説明

AIDS処置用のポリアニオンとカップリングされたCD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子

本発明は、リンカーにより有機分子にカップリングされたCD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子およびその製造方法に関する。このような複合分子は抗ウイルス処置、特にAIDSの処置に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、CD4受容体由来ペプチドとポリアニオン性多糖などの有機分子とを含んでなる複合分子(conjugated molecule)に関する。このような複合分子は抗ウイルス処置、特にAIDSの処置に使用することができる。本発明はさらに、その複合分子の製造方法に関する。
【0002】
ヌクレオシド(NRTI)、非ヌクレオシド(NNRTI)および/またはプロテアーゼ阻害剤(PI)を組み合わせた三剤併用療法は、血清陽性HIV患者の多くにおいて、ウイルス量を検出レベル以下に減少させる。この効果が、HIV感染に起因する死亡数の実質的減少をもたらした。残念ながら、患者の80%に抗ウイルス剤耐性を有する遺伝子型が認められ、さらに憂慮すべきことに、ウイルス集団の45.5%がNRTI/PI併用療法に耐性を示し、26%が抗HIV剤三剤併用療法に対して耐性を示している(Tamalet et al., AIDS. 2003 Nov 7;17(16):2383-8)。この知見は特に憂慮すべきものである。というのも、長期三剤併用処置を受けている患者の70%に見られるこの処置の副作用(脂肪萎縮症、脂肪異栄養症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、神経障害など)がコンプライアンスの低下と、しばしば耐性につながる「突然の」処置中止という結果となるからである。従って、現在利用可能な薬剤が多く市販されているにもかかわらず、より副作用が少なく、かつ、交差耐性を伴わない、より穏やかな処置形態の開発が優先事項である。このことを考慮に入れると、逆転写やタンパク質分解以外のHIVの複製過程を標的とすることが不可欠である。
【0003】
ウイルスの細胞への侵入はウイルス感染サイクルの重要な段階である。このプロセスは二段階に分けられ、第一段階はウイルスと細胞表面との特定の宿主受容体のレベルでの相互作用であり、第二段階はウイルスの遺伝物質の標的細胞への浸透である。HIVでは、接着と侵入のメカニズムに関与する分子相手がよく確立されている。ウイルス側からは、ウイルス/細胞相互作用複合体を本質的に決定するのはgp120エンベロープ糖タンパク質である。このタンパク質はまず宿主細胞のトランスメンブラン糖タンパク質CD4と結合する。この相互作用は、CD4誘導型(CD4i)と呼ばれる特定のエピトープを露出し、従って、ケモカイン受容体(本質的にCCR5およびCXCR4)の結合部位を作出するgp120におけるコンフォメーション変化をもたらす。従って、CCR5およびCXCR4は、細胞表面においてgp120共受容体として働く。この第二の相互作用はgp120/gp41タンパク質複合体の再構成と細胞/ウイルスの膜融合の誘発をもたらす。
【0004】
HIVウイルスの細胞向性は、使用する共受容体のタイプによって定義される。いわゆるX4または「T向性」ウイルスは、より詳しくは、Tリンパ球など、それらの表面でCXCR4を発現する細胞系統に感染する傾向がある。いわゆるR5または「M向性」ウイルスは共受容体CCR5を用い、主にマクロファージおよび単球に感染する。タイプR5またはX4ウイルスの存在は一般にAIDS発症の全く異なる段階に関与する(R5は無症候性段階、X4ウイルスの出現はしばしばこの疾病の好ましくない発達転帰に関連し、共受容体CXCR4の使用はAIDS病理の重要な因子であることが示唆される)。gp120にはCCR5とCXCR4の認識のための構造的決定基があることから、R5ウイルスとX4ウイルスは2つの別個の標的に相当する。
【0005】
上記の受容体の他、HIVは細胞表面に見られる他の分子、特にヘパラン硫酸(HS)と結合し得る。HSはグリコサミノグリカンファミリー(GAG)に属す多糖である。それらは細胞表面および間質マトリックスに多量に見られ、特定の糖タンパク質の細胞外領域に固定されている。ヘパリン(その抗凝固特性に用いられる)と化学的に関連し、HSは、他の生体高分子とは、それらの構造および機能の多様性によって異なる。それらの多くの異なるタンパク質と結合する能力の結果として、その構造、安定性および/または反応性はその相互作用により媒介され、極めて多くの現象に関与している。特に、それらは多くの病原体を認識し、その1つがHIVであり、従って、結合受容体として働く。HIVでは、それはまたHS認識部位を有するgp120でもある。
【0006】
本発明者らのこれまでの研究で、ヘパリン(またはHS)に結合するHIVの能力はX4型株に特異的であり、R5型ウイルスはこの多糖と極めてわずかに相互作用するに過ぎないことが見出されている(Moulard et al., J. Virol. 74, 1948-1960, 2000)。これらの結果は、HSが、標的細胞の性質、X4株のより大きな病原性および感染の無症候性段階での潜伏X4ウイルスのリザーバーの構築など、細胞向性に関連する特定の特性のいくつかに関与している可能性があることを示唆する。
【0007】
HIV−HS相互作用は、本発明者らが見出したように、ウイルスの接着と侵入の全ての初期段階に関与するgp120のレベルで起こる。この相互作用部位は、可変ループ3(V3)と呼ばれるgp120の領域に存在する。X4のV3ループはR5単離物のV3ループに比べて塩基性アミノ酸が豊富であり、その結果、ヘパリン様オリゴ糖とより良い相互作用が生じる。
【0008】
本明細書に記載されている本発明はgp120−ヘパリンの相互作用がCD4の存在下で極めて増強されるという知見に基づく。しかしながら、この効果は使用するウイルス単離物に依存し、gp120単独でHSと弱い相互作用しか示さない濃度で本質的に生じる。
【0009】
本発明者らのこれまでの研究では、CD4により誘導される部位がヘパリンまたはHSとの補助的相互作用部位を構成することが示されている(Vives et al. J. Biol. Chem. 279, 54327-54333, 2005)。従って、阻害剤(mCD4−HS)(その生体作用は後述する)は、gp120とCD4認識部位で結合するペプチド(mCD4)を含む。それは、CD4iエピトープの露出をもたらすgp120のコンフォメーション変化を誘発することができる。次に、この共有結合したオリゴ糖(HS)が、図1に従い、CD4i部位を認識することができる。
【0010】
ヘパリン(HP)およびデキストラン硫酸(DS)などのある種のポリアニオンはHIVによる細胞の感染を阻害することができるが、コンドロイチン硫酸(CS)はそうではないことが長年知られていた。にもかかわらず、これらは、特にその抗凝固作用のため臨床的に使用されていない(Flexner C et al., Antimicrobial Agents Chemother. 1991 Dec; 35 (12): 2544-50)。近年、この阻害の分子機構がポリアニオンのV3ループとの相互作用と関連があることが示されている(Moulard M et al., J Virol. 2000 Feb; 74(4):1948-60)。
【0011】
さらに、種々の研究が、ウイルスとHIV標的細胞の表面で発現されるCD4との相互作用を阻害するための可溶性CD4の使用を検討してきた。この解決策は、可溶性CD4が、ウイルへの結合によりエピトープCD4iを露出し、従って、場合により感染を増大させるウイルスとCCR5またはCXCR4共受容体との相互作用を助長することから、効果的でないことが判明した(Schenten D. et al., 1999. J Virol. 73:5373-80)。
【0012】
国際特許WO03/089000から、CD4受容体由来ペプチドは、ポリアニオンと接触した場合に抗HIV活性を有するが知られている。特に、該ペプチドとポリアニオンが結合される化合物、Najjam S. et al. (Cytokine 1997, 9(12):1013-1022)(実施例の節のポイントI.1を参照)による文献に示されている説明に従って製造することができるということが推奨される。
【0013】
本発明において、本発明者らは、ポリアニオン性多糖などの有機分子と直接かつ共有結合的に結合する可能性のある活性化されたCD4受容体由来ペプチドを得た。この活性化は、天然ペプチドへの特定のアミノ酸残基の挿入を必要とする。特に、本発明者らは、CD4受容体由来ペプチドの配列中のアミノ酸リシンの1つの残基、および1つだけの残基の存在が、本発明による活性化されたペプチドを得るために極めて重要であることを発見した。さらに、この単一のアミノ酸リシン残基は、CD4受容体由来ペプチドの配列の明確な位置になければならない。確定した位置に単一のアミノ酸リシン残基を含むミニCD4ペプチドを考案すれば、所望の機能を選択的かつ直接的にミニCD4に導入することができる。
【0014】
mCD4に基づく複合体の合成を簡略にするために、単一の誘導体化/カップリング部位を有するミニCD4をデザインするアイデアが出された。本発明者らの戦略は、大パネルのリンカーと、ミニCD4が適宜合成され、折りたたまれ、精製され、特性決定された後の化学を介して、多数の有機化合物のカップリングを可能とする。この戦略により我々は完全に確定された複合体を生成することができる。
【0015】
当業者ならば、ペプチド配列内の選択されたアミノ酸を特異的に標識/誘導体化するための方法が存在することを論じることができよう。しかしながら、ミニCD4配列内の複数のシステイン残基の存在は、選択されたアミノ酸を選択的に修飾/誘導体化するために固相ペプチド合成において一般に用いられる従来法のいくつかの使用を制限する(図10参照)。
【0016】
この線において、選択された側鎖へのマレイミド基の導入が可能でない。
【0017】
実際、最終のTFA切断の際のチオール化されたスカベンジャーの使用ならびにミニCD4ペプチドの適切な合成および折りたたみに必要とされるグルタチオンに基づく条件は、ペプチドを支持体に接着させたまま、選択されたリシンにマレイミド官能基(またはその他のチオール化された感受性誘導分子)を導入する機会を排除する。もっとはっきり言えば、これは例えば、mCD4−ポリアニオン複合体化工程のロバストなマレイミド/SH戦略の使用を排除する。
【0018】
さらに、本発明者らのmCD4合成後誘導体化戦略は、ペプチド樹脂上で何回もmCD4ペプチドの誘導体化、切断および折りたたみを行う必要なく、種々のリンカーの迅速なスクリーニングを可能にする。
【0019】
より重要なことに、ミニCD4配列内の誘導体化部位(リシン)の賢明な位置(例えば、5位)は、CD4iのHSBSおよび共受容体結合部位を標的とするポリアニオン性化合物の最適な配向を与える(図11参照)。
【0020】
よって、本発明は、多くの有効な抗ウイルス誘導体の作製を可能とする活性化されたペプチドを与える。これらの誘導体は、リンカーによる、ポリアニオン性多糖などの有機分子と特異的にカップリングされた(coupled to)CD4ペプチドを含んでなる複合分子からなる。
【0021】
このアプローチは直接ウイルスを標的とし、細胞自体を標的としないので、ウイルスの細胞への接着を阻害するのに治療上有利である。よって、それは、一見して、共受容体と結合する薬剤を用いた場合に見られる細胞作用が全くない。加えて、様々なウイルス向性の機能として含まれる部位の保存という点で、本発明による化合物は種々のウイルス単離物のgp120と相互作用する。また、耐性が生じないと思われると誤解される場合があるが、この新型の化合物は容易に耐性を出現させるべきではない。実際、gp120のCD4部位は、共受容体との相互作用のためにポリアニオン性多糖との結合に関与する塩基性残基がそうであるように、CD4との結合を維持するために完全な状態を保たなければならない。これらの2つの部位の1つにおける突然変異の結果、感染性の低いウイルスが生じるはずである。最後に、本発明では、これらの化合物の完全合成型が開発可能であり、従って、多量に利用可能な調製物および均質で完全に定義されたものを保証する。このカップリング法は簡便、迅速かつ定量的である。
【0022】
よって、第一の態様によれば、本発明は、CD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子を包含し、該ペプチドはリンカーにより有機分子とカップリングされており、
該CD4受容体由来ペプチドは以下の一般配列(I):
Xaa−P1−Lys−Cys−P2−Cys−P3−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaa−Xaa(I)
を含んでなり、ここで、
P1は3〜6個のアミノ酸残基を表し、
P2は2〜4個のアミノ酸残基を表し、
P3は6〜10個のアミノ酸残基を表し、
XaaはN−アセチルシステイン(Ac−Cys)またはチオプロピオン酸(TPA)を表し、
XaaはAlaまたはGlnを表し、
XaaはGlyまたは(D)AspまたはSerを表し、
XaaはSerまたはHisまたはAsnを表し、
Xaaはビフェニルアラニン(Bip)、フェニルアラニンまたは[β]−ナフチルアラニンを表し、
XaaはThrまたはAlaを表し、
XaaはGly、ValまたはLeuを表し、かつ、
Xaaは−NHまたは−OHを表し、
P1、P2およびP3のアミノ酸残基は天然または非天然型であり、同一または異なっており、P1、P2およびP3の該残基は総てLys残基とは異なり、P1、P2およびP3は共通のまたは共通でない配列であり、
有機分子は以下の構造(II):
【化1】

を有し、ここで、
nは0〜10の間の整数を表し、特に、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、有利には、nは0、1、2、3、4または5であり、
XはNa、K、LiもしくはMg2+などの無機対イオン、またはRNH、R(ここで、Rは互いに独立にアルキル基を表す)などの有機対イオンを表し、有利にはNaであり、
mは分子の負電荷の数を表し、
は同一または異なる基であり、水素原子またはO−保護基GPを表し、
は水素原子またはO−保護基GP’を表し、ここで、GPおよびGP’は同一または異なり、
は同一または異なる基であり、水素原子、硫酸基、リン酸基または任意のアニオン基を表し、
は同一または異なる基であり、水素原子、硫酸基、アルキル基またはアシル基を表し、
は同一または異なる基であり、水素原子、アルキル基またはアシル基を表し、
Aは式:−(CH−NH−CO−(CH−、−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−、−(CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−または−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−の中から選択される基を表し、ここで、pは1〜10の間の整数を表し、qは1〜10の間の整数を表し、有利には、Aは式−(CH−NH−CO−(CH−の基を表し、
Zはハロゲン原子、チオール基またはマレイミド基を表し、
リンカーはCD4受容体由来ペプチドの一般配列(I)中に存在するアミノ酸残基Lysの遊離アミノ基(−NH)とその末端の一方で共有結合され、有機分子のZ基とその他方の末端で共有結合されている。
【0023】
好ましくは、P3は少なくとも1つの塩基性アミノ酸を含んでなり、該塩基性アミノ酸はいっそうより好ましくはアルギニンである。CD4受容体フラグメントのこの部分における塩基性残基の存在は、そのgp120タンパク質との結合に寄与する。よって、本発明者らは、少なくとも1つの塩基性アミノ酸、好ましくはアルギニンをP3に導入する方を選ぶ。よって、これは、pH7〜8における誘導では反応性がないが、ミニCD4ペプチドとgp120タンパク質の結合に有用であることが分かっている塩基性部分を維持する。
【0024】
本願において「ミニ(mini)CD4ペプチド」、「CD4ペプチド」および「ミニCD4」とは、上記で定義された一般配列(I)を含んでなるか、またはからなるCD4受容体由来ペプチドを表すために互換的に用いられる。
【0025】
本発明は、CD4受容体由来ペプチドが、その一般配列(I)中に、一般配列(I)の定義された位置にアミノ酸リシン(Lys)の残基を1つまたは1つだけ含むことを必要とする。
一般配列(I)中のCys残基は、ミニCD4の折りたたみ直しに必要とされる3つのジスルフィド橋の形成を可能とする。
チオプロピオン酸(TPA)は、一般配列(I)のペプチドのN末端位にある場合、N末端における障害の軽減およびアミン基の存在の克服を可能とする。
【0026】
よって、好ましい実施形態によれば、一般配列(I)中のXaaはTPAを表す。
一般配列(I)において、XaaはBip、Pheまたは[β]−ナフチルアラニンを表す。ビフェニルアラニンは、CD4受容体のPhe 43が収容されている空洞において糖タンパク質gp120との接触を増強する。しかしながらやはり、Pheを有する、本発明によるミニCD4ペプチドは、ミニCD4/gp120複合体の構造が分析される場合、CD4をより良く模倣することができる(Huang CC et al., Structure. 2005 May;13 (5):755-68)。
【0027】
よって、別の好ましい実施形態によれば、XaaはPheを表す。
【0028】
CD4受容体に由来する一般配列(I)のペプチドは、αヘリックス構造とそれに続くβシートを有する。gp120との結合には主としてアミノ酸Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaaが関与する。これらのペプチドはsCD4(可溶性CD4)と同等のIC50(gp120に対する親和性)を有する。
【0029】
CD4受容体に由来する一般配列(I)のペプチドは、例えばFmoc固相ペプチド合成法("Fmoc solid phase peptide synthesis, a practical approach", W. C. Chan and P. D. White編, Oxford University Press, 2000)に従う慣例の固相化学合成技術および/または遺伝子組換えによって作製することができる。
【0030】
好ましくは、一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドの配列は配列番号1および配列番号2の配列からなる群から選択され、有利には配列番号1である。
【0031】
本発明において「リンカー」とは、下記に定義される二官能性化合物とCD4受容体由来ペプチドおよび有機分子とのカップリングにより得られるリンカーを表す。
【0032】
よって、リンカーの長さは、用いる二官能性化合物の関数として変動する。
【0033】
特に、リンカーは、有利には
【化2】

