説明

3色入力信号のそれより多い色数への変換

【課題】3色入力信号を4色以上の出力信号に変換する改良された方法を提供する。
【解決手段】ディスプレイを駆動する方法は、各信号中の等しい量の組み合わせが正規化色信号(Rn、Gn、Bn)を生じる追加カラー原色のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように色入力信号(R、G、B)を正規化するステップと、正規化色信号(Rn、Gn、Bn)の関数F1である共通信号Sを計算するステップと、色信号(Rn’、Gn’、Bn’)を提供するため、共通信号Sの関数F2を計算しそれを各正規化色信号(Rn、Gn、Bn)に加算するステップと、各信号中の等しい量の組み合わせが4色出力信号のうち3つ(R’、G’、B’)を生じるディスプレイの白色点のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように(Rn’、Gn’、Bn’)を正規化するステップと、共通信号Sの関数F3を計算しそれを第4の色出力信号Wに割り当てるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4色以上の原色を有するカラーOLEDディスプレイ上で表示するための3色画像信号のカラー処理に関する。
【背景技術】
【0002】
加法混色デジタル画像ディスプレイ装置は周知であり、陰極線管、液晶変調器、及び有機発光ダイオード(OLED)のようなソリッドステート発光体といった多様な技術に基づいている。一般的なOLEDカラーディスプレイ装置では、ピクセルは赤色、緑色、及び青色のOLEDを含んでいる。これらの発光原色は色域を定義し、これらの3つのOLED各々からの照射を加法混色することによって、すなわち、人間の視覚系の統合的能力によって、多様な色を達成できる。電磁スペクトルの望ましい部分のエネルギーを放出するようドーピングした有機材料を使用したOLEDを使用することによって色を直接発生してもよく、また色フィルタによって広帯域発光(白色に見える)OLEDを減衰し赤色、緑色及び青色を達成してもよい。
【0003】
赤色、緑色、及び青色のOLEDと共に白色、またはほぼ白色のOLEDを利用して電力効率及び/または経時的な輝度安定性を改善することが可能である。電力効率及び/または経時的な輝度安定性を改善する他の可能性としては、1色以上の白色でない追加のOLEDを使用することがある。しかし、カラーディスプレイ装置上での表示を目的とする画像及び他のデータは通常、標準(例えば、sRGB)または固有(例えば、測定されたCRT蛍光体)の原色の組み合わせに対応する3つの信号を有する3つのチャネルで格納及び/または伝送される。また、このデータは通常、発光素子の特定の空間的配置を想定してサンプリングされていることを認識することも重要である。OLEDディスプレイ装置では、こうした発光素子は通常平面上に並んで配置されている。従って、3色のディスプレイ装置上で表示するため入力画像データをサンプリングする場合、3チャネルディスプレイ装置で使用される3つのOLEDではなくピクセル毎に4つのOLEDを有するディスプレイ上で表示するためリサンプリングしなければならない。
【0004】
CMYK印刷の分野では、RGBからCMYK、また特にCMYからCMYKへの下色除去またはグレー成分置換として知られる変換を行う。その最も基本的な形態では、こうした変換はCMY値のある小部分を減算しその量をK値に加算する。画像構造は通常不連続色調系を含むという制限のためこうした方法は複雑であるが、減色CMYK画像の白色を印刷対象の基板によって決定するため、こうした方法はカラー処理に関して依然として比較的簡単である。同様のアルゴリズムを連続色調加法混色システムに適用しようとする場合、追加原色の色がディスプレイシステムの白色点と異なっているとエラーが生じる。さらに、こうしたシステムで使用する色は通常頂点で重なり合っているので、4つの色を表示する時データを空間的にリサンプリングする必要はない。
【0005】
順次フィールドカラー投影系の分野では、赤色、緑色、及び青色原色と組み合わせて白色原色を使用することが知られている。白色は赤色、緑色、及び青色原色が提供する輝度を増大するため投影し、投影される色の全てではないにせよ一部の彩度を本質的に低減する。2002年9月17日発行のモルガン(Morgan)他によって米国特許第6,453,067号で提案された方法は、赤色、緑色、及び青色の強度の最小値に依存して白色原色の強度を計算し、その後基準化によって修正した赤色、緑色、及び青色の強度を計算するアプローチを教示する。基準化は白色によって提供される明度加算の結果生じるカラーエラーを直示的に訂正しようとするが、基準化による単純な訂正では、全ての色について、白色の加算の際失われた彩度の全てを復元できない。この方法では減算ステップがないため、少なくとも一部の色ではカラーエラーが確実に発生する。さらに、モルガンの開示は、白色原色の色がディスプレイ装置の望ましい白色点と異なる場合発生する問題が十分に解決されていないことを記載している。この方法は平均有効白色点を単純に受け入れるが、これは白色原色の選択を装置の白色点付近の狭い範囲に事実上制限している。赤色、緑色、青色、及び白色素子を互いに空間的に重なり合うように投影するので、4色装置上で表示するためデータを空間的にリサンプリングする必要はない。
【0006】
赤色、緑色、青色、及び白色ピクセルを有するカラー液晶ディスプレイを駆動する同様のアプローチをリー(Lee)他が記載している(SID2003参考文献)。リー他は、高度な輝度向上を目的として、赤色、緑色、及び青色信号の最小値として白色信号を計算してから、赤色、緑色、及び青色信号を基準化してカラーエラーの全てではないが一部を訂正する。リー他の方法は、モルガンと同じ色の不正確さという欠点を有しており、入力された3色データを赤色、緑色、青色及び白色の素子の配列に空間的にリサンプリングすることについては言及していない。
【0007】
強誘電性液晶ディスプレイの分野では、1999年7月27日発行の米国特許第5,929,843号で谷岡が別の方法を提示している。谷岡の方法は周知のCMYKアプローチと類似のアルゴリズムを採用しており、R、G、及びB信号の最小値をW信号に割り当て、それを各R、G、及びB信号から減算する。空間的人為結果を回避するため、本方法は、可変換算係数を最小信号に適用することを教示しており、その結果低輝度レベルでよりスムースな色が得られる。CMYKアルゴリズムと同様であるため、本方法は上記で言及したのと同じ、すなわちディスプレイの白色点と異なる色を有する白色ピクセルがカラーエラーを発生するという欠点を有する。モルガン他(上記の米国特許第6,453,067号)と同様、カラー素子は通常互いに空間的に重なり合うように投影するので、データの空間的リサンプリングは必要ない。
【0008】
OLEDディスプレイ装置の光発生及び変調の物理は、印刷で使用する装置、フィールド順次カラー投影の分野で通常使用するディスプレイ装置、及び液晶ディスプレイの物理とは大きく異なっていることに注意されたい。この相違は3色入力信号を変換する方法に対して異なった制約を課すことになる。こうした相違の中には、OLEDベースでOLED上の光源をオフにするOLEDディスプレイ装置の能力がある。これは、通常一定のレベルを維持する広い範囲の光源から放出される光を変調するフィールド順次ディスプレイ装置及び液晶ディスプレイで使用される装置と異なっている。さらに、OLEDディスプレイ装置の分野では、駆動電流密度が高いとOLEDの寿命が短くなることが周知である。この効果は上記の分野で適用される装置にはない特徴である。
