説明

ATM装置および優先制御方法

【課題】保守運用のための制御チャネルの帯域でユーザ回線の一部を占有することなく、かつ確実に制御情報を伝送することが可能なATM装置を提供する。
【解決手段】ATM装置は、インチャネル制御を行うATM装置において、ATM送信部は、ATMセルを生成するATMセル生成部と、ATMセルのペイロードが制御情報の場合にはヘッダの所定位置に設けたセル廃棄ビットを廃棄不可に設定し、ATMセルのペイロードがユーザ情報の場合には前記セル廃棄ビットを廃棄可に設定するセル廃棄ビット設定部とを備え、ATM受信部は、ヘッダの前記セル廃棄ビットの廃棄の可否を判別する廃棄セル判別部と、前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄不可の場合は当該ATMセルを廃棄せずに透過し、前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄可の場合は当該ATMセルを廃棄するポリシング部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ATM装置における優先制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像,音声,データなど多様な情報の高速通信を実現するATM(非同期伝送モード)が通信インフラとして普及している。ATMは、送信側のATM装置で送信情報をセルと呼ばれる情報単位に分割して伝送し、受信側のATM装置で分割して送られてきたセルを元の情報に組み立てる伝送方式である。ATMで用いられるセルは、制御情報を含む5バイトのヘッダ部分と、48バイトのペイロード部分とで構成される。尚、1バイトは8ビット(1オクテット)である。
【0003】
ATM装置は、ATMセルのヘッダを見て宛先を判断し、宛先のATM装置に転送する。ATMセルのヘッダは、UNI(ユーザ網インターフェース)の場合、GFC(一般的フロー制御)、VPI(仮想パス識別子)、VCI(仮想チャネル識別子)、PT(ペイロードタイプ)、CLP(セル損失優先表示)、HEC(ヘッダ誤り制御)で構成される。ATMでは、回線に相当する複数の仮想チャネルVCが多重化されて仮想パスVPを構成している。ここで、VPIおよびVCIは個々のVPおよびVCを識別する識別番号である。また、PTはペイロード部分の情報がユーザ情報なのか保守運用のための制御情報なのかなどを識別するために用いられる。
【0004】
また、ATMの基本的なレイヤ構造は、下層から順に、伝送媒体に応じて信号を変換する物理レイヤ,ルーティングを行うATMレイヤ,サービスクラスに応じた制御を行うAAL(ATMアダプテーションレイヤ)、およびアプリケーションを提供する上位レイヤで構成される。特に、ATMレイヤでは、VPIやVCIの識別番号を識別し、その識別番号に応じてATMセルのルーティングが行われる。
【0005】
このようにして、ATMは、伝送する情報を53バイトの固定長のATMセルに分解して伝送することにより、画像,音声,データなど多様なユーザ情報や制御情報の高速通信を実現している。ところが、ATMセルの集中によりトラフィックが増加すると情報の伝達に遅延が生じるという問題がある。そこで、重要な情報を優先して伝送するための優先制御技術が検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
一方、ユーザが構築するATM通信システム内の複数のATM装置の保守運用は、制御用端末が接続されたATM装置から遠隔制御で行われる。例えば、対向するATM装置間でATM通信の運用を開始する時には、保守運用者が該当する回線の帯域使用量を決めて任意に回線帯域を設定する。そして、運用開始後は、保守運用者が制御用端末から遠隔制御によって、その都度、回線帯域などの設定変更を行う。この場合、制御端末が接続されたATM装置と保守運用するATM装置との間で制御情報を送受信する必要があり、ユーザが使っている回線の一部を利用するインチャンネル帯域を使用することが多い。例えば、64kbpsの制御チャネルを予めユーザ回線の一部に確保しておき、この制御チャネルを用いて制御情報を送受信する。このようにして、ユーザが構築するATM通信システム内の複数のATM装置の保守運用が行われている。
