説明

4級カチオン性帯電防止剤及びそれを含有した帯電防止組成物と成形品

【課題】樹脂や有機溶媒との相溶性が良好であり、耐擦傷性と透明性を備えハロゲンフリーで環境負荷の少ない、耐加水分解性、持続性を有する帯電防止組成物の提供。
【解決手段】負イオンとして水酸化物イオン、カルボキシイオンで構成された一般式(1)で示される(メタ)アクリルアミド系オニウム塩モノマーからなる帯電防止剤。さらに該モノマーを構成成分とするオリゴマー又は/及びポリマーをも含む帯電防止剤。基材上に帯電防止剤又はこれを含む組成物を塗布して帯電防止層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤及び該帯
電防止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に樹脂材料は、電気絶縁性に優れているため、絶縁体等の電気絶縁性を必要とする用
途には極めて有用である反面、表面に静電気を帯びやすく、粉塵の吸着および静電気に起
因したトラブルを生じる。
【0003】
第4級アンモニウム塩基からなるカチオン系の帯電防止剤は、優れた帯電防止効果を持つ
ことが知られている。例えば、特許文献1、2では、負イオンとしてハロゲン化物イオン
又はアルキルスルホン酸イオンを含有する非重合性第4級アンモニウム塩をアクリレート
系モノマーなどの重合性化合物に添加し、紫外線照射により帯電防止性樹脂組成物を得る
方法が報告された。しかし、これらの非重合性第4級アンモニウム塩が樹脂との間に有効
な化学結合が形成されておらず、時間経過とともに樹脂組成物表面に徐々にブリードアウ
トし、水拭き、摩擦などで容易に剥がれてしまい、帯電防止性能を持続できないという問
題点があった。
【0004】
持続できる帯電防止性能を提供するため、重合性基を持つカチオン性ビニルモノマーが他
の共重合可能のモノマー、例えばメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムク
ロライドを2−エチルヘキシルアクリレートと共重合させ、高分子帯電防止剤として使用
する方法が報告された(特許文献3)。しかし、該カチオン性ビニルモノマーはエステル
系のアクリレート骨格を有するため、加水分解し易いという欠点があった。また、加水分
解で発生したアクリル酸が電子部品、光学材料などの腐食を招く恐れがあった。
【0005】
耐水性の改善が耐加水分解性の高いアミド系化合物を使用することが公知化されている。
しかし、多くのアミド系カチオン性ビニルモノマーは極性が高く、吸湿性が高く、また製
造上の関係で通称水溶液の状態で流通している。例えば、不飽和第3級アミンN,N−ジ
メチルアミノプロピルアクリルアミドに四級化剤としてメチルクロライドを加えて、水と
アプロティックな有機溶媒からなる混合溶媒存在下で四級化反応を行う方法がよく使われ
ている(特許文献4)。当然ながら、これらの公知の方法により得られるアミド系カチオ
ン性ビニルモノマー溶液は通常水溶液であるため、塗膜時の乾燥性が悪く、また、汎用樹
脂、多官能アクリルモノマー、オリゴマー、有機溶媒などとの相溶性が乏しく、均一に分
散できず、有効な帯電防止性が発現できないという問題点があった。仮にアミド系カチオ
ン性ビニルモノマーを高純度に精製し、極性有機溶媒に溶解させたとしても、該モノマー
自身の親水性が高いために、有機溶媒を除去して使用する際に樹脂中の他成分に対する溶
解性が低く、樹脂中で凝縮するか樹脂から析出し、連続した帯電防止膜を形成できず、目
標とする帯電防止性能を達成できない。
【0006】
アミド系カチオン性ビニルモノマーを使用せず、耐水性と樹脂、有機溶媒との相溶性を同
時に改良しようとする種々の試みも行われてきた。例えば、アクリレート系カチオン性ビ
ニルモノマーとアミド基を有する重合性モノマーを共重合して使用する方法が報告されて
いる(特許文献5、6)。しかし、これらの方法では、帯電防止組成物中のカチオン性ビ
ニルモノマーの含有量が低下するため、目標とする帯電防止性能を得るためには、この共
重合体を多量に添加する必要があり、その結果、樹脂の各種特性が低下するとともに、樹
脂組成物の価格が高くなってしまうという問題点があった。
【0007】
また、カチオン性ビニルモノマー自身の相溶性向上を目的としたものとして、例えば、
特許文献7では、窒素オニウムカチオンおよび該オニウムカチオンに弱く配位する弱配位
性アニオンを有する重合性化合物を提案している。しかし、該提案のビス(トリフルオロ
メタンスルホニル)イミド等のアルカリ金属塩は一般に高価であるとともに、ハロゲンイ
オンを含有するため、廃棄、焼却時に有毒なガスなど発生する可能性があり、人体や自然
環境に悪影響を及ぼす恐れがある。さらに、このような窒素オニウム塩を電池やコンデン
サー等の電子部品に用いると、ハロゲンイオンにより電極の劣化を引き起こし易く、かか
る表面と接触する用途には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−231240号公報
【特許文献2】特開2008−13636号公報
【特許文献3】特開2008−231196号公報
【特許文献4】特開昭63−201151号公報
【特許文献5】特開2007−332181号公報
【特許文献6】特開2000−129245号公報
【特許文献7】特開2007−9042号公報
【0009】
以上のように、耐水性も相溶性も本質的に改善され、且つ環境への負荷が少なく、有効な
帯電防止剤組成物とするアミド系カチオン性ビニルモノマー未だに得られていないのが現
状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、基材となる樹脂や有機溶媒との相溶性に優れた、ハロゲンフリーで環境への負
荷の少ない、耐加水分解性が高く、優れる帯電防止効果を有し、安価に製造できるアクリ
ルアミド系のカチオン性ビニルモノマー、該モノマーからなる帯電防止剤および該帯電防
止剤を含有する帯電防止性樹脂組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、このようなアミド系カチオン性ビニルモノマーからなる帯電防止組成
物により、帯電防止性、透明性、各種樹脂基材との密着性に優れた帯電防止層、およびこ
のような帯電防止層を備える帯電防止フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、正イオンとしてアンモ
ニウム、負イオンとして水酸化物イオン、カルボキシイオンで構成されたオニウム塩であ
る一般式(1)(式中Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素
数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3
のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、X-は水酸化物
イオン、カルボキシイオンを示す)で示される4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系
モノマー、又は/及び該モノマーからなるオリゴマー、ポリマーで構成した帯電防止剤を
