説明

BMP−7をコードする組換えベクターを用いる関節軟骨の遺伝子治療

本発明は、宿主細胞においてBMP-7ポリペプチドを発現する組換えベクターおよびこのような組換えベクターを含む医薬組成物に関する。本発明はまた、本発明の組換えベクターおよび医薬組成物の関節内投与により、哺乳動物、好都合にはヒト、イヌ、ウマおよびネコにおける変形性関節症を予防および/または治療する方法を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による組み込み
本願は、米国特許出願第11/867,919号(出願日:2007年10月5日)に基づく優先権を主張する(その内容は、参照により本願に組み込まれる)。
【0002】
本明細書に引用または参照したすべての文献(“本明細書に引用した文献”)および本明細書に引用した文献において引用または参照されたすべての文献は、本明細書または本明細書に参照により組み込まれた任意の製品に関する任意の製造業者の使用説明書、説明書、製品仕様書および製品シートと共に参照により本願に組み込まれ、本発明の実施において用いることができる。
【0003】
技術分野
本発明は、脊椎動物において、軟骨の修復を確実にするための、および/または変形性関節症の進行を遅らせるための、および/または変形性関節症の進行を退行させるための組換えベクター、このような組換えベクターを含む医薬組成物ならびに方法に関する。本発明はまた、骨形成促進因子1/骨形成因子7(OP-1/BMP-7)タンパク質ファミリーに属する生物活性ポリペプチドを宿主において発現することができるベクターにも関する。本発明はまた、このようなベクターを用いる関節内遺伝子治療にも関する。
【背景技術】
【0004】
変形性関節症(OA)は、脊椎動物の関節の慢性変性疾患である。痛みはOAの主症状である。ヒト、哺乳動物、特に競争馬、イヌおよびネコを含む、OAを有する脊椎動物は、一般的に体重負荷および活動により悪化し休息により改善する痛みはもちろん、朝のこわばりおよび不活動期間後の病変関節の膠化もまた有する。このような徴候および疾患症状は、多くの場合、ついにはクオリティ・オブ・ライフの低下をもたらす。この疾患は、身体の関節のサブセット、特に股関節、膝関節、肩関節、肘関節、手根関節および足根関節において多く見られる。
【0005】
可動関節は、脊椎動物の運動器官である。可動関節は、長骨の関節面を覆う関節軟骨の特有の生物学的、化学的および機械的特性のおかげで、ほぼ摩擦のない動きを実現する。関節は滑膜腔または関節腔内に存在し、その内膜面は滑膜で裏打ちされ、通常その中には少量の潤滑液が存在する。膝関節などの特定の関節は、半月板として知られるさらなる非関節性軟骨構造を有している。滑膜は線維性被膜の内側を覆い、その外側には筋組織および関節の靱帯関節外支持組織が存在する。
【0006】
現在、ヒトにおけるOAの影響は甚大であり、多くの点で虚血性心疾患の影響に匹敵する。ベビーブーマーが成人後期を迎え、肥満症が猛威をふるうとき、OAはより大きな影響を社会に与えると考えられる。若年層においては、コンタクトスポーツまたは過度のランニングなどの活動に参加する運動競技者もまた、OAを発症する危険性が大きい。
【0007】
獣医学においては、OAはウマおよびイヌにおいて大変よく見られるが、ネコにおいても低い程度には認められる。
【0008】
馬産業においては、関節の損傷および疾患による跛行は、競争馬における競技機能低下および消耗の最も一般的な原因である。関節の損傷および関節疾患は、合わせて、ウマ臨床医の取り扱い件数の大多数を占めている。ウマのOAは種々の原因によって生じうるが、外傷および付随する滑膜炎がウマにおけるパフォーマンス欠落の最もよく見られる原因である。多くの場合、OAは、競技馬の軟骨に不適切な生体力学的な力がかかりやすくする過剰使用または構造的欠点により生じる。
【0009】
イヌにおいては、OAは最もよく見られる慢性筋骨格疾患および跛行の原因の1つである。OAは、しばしば先天的および後天的筋骨格疾患に続発する。関節異形成、離断性骨軟骨症、肘突起不癒合および膝蓋骨脱臼を含むいくつかの関節症は、若齢犬に影響を与え、続発性OAをもたらす恐れがある。軟骨変性には、発生異常に加えて、多くの後天的筋骨格疾患が関連する。場合によっては、外傷が直接に孤立性軟骨病変を引き起こし、それが進展・進行性変性病変の発症の原因となりうる。靱帯損傷後、関節弛緩症の結果として、数週間後に軟骨損傷が発生する場合がある。関節内骨折は、多くの場合、不完全な骨折整復の結果として、続発性軟骨変性の合併症を起こす。関節脱臼または脱臼整復は、通常、靱帯および皮膜損傷ならびに/または軟骨病変の合併症を伴う。肥満は、ヒト医学におけると同様に、イヌのOAの重要な危険因子としてますます考えられている。
