4−ヒドロキシタモキシフェンの化学的に安定な組成物
4−ヒドロキシタモキシフェンの化学的に安定な組成物の一種は、これらの2つの形態の間で起こる異性化によって組成物の有効性が悪影響を受けないように、ほぼ等量のZ−4−ヒドロキシタモキシフェン異性体およびE−4−ヒドロキシタモキシフェン異性体によって特徴づけられる。この独創的な組成物は、病状を予防または治療するのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物タモキシフェンの活性代謝物質である4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)の化学的に安定な異性体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タモキシフェンは、身体内の全てのエストロゲン受容体に作用し、作働薬と拮抗薬の両方として、非常に広範囲の全身効果を誘発する。タモキシフェンは、乳房組織におけるエストロゲンの作用を遮断し、それによって既に存在する癌細胞の増殖を遅延または停止させ、新たな癌の発生を防止するため、乳癌に対して広く処方されている。その広範囲にわたる作用のため、タモキシフェンは重大な副作用を引き起こす。それは、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症およびポリープ、深部静脈血栓症および肺動脈塞栓症、肝臓酵素レベルにおける変化、ならびに白内障などの眼毒性のリスクを高める。さらに、タモキシフェンによる治療を受けた患者は、一過性熱感、膣帯下、抑鬱、無月経および吐き気があったと報告している。
【0003】
タモキシフェンの欠点のために、一部の癌研究者は、乳癌の治療として4−ヒドロキシタモキシフェンを代わりに用いることを提案している。4−ヒドロキシタモキシフェンは、エストロゲン受容組織に対する組織特異性を示す選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)として作用する。乳房組織では、それは、エストロゲン拮抗薬として機能する。4−ヒドロキシタモキシフェンが組織特異的活性に寄与する可能性があるエストロゲン関連受容体の転写活性を調節し得ることが研究から明らかになっている。in vitroにおいて、4−ヒドロキシタモキシフェンは、エストロゲン受容体、すなわちERに対する結合アフィニティによる測定で、タモキシフェンより高い効力と、エストロゲン受容体に関してエストラジオールと同様の結合アフィニティを示す(Robertson et al., 1982; Kuiper et al., 1997)。
【0004】
研究データは、乳癌を治療するための4−ヒドロキシタモキシフェンの使用を支持している。in vitro試験で、4−ヒドロキシタモキシフェンは、正常な乳房細胞および癌性の乳房細胞の両方の増殖を阻害する(Nomura, 1985; Malet, 1988, 2002; Charlier, 1995)。さらに、経皮的に投与された4−ヒドロキシタモキシフェンは、マウスで皮下増殖させたヒト乳房腫瘍に対して抗腫瘍効果を示す(米国特許第5,904,930号)。ヒトでは、限られた実験から、経皮投与された4−ヒドロキシタモキシフェンが局所の乳房腫瘍に集中して、全身への分布が非常に少なくなり得ることが明らかになっている(Mauvais-Jarvis, 1986)。4−ヒドロキシタモキシフェンはまた、乳房痛、過度の瘢痕化および女性化乳房を治療するのに、および胸密度を減少させるのに期待できる。
【0005】
4−ヒドロキシタモキシフェン、すなわち1−[4−(2−N−ジメチルアミノエトキシ)フェニル]−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エンの化学構造には2個の炭素原子間の二重結合があり、これが2つの立体異性体の形態を生じさせる。タモキシフェンとは異なり、4−ヒドロキシタモキシフェンは2つの同一のフェニル基を持たず、逆に、アルケン基上に分布した4つの異なる基を有する。従って、シス−トランスという用語は、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体には正確には適用できない。それよりも、反対側にという意味である独語「Entgegen」に由来するE、および、共にという意味である独語「Zusammen」に由来するZが正確に当てはまる(図1および図2参照)。4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体は両方とも生物学的に活性であるが、Z異性体はE異性体よりも生物学的に活性である(米国特許第6,172,263号)。
【0006】
固体状態では、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体混合物は非常に安定である。しかしながら、溶液では、Z体とE体の間の異性化が起こる。Malet et al. は、原液中、培地中または培養細胞であろうとなかろうと、また、温度(−20℃、4℃または37℃)にかかわらず、Z−4−ヒドロキシタモキシフェンのE−4−ヒドロキシタモキシフェンへの自発的な異性化は24〜48時間以内に起こるが、Z/E比が70/30で急速に安定化すると述べている。Malet et al. (2002) を参照のこと。Katzenellenbogen et al. は、最初に99%の純度であるヒドロキシタモキシフェン異性体は、時間および温度に依存した異性化を受け、組織培養培地中、37℃で2日後には、20%程度まで異性化することを立証している。この異性化は37℃よりも4℃の方が緩やかに起こり、その速度は種々の酸化防止剤によって減少させることができる。Katzenellenbogen et al. (1985) を参照のこと。4−ヒドロキシタモキシフェンの供給業者であるSigmaによると、4−ヒドロキシタモキシフェンのE−Z相互変換過程は、光にさらされた場合、および培養培地でインキュベートされた場合は、誘電率の低い溶媒が有利である。
【0007】
この異性化プロセスは、活性成分として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物の活性に影響を及ぼす可能性がある。従って、国際的な医薬品規制要求事項を満たすために、4−ヒドロキシタモキシフェンの化学的に安定な組成物が必要とされている。「安定な」医薬組成物とは、物理的、化学的および生物学的特性を含む、その定性的および定量的組成が、特定の温度および湿度の条件下で一定の期間、例えば25℃/60%相対湿度で3年間、30℃/65%相対湿度で1年間、および/または、40℃/75%相対湿度で6ヶ月間、著しく変化しない組成物のことである。「著しい変化」とは、医薬組成物の効力、有効性または安全性に影響を及ぼすかもしれない定性的および/または定量的な差を指す。
【0008】
安定な4−ヒドロキシタモキシフェン組成物を提供するのに、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化プロセスをより完全に理解することが役立つであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、溶液中の4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化は、Z:E異性体比が約1:1で平衡に達することを見出した。さらに、本発明者らは、一度この平衡比が達成されると、安定であり続けることを見出した。
【0010】
この発見と一致して、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を含む。特定の実施形態においては、この医薬組成物は、経皮投与用に、アルコールおよび水系媒体を含むゲル、溶液あるいは他の剤形に製剤されている。
【0011】
特定の例においては、ゲル製剤、医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.20重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2.0重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含む。ここで、成分のパーセントは、組成物の重量に対する重量である。
【0012】
他の態様では、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を、これを必要とする患者に投与することによって、病状を治療または予防する方法を含む。このような投与が有効である病状には、乳癌、乳房痛、胸密度、過度の瘢痕化および女性化乳房が含まれる。
【0013】
予防または治療の目的のために、この医薬組成物は、4−ヒドロキシタモキシフェンをin vivoでエストロゲン受容体を有する細胞に送達させるどのような手段によっても投与することができる。投与は経皮的に(局所的に)行って、4−ヒドロキシタモキシフェンの一次通過効果および関連する肝臓代謝を回避することが好ましい。経皮投与においては、4−ヒドロキシタモキシフェンはいずれの皮膚表面にも塗布することができる。4−ヒドロキシタモキシフェンは、経皮的に投与すると、エストロゲン受容体を有する局所皮下組織に集中する傾向があることから、乳房に塗布することが有利である。
【0014】
本発明を実施するのに、広範囲の局所的配合物が好適であるが、水性アルコール溶液および水性アルコールゲルが好ましい。これらの製剤における4−ヒドロキシタモキシフェンの濃度は変動し得るものであるが、用量は、エストロゲン誘発効果に有効に対抗する局所4−ヒドロキシタモキシフェン組織濃度を生じるものでなければならない。
【0015】
他の態様では、本発明は、(a)約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物と、(b)容器とを含み、前記医薬組成物が前記容器内に入れられている、保存用のキットを含む。このキットの特定の実施形態においては、前記容器は、単位用量小袋、または計量ポンプ付きの容器のような複数用量容器であることができる。
【0016】
他の態様では、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、溶液中の4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化は、Z:E異性体比が、Malet et al. によって報告された70:30という比ではなく、約50:50という比で平衡に達し、かつ、一度この平衡比が達成されると、安定であり続けるという非常に驚くべき発見に基づいている。本発明者らは、さらに、4−ヒドロキシタモキシフェンのE異性体およびZ異性体の相互変換(図2参照)は、下記式によって決定される平衡定数kを有する可逆反応であることを見出した。
【0018】
【数1】
ここで、[E]および[Z]は対応する異性体の平衡濃度であり、kfおよびkrはそれぞれ、正および逆の反応速度定数である。従って、正反応および逆反応の速度は等しい。
【0019】
4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の挙動に関するこれらの洞察によって、ほぼ等しい量の4−ヒドロキシタモキシフェンのZ異性体およびE異性体を含む化学的に安定な医薬組成物の開発が可能になる。このような組成物において、Z体とE体の間で起こる異性化は、組成物の効力、有効性または安全性に著しい影響を及ぼすことはない。
【0020】
さらに、医薬品規制の厳しさを考慮すると、特に貯蔵寿命安定性に関しては、その組成が時間と共に変化しない製品を提供することが必要とされている。従って、その組成が安定であり、それゆえに確実に、かつ正確に規定された製剤を提供することは非常に有利なことである。
【0021】
当業者であれば、所定の組成物におけるE異性体およびZ異性体の相対量を測定する方法は知っているであろう。例えば、以下に例示されるように、HPLC技術を使用して、Z/E比を評価することが可能である。
【0022】
上記したように、先行技術には70/30のZ/E比を有する組成物について記載されている。加えて、この技術によれば、Z異性体は、そのE異性体よりも高い生物活性を有すると考えられている。従って、これらを総合すると、この先行技術の教示は、Z異性体に富ませた組成物の方に向いていると思われる。
【0023】
これとは対照的に、本発明は、約50/50のZ/E比を有する4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物、およびこのような組成物を製造する方法を提供する。この比は、本質的に組織において見られるin vitro生理的平衡比に一致するので、ヒト被験者への投与に特に適している(Mauvais Jarvis P et al., Cancer Research, 1986, 46, p1521〜1525)。
【0024】
本発明者らは、種々の培地中での、種々の4−ヒドロキシタモキシフェンの濃度での、および種々のアルコール/水系媒体の比での、さらには、種々の光、温度、pHおよび湿度の条件下での4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の平衡を研究するために、いくつもの実験を行った。簡単に言えば、本発明者らは、種々の濃度の4−ヒドロキシタモキシフェンを、種々のZ異性体およびE異性体比で含むアルコール溶液を調製し、その後、種々の温度およびpH値において、時間とともに、これらの溶液中で起こった異性化を観察した(下記の実施例を参照のこと)。6ヶ月までに、Z異性体およびE異性体の安定した比(約1:1)が多くの条件下で達成され、すべての条件下で明確な傾向が見られた。平衡速度は、温度、pH、アルコール/水系媒体含有量、光および4−ヒドロキシタモキシフェン濃度に直接依存していた。すべての場合において、平衡速度のみが影響を受け(下記の実施例を参照のこと)、最終的なZ異性体およびE異性体の比は影響を受けず、驚いたことに変わらず約1:1であった。
【0025】
化学反応速度論の観点からは、誘電率が、加溶媒分解反応速度に影響を及ぼす基本的特性の1つとして認識されている。この点については、分子の分解に対する水の影響を取りあげている出版物がある。例えば、Sanyude et al. は、アスパルテームの分解に対する水:アルコール比の影響を研究した。彼らの報告によれば、溶媒の誘電率が低下するにつれて、すなわち溶媒中の水の濃度が減少すると、アスパルテームの分解速度は増加した。これとは対照的に、本発明者らは、溶媒の誘電率が増加するにつれて、すなわち溶媒中の水の濃度が増加すると、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化速度が増加することを見出した。
【0026】
本発明者らの発見と一致して、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を含む。特定の実施形態においては、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在する。約49%〜51%、より好ましくは約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在することが好ましい。これらの含有量は、医薬組成物の製造時ではなく、平衡状態で定められる。
