説明

4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール類及び除草剤としてのその使用

一般式(I)の4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール類、さらに除草剤としてのそれらの使用が開示される。上記式(I)において、R1、R2、R3及びR4は、水素及び有機ラジカル(例えばアルキル)のようなラジカルを表し、Yは水素又は保護基(例えばトシル)を表す。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除草剤の技術分野に関し、特に、有用植物の作物栽培における広葉雑草及びイネ科雑草の選択的防除のための除草剤の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の刊行物から、特定のベンゾイルピラゾール類が除草特性を有することが既に知られている。従って特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、及び特許文献6は、種々のラジカルで置換されたベンゾイルピラゾールについて記述している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE2513750
【特許文献2】EP0 352543
【特許文献3】EP0 203428
【特許文献4】WO97/41106
【特許文献5】WO00/03993
【特許文献6】US4,557,753
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの刊行物から公知の化合物の除草活性は、しばしば不十分である。従って、従来技術において開示される化合物の特性より良好な除草特性を有する除草活性化合物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
フェニル環が3位にチオ基、及び4位にトリフルオロメチル基を有する特定の4−ベンゾイルピラゾールは、除草剤としての使用に特に適していることが今や見出された。本発明の主題の一部は、式(I)
【化1】

[式中、
1は(C1−C4)−アルキルであり、
2は水素又は(C1−C4)−アルキルであり、
3は(C1−C4)−アルキルであり、
4は(C1−C4)−アルキルであり、
Yは水素、(C1−C6)−アルキルスルホニル、(C1−C4)−アルコキシ−(C1−C6)−アルキルスルホニルであるか、又はフェニルスルホニル、チオフェニル−2−スルホニル、ベンゾイル、ベンゾイル−(C1−C6)−アルキル又はベンジルであり、これらはそれぞれハロゲン、(C1−C4)−アルキル及び(C1−C4)−アルコキシからなる群からのm個の同じか若しくは異なるラジカルで置換され、
mは0、1、2又は3であり、
nは0、1又は2である]
の4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール又はその塩である。
【0006】
Yが水素である場合、本発明の式(I)の化合物は、溶媒及びpHのような外部条件に依存して、異なる互変異性構造:
【化2】

で存在し得る。
【0007】
置換基の性質に依存して、一般式(I)の化合物は、塩基との反応により除去され得る酸性プロトンを含む。適切な塩基は、例えばヒドリド類、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びカルシウムの水酸化物及び炭酸塩、並びにアンモニア及び有機アミン(例えばトリエチルアミン及びピリジン)である。有機酸(例えばギ酸又は酢酸)、及び無機酸(例えばリン酸、塩酸又は硫酸)との付加物を形成することにより塩を形成することも可能である。このような塩もまた本発明の主題の一部を形成する。
【0008】
式(I)及び全てのこの後の式において、2個より多くの炭素原子を有するアルキルラジカルは直鎖でも分枝鎖でもよい。アルキルラジカルは、例えばメチル、エチル、n−又はi−プロピル、n−、i−、t−又は2−ブチル、ペンチル、ヘキシル(例えばn−ヘキシル、i−ヘキシル及び1,3−ジメチルブチルである。ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素である。トシルは4−メチルフェニルスルホニルである。
【0009】
基がラジカルで多置換されている場合、これは、この基が同じか又は異なる1つ又はそれ以上の上述のラジカルで置換されていることを意味すると理解されるべきである。
【0010】
置換基の種類及び結合に依存して、一般式(I)は立体異性体として存在し得る。例えば、1個又はそれ以上の不斉炭素原子又は硫黄原子(すなわちスルホキシドの場合)が存在する場合、鏡像異性体及びジアステレオマーが存在し得る。立体異性体は、慣例の分離方法、例えば色分離(chromatic separation)法により製造から生じた混合物から含まれ得る。同様に、立体異性体は、光学活性出発物質及び/又は補助剤を使用する立体選択的反応を使用することにより選択的に製造され得る。本発明はまた、一般式(I)に包含されるが、具体的に定義されていない全ての立体異性体及びそれらの混合物に関する。
【0011】
式中、
R1はメチル又はエチルであり、
R2は水素、メチル又はエチルであり、
R3はメチル又はエチルであり、
R4はメチル又はエチルであり、
Yは水素、(C1−C3)−アルキルスルホニル、(C1−C2)−アルコキシ−(C1−C4)−アルキルスルホニルであるか、又はフェニルスルホニル、チオフェニル−2−スルホニル、ベンゾイル、ベンゾイル−(C1−C6)−アルキル若しくはベンジルであり、これらはそれぞれm個のメチル基で置換され、
mは0又は1であり、
nは0、1又は2である、
一般式(I)の化合物が好ましい。
【0012】
式中、
R1はメチル又はエチルであり、
R2は水素、メチル又はエチルであり、
R3はメチル又はエチルであり、
R4はメチル又はエチルであり、
Yは水素であり、
nは0、1又は2である、
一般式(I)の化合物が特に好ましい。
【0013】
以下に示される全ての式において、置換基及び記号は、別に規定がなければ式(I)下に記載されるものと同じ意味を有する。
【0014】
Yが水素である本発明の化合物は、例えば、スキーム1に示されActa Chem. Scand. 13、(1959)、1668−1670により知られる方法により、ハロゲン化ベンゾイル(III)とピラゾロン(II)との塩基触媒反応により、又はスキーム2に示され例えばEP−A0186117により知られる方法に従って、ハロゲン化ベンゾイル(III)とピラゾロン(II)との塩基触媒反応及び続く転位により、製造することができる。
【0015】
スキーム1
【化3】

【0016】
スキーム2
【化4】

【0017】
スキーム3によれば、Yが水素と異なる意味を有する本発明の化合物は、スキーム1又は2に従って得ることができる化合物から、式(V)の適切なアシル化剤Y−X(式中Xはハロゲンのような脱離基である)との塩基触媒反応により、適切に製造される。このような方法は基本的に当業者に公知であり、そして例えばDE−A2513750に記載される。
【0018】
スキーム3
【化5】

【0019】
本発明の化合物はまた、スキーム4に示されWO98/42678より知られる方法に従って、ピラゾロン(II)をハロ安息香酸(IIIa)と反応させ、続いてチオ化合物HS−R3と求核芳香族置換し、適切な場合にはチオ基を酸化することにより製造することができる。ここで、Lは例えば塩素、臭素、ヨウ素又はトリフルオロメチルスルホニルである。このような置換反応は当業者に公知であり、例えばHouben−Weyl、Methoden der Organischen Chemie [Methods of organic chemistry]、Georg Thieme Verlag Stuttgart、vol. E 11、additional and supplementary volumes to the fourth edition 1985、p.174et seqに記載される。
【0020】
スキーム4
【化6】

