ＡＬＣコーナーパネル
【課題】 工場での成形が容易で搬送にも便利で、しかも建築現場での施工も簡単にでき、十分な強度を有するＡＬＣコーナーパネルを提供する。
【解決手段】 １対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該ＡＬＣパネルの裏面に所定の間隔をあけてシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成したＡＬＣコーナーパネル。
【解決手段】 １対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該ＡＬＣパネルの裏面に所定の間隔をあけてシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成したＡＬＣコーナーパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば建築物の外壁材などとして用いられるＡＬＣ（軽量気泡コンクリート）パネルに関し、さらに詳しくは、住宅等に用いられる薄型のＡＬＣパネルで、出隅部・入隅部に使用される断面の形状がＬ型をしたコーナーパネルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般にＡＬＣパネルは、けい石、生石灰、セメントなどの主成分と、発泡剤としてアルミ粉末を添加した原料スラリーを補強鉄筋を配置した型枠内に注入して、発泡・硬化させて半硬化状態となったＡＬＣブロックを型枠内から取り出し、所定の張力で緊張させたピアノ線等のワイヤカッターで所定の大きさのパネル状に切断して成形する。次いで、その切断された半硬化状体のＡＬＣパネルをオートクレーブで蒸気養生した後、適宜表面加工等を施して製品化される。また、建物の角部に使用されるコーナーパネルについては、Ｌ型に配置した補強鉄筋を内部に含む直方体のブロックを作成し、オートクレーブでの蒸気養生後、Ｌ型にくりぬいて製品化される。
【０００３】
通常、戸建の一般住宅に使用されるＡＬＣパネルは薄形パネルと呼ばれ、パネル厚さ５０ｍｍ以下のパネルを用いる場合が多く、この場合もコーナーパネルは直方体のブロックからくりぬいて製品化される。
しかし、このような方法で製作されるコーナーパネルは、内部鉄筋をＬ型に配置しなければならないため、専用の鉄筋製作の設備やセッティングの設備が必要となる上、くりぬきの部分でロスが発生する。
【０００４】
この不具合を解決するために、従来技術では通常の平型のパネル用の鉄筋をＬ型に曲げて鉄筋をコーナー用の鉄筋を製作する方法が開示されている。
しかし、それでも曲げる設備が必要であり、平型のパネル幅は６００ｍｍが上限であるため、コーナーパネルのサイズが３００×３００ｍｍが最大となる欠点があった。
また、内部くりぬきのロスを無くすためには、原料を流し込む型枠内にコーナーパネルのくりぬき部分をあらかじめ別の型枠としてセットし、半硬化状態の時にＬ型に製作するという方法がある。
しかし、くりぬき部分の型枠のセットで位置決めが困難であること、離型材の塗布が必要なこと、コーナーパネルのサイズによって多数の型枠が必要となることなどといった欠点があった。
【０００５】
また、２枚の平型のパネルを貼り合せて集成されたコーナーパネルといったものも存在する（例えば、特許文献１、特許文献２、特許文献３参照。）。
特許文献１に開示された技術は、２枚の平型パネルをＬ型金具を用いて接合する方法である。特許文献２に開示された技術は、特定の接着剤を用いて接合し、強度の向上を図ったものである。特許文献３に開示された技術は、２枚の平型パネルの小口面を凸状と凹状に加工し、２面の小口を嵌合させて接合するものである。
しかし、接合部分の強度が低いことによる取り付け上の不具合、運搬上の不具合が発生しやすく、またその対策として裏面に金物等による補強を行う場合は、コストアップになるといった欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開平０８−２７０１７７号公報
【特許文献２】特開２００１−２６２７７０号公報
【特許文献３】特開２０００−０３８８０２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは工場での成形が容易で搬送にも便利で、しかも建築現場での施工も簡単にでき、十分な強度を有するコーナーパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の目的を達成するために本発明によるＡＬＣコーナーパネルは、以下の構成としたものである。