【0027】
4−ヒドロキシタモキシフェンのZ異性体およびE異性体の平衡比は、純粋なアルコール組成物、またはアルコールと水系媒体の混合物中で、既知の量の異性体を混合することによって、あるいは、組成物を、高温、高い4−ヒドロキシタモキシフェン含有量、高い水系媒体含有量または紫外線などの平衡プロセスを速める状態にさらすことによって達成することができる。本発明者らは、アルコール(エタノールまたはイソプロパノール)の分子の大きさは異性化の速度に影響を及ぼさないことを明らかにした。
【0028】
本発明の医薬組成物は、4−ヒドロキシタモキシフェンをin vivoでエストロゲン受容体に送達することができる、どのような剤形にでも製剤することができる。好ましくは、組成物は「経皮投与」用に製剤される。その表現は、患者の皮膚の表面から、角質層、表皮層および真皮層を通って、微小循環系に至る薬剤の送達方法すべてを意味する。それは典型的には、濃度勾配の下降に沿う拡散によって得られる。その拡散は、細胞内浸透(細胞を通って)、細胞間浸透(細胞間で)、経付属器浸透(毛嚢、汗および皮脂腺を通って)、またはそれらの任意の組合せを介して起こり得る。
【0029】
4−ヒドロキシタモキシフェンの経皮投与には、いくつか利点がある。第1に、それは、経口投与後に起こる肝臓代謝を回避するものである(Mauvais-Jarvis et al., 1986)。第2に、経皮投与は、全身薬剤曝露およびそれに伴う身体全体での非特異的なエストロゲン受容体の活性化によるリスクを大幅に低減させる。これは、局所4−ヒドロキシタモキシフェンが主として局所組織に吸収されるためである。特に、4−ヒドロキシタモキシフェンを乳房に経皮的に塗ると、おそらく多くのエストロゲン受容体が乳房組織内にあるために、高濃度が乳房組織に蓄積して、血漿濃度が高くならない(Mauvais-Jarvis et al., supra)。
【0030】
経皮薬剤投与の有効性は、薬剤濃度、塗布した表面積、塗布の時間および期間、皮膚水和、薬剤の物理化学的特性、ならびに調剤薬と皮膚の間の薬剤の分配などの多くの要素によって決まる。経皮での使用を意図した薬剤の製剤は、これらの要素を利用して、最適な送達を達成するものである。そのような製剤は、多くの場合、角質層の物理化学特性を可逆的に変えることにより角質層の抵抗を低下させることで、角質層の水化を変えることで、共溶媒として働くことで、あるいは細胞間の空間での脂質およびタンパク質の構成を変えることで経皮吸収を改善する浸透促進剤を含む。そのような経皮吸収の促進剤には、界面活性剤、DMSO、アルコール、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸または脂肪アルコール、およびそれらの誘導体、ヒドロキシ酸、ピロリドン類、尿素、精油、それらの混合物などがある。化学的促進剤以外に、物理的方法によって経皮吸収を増加させることができる。例えば、密封包帯によって皮膚の水分増加が誘発される。他の物理的方法にはイオン導入および超音波導入などがあり、それらはそれぞれ電場および高周波超音波を用いて、その大きさ及びイオン特性のためにほとんど吸収されない薬剤の吸収を高めるものである。
【0031】
経皮薬剤送達に関係する多くの要素および方法については、文献に総説がある(REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, Alfonso R. Gennaro
(Lippincott Williams & Wilkins, 2000), pp.836-58; PERCUTANEOUS ABSORPTION:
DRUGS COSMETICS MECHANISMS METHODOLOGY, Bronaugh and Maibach (Marcel Dekker,
1999))。これらの刊行物が明らかにしているように、医薬分野での当業者は、各種の要素および方法を駆使して、有効な経皮送達を達成することができる。
【0032】
経皮投与のためには、4−ヒドロキシタモキシフェンは、水性アルコール溶液、水性アルコールゲル、軟膏、クリーム、ゲル、乳濁液(ローション)、散剤、オイルまたは同様の製剤で送達することができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、4−ヒドロキシタモキシフェンはアルコール製剤中、好ましくは水性アルコールゲル中に配合される。そのようなゲル中の4−ヒドロキシタモキシフェンの量は、ゲル100g当たり4−ヒドロキシタモキシフェンが約0.001g〜約1.0gの範囲とすることができる。好ましくは、ゲル100g当たり4−ヒドロキシタモキシフェンが約0.01g〜約0.2gの範囲である。そのような実施形態では、4−ヒドロキシタモキシフェンは、医薬組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占めることができる。
【0034】
本発明の4−ヒドロキシタモキシフェン製剤は通常、1種以上のアルコール系媒体などの非水系媒体を含む。これらの媒体は、4−ヒドロキシタモキシフェンと使用される浸透促進剤のいずれも溶解できるものでなければならない。それらはまた、低い沸点、好ましくは大気圧下で100℃未満の沸点を有し、皮膚と接触した時に急速に蒸発できるものでなければならない。好ましいアルコール系媒体は、エタノールおよびイソプロパノールである。特に、エタノールは、皮膚と接触した時に急速に蒸発することにより、4−ヒドロキシタモキシフェンの経皮吸収に効果的に寄与する。本発明による製剤中の無水のアルコール系媒体の量は、通常、35重量%〜99.9重量%、好ましくは50重量%〜85重量%、より好ましくは60重量%〜75重量%の範囲である。従って、ゲル製剤中の無水の非水系媒体の量は、約60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%または75重量%とすることができる。
【0035】
製剤はまた、製剤中の任意の親水性分子の可溶化を可能とし、さらに皮膚に潤いを与えるのを促進する水系媒体を含むこともできる。水系媒体はまた、pHを、好ましくは約4〜約12、より好ましくは約6〜約11、さらに好ましくは約8〜約10、最も好ましくは約9に調節することができる。以下に示すように、pH、従って緩衝液の選択は、4−ヒドロキシタモキシフェンのE異性体およびZ異性体の平衡の速度に影響を及ぼす。しかしながら、最終的な平衡比は、緩衝液にかかわらず等しく、約1:1であった。
【0036】
水系媒体には、アルカリ化および塩基性緩衝液などがあり、例えばリン酸緩衝液(例えば、リン酸二ナトリウムまたはリン酸一ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)および単なる純水がある。本発明によれば、リン酸緩衝液が好ましい。水系媒体の量は、好ましくは医薬組成物の0.1重量%〜65重量%、より好ましくは15重量%〜50重量%、さらに好ましくは25重量%〜40重量%の範囲である。従って、水系媒体の量は、約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%とすることができる。製剤が水系媒体を含む場合、製剤中の無水のアルコール系媒体の量は、好ましくは約60%〜約75%である。
【0037】
4−ヒドロキシタモキシフェン製剤はまた、1種以上の経皮吸収促進剤を含むこともできる。好ましい経皮吸収促進剤は脂肪酸エステル類である。脂肪酸エステル浸透促進剤の非常に好ましい一例は、ミリスチン酸イソプロピルである。ミリスチン酸イソプロピルをゲルで使用する場合、その量は、ゲル100g当たり約0.1g〜約5.0gの範囲とすることができる。好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルの量は、ゲル100g当たり約0.5g〜約2.0gの範囲である。そのような実施形態では、ミリスチン酸イソプロピルは、医薬組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占めることができる。
【0038】
さらに、4−ヒドロキシタモキシフェン製剤は、製剤の粘度を上昇させるため、および/または、可溶化剤として機能するための1種以上のゲル化剤を含むことができる。ゲル化剤の性質に応じて、それは、製剤の0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜5重量%を構成することができる。従って、ゲル化剤の量は、約0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5.0%とすることができる。好ましいゲル化剤には、カルボマー類、セルロース誘導体、ポロキサマー類およびポロキサミン類などがある。より詳細には、好ましいゲル化剤は、キトサン、デキストラン、ペクチン類、天然ゴム、ならびにエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体である。一つの非常に好ましいゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0039】
製剤がゲル化剤、特に非前中和アクリルポリマーを含む場合、有利には、それは中和剤も含む。中和剤/ゲル化剤比は、好ましくは10:1〜0.1:1、より好ましくは7:1〜0.5:1、さらに好ましくは4:1〜1:1である。従って、中和剤/ゲル化剤比は、約7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1または0.5:1とすることができる。中和剤は、ポリマーの存在下、媒体に可溶な塩を形成するものでなければならない。中和剤はまた、電荷の中和およびポリマー塩の形成中にポリマー鎖の最適な膨潤を可能とするものでなければならない。有用な中和剤には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノール、トロラミンおよびトロメタミンなどがある。当業者であれば、製剤に用いられるゲル化剤の種類に応じて中和剤を選択するであろう。しかしながら、セルロース誘導体をゲル化剤として用いる場合、中和剤は必要ない。
【0040】
表1に、2つの非常に好ましい4−ヒドロキシタモキシフェンゲル製剤の組成を示す。この成分はすべて、薬剤として許容される成分である。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明の医薬組成物は、タモキシフェンおよび4−ヒドロキシタモキシフェンが有効である非常に多くの病状を治療するために投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、乳癌(Mauvais-Jarvis, 1986; 例4)、乳房痛(Fentiman, 1986, 1988, 1989)、過度の瘢痕化(Hu, 1998; Hu, 2002)あるいは女性化乳房(Gruntmanis and Braunstein (2001))を治療するために投与することができる。本発明の医薬組成物はまた、乳癌になるリスクが高い患者において、その疾患を予防するために、あるいは、その状態がマンモグラフィを妨げる場合に胸密度を減少させるために投与することができる(Atkinson, 1999; Brisson, 2000; Son, 1999)。米国特許出願番号60/433,959(2002年12月18日出願)、60/433,958(2002年12月18日出願)および 60/458,963(2003年4月1日出願)も参照のこと。これらの全部の記載を使用するために、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明は特定の理論いずれにも拘束されるものではないが、抗エストロゲン剤が標的外の組織でエストラジオールに置き換わると、その薬剤の臨床的に重大な副作用が生じる。4−ヒドロキシタモキシフェンおよびエストラジオールはエストロゲン受容体に対して同様の結合アフィニティを有することから、受容体結合についてのそれらの間の競合は、各化合物の濃度が他方のものとほぼ同じである場合には、ほぼ同等であると考えられる。4−ヒドロキシタモキシフェン濃度がエストラジオール濃度より高い場合、前者の方が優先的にエストロゲン受容体に結合し、その逆もまた同様である。4−ヒドロキシタモキシフェンを局所的に投与することにより、標的組織で高濃度を達成しながら、同時にエストラジオール受容体に関する重大な全身的競合が起こるところまで4−ヒドロキシタモキシフェン血漿レベルが上昇しないようにすることができる。
【0044】
女性では、約80pg/mL未満の血漿濃度または正常な閉経前の女性での平均エストラジオール濃度になる4−ヒドロキシタモキシフェンの用量が好ましい。より好ましくは、4−ヒドロキシタモキシフェンの用量は、約50pg/mL未満の血漿濃度になるものである。男性では、約20pg/mL未満の血漿濃度または正常な男性での平均エストラジオール濃度になる4−ヒドロキシタモキシフェンの用量が好ましい。投与する1日用量は、最初に、4−ヒドロキシタモキシフェンの吸収係数、所望の乳房組織濃度、および超えてはならない血漿濃度に基づいて推定することができる。当然のことながら、初期用量は、個々の応答に応じて、各患者で最適化してもよい。
【0045】
乳房の病気の経皮製剤を投与する場合、0.25〜2.0mg/乳房/日のオーダーの4−ヒドロキシタモキシフェンの用量によって所望の結果が得られるはずであり、約0.5〜1.0mg/乳房/日の用量が好ましい。特定の実施形態においては、4−ヒドロキシタモキシフェンの用量は、約0.5mg/乳房/日、0.75mg/乳房/日または1.0mg/乳房/日である。
【0046】
過度の瘢痕化の治療のためには、4−ヒドロキシタモキシフェン0.25〜6μg/cm2/日のオーダーの用量によって所望の結果が得られるはずであり、約0.25〜3μg/cm2/日の用量が好ましく、0.5〜2.5μg/cm2/日の用量がより好ましい。瘢痕化状態の治療のためには、約1.0〜2.0μg/cm2/日の用量が非常に好ましい。
【0047】
本発明の医薬組成物は、保存用のキットに入れることができる。そのようなキットは(a)本明細書中に記載されている医薬組成物と(b)容器とを含み、医薬組成物は容器内に入れられている。容器は、ホイル袋などの単位用量小袋、または計量ポンプ付きの容器などの複数用量容器であってよい。容器は光を通さないことが好ましい。
【0048】
他の態様では、本発明は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を製造する方法に関する。特に、上記のように、本発明の医薬組成物を製造する方法が提供される。
【0049】
一実施形態では、本発明は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程を有する医薬組成物を製造する方法を対象にしている。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、