【0010】
OAは、生化学的および酵素的変化、軟骨断裂および減少、骨棘形成ならびに骨硬化症を特徴とする。OAの原因は十分には理解されていないが、関節軟骨および軟骨下骨に影響を及ぼす生化学的ストレス、関節軟骨および滑膜における生化学的変化ならびに遺伝要因はすべて、OAの病因において重要である。
【0011】
ほとんどの場合、炎症過程は滑膜、軟骨、関節包または軟骨下骨において開始され、直ちに、傷害の一次組織からの炎症性メディエーターのカスケードが開始される。これにより、多くの場合、順番に炎症性メディエーターを放出する二次組織への炎症過程の“ドミノ効果”が引き起こされる。
【0012】
種にかかわらず、OAに関連する分子細胞炎症事象は、細胞膜におけるアラキドン酸代謝物の放出を含む。これにより、次にプロスタグランジンによる痛みが始まる。関節液におけるヒアルロン酸の分解は、炎症経路の化学誘引物質および副生成物、損傷滑膜細胞により合成されるリソソーム酵素および非リソソーム酵素ならびに好中球およびマクロファージからの酵素由来フリーラジカルの結果として生じる。
【0013】
関節軟骨の変性はOAの必須条件と考えられている。肉眼所見は、関節軟骨における筋線維攣縮、びらんおよび摩損線を含む。組織学的特性は、表在筋線維攣縮を含み、これは軟骨下骨にいたる軸方向の断裂に進行する恐れがある。多くの場合、コラーゲンの分解に加えて、関節軟骨のプロテオグリカン含量が減少している。これにより、軟骨における水の取り込みは増加し、生体力学的に“より柔らかな”軟骨表面がもたらされる。これらの所見には、軟骨細胞壊死および最終的な全層関節軟骨欠損が伴う場合もある。病理学的変化は、関連構造においても生じうる。軟骨下骨硬化症には、通常軟骨変性が伴い、硝子軟骨と石灰化関節軟骨との境界には血管が生じる。これらの変化の慢性進行は、関節の境界に沿った軟骨および軟骨下骨の進行性過形成による関節辺縁での関節周囲の骨辺縁の形成をもたらす。OAにおいては、関節包の滑膜表層および線維層は変化している。滑膜は、鬱血し、変色し、肥厚化している。組織学的には、滑膜細胞は肥大して見え、リンパ形質細胞性細胞およびマクロファージが滑膜組織の内膜下支質に存在する場合がある。
【0014】
OAの治療には、多くの内科的治療が広範に用いられてきた。今日まで、大部分の治療は、損傷関節内の炎症を抑え、ついで軽減された程度を維持することに向けられてきた。関節組織を実際に保護する治療剤には、ほとんど注意が向けられてこなかった。この治療剤は、国際リウマチ学会(International League Against Rheumatism)(ILAR)ガイドラインにより、“疾患修飾”OA薬(DMOAD)として分類されてきた。このクラスの薬物を用いる療法は、理論上は、OAの形態学的軟骨病変を予防する、遅延させる、または退行させる必要がある。
【0015】
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)およびコルチコステロイドは、抗炎症治療の主な方式であった。非ステロイド系抗炎症薬は、多くの場合、症状軽減をもたらすが、関節軟骨には保護および再生をもたらさず、またこの薬物は基礎をなす疾病過程を緩和することもしない。多くのNSAIDはまた、かなりな罹患率の望ましくない副作用と関連しており、その長期使用には問題がある。コルチコステロイドもまた、OAの治療に一般的に用いられ、炎症の痛みを減じる強力なメディエーターである。しかしながら、軟骨細胞活性傷害、グリコサミノグリカンおよびプロテオグリカン含量の低下ならびに軟骨の弾力性の低下を含む関節軟骨への有害作用が報告されている。
【0016】
