説明

9,10−ビス(4−アミノフェニルエチニル)アントラセンおよびその製造方法

【課題】
製造物に蛍光性を賦与することができる9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン構造をポリマー主鎖などに導入するより容易な手段を提供する。
【解決手段】
二つのアミノ基を有し、ポリマーなどに9,10−ビス(4−アミノフェノキシ)アントラセン構造を導入することができる新規化合物9,10−ビス(4−フェニルエチニル)アントラセンを提供し、9,10−ジハロゲン化アントラセンと4−アミノフェニルアセチレンとの反応による9,10−ビス(4−フェニルエチニル)アントラセンの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族系ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドなどを製造するためのモノマーまたはその他有機合成の原料として用いることができ、蛍光性を有するためそれを用いる製造物に蛍光性を賦与することができる新規な芳香族ジアミンおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセンは蛍光性を示すことが知られており、日本特許公開公報・特開2001−187883号にこれを組み込んだ化学発光装置が提案されている。一方、日本特許公開公報・特開2000−169840号にはこの構造を含む色素を利用した発光装置が提案されている。
【0003】
しかしながら、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン構造を含むジアミンを用いてポリマーの主鎖などに導入する方法は知られていない。
【特許文献1】特開2001−187883号公報
【特許文献2】特開2000−169840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン構造をポリマー主鎖などに導入するより容易な手段を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは9,10−ビス(フェニルエチニル)アントラセン構造をポリマー主鎖などに導入する一つの方法として、この化合物にアミノ基を導入した化学構造を有し、市販の原料から容易に製造できる9,10−ビス(4−アミノフェニルエチニル)アントラセンがポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドなどに容易に導入できることに着目して本発明に到達した。
【発明の効果】
【0006】
アミノ基を介してポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミドなどに蛍光性機能を付与することができるジアミンの提供が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の発明は、下記構造式

