説明

BMP−4中和因子タンパク質

【課題】骨形成因子に属するBMP−4に結合し、BMP−4の作用を抑制する新規BMP−4中和因子タンパク質Ventroptin(VOPT)及びVOPTをコードする遺伝子DNA、並びにVOPTを用いたBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法等を提供すること。
【解決手段】E8ニワトリ網膜の背腹軸特異的に発現している分子をRLCS法によりスクリーニングし、腹側特異的に発現しているDNA断片をプローブとしてノーザンブロットによりmRNAを検出し、ニワトリ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングして、シグナル配列とシステインに富んだ3つの繰返し配列をコードする完全長のVOPTcDNAを得る。このニワトリのVOPT配列に基づいてプライマーをデザインし、マウス眼cDNAライブラリーから常法に従い、完全長のマウスVOPTをコードするcDNAを単離する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、骨形成因子(BMP;bone morphogenetic protein)に属するBMP−4に結合し、BMP−4の作用を抑制する新規BMP−4中和因子タンパク質及びそれをコードする遺伝子DNA、並びにBMP−4中和因子タンパク質を用いたBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法等に関する。
【0002】
【従来の技術】
骨基質中に存在する異所性骨誘導活性を指標として精製又はクローニングされた分子群は骨形成因子(BMP)と呼ばれ、現在のところ、BMP−2からBMP−8までのTGF−β(transforming growth factor type β)ファミリーに属するものと、これとは異なる構造のBMP−1が知られている。これらの分子群は種を超えて保存され、また広くさまざまな臓器の細胞に発現しており、単に骨形成にとどまらず体軸決定などを含む形態形成に関与するサイトカインであることが明らかになりつつある。
【0003】
近年、BMPの中和因子としてノギン(Noggin)、コーディン(Chordin)、ホリスタチン(Follistatin)、セルベラス(Cerberus)、グレムリン(Gremlin)など、数多くの分泌タンパク質が報告されている(Dev. Biol. 38, 30-40, 1974, Brain Res. 63, 285-90, 1973, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2439-44, 1999 )。これらBMP中和因子は分泌タンパク質であり、BMPに特異的に結合し、BMPが特異的受容体に結合することやBMPのシグナリングを阻害する。
【0004】
BMP−4中和因子として知られているコーディンは、アフリカツメガエル、ヒト、ラットよりcDNAがクローニングされており、ツメガエルのコーディンは120kDの分泌タンパク質であり、そのアミノ酸配列中のよく保存された場所にシステイン残基に富んだ58〜74アミノ酸の4回の繰返し配列(VWFCドメイン)を含んでいる(Cell 79, 779-790, 1994, Cell 86, 589-598, 1996)。このシステイン残基に富んだ配列は、ノギン等の他のBMP中和因子には見られず、BMP中和因子ではコーディンだけに見られるものであるが、BMP中和因子以外ではフォンビルブラント(von Willebrand)因子などの細胞外に存在するタンパク質にも見い出されており、オリゴマー形成やタンパク質同士の相互作用に関与しているものと考えられている。
【0005】
BMP−4を含むTGF−βファミリー分子は、中胚葉や腹側外胚葉誘導に必須で、初期発生時の背腹軸形成に関与している。また、神経系においては神経管背側(蓋板)に発現しており、神経管の背腹軸形成に関与し、その濃度勾配で分化してくる神経細胞の種類が決まるとされている。同様に網膜においてもBMP−4は背側に発現しており、背腹軸決定への関与が示唆されている。また、BMP−4を含むTGF−βファミリー分子は、神経系において増殖の抑制やアポトーシスの誘導などの作用が知られており、コーディン同様にBMP中和因子であるノギンのノックアウトマウスの神経管では多数のアポトーシスが観察されている。また、コーディンとノギンのダブルノックアウトマウスでは、前脳の形成不全が観察されている。かかるBMP−4を含むTGF−βファミリー分子は、肢芽に発現し、BMP活性を調節することも知られている(Science 280, 1455-7, 1998, Dev. Biol. 197, 205-17, 1998, Cell Tissue Res. 296, 111-9, 1999, Development 126, 2161-70, 1999, Development 126, 5515-22, 1999)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、骨形成因子に属するBMP−4に結合し、BMP−4の作用を抑制する新規BMP−4中和因子タンパク質Ventroptin(VOPT)及びVentroptin(VOPT)をコードする遺伝子DNA、並びにVentroptin(VOPT)を用いたBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法等を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、神経系における領域特異性形成の分子機構解明に向けて、網膜における領域特異性の形成をモデルとして研究しており、網膜の前後軸あるいは背腹軸方向においてトポグラフィックな発現を示す分子群を、網羅的に単離・同定することを目指して、RLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法を用いてスクリーニングを行った。この解析から両軸方向に対して各数十個のクローンを同定し、その構造解析を行い、網膜においてトポグラフィックな発現を示す分子群は、転写因子、分泌因子、接着分子、細胞内シグナル伝達分子など多様な分子で構成されており、また、網膜内での発現部位に関しては、神経節細胞層にのみ発現する分子、神経節細胞層と内顆粒層に発現する分子、内顆粒層のみに発現する分子などさまざまなタイプに分類することができるという知見を得た。かかる知見を得る過程において、前記同定したクローンから、BMP−4と結合してその活性を阻害する、ニワトリ網膜の腹側特異的に発現している新規分子Ventroptin(VOPT)を見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質(請求項1)や、配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNA(請求項2)や、請求項2記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNA(請求項3)や、以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質(請求項4)や、配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNA(請求項5)や、請求項5記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNA(請求項6)に関する。
【0009】
また本発明は、配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(請求項7)や、配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質(請求項8)や、配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質(請求項9)や、配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質(請求項10)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の一部からなり、かつBMP−4中和活性を有するペプチド(請求項11)に関する。
【0010】
