説明

3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンの製造方法

本発明は、3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンを製造するための、化合物の絶対立体化学的完全性を損なわない、実用的な高収量の合成過程に関する。本発明は、新規化合物3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンにも関する。本発明により製造される化合物は、アクチン重合を阻害することに関連した疾患又は状態を治療するための化合物(例えばラトルンクリン及び/又はそれらの類似体)の合成及び製造において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド及びそれらの中間体の如き3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンの合成に関する。本発明により製造された化合物は、アクチン重合の阻害に関連した疾患又は状態を治療するための化合物の合成及び製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
緑内障は、不可逆的視力障害につながる眼科疾患である。これは、失明の四番目に多い一般的原因であり、米国における失明の二番目に多い一般的原因であり、アフリカ系アメリカ人における不可逆的失明の最も一般的な原因である。一般的に言えば、本疾患は、視神経に対する上昇した眼圧から生じる有害な作用により少なくとも一部引き起こされる進行性神経障害により特徴付けられる。正常な個体において、眼圧は、12〜20mmHgの範囲であり、平均約16mmHgである。しかし緑内障に罹患した個体において、眼圧は一般に、25〜30mmHgを上回って上昇し、時には70mmHgに達し得る。重要なことは、失明は、統計学的に正常範囲をわずかに上回るか又はその範囲内の眼圧から生じることがあり、そのような眼では、通常長年に渡り圧力に対する感度が異常である。更に極端に高い圧力(例えば、70mmHg)は、わずか数日以内に失明を引き起こし得る。
【0003】
緑内障の典型的治療は、眼圧(IOP)を正常レベルに低下するための様々な医薬上のアプローチを含む。β遮断薬及び炭酸脱水酵素阻害薬は、無血管水晶体及び角膜内皮細胞に栄養分を与えるために必要である房水産生を低下するのみであり、プロスタグランジン作用は、総機構の10%を占めるのみであるブドウ膜強膜流出経路に対するものである。房水流出に対する抵抗が増大し、その結果上昇したIOPの原因となる部位である小柱網に直接作用する治療薬で、現在市販されているものはない。従って、この構造を標的とする改善されたIOP−低下薬品に関する医療上の必要性が依然として存在する。小柱網を標的化する医薬作用物質は、現在のIOP−降下薬に十分に反応せず、及び/又はこれらの作用物質に関連した副作用を認容することができないような患者の多くに軽減をもたらすことができる。緑内障を治療し、線維柱帯切除術後の創傷治癒を調節し、アクチン細胞骨格の完全性により影響を受ける他の疾患又は障害を治療するために、有効かつ経費上実践的な細胞骨格活性化合物の必要性が存在する。
【0004】
米国特許第6,586,425号、第6,110,912号及び第5,798,380号は、房水流出を増強するよう眼のアクチンフィラメントの完全性に作用する化合物を使用し、緑内障を治療する方法を開示している。これらの特許は、小柱網内のアクチン細胞骨格の摂動又はその基底膜との相互作用の調節を引き起こす、キナーゼインヒビター及びいくつかの天然の生成物(ラトルンクリンA、ラトルンクリンB、スウィンホリドA及びジャスプラキノリド)も詳細に開示している。細胞骨格の摂動及び関連した接着は、流体に対する小柱網の抵抗を低減し、これにより眼圧を低減する。
【0005】
Latrunculia magnifica、Negombata magnifica、及びSpongia mycofijiensisの如き海綿から、並びに例えばChromodoris lochiなどの裸鰓類から収集されかつ単離された細胞骨格活性マクロライドである天然のラトルンクリンは、大量に得ることが困難である。天然のラトルンクリン類似体及び誘導体は現在、延々と続く低い収量の実用的でない合成を用いてのみ製造することができる(A.B. Smith IIIら, J. Am. Chem. Soc. 1992, 114, 2995-3007;J.D. White及びM. Kawasaki, J. Org. Chem. 1992, 57, 5292-5300;A. Furstnerら, Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 5358-5360)。加えて、3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンのような重要な中間体の合成は、時には、(1)致死の可能性のある試薬の使用、(2)最終中間体のラセミ化レベル、及び(3)各独立した工程、並びに全工程での収量の低さに、適切に対処しないことが多い(前記参考文献に加え、M.E.F. Braibanteら, Synthesis, 1999, No. 6, 943-946;J.D. Parkら, J. Med. Chem. 2002, 45, 911-918;A. Furstner, PNAS, 2005, vol. 102, No. 23, 8103-8108を参照のこと)。
【0006】
ラトルンクリン及び/又はそれらの類似体の如き新規細胞骨格活性化合物の製造のための中間体を製造するための、単純かつ実用的な合成手順の必要性が存在する。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明は、3,4−二置換−チアゾリジン−2−オン(式I)の絶対立体化学的完全性を損なわず、かつ不安定なアルキル化剤の使用を避ける、実用的な高収量の合成工程に関する。当該工程は、以下の順序を含む。
【0008】
(a)以下の式(II):
【化1】