【0021】
上述の式(III)の化合物は、例えば、式(IIIb)の化合物から、当業者に公知の方法に従って酸塩化物との反応により製造することができる。
【化7】

【0022】
式(III)及び(IIIb)の化合物[式中、R3、R4及びnは式(I)について定義されたとおりである]は新規であり、また、本出願の主題の一部を形成する。
【0023】
上のスキームにおいて使用される出発物質は、市販されているか、又はそれ自体公知の方法により製造することができる。従って、式(II)のピラゾロン類は、例えばEP−A 0240001及びJ. Prakt. Chem. 315、382、(1973)に記載される方法により製造することができ、そして式(III)の塩化ベンゾイル類はEP−A0527036及びWO03/014071に記載される方法により製造することができる。
【0024】
本発明に係る式(I)の化合物は、広範囲の経済的に重要な単子葉及び双子葉の有害植物に対して顕著な除草活性を有している。当該活性物質は、 1年生雑草のみならず、地下茎、根茎、その他の多年性器官から出芽し、容易に防除することができない多年生雑草を一様に十分に防除する。この関連において、これらの物質が、播種前、出芽前又は出芽後のいずれで適用されるかは、一般的に重要ではない。本発明に係る化合物によって防除され得るいくつかの代表的な単子葉及び双子葉の雑草植物相が例として個々に示されてはいるが、しかしながらこのことは或る特定の種への限定を意味すると解されるべきではない。良好に防除され得る単子葉雑草種としては、例えば、1年生種ではカラスムギ(Avena)、ネズミムギ(Lolium)、スズメノテッポウ (Alopecurus)、クサヨシ(Phalaris)、ヒエ(Echinochloa)、メヒシバ(Digitaria)、エノコログサ(Setaria)及びミズガヤツリ(Cyperus)の種があり、そして多年生種ではカモジグサ(Agropyron)、ギョウギシバ (Cynodon)、チガヤ(Imperata)及びセイバンモロコシ(Sorghum)、又は多年生のミズガヤツリ(Cyperus)の種がある。双子葉雑草種の場合は、例えば、1年生種ではヤエムグラ(Galium)、スミレ(Viola)、イヌノフグリ(Veronica)、オドリコソウ (Lamium)、ハコベ(Stellaria)、アオゲオトウ(Amaranthus)、シロガラシ(Sinapis)、ノアサガオ (Ipomoea)、アメリカキンゴジカ(Sida)、カミツレ(Matricaria)及びイチビ(Abutilon)、そして多年生種ではセイヨウヒルガオ(Convolvulus)、アザミ(Cirsium)、スイバ(Rumex)及びヨモギ(Artemisia)のような種にまで作用範囲が及ぶ。稲の特殊な栽培条件下において見られる有害植物、例えばヒエ(Echinochloa)、ウリカワ(Sagittaria)、オモダカ(Alisma)、クログワイ(Eleocharis)、ホタルイ(Scirpus)及びミズガヤツリ(Cyperus)もまた本発明に係る活性物質に よって極めて良好に防除される。本発明に係る化合物を発芽前に土壌表面に施用した場合は、雑草苗の発生を完全に抑制するか、又は雑草は子葉期に達するまで生育するが、やがて生育は停止して3〜4週間後には植物は遂には完全に枯死する。当該活性物質を発生後に植物の緑色部に施用した場合、処理後直ちに生育は徹底的に停止され、そして雑草は施用時の生育状態に止まり、又は或る時間経過後に完全に枯死し、それ故このようにして、作物にとって有害な雑草との競合は極めて早期の段階で除去することができ、そしてそれを持続させることができる。特に、本発明に係る化合物は、セイヨウヌカボ(Apera spica−venti)、シロザ(Chenopodium album)、オドリコソウ(Lamium purpureum)、ソバカズラ(Polygonum convolvulus)、ハコベ(Stellaria media)、フラサバソウ(Veronica hederifolia)、オオイヌノフグリ(Veronica persica)、及び三色スミレ(Viola tricolor)に対して極めて優れた作用を示した。
【0025】
本発明の化合物は、単子葉及び双子葉の雑草に対して極めて優れた除草活性を有しているが、経済的に重要な作物植物、例えば、小麦、大麦、ライムギ、稲、トウモロコシ、砂糖大根、棉及び大豆に対しては、損傷があった場合であってもそれは極めて微小なものであった。特に、小麦、大麦及びトウモロコシのような穀類、特に小麦においては優れて耐性であった。それ故に、本化合物は、農業に有用な植物又は観賞用植物の観点から不要な植生を選択的に防除するために極めて適切である。
【0026】
これらの除草特性により、活性物質は、既に知られているか又は今後開発される遺伝的に改変された植物の作物栽培における有害植物を防除するために用いることができる。一般に、トランスジェニック植物は、例えば特定の農薬、特に特定の除草剤に対して耐性であり、植物病に対して又は特定の昆虫、又は真菌、細菌若しくはウイルスのような微生物で植物病の原因となるものに対して耐性であるという特別に有利な特性によって区別される。その他の特定の特性としては、例えば収穫物の収量、品質、貯蔵期間、組成及び特殊成分に関するものがある。従って、トランスジェニック植物は、増加したデンプン含量を有するか又はそのデンプンの質が改変されているか、又は収穫した材料におけるその脂肪酸組成が異なるトランスジェニック植物が知られている。
【0027】
本発明に係る式(I)の化合物又はそれらの塩は、有用植物又は観賞用植物の経済的に重要なトランスジェニック作物、例えば小麦、大麦、ライムギ、エンバ ク、アワ、キビ、稲、キャッサバ及びトウモロコシのような穀物類、又は他の作物、砂糖大根、棉、大豆、菜種、ジャガイモ、トマト、エンドウ及びその他の野 菜類にも好適に使用することができる。式(I)の化合物は、除草剤の植物毒性に対して耐性な、又は遺伝子改変により耐性化された有用植物の作物栽培における除草剤として好適に施用することができる。
【0028】
現存の植物と比較して改変された特性を有する新規植物の生成のための従来の経路は、例えば、伝統的な育種法及び突然変異体の作成である。あるいは、改変された特性を有する新規植物は、組換え法を用いて生成させることができる(例えば、EP−A−0221044、EP−A−0131624を参 照)。例えば、以下の幾つかのケースが記載されている:
− 植物中で合成されるデンプンを改変するための作物植物の組換え改変法(例えばWO 92/11376、WO 92/14827、WO 91/19806)、