即ち、本発明によるＡＬＣコーナーパネルは、１対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その溝の一方に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔をあけて並置し、パネルの裏面にシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成したＡＬＣコーナーパネルとした。
本発明のＡＬＣコーナーパネルは、出隅用あるいは入隅用のいずれにも適用できる。
また、前記裏面に貼り付けるシートは、防水シートもしくは透湿防水シートであることが好ましい。
【０００９】
本発明のＡＬＣコーナーパネルの施工方法は、上記の本発明のＡＬＣコーナーパネルを裏側に折りたたんで重ねた状態で搬送し、取付現場にて互いに直角方向になるように広げ、２枚のＡＬＣパネルの接合面を止水ガスケットで封止して、建物支柱の取付金物に固定した後、前記接合面の目地部にシーリング材を充填するＡＬＣコーナーパネルの施工方法を採用した。
【発明の効果】
【００１０】
ＡＬＣコーナーパネルを上記のように構成することにより、以下のような効果が期待できる。すなわち、ＡＬＣパネルの小口を４５度に斜め切断することにより建物の角部の意匠を損ねることがない。裏面に貼り付けたシートにより、現場で２枚のＡＬＣパネルを互いに直角方向に展開して容易にＬ型のコーナー部を構成することができ、２枚別々のパネルを現場で取り付けたときのように、取り付け誤差が大きくなる可能性を低くすることができる。
【００１１】
また、裏面のシートとして防水シートもしくは透湿防水シートを使用した場合には、コーナーパネルの頂点からの防水シーリングが切れた場合の水止め効果がある。コーナーパネルの小口面のガスケットは止水性能の向上とともに、表面からのシーリングのバックアップ材としての機能も持つ。２枚のＡＬＣパネルをたたんだ状態で運搬できるので、現場への輸送効率向上、破損率低下などの効果がある。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
図１及び図２は本発明のコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、図１は出隅用のコーナーパネルの場合を、図２は入隅用のコーナーパネルの場合を示す。 本発明のコーナーパネルは、先ず必要な大きさの方形のＡＬＣパネル１，１を２枚準備し、その互いに接合面となる小口面を４５度の角度に斜めに開削切断する。
開削切断とは、Ｌ字型のコーナーパネルに組み立てた際に接合面が隙間無く合わさるように切断することである。４５度の角度に斜めに開削切断すれば、９０度に曲がったコーナーパネルを容易に形成することができる。また、切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入しておく。
例えば、出隅用コーナーパネルの場合には、図１（ａ）に示すようにＡＬＣパネル１の一方の小口をパネルの表面１ａ側が長く、裏面１ｂ側が短くなるように２点鎖線に沿って斜め４５度に切断する。ＡＬＣパネル１の表面１ａの先端部には、目地部となるのり面１ｄを残しておくと施工時に綺麗に仕上げることができる。また、切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝１ｅを形成し、その一方の溝１ｅに止水ガスケットを挿入する。
また、入隅用コーナーパネルの場合には、図２（ａ）に示すようにＡＬＣパネル１の表面１ａ側が短く、裏面１ｂ側が長くなるように２点鎖線に沿って一方の小口を斜め４５度に切断する。
【００１３】
次いで、２枚のＡＬＣパネル１、１の裏面１ｂの端部を合わせて所定の間隔を保ち、裏面にシートを貼り付ける。
このとき、出隅用コーナーパネルの場合には、図１（ｂ）に示すように谷の部分に所定の厚さの仕切り板６ａを具備したＶ字型治具６の内側に、上記２枚のＡＬＣパネル１、１を挿入してＡＬＣパネルをＬ字型のコーナーパネルに仮組みした後、ＡＬＣパネル裏面に接着剤を使用してシート２を貼り付ける。仕切り板６ａの厚さは２枚のＡＬＣパネルの間隔と同じとする。すなわち２枚のＡＬＣパネル１，１を互いに９０度Ｌ字型に開いたときに、シーリング材を打設できる寸法である５〜１５ｍｍ程度の間隔を持たせるのが適当である。
【００１４】
ここで使用するシート２は、天然繊維あるいは合成繊維のものが使用でき、適当な強度を有するものであればよい。大きさは２枚のＡＬＣパネル全面を覆う大きさのものであればよい。また、このシートは防水シートもしくは透湿防水シートであることが好ましい。
このようなＶ字型治具を使用すれば、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔で正確に連結したコーナーパネルにすることができる。