また本発明は、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質又は融合ペプチド(請求項12)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドに特異的に結合する抗体(請求項13)や、抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項13記載の抗体(請求項14)や、請求項13又は14記載の抗体が特異的に結合し、かつBMP−4中和活性を有することを特徴とする組換えタンパク質又はペプチド(請求項15)に関する。
【0011】
また本発明は、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞(請求項16)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物(請求項17)や、非ヒト動物が、マウス又はラットである請求項17記載の非ヒト動物(請求項18)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を過剰発現する非ヒト動物(請求項19)や、非ヒト動物が、マウス又はラットであることを特徴とする請求項19記載の非ヒト動物(請求項20)に関する。
【0012】
また本発明は、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドと、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項21)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現している細胞と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は該タンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法(請求項22)や、請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現している細胞が、請求項16記載の宿主細胞であることを特徴とする請求項22記載のBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は該タンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法(請求項23)や、請求項17又は18記載の非ヒト動物と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法(請求項24)や、請求項19又は20記載の非ヒト動物と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法(請求項25)や、請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られるBMP−4中和活性促進物質(請求項26)や、請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られるBMP−4中和活性抑制物質(請求項27)や、請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られる請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進物質(請求項28)や、請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られる請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現抑制物質(請求項29)に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明のDNAとしてはVentroptin(VOPT)cDNA等を挙げることができ、例えばニワトリVentroptin(VOPT)のcDNAは、RLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)法等によりE8ニワトリ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができ、シグナル配列と、フォンビルブラント因子やコーディンを含む数種のタンパク質に保存されているシステインに富んだ繰返し配列(VWFCドメイン)が3回出現する456アミノ酸配列の新規のタンパク質をコードしている(図2参照)。また、本発明のタンパク質としてはBMP−4中和活性を有する分泌タンパク質Ventroptin(VOPT)等を挙げることができ、本発明のペプチドとしては、本発明のタンパク質の一部からなり、かつBMP−4中和活性を有するペプチドを挙げることができる。上記本発明の対象となるタンパク質及びペプチド、並びにこれらタンパク質及びペプチドに特異的に結合する抗体が特異的に結合する組換えタンパク質及びペプチドを総称して、以下「本件タンパク質・ペプチド」ということがある。なお、本件タンパク質・ペプチドはそのDNA配列情報等に基づき公知の方法で調製することができ、その由来は特に制限されるものではない。
【0014】
上記本発明の対象となるDNAとして、具体的には、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列からなるニワトリVentroptin(VOPT)タンパク質又はマウスVentroptin(VOPT)タンパク質をコードするDNAや、配列番号2又は4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNA、例えばヒトVentroptin(VOPT)遺伝子(GenBankアクセッションNO.AL049176)や、配列番号1又は3に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNAを挙げることができる。これらはそのDNA配列情報等に基づき、例えばニワトリ、マウス、ヒト等の遺伝子ライブラリーやcDNAライブラリーなどから公知の方法、例えば全RNAを用いる5′RACE法により調製することができる。
【0015】
また、配列番号1又は3に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部又は全部をプローブとして、各種DNAライブラリーに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行ない、該プローブにハイブリダイズするDNAを単離することにより、Ventroptin(VOPT)cDNAと同効な目的とするBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNAを得ることもできる。かかるDNAを取得するためのハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、及び1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、65℃でのハイブリダイゼーション、及び0.1×SSC,0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理をより好ましく挙げることができる。なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば、種々の要素を適宜組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0016】
本発明の融合タンパク質や融合ペプチドとしては、本件タンパク質・ペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとが結合しているものであればどのようなものでもよく、マーカータンパク質としては、従来知られているマーカータンパク質であれば特に制限されるものではなく、例えば、アルカリフォスファターゼ、抗体のFc領域、HRP、GFPなどを具体的に挙げることができ、また本発明におけるペプチドタグとしては、Mycタグ、Hisタグ、FLAGタグ、GSTタグなどの従来知られているペプチドタグを具体的に例示することができる。かかる融合タンパク質は、常法により作製することができ、Ni−NTAとHisタグの親和性を利用したVentroptin(VOPT)タンパク質等の精製や、Ventroptin(VOPT)タンパク質と相互作用するタンパク質の検出や、Ventroptin(VOPT)タンパク質等に対する抗体の定量などとして、また当該分野の研究用試薬としても有用である。
