説明

4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法

【課題】 4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンの含有量の少ない4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを簡便に製造できる、高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法を提供すること。
【解決手段】 粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを精製するにあたり、飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合して4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を析出させた後、得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩と塩基を中和反応させることを特徴とする4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱色素転写用材料に用いられるシアン色素の原料として有用な4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの製造方法としては、貴金属触媒及び水素の存在下で、4−ニトロアセトアニリドとアセトンを反応させた後、次いでアセトアルデヒドと反応させて4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを得、かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを所望の操作により処理して、アセチル基を脱離せしめてなる方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平11−171842
【0003】
本発明者らが、従来方法と同様にして4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを製造したところ、得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンには、不純物として4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを0.1〜3%程度含有しており、かかる4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンと4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンとの蒸留による分離は困難であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンの含有量の少ない4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを簡便に製造できる、高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行ったところ、特定の溶媒中で、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを含有する4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン[以下、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンという。]と塩化水素を混合して粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを塩酸塩にして析出させることで、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンは4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと構造が類似しているため、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと同様に塩酸塩となり、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩中に混入することが推測されるところ、驚くべきことに、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリン又はその塩酸塩の含有量が大幅に低減された高純度の4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を得ることができたのである。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を公知の処方により塩基を用いて中和すれば容易に高純度の4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得ることができる。
【0006】
即ち、本発明は、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを精製するにあたり、飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合して4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を析出させた後、得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩と塩基を中和反応させることを特徴とする4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の精製方法によれば、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンの含有量の少ない4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを簡便に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合して4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を析出させる工程(以下、造塩工程という。)と、かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を溶媒中に塩基で処理して高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得る工程(以下、フリー化工程という。)からなる。
【0009】
まず造塩工程について説明する。
粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンは上述の公知の製造方法、又はかかる方法に準じた製造方法により得られる。特開平11−171842には、1)4−ニトロアセトアニリドを原料とし、貴金属触媒及び水素の存在下でアセトンと反応させ、次いでアセトアルデヒドと反応させることで、各工程で生成物を単離することなく4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを製造できる方法、2)その反応機構として、4−ニトロアセトアニリドが還元されて生成する4−アミノアセトアニリドとアセトンが反応して4−イソプロピルアミノアセトアニリドを生成し、かかる4−イソプロピルアミノアセトアニリドとアセトアルデヒドが反応して4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを生成すること、3)得られる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを所望の操作により処理しアセチル基を脱離せしめて、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを製造できることが開示されている。よって、かかる方法に準じた製造方法とは、上記開示内容から容易に類推できる製造方法をいい、例えば原料として4−アミノアセトアニリドを用いる製造方法等が挙げられる。
【0010】
具体的には、貴金属触媒及び水素の存在下で、4−アミノアセトアニリドとアセトンを反応させて4−イソプロピルアミノアセトアニリドを含む反応液を得、次いでかかる反応液にアセトアルデヒドを加えて反応させて、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを得る方法である。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを公知の加水分解反応、例えば酸又は塩基で処理することにより、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドのアミド部位を加水分解して、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得ることができる。
【0011】