− グルホシネート系(例えばEP−A−0242236、EP−A−242246を参照)、グリホサート系(WO 92/00377)又はスルホニルウレア系(EP−A−0257993、US−A−5013659)の特定の除草剤に対して耐性を示すトランスジェニック作物植物
− トランスジェニック作物植物、例えばその植物を特定の害虫に対して耐性にする、バチルス ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis) 毒素(Bt毒素)を産生する能力を有する棉(EP−A−0142924、EP−A− 0193259)、
− 改変された脂肪酸組成を有するトランスジェニック作物植物(WO 91/13972)。
【0029】
改変された特性を有する新規なトランスジェニック植物を生成させるのに役立つ分子生物学における数多くの技術は基本的に公知であり;例えば、Sambrook ら、1989、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual」2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY;又はWinnacker「Gene und Klone」(Genes and Clones)、VCH Weinheim 2版、1996又はChristou、「Trends in Plant Science」1 (1996) 423−431頁を参照のこと。
【0030】
このような組換え操作を行うため、DNA配列の組換えにより突然変異誘導又は配列変換を可能にする核酸分子をプラスミド中に導入することができる。上記に記載した標準的な方法によって、例えば塩基置換を行うこと、部分的配列を除去すること、又は天然の若しくは合成された配列を付加することが可能である。DNAフラグメントを互いに結合させるために、これらのフラグメントをアダプター又はリンカーと一緒に供給することができる。
【0031】
遺伝子産物の活性が低減している植物細胞は、例えば、少なくとも一つの対応するアンチセンスRNAの発現、共抑制効果(cosuppression effect)を達成するためのセンスRNAの発現、又は上記の遺伝子産物の転写産物を特異的に切断する少なくとも一つの適切に構成されたリボザイムの発現により得ることができる。
【0032】
この目的ために、一方においては、存在し得るあらゆるフランキング配列を含んでいる遺伝子産物のコード配列の全てを含むDNA分子を使用することは可能であるが、またコード配列の一部分しか含んでいないDNA分子でも、その部分が細胞中でアンチセンス効果を引き起こすに十分な長さであることが必要だが、それを使用することも可能である。別の可能性は、遺伝子産物のコード配列と完全には同一ではないが、高度の相同性を有しているDNA配列を使用することである。
【0033】
植物中で核酸分子を発現させる場合、合成されたタンパク質は植物細胞のどの所望するコンパートメント中に局在させてもよい。しかしながら、特定のコンパートメント中に局在させるために、コード領域は、例えば、特定のコンパートメント中の局在を確実にするDNA配列に結合させることができる。そのような配列は当業者に公知である(例えば、Braun ら、EMBO J. 11(1992)、3219−3227頁; Wolterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988)、846−850頁; Sonnewald ら、Plant J. 1(1991)、95−106頁を参照のこと)。
【0034】
トランスジェニック植物細胞を公知の技術により再生させて、無傷な(intact)植物体を生じさせることができる。原理的には、トランスジェニック植物は、あらゆる所望の植物種、即ち単子葉植物及び双子葉植物の両方の植物であり得る。このように、相同(即ち、天然)遺伝子若しくは遺伝子配列の過剰発現、抑制若しくは阻害、又は非相同(即ち、外来)遺伝子若しくは遺伝子配列の発現により改変された特性を示すトランスジェニック植物を得ることができる。
【0035】
本発明に係る活性物質をトランスジェニック作物に使用する場合、効果はしばしば、他の作物において観察される有害植物に対する効果に追加的に観察さ れ、そしてそれは、問題としているトランスジェニック作物における施用に特異的であり、例えば防除されうる雑草スペクトルの変更又は特異的拡大、施用に使用され得る施用量の変化、トランスジェニック作物が耐性である除草剤との好適な組合せ能力、並びにトランスジェニック作物植物の生長及び収量に対する効果である。従って本発明はまた、トランスジェニック作物植物において有害な植物を防除するための除草剤としての本発明に係る化合物の使用に関する。
【0036】
更に本発明に係る物質は作物植物に対する顕著な成長調節特性をも有している。これらは調節という方法で植物代謝に関与し、それ故植物構成物の標的制御、また例えば、脱水を引き起こしそして生長を抑制するようにして収穫の容易化に用いることができる。尚その上、生育中の植物に打撃を与えることなく、不要な植 物の生長を一般的に制御又は抑制するのに好適である。植物の生長を抑制することは、それにより倒伏を減少させ又は完全に防止することができるので、多くの単子葉及び双子葉の作物にとって重要な役割を有している。
【0037】
本発明に係る化合物は慣用的な製剤方法で、水和剤、乳剤、噴霧溶液、粉剤又は粒剤の形態で使用することができる。それ故、本発明は更に式(I)の化合物を含む除草組成物に関する。式(I)の化合物は、一般的な生物学的及び/又は化学物理的パラメーターに依存して、種々の方法で製剤することができる。可能な好適な製剤の例は:水和剤(WP)、水溶性粉剤(SP)、水溶性濃縮液、乳剤(EC)、水中油型及び油中水型エマルションのようなエマルション剤(EW)、噴霧溶液、懸濁濃縮液(SC)、油又は水ベースの分散剤、油混和性溶液、カプセル懸濁剤(CS)、粉剤(DP)、種子粉衣製品、散布用及び土壌処理用粒剤、マイクログラニュール形状の粒剤(GR)、噴霧粒剤、被覆粒剤及び吸着粒剤、顆粒水和剤(WG)、水溶性粒剤(SG)、 ULV製剤、マイクロカプセル剤及びワックス剤である。これらの個々の製剤型は基本的に公知であり、例えば、Winnacker− Kuechler, 「Chemische Technologie」[Chemical Engineering]、7巻、C. Hauser Verlag Munich、4版、1986;Wade van Valkenburg、「Pesticide Formulaions」、Marcel Dekker, N.Y., 1973; K.Martens,「Spray Drying」 Handbook、3版、1979、G.Goodwin Ltd. London に記載されている。