見出した。該帯電防止剤を有機溶媒に溶解させてから基材上にコーティング、固定するこ
とで帯電防止層を形成させることにより上記課題を解決し、本発明に到達した。
【化1】

【0012】
すなわち、本発明は、
(1)正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして水酸化物イオン、カルボキシイオン
で構成されたオニウム塩である一般式(1)(式中Rは水素原子またはメチル基を、R
及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていて
もよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアル
キレン基を、X-は水酸化物イオン、カルボキシイオンを示す)で示される4級カチオン性
(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤、
【化1】

(2)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成成分と
して5〜100重量%配合したオリゴマー又は/及びポリマーからなる帯電防止剤、
(3)上記(1)と(2)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、該
モノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマーを有機溶媒中に1〜90重量%含有し
た溶液であることを特徴とする帯電防止剤、
(4)有機溶媒は、溶解度パラメーターが8〜16
(cal/cm3)0.5を有する有機溶媒からなる群から選択された1種または2種以上である上記
(3)記載の帯電防止剤、
(5)多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドをさらに含有する
上記(1)乃至上記(4)記載の帯電防止組成物、
(6)上記(5)記載の多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミド
の配合量は上記(1)乃至上記(4)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モ
ノマー、該モノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマー対して1〜50重量%含有
することを特徴とする帯電防止組成物、
(7)上記(1)記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは構成単位と
して0.1〜90重量%を含有した上記(1)乃至上記(6)記載の帯電防止剤および帯
電防止組成物
(8)基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を
塗布して形成されることを特徴とする帯電防止層、
(9)基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を
活性エネルギー線又は熱で重合して形成されることを特徴とする帯電防止層、
(10)基材および基材上に上記(1)乃至上記(7)記載の帯電防止剤又は/及び帯電
防止層を有することを特徴とする帯電防止フィルム
を提供するものである。

【発明の効果】
【0013】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤は樹脂や
有機溶媒との相溶性が良好であり、耐擦傷性と透明性が良好で、ハロゲンフリーのため環
境負荷が少なく、十分な耐加水分解性を有すると共に、持続できる優れた帯電防止効果を
持つ帯電防止性樹脂組成物とすることができる。
これら作用効果のうち、特に、帯電防止性に優れた理由として、樹脂や有機溶媒との相
溶性が高いことで樹脂中に帯電防止剤が均一に分散でき、連続的な帯電防止層を形成し易
いことを本発明者らは推察している。また、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルア
ミド系モノマーは自身の相溶性が優れているので、相溶性向上目的の新たな化合物の添加
が不要となり、相対的なカチオン性モノマーの含有量低下による樹脂の各種特性の低下を
抑えることができた。
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤、帯電防
止組成物により、帯電防止性、透明性、各種樹脂基材との密着性に優れた帯電防止層及び
このような帯電防止層を備える帯電防止フィルムを提供することができる。

【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の帯電防止剤の有効成分である4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー
は、正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして水酸化物イオン、カルボキシイオンで
構成されたオニウム塩であり、さらに重合性の(メタ)アクリルアミドと連結した化合物
である。
一般式(1)で表される化合物は、式中Rは水素原子またはメチル基を、R及びR
は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、
は炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基
を、X-は水酸化物イオン、カルボキシイオンをそれぞれ表す化合物で、具体的には、ア
クリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノメチ
ルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモ
ニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、
アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノ
プロピルメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルエチル
ジメチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアン
モニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムヒドロキシ
ド、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイル
アミノエチルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピル
ジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルジエチルベン
ジルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニ
ウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムヒドロキ
シド、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイ
ルアミノメチルトリエチルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノメチルトリ
プロピルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウ
ムヒドロキシド、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、
メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイ
ルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノプロ
ピルメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノプロピルトリエ
チルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウ
ムヒドロキシド、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシ
ド、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、メタク
リロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルア
ミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムヒドロキシド、メタクリロイルアミノプロピ
ルエチルジベンジルアンモニウムヒドロキシドなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニ
ウムヒドロキシド4級カチオン性モノマーが挙げられ、または、アクリロイルアミノメチ
ルトリメチルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウ
ムアセテート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムアセテート、アクリ
ロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノプロピルト
リメチルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニ
ウムアセテート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムアセテート、
アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムアセテート、アクリロイルア
ミノプロピルトリエチルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノプロピルトリプロ
ピルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウム
アセテート、アクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムアセテート、ア
クリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミ
ノプロピルメチルジベンジルアンモニウムアセテート、アクリロイルアミノプロピルエチ
ルジベンジルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニ
ウムアセテート、メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムアセテート、メタ
クリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノエ
チルトリメチルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアン
モニウムアセテート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムアセテ
ート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムアセテート、メタクリ
ロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノ
プロピルトリエチルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノプロピルトリプロピ
ルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノエチルジメチルベンジルアンモニウム
アセテート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジルアンモニウムアセテート、
メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニウムアセテート、メタクリロイ
ルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムアセテート、メタクリロイルアミノプロ
ピルエチルジベンジルアンモニウムアセテートなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニ
ウムアセテート4級カチオン性モノマーが挙げられ、さらには、アクリロイルアミノメチ
ルトリメチルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノメチルトリエチルアンモ
ニウムプロピオネート、アクリロイルアミノメチルトリプロピルアンモニウムプロピオネ
ート、アクリロイルアミノエチルトリメチルアンモニウムプロピオネート、アクリロイル
アミノプロピルトリメチルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルメ
チルジエチルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルエチルジメチル
アンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウ
ムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムプロピオネート
、アクリロイルアミノプロピルトリプロピルアンモニウムプロピオネート、アクリロイル
アミノエチルジメチルベンジルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピ
ルジメチルベンジルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルジエチル
ベンジルアンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルア
ンモニウムプロピオネート、アクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウム
プロピオネート、メタクリロイルアミノメチルトリメチルアンモニウムプロピオネート、
メタクリロイルアミノメチルトリエチルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルア
ミノメチルトリプロピルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノエチルトリ
メチルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニ
ウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジエチルアンモニウムプロピ
オネート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジメチルアンモニウムプロピオネート、
メタクリロイルアミノプロピルメチルジプロピルアンモニウムプロピオネート、メタクリ
ロイルアミノプロピルトリエチルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプ
ロピルトリプロピルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノエチルジメチル
ベンジルアンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプロピルジメチルベンジル
アンモニウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプロピルジエチルベンジルアンモニ
ウムプロピオネート、メタクリロイルアミノプロピルメチルジベンジルアンモニウムプロ
ピオネート、メタクリロイルアミノプロピルエチルジベンジルアンモニウムプロピオネー
トなどの(メタ)アクリルアミド系アンモニウムプロピオネート4級カチオン性モノマー
が挙げられる。本実施形態においては、これらの4級カチオン性モノマーの中から1種又
は2種以上のモノマーを任意に選択して組み合わせればよい。そして、これらの中でも、
工業品原料を入手し易く、安価で簡易に製造できるといった観点から、アクリロイルアミ
ノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、アクリロイルアミノプロピルトリメチ
ルアンモニウムアセテートが特に好ましい。
【0015】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、公知の方法を用いて製造
することができる。例えば、下記一般式(2)で表されるN,N−ジアルキルアミノアル
キル(メタ)アクリルアミドに4級化剤としてのハロゲン化アルキルまたはジアルキル硫
酸、炭酸ジアルキルあるいはアルキルトルエンスルフォネートを水または有機溶媒中で4
級化反応させ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド4級塩を得、その後、
目的の負イオンを有するナトリウムあるいはカリウム塩を用いたアニオン交換反応工程を
行うことによって得ることができる。4級化反応工程で得られるジアルキルアミノアルキ
ル(メタ)アクリルアミド4級塩は、親水性が高いため、特に有機溶媒を反応溶媒として
行う場合、有機溶媒が、8〜16 (cal/cm3)0.5の溶解度パラメーターを有する溶媒から
なる群から選択された1種または2種以上の溶媒が好ましく、反応後のジアルキルアミノ
アルキル(メタ)アクリルアミド4級塩の濃度が1〜90%となるよう行うのが好ましく
、さらに5〜70%となるよう行うのが特に好ましい。90%を越えると、ジアミノアル
キル(メタ)アクリルアミド4級塩の結晶が析出してスラリー状となり、結晶化熱による
重合反応の恐れが生じる。また、1%以下になると、溶媒による希釈効果により反応効率
が著しく低下する。次工程の負イオン交換反応も、同じ有機溶媒を反応溶媒として行い、
析出するナトリウムあるいはカリウム塩を濾過で除去し、4級カチオン性アクリルアミド
系モノマーが目的の濃度となるよう濃縮操作を行うことにより、有機溶媒への溶解性が良
好な目的アミド系カチオン性ビニルモノマー溶液を得ることができる。
【0016】
【化2】

一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1
〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアル
キレン基を表し、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピ
ル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
N,N−メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルプロピルア
ミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチルエチルアミノプロピル(メタ)アク
リルアミド、N,N−メチルプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドN,N−ジ
プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が例示される。また、4級化剤として
は、メチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド等のア
ルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド
、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸メチル、パラ
トルエンスルホン酸エチル等のアルキルトルエンスルフォネートが挙げられる。
【0017】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの負イオンとしては、水酸化
物イオン、カルボキシイオンが挙げられる。カルボキシイオンとしては、ギ酸、酢酸、プ
ロピオン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸等のアルキル基の炭素原子数が1〜18の脂肪
族カルボン酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸、または乳酸、サリチル酸、グリコール酸
等の炭素原子数1〜18のオキシカルボン酸等の負イオンが使用でき、特に酢酸、プロピ
オン酸が好ましい。
【0018】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを溶解させる有機溶媒として
は、溶解度パラメーター(SP値)の範囲が8〜16(cal/cm3)0.5であり、さらに好まし
くは9〜15である。8〜16の範囲であると本発明の4級カチオン性アクリルアミド系
モノマーの溶解性と分散性が共に良好となる。なお、本発明の溶解性パラメーターは、H.
