説明

3次元造形物製造装置

【課題】スクレーパーブレード85の先端の調節作業に要する時間を大幅に短縮すること。
【解決手段】スクレーパーシャフト73の外周面にスクレーパーアーム81がスクレーパーシャフト73の軸心周りに回転可能に嵌合して設けられ、スクレーパーアーム81には、金属粉末を均しながら掻き寄せるスクレーパーブレード85が設けられ、スクレーパーシャフト73の外周面に基準ピン87が一体的に設けられ、スクレーパーアーム81の一側面に基準ピン87に一方側から当接可能なボールプランジャ89が螺合して設けられ、スクレーパーアーム81の他側面に基準ピン87に他方側から当接可能なスプリングプランジャ91が螺合して設けられていること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の粉末層にレーザ光を照射して焼結体を形成する焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の焼結体を重ね合わせてなる3次元造形物を製造する3次元造形物製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元造形物製造装置に種々の研究開発がなされており、3次元造形物製造装置の先行技術として特許文献1に示すものがある。そして、先行技術に係る3次元造形物の構成等は、次のようになる。
【0003】
即ち、先行技術に係る3次元造形物製造装置は、装置本体をベースとして具備しており、この装置本体は、上部フレームと下部フレームを上下に備えている。そして、下部フレームには、3次元造形物の構成材料である金属粉末を収容する材料タンクが設けられており、この材料タンクは、上下方向へ延びてあって、材料タンクの上側は、開放(開口)されている。また、材料タンク内には、金属粉末を支持する材料テーブルが上下方向へ移動可能に設けられている。
【0004】
下部フレームにおける材料タンクの一側には、上下方向へ延びた造形タンクが設けられており、この造形タンクの上側は、開放(開口)されている。また、造形タンク内には、金属粉末の粉末層を支持する造形テーブルが上下方向へ移動可能に設けられている。
【0005】
下部フレームには、 材料タンクから溢れた前記金属粉末を均しながら前記造形タンク側に掻き寄せるスクレーパーユニットが設けられている。具体的には、下部フレームには、スクレーパーユニットの一部を構成するスクレーパーアームが設けられており、このスクレーパーアームは、材料タンクの上方側と造形タンクの上方側との間で水平方向へ移動可能である。また、スクレーパーアームには、金属粉末を均しながら掻き寄せるスクレーパーブレードが設けられており、このスクレーパーブレードは、スクレーパーアームの長手方向へ延びている。
【0006】
上部フレーム、換言すれば、装置本体における造形タンクの上方には、レーザ光照射ユニットが設けられており、このレーザ光照射ユニットは、レーザ光を2次元走査しつつ上方向から粉末層に対してレーザ光を鉛直に照射するものである。また、レーザ光照射ユニットは、レーザ発振器から発振されたレーザ光を2次元走査するガルバノ光学スキャン、及びこのガルバノ光学スキャンによって2次元走査されたレーザ光を集光して上方向から粉末層に鉛直に照射するFθレンズを備えている。
【0007】
従って、材料テーブルを上方向へ移動させて、材料タンクから金属粉末を溢れさせると共に、造形テーブルを上方向へ移動させて、造形タンクの上面よりも低い高さ位置又は造形タンクの上面と略同じ高さ位置に位置させる。続いて、スクレーパーアームを材料タンクの上方側から造形タンクの上方側へ移動させることにより、スクレーパーブ機構によって金属粉末を均しながら造形タンク側に掻き寄せて、造形テーブル上に粉末層を形成する。そして、レーザ光照射ユニットによってレーザ光を2次元走査しつつ粉末層に対して上方向から鉛直に照射することにより、任意形状の焼結体を形成して、1回目の焼結動作が終了する。
【0008】