【0038】
不活性物質、界面活性剤、溶剤及びその他の添加物のような必要な製剤助剤も同様に公知であり、例えば、Watkins、「Handbook of Insecticide Dust Diluents and Carriers」、2版、Darland Books, Caldwell N.J.;H.v.Olphen,「Introduction to Clay Colloid Chemistry」、2版、J. Wiley & Sons, N.Y.; C. Marsden「Solvents Guide」、2版、Interscience, N.Y. 1963; McCutcheon’s「Detergents and Emulsifiers Annual」、MC Publ.Corp., Ridgewood N,J,;Sisley and Wood、「Encyclopedia of Surface Active Agents」、Chem. Publ.Co.Inc., N.Y. 1964; Schoenfeldt、「Grenzflaechenaktive Aethylenoxidaddukte」(Surface−active ethyleneoxide adducts)、Wiss. Verlagsgesell., Stuttgart 1976; Winnacker−Kuchler、「Chemische Technologie」、7巻、C.Hauser Verlag Munich、4版、1986に記載されている。
【0039】
水和剤は水中に均一に分散し得る製剤であり、活性物質に加えて、イオン性及び/又は非イオン性界面活性剤(湿潤剤、分散剤)、例えばポリオキシエチル化アルキルフェノール、ポリオキシエチル化脂肪アルコール、ポリオキシエチル化脂肪アミン、脂肪アルコールポリグリコールエーテルサルフェート、アルカンスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、2,2’−ジナフチルメタン−6,6’−ジスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ジブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム又はナトリウム オレオ
イルメチルタウレートも、希釈剤又は不活性物質の他に追加的に含んでいる。水和剤を調製するために、除草剤活性物質は、例えばハンマーミル、ブローイングミル及びエアージェットミルのような慣用的な装置で細かく粉砕され、同時に又はその後に製剤助剤と混合される。
【0040】
乳剤は、有機溶媒、例えばブタノール、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド、キシレン、若しくはその他のより高沸点の芳香族若しくは炭化水素、又はこれら有機溶媒の混合物に、一若しくはそれ以上のイオン性及び/若しくは非イオン性の界面活性剤(乳化剤)を添加し、それに活性物質を溶解させることによって調製される。使用することができる乳化剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムのようなアルキルアリールスルホン酸カルシウム塩、又は脂肪酸ポリグリコールエステル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、プロピレンオキシド/エチレンオキシド縮合物、アルキルポリエーテル、 例えばソルビタン脂肪酸エステルのようなソルビタンエステル、又は例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルのようなポリオキシエチレンソルビタンエステル、のような非イオン性の乳化剤を挙げることができる。
【0041】
粉剤は、細かく粉砕した固形物、例えばタルク、カオリン、ベントナイト及びパイロフィライトのような天然の粘土、又は珪藻土と共に活性物質を粉砕してすることにより得られる。
【0042】
懸濁濃縮液は水ベースのものであるか又は油ベースのものでありうる。これらの製剤は、例えば慣用的なビードミルを用いて湿式粉砕法 により、場合によっては、例えば上記の他の製剤の場合おいて既に言及したように、界面活性剤を加えて調製することができる。
【0043】
例えば水中油型エマルション(EW)のようなエマルション剤は、水性の有機溶媒を用いて、例えば撹拌機、コロイドミル及び/又はスタテイックミキサーにより調製することができ、場合によっては、例えば上記の他の製剤型の場合において既に言及した界面活性剤を用いて調製することができる。
【0044】
粒剤は、吸着性の造粒された不活性物質上に活性物質を噴霧することにより、又は砂、カオリナイト、若しくは造粒された不活性物質のような担体の表面に、活性物質の濃縮物を、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム又はその他鉱油のような接着剤を用いて適用することにより調製することができる。適切な活性物質はまた、肥料粒剤の製造に通常用いられるやり方で、所望の場合は肥料との混合物として、造粒することもできる。
【0045】
顆粒水和剤は、噴霧乾燥法、流動床造粒法、デイスク造粒法、高速撹拌機による混合法、及び固形不活性物質なしでの押出し法のような慣用的な方法によって、一般的に調製することができる。
【0046】
デイスク粒剤、流動床粒剤、押出し粒剤及び噴霧粒剤の調製については、例えば「Spray Drying Handbook」、3版、1979, G.Goodwin Ltd., London; J.E.Browning,「Agglomeration」、Chemical and Engineering、1967、147頁以下参照;「Perry's Chemical Engineer's Handbook」、5版、McGraw−Hill, New York 1973、8−57頁に記載の方法を参照のこと。
【0047】
作物保護剤の製剤に関する更なる詳細については、例えば、G.C.Klingman、「Weed Control as a Science」、John Wiley and Sons, Inc., New York, 1961、81−96頁; J.D.Freyer, S.A.Evans、「Weed Control Handbook」、5版、Blackwell Scientific Publications, Oxford, 1968、101−103頁を参照のこと。
【0048】
一般的に、農薬製剤は式(I)の活性物質を0.1から99質量%、特に0.1から95質量%含んでいる。水和剤の場合は、活性物質の濃度は、例えば、 約10から90質量%であり、残部は慣用的な製剤成分により100質量%としている。乳剤の場合は、活性物質の濃度は約1から90質量%、好ましくは5から80質量%である。
