説明

3次元高分子光導波路及びその製造方法

【課題】層毎にコア幅が異なる3次元構造の光導波路を簡易かつ安価に製造することが可能な3次元高分子光導波路及びその製造方法を提供する。
【解決手段】クラッドとなる第1の層11、この第1の層11上に第1の層11より大きな屈折率を有してコアとなる第2の層12、この第2の層12上に設けられると共に第1の層11と同じ材料からなる第3の層13を積層した積層フィルム10を用意する。この積層フィルム10は、ブレードにより、外部に連通するようにして所定の間隔に切削溝17A〜17Eが設けられる。切削溝17A〜17Eには、第1の層11と同様の材料が、クラッドとして充填される。これにより、2層の第1のコア2A,2Bと第2のコア4A,4Bを有する三次元高分子光導波路100が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元高分子光導波路及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、データ等の信号を伝送する場合、従来、送信側でデータ等に応じた電気信号、具体的には、データ等に応じた電圧信号を生成し、この電圧信号をケーブル等の一端に印加し、他端に接続した受信器により受信していた。しかし、信号伝送を高速化しようとすると、電気信号では伝送損失等が生じ、信号を高品質のまま長距離を伝送するには限界がある。そこで、画像信号等のデータを光信号にして伝送することが考えられている。
【0003】
光伝送においては、一般に、低損失性や高安定性等の特徴を有するシングル石英系光ファイバが用いられているが、このシングル石英系光ファイバは、接続コストが高くなることや扱い難いことから短距離間の伝送には適していない。これに対して、マルチモード高分子光導波路は、石英系に比較して光損失が多少大きいものの、低コストで接続が簡便であり、かつ高屈曲性を有することから、短距離光通信への適用が期待されている。
【0004】
高分子光導波路の製造方法として、本出願人の提案によるシリコンゴム鋳型を使った複製法により、光インターコネクションに適したフィルムタイプのマルチモード光導波路を作製することができ、例えば、特許文献1,2に開示されている。この高分子導波路の製造法は、コア形成用凹部を有する鋳型とクラッド用のフィルム基材とを剥離可能に密着し、毛細管現象を利用して、コア形成用硬化性樹脂を鋳型の凹部に充填硬化させることによりフィルム基材上に導波路コアを形成し、鋳型を剥離した後、フィルム基材のコア形成面の全面にクラッド層を形成するものである。この製造方法は、簡単でありながら、光導波損失の小さい光導波路を安定して作製することができる。
【0005】
また、高分子光導波路の他の製造方法として、基板上にクラッドからなる第1の層と、第1層より屈折率の高い第2の層を形成し、第2層の一部をダイシングソー等で切削除去することによりコアを形成し、該コアより屈折率の低い材料でコアを覆って第3層を形成することにより導波路を形成する方法がある(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−29507号公報
【特許文献2】特開2004−86144号公報
【特許文献3】特開平8−286064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、層毎にコア幅が異なる3次元構造の光導波路を簡単かつ安価に製造することが可能な3次元高分子光導波路及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の3次元高分子光導波路を提供する。
【0008】
[1]3つ以上のクラッド層間にそれぞれコア層を配置し、これらを積層して形成された積層フィルムと、最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記コア層を分割することにより形成され、層毎に異なるコア幅を有する光伝送用のコアと光伝送に使用されないダミーコアとを含む複数のコアと、前記複数の溝に充填されたクラッド材と、を備えたことを特徴とする3次元高分子光導波路。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の3次元高分子光導波路の製造方法を提供する。
【0010】
[2]3つ以上のクラッド層間にそれぞれコア層を配置し、これらを積層して積層フィルムを作製する第1の工程と、最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記コア層を分割することにより、層毎に異なるコア幅を有する光伝送用のコアと光伝送に使用されないダミーコアとを含む複数のコアを形成する第2の工程と、前記複数の溝にクラッド材を充填する第3の工程と、を含むことを特徴とする3次元高分子光導波路の製造方法。
【0011】
[3]前記第2の工程は、前記積層フィルムの片面から該片面より最も遠くに配置されたコア層まで同一幅で切削することにより前記複数の溝を設ける前記[2]に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【0012】
