説明

3,3−ジアルコキシプロピオン酸アルキルを調製するためのプロセス

酸性触媒の存在下で、ケテンを式(RO)3CHのオルトギ酸エステルと反応させることによって、RがC1-6アルキルである式(RO)2CHCH2CO2Rの3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを調製するためのプロセスであって、前記反応がループ反応器中で実行されることを特徴とするプロセス。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、RがC1-6アルキルである式(RO)2CHCH2CO2Rの3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを調製するための連続的プロセスに関する。
【0002】
3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルは、自身がピリミジン、キノリン、ウラシル、フルバスタチン、ビタミンAおよび除草剤1-メチル-5-ヒドロキシピラゾールなどの農薬のような種々の生成物の中間体となる重要なC-3ビルディングブロックである。3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルのための有力な合成ルートの1つは、対応するオルトギ酸エステルからの、酸性触媒の存在下でのケテンとの反応による調製である。したがって、例えばG. Buchiは、3,3-ジアルコキシプロピオン酸メチルを、-70℃の反応温度で、19 %の収率をもって調製している(Buchi et al., J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 540-545)。3,3-ジアルコキシプロピオン酸エチルの調製は、例えばUS 2,449,471に52 %の収率で、およびD. CrosbyらによるJ. Org. Chem. 1962, 27, 3083-3085に54 %の収率で記載されている。ここで参照した引用文献において、使用された酸性触媒は三フッ化ホウ素とジエチルエーテルの付加体であり、反応相手はバッチ式で反応された。反応が高度に発熱的であり、かつ大量のケテンを扱うことは困難なので、バッチ式の反応は、研究室スケールのバッチサイズについてのみ可能である。したがって、大量の3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを良好な収率かつ純度で調製するための適切な、何ら危険性が無く、かつ容易に実行できる改良されたプロセスを提供することが本発明の目的であった。
【0003】
本発明によれば、この目的は請求項1に記載されたプロセスによって達成される。
【0004】
請求の範囲は、酸性触媒の存在下でケテン(CH2=C=O)と式(RO)3CHのオルトギ酸エステルを反応させることによって、RがC1-6アルキルである式(RO)2CHCH2CO2Rの3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを調製するための連続的プロセスであって、前記反応はループ反応器中で実行されることを特徴とするプロセスである。
【0005】
以下で、「C1-6アルキル」という表現は、1〜6個の炭素原子を含有する任意の直鎖または分岐鎖アルキル基を意味すると理解される。C1-6アルキルの例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル(3-メチルブチル)、ネオペンチル(2,2-ジメチルプロピル)、ヘキシル、イソへキシル(4-メチルペンチル)などである。
【0006】
好ましい態様において、オルトギ酸エステルは、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピルおよびオルトギ酸トリブチルからなる群より選択される。より好ましくは、オルトギ酸エステルはオルトギ酸トリメチルである。
【0007】
「連続的な操作」とは、反応相手および反応生成物の両方が、それぞれ連続的に添加され、取出されることを意味する。本発明によれば、ケテンガス、オルトギ酸エステルおよび酸性触媒が、ループ反応器中で互いに連続的に反応する。
【0008】
ここで、「ループ反応器」は決まった設計を示すのではなく、操作の原理のみを示す。最も単純な場合において、ループ反応器は循環ポンプを具備した環状に閉じられた管(ループ)で構成される。ループは、生成物流を取出すための少なくとも1つの接続部(connection)と、出発原料を供給するための少なくとも2つの接続部とを持つ。
【0009】