【0009】
先行技術では、各可視空間的位置でフルカラーデータを提供する積層型OLEDディスプレイ装置を論じているが、OLEDディスプレイ装置は一般に単一平面上に配置した多数の色のOLEDから構成する。ディスプレイが異なる空間的位置を有するカラー発光素子を提供する場合、空間的配置のためデータをサンプリングすることが周知である。例えば、ベンツショーウェル(Benzschawel)他に対して1994年8月23日に発行された米国特許第5,341,153号は、異なる色の発光素子が異なる空間的位置を有する低解像度液晶ディスプレイ上で高解像度カラー画像を表示する方法を論じている。この方法を使用して、サブピクセルレンダリングを提供するフォーマットにデータをサンプリングする際、各発光素子のための信号を生じるようサンプリングする原画像の空間的位置と範囲を検討する。この特許は異なる4色の発光素子を有するディスプレイ装置のためのデータのサンプリングを提供することを論じてはいるが、従来の3色画像信号を、異なる4色の発光素子を有するディスプレイ装置での表示に適した画像信号に変換する方法を提供していない。さらに、ベンツショーウェル他は、入力データはディスプレイより高解像度の画像ファイルから作成され全てのピクセル位置の全ての色の発光素子のための情報を含んでいると想定している。
【0010】
また、先行技術は、発光素子の1つの目的とする空間的配置から発光素子の第2の空間的配置に画像データをリサンプリングする方法を含んでいる。2003年2月20日発行のブラウン・エリオット(Brown Elliott)他による米国特許出願第2003/0034992A1号は、3色を有する発光素子の少なくとも1つの空間的配置を有するディスプレイ装置上で表示することを目的とするデータを3色の発光素子の異なる空間的配置を有するディスプレイ装置にリサンプリングする方法を論じている。特に、この特許出願は、従来の配置の発光素子を備えたディスプレイ装置上で表示することを目的とする3色データを、代替配置の発光素子を備えたディスプレイ装置上で表示することを目的とする3色データにリサンプリングすることを論じている。しかし、この出願は、4色以上の装置上で表示するためのデータの変換を論じていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、画像または他のデータを伝える3色入力信号を4色以上の出力信号に変換する改良された方法に対する必要が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この必要は、3つの色域を定義するカラー原色に対応する3色入力信号(R、G、B)を色域を定義するカラー原色とWと異なる白色点を有するディスプレイを駆動する1つの追加原色Wとに対応する4色出力信号(R’、G’、B’、W)に変換する方法であって、各信号中の等しい量の組み合わせが正規化カラー信号(Rn、Gn、Bn)を生じる追加カラー原色のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように色入力信号(R、G、B)を正規化するステップと、正規化3色信号(Rn、Gn、Bn)の関数F1である共通信号Sを計算するステップと、3色信号(Rn’、Gn’、Bn’)を提供するため、共通信号Sの関数F2を計算しそれを各正規化3色信号(Rn、Gn、Bn)に加算するステップと、各信号中の等しい量の組み合わせが4色出力信号のうち3つ(R’、G’、B’)を生じるディスプレイの白色点のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように3色信号(Rn’、Gn’、Bn’)を正規化するステップと、共通信号Sの関数F3を計算しそれを4色出力信号Wに割り当てるステップとを含む方法を提供することによって本発明により満足される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、追加のOLEDがディスプレイの白色点にない時ディスプレイシステムの色精度を保持する変換を提供する利点を有する。さらに、本発明の1つの態様によれば、この変換はOLEDディスプレイ装置の寿命を保持するマッピングの最適化を可能にする。また、この変換は、データをOLEDの望ましい空間的配置に空間的にリフォーマットする方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、画像または他のデータを伝える3色入力信号を、4色以上の原色を有する追加ディスプレイ上で表示するための4以上の色出力信号に変換する方法に向けられる。本発明は、例えば、標準3色RGB入力カラー画像信号を、各々4色のうち1色の光を放出する発光素子から構成したピクセルを有する4色OLEDディスプレイ装置を駆動する4色信号に変換するため有用である。
【0015】
図1は、4色OLEDディスプレイ装置の原色の仮想表示を示す1931CIE色度図である。赤原色2、緑原色4、及び青原色6は、三角形8を境界とする色域を定義する。追加原色10は、この例では図の中心近くにあるためほぼ白色であるが、必ずしもディスプレイの白色点ではない。代替追加原色12を色域8の外に示すが、その使用は後で説明する。
【0016】
所与のディスプレイ装置は、一般に当業技術分野で周知の方法を通じてハードウェアまたはソフトウェアによって調整可能であるが、この例の目的で固定した白色点を有する。白色点は、アドレス可能な最大範囲まで駆動された3つの原色、この例では赤色、緑色、及び青色の原色の組み合わせの結果得られる色である。白色点は、一般にxyY値と呼ばれる色度座標及び輝度によって定義され、これは以下の式によってCIE XYZ三刺激値に変換すればよい。
【0017】
【数1】

【0018】
3つの色度値が全て輝度Yによって基準化されていることに注意すると、XYZ三刺激値は、最も厳密な意味で、cd/m2といった、輝度の単位を有することが明らかである。しかし、白色点輝度は、値が100の無次元量に正規化することが多く、事実上パーセント輝度となる。ここで、「輝度」という用語は常にパーセント輝度を指すために使用し、XYZ三刺激値も同じ意味で使用する。すなわち、xy色度値が(0.3127,0.3290)であるD65の一般的なディスプレイの白色点は(95.0,100.0,108.9)のXYZ三刺激値を有する。
【0019】
ディスプレイの白色点と、この例では赤色、緑色、及び青色原色であるディスプレイの三原色は共に蛍光体マトリックスを指定するが、その計算は当業技術分野で周知である。また、「蛍光体マトリックス」という俗称は歴史的に発光蛍光体を使用するCRTディスプレイに関するものであるが、物理的蛍光材料の有無に関わらずより一般的にディスプレイの数学的記述において使用してもよい。蛍光体マトリックスは強度をXYZ三刺激値に変換し、ディスプレイである加法混色システムを有効にモデル化し、その逆に、XYZ三刺激値を強度に変換する。
【0020】
