説明

4−ブロモフェニル誘導体の製造方法

4-ブロモフェニル誘導体(式(2)の化合物)および2,4-ジブロモフェニル誘導体(式(3)の化合物)の混合物の製造方法であって、以下の反応スキーム2:


(ここで、R1はヒドロキシ;C1-C5アルコキシ;または-NR2R3であり;かつ
R2およびR3は互いに独立して水素;またはC1-C5アルキルである)
に従って、[1] 2相(液-液)系で、臭化物含有源とフェニル誘導体(式(1))とを、過剰の酸化剤、酸および、任意的に、五酸化バナジウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムから選択される触媒の存在下で反応させて、4-ブロモ誘導体(式(2)の化合物)および2,4-ジブロモ誘導体(式(3)の化合物)および中間生成物として、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を形成させる段階を含み、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を、段階[2]において反応させて2,4-ジブロモ誘導体(式(3))にする方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
臭化物含有廃水は、多くの化学反応において、例えばアリールもしくはアルキル置換されたアリールまたはアルキル誘導体の製造のために、グリニャール試薬R-Mg-Br(R=アルキル、アリールもしくはヘテロアリール)が使用されるときに、グリニャール反応において形成される:
【化1】

【0002】
例えば、臭化物含有廃水(MgBrCl)は、フェニルトリアジン中間体の製造方法において形成される(反応スキーム1):
【化2】

【0003】
臭化物含有廃水は環境リスクを示し、行政は、その上限値をますます締めつける傾向を示す。
【0004】
さらには、臭素は高価な化学製品であり、それゆえに、化学プロセスにおいて臭化物を再利用することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、廃水中の臭化物を除去するか、あるいは対応する反応プロセスにおいて基質を再利用することに、一般的な関心が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、臭化塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムを含むグリニャール反応からの廃水の酸化により、in situで臭素が得られるということが見出された。
【0007】
フェニル誘導体、例えばフェノール、ブロモアニソールまたはアニリンの臭素化は4-ブロモフェニル誘導体をもたらし、これは、先に示した反応プロセスに戻すことができる。
【0008】
したがって、本発明は、4-ブロモフェニル誘導体(式(2)の化合物)と2,4-ジブロモフェニル誘導体(式(3)の化合物)との混合物の製造方法であって、以下の反応スキーム2に従って、[1] 2相(液-液)系で、臭化物含有源とフェニル誘導体(式(1))とを、過剰の酸化剤、酸および、任意的に、五酸化バナジウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムから選択される触媒の存在下で反応させて、4-ブロモ誘導体(式(2)の化合物)および2,4-ジブロモ誘導体(式(3)の化合物)および中間生成物として、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を形成させる段階を含み、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を、段階[2]において反応させて2,4-ジブロモ誘導体(式(3))にする方法に関する:
【化3】

【0009】
ここで、R1はヒドロキシ;C1-C5アルコキシ;または-NR2R3であり;かつ
R2およびR3は互いに独立して水素;またはC1-C5アルキルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態においては、本発明の方法は、以下の反応スキーム3に従って、臭化物含有源とフェニル誘導体(式(1))とを2相系で反応させる段階を含む:
【化4】

