3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法
【課題】高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を、容易かつ大量に作製する3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【解決手段】金属材料からなる下地層1を準備する工程、下地層の表面に平行な帯状のレジスト2を形成する工程、ドライメッキ処理を施すことにより絶縁性を有する無機材料層3’を形成した後、レジストと無機材料層の積層体を剥離し、平行な帯状のパターンを有する第1層3を形成する工程と、第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造31を形成する工程と、露出した下地層にウェットメッキ処理により、第1層の厚み以上の金属材料からなる第2層4を形成する工程と、第2層の表面に第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を形成する第2凹凸構造41形成工程とを有する3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【解決手段】金属材料からなる下地層1を準備する工程、下地層の表面に平行な帯状のレジスト2を形成する工程、ドライメッキ処理を施すことにより絶縁性を有する無機材料層3’を形成した後、レジストと無機材料層の積層体を剥離し、平行な帯状のパターンを有する第1層3を形成する工程と、第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造31を形成する工程と、露出した下地層にウェットメッキ処理により、第1層の厚み以上の金属材料からなる第2層4を形成する工程と、第2層の表面に第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を形成する第2凹凸構造41形成工程とを有する3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図14はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図14に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用と左目用の円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0004】
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
【0005】
ところで、特許文献1では、パターン位相差フィルムの製造方法として、レーザーによりパターンを形成したロール版を用い、このようなロール版と、配向層形成用層とを接触させることにより表面にパターン状の微細凹凸を有する賦型されたパターン配向膜を形成する方法が開示されている。また、特許文献1には同一平面に研磨により微細凹凸をパターン状に形成する方法が記載されている。
しかしながら、レーザーによりパターンが形成された原版を用いて製造されたパターン位相差フィルムは、右目用および左目用の位相差層のパターン、すなわち、液晶化合物の配列方向の異なる領域間の端部近傍、すなわち、第1位相差領域および第2位相差領域の境界部分で液晶化合物の配列方向が乱れる配向欠陥が生じやすく、液晶表示装置に用いた場合には、上記端部近傍の液晶に配向欠陥を生じさせるといった問題があった。その結果、端部近傍からの光漏れを生じ、コントラストが低いものとなるといった問題があった。また、レーザーにより微細凹凸を描画する場合、微細凹凸を一本一本描画するため数十nm、数百nmの凹凸を大面積(液晶TVサイズ)に渡って形成するのに相当の時間を要する。また数十nm、数百nmの凹凸のピッチで高精度で制御する装置が必要となるといった問題があった。
また、一般にレーザーでの加工は線幅が数百nmレベルが下限であり数十nmレベルの線幅は困難であり、優れた配向規制力を有するパターン配向膜とすることが難しいといった問題や、レーザー加工装置が高価であるといった問題があった。
また、特許文献1は研磨方法による原版作製の記載があるが特許文献1の方法では同一平面上に研磨によりパターンを形成した場合には、数百μmのパターン領域毎に研磨を実施したり、微細凹凸が形成された領域パターンを組み合わせてロール版を形成する必要があり、プロセスが複雑で相当な時間と高精度の作業が必要であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも、その厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。また、第2層形成工程において、上記第2層の上記第1層の厚みと同等とした場合も、本発明においては、第1層には無機材料が用いられ、第2層には金属材料が用いられることから、第1層の表面の硬度を第2層の表面の硬度よりも高いものとすることができるため、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0010】
また、本発明は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも、その厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0012】
本発明においては、上記3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であるロール版であることが好ましい。本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であること、すなわち、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版がロール版であることにより、3次元表示用パターン配向膜用原版を回転させながら連続的に3次元表示用パターン配向膜を形成するための配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量に3次元表示用パターン配向膜を形成可能なものとすることができ製造効率の高いものとすることができる。
【0013】
本発明においては、上記第1凹凸構造形成工程または上記第2凹凸構造形成工程の少なくとも一方がロールプレス加工により実施されることが好ましい。ロールプレス加工を施して微小なライン状凹凸構造を形成することにより、本発明における第1凹凸構造形成工程や第2凹凸構造形成工程を容易に行うことが可能となる。また、ロールプレス加工をすることにより、定位・定圧プレスが可能となり、加工された第1層または/および第2層の厚みを均一化することができ、また断続・連続的な生産が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を、容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜用原版の一例を示す概略図である。
【図3】図3の3次元表示用パターン配向膜用原版の表面を示す概略平面図である。
【図4】本発明における第1凹凸構造が形成されている態様の一例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明における第1凹凸構造を説明する説明図である。
【図6】本発明におけるロールプレス加工の一例を示す概略図である。
【図7】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図8】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図9】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図10】パターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図11】本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜の他の例を示す概略図である。
【図12】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する図である。
【図13】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する図である。
【図14】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版(以下、単に原版と称して説明する場合がある。)の製造方法について説明する。本発明の原版の製造方法は、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向の違いにより2つの態様に大別される。
【0017】
I.第1態様
本発明の原版の製造方法の第1態様は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層形成用層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0018】
ここで、本態様の原版の製造方法について図を用いて説明する。図1(a)〜(g)は本態様の原版の製造方法の一例を示す工程図である。本態様においては、まず下地層準備工程においては、金属材料からなる下地層1を準備する(図1(a))。次に、レジスト形成工程においては、下地層の表面にレジスト材料を塗工してレジスト膜を形成し、上記レジスト膜をレーザー描画法等により平行な帯状のパターンに露光する(図示せず)ことにより、下地層1の表面に平行な帯状のパターンを有するレジスト2を形成する(図1(b))。次に第1層形成工程においては、下地層1およびレジスト2の表面にドライエッチング処理を施すことにより絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層3’を形成した後(図1(c))、レジスト2およびその表面に形成された上記第1層形成用層3’からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層3を形成する(図1(d))。次に、第1凹凸構造形成工程においては、第1層3の表面に、切削加工またはロールプレス加工等を施して微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成し、第1凹凸構造31を形成する(図1(e))。次に、第2層形成工程においては、第1凹凸構造形成工程後に、露出した下地層1の表面にウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層4を第1層3の厚みよりも厚くなるように形成する(図1(f))。次に、第2凹凸構造形成工程においては、第2層4の表面に、第1凹凸構造形成工程と同様の加工を施すことにより、第1凹凸構造31の形成方向とは異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成し、第2凹凸構造41を形成する(図1(g))。本態様の原版の製造方法は、上述した各工程を経ることにより、原版100を製造する製造方法である。
【0019】
次に、本態様の製造方法により製造される原版について図を用いて説明する。図2は本態様の製造方法により製造される原版100の一例を示す概略図、図3(a)は原版100の表面を示す概略平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。
図3(a)、(b)に例示するように、本態様の製造方法により製造される原版100は、下地層1と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、かつ表面に第1凹凸構造31を有する第1層3と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、第1層3の厚みよりも厚く形成され、かつ表面に第2凹凸構造41を有する第2層4と、を有し、第1凹凸構造31と第2凹凸構造41の形成方向が、上記第1層3および第2層4の表面で異なるものである。また、原版100の表面は、平行な帯状に形成された凹部(第1層3)および凸部(第2層4)を有する。なお、図示はしないが、本態様において製造される原版は、第1層の厚みと第2層の厚みとが同等であり、原版の表面が凹部および凸部を有さないものであってもよい。
なお、図2は、上記原版100がロール状であるロール版である場合の一例である。また、図3(a)が図2に示す原版100の表面である場合、上記第1層3および第2層4表面の第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向が、原版(ロール版)100の回転方向に対して135°および45°であり、90°異なるものである。また、図3(a)中の矢印は、第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0020】
本態様によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。また、第2層形成工程において、上記第2層の上記第1層の厚みと同等とした場合も、本発明においては、第1層には無機材料が用いられ、第2層には金属材料が用いられることから、第1層の表面の硬度を第2層の表面の硬度よりも高いものとすることができるため、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜(以下、単にパターン配向膜と称して説明する場合がある。)を得ることができる。
【0021】
以下、本態様の原版の製造方法における各工程について説明する。
【0022】
1.下地層準備工程
本態様における下地層準備工程は、金属材料からなる下地層を準備する工程である。
本工程で準備される下地層は、基材および基材上に形成された下地層を有するものであってもよく、下地層のみからなるものであってもよいが、基材および下地層を有するものであることが好ましい。本発明により製造される原版はロール状であることが好ましいところ、基材および下地層を有する場合は原版をロール状に加工しやすいものとなるからである。以下、下地層が基材を有する場合と、基材を有さない場合とに分けて説明する。
【0023】
(1)基材を有する場合
本工程により準備される下地層が基材を有する場合について説明する。以下、下地層および基材について説明する。
【0024】
(i)下地層
まず、下地層について説明する。上記下地層は後述する基材上に形成されるものである。
【0025】
上記下地層に用いられる材料としては、金属材料であり、後述する第1層と密着性を有し、かつウェットメッキ処理を行うことにより後述する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リンおよびこれらの合金、アルマイト等を挙げることができ、なかでも、ニッケル、銅、クロム、ステンレスであることが好ましく、特にクロムであることが好ましい。クロムは比較的硬いことから、その表面に平滑性を付与することが容易であるからである。
【0026】
また、下地層の最表面は平滑性に優れていることが好ましい。下地層の最表面の平滑性が劣る場合は、下地層の上層に形成される第1層や第2層の表面の平滑性に悪影響を与えることから、後述する第1凹凸構造形成工程または第2凹凸構造形成工程において、所望の第1凹凸構造または第2凹凸構造を形成することが困難となる可能性があるからである。下地層の最表面に平滑性を付与する方法としては、所望の平滑性を得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、スーパーミラー研磨等の切削法を挙げることができる。
【0027】
上記下地層の表面粗さとしては、後述する第1層形成工程および第2層形成工程において、所望の厚みおよび平滑性を有する第1層または第2層を形成することができる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ra=10000nm以下であることが好ましく、中でもRa=5000nm以下であることが好ましく、特にRa=1000nm以下であることが好ましい。
なお、ここでの「表面粗さ(Ra)」は、「算術平均表面粗さ」であり、JIS−B0601に準拠して測定される。
【0028】
このような下地層の厚みとしては、後述する第1層形成工程または第2層形成工程において、所望の厚みおよび平滑性を有する第1層または第2層を形成できる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば、0.01nm〜5000μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.05nm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、特に0.1nm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
下地層の形成方法としては、後述する基材の表面に所望の平滑性および厚みを有する第下地層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。具体的には、ウェットメッキ処理、ドライメッキ処理等を挙げることができる。ウェットメッキ処理としては、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミニウムメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。ドライメッキ処理としては、真空蒸着メッキ法、抵抗加熱法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。
【0030】
(ii)基材
次に、基材について説明する。上記基材は単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0031】
上記基材に用いられる材料としては、基材上に形成される下地層と密着性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述した下地層の材料と同様とすることができる。本発明においては、なかでも、アルミニウムであることが好ましい。アルミニウムは軽いため、本発明により製造される原版を取り扱いやすいものとすることができるからである。
【0032】
また、基材の最表面は平滑性に優れていることが好ましい。上述したように、下地層の表面は平滑性に優れていることが好ましいところ、基材の最表面の平滑性が劣る場合は、基材の上層に形成される下地層の平滑性に悪影響を与える可能性があるからである。基材に平滑性を付与する方法としては、上述した下地層に平滑性を付与する方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0033】
このような基材の形状としては、例えば、板状、ロール状等が挙げられ、なかでも、ロール状であることが好ましい。本態様により製造される原版がロール状であること、すなわち、上記原版をロール版とすることができることにより、上記原版を回転しながら連続的に配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量にパターン配向膜を形成可能なものとすることができ製造効率の高いものとすることができるからである。