【0017】
本発明の前記タンパク質やペプチドに特異的に結合する抗体としては、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体等の免疫特異的な抗体を具体的に挙げることができ、これらは上記Ventroptin(VOPT)等のタンパク質又はその一部を抗原として用いて常法により作製することができるが、その中でもモノクローナル抗体がその特異性の点でより好ましい。かかるモノクローナル抗体等の抗体は、例えば、眼や脳の神経系における領域特異性形成の分子レベルでの機構を解明する上で有用である。
【0018】
上記の本発明の抗体は、慣用のプロトコールを用いて、動物(好ましくはヒト以外)に本件タンパク質・ペプチド若しくはエピトープを含むその断片、又は該タンパク質を膜表面に発現した細胞を投与することにより産生され、例えばモノクローナル抗体の調製には、連続細胞系の培養物により産生される抗体をもたらす、ハイブリドーマ法(Nature 256, 495-497, 1975)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Immunology Today 4, 72, 1983)及びEBV−ハイブリドーマ法(MONOCLONAL ANTIBODIES AND CANCER THERAPY, pp.77-96, Alan R.Liss, Inc., 1985)など任意の方法を用いることができる。
【0019】
本発明の上記本件タンパク質・ペプチドに対する一本鎖抗体をつくるために、一本鎖抗体の調製法(米国特許第4,946,778号)を適用することができる。また、ヒト化抗体を発現させるために、トランスジェニックマウス又は他の哺乳動物等を利用したり、上記抗体を用いて、本件タンパク質・ペプチドを発現するクローンを単離・同定したり、アフィニティークロマトグラフィーでそのポリペプチドを精製することもできる。本件タンパク質・ペプチドやその抗原エピトープを含むペプチドに対する抗体は、前記のように神経系における領域特異性形成の分子レベルでの機構を解明する上で有用である。そして、これら抗体が特異的に結合する組換えタンパク質又はペプチドも、前記のように本発明の本件タンパク質・ペプチドに包含される。
【0020】
また前記モノクローナル抗体等の抗体に、例えば、FITC(フルオレセインイソシアネート)又はテトラメチルローダミンイソシアネート等の蛍光物質や、125I、32P、14C、35S又は3H等のラジオアイソトープや、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ又はフィコエリトリン等の酵素で標識したものや、グリーン蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光発光タンパク質などを融合させた融合タンパク質を用いることによって、本件タンパク質・ペプチドの機能解析を行うことができる。また本件発明の抗体を用いる免疫学的測定方法としては、RIA法、ELISA法、蛍光抗体法、プラーク法、スポット法、血球凝集反応法、オクタロニー法等の方法を挙げることができる。
【0021】
本発明はまた、上記本件タンパク質・ペプチドを発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞に関する。かかる本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子の宿主細胞への導入は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989)などの多くの標準的な実験室マニュアルに記載される方法、例えば、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープローディング (scrape loading)、弾丸導入(ballistic introduction)、感染等により行うことができる。そして、宿主細胞としては、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌原核細胞や、酵母、アスペルギルス等の真菌細胞や、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9等の昆虫細胞や、L細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、BALB/c3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、BHK21細胞、HEK293細胞、Bowes悪性黒色腫細胞等の動物細胞や、植物細胞等を挙げることができる。
【0022】
また、発現系としては、上記本件タンパク質・ペプチドを宿主細胞内で発現させることができる発現系であればどのようなものでもよく、染色体、エピソーム及びウイルスに由来する発現系、例えば、細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、SV40のようなパポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス由来のベクター、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。この発現系は発現を起こさせるだけでなく発現を調節する制御配列を含んでいてもよい。
【0023】
上記発現系を含んでなる宿主細胞や、かかる細胞を培養して得られる本件タンパク質・ペプチドは、後述するように本発明のスクリーニング方法に用いることができる。本件タンパク質・ペプチドを細胞培養物から回収し精製するには、硫酸アンモニウムまたはエタノール沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを含めた公知の方法、好ましくは、高速液体クロマトグラフィーが用いられる。特に、アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、例えば、本件タンパク質・ペプチドに対する抗体を結合させたカラムや、上記本件タンパク質・ペプチドに通常のペプチドタグを付加した場合は、このペプチドタグに親和性のある物質を結合したカラムを用いることにより、本件タンパク質・ペプチドを得ることができる。上記本件タンパク質・ペプチドの精製方法は、ペプチド合成の際にも適用することができる。
【0024】
本発明において、上記本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物とは、染色体上の本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子の一部若しくは全部が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、本件タンパク質・ペプチドを発現する機能を失なった非ヒト動物をいい、また、本件タンパク質・ペプチドを過剰発現する非ヒト動物としては、野生型非ヒト動物に比べてかかる本件タンパク質・ペプチドを大量に産生する非ヒト動物を具体的に提示することができる。そして、本発明における非ヒト動物としては、マウス、ラット等の齧歯目動物などの非ヒト動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
ところで、メンデルの法則に従い出生してくるホモ接合体非ヒト動物には、本件タンパク質・ペプチド欠損型又は過剰発現型とその同腹の野生型とが含まれ、これらホモ接合体非ヒト動物における欠損型又は過剰発現型とその同腹の野生型を同時に用いることによって個体レベルで正確な比較実験をすることができることから、野生型の非ヒト動物、すなわち本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損又は過剰発現する非ヒト動物と同種の動物、さらには同腹の動物を、例えば以下に記載する本発明のスクリーニングに際して併用することが好ましい。かかる本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損又は過剰発現する非ヒト動物の作製方法を、Ventroptin(VOPT)ノックアウトマウスやVentroptin(VOPT)トランスジェニックマウスを例にとって以下説明する。