の化合物を提供するための、チオアミナル環形成反応、それに続く還元的開環反応;
(b)以下の式(V):
【化2】

の化合物を提供するための、環形成及びアミド合成;
【0009】
(c)以下の式(I):
【化3】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
Aは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CO2H、−CO24、−(CH2nOR5、CHO、又はCNであり;
1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2は結合し、環を形成し;
3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CH2PXR89、又は−CH=PR101112であり;
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;
7は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであり;
Xは、O、Sであるか、又は存在せず;
8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;
10、R11、及びR12は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;並びに
nは、1〜5の整数である。}
の化合物を提供するための、式(V)の化合物への有機金属試薬の付加。
【0010】
本発明の過程は、一般式(I)、(II)、及び(V)の化合物を製造するために使用することができる。かかる化合物は、最終生成物として有用であるか、又は中間体として使用され、他の所望の生成物を製造するために更に修飾することができる。例えば、かかる化合物は、ラトルンクリン及び/又はそれらの類似体のような新規細胞骨格活性化合物の製造のための中間体として有用である。
【0011】
前記式(I)及び(V)の化合物は、ラトルンクリン及び/又はそれらの類似体の同じ必須化学構造であるチアゾリジン−2−オン部分を有する。ラトルンクリン及び/又はそれらの類似体は、式(I)又は(V)の化合物から直接製造され得、同じ必須構造要素としてチアゾリジン−2−オンを全て含む少数の中間体によりこれから分離され得る。
本発明は、式(I)及び(V)の新規化合物にも関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
定義
下記の用語は、特に記さない限りは、提示された場合一般に以下のように定義されるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
「アルキル」は、不飽和を伴うか(アルケニル、及びアルキニル)又は不飽和を伴わない、任意に置換された、炭素原子1〜25個の、好ましくは炭素原子1〜12個、より好ましくは炭素原子1〜6個の、直鎖又は分枝鎖のいずれかの基を意味する。
【0014】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、ここでアルキル基は、先に定義されたものであり、先に定義されたような任意に置換されたアルキル基を含む。
【0015】
「アリール」は、単環(例えば、フェニル)又は縮合多環(例えば、ナフチル又はアントリル)を有する、置換を伴う又は伴わない、炭素原子6〜14個の芳香族炭素環式基を意味する。好ましいアリールは、フェニル、ナフチルなどを含む。
【0016】
「アリールオキシ」は、アリール−O−基を意味し、ここでアリール基は、先に定義されたものであり、先に定義されたような任意に置換されたアリール基を含む。
【0017】
「アリールアルキル」は、好ましくはアルキル部分に1〜8個の炭素原子を包括的に有し、かつアリール部分に6〜10個の炭素原子を包括的に有する、アリール−アルキル−基を意味する。
【0018】
アラルキル基のアルキル部分は、鎖が2個以上の炭素原子を含む場合、鎖内に二重結合又は三重結合の如き不飽和の位置を1個又は複数含むことができ;アラルキル基のアルキル部分は、1個又は複数の置換基も含むことができ;アラルキル基のアリール部分は、アリール部分の1個の環につき3〜8個の炭素を包括的に含む、より好ましくは1個の環につき4〜6個の炭素を包括的に含む、最も好ましくは1個の環につき5〜6個の炭素を包括的に含む、単環又は多環部分であることができ;アラルキル基のアリール部分は、1個又は複数の置換基を持つことができる。かかるアリールアルキル基は、ベンジル、フェネチルなどにより例証される。
【0019】
「シクロアルキル」は、不飽和を伴う又は伴わず、置換を伴う又は伴わない、単環式環又は多縮合環を包括的に有する3〜12個の炭素原子の環状アルキル基を意味する。かかるシクロアルキル基は、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチルなどの如き単環構造、又はアダマンチルなどの如き多環構造を含む。
【0020】
「シクロアルキルアルキル」は、好ましくはアルキル部分に1〜6個の炭素原子を包括的に有し、かつシクロアルキル部分に3〜10個の炭素原子を包括的に有する、シクロアルキル−アルキル−基を意味する。かかるシクロアルキルアルキル基は、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチルなどで例証される。
【0021】
「シクロアルコキシ」は、シクロアルキル−O−基を意味し、ここで当該シクロアルキル基は、先に定義されたものであり、先に定義されたような任意に置換されたシクロアルキル基を含む。
【0022】
ヘテロアラルキル基は、アルキル部分において包括的に1〜8個の炭素であり、より好ましくは当該アルキル部分が包括的に1〜6個の炭素であり、最も好ましくは当該アルキル部分が包括的に1〜4個の炭素であり;上記のアルキルの定義に含まれたように、ヘテロアラルキル基のアルキル部分は、鎖が2個以上の炭素原子を含む場合は、鎖内に二重結合又は三重結合の如き不飽和の位置の1又は複数を含むことができ;ヘテロアラルキル基のアルキル部分は、1又は複数のヘテロ原子及び/又は置換基を含むこともでき;ヘテロアラルキル基のヘテロアリール部分は、当該ヘテロアリール部分の1個の環につき包括的に3〜8個の炭素であり、かつ1個の環につき1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1個の環につき4〜6個の炭素、最も好ましくは1個の環につき5〜6個の炭素を包括的に含む、単環又は多環部分であり;ヘテロアラルキル基のヘテロアリール部分は、1個又は複数の置換基を持つこともできる。
【0023】
ヘテロアリール基は、1個の環につきヘテロ原子1〜4個を含む、単環又は多環のいずれかである。ヘテロアリール基は、置換基を持つこともできる。
【0024】
ヘテロサイクルは、飽和された、部分的に不飽和の、又は不飽和の(芳香族)であり、並びに炭素原子、及びN、O及びSからなる群より各々独立して選択される1〜3個のヘテロ原子からなる、安定した5〜6員の単環式複素環である。窒素及びイオウのヘテロ原子は、任意に酸化される。複素環は、任意のヘテロ原子又は炭素原子上で、そのペンダント基へ結合することができ、これは安定した構造を生じる。本明細書に説明された複素環は、得られる化合物が安定している場合は、炭素上又は窒素原子上で置換され得る。ヘテロサイクル内のS及びO原子の総数が1を超える場合は、これらのヘテロ原子は互いに隣接しないことが好ましい。ヘテロサイクル内のS及びO原子の総数は、1を超えないことが好ましい。
【0025】
ヘテロサイクルの例は、2−ピロリドニル、2H−ピロリル、4−ピペリドニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、イソオキサゾリル、モルホリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、オキサゾリジニル、オキサゾリル、ピペラジニル、ピペリジニル、プテリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、テトラヒドロフラニル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、及び1,3,4−トリアゾリルを含むが、これらに限定されるものではない。
【0026】
好ましいヘテロサイクルは、ピリジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、及びオキサゾリジニルを含むが、これらに限定されるものではない。同じく例えば先の複素環を含む縮合環及びスピロ化合物も含まれる。
【0027】
「(ヘテロサイクル)オキシ」は、ヘテロサイクル−O−基を意味し、ここでヘテロサイクル基は、先に定義されたものであり、任意に置換されたヘテロサイクル基を含む。
【0028】
前述の基において水素により占拠される位置は、非制限的にヒドロキシ、オキソ、ニトロ、メトキシ、エトキシ、アルコキシ、置換アルコキシ、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨード、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アルキル、置換アルキル、チオ、チオアルキル、アシル、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルボキシアミド、置換カルボキシアミド、アルキルスルホニル、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニルアミノ、スルホンアミド、置換スルホンアミド、シアノ、アミノ、置換アミノ、アシルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、フェニル、アリール、置換アリール、ピリジル、イミダゾリル、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリノ、及びヘテロサイクルにより例証される置換基によりさらに置換され得;並びに、好ましいヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄である。
【0029】
開放原子価がこれらの置換基上に存在する場合、当該置換基は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロサイクル基により更に置換することができ、並びにかかる開放原子価が複数存在する場合、これらの基は連結し、結合の直接形成、又は新たなヘテロ原子、好ましくは酸素、窒素もしくは硫黄への結合の形成のいずれかにより、環を形成することができることが理解される。更に、前記置換は、水素を置換基と置き換えることが、本発明の分子へ許容できない不安定さを導入しないこと、そうでなければ化学的に妥当であることを条件に、実行することができることが理解される。
【0030】
ジアステレオマーは、互いに鏡像関係を持たない、立体異性体(同じ構成であるが、三次元構造が異なる異性体)である。
【0031】
エナンチオマーは、互いに鏡像であるが、重ならない、立体異性体である。
【0032】
カルボニル化剤は、カルボニルを化合物へ転移することが可能である試薬である。
【0033】
還元剤は、電子又は水素を供与することにより、他種を還元する還元−酸化反応における試薬である。
【0034】
有機金属試薬は、金属へ直接σ又はπ結合を介して結合した有機基を含む試薬である。
【0035】
金属対イオンは、正帯電したイオン又は錯体を意味し、これは求核試薬の負電荷の対形成のパートナーとして役立つ。好適な金属対イオンの例は、リチウム、ナトリウム、カリウム;銅、及び塩化物、臭化物又はヨウ化物などのそれらの任意の塩;マグネシウム、及び塩化物、臭化物又はヨウ化物などのそれらの任意の塩;亜鉛、及び塩化物又は臭化物などのそれらの任意の塩;セリウム、及び塩化物又は臭化物などのそれらの任意の塩;並びに、カルシウム、及び塩化物又は臭化物などのそれらの任意の塩の正帯電したイオン又は錯体を含むが、これらに限定されるものではない。正帯電したイオン又は錯体の例は、Li+、Na+、K+、MgCl+、MgBr+、MgI+、ZnCl+、ZnBr+、CaCl+、CaBr+、CuBr+、及びCuCl+を含む。
【0036】
医薬として許容できる塩は、酸又は塩基付加物に由来した様々な塩の非晶質形に加え、様々な多形を含む。酸付加塩は、無機酸又は有機酸により形成することができる。かかる酸の非制限的例は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ナフトエ酸、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、リンゴ酸、アジピン酸、乳酸、酒石酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、カンファースルホン酸、及びエタンスルホン酸である。医薬として許容できる塩基付加塩は、金属対イオン又は有機対イオンにより形成することができ、ナトリウム又はカリウムの如きアルカリ金属塩;マグネシウム又はカルシウムの如きアルカリ土類金属塩;並びに、アンモニウム又はテトラアルキルアンモニウム塩、すなわちNX4+(ここで、XはC1-4である。)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0037】
溶媒和物は、化合物が医薬として許容できる共溶媒と一部一定の割合で組合せられる、付加錯体である。共溶媒は、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレン(類)、エチレングリコール、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルアセトアミド、ピリジン、ジオキサン、及びジエチルエーテルを含むが、これらに限定されるものではない。水和物は、共溶媒が水である溶媒和物である。本発明の化合物の定義は、任意の割合の、可能性のある水和物及び溶媒和物の全てを包含していることが理解される。
【0038】
許容できる塩形は、一般に、好適な溶媒又は様々な溶媒の組合せ中での、遊離塩基又は酸と、化学量論的量又は過剰量の、所望の塩形成無機酸もしくは有機酸又はさまざまな溶媒の組み合わせとの反応により製造される。
【0039】
安定した化合物は、反応混合物から有用な純度への過酷な単離に耐えるのに十分である化合物を示すことを意味する。
【0040】
本発明者らは、最終生成物であるか又は中間体として使用され、かつ他の所望の生成物へ更に修飾することができる、一般式(I)、(II)及び(V)の化合物を製造するいくつかの新規方法を発見した。
【0041】
式(II)の化合物の製造方法
本発明は、以下の式(II):
【化4】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
式(III):
【化5】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
Aは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CO2H、−CO24、−(CH2nOR5、CHO、又はCNであり;
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;
7は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであり;並びに
nは、1〜5の整数(1、2、3、4、又は5)である。}
の化合物を還元剤と反応させ、前記式(II)の化合物を形成する、
を含む、上記方法に関する。
【0042】
溶液Cの製造
式(III)の化合物及び好適な溶媒システムを、容器に投入する。添加の順番は、便宜上又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により強制され得る。この反応は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドなどの多くの溶媒中で実行することができるが;好ましい溶媒は、水、メタノール及びエタノールである。より好ましい溶媒は、水である。適当な溶媒中の出発式(III)のスラリーは、可溶化を完全にするために、塩基の添加により、pH−調節されることが好ましい。典型的塩基は、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸塩;ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸水素塩;並びに、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの水酸化物の溶液である。好ましい塩基は、炭酸カリウムである。
【0043】
溶液Dの製造
好適な還元試薬を反応容器に投入する。還元剤は、電子又は水素の供与により、他の種を還元する還元−酸化反応の試薬である。好適な還元剤は、水素、アルキルボラン及びアルキルボラン錯体、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素リチウム、トリエチル水素化ホウ素リチウム、トリエチル水素化ホウ素ナトリウム、トリ−sec−ブチル水素化ホウ素リチウム、トリ−sec−ブチル水素化ホウ素カリウム、水素化リチウムアルミニウム、アラン、水素化アルミニウムジ−iso−ブチル、トリフェニル水素化ホウ素カリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリメチルシラン、及び転移還元試薬を含むが、これらに限定されるものではない。好ましい還元試薬は、水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム及びトリメチルシランである。より好ましい還元剤は、より経費効率がよいという理由で、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0044】
還元剤の量は、典型的には、式(III)のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜5.0モル当量である。還元剤の投入に続き、塩基の水溶液が添加される。典型的溶液は、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸塩;ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸水素塩;並びに、ナトリウム、リチウム及びカリウムの水酸化物であり、1.0M水酸化ナトリウムが好ましい。いずれかの溶液を他方の溶液に添加することができるが、しかし、溶液Cが溶液Dに添加されることが好ましい。式(II)の化合物の形成は、−20〜50℃で行われることが好ましい。この反応は、HPLCによりモニタリングすることができる。出発溶媒及び温度に応じて、この反応は一般に、1〜12時間で完了する。この反応は、酸水溶液の添加により、反応停止することができる。これらの酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸の如き鉱酸;並びに、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸及びシュウ酸のような有機酸を含むが、これらに限定されるものではない。添加される酸は、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硫酸水素リチウムなどの水溶液であることもできる。酢酸の水溶液が好ましい。反応停止は、温度を10℃未満に維持することにより行われることが好ましい。式(II)の生成物は、濾過により単離される。固形物は、水、メタノール又はエタノールによりすすぐことができる。この生成物は、真空下で、30〜60℃の範囲の温度で、一定重量まで乾燥されることが好ましい。
【0045】
式(III)の化合物の製造
式(III)の化合物は、以下の式(X):
【化6】