【0034】
また、ロール状としては、安定的にパターン配向膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ロール形状、スリーブ形状等とすることができ、なかでも、スリーブ形状であることが好ましい。
スリーブ形状であることにより、本態様の製造方法により製造される原版を用いて、パターン配向膜を製造効率高く製造することが可能となるからである。また、スリーブ形状の原版は、ロール形状のものに比べて軽量であり、取扱いが容易となるといった利点を有するからである。
ここで、ロール形状としては、具体的には、軸付ロール、軸なしパイプ等を挙げることができる。ここで、軸なしパイプとは、その厚みが3000μm以上である円筒形状のものを指すものである。
また、スリーブ形状とはシームレスの帯状体を表し、空気圧力や応力により容易に変形させることができるものであり、具体的にはその厚みが1000μm以下の円筒形状を指すものである。
本態様においては、ロール形状またはスリーブ形状等のロール状の場合には、継ぎ目のないシームレスであることが好ましいが、板状の基材を円筒状にした継ぎ目を有するものも用いることができる。
【0035】
(2)基材を有さない場合
本工程により準備される下地層が基材を有さない場合、すなわち下地層のみからなる場合について説明する。
【0036】
本態様に用いられる下地層の材料としては、金属材料であり、後述する第1層と密着性を有し、かつウェットメッキ処理を行うことにより後述する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されない。具体的な下地層の材料については、上述した「(1)基材を有する場合」の項で説明した基材の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0037】
また、下地層のみからなる場合もその表面は、平滑性に優れていることが好ましい。なお、この理由について、および具体的な下地層の表面の平滑性については、「(1)基材を有する場合」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0038】
このような下地層の形状としては、表面に第1層および第2層を形成することができれば特に限定されるものではなく、例えば、板状、ロール状等が挙げられ、なかでも、ロール状であることが好ましい。下地層の形状については、「(1)基材を有する場合」の項に記載した基材の形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0039】
なお、下地層の厚みについては、自己支持性を有することが可能であれば特に限定されるものではない。
【0040】
2.レジスト形成工程
本態様におけるレジスト形成工程は、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成する工程である。
【0041】
(1)レジストの形状
本工程により形成されるレジストの形状について説明する。
ここで、本態様により製造される原版においては、本工程により形成されるレジストのパターンの形成方向や、レジストのパターン形状によって、第1層および第2層の形成方向や、図1(g)に示すように、原版100の第1層3の幅W1’および第2層4の幅W2’が画定される。
【0042】
本工程において形成されるレジストの形成方向、すなわち、平行な帯状の方向としては、図2に示すように、上記原版100がロール版である場合には、第1層および第2層がロールの回転方向に沿った方向となるような方向であることが好ましい。
【0043】
次に、レジストのパターンについて説明する。上記レジストは平行な帯状のパターンを有するものである。
ここで、図1(b)に示すように隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2としては、それぞれ異なっていてもよく、あるいは同一であってもよい。しかしながら、本態様においては、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2は同一であることが好ましい。
通常、3次元表示可能な3D液晶表示装置等では、右目用の画素と左目用の画素部が同一の幅で形成されていることから、本態様により製造される原版において第1層の幅(W1’)および第2層の幅(W2’)(すなわち、図1(b)においては、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2)を同一にすることにより、上記原版を用いてパターン配向膜を製造した際、第1層の第1凹凸構造および第2層の第2凹凸構造に対応して形成される上記パターン配向層の第1配向領域および第2配向領域の幅を同一にすることができるからである。その結果、上記原版により形成されるパターン配向膜を3次元表示可能な液晶表示装置に用いる場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、上記原版により形成されるパターン配向膜を用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。
また、発光型表示装置に用いられる画素部も同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、上記原版により形成されるパターン配向膜を3次元表示可能な3D発光型表示装置に用いる場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられる画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、上記原版により形成されるパターン配向膜を用いて容易に3D発光型表示装置を製造することができるようになるからである。
【0044】
図1(b)に示す隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2の具体的な幅(図1(g)においては、原版100の第1層3の幅W1’および第2層4の幅W2’)としては、本態様により製造される原版を用いて形成されるパターン配向膜の用途に応じて適宜決定される。例えば、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2の幅は3次元表示可能な液晶表示装置の右目用、左目用の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0045】
本工程により形成されるレジストの厚みとしては、後述する第1層形成工程で所望の平行な帯状のパターンを有する第1層を形成することができる程度であれば特に限定されない。
【0046】
(2)レジスト材料およびレジストの形成方法
本工程に用いられるレジスト材料としては、後述する第2層を形成した後、剥離することが可能であれば特に限定されるものではなく、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
【0047】
本工程に用いられるレジストを平行な帯状に形成する方法としては、レジスト材料を塗布することによりレジスト膜を形成した後、平行な帯状に露光し、次いで、現像することにより形成する方法を挙げることができる。
【0048】
上述したレジスト材料を塗工してレジスト膜を形成する方法としては、一般的な塗工方法を用いることができ、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を使用することができる。
【0049】
また、上記レジスト膜を平行な帯状に露光する方法としては、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。また、マスクを介して紫外線照射を行う方法を用いることもできる。
本工程においては、なかでも、レーザー描画法であることが好ましい。上記金属基材の形状がロール状である場合であっても、精度良くパターン状に露光することができるからである。
また、露光後のレジスト膜の現像方法としては、一般的な現像方法を用いることができる。
【0050】
3.第1層形成工程
本態様における第1層形成工程は、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層形成用層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する工程である。
【0051】
(1)第1層
まず、本工程により形成される第1層について説明する。
上記第1層の材料としては、絶縁性を有する無機材料からなり、下地層と密着性を有し、かつ後述する第1凹凸構造形成工程において、第1層の表面に所望の第1凹凸構造を形成することが可能となるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、DLC、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。これらの無機材料は比較的高い硬度を有するため、第1凹凸構造を精度よく形成することが可能となるからである。
【0052】
第1層の厚みとしては、後述する第1凹凸構造形成工程において所望の第1凹凸構造を形成することができ、後述する第2層の厚みよりも薄いものであれば特に限定されるものではないが、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜5μmの範囲内、特に50nm〜3μmの範囲内、さらに0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。第1層の厚みが上記範囲に満たない場合は、その表面に所望の第1凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。また、第1層の厚みが上記範囲を超える場合は、第1層を形成するための無機材料、時間等が多くかかることから製造コストが高くなり、また製造効率が低下する可能性があるからである。また、後述する第2層形成工程においては、第2層の厚みを第1層の厚みよりも厚く形成する必要があることから、第2層を形成するための金属材料、時間等についても多くかかることとなり、生産性が低下する可能性があるからである。
【0053】
なお、本工程において形成される第1層の厚みは、本態様により製造される原版において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みを考慮したものである。
なお、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みとは、図3(b)中のD1で示す距離を意味するものとする。また、D1については、下地層の表面から第1凹凸構造の凸部分までの距離と下地層の表面から第1凹凸構造の凹部分までの距離との平均値とする。
【0054】
第1層の表面は平滑性を有することが好ましい。第1層の表面が平滑性に劣る場合は、後述する第1凹凸構造形成工程において、所望の第1凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。なお、具体的な第1層の表面粗さについては、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した下地層の表面粗さと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0055】
また、本工程において形成される第1層は平行な帯状のパターンを有するものである。なお、平行な帯状のパターンについては、上述した「3.レジスト形成工程」のレジストのパターンの項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
(2)第1層の形成方法
次に、本工程に用いられる第1層の形成方法について説明する。
本工程においては、まず、下地層およびレジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより第1層形成用層が形成される。
本工程に用いられるドライメッキ処理としては、下地層の表面に所望の厚みを有する第1層を形成することが可能な処理であれば特に限定されないが、例えば、真空蒸着メッキ法、抵抗加熱法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。第1層形成用層の材料としてDLCを用いる場合は、上述したドライメッキ処理のなかでも、CVD法を用いることが好ましい。厚みを精度高く調整することができるからである。
【0057】
なお、第1層形成用層の厚みについては、上述した第1層の厚みと同様とすることができる。
【0058】
次に、本工程においては、レジストおよびその表面に形成された第1層形成用層からなる積層体が剥離される。上述の積層体の剥離方法としては、下地層の表面に所望の帯状のパターンを有する第1層をパターン形成することができ、かつ上述の積層体を剥離することにより下地層の表面を露出させることが可能な方法であれば特に限定されず、一般的なレジストの剥離方法と同様とすることができる。より具体的には一般的なレジストの剥離方法を用いることができる。具体的には、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う方法を挙げることができる。中でも、本実施態様においては、有機アルカリ液を用いる方法が好ましい。
【0059】
3.第1凹凸構造形成工程
本態様における第1凹凸構造形成工程は、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する工程である。
【0060】
(1)第1凹凸構造
まず、本工程により形成される第1凹凸構造について説明する。上記第1凹凸構造は、第1層の表面に形成され、微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。
【0061】
このような第1凹凸構造としては、本態様により製造される原版を用いて、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムと称して説明する場合がある。)を形成することが可能なパターン配向膜を製造することが可能なものであれば特に限定されるものではない。上記第1凹凸構造はランダムに形成されていてもよく、ストライプ状に形成されていてもよい。図4(a)では、第1凹凸構造31が微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様である場合を示し、図4(b)では、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にストライプ状に形成された態様である場合を示している。なお、図4(a)、(b)は本工程により形成される第1凹凸構造の一例を示す概略図である。
【0062】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に形成された態様を意味するものである。一方、ライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものである。ライン状凹凸構造の大きさは前述のランダムの態様よりも比較的大きく、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸構造はこれに含まれないものである。
【0063】
第1凹凸構造がストライプ状である場合、その断面形状としては、凹凸構造を有し、本態様により製造される原版を用いて製造された配向膜をパターン位相差フィルムに用いた場合に、上記配向膜に形成された凹凸構造によってパターン位相差フィルムの位相差層に用いられる棒状化合物を所定の方向に配列できるものであれば特に限定されるものではなく、略矩形、略三角形、略台形等とすることができる。また、一定の形状でなくてもよい。
【0064】
このような第1凹凸構造の高さ、幅、および周期としては、本態様により製造される原版を用いて配向膜を形成した際に、上記配向膜に形成された凹凸構造によって液晶化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の高さは、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
また、上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の幅は、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の周期は、必ずしも一定ではなくても良いが、概ね1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、第1凹凸構造の高さ、幅、および周期を上記範囲内とすることにより、上記原版を用いて、安定的に棒状化合物を配列させることができるパターン配向膜を製造することができるからである。
【0065】
なお、第1凹凸構造の高さ、幅、および周期は、それぞれ図5において、l、m、nで示される長さを指す。また、図5は、第1凹凸構造31の断面形状が矩形状である場合を示す説明図である。
【0066】
(2)第1凹凸構造の形成方法
本工程に用いられる第1凹凸構造の形成方法としては、所望のサイズかつ形成方向の第1凹凸構造を形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、第1層の表面に対して研磨する切削加工や、凹凸パターンのある金型を押し当てて成型するロールプレス加工を挙げることができる。
以下、切削加工およびロールプレス加工について説明する。
【0067】
(i)切削加工
本工程に用いられる切削加工とは、表面に研磨を施して所望の凹凸構造を成型する切削式加工である。本工程においては一般的な方法を用いることができ、例えば、砥石研磨、ペーパー研磨、テープ研磨、サンドブラスト法、ショットブラスト法、グリットブラスト法、ガラスビーズブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの合成繊維からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーで引っかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイニング法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等を挙げることができる。本工程においては、なかでもテープ研磨法、ペーパー研磨であることが好ましい。微小なライン状凹凸の方向を制御しやすいからである。
【0068】
(ii)ロールプレス加工
本工程に用いられるロールプレス加工とは、凹凸パターンのある回転ローラーを押し当てることにより、表面に所望の凹凸構造を成型する転造式加工である。また、ロールプレス加工は、被成型体がロールプレス機中の回転ローラーを複数回通過することにより、表面に凹凸構造を成型するものである。
【0069】
