説明

Al、Ti及びMgを含む酸化物の溶融粒子及びこのような粒子を含むセラミック製品

本発明は、擬似ブルッカイト型の酸化物相を主として含むか又はそれから構成されていて且つチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含む溶融粒子の混合物であり、前記溶融粒子が酸化物に基づく重量百分率で、55%未満のAl23、30%超70%未満のTiO2、1%超15%未満のMgO、という化学組成を有し、単一の酸化物Al23、TiO2、MgOに基づくモル百分率で、180≦3t+a≦220、a≦50、m=100−a−t、という組成に相当していて、式中のaはAl23のモル百分率であり、tはTiO2のモル百分率であり、mはMgOのモル百分率である、溶融粒子の混合物に関する。本発明は、このような溶融粒子から得られるセラミック製品にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にMg、Al及びTiカチオンの酸化物で構成されているセラミック用途向けの粒子に関する。本発明はまた、このような粒子を製造するための方法、及び前記粒子から作製された又は前記粒子を含むセラミック製品、特に、ただしそれだけではないが、とりわけディーゼルタイプの内燃機関の排気管路中で使用される、フィルタ構造体又は触媒担体にも関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書の以下の部分では、ガソリン又はディーゼルエンジンに由来する排気ガスに含まれる汚染物質の除去を可能にするフィルタ又は触媒担体という具体的分野における本発明による粒子の応用及びその利点が記載されている。しかしながら、このような粒子が提供する利点のために、それらがセラミックスの分野、特に良好な熱安定性及び/又は小さな熱膨張係数(TEC)が所望されるあらゆる分野における、数多くのその他の用途で有利に使用できるものであるということは明白である。限定的ではないが、特に、アルミニウム又は融解した金属と接触した状態で使用される耐火性部品、スライドゲート弁のプレート、金属フィルタの製造、又は焼結炉用匣鉢製品の製造、の分野を挙げることができる。
【0003】
排気ガス汚染制御構造体という特別な場合においては、これらは一般にハニカム構造を有する。
【0004】
公知の通り、粒子フィルタはその使用中、一連のフィルタ作業(煤の蓄積)と再生(煤の除去)の工程に付される。フィルタ作業工程では、エンジンが排出する煤粒子はフィルタ内部に保持され堆積する。再生工程では、煤粒子はフィルタ内部で焼き払われ、フィルタ特性が回復される。従って、フィルタを形成する材料の低温と高温の両方における機械的強度特性が、このような用途にとって最も重要であるということがわかる。同様に、材料は、特に装備された車両の耐用年数全体を通して、特に一部の再生工程の制御がうまくいかない場合に、1000℃より高くなることがある値まで局所的に上昇することがある温度に耐えるように、充分安定した構造を有していなくてはならない。
【0005】
現在、フィルタは主として多孔質セラミック材料、例えば炭化ケイ素、コーディエライト、又はチタン酸アルミニウムから作られる。このような炭化ケイ素触媒フィルタは、例えば、欧州特許出願公開第816065号明細書、欧州特許出願公開第1142619号明細書、欧州特許出願公開第1455923号明細書又は国際公開第2004/090294号パンフレット、及び国際公開第2004/065088号パンフレットに記載されている。このようなフィルタは、優れた熱伝導性を有するとともに、内燃機関からの煤をフィルタ除去する用途にとって理想的な多孔特性、特に平均細孔サイズ及び細孔サイズ分布を有する、化学的に不活性なフィルタ構造体を得るのを可能にする。
【0006】
しかしながら、この材料に特有のいくつかの欠点がなおも存在している。第1の欠点は、3×10-6-1より大きい、SiCの少し高い熱膨張係数に関連するものであって、これにより大きな寸法の一体式フィルタを製造することが不可能となっており、そして通常は、欧州特許出願公開第1455923号明細書に記載されているように、フィルタを複数のハニカム要素へと分割して結合剤により一緒に接合することが必要となる。第2の欠点は、経済面でのものであって、特に連続的なフィルタ再生工程の際にハニカム構造体の充分な熱機械的強度をもたらす焼結を可能にする、典型的には2100℃を超える、極めて高い焼成温度に関連している。このような温度のため、最終的に得られるフィルタのコストを実質的に増大させる特殊な機器を設置することが必要となる。
