説明

4ポート光スイッチ

【課題】光スイッチエレメント2個のみで、4つのポートを任意に光路切り替えする。
【解決手段】第1及び第2の2×2光スイッチを組み合わせて、第1の2×2光スイッチの第1のポートA1と、第2の2×2光スイッチの第1のポートB1を接続し、かつ、第1の2×2光スイッチの第3のポートA3と、第2の2×2光スイッチの第2のポートB2を接続する。第1の2×2光スイッチの第2及び第4のポートA2及びA4をそれぞれ第1及び第4の入出力ポートP1及びP4とし、第2の2×2光スイッチの第3及び第4のポートB3及びB4をそれぞれ第2及び第3の入出力ポートP2及びP3として、これら4つの入出力ポートP1〜P4を選択して光路接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光スイッチエレメント2個のみで、4つのポートを任意に光路切り替えする4ポート光スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
平面光回路を用いた光スイッチは、2入力・2出力となっている。図4は、従来型の2×2光スイッチの構成を示している。(a)は、光合分波器に位相変調器を設け、接続ポートを切り替えるタイプであり、(b)は、マッハツェンダー光干渉計に位相変調器を設け、干渉効果により接続ポートを切り替えるタイプであり、(c)は交差した光導波路に反射ミラーを設け、反射率を変化させることで接続ポートを切り替えるタイプである。各図において、黒の太線は光導波路を表している。これらすべての光スイッチでは、ポート1⇔4、ポート2⇔3という接続か、ポート1⇔3、ポート2⇔4という接続の二状態の切り替えのみであり、ポート1⇔2、ポート3⇔4という接続は不可能である。
【0003】
これら三状態の切り替えを可能とする4ポート光スイッチがあれば、多段化したマトリックススイッチでの切り替え経路数が倍増し、将来のメッシュ状光ネットワーク構築の際の光スイッチとしても適している。この4ポート光スイッチ実現方法として、図5に示すように、4個ないし5個の光スイッチエレメントを組み合わせる構成が特許文献1「導波路型光スイッチ」、特許文献2「4ポート光スイッチ」に開示されている。
【0004】
図5(a)に示す特許文献1に記載の導波路型光スイッチは、光スイッチエレメントを5つ組み合わせて、任意の4ポート間(A1,B3,D2,E4)で、下記状態1〜状態3の接続を可能にする。
状態1:ポートA1⇔A3⇔B1⇔B3と、ポートD2⇔D4⇔E2⇔E4の接続、
状態2:ポートA1⇔A4⇔C2⇔C4⇔D3⇔D2と、ポートB3⇔B2⇔C1⇔C3⇔E1⇔E4の接続、
状態3:ポートA1⇔A4⇔C2⇔C3⇔E1⇔E4と、ポートB3⇔B2⇔C1⇔C4⇔D3⇔D2の接続。
【0005】
図5(b)に示す特許文献2に記載の4ポート光スイッチは、光スイッチエレメントを4つ組み合わせて任意の4ポート間(A2,B2,B4,C4)で、下記状態1〜状態3の接続を可能にする。
状態1:ポートA2⇔A3⇔D2⇔D4⇔C1⇔C4と、ポートB2⇔B4の接続、
状態2:ポートA2⇔A4⇔B1⇔B4と、ポートB2⇔B3⇔C2⇔C4の接続、
状態3:ポートA2⇔A3⇔D2⇔D3⇔C3⇔C2⇔B3⇔B2と、ポートC4⇔C1⇔D4⇔D1⇔A1⇔A4⇔B1⇔B4の接続。
【0006】
これまで提案されている4ポート光スイッチの構成は、図5(a)(b)に示すように、4個ないし5個の光スイッチエレメントが必要となり、各エレメント内での光損失や、意図しないポートへの信号漏話の増加などが問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-218430号公報
【特許文献2】特許第2766531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これまで提案されている4ポート光スイッチの問題点を解決して、光スイッチエレメント2個のみで、4つのポートを任意に光路切り替えする4ポート光スイッチを実現することを目的としている。これによって、各エレメント内での光損失や、意図しないポートへの信号漏話の低減を図ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の4ポート光スイッチは、第1〜第4のポートA1,A2,A3,A4を有する第1の2×2光スイッチと、第1〜第4のポートB1,B2,B3,B4を有する第2の2×2光スイッチを組み合わせる。第1の2×2光スイッチの第1のポートA1と、第2の2×2光スイッチの第1のポートB1を接続し、かつ、第1の2×2光スイッチの第3のポートA3と、第2の2×2光スイッチの第2のポートB2を接続する。第1の2×2光スイッチの第2及び第4のポートA2及びA4をそれぞれ第1及び第4の入出力ポートP1及びP4とし、第2の2×2光スイッチの第3及び第4のポートB3及びB4をそれぞれ第2及び第3の入出力ポートP2及びP3として、これら4つの入出力ポートP1〜P4を選択して光路接続する。
【0010】
第1及び第2の2×2光スイッチは、それぞれ、第1及び第4のポート間の接続1⇔4、及び第2及び第3のポート間の接続2⇔3と、第1及び第3のポート間の接続1⇔3、及び第2及び第4のポート間の接続2⇔4の二状態のみを可能とする。入出力ポートP1,P2,P3,P4間の前記光路接続は、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B3⇔P2とポートP3⇔B4⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の第1の接続状態、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3とポートP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の第2の接続状態、ポートP1⇔A2⇔A4⇔P4とP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3の第3の接続状態の三状態を有する。
【発明の効果】
【0011】
これまでの提案では4個ないし5個の光スイッチエレメントを必要としていたのに対して、本発明によれば、2つの光スイッチエレメントで構成できるので、エレメント数の大幅な削減となる。これにより、デバイス全体としての小型化、低消費電力化、低損失化、低漏話特性化といった利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に基づき構成した4ポート光スイッチを例示する図である。