図6は、ロールプレス加工の一例を示す概略図である。図6に示すように、ロールプレス機200は、被成型体6と接するように凹凸パターンを有する回転ローラー5が設けられている。被成型体6と接するように設けられた回転ローラー5が回転することによって、上記回転ローラー5に設置された凹凸パターンが被成型体6に押し付けられる。
このように、ロールプレス加工は、被成型体と接するように設けられた回転ローラーによって加圧されることによって、回転ローラーに設置された凹凸パターンが金型となり、切削ではなく、押し付けによる変形によって加工することができる。
【0070】
このようなロールプレス加工をすることにより、定位・定圧プレスが可能となり、成型体の厚みを均一化することができ、また断続・連続的な生産が可能となる。
【0071】
上記ロールプレス加工に用いられる回転ローラー表面の凹凸パターンの断面形状、高さ、幅、周期については、上述した第1凹凸構造の高さ、幅、周期と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0072】
5.第2層形成工程
本態様における第2層形成工程は、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する工程である。
【0073】
(1)第2層
まず、本工程により形成される第2層について説明する。
第2層に用いられる材料としては、金属材料であり、ウェットメッキ処理により露出した下地層の表面に所望の厚みを有する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されない。このような金属材料については、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した金属材料と同様とすることができる。
【0074】
また、上記第2層の材料としては、上述した第1層の材料よりも硬度の小さい材料であることが好ましい。第2層の材料の硬度が第1層の材料の硬度より小さい場合は、後述する第2凹凸構造形成工程において第2層表面に第2凹凸構造を形成する際に、上記第1層の表面にキズを生じない程度の圧力をかけて切削加工やロールプレス加工等を行うことが可能となるため、第1凹凸構造および第2凹凸構造が精度高く形成された原版を製造することが可能となるからである。このような第2層の材料としては、第1層の材料に応じて上述した金属材料の中から適宜選択することが可能である。例えば、第1層の材料がDLC(ダイヤモンドライクカーボン)である場合は、第2層の材料としては、ニッケル、クロムであることが好ましく、クロムであることがより好ましい。クロムは比較的硬いことから、第2凹凸構造を精度良く形成することが可能となるからである。
【0075】
また、第2層の材料と、下地層の材料とは同一材料であってもよく、異なる材料であってもよく、上述した任意の金属材料を組み合わせることが可能である。上記第2層の材料と下地層の材料との組み合わせ(第2層/下地層)としては、クロム/クロム、ニッケル/ニッケル、ニッケル/クロム、クロム/ニッケル、クロム/銅、ニッケル/銅、クロム/SUS、ニッケル/SUS等を挙げることができる。第2層の材料と下地層の材料とを上述のように組み合わせることにより、下地層の表面に形成される第1層を平滑性の高いものとすることが可能となることから、第1層の表面に第1凹凸構造を精度高く形成することが可能となり、また第2層として上述の材料を用いることにより第2層の表面に第2凹凸構造を精度高く形成することが可能となる。
【0076】
本工程により形成される第2層の厚みは第1層の厚みと同等、または第1層の厚みよりも厚いものである。第2層の厚みと第1層の厚みとの厚みの差としては、後述する第2凹凸構造形成工程において第1層の表面を損傷させることなく、第2層の表面に所望の第2凹凸構造を形成することが可能であれば特に限定されないが、0μm〜2μmの範囲内、なかでも0μm〜1μmの範囲内、特に0μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みの差が上記範囲に満たない場合は、第2層の表面に切削加工やロールプレス加工等を施した場合に、第1層の表面を損傷してしまう可能性があるからであり、上記厚みの差が上記範囲を超える場合は、第2層を形成するための金属材料や時間等が多くかかることから、生産性高く原版を製造することが困難となる可能性があるからである。
【0077】
なお、第2層の厚みと第1層の厚みとの厚みの差とは、本態様の製造方法により製造される原版において第1凹凸構造が形成された第1層の厚みおよび第2凹凸構造が形成された第2層の厚みを考慮したものである。具体的には、図3(b)においてD2で示される距離を指す。
【0078】
第2層の厚みとしては、第1層との厚みの差が上述した範囲内となる程度であれば特に限定されず、上述した第1層の厚み等により適宜選択されるものであるが、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜5μmの範囲内、特に50nm〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
なお、本工程において形成される第2層の厚みは、本態様により製造される原版において、第2凹凸構造が形成された第2層の厚みを考慮したものである。
なお、第2凹凸構造が形成された第2層の厚みとは、図3(b)中のD3で示す距離を意味するものとする。また、D3については、下地層の表面から第2凹凸構造の凸部分までの距離と下地層の表面から第2凹凸構造の凹部分までの距離との平均値とする。
【0080】
第2層の表面は平滑性を有することが好ましい。第2層の表面が平滑性に劣る場合は、後述する第2凹凸構造形成工程において、所望の第2凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。なお、具体的な第2層の表面粗さについては、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した下地層の表面粗さと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
(2)第2層の形成方法
上記第2層はウェットメッキ処理を施すことにより形成されるものである。このようなウェットメッキ処理としては、露出した下地層の表面のみに所望の厚みを有する第2層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、例えば、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミニウムメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。本工程においては、なかでも、電気メッキ法であることが好ましい。上述した第1層が絶縁性を有するため、上記第1層が形成されていない領域、すなわち、下地層が露出した領域にのみ選択的に保護層を形成することができるからである。
【0082】
6.第2凹凸構造形成工程
本態様における第2凹凸構造形成工程は、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する工程である。
【0083】
(1)第2凹凸構造
本工程において形成される第2凹凸構造について説明する。上記第2凹凸構造は、第2層の表面に形成され、上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。
【0084】
(i)形成方向
上記第2凹凸構造の形成方向としては、第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向であれば特に限定されない。なかでも、上記第2凹凸構造の形成方向としては、3次元表示可能なパターン位相差フィルムに用いることが可能なパターン配向膜を形成可能な原版とすることができるように、第1凹凸構造の形成方向と第2凹凸構造の形成方向とを異ならせることが可能な形成方向であることが好ましい。このような第2凹凸構造の形成方向としては、具体的には、上述した第1凹凸構造の形成方向に対して第2凹凸構造の形成方向が90°異なる場合と、45°異なる場合とを挙げることができる。
以下、それぞれの場合に分けて説明する。
【0085】
(a)90°異なる場合
上記第2凹凸構造は、第1凹凸構造の形成方向と90°異なる形成方向を有するものである。このような第2凹凸構造としては、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が90°異なるものであれば特に限定されず、例えば、原版がロール版である場合は、ロールの回転方向に対して第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向(第1凹凸構造/第2凹凸構造)が、45°/135°、0°/90°であることが好ましい。
なお、図3(a)は、第1層の表面に形成された第1凹凸構造31および第2層の表面に形成された第2凹凸構造31の方向が45°および135°であり、図7は0°および90°の場合のロール版表面を示すものである。
また、図7中の符号については、図3(a)のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
ここで、本態様の製造方法により製造される原版は、パターン配向膜の配向層を形成するために用いられるものである。また、上記配向層はそれぞれ上記原版の第1凹凸構造および第2凹凸構造に対応する微小なライン状凹凸構造を有する第1配向領域および第2配向領域がパターン状に形成されているものである。また、パターン配向膜は、パターン位相差フィルムに用いられるものであり、上記配向層に液晶等の棒状化合物を配列させることにより位相差層を形成するために用いられるものである。さらに、パターン位相差フィルムの上記位相差層は第1配向領域および第2配向領域に対応する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されているものである。
【0087】
上述のように第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が直交する方向の場合、上記第1凹凸構造および第2凹凸構造を有する原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターン配向膜を形成することで、第1配向領域および第2配向領域上に形成されるパターン位相差フィルムの第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーションをλ/4分に相当するものとすることができる。またこの場合、これらの位相差領域を透過することで直線偏光がそれぞれ右円偏光、左円偏光になるため、上記パターン位相差フィルムを、容易に3次元表示が可能な表示装置を製造するために好適に用いられるものにできる。
【0088】
ここで、面内レターデーション(Re)値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができ、微小領域の面内レターデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
【0089】
(b)45°異なる場合
上記第2凹凸構造は、第1凹凸構造の形成方向と45°異なる形成方向を有するものである。このような第2凹凸構造としては、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が45°異なるものであれば特に限定されず、例えば、原版がロール版である場合は、ロールの回転方向に対して第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向(第1凹凸構造/第2凹凸構造)が、0°/45°、0°/135°であることが好ましい。
なお、図8は第1層の表面に形成された第1凹凸構造31および第2層の表面に形成された第2凹凸構造41の方向が0°/45°、図9は0°/135°の場合のロール版表面を示すものである。
また、図8、図9中の符号については、図3(a)のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図中の矢印は、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0090】
第1凹凸構造の形成方向と第2凹凸構造の形成方向とが45°異なる場合、上記原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターン配向膜を形成した場合には、さらにこれを用いたパターン位相差フィルムの上記第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値をλ/2分に相当するものとすることができる。またこの場合は、λ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできる。
【0091】
ここで、このような位相差領域を有するパターン位相差フィルムと、λ/4板と組み合わせることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図10は、本発明の製造方法により製造される原版を用いて形成されたパターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用い、3次元表示可能な液晶表示装置を作製した場合の一例を示す概略図である。図10に示すように、本発明の製造方法により製造される原版を用いて形成されたパターン位相差フィルムと、λ/4板を組み合わせて用いる液晶表示装置は、パッシブ方式により3次元表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、発光型ディスプレイの画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、パターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第2位相差領域が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このようなパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図10においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光(0°)に変換された各映像は、パターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は第2位相差領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、パターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、互いに直交する円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用映像が左目用レンズのみを通過するようにすることによって、右目用映像が右目のみに届き、左目用映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
【0092】
(ii)第2凹凸構造
上記第2凹凸構造としては、本態様により製造される原版を用いて、高品質なパターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を製造することが可能なものであれば特に限定されるものではない。上記第2凹凸構造はランダムに形成されていてもよく、ストライプ状に形成されていてもよい。
【0093】
また、上記第2凹凸構造と上述した第1凹凸構造とは同一の態様、すなわち第2凹凸構造および第1凹凸構造の両方がストライプ状に形成されている態様、または第2凹凸構造および第1凹凸構造の両方がランダムに形成されている態様であってもよい。また、上記第2凹凸構造と上記第1凹凸構造とは異なる態様、すなわち、上記第2凹凸構造または第1凹凸構造のうち、一方がストライプ状に形成され、他方がランダムに形成されている態様であってもよい。
【0094】
第2凹凸構造の高さ、幅、周期等については、上述した第1凹凸構造の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
(2)第2凹凸構造の形成方法
本工程に用いられる第2凹凸構造の形成方法については、上述した第1凹凸構造の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
8.その他の工程
本態様の原版の製造方法は、上述した各工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、例えば、上記第1凹凸構造形成工程および第2凹凸構造形成工程として切削加工を施した際に、第1層または第2層の表面を切削することで生じる研磨カスを除去する除去工程等を挙げることができる。なお、除去方法としては、例えば、吸引する方法や、溶剤等を用いて除去する方法等を挙げることができる。
【0097】
II.第2態様
本発明の原版の製造方法の第2態様は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0098】
ここで、本態様の製造方法により製造される原版100について図を参照して説明する。図2は本態様の原版の一例を示す概略図である。図11(a)は原版100の表面を示す概略平面図であり、図11(b)は図11(a)のB−B線断面図である。
図11(a)、(b)に例示するように、本態様の製造方法により製造される原版100は、金属材料からなる下地層1と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、表面に第1凹凸構造31が形成された第1層3と、上記下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、表面に第2凹凸構造41形成された第2層3と、を有し、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が、上記第1層1および第2層3の表面で同一となるものである。また、原版100の表面は、平行な帯状に形成された凹部(第1層3)および凸部(第2層4)を有する。
なお、図2は、上記3次元表示用パターン配向膜用原版100がロール状であるロール版である場合の一例である。図11(a)が図2に示す原版100の表面である場合、上記第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向が、3次元表示用パターン配向膜用原版(ロール版)100の回転方向に対して45°であり、同一となるものである。また、図11(a)中の矢印は、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0099】
なお、本態様の原版の製造方法の工程図については、上述した第1態様の項で説明した図1(a)〜(g)等で説明した工程図と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0100】