【0007】
一方、コーディエライトフィルタは公知であり、コストが低いことから長い間使用されてきているものの、現在では、特にフィルタがコーディエライトの融点より高い温度に局所的にさらされることがある制御不良の再生サイクル中に、このような構造体に問題が発生する可能性があることがわかっている。これらのホットスポットの結果は、フィルタ効率の部分的喪失から、最も重大なケースにおけるフィルタの完全な破壊までの範囲に及び得る。その上、コーディエライトは、連続する再生サイクル中に達する温度に関して充分な化学的不活性を有しておらず、従って、フィルタでの除去工程中に構造体に蓄積される潤滑剤、燃料又はその他の油の残留物に由来する種と反応して腐食される可能性があり、この現象はまた、構造体の特性が急速に劣化する原因となる可能性もある。
【0008】
このような欠点については、例えば、国際公開第2004/011124号パンフレットに記載されており、そしてそれは、これらの欠点を是正する目的で、ムライト(10〜40重量%)で補強され、耐久性が改善された、チタン酸アルミニウム(60〜90重量%)を基礎材料とするフィルタを提案している。
【0009】
別の実施形態によると、欧州特許出願公開第1559696号明細書は、1000℃と1700℃の間でアルミニウム、チタン及びマグネシウムの酸化物を反応焼結させることにより得られるハニカムフィルタの製造のために粉末を使用することを提案している。焼結後に得られる材料は2相混合物の形をとっており、すなわちチタン酸アルミニウムAl23・TiO2(Al2TiO5)又はチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含有する擬板ブルッカイト構造タイプの主相と、Nay1-yAlSi36タイプのより少量の長石相の混合物の形をとっている。
【0010】
しかしながら、出願人が行った実験から、例えば粒子フィルタタイプの高温用途において直接使用できるようにするのに適した、熱安定性、熱膨張係数及び耐食性の値を特に達成するために、チタン酸アルミナタイプの材料をベースとする構造体の性能を保証することは、現時点では困難であることが示された。
【0011】
詳細に言えば、上記の酸化物群の材料によるフィルタでの微粒子の除去という特殊な用途においては、フィルタの多孔性の改変を回避するよう、耐食性を制御しなければならない。より具体的には、フィルタの構成成分として使用される材料の腐食しやすい傾向が強いことは、細孔を閉塞してフィルタ能力を著しく低下させかねない反応の原因となり、最も深刻なケースでは、フィルタ壁に孔をあけて漏洩の原因となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、セラミック材料のための、特に、典型的にはハニカム構造体であるフィルタ及び/又は触媒構造体の製造のための、数多くの用途分野において、更に有利に使用できるようにするよう、実質的に改善された前述の特性を有する、擬似ブルッカイト型の酸化物材料を含むか又はこの材料で構成された新規の粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
より具体的には、本発明は、擬似ブルッカイト型の酸化物相を主として含むか又はそれから構成されていて、且つチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含む溶融粒子(fused grains)であり、酸化物に基づく重量百分率で、
・52%未満のAl23
・30%超70%未満のTiO2
・1%超15%未満のMgO、
という化学組成を有する溶融粒子であって、単一の酸化物Al23、TiO2、MgOに基づくモル百分率で、
180≦3t+a≦220、
a≦50、
m=100−a−t、
という組成に相当していて、式中、
・aはAl23のモル百分率であり、
・tはTiO2のモル百分率であり、
・mはMgOのモル百分率である、
溶融粒子に関する。
【0014】
「主として」という用語は、ここでは、擬似ブルッカイト型の相が、粒子の合計重量の少なくとも60%、好ましくは少なくとも70%、更には少なくとも80%を占めることを意味するものと理解される。