{式中、Aは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CO2H、−CO24、−(CH2nOR5、CHO、又はCNであり;
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;
7は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであり;並びに
nは、1〜5の整数(1、2、3、4、又は5)である。}
の化合物とアルデヒドとの反応により製造され得る。
【0046】
溶液Aの製造
式(X)の化合物及び好適な溶媒システムを、反応容器へ投入する。添加の順番は、便宜上又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により強制され得る。この反応は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドなどの多くの溶媒中で実行することができるが、好ましい溶媒は、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン及びアセトニトリルである。より好ましい溶媒は水である。アルデヒドは、直接又は好適な溶媒中で添加することができる。
【0047】
アルデヒド溶液Bの製造
好適な溶媒中のアルデヒドを容器へ投入する。添加の順番は、便宜上又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により強制され得る。アルデヒド溶液は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドなどの、様々な溶媒中に製造されるが、好ましい溶媒は、メタノール、エタノール及びiso−プロパノールである。より好ましい溶媒はエタノールである。アルデヒドの量は、典型的には、式(A)のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜5.0モル当量であり、より好ましくは1.0〜1.5モル当量である。
【0048】
いずれかの溶液を他方の溶液に添加することができるが、しかし、溶液Bを溶液Aに添加することが好ましい。式(III)の化合物の形成は、0〜30℃で行われることが好ましい。式(III)の化合物は、エタノールの添加により更に沈殿される。この反応は、典型的には1〜6時間で完了する。生成物は濾過により単離され、溶媒によりすすぐことができる。当該生成物は、真空下で、30〜60℃の範囲の温度で、一定重量まで乾燥されることが好ましい。
【0049】
本発明者らは、予想外なことに、式(X)の化合物から式(II)の化合物を製造する高収率の2ステップ方法を発見した。この2ステップ方法は、最初に、式(X)から式(III)を製造し、次いで、式(III)から式(II)を製造する。当該2ステップ方法は、取り扱いが難しいp−メトキシ臭化ベンジルの如きアルキル化試薬を使用することなく、システイン誘導体のアルキル化を可能にする。システイン{式(X)の化合物}の式(IIa)の化合物への2ステップ転換は、収率61〜80%で達成されるのに対し、1ステップ法について文献で報告された値(J.D. Parkら, J. Med. Chem. 2002)は、30〜50%であった。加えて当該2ステップ法は、致死の可能性のある還元剤:シアノ水素化ホウ素ナトリウムの使用を避ける。
【0050】
式(V)の化合物の製造方法
本発明は、以下の式(V):
【化7】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
式(IV):
【化8】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである}
の化合物を、アミンHNR1OR2と、好適な試薬の存在下で反応させ、前記式(V)の化合物を形成する、
を含み、ここで、
前記R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1及びR2は、結合し、環を形成する、
上記方法に関する。
【0051】
式(IV)の化合物及び好適な溶媒系を、反応容器へ投入する。添加の順番は、便宜上又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により、強制され得る。この反応は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミド、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、m−、o−、もしくはp−キシレン、t−ブチルメチルエーテル、1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン(DMPU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸iso−プロピル、酢酸t−ブチル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミドなどの、様々な溶媒中で実行されるが、好ましい溶媒は、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン及び酢酸iso−プロピルである。より好ましい溶媒は、酢酸iso−プロピルである。あるいは、式(IV)の化合物の溶液は、工程3から直接使用することができる。好適な溶媒中の式(IV)の化合物の投入に続き、塩基を添加する。この反応は、モルホリン、N−メチルモルホリン(NMM)、トリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、及びジエチルアミンなどの、様々な塩基中で実行されるが、好ましい塩基は、N−メチルモルホリン(NMM)である。
【0052】
塩基の量は、典型的には、式(IV)のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜5.0モル当量であり、より好ましくは1.0〜1.5モル当量である。塩基の投入には、過剰量の活性化試薬の投入が続くことが好ましい。好適な活性化試薬は、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸n−プロピル、クロロギ酸iso−プロピル、クロロギ酸iso−ブチル、N,N−カルボニルジイミダゾール(CDI)、塩化アセチル、塩化プロパノイル、ジメチル塩化アセチル、塩化ピバロイル、塩化ベンゾイル及び他のハロゲン化アシルなどである。好ましい活性化試薬は、塩化ピバロイルである。活性化試薬の量は典型的には、式(IV)の化合物のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜1.2モル当量である。この混合物は、−20〜20℃で攪拌されることが好ましい。適当な時間、通常1〜6時間の経過後、好適な求核試薬が添加される。第1級及び第2級アミンが好ましく;より好ましいアミンは、N−メトキシ−メタンアミンである。アミンの量は典型的には、式(IV)の化合物のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜2.0モル当量である。式(V)の化合物の形成は、−20〜20℃で行われることが好ましい。この反応は、HPLCによりモニタリングされることが好ましい。
【0053】
この反応は、酸の水溶液の添加により、反応停止することができる。これらは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸のような鉱酸;並びに、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸のような有機酸を含むが、これらに限定されるものではない。追加の酸は、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硫酸水素リチウムなどの水溶液ともなり得る。塩酸水溶液が好ましい。有機層を、好ましくは塩基性水溶液で洗浄する。典型的塩基性水溶液は、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸塩;ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸水素塩;並びに、ナトリウム、リチウム及びカリウムの水酸化物から製造され、水酸化ナトリウムが好ましい。好ましい塩基性水溶液は、炭酸水素ナトリウムである。式(V)の生成物は、アンチソルベントの添加により結晶化することができ;n−ヘプタンが好ましい。式(V)の化合物は、濾過により単離される。この生成物は、好ましくは真空下で、好ましくは30〜60℃の範囲の温度で、一定重量まで乾燥される。
【0054】
式(I)の化合物の製造方法
本発明は、以下の式(I):
【化9】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
式(V):
【化10】

