説明

4−ヒドロキシ−プロリン部分構造を含むペプチドの合成方法

【課題】プロリン部分構造を有する化合物の提供。
【解決手段】


[式中、R16はフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基であり、かつR18とは異なっており、R17は水素であるか、または加水分解もしくは水素化分解により除去可能な保護基であり、そしてR18は水素であるか、またはフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基である]で示される化合物、該化合物の製造方法、およびかかる方法に関与する中間体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペプチドを製造する方法およびかかる方法における中間体に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
1つの局面にて、本発明は、
(A)遊離型または塩形態の式I
【化1】

[式中、Rは、反応性置換基であるか、または固相への結合基であり;
は、反応性置換基であり;そして
、RおよびRは、互いに独立して水素であるか、または各ベンゼン環に結合しており、かつ、ヒドロキシ、アミノ、C1−10−アルキル、C1−10−アルコキシ、C1−10−アルキルアミノ、ジ−C1−10−アルキルアミノ、カルバモイル、C1−10−アルキルカルバモイル、ジ−C1−10−アルキルカルバモイル、ハロ−C1−10−アルキル、ハロゲンおよびニトロから選択される1個以上の置換基である]
で示される化合物を製造する方法であって;
(a)遊離型または塩形態の式VI:
【化2】

[式中、R、RおよびRは、上記に定義の通りであり;
は、−OH、−OMまたは−OMX(ここで、Mは金属であり、Xは、求核置換基である)であり;
10は、−Mまたは−MX(ここで、Mは金属であり、Xは求核置換基である)である]
で示される化合物と求電子物質を反応させ、
そして、生じた化合物を加水分解して、Rがヒドロキシである式Iの化合物を形成する工程;
(b)所望によれば、Rがヒドロキシである式Iの化合物を、Rがヒドロキシ以外である式Iの化合物に変換する工程;
(c)所望によれば、式Iの化合物のRを、他のR基に変換する工程;
(d)所望によれば、保護された形態の式Iの化合物を脱保護する工程;および
(e)必要であれば、遊離型で得られた式Iの化合物をその所望の塩形態に変換するか、またはその逆の変換をする工程
を含む方法;
【0003】
(B)上記に定義の方法により式Iの化合物を製造する工程、および前記化合物と適した誘導体化されたまたは官能化された固相材をカップリングする工程を含む、固相支持系の製造方法;
(C)遊離型または塩形態の式V:
【化3】

[式中、R、R、RおよびRは、上記に定義の通りであり;そして
は、求核置換基である]
で示される化合物;
(D)遊離型または塩形態の式VI
【化4】

[式中、R、R、RおよびRは、上記に定義の通りであり;そして
10は、−Mまたは−MX(ここで、Mは金属であり、Xは求核置換基である)である]
で示される化合物
に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式Iの化合物を製造する簡単な経路を提供し、それは固相化学合成に有用である。本発明の方法は、固相と結合した式Iの化合物を直接的に製造するか、またはRが反応性置換基であるとき、式Iの化合物は後の段階で固相に容易にカップリングできる。反応性置換基Rの存在により、オリゴマーおよびポリマー、例えば糖ペプチド、ヌクレオチドおよびタンパク質の合成、とりわけペプチドの固相合成におけるリンカーとしての式Iの化合物の使用が可能となる。特に、Rがハロゲンである式Iの化合物もまた、化学合成における官能基、例えばアミノ基またはヒドロキシ基を保護するための保護物質として使用可能である。
【0005】
式VおよびVIの化合物は、式Iの化合物の製造における中間体化合物として有用である。
【0006】
式V:
【化5】

[式中、R、R、RおよびRは、上記に定義の通りであり;そして
は、求核置換基である]
で示される化合物と、金属または有機金属化合物を反応させることにより式VIの化合物を製造し得る。
【0007】
(i)式II
【化6】

[式中、RおよびRは、それぞれ求核置換基であり、Rは、上記に定義の通りであり、かつ必要であれば、除去可能な保護基により保護されていて良い]
で示される化合物と、金属または有機金属化合物を反応させる工程;そして
(ii)(i)で得られた化合物と式III
【化7】