反応は溶媒中、または無溶媒で実行することができる。酸性触媒を反応器中に直接添加するか、あるいはそれを予めオルトギ酸エステルおよび/または溶媒と混合することもできる。仕込み接続部の数および位置は適宜選択される必要がある。好ましくは、オルトギ酸エステルが最初に酸性触媒と混合され、任意で溶媒と混合され、直後に触媒が溶液になるか、あるいは辛うじて懸濁液を生成する。得られた混合物は、その後、ループ反応器中に供給される。特に好ましいプロセスの変形において、反応は無溶媒で実行される。
【0010】
ケテンガスが、任意の適切なガス配分システムによって、例えば、任意でフリットまたはノズルを具備したスパージャーを用いて反応混合物中に供給され得る。好ましくは、ガス状ケテン、ならびにオルトギ酸エステル、触媒からなる液体混合物、任意で溶媒が、気-液エゼクタを用いて導入される。気-液エゼクタは以下に記載される異なるユニットで構成される。液体流は、高速の流体ジェットを発生させるノズルを通過し、このようにしてケテンの吸引を生じさせ、それをエゼクタ中に取込ませる。有利には、加速された液-気ジェットは、隣接する混合チューブの壁に衝突し、力学的エネルギーの迅速な分散をもたらす。これは、高度な乱流が細かい泡の分散を生じさせる強烈な衝撃混合領域を形成する。液体混合物中で微小なケテンの泡を発生させ、最終的に分散させる能力は、例えば0.5〜2.0の好ましい気体-液体比率、および液体中での極めて良好なケテンの分散をもたらす。このようにして得られた二相混合物は、最終的に液相で反応器中に注入され、その後の化学反応において最適な効率をもたらす。さらに、この方法のガス分配は、ケテンの、気-液エゼクタへの安定した、加圧の無い流れを可能にする。ケテンは圧力下で重合する傾向があるので、それは特に望ましい。任意で、液体流がノズルを通過する前に、渦流デバイスが、送出された液体を導き、配向させ、安定させる。先述した反応器のタイプは、BUSS Loop (登録商標)反応器としても知られる。
【0011】
本質的に、反応成分は、同時かつ連続的な様式でループ反応器中に供給される。これは、反応混合物内の反応物質のモル比に大きな妨害または大きな変化が無いことを意味する。ループ中の循環は、良好な、あるいは理想的でさえある混合を確保する。しかしながら、理想的な混合を強要する必要はない。
【0012】
反応器を同時に充填するとき、生成物流は、その後のワークアップ(work-up)手順に供するために、充填された反応物質の体積に相当する体積分だけ、ループ反応器から取出される。これは、例えば、単純な溢れ管を介して、またはポンプオフ(pumping-off)によって実行され得るが、ポンプオフは、水準検出器を用いて制御され得る。
【0013】
高度に発熱性の反応のせいで、仕込流量に依存した効率的な冷却が必要とされ得る。それは、管長の大部分を被覆する冷却ジャケットの使用、またはループ中に組込まれた通常の構造の熱交換器による方法などの既知の手段によって達成され得る。
【0014】
反応は、-40〜50℃の温度で有利に実行される。任意で、反応物質は、ループ反応器中への供給の前に予備冷却されてもよい。好ましくは、反応温度は-30〜30℃、より好ましくは-10〜10℃である。
【0015】
使用されるケテンは本質的に純粋であるか、または、過剰な圧力上昇を避けるために、適切な空気逃がし口によってループ反応器から有利に排出される窒素、一酸化炭素および/または二酸化炭素のようなイナートガスを含み得る。
【0016】
ケテンに対するオルトギ酸エステルのモル比は好ましくは0.9〜1.2、より好ましくは1.0〜1.1である。これらの値は充填された量を言う。反応混合物中に実際存在する比率は、これらの値よりも多かれ少なかれ異なり得る。
【0017】
原則的に、オルトギ酸エステルが十分に溶解することができ、かつケテンもしくはその他の成分と反応しない各有機溶媒が溶媒として使用され得る。適切な溶媒は、例えば、脂肪族または芳香族炭化水素およびエーテルである。しかしながら、使用されるオルトギ酸エステルが液体である場合は、溶媒を省くことも可能である。好ましい態様において、オルトギ酸トリメチルは酸性触媒の存在下で直接、すなわち無溶媒でケテンと反応する。
【0018】
反応は適切な酸性触媒によって触媒され得る。適切な酸性触媒は、「古典的」ルイス酸および「古典的」ブレンステッド酸の両方、ならびに酸性ポリシリケートでもある。有利には、使用される「古典的」ルイス酸は、塩化亜鉛(II)、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素およびそのエーテル、エステルおよび類縁化合物の付加体である。三フッ化ホウ素の好ましい付加体は、ジエチルエーテル付加体である。「古典的」ブレンステッド酸は、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸である。