【0049】
粉剤形態での製剤は、活性物質を1から30質量%、好ましくは多くの場合活性物質を5から20質量%含み、そして噴霧溶液は約0.05から80質量%、好ましくは2から50質量%の活性物質を含んでいる。顆粒水和剤の場合は、活性物質含量は、活性化合物が液状か固形かにより、また使用する造粒補助剤、増量剤及びその他のものに部分的に依存する。顆粒水和剤の場合は、例えば、活性物質含量は1から95質量%の間、 好ましくは10から80質量%の間である。
【0050】
さらに、上述の活性物質製剤は、場合によっては、粘着剤、湿潤剤、分散剤、乳化剤、浸透剤、保存剤、不凍剤、溶媒、増量剤、担体、着色剤、消泡剤、蒸発防止剤、並びにpH及び粘度調節剤を含むことができるが、それらはそれぞれの場合において通常のものである。
【0051】
これらの製剤を基にして、例えば殺虫剤、殺ダニ剤、除草剤、殺菌剤のような他の農薬活性物質、並びに薬害軽減剤、肥料及び/又は植物成長調節剤との組み合わせを、例えばレディミックス(readymix)又はタンクミックス方式で調製することもできる。
【0052】
混合製剤又はタンクミックスで本発明に係る活性物質と組み合わせて用いることができる活性物質は、例えば、「Weed Research」26, 441−445 (1986)又は「The Pesticide Manual」、11版、The British Crop Protection Council and the Royal Soc. of Chemistry、1997、及びそこで引用されている文献中に記載されているような公知の活性物質である。言及すべきであり、そして式(I)の化合物と組み合わせることができる公知の除草剤は、例えば、以下の活性物質である(注意:化合物は国際標準化機構(ISO)に従う一般名称又は化学名を用いたいずれか、場合により慣用的な コード番号と一緒に記載している。):
アセトクロール;アシフルオルフェン;アクロニフェン;AKH 7088、即ち [[[1−[5−[2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−2−ニトロフェニル]−2メトキシエチリデン]アミノ]オキシ]酢酸及びそのメチルエステル;アラクロール;アロキシジム;アメトリン;アミドスルフロン;アミトロール; AMS、即ちスルファミン酸アンモニウム;アニロホス;アシュラム;アトラジン;アジムスルフロン(DPX−A8947); アジプロトリン;バルバン;BAS 516 H、即ち5−フッ素−2−フェニル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン;ベナゾリン;ベンフルラリン;ベンフレセート;ベンスルフロン−メチル; ベンスリド;ベンタゾン;ベンゾフェナップ;ベンゾフルオール;ベンゾイルプロップ−エチル;ベンゾチアズロン;ビアラホス;ビフェノックス;ブロマシル;ブロモブチド;ブロモフェノキシム;ブロモキシニル;ブロムロン;ブミノホス;ブソキノン;ブタクロール;ブタミホス;ブテナクロール;ブチダゾール;ブトラリン;ブチレート;カフェンストロール(CH−900);カルベタミド;カフェントラゾン;CDAA、即ち2−クロロ −N,N−ジ−2−プロペニルアセトアミド;CDEC、即ちジエチルジチオカルバミン酸 2−クロロアリル;クロメトキシフェン;クロランベン;クロラジホップ−ブチル;クロルブロムロン; クロルブファム; クロルフェナック;クロルフルレコール−メチル;クロリダゾン;クロリムロンエチル;クロルニトロフェン;クロロトルロン;クロロクスロン;クロルプロファム;クロルスルフロン;クロルタール−ジメチル;クロルチアミド;シンメチリン;シノスルフロン;クレトジム;クロジナホップ及びそのエステル誘導体(例えばクロジナホップ−プロパルギル);クロマゾン;クロメプロップ;クロプロキシジム;クロピラリド;クミルロン(JC 940);シアナジン;シクロエート;シクロスルファムロン(AC 104);シクロキシジム;シクルロン;シハロホップ及びそのエステル誘導体(例えばブチルエステル、DEH−112);シペルコート;シプラジン;シプラゾール;ダイムロン;2,4−DB;ダラポン;デスメデイファム;デスメトリン;ジアレート;ジカンバ;ジクロベニル;ジクロルプロップ;ジクロホップ 及びジクロホップ−メチルのようなそのエステル;ジエタチル;ジフェノキスロン;ジフェンゾコート;ジフルフェニカン;ジメフロン;ジメタクロール;ジメタメトリン;ジメテナミド(SAN−582H);ジメタゾン;クロマゾン;ジメチピン;ジメトラスルフロン;ジニトラミン;ジノセブ;ジノテルブ;ジフェナミド;ジプロペトリン;ジクワット;ジチオピル;ジウロン;DNOC;エグリナジン−エチル;EL 77、即ち5−シアノ−1−(1,1−ジメチルエチル)−N−メチル−1H−ピラゾール−4−カルボキサミド;エンドタール;EPTC;エスプロカルブ; エタルフルラリン;エタメトスルフロン−メチル;エチジムロン;エチオジン;エトフメセート;F5231、即ちN−[2−クロロ−4−フルオロ −5−[4−(3−フルオロプロピル)−4,5−ジヒドロ−5−オキソ−1H−テトラゾール−1−イル]−フェニル]エタンスルホンアミド;エトキシフェン及びそのエステル(例えばエチルエステル、HN−252);エトベンザニド(HW 52);フェノプロップ;フェノキサン;フェノキサプロップ及びフェノキサプロップ−P並びにそれらのエステル、例えばフェノキサプロップ−P−エチル及びフェノキサプロップ−エチル;フェノキシジム;フェニュロン;フラムプロップ−メチル;フラザスルフロン;フルアジホップ及びフルアジホップ−P並びにそれらのエステル、例えばフルアジホップ−ブチル及びフルアジホップ−P−ブチル;フルクロラリン;フルカルバゾン(flucarbazoue);フルフェナセット;フルメツラム(flumetsulam);フルメツロン;フルミクロラック及びそのエステル(例えばペンチルエステル、S−23031);フルミオキサジン(S−482);フルミプロピン;フルポキサム (KNW−739);フルオロジフェン;フルオログリコフェン−エチル;フルプロパシル(UBIC−4243);フルリドン;フルロクロリドン;フルロキシピル;フルルタモン;ホメサフェン;ホラムスルフロン;ホサミン;フリルオキシフェン;グルホシネート;グリホサート;ハロサフェン;ハロスルフロン及びそのエステル(例 