【特許文献1】特許第2735061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記従来技術では、ATMセルを一時的に保持するバッファを優先順位毎に設ける必要があるので、バッファの容量が増え、コストが高くなるという問題がある。また、複数のバッファに振り分ける仕組みが新たに必要となり、装置の構成が複雑になるという問題がある。さらに、インチャネルで制御情報を送受信する場合、予めユーザ回線の一部に保守運用のための制御チャネルの帯域を確保しておく必要があるため、その分だけユーザが使用できない帯域が増え、伝送効率が低下してしまうという問題がある。特に、インチャネル使用時に、帯域をフルに使用するセル流量が対向先のATM装置から流れ込んできた場合、受信側ATM装置のポリシングで溢れたATMセルが廃棄されてしまう。例えば、インチャネルで送られてきた制御情報を含むATMセルが廃棄された場合は、当該ATM装置に対して制御できない状況が生じてしまうという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、インチャネル制御を行うATM装置において、保守運用のための制御チャネルの帯域でユーザ回線の一部を占有することなく、且つ確実に制御情報を伝送することが可能なATM装置および優先制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るATM装置は、インチャネル制御を行うATM装置において、ATMセルを生成するATMセル生成部と、ATMセルのペイロードが制御情報の場合にはヘッダの所定位置に設けたセル廃棄ビットを廃棄不可に設定し、ATMセルのペイロードがユーザ情報の場合には前記セル廃棄ビットを廃棄可に設定するセル廃棄ビット設定部とを有するATM送信部と、ヘッダの前記セル廃棄ビットの廃棄の可否を判別する廃棄セル判別部と、前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄不可の場合は当該ATMセルを廃棄せずに透過し、前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄可の場合は当該ATMセルを廃棄するポリシング部とを有するATM受信部とで構成されることを特徴とする。
【0010】
また、好ましくは、前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVCI(仮想チャネル識別子)の最上位ビットであることを特徴とする。
【0011】
また、好ましくは、前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVPI(仮想パス識別子)の最上位ビットであることを特徴とする。
【0012】
また、好ましくは、前記セル廃棄ビット設定部は、前記ATMセルのPT(ペイロードタイプ)が111(二進数)の場合に前記セル廃棄ビットを廃棄不可に設定することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る優先制御方法は、インチャネル制御を行うATM装置における優先制御方法であって、ATM送信部で生成されるATMセルのペイロードが制御情報の場合にはヘッダの所定位置に設けたセル廃棄ビットを廃棄不可に設定し、ATMセルのペイロードがユーザ情報の場合には前記セル廃棄ビットを廃棄可に設定して送信し、ATM受信部で受信されるATMセルのヘッダの前記セル廃棄ビットの廃棄の可否を判別して、該判別結果が廃棄不可の場合は当該ATMセルを廃棄せずに透過し、該判別結果が廃棄可の場合は当該ATMセルを廃棄することを特徴とする。
【0014】
また、好ましくは、前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVCI(仮想チャネル識別子)の最上位ビットであることを特徴とする。
【0015】
また、好ましくは、前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVPI(仮想パス識別子)の最上位ビットであることを特徴とする。
【0016】
また、好ましくは、前記ATMセルのPT(ペイロードタイプ)が111(二進数)の場合に前記セル廃棄ビットを廃棄不可に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るATM装置および優先制御方法は、ATMセルのヘッダ部分にセル廃棄ビットを設け、ATMセルで制御情報を伝送しない場合はセル廃棄ビットを廃棄可としてユーザ情報を伝送し、制御情報を伝送する場合は廃棄不可とするので、ユーザ回線の一部を保守運用のために占有することなく、且つ確実に制御情報を伝送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係るATM装置および優先制御方法の実施形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0019】