の化合物を、有機金属試薬R3−Mと反応し、前記式(I)の化合物を形成する工程を含み、ここで、
式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1及びR2は、結合し、環を形成し;
3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CH2PXR89、又は−CH=PR101112であり;
Xは、O、Sであるか、又は存在せず;
8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに
10、R11、及びR12は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである、
上記製造方法に関する。
【0055】
前記過程において、有機金属試薬R3−Mは、出発材料(予め形成された)であるか、あるいは、前記式(V)の化合物との反応時に、R3−Hとアルキル−Mもしくはアリール−Mとの反応により形成することができる。例えば、(R)−2−(3−(4−メトキシベンジル)−2−オキソチアゾリジン−4−イル)−2−オキソエチルホスホン酸ジメチル{前記式(I)}は、前記式(V)の化合物とn−ブチルリチウム又はメチルリチウムの如きアルキルリチウムとの反応により生成することができる、メチルホスホン酸ジメチルのリチウム塩との反応により製造することができる。
【0056】
前記式(V)の化合物及び好適な溶媒を、好ましくは反応容器へ投入する。添加の順番は、便宜上、又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により、強制され得る。この反応は、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドの如き多くの溶媒中で行うことができるが、好ましい溶媒は、ジエチルエーテル、1,4−ジオキサン及びテトラヒドロフランであり;より好ましい溶媒は、テトラヒドロフランである。前記式(V)の化合物の投入後、好適な有機金属試薬の添加が続く。好適な有機金属試薬は、オルガノマグネシウム又はオルガノリチウム試薬を非制限的に含む。かかる試薬の簡単な例は、臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、臭化プロピルマグネシウム、臭化フェニルマグネシウム、臭化ベンジルマグネシウム、メチルホスホン酸ジメチルのリチウム、ナトリウム及びマグネシウム塩を非制限的に含む。
【0057】
前記有機金属試薬の量は、典型的には、式(V)のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜5.0モル当量であり、より好ましくは2.0〜3.0モル当量である。前記式(I)の化合物の形成は、好ましくは−60〜50℃で、より好ましくは−60〜0℃で実施される。この反応は、好ましくはHPLCによりモニタリングされる。この反応は、内部反応温度を−20℃〜20℃に維持しながら、酸の水溶液に添加することにより反応停止することができる。酸の水溶液は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸の如き鉱酸;及び、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、及びシュウ酸の如き有機酸を、非制限的に含む。追加の酸は、クエン酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硫酸水素リチウムなどの水溶液であることもできる。クエン酸水溶液が好ましい。
【0058】
蒸留による有機反応溶媒の除去後、前記式(I)の生成物を、酢酸メチル、酢酸エチル、又は酢酸iso−プロピルの如き有機溶媒を用いて、抽出することができる。好ましい抽出溶媒は、酢酸iso−プロピルである。この生成物は、1〜5倍過剰量のアンチソルベントの添加により結晶化することができ、n−ヘプタンが好ましい。この生成物は、濾過により分離される。この生成物は、真空下で、25〜50℃の範囲の温度で、一定重量まで乾燥されることが好ましい。
【0059】
本発明者らは予想外のことに、絶対立体化学の完全性を損なうことなく、キラル3,4−二置換−チアゾリジン−2−オン{式(I)の化合物}の製造を可能にする前述の新規過程を発見した。先に説明された方法は、ラセミ化し易い中間体(例えば酸クロリドなど)の使用に頼っており、これは、高いエナンチオマー過剰レベルを得るために再結晶化を必要とする物質を提供する。本発明の特許請求に範囲に記載される過程は、安定した分離可能な中間体を使用し、98%超のエナンチオマー過剰率で、前記式(I)及び(V)の化合物を提供する。これらの発見を基に、本発明者らは、式(I)の化合物を製造する実践的かつ効果的過程を発見した。
【0060】
式(III)の化合物から式(I)の化合物の製造
本発明は、式(III)の化合物から式(I)の化合物を製造するための、異なる過程を提供する。
ある態様において、式(III)は、カルボン酸である。この方法は、以下の工程:
(a)式(IIIa)の化合物を還元剤と反応させ、式(IIa)の化合物を形成し、
【化11】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。};
(b)前記式(IIa)の化合物をカルボニル化試薬と反応させ、以下の式(IV):
【化12】