えばメチルエステル、NC−319);ハロキシホップ及びそのエステル;ハロキシホップ−P(=R−ハロキシホップ)及びそのエステル;ヘキサジノン;イマザピル;イマザメタベンズ−メチル;イマザキン及びアンモニウム塩のような塩;アイオキシニル;イマゼタメタピル;イマゼタピル;イマゾスルフロン;ヨードスルフロン−メチル−ナトリウム;イソカルバミド;イソプロパリン;イソプロツロン;イソウロン;イソキサベン;イソキサピリホップ;カルブチレート;ラクトフェン;レナシル;リニュロン;MCPA;MCPB;メコプロップ;メフェナセット;メフルイジド;メソスルフロン;メソトリオン;メタミトロン;メタザクロール;メタム;メタベンズチアズロン;メタゾール;メトキシフェノン;メチルダイムロン;メタベンズロン;メトベンズロン;メトブロムロン;メトラクロール;メトシュラム(metosulam) (XRD 511);メトキスロン;メトリブジン;メトスルフロン−メチル;MH;モリネート;モナリド;モノリニュロン;モニュロン;硫酸モノカルバミド二水素;MT128、即ち6−クロロ−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−5−メチル−N−フェニル−3−ピリダジンアミン;MT5950、即ちN−[3− クロロ−4−(1−メチルエチル)−フェニル]−2−メチルペンタンアミド;ナプロアニリド;ナプロパミド;ナプタラム;NC310、即ち4−(2,4− ジクロロベンゾイル)−1−メチル−5−ベンジルオキシピラゾール;ネブロン;ニコスルフロン;ニピラクロフェン;ニトラリン;ニトロフェン;ニトロフルオルフェン;ノルフルラゾン;オルベンカルブ;オリザリン;オキサジアルギル(RP−020630);オキサジアゾン;オキシフルオルフェン;パラコート;ペブレート;ペンジメタリン;ペルフルイドン;フェニソファム;フェンメデイファム;ピクロラム;ピノキサデン;ピペロホス;ピリブチカルブ;ピリフェノップ−ブチル;プレチラクロール;プリミスルフロン−メチル;プロシアジン;プロジアミン;プロフルラリン;プログリナジン−エチル;プロメトン;プロメトリン;プロパクロール;プロパニル;プロパキザホップ及びそのエステル;プロパジン;プロファム;プロピソクロール;プロポキシカルバゾン;プロピザミド;プロスルファリン;プロスルホカルブ;プロスルフロン(CGA−152005);プリナクロール;ピラゾリネート;ピラゾン;ピラスルホトール;ピラゾスルフロン−エチル;ピラゾキシフェン;ピリデート;ピリチオバック(KIH−2031);ピロキソホップ及びそのエステル(例えばプロパルギルエステル);キンクロラック;キンメラッ ク;キノホップ及びそのエステル誘導体;キザロホップ及びキザロホップ−P並びにそれらのエステル誘導体、例えばキザロホップ−エチル、キザロホップ −P−テフリル及び−エチル;レンリデュロン;リムスルフロン(DPX−E 9636);S275、即ち2−[4−クロロ−2−フルオロ−5−(2−プロピニルオキシ)フェニル]−4,5,6,7−テトラヒドロ−2H−インダゾー ル;セクブメトン;セトキシジム;シデュロン;シマジン;シメトリン;SN106279、即ち2−[[7−[2−クロロ−4−(トリフルオロメチル)フェノキシ]−2−ナフタレニル]オキシ]プロピオン酸及びそのメチルエステル;スルコトリオン;スルフェントラゾン(FMC−97285、F−6285);スルファズロン;スルホメツロン−メチル;スルホセート(ICI−A0224);TCA;テブタム(GCP−5544);テブチウロン;テンボトリオン;テルバシル;テルブカルブ;テルブクロール;テルブメトン;テルブチラジン;テルブトリン;TFH450、即ちN,N−ジエチル−3−[(2−エチル−6−メチルフェニル)スルホニ ル]−1H1,2,4−トリアゾール−1−カルボキサミド;テニルクロール(NSK−850);チアザフルロン;チエンカルバゾン;チアゾピル(Mon−13200);チジアジミン(SN−24085);チオベンカルブ;チフェンスルフロン−メチル;チオカルバジル;トラルコキシジム;トリ−アレート;トリアスルフロン;トリアゾフェナミド;トリベニュロン−メチル;トリクロピル;トリジファン;トリエタジン;トリフルラリン;トリフルスルフロン及びエステル(例えばメチルエステル、DPX−66037);トリメツロン;チトデフ(tsitodef);バーナレート;WL110547、即ち5−フェノキシ−1−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1H−テトラゾール;UBH−509;D−489;LS82−556;KPP−300;NC−324;NC−330;KH− 218;DPX−N8189;SC−0774;DOWCO−535;DK−8910;V−53482;PP−600;MBH−001;KIH− 9201;ET−751;KIH−6127及びKIH−2023。
【0053】
使用のために、市販の形態で存在する本製剤は、適切な場合、水和剤、乳剤、分散剤及び顆粒水和剤の場合は例えば水を用いて慣用的なやり方で稀釈される。粉剤、土壌粒剤、散布用粒剤、及び散布用溶液の形態の製剤は、通常は使用前に 他の不活性物質では更に稀釈されない。
【0054】
式(I)の化合物の必要とされる施用量は、特に温度、湿度及び使用する除草剤の性質のような外的条件によって変動する。それは広範囲において変動することができ、例えば0.001と1.0kg/haとの間又はそれ以上の活性物質であるが、好ましくは0.005と750g/haとの間である。
【実施例】
【0055】
以下の実施例は本発明を説明する。
【0056】
A.化学実施例
1−エチル−4−(3’−エチルスルホニル−2’−メチル−4’−トリフルオロメチル)ベンゾイル−5−ヒドロキシピラゾールの製造
工程1: 3−フルオロ−2−メチル−4−トリフルオロメチル安息香酸
3−フルオロ−4−トリフルオロメチル安息香酸25.0g(120.1mmol)をTHF250mlに溶解し、そしてn−ブチルリチウム100.9ml(ヘキサン中2.5M、252.3mmol)を−40℃で滴下した。この混合物を3.5時間撹拌し、次いで乾燥THF50ml中のヨードメタン51.2g(360.4mmol)の溶液を滴下した。この混合物を16時間撹拌し、そして30分後に温度をゆっくりと室温(RT)まで上昇させた。後処理のために、1M HCl 150mlを注意深く加えた。この混合物をジエチルエーテルで抽出し、次いで有機相を1M NaOHで抽出した。水相を酸性化し、次いでジエチルエーテルで抽出した。有機相を水で洗浄し、乾燥し、そして溶媒を除去した。残留物をn−ヘプタンで滴定し(titrated)、そして固体をろ過により除去した。単離されたものは13.5gの純粋な生成物であった。
【0057】
工程2: 3−エチルチオ−2−メチル−4−トリフルオロメチル安息香酸