本態様においても上述した第1態様と同様に、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0101】
以下、本態様の原版の製造方法の各工程について説明する。なお、本態様における下地層準備工程、レジスト形成工程、第1層形成工程、第1凹凸構造形成工程、およびその他の工程等については、上述した「1.第1態様」の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
1.第2層形成工程
本態様における第2層形成工程は、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する工程である。
【0103】
ここで、本工程により形成される第2層の厚みは第1層の厚みよりも大きくなるように形成されるものである。この際、第1層および第2層の厚みの差は、通常、本態様の製造方法により製造された原版を用いて作製されたパターン配向膜を用いたパターン位相差フィルムにおいて、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。以下、この点について説明する。
【0104】
本態様により製造される原版は、第1層の厚みよりも第2層の厚みが大きいことから、原版の表面に凸部と凹部とを有するものである。このような原版を用いて製造されたパターン配向膜の配向層は、上述した凸部と凹部とが賦型されて形成されることから、配向層の表面において互いに厚みが異なる部位、すなわち、厚膜領域と薄膜領域とが形成されることとなる。また、このようなパターン配向膜を用いたパターン位相差フィルムにおいては、位相差層において厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ位相差値が異なるパターンが形成されることになる。
【0105】
よって、本工程により形成される第1層および第2層の厚みの差は、本態様の製造方法により製造される原版を用いたパターン配向膜の配向層の厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する。
ここで、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、パターン位相差フィルムの用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。中でも本発明においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、3次元表示装置を製造するためにより好適に用いられるものにできるからである。
【0106】
したがって、第1層および第2層の厚みの差としては、本態様の製造方法により製造される原版を用いて製造されるパターン配向膜の配向層において、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差が上述した距離となるように調整することが好ましい。
【0107】
なお、本態様においては、第1層および第2層の厚みの差は、上述した厚膜領域と薄膜領域との厚みの差だけを考慮されて強制されるものではなく、上述した「I.第1態様」の項で説明したように、第2凹凸構造形成工程において、第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面にキズは発生しない程度となるように考慮されて調整されるものである。
【0108】
また、本工程において形成される第2層の厚みについては、上述した第1層および第2層の厚みの差を考慮して適宜選択される。
【0109】
なお、本態様における第2層形成工程について上述した点以外については、上述した「1.第1態様」における第2層形成工程の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
2.第2凹凸構造形成工程
本態様における第2凹凸構造形成工程は、第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する工程である。
【0111】
本工程において形成される第2凹凸構造としては、第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向を有するものであれば特に限定されない。例えば、図12に示すように、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が0°であってもよく、あるいは、図13に示すように、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が90°であってもよい。
なお、上記以外の微小なライン状凹凸構造について、および第2凹凸構造形成工程についての詳しい内容は、上述した第1態様に記載したものと同様とすることができる。
【0112】
III.その他の態様
本発明の原版の製造方法の第1態様において製造される原版は、パターン位相差フィルムにおいて、位相差層を構成する棒状化合物の配列方向が異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されるようなパターン配向膜を製造するために用いられるものである。一方、本発明の原版の製造方法の第2態様において製造される原版は、パターン位相差フィルムにおいて、第1位相差領域および第2位相差領域の厚みが異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されるようなパターン配向膜を製造するために用いられるものである。
よって、本発明の原版の製造方法のその他の態様としては、例えば、パターン位相差フィルムにおいて、位相差層を構成する棒状化合物の配列方向が異なり、かつ第1位相差領域および第2位相差領域の厚みが異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるようなパターン配向膜を製造することが可能な原版を製造する方法を挙げることができる。このような原版の製造方法として、より具体的には、本発明の原版の製造方法における第2層形成工程において、上述した第2態様における第2層形成工程を適用し、第2凹凸構造形成工程において上述した第1態様における第2凹凸構造形成工程を適用する製造方法が挙げられる。
【0113】
IV.その他
本発明の製造方法により製造される原版は、平行な帯状に形成された凹部(第1層)および凸部(第2層)を有し、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。また、上記原版は、平行な帯状に形成され、かつ表面に形成方向が相異なる微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成された2つの領域を有するものである。
【0114】
また、上記原版は、3次元表示用パターン位相差フィルムに用いられる3次元表示用パターン配向膜を製造する際に用いられるものである。より具体的には、樹脂組成物からなる配向膜形成用層に上記原版の微小なライン状凹凸構造を賦型し、この形状に対応した微小なライン状凹凸構造を有する第1配向領域(凸形状)および第2配向領域(凹形状)を有する3次元表示用パターン配向膜を製造する際に用いられるものである。
【0115】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0117】
[実施例]
以下の手順により下地層準備工程を行った。Φ300mm、面長1260mmのアルミニウムパイプを用いて製版加工を行った。アルミニウムパイプに用いられるアルミニウム材としては柔らかい1000系アルミニウム材を用いることも可能であるが、より快削性のあることが好ましいことから、5000系アルミニウム材を使用した。アルミニウムパイプ表面は旋盤により面出し後、アルミニウムパイプ表面には電解銅メッキを200μm〜300μm形成し、芯出し、平面性のために砥石研磨を行う。その上には下地層としてNiメッキを約5μm形成した。これは砥石研磨時の傷をNiメッキ層の厚みで埋める目的である。砥石研磨の傷を埋めないと、砥石研磨時の傷により、得られた原版を用いて作製したパターン配向膜において液晶等が配向してしまうためである。このときNiメッキの代わりにCrメッキでも構わないがCrメッキにはマイクロクラックという微細なクラックがあるものがあるため、Crメッキを積層する場合、マイクロクラックが無いものを選定する必要がある。また今回は、ウェットメッキ法を用いたが、ドライメッキ法による成膜でも構わない。砥石研磨時の傷を埋めるためには厚盛りすることが好ましいことから、ウェットメッキ法を用いることがより好ましい。
【0118】
Niメッキ形成後にレジスト形成工程を行った。レジストの製版はシンクラボラトリー社製の描画装置にて行った。まずレジストを版表面全面に適正厚み(約3〜5μm)をコーティングし、常温にて乾燥を行う。乾燥温度を上げることで速く乾燥できるが、レジストの収縮、アルミパイプ自体の膨張による寸法変化の懸念があり、常温乾燥が望ましい。レジストはシンクラボラトリー製のネガレジストを使用しているがシンクラボラトリー社製にこだわることは無く、またポジレジストでも構わない。ネガレジストを使用している理由は、後述する第1層を形成するためのDLC成膜は熱がかかる処理でありポジレジストが熱に弱く膜剥れ、ダレが発生するため、ネガレジストがよい。レジスト膜が出来たらレジストの感光波長に調整されたレーザーヘッドでパターン描画、現像を行い、レジストがある部分、無い部分がストライプ状に形成される。
【0119】
次に、第1層形成工程を行った。ストライプパターンがある版表面にドライメッキ法にて第1層を厚み0.5μmで形成した。今回は第1層の材料をDLCとしたがこれに限らずほかの非導電性硬質膜材料でも構わない。また、DLC成膜厚みは極力薄いほうがよく、0.1μm〜1μmが望ましい。
【0120】
DLC成膜後、レジスト剥離を行うが、この時に使用する剥離液はMEK、IPA,メタノールの混合溶液を使用した。これによりレジスト膜に溶剤が浸透し、レジストが溶解剥離し、DLC膜(第1層)と下地層のストライプパターンが形成された。
【0121】
次に第1凹凸構造形成工程を行った。レジスト剥離後、第1層表面をシンクラボラトリー社製のペーパー研磨機にて全面研磨を行った。このとき研磨角度はペーパー研磨機に角度指定入力し、45度方向の傷をつけた。角度が45度になるには研磨ヘッドの移動速度とシリンダの回転速度が同速度であることで可能となる。傷を付ける方法として研磨フィルムによる研磨を行った。この時に第1層膜厚が薄いため下地金属も研磨されてしまうが、後述第2層形成によりこのときに付けた傷は埋まってしまうために傷はついても構わない。ここで使用した研磨フィルムは三共理化学製ダイヤモンドフィルムの20000番(型番:LDF#20000)である。ダイヤモンド製を用いている理由は、一般的な研磨材である酸化アルミナを用いた場合は、研磨材自体が削れてしまい、研磨傷が太くなってしまい配向不良の原因となるためである。
45度方向の研磨終了後、版表面を溶剤等で洗浄した。上述の洗浄は任意であるが、研磨カス、砥粒が付着していることから、上述の洗浄を行う方が好ましい。
【0122】
次に第2層形成工程を行った。第1層研磨後にはウェットメッキ処理による第2層形成を行った。この時は下地層が導電層、第1膜が不導電膜であることを利用し、第1膜が無い下地層上のみに電解メッキにより、Crメッキ層(第2層)を厚み1μmで形成した。なお、本工程においては、上述したCrメッキ層をDLC層(第1層)と同等としてもよい。また、このときCrメッキ層は最終製品まで残る層であるため、品質不良になりうるマイクロクラックのないCrメッキを用いることが良い。
【0123】
次に、第2凹凸構造形成工程を行った。第2層形成後には第2層表面の研磨工程になる。第2層にCrメッキを用いた場合、ラビングにより表面に微小な凹凸形成が可能であり、そのときに使用する材料としては吉川化工製ラビングクロスYA18Rを用いてラビングを行った(他型番のYA19R、YA20Rでも構わない)。使用する研磨機は第1層表面の研磨と同じであり、研磨方向は第1層研磨時とは90度の角度をなす135度にする必要があるためシリンダ版の回転方向を第1層研磨時とは逆の方向に回転することで研磨角度が135度に入ることができる。
また、第2層研磨時に第1層表面にもラビングクロスが接触するが第1層はDLCのような硬質な無機材料でありラビングクロスが接触しても微小な凹凸が第1層には形成されない。よって第2層をラビングするときには第1層と第2層との材料の硬度の違いを利用して第2層のみラビングされ第1層はラビングされないということを確認した。
以上の工程を行うことで、第1層DLCパターンと第2層Crパターン表面が交互にストライプになった状態になり、版表面は45度/135度の研磨跡がついた原版を作製することができた。
【0124】
[評価]
上記実施例で製作した版にリタデーションの無い透明基材フィルム、例えばTACフィルム、COP(ゼオノア)、アクリルフィルムを用いて、その表面に塗布された紫外線硬化樹脂にて版表面の形状を賦型し、その賦型樹脂側にメルク製紫外線硬化型液晶をスピンコートにてリタデーション値が125nmになるように膜厚を調整して、パターン位相差フィルムを作製した。
そのフィルムを評価した結果、第1層表面の配向方向が45度であり、第2層表面の配向方向が135度であり、それぞれの版表面には1回目2回目の研磨による上書き傷がない綺麗なパターン位相差フィルムができていることが確認できた。
【符号の説明】
【0125】
1 … 下地層
2 … レジスト
3 … 第1層
31 … 第1凹凸構造
4 … 第2層
41 … 第2凹凸構造
5 … 回転ローラー
6 … 被成型体
100 … (3次元表示用パターン配向膜用)原版
200 … ロールプレス機
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイとしては、従来、2次元表示のものが主流であったが、近年においては3次元表示可能なフラットパネルディスプレイが注目を集め始めており、一部市販されているものも存在しつつある。そして、今後のフラットパネルディスプレイにおいては3次元表示可能であることが、その性能として当然に求められる傾向にあり、3次元表示可能なフラットパネルディスプレイの検討が幅広い分野において進められている。
【0003】
フラットパネルディスプレイにおいて3次元表示をするには、通常、視聴者に対して何らかの方式で右目用の映像と、左目用の映像とを別個に表示することが必要とされる。右目用の映像と左目用の映像とを別個に表示する方法としては、例えば、パッシブ方式というものが知られている。このようなパッシブ方式の3次元表示方式について図を参照しながら説明する。図14はパッシブ方式の3次元表示の一例を示す概略図である。図14に示すようにこの方式では、まず、フラットパネルディスプレイを構成する画素を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。また、直線偏光板と当該画素の分割パターンに対応したパターン状の位相差層が形成されたパターン位相差フィルムとを用い、右目用の映像と、左目用の映像とを円偏光に変換する。さらに、視聴者には右目用と左目用の円偏光メガネを装着させ、右目用の映像が右目のみに届き、左目用の映像が左目のみに届くようにすることによって3次元表示を可能とするものがパッシブ方式である。
【0004】
このようなパッシブ方式では、上記パターン位相差フィルムと、対応する円偏光メガネとを用いることにより容易に3次元表示が可能なものにできるという利点がある。
【0005】
ところで、特許文献1では、パターン位相差フィルムの製造方法として、レーザーによりパターンを形成したロール版を用い、このようなロール版と、配向層形成用層とを接触させることにより表面にパターン状の微細凹凸を有する賦型されたパターン配向膜を形成する方法が開示されている。また、特許文献1には同一平面に研磨により微細凹凸をパターン状に形成する方法が記載されている。
しかしながら、レーザーによりパターンが形成された原版を用いて製造されたパターン位相差フィルムは、右目用および左目用の位相差層のパターン、すなわち、液晶化合物の配列方向の異なる領域間の端部近傍、すなわち、第1位相差領域および第2位相差領域の境界部分で液晶化合物の配列方向が乱れる配向欠陥が生じやすく、液晶表示装置に用いた場合には、上記端部近傍の液晶に配向欠陥を生じさせるといった問題があった。その結果、端部近傍からの光漏れを生じ、コントラストが低いものとなるといった問題があった。また、レーザーにより微細凹凸を描画する場合、微細凹凸を一本一本描画するため数十nm、数百nmの凹凸を大面積(液晶TVサイズ)に渡って形成するのに相当の時間を要する。また数十nm、数百nmの凹凸のピッチで高精度で制御する装置が必要となるといった問題があった。
また、一般にレーザーでの加工は線幅が数百nmレベルが下限であり数十nmレベルの線幅は困難であり、優れた配向規制力を有するパターン配向膜とすることが難しいといった問題や、レーザー加工装置が高価であるといった問題があった。
また、特許文献1は研磨方法による原版作製の記載があるが特許文献1の方法では同一平面上に研磨によりパターンを形成した場合には、数百μmのパターン領域毎に研磨を実施したり、微細凹凸が形成された領域パターンを組み合わせてロール版を形成する必要があり、プロセスが複雑で相当な時間と高精度の作業が必要であるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−152296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0009】
本発明によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも、その厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。また、第2層形成工程において、上記第2層の上記第1層の厚みと同等とした場合も、本発明においては、第1層には無機材料が用いられ、第2層には金属材料が用いられることから、第1層の表面の硬度を第2層の表面の硬度よりも高いものとすることができるため、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0010】
また、本発明は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも、その厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0012】
本発明においては、上記3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であるロール版であることが好ましい。本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であること、すなわち、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版がロール版であることにより、3次元表示用パターン配向膜用原版を回転させながら連続的に3次元表示用パターン配向膜を形成するための配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量に3次元表示用パターン配向膜を形成可能なものとすることができ製造効率の高いものとすることができる。