図1は、本実施形態に係るATM装置を用いたATM通信システムの構成を示す図である。本実施形態のATM装置は、ATM網101に接続するユーザ側で閉じたユーザ通信網で用いる。例えば、図1の場合はユーザ通信網102やユーザ通信網103で閉じた通信網で使用し、ATM網101を介して接続されるユーザ通信網102とユーザ通信網103との間では基本的には用いない。
【0020】
本実施形態では、ユーザ通信網102内で相互に接続されているATM装置104,ATM装置105,ATM装置106について説明する。
【0021】
図2は、ユーザ通信網102内での接続構成を示す図である。ユーザ通信網102内では、ATM装置104,ATM装置105,ATM装置106がそれぞれ接続されてユーザ網内で閉じたATM通信網を構成している。例えば、ATM装置104とATM装置105とは、10Mbpsのユーザ帯域201で相互に接続されており、ユーザ帯域201の中の64kbpsのインチャネル帯域202を用いて制御情報を伝送する。本実施形態では、ATM装置105にLAN204で接続された制御用端末203から、ユーザ帯域201内のインチャネル帯域202を用いて制御情報を伝送し、ATM装置104を遠隔制御する場合について説明する。
【0022】
図3は、ATM装置105の構成を示すブロック図である。図3において、ATM装置105は、制御部301と、ポリシング部302と、セル変換部303部とで構成される。尚、図3では、本実施形態に係るATM装置を実現するための必要最小限の構成のみを描いてあり、電源や物理層のインターフェースやLANインターフェースおよびATMセルの通信回路などは省略してある。
【0023】
図3において、制御用端末203は、LAN204でATM装置105の制御部301に接続され、ユーザ通信網102に接続される他のATM装置の遠隔制御を行う。制御部301は、電文作成部304と、低優先セル設定部305とを有する。尚、制御部301は、ATM装置105の全体の通信制御なども行うが、図3では、本実施形態に必要な電文作成部304と低優先セル設定部305の処理のみ描いてある。
【0024】
電文作成部304は、制御用端末203からの指令に応じて制御情報の電文を作成する。電文作成部304で作成された制御情報は、セル変換部303でインチャネルのATMセルに変換され、遠隔制御先のATM装置104に伝送される。
【0025】
低優先セル設定部305は、制御用端末203からの指令に応じて、低優先セルの指定を行う。本実施形態において、低優先セルとは、画像データなどデータが抜けても影響が少ないATMセルのことで、低優先セルを伝送するATMセルを予め指定しておく。尚、電源投入時のデフォルト値は予め決められているものとする。
【0026】
ここで、ATMセルの構成について、図4および図5を用いて詳しく説明する。図4において、ATMセルは53バイトの情報で構成され、5バイトのヘッダ部分と、48バイトのペイロード部分とを有する。ヘッダ部分はATMセルを伝送するためのルーティング情報などで構成され、ペイロード部分にはユーザ情報や制御情報が載せられる。
【0027】
図5は、ヘッダ部分の構成を示す図である。5バイトのヘッダ部分は、フロー制御用のGFC、仮想パス識別子を示すVPI、仮想チャネル識別子を示すVCI、ペイロードタイプを示すPT、セル損失優先表示を示すCLP、ヘッダ誤り制御用のHECで構成される。ATMでは、回線に相当する複数の仮想チャネルVCが多重化されて仮想パスVPを構成し、VPIおよびVCIで示された識別番号に応じてATMセルのルーティングが行われる。また、PTはペイロード部分の内容がユーザ情報なのか保守運用のための制御情報なのかなどを識別するために用いられる。例えば、PTが二進数で000から011はユーザ情報、同じく二進数で100と101は保守運用のための制御情報であることを示す。尚、PTが二進数で111は予備として確保されている。
【0028】
ここで、保守運用者によって行われる操作について説明する。保守運用者は、予め制御用端末203から低優先セルとして用いるATMセルのVPI値およびVCI値を入力し、低優先セル設定部305に設定する。
【0029】
保守運用者がATM装置105からATM装置104を遠隔操作する場合、制御用端末203からATM装置105の制御部301に優先制御モードをオンにするよう指令する。優先制御モードとは、インチャネルで制御情報を伝送する際に、制御情報を搭載したATMセルを優先して伝送するモードである。尚、インチャネルで制御情報を伝送するATMセルは、先に低優先セル設定されたATMセルが用いられる。また、優先制御モードがオフの場合、低優先セル設定されたATMセルは、ユーザ情報の伝送用に用いられる。