(i)所定量の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備する工程と、
(ii)少なくとも1種の賦形剤を準備する工程と、
(iii)前記4−ヒドロキシタモキシフェンと前記少なくとも1種の賦形剤とを組み合わせることにより、医薬組成物を形成する工程と、
(iv)前記医薬組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程と
を有する方法を提供する。
【0051】
一実施形態では、前記工程(i)は、所定量のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備すること、および/または、所定量のE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することを含む。4−ヒドロキシタモキシフェンは、種々のE異性体およびZ異性体の相対量を用いて、準備することができる。例えば、1つだけの異性体(例えば、E異性体のみ、またはZ異性体のみ)の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することができる。等量または異なる量の両方の異性体を準備することもできる。
【0052】
賦形剤は当技術分野において公知である。本発明の一実施形態では、賦形剤は、水、薬剤として許容される水性緩衝液、浸透促進剤、ゲル化剤、オイル、中和剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の組成物についての上記の種々の実施形態(成分、その量・・・)は、本発明の方法に入れ換えることができる。当業者であれば、所望の量の所望の成分を準備するために行う方法は知っているであろう。
【0053】
本発明によれば、この方法は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を平衡状態にする工程を有する。この平衡状態は、一般に、医薬組成物が平衡に達しているため、E異性体/Z異性体比が時間と共に著しく変化しない状態である。平衡状態では、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する。
【0054】
平衡に達することの反応速度論は、初期E/Z比(すなわち、初めに準備されたZ異性体およびE異性体それぞれの量)、組成物の最終的なpH、組成物の成分の性質および各量、組成物の誘電率、製造温度、保存温度、および起こり得る光への曝露(持続時間、波長、・・・)などの種々のパラメータに依存する。
【0055】
当業者であれば、異性化の進行をモニターする方法、および平衡状態に実際に達することを実現するためにパラメータを調節する方法は知っているであろう。
【0056】
パラメータの例には、
− 製造中の温度は25〜40℃、例えば30〜35℃の範囲内、および/または、
− 保存温度は25〜40℃、例えば30〜35℃の範囲内、および/または、
− 保存は0.5〜6ヶ月、例えば1、2、3、4、5または6ヶ月、および/または、
− 製造中、光、特に紫外線への曝露、および/または、
− 保存中、光、特に紫外線への曝露、および/または、
− 組成物の最終的なpH、および/または、
− 組成物の誘電率、および/または、
− 組成物中の水/アルコール比、例えば水/エタノール比、および/または、
− 初期E/Z比が2/98、60/40、63/37、70/30、10/90、0/100・・・
が含まれる。
【0057】
本発明の方法はまた、医薬組成物を容器内、例えば単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れる工程も有する。
【実施例】
【0058】
下記の実例となる実施例への言及は、本発明についての理解をさらに深める上で役立つものである。
【0059】
実施例1
本実施例は、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化が溶液中で起こること、および、この異性化が最終的に平衡に達し、この時、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、その残りがE異性体の形態で存在することを実証している。
【0060】
A.4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液の調製
4−ヒドロキシタモキシフェンを含む水性アルコール溶液は、以下のゲル処方に基づいて調製した。
【0061】
4−ヒドロキシタモキシフェン 0.057g、
ミリスチン酸イソプロピル 1.000g、
クルーセル(Klucel) 1.500g、
無水エタノール 66.500g、
リン酸緩衝液 総量が100.000gになるまでの量。
【0062】
水性アルコール溶液中で、リン酸緩衝液をクルーセルの代わりに使用した。この緩衝液の組成は、以下の通りである。
【0063】
KH2PO4 0.8526g、
Na2HPO4 3.4826g、
純水 1000g。
【0064】
5種類の異なった濃度(0.02%、0.04%、0.06%、0.08%および0.10%)の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液を調製した。各溶液の組成を下記の表に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
それぞれ定められた濃度で、Z−4−ヒドロキシタモキシフェン、またはZ−およびE−4−ヒドロキシタモキシフェンの混合物を含む別々の溶液を調製した。3つの別々の製造業者からの4−ヒドロキシタモキシフェンを試験した。
【0067】
・PANCHIM:4−OHT E+Z (バッチ 98RD10079)
・PANCHIM:4−OHT Z (バッチ 7421)
・ICI: 4−OHT Z (バッチ Bx 17)
・SIGMA: 4−OHT Z (バッチ 092K4075)。
【0068】
SIGMAからはZ−4−ヒドロキシタモキシフェンが少量しか入手できなかったので、そのバッチは0.06%の溶液しか調製できなかった。この溶液は、下記の通り、25℃および40℃でのみ試験した。
【0069】
B.研究条件
各溶液は、30mlの褐色ガラス瓶中、3部に分け、次いで25℃、30℃および40℃に調節されたオーブン中に置いた。
【0070】
Z−およびE−4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の相対量を、試験開始時、2週目、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目および5ヶ月目の時点で測定した。
【0071】
C.分析方法
HPLCを使用し、基準として4−ヒドロキシタモキシフェンの標準液を使用し、各4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の相対量を測定した。HPLCの操作パラメータは、以下の通りである。
【0072】
カラム:BECKMAN ULTRASPHERE ODS 250×4.6mm 5μm、
移動相:60% a 0.5%トリエチルアミン水溶液(25%塩酸でpH2.5に調整したもの)、40%アセトニトリル、
流速:0.8ml/min、
波長:245nm、
注入量:20μl、
実施時間:20min。
【0073】
HPLCについては、移動相において2.3μg/mlに近い4−ヒドロキシタモキシフェン濃度が得られるように、水性アルコール溶液を希釈した。
【0074】
【表3】
【0075】
溶出順序は、以下の通りである。
【0076】
4−OHT E:滞留時間 約13.3分、
4−OHT Z:滞留時間 約15.0分。
【0077】
各異性体のパーセンテージは、下記の式を用いて算出した。
【0078】
【数2】
D.データフィッティング
可逆異性化反応および平衡は、以下の関係にある。
【0079】
【数3】
ここで、
A0=試薬の初期濃度;
Aeq=平衡時の同試薬の濃度;
A=時間tでのAの濃度;
kf=正の速度定数;
kr=逆の速度定数;
t=月単位での測定時間
である。
【0080】
【数4】
を時間の関数としてプロットすると、傾きが
【0081】
【数5】
、y切片が0に合う直線が得られる。
【0082】
E.結果
研究についての結果を下記の表に示す。6ヶ月の時点までに、多くの溶液が約1:1のZ異性体およびE異性体比で平衡に達した。異性体相互変換の速度定数は、温度、純粋なZ異性体の初期濃度、およびE/Z異性体混合物の初期濃度に直接依存していた。
【0083】
合計で0.02%から0.1%の濃度範囲にわたる4−ヒドロキシタモキシフェンについて、時間の関数としてのZ異性体およびE異性体の個々の含有量を図3、4および5に示す。4−ヒドロキシタモキシフェン溶液は、25℃(図3)、30℃(図4)および40℃(図5)で保存した。溶液を調製するのに使用した4−ヒドロキシタモキシフェン薬剤物質は、E異性体およびZ異性体の初期濃度比率がそれぞれ63%および37%であった(PANCHIM バッチ 98RD10079)。
【0084】
名目上の4−ヒドロキシタモキシフェンが0.02%から0.10%まで変化させるにつれて、可逆異性化についての速度定数の大きさは直線的に増加した。この速度定数の大きさはまた、温度と共に増加した。
【0085】
初期E/Z比が2/98(バッチ PANCHIM 7421)および0/100(バッチ ICI Bx 17)である4−ヒドロキシタモキシフェン薬剤物質から出発したところ、約1:1の同じ平衡比が観察された(例えば図6を参照のこと)。バッチ PANCHIM 7421(E/Z比2/98)およびICI Bx 17(E/Z比0/100)は、調べた、名目上の4−ヒドロキシタモキシフェンの各濃度について、および各温度で大きさが非常に類似している速度定数を示した。驚いたことに、初期E/Z比が1:1に近ければ近いほど、平衡に達する速度定数が大きくなる(表1を参照のこと)。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例2
本実施例は、ミリスチン酸イソプロピル、存在するアルコールの性質およびアルコール/リン酸緩衝液比が、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。水系媒体(緩衝液または水)でない媒体の選択は、異性化プロセスに著しい影響を及ぼさないようである。非水系媒体の量は異性化速度に反比例するが、最後のZ/E平衡比は非水系媒体の量によって影響されなかった。
【0088】
0.06%の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液を、下記の表に記載したように、調製した。
【0089】
【表5】
【0090】
上記の溶液II、IIIおよびIVは、4−ヒドロキシタモキシフェンのPANCHIM バッチ 98RD10079を用いて調製した。初期E/Z比は63%/37%であった。
【0091】
標準液:ゲル化剤クルーセル(KLUCEL)を含まないゲル製剤、
溶液II:ミリスチン酸イソプロピルを含まず、エタノールを含む標準液、
溶液III:エタノールの代わりにイソプロパノールを使用した溶液II、
溶液IV:エタノール/緩衝液の比が66.5/33.5の代わりに50/50である溶液II。
【0092】
実施例1のように、各溶液での異性化を長期にわたって追跡した。その結果を下記の図に示す。
【0093】
エタノールの代わりにイソプロパノールを使用したことの影響、およびミリスチン酸イソプロピルを除いたことの影響は、4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆反応速度に著しい影響を及ぼさなかった。
【0094】
水系媒体(緩衝液)の濃度を33.5%から50%に増加させたところ、25℃および30℃での速度定数が非常に増加した。40℃では、その差はそれほど顕著ではなかった。緩衝液の濃度を増加させると、混合物の真空の誘電率が増加し、そのため、ヒドロキシル基の分極が促進され、その結果として、4−ヒドロキシタモキシフェンのアルケン基の二重結合の共役が促進される。緩衝液を水で置き換えても、同様の現象が見られた。4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆異性化の反応速度に関する緩衝液のpHの役割に留意することも重要である。
【0095】
実施例3
本実施例は、極端な温度が4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。極端に高い温度は平衡プロセスを速め、一方、極端に低い温度は平衡プロセスを遅らせる。本実施例はまた、実施例2に記載したように、混合物中に含まれる水系媒体の量が異性化速度に影響を及ぼすことを示している。
【0096】
0.06%のZ−4−ヒドロキシタモキシフェンを含む2種の溶液、溶液Vおよび溶液VIを調製した。溶液Vは、純粋なエタノール溶液中に4−ヒドロキシタモキシフェンを含むものである。溶液VIは、66.3%の水と33.7%のエタノールとの混合物中に4−ヒドロキシタモキシフェンを含むものである。各溶液中で起こった異性化の量を、1週間後に、−20℃、25℃および60℃で観測した。その結果を下記の表に示す。1週間後、−20℃および25℃では異性化が見られなかったが、一方、60℃では異性化の開始が見られた。Maletらによって発表された結果を考慮すると、−20℃および25℃で1週間保存した後に、溶液Vおよび溶液VIにおいて異性化を検出することができなかったことは驚くべきことである。
【0097】
【表6】
【0098】
実施例4
本実施例は、光が4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。初期E/Z比が98/2(66%の水と34%のエタノールとの混合物中)である4−ヒドロキシタモキシフェンを0.06%含む各溶液中で起こった異性化の量を、室温で、2つの紫外線波長、380nmおよび254nmで2時間観測した。その結果を下記の表3に示す。
【0099】
紫外線は平衡プロセスを速める。実際に、5分で、室温での異性化プロセスを観測することができる。254nmでは、異性化プロセスは380nmよりも速い。また、254nmでは、異性化現象が、2つの異性体の、フェナントレン誘導体であるimp1およびimp2と呼ばれる不純物への分解と組み合わさる。従って、紫外線下で達成されるE/Z異性体比の平衡は1/1とは異なる。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例5
本実施例は、pHが4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。初期E/Z比が100/0または37/63である4−ヒドロキシタモキシフェンを0.06%含む溶液中で起こった異性化の量を40℃で2ヶ月間観測した。4−ヒドロキシタモキシフェンは、66.5%の無水エタノール、32.4%のリン酸緩衝液(pH2〜8)または炭酸緩衝液(pH10)のいずれか一方、および1%のミリスチン酸イソプロピルの混合物中にあった。その結果を下記の表4に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