[4]前記第2の工程は、前記複数の溝を設けるに際し、前記コア層を1枚のブレードで異なる深さに複数回切削して1つの溝を形成する前記[2]に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【0013】
[5]前記第2の工程は、直径の異なる2枚のブレードを重ねて前記複数の溝を形成する前記[2]に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【0014】
[6]前記第2の工程は、半径方向に段差を有した1枚のブレードにより前記複数の溝を形成する前記[2]に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【0015】
[7]前記第2の工程は、前記最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記最外層側の前記コア層を分割する工程と、前記最外層の前記クラッド層とは反対側の最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記反対側の最外層の前記クラッド層側の前記コア層を分割する工程と、を含む前記[2]に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の3次元高分子光導波路によれば、層毎にコア幅が異なる3次元構造の光導波路を簡単かつ安価に製造することが可能になる。
【0017】
請求項2の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、層毎にコア幅が異なる3次元構造の光導波路を簡単かつ安価に製造することが可能になる。
【0018】
請求項3の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、簡単な溝形成工程により3次元構造を得ることができる。
【0019】
請求項4の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、一方向からの溝加工によって層毎にコア幅が異なる3次元構造を得ることができる。
【0020】
請求項5の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、特別なブレードを用いなくても1回の切削により層毎にコア幅が異なる溝を形成することができる。
【0021】
請求項6の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、1回の切削により層毎にコア幅が異なる溝を形成することができる。
【0022】
請求項7の3次元高分子光導波路の製造方法によれば、深さの浅い溝加工によって層毎にコア幅が異なる3次元構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。
【0024】
(3次元高分子光導波路の構成)
3次元高分子光導波路100は、図1に示すように、クラッド1と、クラッド1内の下段側に設けられた第1のコア2A,2B及び第1のダミーコア3A,3B,3C,3Dと、クラッド1内の上段側に設けられた第2のコア4A,4B及び第2のダミーコア5A,5B,5C,5Dとを備えて構成されている。
【0025】
上段側の第2のコア4A,4B及び第2のダミーコア5A〜5Dは、下段側の第1のコア2A,2B及び第1のダミーコア3A〜3Dに対し、距離dを設けて配置されている。
【0026】
(3次元高分子光導波路の製造方法)
図2は、3次元高分子光導波路の製造方法の製造工程を示し、(a)は溝切削開始前の積層フィルムの断面図、(b)は溝形成中の積層フィルムの断面図、(c)は3次元高分子光導波路の断面図である。
【0027】
まず、図2(a)に示すように、下部クラッドとなる第1の層11と、第1の層11上に積層されて第1のコアとなる第2の層12と、第2の層12上に設けられて中間クラッドとなる第3の層13と、第3の層13上に設けられて第2のコアとなると共に第2の層12よりも薄い第4の層14と、第4の層14上に設けられて上部クラッドとなる第5の層15とを積層した積層フィルム10を作製する。なお、積層フィルム10の層構成は、5層に限らず、屈折率の大きい層と屈折率の小さい層が、交互に積層された7層以上であってもよい。
【0028】
上記積層フィルム10の作製方法に制限はなく、例えば、ディップ法、スピンコート法、デポジション法等があるが、簡便さとコスト、作製された層の平坦性、膜厚均一性の点からスピンコート法を採用することが望ましい。
【0029】
第1の層11、第3の層13及び第5の層15は、同一材料からなり、例えば、屈折率及び光透過性等の光学的特性、機械的強度、耐熱性、可撓性等を有するフィルム材を用いることができ、例えば、アクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート等)、脂環式アクリル樹脂、スチレン系樹脂(ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等)、オレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等)、脂環式オレフィン樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルブチラール系樹脂、アリレート系樹脂、含フッ素樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、アミド系樹脂(脂肪族、芳香族ポリアミド等)、イミド系樹脂、スルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂、またはこれらの混合物等がある。