【0011】
ここで、R1は反応スキーム2におけるのと同義である。
【0012】
R1は好ましくはC1-C5アルコキシであり、最も好ましくはメトキシである。
【0013】
上記反応において、4-ブロモアニソール(化合物(2);R1=メトキシ)の収率は、75〜90%、好ましくは>80%であり、2,4-ジブロモアニソールの収率は、5〜25%、好ましくは<15%であり、2-ブロモアニソールの収率は0〜4%、好ましくは<0.5%である。
【0014】
本発明において使用される臭化物源の量は、90〜150%、好ましくは>110%である。
【0015】
酸化剤の例は、広い濃度範囲のH2O2およびNaOCl、例えば30、35または50%のH2O2および14%のNaOClである。
【0016】
好ましくは、過酸化水素が使用される。
【0017】
酸化剤は、84〜150%、好ましくは>110%の量で使用される。
【0018】
臭化物含有源は、好ましくは、アルカリ金属臭化物塩から選択され、より好ましくはNaBr、KBrまたはLiBrから選択される。
【0019】
さらには、本発明の方法において、アルカリ土類金属臭化物塩を使用することができ、好ましくはMgBr2または混合Mg塩(MgBrxCly)を使用することができる。
【0020】
最も好ましくは、臭化物含有源は、混合Mg塩(MgBrxCly)である。
【0021】
MgBrxClyは例えば、反応スキーム1に従って、フェニルトリアジン中間体の製造において形成される。
【0022】
触媒として、ヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物が、0.0024〜1.4モル%の範囲で、および五酸化バナジウムが0.4〜1.4モル%の範囲で、好ましく使用される。
【0023】
本発明の製造方法において使用される酸は、好ましくは、硫酸および最も好ましくはHClから選択される。
【0024】
酸は、好ましくは、0.6〜3.5当量の量で、より好ましくは0.6〜3.5当量の量で使用される。
【0025】
段階[1]および[2]における反応温度は、15〜50℃である。
【0026】
好ましくは、H2Oを仕込みながらの段階[1]における反応温度は、15〜30℃であり、後反応段階[2]における反応温度は、25〜50℃である。
【0027】
本発明の方法においては、2-ブロモフェニル誘導体が、副生物として、しかし<0.5%の濃度で形成される。
【0028】
4-ブロモフェニル誘導体および2-ブロモフェニル誘導体はほぼ同じ沸点を有するので、これらの誘導体間の化学的選択性が必要となる。これらの生成物の分離は、精留によっては不可能である。
【0029】
本発明の好ましい方法は、4-ブロモアニソールについて良好な(それゆえに2,4-ジブロモアニソールについては少ない)収率をもたらす。
【0030】
4-ブロモアニソールの収率は、75〜90%であり、2,4-ジブロモアニソールの収率は、5〜25%である。
【0031】
合成のヒントは、「第1の」[1]反応においては、アニソールがブロモアニソール(典型的には〜85〜90%の4-ブロモアニソール、2.5〜4%の2-ブロモアニソールおよび6.5〜12.5%の2,4-ジブロモアニソール)に転化されることである。この反応は、触媒の量に依存して、10分間〜3時間で終了する。
【0032】
その後、「第2の」[2]反応において、モノブロモアニソールが2,4-ジブロモアニソールに転化される。全ての2-ブロモアニソールが反応して2,4-ジブロモアニソールになるまで、その進行には、30分間〜2日間までが必要である。過酸化水素の量、臭化物、反応時間、反応温度または触媒が低すぎるなら、この「第2の」[2]反応は生じない。
【0033】
環境保護的な理由だけでなく、臭化物が安価ではないために、本発明の利益は臭化物の再利用にある。
【0034】
式(5)の化合物は、有機UV吸収剤、特にヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)の製造のために重要な中間体である。これらの化合物は、化粧料および工業技術用途のために有用なUV吸収剤である。
【0035】
例えば式(5)の化合物は、EP 0 775 698に記載されるビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの製造のために使用される。
【実施例】
【0036】
以下の実施例において、本発明の方法を、限定することなく説明する。
【0037】
製造例
実施例1:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.49モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(60.4g、0.53モル、水中32%)および五酸化バナジウム(1.3g、0.007モル)と混合する。過酸化水素(68.0g、0.60モル、水中30%)を、20℃にて35分間かけて、この反応混合物に添加する。室温で5時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールを含む粗製物質90.0gを生じる。
【0038】
実施例2:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.60モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(60.4g、0.53モル、水中32%)および五酸化バナジウム(1.3g、0.007モル)と混合する。過酸化水素(68.0g、0.60モル、水中30%)を、20℃にて40分間かけて、この反応混合物に添加する。室温で5.5時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールを含む粗製物質101.0gを生じる。
【0039】
実施例3:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)および塩酸(57.0g、0.50モル、水中32%)と混合する。過酸化水素(66.9g、0.59モル、水中30%)を、20℃にて5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で24時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソール、2,4-ジブロモアニソールおよび1%未満の2-ブロモアニソールの混合物を含む粗製物質89.5gを生じる。
【0040】
実施例4:
2.5リットルの容器中で、臭化物含有廃水(2.8モルの臭化物)を、アニソール(270.5g、2.5モル)、塩酸(285.0g、2.5モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(75mg、0.06ミリモル)と混合する。
【0041】
過酸化水素(0.30リットル、2.95モル、水中30%)を、20℃にて5時間かけて、この反応混合物に添加する。
【0042】
室温で18時間撹拌後、50mlの亜硫酸水素ナトリウム溶液(水中40%;その後過酸化物陰性であることについて試験)を添加することによって、過剰の過酸化水素を破壊する。
【0043】
相分離後、水性溶液相を0.30リットルのトルエンで抽出する。合わせた有機相を炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄する。トルエンおよび残留する水を留去する(共沸)。
【0044】
減圧下での精留(50ミリバール、110〜112℃)は、4-ブロモアニソール(379g、81%)を与えた。残渣(98g)は、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物を含む。GCを用いて、定性的および定量的にプロセス制御を行う。
【0045】
後処理手順に対する代案
-過酸化物は、亜硫酸ナトリウム(20g)の添加、亜硫酸水素ナトリウム(50ml)の添加、または単にある時間40℃まで加熱することによって、破壊することができる。
【0046】
-中和のために、有機相を炭酸水素ナトリウムで洗浄することが可能である。
【0047】
実施例5:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.75モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(57.0g、0.50モル、水中32%)および五酸化バナジウム(1.3g、0.007モル)と混合する。過酸化水素(66.9g、0.59モル、水中30%)を、20℃にて30分間かけて、この反応混合物に添加する。室温で18時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールを含む粗製物質64.0gを生じる。
【0048】
実施例6:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(57.0g、0.50モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.15g、0.116ミリモル)と混合する。過酸化水素(66.9g、0.59モル、水中30%)を、20℃にて5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で18時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールを含む粗製物質84.5gを生じる。
【0049】