低pHおよび高pHは平衡プロセスを速める。つまり、pHが中性(7.0)に近ければ近いほど、平衡が生じるのは遅くなる。しかしながら、pHが、約1:1の平衡E/Z異性体比に著しく影響を及ぼしてはいないようである。
【0104】
実施例6:約1:1のE:Z異性体比にまで平衡化した4−ヒドロキシタモキシフェンの医薬組成物を製造する方法
以下の実施例により、本発明の方法を説明する。これらの方法によって、約1:1のE:Z異性体比を有する4−ヒドロキシタモキシフェンの安定な組成物が有利に得られる。
【0105】
方法A:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.06gを無水エタノール66.5gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル1.0gを加えて混合した。
(iii)この溶液に、水性リン酸緩衝液32.4gを加えて混合した(最終的なpHは約9である)。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、25℃/相対湿度60%で6ヶ月間保存した。
【0106】
方法B:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.08gを無水エタノール53.2gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル0.8gを加えて混合した。
(iii)(最終的なpHが9に達するように)この溶液に、水性リン酸緩衝液25.9gを加えた。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、40℃/相対湿度75%で2ヶ月間保存した。
【0107】
方法C:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ0/100の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.08gを無水エタノール53.2gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル0.8gを加えて混合した。
(iii)(最終的なpHが9に達するように)この溶液に、水性リン酸緩衝液25.9gを加えた。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に入れ、その後、40℃/相対湿度75%で6ヶ月間保存した。
【0108】
方法D:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.06gを無水エタノール66.5gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)この溶液に、水性炭酸緩衝液32.4gを加えて混合した(最終的なpHは12である)。
(iii)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、40℃で15日間保存した。
【0109】
引用刊行物
次の各刊行物は、参照により、その全体が、本明細書に組み込まれる。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】タモキシフェンのE異性体およびZ異性体を示す図である。
【図2】4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆的な異性化を示す図である。
【図3】Panchim バッチ 98RD10079についての25℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図4】Panchim バッチ 98RD10079についての30℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図5】Panchim バッチ 98RD10079についての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図6】ICI バッチ Bx 17についての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図7】溶液 II−IVについての25℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図8】溶液 II−IVについての30℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図9】溶液 II−IVについての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物タモキシフェンの活性代謝物質である4−ヒドロキシタモキシフェン(4−OHT)の化学的に安定な異性体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タモキシフェンは、身体内の全てのエストロゲン受容体に作用し、作働薬と拮抗薬の両方として、非常に広範囲の全身効果を誘発する。タモキシフェンは、乳房組織におけるエストロゲンの作用を遮断し、それによって既に存在する癌細胞の増殖を遅延または停止させ、新たな癌の発生を防止するため、乳癌に対して広く処方されている。その広範囲にわたる作用のため、タモキシフェンは重大な副作用を引き起こす。それは、子宮内膜癌、子宮内膜増殖症およびポリープ、深部静脈血栓症および肺動脈塞栓症、肝臓酵素レベルにおける変化、ならびに白内障などの眼毒性のリスクを高める。さらに、タモキシフェンによる治療を受けた患者は、一過性熱感、膣帯下、抑鬱、無月経および吐き気があったと報告している。
【0003】
タモキシフェンの欠点のために、一部の癌研究者は、乳癌の治療として4−ヒドロキシタモキシフェンを代わりに用いることを提案している。4−ヒドロキシタモキシフェンは、エストロゲン受容組織に対する組織特異性を示す選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)として作用する。乳房組織では、それは、エストロゲン拮抗薬として機能する。4−ヒドロキシタモキシフェンが組織特異的活性に寄与する可能性があるエストロゲン関連受容体の転写活性を調節し得ることが研究から明らかになっている。in vitroにおいて、4−ヒドロキシタモキシフェンは、エストロゲン受容体、すなわちERに対する結合アフィニティによる測定で、タモキシフェンより高い効力と、エストロゲン受容体に関してエストラジオールと同様の結合アフィニティを示す(Robertson et al., 1982; Kuiper et al., 1997)。
【0004】
研究データは、乳癌を治療するための4−ヒドロキシタモキシフェンの使用を支持している。in vitro試験で、4−ヒドロキシタモキシフェンは、正常な乳房細胞および癌性の乳房細胞の両方の増殖を阻害する(Nomura, 1985; Malet, 1988, 2002; Charlier, 1995)。さらに、経皮的に投与された4−ヒドロキシタモキシフェンは、マウスで皮下増殖させたヒト乳房腫瘍に対して抗腫瘍効果を示す(米国特許第5,904,930号)。ヒトでは、限られた実験から、経皮投与された4−ヒドロキシタモキシフェンが局所の乳房腫瘍に集中して、全身への分布が非常に少なくなり得ることが明らかになっている(Mauvais-Jarvis, 1986)。4−ヒドロキシタモキシフェンはまた、乳房痛、過度の瘢痕化および女性化乳房を治療するのに、および胸密度を減少させるのに期待できる。
【0005】
4−ヒドロキシタモキシフェン、すなわち1−[4−(2−N−ジメチルアミノエトキシ)フェニル]−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルブト−1−エンの化学構造には2個の炭素原子間の二重結合があり、これが2つの立体異性体の形態を生じさせる。タモキシフェンとは異なり、4−ヒドロキシタモキシフェンは2つの同一のフェニル基を持たず、逆に、アルケン基上に分布した4つの異なる基を有する。従って、シス−トランスという用語は、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体には正確には適用できない。それよりも、反対側にという意味である独語「Entgegen」に由来するE、および、共にという意味である独語「Zusammen」に由来するZが正確に当てはまる(図1および図2参照)。4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体は両方とも生物学的に活性であるが、Z異性体はE異性体よりも生物学的に活性である(米国特許第6,172,263号)。
【0006】
固体状態では、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性体混合物は非常に安定である。しかしながら、溶液では、Z体とE体の間の異性化が起こる。Malet et al. は、原液中、培地中または培養細胞であろうとなかろうと、また、温度(−20℃、4℃または37℃)にかかわらず、Z−4−ヒドロキシタモキシフェンのE−4−ヒドロキシタモキシフェンへの自発的な異性化は24〜48時間以内に起こるが、Z/E比が70/30で急速に安定化すると述べている。Malet et al. (2002) を参照のこと。Katzenellenbogen et al. は、最初に99%の純度であるヒドロキシタモキシフェン異性体は、時間および温度に依存した異性化を受け、組織培養培地中、37℃で2日後には、20%程度まで異性化することを立証している。この異性化は37℃よりも4℃の方が緩やかに起こり、その速度は種々の酸化防止剤によって減少させることができる。Katzenellenbogen et al. (1985) を参照のこと。4−ヒドロキシタモキシフェンの供給業者であるSigmaによると、4−ヒドロキシタモキシフェンのE−Z相互変換過程は、光にさらされた場合、および培養培地でインキュベートされた場合は、誘電率の低い溶媒が有利である。
【0007】
この異性化プロセスは、活性成分として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物の活性に影響を及ぼす可能性がある。従って、国際的な医薬品規制要求事項を満たすために、4−ヒドロキシタモキシフェンの化学的に安定な組成物が必要とされている。「安定な」医薬組成物とは、物理的、化学的および生物学的特性を含む、その定性的および定量的組成が、特定の温度および湿度の条件下で一定の期間、例えば25℃/60%相対湿度で3年間、30℃/65%相対湿度で1年間、および/または、40℃/75%相対湿度で6ヶ月間、著しく変化しない組成物のことである。「著しい変化」とは、医薬組成物の効力、有効性または安全性に影響を及ぼすかもしれない定性的および/または定量的な差を指す。
【0008】
安定な4−ヒドロキシタモキシフェン組成物を提供するのに、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化プロセスをより完全に理解することが役立つであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、溶液中の4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化は、Z:E異性体比が約1:1で平衡に達することを見出した。さらに、本発明者らは、一度この平衡比が達成されると、安定であり続けることを見出した。
【0010】
この発見と一致して、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を含む。特定の実施形態においては、この医薬組成物は、経皮投与用に、アルコールおよび水系媒体を含むゲル、溶液あるいは他の剤形に製剤されている。
【0011】
特定の例においては、ゲル製剤、医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.20重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2.0重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含む。ここで、成分のパーセントは、組成物の重量に対する重量である。
【0012】
他の態様では、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を、これを必要とする患者に投与することによって、病状を治療または予防する方法を含む。このような投与が有効である病状には、乳癌、乳房痛、胸密度、過度の瘢痕化および女性化乳房が含まれる。
【0013】
予防または治療の目的のために、この医薬組成物は、4−ヒドロキシタモキシフェンをin vivoでエストロゲン受容体を有する細胞に送達させるどのような手段によっても投与することができる。投与は経皮的に(局所的に)行って、4−ヒドロキシタモキシフェンの一次通過効果および関連する肝臓代謝を回避することが好ましい。経皮投与においては、4−ヒドロキシタモキシフェンはいずれの皮膚表面にも塗布することができる。4−ヒドロキシタモキシフェンは、経皮的に投与すると、エストロゲン受容体を有する局所皮下組織に集中する傾向があることから、乳房に塗布することが有利である。
【0014】
本発明を実施するのに、広範囲の局所的配合物が好適であるが、水性アルコール溶液および水性アルコールゲルが好ましい。これらの製剤における4−ヒドロキシタモキシフェンの濃度は変動し得るものであるが、用量は、エストロゲン誘発効果に有効に対抗する局所4−ヒドロキシタモキシフェン組織濃度を生じるものでなければならない。
【0015】
他の態様では、本発明は、(a)約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物と、(b)容器とを含み、前記医薬組成物が前記容器内に入れられている、保存用のキットを含む。このキットの特定の実施形態においては、前記容器は、単位用量小袋、または計量ポンプ付きの容器のような複数用量容器であることができる。
【0016】
他の態様では、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りがE異性体の形態で存在する、活性薬剤として4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、溶液中の4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化は、Z:E異性体比が、Malet et al. によって報告された70:30という比ではなく、約50:50という比で平衡に達し、かつ、一度この平衡比が達成されると、安定であり続けるという非常に驚くべき発見に基づいている。本発明者らは、さらに、4−ヒドロキシタモキシフェンのE異性体およびZ異性体の相互変換(図2参照)は、下記式によって決定される平衡定数kを有する可逆反応であることを見出した。
