説明

BACクローンを用いる尿路上皮癌の発生リスク評価方法及び予後予測方法

【課題】尿路上皮癌の発生リスク及び予後不良リスク並びに腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを決定するための新規な方法を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌発生関連領域、尿路上皮癌予後関連領域又は腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が発癌高リスク群、予後不良群又は膀胱内再発高リスク群に分類されるか否かを決定するステップを含む、尿路上皮癌の発生リスク若しくは予後不良リスク、又は腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを検出する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿路上皮癌発生関連領域でのDNAメチル化の有無を決定することを含む、尿路上皮癌の発生リスクの評価方法に関する。また、本発明は、尿路上皮癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を決定することを含む、尿路上皮癌の予後不良リスクの検出方法に関する。さらに、本発明は、腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を決定することを含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクの検出方法に関する。特に、本発明は、特定のBACクローンに含まれるゲノム領域でのDNAメチル化の有無を決定することを含む、尿路上皮癌の発生リスクの評価方法及び予後不良リスクの評価方法、並びに腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿路上皮癌とは、尿路上皮に発生する悪性腫瘍を一般的に指す。尿路上皮癌の発生部位は尿路全体にわたり、これは、腎盂、尿管、膀胱、及び尿道を含む。代表的な尿路上皮癌である膀胱癌の日本における罹患率は、人口10万人に対して20人程度(男性)であり、近年増加傾向にある。欧米での罹患率は顕著に高く、尿路上皮癌に対しては世界的に対策が求められている。尿路上皮癌の発癌リスクを非侵襲的に、例えば検診の一環として評価することができれば、危険群に対して、リスク因子であると言われている喫煙を制限するなどの尿路上皮癌の予防措置や、頻繁な尿細胞診などの早期診断のための対策を採ることができる。
【0003】
尿路上皮癌の治療法としては、罹患した器官の全摘術の他に、経尿道的腫瘍切除術(TUR)又はBCG(カルメット・ゲラン桿菌)注入療法が行われている。膀胱癌の根治治療である膀胱全摘術は、患者のQOLを著しく低下させるので、他の治療法であるTUR若しくはBCG注入療法による癌の制御が有効でない、又は有効でないことが予測される場合にのみ適応となる。癌の制御のために、又はアジュバント療法(術後薬物療法)として、化学療法も行われている。器官全摘術、又はアジュバント療法の適応を決定するために、尿路上皮癌の予後予測方法が泌尿器科の現場で求められている。
【0004】
尿路上皮癌は、尿路全体での時間的・空間的多発性が顕著である、との特徴を有する。これは、発癌のフィールド効果によると考えられている(非特許文献1)。例えば、腎盂癌、尿管癌などの上部尿路上皮癌の患者で、その一次癌を腎尿管全摘術により根治させても、10〜30%の患者においては異時性に膀胱内に尿路上皮癌が発生することが知られている。よって、現状では、腎盂・尿管癌の術後患者は、侵襲性のある膀胱鏡検査を反復して受ける必要がある。このような患者の負担を軽減するために、腎盂・尿管癌の非侵襲的な予後予測を可能にすることにより、異時性の尿路上皮癌の診断効率を高めることが求められている。
【0005】
癌細胞ではゲノム配列の欠失及び増幅、CpGアイランドのメチル化による発現抑制、ヒストンタンパク質の脱アセチル化による遺伝子の発現抑制、遺伝子点突然変異等が起こっていることが、頻繁に報告されている。
【0006】
本発明者らは、尿路における多段階の発癌過程の早期、すなわち前癌段階からDNAメチル化異常が寄与するとの分子病理学的知見を蓄積してきた(非特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Harris,A.L. and Neal,D.E.,N.Engl.J.Med.,1992,326:759−761
【非特許文献2】Kanai,Y.et al.,Carcinogenesis,2007,28:2434−2442
【非特許文献3】Kanai,Y.,Pathol.Int.,2008,58:544−558
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、尿路上皮癌の発生リスク・予後不良リスクを評価するための指標の開発が望まれ、また、腎盂・尿管癌の再発リスクを評価する方法も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、尿路上皮組織検体でのゲノム配列のメチル化について、以下に詳細に説明するようにBAMCA法を用いて網羅的に解析し、複数の尿路上皮癌発生関連領域、尿路上皮癌予後関連領域及び腎盂・尿管癌予後関連領域を特定した。
【0010】
本発明は、具体的には以下の特徴を有する。
〔1〕以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌発生関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が発癌高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の発生リスクを検出する方法。
〔2〕前記尿路上皮癌発生関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24に含まれるゲノム領域を包含する、上記〔1〕に記載の方法。
〔3〕前記尿路上皮癌発生関連領域が、BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、上記〔1〕に記載の方法。
〔4〕以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が予後不良群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の予後不良リスクを検出する方法。
〔5〕前記尿路上皮癌予後関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16に含まれるゲノム領域を包含する、上記〔4〕に記載の方法。
〔6〕前記尿路上皮癌予後関連領域が、BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、上記〔4〕に記載の方法。
〔7〕以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が膀胱内再発高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを検出する方法。
〔8〕前記腎盂・尿管癌予後関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7に含まれるゲノム領域を包含する、上記〔7〕に記載の方法。
〔9〕前記腎盂・尿管癌予後関連領域が、BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、上記〔7〕に記載の方法。
〔10〕前記ゲノムDNAが、被験体の尿路上皮組織サンプルから得られたものである、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の方法。
〔11〕前記ゲノムDNAが、被験体の尿サンプルから得られたものである、上記〔1〕〜〔9〕のいずれか1つに記載の方法。
〔12〕DNAメチル化を、BAMCA法によって調べる、上記〔1〕〜〔11〕のいずれか1つに記載の方法。