[式中、RおよびRは、上記に定義の通りであり、かつ必要であれば、除去可能な保護基で保護されていて良い]
で示される化合物を反応させる工程
により式Vの化合物を製造し得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法は、中間物の分離をすることなく単一の反応容器中にて適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中に用いた用語は、以下の意味を有する:
「アルキル」とは、直鎖状または分岐状であり得る。好ましくは、アルキルは、C1−4−アルキルである。
「アルコキシ」とは、直鎖状または分岐状のアルコキシであり得る。好ましくは、アルコキシは、C1−4−アルコキシである。
「アシルアミノ」とは、式−NH−C(O)−Rの基で示され、ここでRが、直鎖状または分岐状のC1−10−アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。好ましくは、Rは、C1−4−アルキルである。
【0010】
「アシルオキシ」とは、式−O−C(O)−Rで示され、ここでRは上記に定義の通りである。
「アリール」とは、好ましくは、C6−10アリール、例えばフェニルである。
「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
「ハロアルキル」とは、直鎖状または分岐状のC1−10−アルキルを意味し、1個以上、例えば1個、2個または3個のハロゲン原子、好ましくはフッ素原子または塩素原子で置換されている。好ましくは、ハロアルキルは、1個、2個または3個のフッ素原子または塩素原子で置換されたC1−4−アルキルである。
「有機金属化合物」とは、有機基の炭素原子が金属と結合している化合物を示す。有機金属化合物は、好ましくは、アルキル金属化合物、例えばアルキルリチウム、例えば直鎖または分岐鎖のC1−10アルキルリチウム化合物であるか、または他のアリール金属化合物、例えばアリールリチウムであり得る。より好ましくは、前記アルキルリチウム化合物は、C3−6アルキルリチウム化合物、例えばブチルリチウムまたはヘキシルリチウムである。
【0011】
あるいは、前記有機金属化合物は、有機マグネシウム化合物、例えば直鎖または分岐鎖のアルキルマグネシウム化合物またはアリールマグネシウム化合物であり、好ましくはC1−6アルキルマグネシウム化合物であり得る。有機マグネシウム化合物は、一般に、グリニャール試薬として知られている。前記有機マグネシウム化合物は、好ましくはハロゲン化有機マグネシウム、とりわけヨウ化物または臭化物である。
【0012】
さらに別の態様にて、前記有機金属化合物は、アルキル−またはアリール亜鉛化合物、例えばC1−6−アルキル亜鉛化合物であるか、またはC1−6−アルキル−またはアリール錫化合物であり得る。
Mは、好ましくは、リチウムまたはマグネシウムである。
【0013】
は、前記化合物と固相の連結に適切な反応性置換基であり得る。Rは、適切には、−C(O)R’、−C(O)−OR’、−C(O)−NR’R’’、−R12−NR’R’’、−R12−OR’、−NR’R’’、または−C(O)Xであり、ここでR’およびR’’は、それぞれ独立して水素であるか、または直鎖状または分岐状のC1−10−アルキル、例えばC1−4−アルキルであり、R12は、直鎖状または分岐状のC1−10−アルキル、例えばC1−4−アルキルであり、そしてXは、求核置換基、好ましくはハロゲン、例えばクロロであり得る。Rは、パラ位、オルト位またはメタ位、好ましくはパラ位にあることが適切であり得る。
【0014】
あるいは、Rは、固相材、例えばポリスチレンへの結合基であって良い。好ましくは、前記結合基は、式−C(O)−P、−C(O)−OP、−C(O)−NR’−P、−R12−NR’−P、−R12−OP、−NR’−P、−C(O)−R12−P、−C(O)−OR12−P、−C(O)−NR’−R12−P、−R12−NR’−R12−P、−R12−OR12−P、−NR’−R12−Pまたは−R12−Pであり、ここに、R’、R’’およびR12が上記に定義の通りであり、Pは固相材である。さらに好ましくは、Rが、−C(O)−OP、−C(O)−OR12−P、−C(O)−NH−P、−C(O)−NH−R12−P、−NH−R12−Pまたは−R12−Pであり、ここに、R12が、メチル、例えば−CH−Pである。
【0015】
は好ましくは、前記化合物と生物学的オリゴマーまたはポリマー、またはそのモノマー単位、例えばアミノ酸もしくはポリペプチドの連結に適した反応性置換基である。Rは、適当なヒドロキシ、アシルアミノ、アシルオキシ、アミノ、ハロゲン、スルフヒドリル、C1−10−アルコキシまたはC6−10−アリールオキシであり、好ましくはハロゲンであり得る。
【0016】
式I〜VIIに示した各ベンゼン環は、1個以上の基により置換されていて良い。例えば、Rは、1〜4個の置換基、好ましくは1個または2個の置換基を示し、式I、IIおよびIV〜VIIに示したベンゼン環に結合している。RおよびRは、1〜5個の置換基、好ましくは1個〜3個の置換基を示し、式I、IIおよびIV〜VIIに示した各ベンゼン環に結合している。各置換基は、それらが結合しているベンゼン環の適した位置に存在する。より好ましくは、Rおよび/またはRは、それが結合しているベンゼン環のオルト位またはパラ位の置換基である。
【0017】
、RおよびRはそれぞれ、必要であれば、例えばそれが反応に関与しない−OH基または−NH基を含む場合、除去可能な保護基により保護されていて良い。保護基、その導入および除去については、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」、T. W. Greene et al., John Wiley & Sons Inc., Second Edition 1991に記載されている。好ましくはR、RまたはRはそれぞれ、保護基を必要としない基、例えば、ヒドロキシ、アミノまたはニトロ以外の上記の一覧とした基である。
【0018】
、RまたはRがハロゲンである場合、フルオロまたはクロロであることが好ましい。R、RまたはRがハロアルキルである場合、トリフルオロメチルであることが好ましい。好ましくは、Rは、C1−4−アルキル、ハロゲンまたは水素である。好ましくは、RおよびRは、それぞれ独立してC1−4−アルキルカルバモイル、ジ−C1−4−アルキルカルバモイル、カルバモイル、トリフルオロメチル、フルオロまたはクロロである。好ましくは、RおよびRは同じである。
【0019】
好ましくは、求核置換基であるRおよびRは、それぞれ独立してハロゲンであり、より好ましくはブロモまたはヨードであり、最も好ましくは、RおよびRはそれぞれブロモである。Rは、パラ位、オルト位またはメタ位にあることが適当であり、好ましくはパラ位にある。
【0020】
本発明の1つの態様にて、式IIの化合物を最初に、金属または有機金属化合物と反応させ、式IV:
【化8】