の化合物を形成し;
(c)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化13】

の化合物を形成し、ここで、R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;もしくは、R1とR2は結合し、環を形成する;
(d)前記式(V)の化合物を、有機金属試薬(R3−M)と反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、ここで、
前記R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
前記Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに、
前記Mは、金属である、
を含む。
【0061】
別の実施態様において、前記式(III)はエステルである。この方法は、以下の工程:
(a)式(IIIb)の化合物を還元剤と反応させ、式(IIb)の化合物を形成し、
【化14】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;並びに、
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。};
(b)前記式(IIb)の化合物を、カルボニル化試薬と反応させ、以下の式(VII):
【化15】

の化合物を形成し;
(c)前記式(VII)の化合物を加水分解し、以下の式(IV):
【化16】

の化合物を形成し;
(d)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化17】

{式中、R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2は結合し、環を形成する。}
の化合物を形成し;
(e)前記式(V)の化合物を、有機金属試薬R3−Mと反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、ここで、
前記R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
前記Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに、
前記Mは、金属である、
を含む。
【0062】
更に別の実施態様において、前記式(III)はアルコールである。この方法は、以下の工程:
(a)式(IIIc)の化合物を、還元剤と反応させ、式IIcの化合物を形成し、
【化18】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;並びに、
7は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。};
(b)前記式(IIc)の化合物を、カルボニル化試薬と反応させ、以下の式(VIII)の化合物を形成する工程;
【化19】

(c)前記式(VII)の化合物を脱保護し、以下の式(IX):
【化20】

の化合物を形成し;
(d)前記式(IX)の化合物を以下の式(IV):
【化21】

の化合物へ酸化し;
(e)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化22】

{式中、R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2を結合し、環を形成する。}
の化合物を形成し;
(f)前記式(V)の化合物を、有機金属試薬R3−Mと反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、ここで、
前記R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに、
前記Mは、金属である、
を含む。
【0063】
スキーム(1a−c)は、前記式(I)の化合物:3,4−二置換−チアゾリジン−2−オンの一般的合成を提供する。スキーム(1a)において、前記式(IIIa)の化合物は、システインから製造され、次に式(IIa)の化合物へ還元され開環する。式(IIa)の化合物は、式(IV)の化合物へ環化される。式(IV)の化合物は、活性化され、式(V)の化合物へ転換される。式(V)の化合物は、有機金属試薬と反応させ、式(I)の化合物を提供する。
【0064】
スキーム(1b)において、式(IIIb)の化合物がシステインのエステル{式(X)の化合物}から製造され、次に、式(IIb)の化合物へ還元され開環する。式(IIb)の化合物は、式(VII)の化合物へ環化される。式(VII)の化合物は、次に、好適な溶媒中で、典型的には、水酸化リチウム又は水酸化ナトリウムの如き塩基により、加水分解され、式(IV)の化合物となる。
【0065】
スキーム(1c)において、式(IIIc)の化合物は、システインの保護されたアルコール誘導体{式(X)の化合物}から製造され、次に式(IIc)の化合物へ還元され開環する。式(IIc)の化合物は、式(VIII)の化合物へ環化される。式(VIII)の化合物は、典型的には、好適なケイ素系保護基を使用する場合は、フッ素給源により脱保護され、式(IX)の化合物を提供する。式(IX)の化合物は、典型的には、活性化されたDMSO手法及びアルデヒド及びブリーチ媒介型反応により、カルボン酸へ酸化され、式(IV)の化合物を提供する。
【0066】
スキーム2は、(R)−(−)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド{式(V)の化合物}、(R)−(−)(4−アセチル−3−(4−メトキシ−ベンジル)−チアゾリジン−2−オン{式(I)の化合物}、(R)−2−(3−(4−メトキシベンジル)−2−オキソチアゾリジン−4−イル)−2−オキソエチルホスホン酸ジメチル{式(I)の化合物}、及び(R)−4−((R)−9−(ベンジルオキシ)−5−ヒドロキシノン−2−イノイル)−3−(4−メトキシベンジル)チアゾリジン−2−オン{式(I)の化合物}の製造に関するスキーム(1a)の具体例を提供している。
【0067】
本発明は、ラトルンクリン及び/又はそれらの類似体の製造に関して、好ましい立体化学を伴うそれらのエナンチオ純粋形でのこれらの化合物の合成に適用することができるが、これは、他のエナンチオマー/エピマー又はラセミ混合物の製造にも適用することができる。
【0068】
スキーム1及び2は、本発明を例証することを意味し、本発明を限定するものとしてみなされるものではない。本発明により包含される化合物を生成するために、出発材料は変更することができ、かつ追加の工程を使用することができることは、当業者にとって認識されることであろう。場合によっては、ある種の反応性官能基の保護が、前述の変換のいくつかを実現するために必要となり得る。一般に、そのような保護基の必要性に加え、そのような基を結合及び除去するために必要な条件は、有機合成分野の当業者には明らかであろう。
【0069】
スキーム1a
【化23】