〔13〕BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24を少なくとも含む、尿路上皮癌の発生リスクを評価するためのアレイ。
〔14〕BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16を少なくとも含む、尿路上皮癌の予後不良リスクを決定するためのアレイ。
〔15〕BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7を少なくとも含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを決定するためのアレイ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、尿路上皮癌の発生リスク及び予後不良リスク、並びに腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを判定することができる。検診などの一環として尿路上皮癌の発生リスクを知ることができれば、尿細胞診などの尿路上皮癌のスクリーニングを頻繁に行い、尿路上皮癌を早期に発見して治療効果を高めることができる。また、尿路上皮癌の予後不良リスクを評価することができれば、膀胱全摘術の適応となるかどうかの判断など、治療方法の判断をより精密に行うことができる。さらに、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクの評価により、例えば膀胱での異時性の発癌を早期に発見できれば、それらの二次癌を、より侵襲の少ない治療法により根治することできると期待される。したがって、本発明は医療・健康科学分野で非常に大きな利益をもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】BAMCA法の概略を示す模式図である。
【図2】正常尿路上皮組織検体及び尿路上皮癌症例からの非癌尿路上皮組織検体についての、尿路上皮癌発生関連領域のDNAメチル化パターンに基づく発癌リスクの判定のための判断基準の例の一部を示す図である。BAMCA法における蛍光強度比の散布図として示されている。
【図3】表1の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムである。
【図4】非再発例及び再発例の尿路上皮癌検体についての、尿路上皮癌予後関連領域のDNAメチル化パターンに基づく予後不良リスクの判定のための判断基準の例の一部を示す図である。BAMCA法における蛍光強度比の散布図として示されている。
【図5】表2の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムである。
【図6】膀胱内非再発例及び膀胱内再発例の腎盂・尿管癌患者からの非癌尿路上皮組織検体についての、腎盂・尿管癌予後関連領域のDNAメチル化パターンに基づく膀胱内再発リスクの判定のための判断基準の例の一部を示す図である。BAMCA法における蛍光強度比の散布図として示されている。
【図7】表3の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中、「尿路上皮」とは尿路の内腔面を被覆する移行上皮を指す。本明細書中、「尿路上皮癌」とは、腎盂、尿管、膀胱又は尿道の尿路上皮に発生する悪性腫瘍を一般的に指す。本明細書中、「腎盂・尿管癌」とは、腎盂及び/又は尿管で生じる尿路上皮癌を指し、これは、上部尿路上皮癌とも呼ばれる。本明細書中、「膀胱癌」とは、膀胱で生じる尿路上皮癌を指す。本明細書中、「異時性膀胱癌」とは、腎盂・尿管癌患者の膀胱において二次的に発生する尿路上皮癌を指す。本明細書中、「膀胱内再発」とは、腎盂・尿管癌患者での異時的な膀胱内尿路上皮癌の発生を意味する。
【0014】
一態様では、本発明は、以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌発生関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が発癌高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の発生リスクを検出する方法に関する。
【0015】
また、別の態様では、本発明は、以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が予後不良群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の予後不良リスクを検出する方法に関する。
【0016】
さらに、別の態様では、本発明は、以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が膀胱内再発高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを検出する方法に関する。
【0017】
好ましい実施形態では、上記のゲノムDNAは、被験体の尿路上皮組織サンプルから得られたものである。
別の好ましい実施形態では、上記のゲノムDNAは、被験体の尿サンプルから得られたものである。一般に、尿中には尿路上皮から剥離した細胞が含まれ得るため、尿からのDNAの抽出によって、尿路上皮由来のゲノムDNAを得ることが可能である。尿サンプルの取得は通常侵襲性を伴わないため、本発明の方法を尿サンプルから得た尿路上皮ゲノムDNAに対して行えば、まったく侵襲性のない、癌の発生リスク評価及び予後予測が可能になる。
好ましい実施形態では、上記の態様のステップ(b)において、DNAメチル化をBAMCA法によって調べる。
【0018】
BAMCA法
本明細書中、BAMCA法とは、acterial rtificial chromosome array−based ethylated pG island mplification(BACアレイに基づくメチル化CpGアイランド増幅法)の略称であり、特定のゲノム領域におけるメチル化を検出することができるアッセイ方法である。
【0019】
以下に、BAMCA法の代表的な態様を例示する。被験組織(癌組織など)と対照組織(正常組織など)から、フェノール/クロロホルム法などによりDNAを調製し、各々のDNAを制限酵素SmaI(メチル化感受性制限酵素;切断後に平滑末端を形成させる)で消化する。この場合、SmaI認識部位がメチル化されている場合には、当該メチル化部位はSmaIで消化されないために、次のステップのXmaI(メチル化非感受性制限酵素;SmaIと同じ配列を認識し、切断後に突出末端を形成させる)で消化される。XmaI切断末端特異的アダプターライゲーションを行い、PCR法で被験組織に由来するXmaI断片を、例えば蛍光色素Cy3にて標識し、増幅する。一方、対照組織に由来するXmaI断片を、例えば蛍光色素Cy5にて標識する。その両者を混合し、数多くのBAC(Bacterial Artificial Chromosome)DNAを搭載した高密度ゲノムアレイ上で競合ハイブリダイゼーション(Comparative Genomic Hybridization)を行う。ここで、被験組織由来DNAにおいて、ある領域の両端のSmaI認識部位がメチル化されていると、当該メチル化部位はSmaIによっては切断されず、当該領域に対応したXmaI断片が生成される。XmaI断片はアダプターライゲーション後のPCRにより標識を伴って増幅される。当該領域が被験組織由来DNAのみでメチル化されており、対照組織ではメチル化されていない場合、当該プローブ配列に対応する配列を含むBACクローンを担持するスポットで、Cy3(被験組織)/Cy5(対照組織)の比が上昇する。例えば、この値が1.0以上となることを指標として、癌特異的にメチル化されたDNA断片に一致する配列を含むBACクローンを同定することができる。この一連のBAMCA法の過程を、図1に示す。
【0020】
