説明

5−アミノサリチル酸またはその塩もしくは代謝産物の新規な結腸を標的とする調節放出性生体接着性製剤

本願発明は結腸を標的とする調節放出性生体接着性医薬組成物であって、5−アミノサリチル酸またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物、1または複数の親水性または疎水性放出調節剤およびその医薬上許容される賦形剤を含む医薬組成物、ならびにその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5−アミノサリチル酸あるいはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物を含み、所望により1または複数の親水性または疎水性放出調節剤、および医薬上許容される賦形剤を含む、結腸を標的とする調節放出性生体接着性医薬組成物、およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メサラミン(Mesalamine)または5−アミノサリチル酸(5−ASA)としても知られているメサラジン(Mesalazine)は消化管の炎症(クローン病)を処置し、軽度潰瘍性結腸炎を抑えるのに用いられる抗炎症薬である。メサラジンは、腸の中で代謝される腸特異的アミノサリチル酸の薬物であり、腸で優勢的に作用し、そのため全身性の副作用がほとんどない。メサラジンは腸粘膜上で抗炎症活性を有するため、クローン病および潰瘍性結腸炎を治療するのに用いられる。
【0003】
潰瘍性結腸炎は病因が不明の結腸の慢性炎症疾患である。該疾患は結腸の粘膜に炎症をもたらし、重度の場合には粘膜下層にまで広がる。
【0004】
限局性腸炎または肉芽腫性口唇炎(colitis granulomatosa)としても知られている関連する疾患、クローン病は小腸、特に回腸にて最も頻繁に認められるが、空腸に、および直腸を含む結腸の別の部分にも影響を及ぼすかもしれない。一般に、該炎症は粘膜よりも深部にある層に進行し、上皮組織にはあまり影響を及ぼさないことで潰瘍性結腸炎の炎症とは異なる。
【0005】
WO81/02671は経口投与によりIBDを治療する医薬組成物を開示する。該発明は5−ASAの経口投与が、特に徐放性錠剤の形態で投与された場合に、潰瘍性結腸炎に対して有用な治療効果を有するとの知見に基づくものである。WO81/02671はさらに、5−ASAおよびポリビニルピロリドンのイソプロパノール中溶液から顆粒を調製し、溶媒を蒸発させ、該顆粒をエチルセルロースで被覆し、該顆粒を錠剤に圧縮する工程を含む、徐放性錠剤の調製方法を開示する。
【0006】
米国特許第4960765号はさらに、患者の結腸に達するまで5−ASAの該組成物からの放出を遅らせるように、本質的に遊離5−ASAのエステルと、医薬上許容される担体とを混合してなる、有効量の組成物を経口投与することを含む、IBDの治療方法を開示する。結腸でのpHに依存する放出は、5−ASAの徐放性をもたらすコーティング剤を用いることにより達成される。該粒子はエチルセルロースで被覆される。
【0007】
WO97/23199は、溶媒としての水中にて調製され、5−ASAのコアと球形化助剤とを含み、速度制限バリア物質で被覆された、IBDの治療用調節放出性組成物を開示する。該組成物は胃で5−ASAの少しの放出をもたらし、顆粒はサッシェに包装されてもよい。これらの顆粒は錠剤での使用に適さない。
【0008】
EP0704208A2は腸液に溶ける薬物をカバーするためのコーティング剤および結合剤を記載する。これらは10ないし25重量%のメタクリル酸のコポリマーと、40ないし70重量%のアクリル酸メチルと、20ないし40重量%のメタクリル酸メチルとを含む。単層コーティングの他に、多層コーティングシステムの記載も開示する。これらは、例えば塩基性または水感受性の活性成分を含むコアからなっていてもよく、セルロースエーテル、セルロースエステルまたはオイドラギットのカチオン性ポリメタクリレートなどの他のコーティング材料の絶縁層を有していてもよい。
【0009】
EP0704207A2は腸液に溶ける薬物をカバーするための熱可塑性材料を記載する。これらは16ないし40重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のコポリマーと、30ないし80重量%のアクリル酸メチルと、0ないし40重量%の他のアクリル酸のアルキルエステルおよび/またはメタクリル酸とを含む。フィルム形成最低温度(DIN53778によればMFT)は0℃と25℃の間の範囲にあり、そのために、可塑剤を添加しなくても室温で加工処理が可能である。
【0010】
WO−A−83/00435は、経口投与が可能であり、pH7より下では不溶性であるが、結腸中で可溶性であり、アニオン性ポリマーで被覆されている組成物を開示し、5−アミノサリチル酸、プレドニソロンまたはインドメタシンを含有し、オイドラギットS100を含有するコーティング剤を備えたカプセルまたは錠剤が記載される。その開示されている薬物の形態はコーティングされたカプセルまたはコーティングされた錠剤、すなわちモノリシックな薬物の形態である。放出は結腸にて選択的に起こると言われている。
【0011】
メサラミンは、潰瘍性結腸炎の治療用の400mg錠(Asacol)、250mg&500mgカプセル(Pentasa)および1200mg錠(Lialda)の用量の錠剤として現在市販されている。これらの市販されている製剤は小児用途については推奨されていない。
【0012】
徐放性の、調節放出性剤形の胃腸管にて局所的に活性である医薬を調製するには、投与後の調節放出性を確保することが重要である。徐放性、制御放出性、遅延放出性またはとにかく調節放出性形態の調製は、不活性なマトリックス、親水性マトリックスまたは生体浸食性/生体分解性マトリックスを使用することで行われ得る。
【0013】
不活性な親油性マトリックスをベースとする多くの製剤が記載されている:Drug Dev. Ind.Pharm.13(6), 1001-1022, (1987)は、ポア形成因子としての種々の量のコロイド状シリカを用いる、その中に活性成分が組み込まれている親油性の不活性なマトリックスの製造方法を開示する。WO95/16451は、メサラジンの溶解速度を制御するために胃耐性フィルムでコーティングされた親水性マトリックスでのみ形成される組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO81/02671
【特許文献2】米国特許第4960765号
【特許文献3】WO97/23199
【特許文献4】EP0704208A2
【特許文献5】EP0704207A2
【特許文献6】WO−A−83/00435
【特許文献7】WO95/16451
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Drug Dev. Ind.Pharm.13(6), 1001-1022, (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
結腸または直腸の疾患または病気の治療にて、薬理学的に活性な薬剤を感染部位に投与することが要求され得る。しかしながら、経口投与可能な医薬組成物は、薬理学的に活性な薬剤が結腸または直腸に達する前に消化管で吸収される結果としてこの点にて効果的でないことが判明することが頻繁である。その結果、薬理学的に活性な薬剤の結腸または直腸へのデリバリーは、通常、坐薬または浣腸を用いることで直腸投与により達成される。しかしながら、直腸投与は、一般に、患者にとって経口投与ほど都合がよいものでも、受け入れられるものでもない。さらには、該直腸投与は結腸の右側を治療するのに適しない。特に、坐薬は直腸で効果があるに過ぎず、浣腸が結腸の左側を超えて到達するのは稀である。
【0017】
