された種々の組成の高分子網目の特性が、クロロホルムを用いて抽出した後、分離された相の存在を確認するため、動的機械的熱解析(dynamisch−mechanischer Thermoanalyse,DMTA)によって解析された。これは結晶質PCL相およびアモルファスPCHMA相を一時的形状の固定に用いなければならないからである。DMTA測定は25Nの荷重トランスデューサー(Kraftaufnehmer)を備えるEplexor 25N(Gabo社)を用いて行われた。静的な荷重は0.50%、動的な荷重は0.20%、周波数は10Hz、そして加熱レートは−100℃から+170℃の温度範囲で2K・min−1であった。
【0044】
PCLセグメントとPCHMAセグメントとを含むAB高分子網目は0から150℃の間で良好に区別された2つの相転移を示し、これらの相転移は、一方でPCL微結晶の融解に起因し、またPCHMA領域(ドメイン)のガラス転移に起因するものである。ここで下の転移温度Ttrans,Aは明確にPCLセグメントの融解および結晶化に関連する。この融解および結晶化はホモポリマーPCL(100)においては58℃で観測され、PCL質量分率が10%と80%の間の共重合高分子網目(Copolymernetzwerken)では43℃から51℃である(T(PCL))。これに対し、45重量%までのPCLを含んだ材料では、確認された上の転移温度Ttrans,Bは約140℃であり、これは明確にPCHMAセグメントのガラス転移に関連するものである(T(PCHMA))。PCLが50重量%またはこれより多いAB高分子網目に対しては、シグナル/ノイズ比が十分でなかったためDMTA測定ではT(PCHMA)は決定されていない。
【0045】
これらの結果は、AB高分子網目が相分離された形態を備え、この形態ではPCLセグメントとPCHMAセグメントが別々の転移温度を持つ固有の相を形成し、これらの相が2つの一時的形状の温度による固定に適していることを示すものである。共重合高分子網目において得られたT(PCL)の値とT(PCHMA)の値は、実質的にこれらに対応するホモポリマーと異なるものではないので、アモルファス混合相の存在は除外することができる。
【0046】
3.PCLDMAとPCHMAとからなる高分子網目のプログラミング
【0047】
AB高分子網目に対し、種々のスイッチセグメントを、一時的形状を1ステッププログラミングで固定するのに用いることができる。プログラミングが行われる温度範囲を調整することにより、固定するためのスイッチセグメントを選択することができる。実施例3.1および実施例3.2では、まず1つの転移温度(Ttrans,AまたはTtrans,B)に関する従来の2つの形状のプログラミングについて説明し(図2aと図2b)、次いで本発明による、2つの転移温度(Ttrans,AとTtrans,B)を用いた3つの形状のプログラミングの1ステッププログラミング方法について、実施例3.3により説明する(図2c)。本実施例では、T(PCL)が下の転移温度Ttrans,Aに対応し、T(PCHMA)が上の転移温度Ttrans,Bに対応する。
【0048】
3.1 PCHMAによる固定における一時的相のプログラミング
【0049】
PCLDMAとPCHMAに基づいて実施例1に従って生成されたAB高分子網目が、循環式熱機械実験で以下のようにプログラムされた。製造に依存した定常的形状の他に1つの一時的形状をポリマーの「形状記憶」として記憶され、PCHMA相によって固定された。ここで、上のプログラミング温度(T)として150℃が用いられ、この温度はPCHMAのガラス転移温度(T(PCHMA))の上にあり、そして下のプログラミング温度(T)として70℃が用いられ、この温度はT(PCHMA)の下ではあるがT(PCL)の上にある。分子レベルでのプロセスは図2aに示され、PHCMAのアモルファス粘弾性状態(amorph−visco−elastische Zustand)が12′で、融解でのPCLのアモルファス状態が14′で、そしてPHCMAのガラス相が12″で示されている。
【0050】
まずポリマー材料をT=150℃に加熱し(図2a、上)、そして一次元方向の伸長により変形する。150℃で全てのポリマーセグメントは粘弾性となり、試料の巨視的変形がPCLセグメント並びにPCHMAセグメントの一方向への配向をもたらすようにする。この一時的形状の固定において、T=70℃まで冷却される。すなわちPCHMAのガラス転移温度(T(PCHMA))まで冷却される(図2a、下)。これによって、PHCMA相のガラス転移(12′→12″)が起こり、これに対しPCL相はその粘弾性状態14′に留まる。
【0051】
これに続いて試料の荷重を取り除くと、アモルファスのPCLセグメント14′のみがエントロピーを増加し、部分的な形状回復を引き起こす。ただしこの形状回復はガラス状態のPHCMA相12″に妨げられない範囲となる。このようにして生じた一時的形状はPCHMA相のみにより固定される。
【0052】
3.2 PCLによる固定における一時的相のプログラミング
【0053】