【0013】
本発明においては、上記第1凹凸構造形成工程または上記第2凹凸構造形成工程の少なくとも一方がロールプレス加工により実施されることが好ましい。ロールプレス加工を施して微小なライン状凹凸構造を形成することにより、本発明における第1凹凸構造形成工程や第2凹凸構造形成工程を容易に行うことが可能となる。また、ロールプレス加工をすることにより、定位・定圧プレスが可能となり、加工された第1層または/および第2層の厚みを均一化することができ、また断続・連続的な生産が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルムを形成することが可能な3次元表示用パターン配向膜を、容易かつ大量に作製することができる3次元表示用パターン配向膜用原版を製造することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法の一例を示す工程図である。
【図2】本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜用原版の一例を示す概略図である。
【図3】図3の3次元表示用パターン配向膜用原版の表面を示す概略平面図である。
【図4】本発明における第1凹凸構造が形成されている態様の一例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明における第1凹凸構造を説明する説明図である。
【図6】本発明におけるロールプレス加工の一例を示す概略図である。
【図7】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図8】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図9】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する説明図である。
【図10】パターン位相差フィルムを説明する説明図である。
【図11】本発明の製造方法により製造される3次元表示用パターン配向膜の他の例を示す概略図である。
【図12】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する図である。
【図13】本発明における第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向を説明する図である。
【図14】パッシブ方式で3次元映像を表示可能な液晶表示装置の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の3次元表示用パターン配向膜用原版(以下、単に原版と称して説明する場合がある。)の製造方法について説明する。本発明の原版の製造方法は、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向の違いにより2つの態様に大別される。
【0017】
I.第1態様
本発明の原版の製造方法の第1態様は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層形成用層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0018】
ここで、本態様の原版の製造方法について図を用いて説明する。図1(a)〜(g)は本態様の原版の製造方法の一例を示す工程図である。本態様においては、まず下地層準備工程においては、金属材料からなる下地層1を準備する(図1(a))。次に、レジスト形成工程においては、下地層の表面にレジスト材料を塗工してレジスト膜を形成し、上記レジスト膜をレーザー描画法等により平行な帯状のパターンに露光する(図示せず)ことにより、下地層1の表面に平行な帯状のパターンを有するレジスト2を形成する(図1(b))。次に第1層形成工程においては、下地層1およびレジスト2の表面にドライエッチング処理を施すことにより絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層3’を形成した後(図1(c))、レジスト2およびその表面に形成された上記第1層形成用層3’からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層3を形成する(図1(d))。次に、第1凹凸構造形成工程においては、第1層3の表面に、切削加工またはロールプレス加工等を施して微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成し、第1凹凸構造31を形成する(図1(e))。次に、第2層形成工程においては、第1凹凸構造形成工程後に、露出した下地層1の表面にウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層4を第1層3の厚みよりも厚くなるように形成する(図1(f))。次に、第2凹凸構造形成工程においては、第2層4の表面に、第1凹凸構造形成工程と同様の加工を施すことにより、第1凹凸構造31の形成方向とは異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成し、第2凹凸構造41を形成する(図1(g))。本態様の原版の製造方法は、上述した各工程を経ることにより、原版100を製造する製造方法である。
【0019】
次に、本態様の製造方法により製造される原版について図を用いて説明する。図2は本態様の製造方法により製造される原版100の一例を示す概略図、図3(a)は原版100の表面を示す概略平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A線断面図である。
図3(a)、(b)に例示するように、本態様の製造方法により製造される原版100は、下地層1と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、かつ表面に第1凹凸構造31を有する第1層3と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、第1層3の厚みよりも厚く形成され、かつ表面に第2凹凸構造41を有する第2層4と、を有し、第1凹凸構造31と第2凹凸構造41の形成方向が、上記第1層3および第2層4の表面で異なるものである。また、原版100の表面は、平行な帯状に形成された凹部(第1層3)および凸部(第2層4)を有する。なお、図示はしないが、本態様において製造される原版は、第1層の厚みと第2層の厚みとが同等であり、原版の表面が凹部および凸部を有さないものであってもよい。
なお、図2は、上記原版100がロール状であるロール版である場合の一例である。また、図3(a)が図2に示す原版100の表面である場合、上記第1層3および第2層4表面の第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向が、原版(ロール版)100の回転方向に対して135°および45°であり、90°異なるものである。また、図3(a)中の矢印は、第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0020】
本態様によれば、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。また、第2層形成工程において、上記第2層の上記第1層の厚みと同等とした場合も、本発明においては、第1層には無機材料が用いられ、第2層には金属材料が用いられることから、第1層の表面の硬度を第2層の表面の硬度よりも高いものとすることができるため、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜(以下、単にパターン配向膜と称して説明する場合がある。)を得ることができる。
【0021】
以下、本態様の原版の製造方法における各工程について説明する。
【0022】
1.下地層準備工程
本態様における下地層準備工程は、金属材料からなる下地層を準備する工程である。
本工程で準備される下地層は、基材および基材上に形成された下地層を有するものであってもよく、下地層のみからなるものであってもよいが、基材および下地層を有するものであることが好ましい。本発明により製造される原版はロール状であることが好ましいところ、基材および下地層を有する場合は原版をロール状に加工しやすいものとなるからである。以下、下地層が基材を有する場合と、基材を有さない場合とに分けて説明する。
【0023】
(1)基材を有する場合
本工程により準備される下地層が基材を有する場合について説明する。以下、下地層および基材について説明する。
【0024】
(i)下地層
まず、下地層について説明する。上記下地層は後述する基材上に形成されるものである。
【0025】
上記下地層に用いられる材料としては、金属材料であり、後述する第1層と密着性を有し、かつウェットメッキ処理を行うことにより後述する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されず、例えば、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、アルミ、ニッケル−リンおよびこれらの合金、アルマイト等を挙げることができ、なかでも、ニッケル、銅、クロム、ステンレスであることが好ましく、特にクロムであることが好ましい。クロムは比較的硬いことから、その表面に平滑性を付与することが容易であるからである。
【0026】
また、下地層の最表面は平滑性に優れていることが好ましい。下地層の最表面の平滑性が劣る場合は、下地層の上層に形成される第1層や第2層の表面の平滑性に悪影響を与えることから、後述する第1凹凸構造形成工程または第2凹凸構造形成工程において、所望の第1凹凸構造または第2凹凸構造を形成することが困難となる可能性があるからである。下地層の最表面に平滑性を付与する方法としては、所望の平滑性を得られるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、スーパーミラー研磨等の切削法を挙げることができる。
【0027】
上記下地層の表面粗さとしては、後述する第1層形成工程および第2層形成工程において、所望の厚みおよび平滑性を有する第1層または第2層を形成することができる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば、Ra=10000nm以下であることが好ましく、中でもRa=5000nm以下であることが好ましく、特にRa=1000nm以下であることが好ましい。
なお、ここでの「表面粗さ(Ra)」は、「算術平均表面粗さ」であり、JIS−B0601に準拠して測定される。
【0028】
このような下地層の厚みとしては、後述する第1層形成工程または第2層形成工程において、所望の厚みおよび平滑性を有する第1層または第2層を形成できる程度であれば特に限定されるものではなく、例えば、0.01nm〜5000μmの範囲内であることが好ましく、中でも0.05nm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、特に0.1nm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
下地層の形成方法としては、後述する基材の表面に所望の平滑性および厚みを有する第下地層を形成することが可能な方法であれば特に限定されない。具体的には、ウェットメッキ処理、ドライメッキ処理等を挙げることができる。ウェットメッキ処理としては、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミニウムメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。ドライメッキ処理としては、真空蒸着メッキ法、抵抗加熱法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。
【0030】
(ii)基材
次に、基材について説明する。上記基材は単層であってもよく、複数層であってもよい。
【0031】
上記基材に用いられる材料としては、基材上に形成される下地層と密着性を有するものであれば特に限定されるものではなく、上述した下地層の材料と同様とすることができる。本発明においては、なかでも、アルミニウムであることが好ましい。アルミニウムは軽いため、本発明により製造される原版を取り扱いやすいものとすることができるからである。
【0032】
また、基材の最表面は平滑性に優れていることが好ましい。上述したように、下地層の表面は平滑性に優れていることが好ましいところ、基材の最表面の平滑性が劣る場合は、基材の上層に形成される下地層の平滑性に悪影響を与える可能性があるからである。基材に平滑性を付与する方法としては、上述した下地層に平滑性を付与する方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0033】
このような基材の形状としては、例えば、板状、ロール状等が挙げられ、なかでも、ロール状であることが好ましい。本態様により製造される原版がロール状であること、すなわち、上記原版をロール版とすることができることにより、上記原版を回転しながら連続的に配向層形成用層に賦型可能なもの、すなわち、容易かつ大量にパターン配向膜を形成可能なものとすることができ製造効率の高いものとすることができるからである。
【0034】
また、ロール状としては、安定的にパターン配向膜を形成できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ロール形状、スリーブ形状等とすることができ、なかでも、スリーブ形状であることが好ましい。
スリーブ形状であることにより、本態様の製造方法により製造される原版を用いて、パターン配向膜を製造効率高く製造することが可能となるからである。また、スリーブ形状の原版は、ロール形状のものに比べて軽量であり、取扱いが容易となるといった利点を有するからである。
ここで、ロール形状としては、具体的には、軸付ロール、軸なしパイプ等を挙げることができる。ここで、軸なしパイプとは、その厚みが3000μm以上である円筒形状のものを指すものである。
また、スリーブ形状とはシームレスの帯状体を表し、空気圧力や応力により容易に変形させることができるものであり、具体的にはその厚みが1000μm以下の円筒形状を指すものである。
本態様においては、ロール形状またはスリーブ形状等のロール状の場合には、継ぎ目のないシームレスであることが好ましいが、板状の基材を円筒状にした継ぎ目を有するものも用いることができる。
【0035】
(2)基材を有さない場合
本工程により準備される下地層が基材を有さない場合、すなわち下地層のみからなる場合について説明する。
【0036】
本態様に用いられる下地層の材料としては、金属材料であり、後述する第1層と密着性を有し、かつウェットメッキ処理を行うことにより後述する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されない。具体的な下地層の材料については、上述した「(1)基材を有する場合」の項で説明した基材の材料と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0037】
また、下地層のみからなる場合もその表面は、平滑性に優れていることが好ましい。なお、この理由について、および具体的な下地層の表面の平滑性については、「(1)基材を有する場合」の項に記載した内容と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0038】
このような下地層の形状としては、表面に第1層および第2層を形成することができれば特に限定されるものではなく、例えば、板状、ロール状等が挙げられ、なかでも、ロール状であることが好ましい。下地層の形状については、「(1)基材を有する場合」の項に記載した基材の形状と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0039】
なお、下地層の厚みについては、自己支持性を有することが可能であれば特に限定されるものではない。
【0040】
2.レジスト形成工程
本態様におけるレジスト形成工程は、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成する工程である。
【0041】
(1)レジストの形状
本工程により形成されるレジストの形状について説明する。
ここで、本態様により製造される原版においては、本工程により形成されるレジストのパターンの形成方向や、レジストのパターン形状によって、第1層および第2層の形成方向や、図1(g)に示すように、原版100の第1層3の幅W1’および第2層4の幅W2’が画定される。
【0042】
本工程において形成されるレジストの形成方向、すなわち、平行な帯状の方向としては、図2に示すように、上記原版100がロール版である場合には、第1層および第2層がロールの回転方向に沿った方向となるような方向であることが好ましい。
【0043】
次に、レジストのパターンについて説明する。上記レジストは平行な帯状のパターンを有するものである。
ここで、図1(b)に示すように隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2としては、それぞれ異なっていてもよく、あるいは同一であってもよい。しかしながら、本態様においては、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2は同一であることが好ましい。
通常、3次元表示可能な3D液晶表示装置等では、右目用の画素と左目用の画素部が同一の幅で形成されていることから、本態様により製造される原版において第1層の幅(W1’)および第2層の幅(W2’)(すなわち、図1(b)においては、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2)を同一にすることにより、上記原版を用いてパターン配向膜を製造した際、第1層の第1凹凸構造および第2層の第2凹凸構造に対応して形成される上記パターン配向層の第1配向領域および第2配向領域の幅を同一にすることができるからである。その結果、上記原版により形成されるパターン配向膜を3次元表示可能な液晶表示装置に用いる場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタにおいて画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、上記原版により形成されるパターン配向膜を用いて容易に3D液晶表示装置を製造することができるようになるからである。
また、発光型表示装置に用いられる画素部も同一の幅で形成されていることから、上記第1配向領域および上記第2配向領域の幅を同一幅とすることにより、上記原版により形成されるパターン配向膜を3次元表示可能な3D発光型表示装置に用いる場合に、上記第1配向領域および上記第2配向領域が形成されたパターンと、発光型表示装置に用いられる画素部が形成されているパターンとを対応関係にすることが容易になり、その結果、上記原版により形成されるパターン配向膜を用いて容易に3D発光型表示装置を製造することができるようになるからである。