連結した２枚のＡＬＣパネル１、１を図１（ｃ）に示すように裏側に９０度折り曲げてたためば出隅用コーナーパネル１０となり、施工現場まで容易に搬送することができ、破損の恐れも少なくなる。一方の接合面１ｃには溝１ｅ中に止水ガスケット３が挿入されている。
【００１５】
また、入隅用コーナーパネルの場合には、図２（ｂ）に示すように山の部分に所定の厚さの仕切り板７ａを具備したＶ字型治具７の外側に、上記２枚のＡＬＣパネル１、１をかぶせてＡＬＣパネルをＬ字型のコーナーパネルに仮組みした後、ＡＬＣパネル裏面に接着剤を使用してシート２を貼り付ける。
このようなＶ字型治具を使用すれば、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔で正確に連結した入隅用コーナーパネルとすることができる。
連結した２枚のＡＬＣパネル１、１を図２（ｃ）に示すように裏側に２７０度折り曲げてたためば出隅用コーナーパネル２０となり、施工現場まで容易に搬送することができ、破損の恐れも少なくなる。一方の接合面１ｃには溝１ｅ中に止水ガスケット３が挿入されている。
【００１６】
図３は、本発明の出隅用のＡＬＣコーナーパネルの外観斜視図である。本発明のコーナーパネル１０は図３のように折りたたむことができ、２枚のＡＬＣパネル１，１をシート２を挟んで表面１ａ，１ａを外側にして重ねた状態で保管、搬送することができる。
図中部品番号３は止水ガスケットを示す。止水ガスケット３は、ＡＬＣコーナーパネルを組み立てた際に、隙間に雨水が浸入しないように溝１ｅ，１ｅ中に嵌合させて接合する。
【００１７】
図４は、図３に示した本発明の出隅用のＡＬＣコーナーパネル１０を組み立てたときの外観斜視図である。２枚のＡＬＣパネル１、１をＬ字型に９０度に開いて接合面１ｃ、１ｃを合わせ、止水ガスケット３を溝に嵌合させてコーナーパネルを形成する。接合面の目地にはのり面１ｄ、１ｄが形成されているので、破損する心配もなく綺麗に仕上げることができる。なお、入隅用コーナーパネルの場合には２７０度開けばよい。
【００１８】
建築現場においては、図１（ｃ），図２（ｃ）に示した折りたたんだＡＬＣコーナーパネル１０，２０を、Ｌ字型に９０度あるいは２７０度に開き、建物柱４に取付金物（図示省略）を介して取り付ける。
図５は出隅用のＡＬＣコーナーパネル１０を取り付ける場合を示す外観斜視図である。取り付けはビス（図示省略）を用い、ＡＬＣコーナーパネル１０の頂点の目地部には、シーリング材５を打設し、防水施工を行う。
【００１９】
以上のように、本発明によれば、安価かつ容易に様々な寸法のＡＬＣコーナーパネルを製作することができ、保管、輸送に大きな利点が見られる。また、建築現場においても簡易に施工が可能で、防水性能も高いコーナーパネルを提供することができる。
【実施例１】
【００２０】
４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを接合する。
【００２１】
長さ１８２０ｍｍ、幅６０６ｍｍ、厚さ３７ｍｍのＡＬＣパネルから、長さ１８２０ｍｍ、幅２００ｍｍに２枚のパネルを切断した。切断したパネルの互いに接合面となる小口を表面から裏面に向けて４５度に斜めに切断した。切断面に露出した内部鉄筋には、錆止剤を塗布して防錆処理を施した。
次いで、開削切断した切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した。
切断した２枚のＡＬＣパネルをＶ字型の治具に載せて小口切断面を合わせ、その間隔が７ｍｍとなるように隙間を持たせ仮固定した。切断したＡＬＣパネルの裏面側に有機系接着剤を塗布し、幅３５０ｍｍ、長さ１８２０ｍｍに切断した透湿防水シートを貼り付け、Ｖ字型のおさえ板を載せ、接着剤とシートが貼り付くように固定した。接着剤が硬化した後、おさえ板を取り外し、Ｖ字型治具からＡＬＣパネルを取り外した。２枚のＡＬＣパネルは裏面のシートにより連結された状態になっている。その後、ＡＬＣパネルをシート面を内側にして折りたたみ、小口切断面に止水ガスケットを取り付けた。
【００２２】
上のように製作されたコーナーパネルを、折りたたんだ状態のまま建築現場に運搬し、現場にてＬ字型に広げた。広げられたＡＬＣコーナーパネルをビスにて建物の柱に取り付けられた取付金物に取り付けて固定した。その他の平パネル、サッシ等の工事終了と同時にコーキング材を充填しシーリングを施した。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、（ａ）は切断方法を、（ｂ）はＬ字型に組み立てる方法を、（ｃ）は折りたたんだ状態を示す。
