説明

ADコンバータ

【課題】電力消費量の少ないサンプル・ホールド回路を提供する。
【解決手段】アナログ信号をサンプル・ホールドするサンプル・ホールド回路21の増幅器24に、電流制御回路26(27)を接続し、アナログ信号をAD変換したディジタル信号の値に応じて可変定電流回路25を制御し、増幅器24に流れる動作電流を変化させる。ディジタル信号の値が大きいときには動作電流を増加させ、ディジタル信号の値が小さいときには動作電流を減少させると、ディジタル信号が小さいときに流れる無駄な動作電流を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ADコンバータに係り、特に、ADコンバータ内部のサンプル・ホールド回路に関する。
【背景技術】
【0002】
動画や静止画を撮影する撮影装置では、イメージセンサが検出した画像データをディジタルデータに変換し、画像処理装置や不揮発性の記憶装置等に供給するADコンバータが用いられている。
【0003】
イメージセンサが出力するアナログ信号は微弱であるため、サンプル・ホールドした信号を一旦増幅器によって増幅した後、後段の変換器に出力してディジタル変換している。増幅器は、通常、最大振幅のアナログ信号が入力された場合でも歪みのない波形を出力できるように、大きな動作電流が設定されている。しかしながら、小振幅のアナログ信号が連続して入力される場合、小振幅のアナログ信号用の小さな動作電流でよいのにも拘わらず、大振幅のアナログ信号用に設定された大きな動作電流が増幅器に流れてしまい、バッテリ等で動作する撮影装置の動作時間を長くするための障害になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来技術の課題を解決するために創作されたものであり、その目的は、省電力なADコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
イメージセンサは、撮影した画像のデータをアナログ信号としてシリアルに出力しており、撮影対象物の連続した位置の画像データが連続して出力されている間は、撮影対象物のごく近い部分の画像データが連続するため、アナログ信号の大きさ(画像データの振幅)は急変しない。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、上記画像データの特性に基づいて創作されたものであり、入力アナログ信号をサンプル・ホールドして出力するサンプル・ホールド回路と、前記サンプル・ホールド回路から供給される信号をディジタル変換して出力する変換器とを有するADコンバータであって、前記サンプル・ホールド回路が、前記入力アナログ信号をサンプリングするコンデンサ回路と、前記コンデンサ回路に保持された電圧を増幅し、前記変換器に出力する増幅器と、前記増幅器に動作電流を供給する可変定電流回路と、前記変換器から出力されるディジタル信号の値に応じて前記可変定電流回路を制御し、前記増幅器の動作電流を制御する制御回路とを有するADコンバータに係わる。
また、本発明は、前記ディジタル信号の値に応じて前記入力アナログ信号の振幅を減衰させて前記コンデンサ回路に供給する減衰回路を更に有するADコンバータに係わる。
また、本発明は、前記入力アナログ信号が、イメージセンサから出力される連続する画像データであるADコンバータに係わる。
また、本発明は、複数の画素を有し、前記画素によって撮影された画像がアナログ信号として画素毎にシリアルに出力されるイメージセンサと、ADコンバータとを含む撮影装置であって、前記ADコンバータが請求項1又は2に記載のADコンバータであり、前記イメージセンサから出力された前記アナログ信号が前記入力アナログ信号として前記ADコンバータに入力されるように構成された撮影装置に係わる。
【発明の効果】
【0007】
入力アナログ信号の電圧が小さいときには増幅器の動作電流を小さくし、入力アナログ信号の電圧が大きいときには増幅器の動作電流を大きくできるから、結果として、増幅器の消費電流を削減できる。
【0008】
また、入力アナログ信号が大きいときは、減衰器が入力アナログ信号の振幅を減衰させて増幅器に入力するので、入力アナログ信号の電圧が大きくても、増幅器の動作電流を増加させる必要がない。
【0009】
入力アナログ信号の電圧をディジタル信号の値に基づいて判定しているので、入力アナログ信号の電圧を測定する回路をADコンバータの変換器と別に設ける必要がない。
【0010】
また、入力アナログ信号の値に応じて増幅器の動作電流を制御しているから、増幅器の増幅動作を最適に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1、2の符号10a、10bは、撮影装置の内部回路であり、不図示の光学系と、イメージセンサ20と、本発明のADコンバータ3a、3bとを有している。