(ここで、kは2〜24の間の整数を表し、有利には2、4、8または12である)、
【化3】

(ここで、k1は1〜10の間の整数を表し、従って、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に相当し、有利には1、2、3、5または10に相当する)、
Zがチオール基を表す場合には、
【化4】

Zがマレイミド基またはハロゲン基を表す場合には、
【化5】

から選択される。
【0034】
好ましい実施形態では、リンカーは、
【化6】

(ここで、kは2〜24の間の整数を表し、有利には2、4、8または12である)
Zがチオール基を表す場合には、
【化7】

Zがマレイミド基またはハロゲン基を表す場合には、
【化8】

から選択される。
【0035】
従って、このようなリンカーは、二官能性化合物としてのスクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート(SMPH)、NHS−PEO−マレイミド(ここで、nは2〜24の間の整数を表し、有利には2、4、8または12である)、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)およびSATP(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート)の使用に相当する。
【0036】
別の好ましい実施形態では、リンカーは、二官能性化合物NHS−PEO−マレイミドに由来する
【化9】

である。
【0037】
式(II)の有機分子は、重合度が低く、この分子に官能基Zを導入するために改変された特定の形態のヘパリンを表す。
【0038】
本発明において用いる「O−保護基」とは、Greene, "Protective Groups In Organic synthesis", (John Wiley & Sons, New York (1981))に開示されているO−保護基など、合成手順中に望ましくない反応からヒドロキシル基を保護する置換基を表す。O−保護基は置換型または非置換型のメチルまたはアルキルエーテル、例えば、メトキシメチル(MOM)、ベンジルオキシメチル、2−メトキシエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、t−ブチル、ベンジルおよびトリフェニルメチル;置換型または非置換型ベンジルエーテル、例えば、p−メトキシベンジル、テトラヒドロピラニルエーテル;置換エチルエーテル、例えば、2,2,2−トリクロロエチル;シリルエーテル、例えば、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBS)およびt−ブチルジフェニルシリル;ならびにヒドロキシル基を例えば、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などのカルボン酸と反応させることにより製造されるエステルを含んでなる。特に、アリル基またはアセチル基は本発明による「O−保護基」である。有利には、それはメチル、ベンジルまたはp−メトキシベンジル基である。
【0039】
本発明において用いる「アルキル」とは、1〜6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖、置換または非置換アルキル基を表し、限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられる。
【0040】
本発明において用いる「アシル」とは、アルキル−CO基(ここで、アルキルは上記で定義された通り)を表す。
【0041】
「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を表す。
【0042】
好ましい実施形態では、Zはチオール基を表す。
【0043】
特定の実施形態では、R基は総て同一である。
【0044】
別の特定の実施形態では、R基は水素原子、メチル基およびベンジル基からなる群から選択される。
【0045】
有利には、Rは水素原子、メチル基またはp−メトキシベンジル(pMBn)基である。
【0046】
有利には、Rは硫酸部分またはリン酸部分である。
【0047】
より有利には、Rは総て同一であり、特に、リン酸部分である。
【0048】
有利には、Rは総て同一であり、特に、硫酸部分である。
【0049】
有利には、Rは総て同一であり、特に、水素原子である。
【0050】
好ましい実施形態では、有機分子は
【化10】

(ここで、AおよびZは上記で定義された通り)
から選択される。
【0051】
有利には、Aは式−(CH−NH−CO−(CH−の基を表す。
【0052】
有利には、Zはチオール基を表す。
【0053】
好ましい実施形態では、有機分子は
【化11】

(化合物20)
【化12】

(化合物21)
および
【化13】

(化合物22)
から選択される。
【0054】
特に、本発明による複合分子は以下の分子の1つであり得る。
【化14】

(化合物23)
【化15】

(化合物24)
および
【化16】

(化合物25)
【0055】
さらに、第二の態様によれば、本発明は、リンカーの手段により有機分子とカップリングされたCD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子を包含し、
CD4受容体由来ペプチドは上記で定義された一般配列(I)を含んでなり、
有機分子はヘパリンおよびヘパラン硫酸から選択されるポリアニオンを表し、ここで、ウロン酸部分はグルクロン酸またはイズロン酸である、重合度dpは2〜24であり、ポリアニオンの遊離ヒドロキシ基の本質的に総てがO−保護基GP”で置換され、これらのGP”基は同一または異なり、このポリアニオンはハロゲン原子、チオール基またはマレイミド基から選択される官能基を有するように修飾され、
リンカーはCD4受容体由来ペプチドの一般配列(I)中に存在するアミノ酸残基Lysの遊離アミノ基(−NH)とその末端の一方で共有結合され、有機分子の官能基とその他方の末端で共有結合されている。
【0056】
本発明において「本質的に」とは、ポリアニオンの遊離ヒドロキシ基の総てまたはほとんど総てがO−保護基で置換されていること、好ましくは70%、より好ましくは80%、いっそうより好ましくは90%の遊離ヒドロキシ基が置換されていることを意味する。
【0057】
CD4受容体由来ペプチドの特徴は上記で定義されたものと同じである。
【0058】
特に、P3は好ましくは少なくとも1つの塩基性アミノ酸を含んでなり、この塩基性アミノ酸はいっそうより好ましくはアルギニンである。
【0059】
好ましい実施形態によれば、一般配列(I)におけるXaaはTPAを表す。
【0060】
別の好ましい実施形態によれば、XaaはPheを表す。
【0061】
好ましくは、一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドの配列は配列番号1および配列番号2の配列からなる群から選択され、有利には配列番号1である。
【0062】
リンカーは上記で定義された通りであり、有利には、
【化17】

(ここで、kは2〜24の間の整数を表し、有利には2、4、8または12である)、
【化18】

(ここで、k1は1〜10の間の整数を表し、従って、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10に相当し、有利には1、2、3、5または10に相当する)、
【化19】

から選択される。
【0063】
好ましい実施形態では、リンカーは
【化20】

(ここで、kは2〜24の間の整数を表し、有利には2、4、8または12である)、
官能基がチオール基を表す場合には、
【化21】

官能基がマレイミド基またはハロゲン原子を表す場合には、
【化22】

から選択される。
別の好ましい実施形態では、リンカーは
【化23】

である。
【0064】
「O−保護基」とは、上記で定義されたものと同じ意味を有する。有利には、それはメチル基、ベンジル基またはp−メトキシベンジル基である。
【0065】
ポリアニオンは、本発明において望ましくない抗凝固活性を有し、種々のタンパク質、特にトロンビンおよび抗トロンビンIIIと特異的結合を形成するので、長すぎず、ウロン酸部分に3−O−硫酸基を持たないことが好ましい。ポリアニオンは好ましくは2〜24、有利には4〜18、好ましくは4〜14の重合度dpを有する。ポリアニオンは好ましくは、二糖につき少なくとも2つのアニオン基を有する。
【0066】
ヘパリン十二糖類(HP12)および四糖類(HP)が例として揚げられ、特にはHP12である。
【0067】
有利には、官能基はチオール基である。
【0068】
特定の実施形態では、GP”基は同一である。
【0069】
有利には、これらのGP”基はメチル基またはベンジル基である。
【0070】
好ましい実施形態では、官能基を有するポリアニオンは、
【化24】

から選択され、ここで、
Aは式:−(CH−NH−CO−(CH−、−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−、(CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−または−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−の中から選択された基を表し、pは1〜10の間の整数を表し、qは1〜10の間の整数を表し、
Zはハロゲン原子、チオール基またはマレイミド基を表す。
【0071】
有利には、Aは式−(CH−NH−CO−(CH−の基を表す。
【0072】
有利には、Zはチオール基を表す。
【0073】
好ましい実施形態では、有機分子は
【化25】

(化合物20)
および
【化26】

(化合物21)
から選択される。
【0074】
別の特定の実施形態では、本発明の複合分子は以下の分子:
【化27】

(化合物23)
および
【化28】

(化合物24)
から選択される。
【0075】
第三の態様によれば、本発明は、医薬としてのその使用のための、特にAIDSの処置のための上記で定義された複合分子を包含する。
【0076】
抗ウイルス処置のための、特にAIDSの処置のための医薬の製造を目的とした上記で定義された複合分子の使用もまた本発明の目的である。
【0077】
本発明はまた、必要とする患者に本発明による複合分子を投与することを含んでなる、抗ウイルス処置法、好ましくは抗AIDS処置法に関する。
【0078】
第四の態様によれば、本発明は、上記で定義された複合分子と薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる医薬組成物を包含する。
【0079】
経口、鼻腔内、舌下、皮下、筋肉内、静脈内、経皮、局所または直腸投与用の本発明の医薬組成物において、有効成分は慣例の医薬担体と混合した単位投与形で動物またはヒトに投与することができる。好適な単位投与形は、錠剤、ゼラチンカプセル剤、散剤、顆粒剤および経口溶液または懸濁液などの経口投与用剤形、舌下および口内投与用剤形、皮下、筋肉内、静脈内、鼻腔内または眼内投与用剤形ならびに直腸投与用剤形を含んでなる。
【0080】
第五の態様によれば、本発明は、上記で定義された複合分子の製造方法であって、a.上記で定義された一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドを2つの活性基を有する二官能性化合物と、2つの活性基の一方が一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミノ基(−NH)と共有結合を形成するように接触させて、二官能性基の第二の活性基を有する活性化されたペプチドを得る工程、および
b.工程(a)で得られた活性化されたペプチドを上記で定義された官能基を有する有機分子またはチオール基を有する上記で定義された有機分子に相当する有機分子(そのチオール基(SH)が保護チオール基により保護されている)と、活性化されたペプチドの活性基が有機分子の保護されたまたは保護されていない官能基と共有結合を形成するように接触させて複合分子を得る工程
を含んでなることを特徴とする方法を包含する。
【0081】
よって、官能基はハロゲン原子、マレイミド基、チオール基または保護チオール基を表す。
【0082】
工程(a)で得られた化合物は本願では同じように「活性化されたペプチド」、「活性化されたミニCD4」、「活性化されたCD4ペプチド」または「活性化されたミニCD4ペプチド」と呼ばれる。
【0083】
本発明において用いられる「保護チオール基」とは、合成手順中に望ましくない反応からチオール基を保護するためにS−保護基で置換された硫黄原子を表す。慣用のS−保護基はGreene, "Protective Groups In Organic Synthesis," (John Wiley & Sons, New York (1981))に開示されている。S−保護基は、p−メトキシベンジルもしくはp−ニトロベンジルなどの置換または非置換ベンジルエーテル、トリチルエーテル、チオエーテル、チオアセテートまたはチオアセタールを含んでなる。有利には、保護されたチオール基はチオアセチルである。
【0084】
有機化合物が保護チオール基を有する場合、この保護基は、遊離チオール基を回復させるため、また、このチオールと活性化されたペプチドの活性基とのカップリングを可能とするために工程(b)の前または間に脱保護する。
【0085】
CD4受容体由来ペプチドの特徴は上記で定義されたものと同様である。
【0086】
特に、P3は好ましくは少なくとも1つの塩基性アミノ酸を含んでなり、該塩基性アミノ酸はいっそうより好ましくはアルギニンである。
【0087】
好ましい実施形態によれば、一般配列(I)においてXaaはTPAを表す。
【0088】
別の好ましい実施形態によれば、XaaはPheを表す。
【0089】
好ましくは、一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドの配列は配列番号1および配列番号2の配列からなる群から選択され、有利には配列番号1である。
【0090】
本特許出願において「二官能性化合物」とは、2つの活性基を組み込み、その2つの活性基の一方が一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミノ基(−NH)と共有結合を形成することができ、他方の活性基が有機分子と共有結合を形成することができる任意の化合物を表す。
【0091】
当業者は、本発明で使用可能な二官能性化合物をよく知っている。特に、本発明による二官能性化合物は以下の非限定リストから選択することができる:NHS−PEO−マレイミド(ここで、nは2〜24の間であり、有利には、n=2、4、8または12である)、スルホ−KMUS(N−[k−マレイミドウンデカノイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、LC−SMCC(スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート])、KMUA(N−k−マレイミドウンデカン酸)、SMPB(スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート)、スルホ−SMPB(スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート)、スルホ−SIAB(N−スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート)、SIAB(N−スクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート)、スルホ−EMCS([N−e−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、EMCA(N−e−マレイミドカプロン酸)、EMCS([N−e−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル)、SMCC(スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、スルホ−SMCC(スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル)、スルホ−MBS(m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル)、GMBS(N−[g−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル)、スルホ−GMBS(N−[g−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SBAP(スクシンイミジル3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート)、BMPS(N−[[β]−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル)、BMPA(N−[β]−マレイミドプロピオン酸)、AMAS N−(a−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル)、SIA(N−スクシンイミジルヨードアセテート)、SMPH(スクシンイミジル−6−[βマレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート)、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)およびSATP(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート)。
【0092】
本発明によれば、NHS−PEO−マレイミド(ここで、n=2)はスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロプリオンアミド)−ジエチレングリコール]エステルとも呼ばれ、NHS−PEO−マレイミド(ここで、n=4)はスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロプリオンアミド)−テトラエチレングリコール]エステルとも呼ばれ、NHS−PEO−マレイミド(ここで、n=8)はスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロプリオンアミド)−オクタエチレングリコール]エステルとも呼ばれ、NHS−PEO−マレイミド(ここで、n=12)はスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロプリオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステルとも呼ばれる。
【0093】
一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミン基(−NH)と共有結合を形成することができる活性基はいずれの活性エステル基であってもよい。
【0094】
好ましくは、一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミン基(−NH)と共有結合を形成することができる活性基は、活性基N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHS)またはN−ヒドロキシ−4−スルホ−スクシンイミドエステルであり、有利にはNHS活性基である。
【0095】
いっそうより好ましくは、二官能性化合物の2つの活性基は異なり(ヘテロ二官能基)、その2つの基のうち1つはNHS活性基またはN−ヒドロキシ−4−スルホ−スクシンイミドエステルであり、有利にはNHS活性基である。
【0096】
有利には、有機分子の官能基と共有結合基を形成することができる二官能性化合物の活性基は、有機分子の官能基がチオール基または保護チオール基である場合にはハロゲン原子またはマレイミド基であり、有機分子の官能基がハロゲン原子またはマレイミド基である場合には上記で定義されたようにチオール基または保護チオール基である。
【0097】
好ましい実施形態によれば、有機分子の官能基はチオール基または保護チオール基である場合、二官能性化合物は、スクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート(SMPH)およびNHS−PEO−マレイミド(ここで、nは2〜24の間であり、有利には2、4、8または12である)からなる群から選択される。
【0098】
特に好ましい実施形態によれば、二官能性化合物はSMPHである。
【0099】
SMPHの分子構造は以下の通りである。
【化29】