【0026】
例えば、Ventroptin(VOPT)タンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちVentroptin(VOPT)ノックアウトマウスは、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、マウスVentroptin(VOPT)をコードする遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたマウスVentroptin(VOPT)をコードする遺伝子をウイルスベクター等を用いてサブクローンし、DNAシーケンシングにより特定する。このクローンのマウスVentroptin(VOPT)をコードする遺伝子の全部又は一部をpMC1ネオ遺伝子カセット等に置換し、3′末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT−A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子等の遺伝子を導入することによって、ターゲッティングベクターを作製する。
【0027】
この作製されたターゲティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418やガンシクロビア(GANC)等の抗生物質により相同的組換えを起こしたES細胞を選択する。また、この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。その確認されたES細胞のクローンをマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスをインタークロスさせることによって、本発明のVentroptin(VOPT)ノックアウトマウスを作製することができる。また、Ventroptin(VOPT)ノックアウトマウスにVentroptin(VOPT)発現能が欠失しているかどうかを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスからRNAを単離してノーザンブロット法等により調べたり、またこのマウスにおけるVentroptin(VOPT)の発現をウエスタンブロット法等により直接調べる方法がある。
【0028】
Ventroptin(VOPT)のトランスジェニックマウスは、ニワトリ、マウス、ヒト、ラット、ウサギ等に由来するVentroptin(VOPT)をコードするcDNAに、チキンβ−アクチン、マウスニューロフィラメント、SV40等のプロモーター、及びラビットβ−グロビン、SV40等のポリA又はイントロンを融合させて導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受精卵の前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、仮親のマウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスから前記cDNAを有する仔マウスを選択することにより、トランスジェニックマウスを創製することができる。また、cDNAを有する仔マウスの選択は、マウスの尻尾等より粗DNAを抽出し、導入したVentroptin(VOPT)をコードする遺伝子をプローブとするドットハイブリダイゼーション法や、特異的プライマーを用いたPCR法等により行うことができる。
【0029】
また、上記本件タンパク質・ペプチドをコードするDNAの全部又は一部、本件タンパク質・ペプチドをコードするDNA又はRNAのアンチセンス鎖の全部又は一部、本件タンパク質・ペプチド、本件タンパク質・ペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質、本件タンパク質・ペプチドに対する抗体、本件タンパク質・ペプチドを発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞等は、視神経や脳神経の再生剤やアポトーシスの抑制剤、また骨の再生、傷の修復、細胞分化、血球分化、免疫・炎症反応、細胞移動の調節剤として、あるいはインビトロ培養やブタ等を用いたインビボでの臓器の作製における使用等において有用であり、BMP−4中和活性の促進又は抑制物質のスクリーニングや本件タンパク質・ペプチドの発現の促進又は抑制物質のスクリーニングに用いることができるばかりでなく、神経系における領域特異性形成の分子レベルでの機構解明にも使用することができる。
【0030】
本発明のBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法としては、前記本発明の本件タンパク質・ペプチドと被検物質とを用いる方法や、前記本件タンパク質・ペプチドを発現している細胞と、被検物質とを用いる方法や、本件タンパク質・ペプチドのノックアウトマウスやトランスジェニックマウス等の非ヒト動物と、被検物質とを用いる方法等を挙げることができる。また、前記本件タンパク質・ペプチドを発現している細胞と、被検物質とを用いる方法や、本件タンパク質・ペプチドのノックアウトマウスやトランスジェニックマウス等の非ヒト動物と、被検物質とを用いる方法等は本件タンパク質・ペプチドの発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法に用いることができる。
【0031】
上記本件タンパク質・ペプチドと被検物質とを用いるスクリーニング方法としては、本件タンパク質・ペプチドと被検物質とを接触せしめ、該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性を測定・評価する方法を具体的に挙げることができる。また、本件タンパク質・ペプチドを発現している細胞と、被検物質とを用いるスクリーニング方法としては、本件タンパク質・ペプチドを発現している細胞と被検物質とを接触せしめ、該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性や本件タンパク質・ペプチドの発現量の変化を測定・評価する方法を具体的に挙げることができる。
【0032】
前記本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物又は本件タンパク質・ペプチドを過剰発現する非ヒト動物と、被検物質とを用いたスクリーニング方法としては、これら非ヒト動物から得られる細胞又は組織と、被検物質とをインビトロで接触せしめ、該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性や本件タンパク質・ペプチドの発現量の変化を測定・評価する方法や、前記本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物又は本件タンパク質・ペプチドを過剰発現する非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物から得られる細胞又は組織における該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性や本件タンパク質・ペプチドの発現量の変化を測定・評価する方法や、前記本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物又は本件タンパク質・ペプチドを過剰発現する非ヒト動物にあらかじめ被検物質を投与した後、該非ヒト動物における該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性や本件タンパク質・ペプチドの発現量の変化を測定・評価する方法などを具体的に挙げることができる。
【0033】