【0018】
【数1】
ここで、[E]および[Z]は対応する異性体の平衡濃度であり、kfおよびkrはそれぞれ、正および逆の反応速度定数である。従って、正反応および逆反応の速度は等しい。
【0019】
4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の挙動に関するこれらの洞察によって、ほぼ等しい量の4−ヒドロキシタモキシフェンのZ異性体およびE異性体を含む化学的に安定な医薬組成物の開発が可能になる。このような組成物において、Z体とE体の間で起こる異性化は、組成物の効力、有効性または安全性に著しい影響を及ぼすことはない。
【0020】
さらに、医薬品規制の厳しさを考慮すると、特に貯蔵寿命安定性に関しては、その組成が時間と共に変化しない製品を提供することが必要とされている。従って、その組成が安定であり、それゆえに確実に、かつ正確に規定された製剤を提供することは非常に有利なことである。
【0021】
当業者であれば、所定の組成物におけるE異性体およびZ異性体の相対量を測定する方法は知っているであろう。例えば、以下に例示されるように、HPLC技術を使用して、Z/E比を評価することが可能である。
【0022】
上記したように、先行技術には70/30のZ/E比を有する組成物について記載されている。加えて、この技術によれば、Z異性体は、そのE異性体よりも高い生物活性を有すると考えられている。従って、これらを総合すると、この先行技術の教示は、Z異性体に富ませた組成物の方に向いていると思われる。
【0023】
これとは対照的に、本発明は、約50/50のZ/E比を有する4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物、およびこのような組成物を製造する方法を提供する。この比は、本質的に組織において見られるin vitro生理的平衡比に一致するので、ヒト被験者への投与に特に適している(Mauvais Jarvis P et al., Cancer Research, 1986, 46, p1521〜1525)。
【0024】
本発明者らは、種々の培地中での、種々の4−ヒドロキシタモキシフェンの濃度での、および種々のアルコール/水系媒体の比での、さらには、種々の光、温度、pHおよび湿度の条件下での4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の平衡を研究するために、いくつもの実験を行った。簡単に言えば、本発明者らは、種々の濃度の4−ヒドロキシタモキシフェンを、種々のZ異性体およびE異性体比で含むアルコール溶液を調製し、その後、種々の温度およびpH値において、時間とともに、これらの溶液中で起こった異性化を観察した(下記の実施例を参照のこと)。6ヶ月までに、Z異性体およびE異性体の安定した比(約1:1)が多くの条件下で達成され、すべての条件下で明確な傾向が見られた。平衡速度は、温度、pH、アルコール/水系媒体含有量、光および4−ヒドロキシタモキシフェン濃度に直接依存していた。すべての場合において、平衡速度のみが影響を受け(下記の実施例を参照のこと)、最終的なZ異性体およびE異性体の比は影響を受けず、驚いたことに変わらず約1:1であった。
【0025】
化学反応速度論の観点からは、誘電率が、加溶媒分解反応速度に影響を及ぼす基本的特性の1つとして認識されている。この点については、分子の分解に対する水の影響を取りあげている出版物がある。例えば、Sanyude et al. は、アスパルテームの分解に対する水:アルコール比の影響を研究した。彼らの報告によれば、溶媒の誘電率が低下するにつれて、すなわち溶媒中の水の濃度が減少すると、アスパルテームの分解速度は増加した。これとは対照的に、本発明者らは、溶媒の誘電率が増加するにつれて、すなわち溶媒中の水の濃度が増加すると、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化速度が増加することを見出した。
【0026】
本発明者らの発見と一致して、本発明は、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を含む。特定の実施形態においては、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在する。約49%〜51%、より好ましくは約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在することが好ましい。これらの含有量は、医薬組成物の製造時ではなく、平衡状態で定められる。
【0027】
4−ヒドロキシタモキシフェンのZ異性体およびE異性体の平衡比は、純粋なアルコール組成物、またはアルコールと水系媒体の混合物中で、既知の量の異性体を混合することによって、あるいは、組成物を、高温、高い4−ヒドロキシタモキシフェン含有量、高い水系媒体含有量または紫外線などの平衡プロセスを速める状態にさらすことによって達成することができる。本発明者らは、アルコール(エタノールまたはイソプロパノール)の分子の大きさは異性化の速度に影響を及ぼさないことを明らかにした。
【0028】
本発明の医薬組成物は、4−ヒドロキシタモキシフェンをin vivoでエストロゲン受容体に送達することができる、どのような剤形にでも製剤することができる。好ましくは、組成物は「経皮投与」用に製剤される。その表現は、患者の皮膚の表面から、角質層、表皮層および真皮層を通って、微小循環系に至る薬剤の送達方法すべてを意味する。それは典型的には、濃度勾配の下降に沿う拡散によって得られる。その拡散は、細胞内浸透(細胞を通って)、細胞間浸透(細胞間で)、経付属器浸透(毛嚢、汗および皮脂腺を通って)、またはそれらの任意の組合せを介して起こり得る。
【0029】
4−ヒドロキシタモキシフェンの経皮投与には、いくつか利点がある。第1に、それは、経口投与後に起こる肝臓代謝を回避するものである(Mauvais-Jarvis et al., 1986)。第2に、経皮投与は、全身薬剤曝露およびそれに伴う身体全体での非特異的なエストロゲン受容体の活性化によるリスクを大幅に低減させる。これは、局所4−ヒドロキシタモキシフェンが主として局所組織に吸収されるためである。特に、4−ヒドロキシタモキシフェンを乳房に経皮的に塗ると、おそらく多くのエストロゲン受容体が乳房組織内にあるために、高濃度が乳房組織に蓄積して、血漿濃度が高くならない(Mauvais-Jarvis et al., supra)。
【0030】
経皮薬剤投与の有効性は、薬剤濃度、塗布した表面積、塗布の時間および期間、皮膚水和、薬剤の物理化学的特性、ならびに調剤薬と皮膚の間の薬剤の分配などの多くの要素によって決まる。経皮での使用を意図した薬剤の製剤は、これらの要素を利用して、最適な送達を達成するものである。そのような製剤は、多くの場合、角質層の物理化学特性を可逆的に変えることにより角質層の抵抗を低下させることで、角質層の水化を変えることで、共溶媒として働くことで、あるいは細胞間の空間での脂質およびタンパク質の構成を変えることで経皮吸収を改善する浸透促進剤を含む。そのような経皮吸収の促進剤には、界面活性剤、DMSO、アルコール、アセトン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、脂肪酸または脂肪アルコール、およびそれらの誘導体、ヒドロキシ酸、ピロリドン類、尿素、精油、それらの混合物などがある。化学的促進剤以外に、物理的方法によって経皮吸収を増加させることができる。例えば、密封包帯によって皮膚の水分増加が誘発される。他の物理的方法にはイオン導入および超音波導入などがあり、それらはそれぞれ電場および高周波超音波を用いて、その大きさ及びイオン特性のためにほとんど吸収されない薬剤の吸収を高めるものである。
【0031】
経皮薬剤送達に関係する多くの要素および方法については、文献に総説がある(REMINGTON: THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, Alfonso R. Gennaro
(Lippincott Williams & Wilkins, 2000), pp.836-58; PERCUTANEOUS ABSORPTION:
DRUGS COSMETICS MECHANISMS METHODOLOGY, Bronaugh and Maibach (Marcel Dekker,
1999))。これらの刊行物が明らかにしているように、医薬分野での当業者は、各種の要素および方法を駆使して、有効な経皮送達を達成することができる。
【0032】
経皮投与のためには、4−ヒドロキシタモキシフェンは、水性アルコール溶液、水性アルコールゲル、軟膏、クリーム、ゲル、乳濁液(ローション)、散剤、オイルまたは同様の製剤で送達することができる。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、4−ヒドロキシタモキシフェンはアルコール製剤中、好ましくは水性アルコールゲル中に配合される。そのようなゲル中の4−ヒドロキシタモキシフェンの量は、ゲル100g当たり4−ヒドロキシタモキシフェンが約0.001g〜約1.0gの範囲とすることができる。好ましくは、ゲル100g当たり4−ヒドロキシタモキシフェンが約0.01g〜約0.2gの範囲である。そのような実施形態では、4−ヒドロキシタモキシフェンは、医薬組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占めることができる。
【0034】
本発明の4−ヒドロキシタモキシフェン製剤は通常、1種以上のアルコール系媒体などの非水系媒体を含む。これらの媒体は、4−ヒドロキシタモキシフェンと使用される浸透促進剤のいずれも溶解できるものでなければならない。それらはまた、低い沸点、好ましくは大気圧下で100℃未満の沸点を有し、皮膚と接触した時に急速に蒸発できるものでなければならない。好ましいアルコール系媒体は、エタノールおよびイソプロパノールである。特に、エタノールは、皮膚と接触した時に急速に蒸発することにより、4−ヒドロキシタモキシフェンの経皮吸収に効果的に寄与する。本発明による製剤中の無水のアルコール系媒体の量は、通常、35重量%〜99.9重量%、好ましくは50重量%〜85重量%、より好ましくは60重量%〜75重量%の範囲である。従って、ゲル製剤中の無水の非水系媒体の量は、約60重量%、61重量%、62重量%、63重量%、64重量%、65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、69重量%、70重量%、71重量%、72重量%、73重量%、74重量%または75重量%とすることができる。
【0035】
製剤はまた、製剤中の任意の親水性分子の可溶化を可能とし、さらに皮膚に潤いを与えるのを促進する水系媒体を含むこともできる。水系媒体はまた、pHを、好ましくは約4〜約12、より好ましくは約6〜約11、さらに好ましくは約8〜約10、最も好ましくは約9に調節することができる。以下に示すように、pH、従って緩衝液の選択は、4−ヒドロキシタモキシフェンのE異性体およびZ異性体の平衡の速度に影響を及ぼす。しかしながら、最終的な平衡比は、緩衝液にかかわらず等しく、約1:1であった。
【0036】
水系媒体には、アルカリ化および塩基性緩衝液などがあり、例えばリン酸緩衝液(例えば、リン酸二ナトリウムまたはリン酸一ナトリウム)、クエン酸緩衝液(例えば、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸カリウム)および単なる純水がある。本発明によれば、リン酸緩衝液が好ましい。水系媒体の量は、好ましくは医薬組成物の0.1重量%〜65重量%、より好ましくは15重量%〜50重量%、さらに好ましくは25重量%〜40重量%の範囲である。従って、水系媒体の量は、約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%または40%とすることができる。製剤が水系媒体を含む場合、製剤中の無水のアルコール系媒体の量は、好ましくは約60%〜約75%である。
【0037】
4−ヒドロキシタモキシフェン製剤はまた、1種以上の経皮吸収促進剤を含むこともできる。好ましい経皮吸収促進剤は脂肪酸エステル類である。脂肪酸エステル浸透促進剤の非常に好ましい一例は、ミリスチン酸イソプロピルである。ミリスチン酸イソプロピルをゲルで使用する場合、その量は、ゲル100g当たり約0.1g〜約5.0gの範囲とすることができる。好ましくは、ミリスチン酸イソプロピルの量は、ゲル100g当たり約0.5g〜約2.0gの範囲である。そのような実施形態では、ミリスチン酸イソプロピルは、医薬組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占めることができる。
【0038】
さらに、4−ヒドロキシタモキシフェン製剤は、製剤の粘度を上昇させるため、および/または、可溶化剤として機能するための1種以上のゲル化剤を含むことができる。ゲル化剤の性質に応じて、それは、製剤の0.1重量%〜20重量%、好ましくは0.5重量%〜10重量%、さらに好ましくは0.5重量%〜5重量%を構成することができる。従って、ゲル化剤の量は、約0.5%、1.0%、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%または5.0%とすることができる。好ましいゲル化剤には、カルボマー類、セルロース誘導体、ポロキサマー類およびポロキサミン類などがある。より詳細には、好ましいゲル化剤は、キトサン、デキストラン、ペクチン類、天然ゴム、ならびにエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体である。一つの非常に好ましいゲル化剤は、ヒドロキシプロピルセルロースである。
【0039】
製剤がゲル化剤、特に非前中和アクリルポリマーを含む場合、有利には、それは中和剤も含む。中和剤/ゲル化剤比は、好ましくは10:1〜0.1:1、より好ましくは7:1〜0.5:1、さらに好ましくは4:1〜1:1である。従って、中和剤/ゲル化剤比は、約7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1または0.5:1とすることができる。中和剤は、ポリマーの存在下、媒体に可溶な塩を形成するものでなければならない。中和剤はまた、電荷の中和およびポリマー塩の形成中にポリマー鎖の最適な膨潤を可能とするものでなければならない。有用な中和剤には、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノール、トロラミンおよびトロメタミンなどがある。当業者であれば、製剤に用いられるゲル化剤の種類に応じて中和剤を選択するであろう。しかしながら、セルロース誘導体をゲル化剤として用いる場合、中和剤は必要ない。
【0040】
表1に、2つの非常に好ましい4−ヒドロキシタモキシフェンゲル製剤の組成を示す。この成分はすべて、薬剤として許容される成分である。
【0041】
【表1】
【0042】