【0100】
さらに別の特に好ましい実施形態によれば、二官能性化合物はスクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ジエチレングリコール]エステル(NHS−PEO−マレイミドとも呼ばれる)、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−テトラエチレングリコール]エステル(NHS−PEO−マレイミドとも呼ばれる)、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−オクタエチレングリコール]エステル(NHS−PEO−マレイミドとも呼ばれる)、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−ドデカエチレングリコール]エステル(NHS−PEO12−マレイミドとも呼ばれる)であり、なおより好ましくは、二官能性化合物はNHS−PEO−マレイミドである。
【0101】
NHS−PEO−マレイミドの分子構造は以下の通りである。
【化30】

【0102】
別の特に好ましい実施形態によれば、有機分子の官能基がハロゲン原子またはマレイミド基である場合、二官能性化合物はN−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート(SATA)およびN−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロピオネート(SATP)からなる群から選択される。
【0103】
SATAの分子構造は以下の通りである。
【化31】

【0104】
SATPの分子構造は以下の通りである。
【化32】

【0105】
二官能性化合物はPIERCE (Rockford, IL)から入手することができる。
【0106】
好ましくは、ここでも、本発明による方法は、XaaがTPAを表す場合の一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドを製造するための予備工程を含み、その方法は、CD4受容体由来ペプチドの配列(I)においてXaaがTPAを表す場合、以下の一般配列(III):
P1−Lys−Cys−P2−Cys−P3−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaa−Xaa(III)
(ここで、P1〜P3およびXaa〜Xaaは一般配列(I)で定義された通りである)
のCD4受容体由来ペプチドをN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)と接触させて、一般配列(III)の該CD4受容体由来ペプチドのN末端にTPAを組み込むことからなる該ペプチドを製造するための予備工程を含んでなる。
【0107】
SPDPの分子構造は以下の通りである。
【化33】

【0108】
さらに、共有結合により有機分子とカップリングすることができる活性基の例として、以下の基が挙げられる:マレイミドまたはブロモアセチル、S−S−ピリジニウムまたはチオアセチル。
【0109】
ミニCD4が保護されたチオール基(例えば、チオアセチル)により活性化される場合、例えばマレイミド基を有する有機分子とのカップリングを行うことができる。これはチオール基または保護されたチオール基、例えばチオアセチルのよるポリアニオン性多糖の官能基化に問題がある場合に可能である。このようにこれは「逆カップリング」と呼ばれる。
【0110】
好ましくは、活性基はマレイミド基である。
【0111】
その活性基がマレイミドである本発明による活性化されたペプチドの分子構造は、用いる二官能性化合物がSMPHである場合、次のものである。
【化34】

【0112】
本願において「SMPHで活性化されたミニCD4ペプチド」とは、そのアミノ酸Lys残基が有利にはアミン結合により、SMPH由来リンカーを介してマレイミド活性基に共有結合されている本発明による活性化されたペプチドを表す。
【0113】
別の有利な実施形態によれば、その活性基がマレイミド基である本発明による活性化されたペプチドの分子構造は、用いる二官能性化合物がNHS−PEO−マレイミドである場合、次のものである。
【化35】

【0114】
本願において「PEOリンカーを介してマレイミドで活性化されたミニCD4ペプチド」とは、そのアミノ酸Lys残基が有利にはアミン結合により、PEOリンカーを介してマレイミド活性基に共有結合されている本発明による活性化されたペプチドを表す。
【0115】
別の有利なものでは、活性基はチオアセチル基である。
【0116】
例えば、その活性基がチオアセチル基である本発明による活性化されたペプチドの分子構造は、用いる二官能性化合物がSATAである場合、次のものである。
【化36】

【0117】
同様に、その活性基がチオアセチル基である本発明による活性化されたペプチドの分子構造は、用いる二官能性化合物がSATPである場合、次のものである。
【化37】

【0118】
チオアセチル基はチオール基の保護された形態である。チオール基を脱保護するため、本発明者らは例えばヒドロキシルアミンを用いる。この工程は有機分子が有しているマレイミド基とのカップリングと同時に行われる。
【0119】
本願において「SATAで活性化されたミニCD4ペプチド」および「SATPで活性化されたミニCD4ペプチド」とは、そのアミノ酸Lys残基が有利にはアミン結合により、SATAまたはSATP由来リンカーを介して、保護されたチオール基(例えば、チオアセチル)に共有結合されている本発明による活性化されたペプチドを表す。
【0120】
よって、特定の実施形態によれば、活性化されたペプチドの活性基はマレイミド基であり、有機分子はチオール基またはチオアセチル基を有する。
【0121】
チオール基または保護されたチオール基、例えば、チオアセチル基を有する修飾ポリアニオンとカップリングされた一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドを含む本発明による複合分子の分子構造は、カップリングのための二官能性化合物としてSMPHが用いられる場合、次のものである。
【化38】

【0122】
それはまた、用いる官能性化合物がNHS−PEO−マレイミドである場合、次の複合分子であり得る。
【化39】

【0123】
別の実施形態によれば、本発明による複合分子は、一般配列(I)、好ましくは、配列番号1の配列を含んでなる、またはからなるCD4受容体由来ペプチドと、マレイミド基またはハロゲン基を有する有機分子とを含んでなる。
【0124】
別の特定の実施形態によれば、活性化されたペプチドの活性基はチオアセチル基であり、有機分子はマレイミド基またはハロゲン基を有する。
【0125】
例えば、マレイミド基を有する有機分子とカップリングされた一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドを含むこのような複合分子の分子構造は、カップリングにSATAが用いられる場合、次の通りである。
【化40】

【0126】
本発明によれば、ポリアニオン性糖類(本発明の有機分子)は、例えばへパリナーゼによる酵素法、または例えば亜硝酸による化学法を用いた、ヘパリン(HP)またはヘパラン硫酸の部分的脱重合により製造することができる。それらが化学的に得られる場合、ヘパランは、N硫酸化もしくはNアセチル化グルコサミン、または硫酸基を可変割合で含む、ウロン酸(グルクロン酸またはイズロン酸)に結合されたN位が非置換のグルコサミンが存在することで定義することができる。これらのオリゴ糖の構造的類似体は化学合成により得ることができる。
【0127】
このような合成アプローチには、組換え化合物または天然源由来のものの複合化に比べて多くの利点がある。治療用途では、構造が完全に確定されることに加え、病原体の混入、特に、HPフラグメントの場合にはプリオンタンパク質の混入が回避できるので、合成化合物が常に好ましい。さらに、合成HPフラグメントは、それらの天然等価物よりもずっと均質である。例えば、合成HP12は、ヘパリンの抗トロンビン活性の原因となる3−O−硫酸基を全く含まない。
【0128】
特に、式(II)の有機分子は、Lubineau et al. (Chem. Eur. J. 2004, 10, 4265-4282)およびNoti et al. (Chem. Eur. J. 2006, 12, 8664-8686)に記載のものと同様の方法に従って合成することができる。
【0129】
活性化されたペプチドおよび複合分子の製造のための本発明による方法の操作条件は当業者に周知であり、必要であれば適合させることができる。
【0130】
以下、実施例および図面により本発明を説明するが、これらはその範囲を何ら限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の複合分子の生物作用を示す図である。
【図2】ミニCD4とgp120の相互作用 合成されたミニCD4のgp120に対する親和性は、Biacoreにより評価した。これらの結果により、本発明者らにより「デザイン」された1個のリシンを有するミニCD4がCD4タンパク質の官能性類似体であることが確認される。 上:gp120とmCD4表面の結合;チップの作製のため、ビオチンをmCD4のLys側鎖に結合させた。 中:gp120とsCD4表面の結合はnM濃度のmCD4で阻害された。 下:mCD4の不在下では、gp120はmAb 17b(CD4iエピトープと相互作用し、共受容体サロゲートとして用いられるmAb)と結合しない。この実験は、gp120との複合体中のmCD4がgp120とmAb 17b表面の結合を促進することから、mCD4がCD4iエピトープの露出を誘導したことを示す。
【図3】PEOリンカーを介した、マレイミドで活性化されたミニCD4ペプチドの合成に関する図。
【図4】gp120(YU2またはMN)とCD4の結合を示す図。gp120は単独で(細線)、またはmCD4(上のパネルの太線)もしくは共有結合mCD4−HS12Lb(25)(下のパネルの太線)のいずれかと結合させてCD4表面に注入した。
【図5】gp120(MN)とHSの結合を示す図。gp120は、単独(細線)で、またはmCD4(左上のパネルの太線)、HS12Lb(19)(右上のパネルの太線)、共有結合されていないmCD4およびHS12Lb(左下のパネルの太線)もしくは共有結合mCD4−HS12Lb(25)(右下のパネルの太線)のいずれかと結合させてHS表面に注入した。
【図6】gp120(YU2またはMN)とmAb 17bの結合を示す図。gp120は、単独(細線)で、またはmCD4(上のパネルの太線)もしくは共有結合mCD4−HS12Lb(25)(下のパネルの太線)のいずれかと結合させてmAb 17b表面に注入した。
【図7】gp120MN(上)またはYU2(下)とmAb 17bの結合を示す図。gp120は、漸増濃度の共有結合されていないmCD4およびHS12Lb(19)(黒)または共有結合mCD4−HS12Lb(25)(白)のいずれかとともにmAb 17b表面に注入した。
【図8】gp120とmAb 17bの結合を示す図。gp120は、mCD4(T)、または共有結合されていない(黒)または共有結合されている(白)、mCD4とGPR1、HS4Bz(17)、HS12Lb(19)、HS12Bz(18)のいずれかとともにmAb 17b表面に注入した。
【図9】mCD4−HS12(3)はgp120と結合し、gp120共受容体結合部位を暴露し、遮断する。センサーグラムを重ね合わせたものは、(上から下へ)76、51、37、22、15および10nMのmCD4−HS12(25)と固定化されたYU2(a)またはMN(b)gp120の結合を示す。mCD4(黒)またはmCD4−HS12(25)(太)は5分間(100〜400秒)200nMで、YU2(c、e)またはMN(d、f)で活性化されたセンサーチップ上に注入し、その後、mAb 17b(c、d)またはmAb E51(e、f)をさらに5分間(400〜700秒)注入した。結合応答(RU)を時間(秒)の関数として記録した。
【図10】複数を含むLys配列(下)内で選択されたリシンの場合のリシンおよび1つしか含まないLys配列(上)内のリシンのマレイミド標識のための先行技術の戦略。
【図11】mCD4(濃いグレー)との複合体におけるYU2 GP120(薄いグレー)の構造。Lysが、R419、K421およびK432により構成されるHS結合部位の近傍に位置し、従って、HS由来オリゴ糖を製造するのにLys11よりも好適な結合点に相当する。
【実施例】
【0132】
実施例I 合成図
I.1 ミニCD4ペプチドと出願WO03/089000(Najjam S. et al., Cytokine 1997, 9(12):1013-1022)に記載されているポリアニオンの間のカップリング法に関する合成図
アミン基と糖の還元末端とのカップリング
【化41】

【0133】
I.2.本発明のカップリング法に関する合成図
(二官能基としてのSMPHを用いた例)
【化42】

マレイミド基の組み込みによるミニCD4活性化法は、任意の化合物と遊離チオール基(SH)またはマスクされたチオール基(例えば、チオアセチル)とのカップリングを可能とする。よって、この活性化されたミニCD4は、ヘパリン(または他のいずれかの多糖)が予めチオール基により誘導体化されている限り、ミニCD4−ヘパリン共有結合複合分子の取得を可能とする。
【0134】
実施例II SMPHまたはSATPを用いた活性化されたミニCD4の化学合成
II.1 ミニCD4の合成
ミニ−ペプチドCD4は、Applied Biosystems 433ペプチド合成装置を用い、Fmoc固相ペプチド合成("Fmoc solid phase peptide synthesis, a practical approach", W. C. Chan and P. D. White編, Oxford University Press, 2000)の方法論に従って合成した。0.1ミリモルのアミド−Fmoc樹脂で始め、Fmocで保護され、HATU/DIEA混合物で活性化された10アミノ酸当量をカップリングすることによりペプチド鎖の段階的伸長を行った。N末端チオプロピオニル基は、ペプチド−樹脂上にSPDP(DMF中1.6当量)をカップリングすることにより導入した。
【0135】
TFA/HO/EDT/TIS(94/2.5/2.5/1)による切断の後、冷ジエチルエーテル中での沈殿によりペプチドを回収した。凍結乾燥後、粗ペプチド(156mg)を20%酢酸溶液中のDTT中で一晩還元し、流速20ml/分で60分間にわたってBからA(B=CHCN80%/0.08%TFA水溶液20%;A=0.08%TFA水溶液100%)へ30から90%への直線勾配を用い、Nucleoprep C18カラム、20μm、100Å(26×313mm)での逆相MPLCにより精製した。純粋な画分を回収し、凍結乾燥した。次に、このペプチドを一晩GSH/GSSG処理を用いて折りたたみ直した。折りたたみ直されたペプチドを60分間にわたって20から80%への勾配を用いてMPLCにより精製し、8.7mgのミニ−CD4を得た。純度(93.5%)は、流速1ml/分で20分間にわたって0.08%TFA水溶液中25から35%CHCNへの直線勾配を用い、NucleosilカラムC18、5μm、300Å(4.6×150mm)での分析的逆相HPLCにより確認した(保持時間=15.44分)。
ESMS:2896.32±0.23;予測値:2896.49;収率:5.5%
【0136】
II.2 SMPHで活性化されたミニ−CD4
リン酸バッファーpH=8中、4SMPH当量を反応させることによりミニ−CD4の片側のLys鎖にマレイミド基を導入した。反応はHPLCにより制御した。15分後に100%のカップリングが達成される。流速6ml/分で20分間にわたって0.08%TFA水溶液中25から45%CHCNへの直線勾配を用い、逆相HPLC用半分取Nucleosil C18カラム、5μm、300Å(10×250mm)にて精製した後、SMPHで活性化されたミニ−CD4の最終純度(97.7%)は、25から45%への直線勾配を用いる分析的RP−HPLC(保持時間=13.21分)により制御した。
ESMS:3160.83±0.29;予測値:3160.78;収率:1.9mg(67%)
【0137】
SMPHで活性化されたミニCD4ペプチドの最終的なHPLCのエルグラム
約2mg/ml
注入量 5μl ds 25−45
サンプル名:FBX13082−190
表面積率%:
ソート手段:シグナル
濃縮率:1.0000
希釈率:1.0000
濃縮率および希釈率を内部標準とともに使用
シグナル1:DADI A、Sig=230.4 Ref=off
【0138】
【表1】

改良型積算計を用いて結果を得た。
【0139】
SMPHで活性化されたミニCD4ペプチドの質量スペクトル
+Q1 MCM(10スキャン)の高質量算出のコピー:FBX13082−190/InfMSpo/c/03/08/05から
高質量算出に用いた基準
エージェント:質量:1.0079、電荷:1、エージェント ゲイン
電荷推定値の許容度:0.1000
質量推定値間の許容度:20.000
【0140】
【表2】

推定最終質量:3160.83
標準偏差:0.29
【0141】
II.3 SATPで活性化されたミニ−CD4活性化された
リン酸バッファーpH=8中、1SATP当量を反応させることにより、ミニ−CD4の片側のLys鎖にチオアセチル基を導入した。反応はHPLCにより制御した。3分後に46%のカップリングが達成される。流速6ml/分で20分間にわたって0.08%TFA水溶液中20から40%CHCNへの直線勾配を用い、半分取逆相HPLC用Nucleosil C18カラム、5μm、300Å(10×250mm)にてSATPで活性化されたミニ−CD4を単離した。SATPで活性化されたミニ−CD4の最終純度(100%)は、25から45%への直線勾配を用いる分析的RP−HPLC(保持時間=13.88分)により制御した。
ESMS:3027.31±0.41;予測値:3027.66。このカップリング反応を1回行い、2当量のSATPを直接加えることにより至適化することができた。
【0142】
SATPで活性化されたミニCD4ペプチドの最終的なHPLCエルグラム
20分で25−45
サンプル名:FBX13082−168−2
表面積率%:
ソート手段:シグナル
濃縮率:1.0000
希釈率:1.0000
濃縮率および希釈率を内部標準とともに使用
シグナル1:DADI A、Sig=230.4 Ref=off
【0143】
【表3】