1回目の焼結動作の終了後に、材料テーブルを上方向へ移動させて、材料タンクから金属粉末を溢れさせると共に、前回の焼結動作によって形成された焼結体の高さ分だけ造形テーブルを下方向へ移動させる。続いて、スクレーパーアームを材料タンクの上方側から造形タンクの上方側へ移動させることにより、スクレーパーユニットによって金属粉末を均しながら造形タンク側に掻き寄せて、前回の焼結動作によって形成された焼結体を含む粉末層上に新たな粉末層を形成する。そして、レーザ光照射ユニットによってレーザ光を2次元走査しつつ新たな粉末層に対して上方向から鉛直に照射することにより、前回の焼結動作によって形成された焼結体に重なった任意形状の新たな焼結体を形成して、2回目以降の焼結動作が終了する。更に、2回目以降の焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の焼結体を重ね合わせてなる任意形状の3次元造形物を製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−124200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、粉末層の厚みを変更する等の理由により、スクレーパーアームに対するスクレーパーブレードの取付位置を変えて、スクレーパーブレードの先端(下端)の高さ位置を調節することがある。一方、スクレーパーユニットによって金属粉末を均しながら造形タンク側に掻き寄せて均一な厚みの粉末層を形成するには、スクレーパーブレードの先端の高さ位置の調節後においても、スクレーパーブレードの先端の水平度を高精度に保つ必要がある。
【0011】
しかしながら、スクレーパーブレードはスクレーパーアームの長手方向へ延びてあって、スクレーパーブレードの先端の水平度を高精度に保ちつつ、スクレーパーアームに対するスクレーパーブレードの取付位置を変えて、スクレーパーブレードの先端の高さ位置を調節することは容易ではなく、スクレーパーブレードの先端の調節作業に要する時間が長くなるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の3次元造形物製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の特徴は、金属粉末の粉末層にレーザ光を照射して焼結体を形成する焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の前記焼結体を重ね合わせてなる3次元造形物を製造する3次元造形物製造装置において、装置本体に設けられ、上下方向(鉛直方向)へ延びてあって、上側が開放(開口)され、前記3次元造形物の構成材料である前記金属粉末を収容する材料タンクと、前記材料タンク内に上下方向へ移動可能に設けられ、前記金属粉末を支持する材料テーブルと、前記装置本体における前記材料タンクの一側に設けられ、上下方向に延びてあって、上側が開放(開口)された造形タンクと、前記造形タンク内に上下方向へ移動可能に設けられ、前記粉末層を支持する造形テーブルと、前記装置本体に設けられ、前記材料タンクから溢れた前記金属粉末を均しながら前記造形タンク側に掻き寄せる(敷き詰める)スクレーパーユニットと、前記造形タンクの上方に設けられ、レーザ光を2次元走査しつつ前記粉末層に対して上方向から鉛直に照射するレーザ光照射ユニットと、を具備し、前記スクレーパーユニットは、前記装置本体に設けられ、前記材料タンクの上方側と前記造形タンクの上方側との間で水平方向へ移動可能なスクレーパーシャフトと、前記スクレーパーシャフトの外周面に前記スクレーパーシャフトの軸心周りに回転可能に嵌合して設けられたスクレーパーアームと、前記スクレーパーアームに設けられ、前記スクレーパーアームの長手方向へ延びてあって、前記金属粉末を均しながら掻き寄せるスクレーパーブレードと、前記スクレーパーアームの回転角(回転量)を調節する回転角調節機構(回転量調節機構)と、を備えたことを要旨とする。
【0014】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、ブラケット等を介して間接的に設けられたことを含む意である。
【0015】
3次元造形物の製造に関する作用
前記材料テーブルを上方向へ移動させて、前記材料タンクから前記金属粉末を溢れさせると共に、前記造形テーブルを上方向又は下方向へ移動させて、前記造形タンクの上面よりも低い高さ位置又は前記造形タンクの上面と略同じ高さ位置に位置させる。続いて、前記スクレーパーシャフトを前記材料タンクの上方側から前記造形タンクの上方側へ移動させることにより、前記スクレーパーブレードによって前記金属粉末を均しながら前記造形タンク側に掻き寄せて、前記造形テーブル上に前記粉末層を形成する。なお、前記粉末層を形成した後に、前記スクレーパーシャフトを前記材料タンクの上方側へ復帰移動させておく。そして、前記レーザ光照射ユニットによってレーザ光を2次元走査しつつ前記粉末層に対して上方向から鉛直に照射することにより、任意形状の前記焼結体を形成して、1回目の焼結動作が終了する。