BurrellのPolymer Handbook, 2版(J.Brandrup and E.H.Immergut編)Wiley
Interscience, New York, (1975年)のIV−337〜IV−359頁によって示される値である。
【0019】
このような有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2
−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、アセトン、メチ
ルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。
【0020】
通常、カチオン性ビニルモノマーは親水性が高いため、汎用樹脂や有機溶剤との相溶性に
乏しく、均一な帯電防止効果が得られないという問題があり、仮に有機溶媒に溶解させた
としても、その溶解性は低く、目標とする帯電防止性能を付与させるためには、多量に添
加する必要があった。しかし、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマ
ーは有機溶媒に対する溶解性が向上したため、通常、有機溶媒中で混合される各種樹脂組
成物中に高濃度で溶解させることが可能となった。この結果、得られた帯電防止組成物は
、プラスチックなどの成形品に塗布した後、乾燥して使用する方法(塗布法)、あるいは
あらかじめ成形・硬化前に樹脂などに添加・混練して使用する方法(練込法)いずれにお
いても使用することが可能である。
【0021】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーをプラスチックなどの成形品
に塗布した後、乾燥して使用する場合、単独でも帯電防止性、プラスチックへの塗膜性、
耐擦傷性の効果を十分に示すことができる。また、本発明の本来の帯電防止性や相溶性な
どの特性を阻害しない範囲で、2個以上のエチレン基を有する多官能(メタ)アクリレー
トまたは多官能(メタ)アクリルアミドを添加し、架橋性被膜を基材表面に形成させるこ
とにより、さらなる製膜性や耐擦傷性などの塗膜の性能を向上させることができる。
【0022】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)
アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスルトー
ルヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ
)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタン
トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1、6
−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アク
リレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジテトラエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)ア
クリレート等のモノマーとオリゴマーが挙げられる。
【0023】
このような多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、アロニックスM−4
00、M−450、M−305、M−309、M−310、M−315、M−320、T
O−1200、TO−1231、TO−595、TO−756(以上、東亞合成製)、K
AYARD
D−310、D−330、DPHA、DPHA−2C(以上、日本化薬製)、ニカラック
MX−302(三和ケミカル社製)等が挙げられる。
【0024】
また、多官能(メタ)アクリルアミドとしては、メチレンビスアクリルアミド、メチレン
ビスメタアクリルアミド、エチレンビスアクリルアミド、エチレンビスメタアクリルアミ
ド、ジアリルアクリルアミド等のモノマーとウレタンアクリルアミド(特開2002−3
7849)等のオリゴマーが挙げられる
【0025】
これらの多官能(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリルアミドは、1種類に限ら
れず、複数の多官能モノマー、オリゴマーを組み合わせて使用してもよい。また、このよ
うな多官能モノマー、オリゴマーを使用される場合、本発明の4級カチオン性アクリルア
ミド系モノマーに対して1〜50重量%含有させることが好ましく、また2〜30重量%
含有させることが特に好ましい。含有量が1重量%未満ではその添加効果が認められず、
50重量%を越えると、架橋率が高くなるため、塗膜の硬度、耐擦傷性は向上するが、弾
力性が失われて割れやすくなる。
【0026】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは、帯電防止層の種々の性能
、例えば硬化物性を硬くあるいは、柔らかく調整する際には、他の重合性化合物を混合し
、共重合させてもよく、重合性化合物としては、アクリル(メタ)アクリレート、ヒドロ
キシアルキル(メタ)アクリレート、不飽和ニトリルモノマー、不飽和カルボン酸、アミ
ド基含有モノマー、メチロール基含有モノマー、アルコキシメチル基含有モノマー、エポ
キシ基含有モノマー、多官能性モノマー、ビニルエステル、オレフィンなど分子鎖中に反
応性二重結合をもつラジカル重合化合物が挙げられる。
【0027】
アクリル(メタ)アクリレートの例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート
、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチル
アクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシ
ルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート
、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブ
チルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エ
チルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどが挙げられる。
【0028】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)ア
クリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)
アクリレート等が挙げられる。
【0029】
不飽和ニトリルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙
げられる。
【0030】
不飽和カルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イ
タコン酸、モノアルキルイタコネート等がある。
【0031】
このような重合性化合物は、1種類に限られず、複数の重合体を組み合わせて使用しても
よい。
【0032】
本発明の4級カチオン性アクリルアミド系モノマーは重合性化合物と公知の方法によって
重合体または共重合体とすることができる。重合方法としては、例えば、乳化重合、溶液
重合、懸濁重合、塊状重合等の方法を用いることができる。これらの方法のうち、ラジカ
ル重合開始剤を用いた溶液重合が好ましい。溶液重合を行う際に用いられる溶液としては
、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブ
チルセロソルブ等のグリコールエーテル類、プロビレングリコールモノメチルエーテル等
のプロピレングリコールエーテル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエー
テル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、トルエ
ン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエ
ステル類、水等を用いることができる。これらの溶媒は、重合する単量体の種類や共重合
の場合はその混合比等に応じて、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの場合、4級カチオン性アクリルアミド系モノマーの構成成分として5重量%以上配合する。これ以下になると、十分な帯電防止効果を得ることが出来ない。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリル等
のアゾ化合物系触媒や、ベンゾイルパーオキシド、過酸化水素等の過酸化物系触媒、過硫
酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過硫酸塩系触媒等を用いることができる。重合
開始剤の使用量は、重合性単量体100重量%に対して0.05〜10重量%、好ましく
は0.2〜3重量%である。
【0034】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量は、使用する多官能
(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリアミドの粘度、他の重合性化合物の配合量
、樹脂組成物に要求される物性によるので、特に限定されるものではないが、帯電防止組
成物中の固形分比で0.1〜90重量%、好ましくは1〜60重量%である。この4級カ
チオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの含有量が0.1重量%以下では帯電防止性
能が不十分となり、90重量%を超えると透明性に劣るものとなる。
【0035】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止組成物は、
活性エネルギー線又は熱による硬化が可能であるので、プラスチックなどの成形品に塗布
し、乾燥後、硬化することによって、帯電防止性ハードコート樹脂組成物として使用する
ことができる。
【0036】
本発明の活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物(光重合開始剤)を分解して活
性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線
としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げ
られる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比
較的安価で、小型である点から、紫外線を使用することが好ましい。
【0037】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを光硬化させる際は、光開始
剤を添加しておく。光開始剤は、活性エネルギー線として電子線を用いる場合には特に必
要はないが、紫外線を用いる場合には必要となる。光開始剤はアセトフェノン系、ベンゾ
イン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系等の通常のものから適宜選択すればよい。
光開始剤のうち、市販の光開始剤としてはチバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品
名Darocure1116、Darocure1173、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE5
00、IRGACURE651、IRGACURE754、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE1
300、IRGACURE1800、IRGACURE1870、IRGACURE2959、IRGACURE4265、
IRGACURE TPO、UCB社製、商品名ユベクリルP36、などを用いることができる。
【0038】
本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーの帯電防止性や相溶性などの