改良型積算計を用いて結果を得た。
【0144】
SATPで活性化されたミニCD4ペプチドの質量スペクトル
+Q1 MCA(10スキャン)の高質量算出のコピー:FBX13082−186−2/Infpo/c/29/07/05から
高質量算出に用いた基準
エージェント:、質量:1.0079、電荷:1、エージェント ゲイン
電荷推定値の許容度:0.1000
質量推定値間の許容度:20.000
【0145】
【表4】

推定最終質量:3127.31
標準偏差:0.41
【0146】
実施例III 確定した位置にリシン残基を1つおよび1つだけ含む一般配列(I)の選択の妥当性
確定した位置にリシン残基を1つおよび1つだけ含む一般配列(I)の選択の妥当性を、EZ−リンク−NHS−(PEO)4−ビオチンPIERCE試薬(Rockford, IL)を用い、(PEO)4−ビオチンによりLys上で誘導体化されたミニCD4ペプチドの合成によりバリデートした。
【0147】
一般配列(I)の確定した位置にこのビオチン誘導体を導入してもgp120とミニCD4の結合は変わらない(図2のBiacore測定を参照)。
【0148】
これらの種々の合成方法は最適化しなかった。より良い収率を達成することができるはずである。
【0149】
実施例IV PEOリンカーを介してマレイミドで活性化されたミニ−CD4(ミニCD4−PEO−mal)の化学合成(図3参照)
mCD4−PEO−マレイミドは、化合物mCD4−SMPHと、リンカーのタイプという点で異なる。溶解度の理由で、親水性の高いポリエチレンオキシド(PEO)リンカーをミニCD4とマレイミド基の間に組み込んだ。
【0150】
合成:1 mlのHO中、10mgのmCD4(MW:2897;3.4ミリモル)の溶液を1mlのリン酸バッファー0.1M pH8に希釈した。20μlのDMSO中、この曇りのある溶液に、攪拌しながら4.5mgのNHS−PEO−マレイミド(MW:325;13.8ミリモル;4当量)を加えた。10分後、85%(HPLC)の出発材料がマレイミド誘導体に変換された。pH8でのマレイミド基の安定性が低いために、このカップリング反応物をそのまま、0.08%TFA水溶液中10%のCHCNで較正したSepaK C18カラムにロードした。マレイミド誘導体を50%CHCNで溶出した。凍結乾燥後、次に、この化合物を半分取カラムで精製した。収量:5.2mg(48%)、最終純度:77%。
ES+:3205.3938(予測モノアイソトピックM:3205.4211)、QTOF Micro Waters MaxEntl。
【0151】
HPLC条件:
分析的:Nucleosil 5C18 300Å(4.6×150mm);流速1ml/分で20分間にわたって0.08%TFA水溶液中25から45%CHCNへの直線勾配。検出:230nm。mCD4Rt=10.7分;mCD4−PEO−Mal Rt=12.8分。
半分取:Nucleosil 5C18 300Å(10×250mm);流速6ml/分で20分間にわたって0.08%TFA水溶液中25から45%CHCNへの直線勾配。
検出:230nm。mCD4−PEO−Mal Rt=11.4。
【0152】
実施例V 本発明の複合分子の化学合成
V.1.合成図
【化43】

スキーム1:二糖構成ブロック1(m=5)への保護されたアミノリンカーの導入
a)TMSOTf、4Å、CHCl、−40〜−10℃、79%(α/β:2/8)
b)TFA、CHCl、RT、93%
【化44】

スキーム2:保護されたオリゴ糖5、8および10の合成
a)TMSOTf、4Å、CHCl、−40〜−10℃、80%
b)TFA、CHCl、RT、93%の6、91%の9
c)7(1.3当量)、TBDMSOTf、4Å、CHCl、−40〜−10℃、10%の未反応6を伴う78%の8、6%の未反応9を伴う85%の10
【化45】

スキーム3:硫酸化されたオリゴ糖15、18および19の製造
a)KCO、MeOH/CHCl(10/4)、0℃、13%の11bを伴う71%の11a、17%の12bを伴う80%の12
b)1,3−プロパンジチオール、NEt、MeOH、75%(12)、86%(13)
c)ピリジン・SO、ピリジン、16時間RT、20時間55℃、51%(15)、52%(16)
d)LiOH、H、24時間RT、50%(17);KOH、H、48時間37℃、51%(18)
e)Pd(OH)、リン酸バッファー水溶液0.1M pH7.0/tBuOH(6/2)、定量的(19)
【0153】
V.2.有機分子(多糖)の化学合成
化合物1、2および7は、Lubineau et al. (Chem. Eur. J. 2004, 10, 4265-4282)およびWO2004/000887に従って合成される。
化合物3:5−(アセトアミド−N−ベンジルオキシカルボニル)ペンチル(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
【化46】

アクセプター2(50mg、0.18mmol、2当量)およびイミデート1(83mg、0.09mmol)をトルエンとともに共沸乾燥させ、乾燥CHCl(400μL)に溶解させた。粉末4Åモレキュラーシーブス(300mg)を加え、この混合物をアルゴン下、室温で30分間攪拌した。この溶液を−40℃まで冷却し、TMSOTf(CHCl中0.2M、90μL、0.018mmol、0.2当量)を加えた。この反応物をこの温度で15分間攪拌した後、30分かけて−10℃まで昇温した。次に、この反応物をNEt溶液(CHCl中0.2M、180μL、0.036mmol、0.4当量)で急冷した。この溶液を濾過した後、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 6:1から1:1)により精製し、二糖3のαアノマーとβアノマー(76mg、79%)をα/β≒2/8の比率で別個に得た。
1H NMR (300 MHz, CDCl3)δ = 7.43-7.23 (m, 15 H, Ph) , 7.13 (d, J = 8.5 Hz, 2H, Ph-OMe), 6.83 (d, J = 8.5 Hz, 2H, Ph-OMe) , 5.25 (d, J1, 2 = 4.5 Hz, IH, H-1B) , 5.23 (s, 2H, CH2Ph(CbZ)) , 4.87 (t, J1,2 = J2,3 = 4.5 Hz, 1 H, H-2B) , 4.82 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2Ph), 4.73 (d, J5,4 = 4.0 Hz, 1 H, H-5B) , 4.71 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.70 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.64 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.46 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph), 4.42 (dd, J6a,6b = 11.5 Hz, J6a,5 = 2.0 Hz, 1.5 H, H-6aA) , 4.40 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.21 (d, J1, 2 = 7.5 Hz, 1 H, H-1A) , 4.18 (dd, J6a,6b = 11.5 Hz, J6b,5 = 4.0 Hz, 1 H, H-6bA) , 3.93 (t, J4,5 = J4,3 = 9.5 Hz, 1 H, H-4A) , 3.85 (dt, Ja,a’ = 9.5 Hz, Ja,b = 6.5 Hz, 1H, H-a) , 3.81 (t, J3, 4 = J4, 5 = 4.0 Hz, 1 H, H-4<B>) , 3.80 (s, IH, PhOMe), 3.76 (dd, J2, 3 = 4.5 Hz, J3,4 = 4.0 Hz, IH, H-3B) , 3.80-3.74 (m, 2H, H-e), 3.55 (s, 3H, COOMe), 3.52-3.38 (m, 2 H, H-a' および H- 5A) , 3.35 (dd, J2,3 = 10.0 Hz, J2,1 = 7.5 Hz, 1 H, H-2A) , 3.31 (t, J3, 2 = J3,4 = 9.5 Hz, 1 H, H-3A) , 2.50 (s, 3 H, CH3 NAc) , 2.06 (s, 3 H, CH3 OAc) , 2.03 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.68-1.48 (m, 4 H, H-b および H-d) , 1.43-1.28 (m, 2 H, H-c) ;
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ = 172.8, 170.7, 170.0, 169.8 (C=O) , 159.4 (C-OMe, pMBn) , 138.1, 137.9, 135.1, 135.0 (C第4級芳香族) , 129.6, 129.4, 129.0, 128.9, 128.7, 128.6, 128.4, 128.3, 128.2, 128.1, 127.9, 127.8, 127.4 (C芳香族) , 113.7 (Cm PMBn) , 102.1 (C-1A) , 97.9 (C-1B) , 80.9 (C-3A) , 75.3 (C-4A) , 74.9 (CH2Ph) , 74.8 (C-4B) , 74.4 (C-3B) , 73.1 (C-5A) , 73.0 (CH2Ph) , 72.4 (CH2Ph) , 70.5 (C-5B) , 70.1 (C-2B) , 70.0 (CH2-a) , 68.4 (CH2Ph Cbz) , 66.2 (C-2A) , 62.2 (C-6A) , 55.2 (CH3, COOMe) , 51.8 (CH3, COOMe) , 44.0 (CH2-e) , 29.0 (CH2-b) , 28.2 (CH2-d) , 26.8 (CH3, NAc) , 23.1 (CH2-C) , 20.9, 20.8 (CH3, OAc) ;
546417Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:1063.4159、実測値:1063.4171。
【0154】
化合物4:5−(アセトアミド−N−ベンジルオキシカルボニル)ペンチル(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−1−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
【化47】

乾燥CHCl(1.6mL)中、二糖3(125mg、0.12mmol)の溶液に、TFA(160μL、2.16mmol、18当量)をゆっくり加え、得られた紫の溶液をアルゴン下で1時間攪拌した。次に、NEt(350μL)を加え、得られた溶液を濃縮した。残渣のフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、石油エーテル/AcOEt85:15から35:65)により、所望の二糖4(103mg、93%)を得た。
1H NMR (360 MHz, CDCl3) δ = 7.45-7.22 (m, 15 H, Ph) , 5.20 (s, 2H, CH2Ph(CbZ) ) , 5.03 (br.s, 1H, H-1B) , 4.92 (d, J5, 4 = 1.5 Hz, 1 H, H-5B) , 4.88 (br.s, 1 H, H-2B) , 4.72 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.71 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.66 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.60 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.42 (d, J6a,6b = 12.0 Hz, J6a,5 = 2.0 Hz, 1 H, H-6aA) , 4.20 (d, J1,2 = 8.0 Hz, 1 H, H-1A) , 4.15 (d, J6a,6b = 12.0 Hz, J6b,5 = 4.0 Hz, 1 H, H-6bA) , 3.95 (br. d, J4,OH = 10.5 Hz, 1 H, H-4B) , 3.90-3.84 (m, 1 H, H-a) , 3.82 (t, J4,5 = J4, 3 = 10.0 Hz, 1 H, H-4A) , 3.74-3.66 (m, 3 H, H- 3B および H-e) , 3.49-3.32 (m, 5 H, δ=3.47においてsを含む, PhOMe, H-a' および H-5A) , 3.36 (dd, J2,3 = 10.0 Hz, J2,1 = 8.0 Hz, 1 H, H- 2A) , 3.23 (t, J3,2 = J3,4 = 10.0 Hz, 1 H, H-3A) , 2.59 (d, JOH,4 = 10.5 Hz, 1 H, OH) , 2.46 (s, 3 H, CH3 NAc) , 2.05 (s, 3 H, CH3 OAc) , 2.04 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.65-1.53 (m, 2 H, H-b) , 1.51 (q, Jc,d = Jc,d = Je,d = 7.5 Hz, 2 H, H-d) , 1.41-1.30 (m, 2 H, H-c) ;
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ = 172.8, 170.5, 169.4, 169.1 (C=O) , 137.9, 137.2, 135.1 (C第4級芳香族) , 128.6, 128.4, 128.2, 128.1, 127.9, 127.4 (C芳香族) , 102.2 (C-1A) , 98.0 (C-1B) , 81.0 (C-3A) , 74.8 (C-4A) , 74.6 (CH2Ph) , 74.4 (C-3B) , 73.1 (C-5A) , 72.3 (CH2Ph) , 69.9 (CH2-a) , 68.5 (C-5B) , 68.4 (CH2Ph Cbz) , 67.7 (C-4B) , 67.2 (C-2B) , 66.4 (C-2A) , 62.2 (C-6A) , 52.0 (CH3, COOMe) , 43.9 (CH2-e) , 29.0 (CH2-b) , 28.2 (CH2-d) , 26.8 (CH3, NAc) , 23.1 (CH2-C) , 20.9, 20.8 (CH3, OAc) ;
465616Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:943.35890、実測値:943.36018。
【0155】
化合物5:5−(アセトアミド−N−ベンジルオキシカルボニル)ペンチル[(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸)メチル]−(1→4)−O−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
【化48】

アクセプター4(80mg、0.087mmol)およびイミデート1(107mg、0.12mmol、1.3当量)をトルエンとともに共沸乾燥させ、乾燥CHCl(360μL)に溶解させた。粉末4Åモレキュラーシーブス(280mg)を加え、この混合物をアルゴン下、室温で30分間攪拌した。この溶液を−40℃まで冷却し、TMSOTf(CHCl中0.2M、89μL、0.017mmol、0.2当量)を加えた。この反応物をこの温度で15分間攪拌した後、30分かけて−10℃まで昇温した。次に、この反応物をNEt溶液(CHCl中0.2M、180μL、0.035mmol、0.4当量)で急冷した。この溶液を濾過し、Sephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:1)の上に適用した。四糖5を含有する画分をプールし、濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 85:15から35:65)により精製し、四糖5(116mg、80%)を得た。
1H NMR (360 MHz, CDCl3) δ = 7.37-7.14 (m, 25 H, Ph) , 7.06 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe), 6.76 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe) , 5.20 (d, J1, 2 = 5.5 Hz, 1H, H-1B) , 5.16 (s, 2H, CH2Ph(CbZ)) , 5.14 (d, J1,2 = 3.5 Hz, 1 H, H-1D) , 4.83 (d, J = 10.0 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.86-4.79 (m, 2 H, H-2D および H-1c ) , 4.79 (t, J2,3 = J2,1 = 5.5 Hz, 1 H, H-2B) , 4.69 (d, J = 10.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.71-4.62 (m, 4 H, H-5D, 2 CH2Ph) , 4.59 (s, 2H, CH2Ph) , 4.55 (d, J = 10.5 Hz, 1 H, CH2Ph) , 4.52 (d, J5,4 = 5.0 Hz, 1 H, H-5B) , 4.39 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.38-4.34 (m, 1 H, H-6aA) , 4.35 (d, J = 11.5 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.28 (d, J6a,6b = 12.0 Hz, 1 H, H-6ac) , 4.14 (d, J1,2 = 7.5 Hz, 1 H, H-1A) , 4.14-4.10 (m, 1 H, H-6bA) , 4.08 (dd, J6b,6a = 12.0, J6b,5 = 2.5 Hz, 1 H, H-6bc) , 3.92 (t, J4,3 = J4, s = 4.0 Hz, 1 H, H-4D) , 3.88 (t, J4,5 = J4,3 = 9.0 Hz, 1 H, H-4C) , 3.83 (t, J3,4 = J3,2 = 4.0 Hz, 1 H, H-3D) , 3.78 (t, J4,5 = J4,3 = 10.0 Hz, 1 H, H-4A) , 3.81-3.62 (m, 9 H, δ=3.73においてsを含む, H-a, H-5C, H-4B, PhOMe, H-3B および H-e) , 3.58 (dd, J3,2 = 10.0, J3, 4 = 9.0 Hz, 1 H, H-3C) , 3.49 (s, 3 H, COOMe) , 3.42 (s, 3 H, COOMe) , 3.42-3.31 (m, 2 H, H-5A および H-a' ) , 3.29 (dd, J2,3 = 9.5, J2,1 = 7.5 Hz, 1 H, H-2A) , 3.22 (dd, J2,3 = 10.0, J2,1 = 3.5 Hz, 1 H, H-2C) , 3.21 (dd, J3,4 = 10.0, J3,2 = 9.5 Hz, 1 H, H-3A) , 2.42 (s, 3 H, CH3 NAc) , 2.03 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.98 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.96 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.95 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.61-1.48 (m, 2 H, H-b) , 1.47 (q, Jc,c = Jc,d = Je,d = 7.5 Hz, 2 H, H-d) , 1.28 (m, 2 H, H-c) .
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ = 159.5 (C-OMe, pMBn) , 138.0, 137.8, 137.2 (C第4級芳香族) , 129.6, 128.7, 128.6, 128.5, 128.4, 128.3, 128.2, 128.0, 127.9, 127.8, 127.5 (C芳香族) , 113.8 (Cm pMBn) , 102.2 (C-1A) , 98.0 (C-1D) , 97.9 (C-1B) , 97.4 (C-1c) , 81.0 (C-3A) , 77.9 (C-3C , 75.6 (C-4C) , 75.5 (C-3B) , 75.3 (C-4B および C-4A) , 75.0 (CH2Ph) , 74.8 (CH2Ph) , 73.7 (C-3D) , 73.5 (CH2Ph) , 73.3 (CH2Ph) , 73.1 (C-5A) , 72.9 (C-4D) , 72.6 (CH2 pMBn) , 71.2 (C-5B) , 71.0 (C- 2B) , 70.0 (CH2-a) , 69.7 (C-5C) , 69.3 (C-5D) , 68.8 (C-2D) , 68.4 (CH2Ph Cbz ) , 66.2 (C-2A) , 62.8 (C-2C) , 62.2 (C-6A) , 61.7 (C-6C) , 55.3 (CH3, OMe pMBn) , 52.0 (CH3, COOMe) , 51.7 (CH3, COOMe) , 44.1 (CH2-e) , 29.1 (CH2-b) , 28.3 (CH2-d) , 26.8 (CH3, NAc) , 23.1 (CH2- c) , 20.9, 20.7 (CH3, OAc) ;
IR (薄膜) : v = 3021 (Vc-H 芳香族) , 2948, 2933, 2833 (Vc-H 脂肪族) , 2110 (VN3) , 1741 (Vc-c) , 1618, 1550, 1509, 1452, 1369, 1227;
[α]D28 = - 8.0833 (c = 1.2, CH2Cl2において);
859929Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:1704.63849、実測値:1704.63252。
【0156】
化合物8:5−(アセトアミド−N−ベンジルオキシカルボニル)ペンチル[(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)]−(1→4)−O−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
【化49】