【0015】
「酸化物に基づく(基づき、基づいて)」という表現は、上記の重量百分率又はモル百分率が前記粒子中に存在する元素に対応する酸化物に基づいて計算されることを意味するものとして理解される。
【0016】
好ましくは、前述の式中、185≦3t+a≦215であり、非常に好ましくは190≦3t+a≦210である。
【0017】
好ましくは、Al23は化学組成の15%超を占めており、この百分率は前記粒子中に存在する元素に対応する酸化物に基づく重量百分率で示される。例えば、特に多孔性構造体タイプの用途の場合、Al23は化学組成の35%超、あるいは更に39%超を占めることができる。好ましくは、Al23は化学組成の51%未満を占め、これらの百分率は酸化物に基づく重量百分率で示されている。
【0018】
好ましくは、TiO2は化学組成の35%超、そして非常に好ましくは39%超を占める。好ましくは、TiO2は化学組成の60%未満、そして非常に好ましくは55%未満を占め、これらの百分率は酸化物に基づく重量百分率で示されている。
【0019】
好ましくは、MgOは化学組成の1.5%超、そして非常に好ましくは2%超を占める。好ましくは、MgOは化学組成の10%未満、そして非常に好ましくは5%未満を占め、これらの百分率は酸化物に基づく重量百分率で示されている。
【0020】
全ての対応する酸化物の重量百分率に関し、本発明による粒子はまた、少量で存在するその他の元素を含んでもよい。詳細には、粒子はSiO2に基づいて例えば0.01%と20%の間、好ましくは0.1%と10%の間の量で、ケイ素を含んでもよい。
【0021】
粒子はまた、Ca、Na、K、Fe、Zrなどのその他の元素を含んでもよく、存在する前記元素の合計添加量は好ましくは、前記粒子中に存在する酸化物の全ての重量百分率との関係において、対応する酸化物に基づいて3wt%未満、好ましくは2wt%未満である。対応する酸化物の重量に基づく各々の少量元素の百分率は、好ましくは0.7%未満である。
【0022】
本明細書を不必要に厚くしないため、上述のもののような本発明による粒子組成のさまざまな好ましい態様の間で考えられる本発明による全ての組合せが報告されているわけではない。しかしながら、冒頭の及び/又は好ましい分野と前述の値の考えられる全ての組合せが想定されること、そしてそれらが本明細書の状況(特に2つ、3つ又はそれ以上の組合せ)において出願人により記載されているものとみなされるべきであるということが、明確に理解される。
【0023】
本発明による粒子はまた、粒子の合計重量の0〜40%、好ましくは0〜30%、そして非常に好ましくは粒子の合計重量の0〜25%の範囲内にあることができる割合で、ケイ酸塩相で構成された少量の相を含んでもよい。本発明によると、前記ケイ酸塩相は、主としてシリカとアルミナで構成されていてよい。好ましくは、ケイ酸塩相中のシリカの割合は50%超、更には60%超である。
【0024】
本発明による粒子はまた、酸化チタンTiO2を本質的に含む少量の相を含んでもよい。「本質的に含む」という表現は、この相中のTiO2の重量百分率がおおよそ少なくとも80%程度、更には少なくとも90%程度であることを意味するものと理解される。
【0025】
ほとんどの場合、溶融粒子中に存在する擬似ブルッカイト型の酸化物相は、実質的に(Al2TiO5x(MgTi251-xという式に相当し得る固溶体であり、式中のxは0より大きく、0と1の間で変動することができる。
【0026】
本発明はまた、特に次の分野、すなわち、アルミニウム又は融解金属と接触した状態で使用される耐火性部品、スライドゲート弁プレート、金属フィルタの製造又は焼結炉用匣鉢製品の製造などの分野において使用するための、前述のとおりの粒子を含むセラミック製品にも関する。
【0027】
本発明はまた、上記の粒子を、1300℃と1800℃の間の温度で焼結後に得られるセラミック製品にも関し、これらの製品は、擬似ブルッカイト型の酸化物相を主として含むか又はそれから構成される材料であって、チタン、アルミニウム及びマグネシウムを、擬似ブルッカイト型の相が実質的に(Al2TiO5x(MgTi251-xという式に相当するような割合で含み、酸化物に基づく重量百分率で、
・55%未満のAl23
・30%超70%未満のTiO2
・1%超15%未満のMgO、
という化学組成を有する材料で構成されていることを特徴とする。
【0028】