獣医臨床において、前述の療法は、関節の損傷に応じて、相乗剤とは言わないまでも添加剤と組み合わされる場合がある。多くの場合、NSAIDまたはステロイドは、関節液の粘弾性および関節内軟組織の境界潤滑を改善するために、ヒアルロン酸投与と組み合わされる。また、軟骨細胞の代謝活性を維持または促進し、サイトカインまたはプロスタグランジンの軟骨への有害な影響を抑制するために、患者には、しばしば非経口および経口で多硫酸化グリコサミノグリカン(PSGAG)が投与される。この“ショットガン”アプローチを評価した、よく管理された臨床研究は見られないが、各薬物は有益な効果を有し、これらの多くの異なる治療法を用いることによる副作用は今日まで報告されていない。
【0017】
一部分において、治療剤を関節に直接導くことができないことにより、OAの治療介入がさらに妨げられている。旧来の経口、静脈内および筋肉内経路は比較的に効果がない。なぜなら、小分子は関節腔には受動拡散で入り、大分子(例えばタンパク質)は関節腔から排除されるからである。関節内投与によりこれらの制限は回避されるが、関節腔に投与される大部分の薬剤の半減期は短いままであり、慢性疾患の長期間治療の生物活性を維持するためには、頻繁な関節内注射を必要とする。
【0018】
結論として、今日まで、副作用を伴わず、OAの進行を効果的に食い止める治療剤はみられていない。従って、ヒトおよび獣医治療のための真に革新的なDMOAD戦略の差し迫った医療ニーズが存在する。
【0019】
最近、以前に骨形成および治癒を促進することが知られていた骨形成促進因子1(OP-1)、別名骨形成因子7(BMP-7)が、関節軟骨の再生および修復に重要な役割を果たし、DMOADとして作用している可能性があることが明らかにされた。BMP-7にさらすとき、間葉細胞は表現型的に軟骨細胞として振る舞う細胞に分化する能力を有することが、種々の研究により示された。これらの細胞は、in vitroおよびin vivoの両方で、関節軟骨に特異的なII型コラーゲンおよびプロテオグリカンを含むマトリックスを産生する。この所見は、イヌ広範囲骨軟骨欠損モデルを含む種々の動物モデルにおいて確認された。得られた修復組織は、ヒアリン様の外観を有し、長期の動物実験にわたって維持されることが観察された。
【0020】
しかしながら、OA治療のためのBMP-7の使用は、制限および潜在的問題がないわけではない。精製組換えBMP-7タンパク質溶液は、単に関節に注射した場合、滑膜血管新生により関節腔から迅速に除去されるため、予想される治療上の利益が得られない。関節内のタンパク質の短い半減期のため、徐放性および局所濃度の維持を確実にするために、適切な生物学的担体材料に組換えBMP-7タンパク質を含ませる必要がある。生物学的担体は、さらに、インプラントの安定性および、軟骨形成を誘導する細胞および血管コロニー形成のための物理的ネットワークを確実にする。生物学的担体に含まれた高濃度の組換えタンパク質(例えば、ヒツジ外傷後実験OAモデルにおいて、1週間間隔で関節内注射により2回投与されたOP-1インプラント340μg(Hurtig MB et al., Proceedings Combined Orthopaedic Research Society, 070, October 2004)、イヌ科の手術後に生じた広範囲骨軟骨欠損における関節軟骨欠損の修復のためのウシ由来I型コラーゲンデバイス中のBMP-7 350μg(Cook S.D. et al., J. Bone Joint Surgery, 2003, 85(3): 116-123))。実際問題として、大量の精製タンパク質と適切な生物学的担体とを複合させるコストおよび複雑さは、獣医学において、この手順を経済的に見込みのないものにしている。さらにまた、安全性の観点から、大量の強力な骨誘導タンパク質の使用は、特に移植部位が十分に包含されない場合、異所性骨形成の可能性が生じる。
【0021】
遺伝子導入は、精製組換えタンパク質が直面する限界を回避するための魅力的な戦略である。遺伝子は、関節内に送達し、局所発現させることができるので、最大限の濃度の治療用タンパク質を関節内にin situで産生させることができ、それによって、非標的器官は暴露をうけることがより少ないので、好ましくない副作用の可能性を最小限に減じることができる。滑膜は、その大きな表面と関節腔との直接接触のため、遺伝子発現の魅力的な標的組織である。関節軟骨は、関節内の利用可能な他の標的組織ではあるが、細胞外マトリックスを透過するベクターの欠如は、重要な技術的な制限と考えられる。
【0022】
遺伝子を関節に移入するために2つの方法が考えられる。ex vivoおよびin vivo遺伝子導入である。
【0023】
