B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドならびにHBV侵入インヒビターおよびHDV侵入インヒビターとしてのそれらの使用
本発明は、HBV preSコンセンサス配列に由来する、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドに関し、N末端が好ましくはアシル化され、必要に応じて、C末端が改変されている。これらHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、非常に有効なHBV侵入インヒビターおよびHDV侵入インヒビターであり、従って、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害、HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の防止、ならびに(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置に適している。本発明はさらに、HBVのこれら疎水性改変preS由来ペプチドを含む、薬学的組成物およびワクチン組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HBV preSコンセンサス配列に由来し、N末端が好ましくはアシル化され、そして必要に応じてC末端が改変されている、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドに関する。これらHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、非常に効率的なHBV侵入インヒビター、ならびにHDV侵入インヒビターであり、従って、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害、HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防、ならびに(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置に適している。本発明はさらに、これらHBVの疎水性改変preS由来ペプチドを含む、薬学的組成物およびワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
今日、約20億もの人々が、HBVの血清学的マーカーを有している。そのうちの約4億人が、HBVに慢性的に感染している。疾病管理予防センター(CDC)によれば、慢性HBV感染者のうちの15〜25%は、適切な処置を受けなければ、10年以内に肝細胞癌(HCC)を発症させる傾向がある(1)。HBV関連HCCは、予後不良であり、従って、HBVは、世界保健機関(WHO)によって、もっとも重要な天然に存在するヒトの発癌物質として分類された。予防的ワクチンの存在にも関わらず、感染数は、世界人口の増加および経済的に困窮した国々における予防の限界に起因して、来るべき10年間において上昇する。
【0003】
先進国において、HBVは、非経口経路を介して主に伝染する。実際に感染した、免疫能のある固体のうちの90〜95%は、このウイルスを一掃し、それによって、寿命の長さの免疫防御を得る。彼らのうちの約5〜10%は、慢性B型肝炎を発症させる(ドイツにおいて300,000〜500,000人)。対照的に、非常に蔓延した地域(特に、中央アフリカおよび東アジア)においては、伝染の主な態様は、母から子への垂直感染である。不運なことに、完全に免疫能があるわけではない子供の感染は、この疾患について、90〜98%の慢性経過をたどる。B型肝炎関連HCCは、従って、これらの国々においてもっとも一般的な悪性疾患である。
【0004】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染の処置について現在承認されている治療レジメンは、すでに確立された感染の後にウイルス・ゲノムの複製工程に対処する(ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル)か、または免疫系のモジュレーターとして作用する(インターフェロンα)かのいずれかである。不運なことに、上記患者のうちのわずか10〜25%が、このような治療に対して持続したウイルス学的応答を残しているに過ぎず、これは、とりわけ、ヌクレオチド(ヌクレオシド)耐性変異体の素早い選択を示している。予防的ワクチンの利用可能性にもかかわらず、その結果、これまで影響を受けていない複製工程(例えば、ウイルス侵入)を標的とする新規な治療剤を開発することは、最も重要である。
【0005】
ウイルス侵入の特異的阻害は、急性および慢性感染を制御しかつ最終的に排除するための魅力的な治療概念である。HIVについては、ウイルス侵入への介入は、36アミノ酸(Fuzeon(登録商標))からなるgp41タンパク質由来ペプチドによって首尾よく達成されてきた。このペプチドは、ウイルス膜と細胞膜との融合を妨げる(2)。
【0006】
予防的ワクチンおよび逆転写酵素(RT)インヒビターの利用可能性にもかかわらず、HBV感染の人数および全世界でのHBV関連の死亡数(現在では約500,000人/年)は、増加しつつある。原発性肝臓癌の約2/3は、持続性のHBV感染に特徴がある(3)。
【0007】
現在の処置は、2つのストラテジーを追求する:(i)インターフェロン(IFNα)処置は、HBVに対する免疫応答を調節し、直接的な抗ウイルス効果を示す。このことは、上記ウイルスの根絶なしに、処置した患者のうちの約30%において、長期の臨床的利益をもたらす;(ii)ウイルス逆転写酵素インヒビターの投与は、ウイルス複製を抑制し、1年間の処置の後に、顕著な生化学的かつ組織学的改善が付随する。しかし、長期の処置は、耐性ウイルス株の出現と関連している(4)。
【0008】
HBVは、哺乳動物およびトリの小さなエンベロープに包まれたDNAウイルスファミリーのプロトタイプである(5)。上記HBVエンベロープは、L−(大)、M−(中)およびS−(小)といわれる3つのタンパク質を包んでいる(図1Aを参照のこと)。これらは、4つの膜貫通領域とC末端のSドメインを共有している。上記M−タンパク質およびL−タンパク質は、55アミノ酸(preS2)、および遺伝子型に依存して、107アミノ酸もしくは118アミノ酸(preS1)のさらなるN末端伸長を有している(図1Bを参照のこと)。ビリオンにおいて、L、MおよびSの化学量論比は、約1:1:4である一方で、より豊富に分泌される非感染性サブウイルス粒子(SVP)は、ほぼもっぱらS−タンパク質および極微量のL−タンパク質を含む(6)。合成の間に、上記LのpreS1ドメインは、ミリストイル化され、ERを介して場所を変えられる。この改変は、HBV感染性にとって必須である(7,8)。
【0009】
HBV感染の初期事象の研究は、制限されてきた。なぜなら、細胞培養系も、小動物モデルも、近年まで利用可能でなかったからである(9)(非特許文献1)。上記HBV感受性細胞株HepaRGの開発は、HBV侵入の体系的調査を促進し、エンベロープタンパク質由来侵入インヒビターの発見をもたらした(10)(非特許文献2)。
【0010】
さらに、今日までに、サテライトウイルソイドが肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するHDV感染の有効な治療は存在しない(15,17,20)(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。HDV感染に対する有効な治療を提供することが当該分野では必要である。
【0011】
従って、本発明は、先行技術において存在する場合、HBV感染および他のHBV関連疾患の阻害、予防および/もしくは処置のための方法および手段を改善することを目的とし、従って、本発明の目的は、HBV感染およびHBV関連疾患の標的とされかつ効率的な阻害、予防および/もしくは処置を可能にする改善された方法および手段を提供することである。
【0012】
さらなる本発明の目的は、HDV感染およびHDV関連疾患の上記感染、予防および/もしくは処置のための方法および手段を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Glebe, D.およびUrban, S. Viral and cellular determinants involved in hepadnaviral entry. World J Gastroenterol(2007)13, 22−38
【非特許文献2】Gripon, P.ら、Infection of a human hepatoma cell line by hepatitis B virus. Proc Natl Acad Sci U S A(2002)99, 15655−15660
【非特許文献3】Engelke, M.ら、Characterization of a hepatitis B and hepatitis delta virus receptor binding site. Hepatology(2006)43, 750−760
【非特許文献4】Barrera, A.、Guerra, B.、Notvall, L.およびLanford, R.E. Mapping of the hepatitis B virus pre−S1 domain involved in receptor recognition. J Virol(2005)79, 9786−9798
【非特許文献5】Taylor, J.M. Hepatitis delta virus. Virology(2006)344, 71−76
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明によれば、この目的は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドを提供することによって解決される。
【0015】
上記疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の一般式:
Hm−P−Rn,
を有し、
Pは、上記preS由来ペプチドであり、HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸配列もしくはその改変体を含む。
【0016】
Hは、上記preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、上記疎水性改変は、PのN末端のものであり、疎水性部分のアシル化および付加から選択される;ここでmは、少なくとも1である。
【0017】
Rは、必要に応じて、上記preS由来ペプチド PのC末端改変である(すなわち、nは、0もしくは少なくとも1である)。
【0018】
本発明によれば、この目的は、本明細書に定義される少なくとも1個のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む薬学的組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0019】
本発明によれば、この目的は、上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくは疾患の診断、予防および/もしくは処置のための、本発明のそれぞれの薬学的組成物を提供することによってさらに解決される。
【0020】
本発明によれば、この目的は、上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチド、またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、および/もしくはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、本発明の薬学的組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0021】
本発明によれば、この目的は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/または(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、医薬の製造のために上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは本発明の薬学的組成物を使用することによって、さらに解決される。
【0022】
本発明によれば、この目的は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは本発明の薬学的組成物を利用することによる、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するための方法;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を阻害するための方法、および/もしくは(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処置するための方法によって、さらに解決される。
【0023】
本発明によれば、この目的は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含むワクチン組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0024】
以下の実施例および図面は、本発明を例示するが、本発明に対する限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、HBV粒子、ならびにHBV L−タンパク質、M−タンパク質およびS−タンパク質の模式図である。(A)部分的二本鎖DNAは、末端タンパク質(TP)、逆転写酵素(RT)およびRNaseHからなるウイルスポリメラーゼ複合体と供給結合している。そのゲノムは、120個のコアタンパク質ダイマーから作られる二十面体の殻によって包まれている。上記3個のHBV表面タンパク質L−、M−およびS−は、ER由来脂質二重層へと埋め込まれる。上記L−タンパク質およびM−タンパク質は、膜アンカーとして働く完全Sドメインを含む。(B)上記3個のHBV表面タンパク質L、MおよびSのドメイン構造。上記L−タンパク質は、N末端がミリストイル化された107個アミノ酸のpreS1−ドメイン、55個アミノ酸のpreS2−ドメイン、および4回膜貫通セグメント(I〜IV)を含むS−ドメインを含む。
【図2】図2は、HBV preS1コンセンサス配列である。一番上:そのpreS1、preS2およびS−ドメインを有する上記HBV L−タンパク質が示される。そのN末端は、ミリストイル化されている。下のアラインメントは、アミノ酸2〜50を含む、コンセンサス配列(コンセンサス)および8個のHBV 遺伝子型(A〜H)、ならびにウーリーモンキーHBV(WMHBV) preS配列を示す。上記遺伝子型A、B、C、E、GおよびHは、それらのN末端において11個のさらなるアミノ酸を有し、遺伝子型Fは、10個のさらなるアミノ酸残基を有することに注意のこと。一番下において、既知の機能的サブドメインが示される。HBV 遺伝子型Cとは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいうことにも注意のこと。
【図3】図3は、上記2つの遺伝子型CおよびDのミリストイル化およびステアロイル化したHBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ミリストイル(D)、HBVpreS/2−48ミリストイル(C)、HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C)、HBVpreS/2−48ステアロイル(C)およびHBVpreS/(−11)−48ステアロイル(C)の非存在(0nM)下、およびこれらの1nM、5nM、25nM、100nMおよび2000nMの存在下で、いずれかに感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを、一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。ここで(C)もしくは遺伝子型Cは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【図4】図4は、コンセンサス配列を有する、ミリストイル化およびステアロイル化したHBVpreS由来ペプチドの感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ミリストイル(コンセンサス)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(コンセンサス)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの0.125nM;0.25nM;0.5nM;0.75nMおよび1nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを、一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図5】図5は、遺伝子型DのC末端が欠失したステアロイル化HBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−15ステアロイル(D)、HBVpreS/2−21ステアロイル(D)、HBVpreS/2−26ステアロイル(D)およびHBVpreS/2−33ステアロイル(D)の非存在(0nM)下、ならびにこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図6】図6は、遺伝子型DのN末端およびC末端が欠失したステアロイル化HBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−33ステアロイル(D)、HBVpreS/5−33ステアロイル(D)、およびHBVpreS/5−48ステアロイル(D)、HBVpreS/9−33ステアロイル(D)およびHBVpreS/9−48ステアロイル(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図7】図7は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(D−AS11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ17−21)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala17−21)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Ala2−9)(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図8】図8は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(レトロインベルゾ)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Ala21,23,29,30)(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図9】図9は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドのさらなる比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala18)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ser13)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Arg11)(D)の非存在(0nM)、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図10】図10は、本発明において使用される遺伝子型Dのステアロイル化HBVpreS由来ペプチドである。
【図11】図11は、本発明の疎水性改変preSペプチドがインビボ肝臓向性を示すことを示す。A マウスにおけるHBVpreS/2−48 Tyrステアロイル(D)の生体分布。B マウスにおけるHBVpreS/5−48 D−Tyrステアロイル(D)の生体分布。C マウスにおけるHBVpreS/2−33−D Tyrステアロイル(D)の生体分布。
【図12】図12は、Myrcludex BによるHepaRG細胞に対するHBV感染、アシル化の効果である。Myrcludex Bとは、HBVpreS/2−48(C)(ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう)をいう。ステアロイル化およびミリストイル化したHBVpreS/2−48(C)、HBVpreS/2−48ミリストイル(C)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(C)を比較する、競合アッセイ。試験した濃度は、完全な競合を有しないように、1nM未満であった。示されるのは、HBeAg測定値(接種後7〜14日目)である。図3〜9に示される実験と同じ反応および感染条件。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の好ましい実施形態の説明)
本発明が以下により詳細に記載される前に、本発明が本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことが理解されるきである。なぜなら、これらは変化し得るからである。本明細書で使用される用語法が、記載されている特定の実施形態のみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。別段定義されなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の目的のために、本明細書で引用されるすべての参考文献は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0027】
(HBVの疎水性改変preS由来ペプチド)
上記で概説されるように、本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドを提供する。
【0028】
HBVのエンベロープは、L(大)、M(中)およびS(小)といわれる3つのタンパク質を包んでいる(図1Aを参照のこと)。それらは、4つの膜貫通領域とC末端のSドメインを共有している。上記M−タンパク質およびL−タンパク質は、55アミノ酸、および遺伝子型に依存して、107アミノ酸もしくは118アミノ酸(preS2およびpreS1)のさらなるN末端伸長を有している(図1Bを参照のこと)。
【0029】
従って、表現、本発明に従うHBVの「preS由来」ペプチドとは、HBV(preS1)のL−タンパク質のN末端伸長、好ましくは、上記種および遺伝子型A〜Hの、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)、チンパンジーおよびゴリラB型肝炎ウイルスのコンセンサス配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをいうが、その改変体(好ましくは、N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、アミノ酸置換改変体)をもいう。
【0030】
配列番号1は、上記種および遺伝子型A〜H、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)のHBV preSコンセンサスアミノ酸配列を示す。
【0031】
アミノ酸2〜48を示す、上記HBV preSコンセンサス配列(コンセンサス)および上記8つのHBV 遺伝子型(A〜H)、ならびにウーリーモンキーHBV(WMHBV)preS配列を示す、図2におけるアラインメントを参照のこと。遺伝子型A、B、C、E、F、GおよびHは、それらのN末端において最大11個までのさらなるアミノ酸を有することに注意のこと。
【0032】
本願内の上記HBV「遺伝子型C」のアミノ酸配列は、46位(以下に記載されるような番号に従って)が、Genbank配列におけるようなGln(Q)の代わりに、本発明の遺伝子型CにおいてLys(K)であることを除いて、例えば、Genbank ABV02850.1に示されるように、上記HBV 遺伝子型Cに対応するかもしくはこれと同一である人工配列をいう;本願のHBV 遺伝子型C配列はまた、「HBV 遺伝子型C Q46K」といわれ得る。配列番号4、12、21〜27をまた参照のこと。
【0033】