【0030】
第2の層12及び第4の層14は、厚みは異なるが、同一材料からなり、例えば、紫外線硬化性又は熱硬化性のモノマー、オリゴマー若しくはモノマーとオリゴマーの混合物、エポキシ系、ポリイミド系、アクリル系の紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。
【0031】
次に、図2(b)に示すように、ブレード(ダイシングソー)16により、第5の層15側から、第5の層15、第4の層14、第3の層13、第2の層12を貫通し、更に第1の層11の一部に達する切削を横方向に5回施し、5つの切削溝17A,17B,17C,17Eを設ける。
【0032】
次に、図2(c)に示すように、切削溝17A〜17Eに第1の層11と同一の屈折率を有する未硬化状態のクラッド材18を充填し、ついで硬化させると、図1に示すクラッド1になる。また、第2の層12からクラッド1に囲まれた第1のコア2A,2Bと第1のダミーコア3A〜3Dが作製されると共に、第4の層14からクラッド1に囲まれた第2のコア4A,4B及び第2のダミーコア5A〜5Dが作製される。以上により、上下のコア間の距離が同一で、コアサイズ(コア幅、コア厚さ)が層ごとに異なる3次元高分子光導波路100が得られる。
【0033】
なお、図1及び図2において、第1,第2のコア2A,2B,4A,4Bと第1のダミーコア3A〜3D,5A〜5Dとは、同一の材料からなるので、例えば、第1,第2のダミーコア3B,3C,5B,5Cをコアとして用い、第1,第2のコア2A,2B,4A,4Bをダミーコアとすることもできる。
【0034】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B線の断面図である。
【0035】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、下段のコア列と上段のコア列のコア幅を不同にしたものであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。なお、本実施の形態においては、第1,第2のダミーコアを、第1の実施の形態より各1つ減らした第1,第2のダミーコア3A〜3C,5A〜5Cとしている。
【0036】
(3次元高分子光導波路の製造方法)
図4は、第2の実施の形態に係る3次元高分子光導波路の製造工程を示し、(a)は溝切削開始前の積層フィルムの断面図、(b)は溝形成を裏面側に施している状態の積層フィルムの断面図、(c)は3次元高分子光導波路の断面図である。まず、第1の実施の形態で説明したようにして、図2(a)に示す積層フィルム10を作製する。
【0037】
次に、積層フィルム10に対し、図4(a)に示すように、ブレード16により、第5の層15側から、第5の層15、第4の層14を貫通し、更に第3の層13の一部に達する切削を横方向に4回施し、4つの切削溝17A〜17Dを設ける。このとき、切削後に図3のように形成される第2のダミーコア5A〜5Cの幅が、第2のコア4A,4Bより狭くなるようにブレード16で切削する。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、切削された積層フィルム10を裏返しにする。そして、ブレード16により、第1の層11側から、表側とは異なるピッチで第1の層11、第2の層12を貫通し、更に第3の層13の一部に達する切削を横方向に4回施し、4つの切削溝19A,19B,19C,19Dを設ける。このとき、切削後に図3のように形成される第2のコア4A,4Bの幅が、第1のコア2A,2Bより狭くなるようにブレード16で切削する。
【0039】
次に、図4(c)に示すように、切削溝17A〜17D,19A〜19Dのそれぞれに未硬化状態のクラッド材18を充填し、その後に硬化させると、図3に示すクラッド1になる。また、第2の層12からクラッド1に囲まれた第1のコア2A,2B及び第1のダミーコア3A〜3Cが作製されると共に、第4の層14からクラッド1に囲まれた第2のコア4A,4B及び第2のダミーコア5A〜5Cが作製される。これにより、上下のコア間の距離が同一でコアサイズが層ごとに異なる3次元高分子光導波路100が得られる。
【0040】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示す斜視図である。
【0041】
本実施の形態は、第1の実施の形態において、第2のコア4A,4Bの幅を第1のコア2A,2Bの幅より小さくしたものであり、その他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0042】
(3次元高分子光導波路の製造方法)