【0016】
1回目の焼結動作の終了後に、前記材料テーブルを上方向へ移動させて、前記材料タンクから前記金属粉末を溢れさせると共に、前回の焼結動作によって形成された前記焼結体の高さ分だけ前記造形テーブルを下方向へ移動させる。続いて、前記スクレーパーシャフトを前記材料タンクの上方側から前記造形タンクの上方側へ移動させることにより、前記スクレーパーブレードによって前記金属粉末を均しながら前記造形タンク側に掻き寄せて、前回の焼結動作によって形成された前記焼結体を含む前記粉末層上(換言すれば、前回の焼結動作によって形成された前記焼結体を含む前記粉末層を介して前記造形テーブル上)に新たな前記粉末層を形成する。なお、新たな前記粉末層を形成した後に、前記スクレーパーシャフトを前記材料タンクの上方側へ復帰移動させておく。そして、前記レーザ光照射ユニットによってレーザ光を2次元走査しつつ新たな前記粉末層に対して上方向から鉛直に照射することにより、前回の焼結動作によって形成された前記焼結体に重なった任意形状の新たな前記焼結体を形成して、2回目以降の焼結動作が終了する。更に、2回目以降の焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の前記焼結体を重ね合わせてなる任意形状の前記3次元造形物を製造することができる。
【0017】
前記スクレーパーブレードの先端の高さ位置の調節に関する作用
前記回転角調節機構によって前記スクレーパーアームの回転角を調節することにより、前記スクレーパーブレードの先端の高さ位置を調節することができる。要するに、前記装置本体に前記材料タンクの上方側と前記造形タンクの上方側との間で水平方向へ移動可能なスクレーパーシャフトが設けられ、前記スクレーパーシャフトの外周面に前記スクレーパーアームが前記スクレーパーシャフトの軸心周りに回転可能に嵌合して設けられ、前記スクレーパーアームに前記スクレーパーブレードが設けられているため、前記回転角調節機構によって前記スクレーパーアームの回転角を調節するだけで、前記スクレーパーアームに対する前記スクレーパーブレードの取付位置を変えることなく、前記スクレーパーブレードの先端の水平度を高精度に保った状態で、前記スクレーパーブレードの先端の高さ位置を調節することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記スクレーパーアームに対する前記スクレーパーブレードの取付位置を変えることなく、前記スクレーパーブレードの先端の水平度を高精度に保った状態で、前記スクレーパーブレードの先端の高さ位置を調節できるため、前記スクレーパーブレードの先端の調節作業が簡単になり、前記スクレーパーブレードの先端の調節作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る3次元造形物製造装置の正断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の実施形態に係るスクレーパーユニットの動作を説明する図、図2(b)は、図2(a)における矢視部IIBの拡大図である。
【図3】図1における矢視部IIIの拡大図である。
【図4】図1におけるIV-IV線に沿った図である。
【図5】図4における矢視部Vの拡大図である。
【図6】図1における矢視部VIの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について図1から図6を参照して説明する。なお、図中、「X軸方向」は、左右方向、「Y軸方向」は、前後方向、「Z軸方向」は、上下方向を指している。
【0021】
図1及び図6に示すように、本発明の実施形態に係る3次元造形物製造装置1は、金属粉末の粉末層(薄層)Tにレーザ光Lを照射して焼結体Tsを形成する焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の焼結体Tsを重ね合わせてなる3次元造形物(図示省略)を製造する装置である。また、3次元造形物製造装置1は、ベースとして装置本体3を具備しており、この装置本体3は、上部フレーム5と下部フレーム7を上下に備えている。
【0022】