図2はまた、上記HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸残基の番号付けを示す。この番号付けは、本明細書全体を通して言及される。
【0034】
アミノ酸残基番号1は、遺伝子型D(以前は、サブタイプaywと記載されていた。配列番号5もまた参照のこと)のメチオニン(Met1)であるのに対して、アミノ酸残基番号(−11)は、遺伝子型C(配列番号4)のメチオニン(Met(−11))である。インビボで、それぞれ、Met1もしくはMet(−11)は、細胞のメチオニルアミノペプチダーゼによって切断され、ミリストイル−CoAから、それぞれ、アミノ酸残基番号2のグリシン(Gly2)もしくはアミノ酸残基番号(−10)グリシン(Gly(−10))へのN−ミリストイルトランスフェラーゼによるミリストイル残基のその後の転移によって、改変される。遺伝子型Dの上記N末端アミノ酸残基は、天然のアミノ酸グリシン(Gly2)であり、Lの基礎をなすオープンリーディングフレーム(もしくは、例えば、遺伝子型CについてはGly(−10))のコドンからのそれぞれの番号付けに従って、2に番号付けされる。
【0035】
上記HBV preSコンセンサス配列はまた、遺伝子型A、B、C、E、F、GおよびHの上記さらなるN末端アミノ酸(「−」位において示される)を含む。従って、HBV preSコンセンサス配列のうちのすべてにおいて、(−11)〜48位が含まれる。
【0036】
従って、配列番号1におけるアミノ酸の上記の番号付けと実際の列挙との間には差異が存在する。例えば、
Met(−11)、残基番号(−11)は、配列番号1においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly(−10)、残基番号(−10)は、配列番号1においてアミノ酸残基2として列挙され;
Met 1、残基番号1は、配列番号1においてアミノ酸残基12として列挙され;
Gly 2、残基番号2は、配列番号1においてアミノ酸残基13として列挙され;
Gly 48、残基番号48は、配列番号1においてアミノ酸残基58として列挙される。
【0037】
【化1−1】
【0038】
【化1−2】
本発明に従うHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の式を有する:
Hm−P−Rn,
ここで
Pは、上記preS由来ペプチドであり;
Hは、Pの疎水性改変であり;
Rは、PのC末端改変であり;
mは、少なくとも1であり;
nは、0もしくは少なくとも1である。
【0039】
本発明に従うHBVのpreS由来ペプチド、Pは、以下を含む:
−配列番号1に示されるような上記HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸配列、もしくは
−その改変体。
【0040】
「改変体」は、好ましくは、N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、アミノ酸置換もしくは欠失改変体、または長くされた改変体である。改変体は、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物、またはペプチド骨格/構造を模倣し得るさらなる化合物を含むアミノ酸配列をさらに含む。
【0041】
好ましくは、改変体は、配列番号1のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体;アミノ酸置換もしくは欠失改変体;改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物、またはペプチド骨格/構造を模倣し得るさらなる化合物を含む改変体から選択される。
【0042】
本発明によれば、疎水性改変preS由来ペプチドの改変体は、配列番号1の少なくとも10個もしくは20個連続するアミノ酸を含み、そして配列番号1の11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個以上のアミノ酸もしくはその改変体からなり得る。
【0043】
N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体は、好ましくは、配列番号1の少なくとも48個連続するアミノ酸(好ましくは、残基2〜48)、より好ましくは、配列番号1の少なくとも17個連続するアミノ酸(好ましくは、残基5〜21)または配列番号1の少なくとも20個連続するアミノ酸(好ましくは、残基2〜21)を含む。
【0044】
用語「改変体」はまた、ヘパドナウイルス属の異なるウイルス種、株もしくはサブタイプ(例えば、HBV株α1、HBV株LSH(チンパンジー分離株)、ウーリーモンキーHBV(WMHBV)、または上記HBV 遺伝子型A〜Hからなる群より選択される株、ならびに本明細書で定義される上記HBV 遺伝子型C、Q46K(例えば、配列番号4))において見いだされる相同な配列をいう。
【0045】
用語「改変体」はまた、配列番号1もしくは本明細書で開示される任意の他のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性、好ましくは、70%、より好ましくは、80%、さらにより好ましくは、90%もしくは95%の配列同一性を示す相同な配列をいう。
【0046】
従って、本発明に従う、好ましい疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、異なるウイルス種、株もしくはサブタイプの(好ましくは、上記HBVの遺伝子型のもしくはウーリーモンキーHBV(WMHBV)の、またはこれらの改変体の)アミノ酸配列を有する、配列番号1の改変体を含む。
【0047】
好ましくは、Pは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体(図2もまた参照のこと)を含み得る。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む:
配列番号1に示されるHBV preSコンセンサス配列の
アミノ酸残基2〜21、
アミノ酸残基5〜21、
アミノ酸残基5〜15もしくは
アミノ酸残基9〜15([配列番号15]もまた参照のこと)。
【0049】
より好ましくは、Pは、配列番号1の残基9〜22におけるアミノ酸置換および/もしくは欠失(例えば、残基17〜21を欠失させることによる)を含まない。
【0050】
より好ましくは、Pは、配列番号1の残基9〜15においてアミノ酸置換および/もしくは欠失を含まない。
【0051】
より好ましくは、配列モチーフ NPLGFFP[配列番号15](配列番号1の残基9〜15に対応する)は、中断されてもいないし、改変されてもいない(例えば、残基11〜15をDアミノ酸で置換することによって)。
【0052】
より好ましくは、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む:
上記コンセンサス配列のアミノ酸残基2〜48 [配列番号11];
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜48 [配列番号12];
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜21 [配列番号13];
遺伝子型Cのアミノ酸残基5〜21 [配列番号14];
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜15 [配列番号15];
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜48 [配列番号16];
遺伝子型Dのアミノ酸残基5〜48 [配列番号17];
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜33 [配列番号18]
遺伝子型Dのアミノ酸残基5〜33 [配列番号19]
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜21 [配列番号20];
遺伝子型Dのアミノ酸残基9〜15 [配列番号15]。
【0053】
従って、好ましくは、Pは、配列番号11〜20から選択されるアミノ酸配列もしくはその改変体を含む。
【0054】
Pの好ましいアミノ酸配列については、以下の表1〜7、図面および実施例を参照のこと。
【0055】
配列番号1の「改変体」はまた、上記配列が10μM未満の、および好ましくは、1μM未満のペプチド濃度でのHBV感染の70%阻害を誘発する限りにおいて、アミノ酸欠失、アミノ酸置換(例えば、他のアミノ酸もしくは等配電子体(タンパク質のアミノ酸に対して近い構造的かつ空間的類似性を有する改変アミノ酸)による保存的もしくは比保存的な置換、アミノ酸付加または等配電子体付加)を含む改変体もしくは「アナログ」を含む。
【0056】
保存的アミノ酸置換は、代表的には、同じクラスのアミノ酸の中での置換をいう。これらクラスとしては、例えば、以下が挙げられる:
−非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンおよびチロシン);
−塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、およびヒスチジン);
−酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸);および
−非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステイン)。
【0057】
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、好ましくは、増大した免疫原性特性を有するように改変され得る。このような増大した免疫原性特性とは、例えば、免疫した後に誘発される抗体の範囲を増大させること、または種々のウイルス株による感染を中和し得る抗体の生成を可能にすることをいう。
【0058】
別の実施形態において、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、好ましくは、それらの免疫原性特性を低下させるように改変され得る。このような疎水性改変preS由来ペプチドは、悪影響を回避もしくは制限しながら、インビボでのHBV感染を阻害するための治療適用において特に有用である。
【0059】
従って、置換および/もしくは欠失によって改変されるべき好ましい配列モチーフは、上記免疫原性をになう配列(例えば、B細胞エピトープおよび/もしくはT細胞エピトープ、さらには、抗体認識モチーフ)である。
【0060】
HBVのB細胞エピトープは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基20〜23(モチーフ DPAF)およびアミノ酸残基26〜32、上記コンセンサス配列(配列番号1)のモチーフ NSNNPDWおよび遺伝子型C(配列番号4)、もしくは遺伝子型DのNTANPDW(配列番号5)である。
【0061】
好ましい実施形態において、配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変され、そして/または上記アミノ酸残基26〜32は、好ましくは、アミノ酸置換および/もしくは欠失によって改変され得る。
【0062】
好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基20〜23(モチーフ DPAF)は、アラニンアミノ酸置換によって、好ましくは、モチーフ APAFへと改変される。
【0063】
好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基26〜32は、アラニンアミノ酸置換によって、好ましくは、モチーフ NANAPDWもしくはNAAAPDWへと改変される。
【0064】
好ましい実施形態において、Pは、配列番号21〜28から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む。
【0065】
以下の表2、表7、ならびにそれぞれの図面および実施例もまた参照のこと。
【0066】
より好ましい実施形態において、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:
配列番号11 (上記コンセンサス配列の残基2〜48)、
配列番号12 (遺伝子型Cの残基2〜48)、
配列番号13 (遺伝子型Cの残基2〜21)、
配列番号4 (遺伝子型Cの残基(−11)〜48)、および
配列番号20 (遺伝子型Dの残基2〜21)。
【0067】
上記preS由来ペプチドPの疎水性改変(H)は、PのN末端にある。
【0068】
「N末端の」とは、N末端(すなわち、それぞれの第1のアミノ酸残基(例えば、Gly 2))における疎水性改変をいうが、N末端付近(例えば、それぞれのアミノ酸残基(−4)、(−3)、(−2)、(−1)、1、2、または3もしくは4)における疎水性改変も含む。従って、上記疎水性改変は、PのN末端付近の部位において疎水性部分を結合することによってさらに得られ得る。
【0069】
本発明のHBVのpreS由来ペプチドの上記疎水性改変は、上記ペプチドに疎水性部分を付加する。
【0070】
さらに、mは、少なくとも1(すなわち、少なくとも1個の疎水性部分もしくは基での改変)である。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、mは、1、2、3、4もしくはこれ以上である。すなわち、Pは、1個より多い疎水性部分もしくは基(例えば、2個)で改変され得る。上記疎水性部分もしくは基は、互いに同じでもあってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
本発明に従うHBVのpreS由来ペプチドの上記疎水性改変は、以下から選択される:
−アシル化;
−疎水性部分の付加。
【0073】
アシル化は、好ましくは、カルボン酸、脂肪酸、脂肪族側鎖を有するアミノ酸でのアシル化から選択される。
【0074】
好ましい脂肪酸は、飽和もしくは不飽和の脂肪酸、分枝状もしくは非分枝状の脂肪酸、好ましくは、8〜22個の炭素原子(C8〜C22)を有するものである。
【0075】
より好ましくは、アシル化による上記疎水性改変は、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)もしくはステアロイル(C18)でのアシル化から選択される。
【0076】
上記疎水性部分の付加は、好ましくは、コレステロール、コレステロールの誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体、アダマンタン、ファルネソール、脂肪族基、多環式芳香族化合物(polyaromatic compound)の付加から選択される。
【0077】
上記疎水性部分の結合は、好ましくは、共有結合によるものであり、これは、カルバメート、アミド、エーテル、ジスルフィド、もしくは当業者の技術範囲内の任意の他の連結を介して達成され得る。
【0078】
従って、本発明の、疎水性改変された、好ましくは、アシル化preS由来ペプチドは、好ましくは、それらのN末端親油性もしくは疎水性の基/部分に起因して、リポペプチドである。
【0079】
好ましい疎水性改変preS由来ペプチドについては、表1および表2もまた参照のこと。
【0080】
より好ましい本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下のものである:
Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号4、および配列番号20から選択されるアミノ酸配列を含み、そして
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ステアロイル(C18)でのアシル化による疎水性改変である。
【0081】
従って、より好ましい本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下である:
【0082】
【化2】
ここで(C)は、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0083】
(遺伝子型C配列の好ましい実施形態)
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preSペプチドにおいて、Pは、遺伝子型Cに由来するアミノ酸配列を含む。
【0084】
遺伝子型Cに由来する本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、HBV感染を、その対応する遺伝子型Dのものより強力に阻害する。図3および表3もまた参照のこと。
【0085】
上記で議論されるように、本願の範囲内のHBV 「遺伝子型C」のアミノ酸配列とは、例えば、Genbank ABV02850.1に示されるように、上記HBV 遺伝子型Cに対応するかもしくはこれと同一である人工配列である。ただし、46位(以下に記載されるような番号付けに従う)は、Genbank配列におけるようなGln(Q)の代わりに、本発明の上記遺伝子型CにおいてLys(K)である;本願のHBV 遺伝子型C配列はまた、「HBV 遺伝子型C Q46K」といわれ得る。配列番号4、12、21〜27もまた参照のこと。
【0086】
上記HBV preSコンセンサス配列について上記に記載されるようなものと同じ番号付けが、上記遺伝子型C配列のアミノ酸残基の番号付けのために使用され(図2もまた参照のこと)。例えば、
Met (−11)、残基番号(−11)は、配列番号4においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly (−10)、残基番号(−10)は、配列番号4においてアミノ酸残基2として列挙され;
Met 1、残基番号1は、配列番号4においてアミノ酸残基12として列挙され;
Gly 2、残基番号2は、配列番号4においてアミノ酸残基13として列挙され、そして配列番号12においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly 48、残基番号48は、配列番号4においてアミノ酸残基58として列挙され、そして配列番号12においてアミノ酸残基47として列挙される。
【0087】
配列番号12 アミノ酸配列(これは、46位が、Gln(Q)の代わりにLys(K);Q46Kであることを除いて、HBV 遺伝子型Cの2〜48位に対応する)
【0088】
【化3】
Pは、好ましくは、以下から選択され得る:
配列番号12 (遺伝子型Cの残基2〜48)、
配列番号4 (遺伝子型Cの残基(−11)〜48)
配列番号13 (遺伝子型Cの残基2〜21),
配列番号14 (遺伝子型Cの残基5〜21)、および
配列番号15 (遺伝子型Cの残基9〜15)。
【0089】
遺伝子型C配列の好ましい実施形態において、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の式のものである:
Hm−P−Rn,
ここで、好ましくは、
Pは、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも10個連続するアミノ酸のこの配列のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、またはこれらの改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含む誘導体を含む、preS由来ペプチドであり;
Hは、上記preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、上記疎水性改変は、PのN末端のものあり、かつアシル化および疎水性部分の付加から選択され;
Rは、上記preS由来ペプチド PのC末端改変であり;
mは、少なくとも1であり;そして
nは、0または少なくとも1である。
【0090】
本発明の好ましいペプチドは、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のために、急性HBVおよび/もしくはHDV感染の予防のために、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、特に有効である。
【0091】
好ましくは、Pは、配列番号12のアミノ酸配列(遺伝子型Cの残基2〜48)を含むか、またはこれからなる。
【0092】
また、好ましくは、Pは、配列番号12のアミノ酸配列の改変体を含み、ここで改変体は、配列番号12の少なくとも10個連続するアミノ酸残基(好ましくは、残基9〜18)、より好ましくは、15個もしくは20個連続するアミノ酸配列を含み、配列番号12の11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個もしくはこれ以上のアミノ酸残基からなり得る。
【0093】
好ましくは、P中に含まれる配列番号12の連続するアミノ酸残基は、以下から選択される:
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜15 [=配列番号15]、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜15、
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜18、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜18、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜20、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜21 [=配列番号13]、
遺伝子型Cアミノ酸残基5〜21 [=配列番号14]、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜25、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜30、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜35、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜40、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜45、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜46、もしくは
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜48 [=配列番号12]。
【0094】
一実施形態において、Pは、配列番号12のそれぞれ残りのアミノ酸残基、すなわち、
遺伝子型Cのアミノ酸残基16〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基19〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基21〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基22〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基26〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基31〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基36〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基41〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基46〜48、もしくは
遺伝子型Cのアミノ酸残基47〜48、
を含み、これらは、配列番号12のそれぞれのアミノ酸残基に同一であるか、またはそれらの誘導体であるかのいずれかである。
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで上記少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはこれ以上の改変である。
【0095】
好ましいアミノ酸置換は、本明細書に記載されている。
【0096】
好ましくは、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:
−配列番号12のアミノ酸残基2〜15、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基16〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜20、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基21〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜25、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基26〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜30、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基31〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜35、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基36〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜40、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基41〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列;
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで上記少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはこれ以上の改変である。
【0097】
遺伝子型C配列の好ましい実施形態において:
Pは、配列番号12、またはそれぞれに記載される改変体/誘導体/改変から選択されるアミノ酸配列を含み、
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ミリストイル(C14)でのアシル化による疎水性改変である。
【0098】
ミリストイル化による改変は、その高い安全性(例えば、ステアロイル基の悪影響(先天的免疫応答など)がない)に起因して、インビボおよび医学的適用で好ましい。
【0099】
従って、本発明のより好ましい疎水性改変preS由来ペプチドは、
HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C) [配列番号4]
HBVpreS/2−48ミリストイル(C) [配列番号12]
HBVpreS/2−21ミリストイル(C) [配列番号13]
HBVpreS/5−21ミリストイル(C) [配列番号14]
HBVpreS/9−15ミリストイル(C) [配列番号15]、
であり:もっとも好ましくは、
HBVpreS/2−48ミリストイル(C) [配列番号12]
である。
【0100】
上記preS由来ペプチドPの上記C末端改変(R)は、好ましくは、分解(例えば、インビボでの分解)から保護する部分での改変である。
【0101】
「C末端のもの」は、C末端(すなわち、それぞれの最後のアミノ酸残基)における改変をいうが、上記C末端付近(例えば、最後から2番目のアミノ酸残基、最後から4番目のアミノ酸残基しくはそれ以降のアミノ酸残基における改変(例えば、酵素分解(例えば、カルボキシペプチダーゼの作用による)からキャリアを保護する1個のDアミノ酸の導入)もまた含む。
【0102】
当業者は、それぞれの適用に依存して、それぞれの適した部分を選択し得る。
【0103】
分解から保護する好ましい部分は、アミド、D−アミノ酸、改変アミノ酸、環状アミノ酸;天然および合成のポリマー(例えば、PEG、glycane)から選択される。
【0104】
一実施形態において、Pは、ペプチドもしくはタンパク質(好ましくは、アルブミン、ヒトIgGのFcドメインから選択される)に融合される。
【0105】
上記融合は、好ましくは、PのC末端のものである。
【0106】
さらに、nは、0または少なくとも1である(すなわち、C末端改変(R)は、選択肢的である)。
【0107】
好ましくは、nは、1である。
【0108】
本発明のさらなる実施形態において、nは、1、2、3、4もしくはこれ以上である。すなわち、上記PのC末端もしくはその付近は、1個より多くの部分もしくは基(例えば、2個)で改変され得る。上記部分もしくは基は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
本発明の一実施形態において、Hおよび/もしくはRは、リンカーもしくはスペーサーを介してPに連結される。
【0110】
リンカーもしくはスペーサーは、当業者に公知であり、例えば、ポリアラニン、ポリグリシン、糖質、(CH2)n基がある。
【0111】
当業者は、従って、それぞれの適用に依存して、それぞれの適切なリンカーもしくはスペーサーを選択し得る。
【0112】
好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドは、標識もしくはタグ(好ましくは、蛍光色素、放射性同位体および造影剤から選択される)を有する。
【0113】
好ましい放射性同位体は、131I、125I、99mTc、18F、68Ga、111In、90Y、177Luである。
【0114】
好ましい蛍光色素は、Alexa色素、ローダミンおよびフルオレセインの誘導体、Cy−色素である。
【0115】
好ましい造影剤は、ガドリニウム(Gd)錯体、超磁性鉄(Fe)錯体および粒子、より高い原子番号の原子を含む化合物(すなわち、コンピュータートモグラフィー(CT)用のヨウ素、マイクロバブルおよびキャリア(例えば、これら造影剤を含むリポソーム)である。
【0116】
本発明のペプチドは、当業者に公知の種々の手順によって、一般に、合成化学手順および/もしくは遺伝子操作手順によって、調製され得る。
【0117】
合成化学手順としては、より具体的には、固相逐次合成およびブロック合成(11)が挙げられる。上記固相逐次手順は、確立された自動化方法を使用して(例えば、自動化ペプチド合成器の使用によって)行われ得る。この手順において、α−アミノ保護されたアミノ酸は、樹脂支持体に結合される。上記使用される樹脂支持体は、(ポリ)ペプチドの固相調製のために当該分野で従来から使用されている任意の適切な樹脂(好ましくは、ポリオキシエチレンと共重合化されて、最初に導入されたo−編みの保護されたアミノ酸とエステル形成のための部位を提供するポリスチレン)であり得る。この最適化された方法は、本発明者らによって適用され、明確に記載されてきた(例えば、12を参照のこと)。上記アミノ酸は、1個ずつ(段階的に)導入される。1個のアミノ酸の導入に対応する各合成サイクルは、脱保護工程、連続洗浄抗体、上記アミノ酸の活性化を伴うカップリング工程、およびその後の洗浄工程を包含する。これら工程の各々似続いて、濾過が行われる。カップリングのための反応性薬剤は、(ポリ)ペプチド合成のための伝統的な反応性薬剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾトリアジル−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルホスホリルアジド)である。上記樹脂上でのポリペプチドの合成の後に、上記ポリペプチドは、アニソール、エタンジチオールもしくは2−メチルインドールの存在下で、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸)で処理することによって、上記樹脂から分離される。次いで、上記化合物は、伝統的な精製技術(特に、HPLC)によって精製される。
【0118】
本発明のペプチドはまた、選択的に保護されている(ポリ)ペプチドフラグメントをカップリングすることによって、得られ得、このカップリングは、例えば、溶液中で行われる。
【0119】
上記ペプチドはさらに、例えば、当業者に公知の遺伝子操作技術によってさらに生成され得る。真核生物発現系(例えば、バキュロウイルス系)は、特に適している。この手順によれば、タンパク質は、異種タンパク質をコードする核酸配列および調節核酸配列(例えば、プロモーター)を含む組換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞において発現される。いくつかの細胞株は、組換えバキュロウイルスでの感染に利用可能である(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能な細胞株Sf−9(CRL 1711))。原核生物発現系(例えば、E.coli)における発現はまた、特に適している。
【0120】
上記ペプチドへの上記疎水性部分の導入は、当業者に容易に公知である種々の手順(合成および遺伝子操作アプローチが挙げられる)によって達成され得る。
【0121】
あるいは、上記ペプチドおよび/もしくは融合ペプチド(すなわち、疎水性改変ペプチド)は、CHOおよび当該分野で公知であり、かつ通常ワクチンなどを生成するために使用される他の細胞株のような、安定にトランスフェクトした真核生物細胞株によって生成され得る。N末端の47個のpreS1アミノ酸が、ミリストイル化タンパク質/ペプチドの分泌を促進するというその本質的な特性に起因して、上記生物学的に活性な疎水性改変ペプチドは、細胞培養上清から抽出され得る。
【0122】
(本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの特徴)
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、融通の利く肝炎ウイルス侵入インヒビターであり、また、肝臓向性(hepatotropism)/肝臓向性(liver tropism)(すなわち、それらは、肝臓を標的とする)を示す。上記肝臓向性は、特に、図11に示される。
【0123】
上記肝臓向性は、本発明者らの対応米国仮特許出願(同日に出願され、その全体が本明細書に参考として援用される、発明の名称「Hydrophobic modified preS−derived peptides of hepatitis B virus (HBV) and their use as vehicles for the specific delivery of compounds to the liver」)においてさらに開示されている。
【0124】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、インビトロ(例えば、肝細胞へのHBV粒子の結合および/もしくはインターナリゼーションを防止することによって)またはインビボかのいずれかで、HBVの非常に適切かつ有効な侵入インヒビターであるが、HDVについても同様である。
【0125】
図面および実施例から認められ得るように、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、高い阻害活性を有し、すなわち、これらは、非常に低用量において、HBVおよび/もしくはHDV感染を効率的に阻害する。上記より好ましい実施形態のIC50値は、0.01〜500nM、好ましくは、0.025〜50nM、より好ましくは、0.05〜25nMの範囲内である。表1もまた参照のこと。
【0126】
遺伝子型Cに由来する本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、その対応する遺伝子型Dのものよりも強力にHBV感染を阻害する。
【0127】
さらに、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、免疫原性エピトープを含まないが、強い阻害活性をなお示すように、調節され得る(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル)。これは、その配列中に上記免疫原性エピトープを含まないが、約8nMのIC50をなお有する。
【0128】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドはまた、HBV 遺伝子型CおよびDを交叉予防し得る。なぜなら、遺伝子型Cに由来するペプチド(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル(C)もしくはHBVpreS/2−48ミリストイル(C))は、HBV遺伝子型Dの侵入を阻害し得るからである。
【0129】
(薬学的組成物およびワクチン組成物)
上記で概説されるように、本発明は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0130】
本発明に従う薬学的組成物は、以下を含む:
−本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド;
−本明細書で定義される結合体;および
−必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤。
【0131】
本発明に従う薬学的組成物は、本明細書で記載される使用および方法のすべてに非常によく適している。
【0132】
上記で概説されるように、本発明は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含むワクチン組成物を提供する。
【0133】
本発明に従うワクチン組成物は、本明細書に記載される使用および方法に非常によく適している。
【0134】
「薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤」とは、本発明に従う薬学的組成物もしくはワクチン組成物がそこでもしくは一緒に処方され得る任意のビヒクルをいう。これは、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)を含む。一般に、希釈剤もしくはキャリアは、投与の態様および経路、ならびに標準的な薬学的実務に基づいて選択される。
【0135】
(医学的適用)
上記で概説されるように、本発明は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくは本発明のそれぞれの薬学的組成物の第1の医療用途を提供する。
【0136】
従って、本発明に従うHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、疾患の診断、予防および/もしくは処置のために適切であり、従って、そのために提供される。
【0137】
上記で概説されるように、本発明は、特定の疾患の診断、予防および/もしくは処置のために、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくはそれぞれの薬学的組成物をさらに提供する。
【0138】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害ために;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のために、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、好ましくは、慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、提供される。
【0139】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための医薬の製造のために、使用される。
【0140】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のために提供される。
【0141】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のために提供される。
【0142】
好ましくは、HBVの任意の遺伝子型のHBV感染が、阻害されるかもしくは予防される。
【0143】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、HBV 遺伝子型CおよびDを交叉予防し得る。なぜなら遺伝子型Cに由来するペプチド(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル(C)もしくはHBVpreS/2−48ミリストイル(C))は、HBV 遺伝子型Dの侵入を阻害し得るからである。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDVの侵入インヒビターとして使用される/提供される。
【0145】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、B型肝炎および/もしくはD型肝炎の、特に慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために提供される。
【0146】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、インビトロ(例えば、肝細胞へのHBV粒子の結合および/もしくはインターナリゼーションを防止することによって)またはインビボのいずれかで、HBV、しかしまた、HDVの非常に適切かつ有効な侵入インヒビターである。
【0147】
さらに、本発明は、HBVによる肝細胞感染のインビトロ阻害のための方法を提供し、上記方法は、上記疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物を使用する工程を包含する。
【0148】
適切な肝細胞としては、ヒト初代肝細胞もしくは肝癌由来細胞株HepaRG(22)(特許出願FR 0109044に記載される)、Tupaia belangeri由来の肝細胞(23)が挙げられ、これらはまた、HBV感染に感受性である。
【0149】
さらに、および上記で概説されるように、本発明は、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物を利用することによって、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するための方法;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を予防するための方法、ならびに/または(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処置するための方法を提供する。
【0150】
(投与経路)
好ましくは、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物の投与経路は、皮下、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、経皮、吸入可能なもの、坐剤によるものから選択される。
【0151】
経鼻投与もしくは適用のための好ましい実施形態は、鼻用スプレーである。
【0152】
(治療上有効な量)
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、それらが上記薬学的組成物で、治療上有効な量の上記疎水性改変preS由来ペプチドを含むように、提供される。
【0153】
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物の「治療上有効な量」とは、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するために;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を予防するために;B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処理するために、そして/あるいはインビボでHBVおよび/もしくはHDVに対するワクチン接種する、ならびに/またはその侵入を阻害するのに十分である量をいう。
【0154】
好ましい、治療上有効な量は、1kg 体重あたり、10μg〜1mg、好ましくは、10μg〜100μgの範囲内である。
【0155】
ワクチンとしての本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの使用については、上記好ましい治療上有効な量は、1kg体重あたり、10μg〜1mgの範囲内である。
【0156】
約10nMという、使用される疎水性改変preS由来ペプチドのIC50値の場合、好ましい治療上有効な量は、約100μg/kg体重であるか、または患者1名あたり1〜5mgの範囲内である。患者1名あたり1〜5mgの範囲内の上記好ましい治療上有効な量は、1日に1階投与され得るか、または他の実施形態においては、わずか2〜3日ごとに1階投与され得る。
【0157】
上記好ましい治療上有効な量は、それぞれの適用、および望ましい阻害、処置もしくはワクチン接種の結果に依存する。
【0158】
当業者は、適切な治療上有効な量を決定し得る。
【0159】
(HBVレセプターの同定)
本発明はさらに、HBVの結合および/もしくは侵入に関与する肝細胞レセプターのインビトロおよび/もしくはインビボでの同定、ならびに/または上記の疎水性改変preS由来ペプチドを使用する工程を包含する、上記レセプターの発現の定量のための方法に関する。
【0160】
上記肝細胞レセプターは、哺乳動物もしくはそれぞれの動物モデル(好ましくは、マウスもしくはヒト)において同定され得る。
【0161】
特に、上記方法は、以下の工程を包含する:
−肝臓生検物もしくは肝細胞と、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドとを、肝細胞の表面において発現されるレセプターへの上記ペプチドの特異的結合を可能にするに十分な条件下および期間にわたって、接触させる工程;
−レセプターへの上記ペプチドの結合を決定する工程;および
−上記レセプターを同定する工程。
【0162】
これは、当業者によって周知の古典的手順に従って達成され得る。例えば、これは、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの放射活性標識、酵素標識もしくは経口標識、および適切な方法でのその後の検出を包含し得る。多くの蛍光物質が公知であり、標識として利用され得る。これらとしては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、DIGE標識が挙げられる。酵素標識は、目的の分子(例えば、ポリペプチド)への酵素の結合体化を含み、比色的技術、分光光度的技術、もしくは蛍光分光光度的技術のいずれかによって検出され得る。
【0163】
本発明者らは、インビトロおよびインビボでHBV侵入を効率的にブロックする、HBV−preS1−表面タンパク質由来リポペプチドを同定した。これら阻害性ペプチドに関する本発明の生体分布研究は、上記ペプチドが、肝臓中に選択的に蓄積され、ここで肝細胞へ結合し、そしておそらく肝細胞へ侵入することを明らかにした。この肝細胞向性は、上記ペプチドのN末端アシル化を要し、N末端の47個のpreS1アミノ酸内の(すなわち、上記アミノ酸残基2〜21(もしくは好ましくは、残基9〜15の最小配列)内の)特定のHBV preS配列モチーフに依存する。このペプチド配列が、形質膜を横断してさらに完全な融合タンパク質の輸送を促進する膜移動シグナル(membrane translocation signal)をさらに有する(未発表結果)という本発明者らの観察は、任意の種の薬物を、肝細胞の形質膜へ特異的に送達するか、またはこの細胞へすら選択的に送達するという可能性を開く。
【0164】
本発明者らは、HBV preS1由来リポペプチドが、移植されたuPA−RAG−1マウスモデルにおいて、非常に低用量でHBV感染を完全に予防し得ることを示した。これらHBVpreS由来侵入インヒビターに関する薬物動態研究はさらに、並外れて高い血清安定性(t1/2 約60時間)と合わせて、顕著な肝臓向性、および標的器官における長期の半減期(t1/2 約24時間)を示した。N末端アシル化および上記ペプチドの特定のアミノ酸配列の完全性の両方が、必要である。上記ペプチドは、従って、肝細胞の感染を抑えるために、または肝細胞癌を処置するために、肝臓特異的薬物標的化のための融通の利くベクターとしても使用され得る(同日付で出願された発明の名称「Hydrophobic modified preS−derived peptides of hepatitis B virus (HBV) and their use as vehicles for the specific delivery of compounds to the liver」の本発明者らの対応米国仮特許出願もまた参照のこと)。
【0165】