【0012】
イメージセンサ20は複数の画素を有しており、光学系からイメージセンサ20に投影された像が微小部分毎に各画素で検出され、各画素の画像データが一時記憶される。各画素の記憶内容は、アナログ信号として、クロック信号と同期してADコンバータ3a、3bにシリアルに出力される。
【0013】
ADコンバータ3aはサンプル・ホールド回路21と変換器22を有している。
サンプル・ホールド回路21は、コンデンサ回路23と、増幅器24とを有しており、イメージセンサ20から出力されたアナログ信号は、コンデンサ回路23によって、クロック信号と同期してサンプル及びホールドされ、増幅器24に出力される。
【0014】
増幅器24は、例えば、電源線31と接地線32との間に接続されており、接地線32と増幅器24の間(図1)、又は、電源線31と増幅器24の間(図2)には、可変定電流回路25が挿入され、増幅器24には、可変定電流回路25に設定された一定電流値の動作電流が供給され、増幅器24はその動作電流によって動作するように構成されている。
【0015】
コンデンサ回路23の出力端子は増幅器24の入力端子に接続されており、増幅器24の出力端子は変換器22の入力端子に接続されている。
コンデンサ回路23の出力信号は増幅器24によって増幅され、変換器22に入力され、変換器22によってディジタル値に変換され、後段の処理回路にディジタル信号として出力される。
【0016】
変換器22の入力端子に流入する電流は、増幅器24の内部を流れる動作電流から供給され、変換器22の入力端子から流出する電流は、増幅器24の内部に流入して動作電流となって接地線32に流出する。従って、増幅器24の増幅動作によって、コンデンサ回路23内のホールドコンデンサが放電しないように構成されている。
【0017】
この場合、増幅器24から大信号を出力するときは、増幅器24から流出又は増幅器24に流入する電流が大きくなるため、大きな動作電流を必要とし、動作電流が不足すると、増幅器24の出力が飽和し、正確なAD変換出力を得ることができなくなる。
【0018】
逆に、動作電流を大きく設定しておくと、小信号を出力するときに、増幅器24の内部で無駄に電力が消費されてしまうことになる。
【0019】
本発明のADコンバータ3a、3bには、可変定電流回路25に流れる定電流値を変更する電流制御回路26が設けられており、変換器22からのディジタル信号は後段の処理回路に出力されると共に、電流制御回路26にも出力される。
【0020】
電流制御回路26には、ディジタル信号の値に対応する複数の基準電流値が設定されており、入力されたディジタル信号を、ディジタル信号が示す電圧の大きさに応じて段階的に基準電流値と対応させ、入力されたディジタル信号に対応する基準電流値を可変定電流回路25に出力する。
【0021】
可変定電流回路25は、電流制御回路26から入力された基準電流値に応じて出力する定電流値を設定し、その定電流値の大きさの動作電流を増幅器24に供給する。従って、ディジタル信号が小さい電圧を示しているときは、増幅器24の動作電流は小さくなり、ディジタル信号が大きい電圧を示しているときは、増幅器24の動作電流は大きくなる。
【0022】
図4のグラフは、アナログ信号の変化と可変定電流回路25の出力との関係を説明するためのタイミングチャートである。コンデンサ回路23には、クロック信号S1と同期してアナログ信号S2が入力されており、サンプリング信号S3に応答して、コンデンサ回路23はアナログ信号S2をサンプリングしてホールドする。
【0023】
ホールドされた信号は増幅器24に入力され、増幅された出力信号S4が変換器22に出力され、変換器22からクロック信号と同期してディジタル信号が出力される。
【0024】
電流制御回路26には、複数の電圧値の範囲V1〜V5が設定されており、電流制御回路26に入力されたディジタル信号が、その値に対応する範囲V1〜V5に分類される。
【0025】
電流制御回路26には、各範囲V1〜V5毎に、各範囲V1〜V5に応じた定電流値がそれぞれ設定されており、電流制御回路26は、入力したディジタル信号の値に対応する定電流値を可変定電流回路25に出力し、可変定電流回路25は当該定電流値に応じた電流S5を増幅器24に供給する。
【0026】
本発明の他の実施形態である図3に示すADコンバータ3cにおいては、増幅器24の動作電流を変更する電流制御回路27に加え、イメージセンサ20とサンプル・ホールド回路21との間に減衰器28が設けられている。電流制御回路27は、入力されたディジタル信号の値に応じて、可変定電流回路25の電流値と減衰器28の減衰率を設定するように構成されている。