特性を阻害しない範囲で、顔料、染料、界面活性剤、ブロッキング防止剤、バインダー、
架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の他の任意成分を併用してもよい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0040】
なお、以下の実施例、比較例において、帯電防止組成物の特性評価は、以下の方法により
行った。
(1)塗装と紫外線硬化
厚さ100μmのポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを貼付したガラス製の
試料板(縦200×横200×厚さ5mm)を動かないように水平面に固定し、板の先方
の端に帯電防止ハードコート剤を帯状に滴下して、バーコーター(RDS60)で全体に
均等な力がかかるように両端を押さえ、回転させずに同じ速さ(5cm/sec)で手前
まで引いて塗布し、熱風乾燥機で80℃、3分の条件で溶媒を除去し、塗膜を得た。塗膜
の付着状態を目視によって観察し、塗膜の形成性を評価した(◎:優れている;○:良い
;△:やや悪い;×:悪い)。次に塗面を上向きにして紫外線照射を行って硬化させ、帯
電防止ハードコート膜を得た。紫外線硬化条件は、出力300W、単位当たり出力50W
/cmの高圧水銀灯1本を設置した紫外線照射装置(オーク製作所 モデルOHD320
M)を使用し、1秒当たりに紫外線エネルギーは10mJ/cmであるように試料板と
ランプの距離を調節した。塗膜の表面がベタつかなくなるまでに必要な照射時間を硬化時
間として測定した。硬化後、各試験板上の塗膜の表面抵抗率、耐擦傷性試験を行った。ま
た、塗膜の透明性を目視によって観察し、評価した(◎:透明で表面が平滑;○:透明だ
が凹凸がある;△:僅かな曇りや凹凸がある;×:極度な曇りや凹凸がある)。
(2)表面抵抗率測定
型板 (縦110×横110mm) を使用し、カッターで帯電防止ハードコート膜を裁断
し、表面抵抗率測定用試料を得た。JIS K 6911 に基づき、YOKOGAWA HEWLETT-PACKARD製H
IGH RESISTANFE METER 4329Aを用いて測定を行った。
(3)耐擦傷性試験
スチールウールを#0000のスチールウールを用いて、200g/cmの荷重をか
けながら10往復させ、傷の発生の有無を評価した(◎:膜の剥離や傷の発生がほとんど
認められない;○:膜にわずかな細い傷が認められる;△:膜全面に筋状の傷が認められ
る。;×:膜の剥離が生じる)。
【0041】
実施例および比較例で使用した成分は、以下の通りである。
【0042】
〈カチオン性ビニルモノマーの合成〉
合成例1
窒素雰囲気下で、1Lオートクレーブガラス容器にN,N−ジメチルアミノプロピルアクリ
ルアミド(興人製:商標「DMAPAA」)100g、イソプロパノール(IPA)52
9gを加え、内温30℃以下に調整、撹拌しながら塩化メチルを注入し、4級化反応を実
施した。
反応液中の残存遊離アミン(残存「DMAPAA」)が0.2%以下になったところで反
応液中の過剰の塩化メチルを減圧留去し、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
−メチルクロライド塩(DMAPAA−Q)20%含有IPA液640gを得た。
続いて、水酸化ナトリウムのイソプロパノール飽和溶液 109g(水酸化ナトリウム濃
度1.8重量%)を200mLの三つ口フラスコに加え、上記で合成したDMAPAA−
Qの20%IPA溶液50gを加え、内温25℃で1時間撹拌した。析出した塩化ナトリ
ウムを濾過で除去し、ろ液を採取した。このろ液の半分を減圧で濃縮し、アクリロイルア
ミノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド50%含有IPA液(DMAPAA−
OHの50%IPA溶液)16.6g(収率91%)を得た。残りの半分のろ液は酢酸を
加えて中和反応処理を行った後、減圧で濃縮し、アクリロイルアミノプロピルトリメチル
アンモニウムアセテート50%含有IPA液(DMAPAA−酢酸の50%IPA溶液)
を20.1g(収率90%)得た。
【0043】
実施例A−1
帯電防止ハードコート剤の作製
ペンタエリスリトールトリアクリレート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレート
PE−3A)62重量部、合成例1で合成したDMAPAA−OHの50%IPA溶液2
8重量部(DMAPAA−OHとして14重量部)、光開始剤として、チバ・スペシャル
ティーケミカルズ社製、商品名Darocure1173、3重量部をIPA 106重量部に混
合溶解して、紫外線硬化可能な帯電防止ハードコート剤を得た。その後、得られたハード
コート剤を厚さ100μmのPETフィルムに塗装し、紫外線硬化を行い、帯電防止性ハ
ードコートを作製した。
【0044】
実施例A−2〜6、比較例A−1〜3
表1に記載の組成に変えた以外は実施例A−1とで同様に作製した。
【0045】
【表1】

DMAPAA−OH:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
DMAPAA−酢酸:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセテート
DMAPAA−Q:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド
DMAEMA−Q:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0046】
実施例B−1
共重合体溶液の合成
撹拌翼、還流冷却器、ガス導入口を備えたフラスコに、合成例1で合成したDMAPA
A−OHの50%IPA溶液20重量部(DMAPAA−OHとして10重量部)と2−
エチルヘキシルアクリレート(EHA)10重量部、アゾイソブチロニトリル(AIBN
)0.2重量部をIPA 30重量部に混合溶解し、窒素気流下70℃で8時間重合し、
共重合体溶液(a)を得た。
帯電防止ハードコート剤の作製
共重合体溶液(a)5重量部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化