上記被検物質と本件タンパク質・ペプチドとを用いたスクリーニング方法について、以下に具体的に例を挙げて説明するが、本発明のスクリーニング方法はこれらに限定されるものではない。上記被検物質と本件タンパク質・ペプチドとを接触せしめ、該本件タンパク質・ペプチドのBMP−4中和活性を測定・評価する方法としては、例えば、本件タンパク質・ペプチドとBMP−4とのタンパク質−タンパク質相互作用分析を行い、本件タンパク質・ペプチドのBMP−4との結合力の強弱を測定し、被検物質が非存在下の対照の場合と比較・評価する方法を具体的に例示することができる。また、上記被検物質と本件タンパク質・ペプチドを発現している細胞とを接触せしめ、該本件タンパク質・ペプチドの発現量の変化を測定・評価する方法としては、本件タンパク質・ペプチド発現細胞を被検物質の存在下で培養し、一定時間培養後細胞外に分泌された本件タンパク質・ペプチドが減少又は増加したことを、本発明の本件タンパク質・ペプチドに特異的に結合する抗体を用いて、ELISA等による免疫化学的に検出して、あるいはmRNAの発現が抑制又は促進したことを指標として評価する方法を具体的に例示することができる。上記mRNAの検出法は、DNAチップ、ノーザンハイブリダイゼーション等の方法で行なうことができる他、本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子のプロモーターの下流にルシフェラーゼなどのレポーター遺伝子をつないだ遺伝子を導入した細胞を用いると、被検物質による本件タンパク質・ペプチドをコードする遺伝子の発現抑制又は促進は、前記レポーター遺伝子の活性を指標に検出することが可能となる。
【0034】
また上記スクリーニング方法により得られる本発明のBMP−4中和活性促進物質や発現促進物質は、BMP−4中和活性の促進や本件タンパク質・ペプチドの発現の促進を必要としている患者の治療等に用いることができる。また、上記スクリーニング方法により得られる本発明のBMP−4中和活性抑制物質や発現抑制物質は、BMP−4中和活性の抑制や本件タンパク質・ペプチドの発現の抑制を必要としている患者の治療等に用いることができる。さらに、これらBMP−4中和活性促進物質や発現促進物質あるいはBMP−4中和活性抑制物質や発現抑制物質は、視神経や脳神経の再生・調節剤、骨の再生、傷の修復、細胞分化、血球分化、免疫・炎症反応、細胞移動の調節剤、アポトーシスの抑制・促進剤として使用できる可能性や、あるいはインビトロ培養やブタ等を用いたインビボでの臓器の作製において使用できる可能性がある。
【0035】
【実施例】
以下に、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例A[方法]
A−1(動物)
白色レグホンの受精卵を37.5℃でインキュベートした。胚のステージは文献(J Morphol, 88, 49-92, 1951)記載の方法に基づき調整した。
【0036】
A−2(RLCS法)
胎生8日目のニワトリ網膜の背側又は腹側の3分の1から、AGPC(Acid Guanidinium-Phenol-Chloroform)法(Anal.Biochem. 162, 156-159, 1987)により全RNAを調製した。ダイナビーズ−オリゴ(dT)25(Dynal,Inc.)を用い、全RNAからポリ(A)+RNAを精製した。鈴木らの報告(Nucleic Acids Res. 24, 289-94, 1996)に準じてRLCS(Restriction Landmark cDNA Scanning)分析を行った。すなわち、dTストレッチの5′側にあるNotIサイトを含む5′−ビオチン化オリゴ(dT)15アンカープライマーを用いて、cDNA合成キット(SuperScriptTM Lambda System;Gibco BRL)により2本鎖cDNAを合成した。上記cDNAをBamHIで消化し、その後cDNA断片をシークェナーゼ及び[α−32P]dATP(6000Ci/mmol)とのフィルアップ反応により標識化した。ビオチン化cDNA断片は、ダイナビーズM−280ストレプトアビジン(Dynal,Inc.)により回収し、NotI消化により磁気ビーズから遊離させた。これらのcDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動にかけた。電気泳動後、HinfIを用いてゲル中のcDNA断片をin situで消化し、ゲルのストリップを再度6%ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけた。この電気泳動後のゲルを乾燥してオートラジオグラフにかけた。cDNAスポットをMelanie II 2−D PAGEソフトウエア(BioRad)を用いて濃度分析した。cDNAスポットのサブクローニングをPCR-mediated法によって行った。
【0037】
A−3(発現ベクターの構築)
完全長のVentroptin(VOPT)cDNAを鋳型にして、C末端にフラッグ・タッグ配列を有する/有さないニワトリVentroptin(VOPT)のコード領域(ヌクレオチド残基416−1783、GenBankアクセッションNO.AL257352)を、プライマーを用いてPCRで増幅した。このPCR産物をシャトルベクターSLAX−NSのクローニングサイトであるNcol/EcoRIサイトに挿入した。SLAX−NS/VOPT及びSLAX−NS/VOPTフラッグをNotIとSpeIで切断し、RCAS−NSレトロウイルスベクターのNotI/SpeIサイトに挿入し、それぞれRCAS/VOPT及びRCAS/VOPTフラッグを調製した。また、SLAX−NS/VOPTをClaI及びEcoRIで消化して得られたVentroptin(VOPT)のDNA断片を、インビトロRNA調製用pCS2+のClaI/EcoRIサイトに挿入し、pCS2+/VOPTを得た。このSLAX−NS/VOPTのClaI断片を、pMiwClaI発現ベクター(Dev. Growth Differ. 41, 575-87, 1999)のClaIサイトの中にエレクトロポレーションにかけるためにクローニングし、Miw/VOPTを得た。上記シャトルベクターSLAX−NSは、pBluscript KS(-)(STRATAGENE)のNotI/SpeIサイトにsrc遺伝子の5′側非翻訳領域(Methods in Cell Biology, Academic Press, Inc.,Vol, 51, 185-218, 1996)とポリリンカーを含むNotI/SpeI断片を挿入して作製し、またレトロウイルスベクターRCAS−NSは、RCAS−BP(B)(Methods in Cell Biology, Academic Press, Inc., Vol. 51, 185-218, 1996)のClaIサイトにNotI、SpeIサイトを付加して作製した。
【0038】
A−4(CEFにおけるVentroptin(VOPT)発現)
ニワトリ胚繊維芽細胞(CEF)を、抗生物質と10%仔牛血清を添加したDMEM/HamF12(1:1)培地を用いて生育させた。RCAS/VOPT、RCAS/VOPTフラッグ、及びヒト胎盤アルカリホスファターゼを含むRCAS/APのトランスフェクションを、それぞれリポフェクタミン(Life Technologies,Inc.)を用いて行った。培地上に万遍なくウイルスが広がるように、細胞を植え付け、細胞がコンフルエントになった後、抗生物質を添加したDMEM/Ham F12(1:1)の新しい培地で置換し、さらに48時間インキュベーションを続けた。次に培養上清を採取し、Centricon−30(ミリポア)を用いて当初濃度の1/10まで希釈した。
【0039】
A−5(Surface Plasmon Resonance Biosensorを用いたタンパク質−タンパク質相互作用分析)
文献(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95, 9337-42, 1998)記載の方法に準じてBIACORE2000(Biacore)を用いて、Ventroptin(VOPT)とBMPとの結合実験を行った。すなわち、RCAS/AP又はRCAS/VOPTフラッグに感染させたCEFでコンディショニングした上清を、室温下流速10μl/分で300秒間表面に流した。BIAEVALUATIONソフトウエア(Biacore)を用いて、RCAS/APで感染させたCEFによりコンディショニングした上清におけるカーブを差し引くことによって、全反応カーブのバックグラウンドを補正した。アフリカツメガエルの組換えBMP−4は、蚕の発現システム(J. Biol. Chem. 272, 11535-40, 1997)を用いて得た。アフリカツメガエルの組換えBMP−4/7ヘテロ2量体及びBMP−7(Biochem. Biophys. Res. Commun. 210, 670-7, 1995)は、藤沢氏(武田薬品工業株式会社)より供与されたものを用いた。アフリカツメガエル組換えアクチビンAは、江藤氏(味の素株式会社)より供与されたものを用いた。ヒト組換えTGF−β1はキング醸造(日本)から購入したものを用いた。