[式中、RおよびRは上記に定義の通りであり、Rは−Mまたは−MXであり、ここでMは金属であり、Xは求核置換基、好ましくはハロゲンである]
で示される化合物を形成する。
【0021】
ここで、前記金属がリチウムであるか、または前記有機金属化合物が有機リチウム化合物である場合、Rは−Liである。前記金属がマグネシウムであるか、または前記有機金属化合物がグリニャール試薬である場合、Rは−MgXであり、Xは、好ましくはハロゲンである。その後、式IVの化合物を、式IIIの化合物と反応させ、式Vの化合物を形成させる。
【0022】
式IVおよびVの化合物は、分離および単離される必要はないが、インサイチュで製造され得る。
【0023】
本発明方法に使用するための適した求電子物質には、二酸化炭素、イソシアネート、ニトリル、ハロゲン化アシル(例えば、ホスゲン)が含まれ、例えば、式Iの化合物(ここで、Rが、カルボキシ、カルバモイル、アルキルカルバモイルまたはアシルである)の形成につながる。あるいは、求電子物質は、誘導体化された固相材、例えばメリフィールド・ポリマーであり得、式VIの化合物と固相を直接的にカップリングさせることが可能である。1つの態様にて、求電子物質は、式X’−(CH−P(ここで、X’は求核置換基、例えばハロゲンまたはトシルオキシであり、nは1〜4の整数、好ましくは1であり、Pは固相材である)で示される化合物である。
【0024】
求電子物質が、二酸化炭素である場合、本方法は、好ましくは、初めに式Vの化合物と、金属または有機金属化合物を反応させ、上記に定義したような式VIの化合物を形成させ(好ましくはインサイチュにて)、式VIの化合物と二酸化炭素を反応させることを含む。
【0025】
求電子物質が、二酸化炭素である場合、好ましくは、塩形態または遊離型の式VII:
【化9】