「実質的に」という語は、ここでの意義として、擬似ブルッカイト型の主相中に存在する元素(Al、Ti、Mg)に対応する酸化物の各々について計算された百分率が、理想的な式(Al2TiO5x(MgTi251-xに相当する百分率から5%を超えて逸脱しない、好ましくは2%を超えて逸脱しない、ということを意味する。
【0029】
本発明によれば、xの値は特に限定はされず、想定される用途と粒子に求められる特性とに依存する。
【0030】
一例として、典型的に自動車の排気管路用のハニカムのような、フィルタ構造体及び/又は触媒タイプの用途について言えば、xの値は0.7と1の間でよく(x=1の値は除外される)、例えば0.8と0.95の間でよい。
【0031】
1つの考えられる実施形態によると、セラミック材料の擬似ブルッカイト型の相は、酸化物に基づく重量百分率で、
・39%超54%未満のAl23、例えば45%超52%未満のAl23
・45%超55%未満のTiO2、例えば50%未満のTiO2
・1%超5%未満のMgO、
という化学組成を有する。
【0032】
セラミック製品は、擬似ブルッカイト型の主相と少なくとも1つの二次的相を含むことができ、前記二次的相はケイ酸塩相及び/又は本質的に酸化チタンTiO2で構成された相である。
【0033】
例えば、前記二次的相は、材料の合計重量の0〜40%の範囲内にあることができる割合の、ケイ酸塩相で構成される。
【0034】
可能性のある本発明による実施形態によれば、セラミック材料の組成の好ましい範囲は、溶融粒子に関連して先に既に説明したものと同じである。従って、本明細書を不必要に厚くしないために、粒子の組成に関連して先に説明した組成の値と範囲のうちの様々な好ましいものの可能性のある全ての組み合わせをセラミック材料について繰り返さないが、それらはここでの説明に含まれるものと見なされるべきである。
【0035】
本発明の粒子は有利には、電気溶融によって製造することができ、それは有利な収率と非常に良好な価格/性能比で大量の粒子を製造するのを可能にする。
【0036】
本発明はまた、前述の粒子を製造する方法であって、
a)原料を混合して出発原材料を作る工程、
b)融解液が得られるまで出発原材料を溶融させる工程、
c)前記融解液を完全に凝固させるよう、融解液を例えば3分未満で冷却する工程、
d)所望により、粒子混合物を得るよう前記固体の塊を粉砕する工程、
を含む方法にも関する。
【0037】
本発明によると、原料は、工程a)において、工程d)で得られる粒子が本発明によるものとなるように選択される。
【0038】
当然のことながら、本発明の範囲から逸脱することなく、原材料の組成が本発明の粒子の組成に従った組成を有する粒子を得ることを可能にすることを条件として、溶融粒子を製造するためのその他の任意の従来の又は公知の方法を使用してもよい。
【0039】
工程b)では、好ましくはアーク炉が使用されるが、原材料を完全に融解するのを可能にすることを条件として、誘導炉又はプラズマ炉などの公知の任意の炉を想定することができる。焼成は、好ましくは不活性条件下で、例えばアルゴン下で実施され、あるいは酸化条件下で、好ましくは大気圧下で実施される。
【0040】
工程c)において、冷却は急速であってよく、すなわち融解液は3分未満で完全に凝固させられる。好ましくは、それは、米国特許第3993119号明細書に記載されているとおりにCS型内へ注型する結果としてなされ、あるいは急冷する結果としてなされる。
【0041】
工程d)において、固体の塊は、想定されている用途に適した粒子の大きさが得られるまで、通常の技術により粉砕される。
【0042】
特定の一用途によると、本発明は多孔質セラミック材料で作られたハニカムタイプの構造体に関するものであり、この構造体は、少なくとも5重量%の本発明による粒子から得られた、好ましくは少なくとも20、50、80、更には100重量%の本発明による粒子から得られた、多孔質セラミック材料で構成され、この構造体はまた、10%より大きい多孔率及び5ミクロンと60ミクロンの間を中心とする細孔サイズを有する。
【0043】
本発明に従って得られた構造体を粒子フィルタとして用いようとする場合、それらは、一般に20%と〜65%の間の、適切な多孔率を有し、平均細孔サイズは理想的には10ミクロンと20ミクロンの間である。
【0044】