図6は、切削溝の形成が完了した状態の積層フィルムを示す斜視図である。また、図7は、図6の積層フィルムを作製する工程を示し、(a)は切削溝の形成を開始した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は最後の切削溝を切削している状態を示す断面図である。
まず、第1の実施の形態で説明したようにして、図2(a)に示す積層フィルム10を作製する。
【0043】
次に、図7(a)に示すように、ブレード16により、積層フィルム10の第5の層15側から、第5の層15、第4の層14、第3の層13、第2の層12を貫通し、更に第1の層11の一部に達する切削を施し、第1のダミーコア3Aと第1のコア2Aとの間、及び第2のダミーコア5Aの側面に切削溝21aを形成する。
【0044】
次に、切削溝21aからブレード16を引き抜いて、図7(a)に示すように、ブレード16を破線位置上方へ移動させ、ブレード16を降下するこにより、第5の層15、第4の層14及び第3の層13の一部に達する切削を施し、第2のダミーコア5Aと第2のコア4Aとの間に切削溝21bを形成する。
【0045】
次に、ブレード16を引き抜いて、図7(b)の第2のコア4Aと第2のダミーコア5Bの間の位置へ移動した後、ブレード16を降下させ、第2のコア4Aと第2のダミーコア5Bの間に第5の層15及び第4の層14を貫通し、第3の層13の一部に達する深さの切削を施して2つ目の切削溝21bを形成すると共に、この切削に続いて第5の層15、第4の層14、第3の層13、第2の層12を貫通し、更に第1の層11の一部に達する深さの切削を施して2つ目の切削溝21aを形成する。
【0046】
次に、上記1つ目の切削溝21a,21bと同様の溝を、第1のダミーコア3Bと第1のコア2Bとの間及び第2のダミーコア5Bと第2のコア4Bとの間に、3つ目の切削溝21a,21bを形成する。更に、上記2つ目の切削溝21a,21bと同様の溝を、第2のコア4Bと第2のダミーコア5Cとの間及び第1のコア2Bと第1のダミーコア3Cとの間に4つ目の切削溝21a,21bを形成する。
【0047】
次に、図6、図7(b)に示す積層フィルム10の各切削溝21a,21b内に未硬化状態のクラッド材18を充填し、硬化させると、図5に示すクラッド1になる。また、第2の層12からクラッド1に囲まれた第1のコア2A,2Bと第1のダミーコア3A〜3Cが作製され、第4の層14からクラッド1に囲まれた第2のコア4A,4B及び第2のダミーコア5A〜5Cが作製される。以上により、コア間の距離が同一で、コアサイズ(コア幅、コア厚さ)が層ごとに異なる3次元高分子光導波路100が得られる。
【0048】
[第4の実施の形態]
図8は、本発明の第4の実施の形態に係る積層フィルム及びブレードを示し、(a)は切削溝の形成を途中まで完了した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は切削溝を切削するブレードの形状を示す斜視図である。
【0049】
本実施の形態は、第3の実施の形態において、図8(b)に示すように、直径が異なる2枚のブレード22,23を同軸にして一体に回転させることにより図8(a)に示すように、切削溝21aと切削溝21bを同時に切削することにより製造工程数の削減を図ったものであり、その他の構成は第3の実施の形態と同様である。
【0050】
なお、本実施の形態においては、第2のコア4Aと第2のダミーコア5Bの間、第2のコア4Bと第2のダミーコア5Cの間では、図8(a),(b)に示す順序でブレード22、ブレード23を配置して切削し、また、第2のコア4Aと第2のダミーコア5Aの間、第2のコア4Bと第2のダミーコア5Bの間では、ブレードの配置を左右入れ換えて切削する。
【0051】
[第5の実施の形態]
図9は、本発明の第5の実施の形態に係る積層フィルム及びブレードを示し、(a)は切削溝の形成を途中まで完了した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は切削溝を切削するブレードの形状を示す断面図である。
【0052】
本実施の形態において、切削溝21a,21bを形成後の積層フィルム10の構成は、第3及び第4の実施の形態と同様であるが、その製造方法に違いがある。すなわち、切削溝21a,21bを設けるに際し、図9(b)に示す段差を有する1枚のブレード24を用いて、図9(a)に示すように切削溝21a,21bを切削することにより製造工程の工程数を削減している。
【0053】
図10は、ブレード24の製造方法を示し、(a)は砥石の正面図、(b)はブレードの製造方法を示す図である。
【0054】
まず、図10(a)に示すように、幅及び深さが同一の4つの溝31A,31B,31C,31Dが一定間隔に設けられた砥石30を用意する。溝31A〜31Dは、ブレード24の原材料となるディスク状のブレード材32の厚みの1/2以上の幅を有し、深さはブレード材32の最大径部分の周面に砥石30が接触しない程度とする。
【0055】
次に、ブレード材32を用意し、これを図示しないモータの回転軸に装着する。ついで、図10(b)に示すように、ブレード材32の約1/2の幅が溝31Aに介在するようにブレード材32の外周面を位置決めする。