[式中、R、R、RおよびRは、上記に定義の通りであり;そして
11は、−OH、−OMまたは−OMX(ここで、Mは金属であり、Xは求核置換基、好ましくはハロゲンである]
で示される化合物を形成させる。
【0026】
あるいは、前記カルボキシル化工程には、金属または有機金属化合物の存在下にて、式Vの化合物と二酸化炭素を反応させ、式VIIの化合物を形成することが含まれる。
【0027】
前記加水分解工程には、好ましくは、式VIIの化合物(ここで、R11は−OMまたは−OMXであり、および/またはRは−OMまたは−OMXである)と水または酸を反応させ、塩形態または遊離型の式Iの化合物(ここで、Rはカルボキシであり、Rはヒドロキシである)を形成することが含まれる。適した酸には、塩化アンモニウム、酢酸、硫酸および塩酸が含まれる。pH緩衝溶液もまた、使用できる。好ましくは、弱酸を用いることができ、かつ/または、前記工程を、pH4〜7で行うことができる。反応温度は、都合良くは−50〜50℃、好ましくは−10〜10℃である。
【0028】
あるいは、式VIIの化合物(ここで、R11は−OMまたは−OMXである)を、求電子物質、例えばアミンまたはハライドと反応させ、式Iの化合物(ここで、Rは、−C(O)−NR’R’’または−C(O)−Xであり、R’、R’’およびXが、上記に定義の通りである)を形成することができる。
【0029】
本発明の方法は、不活性な有機溶媒、好ましくは、エーテル溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはtert−ブチルメチルエーテル中にて行うことができる。あるいは、炭化水素溶媒を使用することができる。工程(a)の反応温度は、都合良くは−30〜+10℃、好ましくは−5〜−0℃である。前記反応は、例えば、式IIの化合物1当量に対して0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.2当量、最も好ましくは約1当量の金属または有機金属化合物を用いて行うことができる。式IIIの化合物0.5〜2当量、好ましくは0.8〜1.2当量を、式IIの化合物1当量に対して用いることができる。
【0030】
式Vの化合物と金属または有機金属化合物の反応における温度は、都合良くは0〜+50℃、好ましくは+20〜+30℃である。求電子物質(例えば、CO)との反応のための反応温度は、都合良くは0〜−30℃、好ましくは−5〜−10℃である。例えば酸との加水分解工程を、−10℃〜+10℃、例えば0〜+5℃で行うのが都合よい。式Vの化合物1当量に対して、好ましくは0.5〜2当量、より好ましくは0.8〜1.2当量の金属または有機金属化合物を用いる。
【0031】
基RおよびRは、例えば、エステル化、アミド化または求核置換反応などの標準的な方法により、上記に特定される他のRおよびR基に変換され得る。例えば、式Iの化合物(ここで、Rはヒドロキシである)を、ハロゲン化アシル、例えば塩化アシルと反応させることにより、式Iの化合物(ここで、Rはハロゲンである)に変換することが可能である。
【0032】
好ましくは、式Iの化合物は遊離型である。遊離型または塩形態の前記化合物を、水和物の形態または結晶化に用いる溶媒を含む溶媒和物の形態で得ることができる。
式Iの化合物を、反応混合物から回収し、従来法のように精製することができる。
【0033】
式IIまたは式IIIの出発化合物は、公知であるか、または本技術分野にて知られている方法と類似の方法により製造され得る。有機金属化合物を、標準的な方法、例えばジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン中に懸濁したハロゲン化アルキルまたはハロゲン化アリールと金属、例えばリチウムまたはマグネシウムを反応させることにより製造することができる。前記有機金属化合物は、不活性(酸素なし)無水雰囲気下、例えば窒素下で製造および使用されるのが好ましい。
【0034】
本発明の方法には、式Iの化合物(ここで、Rが反応性置換基である)と固相材をカップリングさせる工程がさらに含まれることが適切であり得る。適した固相材は、例えばDE 4306839 A1に記載されており、天然または合成の有機ポリマーまたは無機ポリマー、特に、例えばビーズのような形態であるか、または好ましくは、適した不活性支持体物質上の表層を含む。適したポリマー材料の例としては、架橋されたポリスチレン、例えばポリスチレン・ピン、Gly−HMD−MA/DMA・ピンおよびHEMA・ピンが含まれる。式Iの化合物は、都合良くは固相上の基とRを反応させることにより、固相材とカップリングされる。故に、固相材には、好ましくは反応基、例えばアミノ基が含まれる。好ましくは、式Iの化合物(ここで、Rは、カルボキシ基であるか、または活性化カルボキシ基、例えばジイソプロピルカルボジイミドとの反応によるもの)を、遊離アミノ基を担持するポリマーと反応させる。
【0035】
式Iの化合物は、リンカーとしても使用することができる。故に、本発明の方法はまた、式Iの化合物、所望により固相材と結合したものと、生物学的オリゴマーまたはポリマー、またはそのモノマー単位をカップリングする工程を適切にさらに含み得る。前記化合物は、生物学的分子に存在する基とRを反応させることにより、生物学的分子、例えばアミノ酸またはポリペプチドと都合良くカップリングされ得る。例えば、ここでRがヒドロキシであり、前記生物学的分子がポリペプチドまたはアミノ酸である場合、生物学的分子の末端のカルボン酸基はRヒドロキシ基によりエステル化され得、所望によれば、ハロゲンによるヒドロキシのインサイチュでの置換を導くための式Iの化合物とハロゲン化アシルの開始反応を介する。
【0036】
さらなる態様にて、本発明は以下を提供する:
(E)式VIII
【化10】

[式中、R12およびR13は、それぞれ除去可能な保護基であり、R12およびR13は異なる]
で示される化合物を製造する方法であって;
式IX
【化11】

で示される化合物と、適したR12供与体化合物を反応させることを含む方法;
(F)一般式XIV
【化12】

[式中、R16はフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基であり、かつR18とは異なり;
17は、水素であるか、または加水分解または水素化分解により除去可能な保護基であり;そして
18は水素であるか、またはフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基である]
で定義される、上記の方法にて有用な中間体。
【0037】
本発明は、例えばWO 02/10192に記載されているようなペプチドの合成に有用な、式VIIIの化合物を製造するための容易、かつ効率的な経路を提供している。前記式XIVの化合物は、式VIIIの化合物の製造における中間化合物として有用である。
【0038】
式IXの化合物は、式X
【化13】