【図２】本発明にかかる入隅用のＡＬＣコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、（ａ）は切断方法を、（ｂ）はＬ字型に組み立てる方法を、（ｃ）は折りたたんだ状態を示す。
【図３】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルの外観斜視図である。
【図４】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを組み立てたときの外観斜視図である。
【図５】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを柱に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【００２４】
１ ＡＬＣパネル
２ シート
３ 止水ガスケット
４ 柱
５ シーリング材
６、７ Ｖ字型治具
１０ 出隅用ＡＬＣコーナーパネル
２０ 入隅用ＡＬＣコーナーパネル
【技術分野】
【０００１】
本発明は、例えば建築物の外壁材などとして用いられるＡＬＣ（軽量気泡コンクリート）パネルに関し、さらに詳しくは、住宅等に用いられる薄型のＡＬＣパネルで、出隅部・入隅部に使用される断面の形状がＬ型をしたコーナーパネルに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
一般にＡＬＣパネルは、けい石、生石灰、セメントなどの主成分と、発泡剤としてアルミ粉末を添加した原料スラリーを補強鉄筋を配置した型枠内に注入して、発泡・硬化させて半硬化状態となったＡＬＣブロックを型枠内から取り出し、所定の張力で緊張させたピアノ線等のワイヤカッターで所定の大きさのパネル状に切断して成形する。次いで、その切断された半硬化状体のＡＬＣパネルをオートクレーブで蒸気養生した後、適宜表面加工等を施して製品化される。また、建物の角部に使用されるコーナーパネルについては、Ｌ型に配置した補強鉄筋を内部に含む直方体のブロックを作成し、オートクレーブでの蒸気養生後、Ｌ型にくりぬいて製品化される。
【０００３】
通常、戸建の一般住宅に使用されるＡＬＣパネルは薄形パネルと呼ばれ、パネル厚さ５０ｍｍ以下のパネルを用いる場合が多く、この場合もコーナーパネルは直方体のブロックからくりぬいて製品化される。
しかし、このような方法で製作されるコーナーパネルは、内部鉄筋をＬ型に配置しなければならないため、専用の鉄筋製作の設備やセッティングの設備が必要となる上、くりぬきの部分でロスが発生する。
【０００４】
この不具合を解決するために、従来技術では通常の平型のパネル用の鉄筋をＬ型に曲げて鉄筋をコーナー用の鉄筋を製作する方法が開示されている。
しかし、それでも曲げる設備が必要であり、平型のパネル幅は６００ｍｍが上限であるため、コーナーパネルのサイズが３００×３００ｍｍが最大となる欠点があった。
また、内部くりぬきのロスを無くすためには、原料を流し込む型枠内にコーナーパネルのくりぬき部分をあらかじめ別の型枠としてセットし、半硬化状態の時にＬ型に製作するという方法がある。
しかし、くりぬき部分の型枠のセットで位置決めが困難であること、離型材の塗布が必要なこと、コーナーパネルのサイズによって多数の型枠が必要となることなどといった欠点があった。
【０００５】
また、２枚の平型のパネルを貼り合せて集成されたコーナーパネルといったものも存在する（例えば、特許文献１、特許文献２、特許文献３参照。）。
特許文献１に開示された技術は、２枚の平型パネルをＬ型金具を用いて接合する方法である。特許文献２に開示された技術は、特定の接着剤を用いて接合し、強度の向上を図ったものである。特許文献３に開示された技術は、２枚の平型パネルの小口面を凸状と凹状に加工し、２面の小口を嵌合させて接合するものである。
しかし、接合部分の強度が低いことによる取り付け上の不具合、運搬上の不具合が発生しやすく、またその対策として裏面に金物等による補強を行う場合は、コストアップになるといった欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開平０８−２７０１７７号公報
【特許文献２】特開２００１−２６２７７０号公報
【特許文献３】特開２０００−０３８８０２号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は上記の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは工場での成形が容易で搬送にも便利で、しかも建築現場での施工も簡単にでき、十分な強度を有するコーナーパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記の目的を達成するために本発明によるＡＬＣコーナーパネルは、以下の構成としたものである。