原色の強度はここでは、その原色の輝度に比例する値として定義し、各3原色の単位強度の組み合わせがディスプレイの白色点に等しいXYZ三刺激値を有するカラー刺激を生じるように基準化する。また、この定義は蛍光体マトリックスの項の基準化をも制約する。それぞれ(0.637,03592)、(0.2690,0.6508)、及び(0.1441,0.1885)の赤色、緑色、及び青色原色の色度座標とD65の白色点とを備えたOLEDディスプレイの例は、蛍光体マトリックスM3を有する。
【0021】
【数2】

【0022】
蛍光体マトリックスM3に列ベクトルとして強度を乗算すると、次式のようにXYZ三刺激値が得られる。
【0023】
【数3】

【0024】
ここで、I1は赤原色の強度であり、I2は緑原色の強度であり、I3は青原色の強度である。
【0025】
蛍光体マトリックスは通常線形マトリックス変換であるが、蛍光体マトリックス変換の概念は、強度からXYZ三刺激値を導出する、またはその逆の任意の変換または一連の変換に一般化してもよいことに注意されたい。
【0026】
また、蛍光体マトリックスは3色より多い原色を処理するよう一般化してもよい。現在の例は、白色に近いがD65白色点にはないxy色度座標(0.3405,0.3530)を備えた追加原色を含む。輝度が100になるように任意に選択すると、追加原色は(96.5,100.0,86.8)のXYZ三刺激値を有する。これらの3つの値を修正せずに蛍光体マトリックスM3に追加すると第4の列が得られるが、便宜上、XYZ三刺激値は赤色、緑色、及び青色原色によって定義される色域内で可能な最大値に基準化する。蛍光体マトリックスM4は次式の通りである。
【0027】
【数4】

【0028】
前に示したものと同様の式によって、赤色、緑色、青色及び追加原色に対応する強度の4値ベクトルを、それらの組み合わせがディスプレイ装置中で有するXYZ三刺激値に変換することが可能になる。
【0029】
【数5】

【0030】
一般に、蛍光体マトリックスの値はその反転にあるが、これはXYZ三刺激値における色の仕様を考慮しディスプレイ装置上に色を生じるために必要な強度に帰結する。もちろん、色域は表示が可能な色の範囲を制限し、色域外のXYZ三刺激仕様は範囲[0,1]の強度に帰結する。周知の色域マッピング技術を応用してこの状況を回避してもよいが、この技術の使用は本発明の本題から離れるので論じない。反転は3×3蛍光体マトリックスM3の場合単純であるが、3×4蛍光体マトリックスM4の場合一意に定義されない。本発明は、3×4蛍光体マトリックスの反転を必要とせず、強度値を4つの原色チャネル全てに割り当てる方法を提供する。
【0031】
本発明の方法は、3つの色域を定義する原色、この例では赤色、緑色、及び青色原色の強度についてのカラー信号から開始する。これは、上記で説明した蛍光体マトリックスM3の反転によってか、または、線形または非線形的に符号化されたRGB、YCC、または他の3チャネルカラー信号を、色域を定義する原色及びディスプレイの白色点に対応する強度に変換する周知の方法によって、XYZ3刺激値仕様から到達する。
【0032】
図2は、本発明の方法の一般的なステップの流れ図である。3色入力信号(R、G、B)22をまず追加原色Wを基準にして正規化24する。OLEDの例に従って、各原色の単位強度の組み合わせが追加原色Wのものに等しいXYZ三刺激値を有する色刺激を生じるように、赤色、緑色、及び青色原色を正規化する。これは、列ベクトルによって示すように、色域を定義する原色によって追加原色の色を生じるために必要な強度の反転によって赤色、緑色、及び青色の強度を基準化することによって達成する。
【0033】
【数6】

【0034】
正規化した信号(Rn、Gn、Bn)26を使用して、関数F1(Rn、Gn、Bn)である共通信号Sを計算する。この例では、関数F1は、3つのうち負でない最小の信号を選択する特殊な最小関数である。共通信号Sを使用して関数F2(S)の値を計算30する。この例では、関数F2は次式の算術反転を提供する。
F2(S) = −S
【0035】
関数F2の出力を正規化した色信号(Rn、Gn、Bn)に加算32して、元の原色チャネルに対応する正規化した出力信号(Rn’、Gn’、Bn’)34を得る。色域を定義する原色を使用して追加原色の色を再生するために必要な強度を基準化することによってこうした信号をディスプレイの白色点に対して正規化36し、入力カラーチャネルに対応する出力信号(R’、G’、B’)を得る。
【0036】
【数7】

【0037】
共通信号Sを使用して関数F3(S)の値を計算40する。単純な4色OLEDの例では、関数F3は単純な恒等関数である。関数F3の出力を出力信号W42に割り当てるが、これは追加原色Wのための色信号である。この例の4カラー出力信号は強度であり、4値ベクトル(R’、G’、B’、W)、または一般に(I1’、I2’、I3’、I4’)に結合してもよい。3×4蛍光体マトリックスM4にこのベクトルを乗算し、ディスプレイ装置によって生じるXYZ三刺激値を示す。
【0038】
【数8】

【0039】
この例のように、関数F1が負でない最小信号を選択する場合、関数F2及びF3の選択によって色域内カラーの色再生の精度を決定する。F2及びF3がどちらも線形関数であり、F2が負の傾斜を有しF3が正の傾斜を有する場合、その効果は赤色、緑色、及び青色原色からの強度の減算と、追加原色への強度の追加である。さらに、線形関数F2及びF3の傾斜が、大きさが等しく正負が反対である場合、赤色、緑色、及び青色原色から減算した強度は追加原色に割り当てた強度に完全に対応するので、正確な色再生が保持され、3カラーシステムと同一の輝度を提供する。
【0040】
また、F3の傾斜の大きさがF2の傾斜より大きい場合、システムの輝度は増大し色精度は劣化し、彩度が減少する。また、F3の傾斜の大きさがF2の傾斜より小さい場合、システムの輝度は減少し色精度は劣化し、彩度が増大する。関数F2及びF3が非線形関数である場合、F2が減少関数でF2及びF3が独立軸について対称であるならば、色精度は保持される。
【0041】
こうした何れの状況においても、関数F2及びF3の設計は色入力信号が表す色に応じて多様なものであってよい。例えば、関数は輝度の増大または彩度の減少に伴って急峻になってもよく、また色入力信号(R、G、B)の色相を基準として変更してもよい。色域を定義する原色に対する追加原色の利用レベルが異なる色精度を提供する関数F2及びF3の多くの組み合わせが存在する。さらに、色精度を犠牲にして輝度を優先する関数F2及びF3の組み合わせが存在する。ディスプレイ装置の設計または使用におけるこうした関数の選択はその使用目的及び仕様に依存する。例えば、1つまたはそれより多い色域を定義する原色より高い電力効率を有する追加原色を最大限に利用すれば、携帯型OLEDディスプレイ装置は電力効率と、ひいては電池寿命の面で、大きな利益を得る。こうしたディスプレイをデジタルカメラまたは他の撮像装置と共に使用する場合はカラー精度も要求されるが、本発明の方法はその両方を提供する。
【0042】
本発明が提供する正規化ステップは、追加原色の色に関わらず、ディスプレイ装置の色域内の色の正確な再生を可能にする。追加原色の色がディスプレイの白色点と正確に同じである固有の場合には、こうした正規化ステップは恒等関数に簡略化され、本方法は単純な白色点の置換と同じ結果を生じる。他の何らかの場合、正規化ステップを無視することによって導入されるカラーエラーの量は追加原色とディスプレイの白色点との間の色の差に大きく依存する。
【0043】