【0044】
図1(b)に示す隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2の具体的な幅(図1(g)においては、原版100の第1層3の幅W1’および第2層4の幅W2’)としては、本態様により製造される原版を用いて形成されるパターン配向膜の用途に応じて適宜決定される。例えば、3次元表示可能な液晶表示装置を製造するために使用する場合、隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2の幅は3次元表示可能な液晶表示装置の右目用、左目用の画素部が形成されている幅に対応するように適宜決定されることになる。このように隣接する各レジスト2の間隙の幅W1およびレジスト2の幅W2は特に限定されるものではないが、通常、50μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、100μm〜600μmの範囲内であることがより好ましい。
【0045】
本工程により形成されるレジストの厚みとしては、後述する第1層形成工程で所望の平行な帯状のパターンを有する第1層を形成することができる程度であれば特に限定されない。
【0046】
(2)レジスト材料およびレジストの形成方法
本工程に用いられるレジスト材料としては、後述する第2層を形成した後、剥離することが可能であれば特に限定されるものではなく、ポジ型レジスト材料(光照射部分が溶解するもの)およびネガ型レジスト材料(光照射部分が固まるもの)のいずれも用いることができる。ポジ型レジスト材料としては、例えばノボラック樹脂をベース樹脂とした化学増幅型レジスト等が挙げられる。また、ネガ型レジスト材料としては、例えば架橋型樹脂をベースとした化学増幅型レジスト、具体的にはポリビニルフェノールに架橋剤を加え、さらに酸発生剤を加えた化学増幅型レジスト等が挙げられる。
【0047】
本工程に用いられるレジストを平行な帯状に形成する方法としては、レジスト材料を塗布することによりレジスト膜を形成した後、平行な帯状に露光し、次いで、現像することにより形成する方法を挙げることができる。
【0048】
上述したレジスト材料を塗工してレジスト膜を形成する方法としては、一般的な塗工方法を用いることができ、例えばスピンコート法、キャスティング法、ディッピング法、バーコート法、ブレードコート法、ロールコート法、グラビアコート法、フレキソ印刷法、スプレーコート法等を使用することができる。
【0049】
また、上記レジスト膜を平行な帯状に露光する方法としては、通常のフォトマスク描画に用いられる電子線描画法、もしくはレーザー描画法等を用いることができる。また、マスクを介して紫外線照射を行う方法を用いることもできる。
本工程においては、なかでも、レーザー描画法であることが好ましい。上記金属基材の形状がロール状である場合であっても、精度良くパターン状に露光することができるからである。
また、露光後のレジスト膜の現像方法としては、一般的な現像方法を用いることができる。
【0050】
3.第1層形成工程
本態様における第1層形成工程は、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層形成用層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する工程である。
【0051】
(1)第1層
まず、本工程により形成される第1層について説明する。
上記第1層の材料としては、絶縁性を有する無機材料からなり、下地層と密着性を有し、かつ後述する第1凹凸構造形成工程において、第1層の表面に所望の第1凹凸構造を形成することが可能となるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、酸化チタン(TiO2、Ti3O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、酸化ケイ素(SiO、SiO2)、酸化錫(SnO2)、酸化アルミニウム(Al203)、酸化クロム(Cr2O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化インジウム(In2O3)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO2)のような金属酸化物、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、セラミック、窒化珪素、窒化炭素等を挙げることができ、なかでも、DLC、TiC、SiC、BC、WCのような炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrNのような窒化物であることが好ましい。これらの無機材料は比較的高い硬度を有するため、第1凹凸構造を精度よく形成することが可能となるからである。
【0052】
第1層の厚みとしては、後述する第1凹凸構造形成工程において所望の第1凹凸構造を形成することができ、後述する第2層の厚みよりも薄いものであれば特に限定されるものではないが、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜5μmの範囲内、特に50nm〜3μmの範囲内、さらに0.1μm〜2μmの範囲内であることが好ましい。第1層の厚みが上記範囲に満たない場合は、その表面に所望の第1凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。また、第1層の厚みが上記範囲を超える場合は、第1層を形成するための無機材料、時間等が多くかかることから製造コストが高くなり、また製造効率が低下する可能性があるからである。また、後述する第2層形成工程においては、第2層の厚みを第1層の厚みよりも厚く形成する必要があることから、第2層を形成するための金属材料、時間等についても多くかかることとなり、生産性が低下する可能性があるからである。
【0053】
なお、本工程において形成される第1層の厚みは、本態様により製造される原版において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みを考慮したものである。
なお、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みとは、図3(b)中のD1で示す距離を意味するものとする。また、D1については、下地層の表面から第1凹凸構造の凸部分までの距離と下地層の表面から第1凹凸構造の凹部分までの距離との平均値とする。
【0054】
第1層の表面は平滑性を有することが好ましい。第1層の表面が平滑性に劣る場合は、後述する第1凹凸構造形成工程において、所望の第1凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。なお、具体的な第1層の表面粗さについては、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した下地層の表面粗さと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0055】
また、本工程において形成される第1層は平行な帯状のパターンを有するものである。なお、平行な帯状のパターンについては、上述した「3.レジスト形成工程」のレジストのパターンの項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0056】
(2)第1層の形成方法
次に、本工程に用いられる第1層の形成方法について説明する。
本工程においては、まず、下地層およびレジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより第1層形成用層が形成される。
本工程に用いられるドライメッキ処理としては、下地層の表面に所望の厚みを有する第1層を形成することが可能な処理であれば特に限定されないが、例えば、真空蒸着メッキ法、抵抗加熱法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法(PVD法)、常圧熱CVD法、減圧熱CVD法、プラズマCVD法等の化学蒸着法(CVD法)等が挙げられる。第1層形成用層の材料としてDLCを用いる場合は、上述したドライメッキ処理のなかでも、CVD法を用いることが好ましい。厚みを精度高く調整することができるからである。
【0057】
なお、第1層形成用層の厚みについては、上述した第1層の厚みと同様とすることができる。
【0058】
次に、本工程においては、レジストおよびその表面に形成された第1層形成用層からなる積層体が剥離される。上述の積層体の剥離方法としては、下地層の表面に所望の帯状のパターンを有する第1層をパターン形成することができ、かつ上述の積層体を剥離することにより下地層の表面を露出させることが可能な方法であれば特に限定されず、一般的なレジストの剥離方法と同様とすることができる。より具体的には一般的なレジストの剥離方法を用いることができる。具体的には、酸素プラズマ処理による灰化や、有機アルカリ液による洗浄によって行う方法を挙げることができる。中でも、本実施態様においては、有機アルカリ液を用いる方法が好ましい。
【0059】
3.第1凹凸構造形成工程
本態様における第1凹凸構造形成工程は、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する工程である。
【0060】
(1)第1凹凸構造
まず、本工程により形成される第1凹凸構造について説明する。上記第1凹凸構造は、第1層の表面に形成され、微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。
【0061】
このような第1凹凸構造としては、本態様により製造される原版を用いて、高品質な3次元表示用パターン位相差フィルム(以下、単にパターン位相差フィルムと称して説明する場合がある。)を形成することが可能なパターン配向膜を製造することが可能なものであれば特に限定されるものではない。上記第1凹凸構造はランダムに形成されていてもよく、ストライプ状に形成されていてもよい。図4(a)では、第1凹凸構造31が微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様である場合を示し、図4(b)では、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にストライプ状に形成された態様である場合を示している。なお、図4(a)、(b)は本工程により形成される第1凹凸構造の一例を示す概略図である。
【0062】
ここで、微小なライン状凹凸構造が略一定方向にランダムに形成された態様とは、例えば、表面にラビング処理がなされた場合等に形成されるような微小な傷のようなライン状凹凸構造が、略一定方向に形成された態様を意味するものである。一方、ライン状凹凸構造がストライプ状に形成された態様とは、壁状に形成された凸部が一定の間隔でストライプ状に形成された態様を意味するものである。ライン状凹凸構造の大きさは前述のランダムの態様よりも比較的大きく、例えば表面にラビング処理がなされた場合に形成されるような微小な傷のような凹凸構造はこれに含まれないものである。
【0063】
第1凹凸構造がストライプ状である場合、その断面形状としては、凹凸構造を有し、本態様により製造される原版を用いて製造された配向膜をパターン位相差フィルムに用いた場合に、上記配向膜に形成された凹凸構造によってパターン位相差フィルムの位相差層に用いられる棒状化合物を所定の方向に配列できるものであれば特に限定されるものではなく、略矩形、略三角形、略台形等とすることができる。また、一定の形状でなくてもよい。
【0064】
このような第1凹凸構造の高さ、幅、および周期としては、本態様により製造される原版を用いて配向膜を形成した際に、上記配向膜に形成された凹凸構造によって液晶化合物を配列させることができる範囲内であれば特に限定されるものではない。上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の高さは、1nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
また、上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の幅は、1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも、1nm〜500nmの範囲内であることがより好ましく、特に、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましい。
さらに、上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、上記第1凹凸構造の周期は、必ずしも一定ではなくても良いが、概ね1nm〜1000nmの範囲内であることが好ましく、なかでも1nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
上記第1凹凸構造がストライプ状のライン状凹凸構造である場合、第1凹凸構造の高さ、幅、および周期を上記範囲内とすることにより、上記原版を用いて、安定的に棒状化合物を配列させることができるパターン配向膜を製造することができるからである。
【0065】
なお、第1凹凸構造の高さ、幅、および周期は、それぞれ図5において、l、m、nで示される長さを指す。また、図5は、第1凹凸構造31の断面形状が矩形状である場合を示す説明図である。
【0066】
(2)第1凹凸構造の形成方法
本工程に用いられる第1凹凸構造の形成方法としては、所望のサイズかつ形成方向の第1凹凸構造を形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、第1層の表面に対して研磨する切削加工や、凹凸パターンのある金型を押し当てて成型するロールプレス加工を挙げることができる。
以下、切削加工およびロールプレス加工について説明する。
【0067】
(i)切削加工
本工程に用いられる切削加工とは、表面に研磨を施して所望の凹凸構造を成型する切削式加工である。本工程においては一般的な方法を用いることができ、例えば、砥石研磨、ペーパー研磨、テープ研磨、サンドブラスト法、ショットブラスト法、グリットブラスト法、ガラスビーズブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂などの合成繊維からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ材を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーで引っかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイニング法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等を挙げることができる。本工程においては、なかでもテープ研磨法、ペーパー研磨であることが好ましい。微小なライン状凹凸の方向を制御しやすいからである。
【0068】
(ii)ロールプレス加工
本工程に用いられるロールプレス加工とは、凹凸パターンのある回転ローラーを押し当てることにより、表面に所望の凹凸構造を成型する転造式加工である。また、ロールプレス加工は、被成型体がロールプレス機中の回転ローラーを複数回通過することにより、表面に凹凸構造を成型するものである。
【0069】
図6は、ロールプレス加工の一例を示す概略図である。図6に示すように、ロールプレス機200は、被成型体6と接するように凹凸パターンを有する回転ローラー5が設けられている。被成型体6と接するように設けられた回転ローラー5が回転することによって、上記回転ローラー5に設置された凹凸パターンが被成型体6に押し付けられる。
このように、ロールプレス加工は、被成型体と接するように設けられた回転ローラーによって加圧されることによって、回転ローラーに設置された凹凸パターンが金型となり、切削ではなく、押し付けによる変形によって加工することができる。
【0070】
このようなロールプレス加工をすることにより、定位・定圧プレスが可能となり、成型体の厚みを均一化することができ、また断続・連続的な生産が可能となる。
【0071】
上記ロールプレス加工に用いられる回転ローラー表面の凹凸パターンの断面形状、高さ、幅、周期については、上述した第1凹凸構造の高さ、幅、周期と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0072】
5.第2層形成工程
本態様における第2層形成工程は、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みと同等、または上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する工程である。
【0073】
(1)第2層
まず、本工程により形成される第2層について説明する。
第2層に用いられる材料としては、金属材料であり、ウェットメッキ処理により露出した下地層の表面に所望の厚みを有する第2層を形成することが可能なものであれば特に限定されない。このような金属材料については、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した金属材料と同様とすることができる。
【0074】
また、上記第2層の材料としては、上述した第1層の材料よりも硬度の小さい材料であることが好ましい。第2層の材料の硬度が第1層の材料の硬度より小さい場合は、後述する第2凹凸構造形成工程において第2層表面に第2凹凸構造を形成する際に、上記第1層の表面にキズを生じない程度の圧力をかけて切削加工やロールプレス加工等を行うことが可能となるため、第1凹凸構造および第2凹凸構造が精度高く形成された原版を製造することが可能となるからである。このような第2層の材料としては、第1層の材料に応じて上述した金属材料の中から適宜選択することが可能である。例えば、第1層の材料がDLC(ダイヤモンドライクカーボン)である場合は、第2層の材料としては、ニッケル、クロムであることが好ましく、クロムであることがより好ましい。クロムは比較的硬いことから、第2凹凸構造を精度良く形成することが可能となるからである。
【0075】
また、第2層の材料と、下地層の材料とは同一材料であってもよく、異なる材料であってもよく、上述した任意の金属材料を組み合わせることが可能である。上記第2層の材料と下地層の材料との組み合わせ(第2層/下地層)としては、クロム/クロム、ニッケル/ニッケル、ニッケル/クロム、クロム/ニッケル、クロム/銅、ニッケル/銅、クロム/SUS、ニッケル/SUS等を挙げることができる。第2層の材料と下地層の材料とを上述のように組み合わせることにより、下地層の表面に形成される第1層を平滑性の高いものとすることが可能となることから、第1層の表面に第1凹凸構造を精度高く形成することが可能となり、また第2層として上述の材料を用いることにより第2層の表面に第2凹凸構造を精度高く形成することが可能となる。
【0076】