即ち、本発明によるＡＬＣコーナーパネルは、１対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その溝の一方に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔をあけて並置し、パネルの裏面にシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成したＡＬＣコーナーパネルとした。
本発明のＡＬＣコーナーパネルは、出隅用あるいは入隅用のいずれにも適用できる。
また、前記裏面に貼り付けるシートは、防水シートもしくは透湿防水シートであることが好ましい。
【０００９】
本発明のＡＬＣコーナーパネルの施工方法は、上記の本発明のＡＬＣコーナーパネルを裏側に折りたたんで重ねた状態で搬送し、取付現場にて互いに直角方向になるように広げ、２枚のＡＬＣパネルの接合面を止水ガスケットで封止して、建物支柱の取付金物に固定した後、前記接合面の目地部にシーリング材を充填するＡＬＣコーナーパネルの施工方法を採用した。
【発明の効果】
【００１０】
ＡＬＣコーナーパネルを上記のように構成することにより、以下のような効果が期待できる。すなわち、ＡＬＣパネルの小口を４５度に斜め切断することにより建物の角部の意匠を損ねることがない。裏面に貼り付けたシートにより、現場で２枚のＡＬＣパネルを互いに直角方向に展開して容易にＬ型のコーナー部を構成することができ、２枚別々のパネルを現場で取り付けたときのように、取り付け誤差が大きくなる可能性を低くすることができる。
【００１１】
また、裏面のシートとして防水シートもしくは透湿防水シートを使用した場合には、コーナーパネルの頂点からの防水シーリングが切れた場合の水止め効果がある。コーナーパネルの小口面のガスケットは止水性能の向上とともに、表面からのシーリングのバックアップ材としての機能も持つ。２枚のＡＬＣパネルをたたんだ状態で運搬できるので、現場への輸送効率向上、破損率低下などの効果がある。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて具体的に説明する。
図１及び図２は本発明のコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、図１は出隅用のコーナーパネルの場合を、図２は入隅用のコーナーパネルの場合を示す。 本発明のコーナーパネルは、先ず必要な大きさの方形のＡＬＣパネル１，１を２枚準備し、その互いに接合面となる小口面を４５度の角度に斜めに開削切断する。
開削切断とは、Ｌ字型のコーナーパネルに組み立てた際に接合面が隙間無く合わさるように切断することである。４５度の角度に斜めに開削切断すれば、９０度に曲がったコーナーパネルを容易に形成することができる。また、切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入しておく。
例えば、出隅用コーナーパネルの場合には、図１（ａ）に示すようにＡＬＣパネル１の一方の小口をパネルの表面１ａ側が長く、裏面１ｂ側が短くなるように２点鎖線に沿って斜め４５度に切断する。ＡＬＣパネル１の表面１ａの先端部には、目地部となるのり面１ｄを残しておくと施工時に綺麗に仕上げることができる。また、切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝１ｅを形成し、その一方の溝１ｅに止水ガスケットを挿入する。
また、入隅用コーナーパネルの場合には、図２（ａ）に示すようにＡＬＣパネル１の表面１ａ側が短く、裏面１ｂ側が長くなるように２点鎖線に沿って一方の小口を斜め４５度に切断する。
【００１３】
次いで、２枚のＡＬＣパネル１、１の裏面１ｂの端部を合わせて所定の間隔を保ち、裏面にシートを貼り付ける。
このとき、出隅用コーナーパネルの場合には、図１（ｂ）に示すように谷の部分に所定の厚さの仕切り板６ａを具備したＶ字型治具６の内側に、上記２枚のＡＬＣパネル１、１を挿入してＡＬＣパネルをＬ字型のコーナーパネルに仮組みした後、ＡＬＣパネル裏面に接着剤を使用してシート２を貼り付ける。仕切り板６ａの厚さは２枚のＡＬＣパネルの間隔と同じとする。すなわち２枚のＡＬＣパネル１，１を互いに９０度Ｌ字型に開いたときに、シーリング材を打設できる寸法である５〜１５ｍｍ程度の間隔を持たせるのが適当である。
【００１４】
ここで使用するシート２は、天然繊維あるいは合成繊維のものが使用でき、適当な強度を有するものであればよい。大きさは２枚のＡＬＣパネル全面を覆う大きさのものであればよい。また、このシートは防水シートもしくは透湿防水シートであることが好ましい。