PCLDMAとPCHMAに基づいて実施例1に従って生成されたAB高分子網目が、循環式熱機械実験で以下のようにプログラムされた。製造に依存した定常的形状の他に1つの一時的形状をポリマーの「形状記憶」として記憶され、PCL相によって固定された。ここで、上のプログラミング温度(T)として70℃が用いられ、この温度はPCLの融解温度T(PCL)の上にあってT(PCHMA)の下であり、そして下のプログラミング温度(T)として−10℃が用いられ、この温度はT(PCL)の下にある。分子レベルでのプロセスは図2bに示され、PCLのアモルファス状態が14′で、PCLの結晶状態が14″で、そしてPHCMAのガラス相が12″で示されている。
【0054】
まずポリマー材料をT=70℃に加熱し(図2b、上)、そして一次元方向の伸長により変形する。70℃でPCHMAはガラス状態12″となり、PCLはアモルファス粘弾性状態14′となる。試料の巨視的変形はここではPCLセグメントの配向に基づいている。この一時的形状の固定において、次にT=−10℃まで冷却される。すなわちPCLの転移温度(T(PCL))の下まで冷却される(図2b、下)。
【0055】
これによって、PCL相の結晶化が起こり(14′→14″)、これに対しPCHMA相はそのガラス状態12″に留まる。なお、ここではPCL相の結晶化は定量的には起きる訳ではない。すなわち、PCL鎖の一部はアモルファス状態に留まる。これに続いて試料の荷重を除くと、この一時的形状はほぼそのまま維持される。これは両方の相における鎖状セグメントがそのまま柔軟性のない状態であるためである。一時的形状はPCL相によってのみ固定され、とりわけPCLの微結晶の物理的架橋により固定される。これはPCHMAが全プログラミング工程の間はガラス状態12″であるからである。
【0056】
3.3 PCHMAとPCLとによる固定における2つの一時的形状の1ステッププログラミング
【0057】
PCLDMAとPCHMAに基づいて実施例1に従って生成されたAB高分子網目が、循環式熱機械実験で本発明に従い以下のようにプログラムされた。製造に依存した定常的形状の他に2つの一時的形状をポリマーの「形状記憶」として記憶され、PCL相14ならびにPCHMA相12によって固定された。ここで、上のプログラミング温度(T)として150℃が用いられ、この温度はPCLの融解温度T(PCL)の上にあり、PCHMAのガラス転移温度(T(PCHMA))の上にある。そして下のプログラミング温度(T)として−10℃が用いられ、この温度はT(PCL)の下にあり、T(PCHMA)の下にある。分子レベルでのプロセスは図2cに示され、PCHMAとPCLの粘弾性状態を12′および14′で、PCLの結晶状態を14″で、そしてPHCMAのガラス状態を12″で示されている。
【0058】
まずポリマー材料をT=150℃に加熱し(図2c、上)、そして一次元方向の伸長により、第1の一時的形状に対応するように変形する。すでに3.1の実施例示されたように、150℃ではPCL相と同様にPCHMA相も粘弾性状態にあり、それぞれ14′と12′である。これにより、両方の相が、外部の力の方向に各々の鎖状セグメントを配向することにより、試料の巨視的変形に寄与する。この一時的形状の固定において、この後T=−10℃に冷却された。すなわちPCHMAのガラス転移温度T(PCHMA)より下に、そして融解温度T(PCL)の下に冷却された(図2c、下)。これによって、冷却中にまずPCHMA相のガラス転移(12′→12″)が起こり、そして次に部分的にPCL相の結晶化(14′→14″)が起こる。これに続いて試料の荷重を取り除くと、この一時的形状はほぼそのまま維持される。これは両方の相における鎖状セグメントがそのまま柔軟性のない状態であるためである。一時的形状はPCL相と同様にPCHMA相によっても物理的架橋の形成により固定される。
【0059】
このようにプログラムされた高分子網目から出発し、このポリマーがまず中間温度T(PCL)<T<T(PCHMA)に加熱され、続いてT(PCHMA)の上の温度に加熱されることにより、第1の一時的形状にある高分子網目から、第2の一時的形状と定常的形状が次々に引き起される。この事前に固定された形状を再現することが形状記憶効果(Formgedachtniseffekt)またはShape−Memory−Effekt(SM−効果)と称されるものである。
【0060】
4. 形状記憶効果
【0061】
実施例1に従って生成されたAB高分子網目の形状記憶特性を確認するため、恒温槽を備えた張力測定器で、試料の循環式熱機械測定が実施された。これらの実験では、各々のサイクルでポリマー材料は実施例3.1から3.3の温度範囲に対応してプログラミングされ、そしてこの試料の荷重を除去した後、同じ温度より高温に再加熱された。この際に形状の再現が、伸長を測定することにより観察された。図3は、プログラミングのサイクルと形状再現のサイクルにおいて、4回目のサイクルでポリマーPCL(45)CHMを時間の関数で測定したものである。ここで図3aは実施例3.1(図2a)に対応する温度範囲70℃と150℃の間での伸長の時間表示であり、図3bは実施例3.2(図2b)に対応する温度範囲−10℃と70℃の間での伸長の時間表示であり、図3cは本発明による実施例3.2(図2c)に対応する温度範囲−10℃から150℃での伸長の時間表示である。
【0062】