3−フルオロ−2−メチル−4−トリフルオロメチル安息香酸3.00g(13.5mmol)を最初にN,N−ジメチルホルムアミド50ml中に入れた。NaH 1.68g (純度60質量%、41.9mmol)を少しずつ加えた。気体の発生が終わる頃に、エタンチオール1.77g(純度95質量%、27.0mmol)を滴下した。この混合物を室温で2時間撹拌し、次いで80℃で10時間撹拌した。反応混合物を冷却し、後処理のために氷水に注ぎ、次いで濃塩酸で酸性化した。生成物が沈殿し、これをろ過により分離した。単離されたものは純粋な生成物3.7gであった。
【0058】
工程3: 1−エチル−4−(3’−エチルチオ−2’−メチル−4’−トリフルオロメチル)ベンゾイル−5−ヒドロキシピラゾールの合成
3−エチルチオ−2−メチル−4−トリフルオロメチル安息香酸 300mg (1.14mmol)を最初に乾燥CH2Cl2 20ml中に入れて、塩化オキサリル 288mg(2.27mmol)を加えた。この混合物を15分間加熱還流し、その後それ以上の気体の発生は見られなくなった。内容物を室温まで冷却して濃縮した。このようにして得られた酸塩化物を乾燥CH2Cl2 20ml中に溶解し、そしてその溶液を、1−エチル−5−ヒドロキシピラゾール 140mg (1.25mmol)と触媒量の4−N,N−ジメチルアミノピリジンの混合物に加えた。次いでトリエチルアミン 230mg (2.27mmol)をゆっくりと滴下し、そして反応混合物を室温で16時間撹拌した。後処理のために、1M HCl 3mlを加え、そして相を分離した後、有機相から溶媒を除去した。このようにして得られたエノールエーテルをアセトニトリル20mlに入れて、トリエチルアミン230mg (2.27mmol)を加えた。次いで8滴のアセトンシアノヒドリン及びスパチュラの先端1杯分のKCNを加えた。この混合物を室温で16時間撹拌し、次いで濃縮した。CH2Cl2 20ml、次いで1M HCl 3mlを残留物に加えた。相を分離した後、溶媒を除去した。残留物をクロマトグラフィーにより精製して純粋な生成物182mgを得た。
【0059】
工程4: 1−エチル−4−(3’−エチルスルホニル−2’−メチル−4’−トリフルオロメチル) ベンゾイル−5−ヒドロキシピラゾールの合成
1−エチル−4−(3’−エチルチオ−2’−メチル−4’−トリフルオロメチル)ベンゾイル−5−ヒドロキシピラゾール 182mg (0.51mmol)をCH2Cl2 20mlに溶解し、次いでメタ−クロロ過安息香酸376mg (純度70質量%、1.52mmol)を加えた。次いで混合物を室温で16時間撹拌した。後処理のために混合物をCH2Cl2で希釈し、そして10%強度の亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。この混合物を1M HClで酸性化し、そして相分離して過酸化物が存在しないことを分析で確認した後、有機相を乾燥して溶媒を除去した。残留物をクロマトグラフィーで精製して純粋な生成物88.8mgを得た。
【0060】
5−ヒドロキシ−1,3−ジメチル−4−(2’−メチル−3’−メチルスルホニル−4’−トリフルオロメチル)ベンゾイルピラゾールの製造
工程1: 2−メチル−3−メチルチオ−4−トリフルオロメチル安息香酸の合成
3−フルオロ−2−メチル−4−トリフルオロメチル安息香酸 300mg (1.35mmol)を最初にN,N−ジメチルホルムアミド 5mlに入れて、NaH 59mg (純度60質量%、1.49mmol)を加えた。混合物を10分間攪拌し、次いでナトリウムチオメトキシド199mg (純度95質量%、2.70mmol)を加えた。混合物を室温で1.5時間撹拌し、次いで80℃で16時間加熱した。反応混合物を冷却し、後処理のために水に注いで酢酸エチルで抽出し、次いで水相を濃HClで酸性化した。混合物をt−ブチルメチルエーテルで2回抽出し、乾燥し、そして濃縮した。これにより生成物310mgを得た。
【0061】
工程2: 2−メチル−3−メチルスルホニル−4−トリフルオロメチル安息香酸の合成
2−メチル−3−メチルチオ−4−トリフルオロメチル安息香酸 1.50g (5.99mmol)を最初に氷酢酸20ml中に入れた。タングステン酸(VI)ナトリウム二水和物59mg(0.18mmol)を加え、次いでこの混合物を50−60℃で加熱した。この温度で過酸化水素水溶液2.45ml (強度30%、23.98mmol)を注意深く滴下した。この混合物をこの温度で、HPLC分析により出発物質及びスルホキシドがそれ以上示されなくなるまで何時間も撹拌した。次いでこの反応混合物を冷却し、後処理のために水に注いだ。この混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、過酸化物が存在しないことを分析により確認した後、混合物を1M HClで酸性化した。有機相を乾燥し、そして溶媒を除去した。単離されたものは純粋な生成物1.67gであった。
【0062】
工程3: 5−ヒドロキシ−1,3−ジメチル−4−(2’−メチル−3’−メチルスルホニル−4’−トリフルオロメチル)ベンゾイルピラゾールの合成
2−メチル−3−メチルスルホニル−4−トリフルオロメチル安息香酸200mg (0.71mmol)を、5−ヒドロキシ−1,3−ジメチルピラゾール87mg (0.78mmol)及び触媒量の4−N,N−ジメチルアミノピリジンと共に最初に乾燥CH2Cl2 20mlに入れて、 1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩 163mg (0.85mmol)を加えた。この混合物を室温で3時間撹拌し、次いで1M HCl 3mlを加えた。相を分離した後、水相をCH2Cl2で抽出した。有機相を乾燥して濃縮した。残留物をアセトニトリル20ml及びトリエチルアミン143mg (1.42mmol)中に入れて、8滴のアセトンシアノヒドリン及びスパチュラの先端1杯分のKCNを加えた。この混合物を室温で16時間撹拌し、濃縮した。CH2Cl2 15ml、次いで1M
HCl 2mlを残留物に加えた。相を分離した後、水相をCH2Cl2で抽出した。合わせた有機相を乾燥して濃縮した。残留物をクロマトグラフィーで精製した。単離されたものは純粋な生成物112.7mgであった。
【0063】
以下の表に示される実施例は、上述の方法と同様にして製造されたか、又は上述の方法と同様にして得ることができる。これらの化合物は特に好ましい。
【0064】
使用される略号は以下を示す:
Bu=ブチル Et=エチル Me=メチル Pr=プロピル
i=イソ s=第二級 t=第三級 Ph=フェニル
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