5−ASAまたはメサラミンは、今では、IBDの標準的治療薬として確立されている。加えて、5−ASAは最大よりも低い効能を示し、それに反映して日用量が高くなり(1.5g/日ないし4g/日)、応答および緩和率が低く、再発率が高く、そのことはその部位および作用機序ならびに遠位腸の細胞へのデリバリーの効率と関連付けられる。
【0018】
5−ASAの投与はそのデリバリーに付随する困難な問題により妨げられる。例えば、化合物は胃液中で不安定であり、小腸での吸収が大きく、治療する部位であり、デリバリーする好ましい部位である腸の遠位部位での利用可能性が減少し、そのため高用量を投与する必要がある。理想的には、化合物は形態が変化することなく(すなわち、親化合物として)遠位腸(回腸および/または結腸)に到達すべきである。
【0019】
剤形が遠位腸に達すれば、該化合物は放出され、つづいて遠位腸の腸細胞の最大代謝性と一致した速度で吸収されるはずである。したがって、遠位腸細胞(すなわち、薬物の作用部位)は活性形態の薬物(すなわち、親化合物)に対して露出を最大とし、かくして必要とされる用量は最小となり、加えて親化合物に対するシステミックな露出およびその付随する副作用はプレシステミックな代謝作用(すなわち、腸細胞にて)を最大とすることで最小化される。
【0020】
持続放出性/徐放性製剤および遅延放出性製剤は共に、上部腸での5−ASAの放出を制限し、その放出を遠位腸に集中させる目的で開発された。
【0021】
例えば、徐放性製剤(PENTASA(登録商標))は何年も前に承認され、使用されている。PENTASA(登録商標)は5−ASAを連続して放出し、小腸にて約50%が放出され、大腸における放出については利用可能な50%であり、承認ラベルにおいて20−30%の全身性吸収を報告する。このような吸収は、5−ASAが遠位腸にてPENTASA(登録商標)からの放出が完全でなく、あまり吸収されないため、遠位腸からの吸収が低レベルであるのに加えて、この製剤の近位放出および吸収特性を反映するものである。
【0022】
活性成分のGI輸送をスローダウンさせる方法を同定するのに多大な努力がなされた。調節放出性製剤の利点は、これらの剤形が必要とされる作用部位で医薬を比較的長期間にわたって維持しうるため、同じ効果を得るのに必要とされる投与回数が減少することで患者のコンプライアンスが得やすいことにあるのは、医薬の分野では周知である。
【0023】
Asacol400mg錠(Procter & Gamble Pharmaceuticals)のような市販の製剤は、pHが7以上で溶解する、アクリル酸をベースとした樹脂、オイドラギットS(メタクリル酸コポリマーB、NF)で被覆された遅延放出錠である。しかしながら、Asacolに付随する特定の欠点として:小児の使用が推奨されないこと、薬物の徐放性を提示していないこと、一日に多数の投薬を必要とすること、患者にとって不便であること、GIのpHが7より小さい患者、潰瘍性結腸炎患者(Jacbsen Bら、Digestive Diseases and Sciences, 1993, 38(11), 1989-1993)ではコーティング剤が不完全または全く溶解しない事態をもたらすこと、が挙げられる。そのコーティング剤のため、薬物はすべて結腸に達するか、あるいは全く達しない。ある患者は形態が変化していない無傷の錠剤を排出したと報告されている(Watts Pら、Drug Development and Industrial Pharmacy. 1997, 23(9), 893-913)。Asacolはまた、製剤の生体接着性を提示しておらず、そのため該薬剤のいくつかは作用部位(結腸粘膜)に近接近しない可能性もある。
【0024】
Pentasa(登録商標)250mg&500mgCRカプセル(Shire Inc.)の添付文書では、メサラミンをエチルセルロースで被覆した調節放出性製剤(ペレット)であり、胃腸管全体にわたって治療有効量のメサラミンを放出するように設計されていることを提示する。しかしながら、Pentasaに伴う特定の欠点として:小児の使用が推奨されないこと、薬物の遅延放出が提示されていないこと、一日に多数の投薬を必要とすること、患者に不便であること、上部GI部位で薬物を放出し、そこで可変的(20−30%)に吸収がなされ、作用部位(結腸)で薬物があまり利用できなく、このため、一日当たり多量(4g)の薬物を必要とすること、が挙げられる。
【0025】
Lialda錠、1200mg(Shire Inc)は、内部親油水性マトリックスおよびその中に親油性マトリックスが分散されている外部親水性マトリックスにて1200mgの5−アミノサリチル酸を含有する調節放出性錠剤である。該錠剤を胃耐性pH依存性ポリマーフィルムで被覆し、そのフィルムはpH7でまたはそれ以上のpHで、通常は末端の回腸で崩壊し、そこでメサラミンは錠剤コアからの放出を開始する。しかしながら、Lialdaに付随する特定の欠点として:小児の使用が推奨されないこと、親油性マトリックスを含み、均一な放出パターンを提示しないこと、製剤の生体接着性を提示しておらず、そのため該薬剤のいくつかは作用部位(結腸粘膜)に近接近しない可能性もあること、あるUC患者はGIのpHが7より大きくなく、薬物が結腸にて放出されない可能性のあること、が挙げられる。コーティング剤が溶解しないため、薬物が結腸にて放出されない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本願発明者らは、意外にも、上記した剤形の欠点を克服するのに適した製剤または剤形物質が生体接着性を有することを見出した。ここで、生体接着性は物質(合成物質または生体物質)の長時間生体組織に接着しうる能力として定義される。生体接着性剤形の目的は、医薬剤形を長時間にわたって必要とされる作用部位に維持し、活性成分の有効量を放出させることである。
【0027】
胃腸管の性質を考えた場合、剤形には以下の特性が求められる:臨床治療の要求に適合するように結腸で効果的に保持されること;患者のコンプライアンスを促進するように摂取(服用)が便利であること;薬物が十分な負荷能力を有すること;薬物が8時間以上の徐放特性を有すること;上部GI管で薬物が放出されないこと、ここでコーティングは胃液で溶け、薬物の放出が終わると、剤形は完全に分解され、排泄されること;他に局所的な副作用がないこと。
【0028】
製剤の調節放出性は、8−36時間に、好ましくは10−36時間に、最も好ましくは12−36時間に伸長しうる。
【0029】
実施形態の一つにおいて、新規な結腸を標的とする調節放出性マトリックス製剤が提供される;ここで該製剤は8−36時間の放出特性および以下の溶解特性により特徴付けられる:
2時間:約12%より多くの薬物が放出される。
4時間:約25%より多くの薬物が放出される。
8時間:約55%より多くの薬物が放出される。
12時間:約75%より多くの薬物が放出される。
16時間:約90%より多くの薬物が放出される。
【0030】
上記した理由に関して、5−ASA、その塩および代謝産物の薬理効果を最大にするために、本願明細書にて新規な医薬製剤、例えば、調節放出性錠剤が提供される。かかる製剤は結腸粘膜に接着し、該薬剤が結腸から排出する機会が減少し、かくして保持時間が増え、接触が長くなり、それにより局所的に作用する薬剤の効能が改良され、患者のコンプライアンスが改善される。
【0031】
発明の目的
本願発明は、主に、胃液に対して耐性のコーティング剤を塗布することにより胃内での放出を回避することを、あるいはコーティング剤を組み合わせることで放出の遅延(放出されないこと)を改良することを試みるものである。
【0032】
したがって、本願発明は有効成分が結腸にてゆっくりと放出される医薬組成物であって、実質的に上記した欠点を克服し、合理的なコストで製造でき、再現性が高いものを提供することを目的とする。
【0033】
本願発明のもう一つ別の目的は、活性成分含有量が多く、賦形剤含有量がわずかであるに過ぎない場合であっても、活性成分の結腸でのゆっくりとした放出を可能とする、医薬組成物を提供することである。