【0056】
次に、ブレード材32を回転させながら降下させ、ブレード材32の外周面の約1/2の幅を砥石30の溝31Aに接触させる。この状態のまま、必要とする全段差量hの約1/4までブレード材32を下降させると、溝31Aの内壁によってブレード材32の片側が、降下量に応じて切削される。
【0057】
次に、ブレード材32を上昇させて砥石30から引き離し、ついでブレード材32を溝31B上へ移動させ、溝31Aのときと同様にしてブレード材32を溝31B上に位置決めする。ついで、ブレード材32を回転させながら降下させ、必要とする全段差量hの約1/2まで切削する。
【0058】
以後、同様にしてブレード材32を溝31C,31Dへ順次移動させ、必要とする全段差量hの約1/4の切削を溝31C,31Dごとに追加する。最後に、ブレード材32を溝31Dから引き離すと、図9(b)のように段差hの付いたブレード24が完成する。
【実施例1】
【0059】
次に、本発明の実施例1について説明する。屈折率1.51で厚さが100μmのJSR社製「アートン(ARTON)フィルム」を第1の層11とし、この第1の層11上に屈折率1.53の紫外線硬化型樹脂を厚さが80μmとなるようにスピンコートして第2の層12とした。「アートンフィルム」は、耐熱性透明樹脂であるアートンをフィルム化したもので、高耐熱性、高透明性、低歪み、低吸水性及び密着性に優れた高耐熱透明フィルムである。
【0060】
次に、第2の層12上に上記した「アートンフィルム」を被せて第3の層13とし、この第3の層13上に屈折率1.53の紫外線硬化型樹脂を厚さが50μmとなるように設け、これに紫外線を照射して硬化させ、第4の層14とした。ついで、上記した「アートンフィルム」を被せて第5の層15とした。以上により、屈折率の大小が交互になるように積層された図2(a)に示す5層構造の積層フィルム10が得られる。
【0061】
次に、ダイシングブレードを用意し、このブレードを用いて、図4(a)に示すように、第2のコア4A,4Bの幅が40μmとなるように、第5の層15側から4つの溝17を積層フィルム10に形成した。
【0062】
次に、図4(b)に示すように、積層フィルム10を裏返しにし、第1のコア2A,2Bの幅が80μmとなるように、第1の層11側から第2の層12を貫通する4つの溝19A〜19Dを積層フィルム10に形成した。
【0063】
次に、屈折率1.51の紫外線硬化型樹脂を切削溝17A〜17D,19A〜19D内に充填し、ついで脱泡処理を施した。次に、充填した紫外線硬化型樹脂を紫外線照射によって硬化させた。
【0064】
最後に、ダイシングソーによって端面を整形し、図3に示すように、コア幅が層ごとに異なる3次元高分子光導波路100を完成させた。作製した3次元高分子光導波路100の伝搬損失を測定したところ、第1のコア2A,2B及び第2のコア4A,4B共に0.11dB/cmであった。
【0065】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず、その要旨を変更しない範囲内で種々な変形が可能である。例えば、各実施の形態間の構成要素の組み合せは任意に行うことができる。また、上記実施の形態においては、コアが2層からなる構成としたが、各実施の形態に示した積層フィルム10が複数層に積層された構成であってもよい。
【0066】
また、上記各実施の形態において、クラッド1の上面または下面に電気配線パターンを設けて導電線とすることにより、導電線付き3次元高分子導波路を構成することができる。導電線は、制御信号等の高速でない信号の伝送や電源の供給に利用される。
【0067】
この場合、図1、図3、図5のように3次元高分子導波路100を完成させた後に、電気配線パターンをクラッド1の上面または下面に設けてもよいし、例えば、図2(a)に示す積層フィルム10の段階で幅広の電気配線パターンを設け、図2(b)に示すように、切削溝17A〜17Eを設けるときにコア層(第2,第4の層12,14)と共に切削して複数の導電線を形成してもよい。
【0068】
また、切削溝17A〜17E,19A〜19Dは、ブレード16により1溝単位で切削するものとしたが、複数組のブレードを同一回転軸に装着して複数の溝を同時に切削するようにしてもよい。これは、ブレード22,23,24においても同様である。
【0069】
また、図2においては、切削溝17が第1の層11側から切削されていてもよい。更に、図4においては、切削溝17A〜17Eと切削溝19A〜19Dが入れ代わった構成であってもよい。また、図8及び図9においては、切削溝21a,21bが第1の層11側から切削されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線の断面図である。
【図2】図2は、3次元高分子光導波路の製造方法の製造工程を示し、(a)は溝切削開始前の積層フィルムの断面図、(b)は溝形成中の積層フィルムの断面図、(c)は3次元高分子光導波路の断面図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示し、(a)は斜視図、(b)は(a)のB−B線の断面図である。