【0019】
酸性ポリシリケートはルイス酸および/またはブレンステッド酸の特性を持ち、それ故に、本発明によるプロセスにも適切である。酸性ポリシリケートは、修飾された形態または混合物としても使用され得る。以下の式はポリシリケートを説明するために与えられるのみであって、限定するように解釈されることを意図しない。適切な酸性ポリシリケートは、例えば、アロフェン型の非晶質ポリシリケート、「ポリゴルスカイト」のようなホルマイト型の鎖状ポリシリケート、「カオリナイト」Al2(OH)4[Si2O5]および「ハロイサイト」Al2(OH)4[Si2O5] × 2 H2Oのようなカオリン型の2層ポリシリケート、「ソーコナイト」Na0.3Zn3(Si,Al)4O10(OH)2 × 4 H2O、「サポナイト」(Ca,Na)0.3(Mg,FeII)3(Si,Al)4O10(OH)2 × 4 H2O、「モンモリロナイト」M0.3(Al,Mg)2Si4O10(OH)2 × n H2O (ここで天然モンモリナイト中のMはカチオンNa+、K+、Mg2+およびCa2+のうちの1つ以上の1当量を示す)、「バーミキュライト」(Mg,FeII,Al)3(Al,Si)4 O10(OH)2 × 4 H2O、「ノントロナイト」Na0.3Fe2III(Si,Al)4O10(OH)2 × 4 H2Oおよび「ヘクトライト」Na0.3(Mg,Li)3Si4O10(F,OH)2のようなスメクタイト型の3層ポリシリケート、イライト型の3層ポリシリケート、好ましくはH形態におけるY型のゼオライトのような、クロライト型の可変数層を持つポリシリケートならびにテクトポリシリケートである。
【0020】
必要ならば、本発明によるプロセスの酸性ポリシリケートは、酸による処理によって、および/または金属塩溶液による処理によって、および/または乾燥、ならびに、ゼオライトの場合には、好ましくはイオン交換および/または加熱によって得ることができる。
【0021】
好ましい態様において、使用される触媒はスメクタイト型の酸性ポリシリケートおよびゼオライトである。特に好ましいスメクタイト型の酸性ポリシリケートは、モンモリロナイト、特に、例えばSud-Chemie社から「モンモリロナイトK 10」および「モンモリロナイトKSF/0」の名で市販されているタイプである。
【0022】
酸性触媒は、本発明のプロセスにおいて0.1〜20重量%(オルトギ酸エステル基準)、好ましくは0.5〜10重量%の量で有利に用いられる。しかしながら、当該量は触媒の活性および反応温度に依存する。
【0023】
反応を実行するとき、ケテンおよびオルトギ酸エステルは望ましくない様式で水と反応するので、水分含有量が可能な限り少ない状態を確保せねばならない。
【0024】
ワークアップは当技術分野で周知の方法で実行され、かつ、生成する3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルおよび反応混合物中の他の成分の物理的特性に本質的に依存する。固体酸性触媒が使用される場合、これは濾過によって有利に除去されて濾液がワークアップ(worked up)されるが、液体酸触媒が使用される場合、これは最初に反応混合物中で中和される。中和は、例えば、水酸化ナトリウムおよび炭酸カリウムのような塩基性アルカリ金属塩を添加することによって、またはナトリウムメトキシドおよびカリウムエトキシドのようなアルカリ金属アルコキシドを添加することによって、または無水アンモニアのような同様の塩基性試薬を添加することによって実行され得る。その後、あらゆる沈殿が濾過によって除去され、必要ならば、濾液がその後に精製され得る。
【0025】
好ましい態様において固体酸性触媒が使用され、それは最初のワークアップ工程で濾別される。このようにして得られた残渣は廃棄されるか、またはその精製、および必要ならば任意の再活性化の後に、酸性触媒として反応混合物中で再利用されるかのいずれかである。
【0026】
酸性触媒の除去の後、濾液は既知の手順で、好ましくは蒸留によってワークアップされ、純粋な形態で生成した3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを得る。特に好ましい態様において、目的の生成物よりも低い沸点を持つ未反応のオルトギ酸エステルは、濾過の後に留去され、その後、反応混合物中にリサイクルされ、反応の総転換率を著しく上げる。
【0027】
本発明のさらなる側面は、本発明により調製された式(RO)2CHCH2CO2Rの3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルからの、式ROCH=CHCO2Rのアルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートの調製である。