【0027】
減衰器28は、設定される減衰率によってイメージセンサ20が出力するアナログ信号を減衰させ、減衰させたアナログ信号をサンプル・ホールド回路21に出力する。減衰器28の減衰率は、電流制御回路27に入力するディジタル信号の電圧値が大きいときには大きく設定され、ディジタル信号の電圧値が小さいときには小さく設定されるから、広い電圧範囲のアナログ信号に対して増幅器24の出力が飽和しない。
【0028】
図3に示すADコンバータ3cにおいては、電流制御回路27が変換器22から供給されるディジタル値に基づいて減衰器28と可変定電流回路25の双方を制御する形態となっているが、減衰器28にも変換器22からのディジタル値が供給され、減衰器28が当該ディジタル値に基づいて独自に減衰率を制御する構成としてもよい。
【0029】
なお、図3のADコンバータ3cは、所謂、パイプライン型のADコンバータであって、増幅器24の出力信号を、例えば、二段階でディジタル信号に変換する。先ず、変換器22内の初段の回路ブロック35で低分解能の中間値(ディジタル値)を求めた後、後段の回路ブロック36で、中間値の精度を向上させて最終的なディジタル信号を出力する。電流制御回路27や減衰器28には初段の回路ブロック35が出力したディジタル値が供給され、そのディジタル値に従って動作する。この場合は、入力されるディジタル値の分解能が粗いので、可変定電流回路25に設定できる定電流値の個数が少ないが、入力されるディジタル信号の値の分解能を細かくすることで、可変定電流回路25に設定される定電流値を細かく制御することができる。
【0030】
また、減衰器28に設定される減衰率、増幅器24の増幅率は、1や1未満、1以上と任意に設定できる。
【0031】
上述した実施形態においては、変換器22から供給されるディジタル値に基づいて増幅器24の動作電流を制御しているが、ディジタル値の代わりに、増幅器24の出力信号など、アナログ信号の電圧値を基に増幅器24の動作電流を制御する構成とすることもできる。
【0032】
本発明では、前の画素の画像データの振幅に基づいて増幅器の動作電流を制御しているが、一般的な画像信号においては、近接する画素の画像データの振幅が大きく変化することは少ないから、本発明による増幅器の動作電流の制御に起因する増幅器から出力される画像データの歪みといった問題が発生することは非常に少ない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のADコンバータを説明するためのブロック図(1)
【図2】本発明のADコンバータを説明するためのブロック図(2)
【図3】本発明のADコンバータを説明するためのブロック図(3)
【図4】アナログ信号の変化と可変定電流回路の出力との関係を説明するためのタイミングチャート図
【符号の説明】
【0034】
21……サンプル・ホールド回路
22……変換器
23……コンデンサ回路
25……可変定電流回路
3a、3b、3c……ADコンバータ
10a、10b、11……撮影装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力アナログ信号をサンプル・ホールドして出力するサンプル・ホールド回路と、
前記サンプル・ホールド回路から供給される信号をディジタル変換して出力する変換器と、を有するADコンバータであって、
前記サンプル・ホールド回路が、
前記入力アナログ信号をサンプリングするコンデンサ回路と、
前記コンデンサ回路に保持された電圧を増幅し、前記変換器に出力する増幅器と、
前記増幅器に動作電流を供給する可変定電流回路と、
前記変換器から出力されるディジタル信号の値に応じて前記可変定電流回路を制御し、前記増幅器の動作電流を制御する制御回路と、
を有する、
ADコンバータ。
【請求項2】
前記ディジタル信号の値に応じて前記入力アナログ信号の振幅を減衰させて前記コンデンサ回路に供給する減衰回路を更に有する請求項1記載のADコンバータ。
【請求項3】
前記入力アナログ信号が、イメージセンサから出力される連続する画像データである請求項1又は2に記載のADコンバータ。
【請求項4】
複数の画素を有し、前記画素によって撮影された画像がアナログ信号として画素毎にシリアルに出力されるイメージセンサと、ADコンバータとを含む撮影装置であって、
前記ADコンバータが請求項1又は2に記載のADコンバータであり、
前記イメージセンサから出力された前記アナログ信号が前記入力アナログ信号として前記ADコンバータに入力されるように構成された撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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