競合ハイブリダイゼーションは、例えば、以下の条件により行うことができる:上記のように蛍光色素で標識したDNA断片を、場合により、反復配列をブロックするCot−1DNA(Invitrogen)などの存在下にてエタノール沈殿する。DNAをハイブリダイゼーション溶液(ホルムアミド5mL、硫酸デキストラン1g、20×SCCを混合し滅菌水で7mLに調整)に再懸濁し、SDS及び酵母tRNAを加え、75℃にて10分間変性させる。37℃にて30分間インキュベートした後、DNA溶液を自動マイクロアレイハイブリダイゼーション装置(Hyb4、Genomic Solutions社など)にセットしたアレイにアプライし、43℃にて48〜72時間インキュベートし、DNA断片をアレイにハイブリダイズさせる。インキュベート終了後、ハイブリダイゼーション装置を用いて、50%ホルムアミド+2×SSC(pH7.0)で45℃、30秒間の洗浄を6回、0.1×リン酸ナトリウムバッファー+NP40で25℃、30秒間の洗浄を2回、0.2×SSCで25℃、30秒間の洗浄を2回、0.1×SSCで25℃、30秒間の洗浄を2回行う。ハイブリダイゼーション装置からアレイを取り出し、0.1×SSCで室温、5分間の洗浄を行う。
【0021】
ハイブリダイゼーションが完了したアレイにおける蛍光を、例えば、スキャナ(Axon社のGenePix Personal 4100A等)で読み取った後、数値化ソフト(Axon社のGenePix Pro 5.0等)によって数値化し、癌検体及び対照検体における各BACクローンの蛍光強度比を算出することができる。
【0022】
尿路上皮癌発生関連領域、尿路上皮癌予後関連領域及び腎盂・尿管癌予後関連領域
好ましい実施形態では、本発明において用いる「尿路上皮癌発生関連領域」は、以下に示すようにBAMCA法などの適切な方法により、そのDNAメチル化と尿路上皮癌の発生リスクとの関連が示されたゲノム領域である。
【0023】
本発明者らは、全染色体領域を網羅的に解析するために、正常尿路上皮組織と尿路上皮癌症例より得られた非癌尿路上皮組織に対して、約4500種類のBAC DNAを搭載した高密度ゲノムアレイであるMCG Whole Genome Array−4500(Inazawa et al.,Cancer Sci.,95(7):559−563,2004)を用いてBAMCA法を実施して、ウィルコクソン検定により、正常尿路上皮組織と尿路上皮癌症例から得られた非癌尿路上皮組織とでメチル化パターンに差異を有するBACクローンを特定した。すなわち、本発明において、「尿路上皮癌発生関連領域」とは、限定するものではないが、以下の83のBACクローンに含まれるゲノム領域を包含する:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24。
【0024】
好ましい実施形態では、試験対象の検体において、上記の83のBACクローンのうち50クローン以上で、以下の実施例に記載する表1に示したものなどの判断基準を満たす場合に、尿路上皮癌の発癌高リスク群に属すると判断することができる。
【0025】
また、別の好ましい実施形態では、本発明において用いる「尿路上皮癌予後関連領域」は、以下に示すようにBAMCA法などの適切な方法により、そのDNAメチル化と尿路上皮癌の転移再発リスク、すなわち予後不良リスクとの関連が示されたゲノム領域である。
【0026】
本発明者らは、上記と同様、MCG Whole Genome Array−4500(Inazawa et al.,上掲)を用いてBAMCA法を実施して、ウィルコクソン検定により、予後良好群(非再発群)尿路上皮癌組織と予後不良群(再発群)尿路上皮癌組織でメチル化パターンに差異を有するBACクローンを特定した。すなわち、本発明において、「尿路上皮癌予後関連領域」とは、限定するものではないが、以下の20のBACクローンに含まれるゲノム領域を包含する:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16。
【0027】
好ましい実施形態では、試験対象の検体において、上記の20のBACクローンのうち17クローン以上で、以下の実施例に記載する表2に示したものなどの判断基準を満たす場合に、尿路上皮癌の予後不良高リスク群に属すると判断することができる。
【0028】
さらに、別の好ましい実施形態では、本発明において用いる「腎盂・尿管癌予後関連領域」は、以下に示すようにBAMCA法などの適切な方法により、そのDNAメチル化と腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクとの関連が示されたゲノム領域である。
【0029】
本発明者らは、上記と同様、MCG Whole Genome Array−4500(Inazawa et al.,上掲)を用いてBAMCA法を実施して、ウィルコクソン検定により、異時性膀胱癌非発生群(膀胱内非再発群)と異時性膀胱癌発生群(膀胱内再発群)の腎盂・尿管癌患者から得た非癌尿路上皮組織でメチル化パターンに差異を有するBACクローンを特定した。すなわち、本発明において、「腎盂・尿管癌予後関連領域」とは、限定するものではないが、以下の11のBACクローンに含まれるゲノム領域を包含する:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7。
【0030】
好ましい実施形態では、試験対象の検体において、上記の11のBACクローンで、以下の実施例に記載する表3に示したものなどの判断基準を満たす場合に、腎盂・尿管癌患者が膀胱内再発高リスク群に属すると判断することができる。
【0031】
ここで、上記のBACクローンは、RPCI BACライブラリー11に含まれるクローンであり、該ライブラリー中での参照番号により示されている。RPCI BACライブラリー11は、ヒト男性の血液から採取したゲノムを、制限酵素EcoRIで消化し、BACベクターに挿入することにより作製されたライブラリーである。RPCI BACライブラリーはRPCI(Roswell Park Center Institute)から入手可能である。また、一部のクローンについては、その全長配列をデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から入手可能である。全長配列がデータベースに登録されていないクローンについても、NCBI Clone Registryデータベースから、ゲノム上の位置、末端配列などについての情報を得ることができる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/clone/index.html)。全長配列又は末端配列がデータベースから入手可能な108クローンについての、全長配列又は末端配列のGenBank登録番号を以下に挙げる:
【0032】
全長配列 末端配列
尿路上皮癌発生関連領域
RP11−75C8 AQ266594
AQ267155
RP11−547D14 AC007616
RP11−174B4 AL354795
RP11−809C18 AL358216
RP11−89G6 AZ517052
AZ517054
AQ282799
AQ282815
RP11−741I15 AC114799
RP11−133H19 AQ350249
AQ385546
RP11−91J3 AC093763
RP11−59D10 AQ199851
AQ199855
RP11−61P15 AQ196216
AQ196219
RP11−492A7 AL079299
RP11−89N6 AQ286627
AQ286629
RP11−90K11 AQ283496
RP11−282P13 AQ505809
RP11−186O8 AQ421753
RP11−192D11 AQ412148
AQ412151
RP11−105H19 AC020750
RP11−98H23 AL136108
RP11−78P4 AQ281462
RP11−61F4 AC008372
RP11−90D13 AQ283611
AQ283623
AZ518405
RP11−80F4 AQ283999
AQ284000
RP11−454C4 AQ581877
AQ581879
RP11−399K21 AC010997
RP11−344A5 AL139240
RP11−462K4 AZ081873
AZ081897
RP11−94A18 AQ314311
AQ314314
RP11−3P8 AC012129
RP11−50N10 AQ052171
AQ052173
RP11−88E13 CL983285