[式中、R13が上記に定義の通りであり、
14は、除去可能な保護基であり、R14は、R12およびR13と異なり、そして
15は、加水分解または水素化分解により除去可能な保護基である]
で示される化合物から製造され得る。
【0039】
保護基、その導入および除去については、例えば「Protective Groups in Organic Synthesis」, T. W. Greene et al., John Wiley & Sons Inc., Second Edition 1991に記載がある。適した保護基供与体化合物、例えばアミノ基保護物質は、当業者に公知であり、例えば以下の保護基の1つを提供する無水物、ハロゲン化物、カルバメートまたはN−ヒドロキシスクシンイミドである。
【0040】
前記保護基であるR12は、好ましくはフルオレニルメトキシカルボニルである。R13またはR16は、好ましくはフルオレニルメトキシカルボニル以外の保護基であり、好ましくは加水分解(例えば、塩基により触媒される加水分解)および/または水素化分解による除去に、R12および/またはR14よりも抵抗性であり、例えばフルオレニルメトキシカルボニルおよび/またはベンジルオキシカルボニルよりも抵抗性である。より好ましくは、R13またはR16は、tert−ブトキシカルボニルである。
【0041】
保護基R14またはR18は、好ましくは、R12よりも加水分解による除去に抵抗性であり、例えばフルオレニルメトキシカルボニルよりも抵抗性である。R14またはR18は、好ましくは、水素化分解により除去され得る。適したR14またはR18置換基には、ベンジルオキシカルボニル、1,1,−ジメチルプロピニルオキシカルボニル、ビニルオキシカルボニル、N−ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル、9−無水メチルオキシカルボニルおよびフェニルアミノチオカルボニル、アリル、ニトロベンジル、トリフェニルメチル、(p−メトキシフェニル)ジフェニルメチル、ジフェニル−4−ピリジルメチルまたはベンジルスルホニルが含まれる。好ましくはR14またはR18は、オキシカルボニル含有保護基、例えばベンジルオキシカルボニル(カルボベンゾオキシ)である。
【0042】
15またはR17としては、以下のものが適し得る:
(i)C1−10−アルキルであり、例えばC1−4−アルキル、好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはtert−ブチル以外のブチルであり、より好ましくはメチルである。
(ii)C3−8−シクロアルキルであり、所望により1個以上のC1−4アルキル、例えばメチルにより置換されていて良い。好ましくは、シクロアルキルは、C3−6−シクロアルキルである。
(iii)C6−10−アリールであり、所望により1個以上の安定な置換基、例えばハロゲンまたはニトロにより置換されていて良い。好ましくは、アリールは、フェニルであり、所望により1個、2個または3個のハロゲン、例えばクロロにより置換されていて良い。
【0043】
(iv)(C6−10−アリール)1−3−C1−10−アルキルであり、所望により(i)1個以上の安定な置換基、例えばハロゲンまたはニトロ、または(ii)それらが結合している環の炭素原子と共に、所望により1個または2個の窒素原子または酸素原子を含む5員環または6員環を形成する2個の置換基、によりアリール基を置換されていてよい。(C6−10−アリール)1−3−C1−10−アルキルは、好ましくは(i)(フェニル)1−3−C1−4−アルキルであり、より好ましくはベンジル、ジフェニルメチルまたはトリフェニルメチルであり、所望により1個、2個または3個のハロゲン、例えばクロロにより各ベンゼン環を置換されていて良く、(ii)アントリルメチル、例えば9−アントリルメチルであるか、または(iii)ピペロニルである。
(v)C6−10−アリール−C1−4−アルコキシ−C1−4−アルキルであり、好ましくはベンジルオキシメチルである。
(vi)C6−10−アリール−カルボニル−C1−4−アルキルであり、好ましくはフェナシルである。
好ましくは、R15またはR17は、水素化分解により除去可能な基であり、例えば、ベンジル、ベンジルオキシメチル、フェナシル、トリフェニルメチル、ピペロニルまたは9−アントリルメチルであり、好ましくはベンジルである。
【0044】
前記式IXの化合物を、(i)式Xのエステル化合物を加水分解し、対応するカルボン酸を得、そして(ii)保護基R14を除去することにより製造することができる。好ましくは、前記加水分解工程は、保護基R14の除去前に行う。前記保護基R14は、還元的水素化(水素化分解)により都合良く除去され得る。加水分解工程が関与するこの経路は、R15が、水素化分解により除去不可能な場合に適している。前記加水分解工程は、塩基により触媒される加水分解、例えば水酸化ナトリウムを用いた加水分解に好ましく、極性の溶媒、例えばメタノール中で適当に行われ得る。
【0045】
あるいは、式IXの化合物を、式Xの化合物(ここで、R15は、水素化分解により除去可能な基、例えばベンジルである)の水素化(水素化分解)により都合良く製造することができる。前記水素化工程を、適した触媒物質、例えばパラジウム−活性炭を用いて都合良く行うことができる。
【0046】
式Xの化合物は、式XI
【化14】

[式中、Xは求核置換基であり、R14およびR15は上記に定義の通りである]
で示される化合物と、式XII
【化15】

[式中、R13は上記に定義の通りである]
で示される化合物を反応させることにより製造することができる。この工程は、適した有機溶媒、好ましくは炭化水素溶媒、より好ましくはトルエン中にて行うことができる。
【0047】
前記式XIIの化合物は、1個のアミノ基が、除去可能な保護基で保護されている、保護されたエチレンジアミンである。式XIの求核置換基Xは、好ましくはハロゲン、例えばフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードであり、より好ましくはクロロである。Xがハロゲンである式XIの化合物を、式XIII
【化16】