色域を定義する原色が定義する色域外の追加原色を有するディスプレイ装置で表示するための色信号の変換の際正規化は特に有用である。図1に戻ると、色域8外の追加原色12を示す。これは色域外にあるため、赤色、緑色、及び青色原色を使用してその色を再生するには範囲[0,1]を越える強度が必要となる。物理的に実現不可能であるが、こうした値を計算で使用してもよい。追加原色の色度座標が(0.4050,0.1600)である場合、緑色原色が必要とする強度は負であるが、前に示したのと同じ関係を使用して強度を正規化すればよい。
【0044】
【数9】

【0045】
赤色、緑色、及び青色原色の色域外、特に、赤と青の色域境界と追加原色との間の色は、緑色原色の負の強度と赤色及び青色原色の正の強度とを必要とする。この正規化の後、赤色及び青色値は負であり、緑色値は正である。関数F1は負でない最小値として緑色を選択し、緑色を追加原色からの強度によって部分的または全体的に置換する。追加原色の強度を計算した後正規化を取り消すことによって負号を除去する。
【0046】
【数10】

【0047】
正規化ステップは色精度を保持するので、白色、白色に近い色、または何らかの他の色を加法混色ディスプレイの追加原色として使用できるようにする。OLEDディスプレイでは、第2の青色、第2の緑色、第2の赤色、またさらには黄色または紫色といった色域を拡張する発光体の使用と同様、ディスプレイの白色点に近いが同じではない白色発光体の使用が非常に実現可能である。
【0048】
計算において、強度の近似値である信号を使用することによって費用または処理時間の節約を実現してもよい。ビット深度の使用を最大化し、また目的とするディスプレイ装置の特性曲線(例えばガンマ)を考慮するため、画像信号を非線形的に符号化することが多いのは周知である。装置の白色点で1に正規化されるものとして前に強度を定義したが、本方法の線形関数によれば、コード値255、ピーク電圧、ピーク電流、または各原色の輝度出力に線形的に関連する何らかの他の量に輝度を正規化することが可能でありカラーエラーを生じないことが明らかである。
【0049】
ガンマ補正コード値のような非線形的に関連する量を使用して強度を近似するとカラーエラーが生じる。しかし、線形性からの偏差と関係のどの部分を使用するかに応じて、エラーは時間または費用の節約を考慮すれば許容可能な程度に小さくなることもある。例えば、図3は、コード値に対する非線形強度の応答を例示する、OLEDについての特性曲線を示す。曲線は膝52を有し、それより上の部分はそれより下の部分より外見上より直線的である。コード値を使用して強度を近似するのは恐らく悪い選択であるが、図示される膝52を使用するため、コード値から定数(図3に示す例の場合約175)を減算するとよりよい近似が得られる。図2に示す方法に提供した信号(R、G、B)を以下のように計算する。
【0050】
【数11】

【0051】
図2に示す方法が完了した後以下のステップを使用してこのシフトを除去する。
【0052】
【数12】

【0053】
この近似はルックアップ演算を単純な加算によって置換するため、処理時間またはハードウェアの費用の節約になることがある。
【0054】
本発明を利用して3色入力信号を4以上の色出力信号に変換するには、図2に示す方法を連続して適用する必要がある。本方法を連続して適用する毎に1つの追加原色についての信号を計算し、計算の順序は原色について指定される優先順位の逆によって決定する。例えば、それぞれ(0.637,0.3592)、(0.2690,0.6508)、及び(0.1441,0.1885)の色度を有するすでに論じた赤色、緑色、及び青色の原色プラス、1つが色度(0.3405,0.3530)を有する薄い黄色でありもう1つが色度(0.2980,0.3105)を有する薄い青色である2つの追加原色を有するOLEDディスプレイ装置を考察する。これらの追加原色はそれぞれ黄色及び薄青色と呼ぶ。
【0055】
追加原色に優先順位を付ける場合、発光体の経時的な輝度安定性、電力効率、または他の特性を考慮してもよい。この場合、黄色原色は薄青色原色より電力効率が大きいので、計算の順序は薄青色を先に計算し、その後黄色を計算する。一旦赤色、緑色、青色、及び薄青色の強度を計算したら、1つを放置して残りの3つの信号を4つに変換する方法を実行しなければならない。放置する値の選択は任意でよいが、関数F1によって計算した最小値の元になる信号が最良の選択である。その信号が緑色の強度だった場合、本方法は、赤色、青色、及び薄青色の強度に基づいて黄色の強度を計算する。最後に5つを全て集めて表示のための赤色、緑色、青色、薄青色、及び黄色の強度とする。3×蛍光抗体マトリックスを作成してディスプレイ装置でそれらの組み合わせをモデル化すればよい。この技術は、3色入力信号から出発して任意の数の追加原色のための信号を計算するように容易に拡張可能である。
【0056】
図2で説明した方法をさらに修正してRGBからR’G’B’Wへの変換を最適化しOLEDディスプレイ装置の物理的制約にさらによく適合するようにしてもよい。著者が行った数学的シミュレーションが示すところによれば、白色OLEDの色度座標がディスプレイの白色点の色度座標に近い場合、RGB OLEDと同じ寸法の白色OLEDの寿命はRGB OLEDの寿命より大幅に短くなることがある。例えば、デジタルカメラの背面で使用するように設計した通常のディスプレイでは、ある条件下で、赤色、緑色、及び青色OLEDの計画寿命は白色OLEDの計画寿命の2倍より大きい。ディスプレイ装置の寿命は最も寿命の短いOLEDによって制限されるので、4つの原色を発生するために使用する4つのOLEDの寿命の間によりよいバランスを提供することが重要である。
【0057】
OLEDの寿命はOLEDを駆動するために使用する電流密度に大きく依存し、電流密度が高ければ寿命が大幅に短くなることは周知である。図4は、電流密度の関数としてOLEDの寿命の曲線を示す。さらに、ディスプレイにおける電流密度はOLEDを駆動するために使用する電流に比例し、電流は発生する輝度に比例することが知られている。従って、何れかのOLEDを何れかの高い強度で使用するのを回避することによって、OLEDの寿命を増大することができる。
【0058】
図2に示すアルゴリズムは、一般にR、G、Bの強度を低減し、Wチャネルの強度を増大する。このため赤色、緑色、及び青色OLEDの寿命は増大するが、生成しようとする色度座標が白色OLEDの色度座標に近い場合白色OLEDの高い強度が生じる。Wを高い強度で使用するのを回避するため、F2及びF3を、Sの値が高い時、F2及びF3がSが低い時より小さい絶対値を生じるような非線形関数として定義してもよい。こうした関数は数学的に記述してもよくまたルックアップテーブルを通じて記述してもよい。好適なルックアップテーブルはF2に対して−S及びF3に対してSを提供するが、Sの値があるしきい値より大きい時それぞれ−S及びSの小部分を提供するものである。小部分とSのカットオフ値を適切に選択することによって、色精度を損なわずにWの最大強度を選択できる。目的とする適用業務で、白色OLEDの寿命が赤色、緑色、及び青色OLEDの寿命と同等になるようにWの強度の最大値を選択すればよい。
【0059】
また、白色OLEDの色度座標がディスプレイの白色点の色度座標に近い場合、RGB信号の正規化ステップ24及び36も必要ないことがあるのに注意されたい。また、RGB強度を白色原色に正規化24してもよいが、これらの値はディスプレイの白色点に正規化36しなくてもよい。