【0040】
A−6(in situハイブリダイゼーション)
文献(「免疫染色 in situ ハイブリダイゼーション」羊土社発行、58〜104頁、1997)に記載されているプロトコールに従って、セクション及びホールマウントin situハイブリダイゼーションを行った。プローブとしては、Ventroptin(VOPT)の508bp断片(ヌクレオチド残基3475−3982)、ニワトリBMP−4のコード領域、ニワトリVax(cVax)のコード領域を使用した。Zeiss Axiophoto2マイクロスコープシステム又はCCDカメラ(RD−175、ミノルタ、日本)を使用し、IBM PC/ATコンパティブルコンピューターのAdobe Photoshop5.5により現像した。
【0041】
A−7(アフリカツメガエル胚へのインビトロでのマイクロインジェクション及びトランスクリプション)
mMessage mMachine Kit(Ambion)を用いて、線状化したpCS2+/VOPT及びpSP64T/BMP−4(Biochem. Biophys. Res. Commun. 186, 1487-95, 1992)から、キャップ化した合成RNAを合成した。人工授精によりアフリカツメガエルの胚を得て、文献(Biochem. Biophys. Res. Commun. 232, 153-6, 1997)記載の方法で調製した合成RNAを4細胞期胚にマイクロインジェクションした。
【0042】
A−8(エレクトロポレーション)
HH8−10期胚の嘴末端の左右側にそれぞれ陰極と陽極を取り付けた。2μg/μlのMiw/VOPT及び0.5μg/μlのpEGFP−NI(Clontech)を、ガラス製ピペットを用いて眼小胞に注入した。次いで、CUY−21エレクトロポレーター(BEX Co.Ltd)を用いて、50ms間20Vパルスを、400msの間隔で3回印可した。DNAが導入されていない左側眼小胞を対照とした。Miw/APをエレクトロポレーションにかけても、Tbx5やcVaxの発現ドメインは変化しなかった。
【0043】
実施例B[結果]
B−1(RLCS法によるニワトリVentroptin(VOPT)のスクリーニング)網膜の背腹軸に沿った局在特異性を決定する分子メカニズムを理解するために、E8(胎生8日目)ニワトリ網膜の背腹軸特異的に発現している分子を、上記実施例A−2に記載したRLCS法によりスクリーニングした。結果を図1に示す。図1aは、最初の酵素としてBamHIを用いたときの、網膜背側(図1a左)及び腹側(図1a右)それぞれ3分の1のRLCSプロフィールに相当する部分を示している。コンピューターによる画像解析により、通常、一対のオートラジオグラムにおいて非対称的な強さを有する幾つかのスポットが同定される。腹側特異的な点(図1a右の腹側画像中の矢印で示す)に相当するcDNA断片をゲルから採り、次の実験のためにサブクローンした。該クローンを仮にV/BamHI#1と名付けた。V/BamHI#1の断片をプローブとしてノーザンブロット分析を行い、E8の網膜腹側から4.9kbのmRNAを検出した(図1b)。
【0044】
次に、E8ニワトリ網膜cDNAライブラリーをスクリーニングして完全長のV/BamHI#クローンを得た。単離クローンは、推定されるシグナル配列と、フォンビルブラント因子やコーディンを含む数種のタンパク質に保存されているシステインに富んだ繰返し配列(VWFCドメイン)が3回出現する456アミノ酸配列の新規のタンパク質をコードしていた(図2a、b)。この分子をVentroptin(VOPT)と命名した。これまでにクローニングされたVWFCドメインをもつタンパク質は、膜透過タンパク質を含む細胞外タンパク質として知られているので、Ventroptin(VOPT)についても調べてみた。Ventroptin(VOPT)発現ウイルスベクター(RCAS/VOPTフラッグ)に感染させたCEFよりコンディショニングした培養上清液を、ウエスタンブロット法により分析したところ、図1dに示されるように、シグナル配列を処理したときの予想分子量である約50kDaに相当するシングルバンドが認められたことから、Ventroptin(VOPT)もまた分泌タンパク質であると考えられる。
【0045】
B−2(マウスVentroptin(VOPT)のスクリーニング)
ニワトリのVentroptin(VOPT)配列に基づいて、PCRによってマウス相同体を増幅するためにプライマーを数組デザインし、P0マウス眼cDNAライブラリーから常法に従い、完全長のマウスVentroptin(VOPT)をコードする2つのcDNAクローンを最終的に単離した(図2a)。また、Ventroptin(VOPT)配列を用いたオンラインデータベースによるスクリーニングによって、Ventroptin(VOPT)と高い相同性を有するヒト遺伝子(AL049176)を同定した。以上のことから、Ventroptin(VOPT)、特にVWFCドメインが脊椎動物に進化論的に保存されてきたことがわかる(図2a)。しかし、マウスVentroptin(VOPT)はヒト及びニワトリVentroptin(VOPT)より短く、第3VWFCドメインに続く領域が消失している。そのため、C末端領域をもつ他のスプライシング産物が、マウスに存在している可能性がある。
【0046】
B−3(Ventroptin(VOPT)とBMP−4との結合)
Ventroptin(VOPT)のVWFCドメインは、BMP−4と特異的に結合するコーディンのVWFCドメインと高い相同性を示すことから(図2c)、Ventroptin(VOPT)がBMP−4に結合することが予想された。そこで、実施例A−5に記載されているように、SPRバイオセンサー(Biacore)を用いて、Ventroptin(VOPT)といくつかのTGF−βファミリー分子との結合性を調べてみた。BMP−4ホモ二量体、BMP−7ホモ二量体、アクチビンホモ二量体TGF−βホモ二量体、及びBMP−4/BMP−7のヘテロ二量体を、それぞれSPRバイオセンサーチップ上に固相化し、実施例A−3で調製したRCAS/VOPTフラッグでインフェクションしたCEFでコンディショニングした上清液をアナライトとしてセンサーチップに加えた。Ventroptin(VOPT)はBMP−4に対して強い結合力をみせ、またBMP−4/7ヘテロ二量体に対しても、より低い親和力ではあるが結合力をみせた。しかし、BMP−7、TGF−β及びアクチビンに対しては結合しなかった(図3a)。さらに、免疫沈降分析によりBMP−4はVentroptin(VOPT)と共免疫沈降することも明らかになった(図3bレーン2)。Ventroptin(VOPT)のBMP−4に対する結合性により、Ventroptin(VOPT)がコーディン同様、BMP−4の作用を阻害することがわかった。
【0047】
次にVentroptin(VOPT)の生体内活性をテストするため、実施例A−7で調製したVentroptin(VOPT)をコードする合成RNAをアフリカツメガエルの初期胚に注入した(図3c)。Ventroptin(VOPT)の異所的発現は注入後の胚に2次体軸の発生を誘導した(n=66/104)。この2次軸には頭部構造がなく、当然、眼やセメント腺を有しなかった。Ventroptin(VOPT)とBMP−4mRNAを同時に注入した場合、Ventroptin(VOPT)mRNAに誘導された2次軸形成は、完全に阻害された(n=57/57)。これらの結果は、Ventroptin(VOPT)はBMP−4と結合し、BMP−4の生体内活性を阻害することを示している。コーディンの生物活性はVWFCドメインに拠るものとされ、特に1番目と3番目のVWFCドメインに存在している(Development 127, 821-830, 2000)。Ventroptin(VOPT)の3つのVWFCドメインの内、1番目と3番目のVWFCドメインがコーディンのVWFCドメインと高い相同性を有しているので(図2c)、Ventroptin(VOPT)のBMP−4中和活性は主として、1番目と3番目のVWFCドメインに拠るものと考えられる。
【0048】
B−4(網膜におけるVentroptin(VOPT)の発現)