で示される化合物と、ハロゲン化アシル、例えばホスゲン、トリ−ホスゲン、クロロギ酸フェニルまたは4−クロロギ酸ニトロフェニル、好ましくは4−クロロホルムギ酸ニトロフェニルを反応させることにより形成することができる。この工程は、有機塩基、例えばジメチルアミノピリジンの存在下、非極性溶媒、例えばトルエン中にて適当に行われ得る。
【0048】
式XIIIの化合物は、市販されているか(例えばR15がメチルであるもの)、または本技術分野にて公知の方法による4−ヒドロキシ−プロリンのエステル化、例えばベンジルアルコールまたはメタノールとの反応により形成することができる。その後、生じたエステルを、適したR14供与体化合物、例えばベンジルオキシカルボニル−N−ヒドロキシスクシンイミドと反応することにより保護する。
【0049】
式XIの化合物は、式XIIIの化合物をハロゲン化アシルと反応させ、そして続いてこの反応の産物を、同じ容器中で式XIIの化合物と反応させ得るため、分離または単離される必要がない。
【0050】
保護基R12の式IXの化合物への添加は、炭酸ナトリウム/アセトニトリルの存在下で適切に行われ得る。
式VIIIの化合物を、従来的な方法で反応混合物から回収し、精製することができる。
【0051】
式VIII〜XIおよび上記式XIIIの化合物にて、プロリンのオキシ置換基は、シス位またはトランス位、好ましくはトランス位で起こり得る。シスまたはトランス異性体は、出発物質として対応するシスまたはトランスヒドロキシプロリンを用いて、個々に製造され得る。
【0052】
出発物質の製造を特に記載していない場合、前記化合物は、公知であるか、または本技術分野にて公知の、または以下に記載の方法に類似の方法により製造され得る。
【0053】
さらなる局面にて、本発明は、式VIIIの化合物(ここでR12はフルオレニルメトキシカルボニルであり、R13は、フルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基である)の製造方法に関し、式VIIIの化合物とフルオレニルメトキシカルボニル供与体化合物、例えばフルオレニルメトキシカルボニル−N−ヒドロキシスクシンイミドを反応させることを含む。
【0054】
本発明は、ここに、以下の特定の態様に関して記載しており、そこでは、以下の略語が使用される:
Fmoc = フルオレニルメトキシカルボニル
Boc = tert−ブトキシカルボニル
Cbo = カルボベンゾキシ(ベンジルオキシカルボニル)
OSu = N−ヒドロキシスクシンイミド
HPTF = ヘプタン画分
JT = ジャケット温度(Jacket temperature)
HPLC = 高速液体クロマトグラフィー
THF = テトラヒドロフラン
TBME = Tert−ブチルメチルエーテル
DMF = ジメチルホルムアミド
【実施例】
【0055】
実施例1
4−(ジフェニル−ヒドロキシ−メチル)−安息香酸の製造
1,4−ジブロモベンゼン(47.2g、0.2M)を、THF(240ml)に加える。澄明溶液を−65℃に冷却する。ブチルリチウム溶液(0.22M、94mlの20%CHX溶液)を、30分間かけて加える。
5分間撹拌後、ベンゾフェノンの溶液(36.4g、180mlTHF中0.2M)を、30分間かけて加える(発熱反応)。混合物を、さらに30分間−65℃で撹拌する。その後、30分かけて温度を−10℃まで上昇させ、前記溶液を、1時間その温度で撹拌する。
【0056】
その後、反応混合物を、再び−65℃に冷却する。30分かけてブチルリチウム溶液(0.22M、94mlの20%シクロヘキサン溶液)を加える。
生じた懸濁液を、200mlのTHFで希釈する。その後、二酸化炭素ガスを−65℃で90分かけて導入する。温度を20℃に上昇させ、混合物を一晩撹拌する。その後、混合物を0℃に冷却し、そして塩化アンモニウム水溶液(120mlの10%溶液)を30分かけて加える。4−(ジフェニル−ヒドロキシ−メチル)−安息香酸が、この段階で形成される。
【0057】
混合物を、真空下で45℃にて蒸発させる。残留物を、酢酸でpH4に調節し、400mlのHOと混合する。2×150mlの酢酸エチルで抽出を行う。有機層を、100mlの水で再度抽出する。合わせたEST相を、10%水酸化カリウム水溶液(2×120ml)と一緒に振る。合わせた水層を、20℃にて塩酸でpH1〜2に調節し、その後2×150mlのTBMEで抽出する。合わせたTBME相を、50mlの水および50mlの飽和NaSOと混合し、硫酸マグネシウムで乾燥し、そして45℃にて真空下で蒸発させ、粗産物を得る。
【0058】
38.3gの粗産物を、40℃にてTBME(300ml)中に溶解する。澄明な黄色溶液を、60ml量に濃縮する(240mlのTBMEから蒸留)。混合物を、40℃にて1時間撹拌する(結晶化する)。50mlのHPTFを添加し、混合物を0℃に冷却し、そして0℃で1時間撹拌する。2×15mlヘプタン画分を蒸発させ、洗浄し、45℃にて一晩真空乾燥し、白色の結晶を得る。
【0059】
4−(ジフェニル−ヒドロキシ−メチル)−安息香酸の固相への結合
15gの4−(ジフェニル−ヒドロキシ−メチル)−安息香酸と7.54gのヒドロキシベンゾトリアゾールを、140mlのDMF中に15分間撹拌しながら溶解する。15.3mlのジ−イソプロピルカルボ−ジ−イミドを加え、溶液を室温で30分間維持する。その後、前記溶液をアミノメチル化ポリスチレンの存在下で室温にて一晩撹拌する。DMF、メタノールおよびTHFで洗浄後、リンカー誘導体化支持体を真空乾燥する。
【0060】
実施例2
4−(ジフェニル−ヒドロキシ−メチル)−安息香酸(別法)の製造
ウェル中12リットルのTBMEに、乾燥した100リットルのHastelloy-Reactor、3,0kgのn−ブチルリチウム(シクロヘキサン中20%;9,37mol)を20分間加え、温度を−5℃に維持する(澄明溶液)。16リットルのTBME中に溶解した2,00kgの1,4−ジブロモベンゼン(8,48mol)を30分間加え、その間温度を−5℃〜0℃に維持する。添加物の容器を3リットルのTBMEで洗浄する。
【0061】
−5℃で30分撹拌後、8リットルの1,55kgのベンゾフェノン(8,50mol)のTBME溶液を20分間添加し、その間温度を−5℃〜0℃に維持する。添加物の容器を、3リットルのTBMEで洗浄する。非常に少量の白色固体が形成される。−5℃で15分撹拌後、工程制御試料を採取する(HPLC1)。反応混合物を、−5℃にてさらに25分撹拌し、そして+25℃まで温める。
【0062】
3,2kgのn−ブチルリチウム(シクロヘキサン中20%;10,00mol)を、25分間添加し、その間温度を+25℃〜27℃に維持する。前記添加は、わずかに発熱し、色が若干緑に変化する。沈殿および泡状物が形成する。20分撹拌後、工程制御試料を採取する(HPLC2)。HPLC2の結果により、さらに0,3kgのn−ブチルリチウムを、+25℃にて35分間撹拌後に加える。15分撹拌後、工程制御試料を採取する(HPLC3)。n−ブチルリチウム添加のラインを、1,5リットルのTBMEで洗浄し、反応物を−10℃まで冷却する。
【0063】
1,99kgのドライアイス(固体CO)を、20分間かけて少しずつ加え、その間温度を−10℃〜−5℃に維持する。反応は発熱性であり、わずかに黄色の沈殿を形成する。−10℃で15分撹拌後、11リットルのTBMEを加え、反応混合物を0℃まで温める。5リットルの18%塩酸水溶液を、15分間かけて加え、その間温度を0℃〜+5℃に維持する。前記添加は発熱性であり、沈殿が溶解する(pH1)。
【0064】