図1、図3、及び図4に示すように、下部フレーム7の支持部7aには、3次元造形物の構成材料である金属粉末を収容する材料タンク9が設けられており、材料タンク9は、上下方向(換言すれば、鉛直方向)へ延びてあって、材料タンク9の上側は、開放(開口)されている。また、材料タンク9内には、金属粉末を支持する材料テーブル11が上下方向へ移動可能に設けられており、材料テーブル11の下側には、テーブルサポート13が一体的設けられており、このテーブルサポート13は、材料タンク9内に一対のガイドレール15を介して上下方向へ移動可能に支持されている。そして、テーブルサポート13の下端部には、テーブルサポート13と一体的に材料テーブル11を上下方向へ移動させる材料テーブル用サーボモータ(材料テーブル用アクチュエータの一例)17が設けられている。更に、テーブルサポート13には、上下方向へ延びかつ材料テーブル用サーボモータ17の出力軸に連動連結したボールねじ部材19が回転可能に設けられており、材料タンク9内の適宜位置には、このボールねじ部材19に螺合したナット部材21が設けられている。
【0023】
下部フレーム7の支持部7aにおける材料タンク9の左側には、造形タンク23が一体的に設けられており、この造形タンク23は、上下方向に延びてあって、造形タンク23の上側は、開放(開口)されている。また、造形タンク23内には、粉末層Tを支持する造形テーブル25が上下方向へ移動可能に設けられており、造形テーブル25の下側には、テーブルサポート27が一体的設けられており、このテーブルサポート27は、造形タンク23内に一対のガイドレール29を介して上下方向へ移動可能に支持されている。そして、テーブルサポート27の下端部には、テーブルサポート27と一体的に造形テーブル25を上下方向へ移動させる造形テーブル用サーボモータ(造形テーブル用アクチュエータの一例)31が設けられている。更に、テーブルサポート27には、上下方向へ延びかつ造形テーブル用サーボモータ31の出力軸に連動連結したボールねじ部材33が回転可能に設けられており、造形タンク23内の適宜位置には、このボールねじ部材33に螺合したナット部材35が設けられている。
【0024】
なお、下部フレーム7の支持部7aにおける造形タンク23の左側には、造形タンク23からはみ出した金属粉末を回収する回収ボックス37が一体的に設けられており、この回収ボックス37の上側及び下側は、開放(開口)されている。
【0025】
図1、図4、及び図6に示すように、下部フレーム7の支持部7aには、材料タンク9から溢れた金属粉末を均しながら造形タンク23側に掻き寄せる(敷き詰める)スクレーパーユニット39が設けられており、このスクレーパーユニット39の詳細は、後述する。また、下部フレーム7の支持部7aには、チャンバー41が材料タンク9の上側、造形タンク23の上側、及び前記スクレーパーユニット39を覆うように設けられており、このチャンバー41は、内部に窒素ガス等の不活性ガスを導入可能であって、チャンバー41の上面には、接続穴43が貫通して形成されている。
【0026】
上部フレーム5における造形タンク23の上方には、レーザ光Lを2次元走査しつつ粉末層Tに対して上方向から鉛直に照射するレーザ光照射ユニット45が設けられており、レーザ光照射ユニット45の具体的な構成は、次のようになる。
【0027】
即ち、図1及び図6に示すように、上部フレーム5の支持部5aには、かご状のケース支持部材47が複数のガイドバー49を介して上下方向へ移動可能に設けられており、ケース支持部材47には、ユニットケース51が一体的に設けられており、このユニットケース51の下面には、下方向へ突出した突出部53が形成されている。また、ユニットケース51の突出部53の外周面は、ガイドスリーブ55及びシール部材57を介してチャンバー41の接続穴43の内周面に気密的に上下方向へ移動可能(摺動可能)に接続されている。なお、ガイドスリーブ55は、ケース支持部材47の下面に固定されている。
【0028】
ユニットケース51には、光ファイバコネクタ59設けられており、この光ファイバコネクタ59は、レーザ光Lを発振するレーザ発振器(図示省略)に光学的に接続されている。また、ユニットケース51内おける光ファイバコネクタ59の左側近傍には、コリメートレンズ61が光軸方向へ移動可能に設けられており、このコリメートレンズは、光ファイバコネクタ59にから出射されたレーザ光Lを平行光に変換するものである。更に、ユニットケース51内における光ファイバコネクタ59の下側近傍には、コリメートレンズ61を光軸方向へ移動させるコリメートレンズ移動機構63が設けられており、このコリメートレンズ移動機構63は、サーボモータ、ボールねじ部材等からなるものである。
【0029】