本発明者らは、WMHBV感染が、インビボでのHBVエンベロープタンパク質由来ペプチドの皮下適用を介して効率的にブロックされ得るという原理をさらに証明した。このことは、急性HBV感染の予防および慢性B型肝炎の治療選択肢のための新たな展望を開く。本発明において使用される上記uPA/RAG−2/Pfpマウスは、B細胞、T細胞、およびNK細胞を欠いているので、感受性肝細胞に対する上記ペプチドの直接的阻害効果が評価される。このことは、肝臓におけるアシル化preS由来ペプチドの効率的蓄積、続いて、胆管経路をおそらく介するゆっくりとしたクリアランスによって裏付けられる。両方の特性が、非常に低用量かつ低頻度での皮下適用を可能にする。5日以内で0.2mg/kg HBV/preS2−48ミリストイルの5回の注射が、WMHBV感染の樹立の予防を生じたと仮定すると、約30倍以上の活性ペプチドHBV/preS2−48ステアロイルの連続投与は、7μg/kg未満の用量において、毎日もしくは2日ごとに与えられる場合には約13nmol/kgの用量で有効であり得る。マウスにおいて得られた体重あたり、効率的な薬理学的用量が、約10倍してヒトについて較正されなければならない(13)ことを考慮に入れると、一人あたりの有効用量は、100μg/日より低いと予測される。
【0166】
慢性HBV感染の処置のためのヌクレオシド(ヌクレオチド)アナログベースのレジメンは、しばしば、耐性変異体の選択を生じた(4,14)。このことは、HBV複製サイクルの異なる工程に対処する、代替のストラテジーおよび新たな薬物を要求する。HBVリポペプチドでの侵入阻害は、このようなアプローチを代表する。作用様式に依存して、本発明者らは、任意の種のヌクレオシド(ヌクレオチド)耐性変異体に対する有効性を想定する。さらに、上記ペプチドの活性は、上記preS1ドメインにおける保存された配列を要する(15)ので、上記ペプチドは、任意のHBV−遺伝子型に対して活性である。HIV gp41タンパク質を標的とし、従って、分子内代償変異の出現を可能にするFuzeon(登録商標)とは対照的に、以前の研究は、アシル化HBV−リポペプチドが、細胞成分に対処して、HBVとそのレセプターとの相互作用を防止することを示す(16,17)。従って、耐性変異体の出現は、ありそうにないようである。
【0167】
HBVpreS由来リポペプチドの臨床的適用のための明らかな適応症は、まだ樹立されていないHBV感染の予防(例えば、曝露後予防、垂直伝播もしくは肝臓移植の再感染の予防)である。しかし、侵入インヒビターはまた、例えば、インターフェロンαもしくはウイルスRTのインヒビターとの組み合わせにおいて、慢性的に感染した患者において有効である。HBV慢性感染の維持は、一方では、免疫系によって一掃された感染肝細胞の動的ターンオーバーに、および他方では、治癒した細胞/未感染細胞(naive cell)の(再)感染に依存し得る(18)ので、感染の広がりを抑制し、かつ抗ウイルス処置かで耐性株の出現を抑制するために、uPAキメラ系におけるこのような治療アプローチの効力を評価することは、興味深い(19)。
【0168】
HBVpreS由来リポペプチドはまた、HDV(肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するサテライトウイルソイド)のインビトロ感染を阻害する(15,17,20)。今日までに、HDV乾癬の有効な治療は存在しなかったので、preS由来リポペプチドは、このしばしば複雑化した肝臓疾患の第1の選択的治療を代表する。
【0169】
免疫能のある患者におけるHBVpreS由来リポペプチドの適用は、細胞性免疫反応および体液性免疫反応を誘発する。このことは、治療結果にとって有益である。なぜなら、HBVpreS/2−48のエピトープを認識する抗体は、インビトロでのHBV感染を中和することが公知だからである(21)。さらに、天然の感染におけるウイルス排除は、HBVpreS特異的免疫の連続的確立を要することが推測された。従って、ウイルス侵入の直接的介入に加えて、上記ペプチドによるpreS特異的免疫応答の刺激は、細胞溶解性もしくは非細胞溶解性免疫反応を介して、特に、IFNαと組み合わせて、ウイルス排除に寄与し得る。
【0170】
【表1−1】
【0171】
【表1−2】
ミリストイルとは、上記N末端のミリストイル化をいう;
パルミトイルとは、N末端のパルミトイル化をいう;
ステアロイルとは、N末端のステアロイル化をいう;
(C)とは、遺伝子型C(配列番号4におけるように、Q46Kを有する)をいう;
(D)とは、遺伝子型Dをいう;
*ペプチドは、図に示される;
**最小配列。
【0172】
【表2】
ミリストイルとは、N末端のミリストイル化をいう;
ステアロイルとは、N末端のステアロイル化をいう;
(C)とは、遺伝子型C(配列番号4におけるように、Q46Kを有する)をいう;
(D)とは、遺伝子型Dをいう。
【0173】
【表3】
図3もまた参照のこと。
ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0174】
【表4】
図4もまた、参照のこと。
【0175】
【表5】
図5もまた、参照のこと。
【0176】
【表6】
図6もまた、参照のこと。
【0177】
【表7】
図7もまた参照のこと。
【0178】
【表8】
配列番号16のレトロインベルゾアミノ酸配列は、C末端からN末端の方向。
図8もまた参照のこと。
【0179】
【表9】
図9もまた参照のこと。
【実施例】
【0180】
(方法)
(HBVの疎水性改変preS由来ペプチドの合成)
合成を、例えば、(16)に記載されるように行った。
【0181】
(細胞株および初代細胞培養物)
HepaRG細胞を、ウイリアムのE培地(10% ウシ胎仔血清(FCS)、100ユニット/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、5μg/ml インスリンおよび5×10−5M ヒドロコルチゾンヘミスクシネートを補充)中で増殖させた(16)。細胞を、2週間ごとにトリプシン処理によって1/5を継代した。感染の2〜3週間前に、細胞分化を、2% DMSOを維持培地に添加することによって誘導した。上記培地を、2〜3日ごとに交換した。
【0182】
(感染競合アッセイ)
感染性接種物として、制限なしの供給および一定の品質があるので、HepG2クローン2.2.15(23)細胞の50倍濃縮した培養培地を使用した。これを、新たに集めた上清から、6% ポリエチレングリコール(PEG)8000の存在下でウイルス粒子を沈殿させることによって調製した。そのペレットを、25% FCSを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で懸濁した。アリコートを、−80℃において保存した。分化したHepaRG細胞もしくはPHHを、20時間にわたって37℃において、4% PEG 8000(Sigma)を補充した培養培地中で10倍希釈した上記濃縮した感染源とともにインキュベートした。上記インキュベーションの最後に、細胞を、上記培養培地で3回洗浄し、2% DMSOおよび5×10−5M ヒドロコルチゾンヘミスクシネートの存在下で維持し、示された時間において採取した。
【0183】
競合実験を、12ウェルプレートにおいて行った。約1×106細胞を最初に、30分間にわたって、化学的に合成したHBV由来ペプチドとともに予備インキュベートし、続いて、細胞と、ペプチドおよびウイルスとを20時間にわたって同時インキュベートした。すべての競合シリーズを、少なくとも2回行い、1つの代表的実験の結果を、各場合において示す(図3〜7を参照のこと)。
【0184】
HepaRG細胞を、以下の非存在(0nM)下もしくは存在下でいずれかに感染させた:
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および2000nM
・HBVpreS/2−48ミリストイル(D)、
・HBVpreS/2−48ミリストイル(C)、
・HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(C)および
・HBVpreS/(−11)−48ステアロイル(C);または
−以下を0.125nM;0.25nM;0.5nM;0.75nMおよび1nM
・HBVpreS/2−48ミリストイル(コンセンサス)、
・HBVpreS/2−48 ステアロイル(コンセンサス)、
−以下を1nM、5nM、25nM、100nMおよび1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−15ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−21ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−26ステアロイル(D)および
・HBVpreS/2−33ステアロイル(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D),
・HBVpreS/2−33ステアロイル(D),
・HBVpreS/5−33ステアロイル(D),
・HBVpreS/5−48ステアロイル(D),
・HBVpreS/9−33ステアロイル(D)および
・HBVpreS/9−48ステアロイル(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D−AS11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ17−21)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala17−21)(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(レトロインベルソ)(D)および
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala21,23,29,30)(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala18)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ser13)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Arg11)(D);または
−以下を50nM、100nM、150nM、250nM、および1000pM(0.05nM、0.1nM、0.25nM、および1nM)
・HBVpreS/2−48ミリストイル(C)および
・HBVpreS/2−48ステアロイル(C)、
ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0185】
感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【0186】
結果を、図3〜9および図12、同様に、表3〜9に示す。
【0187】
(疎水性改変preS由来ペプチドの生体分布)
上記疎水性改変preS由来ペプチドの生体分布を、雄性NMRIマウスにおいて研究した。すべての実験を、ドイツ法に従って行った。C末端においてさらなるTyr−残基を含む上記ペプチドを、131I(Amersham Biosciences,Freiburg,Germany)で、クロラミン−T法によって標識し、HPLCによって精製した。上記標識ペプチドを、50% DMSO中の溶液の注射によって皮下注射した。選択した時間において、マウスを屠殺し、血液、心臓、脾臓、肝臓、腎臓、筋肉および脳中に含まれる放射活性を、γ−カウンター(Canberra Packard,Ruesselsheim,Germany)で測定し、注射用量/g 組織のパーセンテージ(%ID/g)として表した。
【0188】
(肝臓から抽出した後の疎水性改変preS由来ペプチドの安定性評価)
肝臓における上記ペプチド安定性を決定するために、131I標識したHBVpreS/2−48ミリストイル(D)を、皮下注射の24時間後に肝臓1葉から抽出した。その目的のために、1g 凍結肝臓組織あたり1ml 水を、上記サンプルに添加した。均質化した後、等容積のアセトニトリルを添加し、上記均質化を反復した。遠心分離(4000×gで2×10分)後、この溶液を、逆相HPLCカラム上で分離し、その各画分の放射活性を、γカウンターで定量した。
【0189】
前述の説明において、特許請求の範囲においておよび/もしくは添付の図面において開示される特徴は、別個に、およびこれらの任意の組み合わせの両方において、本発明をその多様な形態において実現するために必須であり得る。
【0190】
参考文献
【0191】
【化4−1】
【0192】
【化4−2】
【図1A】
【図1B】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HBV preSコンセンサス配列に由来し、N末端が好ましくはアシル化され、そして必要に応じてC末端が改変されている、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドに関する。これらHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、非常に効率的なHBV侵入インヒビター、ならびにHDV侵入インヒビターであり、従って、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害、HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防、ならびに(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置に適している。本発明はさらに、これらHBVの疎水性改変preS由来ペプチドを含む、薬学的組成物およびワクチン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
今日、約20億もの人々が、HBVの血清学的マーカーを有している。そのうちの約4億人が、HBVに慢性的に感染している。疾病管理予防センター(CDC)によれば、慢性HBV感染者のうちの15〜25%は、適切な処置を受けなければ、10年以内に肝細胞癌(HCC)を発症させる傾向がある(1)。HBV関連HCCは、予後不良であり、従って、HBVは、世界保健機関(WHO)によって、もっとも重要な天然に存在するヒトの発癌物質として分類された。予防的ワクチンの存在にも関わらず、感染数は、世界人口の増加および経済的に困窮した国々における予防の限界に起因して、来るべき10年間において上昇する。
【0003】
先進国において、HBVは、非経口経路を介して主に伝染する。実際に感染した、免疫能のある固体のうちの90〜95%は、このウイルスを一掃し、それによって、寿命の長さの免疫防御を得る。彼らのうちの約5〜10%は、慢性B型肝炎を発症させる(ドイツにおいて300,000〜500,000人)。対照的に、非常に蔓延した地域(特に、中央アフリカおよび東アジア)においては、伝染の主な態様は、母から子への垂直感染である。不運なことに、完全に免疫能があるわけではない子供の感染は、この疾患について、90〜98%の慢性経過をたどる。B型肝炎関連HCCは、従って、これらの国々においてもっとも一般的な悪性疾患である。
【0004】
慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染の処置について現在承認されている治療レジメンは、すでに確立された感染の後にウイルス・ゲノムの複製工程に対処する(ラミブジン、アデフォビル、エンテカビル)か、または免疫系のモジュレーターとして作用する(インターフェロンα)かのいずれかである。不運なことに、上記患者のうちのわずか10〜25%が、このような治療に対して持続したウイルス学的応答を残しているに過ぎず、これは、とりわけ、ヌクレオチド(ヌクレオシド)耐性変異体の素早い選択を示している。予防的ワクチンの利用可能性にもかかわらず、その結果、これまで影響を受けていない複製工程(例えば、ウイルス侵入)を標的とする新規な治療剤を開発することは、最も重要である。
【0005】
ウイルス侵入の特異的阻害は、急性および慢性感染を制御しかつ最終的に排除するための魅力的な治療概念である。HIVについては、ウイルス侵入への介入は、36アミノ酸(Fuzeon(登録商標))からなるgp41タンパク質由来ペプチドによって首尾よく達成されてきた。このペプチドは、ウイルス膜と細胞膜との融合を妨げる(2)。
【0006】
予防的ワクチンおよび逆転写酵素(RT)インヒビターの利用可能性にもかかわらず、HBV感染の人数および全世界でのHBV関連の死亡数(現在では約500,000人/年)は、増加しつつある。原発性肝臓癌の約2/3は、持続性のHBV感染に特徴がある(3)。
【0007】
現在の処置は、2つのストラテジーを追求する:(i)インターフェロン(IFNα)処置は、HBVに対する免疫応答を調節し、直接的な抗ウイルス効果を示す。このことは、上記ウイルスの根絶なしに、処置した患者のうちの約30%において、長期の臨床的利益をもたらす;(ii)ウイルス逆転写酵素インヒビターの投与は、ウイルス複製を抑制し、1年間の処置の後に、顕著な生化学的かつ組織学的改善が付随する。しかし、長期の処置は、耐性ウイルス株の出現と関連している(4)。
【0008】
HBVは、哺乳動物およびトリの小さなエンベロープに包まれたDNAウイルスファミリーのプロトタイプである(5)。上記HBVエンベロープは、L−(大)、M−(中)およびS−(小)といわれる3つのタンパク質を包んでいる(図1Aを参照のこと)。これらは、4つの膜貫通領域とC末端のSドメインを共有している。上記M−タンパク質およびL−タンパク質は、55アミノ酸(preS2)、および遺伝子型に依存して、107アミノ酸もしくは118アミノ酸(preS1)のさらなるN末端伸長を有している(図1Bを参照のこと)。ビリオンにおいて、L、MおよびSの化学量論比は、約1:1:4である一方で、より豊富に分泌される非感染性サブウイルス粒子(SVP)は、ほぼもっぱらS−タンパク質および極微量のL−タンパク質を含む(6)。合成の間に、上記LのpreS1ドメインは、ミリストイル化され、ERを介して場所を変えられる。この改変は、HBV感染性にとって必須である(7,8)。
【0009】
HBV感染の初期事象の研究は、制限されてきた。なぜなら、細胞培養系も、小動物モデルも、近年まで利用可能でなかったからである(9)(非特許文献1)。上記HBV感受性細胞株HepaRGの開発は、HBV侵入の体系的調査を促進し、エンベロープタンパク質由来侵入インヒビターの発見をもたらした(10)(非特許文献2)。
【0010】
さらに、今日までに、サテライトウイルソイドが肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するHDV感染の有効な治療は存在しない(15,17,20)(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。HDV感染に対する有効な治療を提供することが当該分野では必要である。
【0011】
従って、本発明は、先行技術において存在する場合、HBV感染および他のHBV関連疾患の阻害、予防および/もしくは処置のための方法および手段を改善することを目的とし、従って、本発明の目的は、HBV感染およびHBV関連疾患の標的とされかつ効率的な阻害、予防および/もしくは処置を可能にする改善された方法および手段を提供することである。
【0012】
さらなる本発明の目的は、HDV感染およびHDV関連疾患の上記感染、予防および/もしくは処置のための方法および手段を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Glebe, D.およびUrban, S. Viral and cellular determinants involved in hepadnaviral entry. World J Gastroenterol(2007)13, 22−38
【非特許文献2】Gripon, P.ら、Infection of a human hepatoma cell line by hepatitis B virus. Proc Natl Acad Sci U S A(2002)99, 15655−15660
【非特許文献3】Engelke, M.ら、Characterization of a hepatitis B and hepatitis delta virus receptor binding site. Hepatology(2006)43, 750−760
【非特許文献4】Barrera, A.、Guerra, B.、Notvall, L.およびLanford, R.E. Mapping of the hepatitis B virus pre−S1 domain involved in receptor recognition. J Virol(2005)79, 9786−9798
【非特許文献5】Taylor, J.M. Hepatitis delta virus. Virology(2006)344, 71−76
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明によれば、この目的は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドを提供することによって解決される。
【0015】
上記疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の一般式:
Hm−P−Rn,
を有し、
Pは、上記preS由来ペプチドであり、HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸配列もしくはその改変体を含む。
【0016】
Hは、上記preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、上記疎水性改変は、PのN末端のものであり、疎水性部分のアシル化および付加から選択される;ここでmは、少なくとも1である。
【0017】
Rは、必要に応じて、上記preS由来ペプチド PのC末端改変である(すなわち、nは、0もしくは少なくとも1である)。
【0018】
本発明によれば、この目的は、本明細書に定義される少なくとも1個のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む薬学的組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0019】
本発明によれば、この目的は、上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくは疾患の診断、予防および/もしくは処置のための、本発明のそれぞれの薬学的組成物を提供することによってさらに解決される。
【0020】
本発明によれば、この目的は、上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチド、またはHBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、および/もしくはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、本発明の薬学的組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0021】
本発明によれば、この目的は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/または(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、医薬の製造のために上記HBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは本発明の薬学的組成物を使用することによって、さらに解決される。
【0022】
本発明によれば、この目的は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは本発明の薬学的組成物を利用することによる、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するための方法;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を阻害するための方法、および/もしくは(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処置するための方法によって、さらに解決される。
【0023】
本発明によれば、この目的は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含むワクチン組成物を提供することによって、さらに解決される。
【0024】