【0070】
スキーム1b
【化24】

【0071】
スキーム1c
【化25】

【0072】
スキーム2
【化26】

【0073】
工程3の過程
溶液Eの製造:式(IIa)の化合物及び好適な溶媒システムを、好ましくは反応容器へ投入する。添加の順番は、便宜上、又は過程化学の技術者に周知の他の問題点により、強制され得る。この反応は、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドの如き多くの溶媒中で行うことができるが;好ましい溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及び水である。より好ましい溶媒は、水である。
【0074】
好ましくは、前記式(IIa)の化合物及び好適な溶媒の投入後、過剰量の塩基を添加する。典型的な塩基は、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸塩;ナトリウム、リチウム、及びカリウムの炭酸水素塩;並びに、ナトリウム、リチウム、及びカリウムの水酸化物の溶液であり、水酸化ナトリウムが好ましい。好ましい塩基は、炭酸カリウムである。溶液Eは、可溶化過程を補助するために、加熱することができる。
【0075】
溶液Fの製造:好適なカルボニル化試薬を、反応容器へ投入する。添加の順番は、便宜上、又は過程化学の当業者に周知の他の問題点により、強制され得る。カルボニル化試薬は、カルボニルを、式(II)の化合物へ移し、3,4−二置換−チアゾリジン−2−オン化合物を提供することが可能である試薬である。典型的なカルボニル化試薬は、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、クロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸n−プロピル、クロロギ酸iso−プロピル、クロロギ酸iso−ブチル、ホスゲン、トリホスゲン、及びN,N−カルボニルジイミダゾール(CDI)である。好ましい試薬は、N,N−カルボニルジイミダゾール(CDI)である。
【0076】
この試薬の添加に続けて、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、iso−ブタノール、フラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジイソプロピルエーテル、アニソール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチルピロリジノン(NMP)、ホルムアミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド、プロピオニトリル、スルホラン、N,N−ジメチルプロピオンアミド、及びヘキサメチルリン酸アミドなどの、好適な溶媒を添加し;好ましい溶媒は、アセトニトリル、テトラヒドロフラン及び水である。より好ましい溶媒は、アセトニトリルである。いずれかの溶液を、他方の溶液に添加することができるが、溶液Fを溶液Eに添加することが好ましい。
【0077】
前記式(IV)の化合物の形成は好ましくは、−20〜40℃の間で実施される。カルボニル化試薬の量は、典型的には、前記式(II)の化合物のモル当量を基にし、好ましくは1.0〜2.4モル当量である。この反応は、好ましくはHPLCによりモニタリングされる。出発の溶媒及び温度に応じ、この反応は、一般に1〜8時間で完了する。共溶媒は、蒸留により除去される。得られる溶液のpHは、水性の酸により、5未満、好ましくは1〜3に調節される。これらは、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸のような鉱酸;及び、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、シュウ酸のような有機酸を非制限的に含む。追加の酸は、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、塩化アンモニウム、硫酸水素リチウムなどの水溶液ともなり得る。硫酸の水溶液が好ましい。前記式(IV)の化合物は、酢酸メチル、酢酸エチル、及び酢酸iso−プロピルの如き有機溶媒で抽出することができる。好ましい溶媒は、酢酸iso−プロピルである。この生成物は、結晶化することができるか、あるいは得られた(V)の溶液を、次反応において使用することができる。好ましくは、この溶液は、いずれかの操作が実施される以前に、測定された含水量が0.1%未満となるまで乾燥される。
【0078】
新規化合物
本発明は更に、以下の式(V):
【化27】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、アリールオキシ、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2を結合し、環を形成する。}
の化合物を提供する。
【0079】
ひとつの実施態様において、前記式(V)の化合物のRは、置換アリール(例えばp−メトキシフェニル)であり、並びにR1及びR2は、独立して、アルキル(例えばメチル)である。
【0080】
本発明は、以下の式(I):
【化28】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであり;
但し、R3は、Me又は−CH2PO(OMe)2ではないことを条件とする。}の化合物も提供する。
【0081】
ひとつの実施態様において、前記R3は、アルキル又は置換されたアルキルであり、ここでアルキル基の水素は、−OR5により置換され、ここでR5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;R6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;R7は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。
【0082】
前述の化合物は安定しており、最終生成物であるか、又は他の所望の生成物の製造のための過程中間体として使用することができる。
【0083】
本発明は更に下記実施例により例証されるが、当該実施例に説明された具体的手順の範囲に限定するように解釈すべきではない。
【実施例】
【0084】
実施例1
(R)−2−(4−メトキシ−フェニル)−チアゾリジン−4−カルボン酸{式(IIIa)の化合物}の製造
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した22Lの三首丸底フラスコに、L−システイン塩酸塩一水和物(500.0g、2.85mol)、酢酸ナトリウム(260.0g、3.17mol)及び水4.00Lを投入した。この混合物を全てのL−システインが溶解するまで攪拌した。エタノール3.50L中のp−メトキシベンズアルデヒド(426.0g、3.13mol)の溶液を製造し、前記反応液に添加し、内部反応液温度が30℃未満を維持するようにした。この反応液は、p−メトキシベンズアルデヒド溶液の添加時に、粘稠な白色スラリーとなり始めた。30分後、エタノール3.50Lを、この反応液に添加した。攪拌を1時間継続し、その後固形物を濾過により分離した。エタノール1.50L部分を使用し、この固形物を洗浄した。当該固形物を、真空炉において、50℃で48時間乾燥した。2−(4−メトキシ−フェニル)−チアゾリジン−4−カルボン酸約610gを得た(収率90%)。
【化29】

【0085】
実施例2
(R)−3−メルカプト−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−プロピオン酸{式(IIa)の化合物}の製造
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した22Lの三首丸底フラスコに、水素化ホウ素ナトリウム(221.3g、5.85mol)を投入した。0.25M水酸化ナトリウムの1.75L部分を添加し、この混合物を均質になるまで攪拌した。この溶液を、0〜5℃に冷却した。2−(4−メトキシ−フェニル)−チアゾリジン−4−カルボン酸(350.0g、1.46mol)を、0.62MのK2CO3水溶液2.1Lに溶解した。得られた溶液を、内部温度を30℃未満に維持しながら、水素化ホウ素ナトリウムの溶液へ添加した。この反応を、HPLC分析が残存する出発材料を示さなくなるまで(約1時間)、攪拌した。反応液を0℃に冷却し、攪拌しながら氷酢酸700mLを添加した。この反応混合物の最終pHは、約5であった。得られた白色固形物を濾過し、水3L及びエタノール2.5Lで洗浄し、真空炉において、50℃で12時間乾燥した。3−メルカプト−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−プロピオン酸約240gを得た(収率68%)。
【化30】