CL983284
RP11−135N5 AC015799
RP11−87N6 AQ285091
RP11−80D22 AQ283990
AQ283992
RP11−233E5 CG734306
CG734305
BZ749101
RP11−194F13 AQ629756
AQ412861
RP11−176J16 AC079825
RP11−88B12 AZ516107
AQ286594
AQ286596
RP11−101J14 AQ321976
AQ321977
RP11−449B21 AQ584260
AQ584256
RP11−91N1 AQ284175
AQ284178
RP11−90B11 AZ517978
AQ283522
AQ283525
RP11−19C18 B82956
RP11−217F11 AC022479
AC092988
RP11−58G19 BZ749162
BZ749163
AQ196074
AQ196094
RP11−23M9 AC016189
RP11−105F22 AQ318972
AQ318975
RP11−79A21 AL513491
RP11−121G24 AC009644
RP11−530C5 AC073569
RP11−35K22 AQ047185
AQ047187
CG734275
BZ749129
CG734276
RP11−303G21 AZ081885
AZ081886
RP11−90G22 AQ282742
AQ282745
RP11−515I12 AL356137
RP11−87O1 AL137853
RP11−24N8 B84490
AQ013586
RP11−13F12 B76027
RP11−451C2 AC007165
RP11−91H1 AZ519302
AQ283374
AQ283377
RP11−477P11 AQ636471
RP11−4F24 AC007873
RP11−135L16 AQ381892
AQ381889
RP11−57C13 AL138767
RP11−20H19 B85662
B88781
AQ008162
RP11−170D9 AQ418003
RP11−89I4 AC055882
AC093761
RP11−295H24 AC022306
AC087536
RP11−90I15 AQ281788
AQ281791
RP11−90C21 AQ281472
AQ281482
RP11−451M8 AQ584055
AQ584058
RP11−184M21 AC090798
RP11−92I18 AQ286243
AQ321433
RP11−21P8 B84087
RP11−126D18 AQ348994
AQ348996
RP11−73N22 BZ749181
CG734300
CG734299
RP11−380K21 AL355150
RP11−363G1 AC009594
AC013539
RP11−89B11 AQ283636
AZ517722
AQ283634
RP11−67G24 AQ239176
【0033】
尿路上皮癌予後関連領域
RP11−79K6 AZ519182
AQ283158
AQ629664
RP11−133A7 AZ520486
RP11−466C12 AZ254479
AZ254480
AQ635914
RP11−18H23 B82882
RP11−478C1 AL158068
RP11−11A11 AC011227
RP11−337B11 AC018903
RP11−79A22 AZ519142
AQ282416
AQ580463
RP11−79K23 AZ519104
AQ317610
AQ317611
RP11−426E10 AQ528907
AZ694812
AZ916648
RP11−430B1 AC010674
AC090906
RP11−90C7 AQ281430
AQ281433
RP11−89H13 AZ517773
AQ284717
AQ284718
RP11−194H7 AQ412869
RP11−79O12 AZ519775
AQ283320
AQ283317
AQ629701
RP11−59D10 AQ199851
AQ199855
RP11−9F11 AL050312
RP11−207J8 AQ417722
AQ417725
RP11−12L9 B75042
B75043
RP11−383B16 AZ254491
AZ254492
AQ550758
AQ550761
【0034】
腎盂・尿管癌予後関連領域
RP11−721G11 AL360155
RP11−104N11 AQ314013
AQ314010
RP11−402N14 AC009968
RP11−244K2 AQ491344
AQ491346
RP11−3F7 AC010815
RP11−399B22 AL356965
RP11−148D23 AQ375695
AQ375698
RP11−90K15 AQ283505
AQ283509
RP11−10D8 B71668
AZ520198
RP11−91F7 AQ283328
AQ283330
【0035】
データベースに配列情報が開示されていない以下の6クローン:RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−254A7、RP11−216N13、RP11−284J3、及びRP11−229N14に関しては、それぞれについてSTS(Sequence−tagged site)配列が特定されている。STS配列については、以下に示すコード番号を用いてデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=unists)を検索することにより、具体的な情報を得ることができる。それぞれのクローンに対して特定されているSTS配列についての情報を、以下に挙げる:
【0036】
RP11−528B21
UniSTS:181699
stbK963H5
フォワードプライマー:GCCCTGTCATCTTTGAGAGC(配列番号1)
リバースプライマー:ATGGGCAAAGCTCAGTGC(配列番号2)
PCR産物サイズ:139bp,Homo sapiens
【0037】
RP11−282J24
UniSTS:78046
D8S2070
フォワードプライマー:TTCATCAGGCCATAGCACAG(配列番号3)
リバースプライマー:TGTGTTCTCCGGTCAGTGAA(配列番号4)
PCR産物サイズ:149bp,Homo sapiens
GenBank登録番号:G14733、T47837
【0038】
RP11−254A7
UniSTS:41648
D4S1597
フォワードプライマー:GAAATAGTAACAGCAGCATGG(配列番号5)
リバースプライマー:TGACTATGAGGGTAGATGACAG(配列番号6)
PCR産物サイズ:150bp,Homo sapiens
GenBank登録番号:Z24158
【0039】
RP11−216N13
UniSTS:28360
D5S2090
フォワードプライマー:CATGGGCATGTTTCAAAAT(配列番号7)
リバースプライマー:AGTACCTCCTTAGTAACTCTGGGC(配列番号8)
PCR産物サイズ:189−205bp,Homo sapiens
GenBank登録番号:Z51668
【0040】
RP11−284J3
UniSTS:65014
D8S1104
フォワードプライマー:TCAGCTATGAGAAAAGTTGAATG(配列番号9)
リバースプライマー:GACCCTTGTTTGTGTACGGT(配列番号10)
PCR産物サイズ:129−141bp,Homo sapiens
GenBank登録番号:G08671
【0041】
RP11−229N14
UniSTS:18657
SHGC−8898
フォワードプライマー:ATCCTCTTTCTTGCCTTGACC(配列番号11)
リバースプライマー:ACCCACAAAGCCAGGTAAAAT(配列番号12)
PCR産物サイズ:251bp,Homo sapiens
GenBank登録番号:G17358
【0042】
当業者であれば、上記の入手可能な配列情報をもとに、前記BACライブラリーから、本発明に係るBACクローンを入手することが可能である。
【0043】