ユニットケース51内におけるコリメートレンズ61の出射側には、ガルバノ光学スキャナ65が設けられており、このガルバノ光学スキャナ65は、コリメートレンズ61から出射されたレーザ光Lを2次元走査するものである。また、ユニットケース51内におけるガルバノ光学スキャナ65の出射側、換言すれば、ユニットケース51の突出部53の内側には、Fθレンズ67が設けられており、このFθレンズ67は、ガルバノ光学スキャナ65によって2次元走査されたレーザ光Lを集光して粉末層Tに対して上方向から鉛直に照射するものである。
【0030】
続いて、本発明の実施形態の要部であるスクレーパーユニット39について説明する。
【0031】
図3から図5に示すように、下部フレーム7の支持部7aには、左右方向へ延びた枠状のガイド部材69が設けられており、このガイド部材69には、スライダ71が左右方向へ移動可能に設けられている。また、スライダ71には、片持ち式のスクレーパーシャフト73が一体的に設けられており、換言すれば、下部フレーム7の支持部7aには、スクレーパーシャフト73がガイド部材69及びスライダ71を介して設けられており、このスクレーパーシャフト73は、材料タンク9の上方側と造形タンク23の上方側との間で左右方向(水平方向の1つ)へ移動可能になっている。そして、ガイド部材69の左端部には、スライダ71と一体的にスクレーパーシャフト73を左右方向へ移動させるスクレーパーシャフト用サーボモータ(スクレーパーシャフト用アクチュエータの一例)75が設けられている。更に、ガイド部材69の内側には、左右方向へ延びかつスクレーパーシャフト用サーボモータ75の出力軸に連動連結したボールねじ部材77が回転可能に設けられており、スライダ71の下面には、このボールねじ部材77に螺合したナット部材79が設けられている。
【0032】
図2(a)(b)及び図3に示すように、スクレーパーシャフト73の外周面には、スクレーパーアーム81がスクレーパーシャフト73の軸心周りに回転可能に嵌合して設けられており、このスクレーパーアーム81の中央部には、円弧方向へ延びた長穴(挿入空間の一例)83が形成されている。また、スクレーパーアーム81には、金属粉末を均しながら掻き寄せる(敷き詰める)スクレーパーブレード85が着脱可能に設けられており、このスクレーパーブレード85は、スクレーパーアーム81の長手方向へ延びている。更に、スクレーパーブレード85の断面形状は、長方形であって、スクレーパーブレード85の先端(下端)は、水平になっている。
【0033】
スクレーパーシャフト73の外周面には、基準ピン87が一体的に設けられており、この基準ピン87は、スクレーパーアーム81の長穴83に挿入してある。また、スクレーパーアーム81の左側面には、基準ピン87に左方側から当接可能なボールプランジャ(第1調節ねじ部材の一例)89が螺合して設けられており、スクレーパーアーム81の右側面には、基準ピン87に右方側から当接可能なスプリングプランジャ(第2調節ねじ部材の一例)91が螺合して設けられている。更に、スクレーパーアーム81の後側には、スクレーパーアーム81をスクレーパーシャフト73に対して回転不能に固定するロックハンドル(ロック機構の一例)93が設けられている。なお、基準ピン87、ボールプランジャ89、及びスプリングプランジャ91は、スクレーパーアーム81の回転角(回転量)を調節する回転角調節機構(回転量調節機構)として捉えることができる。
【0034】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0035】
[3次元造形物の製造に関する作用]
材料テーブル用サーボモータ17の駆動により材料テーブル11を上方向へ移動させて、材料タンク9から金属粉末を溢れさせると共に、造形テーブル用サーボモータ31の駆動により造形テーブル25を上方向又は下方向へ移動させて、造形タンク23の上面よりも低い高さ位置又は造形タンク23の上面と略同じ高さ位置に位置させる。続いて、スクレーパーシャフト用サーボモータ75の駆動によりスクレーパーシャフト73を材料タンク9の上方側から造形タンク23の上方側へ移動させることにより、スクレーパーブレード85によって金属粉末を均しながら造形タンク23側に掻き寄せて(図2(a)(b)参照)、造形テーブル25上に粉末層Tを形成する。なお、粉末層Tを形成した後に、スクレーパーシャフト用サーボモータ75の駆動によりスクレーパーシャフト73を材料タンク9の上方側へ復帰移動させておく。そして、チャンバー41内を不活性ガス雰囲気に保ちつつ、レーザ光照射ユニット45によってレーザ光Lを2次元走査しつつ粉末層Tに対して上方向から鉛直に照射することにより、任意形状の焼結体Tsを形成して、1回目の焼結動作が終了する。