学(株)社製:ライトアクリレートDPE−6A)とペンタエリスリトールトリアクリレ
ート(共栄社化学(株)社製:ライトアクリレートPE−3A)および光開始剤として、
チバ・スペシャルティーケミカルズ社製、商品名Darocure1173、5重量部をIPA
120重量部に混合溶解して、紫外線硬化可能な帯電防止ハードコート剤を得た。その後
、得られたハードコート剤を厚さ100μmのPETフィルムに塗装し、紫外線硬化を行
い、帯電防止性ハードコートを作製した。
【0047】
共重合体溶液の合成におけるモノマーの配合比を表2に示す。
【0048】
実施例B−2〜6、比較例B−1〜3
表3に記載の組成に変えた以外は実施例B−1とで同様に作製した。
【0049】
【表2】

DMAPAA−OH:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
DMAPAA−酢酸:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムアセテート
DMAPAA−Q:アクリロイルアミノプロピルトリメチルアンモニウムクロライド
DMAEMA−Q:メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
BA:ブチルアクリレート、
2HEA:2−ヒドロキシエチルアクリレート
【0050】
【表3】

PETA:ペンタエリスリトールトリアクリレート
DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
【0051】
実施例および比較例の特性評価より、本発明の4級カチオン性(めた)アクリルアミドモ
ノマーは、重合性化合物に混合し、共重合した場合、しない場合双方においても、従来の
親水性の高いカチオン性ビニルモノマーより改良された優れた相溶性により、透明性の高
い均一な塗膜を形成し、従来用いられてきたアクリレート系帯電防止剤と同等またはそれ
以上の優れた帯電防止性能が得られていることが分かる。また、硬化に要するエネルギー
が少なく、得られた塗膜の耐擦傷性も耐加水分解性も高い。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明してきたように、本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーは、
ハロゲンフリーで環境負荷が少ないと共に、他の帯電防止組成物および有機溶媒との相溶
性が良好であるため、この4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーからなる帯電
防止組成物を用いて形成される帯電防止層は、帯電防止性、透明性、耐擦傷性と耐加水分
解性に優れる。本発明の4級カチオン性(メタ)アクリルアミドモノマーからなる帯電防
止層は、紫外線硬化型樹脂組成物、粘着剤組成物等の樹脂にあらかじめ添加して使用する
場合などに好適に用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
正イオンとしてアンモニウム、負イオンとして水酸化物イオン、カルボキシイオンで構成
されたオニウム塩である一般式(1)(式中Rは水素原子またはメチル基を、R及び
は各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく
、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン
基を、X-は水酸化物イオン、カルボキシイオンを示す)で示される4級カチオン性(メタ
)アクリルアミド系モノマーからなる帯電防止剤。
【化1】

【請求項2】
請求項1記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーを構成成分とするオリゴマー又は/及びポリマーを含む帯電防止剤。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、該モノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマーを有機溶媒中に1〜90重量%含有した溶液であることを特徴とする帯電防止剤。
【請求項4】
有機溶媒は、溶解度パラメーターが8〜16 (cal/cm3)0.5を有する有機溶媒からなる群
から選択された1種または2種以上である請求項3記載の帯電防止剤。
【請求項5】
多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドをさらに含有する請求項
1乃至請求項4記載の帯電防止組成物。
【請求項6】
請求項5記載の多官能(メタ)アクリレート又は/及び(メタ)アクリルアミドの配合量
は請求項1乃至請求項4記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマー、該モ
ノマーを配合したオリゴマー又は/及びポリマー対して1〜50重量%含有することを特
徴とする帯電防止組成物。
【請求項7】
請求項1記載の4級カチオン性(メタ)アクリルアミド系モノマーは構成単位として0.
1〜90重量%を含有した請求項1乃至請求項6記載の帯電防止剤および帯電防止組成物

【請求項8】
基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を塗布して形
成されることを特徴とする帯電防止層。
【請求項9】
基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止組成物を活性エネル
ギー線又は熱で重合して形成されることを特徴とする帯電防止層。
【請求項10】
基材および基材上に請求項1乃至請求項7記載の帯電防止剤又は/及び帯電防止層を有す
ることを特徴とする帯電防止フィルム。


【公開番号】特開2010−229187(P2010−229187A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75326(P2009−75326)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】