図3aの場合では、試料は3回目のサイクルの後、再度得られた定常的形状をT=150℃においてε=50%に変形された。T(PCHMA)より下で、T(PCL)より上の、T=70℃に冷却し、機械的力を維持することで、試料は、そのエントロピー弾性により、まず僅かに伸長し、その後PCHMAのガラス転移によって、試料は収縮する。これに続いて試料の荷重を除去し、T=150℃に再加熱することにより定常的形状が回復される。この実験は、PCHMAが一時的形状を固定し、そして定常的形状を再現できることに適していることを示すものである。
【0063】
図3bは温度範囲−10℃から70℃で実施された2つの形状の実験を示すものである。70℃においてε=50%で試料が伸長した後、3回目のサイクルに続いて、試料は、荷重をコントロールしながら、−10℃まで冷却された。ここで観察された収縮はPCHMAのガラス相のエネルギー弾性特性に起因する。70℃に再加熱すると4回目のサイクルにおける定常的形状の再現が引き起こされた。回復期の時間間隔は温度に比例し、図3aに示す場合より大幅に短いことが分かる。これより、回復をもたらすPCLの融解プロセスが、PCHMAの軟化プロセスより短い時間間隔に渡り、図3aの場合では定常的形状が再現される原因であったと結論することができる。この実験は、PCL相の微結晶が、一時的形状を固定し、そして定常的形状の再現を促進することに適していることを裏付けるものである。
【0064】
第3の、図3cに示された場合では、試料は第1の場合と同様にT=150℃において変形され(第1の一時的形状に対応して)、そしてこれに続いて機械的力を維持しながら、T=−10℃に冷却された。この冷却はPCHMAのガラス硬化をもたらし、これに続くPCLの結晶化をもたらした。160Kの大きな温度差(図3aと3bでの80Kと比較して)は、図3aと比較して、冷却の際に、より大きな収縮をもたらした。荷重を除去した後の、第1の一時的形状にある試料は、150℃に再加熱することにより、まず、試料の熱的伸長に起因する、ゆっくりとした伸長の増大をもたらす。54℃付近の温度で伸長はやや減少するが、これはPCL微結晶の融解で説明できる。このPCL微結晶はこの試料の組成においては、第2の一時的形状の固定に寄与するものとしては、比較的少ない成分である。PCLの相転移の後で得られる形状は第2の一時的形状に対応する。150℃まで更に加熱すると、ガラス状のPCHMAのガラス相の軟化により、定常的形状の再現がもたらされる。
【0065】
図3に示されたプログラミングと形状再現のサイクルは実施例1のAB共重合高分子網目の全体を用いて実施された。2回目から5回目までのサイクルから、PCLセグメントとPCHMAセグメントのスイッチ温度Tswが確認され、平均値が求められた。同様に、形状記憶特性の定量化のために、伸長固定比Rと伸長回復比Rが確認され、平均値が求められた。ここでRは一時的形状を固定するための尺度であり、これに対しRは回復の尺度である。この結果は3つの温度範囲のすべてに対し表にまとめられている。
【0066】
ここで本発明による、30%またはこれより少ないPCLを含む、3つの形状のプラスチック(T=−10℃、T=150℃)の高分子網目の1ステッププログラミングは、ただ1つの、ガラス状態のPCHMA相の軟化に起因する相転移を示す。これはここでは分離されたPCL相が形成されないからである。一方では、80%またはこれより多いPCLを含む材料もまた同様にただ1つの相転移をしめすが、これはPCL微結晶に関係している。ただ35重量%から60重量%までのPCLを含む材料のみで、2つのスイッチ温度が観測された。この組成において、PCL相と同様にPCHMA相も2つの一時的形状の固定に寄与するので、これによってこの材料で回復プロセスにおける3つの形状の特性が維持される。PCL(35)CHM、PCL(40)CHM、およびPCL(45)CHMにおいては、第1の一時的形状の形状変化の固定へのPCLの寄与が第2の一時的形状に比べ比較的少ないことが確定された。これはプログラミングプロセスにおける全変形がそれほど際立っていないからである。これに対し、PCL(50)CHMおよびPCL(60)CHMでは、強制された伸長εの固定のために、PCLの成分が変えられることを示している。第1の一時的形状から第2の一時的形状への形状変化は、全回復、すなわち第2の一時的形状から定常的形状への回復、に対して30%と73%の間であった。
【0067】
PCLとPCHMAとからなる系の実施例で示された実験で、本発明による1ステッププログラミング方法で、3つの形状の特性を持つポリマー材料が得られることを示した。
【0068】
【表1】



【符号の説明】
【0069】
略称/参照記号
trans、A 下の転移温度
trans、B 上の転移温度
(PCL) PCLセグメントの融解温度
(PCHMA) PCHMAセグメントのガラス転移温度

10 高分子網目
12 分離された相A/PCHMA−セグメント
12′ アモルファス粘弾性PCHMAセグメント
12″ ガラス状PCHMAセグメント
14 分離された相B/PCLセグメント
14′ アモルファス粘弾性PCLセグメント
14″ 半結晶性PCLセグメント