このようなＶ字型治具を使用すれば、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔で正確に連結したコーナーパネルにすることができる。
連結した２枚のＡＬＣパネル１、１を図１（ｃ）に示すように裏側に９０度折り曲げてたためば出隅用コーナーパネル１０となり、施工現場まで容易に搬送することができ、破損の恐れも少なくなる。一方の接合面１ｃには溝１ｅ中に止水ガスケット３が挿入されている。
【００１５】
また、入隅用コーナーパネルの場合には、図２（ｂ）に示すように山の部分に所定の厚さの仕切り板７ａを具備したＶ字型治具７の外側に、上記２枚のＡＬＣパネル１、１をかぶせてＡＬＣパネルをＬ字型のコーナーパネルに仮組みした後、ＡＬＣパネル裏面に接着剤を使用してシート２を貼り付ける。
このようなＶ字型治具を使用すれば、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔で正確に連結した入隅用コーナーパネルとすることができる。
連結した２枚のＡＬＣパネル１、１を図２（ｃ）に示すように裏側に２７０度折り曲げてたためば出隅用コーナーパネル２０となり、施工現場まで容易に搬送することができ、破損の恐れも少なくなる。一方の接合面１ｃには溝１ｅ中に止水ガスケット３が挿入されている。
【００１６】
図３は、本発明の出隅用のＡＬＣコーナーパネルの外観斜視図である。本発明のコーナーパネル１０は図３のように折りたたむことができ、２枚のＡＬＣパネル１，１をシート２を挟んで表面１ａ，１ａを外側にして重ねた状態で保管、搬送することができる。
図中部品番号３は止水ガスケットを示す。止水ガスケット３は、ＡＬＣコーナーパネルを組み立てた際に、隙間に雨水が浸入しないように溝１ｅ，１ｅ中に嵌合させて接合する。
【００１７】
図４は、図３に示した本発明の出隅用のＡＬＣコーナーパネル１０を組み立てたときの外観斜視図である。２枚のＡＬＣパネル１、１をＬ字型に９０度に開いて接合面１ｃ、１ｃを合わせ、止水ガスケット３を溝に嵌合させてコーナーパネルを形成する。接合面の目地にはのり面１ｄ、１ｄが形成されているので、破損する心配もなく綺麗に仕上げることができる。なお、入隅用コーナーパネルの場合には２７０度開けばよい。
【００１８】
建築現場においては、図１（ｃ），図２（ｃ）に示した折りたたんだＡＬＣコーナーパネル１０，２０を、Ｌ字型に９０度あるいは２７０度に開き、建物柱４に取付金物（図示省略）を介して取り付ける。
図５は出隅用のＡＬＣコーナーパネル１０を取り付ける場合を示す外観斜視図である。取り付けはビス（図示省略）を用い、ＡＬＣコーナーパネル１０の頂点の目地部には、シーリング材５を打設し、防水施工を行う。
【００１９】
以上のように、本発明によれば、安価かつ容易に様々な寸法のＡＬＣコーナーパネルを製作することができ、保管、輸送に大きな利点が見られる。また、建築現場においても簡易に施工が可能で、防水性能も高いコーナーパネルを提供することができる。
【実施例１】
【００２０】
４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを接合する。
【００２１】
長さ１８２０ｍｍ、幅６０６ｍｍ、厚さ３７ｍｍのＡＬＣパネルから、長さ１８２０ｍｍ、幅２００ｍｍに２枚のパネルを切断した。切断したパネルの互いに接合面となる小口を表面から裏面に向けて４５度に斜めに切断した。切断面に露出した内部鉄筋には、錆止剤を塗布して防錆処理を施した。
次いで、開削切断した切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した。
切断した２枚のＡＬＣパネルをＶ字型の治具に載せて小口切断面を合わせ、その間隔が７ｍｍとなるように隙間を持たせ仮固定した。切断したＡＬＣパネルの裏面側に有機系接着剤を塗布し、幅３５０ｍｍ、長さ１８２０ｍｍに切断した透湿防水シートを貼り付け、Ｖ字型のおさえ板を載せ、接着剤とシートが貼り付くように固定した。接着剤が硬化した後、おさえ板を取り外し、Ｖ字型治具からＡＬＣパネルを取り外した。２枚のＡＬＣパネルは裏面のシートにより連結された状態になっている。その後、ＡＬＣパネルをシート面を内側にして折りたたみ、小口切断面に止水ガスケットを取り付けた。
【００２２】
上のように製作されたコーナーパネルを、折りたたんだ状態のまま建築現場に運搬し、現場にてＬ字型に広げた。広げられたＡＬＣコーナーパネルをビスにて建物の柱に取り付けられた取付金物に取り付けて固定した。その他の平パネル、サッシ等の工事終了と同時にコーキング材を充填しシーリングを施した。
【図面の簡単な説明】
【００２３】