【0086】
実施例3
(R)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸{式(IV)の化合物)の製造
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した22Lの三首丸底フラスコに、3−メルカプト−2−(4−メトキシ−ベンジルアミノ)−プロピオン酸(400.0g、1.66mol)、炭酸カリウム(480.0g、3.47mol)及び水2.80Lを投入した。この混合物を、均質になるまで攪拌しながら、40℃で加熱し、その後20〜25℃に冷却した。アセトニトリル2.8L中のN,N−カルボニルジイミダゾール(400.0g、222.47mol)の溶液を、内部反応温度を30℃未満に維持しながら、添加した。この反応をHPLCによりモニタリングし、出発材料の消失時に完了とした。アセトニトリルを、40℃及び80〜100torrでの蒸留により除去した。酢酸iso−プロピル(200mL)を添加し、この混合液のpHを、3MのH2SO4の150mLで2に調節した。二相混合物を濾過し、分離し、有機層を、大気圧での蒸留により共沸乾燥した。最終の測定された含水量は、0.5%未満だった。得られた溶液を更に、酢酸iso−プロピル1.8Lで希釈し、次の実施例において使用した。
【化31】

【0087】
実施例4
(R)−(−)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド{式(V)の化合物}の製造
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した22Lの三首丸底フラスコに、3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸(310.0g、1.16mol、約3L)の酢酸iso−プロピル溶液を投入した。この容器に、窒素を掃流し、0℃に冷却した。内部反応温度を5℃未満に維持しながら、4−メチル−モルホリン(130.0g、1.29mol)を添加した。内部反応温度を5℃未満に維持するように、塩化ピバロイル(150.0g、1.24mol)を滴下した。この反応液を、0℃で45分間攪拌した。内部反応温度を5℃未満に維持しながら、N−メトキシ−メタンアミン(78.0g、1.28mol)を添加した。この反応をHPLCによりモニタリングし、出発材料に対する生成物の比が4:1の時に完了とした(アミン添加後約30分)。次いで、この混合物を、0.1MのHCl、2.4L部分、続いて飽和NaHCO3、2.4Lで洗浄した。有機相を分離し、蒸留により最終容積1.0Lに濃縮した。沈殿が形成され始めた後、n−ヘプタン250mL部分を添加した。混合物を激しく攪拌した。固形物を濾過し、真空炉において40℃で乾燥した。3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド約250gを得た(収率70%)。
【化32】

【0088】
(R)−(−)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミドのエナンチオマー純度は、説明されたHPLC法を用い測定することができる。
【0089】
(R)−(−)−N−(p−メトキシベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミドのキラルHPLC法
移動相(エタノール/n−ヘプタン、1:4)の製造
好適な容器内に、無水エタノール200mL及びn−ヘプタン800mLを移す。十分に混合する。製造される移動相の容積を、分析的分析の必要要件に適合するように調節する。
【0090】
試料製造
INS(登録商標)−115751の約2mgを、無水エタノール2mL中に溶解する。
【0091】
測定条件
装置:UV検出器を装備した好適な勾配HPLCシステム
カラム:Chiral Technologies IncのChiralcel OD−H 0.46cm×25cm
移動相A:エタノール/n−ヘプタン(1:4)
検出:UV、254nm
カラム温度:30℃
注入容積:10.0μL
流量:1.0mL/分
試行時間:20分間
獲得時間:20分間
相対保持値(RR): 化合物 RT(分) RR
(R)-(-)-アミド 10.56 1.00
(S)-(+)-アミド 9.64 0.91
【0092】
実施例5
(R)−4−アセチル−3−(4−メトキシ−ベンジル)−チアゾリジン−2−オン{式(I)の化合物}の製造
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した乾燥した三首丸底フラスコに、THF中のメチルマグネシウムクロリドの3M溶液0.805Lを投入した。この溶液を、窒素で掃流し、0℃に冷却した。分液フラスコにおいて、3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド(250.0g、0.805mol)を、無水THFの1.00L中に溶解した。得られた溶液を、メチルマグネシウムクロリドの溶液へ、内部反応温度を5℃未満に維持する速度で添加した。この反応は、HPLCによりモニタリングし、出発材料の消失時を完了とみなした。反応混合物を、10%クエン酸溶液1.00Lに、温度を25℃未満に維持する速度でゆっくり添加した。この混合物を、水0.90Lで希釈した。このTHFを、大気圧での蒸留により除去した。この生成物を、酢酸エチル2.5Lで抽出した。有機相を分離し、最終容積〜800mLに濃縮し、室温まで冷却した。n−ヘプタン16Lの添加により、懸濁液を形成させた。この懸濁液を、30分間攪拌した。得られた固形物を、濾過により分離し、真空炉において、40℃で12時間乾燥した。4−アセチル−3−(4−メトキシ−ベンジル)−チアゾリジン−2−オン約170gを得た(収率80%)。
【化33】

【0093】
実施例6
(R)−2−(3−(4−メトキシベンジル)−2−オキソチアゾリジン−4−イル)−2−オキソエチルホスホン酸ジメチル{式(I)の化合物}
内部温度探子及び機械的攪拌子を装備した乾燥した三首丸底フラスコに、メチルホスホン酸ジメチル(36.7mL、0.338mol)及びTHF0.5Lを投入した。この溶液を、窒素で掃流し、−70℃に冷却した。n−ブチルリチウムの2.55M溶液126mLを、内部反応温度を−60℃未満に維持しながら、滴下した。分離フラスコにおいて、3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミド(50.0g、0.161mol)を、無水THFの300mLに溶解した。得られた溶液を、内部反応温度が−60℃未満を維持する速度で、メチルホスホン酸ジメチルの陰イオンの溶液へ添加した。この反応をHPLCによりモニタリングし、出発材料の消失時を完了とみなした。反応混合物を、10%クエン酸溶液50mLに、温度を5℃未満に維持する速度でゆっくり添加した。その混合物を、水0.35Lで希釈した。THFを、大気圧での蒸留により除去した。その生成物を、酢酸エチル300mLで抽出した。有機相を分離し、n−ヘプタン250mLの添加により懸濁液を形成させた。懸濁液を30分間攪拌した。得られた固形物を濾過により分離し、真空炉において40℃で12時間乾燥した。(R)−2−(3−(4−メトキシベンジル)−2−オキソチアゾリジン−4−イル)−2−オキソエチルホスホン酸ジメチル約57gを得た(収率94%)。
【化34】

【0094】
実施例7
(R)−4−((R)−9−(ベンジルオキシ)−5−ヒドロキシノン−2−イノイル)−3−(4−メトキシベンジル)チアゾリジン−2−オン{式(I)の化合物}
三首丸底フラスコに、THF中のMeMgBrの1.0M溶液16.8mL(16.8mmol)を添加し、この溶液を0℃に冷却した。アルキンカップリングパートナー(R)−8−(ベンジルオキシ)オクト−1−イン−4−オール(2.00g、8.50mmol)を、THF5.0mLで希釈し、その後滴下した。この溶液を室温で1時間温め、その後0℃に戻すよう冷却した。THF5mL中の(R)−N−メトキシ−3−(4−メトキシベンジル)−N−メチル−2−オキソチアゾリジン−4−カルボキシアミド(0.900g、3.00mmol)の溶液を製造し、その後0℃で滴下した。この溶液を、室温で2時間温め、その後10%クエン酸で反応停止した。10分間攪拌した後、EtOAcを添加し、有機層を分離した。水層を更にEtOAcで抽出し、その後、一緒にした有機抽出液を、ブラインで洗浄し、Na2SO4上で乾燥し、濃縮した。この反応液を、0〜25%EtOAc/DCMのクロマトグラフィーに供し、淡黄色油状物1.1g(2.23mmol、77%)を得た。
【化35】