【0060】
本発明の方法は、入力データをOLEDディスプレイ装置上のOLEDのRGBWパターンに空間的にリサンプリングする画像処理方法の文脈で実現してもよい。こうした方法では、上記で説明した方法のような方法を使用して3色入力信号を通常4つ(またはそれより多い)色信号に変換する。そしてリサンプリングを行い、4つまたはそれより多いカラーディスプレイ装置内のOLEDの適切な強度を決定する。このリサンプリング処理は、サンプリング範囲、サンプリング位置、及び目的とする各OLEDの寸法といった関連するディスプレイの属性を考慮してもよい。
【0061】
この処理はさらに、入力データに対して目的とするRGBディスプレイフォーマットを決定するステップを含んでもよい。このステップが、画像データはすでにOLEDの特定の空間的配置を有するディスプレイ装置用にサンプリングされていると決定した場合、予備リサンプリングを行って、ピクセル内の同じ空間的位置を表す3色入力信号を生じてもよい。この予備ステップによって、その後の3色から4色へのカラー変換を通じてディスプレイ装置上の各空間的位置で4つのカラー値を決定することが可能になる。
【0062】
3カラー信号のリサンプリングと変換のために使用し得る処理を図5に示す。処理は線形強度の3色入力信号を受信60する。空間的にサンプリングされた入力信号のサンプルフォーマットを決定62する。一旦サンプルフォーマットを決定したら、3色入力信号が、異なる空間的位置を有するOLED用にレンダリングされているかを決定64する。データが異なる空間的位置を有する発光素子用にレンダリングされている場合、各サンプリング位置で3色情報を有するデータを必要に応じてリサンプリングする66ステップを行い、3色入力信号で表される各空間的位置でのカラー値、最終ディスプレイ上の各空間的位置でのカラー値、または他の空間的位置でのカラー値を生じてもよい。
【0063】
そして、図2に示し前に論じたような方法を使用して3色信号を変換68し、4またはそれより多い色信号を形成する。リサンプリングがステップ66で完了していない場合、4またはそれより多いカラー出力信号を4つまたはそれより多いカラーディスプレイ装置の空間的パターンにリサンプリング70する。こうした基本的ステップは3〜4またはそれより多いカラー空間補間処理に適用してもよいが、入力信号を決定しデータをリサンプリングするステップは、様々なレベルの複雑さを含むいくつかの方法を通じて達成してもよい。こうした各ステップを以下詳述する。
【0064】
入力信号の決定
3色入力信号を対応する色域を定義するカラー原色及び1つの追加原色に適切に変換するためには、空間的に重なり合う入力信号(すなわち、各空間的位置で3色入力信号を提供する信号)が望ましい。しかし、3色信号の空間的補間は当業技術分野で周知なので、入力信号はすでに特定の空間的配置の発光素子を備えたディスプレイ装置用にサンプリングされている。例えば、入力信号は、ディスプレイ装置80が、縞状パターンに配置した赤色84、緑色86、及び青色88のOLEDの共通配置から構成したピクセル82を有する、図6に示すディスプレイ装置用に空間的にサンプリングされていてもよい。すなわち、MSウィンドウズ(登録商標)2000のようなコンピュータオペレーティングシステムの通常のレンダリングルーチンで、縞状パターンを備えたディスプレイ装置上で表示する目的で情報をレンダリングしてもよい。
【0065】
空間的にサンプリングした入力信号のフォーマットを決定するため、メタデータフラグまたは信号分析を通じて目的とするデータフォーマットを通信することを含む多数の手段を利用してもよい。メタデータを使用してこの決定を行うため、1つまたはそれより多いデータフィールドは、ディスプレイ装置上の発光素子の目的とする配置を示す3色入力信号を備えてもよい。
【0066】
また、入力信号を分析してデータ中の何らかの空間的オフセットを決定してもよい。こうした分析を行うためには、リサンプリングが3色入力信号に適用されているかを示す入力信号の特徴を決定することが重要である。この分析を行う1つの方法を図7に示す。この方法によって、リサンプリングしていないカラー入力信号、リサンプリングしたカラー入力信号を含む異なる3色入力信号の自動微分を図6aに示すような縞状パターン上に表示し、リサンプリングしたカラー入力信号を図6bに示すようなデルタパターン上に表示することが可能になる。こうしたパターンをこの例に含めたのはこうした空間的配置がディスプレイ産業で一般的に利用される配置だからである。しかし、色入力信号が代替的なパターンにリサンプリングされているかを決定するようにこの方法を拡張してもよいことを当業者は認識するだろう。
【0067】
図7に示すように、各3色入力信号についてエッジ強調を行う90。図6aに示す縞状パターンのようなOLED配置は互いに水平方向にオフセットしたOLEDからなるので、水平エッジ強調ルーチンを画像信号に適用する。以下の式を使用し各水平位置i及び垂直位置jの値を計算することによってこうしたデジタルエッジ強調アルゴリズムの1つを適用する。
i,j,c = Vi,j,c − V(i+1,j,c) 式1
ここで、Ei,j,cは色信号cの水平位置に対して強調した値であり、Vi,j,cは色cの位置i,jに対する入力値であり、V(i+1,j,c)は色cの位置i+1,jに対する入力値である。
【0068】
そして、各3エッジ強調色入力信号でのエッジピクセルを決定92する。エッジピクセルを決定する一般的な技術はしきい値を強調した値に適用することである。適当なしきい値より高い値を備えた位置をエッジピクセルとみなす。しきい値は、各3エッジ強調色信号について同じものでも異なるものでもよい。
【0069】
そして、3色チャネル全ての信号を備えた1つまたはそれより多いエッジ位置を特定94する。こうしたエッジ位置は、しきい値より大きい値が全てピクセルのサイズによって決定されたサンプリングウィンドウ内で発生する強調ピクセルを含む空間的位置を決定することによって発見してもよい。
【0070】
そして、エッジ特性の位置を決定96する。適当なエッジ特性は、例えば、各エッジの半分の高さの空間的位置でもよい。エッジの半分の高さを計算するため、2次多項式またはシグモイド関数のような輪郭をエッジピクセル位置の3〜5ピクセル以内の元のデータに適合すればよい。そして、最大振幅の半分の位置の関数上の点を決定し、この値の空間的位置をエッジ特性の位置として決定する。このステップは各3色入力信号について別々に完了する。
【0071】
3色信号のエッジの特性の空間的位置を比較98してもよく、各エッジ特性の整合の度合を分析する。しかし、こうした位置は正確でないことがあるので、各色信号内のいくつかのエッジについてピクセルエッジの空間的位置に対する相対空間的位置を決定し、各色入力信号内で特定した全てのエッジ位置を平均100する。
【0072】
各色のエッジ特性の平均相対的位置を他の色のエッジ特性の平均相対的位置と比較102する。3つの色のこうしたエッジ特性のうち少なくとも2つがOLEDの幅より大きく不整合となっている場合、以前に空間的リサンプリングステップが行われたこと強く示している。この比較を通じて、空間的リサンプリングが適用されているかを決定104する。3つのエッジ特性が全て不整合になっている場合、信号は、図6aに示すような全てのエネルギーを1つの次元に有する発光素子のパターンに補間されている。1つの行の2つの色のエッジ特性が隣接する行の1つまたはそれより多い色のエッジ特性と同じ空間的位置で発生する場合、信号は、図6bに示すデルタパターンの場合のように、2つの行にわたる発光素子のパターンに補間されている。この比較を通じて、ディスプレイ中の発光素子の想定される空間的配置を決定106する。