【図１】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、（ａ）は切断方法を、（ｂ）はＬ字型に組み立てる方法を、（ｃ）は折りたたんだ状態を示す。
【図２】本発明にかかる入隅用のＡＬＣコーナーパネルを形成する際の手順を説明する平面図であり、（ａ）は切断方法を、（ｂ）はＬ字型に組み立てる方法を、（ｃ）は折りたたんだ状態を示す。
【図３】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルの外観斜視図である。
【図４】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを組み立てたときの外観斜視図である。
【図５】本発明にかかる出隅用のＡＬＣコーナーパネルを柱に取り付けた状態を示す外観斜視図である。
【符号の説明】
【００２４】
１ ＡＬＣパネル
２ シート
３ 止水ガスケット
４ 柱
５ シーリング材
６、７ Ｖ字型治具
１０ 出隅用ＡＬＣコーナーパネル
２０ 入隅用ＡＬＣコーナーパネル
【特許請求の範囲】
【請求項１】
１対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔をあけて並置し、その裏面にシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成してなることを特徴とするＡＬＣコーナーパネル。
【請求項２】
前記開削切断が出隅用に切断されてなることを特徴とする請求項１に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項３】
前記開削切断が入隅用に切断されてなることを特徴とする請求項１に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項４】
前記シートが防水シートもしくは透湿防水シートであることを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項５】
請求項１ないし４のいずれか１項に記載のＡＬＣコーナーパネルを裏側に折りたたんで重ねた状態で搬送し、取付現場にて互いに直角方向になるように広げ、２枚のＡＬＣパネルの接合面を止水ガスケットで封止して、建物支柱の取付金物に固定した後、前記接合面の目地部にシーリング材を充填することを特徴とするＡＬＣコーナーパネルの施工方法。
【請求項１】
１対のＡＬＣパネルの互いに接合面となる小口を４５度の角度に開削切断し、該切断面のパネル表面側に沿ってガスケット挿入用の溝を形成し、その一方の溝に止水ガスケットを挿入した後、２枚のＡＬＣパネルを所定の間隔をあけて並置し、その裏面にシートを貼り付けて２枚のＡＬＣパネルを連結させて構成してなることを特徴とするＡＬＣコーナーパネル。
【請求項２】
前記開削切断が出隅用に切断されてなることを特徴とする請求項１に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項３】
前記開削切断が入隅用に切断されてなることを特徴とする請求項１に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項４】
前記シートが防水シートもしくは透湿防水シートであることを特徴とする請求項１から３のいずれか１項に記載のＡＬＣコーナーパネル。
【請求項５】
請求項１ないし４のいずれか１項に記載のＡＬＣコーナーパネルを裏側に折りたたんで重ねた状態で搬送し、取付現場にて互いに直角方向になるように広げ、２枚のＡＬＣパネルの接合面を止水ガスケットで封止して、建物支柱の取付金物に固定した後、前記接合面の目地部にシーリング材を充填することを特徴とするＡＬＣコーナーパネルの施工方法。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１１−１４９２３２（Ｐ２０１１−１４９２３２Ａ）
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１２６０１（Ｐ２０１０−１２６０１）
【出願日】平成２２年１月２２日（２０１０．１．２２）
【出願人】（３９９１１７７３０）住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年８月４日（２０１１．８．４）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年１月２２日（２０１０．１．２２）
【出願人】（３９９１１７７３０）住友金属鉱山シポレックス株式会社 (195)
【Ｆターム（参考）】
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