繰り返して言うが、本発明の方法を実施するために用いる尿路上皮癌発生関連領域、尿路上皮癌予後関連領域及び腎盂・尿管癌予後関連領域は、上記のBACクローンに含まれるゲノム領域には限定されず、BAMCA法などの適切な方法によりそのメチル化が尿路上皮癌と関連付けられる他の領域であり得る。
【0044】
尿路上皮癌発生関連領域でのDNAメチル化を、BAMCA法をはじめとする、下記で例示するような公知の手法を用いて検査することにより、尿路上皮癌の発生リスクを評価することが可能であり、尿路上皮癌予後関連領域でのDNAメチル化を検査することにより、尿路上皮癌の予後不良リスクを決定することが可能であり、また、腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化を検査することにより、腎盂・尿管癌の術後の膀胱内再発リスクを決定することが可能である。
【0045】
DNAメチル化
本明細書中、「CpGアイランド」とは、高等生物、特に哺乳動物のゲノム配列中、非翻訳領域に存在するG(グアニン)C(シトシン)含量が多い領域である。「CpGアイランド」の「C」はシトシン、「G」はグアニン、「p」はシトシンとグアニンとの間のホスホジエステル結合を表している。すなわち、CpGアイランドには、隣接したシトシンとグアニンとがホスホジエステル結合で結合されたジヌクレオチドの繰り返し配列が含まれる。CpGアイランドの長さは約300〜3000塩基対である。CpGアイランドは、一般に、全配列中にCpG配列を統計的に期待される6%と同じか又はそれを上回る割合で含む。CpGアイランド以外のゲノム領域では、CGサプレッションのため、CpG配列の含量は1%以下である。
【0046】
本明細書中、「DNAメチル化」(又は単に「メチル化」)とは、上記のCpG配列において、シトシンの5位の炭素がメチル化されていることを意味する。
【0047】
正常尿路上皮組織18検体及び尿路上皮癌症例からの非癌尿路上皮組織17検体に対して、上記のBAMCA法により解析し、ウィルコクソン検定を利用して、正常尿路上皮組織と尿路上皮癌症例から得られた非癌尿路上皮組織とを区別することが可能な83BACクローンを特定した(表1)。
【0048】
尿路上皮癌の発生リスクに関わるそれらの領域でのメチル化の有無の判定基準を、例としてBAMCA法を用いて求めた。その例を図2に示す。また、各BACクローンについて求めた判定基準を、以下の実施例中の表1に示す。
【0049】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された尿路上皮癌発生関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析することにより、被験者の検体の中から、尿路上皮癌が発生するリスクが高い群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
【0050】
すなわち、例えば上記の83クローンに含まれるゲノム領域について、メチル化の有無を検査し、その結果を陽性対照及び陰性対照と比較することにより、尿路上皮癌の発生リスクを評価することができる。
【0051】
また、異なる予後を有する症例(予後良好群:再発なし、36検体;予後不良群:術後に再発、4検体)の尿路上皮癌組織の40検体(膀胱切除術:12検体;腎尿管切除術:28検体)について、上記のBAMCA法により解析し、ウィルコクソン検定を利用して、予後良好症例と予後不良症例とを区別することが可能な20BACクローンを特定した(表2)。
【0052】
尿路上皮癌の予後に関わるそれらの領域でのメチル化の有無の判定基準を、例としてBAMCA法を用いて求めた。その例を図4に示す。また、各BACクローンについて求めた判定基準を、以下の実施例中の表2に示す。
【0053】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された尿路上皮癌予後関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析することにより、尿路上皮癌症例の中から、予後不良な群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
【0054】
すなわち、例えば上記の20クローンに含まれるゲノム領域について、メチル化の有無を検査し、その結果を陽性対照及び陰性対照と比較することにより、尿路上皮癌の予後不良リスクを決定することができる。
【0055】
さらに、腎尿管切除術後の膀胱内再発の有無が異なる腎盂・尿管癌症例(膀胱内非再発群:9検体;膀胱内再発群:4検体)から得た非癌尿路上皮組織の13検体について、上記のBAMCA法により解析し、ウィルコクソン検定を利用して、膀胱内非再発群と膀胱内再発群とを区別することが可能な11BACクローンを特定した(表3)。
【0056】
腎盂・尿管癌の予後に関わるそれらの領域でのメチル化の有無の判定基準を、例としてBAMCA法を用いて求めた。その例を図6に示す。また、各BACクローンについて求めた判定基準を、以下の実施例中の表3に示す。
【0057】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された腎盂・尿管癌予後関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析することにより、腎盂・尿管癌症例の中から、膀胱内再発リスクが高い群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
【0058】
すなわち、例えば上記の11クローンに含まれるゲノム領域について、メチル化の有無を検査し、その結果を陽性対照及び陰性対照と比較することにより、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを決定することができる。
【0059】
ゲノム領域におけるDNAメチル化の状態を調べるためには、上記のBAMCA法(図1)の他に、PCRを利用する別の方法、及びサザンブロッティングを利用する方法などを用いることができる。
【0060】
PCRを利用する別の方法としては、以下のものなどを挙げることができる:
(a)バイサルファイトシークエンシング法:ゲノムDNAをバイサルファイト変換するとシトシンがウラシルに変換されるが、メチル化シトシンにおいてはこの反応がほとんど進まず、シトシンのままとなる。この反応を利用すれば、DNAメチル化状態の差が塩基配列に変換される。バイサルファイト変換したゲノム領域をPCR増幅してクローン化するなどし、塩基配列を決定することにより、DNAメチル化の有無を知ることができる。
(b)COBRA法(Combined bisulfite restriction analysis、バイサルファイト変換−制限酵素法):(a)と同様にゲノムDNAをバイサルファイト変換して塩基配列を変化させた後に、当該ゲノムDNAを制限酵素で切断して制限酵素の認識部位が残っているか残っていないかを調べることにより、DNAメチル化の有無を知ることができる。
(c)メチル化特異的PCR法:(a)と同様にゲノムDNAをバイサルファイト変換し、塩基配列を変化させた後に、当該ゲノムDNAを鋳型として、塩基配列が変化している場合(メチル化がない)に増幅できるプライマー、又は塩基配列が変化していない場合(メチル化がある)に増幅できるプライマーを用いてそれぞれPCR反応を行い、PCR産物の有無によってDNAメチル化の有無を知ることができる。
【0061】
サザンブロッティングを利用する方法は、以下のように実施することができる。試験する検体中のゲノムDNAをメチル化感受性制限酵素で消化すると、メチル化されている認識部位は切断されず、メチル化されていない認識部位は切断される。消化済みのDNAをアガロースゲル電気泳動により分離し、DNA断片をナイロンメンブレンなどにトランスファーし、32Pなどで標識した標的特異的なプローブをハイブリダイズさせる。このとき、検出されるバンドの長さの違いから、対象となる領域のメチル化の有無を知ることができる。
【0062】