【0034】
該目的は、活性生物を胃腸管で遅延放出する医薬組成物、すなわち胃液に溶解しないポリマーを含むコーティング剤で被覆した持続放出性マトリックスコアを含む組成物により、本願発明に従って達成される。
【0035】
本願発明の組成物は、結腸にて標的とする有効成分を放出するのに特に適している。しかしながら、有効成分の放出が胃で開始される場合であっても、同様に本願発明の組成物で達成されうる。例えば、クローン病の治療における少ないケースでは、5−アミノサリチル酸を用いて高い位置で処理し、短い十二指腸管にて最適な効果を得るために活性成分を胃の下部にて放出することが望ましい。
【0036】
本願発明の組成物は、実質的に、有効成分の放出がpH非依存性の方法で起こるという利点を有する。したがって、個々の患者の間の生物学的差異の効果は略完全に回避することができる。
【0037】
本願発明の組成物の遅延放出は、少なくとも3つの手段を組み合わせることで起こるものであり、その各々は、すなわち、有効成分と胃液に溶けないポリマーと混合すること、対応するコア物質の圧縮性と関連付けられるように、粒径を小さくすること、および胃液に溶けないポリマーでコーティングすることが、有効生物の放出を遅らせる一因となる。
【0038】
本願発明のもう一つ別の目的は、一日に1回、メサラミンを投与することを含む、潰瘍性結腸炎の治療に対する患者のコンプライアンスを容易にする医薬組成物を提供することである。
【0039】
本願発明のさらに別の目的は、12時間で、または12時間後に少なくとも80%のメサラミンが放出されるところの、インビトロ溶解特性を有する、5−ASAまたはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物を含む医薬製剤を提供することである。
【0040】
本願発明のさらに別の目的は、治療上有効量の5−ASAまたはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物と、医薬上許容される賦形剤とを含み、所望により1または複数の調節放出性剤を含んでいてもよい医薬組成物であって、5−ASAまたはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物の胃腸管での保持時間を増加させるように処方されており、最新の応力ゲージ装置(英国、West Sussex、Mecmesinより購入)を用いて測定した場合に、剥離力として、少なくとも100mNの接着度を有する、医薬組成物を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本願発明は5−アミノサリチル酸あるいはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物を含み、所望により1または複数の親水性または疎水性放出調節剤および医薬上許容される賦形剤を含む、調節放出性生体接着性医薬組成物、およびその製造方法に関する。
【0042】
「治療上有効な量」とは、治療すべき症状の進行を停止または低下させるか、さもなくば該症状を完全にまたは部分的に治療するか、該症状に対して一時的に作用する有効成分の量を意味する。当業者であれば、慣用的な実験方法により、何ら苦労することなく、かかる量を容易に決定することができる。
【0043】
治療上有効な薬物とは、限定されるものではないが、抗感染剤、ペニシリン、セファロスポリン、サイクリン、ベータ−ラクタマーゼ阻害剤、アミノサイデス、キノロン、ニトロイミダゾール、スルファミド、抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、麻酔剤、ステロイドまたは非ステロイド抗炎症剤、局所または全身作用の鎮痛剤、抗痙攣剤、抗癌剤、利尿剤、ベータ−遮断剤、抗高血圧剤、抗狭心剤、抗不整脈剤、血管拡張剤、徐脈剤、カルシウム阻害剤、鎮静剤、強心剤、抗真菌剤、抗潰瘍剤、血管緊張剤、血管保護剤、抗虚血剤、制吐剤、抗凝血剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、免疫調節剤、抗ウイルス剤、抗糖尿病剤、低血脂血症、肥満と闘う薬剤、抗痙攣誘発剤、睡眠剤、抗パーキンソン剤、抗偏頭痛剤、神経弛緩剤、不安解消剤、抗鬱剤、神経刺激剤、記憶促進剤、気管支拡張剤、鎮咳剤、骨粗鬆症と闘う薬剤、ペプチド、ホルモン、蛋白、ステロイド、酵素、酵素阻害剤およびそのアゴニストまたはアンタゴニストまたは組み合わせを包含する。
【0044】
「所望の」または「所望に」なる語は、後に記載される状況が生じても、生じなくてもよいことを意味し、その記載は状況が生じる場合、状況が生じない場合を包含する。
【0045】
「調節放出性」製剤、剤形または組成物なる語は、薬物の製剤からの所望の放出を達成する医薬製剤を包含する。調節放出性製剤は、有効成分が所望の標的に暴露されるように調節して設計することができる。例えば、調節放出性製剤は、有効成分が遠位大腸にて完全にデリバリーされること、盲腸で始まり、持続的に上行結腸、横行結腸を介し、結腸を降下し、S状結腸で終えることに焦点を当てて設計することができる。また別に、例えば、調節放出性組成物は、薬物が近位小腸にてデリバリーされること、十二指腸で始まり、回腸で終えることに焦点を当てて設計することもできる。さらに別の例において、調節放出性製剤は、有効成分を空腸で放出し始め、横行結腸でその放出を終えるように設計され得る。可能性および組み合わせは多数存在し、これらの例に限定されないのは明らかである。
【0046】
「調節放出性」なる語は、「持続放出性」および「遅延放出性」製剤、ならびに持続放出性および遅延放出性の両方の特徴を有する製剤を包含する。「持続放出性」製剤は薬物が所望の部位に放出されるか、または所望の部位を標的とするように、放出の時間を延ばすことができる。遅延放出性製剤は医薬活性な化合物の放出を特定の時間遅らせるように設計することができる。かかる製剤は本明細書にて「遅延放出性」または「遅延開始性」製剤または剤形と称する。本願発明の調節放出性製剤は遅延および持続放出性の両方の特性を示す製剤、例えば所定の時間経過後に、あるいは物理化学的変化が生じた後にのみ放出を開始し、ついで例えば長期にわたって放出し続ける製剤を包含する。調節放出性はまた、パルス放出、バースト放出等を包含する。
【0047】
「医薬上許容される」なる語は生物学的にあるいは生物学的でなくても望ましくなくない物質を含む担体を意味する。
【0048】
「生体接着性」なる語は、物質が長期間にわたって生体組織に接着しうる能力として定義される。生体接着性は胃内容物の排出および腸の蠕動運動に由来する、および繊毛運動による移動に由来する不当な滞留時間の問題に対する一の解決策である。十分な生体接着性があるならば、生体接着性物質と受容体組織の間に親密な接触が存在するはずであり、生体接着性物質は組織表面の隙間および/または粘液に浸透し、機械的、静電気的または化学的結合を形成するはずである。ポリマーの生体接着性はポリマーの特性と周りの媒体の特性の両方の影響を受ける。「生体接着性物質」および「粘膜接着性物質」なる語は互換的に用いることができる。
【0049】