16 架橋部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形状記憶ポリマーが第1の一時的形状と、少なくとも更に2つの、熱的に引き起こすことができる、記憶された形状、すなわち少なくとも第2の一時的形状と1つの定常的形状を持つプログラムされた形状記憶ポリマーの製造方法であって、下記ステップ、
(a)少なくとも2つのスイッチセグメント(A、B)を含み、相の分離によりそれぞれ転移温度(Ttrans,A、Ttrans,B)を持つスイッチ相を形成する形状記憶ポリマーを用意するステップ、
(b)上の転移温度(Ttrans,A)より上の温度で第1の一時的形状に対応した形状に形状記憶ポリマーを変形するステップ、および
(c)第1の一時的形状を固定しつつ、下の転移温度(Ttrans,B)より下の温度に冷却する冷却ステップ
を備えることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
形状記憶ポリマーが用意され、前記形状記憶ポリマーは、AB−ネットワーク構造であり、前記スイッチ相を形成するスイッチセグメントは、その両端で共有結合で高分子網目に結合されていることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、
前記変形は、前記形状記憶ポリマーの少なくとも1つの空間方向への伸長か、少なくとも1つの空間方向への収縮か、屈曲か、またはこれらの組み合わせかを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法において、
前記第1の一時的形状から前記第2の一時的形状へおよび/または前記第2の一時的形状から前記定常的な形状への、前記プログラムされた形状記憶ポリマーの加熱の間の回復の大きさは、前記形状記憶ポリマーにおける少なくとも2つの分離された相(A、B)の質量分率によって決定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法において、
前記ステップ(a)の前記形状記憶ポリマーは、その定常的形状で用いられることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の方法において、
形状記憶ポリマーが用意され、前記形状記憶ポリマーの第1のスイッチセグメントは、実質的に、一般式I、n=1...14のポリエステルか、または種々のnの一般式Iのコポリエステルか、またはこれらの誘導体をベースとし、前記第1のスイッチセグメントは、特にn=5のポリ(ε−カプロラクトン)セグメントまたはこれの誘導体であり、前記誘導体では脂肪族の炭素原子が互いに独立して、1つまたは2つの、非分岐または分岐状の、飽和または不飽和のC1からC14の残基と置換されていてもよいことを特徴とする方法。
【化1】

【請求項8】
請求項6または7に記載の方法において、
形状記憶ポリマーが用意され、前記形状記憶ポリマーの前記第2のスイッチセグメントは、実質的に一般式IIのポリアクリレートをベースとし、ここで、RはHまたはCHであり、そしてRは飽和または不飽和の、環状のまたは脂肪族の、非置換または置換されたC1−C18の残基を意味し、前記第2のスイッチセグメントは、とりわけR=CHとR=C11とを持つポリシクロヘキシルメタクリレートか、またはR=HとR=C11を持つポリシクロヘキシルアクリレートのセグメントであることを特徴とする方法。
【化2】

【請求項9】
請求項7または8に記載の方法において、
形状記憶ポリマーが用意され、前記形状記憶ポリマーの第1のスイッチセグメントは、n=1...14の一般式Iのポリエステルまたはコポリエステルであって、特にポリ(ε−カプロタクトン)であり、そしてこの形状記憶ポリマーの第2のスイッチセグメントは、一般式IIのポリアクリレートであり、特にポリシクロヘキシルメタクリレートであることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記形状記憶ポリマーのポリ(ε−カプロタクトン)セグメントの質量分率は、30%から上と80%から下であり、とりわけ35%から60%までの範囲であり、好ましくは50%から60%までであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法において、
前記スイッチセグメントは、平均的分子量が2,000から100,000g/molであり、とりわけ5,000から40,000g/molであることを特徴とする方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519357(P2010−519357A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550257(P2009−550257)
【出願日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/050803
【国際公開番号】WO2008/101760
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(509238292)ゲーカーエスエスフォルシュングスツェントゥルム ゲーストハハト ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】