このようなフィルタ構造体は通常、1つのハニカムフィルタエレメント又は接合セメントで一緒に接合した複数のハニカムフィルタエレメントを含む中央部分を有し、前記1つ又は複数のエレメントは、多孔質の壁により分離された互いに平行な軸線をもつ1組の隣接する管路又は流路を含み、これらの管路は、それらの端部の一方又は他方をプラグによって閉鎖されて、ガスが多孔質の壁を通過するように、ガス取込み面で開口している入口チャンバとガス排出面で開口している出口チャンバとを画定している。
【0045】
本発明による粒子の初期混合物からこのような構造体を製造するための方法は、例えば以下のものである。最初に、本発明による溶融粒子を前述のように混合する。例えば、溶融粒子を50ミクロン未満の中位径を有するように粉砕した。
【0046】
この製造方法は典型的に、当該粒子、メチルセルロースタイプの有機結合剤、及び細孔形成剤を含む初期混合物を混合し、次に、後続の押出し工程を可能にするために所望される可塑性が得られるまで水を添加する工程を含む。
【0047】
例えば、上記の最初の工程に際して、以下のものを含む混合物を混合する。
・少なくとも5%、例えば少なくとも50%、又は少なくとも90%、更には100%の、本発明による粒子。混合物の残りの部分は、元素Al、Ti、Mgの単一酸化物又はこれらの酸化物の前駆物質、例えば前述の元素の炭酸塩、水酸化物又はその他の有機金属化合物の形をしたものの、粉末又は粒子あるいはその他の材料で構成されることが可能である。
・所望により、所望の細孔サイズに応じて選択される1〜30重量%の少なくとも1種の細孔形成剤。
・少なくとも1種の有機可塑化剤及び/又は有機結合剤。
・製品の成形を可能にするのに適量の水。
【0048】
混合の結果として、ペーストの形をした均質な生成物が得られる。適切なダイを通してこの生成物を押出し加工する工程により、ハニカムの形をした一体品を得ることが可能になる。前記方法は更に、例えば、得られた一体品を乾燥させる工程を含む。乾燥工程中に、得られた未焼成セラミックの一体品は一般的に、マイクロ波によって又は所定の温度で、化学的に結合されていない水の含有量を1重量%未満にするのに充分な時間、乾燥される。粒子フィルタを得ることが所望される場合には、前記方法は、一体品の各端部で2つのうちの1つの流路を閉鎖する工程も含むことができる。
【0049】
一体品を焼成する工程は、1300℃より高いが、1800℃は超えない、好ましくは1750℃は超えない温度で実施される。例えば、この焼成工程の間に、一体式の構造体は、酸素又は不活性ガスを含む雰囲気下で1400℃と1600℃の間の温度にされる。
【0050】
前記方法は、所望により、一体品を、例えば欧州特許出願公開第816065号明細書に記載された周知の技術に従って組み立てて、集成されたフィルタ構造体にする工程を含んでもよい。
【0051】
本発明はまた、前述のとおりの構造体から、典型的にはPt及び/又はRh及び/又はPdなどの少なくとも1種の貴金属を含み、そして所望によりCeO2、ZrO2、CeO2−ZrO2などの酸化物を含む、少なくとも1種の担持された又は好ましくは担持されていない活性触媒を被着することにより、好ましくは含浸させることにより得られる、フィルタ又は触媒担体にも関する。このような構造体は特に、ディーゼル又はガソリンエンジンの排気管路内の触媒担体として、あるいはディーゼルエンジンの排気管路内の粒子フィルタとして応用される。
【0052】
本発明及びその利点は、以下の非限定的な例を読むとより良く理解される。それらの例において、全ての百分率は重量百分率で示されている。
【実施例】
【0053】
全ての例において、以下の原料から試料を調製した。
・Altichem社により販売されている98%超のTiO2を含むアナターゼ、又はEurope Minerals社により販売されている、95%超のTiO2を含み、120μm程度の中位径d50を有するルチル。
・Alcan社により販売されている、98%超のAl23を含み、85μm程度の中位径d50を有するアルミナAR75。
・Sifraco社により販売されている、99.5%超の純度と208μmの中位径d50を有するSiO2
・Nedmag社により販売されている、純度が98%超で、80%を超える粒子が0.25mmと1mmの間の直径を有するMgO。
・97%程度のCaOを含み、80%を超える粒子が80μm未満の直径を有する石灰。
・Albemarle社により販売されている、99.5%超のK2CO3を含み、80%を超える粒子が0.25mmと1mmの間の直径を有する炭酸カリウム。