生体接着は、ポリカルボフィル、カルボマー、レクチン、ペクチン、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミン、コラーゲン、キトサン、オリゴ糖および多糖類、例えば、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、カルボキシメチルセルロースなどのその誘導体、デキストラン、多糖類、ジェラン、カラゲーナン;ヒアルロン酸、ポリヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム;キサンタンガム、グアガム、アラビアガム、ローカストビーンガムなどのガム;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポビドン/ポリエチレンオキシド、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマー、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル酸とメタクリル酸エステルのポリマー、ポリラクチド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(フマル酸)、ポリ(マレイン酸)ならびにその混合物等からなる群より選択される。生体接着性は約0.5時間ないし約36時間の期間提供される。
【0050】
本願発明において、滞留時間とは医薬剤形が胃を通って直腸に至るのに要する時間であり、該剤形が胃および/または小腸および/または大腸および/または結腸、あるいは薬物が医薬剤形より放出される胃腸管の領域にて長期にわたる保留時間を有していてもよい。例えば、本願発明の医薬剤形は小腸(あるいは、十二指腸、空腸および回腸からなる群より選択される1または2か所)に保持され得る。これらの医薬剤形は、全体として、剤形の少なくとも一の表面に塗布される生体接着性ポリマーコーティング剤を包含する。
【0051】
本願発明の好ましい実施形態において、結腸粘膜におけるメサラミン製剤の滞留時間の増加は生体接着性により達成され、その生体接着性は結腸粘膜と親和性のあるポリマーを用いて達成される。本願明細書に開示される実施形態にて使用される粘膜接着性物質の例として、限定されるものではないが、天然の、半合成の、または合成のポリマーが挙げられる。
【0052】
天然ポリマーは、限定されるものではないが、蛋白(例、親水性蛋白)、例えば、ペクチン、ゼイン、修飾ゼイン、カゼイン、ゼラチン、グルテン、血清アルブミンまたはコラーゲン、キトサン、オリゴ糖および多糖類、例えば、セルロース、デキストラン、タマリンド、種子多糖類、ジェラン、カラゲーナン、キサンタンガム、アラビアガム;ヒアルロン酸、ポリヒアルロン酸、アルギン酸、アルギン酸ナトリウムを包含する。
【0053】
生体接着性ポリマーが合成ポリマーである場合、その合成ポリマーは、典型的には、限定されるものではないが、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリアルキレン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタラート、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリビニルハライド、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリル酸とメタクリル酸エステルのポリマー、ポリラクチド、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリ(フマル酸)、ポリ(マレイン酸)ならびにそのブレンドおよびコポリマーまたは混合物より選択される。
【0054】
本願発明で用いるのに適する他のポリマーは、限定されるものではないが、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、トリ酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルピロリドンおよびポリビニルフェノール、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびそのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド−コ−カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリ無水物(例えば、ポリ(無水アジピン酸))、ポリオルトエステル、そのブレンドおよびコポリマーを包含する。
【0055】
生体接着性として用いるのに適するもう一つ別の群のポリマーは、必ずしも限定するものではないが、疎水性骨格を有するポリマーであって、その骨格が少なくとも一つの疎水性のペンダント基を有するものを包含する。適当な疎水性基は略非極性の基である。かかる疎水性基の例として、アルキル、アルケニルおよびアルキニル基が挙げられる。この疎水性基はポリマーの生体接着性を干渉することなく、強化するように選択されるのが好ましい。
【0056】
生体接着性ポリマーとして用いるのに適するさらなる群のポリマーは、必ずしも限定するものではないが、疎水性骨格を有するポリマーであって、その骨格が少なくとも一つの親水性のペンダント基を有するものを包含する。適当な親水性基はもう一つ別の官能基に水素結合または静電気的に結合しうる能力を有する基を包含する。かかる親水性基の例として、カルボン酸、スルホン酸およびホスホン酸などの負に帯電している基、(プロトン化)アミンならびにアミドおよびイミンなどの中性の極性基のような正に帯電している基が挙げられる。
【0057】
親水性基はポリマーの生体接着性を干渉することなく、強化するように選択されるのが好ましい。本願発明の実施形態において、医薬組成物は有効物質と少なくとも1つの膨潤性ポリマーを含む。
【0058】
膨潤性ポリマーは、限定されるものではないが、架橋ポリ(アクリル酸)、ポリ(酸化アルキレン)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリウレタンヒドロゲル、無水マレイン酸ポリマー、例えば無水マレイン酸コポリマー、セルロースポリマー、多糖類、澱粉および澱粉をベースとするポリマーを包含する。
【0059】
ポリマーは、生分解の間に利用可能な、あるいはポリマー表面のカルボキシル基の数を増加させることで修飾され得る。ポリマーはまた、アミノ基をポリマーに結合させることで修飾され得る。ポリマーは、マイクロスフェアの表面が露出した分子に生体接着性を有するリガンド分子を共有結合させるために当該分野にて利用可能な多種の化学的カップリング操作のいずれかを用いて修飾され得る。
【0060】
医薬上許容される賦形剤は、限定されるものではないが、結合剤、希釈剤、滑沢剤、滑剤および界面活性剤を包含する。
【0061】
使用される添加剤の量は、使用する有効物質の量に依存するであろう。一の賦形剤は一つより多くの機能を発揮しうる。
【0062】
結合剤は、限定されるものではないが、澱粉、例えばイモ澱粉、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉;微結晶セルロース;セルロース、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム;アカシア、アルギン酸、グアガムなどの天然ガム;液体グルコース、デキストリン、ポビドン、シロップ、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなど、およびそれらの混合物を包含する。
【0063】
限定されるものではないが、粉砂糖、圧縮糖、デキストレート、デキストリン、デキストロース、フルクトース、ラクチトール、マンニトール、シュークロース、澱粉、ラクトース、キシリトール、ソルビトール、タルク、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、二塩基性または三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどを含むフィラーまたは希釈剤が使用され得る。
【0064】
滑沢剤は、限定されるものではないが、Mg、AlまたはCaあるいはZnステアラート、ポリエチレングリコール、ベヘン酸グリセリル、鉱油、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、硬化植物油、およびタルクなどの当該分野にて一般に知られている物質より選択され得る。