【0036】
1回目の焼結動作の終了後に、材料テーブル用サーボモータ17の駆動により材料テーブル11を上方向へ移動させて、材料タンク9から金属粉末を溢れさせると共に、前回の焼結動作によって形成された焼結体Tsの高さ分だけ、造形テーブル用サーボモータ31の駆動により造形テーブル25を下方向へ移動させる。続いて、スクレーパーシャフト用サーボモータ75の駆動によりスクレーパーシャフト73を材料タンク9の上方側から造形タンク23の上方側へ移動させることにより、スクレーパーブレード85によって金属粉末を均しながら造形タンク23側に掻き寄せて(図2(a)(b)参照)、前回の焼結動作によって形成された焼結体Tsを含む粉末層T上(換言すれば、前回の焼結動作によって形成された焼結体Tsを含む粉末層Tを介して造形テーブル25上)に新たな粉末層Tを形成する。なお、新たな粉末層Tを形成した後に、スクレーパーシャフト用サーボモータ75の駆動によりスクレーパーシャフト73を材料タンク9の上方側へ復帰移動させておく。そして、チャンバー41内を不活性ガス雰囲気に保ちつつ、レーザ光照射ユニット45によってレーザ光Lを2次元走査しつつ新たな粉末層Tに対して上方向から鉛直に照射することにより、前回の焼結動作によって形成された焼結体Tsに重なった任意形状の新たな焼結体Tsを形成して、2回目以降の焼結動作が終了する。更に、2回目以降の焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の焼結体Tsを重ね合わせてなる任意形状の3次元造形物を製造することができる。
【0037】
ここで、通常、3次元造形物の製造中において、ロックハンドル93によってスクレーパーアーム81をスクレーパーシャフト73に対して回転不能に固定しておくことが望ましいが、レーザ光Lの照射によって粉末層Tに突起状の異常焼結部が生じることが予想される場合には、ロックハンドル93による固定状態(ロック状態)を解除しておく。これにより、スクレーパーブレード85によって金属粉末を造形タンク23側に掻き寄せる際に、スクレーパーブレード85が異常焼結部に干渉すると、スプリングプランジャ91のスプリング部の付勢力に抗してスクレーパーアーム81が図2(a)(b)において反時計回り方向へ回転する。
【0038】
[スクレーパーブレード85の先端の高さ位置の調節に関する作用]
ボールプランジャ89及びスプリングプランジャ91を基準ピン87に当接させた状態で、ボールプランジャ89及びスプリングプランジャ91を回転操作(締め付けたり又は緩めたり)することにより、スクレーパーアーム81の回転角を調節して、スクレーパーブレード85の先端の高さ位置を調節することができる。要するに、下部フレーム7の支持部7aに材料タンク9の上方側と造形タンク23の上方側との間で左右方向へ移動可能なスクレーパーシャフト73がガイド部材69及びスライダ71を介して設けられ、スクレーパーシャフト73の外周面にスクレーパーアーム81がスクレーパーシャフト73の軸心周りに回転可能に嵌合して設けられ、スクレーパーアーム81にスクレーパーブレード85が設けられているため、スクレーパーアーム81の回転角を調節するだけで、スクレーパーアーム81に対するスクレーパーブレード85の取付位置を変えることなく、スクレーパーブレード85の先端の水平度を高精度に保った状態で、スクレーパーブレード85の先端の高さ位置を調節することができる。
【0039】
[本発明の実施形態の効果]
本発明の実施形態によれば、スクレーパーアーム81に対するスクレーパーブレード85の取付位置を変えることなく、スクレーパーブレード85の先端の水平度を高精度に保った状態で、スクレーパーブレード85の先端の高さ位置を調節できるため、スクレーパーブレード85の先端の調節作業が簡単になり、スクレーパーブレード85の先端の調節作業に要する時間を大幅に短縮することができる。
【0040】
また、スクレーパーブレード85によって金属粉末を造形タンク23側に掻き寄せる際に、スクレーパーブレード85が異常焼結部に干渉すると、スプリングプランジャ91のスプリング部の付勢力に抗してスクレーパーアーム81が図2(a)(b)において反時計回り方向へ回転するため、異常焼結部との干渉に伴うスクレーパーブレード85の衝撃を緩和して、スクレーパーブレード85の折損を十分防止することができる。