ex vivo遺伝子導入は、細胞の採取、そのin vitro遺伝的修飾およびそれに続く関節へのそれの再移植のことを言う。実際、ウマ軟骨欠損モデルにおいて、BMP-7を発現するAd5を用いてex vivoで形質転換した軟骨細胞の移植に続いて軟骨の修復の促進が認められている。この技術は、身体外での遺伝子操作が可能なので、安全性の増加のプロフィールと結び付けられる。しかしながら、細胞を採取し、増殖させ、再移植するのは時間がかかり資源を必要とするので、このアプローチは複数の実際的な問題に直面する。さらにまた、軟骨細胞移植片における組換えタンパク質発現の寿命が限定要因として残り、大変高い初期投与量かまたは繰り返し投与のいずれかを必要とする。このような戦略の臨床応用は複雑で扱いにくく、獣医学における商業化の可能性を著しく限定している。
【0024】
対照的に、in vivo遺伝子導入は、関節自体における滑膜細胞または軟骨細胞の直接ターゲッティングのことを言い、これは適切なベクターを用いて臨床レベルで達成される。しかしながら、この後者の戦略もまた重要な制限により拘束を受け、その正確な性質は、考慮される特定のベクター系によって決まる。
【0025】
アデノウイルスは、高力価の組換えウイルスの作成の容易さ、このウイルスによる効率的な形質導入に感受性を有する、非分裂細胞を含む広範囲の細胞型を含む、遺伝子治療ベクターとしての多くの利点を有する。いわゆる第一世代組換えヒトアデノウイルス血清型5(Ad5)は、ウイルスゲノムのE1およびおそらくはE3領域の欠失に基づく。これらの修飾は導入遺伝子挿入のための遺伝子座を提供するばかりでなく、標的種におけるウイルス複製が依存する後期遺伝子の活性化の予防ももたらす。前臨床および臨床研究の両方において、この利点により、Ad5ベクターの幅広い応用がもたらされた。しかしながら、1999年における、大用量のAd5を投与したヒト患者の死亡により、アデノウイルスベクターの安全記録は損なわれた。今日の時点で、全身投与されたAd5ベクターの安全性について、多くの人々は問題があると考えている。
【0026】
しかしながら、重要な制限または不確実性は、関節における臨床用途のためのこのベクターの有用性に直面する。抗Ad5免疫反応のトリガーは、導入遺伝子送達および長期発現を妨げる恐れがあるばかりでなく、通例炎症などの病状を引き起こす恐れもある。マウス、ラット、ウサギまたはウマの関節内に送達された組換えAd5により、実際に、免疫および炎症障害が認められている。バッチ間変動および純度は関与しうるものの、関節内に注射されたウイルス粒子の量は、関節内遺伝子治療に関するAd5関連炎症を促進する重要な側面と考えられる。関節内で導入遺伝子の発現を引き起こすAd5ベクターの有効性は注射量に比例しうるため、関節遺伝子治療の有効性と安全性間の適切なバランスの選択には技術的課題が残されている。
【0027】
関節内の組換えタンパク質の長期発現と適合するAd5投与量の明確な限定は、既存の文献からは明らかではない。実際に、IGF1を発現するAd5をウマ球節に注射した場合、大変な高用量を投与したウマの滑液においてのみIGF1の有意な発現が認められた(50x1010ウイルス粒子(VP))(Goodrich LR et al., Gene Therapy, 2006, 13: 1253-1262)。低投与量では、有意な発現は認められなかった。このような高いAd5投与量には、滑液における白血球(WBC)増加が付随し、これはかなりな局所炎症を示している。これらの条件下で、注射後4日でIGF1の発現はピークに達し、その後減退した。送達ベクターとしてAd5を用いた他の研究において、2〜4週間にわたって導入遺伝子発現の一時的な低下が観察されている。最初の4週間およびおそらくはそれより長くの間の一時的増加は軟骨治癒によい影響を与えうるとしても、数週間よりも数カ月間タンパク質を発現するベクターの必要性が多くの著者および文献により考えられている。実際、長期の遺伝子発現を研究している大部分の研究者は、現在、かれらの努力を、代替の既存のベクター系、例えばアデノ関連ウイルス(AAV)またはレンチウイルスに再設定している。
【0028】