貴金属触媒としては、例えばパラジウム炭素触媒、白金炭素触媒等が挙げられる。貴金属触媒の使用量としては、4−アミノアセトアニリドに対して、通常0.5重量%〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%である。
【0012】
かかる反応では、アセトンは原料及び反応溶媒として用いられる。アセトンの使用量としては、4−アミノアセトアニリド1モルに対して、通常1モル以上、好ましくは1モル〜20モル、特に好ましくは2モル〜10モルである。また、反応に悪影響を与えなければ、必要に応じて別種の反応溶剤を混合してもよく、例えばメタノール、エタノール等のアルコール溶剤、水等が挙げられる。かかる反応溶剤の使用量としては、4−アミノアセトアニリド1重量部に対して、通常10重量部以下、好ましくは5重量部以下である。
【0013】
アセトアルデヒドの使用量としては、4−アミノアセトアニリド1モルに対して、通常1モル以上、好ましくは1モル〜10モル、特に好ましくは1モル〜5モルである。
【0014】
反応温度は、通常60℃〜150℃、好ましくは80℃〜120℃である。水素圧は、通常1MPa〜10MPaである。本反応は4−アミノアセトアニリドとアセトンを反応させて4−イソプロピルアミノアセトアニリドを得る反応(第一反応)と、4−イソプロピルアミノアセトアニリドとアセトアルデヒドを反応させて4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドを得る反応(第二反応)が、第一反応の反応液を取り出すことなく続けて行われるが、第一反応と第二反応の反応温度及び水素圧は、上述の範囲であれば同じであっても、異なっていてもよい。
【0015】
反応終了後、得られる反応混合物を濃縮することで、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドが得られる。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリドは、再結晶等の所望の方法により精製してもよい。
【0016】
加水分解反応に用いられる酸としては、通常公知の酸が用いられ、特に限定されないが、例えば塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸が挙げられる。かかる使用量は、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド1モルに対して、通常1モル以上、好ましくは1モル〜5モルである。かかる酸は単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。さらには、そのまま用いることもできるし、水溶液等の適当な溶液として用いてもよい。
【0017】
加水分解反応に用いられる塩基としては、通常公知の塩基が用いられ、特に限定されないが、例えばアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が挙げられる。具体的には、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。かかる使用量は、アルカリ金属化合物を用いる場合は、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド1モルに対して、通常1モル以上、好ましくは1モル〜5モル、アルカリ土類金属化合物を用いる場合は、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド1モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは0.5モル〜2.5モルである。かかる塩基は単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。さらには、そのまま用いることもできるし、水溶液等の適当な溶液として用いてもよい。
【0018】
かかる加水分解反応には通常溶媒として水が用いられるが、上述の酸又は塩基を水溶液で用いる場合には用いなくともよい。水を溶媒として用いる場合、かかる使用量としては、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド1重量部に対して、通常0.3重量部以上、好ましくは0.8〜3.0重量部である。また、必要に応じて別種の溶媒を用いることもできる。別種の溶媒としては、加水分解反応に影響を与えなければ特に限定されず、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これら溶媒の使用量としては、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド1重量部に対して、通常5重量部以下、好ましくは1重量部以下である。
【0019】
反応温度は、通常50℃〜150℃、好ましくは60℃〜130℃である。反応終了後、得られた反応混合物から、抽出、濃縮等の所望の分離操作により粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得ることができる。本加水分解反応に酸を用いた場合は、通常酸を過剰に用いるので、得られる粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンは酸塩となる。よって、適当な塩基で中和することにより、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得ることができる。また、加水分解反応後の反応混合物或いは中和後の混合物中に含まれる粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを飽和炭化水素系溶媒で抽出した場合は、その抽出液を後述する造塩工程の原料としてもよい。
【0020】
そして本発明の造塩工程においては、飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを含む上述の加水分解反応後の粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合する。このようにすれば、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を混合溶媒中に溶解させたまま、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を析出させることができる。
【0021】
飽和炭化水素系溶媒としては、飽和脂肪族炭化水素系溶媒及び飽和脂環式炭化水素系溶媒が挙げられ、その具体例としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられる。かかる使用量としては、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン1重量部に対して、通常0.3〜10重量部、好ましくは1〜3重量部である。
【0022】
アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。かかる使用量としては、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン1重量部に対して、通常0.1〜2.0重量部、好ましくは0.2〜1.5重量部である。
【0023】
使用される塩化水素としては、具体的には、例えばアルコール溶液、エーテル溶液等の塩化水素溶液又は塩化水素ガスが挙げられる。アルコールとしては、上述のアルコール系溶媒と同様のものが挙げられる。エーテルとしては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。かかる塩化水素の使用量は、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン1モルに対して、通常0.8〜2.0モル、好ましくは0.9〜1.5モルである。
【0024】
塩化水素を混合する時の処理温度は、通常0〜80℃である。塩化水素を混合した後、析出する4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を濾別し、必要に応じて適当な溶媒で洗浄後、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリン又はその塩酸塩の含有量の少ない、高純度の4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を得ることができる。
【0025】
次にフリー化工程について説明する。
フリー化工程は、水溶媒中で、上述の造塩工程により得られた高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩と塩基を中和反応させて、高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得る工程である。
【0026】