澄明溶液を分離槽に移し、反応装置を5リットルのTBMEで洗浄する。水相を分離後、有機相を20リットルの水で洗浄する。2つの層の分離後、有機相を13リットルの5%KOH水溶液で抽出する。塩基性の水相を分離し、有機層を再び13リットルの5%KOH水溶液で抽出する。合わせた塩基性の水層を、100リットルのHastelloy-Reactorに移す。22リットルのTBMEおよび6リットルの18%塩酸水溶液を、20分かけて添加し、温度を0℃〜+5℃に維持する。前記添加は発熱性であり、白色沈殿を形成するが、低pH値(HCl添加後pH1)で再び溶解する。混合物を10分間撹拌し、分離槽に移す。前記層を分離し、水相を再度16リットルのTBMEで抽出する。層の分離後、合わせた有機相を500mbar/45℃のJTで濃縮し、4〜5リットル量とし(32リットルのTBMEを蒸留したもの)、種結晶を加える。温度を50℃まで上昇させ、20リットルのHPTFをよく撹拌しながらゆっくりと加える。白色沈殿を、50℃のJTで2時間撹拌する。ジャケット温度を、0℃に調節し、懸濁液を0℃に冷やしながら一晩(16時間)撹拌し続ける。白色の懸濁物をろ過し、反応装置を5回、5リットルの母液で洗浄する。残留物を真空下(10mbar)で45℃のJTにて恒量まで乾燥する(一晩)。
【0065】
実施例3
Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OMeからのFmoc−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHの製造
1. ジメチルアミノピリジン(30.5g、250mmol)およびCbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OMe(34.9g、125mmol)をトルエン(870ml)に溶解する。4−クロロギ酸ニトロフェニル(31.5g、157mmol)のトルエン溶液(206ml)を、0℃〜5℃にて20分かけてこの溶液に滴下添加し、さらに2時間撹拌する。次に、Boc−エチレンジアミン(80.1g、500mmol)のトルエン溶液(205ml)を加え、12時間室温で撹拌する。次に、濃硫酸(43.7g、450mmol)の水溶液(873ml)を加え、その間温度を20℃〜25℃に維持する。白色の懸濁物を吸引ろ過し、トルエン(30ml)で洗浄する。トルエン相を水(450ml)、炭酸ナトリウム(10%w/w、450ml)で洗浄し、そして水(各450ml)で3回洗浄する。トルエン相を、連続的に乾燥トルエン(2×300ml)で置換する300mlを留去することにより、共沸的に乾燥させる。ヘプタン(130ml)を、50℃で乾燥トルエン溶液に加え、2時間かけて0℃に冷却する。沈殿産物をろ過し、トルエン/ヘプタン(1:2v/v)(70ml)で2回洗浄し、真空下で50℃にて乾燥し、白色固体としてCbo−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OMeを得る。
【0066】
2. Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OMe(20.0g、43.0mmol)を、テトラヒドロフランとメタノールの1:1混合液(380ml)に溶解する。1Mの水酸化ナトリウム溶液(51.6ml)を加え、生じた混合物を室温で4時間撹拌する。混合物を、硫酸(50ml、1M)の添加によりpH3に調節する。テトラヒドロフランとメタノールを、それ以上留去する溶媒がなくなるまで50mbarで50℃にて蒸留する。残った乳白色の溶液を酢酸イソプロピル(113ml)と水(57ml)で希釈し、相を分離し、酢酸イソプロピル相を、塩化ナトリウム溶液(10%、113ml)で洗浄する。溶媒を、(50℃、50mbar)で蒸留し、Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OH(19.8g)の泡状物を得、さらなる精製なしに次の反応に用いた。
【0067】
3. パラジウム−活性炭(10%、1.94g、0042mmol)を、Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OH(19.4g、43.0mmol)のイソプロパノール(350ml)および水(37ml)の溶液に加える。水素を、4時間の間この混合物に気泡として通し、触媒を濾出し、残留物をイソプロパノール(50ml)と水(50ml)の混合物で洗浄する。イソプロパノール/水相を、連続的にトルエン/イソプロパノール混合液(1:1v/v)で置換する2/3の量を蒸留することにより、共沸的に乾燥させる。残りの乾燥溶液を、真空下で乾燥するまで濃縮し(50℃、200mbar)、(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHを茶色がかった固体として得、さらなる精製なしに用いる。
【0068】
4. (2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OH(5.0g、15mmol)を、40℃にて水(25ml)とトリエチルアミン(1.5g、15mmol)の混合液に溶解する。Fmoc−OSu(4.65g、14mmol)のアセトニトリル溶液(25ml)を、澄明溶液に30分かけて添加し、2時間撹拌する。その後、反応混合液を、塩酸(1m、13ml)でpH3に調節し、さらに1時間撹拌する。アセトニトリルを、(40℃、80mbar)で蒸留し、酢酸イソプロピルで置換し、2つの相の混合物を得る。下方の水相を分離し、残った有機層を水で洗浄し、酢酸イソプロピルで置換しながら2回蒸留し、次に茶色がかった泡状物に濃縮する。この泡状物を、酢酸イソプロピル(25ml)に溶解し、ヘプタン(200ml)を滴下添加し、産物を沈殿させる。固体を濾過し、酢酸イソプロピル/ヘプタンで洗浄し、真空下で40℃にて乾燥し、Fmoc−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHを得る。
【0069】
実施例4
Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OBzlからのFmoc−(2S,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHの製造
Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OBzlの合成は、T. Makoto, H. Guoxia, V. J. Hruby, J. Org. Chem. 2001, 66, 1038−1042に記載されている。実施例3の方法を繰り返すが、Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OMeの代わりにCbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OBzlを用い、工程1、3および4のみを行う(工程2なし)。
【0070】
実施例5
Fmoc−(2R,4R)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHの製造
実施例3または実施例4の方法を繰り返すが、Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OMeまたはCbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OBzlの代わりに、Cbo−(2R,4R)−プロ(4−OH)−OMeまたはCbo−(2R,4R)−プロ(4−OH)−OBzlを用いる。
【0071】
実施例6
Fmoc−(2S,4S)−プロ(4−OCO−NH−CH−CH−NH−Boc)−OHの製造
実施例3または実施例4の方法を繰り返すが、Cbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OMeまたはCbo−(2S,4R)−プロ(4−OH)−OBzlの代わりに、Cbo−(2S,4S)−プロ(4−OH)−OMeまたはCbo−(2S,4S)−プロ(4−OH)−OBzlを用いる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式VIII
【化1】