【0073】
リサンプリング
リサンプリングは、図6a及び図6bに示すような先行技術の縞状パターンまたはデルタパターン上で表示することを目的としたフォーマットからカラー信号が空間的位置毎の値を表すフォーマットにデータをリサンプリングするために行ってもよく、また空間的位置毎のカラー信号を備えたフォーマットから、図8aに示す縞状パターンまたは図8bに示すクアドパターンといった白色サブピクセルを含むパターンにデータをリサンプリングするために行ってもよい。各図に示すように、ディスプレイ装置110は、赤色114、緑色116、青色118及び白色120のOLEDを有するピクセル112から構成される。
【0074】
様々なリサンプリング技術は当業技術分野で周知であり、上記で援用した米国特許出願第2003/0034992A1号、及びクロンペンハウワー(Klompenhouwer)他、「カラーマトリックスディスプレイのためのサブピクセル画像基準化(Subpixel Image Scaling for Color Matrix Displays)」、SID02摘要、176〜179ページを含む他の文献に記載されている。こうした技術は一般に同じ基本的ステップを含む。リサンプリングを行うため、単一カラー信号(例えば、赤色、緑色、青色、または白色)を選択130する。入力信号のサンプリング格子(すなわち、各サンプルの位置)を決定132する。そして、望ましいサンプリング格子134を決定する。望ましいサンプリング格子内で、ピクセル内の空間的位置に対応するサンプル点を選択136する。この空間的位置の入力信号中にサンプルが存在しない場合、色信号(すなわち、処理のどの時点でリサンプリングを適用するかに応じて3色入力信号または4色出力信号の何れか)中の隣接する入力信号の位置を1つまたは2つの次元で特定138する。そして、隣接する入力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を計算140する。こうした小部分は、各空間的次元内の入力信号中の望ましいサンプル位置から隣接するサンプルまでの距離を決定し、それらの距離を合計して各距離を各次元内の選択したサンプル点から隣接するサンプルの位置までの距離で除算することを含む多数の手段によって計算してもよい。そして、隣接する入力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算142し、加重入力信号値を生じる。そして、結果として得られた値を加算144し、望ましいサンプリング格子内の選択した位置のリサンプリングデータを得る。望ましいサンプリング格子内の各格子位置に対し、またその後各カラー信号に対してこの同じ処理を反復146する。
【0075】
図5に示すような空間的リサンプリングと色変換を実行することによって、結果として得られる信号は3から4またはそれより多い色信号に変換されるだけではなく、想定される空間的サンプリングが1つである3色信号から、望ましい空間的サンプリングを伴う3より多い色信号に変換される。
【0076】
この方法は、特定用途向け集積回路(asic)、プログラム可能論理素子、ディスプレイドライバまたはソフトウェア製品で利用してもよい。こうした各製品は、プログラム可能なパラメータの格納を通じて関数F1、F2及びF3の形式の調整を可能にする。こうしたパラメータは製造環境内で調整してもよく、またこうしたパラメータへのアクセスを可能にするソフトウェア製品を通じて調整してもよい。
【0077】
OLEDディスプレイ装置中のOLED材料の経年変化または減衰を補償する方法を提供することは当業技術分野で周知である。こうした方法は、各ピクセル中の各原色の輝度または各原色の推定を提供することによってOLED材料の減衰を測定または予測する手段を提供する。この情報が利用可能な場合、この情報をディスプレイの相対的輝度の計算への入力として使用してもよい。また、経年変化を決定する方法を有するディスプレイ装置では、F1、F2、及びF3を調整して、ディスプレイ装置中最も減衰している原色への依存を低減することが望ましい。赤色、緑色、青色及び白色カラー信号を有するディスプレイ装置では、F1、F2及びF3の何れかまたは全ての調整を使用して、OLEDのこれらのグループの1つの輝度出力を低下させることで望ましい色を生じるために使用するOLEDの減衰を遅らせることができる場合、他より多い輝度出力を赤色、緑色及び青色原色または白色原色にシフトしてもよい。
【0078】
本発明をそのいくつかの好適実施形態を特に参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲から逸脱することなく変形及び修正をなし得ることが理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】色域内及び色域外の色を記述するのに有用な先行技術のCIE1931色度図である。
【図2】本発明の方法を例示する流れ図である。
【図3】先行技術のOLED装置の特性曲線を示すグラフである。
【図4】OLEDを駆動するために使用する電流密度の関数としてのOLED寿命の曲線を示すグラフである。
【図5】空間的補間を含む本発明の方法を例示する流れ図である。
【図6a】OLEDの通常の先行技術のRGB縞状配置の描写である。
【図6b】OLEDの従来の先行技術のRGBデルタ配置の図である。
【図7】想定されるOLED配置を決定する方法を例示する流れ図である。
【図8a】本発明と共に有用なOLEDのRGBWストライプ配置の描写である。
【図8b】本発明と共に有用なOLEDのRGBWクアド配置の描写である。
【図9】本発明と共に有用なカラー信号の空間的リサンプリングを実行する方法を例示する流れ図である。
【符号の説明】
【0080】
2 赤原色色度
4 緑原色色度
6 青原色色度
8 色域三角形
10 追加色域内原色色度
12 追加色域外原色色度
22 色域を定義する原色の入力信号
24 追加原色正規化信号を計算するステップ
26 追加原色に正規化した信号
28 共通信号の関数F1を計算するステップ
30 共通信号の関数F2を計算するステップ
32 加算するステップ
34 追加原色に正規化した出力信号
36 白色点正規化信号を計算するステップ
40 共通信号の関数F3を計算するステップ
42 追加原色の出力信号
52 曲線の膝
60 受信するステップ
62 フォーマットを決定するステップ
64 空間的位置を決定するステップ
66 3カラー入力信号をリサンプリングするステップ
68 4カラー出力信号に変換するステップ
70 4カラー出力信号をリサンプリングするステップ
80 ディスプレイ装置
82 ピクセル
84 赤色OLED
86 緑色OLED
88 青色OLED
90 エッジ強調を実行するステップ
92 エッジピクセルを決定するステップ
94 エッジの位置を特定するステップ
96 エッジ特性を決定するステップ
98 エッジ特性を比較するステップ
100 平均相対的エッジ特性の位置を特定するステップ
102 平均相対的エッジ特性の位置を比較するステップ
104 空間的リサンプリングの適用を決定するステップ