ニワトリの眼においては、網膜神経細胞形成がちょうど始まる胎生3日目頃(Dev. Biol. 38, 30-40, 1974, Brain Res. 63, 285-90, 1973)、BMP−4の発現パターン(図4b)と相補的なパターンで網膜の腹側からVentroptin(VOPT)の発現が最初に検出された。胎生8日目に、Ventroptin(VOPT)は網膜の腹側から背側にかけて勾配的に発現した(図4a)。この勾配発現パターンは胎生8日目をピークとして、胎生6日目から14日目にわたって観察された(図1c)。網膜層構造完成前の胎生3日目には、神経網膜の層全体にわたって、Ventroptin(VOPT)発現細胞が見られたが、胎生8日目に層構造がより明瞭になってくると、Ventroptin(VOPT)発現細胞は内顆粒層に局在していた(図4c)。
【0049】
他の神経組織では、Ventroptin(VOPT)は前脳の脳室ゾーン(図4e)と、間脳の脳室下部ゾーン(図4f)に発現していた。BMPは前脳の腹背パターン形成に、重要な役割をもっていることが知られており(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96, 2439-44, 1999)、脳室上皮部位における細胞死を含む細胞の予定運命を調節している(J. Neurosci. 19, 7077-88, 1999)。ノギンは脊索と蓋板に発現し、ノギンノックアウトマウスでは、神経管背部で腹側が未発達であることが観察された(Genes Dev. 12, 1438-52, 1998)。さらに、コーディンとノギンは両方とも前脳の発達に不可欠である(Nature 403, 658-61, 2000)。Ventroptin(VOPT)の発現領域は、Ventroptin(VOPT)がBMPとの相互作用を通じて、神経組織の発達にも関わっていることを示唆している。
【0050】
Ventroptin(VOPT)は肢芽においても発現し(図4g、h、i)、胎生3日目頃に初めて検出された(図4g)。翼芽と肢芽におけるVentroptin(VOPT)の発現パターンは類似していた。肢芽におけるVentroptin(VOPT)の分布はBMP遺伝子の分布と相補的関係にある。前方壊死部位、後方壊死部位及び指間部のようにVentroptin(VOPT)が発現しない部位では、BMPがニワトリ肢芽におけるアポトーシスを仲介することが知られている(Development 122, 3725-34, 1996, Science 272, 738-41, 1996)。このことはVentroptin(VOPT)が、肢の発達過程における細胞のサバイバルに恐らく何らかの役割を有していることを示している。胎生7日目頃にはVentroptin(VOPT)の発現は、指の凝集軟骨と鮮明に一致した(図4i)。この発現パターンはノギンの発現パターンと似ている(Science 280, 1455-7, 1998, Dev. Biol. 197, 205-17, 1998)。BMPは、軟骨形成の強力な刺激因子であり(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76, 1828-32, 1979, Science 242, 1528-34, 1988)、ノギンが、BMP作用を制御することによって軟骨形成を制御するので(Science 280, 1455-7, 1998, Dev. Biol. 197, 205-17, 1998)、Ventroptin(VOPT)もまた、ノギンと協調して肢芽における軟骨形成を制御するものと考えられる。
【0051】
BMP−4は網膜の背側に選択的に発現し(図4b)、網膜の背側化に関与していると考えられる(Science 287, 134-7, 2000)。Ventroptin(VOPT)とBMP−4の相補的発現パターンは、網膜背側で生成されたBMP−4の作用によって網膜の腹側部位が影響を受けることをVentroptin(VOPT)が防ぎ、腹側細胞の予定運命を確立することを示している。Tbx5はBMP−4によってアップレギュレイトされることが知られているので(Science 287, 134-7, 2000)、網膜でのTbx5のin ovoエレクトロポレーションによってVentroptin(VOPT)の過剰発現の影響をテストし、上記のことを確認した。発現ベクターpMiwClaIの中にVentroptin(VOPT)cDNAをもつプラスミドを、右眼小胞にエレクトロポレーションにより導入すると、Tbx5の発現は劇的に減少し(図5b)、網膜背側におけるcVaxの発現が誘導された(図5d)。Tbx5やcVaxを網膜に異所的に発現させると、網膜神経節細胞の視蓋への投射パターンに乱れが生じる(Science 287, 134-7, 2000, Neuron, 24, 541-53, 1999)。したがって、これらの結果はVentroptin(VOPT)がTbx5の発現を網膜背側に、cVaxの発現を網膜腹側に限定し、背腹軸における神経節細胞軸索の視蓋へのトポグラフィックな投射を制御しているということを示唆している。cVaxを網膜背側に異所的に発現させるとTbx5とその他の背側マーカー遺伝子の発現が減少する(Neuron, 24, 541-53, 1999)。以上のことからVentroptin(VOPT)はcVaxの上流で働いていると考えられる。しかしながらRT−PCRではHH stage15で既に頭部における低レベルのVentroptin(VOPT)の発現が検出されるものの、in situハイブリダイゼーションではVentroptin(VOPT)の発現(HH stage17−18)はcVax(HH stage14)(Neuron, 24, 541-53, 1999)よりも遅く検出される。これらの遺伝子の相互関係を明らかにするための実験をさらに行う必要がある。
【0052】
以上の結果は、BMP中和タンパク質であるVentroptin(VOPT)が、網膜発達の過程における腹側細胞の予定運命に対する重要な調節因子であり、Ventroptin(VOPT)は、BMP活性を調節することにより、脳及び肢芽における細胞の予定運命と形態形成に対しても重要な役割を担っていることを示している。
【0053】
【発明の効果】
本発明のDNA、タンパク質・ペプチド、タンパク質・ペプチドとマーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質、タンパク質・ペプチドに対する抗体、タンパク質・ペプチドを発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞等は、視神経や脳神経の再生剤やアポトーシスの抑制剤、骨の再生、傷の修復、細胞分化、血球分化、免疫・炎症反応、細胞移動の調節剤として、あるいはインビトロ培養やブタ等を用いたインビボでの臓器の作製における使用しうる可能性があるばかりでなく、神経系における領域特異性形成の分子レベルでの機構解明に使用することができる。
【0054】
【配列表】




















【図面の簡単な説明】
【図1】RLCS法によるVentroptin(VOPT)の単離[参考写真1参照]
a;網膜の背側及び腹側のRLCSプロフィール。矢印で示した背側のスポットは網膜アルデヒド−デヒドロゲナーゼ1型。
b;網膜の背側(D)、腹側(V)におけるVentroptin(VOPT)mRNA発現。RLCSによって得られたcDNA断片をプローブとしてRNAブロットハイブリダイゼーション分析(10μg全RNA/レーン)を行った。
c;抗フラッグM2抗体を用いたVentroptin(VOPT)のウエスタンブロット分析。RCAS/VOPT及びRCAS/VOPTフラッグでインフェクションしたCEFの培養物からコンディショニングした培地を集め、10%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。
d;Ventroptin(VOPT)mRNAの発達型発現。全RNAは上記bと同様の方法で分析した。
【図2】 Ventroptin(VOPT)の基本構造[参考写真2参照]
a;ニワトリ(c)及びマウス(m)Ventroptin(VOPT)タンパク質。ニワトリとマウス間で一致又は類似したアミノ酸をそれぞれ黒と灰色で示した。ギャップはダッシュを用いて表した。シグナルペプチド(SP)と3つのVWFCドメインの位置を示した。
b;ニワトリVentroptin(VOPT)のドメイン構造。
c;ニワトリVentroptin(VOPT)とニワトリコーディン(chordin)のVWFCドメインの配列。3以上の領域で一致又は類似したアミノ酸はそれぞれ黒と灰色で示した。*印はVWFCドメインに保存されたシステイン残基を示している。a,b,で示した配列はGenetics Computer Group program PileUpを用いて示した。