実施例7:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.60モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(60.4g、0.53モル、水中32%)および五酸化バナジウム(1.3g、0.007モル)と混合する。次亜塩素酸ナトリウム(358.0g、0.70モル、水中14%)を、20℃にて1時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で22時間撹拌後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールを含む粗製物質83.0gを生じる。
【0050】
実施例8:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(57.0g、0.50モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.015g、0.0121ミリモル)と混合する。過酸化水素(66.9g、0.59モル、水中30%)を、20℃にて5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で18時間撹拌後、混合物を40℃まで1時間加熱して、溶液中の過酸化物の残渣を破壊する。相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールおよび0.2%未満の2-ブロモアニソールの粗製混合物を生じる。
【0051】
実施例9:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(171.0g、1.5モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.015g、0.012ミリモル)と混合する。過酸化水素(64.6g、0.57モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温でおよそ17時間撹拌後、混合物を40℃まで1時間加熱する。その後、相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物を含む粗製物質95.0gを生じる。GCおよびNMRは、81対19の比を与える。2-ブロモアニソールの含有量は0.2%未満である。4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物は、減圧下での精留によって分離され得る。
【0052】
実施例10:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(171.0g、1.5モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.015g、0.012ミリモル)と混合する。過酸化水素(64.6g、0.57モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。この混合物を室温でさらに1時間撹拌する。その後、混合物全体を40℃までさらに1時間加熱する。次に2相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物を含む粗製物質90.5gを生じる。GCおよびNMRにより、83対17の比が得られる。2-ブロモアニソールの含有量は0.2%未満である。4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物は、減圧下での精留によって分離され得る。
【0053】
実施例11:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.56モルの臭化物)を、アニソール(54.1g、0.50モル)、塩酸(171.0g、1.5モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.015g、0.012ミリモル)と混合する。過酸化水素(64.6g、0.57モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。この混合物を室温でさらに1時間撹拌する。その後、混合物全体を約40℃まで17時間加熱する。次に2相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物を含む粗製物質91.0gを生じる。GCおよびNMRにより、83対17の比が得られる。2-ブロモアニソールの含有量は0.2%未満である。このデータから収率は、83%の4-ブロモアニソールおよび12%の2,4-ジブロモアニソールであると計算される。4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物は、減圧下での精留によって分離され得る。
【0054】
実施例12:
2.5リットルの容器中で、臭化物含有廃水(2.13モルの臭化物)を、アニソール(208g、1.90モル)、塩酸(660g、5.70モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.06g、0.05ミリモル)と混合する。過酸化水素(149g、2.17モル、水中30%)を、18〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。この混合物を室温でさらに1時間撹拌する。その後、混合物全体を約40℃までさらに1時間加熱する。次に2相を分離して、4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物を含む粗製物質373gを生じる。GCおよびNMRにより、81対19の比が得られる。2-ブロモアニソールの含有量は<0.2%である。4-ブロモアニソールおよび2,4-ジブロモアニソールの混合物は、減圧下での精留によって分離され得る。
【0055】
実施例13:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.84モルの臭化物)を、フェノール(79.1g、0.84モル)、塩酸(95.7g、0.84モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.050g、0.04ミリモル)と混合する。過酸化水素(100.4g、0.88モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で約17時間撹拌後、相を分離して、粗製物質148.1gを生じる。GC分析は、クロマトグラムに3つのピーク:2-ブロモフェノール、4-ブロモフェノールおよび2,4-ジブロモフェノールを示す。〜79%(面積)を有する主生成物は4-ブロモフェノールであった。構造は、この混合物のNMR分析によって確認される。
【0056】
実施例14:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.84モルの臭化物)を、フェノール(20.0g、0.21モル)、塩酸(95.7g、0.84モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.050g、0.04ミリモル)と混合する。過酸化水素(100.4g、0.88モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。過酸化水素の半量を添加後、黄-オレンジ色の沈殿が形成された。室温で約17時間撹拌後、この沈殿をろ別する。74.9gの乾燥生成物が分離された。GCおよびNMRは、1種類の単一の化合物:2,4,6-トリブロモフェノールを示した。
【0057】
実施例15:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.79モルの臭化物)を、エチルフェニルエーテル(96.7g、0.79モル)、塩酸(90.0g、0.79モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.050g、0.04ミリモル)と混合する。過酸化水素(100.4g、0.88モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で約17時間撹拌後、相を分離して、133.4gの粗製物質を生じる。GC分析は、クロマトグラムに3つの主なピーク:エチル-2-ブロモフェニルエーテル、エチル-4-ブロモフェニルエーテル、エチル-2,4-ジブロモフェニルエーテルを示す。主生成物は92.3%(面積)を有するエチル-4-ブロモフェニルエーテルである。構造は、この混合物のNMR分析によって確認される。
【0058】
実施例16:
1リットルの容器中で、臭化物含有廃水(0.84モルの臭化物)を、トルエン(77.4g、0.84モル)、塩酸(95.5g、0.84モル、水中32%)およびヘプタモリブデン酸アンモニウム4水和物(0.025g、0.018ミリモル)と混合する。過酸化水素(100.4g、0.88モル、水中30%)を、20〜25℃にて約5時間かけて、この反応混合物に添加する。室温で約17時間撹拌後、相を分離して、105.0gの粗製物質を生じる。GC分析は、クロマトグラムに4つの主なピーク:トルエン、2-ブロモトルエン、4-ブロモトルエン、2,4-ジブロモトルエンおよび臭化ベンジルを示す。主生成物は31.7%(面積)の4-ブロモトルエンおよび30.1%(面積)の臭化ベンジルである。構造は、この混合物のNMR分析によって確認される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-ブロモフェニル誘導体(式(2)の化合物)および2,4-ジブロモフェニル誘導体(式(3)の化合物)の混合物の製造方法であって、以下の反応スキーム2:
【化1】