【図2】シリコン光導波路を用いて本発明の光スイッチを試作したサンプルの光学顕微鏡写真である。
【図3】P1に光信号を入射し、各スイッチエレメントの状態を切り替えた時のP2,P3,P4のサンプル端面の赤外光観察像である。
【図4】従来型の2×2光スイッチを例示する図であり、(a)光合分波器に位相変調器を設け、接続ポートを切り替えるタイプ、(b)マッハツェンダー光干渉計に位相変調器を設け、干渉効果により接続ポートを切り替えるタイプ、(c)交差した光導波路に反射ミラーを設け、反射率を変化させることで接続ポートを切り替えるタイプをそれぞれ示している。
【図5】特許文献1及び特許文献2にそれぞれ記載の従来技術構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示に基づき本発明を説明する。図1は、本発明に基づき構成した4ポート光スイッチを例示する図である。図1に示すように、例示の4ポート光スイッチは、光スイッチエレメント2つのみで4つのポートを任意に光路切り替えすることができる。各スイッチエレメント自体は、図4(a)〜(c)に例示したような従来型の2×2光スイッチを用いることができ、ポート1⇔4、ポート2⇔3という接続と、ポート1⇔3、ポート2⇔4という接続の二状態のみであり、ポート1⇔2、ポート3⇔4という接続は不可能とする。ここで、2つの2×2光スイッチのポートA1とポートB1、ポートA3とポートB2を結ぶ光路を形成すると、入出力ポートP1,P2,P3,P4の4ポート間において任意の接続が可能となる。具体的には、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B3⇔P2とポートP3⇔B4⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の接続状態1、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3とポートP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の接続状態2、ポートP1⇔A2⇔A4⇔P4とP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3の接続状態3の三状態を有する。
【0014】
図2は、シリコン光導波路を用いて本発明の光スイッチを試作したサンプルの光学顕微鏡写真である。濃い線の部分が光導波路である。スイッチエレメント内部には熱光学効果を利用する金属ヒーターと電極が設けられている。2×2光スイッチエレメントとして、熱光学効果を利用したマッハツェンダー干渉型光スイッチを採用した(図4(b)の従来型光スイッチ)。ポートP1〜P4が図1の各ポートに相当する。
【0015】
図3はP1に光信号を入射し、各スイッチエレメントの状態を切り替えた時のP2,P3,P4のサンプル端面の赤外光観察像である。試作サンプルの左側にあるポートP1から信号光を入射したときの、サンプル右側の端面付近における赤外光観察像。左側の黒い線部分はポートP2,P3,P4の光導波路で、端面で白く見える部分が信号光の出射を示す。(a),(b),(c)は二つの光スイッチエレメントの状態を切り替えた場合の出射光の観察像であり、本発明の三状態のスイッチングが実現できていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
近年のネットワーク情報量の増大に伴い、IPルータにおける電気信号処理が、大容量化や低消費電力化へのボトルネックとなっている。光スイッチは、光通信において電気信号処理を光信号処理に置き換えるために必要不可欠なデバイスである。本発明は、光スイッチを用いた光信号処理用の通信機器に利用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第4のポートA1,A2,A3,A4を有する第1の2×2光スイッチと、第1〜第4のポートB1,B2,B3,B4を有する第2の2×2光スイッチを組み合わせ、
第1の2×2光スイッチの第1のポートA1と、第2の2×2光スイッチの第1のポートB1を接続し、かつ、第1の2×2光スイッチの第3のポートA3と、第2の2×2光スイッチの第2のポートB2を接続し、
第1の2×2光スイッチの第2及び第4のポートA2及びA4をそれぞれ第1及び第4の入出力ポートP1及びP4とし、第2の2×2光スイッチの第3及び第4のポートB3及びB4をそれぞれ第2及び第3の入出力ポートP2及びP3として、これら4つの入出力ポートP1〜P4を選択して光路接続する4ポート光スイッチ。
【請求項2】
第1及び第2の2×2光スイッチは、それぞれ、第1及び第4のポート間の接続1⇔4、及び第2及び第3のポート間の接続2⇔3と、第1及び第3のポート間の接続1⇔3、及び第2及び第4のポート間の接続2⇔4の二状態のみを可能とする請求項1に記載の4ポート光スイッチ。
【請求項3】
入出力ポートP1,P2,P3,P4間の前記光路接続は、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B3⇔P2とポートP3⇔B4⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の第1の接続状態、ポートP1⇔A2⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3とポートP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A4⇔P4の第2の接続状態、ポートP1⇔A2⇔A4⇔P4とP2⇔B3⇔B1⇔A1⇔A3⇔B2⇔B4⇔P3の第3の接続状態の三状態を有する請求項2に記載の4ポート光スイッチ。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−203572(P2011−203572A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71862(P2010−71862)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】