【図3】BMP−4へのVentroptin(VOPT)の結合[参考写真3参照]
a;BMP−4、BMP−4/7ヘテロ2量体、BMP−7、アクチビンA及びTGF−β1タンパク質をセンサーチップ表面上で固定した。これらのチップ上に、RCAS/VOPTフラッグでインフェクションしたCEFでコンディショニングした上清を注入した。
b;Ventroptin(VOPT)とBMP−4との免疫沈降。RCAS/AP(レーン1)又はRCAS/VOPTフラッグ(レーン2)でインフェクションしたCEFでコンディショニングした上清を、アフリカツメガエルのBMP−4と共に4℃で2時間インキュベートし、アガロースと結合した抗フラッグ抗体と共免疫沈降した。免疫沈降物中のBMP−4量を、抗BMP−4抗体(Ab97)を用いたウエスタンブロット法により測定した。BMP−4スタンダードをレーン3に示した(50ng)。
c;Ventroptin(VOPT)による2次軸形成。キャップ化したVentroptin(VOPT)mRNA(250pg)単独で、又はキャップ化したBMP−4mRNA(100pg)と共に、アフリカツメガエル(Laevis)の4細胞期の割卵腹側に注入した。矢頭は2次体軸を示す。
【図4】発達過程におけるVentroptin(VOPT)mRNAの発現パターン[参考写真4参照]
胎生3日目のニワトリ胚のVentroptin(VOPT)(a)とBMP−4(b)のホールマウントin situハイブリダイゼーション。胎生8日目の頭部セクション(c)及びフラットマウント(d)のin situハイブリダイゼーション。Ventroptin(VOPT)は網膜の腹側だけに発現した。胎生8日目のニワトリ前脳(e)及び間脳(f)の水平セクション。Ventroptin(VOPT)転写物は前脳の脳室ゾーンと間脳の脳室下ゾーンにおいて発現した。ONは視神経を示している。胎生3日目(g)、5日目(h)、7日目(i)の肢芽におけるVentroptin(VOPT)の発現。スケールバーはそれぞれ200μm(c)、600μm(f)、50μm(e)を示す。
【図5】Miw/VOPTのエレクトロポレーション後のE3の眼におけるTbx5とcVaxの発現[参考写真5参照]
対照である左眼におけるTbx5(a)とcVax(c)の発現パターン。遺伝子導入を行った右目ではTbx5の発現がほとんど消失している(b)。これに対してcVaxの発現ドメインは網膜背側に広がっている(d)。矢頭は背側網膜を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質
【請求項2】
配列番号1に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNA。
【請求項3】
請求項2記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項4】
以下の(a)又は(b)のタンパク質をコードするDNA。
(a)配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質
【請求項5】
配列番号3に示される塩基配列又はその相補的配列並びにこれらの配列の一部または全部を含むDNA。
【請求項6】
請求項5記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項7】
配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項8】
配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質。
【請求項9】
配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項10】
配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつBMP−4中和活性を有するタンパク質。
【請求項11】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の一部からなり、かつBMP−4中和活性を有するペプチド。
【請求項12】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドと、マーカータンパク質及び/又はペプチドタグとを結合させた融合タンパク質又は融合ペプチド。
【請求項13】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項14】
抗体がモノクローナル抗体であることを特徴とする請求項13記載の抗体。
【請求項15】
請求項13又は14記載の抗体が特異的に結合し、かつBMP−4中和活性を有することを特徴とする組換えタンパク質又はペプチド。
【請求項16】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現することができる発現系を含んでなる宿主細胞。
【請求項17】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質をコードする遺伝子機能が染色体上で欠損した非ヒト動物。
【請求項18】
非ヒト動物が、マウス又はラットである請求項17記載の非ヒト動物。
【請求項19】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を過剰発現する非ヒト動物。
【請求項20】
非ヒト動物が、マウス又はラットであることを特徴とする請求項19記載の非ヒト動物。
【請求項21】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質又は請求項11記載のペプチドと、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項22】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現している細胞と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は該タンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項23】
請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質を発現している細胞が、請求項16記載の宿主細胞であることを特徴とする請求項22記載のBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は該タンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項24】
請求項17又は18記載の非ヒト動物と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項25】
請求項19又は20記載の非ヒト動物と、被検物質とを用いることを特徴とするBMP−4中和活性促進若しくは抑制物質又は請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進若しくは抑制物質のスクリーニング方法。
【請求項26】
請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られるBMP−4中和活性促進物質。
【請求項27】
請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られるBMP−4中和活性抑制物質。
【請求項28】
請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られる請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現促進物質。
【請求項29】
請求項21〜25のいずれか記載のスクリーニング方法により得られる請求項7〜10のいずれか記載のタンパク質の発現抑制物質。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−6701(P2007−6701A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−254594(P2000−254594)
【出願日】平成12年8月24日(2000.8.24)
【出願人】(396020800)科学技術振興事業団 (35)
【Fターム(参考)】