【0065】
滑剤は、限定されるものではないが、二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、澱粉および三塩基性リン酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、コロイド状二酸化ケイ素、シリコーンヒドロゲルおよび当業者に公知の他の物質を包含する。
【0066】
本願発明の医薬製剤は、限定されるものではないが、錠剤(単層錠、多層錠、ミニ錠、生体接着性錠剤、カプレット、マトリックス錠、錠剤中の錠剤、粘膜接着性錠、調節放出性錠、パルス放出錠、持続放出錠)、ペレット、ビーズ、顆粒、徐放性製剤、カプセル、マイクロカプセル、カプセルおよびマイクロスフェア中錠剤、マトリックス製剤、マイクロカプセル化製剤および懸濁用粉末/ペレット/顆粒を包含する。
【0067】
マトリックス型剤形は、水溶性、例えば親水性ポリマー、あるいは水不溶性、例えば疎水性ポリマーのいずれかと混合した、アミノサリチル酸有効物質、その塩または代謝物を含む。一般に、調節放出性剤形に使用されるポリマーの特性は放出のメカニズムに影響を与えるであろう。例えば、親水性ポリマーを含有する剤形からの有効物質の放出は、表面拡散および/または浸食の両方を介して進行しうる。医薬システムの放出メカニズムは当業者に周知である。マトリックス型剤形はまた、モノリシックまたはマルチユニットとすることができ、水溶性および/または水不溶性ポリマー膜で被覆することもできる。
【0068】
本願発明のマトリックス製剤は、例えば、直接圧縮または湿式造粒、あるいは当該分野にて公知の慣用的方法を用いることで調製され得る。ついで、上記したように、機能性コーティング剤が本願発明に従って塗布され得る。加えて、機能性コーティング剤を塗布する前に、バリアまたはシーラントコートをマトリックス錠のコアに塗布することもできる。
【0069】
本願発明のマトリックスをベースとする剤形において、薬物および/またはプロドラッグまたは代謝産物および所望の医薬上許容される賦形剤はポリマーマトリックス中に分散され、それは典型的には1または複数の水溶性ポリマーおよび/または1または複数の水不溶性ポリマーを含む。薬物は拡散および/または浸食により剤形より放出され得る。
【0070】
適当な水溶性ポリマーは、限定されるものではなく、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリエチレングリコールおよび/またはその混合物を包含する。
【0071】
適当な水不溶性ポリマーも、限定されるものではないが、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、トリ酢酸セルロース、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸エチル)、ポリ(メタクリル酸ブチル)、ポリ(メタクリル酸イソブチル)、ポリ(メタクリル酸ヘキシル)、ポリ(メタクリル酸イソデシル)、ポリ(メタクリル酸ラウリル)、ポリ(メタクリル酸フェニル)、ポリ(アクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸イソプロピル)、ポリ(アクリル酸イソブチル)、ポリ(アクリル酸オクタデシル)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタラート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)またはポリウレタン、および/またはその混合物等を包含する。
【0072】
親水性ポリマーは、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの炭水化物様セルロースまたはその誘導体;キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガムなどのガム;アルギナート;カルボマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポビドン/ポリエチレンオキシド、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0073】
速度調節放出性物質は、セルロースおよびセルロース誘導体、ワックス、カルボマー、ポリアルキレンポリオール、ポリカルボフィル、メタクリル酸誘導体、ゼラチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、アクリレート/メタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラゲナン、アルギン酸およびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラヤガム、アカシアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、蜜ロウ、カルナバ蝋、セチルアルコール、硬化植物油、およびその混合物からなる群より選択される。
【0074】
親水性ポリマーは、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの炭水化物様セルロースまたはその誘導体;キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガムなどのガム;アルギナート;カルボマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポビドン/ポリエチレンオキシド、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される。
【0075】
本願発明の製剤中のポリマーの量および型、および水溶性ポリマーの水不溶性ポリマーに対する割合は、一般に、後記するように、薬物またはプロドラッグまたは代謝産物またはその塩の所望の放出特性が得られるように選択される。
【0076】
好ましくは、オイドラギット(Eudragit)RSおよびオイドラギットRL(Rohm Pharma)などのアミノメタクリレートコポリマーが本願発明の調節放出性製剤で使用するのに適している。これらのポリマーは、生理的pHの範囲全体にわたって、精製水、希釈酸、緩衝溶液または消化液に不溶である。ポリマーはpHに依存することなく水および消化液中で膨潤する。膨潤した状態で、それらはついで水を透過し、活性物質を溶かす。ポリマーの透過性は、ポリマー中のアクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸メチル(MMA)およびトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド(TAMCl)基の割合に依存する。EA:MMA:TAMClの割合が1:2:0.2のこれらのポリマー(オイドラギットRL)は1:2:0.1の割合のポリマー(オイドラギットRS)よりも透過性に優れる。オイドラギットRLのポリマーは高浸透性の不溶性ポリマーである。オイドラギットRSのポリマーは低浸透性の不溶性フィルムである。
【0077】
アミノメタクレレートコポリマーは所望のいずれの割合で組み合わせることもできる。例えば、オイドラギットRS:オイドラギットRL(90:10)の割合を用いることができる。さらには薬物またはプロドラッグの放出を遅らせるのに該割合を調節することもできる。例えば、オイドラギットRS:オイドラギットRLの割合は、約100:0ないし約80:20、約100:0ないし約90:10、またはいずれの値とすることもできる。
【0078】