【0054】
本発明による例1、2、4、5の試料を、しかるべき割合の前述の粉末の混合物を融解させることにより得た。
【0055】
より正確に言うと、反応物質の初期混合物をアーク炉内において空気中で融解させた。溶融した混合物を次にCS型内に注ぎ込み、急速に冷却させた。得られた生成物を粉砕し、ふるいがけして36μmを超える粉末を保持するようにする。この粉末を用いて直径35mmのプレス成形試料を作り、次にそれらを4時間1450℃の温度で焼結する。
【0056】
図1に示したものは、例4による試料の電子マイクロプローブ分析である。黒く見えているのは細孔1であり、濃い灰色に見えているのは酸化物の固溶体の形でもってチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含む主相2であり、薄い灰色に見えているのは主にTiO2で構成されている二次的相3である。ケイ酸塩相が存在しないことも認められる。
【0057】
本発明によるものでない例3の試料は、比較例として作製した。例3では、最初の酸化物を、本発明による例2と同じ割合で直接混合した。従来技術による教示に従って、例2の原材料を同じ割合で前もって混合し、次いで1450℃で4時間焼結した。次に、得られた生成物を粉砕してからプレスし、1450℃で4時間焼結した。例3によって最終的に得られた試料は本発明に従うものではなく、単に比較例として示すものである。
【0058】
作製した試料を次に分析する。例1〜5の各試料について行った分析の結果を表1及び2に提示する。
【0059】
表1及び2において、
1)酸化物に基づく重量百分率で示した化学組成は、蛍光X線により測定した。
【0060】
2)耐火製品中に存在する結晶相は、X線回折によって特性を調べた。表1で、「M」は主相に該当し、「S」は二次的相を示し、「〜」は相が微量で存在することを意味し、AMTxは(Al2TiO5x(MgTi251-x型の固溶体を示し、P2は別の少量の相が存在していることを示し、PSはケイ酸塩相が付加的に存在していることを示している。
【0061】
3)存在する結晶相の安定性は、当初存在する結晶相を1100℃で10又は100時間の熱処理後に存在するそれらとX線回折により比較するものである試験によって評価される。この処理後に相が同じままである場合、製品は安定しているとみなされる。
4)熱膨張係数(TEC)は、中位径d50が50μm未満の同じ粒度範囲の粉末から作製したペレットについてディラトメトリーにより25℃〜1000℃で通常得られる値の平均に相当する。ペレットは、プレス成形とそれに続く空気中にて1450℃で3時間の焼結により得られる。
【0062】
5)粉末をプレスし焼結した試料を成形して直径35mmのディスクにすることにより、K2SO4の存在下で耐食性を評価する。0.2gのK2SO4粉末をディスクの表面に均一に被着させる。こうして被覆した試料を、次に空気中で5時間1300℃にする。冷却後、半径方向断面に沿って試料を切断し、走査型電子顕微鏡を用いた断面観察用にする。次に、腐食を受けた試料のディスクの初期表面からの深さEを、SEM写真で目視により求める。
【0063】
6)破壊係数(MOR)は、45mm×4mm×3mmの寸法の棒材についての通常の方法での4点曲げによって周囲温度で測定する。
【0064】
【表1】

【0065】
表1のデータを比較することにより、本発明による粒子は、良好な熱安定性、十分な機械的強度と、例2及び3の試料の侵食深さを比較することにより示されるように非常に大きく改善された耐腐食性とを特徴とするセラミック製品を最終的に得ることを可能にすることが分かる。
【0066】
次に、各相の組成をマイクロプローブ分析で分析した。分析結果を表2に示す。これらの結果に基づいて、各相の重量百分率とそしてまた主AMTx相の式(Al2TiO5x(MgTi251-xのxの値を、計算により推定することができた。
【0067】
【表2】

【0068】
〔応用例〕粒子フィルタとしての具体的用途のための材料の特性
特に粒子フィルタとしての用途のための、本発明に従って得られた材料で形成された部品の特性を調べる目的で、例1に従って調製した本発明による溶融粒子から、及び原材料の混合物(新たな例6)から、試料を作製した。
【0069】