【0070】
【表6】

【0071】
【表7】

【0072】
【表8】

【0073】
【表9】

【0074】
【表10】

【0075】
【表11】

【0076】
【表12】

【0077】
【表13】

【0078】
【表14】

【0079】
【表15】

【0080】
【表16】

【0081】
【表17】

【0082】
【表18】

【0083】
【表19】

【0084】
B.製剤実施例
1.粉剤
粉剤は一般式(I)の化合物の10質量部及び不活性物質としてのタルク90質量部を混合し、そしてこの混合物をハンマーミルで粉砕して得た。
【0085】
2.分散性粉末剤
水中に直ちに分散できる水和剤は、一般式(I)の化合物25質量部、不活性物質としてのカオリン含有石英64質量部、リグニンスルホン酸カリウム10質量部、並びに湿潤剤及び分散剤としてナトリウムオレオイルメチルタウリド(sodiumoleoylmethyltauride)1質量部を混合し、そしてこの混合物をピン付きディスクミル中で粉砕して得た。
【0086】
3.分散性懸濁剤(Dispersion concentrate)
水中に直ちに分散できる分散性懸濁剤は、一般式(I)の化合物20質量部、アルキルフェノールポリグリコールエーテル(Triton X 207(登録商標))6質量部、イソトリデカノールポリグリコールエーテル(8 EO)3質量部及びパラフィン鉱油 (沸点範囲は例えば約255から277℃)の71質量部を混合し、そしてこの混合物をボールミル中で5ミクロン以下の微細になるまで粉砕して得た。
【0087】
4. 乳剤
乳剤は一般式(I)の化合物15質量部、溶媒としてのシクロヘキサノン75質量部及び乳化剤としてのオキシエチル化ノニルフェノール10質量部から得た。
【0088】
5. 顆粒水和剤
顆粒水和剤は、
一般式(I)の化合物 5質量部、
リグニンスルホン酸カルシウム 10質量部、
ラウリル硫酸ナトリウム 5質量部、
ポリビニルアルコール 3質量部、及び
カオリン 7質量部
上記を混合し、その混合物をピン付きディスクミル中で粉砕し、そしてその粉末を流動式床中で造粒液としての水に噴霧して造粒して得た。
【0089】
顆粒水和剤はまた、
一般式(I)の化合物 25質量部、
2,2’−ジナフチルメタン−6,6’−ジスルホン酸ナトリウム 5質量部、
ナトリウムオレオイルメチルタウリド 2質量部、
ポリビニルアルコール 1質量部、
炭酸カルシウム 17質量部、及び
水 50質量部
上記をコロイドミル中でホモジナイズ及び予備粉末化し、続いてその混合物をビードミル中で粉砕して得られた懸濁物を、シングル−サブスタンスノズルを用いて噴霧塔中で微粉末としそして乾燥することによっても得られる。
【0090】
C.生物学的実施例
1.出芽前処理の有害植物に対する除草作用
単子葉及び双子葉の有害植物の種子又は地下茎片を、直径9〜13cmの鉢中の砂壌土中に静置しそして表土をかけた。乳剤又は粉剤に製剤化した除草剤を、水性の分散液又は懸濁液又はエマルションの形態として、種々の薬量(dosages)で1ヘクタール当たり水300から800リットル(換算)の施用量で表土の表面に施用した。植物のさらなる生育のために、次いで鉢を最適条件下で温室に静置した。有害植物に対する損傷の目視評価を、処理の3〜4週間後に行った。これらの比較表の結果により示されるように、選択された本発明の化合物は、先行技術において開示される化合物よりも良好な除草活性を広範囲の経済的に重要な単子葉及び双子葉有害植物に対して有する。
【0091】
2. 発生後処理の有害植物に対する除草作用
単子葉及び双子葉の有害植物の種子を、ボール紙の鉢で砂壌土中に置いて、表土をかけて、良好な生育条件下で温室にて生育した。播種の2〜3週間後に、試験植物を三葉段階で処理した。水和剤又は乳剤として製剤化された本発明の化合物を、1ヘクタールあたり水600〜800L (換算)の施用量で、表1〜5に示される薬量にて、緑色植物部分の表面上に噴霧した。試験植物を温室で3〜4週間最適な生長条件下に静置した後、本発明の化合物の作用を先行技術において開示される化合物と比較して評価した。これらの比較表の結果として示されるように、選択された本発明の化合物は、先行技術において開示される化合物よりも、広範な経済的に重要な単子葉及び双子葉有害植物に対して良好な除草活性を有する。
【0092】
以下の比較表において使用される略号の意味:
ABUTH イチビ(Abutilon theophrasti)
AMARE アオゲイトウ(Amaranthus retroflexus)
AVEFA カラスムギ(Avena fatua)
DIGSA オニメヒシバ(Digitaria sanguinalis)
ECHCG イヌビエ(Echinochloa crus galli)
GALAP シラホシムグラ(Galium aparine)
LOLMU ネズミムギ(Lolium multiflorum)
MATIN イヌカミツレ(Matricaria inodora)
POLCO ソバカズラ(Polygonum convolvulus)
SETVI エノコログサ(Setaria viridis)
STEME ハコベ(Stellaria media)
VERPE オオイヌノフグリ(Veronica persica)
VIOTR 三色スミレ(Viola tricolor)
XANST オナモミ(Xanthium strumarium)
【0093】
比較表1:発生前処理
【表20】

【0094】
比較表2:発生前処理
【表21】

【0095】
比較表3:発生後処理
【表22】

【0096】
比較表4:発生後処理
【表23】

【0097】
比較表5:発生後処理
【表24】

【0098】
比較表6:発生前処理
【表25】

【0099】
比較表7:発生後処理
【表26】

【0100】
比較表8:発生前処理
【表27】

【0101】
比較表9:発生前処理
【表28】

【0102】
比較表10:発生後処理
【表29】

【0103】
比較表11:発生後処理
【表30】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
1は(C1−C4)−アルキルであり、
2は水素又は(C1−C4)−アルキルであり、
3は(C1−C4)−アルキルであり、
4は(C1−C4)−アルキルであり、
Yは水素、(C1−C6)−アルキルスルホニル、(C1−C4)−アルコキシ−(C1−C6)−アルキルスルホニルであるか、又はフェニルスルホニル、チオフェニル−2−スルホニル、ベンゾイル、ベンゾイル−(C1−C6)−アルキル又はベンジルであり、これらはそれぞれハロゲン、(C1−C4)−アルキル及び(C1−C4)−アルコキシからなる群からのm個の同じか若しくは異なるラジカルで置換され、
mは0、1、2又は3であり、
nは0、1又は2である]
の4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール、又はその塩。
【請求項2】
1はメチル又はエチルであり、
2は水素、メチル又はエチルであり、
3はメチル又はエチルであり、
4はメチル又はエチルであり、
Yは水素、(C1−C3)−アルキルスルホニル、(C1−C2)−アルコキシ−(C1−C4)−アルキルスルホニルであるか、又はフェニルスルホニル、チオフェニル−2−スルホニル、ベンゾイル、ベンゾイル−(C1−C6)−アルキル若しくはベンジルであり、これらはそれぞれm個のメチル基で置換され、
mは0又は1であり、
nは0、1又は2である、
請求項1に記載の式(I)の4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール。
【請求項3】
1はメチル又はエチルであり、
2は水素、メチル又はエチルであり、
3はメチル又はエチルであり、
4はメチル又はエチルであり、
Yは水素であり、
nは0、1又は2である、
請求項1に記載の式(I)の4−(4−トリフルオロメチル−3−チオベンゾイル)ピラゾール。
【請求項4】
除草有効量の請求項1〜3のいずれか1項に記載の少なくとも1つの化合物を含む、除草組成物。
【請求項5】
製剤助剤との混合物としての、請求項4に記載の除草組成物。
【請求項6】
不要な植物を防除するための方法であって、有効量の、請求項1〜3のいずれかに記載の少なくとも1つの式(I)の化合物又は請求項4又は5に記載の除草組成物を、該植物又は不要な植物の成長部位に施用することを含む、方法。
【請求項7】
不要な植物を防除するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物又は請求項4又は5に記載の除草組成物の使用。
【請求項8】
式(I)の化合物が、有用植物の作物栽培において不要な植物を防除するために使用される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
有用植物がトランスジェニック有用植物である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
式(III)
【化2】

(式中、R3、R4及びnは請求項1〜3のいずれか1項において規定されるとおりである)の化合物。
【請求項11】
式(IIIb)
【化3】

(式中、R3、R4及びnは請求項1〜3のいずれか1項において規定されるとおりである)の化合物。

【公表番号】特表2010−523609(P2010−523609A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502447(P2010−502447)
【出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002568
【国際公開番号】WO2008/125214
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】