以下の実施例および図面は、本発明を例示するが、本発明に対する限定ではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、HBV粒子、ならびにHBV L−タンパク質、M−タンパク質およびS−タンパク質の模式図である。(A)部分的二本鎖DNAは、末端タンパク質(TP)、逆転写酵素(RT)およびRNaseHからなるウイルスポリメラーゼ複合体と供給結合している。そのゲノムは、120個のコアタンパク質ダイマーから作られる二十面体の殻によって包まれている。上記3個のHBV表面タンパク質L−、M−およびS−は、ER由来脂質二重層へと埋め込まれる。上記L−タンパク質およびM−タンパク質は、膜アンカーとして働く完全Sドメインを含む。(B)上記3個のHBV表面タンパク質L、MおよびSのドメイン構造。上記L−タンパク質は、N末端がミリストイル化された107個アミノ酸のpreS1−ドメイン、55個アミノ酸のpreS2−ドメイン、および4回膜貫通セグメント(I〜IV)を含むS−ドメインを含む。
【図2】図2は、HBV preS1コンセンサス配列である。一番上:そのpreS1、preS2およびS−ドメインを有する上記HBV L−タンパク質が示される。そのN末端は、ミリストイル化されている。下のアラインメントは、アミノ酸2〜50を含む、コンセンサス配列(コンセンサス)および8個のHBV 遺伝子型(A〜H)、ならびにウーリーモンキーHBV(WMHBV) preS配列を示す。上記遺伝子型A、B、C、E、GおよびHは、それらのN末端において11個のさらなるアミノ酸を有し、遺伝子型Fは、10個のさらなるアミノ酸残基を有することに注意のこと。一番下において、既知の機能的サブドメインが示される。HBV 遺伝子型Cとは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいうことにも注意のこと。
【図3】図3は、上記2つの遺伝子型CおよびDのミリストイル化およびステアロイル化したHBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ミリストイル(D)、HBVpreS/2−48ミリストイル(C)、HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C)、HBVpreS/2−48ステアロイル(C)およびHBVpreS/(−11)−48ステアロイル(C)の非存在(0nM)下、およびこれらの1nM、5nM、25nM、100nMおよび2000nMの存在下で、いずれかに感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを、一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。ここで(C)もしくは遺伝子型Cは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【図4】図4は、コンセンサス配列を有する、ミリストイル化およびステアロイル化したHBVpreS由来ペプチドの感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ミリストイル(コンセンサス)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(コンセンサス)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの0.125nM;0.25nM;0.5nM;0.75nMおよび1nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを、一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図5】図5は、遺伝子型DのC末端が欠失したステアロイル化HBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−15ステアロイル(D)、HBVpreS/2−21ステアロイル(D)、HBVpreS/2−26ステアロイル(D)およびHBVpreS/2−33ステアロイル(D)の非存在(0nM)下、ならびにこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図6】図6は、遺伝子型DのN末端およびC末端が欠失したステアロイル化HBVpreS由来ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−33ステアロイル(D)、HBVpreS/5−33ステアロイル(D)、およびHBVpreS/5−48ステアロイル(D)、HBVpreS/9−33ステアロイル(D)およびHBVpreS/9−48ステアロイル(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図7】図7は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(D−AS11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ17−21)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala17−21)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Ala2−9)(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図8】図8は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドの比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(レトロインベルゾ)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Ala21,23,29,30)(D)の非存在(0nM)下、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図9】図9は、遺伝子型Dの内部変異したステアロイル化HBVpreS/2−48ペプチドのさらなる比較感染阻害アッセイである。HepaRG細胞を、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala18)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ11−15)(D)、HBVpreS/2−48ステアロイル(Ser13)(D)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(Arg11)(D)の非存在(0nM)、もしくはこれらの1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nMの存在下のいずれかで、感染させた。感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【図10】図10は、本発明において使用される遺伝子型Dのステアロイル化HBVpreS由来ペプチドである。
【図11】図11は、本発明の疎水性改変preSペプチドがインビボ肝臓向性を示すことを示す。A マウスにおけるHBVpreS/2−48 Tyrステアロイル(D)の生体分布。B マウスにおけるHBVpreS/5−48 D−Tyrステアロイル(D)の生体分布。C マウスにおけるHBVpreS/2−33−D Tyrステアロイル(D)の生体分布。
【図12】図12は、Myrcludex BによるHepaRG細胞に対するHBV感染、アシル化の効果である。Myrcludex Bとは、HBVpreS/2−48(C)(ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう)をいう。ステアロイル化およびミリストイル化したHBVpreS/2−48(C)、HBVpreS/2−48ミリストイル(C)およびHBVpreS/2−48ステアロイル(C)を比較する、競合アッセイ。試験した濃度は、完全な競合を有しないように、1nM未満であった。示されるのは、HBeAg測定値(接種後7〜14日目)である。図3〜9に示される実験と同じ反応および感染条件。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本発明の好ましい実施形態の説明)
本発明が以下により詳細に記載される前に、本発明が本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されないことが理解されるきである。なぜなら、これらは変化し得るからである。本明細書で使用される用語法が、記載されている特定の実施形態のみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないこともまた、理解されるべきである。別段定義されなければ、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般に理解されているものと同じ意味を有する。本発明の目的のために、本明細書で引用されるすべての参考文献は、それらの全体が本明細書に参考として援用される。
【0027】
(HBVの疎水性改変preS由来ペプチド)
上記で概説されるように、本発明は、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドを提供する。
【0028】
HBVのエンベロープは、L(大)、M(中)およびS(小)といわれる3つのタンパク質を包んでいる(図1Aを参照のこと)。それらは、4つの膜貫通領域とC末端のSドメインを共有している。上記M−タンパク質およびL−タンパク質は、55アミノ酸、および遺伝子型に依存して、107アミノ酸もしくは118アミノ酸(preS2およびpreS1)のさらなるN末端伸長を有している(図1Bを参照のこと)。
【0029】
従って、表現、本発明に従うHBVの「preS由来」ペプチドとは、HBV(preS1)のL−タンパク質のN末端伸長、好ましくは、上記種および遺伝子型A〜Hの、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)、チンパンジーおよびゴリラB型肝炎ウイルスのコンセンサス配列に対応するアミノ酸配列を有するペプチドをいうが、その改変体(好ましくは、N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、アミノ酸置換改変体)をもいう。
【0030】
配列番号1は、上記種および遺伝子型A〜H、ならびにウーリーモンキー(WMHBV)のHBV preSコンセンサスアミノ酸配列を示す。
【0031】
アミノ酸2〜48を示す、上記HBV preSコンセンサス配列(コンセンサス)および上記8つのHBV 遺伝子型(A〜H)、ならびにウーリーモンキーHBV(WMHBV)preS配列を示す、図2におけるアラインメントを参照のこと。遺伝子型A、B、C、E、F、GおよびHは、それらのN末端において最大11個までのさらなるアミノ酸を有することに注意のこと。
【0032】
本願内の上記HBV「遺伝子型C」のアミノ酸配列は、46位(以下に記載されるような番号に従って)が、Genbank配列におけるようなGln(Q)の代わりに、本発明の遺伝子型CにおいてLys(K)であることを除いて、例えば、Genbank ABV02850.1に示されるように、上記HBV 遺伝子型Cに対応するかもしくはこれと同一である人工配列をいう;本願のHBV 遺伝子型C配列はまた、「HBV 遺伝子型C Q46K」といわれ得る。配列番号4、12、21〜27をまた参照のこと。
【0033】
図2はまた、上記HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸残基の番号付けを示す。この番号付けは、本明細書全体を通して言及される。
【0034】
アミノ酸残基番号1は、遺伝子型D(以前は、サブタイプaywと記載されていた。配列番号5もまた参照のこと)のメチオニン(Met1)であるのに対して、アミノ酸残基番号(−11)は、遺伝子型C(配列番号4)のメチオニン(Met(−11))である。インビボで、それぞれ、Met1もしくはMet(−11)は、細胞のメチオニルアミノペプチダーゼによって切断され、ミリストイル−CoAから、それぞれ、アミノ酸残基番号2のグリシン(Gly2)もしくはアミノ酸残基番号(−10)グリシン(Gly(−10))へのN−ミリストイルトランスフェラーゼによるミリストイル残基のその後の転移によって、改変される。遺伝子型Dの上記N末端アミノ酸残基は、天然のアミノ酸グリシン(Gly2)であり、Lの基礎をなすオープンリーディングフレーム(もしくは、例えば、遺伝子型CについてはGly(−10))のコドンからのそれぞれの番号付けに従って、2に番号付けされる。
【0035】
上記HBV preSコンセンサス配列はまた、遺伝子型A、B、C、E、F、GおよびHの上記さらなるN末端アミノ酸(「−」位において示される)を含む。従って、HBV preSコンセンサス配列のうちのすべてにおいて、(−11)〜48位が含まれる。
【0036】
従って、配列番号1におけるアミノ酸の上記の番号付けと実際の列挙との間には差異が存在する。例えば、
Met(−11)、残基番号(−11)は、配列番号1においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly(−10)、残基番号(−10)は、配列番号1においてアミノ酸残基2として列挙され;
Met 1、残基番号1は、配列番号1においてアミノ酸残基12として列挙され;
Gly 2、残基番号2は、配列番号1においてアミノ酸残基13として列挙され;
Gly 48、残基番号48は、配列番号1においてアミノ酸残基58として列挙される。
【0037】
【化1−1】
【0038】
【化1−2】
本発明に従うHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の式を有する:
Hm−P−Rn,
ここで
Pは、上記preS由来ペプチドであり;
Hは、Pの疎水性改変であり;
Rは、PのC末端改変であり;
mは、少なくとも1であり;
nは、0もしくは少なくとも1である。
【0039】
本発明に従うHBVのpreS由来ペプチド、Pは、以下を含む:
−配列番号1に示されるような上記HBV preSコンセンサス配列のアミノ酸配列、もしくは
−その改変体。
【0040】
「改変体」は、好ましくは、N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、アミノ酸置換もしくは欠失改変体、または長くされた改変体である。改変体は、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物、またはペプチド骨格/構造を模倣し得るさらなる化合物を含むアミノ酸配列をさらに含む。
【0041】
好ましくは、改変体は、配列番号1のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体;アミノ酸置換もしくは欠失改変体;改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物、またはペプチド骨格/構造を模倣し得るさらなる化合物を含む改変体から選択される。
【0042】
本発明によれば、疎水性改変preS由来ペプチドの改変体は、配列番号1の少なくとも10個もしくは20個連続するアミノ酸を含み、そして配列番号1の11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個以上のアミノ酸もしくはその改変体からなり得る。
【0043】
N末端および/もしくはC末端が短縮された改変体は、好ましくは、配列番号1の少なくとも48個連続するアミノ酸(好ましくは、残基2〜48)、より好ましくは、配列番号1の少なくとも17個連続するアミノ酸(好ましくは、残基5〜21)または配列番号1の少なくとも20個連続するアミノ酸(好ましくは、残基2〜21)を含む。
【0044】
用語「改変体」はまた、ヘパドナウイルス属の異なるウイルス種、株もしくはサブタイプ(例えば、HBV株α1、HBV株LSH(チンパンジー分離株)、ウーリーモンキーHBV(WMHBV)、または上記HBV 遺伝子型A〜Hからなる群より選択される株、ならびに本明細書で定義される上記HBV 遺伝子型C、Q46K(例えば、配列番号4))において見いだされる相同な配列をいう。
【0045】
用語「改変体」はまた、配列番号1もしくは本明細書で開示される任意の他のアミノ酸配列に対して、少なくとも50%の配列同一性、好ましくは、70%、より好ましくは、80%、さらにより好ましくは、90%もしくは95%の配列同一性を示す相同な配列をいう。
【0046】
従って、本発明に従う、好ましい疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、異なるウイルス種、株もしくはサブタイプの(好ましくは、上記HBVの遺伝子型のもしくはウーリーモンキーHBV(WMHBV)の、またはこれらの改変体の)アミノ酸配列を有する、配列番号1の改変体を含む。
【0047】
好ましくは、Pは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体(図2もまた参照のこと)を含み得る。
【0048】
好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む:
配列番号1に示されるHBV preSコンセンサス配列の
アミノ酸残基2〜21、
アミノ酸残基5〜21、
アミノ酸残基5〜15もしくは
アミノ酸残基9〜15([配列番号15]もまた参照のこと)。
【0049】
より好ましくは、Pは、配列番号1の残基9〜22におけるアミノ酸置換および/もしくは欠失(例えば、残基17〜21を欠失させることによる)を含まない。
【0050】
より好ましくは、Pは、配列番号1の残基9〜15においてアミノ酸置換および/もしくは欠失を含まない。
【0051】
より好ましくは、配列モチーフ NPLGFFP[配列番号15](配列番号1の残基9〜15に対応する)は、中断されてもいないし、改変されてもいない(例えば、残基11〜15をDアミノ酸で置換することによって)。
【0052】
より好ましくは、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドにおいて、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む:
上記コンセンサス配列のアミノ酸残基2〜48 [配列番号11];
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜48 [配列番号12];
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜21 [配列番号13];
遺伝子型Cのアミノ酸残基5〜21 [配列番号14];
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜15 [配列番号15];
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜48 [配列番号16];
遺伝子型Dのアミノ酸残基5〜48 [配列番号17];
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜33 [配列番号18]
遺伝子型Dのアミノ酸残基5〜33 [配列番号19]
遺伝子型Dのアミノ酸残基2〜21 [配列番号20];
遺伝子型Dのアミノ酸残基9〜15 [配列番号15]。
【0053】
従って、好ましくは、Pは、配列番号11〜20から選択されるアミノ酸配列もしくはその改変体を含む。
【0054】
Pの好ましいアミノ酸配列については、以下の表1〜7、図面および実施例を参照のこと。
【0055】
配列番号1の「改変体」はまた、上記配列が10μM未満の、および好ましくは、1μM未満のペプチド濃度でのHBV感染の70%阻害を誘発する限りにおいて、アミノ酸欠失、アミノ酸置換(例えば、他のアミノ酸もしくは等配電子体(タンパク質のアミノ酸に対して近い構造的かつ空間的類似性を有する改変アミノ酸)による保存的もしくは比保存的な置換、アミノ酸付加または等配電子体付加)を含む改変体もしくは「アナログ」を含む。
【0056】
保存的アミノ酸置換は、代表的には、同じクラスのアミノ酸の中での置換をいう。これらクラスとしては、例えば、以下が挙げられる:
−非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニンおよびチロシン);
−塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、およびヒスチジン);
−酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸およびグルタミン酸);および
−非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、およびシステイン)。
【0057】
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、好ましくは、増大した免疫原性特性を有するように改変され得る。このような増大した免疫原性特性とは、例えば、免疫した後に誘発される抗体の範囲を増大させること、または種々のウイルス株による感染を中和し得る抗体の生成を可能にすることをいう。
【0058】
別の実施形態において、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、好ましくは、それらの免疫原性特性を低下させるように改変され得る。このような疎水性改変preS由来ペプチドは、悪影響を回避もしくは制限しながら、インビボでのHBV感染を阻害するための治療適用において特に有用である。
【0059】
従って、置換および/もしくは欠失によって改変されるべき好ましい配列モチーフは、上記免疫原性をになう配列(例えば、B細胞エピトープおよび/もしくはT細胞エピトープ、さらには、抗体認識モチーフ)である。
【0060】
HBVのB細胞エピトープは、好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基20〜23(モチーフ DPAF)およびアミノ酸残基26〜32、上記コンセンサス配列(配列番号1)のモチーフ NSNNPDWおよび遺伝子型C(配列番号4)、もしくは遺伝子型DのNTANPDW(配列番号5)である。
【0061】
好ましい実施形態において、配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変され、そして/または上記アミノ酸残基26〜32は、好ましくは、アミノ酸置換および/もしくは欠失によって改変され得る。
【0062】
好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基20〜23(モチーフ DPAF)は、アラニンアミノ酸置換によって、好ましくは、モチーフ APAFへと改変される。
【0063】
好ましくは、配列番号1のアミノ酸残基26〜32は、アラニンアミノ酸置換によって、好ましくは、モチーフ NANAPDWもしくはNAAAPDWへと改変される。
【0064】
好ましい実施形態において、Pは、配列番号21〜28から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む。
【0065】
以下の表2、表7、ならびにそれぞれの図面および実施例もまた参照のこと。
【0066】
より好ましい実施形態において、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:
配列番号11 (上記コンセンサス配列の残基2〜48)、
配列番号12 (遺伝子型Cの残基2〜48)、
配列番号13 (遺伝子型Cの残基2〜21)、
配列番号4 (遺伝子型Cの残基(−11)〜48)、および
配列番号20 (遺伝子型Dの残基2〜21)。
【0067】
上記preS由来ペプチドPの疎水性改変(H)は、PのN末端にある。
【0068】
「N末端の」とは、N末端(すなわち、それぞれの第1のアミノ酸残基(例えば、Gly 2))における疎水性改変をいうが、N末端付近(例えば、それぞれのアミノ酸残基(−4)、(−3)、(−2)、(−1)、1、2、または3もしくは4)における疎水性改変も含む。従って、上記疎水性改変は、PのN末端付近の部位において疎水性部分を結合することによってさらに得られ得る。
【0069】
本発明のHBVのpreS由来ペプチドの上記疎水性改変は、上記ペプチドに疎水性部分を付加する。
【0070】
さらに、mは、少なくとも1(すなわち、少なくとも1個の疎水性部分もしくは基での改変)である。
【0071】
本発明の好ましい実施形態において、mは、1、2、3、4もしくはこれ以上である。すなわち、Pは、1個より多い疎水性部分もしくは基(例えば、2個)で改変され得る。上記疎水性部分もしくは基は、互いに同じでもあってもよいし、異なっていてもよい。
【0072】
本発明に従うHBVのpreS由来ペプチドの上記疎水性改変は、以下から選択される:
−アシル化;
−疎水性部分の付加。
【0073】
アシル化は、好ましくは、カルボン酸、脂肪酸、脂肪族側鎖を有するアミノ酸でのアシル化から選択される。
【0074】