本工程により形成される第2層の厚みは第1層の厚みと同等、または第1層の厚みよりも厚いものである。第2層の厚みと第1層の厚みとの厚みの差としては、後述する第2凹凸構造形成工程において第1層の表面を損傷させることなく、第2層の表面に所望の第2凹凸構造を形成することが可能であれば特に限定されないが、0μm〜2μmの範囲内、なかでも0μm〜1μmの範囲内、特に0μm〜0.5μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みの差が上記範囲に満たない場合は、第2層の表面に切削加工やロールプレス加工等を施した場合に、第1層の表面を損傷してしまう可能性があるからであり、上記厚みの差が上記範囲を超える場合は、第2層を形成するための金属材料や時間等が多くかかることから、生産性高く原版を製造することが困難となる可能性があるからである。
【0077】
なお、第2層の厚みと第1層の厚みとの厚みの差とは、本態様の製造方法により製造される原版において第1凹凸構造が形成された第1層の厚みおよび第2凹凸構造が形成された第2層の厚みを考慮したものである。具体的には、図3(b)においてD2で示される距離を指す。
【0078】
第2層の厚みとしては、第1層との厚みの差が上述した範囲内となる程度であれば特に限定されず、上述した第1層の厚み等により適宜選択されるものであるが、1nm〜10μmの範囲内、なかでも10nm〜5μmの範囲内、特に50nm〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0079】
なお、本工程において形成される第2層の厚みは、本態様により製造される原版において、第2凹凸構造が形成された第2層の厚みを考慮したものである。
なお、第2凹凸構造が形成された第2層の厚みとは、図3(b)中のD3で示す距離を意味するものとする。また、D3については、下地層の表面から第2凹凸構造の凸部分までの距離と下地層の表面から第2凹凸構造の凹部分までの距離との平均値とする。
【0080】
第2層の表面は平滑性を有することが好ましい。第2層の表面が平滑性に劣る場合は、後述する第2凹凸構造形成工程において、所望の第2凹凸構造を精度高く形成することが困難となる可能性があるからである。なお、具体的な第2層の表面粗さについては、上述した「1.下地層準備工程」の項で説明した下地層の表面粗さと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0081】
(2)第2層の形成方法
上記第2層はウェットメッキ処理を施すことにより形成されるものである。このようなウェットメッキ処理としては、露出した下地層の表面のみに所望の厚みを有する第2層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、例えば、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミニウムメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。本工程においては、なかでも、電気メッキ法であることが好ましい。上述した第1層が絶縁性を有するため、上記第1層が形成されていない領域、すなわち、下地層が露出した領域にのみ選択的に保護層を形成することができるからである。
【0082】
6.第2凹凸構造形成工程
本態様における第2凹凸構造形成工程は、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する工程である。
【0083】
(1)第2凹凸構造
本工程において形成される第2凹凸構造について説明する。上記第2凹凸構造は、第2層の表面に形成され、上記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。
【0084】
(i)形成方向
上記第2凹凸構造の形成方向としては、第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向であれば特に限定されない。なかでも、上記第2凹凸構造の形成方向としては、3次元表示可能なパターン位相差フィルムに用いることが可能なパターン配向膜を形成可能な原版とすることができるように、第1凹凸構造の形成方向と第2凹凸構造の形成方向とを異ならせることが可能な形成方向であることが好ましい。このような第2凹凸構造の形成方向としては、具体的には、上述した第1凹凸構造の形成方向に対して第2凹凸構造の形成方向が90°異なる場合と、45°異なる場合とを挙げることができる。
以下、それぞれの場合に分けて説明する。
【0085】
(a)90°異なる場合
上記第2凹凸構造は、第1凹凸構造の形成方向と90°異なる形成方向を有するものである。このような第2凹凸構造としては、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が90°異なるものであれば特に限定されず、例えば、原版がロール版である場合は、ロールの回転方向に対して第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向(第1凹凸構造/第2凹凸構造)が、45°/135°、0°/90°であることが好ましい。
なお、図3(a)は、第1層の表面に形成された第1凹凸構造31および第2層の表面に形成された第2凹凸構造31の方向が45°および135°であり、図7は0°および90°の場合のロール版表面を示すものである。
また、図7中の符号については、図3(a)のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
ここで、本態様の製造方法により製造される原版は、パターン配向膜の配向層を形成するために用いられるものである。また、上記配向層はそれぞれ上記原版の第1凹凸構造および第2凹凸構造に対応する微小なライン状凹凸構造を有する第1配向領域および第2配向領域がパターン状に形成されているものである。また、パターン配向膜は、パターン位相差フィルムに用いられるものであり、上記配向層に液晶等の棒状化合物を配列させることにより位相差層を形成するために用いられるものである。さらに、パターン位相差フィルムの上記位相差層は第1配向領域および第2配向領域に対応する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されているものである。
【0087】
上述のように第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が直交する方向の場合、上記第1凹凸構造および第2凹凸構造を有する原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターン配向膜を形成することで、第1配向領域および第2配向領域上に形成されるパターン位相差フィルムの第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーションをλ/4分に相当するものとすることができる。またこの場合、これらの位相差領域を透過することで直線偏光がそれぞれ右円偏光、左円偏光になるため、上記パターン位相差フィルムを、容易に3次元表示が可能な表示装置を製造するために好適に用いられるものにできる。
【0088】
ここで、面内レターデーション(Re)値とは、屈折率異方体の面内方向における複屈折性の程度を示す指標であり、面内方向において屈折率が最も大きい遅相軸方向の屈折率をNx、遅相軸方向に直交する進相軸方向の屈折率をNy、屈折率異方体の面内方向に垂直な方向の厚みをdとした場合に、
Re[nm]=(Nx−Ny)×d[nm]
で表わされる値である。面内レターデーション値(Re値)は、例えば、王子計測機器株式会社製 KOBRA−WRを用い、平行ニコル回転法により測定することができ、微小領域の面内レターデーション値はAXOMETRICS社(米国)製のAxoScanでミューラーマトリクスを使って測定することも出来る。また、本願明細書においては特に別段の記載をしない限り、Re値は波長589nmにおける値を意味するものとする。
【0089】
(b)45°異なる場合
上記第2凹凸構造は、第1凹凸構造の形成方向と45°異なる形成方向を有するものである。このような第2凹凸構造としては、第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向が45°異なるものであれば特に限定されず、例えば、原版がロール版である場合は、ロールの回転方向に対して第1凹凸構造および第2凹凸構造の形成方向(第1凹凸構造/第2凹凸構造)が、0°/45°、0°/135°であることが好ましい。
なお、図8は第1層の表面に形成された第1凹凸構造31および第2層の表面に形成された第2凹凸構造41の方向が0°/45°、図9は0°/135°の場合のロール版表面を示すものである。
また、図8、図9中の符号については、図3(a)のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。また、図中の矢印は、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0090】
第1凹凸構造の形成方向と第2凹凸構造の形成方向とが45°異なる場合、上記原版を用いて第1配向領域および第2配向領域が形成されたパターン配向膜を形成した場合には、さらにこれを用いたパターン位相差フィルムの上記第1位相差領域および第2位相差領域の面内レターデーション値をλ/2分に相当するものとすることができる。またこの場合は、λ/4板と組み合わせて用いることにより、容易に3D表示装置を製造するために好適に用いられるものにできる。
【0091】
ここで、このような位相差領域を有するパターン位相差フィルムと、λ/4板と組み合わせることにより、容易に3D表示装置を製造することができる点について、より詳細に説明する。図10は、本発明の製造方法により製造される原版を用いて形成されたパターン位相差フィルムと、λ/4板とを組み合わせて用い、3次元表示可能な液晶表示装置を作製した場合の一例を示す概略図である。図10に示すように、本発明の製造方法により製造される原版を用いて形成されたパターン位相差フィルムと、λ/4板を組み合わせて用いる液晶表示装置は、パッシブ方式により3次元表示が可能なものとなる。その原理は次の通りである。
まず、発光型ディスプレイの画素部を、右目用映像表示画素と左目用映像表示画素の2種類の複数の画素にパターン状に分割し、一方のグループの画素では右目用の映像を表示させ、他方のグループの画素では左目用の映像を表示させる。次に、パターン位相差フィルムとして、位相差層の第1位相差領域が左目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成され、かつ第2位相差領域が右目用映像表示画素の配列パターンに対応するように形成されたものを用意する。そして、このようなパターン位相差フィルムを、偏光板の表示面側に配置し、さらにλ/4板をパターン位相差フィルムの表示面側に配置する。このとき、第1位相差領域の遅相軸の方向と、偏光板の偏光軸の方向とが45°で交差するようにし、さらに第1位相差領域の遅相軸方向とλ/4板の遅相軸方向とが平行または直交の関係になるようにする。このようにパターン位相差フィルムとλ/4板とを配置することによって、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された映像(以下、それぞれ「右目用映像」、「左目用映像」と称する場合がある。)は、次のような経路で観察者に視認されることになる。
すなわち、右目用映像表示画素および左目用映像表示画素によって表示された各映像は、まず、偏光板を透過することから、それぞれが直線偏光に変換されることになる。ここで、図10においては、偏光板の偏光軸は0°方向となっているため、偏光板を透過した各映像も、0°方向の直線偏光となる。次に、このように直線偏光(0°)に変換された各映像は、パターン位相差フィルムに入射することになるが、左目用映像は第1位相差領域を通過し、右目用映像は第2位相差領域を通過するため、左目用映像は偏光軸が90°の直線偏光(L1)として、パターン位相差フィルムを透過するが、右目用映像には変化はなく、偏光軸が0°の直線偏光(L2)のままパターン位相差フィルムを透過することになる。次に、L1およびL2がλ/4板に入射することにより、左目用映像は右旋回の円偏光(C1)に、右目用映像は左旋回の円偏光(C2)に、それぞれ変換されることになる。
このように、パターン位相差フィルムおよびλ/4板を通過した右目用映像および左目用映像は、互いに直交する円偏光に変換されることになるため、視聴者に右目用レンズと左目用レンズとに互いに直交する円偏光レンズを採用した円偏光メガネを装着させ、右目用映像が右目用レンズのみを通過し、かつ左目用映像が左目用レンズのみを通過するようにすることによって、右目用映像が右目のみに届き、左目用映像が左目のみに届くようにすることができ、3次元表示が可能となるのである。
【0092】
(ii)第2凹凸構造
上記第2凹凸構造としては、本態様により製造される原版を用いて、高品質なパターン位相差フィルムを形成することが可能なパターン配向膜を製造することが可能なものであれば特に限定されるものではない。上記第2凹凸構造はランダムに形成されていてもよく、ストライプ状に形成されていてもよい。
【0093】
また、上記第2凹凸構造と上述した第1凹凸構造とは同一の態様、すなわち第2凹凸構造および第1凹凸構造の両方がストライプ状に形成されている態様、または第2凹凸構造および第1凹凸構造の両方がランダムに形成されている態様であってもよい。また、上記第2凹凸構造と上記第1凹凸構造とは異なる態様、すなわち、上記第2凹凸構造または第1凹凸構造のうち、一方がストライプ状に形成され、他方がランダムに形成されている態様であってもよい。
【0094】
第2凹凸構造の高さ、幅、周期等については、上述した第1凹凸構造の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0095】
(2)第2凹凸構造の形成方法
本工程に用いられる第2凹凸構造の形成方法については、上述した第1凹凸構造の形成方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0096】
8.その他の工程
本態様の原版の製造方法は、上述した各工程を有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
このようなその他の工程としては、例えば、上記第1凹凸構造形成工程および第2凹凸構造形成工程として切削加工を施した際に、第1層または第2層の表面を切削することで生じる研磨カスを除去する除去工程等を挙げることができる。なお、除去方法としては、例えば、吸引する方法や、溶剤等を用いて除去する方法等を挙げることができる。
【0097】
II.第2態様
本発明の原版の製造方法の第2態様は、金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、上記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、上記下地層および上記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、上記レジストおよびその表面に形成された上記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、上記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、上記第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、を有することを特徴とする製造方法である。
【0098】
ここで、本態様の製造方法により製造される原版100について図を参照して説明する。図2は本態様の原版の一例を示す概略図である。図11(a)は原版100の表面を示す概略平面図であり、図11(b)は図11(a)のB−B線断面図である。
図11(a)、(b)に例示するように、本態様の製造方法により製造される原版100は、金属材料からなる下地層1と、下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、表面に第1凹凸構造31が形成された第1層3と、上記下地層1の表面に形成され、平行な帯状のパターンを有し、表面に第2凹凸構造41形成された第2層3と、を有し、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が、上記第1層1および第2層3の表面で同一となるものである。また、原版100の表面は、平行な帯状に形成された凹部(第1層3)および凸部(第2層4)を有する。
なお、図2は、上記3次元表示用パターン配向膜用原版100がロール状であるロール版である場合の一例である。図11(a)が図2に示す原版100の表面である場合、上記第1凹凸構造31、および第2凹凸構造41の形成方向が、3次元表示用パターン配向膜用原版(ロール版)100の回転方向に対して45°であり、同一となるものである。また、図11(a)中の矢印は、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向を示すものである。
【0099】
なお、本態様の原版の製造方法の工程図については、上述した第1態様の項で説明した図1(a)〜(g)等で説明した工程図と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
【0100】
本態様においても上述した第1態様と同様に、第2層形成工程において、第1凹凸構造が形成された第1層の厚みよりも厚みが厚くなるように第2層を形成することから、第2凹凸構造形成工程において第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面が損傷することを防止することが可能となる。そのため、第1層および第2層の表面の微小なライン状凹凸構造を容易かつ高精度に形成することが可能となる。このようにして製造された原版を用いることにより、3次元表示装置に用いた際に配向不良が起こりにくい高品質な3次元表示用パターン配向膜を得ることができる。
【0101】
以下、本態様の原版の製造方法の各工程について説明する。なお、本態様における下地層準備工程、レジスト形成工程、第1層形成工程、第1凹凸構造形成工程、およびその他の工程等については、上述した「1.第1態様」の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
1.第2層形成工程
本態様における第2層形成工程は、上記第1凹凸構造形成工程後に、露出した上記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を上記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する工程である。
【0103】
ここで、本工程により形成される第2層の厚みは第1層の厚みよりも大きくなるように形成されるものである。この際、第1層および第2層の厚みの差は、通常、本態様の製造方法により製造された原版を用いて作製されたパターン配向膜を用いたパターン位相差フィルムにおいて、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。以下、この点について説明する。