軟骨の修復のための組換えBMP-7タンパク質のin vivo使用に関する以前の報告により、大変多量の組換えタンパク質を必要とすることが示された(例えば、ヒツジ外傷後実験OAモデルにおいて、1週間間隔で関節内注射により2回投与されたOP-1インプラント340μg(Hurtig MB et al., Proceedings Combined Orthopaedic Research Society, 070, October 2004)、イヌ科の手術後に生じた広範囲骨軟骨欠損における関節軟骨欠損の修復のためのウシ由来I型コラーゲンデバイス中のBMP-7 350μg(Cook S.D. et al., J. Bone Joint Surgery, 2003, 85(3): 116-123))。これらの量は、前述のAd5 IGF1を用いる研究で報告された最大量(73ng/ml)よりもかなり高い(Goodrich LR et al., Gene Therapy, 2006, 13: 1253-1262)。結果として、関節の遺伝子治療にAd5ベクターを用いる以前の実験は、Ad5 BMP-7ベクターの使用によりin vivoで治療濃度に達することを支持していない。
【0029】
さらに関連することとして、免疫適格ラットにおけるin vivo骨形成のための高用量のAd5 BMP7の以前の使用は、全く同じ組換えウイルスが免疫不全ラットにおける顕著な骨形成を引き起こすことができたにも関わらず不成功に終わった(Li JZ et al., Gene Therapy, 2003, 10: 1735-1743)。この例は、in vivoでのAd5 BMP7の有効性の予測の複雑さをさらに示している。
【0030】
取り組むべき技術的問題は、関節軟骨の修復を確実にすることであり、それによって、哺乳動物における変形性関節症の進行を遅らせ、可能であれば退行させることである。
【0031】
関節軟骨は、関節における骨の部分の関節面を覆っている。この軟骨は、骨対骨の直接接触のない関節における動きを可能にしている。それによって、向かい合う骨面の摩耗および損傷を予防している。関節軟骨は、骨化の傾向を有さない。軟骨表面は、肉眼的にはなめらかで真珠状に見え、高倍率下ではかなりざらざらしている。このような軟骨は硝子軟骨と呼ばれ、線維軟骨および弾性軟骨とは対照的である。関節軟骨は、その栄養分を、一部には隣接する滑膜の脈管から、一部にはそれを覆う骨の脈管から得ていると考えられる。関節軟骨には、II型およびIX型コラーゲンならびに種々の特徴がよくわかっているプロテオグリカンの存在と、内軟骨性骨形成に関連するX型コラーゲンの非存在が付随する。関節軟骨の微細構造の詳細な説明については、例えば、Aydelotte and Kuettner, Conn. Tiss. Res. 18:205 (1988); Zanetti et al., J. Cell Biol. 101:53 (1985);および Poole et al., J. Anat. 138:13 (1984) を参照されたい。
【0032】
成体の哺乳動物における他の種類の永久軟骨は、線維軟骨および弾性軟骨を含む。線維軟骨においては、ムコ多糖ネットワークが顕著なコラーゲン線維束と絡みあわされており、軟骨細胞が硝子軟骨におけるよりもより広く分散されている。関節内線維軟骨は、激しい震盪に最もさらされ、頻繁な動きにさらされる関節、例えば膝のメニスカスにおいて見られる。このような関節の例は、顎関節、胸鎖関節、肩鎖関節を含む。弾性軟骨は、エラスチン繊維と組織学的に類似したコラーゲン線維を含む。このような軟骨は、人体においては、外耳の耳介、オイスタキオ管、小角軟骨および喉頭蓋において見られる。
【0033】
骨形成因子7(BMP-7または骨形成促進因子1(OP-1))は、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)スーパーファミリーのメンバーである。BMP-7は、I型およびII型アクチビン受容体に結合するが、I型、II型およびIII型TGF-β受容体には結合しない。BMP-7モノマーは、17〜19kDaの分子量を有し、異所性骨形成を誘導するその能力により同定された。BMP-7ポリペプチドは、見かけの分子量おおよそ35〜36kDaのホモ二量体として分泌される。
【0034】