塩基としては、中和反応に用いられる通常公知の無機塩基又は有機塩基が挙げられる。無機塩基としては、例えばアルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物が挙げられ、具体的には、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸水素塩等が挙げられる。有機塩基としては、第三級アミンが用いられ、例えばトリメチルアミン、エチルジメチルアミン、ジメチル−n−プロピルアミン、ジメチルイソプロピルアミン、シクロヘキシルジメチルアミン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルメチルアミン、メチルジ−n−プロピルアミン、メチルジイソプロピルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、キヌクリジン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、ピリジン、キノリン、イソキノリン、N−メチルイミダゾール等が挙げられる。かかる塩基は単独で用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。また、そのまま用いてもよいし、水等の溶媒に溶解もしくは懸濁させて用いてもよい。かかる塩基の使用量は、中和反応に必要な理論量以上を用いればよい。
【0027】
反応終了後、反応混合物から、抽出、濃縮等の所望の分離操作にて、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンの含有量の少ない高純度4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得ることができる。また、必要に応じて蒸留し、さらに精製してもよい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、純度はガスクロマトグラフィー分析(以下、GC分析という。)により算出した。
【0029】
実施例1
オートクレーブに4−アミノアセトアニリド105.1g、アセトン203.2g、メタノール210g及びパラジウム炭素触媒5.26gを仕込み、水素圧4MPa、80℃で4時間撹拌した後、同温度でアセトアルデヒド70.9gを1時間30分で圧入し、その後12時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を濾過してパラジウム炭素触媒を濾別し、得られた濾液を濃縮して、濃縮残[4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アセトアニリド145.2g含有]を得た。
【0030】
かかる濃縮残にトルエン290.4gを加えてトルエン溶液とした後、36重量%塩酸水溶液200.5gを60℃、2時間で滴下し、加熱還流条件(約94℃)下で6時間撹拌した。反応終了後、水で抽出して、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を含む水層を得た。該水層に48重量%水酸化ナトリウム水溶液219.7gを添加して中和後、トルエンで抽出し、濃縮して乾燥後、粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン117.5g[純度93.4%(4−(N−イソプロピルアミノ)アニリン0.16%含有)]を得た。
【0031】
上述の粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン117.5g、メチルシクロヘキサン145.2g及びメタノール72.6gの混合溶液に、11.9重量%塩化水素イソプロパノール溶液222.3gを40℃で滴下後、5℃まで冷却した。析出した4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を濾別し、イソプロピルアルコール128gで洗浄後、乾燥して、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩124.1gを得た。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を20%水酸化ナトリウム水溶液で中和して得られるオイル層をGC分析した結果、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの純度98.3%、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンは含まれていなかった。
【0032】
上述の方法により得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩124.1g、水494g、メチルシクロヘキサン224gの混合溶液に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液54.8gを40℃、2時間で滴下して中和した。中和後、分液して有機層を得、濃縮後、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン121g(純度98.5%)を得た。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンに4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンは含まれていなかった。
【0033】
比較例1
実施例1と同様にして得た粗4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン604.7g[純度95.6%、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリン0.21%含有]を50cmDixon蒸留塔(理論段数:約20段相当)を用いて蒸留した。還流比5で113℃〜114℃/3mmHgの留分を本留分として、4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン441.8gを得た。かかる4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンには、4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンが0.21%含有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不純物として、少なくとも4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを含む4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを精製するにあたり、飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で当該4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合して4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩を析出させた後、得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩と塩基を中和反応させることを特徴とする4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの精製方法。
【請求項2】
不純物として、少なくとも4−(N−イソプロピルアミノ)アニリンを含む4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンが、貴金属触媒及び水素の存在下で4−アミノアセトアニリドとアセトンを反応させた後、次いでアセトアルデヒドと反応させて得られるものである請求項1に記載の精製方法。
【請求項3】
飽和炭化水素系溶媒が脂環式炭化水素系溶媒である請求項1又は2に記載の精製方法。
【請求項4】
貴金属触媒及び水素の存在下で、4−アミノアセトアニリドとアセトンを反応させた後、次いでアセトアルデヒドと反応させて4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンを得、次いで飽和炭化水素系溶媒及びアルコール系溶媒の混合溶媒中で、得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンと塩化水素を混合することを特徴とする4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩の製造方法。
【請求項5】
飽和炭化水素系溶媒が脂環式炭化水素系溶媒である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5で得られた4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリン・塩酸塩と塩基を中和反応させることを特徴とする4−(N−エチル−N−イソプロピルアミノ)アニリンの製造方法。


【公開番号】特開2007−223964(P2007−223964A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−48435(P2006−48435)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【出願人】(000167646)広栄化学工業株式会社 (114)
【Fターム(参考)】