好ましい脂肪酸は、飽和もしくは不飽和の脂肪酸、分枝状もしくは非分枝状の脂肪酸、好ましくは、8〜22個の炭素原子(C8〜C22)を有するものである。
【0075】
より好ましくは、アシル化による上記疎水性改変は、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)もしくはステアロイル(C18)でのアシル化から選択される。
【0076】
上記疎水性部分の付加は、好ましくは、コレステロール、コレステロールの誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体、アダマンタン、ファルネソール、脂肪族基、多環式芳香族化合物(polyaromatic compound)の付加から選択される。
【0077】
上記疎水性部分の結合は、好ましくは、共有結合によるものであり、これは、カルバメート、アミド、エーテル、ジスルフィド、もしくは当業者の技術範囲内の任意の他の連結を介して達成され得る。
【0078】
従って、本発明の、疎水性改変された、好ましくは、アシル化preS由来ペプチドは、好ましくは、それらのN末端親油性もしくは疎水性の基/部分に起因して、リポペプチドである。
【0079】
好ましい疎水性改変preS由来ペプチドについては、表1および表2もまた参照のこと。
【0080】
より好ましい本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下のものである:
Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号4、および配列番号20から選択されるアミノ酸配列を含み、そして
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ステアロイル(C18)でのアシル化による疎水性改変である。
【0081】
従って、より好ましい本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下である:
【0082】
【化2】
ここで(C)は、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0083】
(遺伝子型C配列の好ましい実施形態)
本発明の非常に好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preSペプチドにおいて、Pは、遺伝子型Cに由来するアミノ酸配列を含む。
【0084】
遺伝子型Cに由来する本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、HBV感染を、その対応する遺伝子型Dのものより強力に阻害する。図3および表3もまた参照のこと。
【0085】
上記で議論されるように、本願の範囲内のHBV 「遺伝子型C」のアミノ酸配列とは、例えば、Genbank ABV02850.1に示されるように、上記HBV 遺伝子型Cに対応するかもしくはこれと同一である人工配列である。ただし、46位(以下に記載されるような番号付けに従う)は、Genbank配列におけるようなGln(Q)の代わりに、本発明の上記遺伝子型CにおいてLys(K)である;本願のHBV 遺伝子型C配列はまた、「HBV 遺伝子型C Q46K」といわれ得る。配列番号4、12、21〜27もまた参照のこと。
【0086】
上記HBV preSコンセンサス配列について上記に記載されるようなものと同じ番号付けが、上記遺伝子型C配列のアミノ酸残基の番号付けのために使用され(図2もまた参照のこと)。例えば、
Met (−11)、残基番号(−11)は、配列番号4においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly (−10)、残基番号(−10)は、配列番号4においてアミノ酸残基2として列挙され;
Met 1、残基番号1は、配列番号4においてアミノ酸残基12として列挙され;
Gly 2、残基番号2は、配列番号4においてアミノ酸残基13として列挙され、そして配列番号12においてアミノ酸残基1として列挙され;
Gly 48、残基番号48は、配列番号4においてアミノ酸残基58として列挙され、そして配列番号12においてアミノ酸残基47として列挙される。
【0087】
配列番号12 アミノ酸配列(これは、46位が、Gln(Q)の代わりにLys(K);Q46Kであることを除いて、HBV 遺伝子型Cの2〜48位に対応する)
【0088】
【化3】
Pは、好ましくは、以下から選択され得る:
配列番号12 (遺伝子型Cの残基2〜48)、
配列番号4 (遺伝子型Cの残基(−11)〜48)
配列番号13 (遺伝子型Cの残基2〜21),
配列番号14 (遺伝子型Cの残基5〜21)、および
配列番号15 (遺伝子型Cの残基9〜15)。
【0089】
遺伝子型C配列の好ましい実施形態において、B型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチドは、以下の式のものである:
Hm−P−Rn,
ここで、好ましくは、
Pは、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも10個連続するアミノ酸のこの配列のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、またはこれらの改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含む誘導体を含む、preS由来ペプチドであり;
Hは、上記preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、上記疎水性改変は、PのN末端のものあり、かつアシル化および疎水性部分の付加から選択され;
Rは、上記preS由来ペプチド PのC末端改変であり;
mは、少なくとも1であり;そして
nは、0または少なくとも1である。
【0090】
本発明の好ましいペプチドは、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のために、急性HBVおよび/もしくはHDV感染の予防のために、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、特に有効である。
【0091】
好ましくは、Pは、配列番号12のアミノ酸配列(遺伝子型Cの残基2〜48)を含むか、またはこれからなる。
【0092】
また、好ましくは、Pは、配列番号12のアミノ酸配列の改変体を含み、ここで改変体は、配列番号12の少なくとも10個連続するアミノ酸残基(好ましくは、残基9〜18)、より好ましくは、15個もしくは20個連続するアミノ酸配列を含み、配列番号12の11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個もしくはこれ以上のアミノ酸残基からなり得る。
【0093】
好ましくは、P中に含まれる配列番号12の連続するアミノ酸残基は、以下から選択される:
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜15 [=配列番号15]、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜15、
遺伝子型Cのアミノ酸残基9〜18、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜18、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜20、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜21 [=配列番号13]、
遺伝子型Cアミノ酸残基5〜21 [=配列番号14]、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜25、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜30、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜35、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜40、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜45、
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜46、もしくは
遺伝子型Cのアミノ酸残基2〜48 [=配列番号12]。
【0094】
一実施形態において、Pは、配列番号12のそれぞれ残りのアミノ酸残基、すなわち、
遺伝子型Cのアミノ酸残基16〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基19〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基21〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基22〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基26〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基31〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基36〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基41〜48、
遺伝子型Cのアミノ酸残基46〜48、もしくは
遺伝子型Cのアミノ酸残基47〜48、
を含み、これらは、配列番号12のそれぞれのアミノ酸残基に同一であるか、またはそれらの誘導体であるかのいずれかである。
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで上記少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはこれ以上の改変である。
【0095】
好ましいアミノ酸置換は、本明細書に記載されている。
【0096】
好ましくは、Pは、以下から選択されるアミノ酸配列を含む:
−配列番号12のアミノ酸残基2〜15、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基16〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜20、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基21〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜25、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基26〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜30、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基31〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜35、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基36〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜40、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基41〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列;
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで上記少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはこれ以上の改変である。
【0097】
遺伝子型C配列の好ましい実施形態において:
Pは、配列番号12、またはそれぞれに記載される改変体/誘導体/改変から選択されるアミノ酸配列を含み、
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ミリストイル(C14)でのアシル化による疎水性改変である。
【0098】
ミリストイル化による改変は、その高い安全性(例えば、ステアロイル基の悪影響(先天的免疫応答など)がない)に起因して、インビボおよび医学的適用で好ましい。
【0099】
従って、本発明のより好ましい疎水性改変preS由来ペプチドは、
HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C) [配列番号4]
HBVpreS/2−48ミリストイル(C) [配列番号12]
HBVpreS/2−21ミリストイル(C) [配列番号13]
HBVpreS/5−21ミリストイル(C) [配列番号14]
HBVpreS/9−15ミリストイル(C) [配列番号15]、
であり:もっとも好ましくは、
HBVpreS/2−48ミリストイル(C) [配列番号12]
である。
【0100】
上記preS由来ペプチドPの上記C末端改変(R)は、好ましくは、分解(例えば、インビボでの分解)から保護する部分での改変である。
【0101】
「C末端のもの」は、C末端(すなわち、それぞれの最後のアミノ酸残基)における改変をいうが、上記C末端付近(例えば、最後から2番目のアミノ酸残基、最後から4番目のアミノ酸残基しくはそれ以降のアミノ酸残基における改変(例えば、酵素分解(例えば、カルボキシペプチダーゼの作用による)からキャリアを保護する1個のDアミノ酸の導入)もまた含む。
【0102】
当業者は、それぞれの適用に依存して、それぞれの適した部分を選択し得る。
【0103】
分解から保護する好ましい部分は、アミド、D−アミノ酸、改変アミノ酸、環状アミノ酸;天然および合成のポリマー(例えば、PEG、glycane)から選択される。
【0104】
一実施形態において、Pは、ペプチドもしくはタンパク質(好ましくは、アルブミン、ヒトIgGのFcドメインから選択される)に融合される。
【0105】
上記融合は、好ましくは、PのC末端のものである。
【0106】
さらに、nは、0または少なくとも1である(すなわち、C末端改変(R)は、選択肢的である)。
【0107】
好ましくは、nは、1である。
【0108】
本発明のさらなる実施形態において、nは、1、2、3、4もしくはこれ以上である。すなわち、上記PのC末端もしくはその付近は、1個より多くの部分もしくは基(例えば、2個)で改変され得る。上記部分もしくは基は、互いに同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0109】
本発明の一実施形態において、Hおよび/もしくはRは、リンカーもしくはスペーサーを介してPに連結される。
【0110】
リンカーもしくはスペーサーは、当業者に公知であり、例えば、ポリアラニン、ポリグリシン、糖質、(CH2)n基がある。
【0111】
当業者は、従って、それぞれの適用に依存して、それぞれの適切なリンカーもしくはスペーサーを選択し得る。
【0112】
好ましい実施形態において、本発明に従う疎水性改変preS由来ペプチドは、標識もしくはタグ(好ましくは、蛍光色素、放射性同位体および造影剤から選択される)を有する。
【0113】
好ましい放射性同位体は、131I、125I、99mTc、18F、68Ga、111In、90Y、177Luである。
【0114】
好ましい蛍光色素は、Alexa色素、ローダミンおよびフルオレセインの誘導体、Cy−色素である。
【0115】
好ましい造影剤は、ガドリニウム(Gd)錯体、超磁性鉄(Fe)錯体および粒子、より高い原子番号の原子を含む化合物(すなわち、コンピュータートモグラフィー(CT)用のヨウ素、マイクロバブルおよびキャリア(例えば、これら造影剤を含むリポソーム)である。
【0116】
本発明のペプチドは、当業者に公知の種々の手順によって、一般に、合成化学手順および/もしくは遺伝子操作手順によって、調製され得る。
【0117】
合成化学手順としては、より具体的には、固相逐次合成およびブロック合成(11)が挙げられる。上記固相逐次手順は、確立された自動化方法を使用して(例えば、自動化ペプチド合成器の使用によって)行われ得る。この手順において、α−アミノ保護されたアミノ酸は、樹脂支持体に結合される。上記使用される樹脂支持体は、(ポリ)ペプチドの固相調製のために当該分野で従来から使用されている任意の適切な樹脂(好ましくは、ポリオキシエチレンと共重合化されて、最初に導入されたo−編みの保護されたアミノ酸とエステル形成のための部位を提供するポリスチレン)であり得る。この最適化された方法は、本発明者らによって適用され、明確に記載されてきた(例えば、12を参照のこと)。上記アミノ酸は、1個ずつ(段階的に)導入される。1個のアミノ酸の導入に対応する各合成サイクルは、脱保護工程、連続洗浄抗体、上記アミノ酸の活性化を伴うカップリング工程、およびその後の洗浄工程を包含する。これら工程の各々似続いて、濾過が行われる。カップリングのための反応性薬剤は、(ポリ)ペプチド合成のための伝統的な反応性薬剤(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ベンゾトリアジル−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルホスホリルアジド)である。上記樹脂上でのポリペプチドの合成の後に、上記ポリペプチドは、アニソール、エタンジチオールもしくは2−メチルインドールの存在下で、強酸(例えば、トリフルオロ酢酸)で処理することによって、上記樹脂から分離される。次いで、上記化合物は、伝統的な精製技術(特に、HPLC)によって精製される。
【0118】
本発明のペプチドはまた、選択的に保護されている(ポリ)ペプチドフラグメントをカップリングすることによって、得られ得、このカップリングは、例えば、溶液中で行われる。
【0119】
上記ペプチドはさらに、例えば、当業者に公知の遺伝子操作技術によってさらに生成され得る。真核生物発現系(例えば、バキュロウイルス系)は、特に適している。この手順によれば、タンパク質は、異種タンパク質をコードする核酸配列および調節核酸配列(例えば、プロモーター)を含む組換えバキュロウイルスに感染した昆虫細胞において発現される。いくつかの細胞株は、組換えバキュロウイルスでの感染に利用可能である(例えば、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手可能な細胞株Sf−9(CRL 1711))。原核生物発現系(例えば、E.coli)における発現はまた、特に適している。
【0120】
上記ペプチドへの上記疎水性部分の導入は、当業者に容易に公知である種々の手順(合成および遺伝子操作アプローチが挙げられる)によって達成され得る。
【0121】
あるいは、上記ペプチドおよび/もしくは融合ペプチド(すなわち、疎水性改変ペプチド)は、CHOおよび当該分野で公知であり、かつ通常ワクチンなどを生成するために使用される他の細胞株のような、安定にトランスフェクトした真核生物細胞株によって生成され得る。N末端の47個のpreS1アミノ酸が、ミリストイル化タンパク質/ペプチドの分泌を促進するというその本質的な特性に起因して、上記生物学的に活性な疎水性改変ペプチドは、細胞培養上清から抽出され得る。
【0122】
(本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの特徴)
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、融通の利く肝炎ウイルス侵入インヒビターであり、また、肝臓向性(hepatotropism)/肝臓向性(liver tropism)(すなわち、それらは、肝臓を標的とする)を示す。上記肝臓向性は、特に、図11に示される。
【0123】
上記肝臓向性は、本発明者らの対応米国仮特許出願(同日に出願され、その全体が本明細書に参考として援用される、発明の名称「Hydrophobic modified preS−derived peptides of hepatitis B virus (HBV) and their use as vehicles for the specific delivery of compounds to the liver」)においてさらに開示されている。
【0124】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、インビトロ(例えば、肝細胞へのHBV粒子の結合および/もしくはインターナリゼーションを防止することによって)またはインビボかのいずれかで、HBVの非常に適切かつ有効な侵入インヒビターであるが、HDVについても同様である。
【0125】
図面および実施例から認められ得るように、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、高い阻害活性を有し、すなわち、これらは、非常に低用量において、HBVおよび/もしくはHDV感染を効率的に阻害する。上記より好ましい実施形態のIC50値は、0.01〜500nM、好ましくは、0.025〜50nM、より好ましくは、0.05〜25nMの範囲内である。表1もまた参照のこと。
【0126】
遺伝子型Cに由来する本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、その対応する遺伝子型Dのものよりも強力にHBV感染を阻害する。
【0127】
さらに、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドは、免疫原性エピトープを含まないが、強い阻害活性をなお示すように、調節され得る(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル)。これは、その配列中に上記免疫原性エピトープを含まないが、約8nMのIC50をなお有する。
【0128】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドはまた、HBV 遺伝子型CおよびDを交叉予防し得る。なぜなら、遺伝子型Cに由来するペプチド(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル(C)もしくはHBVpreS/2−48ミリストイル(C))は、HBV遺伝子型Dの侵入を阻害し得るからである。
【0129】
(薬学的組成物およびワクチン組成物)
上記で概説されるように、本発明は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0130】
本発明に従う薬学的組成物は、以下を含む:
−本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド;
−本明細書で定義される結合体;および
−必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤。
【0131】
本発明に従う薬学的組成物は、本明細書で記載される使用および方法のすべてに非常によく適している。
【0132】
上記で概説されるように、本発明は、本明細書で定義される少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含むワクチン組成物を提供する。
【0133】
本発明に従うワクチン組成物は、本明細書に記載される使用および方法に非常によく適している。
【0134】
「薬学的に受容可能なキャリアもしくは賦形剤」とは、本発明に従う薬学的組成物もしくはワクチン組成物がそこでもしくは一緒に処方され得る任意のビヒクルをいう。これは、生理食塩水(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)を含む。一般に、希釈剤もしくはキャリアは、投与の態様および経路、ならびに標準的な薬学的実務に基づいて選択される。
【0135】
(医学的適用)
上記で概説されるように、本発明は、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくは本発明のそれぞれの薬学的組成物の第1の医療用途を提供する。
【0136】
従って、本発明に従うHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、疾患の診断、予防および/もしくは処置のために適切であり、従って、そのために提供される。
【0137】
上記で概説されるように、本発明は、特定の疾患の診断、予防および/もしくは処置のために、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドおよび/もしくはそれぞれの薬学的組成物をさらに提供する。