四糖5(110mg、0.065mmol)を、二糖3に関して上記したように、CHCl(850μL)中のTFA(87μL、1.18mmol)で処理し、95mgの四糖6を得た(93%)。アクセプター6(95mg、0.061mmol)およびイミデート7(123.5mg、0.079mmol、1.3当量)をトルエンとともに共沸乾燥させ、乾燥CHCl(900μL)に溶解させた。粉末4Åモレキュラーシーブス(325mg)を加え、この混合物をアルゴン下、室温で30分間攪拌した。この溶液を−40℃まで冷却し、TBDMSOTf(CHCl中0.2M、60μL、0.012mmol、0.2当量)を加えた。この反応物をこの温度で15分間攪拌した後、30分かけて−10℃まで昇温した。次に、この反応物をNEt溶液(CHCl中0.2M、120μL、0.024mmol、0.4当量)で急冷し、この温度で15分間攪拌した。次に、この溶液をそのままSephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:1)の上に適用し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 85:15から35:65)により精製し、八糖8(141mg、78%)を10mgの未反応アクセプター6(10%)とともに得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.45-7.10 (m, 47 H, Ph) , 6.75 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe) , 5.22 (d, J1,2 = 5.5 Hz, 1H, H-1B) , 5.21 (d, J1,2 = 5.5 Hz, 2 H, H-1D および H-1F) , 5.14 (s, 2H, CH2Ph (CbZ) ) , 5.13 (d, J1,2 = 3.5 Hz, 1 H, H-1H) , 4.89 (d, J1,2 = 3.0 Hz, 2 H, H-1c または H-1E または H-1G および H-1E または H-1G または H-1c) , 4.86-4.77 (m, 6 H, H-1G または H-1c または H-1E, H-2B, H-2D, H-2F, H-2H および CH2Ph) , 4.78 (d, J = 11.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.72-4.53 (m, 14 H, δ=4.79においてsを含むH-5H, 13XCH2Ph) , 4.50 (d, J = 5.0 Hz, 2 H, H-5D および H-5F , 4.48 (d, J = 5.0 Hz, 1 H, H-5B) , 4.38 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.35 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.39-4.26 (m, 3 H, H-6aA H-6ac および H-6aE) , 4.26 (d, J6a,6b = 11.0 Hz, 1 H, H-6aG) , 4.13 (d, J1,2 = 8.0 Hz, 1H, H-1A) , 4.15-4.03 (m, 4 H, H-6bA, H- 6bc, H-6bE および H-6bG) , 3.96-3.88 (m, 3 H, H-4H, H-4F および H-4D) , 3.90-3.68 (m, 16 H, δ=3.71においてsを含む, H-4G, H-3D, H-3F, H-3H, H-4E, H-4C, H-4A, H-a, H-5G, H-5C, H-5E, H-4B, PhOMe および H- 3B) , 3.65 (br t, Jd,e = 7.5 Hz, 2 H, H-e) , 3.61-3.50 (m, 3 H, H- 3G, H-3E および H-3C) , 3.50 (s, 3 H, COOMe) , 3.47 (s, 3 H, COOMe) , 3.45 (s, 3 H, COOMe) , 3.41 (s, 3 H, COOMe) , 3.41-3.31 (m, 2 H, H-a' および H-5A) , 3.28 (dd, J2,3 = 9.5, J2,1 = 8.0 Hz, 1 H, H-2A) , 3.24-3.15 (m, 4 H, δ=3.20においてsを含むH-3A, H-2C, H-2E および H-2G) , 2.40 (s, 3 H, CH3 NAc) , 2.01 (s, 6 H, CH3 OAc) , 2.00 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.96 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.94 (2 s, 6 H, CH3 OAc) , 1.93 (s, 6 H, CH3 OAc) , 1.57-1.46 (m, 2 H, H-b) , 1.46 (q, Jc,d = Je,d = V.5 Hz, 2 H, H-d) , 1.33-1.22 (m, 2 H, H-c) ;
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ = 170.7, 170.6, 169.9, 169.7, 169.5, 169.3 (C=O) , 159.5 (C-OMe, pMBn) , 137.9, 137.8, 137.7, 137.6, 137.4, 137.3 (C第4級芳香族) , 129.6, 129.3, 128.6, 128.5, 128.4, 128.2, 127.8, 127.6 (C芳香族) , 113.8 (Cm pMBn) , 102.1 (C-1A) , 98.0 (C-1H) , 97.9 (C-1B, C-1D および C-1F) , 97.7 (C-lC または E または G および C-1E または G またはC) , 97.1 (C-1G または C または E) , 80.9 (C-3A) , 77.9, 77.8, 77.7 (C-3C, C-3E および C-3G) , 75.7 (C-3B および C-4G) , 75.6 (C-4A および C-4B) , 75.5 (C-4C または E) , 75.4 (C-3D または F および C-4C または E) , 75.2 (C-3D または F) , 75.0 (2x CH2Ph) , 74.8 (4x CH2Ph) , 74.1 (CH2Ph) , 74.0 (CH2Ph) , 73.6 (C-3H および CH2Ph) , 73.5, 73.4 (C-4D and C-4F) , 73.2 (CH2Ph) , 73.1 (C-5A) , 72.6 (CH2 pMBn および C-4H) , 71.3 (C-5D または C-5F) , 71.2 (C-2D または C- 2F) , 70.6 (C-5B) , 70.4 (C-2B または C-5F) , 70.3 (C-5D または C-2B) , 70.1 (C-2F または C-2D) , 70.0 (CH2-a) , 69.7-60.6 (C-5C, C-5E および C-5G) , 69.1 (C-5H) , 68.7 (C-2H) , 68.4 (CH2Ph Cbz) , 66.2 (C-2A) , 63.0 (C- 2C または E) , 62.8 (C-2C または E および C-2G) , 62.2 (C-6A) , 61.6 (C-6C, C-6E および C-6G) , 55.2 (CH3, OMe pMBn) , 52.0 (3x CH3, COOMe) , 51.7 (CH3, COOMe) , 44.0 (CH2-e) , 29.0 (CH2-b) , 28.3 (CH2-d) , 26.8 (CH3, NAc) , 23.1 (CH2-C) , 20.8, 20.7 (CH3, OAc) ;
1471691353Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:2987.0821、実測値:2987.0845。
【0157】
化合物10:5−(アセトアミド−N−ベンジルオキシカルボニル)ペンチル[(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)]−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)−(1→4)−O−(6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−アセチル−3−O−ベンジル−α−L−ヨードピラノシルウロン酸メチル)]−(1→4)−O−6−O−アセチル−2−アジド−3−O−ベンジル−2−デオキシ−α−D−グルコピラノシド
【化50】

八糖8(136mg、0.046mmol)を、3に関して上記したように、乾燥CHCl(1.2mL)中のTFA(61μL、0.825mmol)で処理し、119mgの化合物9を得た(91%、C1391611352Naに関するMALDI−TOF HR−MS m/z計算値[M+Na]:2867.0246、実測値:2867.0226)。アクセプター9(95mg、0.034mmol)およびイミデート7(65mg、0.042mmol、1.3当量)をトルエンとともに共沸乾燥させ、乾燥CHCl(500μL)に溶解させた。粉末4Åモレキュラーシーブス(180mg)を加え、この混合物をアルゴン下、室温で30分間攪拌した。この溶液を−40℃まで冷却し、TBDMSOTf(CHCl中0.2M、33μL、0.0067mmol、0.2当量)を加えた。この反応物をこの温度で15分間攪拌した後、30分かけて−10℃まで昇温した。次に、この反応物をNEt溶液(CHCl中0.2M、66μL、0.013mmol、0.4当量)で急冷した。この溶液を濾過した後、そのままSephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:1)の上に適用した。十二糖を含有する画分をプールし、濃縮し、シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 80:20から50:50)により精製し、十二糖10(120mg、85%)を6mgの未反応アクセプター9(6%)とともに得た。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ = 7.36-7.03 (m, 67 H, Ph) , 6.76 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe) , 5.28-5.18 (m, 5H, H-1B, H-1D, H-1F, H-1H および H-1J) , 5.16 (s, 2H, CH2Ph(CbZ) ), 5.14 (d, J1,2 = 3.5 Hz, 1 H, H-1L) , 4.95-4.89 (m, 4 H, H-1C, H-1E, H-1G, H-1I, H-1kの4) , 4.88-4.75 (m, 10 H, H-1C, H-1E, H-1G, H-11, H-1K および H-2B, H- 2D, H-2F, H-2H, H-2J, H-2L and 4 x CH2Phの1) , 4.71 (d, J = 11.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.71 (br.s, 1 H, H-5L) , 4.71-4.58 (m, 19 H, 19 x CH2Ph) , 4.55-4.43 (m, 5 H, H-5B, H-5D, H-5F, H-5H および H-5J) , 4.41 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.37 (d, J = 11.0 Hz, 2 H, CH2PhOMe および H-6aA) , 4.35-4.24 (m, 5 H, H-6aC, H-6aE, H-6aG,H-6aK) , 4.14 (d, J1,2 = 8.0 Hz, 1H, H-1A) , 4.17-4.15 (m, 6 H, H- 6bA H-6bC, H-6bE, H-6bG, H-6bI and H-6bK) , 3.95-3.72 (m, 25 H, δ=3.73においてsを含む, H-4A, H-4F, H-4H, H-4J, H-4L, H-4K, H- 4D, H-D, H-3F, H-3H, H-3J, H-3L, H-4C, H-4E, H-4G, H-4I, H-a, H-5C, H-5E, H-5G, H-5I, H-5K および PhOMe) , 3.72 (br.s, 2 H, H-3B および H- 4B) , 3.66 (br t, J1,e = 7.5 Hz, 2 H, H-e) , 3.63-3.52 (m, 5 H, H- 3C, H-3E, H-3G, H-3I および H-3K) , 3.51 (s, 3 H, COOMe) , 3.47 (s, 9 H, 3x COOMe) , 3.46 (s, 3 H, COOMe) , 3.41 (s, 3 H, COOMe) , 3.43- 3.32 (m, 2 H, H-a' および H-5A) , 3.30 (dd, J2,3 = 9.5, J2,1 = 8.0 Hz, 1 H, H-2A) , 3.26-3.17 (m, 6 H, H-3A, H-2C, H-2E, H-2G, H-2I および H-2K) , 2.42 (s, 3 H, CH3 NAc) , 2.03 (s, 6 H, CH3 OAc) , 2.03 (s, 9 H, CH3OAc) , 1.98 (s, 3 H, CH3 OAc) , 1.96 (s, 6 H, CH3 OAc) , 1.95 (s, 12 H, CH3 OAc) , 1.59-1.48 (m, 2 H, H-b) , 1.47 (q, Jc,d = Jc,d = Je,d = 7.5 Hz, 2 H, H-d) , 1.34-1.22 (m, 2 H, H-c) .
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ = 170.6, 170.0, 169.7, 169.5 (C=O) , 137.9, 137.8, 137.6, 137.5, 137.4, 137.3 (C第4級芳香族) , 129.6, 129.0, 128.7, 128.6, 128.5, 128.4, 128.3, 128.2, 128.1, 128.0, 127.8, 127.6 (C芳香族) , 113.4 (Cm PMBn) , 102.1 (C-1A) , 98.0 (C-1L) , 97.8 (C-1B, C-1D, C-1F, C-1H, C-1J および C-1C 又は E または G または I または K, C-1E または G または I または K または C 、C-1C または I または K または C または E ,およびC-1 I または K または C または Eまたは C), 97.1(C-1K または C または E または G または I, 80.9 (C-3A) , 77.9, 77.8 (C-3C, C-3E, C-3G, C-3I および C- 3K) , 75.7, 75.6, 75.5, 75.3, 75.2 (C-3B, C-4B, C-4A, C-4C, C-4E, C-4G, C-41, C-3D, C-3F, C-3H, C-3J および C-4K) , 74.9, 74.8 ( 6x CH2Ph) , 74.1 (3x CH2Ph) , 74.0 (CH2Ph) , 73.7 (CH2Ph) , 73.4 (C-3L) , 73.1 (C-4D, C-4F, C-4H, C-4J および C-5A) , 72.7 (C-4L) , 72.6 (CH2 pMBn) , 71.3 (C-5J) , 71.2 (C-2B) , 70.6, 70.5, 70.4, 70.3, 70.1 (C- 5B, C-5D, C-5F, C-5H, C-2D, C-2F, C-2H および C-2J) , 70.0 (CH2-a) , 69.7 (C-5C, C-5E, C-5G, C-5I および C-5K) , 69.1 (C-5L) , 68.7 (C-2L) , 68.4 (CH2Ph Cbz) , 66.2 (C-2A) , 62.9, 62.8, 62.7 (C-2C, C-2E , C- 2G, C-2I および C-2K) , 62.2 (C-6A) , 61.6 (C-6C, C-6E, C-6G, C-6I および C-6K) , 55.3 (CH3, OMe pMBn) , 52.0 (4x CH3, COOMe) , 51.8 (2x CH3, COOMe) , 44.0 (CH2-e) , 29.0 (CH2-b) , 28.3 (CH2-d) , 26.9 (CH3, NAc) , 23.1 (CH2-C) , 20.9, 20.8, 20.7 (12x CH3, OAc) ;
2092391977Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:4269.5262、実測値:4269.5280。
【0158】
化合物17:5−アミノペンチル[(3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)]−(1→4)−O−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド七ナトリウム塩(HS4Bz)
【化51】