しかしながら、BMP-7はin vivoでの半減期が短い(おおよそ30分間)ため、精製タンパク質の注射後の、循環血液中における外因性タンパク質のレベル持続の維持には、短い間隔での複数回の投与を必要とし、大変重要な実践課題となっている。このような複数回注射治療のコストは、獣医学に適用するには高すぎる。遺伝子送達は、種々の疾患の治療のためのタンパク質療法に代わるものとして成功裏に推進されてきたが、in vivoでのBMP-7ポリペプチド発現による変形性関節症予防および/または治療に対するその利用可能性は、以前には提唱されておらず、その潜在的効果ははっきりしないままである。実際、低分子量のBMP-7ホモ二量体(すなわち、おおよそ35kDa)は、理論上は、迅速な糸球体濾過が可能であると考えられる。in vivoで発現されるBMP-7の濃度が治療上有効な血漿中濃度に達しうるかどうかは、既存の文献からは予測または決定することはできない。in vivoで発現するBMPタンパク質の評価をさらに複雑にさせることとして、免疫適格動物と免疫のない動物との有意差により、処置動物の免疫状態に応じて結果が変わりうることがある。従って、全体としてひとまとめにして考えれば、in vivoで発現されるBMP-7濃度が、治療的に有用と考えられる血漿中濃度に達しうるかどうかは、文献は教示していない。
【0035】
本願におけるすべての文献の引用または認定は、前記文献が本発明の先行技術として有効であることの承認を構成するものではない。
【発明の概要】
【0036】
本発明は、変形性関節症(OA)を患っている、あるいはその恐れがある哺乳動物被験者を予防および治療する方法ならびにこのような方法に使用する組換えベクターおよび医薬組成物に関する。本発明の方法、ベクターおよび組成物は、変形性関節症の特徴である関節機能の進行性喪失を減じる、予防する、抑制する、遅延する、または緩和するのに有用であることができる。本発明の方法、組換えベクターおよび組成物が有用な被験者は、限定するものではないが、すでにOAに悩まされている被験者ばかりでなく、OAと関連する関節機能の進行性喪失を患うと合理的に予想される任意の被験者を含む。特定の被験者がOAの恐れがあるかどうか、および/または被験者が本発明の方法および/または組成物から利益を得ることができるかどうかは、関連する医学または獣医学の分野の当業者はルーチンに決定することができる。OAの恐れがある被験者は、特に、コンタクトスポーツまたは過度のランニングなどの活動に参加する運動競技者などの競技哺乳動物、競争馬、競争犬、軍および/または警察犬、肥満した哺乳動物(すなわちヒトならびにペット、例えばイヌおよびネコ)、先天的および後天的筋骨格疾患を有する哺乳動物、老いた哺乳動物等々である。
【0037】
一実施形態において、本発明は、プレプロBMP-7遺伝子、プロBMP-7遺伝子または成熟BMP-7遺伝子を含みそれを宿主において発現できるベクターに関する。プレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドまたは成熟BMP-7ポリペプチドをコードするBMP-7遺伝子は哺乳動物由来のものであることができる。好ましい実施形態において、発現ベクターはイヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7またはイヌ成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の好ましい実施形態において、発現ベクターは、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7またはネコ成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の好ましい実施形態において、発現ベクターはウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7またはウマBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の好ましい実施形態において、発現ベクターはヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7またはヒト成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、プロモーターおよび場合によりエンハンサーに作動可能に連結されていることができる。
【0038】