本発明の医薬組成物は、タモキシフェンおよび4−ヒドロキシタモキシフェンが有効である非常に多くの病状を治療するために投与することができる。例えば、本発明の医薬組成物は、乳癌(Mauvais-Jarvis, 1986; 例4)、乳房痛(Fentiman, 1986, 1988, 1989)、過度の瘢痕化(Hu, 1998; Hu, 2002)あるいは女性化乳房(Gruntmanis and Braunstein (2001))を治療するために投与することができる。本発明の医薬組成物はまた、乳癌になるリスクが高い患者において、その疾患を予防するために、あるいは、その状態がマンモグラフィを妨げる場合に胸密度を減少させるために投与することができる(Atkinson, 1999; Brisson, 2000; Son, 1999)。米国特許出願番号60/433,959(2002年12月18日出願)、60/433,958(2002年12月18日出願)および 60/458,963(2003年4月1日出願)も参照のこと。これらの全部の記載を使用するために、これらはそれぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
本発明は特定の理論いずれにも拘束されるものではないが、抗エストロゲン剤が標的外の組織でエストラジオールに置き換わると、その薬剤の臨床的に重大な副作用が生じる。4−ヒドロキシタモキシフェンおよびエストラジオールはエストロゲン受容体に対して同様の結合アフィニティを有することから、受容体結合についてのそれらの間の競合は、各化合物の濃度が他方のものとほぼ同じである場合には、ほぼ同等であると考えられる。4−ヒドロキシタモキシフェン濃度がエストラジオール濃度より高い場合、前者の方が優先的にエストロゲン受容体に結合し、その逆もまた同様である。4−ヒドロキシタモキシフェンを局所的に投与することにより、標的組織で高濃度を達成しながら、同時にエストラジオール受容体に関する重大な全身的競合が起こるところまで4−ヒドロキシタモキシフェン血漿レベルが上昇しないようにすることができる。
【0044】
女性では、約80pg/mL未満の血漿濃度または正常な閉経前の女性での平均エストラジオール濃度になる4−ヒドロキシタモキシフェンの用量が好ましい。より好ましくは、4−ヒドロキシタモキシフェンの用量は、約50pg/mL未満の血漿濃度になるものである。男性では、約20pg/mL未満の血漿濃度または正常な男性での平均エストラジオール濃度になる4−ヒドロキシタモキシフェンの用量が好ましい。投与する1日用量は、最初に、4−ヒドロキシタモキシフェンの吸収係数、所望の乳房組織濃度、および超えてはならない血漿濃度に基づいて推定することができる。当然のことながら、初期用量は、個々の応答に応じて、各患者で最適化してもよい。
【0045】
乳房の病気の経皮製剤を投与する場合、0.25〜2.0mg/乳房/日のオーダーの4−ヒドロキシタモキシフェンの用量によって所望の結果が得られるはずであり、約0.5〜1.0mg/乳房/日の用量が好ましい。特定の実施形態においては、4−ヒドロキシタモキシフェンの用量は、約0.5mg/乳房/日、0.75mg/乳房/日または1.0mg/乳房/日である。
【0046】
過度の瘢痕化の治療のためには、4−ヒドロキシタモキシフェン0.25〜6μg/cm2/日のオーダーの用量によって所望の結果が得られるはずであり、約0.25〜3μg/cm2/日の用量が好ましく、0.5〜2.5μg/cm2/日の用量がより好ましい。瘢痕化状態の治療のためには、約1.0〜2.0μg/cm2/日の用量が非常に好ましい。
【0047】
本発明の医薬組成物は、保存用のキットに入れることができる。そのようなキットは(a)本明細書中に記載されている医薬組成物と(b)容器とを含み、医薬組成物は容器内に入れられている。容器は、ホイル袋などの単位用量小袋、または計量ポンプ付きの容器などの複数用量容器であってよい。容器は光を通さないことが好ましい。
【0048】
他の態様では、本発明は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を製造する方法に関する。特に、上記のように、本発明の医薬組成物を製造する方法が提供される。
【0049】
一実施形態では、本発明は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程を有する医薬組成物を製造する方法を対象にしている。
【0050】
他の実施形態では、本発明は、
(i)所定量の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備する工程と、
(ii)少なくとも1種の賦形剤を準備する工程と、
(iii)前記4−ヒドロキシタモキシフェンと前記少なくとも1種の賦形剤とを組み合わせることにより、医薬組成物を形成する工程と、
(iv)前記医薬組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程と
を有する方法を提供する。
【0051】
一実施形態では、前記工程(i)は、所定量のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備すること、および/または、所定量のE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することを含む。4−ヒドロキシタモキシフェンは、種々のE異性体およびZ異性体の相対量を用いて、準備することができる。例えば、1つだけの異性体(例えば、E異性体のみ、またはZ異性体のみ)の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することができる。等量または異なる量の両方の異性体を準備することもできる。
【0052】
賦形剤は当技術分野において公知である。本発明の一実施形態では、賦形剤は、水、薬剤として許容される水性緩衝液、浸透促進剤、ゲル化剤、オイル、中和剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される。本発明の組成物についての上記の種々の実施形態(成分、その量・・・)は、本発明の方法に入れ換えることができる。当業者であれば、所望の量の所望の成分を準備するために行う方法は知っているであろう。
【0053】
本発明によれば、この方法は、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む医薬組成物を平衡状態にする工程を有する。この平衡状態は、一般に、医薬組成物が平衡に達しているため、E異性体/Z異性体比が時間と共に著しく変化しない状態である。平衡状態では、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する。
【0054】
平衡に達することの反応速度論は、初期E/Z比(すなわち、初めに準備されたZ異性体およびE異性体それぞれの量)、組成物の最終的なpH、組成物の成分の性質および各量、組成物の誘電率、製造温度、保存温度、および起こり得る光への曝露(持続時間、波長、・・・)などの種々のパラメータに依存する。
【0055】
当業者であれば、異性化の進行をモニターする方法、および平衡状態に実際に達することを実現するためにパラメータを調節する方法は知っているであろう。
【0056】
パラメータの例には、
− 製造中の温度は25〜40℃、例えば30〜35℃の範囲内、および/または、
− 保存温度は25〜40℃、例えば30〜35℃の範囲内、および/または、
− 保存は0.5〜6ヶ月、例えば1、2、3、4、5または6ヶ月、および/または、
− 製造中、光、特に紫外線への曝露、および/または、
− 保存中、光、特に紫外線への曝露、および/または、
− 組成物の最終的なpH、および/または、
− 組成物の誘電率、および/または、
− 組成物中の水/アルコール比、例えば水/エタノール比、および/または、
− 初期E/Z比が2/98、60/40、63/37、70/30、10/90、0/100・・・
が含まれる。
【0057】
本発明の方法はまた、医薬組成物を容器内、例えば単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れる工程も有する。
【実施例】
【0058】
下記の実例となる実施例への言及は、本発明についての理解をさらに深める上で役立つものである。
【0059】
実施例1
本実施例は、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化が溶液中で起こること、および、この異性化が最終的に平衡に達し、この時、約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、その残りがE異性体の形態で存在することを実証している。
【0060】
A.4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液の調製
4−ヒドロキシタモキシフェンを含む水性アルコール溶液は、以下のゲル処方に基づいて調製した。
【0061】
4−ヒドロキシタモキシフェン 0.057g、
ミリスチン酸イソプロピル 1.000g、
クルーセル(Klucel) 1.500g、
無水エタノール 66.500g、
リン酸緩衝液 総量が100.000gになるまでの量。
【0062】
水性アルコール溶液中で、リン酸緩衝液をクルーセルの代わりに使用した。この緩衝液の組成は、以下の通りである。
【0063】
KH2PO4 0.8526g、
Na2HPO4 3.4826g、
純水 1000g。
【0064】
5種類の異なった濃度(0.02%、0.04%、0.06%、0.08%および0.10%)の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液を調製した。各溶液の組成を下記の表に示す。
【0065】
【表2】
【0066】
それぞれ定められた濃度で、Z−4−ヒドロキシタモキシフェン、またはZ−およびE−4−ヒドロキシタモキシフェンの混合物を含む別々の溶液を調製した。3つの別々の製造業者からの4−ヒドロキシタモキシフェンを試験した。
【0067】
・PANCHIM:4−OHT E+Z (バッチ 98RD10079)
・PANCHIM:4−OHT Z (バッチ 7421)
・ICI: 4−OHT Z (バッチ Bx 17)
・SIGMA: 4−OHT Z (バッチ 092K4075)。
【0068】
SIGMAからはZ−4−ヒドロキシタモキシフェンが少量しか入手できなかったので、そのバッチは0.06%の溶液しか調製できなかった。この溶液は、下記の通り、25℃および40℃でのみ試験した。
【0069】
B.研究条件
各溶液は、30mlの褐色ガラス瓶中、3部に分け、次いで25℃、30℃および40℃に調節されたオーブン中に置いた。
【0070】
Z−およびE−4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の相対量を、試験開始時、2週目、1ヶ月目、2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目および5ヶ月目の時点で測定した。
【0071】
C.分析方法
HPLCを使用し、基準として4−ヒドロキシタモキシフェンの標準液を使用し、各4−ヒドロキシタモキシフェン異性体の相対量を測定した。HPLCの操作パラメータは、以下の通りである。
【0072】
カラム:BECKMAN ULTRASPHERE ODS 250×4.6mm 5μm、
移動相:60% a 0.5%トリエチルアミン水溶液(25%塩酸でpH2.5に調整したもの)、40%アセトニトリル、
流速:0.8ml/min、
波長:245nm、
注入量:20μl、
実施時間:20min。
【0073】
HPLCについては、移動相において2.3μg/mlに近い4−ヒドロキシタモキシフェン濃度が得られるように、水性アルコール溶液を希釈した。
【0074】
【表3】
【0075】
溶出順序は、以下の通りである。
【0076】
4−OHT E:滞留時間 約13.3分、
4−OHT Z:滞留時間 約15.0分。
【0077】
各異性体のパーセンテージは、下記の式を用いて算出した。
【0078】
【数2】
D.データフィッティング
可逆異性化反応および平衡は、以下の関係にある。
【0079】
【数3】
ここで、
A0=試薬の初期濃度;
Aeq=平衡時の同試薬の濃度;
A=時間tでのAの濃度;
kf=正の速度定数;
kr=逆の速度定数;
t=月単位での測定時間
である。
【0080】
【数4】
を時間の関数としてプロットすると、傾きが
【0081】
【数5】
、y切片が0に合う直線が得られる。
【0082】
E.結果
研究についての結果を下記の表に示す。6ヶ月の時点までに、多くの溶液が約1:1のZ異性体およびE異性体比で平衡に達した。異性体相互変換の速度定数は、温度、純粋なZ異性体の初期濃度、およびE/Z異性体混合物の初期濃度に直接依存していた。
【0083】
合計で0.02%から0.1%の濃度範囲にわたる4−ヒドロキシタモキシフェンについて、時間の関数としてのZ異性体およびE異性体の個々の含有量を図3、4および5に示す。4−ヒドロキシタモキシフェン溶液は、25℃(図3)、30℃(図4)および40℃(図5)で保存した。溶液を調製するのに使用した4−ヒドロキシタモキシフェン薬剤物質は、E異性体およびZ異性体の初期濃度比率がそれぞれ63%および37%であった(PANCHIM バッチ 98RD10079)。
【0084】
名目上の4−ヒドロキシタモキシフェンが0.02%から0.10%まで変化させるにつれて、可逆異性化についての速度定数の大きさは直線的に増加した。この速度定数の大きさはまた、温度と共に増加した。
【0085】
初期E/Z比が2/98(バッチ PANCHIM 7421)および0/100(バッチ ICI Bx 17)である4−ヒドロキシタモキシフェン薬剤物質から出発したところ、約1:1の同じ平衡比が観察された(例えば図6を参照のこと)。バッチ PANCHIM 7421(E/Z比2/98)およびICI Bx 17(E/Z比0/100)は、調べた、名目上の4−ヒドロキシタモキシフェンの各濃度について、および各温度で大きさが非常に類似している速度定数を示した。驚いたことに、初期E/Z比が1:1に近ければ近いほど、平衡に達する速度定数が大きくなる(表1を参照のこと)。
【0086】
【表4】
【0087】
実施例2
本実施例は、ミリスチン酸イソプロピル、存在するアルコールの性質およびアルコール/リン酸緩衝液比が、4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。水系媒体(緩衝液または水)でない媒体の選択は、異性化プロセスに著しい影響を及ぼさないようである。非水系媒体の量は異性化速度に反比例するが、最後のZ/E平衡比は非水系媒体の量によって影響されなかった。
【0088】
0.06%の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む溶液を、下記の表に記載したように、調製した。
【0089】
【表5】
【0090】