【0095】
実施例8
(R)−2−ベンジルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸{式(IIa)の化合物}の製造
実施例1及び2において記載された2ステップ方法を使用し、2−ベンジルアミノ−3−メルカプト−プロピオン酸を、収率67%で製造した。
【化36】

【0096】
実施例9
(R)−2−(3,4−ジメトキシ−ベンジルアミノ)−3−メルカプト−プロピオン酸{式(IIa)の化合物}の製造
実施例1及び2において記載された2ステップ方法を使用し、2−(3,4−ジメトキシ−ベンジルアミノ)−3−メルカプト−プロピオン酸を、収率80%で製造した。
【化37】

【0097】
実施例10
(R)−2−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−3−メルカプト−プロピオン酸{式(IIa)の化合物の製造}
実施例1及び2において記載された2ステップ方法を使用し、2−(4−フルオロ−ベンジルアミノ)−3−メルカプト−プロピオン酸を、収率66%で製造した。
【化38】

【0098】
本発明、並びにそれを製造及び使用する方法及び過程は、本技術分野の当業者が本発明を製造及び使用することができるように完全に、明快、簡潔かつ正確な用語で説明されている。上記は本発明の好ましい実施態様を説明していること、及び「特許請求の範囲」に示された本発明の範囲から逸脱することなくそれを変更し得ることが、理解されるべきである。本発明に関する対象事象を特に指摘しかつ明確に請求するために、「特許請求の範囲」が本明細書を結論付ける。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II):
【化1】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
式(III):
【化2】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
Aは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CO2H、−CO24、−(CH2nOR5、CHO、又はCNであり;
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;
7は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであり;並びに
nは、1〜5の整数である。}
の化合物を還元剤と反応させ、前記式(II)の化合物を形成する、
を含む、上記方法。
【請求項2】
以下の式(V):
【化3】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
式(IV):
【化4】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。}
の化合物を、アミンHNR1OR2と、好適な試薬の存在下で反応させ、前記式(V)の化合物を形成する、
を含み、ここで、
前記R1及びR2が、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
前記R1とR2が結合し環を形成する、上記方法。
【請求項3】
以下の式(I):
【化5】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
以下の式(V):
【化6】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2は結合し環を形成する。}
の化合物を、有機金属試薬R3−Mと反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、
を含み、ここで、
前記R3は、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CH2PXR89、又は−CH=PR101112であり;
前記Xは、O、Sであるか、又は存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに
前記R10、R11、及びR12は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである、上記方法。
【請求項4】
前記R3が、−CH2PXR89である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
以下の式(I):
【化7】

の化合物の製造方法であって、以下の工程:
(a)式(IIIa)の化合物を還元剤と反応させ、式(IIa)の化合物を形成し、
【化8】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。};
(b)前記式(IIa)の化合物をカルボニル化試薬と反応させ、以下の式(IV):
【化9】

の化合物を形成し;
(c)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化10】

の化合物を形成し、ここで、
前記R1及びR2は、独立して、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
前記R1とR2は結合し、環を形成する;
(d)前記式(V)の化合物を、有機金属試薬(R3−M)と反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、ここで、
前記R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
前記Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに、
前記Mは、金属である、
を含む、上記方法。
【請求項6】
以下の式(I):
【化11】

の化合物の製造方法であり、以下の工程:
(a)式(IIIb)の化合物を還元剤と反応させ、式(IIb)の化合物を形成し、
【化12】

{式中、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;及び
4は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。};
(b)前記式(IIb)の化合物を、カルボニル化試薬と反応させ、以下の式(VII):
【化13】

の化合物を形成し;
(c)前記式(VII)の化合物を加水分解し、以下の式(IV):
【化14】

の化合物を形成し;
(d)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化15】

{式中、R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2は結合し、環を形成する。}
の化合物を形成し;
(e)前記式(V)の化合物を、有機金属試薬R3−Mと反応させ、前記式(I)の化合物を形成する、ここで、
前記R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
前記Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
前記R8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに
前記Mは、金属である、
を含む、上記方法。
【請求項7】
以下の式(I):
【化16】

の化合物の製造方法であり、以下の工程:
(a)式(IIIc)の化合物を、還元剤と反応させ、式(IIc)の化合物を形成し、
【化17】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
5は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はSi(R63であり;
6は、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又はOR7であり;並びに、
7は、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールである。);
(b)前記式(IIc)の化合物を、カルボニル化試薬と反応させ、以下の式(VIII):
【化18】

の化合物を形成し;
(c)前記式(VIII)の化合物を脱保護し、以下の式(IX):
【化19】

の化合物を形成し;
(d)前記式(IX)の化合物を以下の式(IV):
【化20】

の化合物へ酸化し;
(e)前記式(IV)の化合物を、アミンHNR1OR2と反応させ、以下の式(V):
【化21】

{式中、R1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールから選択されるか;あるいは、
1とR2は結合し環を形成する。}
の化合物を形成し;
(f)前記式(V)の化合物を有機金属試薬R3−Mと反応させ、以下の式(I):
【化22】

{式中、R3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、又は−CH2PXR89であり;
Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;並びに、
Mは、金属である。)
の化合物を形成する、
を含む、上記方法。
【請求項8】
以下の式(V):
【化23】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
1及びR2は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールであるか;あるいは、
1とR2は結合し、環を形成する。}
の化合物。
【請求項9】
前記Rが置換されたアリールであり、前記R1及びR2が独立してアルキルである、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
(R)−(−)−3−(4−メトキシ−ベンジル)−2−オキソ−チアゾリジン−4−カルボン酸メトキシ−メチル−アミドである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
以下の式(I):
【化24】

{式中、Rは、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
3は、置換を伴う又は伴わない、H、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、−CH2PXR89、又は−CH=PR101112であり;
Xは、O、Sであるか、もしくは存在せず;
8及びR9は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルコキシ、(ヘテロサイクル)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アルキルアミノ、アリールアミノ、シクロアルキルアミノ、(ヘテロサイクル)アミノ、又はヘテロアリールアミノであり;
10、R11及びR12は、独立して、置換を伴う又は伴わない、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アラルキル、アリール、ヘテロアラルキル、又はヘテロアリールであり;
但し、R3は、Me又は−CH2PO(OMe)2ではないことを条件とする。}
の化合物。
【請求項12】
(R)−4−((R)−9−(ベンジルオキシ)−5−ヒドロキシノン−2−イノイル)−3−(4−メトキシベンジル)チアゾリジン−2−オンである、請求項11に記載の化合物。

【公表番号】特表2009−531328(P2009−531328A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501750(P2009−501750)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2007/064786
【国際公開番号】WO2007/109786
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(500297524)インスパイアー ファーマシューティカルズ,インコーポレイティド (17)
【Fターム(参考)】