【0104】
本態様により製造される原版は、第1層の厚みよりも第2層の厚みが大きいことから、原版の表面に凸部と凹部とを有するものである。このような原版を用いて製造されたパターン配向膜の配向層は、上述した凸部と凹部とが賦型されて形成されることから、配向層の表面において互いに厚みが異なる部位、すなわち、厚膜領域と薄膜領域とが形成されることとなる。また、このようなパターン配向膜を用いたパターン位相差フィルムにおいては、位相差層において厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する分だけ位相差値が異なるパターンが形成されることになる。
【0105】
よって、本工程により形成される第1層および第2層の厚みの差は、本態様の製造方法により製造される原版を用いたパターン配向膜の配向層の厚膜領域と薄膜領域との厚みの差に相当する。
ここで、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、低位相差領域と高位相差領域との位相差値の差をどの程度にするかによって適宜決定されるものである。したがって、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差は、パターン位相差フィルムの用途、および後述する位相差層に用いられる棒状化合物の種類等に応じて適宜決定されるものであり特に限定されるものではない。中でも本発明においては上記厚膜領域と上記薄膜領域との厚みの差が、位相差層の高位相差領域の面内レターデーション値と、位相差層の低位相差領域の面内レターデーション値との差がλ/2分に相当する距離であることが好ましい。これにより、例えば、配向層上に位相差層を形成する際に、低位相差領域の面内レターデーションがλ/4分に相当するようにすることにより、得られるパターン位相差フィルムは、低位相差領域の面内レターデーション値がλ/4分に相当し、かつ高位相差領域の面内レターデーション値がλ/4+λ/2に相当することになるが、このような態様のパターン位相差フィルムにおいては、上記低位相差領域、上記高位相差領域を通過する直線偏光がそれぞれ互いに直交関係にある円偏光になるため、3次元表示装置を製造するためにより好適に用いられるものにできるからである。
【0106】
したがって、第1層および第2層の厚みの差としては、本態様の製造方法により製造される原版を用いて製造されるパターン配向膜の配向層において、厚膜領域と薄膜領域との厚みの差が上述した距離となるように調整することが好ましい。
【0107】
なお、本態様においては、第1層および第2層の厚みの差は、上述した厚膜領域と薄膜領域との厚みの差だけを考慮されて強制されるものではなく、上述した「I.第1態様」の項で説明したように、第2凹凸構造形成工程において、第2層の表面に第2凹凸構造を形成する際に、第1層の表面にキズは発生しない程度となるように考慮されて調整されるものである。
【0108】
また、本工程において形成される第2層の厚みについては、上述した第1層および第2層の厚みの差を考慮して適宜選択される。
【0109】
なお、本態様における第2層形成工程について上述した点以外については、上述した「1.第1態様」における第2層形成工程の項で説明した内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0110】
2.第2凹凸構造形成工程
本態様における第2凹凸構造形成工程は、第2層の表面に上記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する工程である。
【0111】
本工程において形成される第2凹凸構造としては、第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向を有するものであれば特に限定されない。例えば、図12に示すように、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が0°であってもよく、あるいは、図13に示すように、第1凹凸構造31および第2凹凸構造41の形成方向が90°であってもよい。
なお、上記以外の微小なライン状凹凸構造について、および第2凹凸構造形成工程についての詳しい内容は、上述した第1態様に記載したものと同様とすることができる。
【0112】
III.その他の態様
本発明の原版の製造方法の第1態様において製造される原版は、パターン位相差フィルムにおいて、位相差層を構成する棒状化合物の配列方向が異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されるようなパターン配向膜を製造するために用いられるものである。一方、本発明の原版の製造方法の第2態様において製造される原版は、パターン位相差フィルムにおいて、第1位相差領域および第2位相差領域の厚みが異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域がパターン状に形成されるようなパターン配向膜を製造するために用いられるものである。
よって、本発明の原版の製造方法のその他の態様としては、例えば、パターン位相差フィルムにおいて、位相差層を構成する棒状化合物の配列方向が異なり、かつ第1位相差領域および第2位相差領域の厚みが異なることにより異なる位相差を有する第1位相差領域および第2位相差領域が形成されるようなパターン配向膜を製造することが可能な原版を製造する方法を挙げることができる。このような原版の製造方法として、より具体的には、本発明の原版の製造方法における第2層形成工程において、上述した第2態様における第2層形成工程を適用し、第2凹凸構造形成工程において上述した第1態様における第2凹凸構造形成工程を適用する製造方法が挙げられる。
【0113】
IV.その他
本発明の製造方法により製造される原版は、平行な帯状に形成された凹部(第1層)および凸部(第2層)を有し、表面に微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成されたものである。また、上記原版は、平行な帯状に形成され、かつ表面に形成方向が相異なる微小なライン状凹凸構造が略一定方向に形成された2つの領域を有するものである。
【0114】
また、上記原版は、3次元表示用パターン位相差フィルムに用いられる3次元表示用パターン配向膜を製造する際に用いられるものである。より具体的には、樹脂組成物からなる配向膜形成用層に上記原版の微小なライン状凹凸構造を賦型し、この形状に対応した微小なライン状凹凸構造を有する第1配向領域(凸形状)および第2配向領域(凹形状)を有する3次元表示用パターン配向膜を製造する際に用いられるものである。
【0115】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0116】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0117】
[実施例]
以下の手順により下地層準備工程を行った。Φ300mm、面長1260mmのアルミニウムパイプを用いて製版加工を行った。アルミニウムパイプに用いられるアルミニウム材としては柔らかい1000系アルミニウム材を用いることも可能であるが、より快削性のあることが好ましいことから、5000系アルミニウム材を使用した。アルミニウムパイプ表面は旋盤により面出し後、アルミニウムパイプ表面には電解銅メッキを200μm〜300μm形成し、芯出し、平面性のために砥石研磨を行う。その上には下地層としてNiメッキを約5μm形成した。これは砥石研磨時の傷をNiメッキ層の厚みで埋める目的である。砥石研磨の傷を埋めないと、砥石研磨時の傷により、得られた原版を用いて作製したパターン配向膜において液晶等が配向してしまうためである。このときNiメッキの代わりにCrメッキでも構わないがCrメッキにはマイクロクラックという微細なクラックがあるものがあるため、Crメッキを積層する場合、マイクロクラックが無いものを選定する必要がある。また今回は、ウェットメッキ法を用いたが、ドライメッキ法による成膜でも構わない。砥石研磨時の傷を埋めるためには厚盛りすることが好ましいことから、ウェットメッキ法を用いることがより好ましい。
【0118】
Niメッキ形成後にレジスト形成工程を行った。レジストの製版はシンクラボラトリー社製の描画装置にて行った。まずレジストを版表面全面に適正厚み(約3〜5μm)をコーティングし、常温にて乾燥を行う。乾燥温度を上げることで速く乾燥できるが、レジストの収縮、アルミパイプ自体の膨張による寸法変化の懸念があり、常温乾燥が望ましい。レジストはシンクラボラトリー製のネガレジストを使用しているがシンクラボラトリー社製にこだわることは無く、またポジレジストでも構わない。ネガレジストを使用している理由は、後述する第1層を形成するためのDLC成膜は熱がかかる処理でありポジレジストが熱に弱く膜剥れ、ダレが発生するため、ネガレジストがよい。レジスト膜が出来たらレジストの感光波長に調整されたレーザーヘッドでパターン描画、現像を行い、レジストがある部分、無い部分がストライプ状に形成される。
【0119】
次に、第1層形成工程を行った。ストライプパターンがある版表面にドライメッキ法にて第1層を厚み0.5μmで形成した。今回は第1層の材料をDLCとしたがこれに限らずほかの非導電性硬質膜材料でも構わない。また、DLC成膜厚みは極力薄いほうがよく、0.1μm〜1μmが望ましい。
【0120】
DLC成膜後、レジスト剥離を行うが、この時に使用する剥離液はMEK、IPA,メタノールの混合溶液を使用した。これによりレジスト膜に溶剤が浸透し、レジストが溶解剥離し、DLC膜(第1層)と下地層のストライプパターンが形成された。
【0121】
次に第1凹凸構造形成工程を行った。レジスト剥離後、第1層表面をシンクラボラトリー社製のペーパー研磨機にて全面研磨を行った。このとき研磨角度はペーパー研磨機に角度指定入力し、45度方向の傷をつけた。角度が45度になるには研磨ヘッドの移動速度とシリンダの回転速度が同速度であることで可能となる。傷を付ける方法として研磨フィルムによる研磨を行った。この時に第1層膜厚が薄いため下地金属も研磨されてしまうが、後述第2層形成によりこのときに付けた傷は埋まってしまうために傷はついても構わない。ここで使用した研磨フィルムは三共理化学製ダイヤモンドフィルムの20000番(型番:LDF#20000)である。ダイヤモンド製を用いている理由は、一般的な研磨材である酸化アルミナを用いた場合は、研磨材自体が削れてしまい、研磨傷が太くなってしまい配向不良の原因となるためである。
45度方向の研磨終了後、版表面を溶剤等で洗浄した。上述の洗浄は任意であるが、研磨カス、砥粒が付着していることから、上述の洗浄を行う方が好ましい。
【0122】
次に第2層形成工程を行った。第1層研磨後にはウェットメッキ処理による第2層形成を行った。この時は下地層が導電層、第1膜が不導電膜であることを利用し、第1膜が無い下地層上のみに電解メッキにより、Crメッキ層(第2層)を厚み1μmで形成した。なお、本工程においては、上述したCrメッキ層をDLC層(第1層)と同等としてもよい。また、このときCrメッキ層は最終製品まで残る層であるため、品質不良になりうるマイクロクラックのないCrメッキを用いることが良い。
【0123】
次に、第2凹凸構造形成工程を行った。第2層形成後には第2層表面の研磨工程になる。第2層にCrメッキを用いた場合、ラビングにより表面に微小な凹凸形成が可能であり、そのときに使用する材料としては吉川化工製ラビングクロスYA18Rを用いてラビングを行った(他型番のYA19R、YA20Rでも構わない)。使用する研磨機は第1層表面の研磨と同じであり、研磨方向は第1層研磨時とは90度の角度をなす135度にする必要があるためシリンダ版の回転方向を第1層研磨時とは逆の方向に回転することで研磨角度が135度に入ることができる。
また、第2層研磨時に第1層表面にもラビングクロスが接触するが第1層はDLCのような硬質な無機材料でありラビングクロスが接触しても微小な凹凸が第1層には形成されない。よって第2層をラビングするときには第1層と第2層との材料の硬度の違いを利用して第2層のみラビングされ第1層はラビングされないということを確認した。
以上の工程を行うことで、第1層DLCパターンと第2層Crパターン表面が交互にストライプになった状態になり、版表面は45度/135度の研磨跡がついた原版を作製することができた。
【0124】
[評価]
上記実施例で製作した版にリタデーションの無い透明基材フィルム、例えばTACフィルム、COP(ゼオノア)、アクリルフィルムを用いて、その表面に塗布された紫外線硬化樹脂にて版表面の形状を賦型し、その賦型樹脂側にメルク製紫外線硬化型液晶をスピンコートにてリタデーション値が125nmになるように膜厚を調整して、パターン位相差フィルムを作製した。
そのフィルムを評価した結果、第1層表面の配向方向が45度であり、第2層表面の配向方向が135度であり、それぞれの版表面には1回目2回目の研磨による上書き傷がない綺麗なパターン位相差フィルムができていることが確認できた。
【符号の説明】
【0125】
1 … 下地層
2 … レジスト
3 … 第1層
31 … 第1凹凸構造
4 … 第2層
41 … 第2凹凸構造
5 … 回転ローラー
6 … 被成型体
100 … (3次元表示用パターン配向膜用)原版
200 … ロールプレス機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、
前記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記下地層および前記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、前記レジストおよびその表面に形成された前記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、
前記第1凹凸構造形成工程後に、露出した前記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を前記第1層の厚みと同等、または前記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、
前記第2層の表面に前記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項2】
金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、
前記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記下地層および前記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、前記レジストおよびその表面に形成された前記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、
前記第1凹凸構造形成工程後に、露出した前記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を前記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、
前記第2層の表面に前記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項3】
前記3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であるロール版であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項4】
前記第1凹凸構造形成工程または前記第2凹凸構造形成工程の少なくとも一方がロールプレス加工により実施されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項1】
金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、
前記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記下地層および前記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、前記レジストおよびその表面に形成された前記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、
前記第1凹凸構造形成工程後に、露出した前記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を前記第1層の厚みと同等、または前記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、
前記第2層の表面に前記第1凹凸構造の形成方向と異なる形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項2】
金属材料からなる下地層を準備する下地層準備工程と、
前記下地層の表面に平行な帯状のパターンを有するレジストを形成するレジスト形成工程と、
前記下地層および前記レジストの表面にドライメッキ処理を施すことにより、絶縁性を有する無機材料からなる第1層形成用層を形成した後、前記レジストおよびその表面に形成された前記第1層からなる積層体を剥離して、平行な帯状のパターンを有する第1層を形成する第1層形成工程と、
前記第1層の表面に微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第1凹凸構造を形成する第1凹凸構造形成工程と、
前記第1凹凸構造形成工程後に、露出した前記下地層の表面のみにウェットメッキ処理を施すことにより、金属材料からなる第2層を前記第1層の厚みよりも厚くなるように形成する第2層形成工程と、
前記第2層の表面に前記第1凹凸構造の形成方向と同一の形成方向の微小なライン状凹凸構造を略一定方向に形成して第2凹凸構造を形成する第2凹凸構造形成工程と、
を有することを特徴とする3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項3】
前記3次元表示用パターン配向膜用原版がロール状であるロール版であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【請求項4】
前記第1凹凸構造形成工程または前記第2凹凸構造形成工程の少なくとも一方がロールプレス加工により実施されることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の3次元表示用パターン配向膜用原版の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図10】
【図14】
【公開番号】特開2012−242517(P2012−242517A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110850(P2011−110850)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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