106 想定される空間的配置を決定するステップ
110 ディスプレイ装置
112 ピクセル
114 赤色OLED
116 緑色OLED
118 青色OLED
120 白色OLED
130 カラー信号を選択するステップ
132 入力サンプリング格子を決定するステップ
134 望ましいサンプリング格子を決定するステップ
136 サンプル点を選択するステップ
138 隣接する入力信号値の位置を特定するステップ
140 加重小部分を計算するステップ
142 隣接する入力信号値を乗算するステップ
144 結果として得られる値を加算するステップ
146 反復するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3つの色域を定義するカラー原色に対応する3色入力信号(R、G、B)を、Wと異なる白色点を有するディスプレイを駆動するための色域を定義するカラー原色と1つの追加カラー原色Wとに対応する4色出力信号(R’、G’、B’、W)に変換する方法であって、
a)各信号中の等しい量の組み合わせが正規化色信号(Rn、Gn、Bn)を生じる追加カラー原色のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように色入力信号(R、G、B)を正規化するステップと、
b)正規化3色信号(Rn、Gn、Bn)の関数F1である共通信号Sを計算するステップと、
c)3色信号(Rn’、Gn’、Bn’)を提供するため、共通信号Sの関数F2を計算しそれを各正規化3色信号に加算するステップと、
d)各信号中の等しい量の組み合わせが4色出力信号のうち3つ(R’、G’、B’)を生じるディスプレイの白色点のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように3色信号(Rn’、Gn’、Bn’)を正規化するステップと、
e)共通信号Sの関数F3を計算しそれを4色出力信号Wに割り当てるステップとを含む方法。
【請求項2】
関数F1が正規化色信号(Rn、Gn、Bn)の最小値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
関数F1が負でない正規化色信号(Rn、Gn、Bn)の最小値である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
関数F2が負の関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
関数F2及びF3が線形関数である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
線形関数F2及びF3が逆である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
関数F2及びF3が色入力信号(R、G、B)の値に応じて変化する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
色入力信号(R、G、B)が表す色彩度の減少に伴って関数F2及びF3の傾斜が増大する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
色入力信号(R、G、B)が表す輝度の増大に伴って関数F2及びF3の傾斜が増大する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
関数F2及びF3が非線形であり、共通信号Sが高い時小さい傾斜を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
関数F2及びF3が、色入力信号(R、G、B)が表す色相に応じて変化する、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
色入力信号(R、G、B)が、各信号中の等しい量の組み合わせが望ましい白色点のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように正規化した対応する原色の強度を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
色入力信号(R、G、B)が非線形であり、対応する原色の強度に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
色入力信号がコード値である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
コード値が強度についてより良好に直線に近似するようある量によってシフトしており、さらに、3色出力信号(R’、G’、B’)をある量の負数によってシフトするステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
さらに、
A’、B’、及びC’が3変換色出力信号でありW2がステップa〜eを適用することによってディスプレイを駆動するさらなる追加原色の出力信号である時4色出力信号(R’、G’、B’、W)のうち3つを4追加色出力信号(A’、B’、C’、W2)にさらに変換するステップと、任意の数の追加カラー原色についてさらなる変換を反復するステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
各反復に帰結する4色出力信号のうちどの3つをさらに処理するかの選択が現在の反復の関数F1に依存する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
各反復に帰結する4色出力信号のうちどの3つをさらに処理するかの選択が選択される原色の電力効率に依存する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
さらに、4色出力信号をOLEDディスプレイ装置中のOLEDの空間的配置に空間的リサンプリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
空間的リサンプリングするステップが、
a)ディスプレイ装置中のOLEDに対応するサンプル点を選択するステップと、
b)選択したサンプル点のOLEDの色に対応する4色出力信号中の隣接する出力信号値の位置を特定するステップと、
c)隣接する出力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を形成するステップと、
d)加重出力信号値を生じるため、隣接する出力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算するステップと、
e)選択したサンプル点についてリサンプリングした出力値を得るため、加重出力信号値を加算するステップとを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
3色出力信号がピクセル内の異なる空間的位置を表し、さらに、ピクセル内の同じ空間的位置を表すため3色入力信号をリサンプリングするステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
さらに、
a)ピクセル内の空間的位置に対応するサンプル点を選択するステップと、
b)選択したサンプル点の色に対応する3色入力信号中の隣接する入力信号値の位置を特定するステップと、