(ここで、R1はヒドロキシ;C1-C5アルコキシ;または-NR2R3であり;かつ
R2およびR3は互いに独立して水素;またはC1-C5アルキルである)
に従って、[1] 2相(液-液)系で、臭化物含有源とフェニル誘導体(式(1))とを、過剰の酸化剤、酸および、任意的に、五酸化バナジウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムから選択される触媒の存在下で反応させて、4-ブロモ誘導体(式(2)の化合物)および2,4-ジブロモ誘導体(式(3)の化合物)および中間生成物として、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を形成させる段階を含み、2-ブロモ誘導体(式(4)の化合物)を、段階[2]において反応させて2,4-ジブロモ誘導体(式(3))にする方法。
【請求項2】
以下の反応スキーム3:
【化2】

(ここで、R1は請求項1と同義である)
に従って、2相系で、臭化物含有源とフェニル誘導体(式(1))とを、過剰の酸化剤、酸および、任意的に、五酸化バナジウムおよびヘプタモリブデン酸アンモニウムから選択される触媒の存在下で反応させる段階を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
R1がC1-C5アルコキシである請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
R1がメトキシである請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
4-ブロモアニソールの収率が75〜90%であり、2,4-ジブロモアニソールの収率が5〜25%である請求項4記載の方法。
【請求項6】
酸化剤が、H2O2およびNaOClから選択される請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
酸化剤がH2O2である請求項6記載の方法。
【請求項8】
酸化剤が84〜150%の量で使用される請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
臭化物含有源がアルカリ金属臭化物塩から選択される請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
臭化物含有源が、NaBr、KBrおよびLiBrから選択される請求項9記載の方法。
【請求項11】
臭化物含有源がアルカリ土類金属臭化物塩から選択される請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
臭化物含有源が、MgBr2および混合Mg塩(MgBrxCly)から選択される請求項11記載の方法。
【請求項13】
臭化物含有源が混合Mg塩(MgBrxCly)である請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
臭化物含有源が90〜150%の量で使用される請求項9〜13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
酸が、HClおよび硫酸から選択される請求項1〜14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
酸がHClである請求項15記載の方法。
【請求項17】
酸が0.6〜3.5当量の量で使用される請求項15または16記載の方法。
【請求項18】
段階[1]および[2]における反応温度が15〜50℃である請求項1〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
段階[1]における反応温度が15〜30℃であり、段階[2]における反応温度が25〜50℃である請求項1〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
有機UV吸収剤の製造のための、請求項1〜18のいずれか1項記載の方法に従って製造される式(2)の化合物の使用。

【公表番号】特表2011−529939(P2011−529939A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521535(P2011−521535)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059854
【国際公開番号】WO2010/015559
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】