【0028】
アルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートは、C-3ビルディングブロックとしても重要であり、例えば、2,2,3-トリクロロ-3-アルコキシプロピオン酸アルキル、ピラゾール、フラノン、チオフェン、アミノチアゾール、イソキサゾールおよびビタミンAを調製するために使用される。
【0029】
本発明によれば、先述したように作られた3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルは、その後の工程で、触媒としての酸の存在下での熱供給によって、対応する1分子のアルコール(ROH)の脱離反応により、対応する式ROCH=CHCO2のアルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートに変換される(ここで、Rは先に定義したものである)。適切な酸は、液体酸および固体酸の両方、酸性塩など、酸性に活性化されたシリカゲル、酸性粘土鉱物、酸性に活性化されたカーボン、酸性ゼオライトおよびH型のカチオン交換樹脂である。任意で、塩がキャリア材料に付着されてもよく、修飾されてもよい。
【0030】
適切な酸は、例えば、硫酸、オルトホウ酸、オルトリン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、重硫酸ナトリウム、五酸化リン、リン酸アルミニウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウムおよび酸性ゼオライトである。特に適切なものは、硫酸、オルトリン酸、メタスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、重硫酸ナトリウム、五酸化リン、リン酸アルミニウムおよび酸性ゼオライトである。
【0031】
好ましくは、使用される酸の量は、0.05〜15重量%(3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキル基準)、特に好ましくは0.1〜10重量%である。
【0032】
使用される溶媒は、反応成分と反応しない、例えばリグロインのような任意の溶媒であり得る。しかしながら、脱離反応は無溶媒でも実行され得る。好ましくは、反応は無溶媒で実行される。
【0033】
好ましくは、脱離反応は50〜250℃、より好ましくは80〜200℃で実行され、反応時間は、有利には1〜15時間、好ましくは1〜10時間である。任意で、反応は減圧下でも実行され得る。脱離反応の間、アルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートのE-異性体が優先的に生成する。好都合なことに、生成したアルコール(ROH)は、反応の間に直ちに留去される。
【0034】
脱離反応の後、得られたアルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートは、既知の方法、例えば精留によって精製され得る。
【0035】
添付の模式図および例は、本発明の主題の説明に供するだけであり、本発明をこれらの開示に限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルの連続的な調製のためのデバイスを模式的に示す。
【0037】
参照符号の具体的な意味は以下のとおりである。
【0038】
1. オルトエステルおよび酸性触媒の混合物の仕込み
2. ケテンの仕込み
3. ジェット反応器
4. 循環ポンプ
5. 生成物の取出し
6. 熱交換器
7. 窒素仕込み
8. イナートガスの排出口。
【0039】

以下の例は本発明の態様を説明する。しかしながら、これは限定として解釈されることを意図しない。
【0040】
例1:3,3-ジメトキシプロピオン酸メチルの調製
1.5重量%のモンモリロナイトK10 (Sud-Chemie)を含む150 kg/h (1.413 kmol/h)のオルトギ酸チリメチル(Fluka)、および84 kg/hのケテン(ケテン含有量がおよそ70 %、残りがN2、COおよびCO2のようなイナートガス、すなわち、純ケテンでおよそ59 kg/hすなわちおよそ1.4 kmol/h)が、同時であるが別々に、不活性化されかつ0℃の内部温度まで冷却されている620 Lのジェット反応器中に供給された(図1参照)。窒素雰囲気下で、反応混合物はおよそ0℃の温度に維持され、循環ポンプによってループ中を循環された。添加された出発材料の量に対応して、かつ連続的に、反応混合物の対応する部分を収集タンクに流し込んだ。濾過後、濾液の純度は、GCによって、80 %の3,3-ジメトキシプロピオン酸メチル、8 %の未反応オルトギ酸トリメチル、4 %のメチル3-メトキシプロパ-2-エノエートおよび4 %の酢酸メチルであると決定された。
