説明

AM/FMチューナ

【課題】AM受信中にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路のダイオードで歪んでAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止すること。
【解決手段】AM/FMチューナ1の入力端子1aに、AM帯域の放送信号を受信するAM放送信号受信回路2と、FM帯域の放送信号を受信するFM放送信号受信回路3とを並列に接続する。AM放送信号受信回路2の入力段にFM帯カットフィルタ5を設け、FM帯カットフィルタ5の出力端と高周波増幅回路6の入力端との間に静電破壊防止回路7を設ける。AM受信時にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路7で歪む前に、FM帯カットフィルタ5で減衰させてAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ素子に接続された共通の入力端子からAM放送信号及びFM放送信号を取り込んで受信するAM/FMチューナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チューナに搭載されたFET等の能動素子を、静電気(誘導雷又は人体に帯電した静電気等)による静電破壊から保護するために静電破壊防止回路が備えられている(例えば、特許文献1参照)。図2は特許文献1に記載されたテレビジョンチューナの静電破壊防止回路の構成図である。同図に示すように、アンテナに接続される入力端11にテレビジョン信号の最低周波数以上を通過するハイパスフィルタ12を介して全てのテレビジョン信号を増幅する低雑音の広帯域増幅器14を接続し、入力端11と広帯域増幅器14との間に静電放電素子13を備えている。ハイパスフィルタ12は、入力端11と広帯域増幅器14との間に直列に介挿された容量素子12bと、容量素子12bの入力端11側の一端をグランドにシャントする第一のインダクタンス素子12aと、容量素子12bの他端をグランドにシャントする第二のインダクタンス素子12cとを少なくとも有するπ型フィルタで構成し、入力端11と容量素子12bとの間の信号線路を静電放電素子13によってグランドに接続した構成となっている。
【0003】
以上の構成において、人体等に帯電した静電気や、誘導雷等の衝撃波が入力端11に印加された場合は、衝撃波を静電放電素子13によってグランドにバイパスしてそのレベルを下げることができる。
【0004】
図3は上記同様にチューナ入力段に静電破壊防止回路を設けたAM/FMチューナの構成図である。AM/FMチューナ20の入力端子20aに接続されたアンテナ21からAM放送信号及びFM放送信号が供給される。入力端子20aには、AM放送信号受信回路22及びFM放送信号受信回路23が並列に接続されている。AM放送信号受信回路22は、その入力段にFM帯域を減衰させるFM帯カットフィルタ24が設けられ、FM帯カットフィルタ24を通過したAM放送信号をFET等の能動素子からなる高周波増幅器25へ入力している。高周波増幅器25の出力信号を図示していない回路に入力して選局されたAM放送信号を受信する。
【0005】
静電対策用のダイオードで構成された静電破壊防止回路26は、入力端子20aの直後であってAM放送信号受信回路22及びFM放送信号受信回路23に分岐する手前に設けられている。これにより、人体等に帯電した静電気や誘導雷等の衝撃波が入力端子20aに印加された場合は、静電破壊防止回路26によってグランドにバイパスしてAM放送信号受信回路22及びFM放送信号受信回路23に突入する過大な衝撃波(直流)を抑制している。
【特許文献1】特開2002−246934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図3に示すAM/FMチューナのようにチューナ入力段に静電破壊防止回路26を設けた場合、AM受信中にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路26で歪んでAM帯域に妨害波として混入する可能性がある。FM強入力2波の周波数差がAM帯域となる場合は、両者の差の周波数成分がAM帯域に妨害波として混入するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、AM受信中にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路のダイオードで歪んでAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止でき、静電対策用の部品点数を増やすことなく、静電対策と妨害波対策を同時に実現できるAM/FMチューナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のAM/FMチューナは、AM放送信号及びFM放送信号が入力される入力端子と、前記入力端子に接続されAM放送信号を受信する第一の受信回路と、前記入力端子に接続されFM放送信号を受信する第二の受信回路と、前記第一の受信回路に設けられFM帯域を減衰させるフィルタと、前記フィルタの後段に設けられ能動素子を搭載した高周波回路と、前記フィルタと前記高周波回路との間の線路とグラウンドとの間に設けられた静電対策用のダイオードとを具備したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、FM帯域を減衰させるフィルタと高周波回路との間の線路とグラウンドとの間に静電対策用のダイオードを設けたので、第一の受信回路に入力したFM放送信号は静電対策用のダイオードに至る手前でフィルタで減衰される。したがって、AM受信時にFM帯域の強入力2波が静電対策用のダイオードで歪んでAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止することができる。
【0010】
上記AM/FMチューナにおいて、前記フィルタは、AM帯域を通過帯域とすると共にFM帯域を阻止帯域としたローパスフィルタ又はトラップフィルタで構成することができる。
【0011】
また、上記AM/FMチューナにおいて、前記高周波回路は、増幅回路であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、AM受信中にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路のダイオードで歪んでAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止でき、静電対策用の部品点数を増やすことなく、静電対策と妨害波対策を同時に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るAM/FMチューナの構成図である。