【0030】
このように、保守運用者が遠隔制御を行う場合、ATM装置105の制御部301に優先制御モードをオンにするよう指令して、インチャネルの低優先セルを制御情報伝送用に確保し、制御用端末203から発行された遠隔制御コマンドはインチャネルの低優先セルに換えてATM装置104側に伝送される。
【0031】
図3において、優先制御モードがオンになっている場合、ポリシング部302は、制御部301の低優先セル設定部305に設定された低優先セルがユーザ帯域201で受信されたか否かを判別し、低優先セルの場合は廃棄する。同時に、制御部301の電文作成部304で作成した制御情報を載せたATMセル317をセル変換部303を介して送出する。このようにして、廃棄されたATMセル316の代わりに、制御情報を載せたATMセル317が送出される。この結果、トラフィック量の増減はなく、制御情報を載せたATMセル317を確実に送出することができる。尚、低優先セルでない場合は、ポリシング部302およびセル変換部303では何も行わずにそのまま次のATM装置に転送する。
【0032】
ここで、低優先セルの設定について説明する。図6は、図5に示したATMセルヘッダ部分を示す図で、本実施形態では斜線で示したVCIの最上位ビットとPTの予備を用いて低優先セルであるか否かを判別し、制御情報を載せる場合はVCIの最上位ビットを用いて優先セルであることを示す。例えば、VCIの最上位ビット(MBと称す)が0でPTが111の場合は、当該ATMセルが低優先セルであることを示し、VCIのMBが1でPTが111の場合は、当該ATMセルが制御情報を載せた優先セルであることを示す。
【0033】
次に、本実施形態に係るATM装置の処理について図7および図8のフローチャートを用いて説明する。尚、これらのフローチャートは、制御部301を構成するCPUに予め記憶されたソフトウェアによって処理され、LSIなどで構成されるポリシング部302やセル変換部303に指令を出して動作する。
【0034】
図7のフローチャートは、ポリシング部302および制御部301で行われる低優先セル判定処理を示す。
【0035】
(ステップS101)制御部301は、保守運用者が制御用端末203から指示することによって、低優先セル判定処理を開始する。
【0036】
(ステップS102)制御部301は、優先制御モードがオンであるか否かを判別する。優先制御モードがオフの場合は低優先セル判定処理は実行されずステップS102で巡回する。優先制御モードがオンの場合はステップS103に進む。
【0037】
(ステップS103)制御部301は、ATMセルヘッダのPTが111であるか否かを判別する。PTが111でない場合はステップS102に戻る。PTが111の場合はステップS104に進む。
【0038】
(ステップS104)制御部301は、ATMセルヘッダのVCの最上位ビット(MB)が0であるか否かを判別する。VCのMBが0でない場合(つまり、1の場合)はステップS102に戻る。VCのMBが0の場合はステップS105に進む。尚、この処理は、廃棄セル判別部に相当し、VCの最上位ビットはセル廃棄ビットに相当する。
【0039】
(ステップS105)上記の判別結果より、ATMセルは低優先セルなので、当該ATMセルを廃棄する。
【0040】
(ステップS106)低優先セル判定処理を終了する。
【0041】
尚、実際には、ステップS102からステップS105までの処理を繰り返し行い、優先制御モードがオンの期間中は、低優先セルが受信されるか否かを判定して、低優先セルが受信された場合は当該ATMセルを廃棄する。
【0042】
次に、図8のフローチャートは、セル変換部303および制御部301で行われるセル変換処理を示す。
【0043】
(ステップS201)制御部301は、セル変換処理を開始する。
【0044】
(ステップS202)制御部301は、ソフトストラップ受信があったか否かを判別する。ここで、ソフトストラップ受信とは、制御用端末203が発行する遠隔制御コマンドがATM装置105の制御部301で受信されたことを示す。ソフトストラップ受信がなかった場合は、ステップS202を巡回し、ソフトストラップ受信があった場合は、ステップS203に進む。
【0045】
(ステップS203)電文作成部304は、制御用端末203が発行する遠隔制御コマンドをインチャネルの電文を作成する。
【0046】