アミノメタクリレートコポリマーは、薬物またはプロドラッグの放出を所望の時間遅らせるために、ポリマー材料内でメタクリル酸コポリマーと組み合わせることができる。アンモニオメタクリレートコポリマー(例えば、オイドラギットRS)のメタクリル酸コポリマーに対する割合は、約99:1ないし約20:80の範囲にて用いることができる。2つの型のポリマーが組み合わされて同じポリマー材料になってもよく、あるいは別々のコーティングをコアに塗布して提供されてもよい。
【0079】
上記したオイドラギットポリマーに加えて、多数の別のコポリマーを用いて薬物の放出を遅らせることができる。これらのポリマーはメタクリル酸エステルコポリマー(例えば、オイドラギットNE30D)を包含する。オイドラギットポリマーに対するさらなる情報は、“Chemistry and Application Properties of Polymethacrylate Coating Systems”in Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms (James McGinity, Marcel Dekker Inc.編, New York, pg.109-114)に見ることができる。
【0080】
商品名オイドラギットRTM RS/RL/NEの下で入手可能である、アクリル酸メチルコポリマーおよびアンモニオメタクリレートコポリマーが特に好ましい。これらのポリマーは、官能基として、エステル基(オイドラギットRTM.NE)またはアンモニウム基(オイドラギットRTM.RL/RS)を有する。ポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル)およびポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)が好ましい。これらのポリマーは、例えば、40%の水性分散液のポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル)2:1でオイドラギットRTM.NE40Dとして、12.5%のイソプロパノール性溶液のポリ(アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、トリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド)1:2:0.1でオイドラギットRTM.RS12.5として、および1:2:0.2の組成でオイドラギットRTM.RL12.5として入手可能である。
【0081】
本願発明の製剤は、すべての形態のIBDを治療する、すなわち遠位小腸および大腸の両方にその内容物をデリバリーするジェネリック製剤を含むものである。本願発明の範囲内にある他の製剤は、特定の疾患を治療するためにより具体的に設計されている製剤を包含する。例えば、潰瘍性結腸炎を治療する製剤はその内容物を完全に結腸にデリバリーするように設計され得る。
【0082】
本願発明の製剤はマルチユニットまたはシングルユニット製剤として存在しうる。本願明細書にて用いる「マルチユニット」なる語は、例えば、その大きさ、形または形態に関係なく、複数の別個の、または集合した粒子、ビーズ、ペレット、顆粒、錠剤またはそれらの混合物を意味する。シングルユニット製剤は、例えば、錠剤、カプセルおよびピルを包含する。
【0083】
本願発明の方法および製剤は、調節放出性および持続放出性を示す成分の可能性のあるすべての組み合わせを包含するものである。例えば、本願発明の製剤および/または方法は持続放出性および調節放出性を、または遅延放出性および調節放出性の両方を、あるいは3つすべての特性を組み合わせて示す、成分を含有しうる。
【0084】
200−2400mgの5−アミノサリチル酸または医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物を含む、一日1回の調節放出性組成物は、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン、スルファサラジンからなる群より選択される。
【0085】
放出の遅延または持続をクリエートする放出速度の調節は種々の方法で達成され得る。作用機構は腸内の局所pHに依存または非依存させることができ、所望の効果を得るために局所酵素活性に依存させることもできる。
【0086】
本願発明は本願明細書に記載の特定のアゾ−ビス化合物(5−ASA)のいずれかに限定されるものではない。本願発明は4−ASAおよび/または5−ASAのいずれかを生成するいずれのアゾ−ビス化合物の使用および処方にも及ぶ。かかるアゾービス化合物の調節放出性製剤が具体的に考えられている。かくして、本願発明との関連で明細書中に使用されるように、「薬物」なる語は、限定されるものではないが、スルファサラジン、5−ASA、および/または4−ASAを含む、IBDまたは本願発明に係る他の疾患の治療に有用な化合物に言及する。「プロドラッグ」なる語は、限定されるものではないが、オルサラジン、バルサラジンを含む、かかる薬物を生成する化合物、および/またはかかる薬物を生成する他のアゾ含有化合物に言及する。
【0087】
これらのコーティング層は、コーティング剤、乳白剤、風味マスキング剤、フィラー、研磨剤、着色剤、アンチタッキング剤等からなる群より選択される1または複数の賦形剤を含む。
【0088】
本願発明の医薬剤形は多種の方法によりコーティングされ得る。適当な方法は圧縮コーティング、流動床またはパンでのコーティング、あるいは熱溶融(押出)コーティングを包含する。かかる方法は当該分野にて周知である。
【0089】
不溶性ポリマー、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロースの非浸透性コーティング剤は、コーティング剤中に可溶性のポア形成剤、例えば、PEG、PVA、ショ糖、塩、デタージェント、クエン酸トリエチル、トリアセチン等を含めることにより、遅延/調節放出(DR/MR)のための腸溶コーティング剤として使用され得る。
【0090】
また、結腸内細菌による酵素分解に対して感受的なポリマーのコーティングは、遠位回腸および上行結腸への放出を確実なものとするもう一つ別の手段である。カルシウムペクチナートなどの材料を、コーティング剤として、剤形およびマルチ粒子に塗布し、細菌の作用により下部胃腸管で崩壊させることができる。生体接着性マルチ粒子をカプセル化するためのカルシウムペクチナートカプセルも利用可能である。
【0091】
本願発明の医薬剤形は、所望により、フィルムコーティング剤、シュガーコーティング剤、腸溶コーティング剤、生体接着性コーティング剤および当該分野にて公知の他のコーティング剤などの1または複数の他のコーティング剤を有していてもよい。これらのコーティング剤は医薬製剤が必要とされる作用部位で薬物を放出する助成を行う。一例において、付加的なコーティング剤は剤形が胃の内容物と接触することを防止する。もう一つ別の例において、付加的なコーティング剤(例えば、腸溶コーティング剤)は小腸、特に特異的な結腸に達するまで無傷のままである。
【0092】
好ましい実施形態において、本願発明の医薬製剤の製造方法は以下の操作を含む:
−有効成分の造粒およびスラッギング;
−混合成分の添加、つづいて造粒、潤滑化および顆粒の圧縮に付し、錠剤コアの形成;
−シールコーティング、つづいて腸溶コーティング。
【0093】
ブレンドの圧縮はスラッギング技法またはローラー圧縮を用いて行うことができる。顆粒のミル化は通常のミル化法に従って実施され得る。
【0094】
本願発明は、一の実施形態において、調節放出性マトリックス製剤の調製物であって、治療上有効量のバルサラジド(Balsalazide)またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体を含み、所望により1または複数の親水性または疎水性放出制御剤および医薬上許容される賦形剤を含んでもよく、ここで該製剤は胃液および腸液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて最大量を放出し、薬物の最大量を結腸にある約10時間と約36時間の間に放出するように薬剤を処方して結腸にある滞留時間を増やし、溶解プロフィールが16時間後に90%より多くの薬物の放出を示すように製剤を処方して結腸にある滞留時間を増やすところの、調製物を包含する。