【0138】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害ために;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のために、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、好ましくは、慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために、提供される。
【0139】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/またはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための医薬の製造のために、使用される。
【0140】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のために提供される。
【0141】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のために提供される。
【0142】
好ましくは、HBVの任意の遺伝子型のHBV感染が、阻害されるかもしくは予防される。
【0143】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、HBV 遺伝子型CおよびDを交叉予防し得る。なぜなら遺伝子型Cに由来するペプチド(例えば、HBVpreS/2−21ステアロイル(C)もしくはHBVpreS/2−48ミリストイル(C))は、HBV 遺伝子型Dの侵入を阻害し得るからである。
【0144】
好ましい実施形態において、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、HBVおよび/もしくはHDVの侵入インヒビターとして使用される/提供される。
【0145】
好ましくは、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、B型肝炎および/もしくはD型肝炎の、特に慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のために提供される。
【0146】
本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドは、インビトロ(例えば、肝細胞へのHBV粒子の結合および/もしくはインターナリゼーションを防止することによって)またはインビボのいずれかで、HBV、しかしまた、HDVの非常に適切かつ有効な侵入インヒビターである。
【0147】
さらに、本発明は、HBVによる肝細胞感染のインビトロ阻害のための方法を提供し、上記方法は、上記疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物を使用する工程を包含する。
【0148】
適切な肝細胞としては、ヒト初代肝細胞もしくは肝癌由来細胞株HepaRG(22)(特許出願FR 0109044に記載される)、Tupaia belangeri由来の肝細胞(23)が挙げられ、これらはまた、HBV感染に感受性である。
【0149】
さらに、および上記で概説されるように、本発明は、本発明のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物を利用することによって、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するための方法;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を予防するための方法、ならびに/または(慢性)B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処置するための方法を提供する。
【0150】
(投与経路)
好ましくは、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物の投与経路は、皮下、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、経皮、吸入可能なもの、坐剤によるものから選択される。
【0151】
経鼻投与もしくは適用のための好ましい実施形態は、鼻用スプレーである。
【0152】
(治療上有効な量)
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物は、それらが上記薬学的組成物で、治療上有効な量の上記疎水性改変preS由来ペプチドを含むように、提供される。
【0153】
本発明の疎水性改変preS由来ペプチドもしくは薬学的組成物の「治療上有効な量」とは、HBVおよび/もしくはHDV感染を阻害するために;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染を予防するために;B型肝炎および/もしくはD型肝炎を処理するために、そして/あるいはインビボでHBVおよび/もしくはHDVに対するワクチン接種する、ならびに/またはその侵入を阻害するのに十分である量をいう。
【0154】
好ましい、治療上有効な量は、1kg 体重あたり、10μg〜1mg、好ましくは、10μg〜100μgの範囲内である。
【0155】
ワクチンとしての本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの使用については、上記好ましい治療上有効な量は、1kg体重あたり、10μg〜1mgの範囲内である。
【0156】
約10nMという、使用される疎水性改変preS由来ペプチドのIC50値の場合、好ましい治療上有効な量は、約100μg/kg体重であるか、または患者1名あたり1〜5mgの範囲内である。患者1名あたり1〜5mgの範囲内の上記好ましい治療上有効な量は、1日に1階投与され得るか、または他の実施形態においては、わずか2〜3日ごとに1階投与され得る。
【0157】
上記好ましい治療上有効な量は、それぞれの適用、および望ましい阻害、処置もしくはワクチン接種の結果に依存する。
【0158】
当業者は、適切な治療上有効な量を決定し得る。
【0159】
(HBVレセプターの同定)
本発明はさらに、HBVの結合および/もしくは侵入に関与する肝細胞レセプターのインビトロおよび/もしくはインビボでの同定、ならびに/または上記の疎水性改変preS由来ペプチドを使用する工程を包含する、上記レセプターの発現の定量のための方法に関する。
【0160】
上記肝細胞レセプターは、哺乳動物もしくはそれぞれの動物モデル(好ましくは、マウスもしくはヒト)において同定され得る。
【0161】
特に、上記方法は、以下の工程を包含する:
−肝臓生検物もしくは肝細胞と、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドとを、肝細胞の表面において発現されるレセプターへの上記ペプチドの特異的結合を可能にするに十分な条件下および期間にわたって、接触させる工程;
−レセプターへの上記ペプチドの結合を決定する工程;および
−上記レセプターを同定する工程。
【0162】
これは、当業者によって周知の古典的手順に従って達成され得る。例えば、これは、本発明の疎水性改変preS由来ペプチドの放射活性標識、酵素標識もしくは経口標識、および適切な方法でのその後の検出を包含し得る。多くの蛍光物質が公知であり、標識として利用され得る。これらとしては、例えば、フルオレセイン、ローダミン、オーラミン、テキサスレッド、Cy3、Cy5、DIGE標識が挙げられる。酵素標識は、目的の分子(例えば、ポリペプチド)への酵素の結合体化を含み、比色的技術、分光光度的技術、もしくは蛍光分光光度的技術のいずれかによって検出され得る。
【0163】
本発明者らは、インビトロおよびインビボでHBV侵入を効率的にブロックする、HBV−preS1−表面タンパク質由来リポペプチドを同定した。これら阻害性ペプチドに関する本発明の生体分布研究は、上記ペプチドが、肝臓中に選択的に蓄積され、ここで肝細胞へ結合し、そしておそらく肝細胞へ侵入することを明らかにした。この肝細胞向性は、上記ペプチドのN末端アシル化を要し、N末端の47個のpreS1アミノ酸内の(すなわち、上記アミノ酸残基2〜21(もしくは好ましくは、残基9〜15の最小配列)内の)特定のHBV preS配列モチーフに依存する。このペプチド配列が、形質膜を横断してさらに完全な融合タンパク質の輸送を促進する膜移動シグナル(membrane translocation signal)をさらに有する(未発表結果)という本発明者らの観察は、任意の種の薬物を、肝細胞の形質膜へ特異的に送達するか、またはこの細胞へすら選択的に送達するという可能性を開く。
【0164】
本発明者らは、HBV preS1由来リポペプチドが、移植されたuPA−RAG−1マウスモデルにおいて、非常に低用量でHBV感染を完全に予防し得ることを示した。これらHBVpreS由来侵入インヒビターに関する薬物動態研究はさらに、並外れて高い血清安定性(t1/2 約60時間)と合わせて、顕著な肝臓向性、および標的器官における長期の半減期(t1/2 約24時間)を示した。N末端アシル化および上記ペプチドの特定のアミノ酸配列の完全性の両方が、必要である。上記ペプチドは、従って、肝細胞の感染を抑えるために、または肝細胞癌を処置するために、肝臓特異的薬物標的化のための融通の利くベクターとしても使用され得る(同日付で出願された発明の名称「Hydrophobic modified preS−derived peptides of hepatitis B virus (HBV) and their use as vehicles for the specific delivery of compounds to the liver」の本発明者らの対応米国仮特許出願もまた参照のこと)。
【0165】
本発明者らは、WMHBV感染が、インビボでのHBVエンベロープタンパク質由来ペプチドの皮下適用を介して効率的にブロックされ得るという原理をさらに証明した。このことは、急性HBV感染の予防および慢性B型肝炎の治療選択肢のための新たな展望を開く。本発明において使用される上記uPA/RAG−2/Pfpマウスは、B細胞、T細胞、およびNK細胞を欠いているので、感受性肝細胞に対する上記ペプチドの直接的阻害効果が評価される。このことは、肝臓におけるアシル化preS由来ペプチドの効率的蓄積、続いて、胆管経路をおそらく介するゆっくりとしたクリアランスによって裏付けられる。両方の特性が、非常に低用量かつ低頻度での皮下適用を可能にする。5日以内で0.2mg/kg HBV/preS2−48ミリストイルの5回の注射が、WMHBV感染の樹立の予防を生じたと仮定すると、約30倍以上の活性ペプチドHBV/preS2−48ステアロイルの連続投与は、7μg/kg未満の用量において、毎日もしくは2日ごとに与えられる場合には約13nmol/kgの用量で有効であり得る。マウスにおいて得られた体重あたり、効率的な薬理学的用量が、約10倍してヒトについて較正されなければならない(13)ことを考慮に入れると、一人あたりの有効用量は、100μg/日より低いと予測される。
【0166】
慢性HBV感染の処置のためのヌクレオシド(ヌクレオチド)アナログベースのレジメンは、しばしば、耐性変異体の選択を生じた(4,14)。このことは、HBV複製サイクルの異なる工程に対処する、代替のストラテジーおよび新たな薬物を要求する。HBVリポペプチドでの侵入阻害は、このようなアプローチを代表する。作用様式に依存して、本発明者らは、任意の種のヌクレオシド(ヌクレオチド)耐性変異体に対する有効性を想定する。さらに、上記ペプチドの活性は、上記preS1ドメインにおける保存された配列を要する(15)ので、上記ペプチドは、任意のHBV−遺伝子型に対して活性である。HIV gp41タンパク質を標的とし、従って、分子内代償変異の出現を可能にするFuzeon(登録商標)とは対照的に、以前の研究は、アシル化HBV−リポペプチドが、細胞成分に対処して、HBVとそのレセプターとの相互作用を防止することを示す(16,17)。従って、耐性変異体の出現は、ありそうにないようである。
【0167】
HBVpreS由来リポペプチドの臨床的適用のための明らかな適応症は、まだ樹立されていないHBV感染の予防(例えば、曝露後予防、垂直伝播もしくは肝臓移植の再感染の予防)である。しかし、侵入インヒビターはまた、例えば、インターフェロンαもしくはウイルスRTのインヒビターとの組み合わせにおいて、慢性的に感染した患者において有効である。HBV慢性感染の維持は、一方では、免疫系によって一掃された感染肝細胞の動的ターンオーバーに、および他方では、治癒した細胞/未感染細胞(naive cell)の(再)感染に依存し得る(18)ので、感染の広がりを抑制し、かつ抗ウイルス処置かで耐性株の出現を抑制するために、uPAキメラ系におけるこのような治療アプローチの効力を評価することは、興味深い(19)。
【0168】
HBVpreS由来リポペプチドはまた、HDV(肝細胞への侵入のためにHBVエンベロープタンパク質を利用するサテライトウイルソイド)のインビトロ感染を阻害する(15,17,20)。今日までに、HDV乾癬の有効な治療は存在しなかったので、preS由来リポペプチドは、このしばしば複雑化した肝臓疾患の第1の選択的治療を代表する。
【0169】
免疫能のある患者におけるHBVpreS由来リポペプチドの適用は、細胞性免疫反応および体液性免疫反応を誘発する。このことは、治療結果にとって有益である。なぜなら、HBVpreS/2−48のエピトープを認識する抗体は、インビトロでのHBV感染を中和することが公知だからである(21)。さらに、天然の感染におけるウイルス排除は、HBVpreS特異的免疫の連続的確立を要することが推測された。従って、ウイルス侵入の直接的介入に加えて、上記ペプチドによるpreS特異的免疫応答の刺激は、細胞溶解性もしくは非細胞溶解性免疫反応を介して、特に、IFNαと組み合わせて、ウイルス排除に寄与し得る。
【0170】
【表1−1】
【0171】
【表1−2】
ミリストイルとは、上記N末端のミリストイル化をいう;
パルミトイルとは、N末端のパルミトイル化をいう;
ステアロイルとは、N末端のステアロイル化をいう;
(C)とは、遺伝子型C(配列番号4におけるように、Q46Kを有する)をいう;
(D)とは、遺伝子型Dをいう;
*ペプチドは、図に示される;
**最小配列。
【0172】
【表2】
ミリストイルとは、N末端のミリストイル化をいう;
ステアロイルとは、N末端のステアロイル化をいう;
(C)とは、遺伝子型C(配列番号4におけるように、Q46Kを有する)をいう;
(D)とは、遺伝子型Dをいう。
【0173】
【表3】
図3もまた参照のこと。
ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0174】
【表4】
図4もまた、参照のこと。
【0175】
【表5】
図5もまた、参照のこと。
【0176】
【表6】
図6もまた、参照のこと。
【0177】
【表7】
図7もまた参照のこと。
【0178】
【表8】
配列番号16のレトロインベルゾアミノ酸配列は、C末端からN末端の方向。
図8もまた参照のこと。
【0179】
【表9】
図9もまた参照のこと。
【実施例】
【0180】
(方法)
(HBVの疎水性改変preS由来ペプチドの合成)
合成を、例えば、(16)に記載されるように行った。
【0181】
(細胞株および初代細胞培養物)
HepaRG細胞を、ウイリアムのE培地(10% ウシ胎仔血清(FCS)、100ユニット/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシン、5μg/ml インスリンおよび5×10−5M ヒドロコルチゾンヘミスクシネートを補充)中で増殖させた(16)。細胞を、2週間ごとにトリプシン処理によって1/5を継代した。感染の2〜3週間前に、細胞分化を、2% DMSOを維持培地に添加することによって誘導した。上記培地を、2〜3日ごとに交換した。
【0182】
(感染競合アッセイ)
感染性接種物として、制限なしの供給および一定の品質があるので、HepG2クローン2.2.15(23)細胞の50倍濃縮した培養培地を使用した。これを、新たに集めた上清から、6% ポリエチレングリコール(PEG)8000の存在下でウイルス粒子を沈殿させることによって調製した。そのペレットを、25% FCSを含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中で懸濁した。アリコートを、−80℃において保存した。分化したHepaRG細胞もしくはPHHを、20時間にわたって37℃において、4% PEG 8000(Sigma)を補充した培養培地中で10倍希釈した上記濃縮した感染源とともにインキュベートした。上記インキュベーションの最後に、細胞を、上記培養培地で3回洗浄し、2% DMSOおよび5×10−5M ヒドロコルチゾンヘミスクシネートの存在下で維持し、示された時間において採取した。
【0183】
競合実験を、12ウェルプレートにおいて行った。約1×106細胞を最初に、30分間にわたって、化学的に合成したHBV由来ペプチドとともに予備インキュベートし、続いて、細胞と、ペプチドおよびウイルスとを20時間にわたって同時インキュベートした。すべての競合シリーズを、少なくとも2回行い、1つの代表的実験の結果を、各場合において示す(図3〜7を参照のこと)。
【0184】
HepaRG細胞を、以下の非存在(0nM)下もしくは存在下でいずれかに感染させた:
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および2000nM
・HBVpreS/2−48ミリストイル(D)、
・HBVpreS/2−48ミリストイル(C)、
・HBVpreS/(−11)−48ミリストイル(C)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(C)および
・HBVpreS/(−11)−48ステアロイル(C);または
−以下を0.125nM;0.25nM;0.5nM;0.75nMおよび1nM
・HBVpreS/2−48ミリストイル(コンセンサス)、
・HBVpreS/2−48 ステアロイル(コンセンサス)、
−以下を1nM、5nM、25nM、100nMおよび1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−15ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−21ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−26ステアロイル(D)および
・HBVpreS/2−33ステアロイル(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D),
・HBVpreS/2−33ステアロイル(D),
・HBVpreS/5−33ステアロイル(D),
・HBVpreS/5−48ステアロイル(D),
・HBVpreS/9−33ステアロイル(D)および
・HBVpreS/9−48ステアロイル(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(D−AS11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ17−21)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala17−21)(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(レトロインベルソ)(D)および
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala21,23,29,30)(D);または
−以下を1nM、5nM、25nM、100nM、および1000nM
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ala18)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Δ11−15)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Ser13)(D)、
・HBVpreS/2−48ステアロイル(Arg11)(D);または
−以下を50nM、100nM、150nM、250nM、および1000pM(0.05nM、0.1nM、0.25nM、および1nM)
・HBVpreS/2−48ミリストイル(C)および
・HBVpreS/2−48ステアロイル(C)、
ここで(C)とは、HBV 遺伝子型C Q46Kをいう。
【0185】
感染性接種物(遺伝子型DのHBV)および上記ペプチドを一晩インキュベートした。洗浄後、細胞を、さらに12日間にわたって維持して、ウイルス遺伝子発現を可能にした。8〜12日目の細胞培養上清を採取し、市販の定量的ELISAを使用して、分泌HBSAgについて分析した。それぞれの不完全感染からのHBsAg値を、100%に設定し、感染阻害の程度を、不完全感染の%単位で与える。
【0186】
結果を、図3〜9および図12、同様に、表3〜9に示す。
【0187】
(疎水性改変preS由来ペプチドの生体分布)
上記疎水性改変preS由来ペプチドの生体分布を、雄性NMRIマウスにおいて研究した。すべての実験を、ドイツ法に従って行った。C末端においてさらなるTyr−残基を含む上記ペプチドを、131I(Amersham Biosciences,Freiburg,Germany)で、クロラミン−T法によって標識し、HPLCによって精製した。上記標識ペプチドを、50% DMSO中の溶液の注射によって皮下注射した。選択した時間において、マウスを屠殺し、血液、心臓、脾臓、肝臓、腎臓、筋肉および脳中に含まれる放射活性を、γ−カウンター(Canberra Packard,Ruesselsheim,Germany)で測定し、注射用量/g 組織のパーセンテージ(%ID/g)として表した。
【0188】
(肝臓から抽出した後の疎水性改変preS由来ペプチドの安定性評価)
肝臓における上記ペプチド安定性を決定するために、131I標識したHBVpreS/2−48ミリストイル(D)を、皮下注射の24時間後に肝臓1葉から抽出した。その目的のために、1g 凍結肝臓組織あたり1ml 水を、上記サンプルに添加した。均質化した後、等容積のアセトニトリルを添加し、上記均質化を反復した。遠心分離(4000×gで2×10分)後、この溶液を、逆相HPLCカラム上で分離し、その各画分の放射活性を、γカウンターで定量した。
【0189】
前述の説明において、特許請求の範囲においておよび/もしくは添付の図面において開示される特徴は、別個に、およびこれらの任意の組み合わせの両方において、本発明をその多様な形態において実現するために必須であり得る。
【0190】
参考文献
【0191】
【化4−1】
【0192】
【化4−2】
【図1A】
【図1B】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式のB型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチド:
Hm−P−Rn,
であって、ここで
Pは、以下:
配列番号1に示される該HBV preSコンセンサス配列もしくはその改変体のアミノ酸配列
を含む該preS由来ペプチドであって、
ここで改変体は、好ましくは、配列番号1の少なくとも17個連続するアミノ酸のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体;アミノ酸置換もしくは欠失改変体;改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含む改変体;から選択され、
Hは、該preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、該疎水性改変は、PのN末端のものでありかつ
好ましくは、カルボン酸、脂肪酸、C8〜C22脂肪酸、親油性側鎖を有するアミノ酸でのアシル化、および
コレステロール、コレステロールの誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体、アダマンタン、ファルネソール、脂肪族基、多環式芳香族化合物から選択される疎水性部分の付加
から選択され、
mは、少なくとも1であり、
Rは、該preS由来ペプチド PのC末端の改変であり、該C末端の改変は、
好ましくは、アミド、D−アミノ酸、改変アミノ酸、環式アミノ酸;天然および合成のポリマー(例えば、PEG)、glycaneから選択される分解から保護するための部分、
であり、
nは、0もしくは少なくとも1である、
疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項2】