【0041】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、例えば、基準ピン87、ボールプランジャ89、及びスプリングプランジャ91によってスクレーパーアーム81の回転角を調節する代わりに、エアシリンダ等のアクチュエータによってスクレーパーアーム81の回転角を調節するようにする等、その他、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0042】
L レーザ光
T 粉末層
Ts 焼結体
1 3次元造形物製造装置
3 装置本体
5 上部フレーム
7 下部フレーム
9 材料タンク
11 材料テーブル
17 材料テーブル用サーボモータ
23 造形タンク
25 造形テーブル
31 造形テーブル用サーボモータ
39 スクレーパーユニット
41 チャンバー
45 レーザ光照射ユニット
69 ガイド部材
71 スライダ
73 スクレーパーシャフト
75 スクレーパーシャフト用サーボモータ
81 スクレーパーアーム
83 長穴(挿入空間)
85 スクレーパーブレード
87 基準ピン
89 ボールプランジャ
91 スプリングプランジャ
93 ロックハンドル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末の粉末層にレーザ光を照射して焼結体を形成する焼結動作を繰り返して行うことにより、複数の前記焼結体を重ね合わせてなる3次元造形物を製造する3次元造形物製造装置において、
装置本体に設けられ、上下方向へ延びてあって、上側が開放され、前記3次元造形物の構成材料である前記金属粉末を収容する材料タンクと、
前記材料タンク内に上下方向へ移動可能に設けられ、前記金属粉末を支持する材料テーブルと、
前記装置本体における前記材料タンクの一側に設けられ、上下方向に延びてあって、上側が開放された造形タンクと、
前記造形タンク内に上下方向へ移動可能に設けられ、前記粉末層を支持する造形テーブルと、
前記装置本体に設けられ、前記材料タンクから溢れた前記金属粉末を均しながら前記造形タンク側に掻き寄せるスクレーパーユニットと、
前記造形タンクの上方に設けられ、レーザ光を2次元走査しつつ前記粉末層に対して上方向から鉛直に照射するレーザ光照射ユニットと、を具備し、
前記スクレーパーユニットは、
前記装置本体に設けられ、前記材料タンクの上方側と前記造形タンクの上方側との間で水平方向へ移動可能なスクレーパーシャフトと、
前記スクレーパーシャフトの外周面に前記スクレーパーシャフトの軸心周りに回転可能に嵌合して設けられたスクレーパーアームと、
前記スクレーパーアームに設けられ、前記スクレーパーアームの長手方向へ延びてあって、前記金属粉末を均しながら掻き寄せるスクレーパーブレードと、
前記スクレーパーアームの回転角を調節する回転角調節機構と、を備えたことを特徴とする3次元造形物製造装置。
【請求項2】
前記スクレーパーアームに円弧方向に延びた挿入空間が形成されてあって、
前記回転角調節機構は、
前記スクレーパーシャフトの外周面に一体的に設けられ、前記スクレーパーアームの前記挿入空間に挿入した基準ピンと、
前記スクレーパーアームの一側面に螺合して設けられ、前記基準ピンに一方側から当接可能な第1調節ねじ部材と、
前記スクレーパーアームの他側面に螺合して設けられ、前記基準ピンに他方側から当接可能な第2調節ねじ部材と、を有したことを特徴とする請求項1に記載の3次元造形物製造装置。
【請求項3】
前記第1調節ねじ部材は、ボールプランジャであって、前記第2調節ねじ部材は、スプリングプランジャであることを特徴とする請求項2に記載の3次元造形物製造装置。
【請求項4】
前記スクレーパーユニットは、
前記スクレーパーアームを前記スクレーパーシャフトに対して回転不能に固定するロック機構を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の3次元造形物製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−127195(P2011−127195A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287852(P2009−287852)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【Fターム(参考)】