c)隣接する入力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を形成するステップと、
d)加重入力信号値を生じるため、隣接する入力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算するステップと、
e)選択したサンプル点についてリサンプリングした入力信号値を得るため、加重入力信号値を加算するステップとを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
OLEDディスプレイ装置の寿命を改善するため、3つの色域を定義するカラー原色に対応する3色入力信号(R、G、B)を、色域を定義するカラー原色と1つの追加カラー原色Wとに対応する4色出力信号(R’、G’、B’、W)に変換する方法であって、
a)3色信号(R、G、B)の関数F1である共通信号Sを計算するステップと、
b)低い値のSに対してより高い値のSに対して関数F2の傾斜が低くなるように共通信号Sの関数F2を計算し、関数F2を各3色信号(R、G、B)に加算して3出力色信号(R’、G’、B’)を提供するステップと、
c)低い値のSに対してより高い値のSに対して関数F3の傾斜が低くなるように共通信号Sの関数F3を計算し、それを第4の色出力信号Wに割り当てるステップとを含む方法。
【請求項24】
さらに、各信号中の等しい量の組み合わせが正規化色信号(Rn、Gn、Bn)を生じる追加カラー原色のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように色入力信号(R、G、B)を正規化するステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
関数F1が色信号(R、G、B)の最小値である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
関数F2が負の関数である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
関数F2及びF3が非線形関数である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
関数F2及びF3が逆である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
関数F2及びF3が色入力信号(R、G、B)の値に応じて変化する、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
関数F2及びF3が色入力信号(R、G、B)があらわす色相に応じて変化する、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
色入力信号(R、G、B)が、各信号中の等しい強度の組み合わせが望ましい白色点のものと同一のXYZ三刺激値を有する色を生じるように正規化した対応する原色の強度を表す、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
色入力信号がコード値であり、コード値が強度についてより良好に直線に近似するようある量によってシフトしており、さらに、3色出力信号(R’、G’、B’)をある量の負数によってシフトするステップを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
さらに、4色出力信号をOLEDディスプレイ装置中のOLEDの空間的配置に空間的リサンプリングするステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
空間的リサンプリングするステップが、
a)ディスプレイ装置中のOLEDに対応するサンプル点を選択するステップと、
b)選択したサンプル点のOLEDの色に対応する4色出力信号中の隣接する出力信号値の位置を特定するステップと、
c)隣接する出力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を形成するステップと、
d)加重出力信号値を生じるため、隣接する出力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算するステップと、
e)選択したサンプル点についてリサンプリングした出力値を得るため、加重出力信号値を加算するステップとを含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
3色出力信号がピクセル内の異なる空間的位置を表し、さらに、ピクセル内の同じ空間的位置を表すため3色入力信号をリサンプリングするステップを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項36】
さらに、
a)ピクセル内の空間的位置に対応するサンプル点を選択するステップと、
b)選択したサンプル点の色に対応する3色入力信号中の隣接する入力信号値の位置を特定するステップと、
c)隣接する入力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を形成するステップと、
d)加重入力信号値を生じるため、隣接する入力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算するステップと、
e)選択したサンプル点についてリサンプリングした入力信号値を得るため、加重入力信号値を加算するステップとを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
OLEDディスプレイ装置の寿命を改善するため、3つの色域を定義するカラー原色に対応する3色入力信号(R、G、B)を、色域を定義するカラー原色と1つの追加カラー原色Wとに対応する4色出力信号(R’、G’、B’、W)に変換する方法であって、
a)3色信号(R、G、B)の関数F1である共通信号Sを計算するステップと、
b)共通信号Sの関数F2を計算し、3色信号(R’、G’、B’)を提供するためそれを各3色信号(R、G、B)に加算するステップと、
c)共通信号Sの関数F3を計算し、それを第4の色出力信号Wに割り当てるステップと、
d)ディスプレイ装置中のOLEDに対応するサンプル点を選択するステップと、
e)選択したサンプル点のOLEDの色に対応する4色出力信号中の隣接する出力信号値の位置を特定するステップと、
f)隣接する出力信号値が表す空間的位置に関連する加重小部分の集合を形成するステップと、
g)加重出力信号値を生じるため、隣接する出力信号値をそれぞれの加重小部分によって乗算するステップと、
h)選択したサンプル点についてリサンプリングした出力値を得るため、加重出力信号値を加算するステップとを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−524109(P2007−524109A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−517281(P2006−517281)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/019004
【国際公開番号】WO2005/004104
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】