Hは、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)もしくはステアロイル(C18)でのアシル化から選択されるアシル化による疎水性改変である、請求項1に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項3】
Hおよび/もしくはRは、リンカーもしくはスペーサーを介してPに連結されている、請求項1または2に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項4】
Pは、配列番号1の少なくとも20個連続するアミノ酸のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項5】
Pは、配列番号1に示されるHBV preSコンセンサス配列の、アミノ酸残基2〜21、残基5〜21、残基5〜15もしくは残基9〜15から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項6】
Pは、配列番号1の残基9〜15、好ましくは、配列番号1の残基9〜22におけるアミノ酸置換および/もしくは欠失を含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項7】
Pは、異なるウイルス種、株もしくはサブタイプの、好ましくは、HBVもしくはウーリーモンキーHBV(WMHBV)またはこれらの改変体の遺伝子型のアミノ酸配列を有する、配列番号1の改変体を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項8】
Pは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む、請求項7に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項9】
Pは、配列番号11〜20から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変されているか、そして/もしくはアミノ酸残基26〜32は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、モチーフAPAFへのアラニンアミノ酸置換によって改変されている、請求項10に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸残基26〜32は、好ましくは、モチーフNANAPDWもしくはNAAAPDWへのアラニンアミノ酸置換によって改変されている、請求項10または11に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項13】
Pは、配列番号21〜28から選択されるアミノ酸配列もしくはその改変体を含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項14】
Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号4および配列番号20から選択されるアミノ酸配列、好ましくは、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号4から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項15】
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ステアロイル(C18)でのアシル化による疎水性改変である、請求項14に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項16】
Pは、配列番号12の少なくとも10個連続するアミノ酸残基、好ましくは、配列番号12の少なくとも15個もしくは20個連続するアミノ酸残基を含み、
より好ましくは、P中に含まれる配列番号12の該連続するアミノ酸残基は、配列番号12のアミノ酸残基9〜15、アミノ酸残基2〜15、アミノ酸残基9〜18、アミノ酸残基2〜18、アミノ酸残基2〜20、アミノ酸残基2〜21、アミノ酸残基5〜21、アミノ酸残基2〜25、アミノ酸残基2〜30、アミノ酸残基2〜35、アミノ酸残基2〜40、アミノ酸残基2〜45およびアミノ酸残基2〜46から選択される、
請求項1〜15のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項17】
Pは、
−配列番号12のアミノ酸残基2〜15、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基16〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜20、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基21〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜25、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基26〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜30、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基31〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜35、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基36〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜40、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基41〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;ならびに
−配列番号12のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列;
から選択されるアミノ酸配列を含み、
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで該少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはそれより多い改変である、
請求項1〜16のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項18】
Pは、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも10個連続するアミノ酸のこの配列のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、あるいは改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含むこれらの改変体を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項19】
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ミリストイル(C14)でのアシル化による疎水性改変である、請求項16または19に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項20】
好ましくは、蛍光色素、放射性同位体および造影剤から選択される標識を保持する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項21】
好ましくは、アルブミンおよびヒトIgGのFcドメインから選択される、ペプチドもしくはタンパク質に融合される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項22】
請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの少なくとも1個の疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
疾患の診断、予防および/もしくは処置のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
任意の遺伝子型のHBVのHBV感染は、阻害されるかもしくは予防される、請求項24または25に記載の、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項27】
HBVおよび/もしくはHDV侵入インヒビターとしての、請求項24または25に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項28】
B型肝炎および/もしくはD型肝炎、特に、慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
治療上有効な量の、請求項1または20のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項21に記載の薬学的組成物を含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項30】
前記治療上有効な量は、10μg〜1mg/kg 体重、好ましくは、10μg〜100μgの範囲である、請求項29に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項31】
投与経路は、皮下、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐剤によるものから選択される、請求項29または30に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項32】
HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/あるいはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、医薬の製造のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドあるいは請求項22に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項33】
請求項1または21のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項34】
請求項1または21のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチドを、治療上有効な量において含む、請求項33に記載のワクチン組成物。
【請求項1】
以下の式のB型肝炎ウイルス(HBV)の疎水性改変preS由来ペプチド:
Hm−P−Rn,
であって、ここで
Pは、以下:
配列番号1に示される該HBV preSコンセンサス配列もしくはその改変体のアミノ酸配列
を含む該preS由来ペプチドであって、
ここで改変体は、好ましくは、配列番号1の少なくとも17個連続するアミノ酸のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体;アミノ酸置換もしくは欠失改変体;改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含む改変体;から選択され、
Hは、該preS由来ペプチド Pの疎水性改変であり、該疎水性改変は、PのN末端のものでありかつ
好ましくは、カルボン酸、脂肪酸、C8〜C22脂肪酸、親油性側鎖を有するアミノ酸でのアシル化、および
コレステロール、コレステロールの誘導体、リン脂質、糖脂質、グリセロールエステル、ステロイド、セラミド、イソプレン誘導体、アダマンタン、ファルネソール、脂肪族基、多環式芳香族化合物から選択される疎水性部分の付加
から選択され、
mは、少なくとも1であり、
Rは、該preS由来ペプチド PのC末端の改変であり、該C末端の改変は、
好ましくは、アミド、D−アミノ酸、改変アミノ酸、環式アミノ酸;天然および合成のポリマー(例えば、PEG)、glycaneから選択される分解から保護するための部分、
であり、
nは、0もしくは少なくとも1である、
疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項2】
Hは、ミリストイル(C14)、パルミトイル(C16)もしくはステアロイル(C18)でのアシル化から選択されるアシル化による疎水性改変である、請求項1に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項3】
Hおよび/もしくはRは、リンカーもしくはスペーサーを介してPに連結されている、請求項1または2に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項4】
Pは、配列番号1の少なくとも20個連続するアミノ酸のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項5】
Pは、配列番号1に示されるHBV preSコンセンサス配列の、アミノ酸残基2〜21、残基5〜21、残基5〜15もしくは残基9〜15から選択されるアミノ酸配列を有する配列番号1の改変体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項6】
Pは、配列番号1の残基9〜15、好ましくは、配列番号1の残基9〜22におけるアミノ酸置換および/もしくは欠失を含まない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項7】
Pは、異なるウイルス種、株もしくはサブタイプの、好ましくは、HBVもしくはウーリーモンキーHBV(WMHBV)またはこれらの改変体の遺伝子型のアミノ酸配列を有する、配列番号1の改変体を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項8】
Pは、配列番号2〜10から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む、請求項7に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項9】
Pは、配列番号11〜20から選択されるアミノ酸配列もしくはこれらの改変体を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項10】
配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変されているか、そして/もしくはアミノ酸残基26〜32は、好ましくは、アミノ酸置換によって改変されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項11】
配列番号1のアミノ酸残基20〜23は、好ましくは、モチーフAPAFへのアラニンアミノ酸置換によって改変されている、請求項10に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項12】
配列番号1のアミノ酸残基26〜32は、好ましくは、モチーフNANAPDWもしくはNAAAPDWへのアラニンアミノ酸置換によって改変されている、請求項10または11に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項13】
Pは、配列番号21〜28から選択されるアミノ酸配列もしくはその改変体を含む、請求項10〜12のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項14】
Pは、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号4および配列番号20から選択されるアミノ酸配列、好ましくは、配列番号11、配列番号12、配列番号13および配列番号4から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項15】
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ステアロイル(C18)でのアシル化による疎水性改変である、請求項14に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項16】
Pは、配列番号12の少なくとも10個連続するアミノ酸残基、好ましくは、配列番号12の少なくとも15個もしくは20個連続するアミノ酸残基を含み、
より好ましくは、P中に含まれる配列番号12の該連続するアミノ酸残基は、配列番号12のアミノ酸残基9〜15、アミノ酸残基2〜15、アミノ酸残基9〜18、アミノ酸残基2〜18、アミノ酸残基2〜20、アミノ酸残基2〜21、アミノ酸残基5〜21、アミノ酸残基2〜25、アミノ酸残基2〜30、アミノ酸残基2〜35、アミノ酸残基2〜40、アミノ酸残基2〜45およびアミノ酸残基2〜46から選択される、
請求項1〜15のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項17】
Pは、
−配列番号12のアミノ酸残基2〜15、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基16〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜20、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基21〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜25、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基26〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜30、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基31〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜35、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基36〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;
−配列番号12のアミノ酸残基2〜40、およびこれに隣接して、配列番号12のアミノ酸残基41〜48の誘導体を含むアミノ酸配列;ならびに
−配列番号12のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列;
から選択されるアミノ酸配列を含み、
ここで誘導体は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物から選択される少なくとも1個の改変を含み、
ここで該少なくとも1個の改変は、1個、2個、3個、4個、5個もしくはそれより多い改変である、
請求項1〜16のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項18】
Pは、配列番号12のアミノ酸配列または少なくとも10個連続するアミノ酸のこの配列のN末端および/もしくはC末端が短縮された改変体、あるいは改変アミノ酸、非天然アミノ酸もしくはペプチド模倣物を含むこれらの改変体を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項19】
Hは、ミリストイル(C14)もしくはステアロイル(C18)、好ましくは、ミリストイル(C14)でのアシル化による疎水性改変である、請求項16または19に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項20】
好ましくは、蛍光色素、放射性同位体および造影剤から選択される標識を保持する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項21】
好ましくは、アルブミンおよびヒトIgGのFcドメインから選択される、ペプチドもしくはタンパク質に融合される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の疎水性改変preS由来ペプチド。
【請求項22】
請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの少なくとも1個の疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む、薬学的組成物。
【請求項23】
疾患の診断、予防および/もしくは処置のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
任意の遺伝子型のHBVのHBV感染は、阻害されるかもしくは予防される、請求項24または25に記載の、HBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項27】
HBVおよび/もしくはHDV侵入インヒビターとしての、請求項24または25に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項28】
B型肝炎および/もしくはD型肝炎、特に、慢性B型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項22に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
治療上有効な量の、請求項1または20のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、あるいは請求項21に記載の薬学的組成物を含む、請求項24〜26のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項30】
前記治療上有効な量は、10μg〜1mg/kg 体重、好ましくは、10μg〜100μgの範囲である、請求項29に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項31】
投与経路は、皮下、静脈内、経口、経鼻、筋肉内、経皮、吸入、坐剤によるものから選択される、請求項29または30に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドまたは薬学的組成物。
【請求項32】
HBVおよび/もしくはHDV感染の阻害のための;HBVおよび/もしくはHDVの一次感染の予防のための、ならびに/あるいはB型肝炎および/もしくはD型肝炎の処置のための、医薬の製造のための、請求項1または21のいずれか1項に記載のHBVの疎水性改変preS由来ペプチドあるいは請求項22に記載の薬学的組成物の使用。
【請求項33】
請求項1または21のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチド、ならびに必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/もしくは賦形剤を含む、ワクチン組成物。
【請求項34】
請求項1または21のいずれか1項に記載の、少なくとも1つのHBVの疎水性改変preS由来ペプチドを、治療上有効な量において含む、請求項33に記載のワクチン組成物。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図10】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図10】
【公表番号】特表2011−510035(P2011−510035A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543440(P2010−543440)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000476
【国際公開番号】WO2009/092611
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510200956)ルプレヒト−カールス−ウニベルジタート ハイデルベルク (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/000476
【国際公開番号】WO2009/092611
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(510200956)ルプレヒト−カールス−ウニベルジタート ハイデルベルク (1)
【Fターム(参考)】
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