(ステップS204)図7のフローチャートで廃棄された低優先セルのヘッダ(PT=111,VCのMB=0)を、優先セルのヘッダ(PT=111,VCのMB=1)に置き換えて、インチャネル電文用のセルを作成する。尚、この処理はセル廃棄ビット設定部に相当する。ここでは、セル廃棄ビット設定部は、ATMセルのペイロードが制御情報で廃棄不可であることを示す(VCのMB=1)に設定する場合のみ示したが、ATM装置105から他のATM装置に低優先セルを用いてユーザ情報を送信する場合は、ATMセルのペイロードがユーザ情報で廃棄可であることを示す(VCのMB=0)に設定する。
【0047】
(ステップS205)作成した優先セル(ヘッダ(PT=111,VCのMB=1))に、ステップS203で作成したインチャネルの電文を載せたATMセルを送信する。
【0048】
(ステップS206)セル変換処理を終了する。
【0049】
尚、実際には、ステップS202からステップS205までの処理を繰り返し行い、優先制御モードがオンの期間中は、低優先セルが受信される毎にヘッダを(PT=111,VCのMB=1)に書き換えてインチャネルの電文(制御情報)を載せて遠隔制御先のATM装置104に伝送される。
【0050】
図7および図8で行われる一連の処理の様子を図9に示す。図9(a)はポリシング部302が受信するATMセルの流れを示している。図9(b)はセル変換部303が送信するATMセルの流れを示している。
【0051】
図9において、タイミングT1で優先制御モードがオンになり、タイミングT2で優先制御モードがオフになる。つまり、タイミングT1からタイミングT2の期間中は優先制御モードになっている。尚、図9(a)において、ATMセル401,ATMセル402,ATMセル403,ATMセル404はヘッダ(PT=111,VCのMB=0)の低優先セルを示している。
【0052】
優先制御モード中においては、低優先セルのATMセル402,ATMセル403は、ヘッダ(PT=111,VCのMB=0)がヘッダ(PT=111,VCのMB=1)に書き換えられてペイロード部分には新たに制御情報が載せられ、遠隔制御先のATM装置104に伝送される。
【0053】
例えば、優先制御モードがオンになるタイミングT1より前の低優先セルのATMセル401は、そのままATMセル401としてセル変換部303では何も処理せずに送信される。同様に、優先制御モードがオフしたタイミングT2より後の低優先セルのATMセル404も、そのままATMセル404としてセル変換部303では何も処理せずに送信される。ところが、優先制御モード中の低優先セルのATMセル402,ATMセル403は、制御情報が載せられ、インチャネルの制御用帯域として、遠隔制御先のATM装置104に送信される。
【0054】
このように、優先制御モードがオンの期間中は、低優先セルのユーザ情報を廃棄して、代わりにインチャネルの制御用帯域として使用するので、遠隔制御を行わない場合はユーザー情報を伝送でき、遠隔制御を行う時だけ制御情報を伝送することができる。特に、制御情報を伝送する際は、ATMセルのヘッダ(PT=111,VCのMB=0)を廃棄不可のヘッダ(PT=111,VCのMB=1)に書き換えて送信するので、途中で廃棄されることなく確実に遠隔制御先に送ることができる。
【0055】
ここで、上記の実施形態においては、図6に示したように、ATMセルのヘッダ部分のVCIの最上位ビットを用いて低優先セルであることを識別するようにしたが、図10に示すように、VPIの最上位ビットを用いても構わない。この場合は、VPIの最上位ビットが0でPTが111の時、低優先セルを表し、VPIの最上位ビットが1でPTが111の時、制御情報を載せた制御チャネルであることを表す。
【0056】
尚、VPIやVCIは仮想パス識別子や仮想チャネル識別子として利用されているが、本実施形態に係るATM装置は、図1で説明したように、ユーザ通信網102内で閉じたATM通信網なので、ユーザ通信網102に接続されるATM装置104,ATM装置105,ATM装置106において、VCIの最上位ビットやVPIの最上位ビットを使用しないように設定することができるのでVCIやVPIの用途と重複することはない。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】通信システム全体を示すブロック図である。
【図2】ユーザ網102の構成を示すブロック図である。
【図3】ATM装置105の構成を示すブロック図である。
【図4】ATMセルの構成を示す説明図である。
【図5】ATMセルのヘッダ部分の構成を示す説明図である。