四糖5(29mg、0.017mmol)を、MeOH/CHCl(1mL/0.4mL)の混合物中、KCO(1.5mg、0.011mmol、0.625当量)とともに0℃で2時間攪拌した後、室温まで昇温した。この混合物をBioRad AG 50W−X8 200(H)樹脂で中和し、濾過し、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 70:30から20:80)により脱アセチル化化合物11a(18mg、71%)を3mgの化合物11b(13%、C758924Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:1494.58567、実測値:1494.58474)とともに得た。
次に、化合物11a(18mg、0.012mmol)をMeOH(324μL)に溶解させ、プロパン−1,3−ジチオール(24μL、0.24mmol、20当量)およびトリエチルアミン(33μL、0.24mmol、20当量)とともに15時間攪拌した。得られた混合物をSephadex LH−20クロマトグラフィー(0.1%のNEtを含むCHCl/MeOH、1:1)により2回精製し、13mgの13(75%、C759324Naに関するESI HR−MS m/z計算値[M+Na]:1442.60467、実測値:1442.60248)を得た。
ピリジン(320μL)中、13(11mg、7.75μmol)の溶液に、三酸化硫黄ピリジン複合体(74mg、0.46mmol、60当量)を加えた。この混合物を光から保護し、室温で24時間攪拌した後、55℃で20時間加熱した。次に、MeOH(140μL、0.124mmol)およびNEt(63μL、0.014mmol)を加えてこの反応物を急冷した。得られた混合物を室温で1時間攪拌し、Sephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:1)およびRP−18半分取HPLC(AcOHNEt 100mM、pH7.0/CHCN 70/30から58/42)により順次精製し、次いで、凍結乾燥によりAcOHNEt塩を除去した後(2×1mL HO)、BioRad AG50W−X8 200(Na、1mL)でイオン交換を行った。このようにして、六ナトリウム塩として化合物15(8mg、51%、C758742NaのESI MS:m/z(%)654.1(100)[M−3Na]3−/3、992.8(50)[M−2Na]2ー/2)を得た。
四糖15(6mg、2.9μmol)をLiOH(7mg、0.29mmol、52当量)、水(40μL)およびH(水中35%、43μL、0.49mmol)の混合物に溶解させた。37℃で24時間後、AcOH(6M、36μL、0.22mmol)を加え、この混合物をRP−18半分取HPLC(AcOHNEt 100mM、pH7.0/CHCN 75/25から60/40)のより精製し、次いで、凍結乾燥によりAcOHNEt塩を除去した後(2×1mL HO)、BioRad AG50W−X8 200(Na、1mL)でイオン交換を行った。このようにして、化合物17(3mg、50%)を八ナトリウム塩として得た。
1H NMR (400 MHz, D2O) δ = 7.60-7.24 (m, 22 H, Ph) , 6.93 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe), 5.37 (br. s, 1H, H-1B) , 5.29 (br. s, 1 H, H-1D) , 5.20 (d, J1, 2 = 3.0 Hz, 1 H, H-1C) , 4.77 (d, J = 12.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.75 (d, J1,2 = 6.5 Hz, 1 H, H-1A) , 4.68 (br. s, 1 H, H-5D) , 4.64 (d, J = 12.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.63 (d, J4,5 = 2.0 Hz, 1 H, H-5B) , 4.61 (d, J = 12.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.49 (d, J = 12.0 Hz, 2 H, CH2Ph) , 4.44 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.43 (br. s, 1 H, H-2D) , 4.41 (br. s, 1 H H-2B) , 4.40 (d, J = 11.0 Hz, 1 H, CH2PhOMe) , 4.36-4.24 (m, 4 H, H-6aA, H-6bA, H-6aC および H-6bC) , 4.19 (br. s, 1 H, H-3B) , 4.26 (br. s, 1 H, H-4B) , 4.22-4.13 (m, 1 H, H-5<C>) , 4.05 (t, J4, 5 = J4, 3 = 6.5 Hz, 1 H, H-4<A>) , 4.00 (m, 1 H, H-5A) , 3.97-3.75 (m, 9 H, δ=3.82においてsを含む, H-3D, H-a, H- 4C, H-4D, H-3A, PhOMe および H-3C) , 3.79 (t, J3,2 = J3,4 = 9.0 Hz, 1 H, H-3C) , 3.64 (m, 1 H, H-a' ) , 3.41 (dd, J2,3 = 10.0, J2,1 = 3.0 Hz, 1 H, H-2C) , 3.34 (t, J2,1 = J2,3 = 6.5 Hz, 1 H, H-2A) , 2.95 (br. t, Jd,e = 7.0 Hz, 2 H, H-e) , 1.67 (q, Ja,b = Jb,c = 7.0 Hz, 2 H,H-b) , 1.65 (q, Jc,d = Je,d = 7.0 Hz, 2 H, H-d) , 1.47 (m, 2 H, H-C) ;
13C NMR 1H-13C HSQC (100.6 MHz, D2O) δ = 101.7 (C-1A) , 98.5 (C-1C) , 97.8 (C-1B) , 97.6 (C-1D) , 79.4 (C-3A) , 77.5 (C-3C) , 75.5 (C-3B) , 75.2 (C-4B) , 74.2 (C-5A) , 73.9 (C-4C) , 73.7 (C-4D) , 73.6 (C-2B) , 73.5 (2x CH2Ph) , 73.0 (C-4A) , 72.4 (C-2D) , 72.1 (CH2 pMBn, 2x CH2Ph) , 71.4 (C-3D) , 70.2 (CH2-a) , 69.8 (C-5C) , 69.2 (C-5B) , 69.1 (C-5D) , 68.5 (C-6A) , 67.3 (C-6C) , 58.8 (C-2C) , 58.6 (C-2A) ,
657540NaのLC−ESI−TOF−MS(1913,1432): m/z計算値[M+Na]:1837.41(100)[M−8Na+7H+NEt]、1736.29(91)[M−8Na+7H]、1656.33(86)[M−8Na+7H−SO2−、1576.36(49)[M−8Na+7H−2SO3−
【0159】
化合物18:5−アミノペンチル[(3−O−ベンジル−4−O−(4−メトキシベンジル)−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(3−O−ベンジル−2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)]−(1→4)−O−3−O−ベンジル−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド24ナトリウム塩(HS12Bz)
【化52】

十二糖(dodecasasaccharide)11(90mg、21mol)を、MeOH/CHCl(6mL/3mL)の混合物中、KCO(4.6mg、0.033mmol)とともに0℃で2時間攪拌した後、室温まで昇温した。この混合物をBioRad AG 50W−X8 200(H)樹脂で中和し、濾過し、濃縮した。シリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(トルエン/AcOEt 70:30から20:80)により、脱アセチル化化合物12a(63mg、80%)を13mgの化合物12b(17%)とともに得た。
次に、十二糖12a(63mg、17μmol)を、MeOH(860μL)中、プロパン−1,3−ジチオール(210μL、2.1mmol、123当量)およびトリエチルアミン(290μL、2.1mmol、123当量)で処理した。この混合物を室温で42時間攪拌し、Sephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH 0.1%NEt 50:50)により精製し、十二糖14(52mg、86%)を得た。
ピリジン(1.8mL)中、14(52mg、14μmol)の溶液に、三酸化硫黄ピリジン複合体(208mg、1.31mmol、89当量)を加えた。この混合物を光から保護し、室温で16時間、次いで55℃で20時間攪拌した。次に、MeOH(800μL、20mmol)およびNEt(360μL、2.6mmol)を加えてこの反応物を急冷した。得られた混合物を室温で1時間攪拌した後、Sephadex LH−20クロマトグラフィー(CHCl/MeOH、1:1)により精製した。十二糖含有画分をプールし、濃縮した。HPLC分析は少量の脱−N−硫酸化化合物が生じたことを示したので、2mlの水中で三酸化硫黄ピリジン複合体(23mg、0.1mmol)および塩基としてKCO(41mg、0.3mmol)を用いて再−N−硫酸化を行った。次に、この混合物をそのまま、RP−18フラッシュクロマトグラフィー(AcOHNEt 100mM、pH7.0/CHCN 100:0から60:40)およびRP−C18半prep HPLC(AcOHNEt 100mM、pH7.0/CHCN)を用いて精製し、次いで、凍結乾燥によりAcOHNEt塩を除去した後(3×2mL HO)、BioRad AG50W−X8 200(Na、3mL)でイオン交換を行った。このようにして、化合物16(41mg、52%、C18320711818Na18のLC−ESI−TOF−MS(正確な質量=5379,3543):m/z(%):1830.09(13)[M−18Na+15H+5NEt3ー/3、1768.73(40)[M−18Na+15H+4NEt−SO3ー/3、1708.37(73)[M−18Na+15H+3NEt−2SO3ー/3、1681.71(93)[M−18Na+15H+3NEt−3SO3ー/3、1621.35(100)[M−18Na+15H+2NEt−4SO3−/3)を18ナトリウム塩として得た。
十二糖16(24mg、4.4μmol)をKOH水溶液(6M、480μL、3mmol)、水(192μL)およびH(水中35%、768μL、9mmol)中、37℃で24時間攪拌した。その後、メチルエステルの完全な鹸化が見られたが、Cbz基は部分的に加水分解されているに過ぎなかった。従って、KOH水溶液(6M、480μL、3mmol)およびH(水中35%、768μL、9mmol)を加え、この反応物を37℃でさらに24時間攪拌し、その後、Cbz基の加水分解が完了していた。AcOH水溶液(6M、720μL、4mmol)を加え、この混合物をRP−C18半分取HPLC(AcOHNEt 100mM、pH7.0/CHCN)を用いて精製し、次いで、凍結乾燥によりAcOHNEt塩を除去した後(3×2mL HO)、BioRad AG50W−X8 200(Na、1mL)でイオン交換を行った。このようにして化合物18(12mg、51%)を24ナトリウム塩として得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 50℃, ref CH3CN) これらのシグナルの一部だけが特定されたδ= 7.55-7.25 (m, 62 H, Ph), 7.93 (d, J = 8.0 Hz, 2 H, Ph-OMe), 6.94 (d, J = 8.5 Hz, 2 H, Ph-OMe), 5.60- 5.32 (m of br. s, 6H, H-1<B>, H-1<D>, H-1<F>, H-1<H>, H-1<J> and H-1<L>) , 5.32-5.18 (br. s, 5 H, H-C, H-1E, H-1G, H-IIおよび H-1Kのm) , 4.90-4.81 (m, CH2Ph), 4.81-4.71 (m, δ=4.77においてsを含む(J = 6.0 Hz, H-1A) CH2Ph および H-5B または D または F または H または J または L) , 4.71-4.65 (m, CH2Ph および 5xH-5B または D または F または H または J または L) , 4.46-4.36 (m, 6 H, H-2B, H-2D, H-2F, H-2H, H-2J および H-2L) , 4.35-4.27 (m, 6 H, 6 x H-6) , 4.27- 4.16 (m, 12 H, H-3B, H-3D, H-3F, H-3H, H-3J, H-3L, H-4B, H-4D, H- 4F, H-4H, H-4J および H-4L) , 3.87 (dt, Jgem = 10.0 Hz, J = 6.0 Hz, Ha) , 3.82 (s, 3 H, PhOMe) , 3.61 (dt, Jgem = 10.0 Hz, J = 6.0 Hz, Ha') , 3.48-3.33 (m, 6 H, H-2A, H-2C>, H-2E, H-2G, H-2I, H-2K) , 3.94 (t, J = 7.5 Hz, 2 H, H-e) , 1.73-1.57 (m, 4 H, H-d および H-b) , 1.46 (q, J = 7.5 Hz, 2 H, H-c) .
13C NMR 1H-13C HSQC (100.6 MHz, D2O, 50℃, ref CH3CN) δ = 114.8 (Cm PMBn) , 101.6 (C-1A) , 99.2-98.1 (C-1B, C-1C, C-1D, C-1E, C-1F, C-1G, C-1H, C-1I, C-1J, C-1K, C-1L) , 73.9 (C-2イズロン部分) , 69.9 (C-a) , 68.7 (C-6) , 58.7 (C-2C, C-2E, C-2G, C-2I, C-2K) , 55.2 (CH3 OMe pMBn), 40.2 (C-e) , 28.5 (C-b) , 26.9 (C-d) , 23.0 (C-c) .
16918311618Na24のESI MS(正確な質量=5293,1153): m/z 1756.03(14)[M−24Na+21H+5NEt3−/3 、1722.32(33)[M−24Na+21H+4NEt3−/3、1722.32(33)[M−24Na+21H+4NEt23−/3、1695.67(51)[M−24Na+21H+3NEt−SO3−/3、1635.3(100)[M−24Na+21H+3NEt−2SO3−/3
【0160】
化合物19:5−アミノペンチル[(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(1→4)−O−(2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)−(2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド)−(1→4)−O−(2−O−スルホナト−α−L−ヨードピラノシルウロネート)]−(1→4)−O−2−デオキシ−2−スルホアミノ−6−O−スルホナト−α−D−グルコピラノシド24ナトリウム塩(HS12Lb)
【化53】