上記の溶液II、IIIおよびIVは、4−ヒドロキシタモキシフェンのPANCHIM バッチ 98RD10079を用いて調製した。初期E/Z比は63%/37%であった。
【0091】
標準液:ゲル化剤クルーセル(KLUCEL)を含まないゲル製剤、
溶液II:ミリスチン酸イソプロピルを含まず、エタノールを含む標準液、
溶液III:エタノールの代わりにイソプロパノールを使用した溶液II、
溶液IV:エタノール/緩衝液の比が66.5/33.5の代わりに50/50である溶液II。
【0092】
実施例1のように、各溶液での異性化を長期にわたって追跡した。その結果を下記の図に示す。
【0093】
エタノールの代わりにイソプロパノールを使用したことの影響、およびミリスチン酸イソプロピルを除いたことの影響は、4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆反応速度に著しい影響を及ぼさなかった。
【0094】
水系媒体(緩衝液)の濃度を33.5%から50%に増加させたところ、25℃および30℃での速度定数が非常に増加した。40℃では、その差はそれほど顕著ではなかった。緩衝液の濃度を増加させると、混合物の真空の誘電率が増加し、そのため、ヒドロキシル基の分極が促進され、その結果として、4−ヒドロキシタモキシフェンのアルケン基の二重結合の共役が促進される。緩衝液を水で置き換えても、同様の現象が見られた。4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆異性化の反応速度に関する緩衝液のpHの役割に留意することも重要である。
【0095】
実施例3
本実施例は、極端な温度が4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。極端に高い温度は平衡プロセスを速め、一方、極端に低い温度は平衡プロセスを遅らせる。本実施例はまた、実施例2に記載したように、混合物中に含まれる水系媒体の量が異性化速度に影響を及ぼすことを示している。
【0096】
0.06%のZ−4−ヒドロキシタモキシフェンを含む2種の溶液、溶液Vおよび溶液VIを調製した。溶液Vは、純粋なエタノール溶液中に4−ヒドロキシタモキシフェンを含むものである。溶液VIは、66.3%の水と33.7%のエタノールとの混合物中に4−ヒドロキシタモキシフェンを含むものである。各溶液中で起こった異性化の量を、1週間後に、−20℃、25℃および60℃で観測した。その結果を下記の表に示す。1週間後、−20℃および25℃では異性化が見られなかったが、一方、60℃では異性化の開始が見られた。Maletらによって発表された結果を考慮すると、−20℃および25℃で1週間保存した後に、溶液Vおよび溶液VIにおいて異性化を検出することができなかったことは驚くべきことである。
【0097】
【表6】
【0098】
実施例4
本実施例は、光が4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。初期E/Z比が98/2(66%の水と34%のエタノールとの混合物中)である4−ヒドロキシタモキシフェンを0.06%含む各溶液中で起こった異性化の量を、室温で、2つの紫外線波長、380nmおよび254nmで2時間観測した。その結果を下記の表3に示す。
【0099】
紫外線は平衡プロセスを速める。実際に、5分で、室温での異性化プロセスを観測することができる。254nmでは、異性化プロセスは380nmよりも速い。また、254nmでは、異性化現象が、2つの異性体の、フェナントレン誘導体であるimp1およびimp2と呼ばれる不純物への分解と組み合わさる。従って、紫外線下で達成されるE/Z異性体比の平衡は1/1とは異なる。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例5
本実施例は、pHが4−ヒドロキシタモキシフェンの異性化に及ぼす影響を実証している。初期E/Z比が100/0または37/63である4−ヒドロキシタモキシフェンを0.06%含む溶液中で起こった異性化の量を40℃で2ヶ月間観測した。4−ヒドロキシタモキシフェンは、66.5%の無水エタノール、32.4%のリン酸緩衝液(pH2〜8)または炭酸緩衝液(pH10)のいずれか一方、および1%のミリスチン酸イソプロピルの混合物中にあった。その結果を下記の表4に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
低pHおよび高pHは平衡プロセスを速める。つまり、pHが中性(7.0)に近ければ近いほど、平衡が生じるのは遅くなる。しかしながら、pHが、約1:1の平衡E/Z異性体比に著しく影響を及ぼしてはいないようである。
【0104】
実施例6:約1:1のE:Z異性体比にまで平衡化した4−ヒドロキシタモキシフェンの医薬組成物を製造する方法
以下の実施例により、本発明の方法を説明する。これらの方法によって、約1:1のE:Z異性体比を有する4−ヒドロキシタモキシフェンの安定な組成物が有利に得られる。
【0105】
方法A:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.06gを無水エタノール66.5gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル1.0gを加えて混合した。
(iii)この溶液に、水性リン酸緩衝液32.4gを加えて混合した(最終的なpHは約9である)。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、25℃/相対湿度60%で6ヶ月間保存した。
【0106】
方法B:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.08gを無水エタノール53.2gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル0.8gを加えて混合した。
(iii)(最終的なpHが9に達するように)この溶液に、水性リン酸緩衝液25.9gを加えた。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、40℃/相対湿度75%で2ヶ月間保存した。
【0107】
方法C:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ0/100の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.08gを無水エタノール53.2gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)次いで、ミリスチン酸イソプロピル0.8gを加えて混合した。
(iii)(最終的なpHが9に達するように)この溶液に、水性リン酸緩衝液25.9gを加えた。
(iv)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に入れ、その後、40℃/相対湿度75%で6ヶ月間保存した。
【0108】
方法D:
(i)E異性体およびZ異性体をそれぞれ60/40の濃度で含む4−ヒドロキシタモキシフェン0.06gを無水エタノール66.5gと混合し、室温で完全に溶解するまで撹拌した。
(ii)この溶液に、水性炭酸緩衝液32.4gを加えて混合した(最終的なpHは12である)。
(iii)最後に、この溶液を防化学線ガラス瓶に移し、その後、40℃で15日間保存した。
【0109】
引用刊行物
次の各刊行物は、参照により、その全体が、本明細書に組み込まれる。
【0110】
【表9】
【0111】
【表10】
【0112】
【表11】
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】タモキシフェンのE異性体およびZ異性体を示す図である。
【図2】4−ヒドロキシタモキシフェンの可逆的な異性化を示す図である。
【図3】Panchim バッチ 98RD10079についての25℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図4】Panchim バッチ 98RD10079についての30℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図5】Panchim バッチ 98RD10079についての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図6】ICI バッチ Bx 17についての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図7】溶液 II−IVについての25℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図8】溶液 II−IVについての30℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【図9】溶液 II−IVについての40℃での異性体濃度比(パーセンテージで)を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む、平衡状態の医薬組成物。
【請求項2】
約48%〜52%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
経皮投与用に製剤されている請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アルコールをさらに含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
浸透促進剤をさらに含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコールゲル、水性アルコール溶液、貼付剤、軟膏、クリーム、乳濁液(ローション)、散剤またはオイルに製剤されている請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコールゲルに製剤されている請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記水性アルコールゲルが、エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコール溶液に製剤されている請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
浸透促進剤、水系媒体、アルコール系媒体およびゲル化剤をさらに含む水性アルコール組成物である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
中和剤をさらに含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記浸透促進剤が少なくとも1種類の脂肪酸エステルを含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
この医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.2重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含み;
成分の前記パーセントが、前記組成物の重量に対する重量である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、前記組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ミリスチン酸イソプロピルが、前記組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記アルコールがエタノールまたはイソプロパノールであり、前記組成物の約60重量%〜75重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、前記組成物の約25重量%〜40重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、
この医薬組成物のpHが、約4〜約12、約6〜約11、約8〜約10または約9である請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ゲル化剤がポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその他のセルロース誘導体であり、前記組成物の約0.5重量%〜5重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールおよびトロメタミンからなる群から選択される中和剤をさらに含み、
前記中和剤が、約4:1〜1:1の間の中和剤/ゲル化剤の比で存在している請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れられている請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
(i)所定量の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備する工程と、
(ii)少なくとも1種の賦形剤を準備する工程と、
(iii)前記4−ヒドロキシタモキシフェンと前記少なくとも1種の賦形剤とを組み合わせることにより、医薬組成物を形成する工程と、
(iv)前記医薬組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程と
を有する医薬組成物を製造する方法。
【請求項24】
4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程を有する医薬組成物を製造する方法。
【請求項25】
前記平衡状態の医薬組成物が、約48%〜52%、例えば約50%のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンと、残りのE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
工程(i)が、所定量のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することと、任意選択で、所定量のE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することを含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物が経皮投与用のものである請求項23または24に記載の方法。
【請求項28】
前記賦形剤が、水、薬剤として許容される水性緩衝液、浸透促進剤、ゲル化剤、オイル、中和剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が、水性アルコールゲル、水性アルコール溶液、貼付剤、軟膏、クリーム、乳濁液(ローション)、散剤およびオイルからなる群から選択される請求項23または24に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物が、水性アルコールゲルである請求項23または24に記載の方法。