これらの方法において用いる「メチル化感受性制限酵素」とは、例えばSmaI及びHpaIIであり、好ましくはSmaIである。それらのメチル化感受性酵素と同じ認識配列を認識する非メチル化感受性酵素は当業者が容易に知ることができ、これをメチル化感受性酵素と組み合わせて上記のようなDNAメチル化の検査方法において用いることができる。
【0063】
これらの方法を用いるメチル化の検査における、尿路上皮癌発生関連領域、尿路上皮癌予後関連領域及び腎盂・尿管癌予後関連領域でのメチル化の有無の判定基準は、当業者ならば公知の統計学的手法等を用いて適宜決定することができる。具体的には、例えば、尿路上皮癌検体の予後不良群を陽性対照とし、予後良好群を陰性対照として、所望のDNAメチル化検査法により尿路上皮癌予後関連領域のDNAメチル化状態を調べる。その結果を陽性対照と陰性対照とで比較することにより、各尿路上皮癌予後関連領域について有意な測定値の閾値を決定する。それにより、その閾値を用いたメチル化検査で陽性(又は陰性)と判定された場合に、検査対象の検体を予後不良群に含めるべきであると規定することができる。
【0064】
アレイ
本発明は、さらに、上記のように特定された83のBACクローン、20のBACクローン又は11のBACクローンを搭載した、尿路上皮癌の発生リスク若しくは予後不良リスク、又は腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを決定するためのアレイにも関する。
【0065】
この場合、「アレイ」とは、適切な基板上にゲノム配列を含む複数のDNAを位置特異的な様式で定着(スポット)させたデバイスを意味する。基板は、好ましくは固体基板であり、具体的には、ガラス、プラスチック、メンブレン等が挙げられる。好ましい基板はスライドガラスのようなガラス基板である。ガラス製の固体基板には、DNAの定着の前に、ポリ−L−リジン、アミノシラン、金・アルミニウム等の凝着によるコーティングを施すことが望ましい。
【0066】
本発明を、実施例を用いて以下により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によりなんら制限されるものではない。
【実施例1】
【0067】
尿路上皮癌発生リスク
検体
国立がんセンター中央病院(日本、東京)で根治的膀胱癌切除術又は腎尿管切除術を受けた尿路上皮癌患者の外科切除された組織から、非癌尿路上皮組織の17検体(男性11検体、女性6検体)を得た。
【0068】
比較のために、尿路上皮癌を患っていない患者から正常尿路上皮組織の18検体(男性13検体、女性5検体)を得た。これらの患者は、14名が腎細胞癌のために腎切除術を受け、3名が腎臓付近の後腹膜肉腫のために腎切除術を受け、1名が尿膜管癌のために膀胱部分切除術を受けた。
【0069】
対照として、正常尿路上皮の17検体(男性11検体、女性6検体)から得たDNAの混合物を用いた。
【0070】
BAMCA法
上記の検体について、BAMCA法を実施した。以下に説明するBAMCA法の実施の詳細については、文献(Misawa A. et al., Cancer Research,65:10233−10242,2005;Sugino Y et al.,Oncogene,26:7401−13,2007;Tanaka K et al.,Oncogene,26:6456−68,2007)にも記載されている。
【0071】
尿路上皮癌患者から得た非癌尿路上皮組織(被験尿路上皮組織)、正常尿路上皮組織(被験尿路上皮組織)、及び対照として用いた正常尿路上皮組織(対照正常尿路上皮組織)から、フェノール/クロロホルム法によりDNAを調製した。対照正常尿路上皮組織のDNAは、混合して後のステップにおいて用いた。各々のDNAを制限酵素SmaI(メチル化感受性制限酵素;切断後に平滑末端を形成させる)で消化した。この場合、SmaI認識部位がメチル化されている場合には、当該メチル化部位はSmaIで消化されないために、次のステップのXmaI(メチル化非感受性制限酵素;SmaIと同じ配列を認識し、切断後に突出末端を形成させる)で消化される。XmaI切断末端特異的アダプターライゲーションを行い、PCR法で被験尿路上皮組織に由来するXmaI断片を蛍光色素Cy3にて標識し、増幅した。一方、対照正常尿路上皮組織に由来するXmaI断片を蛍光色素Cy5にて標識した。蛍光色素での標識は、BioPrime array CGH genomic labeling system(Invitrogen)を用いて行った。アダプターライゲーション及びPCRに用いたオリゴヌクレオチドの配列は、以下の通りである:
Adaptor−L:AGCACTCTCCAGCCTCTCACCGAC(配列番号13)
Adaptor−S:CCGGGTCGGTGA(配列番号14)
PCRはAdaptor−Lと同一の配列を有するプライマーを用いて行った。
【0072】
被験尿路上皮組織由来のDNA断片と対照正常尿路上皮組織由来のDNA断片の両者を混合し、4361種類のBACクローンを搭載した高密度CGHアレイ(MCG Whole Genome Array−4500;Inazawa et al.,Cancer Sci.,95(7):559−563,2004)上で競合ハイブリダイゼーション(Comparative Genomic Hybridization)を行った。競合ハイブリダイゼーションは、以下の条件により行った:上記のように蛍光色素で標識したDNA断片を、反復配列をブロックするCot−1DNA(Invitrogen)の存在下にてエタノール沈殿した。DNAをハイブリダイゼーション溶液(ホルムアミド5mL、硫酸デキストラン1g、20×SCCを混合し滅菌水で7mLに調整)に再懸濁し、SDS及び酵母tRNAを加え、75℃にて10分間変性させた。37℃にて30分間インキュベートした後、DNA溶液を自動マイクロアレイハイブリダイゼーション装置(Hyb4、Genomic Solutions社)にセットしたアレイにアプライし、43℃にて72時間インキュベートし、DNA断片をアレイにハイブリダイズさせた。インキュベート終了後、ハイブリダイゼーション装置を用いて、50%ホルムアミド+2×SSC(pH7.0)で45℃、30秒間の洗浄を6回、0.1×リン酸ナトリウムバッファー+NP40で25℃、30秒間の洗浄を2回、0.2×SSCで25℃、30秒間の洗浄を2回、0.1×SSCで25℃、30秒間の洗浄を2回行った。ハイブリダイゼーション装置からアレイを取り出し、0.1×SSCで室温、5分間の洗浄を行った。
【0073】
ハイブリダイゼーションが完了したアレイにおける蛍光を、スキャナ(Axon社のGenePix Personal 4100A)で読み取った後、数値化ソフト(Axon社のGenePix Pro 5.0)によって数値化し、解析ソフト(三井情報株式会社のAcue2)によって解析して、被験検体及び正常対照検体における各BACクローンの蛍光強度比を算出した。
【0074】
ここで、尿路上皮癌患者からの非癌尿路上皮組織由来DNAにおいて、ある領域の両端のSmaI認識部位がメチル化されていると、当該メチル化部位はSmaIによっては認識されず、当該領域に対応したXmaI断片が生成される。XmaI断片はアダプターライゲーション後のPCRにより標識を伴って増幅され、プローブが生成される。その結果、当該プローブ配列に対応する配列を含むBACクローンを担持するスポットで、Cy3(被験検体)/Cy5(正常対照)の比が上昇する。例えば、この値が1.0以上となることを指標として、癌患者由来組織特異的にメチル化されたDNA断片に一致する配列を含むBACクローンを同定することができる。BAMCA法の過程を、図1に示す。
【0075】
尿路上皮癌発生関連領域の同定
DNAメチル化パターンの解析により尿路上皮癌の発生リスクを決定するのに有効なゲノム領域を特定するために、検体を正常群及び発癌高リスク群に分類するのに有益なBACクローンを同定した。同定の手順は以下の通りである。
【0076】
はじめに、正常尿路上皮組織検体と尿路上皮癌症例から得られた非癌尿路上皮組織検体とでメチル化パターンが異なる201BACクローンをウィルコクソン検定(P<0.01)を用いて特定した。ウィルコクソン検定については、例えば、市原清志著「バイオサイエンスの統計学」(南江堂、1990年)、50ページに記載されている。
【0077】
続いて、各検体が発癌高リスク群に属することを判定するときの「感度」及び「特異性(特異度)」を、以下のように規定した:
感度=所定の判断基準により発癌高リスク群に属するとされた症例数/尿路上皮癌症例からの非癌尿路上皮組織検体数×100(%)
特異度=所定の判断基準により正常群に属するとされた症例数/正常尿路上皮組織検体数×100(%)。
【0078】
この感度及び特異度が最大となるように、各クローンについて以下に示すカットオフ値を設定した。
上記で設定した感度及び特異度が75%以上となった83のBACクローンを特定した。それらのクローンに含まれるゲノム領域を、尿路上皮癌発生関連領域と称した。
【0079】
同定された尿路上皮癌発生関連領域のBACクローンは、以下の83クローンである:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24。
【0080】
上記で特定した尿路上皮癌発生関連領域83クローンについて、発癌高リスクの判定基準並びに感度及び特異度を以下の表1に示す。判定基準の数値は、上記で詳述したBAMCA法で得られる蛍光測定値のCy3/Cy5比である。
【0081】
【表1】



【0082】
検出値の閾値の一例を図2に示す。この中で、例えば、RP11−75C8については、BAMCA法での蛍光測定値のCy3/Cy5比が1.01より大きいとき、尿路上皮癌症例から得られた非癌尿路上皮組織検体を感度83%、特異度94%で発癌高リスク群に分類することができる。
【0083】
表1の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムを、図3に示す。正常尿路上皮組織群では判断基準を満たすBACクローンの数は少なく(図3:左側)、尿路上皮癌症例より得られた非癌尿路上皮組織群では判断基準を満たすBACクローンの数は多く(図3:右側)、その差異は明瞭である。このヒストグラムに基づいて、表1の判断基準を50BACクローン以上で満たす非癌尿路上皮組織を発癌高リスク群と判断することとすると、尿路上皮癌症例より得られた非癌尿路上皮組織を感度・特異度ともに100%で発癌高リスク群に分類することができた。
【0084】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された尿路上皮癌発生関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析することにより、特にこれらの領域のうちの50領域以上で所定の判断基準を満たすか否かを検討することにより、発癌リスクの高い群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
【実施例2】
【0085】
尿路上皮癌予後不良リスク
検体
国立がんセンター中央病院(日本、東京)で根治的膀胱切除術又は腎尿管切除術を受けた尿路上皮癌患者の外科切除された組織から、尿路上皮癌組織の40検体を得た。40検体のうち、36検体は術後に再発がなかった患者からのもの(予後良好症例)であり、4検体は術後に再発した患者(3例は骨盤内リンパ節転移、1例は肺及び骨転移)からのもの(予後不良症例)であった。
【0086】
尿路上皮癌予後関連領域の同定
上記と同様にBAMCA法を行い、予後良好症例と予後不良症例の40検体についての結果に基づき、ウィルコクソン検定(P<0.01)を用いて、両症例群でBAMCA法のシグナル比が顕著に異なる20のBACクローンを選択した。
【0087】
同定された尿路上皮癌予後関連領域のBACクローンは、以下の20クローンである:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16。
【0088】
続いて、各検体が予後不良群に属することを判定するときの「感度」及び「特異性(特異度)」を、以下のように規定した:
感度=所定の判断基準により予後不良群に属するとされた症例数/予後不良症例検体数×100(%)
特異度=所定の判断基準により予後良好群に属するとされた症例数/予後良好症例検体数×100(%)。
【0089】
この感度及び特異度が最大となるように、各クローンについて以下に示すカットオフ値を設定した。
上記の尿路上皮癌予後関連領域20クローンについて、予後不良の判定基準並びに感度及び特異度を以下の表2に示す。判定基準の数値は、実施例1で詳述したBAMCA法で得られる蛍光測定値のCy3/Cy5比である。
【0090】
【表2】

【0091】
検出値の閾値の一例を図4に示す。この中で、例えば、RP11−79K6については、BAMCA法での蛍光測定値のCy3/Cy5比が1.06未満であるとき、予後不良クラスターに属する検体を感度100%、特異度94.4%で予後不良群に分類することができる。
【0092】
表2の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムを、図5に示す。予後良好群では判断基準を満たすBACクローンの数は少なく(図5:左側)、予後不良群では判断基準を満たすBACクローンの数は多く(図5:右側)、その差異は明瞭である。このヒストグラムに基づいて、表2の判断基準を17BACクローン以上で満たす尿路上皮癌組織を予後不良群と判断することとすると、予後不良症例より得られた尿路上皮癌組織を感度・特異度ともに100%で予後不良群に分類することができた。
【0093】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された尿路上皮癌予後関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析することにより、特にこれらの領域のうちの17領域以上で所定の判断基準を満たすか否かを検討することにより、予後不良な群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
【実施例3】
【0094】
腎盂・尿管癌膀胱内再発リスク
検体
国立がんセンター中央病院(日本、東京)で腎尿管切除術を受けた尿路上皮癌患者の外科切除された組織から、非癌尿路上皮組織の13検体を得た。13検体のうち、9検体は術後に異時性膀胱癌が発生しなかった患者からのもの(膀胱内非再発症例)であり、4検体は術後に異時性膀胱癌が発生した患者からのもの(膀胱内再発症例)であった。
【0095】
腎盂・尿管癌予後関連領域の同定
上記と同様にBAMCA法を行い、膀胱内非再発症例と膀胱内再発症例の13検体についての結果に基づき、ウィルコクソン検定(P<0.01)を用いて、両症例群でBAMCA法のシグナル比が顕著に異なる11のBACクローンを選択した。
【0096】
同定された腎盂・尿管癌予後関連領域のBACクローンは、以下の11クローンである:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7。
【0097】
続いて、各検体が膀胱内再発高リスク群に属することを判定するときの「感度」及び「特異性(特異度)」を、以下のように規定した:
感度=所定の判断基準により膀胱内再発高リスク群に属するとされた症例数/膀胱内再発症例検体数×100(%)
特異度=所定の判断基準により膀胱内再発低リスク群に属するとされた症例数/膀胱内非再発症例検体数×100(%)。
【0098】
この感度及び特異度が最大となるように、各クローンについて以下に示すカットオフ値を設定した。
上記の腎盂・尿管癌予後関連領域11クローンについて、膀胱内再発リスクの判定基準並びに感度及び特異度を以下の表3に示す。判定基準の数値は、実施例1で詳述したBAMCA法で得られる蛍光測定値のCy3/Cy5比である。
【0099】
【表3】

【0100】
検出値の閾値の一例を図6に示す。この中で、例えば、RP11−721G11については、BAMCA法での蛍光測定値のCy3/Cy5比が0.94未満であるとき、膀胱内再発群に属する検体を感度100%、特異度100%で膀胱内再発高リスク群に分類することができる。
【0101】
表2の判断基準を満たすBACクローン数のヒストグラムを、図7に示す。膀胱内非再発群では判断基準を満たすBACクローンの数は少なく(図7:左側)、膀胱内再発群では判断基準を満たすBACクローンの数は多く(図7:右側)、その差異は明瞭である。
【0102】