【0095】
一の実施形態において、本願発明は、調製放出性マトリックス製剤の調製物であって、治療上有効量のメサラミンまたはそのプロドラッグまたは医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体を含み、所望により1または複数の親水性または疎水性放出制御剤および医薬上許容される賦形剤を含んでもよく、ここで該製剤は胃液および腸液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて最大量を放出し、薬物の最大量を結腸にある約10時間と約36時間の間に放出するように薬剤を処方して結腸にある滞留時間を増やし、溶解プロフィールが16時間後に90%より多くの薬物の放出を示すように製剤を処方して結腸にある滞留時間を増やすところの、調製物を包含する。
【0096】
本願発明の処方は長期に及ぶインビトロ放出割合を有する。有効成分の本願発明の製剤からの放出割合を測定するのに使用されるインビトロ試験は以下のとおりであった。装置はパドルを備えており、50rpmの速度で回転した。錠剤製剤を装置に入れ、溶解を定期的に測定した。インビトロ溶解試験の結果を以下に示す:
【0097】
【表1】

【0098】
本願発明の好ましい実施形態において、患者のコンプライアンスを改善し、該製剤にて結腸を標的とさせるように、5−アミノサリチル酸またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物の生体接着性、一日1回の調節放出性(600mg)を検討する。
【0099】
次に実施例を用いて本願発明をさらに詳しく説明する。実施例は単なる例示に過ぎない。当業者であれば発明の精神および範囲を逸脱することなく、変更および修飾が可能である。かかる変更および修飾も本願発明の範囲内にあるものである。
【0100】
実施例
実施例1:
【表2】

【0101】
操作:
メサラミンの造粒
メサラミンをメッシュ#20を通して篩にかけ、別にして取っておく。ポビドンをイソプロイルアルコールに溶かした溶液で造粒する。乾燥顆粒を滑沢剤で処理する。
賦形剤ブレンドの調製
キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒプロメロース(CRプレミウム)および硫酸カルシウム二水和物を混合して、所望のシーブを介して篩にかけ、別にして取っておく。
造粒、潤滑化および圧縮
メサラミンの顆粒および賦形剤のブレンドを混合し、溶液を用いて造粒する。調製した顆粒を乾燥させ、錠剤に圧縮する。圧縮した錠剤コアをシールコーティング溶液で被覆し、最後に腸溶コーティング物質で被覆する。
【0102】
溶解データ(pH6.5,6.8、7.0および7.2のリン酸緩衝液)
【表3】

【0103】
実施例2
【表4】

【0104】
操作:
バルサラジドの造粒
バルサラジドをメッシュ#20を通して篩にかけ、別にして取っておく。ポビドンをイソプロイルアルコールに溶かした溶液で造粒する。乾燥顆粒を滑沢剤で処理する。
賦形剤ブレンドの調製
キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒプロメロースおよび硫酸カルシウム二水和物を混合して、所望のシーブを介して篩にかけ、別にして取っておく。
造粒、潤滑化および圧縮
バルサラジドの顆粒および賦形剤のブレンドを混合し、顆粒化溶液を用いて造粒する。調製した顆粒を乾燥させ、錠剤に圧縮する。圧縮した錠剤コアをシールコーティング溶液で被覆し、最後に腸溶コーティング物質で被覆する。
【0105】
実施例3
【表5】

【0106】
操作:
オルサラジンの造粒
オルサラジンをメッシュ#20を通して篩にかけ、別にして取っておく。ポビドンのイソプロイルアルコールに溶かした顆粒化溶液で造粒する。乾燥顆粒を滑沢剤で処理し、スラッギングおよび脱スラッギングに付し、有効成分の顆粒を得る。
賦形剤ブレンドの調製
キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ヒプロメロースおよび硫酸カルシウム二水和物を混合して、所望のシーブを介して篩にかけ、別にして取っておく。
造粒、潤滑化および圧縮
オルサラジンの顆粒および賦形剤のブレンドを混合し、顆粒化溶液を用いて造粒する。調製した顆粒を乾燥させ、錠剤に圧縮する。圧縮した錠剤コアをシールコーティング溶液で被覆し、最後に腸溶コーティング物質で被覆する。
【0107】
実施例4:
【表6】

【0108】
生体接着性の測定
生体接着性をテンジオメトリック法(tensiometric method)により測定した。測定には、最新の応力ゲージ装置(英国、West Sussex、Mecmesinより購入)を用いた、新たに切開したヒツジの腸組織を取り出し、実験に用いるまでTyrode溶液に4℃で貯蔵した。該組織を断片(3x4cm)に切断し、ガラススライドに置き、スレッドで固定した。該組織の上に0.5mlのリン酸緩衝セイライン(PBS)を置いた。実施例1の生体接着性錠剤を組織の上に置き、別の0.5mlPBSを錠剤の上に置いた。10gの重さのガラススライドを錠剤の上に置き、10分間、30分間、60分間および840分間水和させた。一定のインターバルの後に、スライドに沿って水和した錠剤を生体接着装置のステージに置いた。ついで、プローブを0.2mm/秒の固定速度で下げ、上方のスライドをスレッドによりプローブのフックに取り付けた。ピーク剥離力は生体接着力と考えられた。生体基質から錠剤を分離するのに必要な力をmNで記録した。
【0109】
観察結果:
【表7】

【0110】
該実験以外の他の記載においても、本願明細書および特許請求の範囲にて用いられる成分の量、反応条件等の数値はすべて「約」なる語で修飾されるものとして理解すべきである。したがって、そうでないと言わない限り、明細書および特許請求の範囲の記載の数値変数はおよその数であり、本願発明で求められる所望の特性に応じて変化するであろう。広い範囲で示される数値範囲およびパラメータがおおよそであるとしても、その数値はできる限り正確なものとして報告されている。
【0111】
本願発明をさらに以下の実施例を用いて説明する。当業者は、材料および方法の両方にて、発明の目的および範囲を逸脱することなく、多くの修飾を行い得ると考えられる。
【0112】
実施例5
軽度ないし中程度の潰瘍性結腸炎を患っている患者の治療において、一日1回の経口メサラミン製剤を評価するのに、インビボ試験を行った。
【0113】
方法
多角的な無作為の非盲検での比較並行実験にて、メサラミンの一日1回の経口製剤を、1200mgで2錠および400mgで6錠を8週間の期間、軽度ないし中程度の潰瘍性結腸炎の患者に投与した。効能をUC−ジシーズ・アクティビティ・インデックス(UC−DAI)を用いて評価した。使用したパラメータは以下のとおりである:
Physician global assessment, Stool frequency, Rectal bleedingおよびSigmoidoscopic findings。
【0114】
総合評点は要約すると
【表8】


である。
【0115】
メサラミン治療に応答する患者のパーセントは
【表9】


である。
【0116】