[式中、R12およびR13はそれぞれ除去可能な保護基であり、かつR12およびR13は互いに異なっている]
で示される化合物を製造する方法であって;
式IX
【化2】



[式中、R13は上記に同じ]
で示される化合物と、R12供与化合物を反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
式IXの化合物が
(i)式X
【化3】


[式中、R13は請求項1に定義の通りであり、R14は除去可能な保護基であり、かつR14はR12およびR13とは異なっており、そしてR15は加水分解または水素化分解により除去可能な保護基である]
で示される化合物を加水分解して対応するカルボン酸を得て、そして
(ii)このカルボン酸の保護基R14を除去することにより得られたものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式XIV
【化4】


[式中、R16はフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基であり、かつR18とは異なっており、R17は水素であるか、または加水分解もしくは水素化分解により除去可能な保護基であり、そしてR18は水素であるか、またはフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基である]
で示される化合物。
【請求項4】
16がtert−ブトキシカルボニルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
請求項1記載の式VIIIの化合物(ここに、R12がフルオレニルメトキシカルボニルであり、R13がフルオレニルメトキシカルボニル以外の除去可能な保護基である)を製造する方法であって、式IXの化合物とフルオレニルメトキシカルボニル供与化合物を反応させることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2010−209077(P2010−209077A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86682(P2010−86682)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2004−558073(P2004−558073)の分割
【原出願日】平成15年12月11日(2003.12.11)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】