これらの結果は、本実施例に記載の方法により特定された腎盂・尿管癌予後関連領域に関してDNAメチル化の有無を解析し、これらの領域で所定の判断基準を満たすか否かを検討することにより、腎盂・尿管癌患者の中から膀胱内再発リスクが高い群を非常に高感度かつ特異性高く分類することが可能であることを意味している。
上記の実験は、国立がんセンター(日本、東京)倫理委員会により承認を得て行った。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、尿路上皮癌の発生リスク及び予後不良リスク並びに腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを判定することができる。したがって、本発明は医療・健康科学分野で用いることができる。
【配列表フリーテキスト】
【0104】
配列番号1〜12:プライマー
配列番号13及び14:アダプター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌発生関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が発癌高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の発生リスクを検出する方法。
【請求項2】
前記尿路上皮癌発生関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24に含まれるゲノム領域を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記尿路上皮癌発生関連領域が、BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、尿路上皮癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が予後不良群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、尿路上皮癌の予後不良リスクを検出する方法。
【請求項5】
前記尿路上皮癌予後関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16に含まれるゲノム領域を包含する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記尿路上皮癌予後関連領域が、BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
以下のステップ:
(a)被験体の尿路上皮由来のゲノムDNAを準備するステップ、
(b)(a)で準備したゲノムDNAについて、腎盂・尿管癌予後関連領域でのDNAメチル化の有無を調べるステップ、及び
(c)ステップ(b)で明らかになったDNAメチル化パターンから、該被験体が膀胱内再発高リスク群に分類されるか否かを決定するステップ
を含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを検出する方法。
【請求項8】
前記腎盂・尿管癌予後関連領域が、少なくとも、BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7に含まれるゲノム領域を包含する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記腎盂・尿管癌予後関連領域が、BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7に含まれるゲノム領域からなる群より選択される1つ以上のゲノム領域である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ゲノムDNAが、被験体の尿路上皮組織から得られたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ゲノムDNAが、被験体の尿サンプルから得られたものである、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
DNAメチル化を、BAMCA法によって調べる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
BACクローン:RP11−75C8、RP11−547D14、RP11−174B4、RP11−809C18、RP11−89G6、RP11−528B21、RP11−282J24、RP11−741I15、RP11−133H19、RP11−91J3、RP11−59D10、RP11−61P15、RP11−492A7、RP11−89N6、RP11−90K11、RP11−282P13、RP11−186O8、RP11−192D11、RP11−254A7、RP11−105H19、RP11−98H23、RP11−78P4、RP11−61F4、RP11−90D13、RP11−80F4、RP11−216N13、RP11−454C4、RP11−284J3、RP11−399K21、RP11−344A5、RP11−462K4、RP11−94A18、RP11−3P8、RP11−50N10、RP11−88E13、RP11−135N5、RP11−87N6、RP11−80D22、RP11−233E5、RP11−194F13、RP11−176J16、RP11−88B12、RP11−101J14、RP11−449B21、RP11−91N1、RP11−90B11、RP11−19C18、RP11−217F11、RP11−58G19、RP11−23M9、RP11−105F22、RP11−79A21、RP11−121G24、RP11−530C5、RP11−35K22、RP11−303G21、RP11−90G22、RP11−515I12、RP11−87O1、RP11−24N8、RP11−13F12、RP11−451C2、RP11−91H1、RP11−477P11、RP11−4F24、RP11−135L16、RP11−57C13、RP11−20H19、RP11−170D9、RP11−89I4、RP11−295H24、RP11−90I15、RP11−90C21、RP11−451M8、RP11−184M21、RP11−92I18、RP11−21P8、RP11−126D18、RP11−73N22、RP11−380K21、RP11−363G1、RP11−89B11、及びRP11−67G24を少なくとも含む、尿路上皮癌の発生リスクを評価するためのアレイ。
【請求項14】
BACクローン:RP11−79K6、RP11−133A7、RP11−466C12、RP11−18H23、RP11−478C1、RP11−11A11、RP11−337B11、RP11−79A22、RP11−79K23、RP11−426E10、RP11−430B1、RP11−90C7、RP11−89H13、RP11−194H7、RP11−79O12、RP11−59D10、RP11−9F11、RP11−207J8、RP11−12L9、及びRP11−383B16を少なくとも含む、尿路上皮癌の予後不良リスクを決定するためのアレイ。
【請求項15】
BACクローン:RP11−721G11、RP11−104N11、RP11−402N14、RP11−229N14、RP11−244K2、RP11−3F7、RP11−399B22、RP11−148D23、RP11−90K15、RP11−10D8、及びRP11−91F7を少なくとも含む、腎盂・尿管癌の膀胱内再発リスクを決定するためのアレイ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−207162(P2010−207162A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58156(P2009−58156)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究、「健康安心プログラム/個別化医療の実現のための技術融合バイオ診断技術開発/染色体解析技術開発/癌の染色体構造異常の解析と診断のコンテンツ開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】