【請求項31】
前記水性アルコールゲルが、エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が、水性アルコール溶液である請求項23または24に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物が、浸透促進剤、水系媒体、アルコール系媒体およびゲル化剤をさらに含む水性アルコール組成物である請求項23または24に記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が、中和剤をさらに含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物が浸透促進剤を含む、特に、前記医薬組成物が少なくとも1種類の脂肪酸エステルを含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項36】
前記医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.2重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含み;
成分の前記パーセントが、前記組成物の重量に対する重量である請求項23または24に記載の方法。
【請求項37】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、前記組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ミリスチン酸イソプロピルが、前記組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記アルコールがエタノールまたはイソプロパノールであり、前記組成物の約60重量%〜75重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、前記組成物の約25重量%〜40重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、
前記医薬組成物のpHが、約4〜約12、約6〜約11、約8〜約10または約9である請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記ゲル化剤がポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその他のセルロース誘導体であり、前記組成物の約0.5重量%〜5重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記医薬組成物が、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールおよびトロメタミンからなる群から選択される中和剤をさらに含み、
前記中和剤が、約4:1〜1:1の間の中和剤/ゲル化剤の比で存在している請求項36に記載の方法。
【請求項44】
(v)前記医薬組成物を単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れる工程
をさらに有する請求項23または24に記載の方法。
【請求項45】
請求項23〜44のいずれかに記載の方法で得られる医薬組成物。
【請求項1】
約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する、4−ヒドロキシタモキシフェンを含む、平衡状態の医薬組成物。
【請求項2】
約48%〜52%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
経皮投与用に製剤されている請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
アルコールをさらに含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
浸透促進剤をさらに含む請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコールゲル、水性アルコール溶液、貼付剤、軟膏、クリーム、乳濁液(ローション)、散剤またはオイルに製剤されている請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコールゲルに製剤されている請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記水性アルコールゲルが、エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、水性アルコール溶液に製剤されている請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項11】
浸透促進剤、水系媒体、アルコール系媒体およびゲル化剤をさらに含む水性アルコール組成物である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項12】
中和剤をさらに含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記浸透促進剤が少なくとも1種類の脂肪酸エステルを含む請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
この医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.2重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含み;
成分の前記パーセントが、前記組成物の重量に対する重量である請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、前記組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記ミリスチン酸イソプロピルが、前記組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記アルコールがエタノールまたはイソプロパノールであり、前記組成物の約60重量%〜75重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、前記組成物の約25重量%〜40重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、
この医薬組成物のpHが、約4〜約12、約6〜約11、約8〜約10または約9である請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記ゲル化剤がポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその他のセルロース誘導体であり、前記組成物の約0.5重量%〜5重量%を占める請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項21】
水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールおよびトロメタミンからなる群から選択される中和剤をさらに含み、
前記中和剤が、約4:1〜1:1の間の中和剤/ゲル化剤の比で存在している請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項22】
単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れられている請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項23】
(i)所定量の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備する工程と、
(ii)少なくとも1種の賦形剤を準備する工程と、
(iii)前記4−ヒドロキシタモキシフェンと前記少なくとも1種の賦形剤とを組み合わせることにより、医薬組成物を形成する工程と、
(iv)前記医薬組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程と
を有する医薬組成物を製造する方法。
【請求項24】
4−ヒドロキシタモキシフェンを含む組成物を、約45%〜55%、約46%〜54%、約47%〜53%、約48%〜52%、約49%〜51%または約50%の4−ヒドロキシタモキシフェンがZ異性体の形態で存在し、残りの4−ヒドロキシタモキシフェンがE異性体の形態で存在する平衡状態にする工程を有する医薬組成物を製造する方法。
【請求項25】
前記平衡状態の医薬組成物が、約48%〜52%、例えば約50%のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンと、残りのE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
工程(i)が、所定量のZ異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することと、任意選択で、所定量のE異性体の形態の4−ヒドロキシタモキシフェンを準備することを含む請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記医薬組成物が経皮投与用のものである請求項23または24に記載の方法。
【請求項28】
前記賦形剤が、水、薬剤として許容される水性緩衝液、浸透促進剤、ゲル化剤、オイル、中和剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記医薬組成物が、水性アルコールゲル、水性アルコール溶液、貼付剤、軟膏、クリーム、乳濁液(ローション)、散剤およびオイルからなる群から選択される請求項23または24に記載の方法。
【請求項30】
前記医薬組成物が、水性アルコールゲルである請求項23または24に記載の方法。
【請求項31】
前記水性アルコールゲルが、エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、およびヒドロキシプロピルセルロースを含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記医薬組成物が、水性アルコール溶液である請求項23または24に記載の方法。
【請求項33】
前記医薬組成物が、浸透促進剤、水系媒体、アルコール系媒体およびゲル化剤をさらに含む水性アルコール組成物である請求項23または24に記載の方法。
【請求項34】
前記医薬組成物が、中和剤をさらに含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項35】
前記医薬組成物が浸透促進剤を含む、特に、前記医薬組成物が少なくとも1種類の脂肪酸エステルを含む請求項23または24に記載の方法。
【請求項36】
前記医薬組成物が、
a)約0.01重量%〜0.2重量%の4−ヒドロキシタモキシフェン、
b)約0.5重量%〜2重量%のミリスチン酸イソプロピル、
c)約60重量%〜75重量%の無水アルコール、
d)約25重量%〜40重量%の水系媒体、
e)約0.5重量%〜5重量%のゲル化剤
を含み;
成分の前記パーセントが、前記組成物の重量に対する重量である請求項23または24に記載の方法。
【請求項37】
前記4−ヒドロキシタモキシフェンが、前記組成物の約0.01重量%、0.02重量%、0.03重量%、0.04重量%、0.05重量%、0.06重量%、0.07重量%、0.08重量%、0.09重量%、0.10重量%、0.11重量%、0.12重量%、0.13重量%、0.14重量%、0.15重量%、0.16重量%、0.17重量%、0.18重量%、0.19重量%または0.20重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記ミリスチン酸イソプロピルが、前記組成物の約0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1.0重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%または2.0重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記アルコールがエタノールまたはイソプロパノールであり、前記組成物の約60重量%〜75重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、前記組成物の約25重量%〜40重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記水系媒体がリン酸緩衝液であり、
前記医薬組成物のpHが、約4〜約12、約6〜約11、約8〜約10または約9である請求項36に記載の方法。
【請求項42】
前記ゲル化剤がポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、またはその他のセルロース誘導体であり、前記組成物の約0.5重量%〜5重量%を占める請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記医薬組成物が、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アルギニン、アミノメチルプロパノールおよびトロメタミンからなる群から選択される中和剤をさらに含み、
前記中和剤が、約4:1〜1:1の間の中和剤/ゲル化剤の比で存在している請求項36に記載の方法。
【請求項44】
(v)前記医薬組成物を単位用量小袋内または計量ポンプ付きの複数用量容器内に入れる工程
をさらに有する請求項23または24に記載の方法。
【請求項45】
請求項23〜44のいずれかに記載の方法で得られる医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2007−530498(P2007−530498A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504378(P2007−504378)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003455
【国際公開番号】WO2005/092310
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505233549)ラボラトワール ブザン アンテルナスィヨナル (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003455
【国際公開番号】WO2005/092310
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505233549)ラボラトワール ブザン アンテルナスィヨナル (9)
【Fターム(参考)】
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