【0041】
低い沸点のおかげで、蒸留によるオルトギ酸トリメチルの除去が容易であった。回収された出発材料はその後、反応混合物中にリサイクルされた。
【0042】
3,3-ジメトキシプロピオン酸メチルの収率は82 %(転換率基準)であった。
【0043】
例2:メチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの調製
窒素雰囲気下で、0.2 g (2 mmol)のメタンスルホン酸(Fluka)が、丸底フラスコを具備した蒸留装置中の、例1に記載されたようにして同じように得られた150 gの濾液(およそ85 %の、0.86 molの3,3-ジメトキシプロピオン酸メチル)に添加された。一定の窒素流下で、混合物は160℃まで緩徐に加熱され、生成したメタノールが直ちに留去された。6時間後、熱供給が停止された。この方法で得られたメチル3-メトキシプロパ-2-エノエートは88 %の純度(GC)であり、10 kPaで精留することによって精製された。メチル3-メトキシプロパ-2-エノエート (K10 kPa = 95℃) 収率は85 g (85 %)であり、純度は99 %であった(GC)。
【0044】
例3:メチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの調製
反応は、純粋に蒸留された5 gの3,3-ジメトキシプロピオン酸メチル(含有率99 %、34 mmol)および25 mg (0.13 mmol)のp-トルエンスルホン酸一水和物(Fluka)を用いて、例2と同じように実施された。得られた未精製生成物は、91 % (GC)のメチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの含有率を有していた。
【0045】
例4:メチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの調製
反応は、純粋に蒸留された5 gの3,3-ジメトキシプロピオン酸メチル(含有率99 %、34 mmol)および47 mg (0.27 mmol)のスルファニル酸(Fluka)を用いて、例2と同じように実施された。得られた未精製生成物は、92 % (GC)のメチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの含有率を有していた。
【0046】
例5:メチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの調製
反応は、純粋に蒸留された5 gの3,3-ジメトキシプロピオン酸メチル(含有率99 %、34 mmol)および31 mg (0.31 mmol)のオルトリン酸(Fluka)を用いて、例2と同じように実施された。得られた未精製生成物は、88 % (GC)のメチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの含有率を有していた
例6:メチル3-メトキシプロパ-2-エノエートの調製
例1の未反応オルトギ酸トリメチルの留去の後、得られた4.4 t (30 kmol)の3,3-ジメトキシプロピオン酸メチルを、窒素雰囲気下で、例2と同様に6 kg (62 mol)のメタンスルホン酸と反応させた。10 kPaでの精留により、2.4 t (21 kmol、使用されたオルトギ酸トリメチル基準で69 %)のメチル3-メトキシプロパ-2-エノエート (K10 kPa = 95℃)を、93 % (GC)の純度で得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性触媒の存在下で、ケテンを式(RO)3CHのオルトギ酸エステルと反応させることによって、RがC1-6アルキルである式(RO)2CHCH2CO2Rの3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルを調製するためのプロセスであって、前記反応がループ反応器中で実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
前記オルトギ酸エステルが、オルトギ酸トリメチル、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリプロピルおよびオルトギ酸トリブチルからなる群より選択される請求項1のプロセス。
【請求項3】
前記オルトギ酸が、最初に前記酸性触媒と混合され、その後にはじめて前記ループ反応器中に供給される請求項1または2のプロセス。