リン酸バッファー(100mM、pH7.0、400μL)およびtert−ブタノール(200μL)中、十二糖18(5.5mg、9.4mol)の溶液に、Pd(OH)(木炭上20%、30mg)を加えた。この混合物を脱気し、二水素(1気圧)下で24時間攪拌した。室温で24時間後、Pd(OH)(木炭上20%、20mg)を追加し、この混合物を脱気し、水素(1気圧)下でさらに24時間攪拌した。この懸濁液をウルトラフリー−MCフィルター(Amicon)上で濾過し、触媒をリン酸バッファー(33mM、pH7.0)/tert−ブタノール(3/1、400μL)で2回、次いでCHCN/HO(1/1、400μL)で2回洗浄して木炭から化合物19を脱着させた。凍結乾燥後、得られた溶液をPD−10カラム(Pharmacia)で脱塩し、凍結乾燥し、4mgの19(98%)を得た。
1H NMR (400 MHz, D2O, 50℃ ref CH3CN) δ = 5.37 (br. s, 5 H, H- 1C, H-1E, H-1G, H-1I, H-1K) , 5.20 (br. s, 5 H, H-1B, H-1D, H-1F, H- 1H, H-1J) , 5.17 (br. s, 1 H, H-1L) , 4.80, 4.78 および4.72 (3 x br. s, H-5イズロン部分) , 4.55 (d, J1,2 = 8.0 Hz, H-1A) , 4.34-4.30 (m, H-2イズロン部分) , 4.30-4.28 (m, H-2イズロン部分) , 4.28-4.22 (m) , 4.22-4.14 (m, H-6b) , 4.14-3.94 (m, 11 H, H-4イズロン部分 ), R-5グルコサミン部分H-6b) , 3.90-3.82 (m, 1 H, H-a) , 3.80-3.59 (m, 13H, H-4グルコサミン部分, H-3グルコサミン部分, H-a’), 3.27(dd, J2,3 = 10.0 Hz, J2,1 = 3.0 Hz, 5 H, H-1C, H-1E, H-1G, H-1I, H-1K) , 3.05 (t, J2,1 = J2,3 = 8.0 Hz, H-2A) , 3.05 (t, J = 7.5 Hz, H-e) , 1.76- 1.56 (m, 4 H, H-d および H-b) , 1.53-1.43 (m, 2 H, H-c) .
13C NMR 1H-13C HSQC (100.6 MHz, D2O, 50℃, ref CH3CN) δ = 114.8 (Cm PMBn) , 101.7 (C-1A) , 100.3-98.0 (C-1B, C-1D, C-1F, C-1H, C-1J, C-1L) , 98.0-95.5 (C-1C, C-1E, C-1G, C-1I, C-1K) , 77.5-75.4 (C-4グルコサミン部分), 77.5-75.0(C-3イズロン部分およびC-4イズロン部分), 73.0(C-3A), 70.9-68.5(C-2イズロン部分, C-5イズロン部分, C-5グルコサミン部分, C-3グルコサミン部分), 69.9(C-a), 67.8-65.3(C-6グルコサミン部分), 60.2(C-2A), 58.1(C-2C, C-2E, C-2G, C-2I, C-2K), 39.7 (C-e) , 28.1 (C-b) , 26.2 (C-d) .
7712711518に関するESI MS m/z計算値[M−H]:3563.9204、実測値:3563.7568;3483.9287(−1SO3);3403.9897(−2SO3);3324.0291(−3SO3)。
【0161】
V.3.本発明の複合分子の化学合成
HPLCおよびLCMS条件:
カップリング反応のモニタリングおよび純度の測定は、Waters Symmetry 3.5μm C18 300Å(2.1×100mm)カラムを備えたAgilent 1100 HPLCにて、流速1ml/分で20分間にわたって10mM酢酸アンモニウムバッファー水溶液中、CHCNの直線勾配を用いて行った。検出:215/230nm。
LCMS分析は、Alliance HPLCと組み合わせたWaters Q−TOFmicro質量分析計にて、同じカラムおよび溶媒を用いて行った。リン酸イオンの注入を避けるため、LCMS装置は、精製工程後に生成物の属性を評価するためだけに用いた。データはネガティブモード(ES−)を用いて取得した。硫酸の損失を最小にするために、コーン電圧を低い値(10〜20V)に設定した(SO3、80質量単位)。オリゴ糖は、それらのmCD4複合体よりもMS硫酸損失を受けやすかった。
化合物の定量
最初のオリゴ糖および最終のmCD4複合体の量をHitachiL8800にてアミノ酸分析(AAA)により定量した。オリゴ糖の場合、ペプチド/タンパク質加水分解に用いる標準的な20時間、110℃、6N HCl、2%フェノールの条件の代わりに、16時間、95℃、6N HCl、2%フェノール加水分解を用いた。加水分解の際に生じたグルコサミンはPheの後に溶出した。
【0162】
SATP Bzl−四糖−SATP 20を介したオリゴ糖へのチオール基の導入
660μlの50mMリン酸ナトリウムバッファーpH8中、0.5mgのBzl−四糖17(MW:1914、8Na+;0.25μモル)に、15分かけて4×6μlのSATP/DMSO溶液(40mg/ml;MW:245;4×0.5μモル)を加えた。20分後、HPLCで追跡すると定量的カップリングが見られた。Bzl−四糖17 Rt=6.6分;S−アセチルチオプロピオネートBzl−四糖20 Rt=8.8(12から32%への勾配)。この混合物をC18 Sepakカートリッジにロードし、S−アセチルチオプロピオネートBzl−四糖20を6mlの20%CHCN/HOにより溶出させた。凍結乾燥後、LCMS分析により生成物を制御した。C708942のモノアイソトピック質量計算値[M−H]:1866.2892;実測値:1866.4692;1786.5131(−1SO);1706.5300(−2SO)。
【0163】
Bzl−十二糖−SATP 21
530μlの50mMリン酸ナトリウムバッファーpH8中、1.5mgのBzl−十二糖18(MW:5293、24Na+;0.29μモル)に、15分かけて4×6μlのSATP/DMSO溶液を加えた。20分後、HPLCで追跡すると定量的カップリングが見られた。Bzl−十二糖18 Rt=10.7分;S−アセチルチオプロピオネートBzl−十二糖21 Rt=12.5(5から25%への勾配)。生成物を、水溶出を用いたPD10ゲル濾過カラムにて精製した。S−アセチルチオプロピオネートBzl−十二糖21(MS注入により確認)を含有する最初の溶出画分をプールし、凍結乾燥した。生成物をLCMS分析により制御した。C17421311819のモノアイソトピック質量計算値[M−H]:4894.5501;実測値:4894.6836;4815.6084(−1SO);4734.5625(−2SO);4654.6660(−3SO);4575.6226(−4SO)。
【0164】
十二糖類−SATP 22
600μlの15mMリン酸ナトリウムバッファーpH8中、0.5mgの十二糖19(MW:4092、24Na+;0.12μモル)に、15分かけて4×6μlのSATP/DMSO溶液を加えた。215/230UV吸収が極めて低く、19がC18カラムに保持されないため、このカップリング反応はHPLCによりモニタリングされなかった。20分後、この混合物をそのままPD10カラムにロードした。上記と同じ精製プロトコールを行った。生成物はLCMS分析により制御した。完全な硫酸化(C8213317719)は検出されなかった。−1SO、−2SO、−3SOおよび−4SOおよび−5SO形態が検出された。C8213311418のモノアイソトピック質量計算値[M−H−1SO:3613.9724。実測値:3613.9536;3533.9170(−2SO);3454.0190(−3SO);3374.0474(−4SO);3294.1528(−5SO)。
【0165】
mCD4−PEO−マレイミドとのカップリング
mCD4−PEO−Bzl−四糖23(またはmCD4−HS4Bz)
ヒドロキシルアミンによる四糖−SATP 20チオールの脱保護およびmCD4−PEO−マレイミドへのカップリングを追跡するため、10mM酢酸アンモニウム中CHCN12−22%(10分)−82%(10分)の直線勾配を用いた。
500μlの50mMリン酸ナトリウムバッファーpH7.2、100μlの0.5M NHOH中Bzl−四糖SATP 20に、100mMリン酸ナトリウムバッファー中HCl(pHを4N NaOHにより7.2に調整)を加えた。チオール官能基の脱保護をHPLCによりモニタリングした。
10分後、11%のBzl−四糖SATP 20だけが残り(Rt=8.7分)、SH四糖に相当する新たな収穫(pick)が7.4分に現れた。
10分後に50μlのHO中mCD4−PEO−Mal(MW:3207;0.1μモル)を加えた後、5分後にもう一度同じ添加を行った。
20分後、遊離チオール四糖が全部消失した。mCD4−PEO−Bzl−四糖23に相当する新たな化合物が16分に現れた。この複合体を半分取RP−HPLCカラム(Macherey Nagel 5μmC18300A、10×250mm)にて、同じ勾配を用い、流速6ml/分で精製した。精製された生成物はLCMS分析により制御した。C204299437913の計算平均質量:5034.7185。実測値:5034.7002。
mCD4−PEO−Bzl−四糖23の最終純度(87%)はSymmetryカラムにて20から50への直線勾配を用いて評価した(Rt=11.06分)。
収量:AAAにより276μgと定量(17からすると24%)。
【0166】
mCD4−PEO−Bzl−十二糖24(またはmCD4−HS12Bz)
500μlの50mMリン酸ナトリウムバッファーpH7.2中、Bzl−十二糖類−SATP 21に、100μlの同じヒドロキシルアミン溶液を加えた。5から25%(20分)から85%(10分)の勾配を用いて脱保護およびカップリング反応を追跡した。20分後、Bzl−十二糖類−SATP 21(Rt=12.7分)が消失し、遊離チオールBzl−十二糖(Rt=11.9)が生じていた。mCD4−PEO−Bzl−十二糖24複合体を定量的に得るためには(Rt=24.8)、mCD4−PEO−Mal溶液(3×0.1mm)を3回連続して加えることが必要であった。この複合体を、5から25%(10分)から85%(20分)の勾配を用い、半分取RP−HPLCにより精製した。精製された生成物はLCMS分析により制御した。C3084234715525の計算平均質量:8065.6204。実測値:8065.1006;7985.6000(−1SO);7905.2002(−2SO)。
mCD4−PEO−Bzl−十二糖24複合体の最終純度(63%)はSymmetryカラムにて20から50への直線勾配を用いて評価した(Rt=9.37分)。
収量:AAAにより643μgと定量(18からすると28%)。
【0167】
mCD4−PEO−十二糖25(またはmCD4−HS12LbまたはmCD4−HS12
UV吸収が極めて低く、十二糖類−SATP 22がC18カラムに保持されないため、この脱保護工程はHPLCによりモニタリングできなかった。500μlの50mMリン酸ナトリウムバッファーpH7.2中の十二糖類−SATP 22に、150μlの同じヒドロキシルアミン溶液を加えた。20分後、この反応混合物に対して陽性エルマン試験を行ったところ、チオールの脱保護を示した。mCD4−PEO−Mal溶液を加えた(3×0.1μモル)。このカップリング反応のアリコートを注入したところ(10分)、20から50%への勾配で、mCD4−PEO−Mal(Rt=11.8)がいくらか残留するとともに、新たな生成物(Rt=8.4)が示された。この複合体を半分取RP−HPLCにより、mCD4−PEO−Bzl−十二糖24複合体の場合と同様の条件を用いて精製した。
精製された生成物はLCMS分析により制御した。C2163434715425の計算平均質量:6863.9738。実測値:6863.1001;6763.2000(−1SO);6703.5005(−2SO)。
mCD4−PEO−十二糖25複合体の最終純度(100%)はSymmetryカラムにて20から50への直線勾配を用いて評価した(Rt=8.37分)。
収量:AAAにより321μgと定量(19からすると39%)。
【0168】
実施例VI:生物活性
この節では、mCD4をミニCD4と呼ぶ。
VI.1.方法
X4型単離物(gp120 MN)およびR5型単離物(gp120 YU2)に起源する2つの異なるgp120を用いた。種々の分子の、gp120と種々の受容体または共受容体との相互作用を阻害する能力を、表面プラズモン共鳴(Biacore)により測定する。これを行うため、記載されている手順に従い(Vives et al. J. Biol. Chem. 279., 54327-54333, 2005)、バイオセンサー(センサーチップCM 4 Biacore)の表面に3種類の化合物を固定する。これらはCD4、HS(またはヘパリン)およびモノクローナル抗体(mAb 17b)である。この抗体はCD4により誘導されるエピトープを認識し、共受容体CCR5またはCXCR4を模倣する。これら3種類の表面は、gp120により認識される細胞表面の3つの主要な分子(CD4、共受容体およびHS)に相当する。
下記の実験セットにおいて、gp120(図4〜6の細線)単独で、または供試化合物とともにプレインキュベーションして(図4〜6の太線)これらの表面に注入し、相互作用シグナルを5分間、時間の関数として測定する。細線と太線の間の差は、gp120とバイオセンサーに固定化されている分子との間の相互作用に対する供試化合物の阻害能を示す。
【0169】
VI.2.結果
○mCD4、HS12Lb(分子19)およびmCD4−HS12Lb(分子25)分子の分析
・CD4表面へ(gp120および阻害剤100nM):
化合物HS12Lb単独ではgp120/CD4相互作用に対して効果が無く、これらの結果はここでは示さない。
【0170】
化合物mCD4−HS12LbがmCD4よりも強くgp120/CD4相互作用を阻害することを注記しておくが、これはgp120 X4およびR5に関してである(図4参照)。
・HS表面へ(gp120および阻害剤40nM)
【0171】
gp120 YU2はHSに極めて弱くしか結合しない(R5型gp120のセットの場合と同様)。従って、この表面で得られた結果は示さない。
【0172】
mCD4はgp120/HS相互作用に対して効果が無い。化合物HS12Lbは、用いた濃度条件では、相互作用を部分的に阻害する。互いに結合していないmCD4およびHL12Lbの混合物(mCD4+HS12Lb)も同じ活性を有する。他方、mCD4−HS12Lb複合体はこの相互作用を全面的に阻害し、複合体化に結びついた強力な協働効果を実証する(図5参照)。
【0173】
・mAb 17b表面へ(gp120および阻害剤40nM):
gp120は、mCD4の不在下では、抗体17bと極めてわずかしか結合しない(YU2)か、または全く結合しない(MN)(図6の細線)。mCD4の存在はこの反応を増強する(図6の上の図の太線)。他方、mCD4−HS12Lb化合物はその相互作用を全面的に阻害し(図6の下の図の太線)、これにより、図1に記載されている機構(mCD4によるCD4iエピトープの露出およびHS12Lb分子によるこの遮断)が確認される。
【0174】
mCD4とHS12Lbの間の共有結合の増強効果を実証するために以下の実験を行った。
【0175】
40nMのgp120(MNまたはYU2)を、漸増濃度(0〜80nM)の共有結合mCD4−HS12Lb(図7の白)または結合していないmCD4+HS12Lb(図7の黒)とともにプレインキュベーションした後、17b表面に注入する。注入の終了時に、抗体と結合したgp120の量を測定する。gp120は、CD4iがマスクされていない場合、すなわち、mCD4またはsCD4の存在下でのみ17bと結合することを思い出さなければならない。
【0176】
共有結合分子(mCD4−HS12Lb)はgp120−17bの相互作用を強く阻害するが、この2つの分子の混合物(mCD4+HS121B)は逆の効果を有する。すなわち、mCD4の効果が優勢(CD4i部位をマスクせず、従って、gp120が17bに結合する)、HS12LbBによる阻害は、MN型のgp120に関して高濃度でのみ現れ始める。YU2型のgp120では、YU2単独ではHSと全く結合しないか、または極めてわずかしか結合しないという所見(図7参照)と一致して、HS12Lbは阻害剤ではない。
【0177】
○mCD4と混合したペプチドGPR1、HS4Bz(17)、HS12Bz(18)、HS12Lb(19)分子と、mCD4−GPR1、mCD4−HS4Bz(23)、mCD4−HS12Bz(24)およびmCD4−HS12Lb(25)複合体の分析
上記のような、mCD4と結合している、または結合していない分子の阻害能の比較を、HS12Lb以外の分子に関して行った。これを次の分子について行った。
mCD4と混合した
1.ペプチドGPR1(配列番号4)、
2.オリゴ糖HS4Bz(17)、
3.オリゴ糖HS12Lb(18)、
4.オリゴ糖HS12Bz(19)、または
複合体
A.mCD4−GPR1、
B.mCD4−HS4Bz(23)、
C.mCD4−HS12Bz(24)、
D.mCD4−HS12Lb(25)。
【0178】
ペプチドGPR1は、Gタンパク質共役型受容体GPR1の細胞外N末端領域に由来する合成ペプチド(Jinno-Oue et al., J Biol chem. 2005 Sep 2;280(35):30924-34. Epub 2005 may 26)。本発明によるポリアニオン性多糖に比べ、それは有機分子として用いられる。ペプチドGPR1は配列番号3または配列番号4の配列を持ち得る。
【0179】
次の実験では、40nMのgp120を80nMのmCD4と80nMの上記の種々の分子、または80nMの対応する共有結合複合体とともに同時インキュベーションした。17bとの相互作用を測定する。Tは、gp120とmCD4単独の結合の測定値を表す。
【0180】
供試分子は、mCD4と結合していない場合には様々な程度の阻害能を有し(図8の黒)、一方、mCD4と共有結合している場合には(図8の白)、これらの分子は全て、この相互作用を極めて強く阻害することを注記しておく。
【0181】
VI.3.結論
上記の研究は、共受容体認識部位を認識することができる分子と共有結合されたmCD4からなるハイブリッド分子(またはgp120と結合し、その共受容体認識部位を露出させることができる他の分子)の阻害活性を実証する。
このハイブリッド分子の役割は、gp120と結合し、そのCD4i部位を露出させ(mCD4を介する)、共受容体との相互作用部位を遮断する(複合体を介する)ことである。
特に重要な点は、
・gp120とCD4、共受容体およびHSとの間の相互作用を、nM濃度範囲で同時に阻害すること、
・2つの分子の複合化により極めて高い協働作用が誘導されること、および
・X4およびR5型単離物に対する阻害活性
である。
【0182】
実施例VII.生物活性−補足実験
VII.1.親和性
本研究には次の文献に記載されている方法を用いた。
Vives R. R. et al. Journal of Biological Chemistry 2005, 280, 21353-21357 (Materials and methods - Surface Plasmon resonance-based binding assays参照)、および
Crublet E. et al. Journal of Biological Chemistry 2008, 283, 15193-15200 (Materials and methods - Surface Plasmon resonance-based binding assays参照)
【0183】
表5 MNおよびYU2 gp120に対するmCD4−HS12の結合および解離速度定数
【表5】