本実施の形態に係るAM/FMチューナ1は、AM帯域の放送信号を受信するAM放送信号受信回路2と、FM帯域の放送信号を受信するFM放送信号受信回路3とを備えている。AM/FMチューナ1の入力端子1aにはアンテナ4が接続されており、当該入力端子1aにAM放送信号及びFM放送信号が共に供給される。AM放送信号受信回路2は、入力端子1aから入力する放送信号のうちFM帯域をカットしてAM帯域の放送信号を取り出すFM帯カットフィルタ5を備える。FM帯カットフィルタ5は、AM帯域を通過帯域とすると共にFM帯域を阻止帯域とする周波数特性を有するローパスフィルタ又はトラップフィルタで構成することができる。FM帯カットフィルタ5の出力端には、FETで構成される高周波増幅回路6の入力端が接続されている。高周波増幅回路6のFETに静電気による衝撃波が印加されると静電破壊を起こす可能性があるため、高周波増幅回路6の前段(入力端子1a寄り)に静電破壊防止回路7を設ける必要がある。
【0014】
本実施の形態は、FM帯カットフィルタ5の出力端と高周波増幅回路6の入力端との間に静電破壊防止回路7を設けた構成としている。静電破壊防止回路7は、逆並列に接続された一対の静電対策用ダイオード7a,7bで構成されており、FM帯カットフィルタ5の出力端とグラウンドとの間に設けられている。
【0015】
FM放送信号受信回路3は、AM/FMチューナ1の入力端子1aに対してAM放送信号受信回路2と並列に接続されている。FM放送信号受信回路3は、図示していない集積回路の前段にトランス等の受動素子で構成された受動回路が設けられている。後述するように、AM/FMチューナ1の入力端子1aに印加された静電気は、主にFM帯カットフィルタ5及び静電破壊防止回路7を経由してグラウンドに流れるが、FM放送信号受信回路3に静電気の一部が流れ込んだとしても集積回路の手前で受動素子を介してグラウンドに流れることとなる。
【0016】
次に、以上のように構成された本実施の形態の動作について説明する。
AM/FMチューナ1の入力端子1aに誘導雷又は人体に帯電した静電気等による過大な信号が印加されたものとする。誘導雷又は人体に帯電した静電気等により生じる過大な信号はFM帯域に比べて低周波数である。このため、入力端子1aに誘導雷又は人体に帯電した静電気等による過大な信号が印加された場合、FM帯カットフィルタ5の出力端をグラウンドに接続している静電破壊防止回路7に流れ込むことになる。過大信号が正電圧であれば、一方の静電対策用ダイオード7aがオンして過大信号がグラウンドに放出される。また、過大信号が負電圧であれば、他方の静電対策用ダイオード7bがオンして過大信号がグラウンドに放出される。したがって、AM放送信号受信回路2に搭載された能動素子である高周波増幅回路6が静電気により破壊されるのを防止できる。
【0017】
本実施の形態では、静電破壊防止回路7がAM放送信号受信回路2及びFM放送信号受信回路3の双方の入力段ではなく、AM放送信号受信回路2内のFM帯カットフィルタ5の出力端に接続されている。しかしながら、静電破壊防止回路7はFM放送信号受信回路3に対する静電対策回路としても機能している。上述したように、誘導雷又は人体に帯電した静電気等により生じる過大な信号はFM帯域に比べて低周波数であるので、入力端子1aに印加される静電気などによる過大信号は主にFM帯カットフィルタ5及び静電破壊防止回路7を介してグラウンドに流れ、FM放送信号受信回路3へ流れ込む信号は大幅に低減されている。しかも、FM放送信号受信回路3において静電気等に弱い集積回路の前段にグラウンドに接続されたトランス等の受動素子が配置されるので、FM放送信号受信回路3に通常の信号レベルよりも高い信号が流れ込んだとしても、集積回路の前段でグラウンドに放出されることとなり、集積回路自体は静電気から確実に保護される。
【0018】
一方、AM放送信号受信回路2でAM受信時に、入力端子1aに対してFM帯域の強入力2波が入力した場合、AM放送信号受信回路2及びFM放送信号受信回路3へ並列に入力される。特に、AM放送信号受信回路2では静電破壊防止回路7に到達する前にFM帯カットフィルタ5でFM放送信号が減衰されてしまう。したがって、AM受信時にFM帯域の強入力2波が入力端子1aに印加されたとしても、静電破壊防止回路7に到達する前に減衰されるので、静電破壊防止回路7で歪んでAM帯域に妨害波が混入する不具合を防止することができる。
【0019】
以上のように本実施の形態によれば、AM放送信号受信回路2のFM帯カットフィルタ5の出力端と高周波増幅回路6の入力端との間に静電破壊防止回路7を設けたので、AM受信時にFM帯域の強入力2波が静電破壊防止回路7で歪んでAM帯域に妨害波として混入する不具合を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、AM放送信号及びFM放送信号が印加されると共に受信回路に対する静電対策が施されたAM/FMチューナに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るAM/FMチューナの構成図
【図2】従来の静電対策が施されたテレビジョンチューナの構成図
【図3】従来の静電対策が施されたAM/FMチューナの構成図
【符号の説明】
【0022】
1…AM/FMチューナ
1a…入力端子
2…AM放送信号受信回路
3…FM放送信号受信回路
4…アンテナ
5…FM帯カットフィルタ
6…高周波増幅回路
7…静電破壊防止回路
7a,7b…静電対策用ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
AM放送信号及びFM放送信号が入力される入力端子と、
前記入力端子に接続されAM放送信号を受信する第一の受信回路と、
前記入力端子に接続されFM放送信号を受信する第二の受信回路と、
前記第一の受信回路に設けられFM帯域を減衰させるフィルタと、
前記フィルタの後段に設けられ能動素子を搭載した高周波回路と、
前記フィルタと前記高周波回路との間の線路とグラウンドとの間に設けられた静電対策用のダイオードと、
を具備したことを特徴とするAM/FMチューナ。
【請求項2】
前記フィルタは、AM帯域を通過帯域とすると共にFM帯域を阻止帯域としたローパスフィルタ又はトラップフィルタであることを特徴とする請求項1記載のAM/FMチューナ。
【請求項3】
前記高周波回路は、増幅回路であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のAM/FMチューナ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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