かくして、1200mgを2錠、および400mgを6錠の量で8週間、軽度ないし中程度の潰瘍性結腸炎の患者にメサラミンを経口投与した場合、最も多くの患者がメサラミン療法での疾患の活性化の観点から改善を報告した。ある患者は鎮静を経験し、残りは維持されたままであった。患者の誰も病状の悪化を報告しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸を標的とする生体接着性の調節放出性製剤であって、治療上有効な薬剤またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物と、速度調節放出剤/物質とを含み、胃液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて薬物を約10時間ないし約36時間の間にわたって放出する、調節放出性製剤。
【請求項2】
結腸を標的とする生体接着性の調節放出性製剤であって、治療上有効な量の5−アミノサリチル酸またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物と、速度調節放出剤/物質とを含み、さらに胃液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて薬物を約12時間ないし約36時間の間にわたって放出し、結腸での滞留時間が伸びるように処方されている、調節放出性製剤。
【請求項3】
速度調節放出剤が、親水性ポリマーおよび疎水性ポリマーおよびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
速度調節放出性剤が、セルロースおよびセルロース誘導体、ワックス、カルボマー、ポリアルキレンポリオール、ポリカルボフィル、メタクリル酸誘導体、ゼラチン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、アクリレート/メタクリレートコポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カラゲナン、アルギン酸およびその塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カラヤガム、アカシアガム、トラガカントガム、ローカストビーンガム、グアガム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、蜜ロウ、カルナバ蝋、セチルアルコール、硬化植物油、およびその混合物からなる群より選択される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項5】
親水性ポリマーが、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロースなどの炭水化物様セルロースまたはその誘導体;キサンタンガム、グアガム、ローカストビーンガムなどのガム;アルギナート;カルボマー;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポビドン/ポリエチレンオキシド、アクリル酸およびメタクリル酸コポリマーおよびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項6】
疎水性放出成分が、ビーズワックス;脂肪酸;長鎖脂肪アルコール、セチルアルコール、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール;グリセリド、グリセリルモノステアレート、グリセリルジステアレートのような脂肪酸のグリセリルエステル、硬化ヒマシ油、鉱油、硬化植物油のグリセリルエステル、アセチル化グリセリド;エチルセルロース、ステアリン酸、パラフィン、カルナバ蝋、タルク;カルシウム、マグネシウム、亜鉛およびその混合物などのステアリン酸塩からなる群より選択される、請求項3記載の医薬組成物。
【請求項7】
5−アミノサリチル酸またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物が、メサラミン、バルサラジド、オルサラジン、スルファサラジンからなる群より選択される、請求項1記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項8】
胃腸管におけるメサラミン製剤の滞留時間の増加が生体接着性により達成される、請求項1または2記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項9】
生体接着性により約0.5時間ないし約36時間の範囲の時間が提供される、請求項1または2記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項10】
200ないし2400mgのメサラミンまたはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物を含む、一日1回の剤形である、請求項1または2記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項11】
潰瘍性結腸炎、過敏性腸症候群、消化性潰瘍疾患および胃消化不良の治療患者のコンプライアンスを増加させるために投与される、請求項1または2記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項12】
胃腸管における滞留時間の増加が生体接着性および/または胃腸管からの排出を遅らせることにより達成される、請求項1または2記載の調節放出性医薬組成物。
【請求項13】
結腸を標的とする新規な調節放出性製剤であって、治療上有効なメサラミンまたはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体を含み、1または複数の親水性または疎水性放出調節剤およびその医薬上許容される賦形剤を含んでもよく、胃液および腸液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて最大量の薬物を約10時間ないし約36時間の間にわたって放出し、結腸における滞留時間が増加するように処方されている、調節放出性製剤。
【請求項14】
潰瘍性結腸炎または結腸のクローン病を治療する方法であって、請求項1に記載の組成物を経口投与し、約10時間以上の時間にわたってメサラミンが持続放出される、方法。
【請求項15】
5−アミノサリチル酸またはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体または代謝産物、ならびにその医薬上許容される賦形剤を含む、結腸を標的とする新規な調節放出性マトリックス製剤であって、試験にて以下の溶解特性:
4時間:約25%より多くの薬物が放出
8時間:約55%より多くの薬物が放出
12時間:約75%より多くの薬物が放出
16時間:約90%より多くの薬物が放出
を示す、調節放出性マトリックス製剤。
【請求項16】
結腸を標的とする新規な調節放出性マトリックス製剤であって、治療上有効なバルサラジドまたはプロドラッグあるいはその医薬上許容される塩またはエナンチオマーまたは多形体を含み、1または複数の親水性または疎水性放出調節剤およびその医薬上許容される賦形剤を含んでもよく、胃液および腸液に溶解するメタクリル酸およびメタクリル酸エステルのアニオン性コポリマーを含有するコーティング剤で被覆されており、結腸にて最大量の薬物を放出し、結腸における滞留時間が増加するように処方されている、調節放出性製剤。

【公表番号】特表2011−500553(P2011−500553A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528531(P2010−528531)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000654
【国際公開番号】WO2009/047802
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(502425916)ルピン・リミテッド (27)
【氏名又は名称原語表記】LUPIN LIMITED
【Fターム(参考)】