1:1ラングミュア結合モデルには利用不可
【0184】
MNおよびYU2 gp120に対するmCD4−HS12(25)の結合(kon)および解離(koff)速度定数(2回の独立した分析の平均)は、Biaeval 3.1ソフトウエアを用い、図9a、bの一次データを当てはめることにより求めた。単純な「1:1ラングミュア」結合モデルを用いたセンサーグラムの評価は、それぞれMNおよびYU2 gp120に対して3.7および2.7nMの親和性値(Kd=koff/kon)を返した。しかしながら、χパラメーター(当てはめの近接性を表す)により評価したところ、このモデルからのデータにはいくらかの偏差が見られた。mCD4−HS12の二価特性と一致して、この当てはめは「二価結合」モデル(この場合のχパラメーターは、従前のモデルの2.7および1.6ではなく0.8および0.4であった)を用いて改良された。従って、このモデルによれば、初期結合工程は示された結合(kon1)および解離(koff1)速度定数を特徴とし、MNでは10nM、YU2 gp120では7.2nMの解離平衡定数を生じた。これらの親和性は第二の結合工程によってさらに増強されるはずである。しかしながら、二価結合モデルでは、第二の結合部位に対する結合速度定数がRU−1−1であり(その反応が複合体(RU)とリガンド(これもまたRU)の結合を含む)、M−1ー1ではないために、ここではこれを定量することができない。しかしながらやはり、これらのデータは、mCD4−HS12がX4およびR5 gp120の双方と低nM範囲の親和性で結合することを示し、二価結合機構を示唆する(図9c〜d参照)。
【0185】
VII.2.抗ウイルス活性
VII.2.1.HIV−I−LAIおよびBaL株を用いた末梢血単核細胞の感染と阻害アッセイ
X4向性HIV−I−LAI(Barre-Sinoussi, Science 220, 868-71, 1983)またはR5向性HIV−1/Ba−L(Gartner et al, Science 233, 215-9, 1986)株を増幅し、in vitroにてフィトヘマグルチニン−P(PHA−P)活性化末梢血単核細胞(PBMC)に対して滴定した。組織培養感染用量を、Karberの式(Karber, Arch. Exp. Path. Pharmak. 162, 480-483, 1931)を用いて算出した。抗ウイルスアッセイとしては、PHA−P活性化PBMCを各薬剤6種類の濃度(1μM〜320pMの間で1:5希釈)で30分間前処理し、100 50%組織培養感染量(TCID50)のX4向性LAIまたはR5向性Ba−L株のいずれかで感染させた。培養中、薬剤を維持し、細胞上清を感染後7日目に回収し、−20℃で保存した。これらの実験で、アジドチミジン(AZT)を内部対照として用いた。ウイルス複製はRetroSys HIV RTキット(Innovagen)を用い、細胞培養上清において逆転写酵素(RT)活性を定量することにより測定した。
【0186】
並行して、サンプルの細胞傷害性を、7日目に感染していないPHA−P活性化PBMCでメチルテトラゾリウム塩(MTT)アッセイにより評価した。実験は3回行い、50、70および90%有効量ならびに細胞傷害量を、SoftMaxProソフトウエアを用いて算出した。
【0187】
表6.mCD4、HS12およびmCD4−HS12の抗ウイルス活性
【表6】

【0188】
PHA−P活性化PBMCを検討下の各薬剤で処理し(1μM〜320pMの間で1:5希釈)、100 TCID50のHIV−I−LAI(X4向性)または/Ba−L(R5向性)株で感染させた。培養中、分子およびウイルスを維持し、細胞上清を感染後7日目に回収し、それから逆転写酵素活性を定量した。実験は3回行い、50、70および90%有効量(ED)(nM)(±S.D.)を、SoftMaxProソフトウエアを用いて算出した。これらの分子に1μMまでの細胞傷害性を示したものはなかった。
【0189】
表7.mCD4−GPR1、mCD4−HS4Bzl、mCD4−HS12Bzlの抗ウイルス活性
【表7】

【0190】
VII.2.2.VSVに対する陰性対照−HIV偽型リポーターウイルスによる末梢血単核細胞の感染
VSV−G偽型ウイルス粒子を、HEK293T細胞において1回の感染サイクルにより作出し、プラスミドpNL4−3 env− Lucと水疱性口内炎ウイルス(VSV−G)由来エンベロープGタンパク質の発現を可能とするプラスミドで同時トランスフェクトした。pNL4−3 env− Lucプラスミドは感染性プロウイルスクローンHIV−I NL4−3に由来し、env遺伝子にそれを非感染性とするフレームシフトを有する。ホタルルシフェラーゼ(Luc)リポーター遺伝子がNL4−3 nef遺伝子に取って代わっている。感染性HIV−IプロウイルスクローンpNL4−3 Luc(J. Alcami博士から譲渡、Madrid Spain)は、対応するHIV nefをLuc遺伝子に置き換えることで作出されたものである。感染性ウイルス調製物は、これらの構築物をHEK293T細胞にトランスフェクトすることにより作出した。PBMCは健常な血液提供者から単離し、フィトヘマグルチニンおよびIL−2を48時間、吹き付けた(blasted)。ウイルス調製物をHeLaCD4+ CXCR4+ CCR5+細胞で滴定し、PBMC感染に用いるウイルス量を、細胞溶解液で測定されたLuc酵素活性に対してノーマライズした。感染2時間後(mCD4−HS12の存在下または不在下)、細胞を徹底的に洗浄し、さらに48時間マイクロプレートウェルに播種し(2×10細胞/ウェル)、その後、PBMC溶解液にて、LB 940 Berthold Mithras照度計装置(Berthold Technologies, Germany)を用いてLuc酵素活性を測定した。
【0191】
表8.NL4−3 HIV−1およびΔenv+VSVg−HIV−1に対するmCD4−HS12の抗ウイルス活性
【表8】

PBMCを10 RLUのNL4−3ウミシイタケ(Renilla)またはΔenv+VSVg−lucウイルスで感染させ、示された濃度のmCD4−HS12で処理して2日後にルシフェラーゼ活性(RLU×10−5)を測定した。
【0192】
VII.3.結論
このように本発明者らの研究は、小ヘパリンフラグメントまたはより一般にはポリアニオン性化合物に結合された3kDa CD4ミメティックを含んでなる比較的小さな合成分子は、mAbを認識するCD4および共受容体結合部位を含む、いくつかの大きなgp120リガンドを効果的に模倣する。このCD4ミメティックの、共受容体結合部位をHS介在遮断に利用可能とする能力に基づけば、これらの分子は、gp120上の2つの重要かつ保存性の高い構造を同時に標的とし、結果として、強い抗ウイルス活性を示す。顕著には、本発明に記載されている複合体はR5向性HIV−1およびX4向性HIV−1の双方を中和し、これは、CCR5特異的アンタゴニストの有効性は、阻害剤がまだ得られていないCXCR4を利用するウイルス株の出現により危うくなり得るので重要な利点である。
【0193】
ミニCD4配列内に存在する誘導体化の単一部位を有するミニCD4のデザインは、mCD4に基づく複合体の合成および生物活性に大きな改善をもたらす。
【0194】
略号:
Fmoc:9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
DMF:ジメチルホルムアミド
HATU:N[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ[4,5−b]ピリジン−1−イルメチレン]−N−メチルメタンアミニウムのヘキサフルオロホスフェートN−オキシド
DIEA:ジイソプロピルエチルアミン
SPDP:N−スクシンイミジル−3(2−ピリジルジチオ)プロピオネート
TFA:トリフルオロ酢酸
EDT:エタンジチオール
TIS:トリイソプロピルシラン
DTT:1,4−ジチオトレイトール
MPLC:中速液体クロマトグラフィー
ESMS:エレクトロスプレー質量分析、ポジティブモード
GSH:還元型グルタチオン
GSSG:参加型グルタチオン
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
RP−HPLC:逆相高速液体クロマトグラフィー
SMPH:スクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエートSATP:N−スクシンイミジル−S−アセチルチオプロプリオネート
RT:室温
Rt:保持時間
TMSOTf:トリメチルシリルトリフレート
TBDMSOTf:tert−ブチル−ジメチル−シリルトリフレート
Cbz:ベンジルオキシカルボニル
pMBn:p−メトキシベンジル
Bn:ベンジル
Ac:アセチル
Me:メチル
Et:エチル
eq:当量
NMR:核磁気共鳴
IR:赤外線
HSQC:ヘテロ核単一量子コヒーレンス
HRMS:高分解質量スペクトル
ESI:エレクトロスプレーイオン化
MALDI−TOF:マトリックス支援レーザー脱離/イオン化タイム・オブ・フライト
LC−ESI−TOF−MS:液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化タイム・オブ・フライト質量分析
LCMS:液体クロマトグラフィー/質量分析
DMSO:ジメチルスルホキシド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子であって、該ペプチドは、リンカーにより有機分子とカップリングされており、
該CD4受容体由来ペプチドは、以下の一般配列(I):
Xaa−P1−Lys−Cys−P2−Cys−P3−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaa−Xaa、(I)
を含んでなり、ここで、
P1は、3〜6個のアミノ酸残基を表し、
P2は、2〜4個のアミノ酸残基を表し、
P3は、6〜10個のアミノ酸残基を表し、
Xaaは、N−アセチルシステイン(Ac−Cys)またはチオプロピオン酸(TPA)を表し、
Xaaは、AlaまたはGlnを表し、
Xaaは、Glyまたは(D)AspまたはSerを表し、
Xaaは、SerまたはHisまたはAsnを表し、
Xaaは、ビフェニルアラニン(Bip)、フェニルアラニンまたは[β]−ナフチルアラニンを表し、
Xaaは、ThrまたはAlaを表し、
Xaaは、Gly、ValまたはLeuを表し、かつ、
Xaaは、−NHまたは−OHを表し、
P1、P2およびP3のアミノ酸残基は、天然または非天然型であり、同一または異なっており、P1、P2およびP3の該残基は、いずれもLys残基とは異なり、P1、P2およびP3は、共通のまたは共通でない配列を有し、
該有機分子は、以下の一般構造(II):
【化1】

を有し、ここで、
nは、0〜10の間の整数を表し、特に、nは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、有利には、nは0、1、2、3、4または5であり、
Xは、Na、K、LiもしくはMg2+などの無機対イオン、またはRNH、R(ここで、Rは互いに独立にアルキル基を表す)などの有機対イオンを表し、
mは、分子の負電荷の数を表し、
は、同一または異なる基であり、水素原子またはO−保護基GPを表し、
は、水素原子またはO−保護基GP’を表し、ここで、GPおよびGP’は同一または異なり、
は、同一または異なる基であり、水素原子、硫酸基、リン酸基または任意のアニオン基を表し、
は、同一または異なる基であり、水素原子、硫酸基、アルキル基またはアシル基を表し、
は、同一または異なる基であり、水素原子、アルキル基またはアシル基を表し、
Aは、式:−(CH−NH−CO−(CH−、−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−、−(CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−または−(CH−CH)−(O−CH−CH−NH−CO−(CH−CH−O)−(CH−CH)−の中から選択される基を表し、ここで、pは、1〜10の間の整数を表し、qは、1〜10の間の整数を表し、有利には、Aは、式−(CH−NH−CO−(CH−の基を表し、
Zは、ハロゲン原子、チオール基またはマレイミド基を表し、
該リンカーは、CD4受容体由来ペプチドの一般配列(I)中に存在するアミノ酸残基Lysの遊離アミノ基(−NH)とその末端の一方で共有結合され、有機分子のZ基とその他方の末端で共有結合されている、
複合分子。
【請求項2】
一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドの配列が、配列番号1および配列番号2の配列からなる群から選択される、請求項1に記載の複合分子。
【請求項3】
リンカーが、
【化2】

(kは2〜24の間の整数を表す)、
【化3】

(k1は1、2、3、5および10に相当する整数を表す)、
Zがチオール基を表す場合には、
【化4】

並びに、Zがマレイミド基またはハロゲン原子を表す場合には、
【化5】

からなる群から選択される、請求項1または2に記載の複合分子。
【請求項4】
基が、総て同一である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項5】
基が、水素原子、メチル基およびベンジル基からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項6】
が、水素原子およびp−メトキシベンジル基からなる群から選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項7】
以下の分子:
【化6】

【化7】

および
【化8】

から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項8】
CD4受容体由来ペプチドを含んでなる複合分子であって、該ペプチドは、リンカーにより有機分子とカップリングされており、
該CD4受容体由来ペプチドは、請求項1で定義された一般配列(I)を含んでなり、
該有機分子は、ヘパリンおよびヘパラン硫酸から選択されるポリアニオンを表し、ここで、ウロン酸部分は、グルクロン酸またはイズロン酸であり、重合度dpは2〜24であり、ポリアニオンの遊離ヒドロキシ基の本質的に総てがO−保護基GP”で置換され、これらのGP”基は同一または異なり、このポリアニオンは、ハロゲン原子、チオール基またはマレイミド基から選択される官能基を有するように修飾され、
該リンカーは、CD4受容体由来ペプチドの一般配列(I)中に存在するアミノ酸残基Lysの遊離アミノ基(−NH)とその末端の一方で共有結合され、有機分子の官能基とその他方の末端で共有結合されている、
複合分子。
【請求項9】
一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドの配列が、配列番号1および配列番号2の配列からなる群から選択される、請求項8に記載の複合分子。
【請求項10】
リンカーが、
【化9】

(kは2〜24の間の整数を表す)、
【化10】

(k1は1、2、3、5および10に相当する整数を表す)、
Zがチオール基を表す場合には、
【化11】

並びに、Zがマレイミド基またはハロゲン原子を表す場合には
【化12】

からなる群から選択される、請求項8または9に記載の複合分子。
【請求項11】
GP”基が、同一である、請求項8〜10のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項12】
GP”基が、メチル基またはベンジル基である、請求項11に記載の複合分子。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合分子。
【請求項14】
AIDSの処置のための、請求項13に記載の複合分子。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の複合分子と薬学上許容されるビヒクルとを含んでなる、医薬組成物。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の複合分子の製造方法であって、下記工程:
a.請求項1で定義された一般配列(I)のCD4受容体由来ペプチドと、2つの活性基を有する二官能性化合物とを、2つの活性基の一方が一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミノ基(−NH)と共有結合を形成するように接触させて、二官能性基の第二の活性基を有する活性化されたペプチドを得る工程、および
b.工程(a)で得られた活性化されたペプチドと、請求項1または8で定義された官能基を有する有機分子または請求項1または8で定義されたチオール基を有する有機分子に相当する有機分子(そのチオール基(SH)が保護チオール基により保護されている)とを、活性化されたペプチドの活性基が有機分子の保護されたまたは保護されていない官能基と共有結合を形成するように接触させて複合分子を得る工程
を含んでなることを特徴とする、方法。
【請求項17】
工程(a)において、一般配列(I)中に存在するアミノ酸Lysの残基の遊離アミノ基(−NH)と共有結合を形成する二官能性化合物の活性基が、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはN−ヒドロキシ−4−スルホ−スクシンイミドエステルである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
二官能性化合物の2つの活性基が異なり、その2つの基の一方が、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはN−ヒドロキシ−4−スルホ−スクシンイミドエステルである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
二官能性化合物が、スクシンイミジル−6−[β−マレイミドプロピオンアミド]ヘキサノエート(SMPH)およびNHS−PEO−マレイミド(nは2〜24の間である)からなる群から選択される、請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
CD4受容体由来ペプチドの配列(I)において、XaaがTPAを表す場合、以下の一般配列(III):
P1−Lys−Cys−P2−Cys−P3−Cys−Xaa−Xaa−Xaa−Xaa−Cys−Xaa−Cys−Xaa−Xaa、(III)
(ここで、P1〜P3およびXaa〜Xaaは一般配列(I)で定義された通りである)
のCD4受容体由来ペプチドと、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)とを接触させて、一般配列(III)のCD4受容体由来ペプチドのN末端にTPAを組み込むことからなる予備工程を含んでなる、請求項16〜19のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2011−511028(P2011−511028A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−545434(P2010−545434)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050892
【国際公開番号】WO2009/098147
【国際公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【出願人】(501173391)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【出願人】(510225292)コミサリア ア レネルジー アトミック エ オ ゼネルジー アルテルナティブ (97)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】Batiment Le Ponant D,25 rue Leblanc,F−75015 Paris, FRANCE
【出願人】(509003298)ユニヴェルシテ パリ−シュド 11 (6)
【出願人】(594016872)サントル、ナショナール、ド、ラ、ルシェルシュ、シアンティフィク、(セーエヌエルエス) (83)
【Fターム(参考)】