例6では、使用した反応物は、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム及びチタンの単一酸化物の市販の粉末であった。
【0070】
全ての初期粉末(溶融粒子及び原料)は、100μm未満の中位径を有する。本明細書の目的の範囲内において、中位径は、母集団の50体積%がそれより下にある粒子の直径を表わす。
【0071】
明細書中で前述した通り、多孔質セラミック材料は以下の要領で得られる。すなわち、粉末(例1のための溶融粒子及び例6のための単一酸化物)を、粉末混合物の合計重量に対して5%のメチルセルロースタイプの有機結合剤及び8%の細孔形成剤と混合する。均質なペーストが得られるまで混合しながら水を添加し、このペーストの可塑性により6mm×8mm×60mmの大きさの棒状の試料の押出し加工を可能にし、そして次にそれを1450℃で4時間焼結させる。
【0072】
「粒子フィルタ」の用途において使用される材料の値を求める目的で、これらの試料についてのパラメーターとして、熱膨張係数、破壊係数、そしてまた多孔質特性を測定した。通常、これらの特性は、Micrometritics 9500ポロシメータを用いて周知の高圧水銀ポロシメトリ技術により測定される。
【0073】
焼結収縮は、各例に応じて1450℃で焼結後の試料の寸法変化を表す。より具体的には、本発明によると、「焼結収縮」という表現は、低温すなわち400℃未満の温度、とりわけ周囲温度にある材料の断面の2つの寸法の各々に沿った平均的縮小を意味するものとして理解される。表3では、収縮についての報告値は、前記寸法の各々についての焼結前の棒材の初期寸法の百分率として表される、2つの寸法についての平均的収縮に相当している。この特性は、多孔質構造体を製造するための方法の実現可能性を推定するために極めて重要である。これは、大きい焼結収縮が、特に、自動車の排気管路内で容易に使用できるように充分な精度で保証できる寸法特性をもつ構造体を許容可能な再現性で得るのに、この材料で作られたハニカムが工業化にあたっての大きな問題を提起することを意味しているからである。
【0074】
破壊係数(MOR)は、先に得られた6mm×8mm×60mmの寸法を有する多孔質の棒材の3点曲げにより、周囲温度で測定される。
【0075】
結果を表3に提示する。
【0076】
【表3】

【0077】
表3に提示した結果は、本発明の粒子により、初期反応物としてSiO2、MgO、Al23等のタイプの通常の原材料を使って得た製品に比べ実質的に優れた全体的特性を有する材料及び製品を得ることが可能になることを示している。
【0078】
特に、表1のデータと比較すると、一体品を作製する際の初期製品として本発明による溶融粒子を使用した結果として得られる機械的強度の著しい改善を見ることができる。すなわち、例1による多孔質棒材のMOR強度は例6のものに事実上匹敵している一方、例1による棒材の構成材料は例6による従来の材料のものよりも25%超高い多孔率と60%超大きい細孔径を有する。
【0079】
例5により得られた材料は、例1と6について得られたものよりごくわずかに小さい機械的強度MORを有するが、多孔率、焼結収縮及び熱膨張係数の特性は大幅に改善されている。
【0080】
以上の例及び明細書において、本発明は、粒子フィルタの分野での使用に関してそれが提供する利点との関係において特に説明されている。しかしながら、本発明が、その他の用途、特に、良好な熱安定性と同時に良好なTECが求められる全ての用途における、本発明の粒子の使用にも関するものであることは明白である。用途に応じて、本発明による溶融粒子の大きさを、特に適切な粉砕方法の選択によって、特別に適合させることが可能である。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
擬似ブルッカイト型の酸化物相を主として含むか又はそれから構成されていて、且つチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含む溶融粒子であり、酸化物に基づく重量百分率で、
・52%未満のAl23
・30%超70%未満のTiO2
・1%超15%未満のMgO、
という化学組成を有する溶融粒子であって、単一の酸化物Al23、TiO2、MgOに基づくモル百分率で、
180≦3t+a≦220、
a≦50、
m=100−a−t、
という組成に相当していて、式中、
・aはAl23のモル百分率であり、