【化1】

で表される9,10−ビス(4−アミノフェニルエチニル)アントラセン(以下、本化合物)である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明である本化合物の製造方法について述べる。
【0009】
本化合物は9,10−ジハロゲノアントラセンと4−アミノフェニルアセチレンとを触媒の存在下に縮合させることによって得ることができる。
【0010】
本発明の方法に用いることができる9,10−ジハロゲノアントラセンには、9,10−ジクロロアントラセン、9,10−ジブロモアントラセンおよび9,10−ジヨードアントラセンがあるが、好ましくは9,10−ジブロモアントラセンまたは9,10−ジヨードアントラセンがよい。
【0011】
本発明の方法に用いることができる触媒としては、薗頭カプリングとして知られる反応やその改良法に一般に用いられる触媒系を用いることができ、一般に、パラジウム錯体などの主触媒と、ホスフィン化合物などからなるリガンドと、ハロゲン化銅などの助触媒とが適宜組み合わされて使用される。但し、本発明はそれらの組み合わせに限定されるものでない。
【0012】
前記のパラジウム錯体としては、例えばビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジブロミド、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムなどが挙げられる。前記のハロゲン化銅としては、例えば沃化銅、臭化銅が挙げられる。
【0013】
また、前記のリガンドであるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(3−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリターシャリーブチルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィンなどが挙げられる。
【0014】
前記した薗頭反応触媒の添加量は特に規定されないが、具体的に例えば、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドの添加量が4−アミノフェニルアセチレンに対し0.01〜0.5mol%である。トリフェニルホスフィンの添加量はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドに対し1〜20倍当量である。また、ハロゲン化銅の添加量はビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリドに対し0.2〜10倍当量である。
【0015】
尚、薗頭反応触媒としてはカーボンに担持されたパラジウムも使用できるが、その場合は反応系にマイクロ波を照射しながら反応させる。
【0016】
4−アミノフェニルアセチレンの使用量は、一般に、9,10−ジハロゲン化アントラセンに対し2〜10倍当量である。
【0017】
本発明の方法に使用される溶媒は、例えばジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン等のアミン系溶媒である。これらのアミン系溶媒に原料が溶解し難い場合は、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒を加えるとよい。薗頭反応におけるアミン系溶媒の使用量は特に規定されないが、常識的には原料全量に対し2〜20倍重量部である。
【0018】
本発明の方法における反応温度は使用する溶媒の種類によるが、50℃〜90℃である。反応圧力は常圧でよく、反応時間は特に制限されない。
【0019】
[実施例]
次に、実施例により本発明の9,10−ビス(4−フェニルエチニル)アントラセンの製造方法をさらに具体的に説明するが、この実施例も本発明の具体例に過ぎず、これにより本発明が限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
300mL四つ口フラスコに9,10−ジブロモアントラセン7g(21mmol)、4−アミノフェニルアセチレン7.08g(60mmol)、トリエチルアミン193gを仕込み、窒素気流下で30分攪拌した。その後、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムジクロリド1.1g(1.56mmol)、沃化銅0.15g(0.78mmol)、トリフェニルホスフィン0.82g(3.12mmol)を添加し、75℃まで加熱し同温度に15時間保った。トリエチルアミンを蒸去した後25%メタノール水135gで洗浄し濾過した。得られた赤褐色の固体をDMF250gに溶解し、活性炭(日本エンバイロケミカル製「カルボラフィン」)8.5gを加え、30分攪拌し濾過した。活性炭処理をさらに二回繰り返した後、濾液をイオン交換水310gに注加し10℃に冷却した後、濾過して粗生成物6.2gを回収した。この粗EADAを酢酸エチル100gより再結晶し、濾過・乾燥してLC純度98.7%の濃赤色柱状晶1.2gを得た。融点224〜227℃(分解)。
【0021】
上記で得られた結晶については核磁気共鳴スペクトル分析、および質量分析で化学構造を同定した。核磁気共鳴スペクトル分析(1H-NMR)は日本電子製JNM-AL300型を用い共鳴周波数300MHzで測定した。測定溶媒は重水素化ジメチルスルホキシドDMSO-d6である。核磁気共鳴スペクトル分析の結果、δ5.7にアミノ基のプロトンのシングレット(4H)、δ6.7および7.5にフェニレン基のプロトンのダブレット(各4H)、δ7.7および8.6にアントラセンのプロトンのマルチプレット(各4H)が示された。質量分析(MS)は日本電子製JMS−600型を用いて測定した結果、実測値408で計算値と一致した。以上の結果および用いた出発原料から上記結晶が目的物である9,10−ビス(4−フェニルエチニル)アントラセンであることが同定できた。
【実施例2】
【0022】
9,10−ジブロモアントラセン7g(21mmol)の代わりに9,10−ジヨードアントラセン9g(21mmol)を用いた以外は実施例1に準じ、反応温度を55℃までとして反応を行った。トリエチルアミンを蒸去した後25%メタノール水135gで洗浄し濾過した。得られた赤褐色の固体をDMF250gに溶解し、活性炭(日本エンバイロケミカル製「カルボラフィン」)8.5gを加え、30分攪拌し濾過した。活性炭処理をさらに一回繰り返した後、濾液をイオン交換水310gに注加し10℃に冷却した後、濾過して粗生成物8.1gを回収した。この粗EADAを酢酸エチル400gより再結晶し、濾過・乾燥してLC純度98.9%の濃赤色柱状晶5.3gを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式

【化1】

で表される9,10−ビス(4−アミノフェニルエチニル)アントラセン
【請求項2】
9,10−ジハロゲノアントラセンと4−アミノフェニルアセチレンとを反応させることを特徴とする9,10−ビス(4−アミノフェニルエチニル)アントラセンの製造方法。
【請求項3】
9,10−ジハロゲノアントラセンが9,10−ジブロモアントラセンであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
9,10−ジハロゲノアントラセンが9,10−ジヨードアントラセンであることを特徴とする、請求項2に記載の方法。

【公開番号】特開2009−209074(P2009−209074A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52810(P2008−52810)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(391029462)和歌山精化工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】