【請求項4】
前記ループ反応器が、気-液エゼクタ(ジェット反応器)を含む請求項1〜3のうちのいずれかのプロセス。
【請求項5】
前記反応が、-40〜50℃の温度で実行される請求項1〜4のうちのいずれかのプロセス。
【請求項6】
前記ケテンに対するオルトギ酸エステルのモル比が0.9〜1.2である請求項1〜5のうちのいずれかのプロセス。
【請求項7】
前記プロセスが、無溶媒で実施される請求項1〜6のうちのいずれかのプロセス。
【請求項8】
前記酸性触媒が、ルイス酸、ブレンステッド酸または酸性ポリシリケートである請求項1〜7のうちのいずれかのプロセス。
【請求項9】
前記ルイス酸が、塩化亜鉛(II)、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素ならびにそのエーテルおよびエステル付加体からなる群より選択される請求項8のプロセス。
【請求項10】
前記ブレンステッド酸が、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸およびベンゼンスルホン酸からなる群より選択される請求項8のプロセス。
【請求項11】
前記酸性ポリシリケートが、アロフェン型の酸性非晶質ポリシリケート、ホルマイト型の酸性鎖状ポリシリケート、カオリン型の酸性2層ポリシリケート、スメクタイト型の酸性3層ポリシリケート、イライト型の酸性3層ポリシリケート、クロライト型の酸性可変数層のポリシリケート、および酸性テクトポリシリケートからなる群より選択される請求項8のプロセス。
【請求項12】
前記スメクタイト型の酸性3層ポリシリケートが、ソーコナイト、サポナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ノントロナイトおよびヘクトライトからなる群より選択される請求項11のプロセス。
【請求項13】
前記オルトギ酸エステルが、オルトギ酸トリメチルであり、前記酸性触媒がモンモリロナイトである請求項1〜12のうちのいずれかのプロセス。
【請求項14】
前記酸性触媒が、0.1〜20重量%(オルトギ酸エステル基準)の量で使用される請求項1〜13のうちのいずれかのプロセス。
【請求項15】
請求項1〜14のうちのいずれかのプロセスであって、前記生成した3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルが、その後の工程で、酸の存在下での熱供給によって、対応するアルコール(ROH)の脱離により、対応する式ROCH=CHCO2Rのアルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエート (ここでRは前記したように定義される)に変換されるプロセス。
【請求項16】
前記酸が、硫酸、オルトリン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、重硫酸ナトリウム、五酸化リン、リン酸アルミニウムおよび酸性ゼオライトからなる群より選択される請求項15のプロセス。
【請求項17】
前記酸がメタンスルホン酸である請求項16のプロセス。
【請求項18】
前記酸が、0.05〜15重量%(3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキル基準)で使用される請求項15〜17のうちのいずれかのプロセス。
【請求項19】
前記プロセスが無溶媒で実施される請求項15〜18のうちのいずれかのプロセス。
【請求項20】
前記反応が、50〜250℃の温度で実行される請求項15〜19のうちのいずれかのプロセス。
【請求項21】
前記反応時間が1〜15時間である請求項15〜20のうちのいずれかのプロセス。
【請求項22】
前記対応するアルキル3-アルコキシプロパ-2-エノエートを調製するための、請求項1〜14のうちのいずれかにより得られた3,3-ジアルコキシプロピオン酸アルキルの使用。

【図1】
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【公表番号】特表2011−500861(P2011−500861A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531453(P2010−531453)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009128
【国際公開番号】WO2009/056293
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(398075600)ロンザ アーゲー (58)
【Fターム(参考)】