・tはTiO2のモル百分率であり、
・mはMgOのモル百分率である、
溶融粒子。
【請求項2】
酸化物に基づく重量百分率で、
・15%超52%未満のAl23
・35%超70%未満のTiO2
・1%超10%未満のMgO、
という化学組成を有する、請求項1に記載の溶融粒子。
【請求項3】
酸化物に基づく重量百分率で、
・39%超52%未満のAl23
・39%超55%未満のTiO2
・1%超5%未満のMgO、
という化学組成を有する、請求項2に記載の溶融粒子。
【請求項4】
SiO2ベースで、且つ前記酸化物に基づく重量百分率に関して、0.01%と20%の間、好ましくは0.1%と10%の間の量のケイ素も含む、請求項1〜3の一つに記載の溶融粒子。
【請求項5】
主相と少なくとも1つの二次的相とを含み、すなわち擬似ブルッカイト型の相から構成される主相と少なくとも1つの二次的相とを含み、前記二次的相がケイ酸塩相及び/又は本質的に酸化チタンTiO2で構成された相である、請求項1〜4の一つに記載の溶融粒子。
【請求項6】
前記擬似ブルッカイト型の酸化物相が式(Al2TiO5x(MgTi251-x(この式中のxは0より大きい)に実質的に相当する固溶体である、請求項1〜5の一つに記載の溶融粒子。
【請求項7】
請求項1〜6の一つに記載の粒子を製造する方法であって、
a)原料を混合して出発原材料を作る工程、
b)融解液が得られるまで出発原材料を溶融させる工程、
c)前記融解液を完全に凝固させるよう融解液を急速冷却する工程、及び、
d)工程c)の間に得た固体の塊を粉砕して粒子混合物を得る工程、
を含む粒子製造方法。
【請求項8】
特に次の分野、すなわち、アルミニウム又は融解金属と接触した状態で使用される耐火性部品、スライドゲート弁のプレート、金属フィルタの製造、又は焼結炉用匣鉢製品の製造の分野において使用するための、請求項1〜6の一つに記載の粒子を含むセラミック製品。
【請求項9】
1300℃と1800℃の間の温度で請求項1〜6の一つに記載の粒子を焼成する工程を含む方法に従って得られたセラミック材料を含み、前記材料は、擬似ブルッカイト型の相が実質的に、(Al2TiO5x(MgTi251-xという式に相当するような割合でチタン、アルミニウム及びマグネシウムを含む擬似ブルッカイト型の酸化物相を主として含むか又はこの相で構成されており、前記材料が酸化物に基づく重量百分率で、
・55%未満のAl23
・30%超70%未満のTiO2
・1%超15%未満のMgO、
という化学組成を有することを特徴とするセラミック製品。
【請求項10】
前記擬似ブルッカイト型の相が酸化物に基づく重量百分率で、
・39%超54%未満のAl23
・45%超55%未満のTiO2
・1%超5%未満のMgO、
という化学組成を有する、請求項9に記載のセラミック製品。
【請求項11】
擬似ブルッカイト型の相で構成された主相と少なくとも1つの二次的相を含み、前記二次的相がケイ酸塩相及び/又は本質的に酸化チタンTiO2で構成された相である、請求項9又は10に記載のセラミック製品。
【請求項12】
二次的相が、材料の合計重量の0〜40%の範囲内にあることができる割合のケイ酸塩相で構成されている、請求項11に記載のセラミック製品。
【請求項13】
ハニカムタイプの構造を有し、特に自動車用途向けの触媒担体又はフィルタであって、前記構造を形成するセラミック材料が、10%超の多孔率及び5ミクロンと60ミクロンの間を中心とする細孔サイズを有する、請求項9〜12の一つに記載のセラミック製品。
【請求項14】
前記セラミック材料が0.7と1の間であり1を除くxの値を有する、請求項13に記載のセラミック製品。

【公表番号】特表2011−526574(P2011−526574A)
【公表日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515577(P2011−515577)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051294
【国際公開番号】WO2010/001064
【国際公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(310009890)サン−ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン (24)
【Fターム(参考)】