【図4】図4は、第2の実施の形態に係る3次元高分子光導波路の製造工程を示し、(a)は溝切削開始前の積層フィルムの断面図、(b)は溝形成を裏面側に施している状態の積層フィルムの断面図、(c)は3次元高分子光導波路の断面図である。
【図5】図5は、本発明の第3の実施の形態に係る3次元高分子光導波路を示す斜視図である。
【図6】図6は、切削溝の形成が完了した状態の積層フィルムを示す斜視図である。
【図7】図7は、図6の積層フィルムを作製する工程を示し、(a)は切削溝の形成を開始した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は最後の切削溝を切削している状態を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第4の実施の形態に係る積層フィルム及びブレードを示し、(a)は切削溝の形成を途中まで完了した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は(a)の積層フィルムの切削溝を切削するブレードの形状を示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第5の実施の形態に係る積層フィルム及びブレードを示し、(a)は切削溝の形成を途中まで完了した状態の積層フィルムを示す断面図、(b)は(a)の積層フィルムの切削溝を切削するブレードの形状を示す断面図である。
【図10】図10は、本発明の第5の実施の形態におけるブレードの製造方法を示し、(a)は砥石の正面図、(b)はブレードの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0071】
1 クラッド
2A,2B 第1のコア
3A〜3D 第1のダミーコア
4A,4B 第2のコア
5A〜5D 第2のダミーコア
10 積層フィルム
11 第1の層
12 第2の層
13 第3の層
14 第4の層
15 第5の層
16 ブレード
17A〜17E,19A〜19D 切削溝
18 クラッド材
21a,21b 切削溝
22,23,24 ブレード
30 砥石
31A〜31D 溝
32 ブレード材
100 3次元高分子光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つ以上のクラッド層間にそれぞれコア層を配置し、これらを積層して形成された積層フィルムと、
最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記コア層を分割することにより形成され、層毎に異なるコア幅を有する光伝送用のコアと光伝送に使用されないダミーコアとを含む複数のコアと、
前記複数の溝に充填されたクラッド材と、
を備えたことを特徴とする3次元高分子光導波路。
【請求項2】
3つ以上のクラッド層間にそれぞれコア層を配置し、これらを積層して積層フィルムを作製する第1の工程と、
最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記コア層を分割することにより、層毎に異なるコア幅を有する光伝送用のコアと光伝送に使用されないダミーコアとを含む複数のコアを形成する第2の工程と、
前記複数の溝にクラッド材を充填する第3の工程と、
を含むことを特徴とする3次元高分子光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記第2の工程は、前記積層フィルムの片面から該片面より最も遠くに配置されたコア層まで同一幅で切削することにより前記複数の溝を設ける請求項2に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記第2の工程は、前記複数の溝を設けるに際し、前記コア層を1枚のブレードで異なる深さに複数回切削して1つの溝を形成する請求項2に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程は、直径の異なる2枚のブレードを重ねて前記複数の溝を形成する請求項2に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程は、半径方向に段差を有した1枚のブレードにより前記複数の溝を形成する請求項2に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程は、前記最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記最外層側の前記コア層を分割する工程と、
前記最外層の前記クラッド層とは反対側の最外層の前記クラッド層から厚さ方向に複数の溝を設けて前記反対側の最外層の前記クラッド層側の前記コア層を分割する工程と、
を含む請求項2に記載の3次元高分子光導波路の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−93092(P2009−93092A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265888(P2007−265888)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】