【図6】本実施形態で使用するATMセルのヘッダ部分の構成を示す説明図である。
【図7】低優先セル判定処理を示すフローチャートである。
【図8】セル変換処理を示すフローチャートである。
【図9】優先制御モード時のATMセルの様子を示す説明図である。
【図10】別の実施形態のATMセルのヘッダ部分の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
101・・・ATM網 102・・・ユーザ通信網
103・・・ユーザ通信網 104・・・ATM装置
105・・・ATM装置 106・・・ATM装置
201・・・ユーザ帯域 202・・・インチャネル帯域
204・・・LAN 203・・・制御用端末
301・・・制御部 302・・・ポリシング部
303・・・セル変換部 304・・・電文作成部
305・・・低優先セル設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インチャネル制御を行うATM装置において、
ATMセルを生成するATMセル生成部と、
ATMセルのペイロードが制御情報の場合にはヘッダの所定位置に設けたセル廃棄ビットを廃棄不可に設定し、ATMセルのペイロードがユーザ情報の場合には前記セル廃棄ビットを廃棄可に設定するセル廃棄ビット設定部と
を有するATM送信部と、
ヘッダの前記セル廃棄ビットの廃棄の可否を判別する廃棄セル判別部と、
前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄不可の場合は当該ATMセルを廃棄せずに透過し、前記廃棄セル判別部の判別結果が廃棄可の場合は当該ATMセルを廃棄するポリシング部と
を有するATM受信部と
で構成されることを特徴とするATM装置。
【請求項2】
請求項1記載のATM装置において、
前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVCI(仮想チャネル識別子)の最上位ビットである
ことを特徴とするATM装置。
【請求項3】
請求項1記載のATM装置において、
前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVPI(仮想パス識別子)の最上位ビットである
ことを特徴とするATM装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のATM装置において、
前記セル廃棄ビット設定部は、前記ATMセルのPT(ペイロードタイプ)が111(二進数)の場合に前記セル廃棄ビットを廃棄不可に設定する
ことを特徴とするATM装置。
【請求項5】
インチャネル制御を行うATM装置における優先制御方法であって、
ATM送信部で生成されるATMセルのペイロードが制御情報の場合にはヘッダの所定位置に設けたセル廃棄ビットを廃棄不可に設定し、ATMセルのペイロードがユーザ情報の場合には前記セル廃棄ビットを廃棄可に設定して送信し、
ATM受信部で受信されるATMセルのヘッダの前記セル廃棄ビットの廃棄の可否を判別して、該判別結果が廃棄不可の場合は当該ATMセルを廃棄せずに透過し、該判別結果が廃棄可の場合は当該ATMセルを廃棄する
ことを特徴とするATM装置における優先制御方法。
【請求項6】
請求項5記載のATM装置における優先制御方法において、
前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVCI(仮想チャネル識別子)の最上位ビットである
ことを特徴とするATM装置における優先制御方法。
【請求項7】
請求項5記載のATM装置における優先制御方法において、
前記セル廃棄ビットは、前記ATMセルのVPI(仮想パス識別子)の最上位ビットである
ことを特徴とするATM装置における優先制御方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか一項に記載のATM装置における優先制御方法において、
前記ATMセルのPT(ペイロードタイプ)が111(二進数)の場合に前記セル廃棄ビットを廃棄不可に設定する
ことを特徴とするATM装置における優先制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−206963(P2009−206963A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−48333(P2008−48333)
【出願日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】