有利な実施形態において、本発明は、N末端で“プレ”ペプチドを欠失させ、異なる起源のペプチドシグナル配列を融合させたイヌプロBMP-7ポリペプチドを含み発現するベクターに関する。有利な実施形態において、本発明は、N末端で“プレ”ペプチドを欠失させ、異なる起源のペプチドシグナル配列を融合させたネコプロBMP-7ポリペプチドを含み発現するベクターに関する。有利な実施形態において、本発明は、N末端で“プレ”ペプチドを欠失させ、異なる起源のペプチドシグナル配列を融合させたウマプロBMP-7ポリペプチドを含む発現するベクターに関する。有利な実施形態において、本発明は、N末端で“プレ”ペプチドを欠失させ、異なる起源のペプチドシグナル配列を融合させたヒトプロBMP-7ポリペプチドを含み発現するベクターに関する。好都合には、ペプチドシグナル配列は、インスリン様成長因子1(IGF-1)または組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)のペプチドシグナル配列であることができる。他の実施形態において、発現ベクターは、BMP-7、IGF-1またはtPAからのペプチドシグナル配列に融合させたイヌ成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の実施形態において、発現ベクターは、BMP-7、IGF-1またはtPAからのペプチドシグナル配列に融合させたネコ成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の実施形態において、発現ベクターは、BMP-7、IGF-1またはtPAからのペプチドシグナル配列に融合させたウマ成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の実施形態において、発現ベクターは、BMP-7、IGF-1またはtPAからのペプチドシグナル配列に融合させたヒト成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、プレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドまたは成熟BMP-7ポリペプチドを発現するベクターおよび薬学的または獣医学的に許容される担体、賦形剤またはビヒクルを含む医薬組成物に関する。特定の実施形態において、医薬組成物は、宿主細胞へのベクターのトランスフェクションまたは形質導入の有効性を改善する物質を含むことができる。
【0040】
さらに他の実施形態において、本発明は、in vivoでプレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドまたは成熟BMP-7ポリペプチドを発現することができるベクターを関節内の滑液に注射することを含む、哺乳動物にBMP-7ポリペプチドを送達する方法に関する。有利な実施形態において、哺乳動物宿主は、ヒト、イヌ科、ウマ科またはネコ科であることができ、特に、男性、女性、小児、イヌ、雌犬、子犬、ウマ、雌馬、子馬またはネコ、子猫であることができる。本発明は、哺乳動物のOAを予防するおよび/または治療するためのこのようなベクターの使用に関する。
【0041】
本開示において、特に特許請求の範囲および/またはパラグラフにおいて、“含む(comprises)”、“含んだ(comprised)”、“含む(complising)”などの用語は、米国特許法においてそれに付された意味を有することができ、例えばそれは“含む(includes)”、“含んだ(included)”、“を含む(including)”などを意味することができ、“本質的に〜からなる(consisting essentially of)”および“本質的に〜からなる(consists essentially of)”などの用語は、米国特許法においてそれに与えられた意味を有し、例えばそれは、明記されていない要素を可能にするが、先行技術に見られる要素または本発明の基本的もしくは新規特性に影響を与える要素を除外することに注意されたい。
【0042】
これらおよび他の実施形態は、以下の発明の詳細な説明に記載されているか、あるいはそれにより明らかでそれに含まれる。
【0043】
以下の詳細な説明は、例として示すものであり、記載されている特定の実施形態のみに本発明を限定するものではないが、添付図面と共に最もよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】衝撃により人為的に変形性関節症を作成した90日後における、ヒツジの処置および非処置膝に剖検で認められた肉眼的病変の肉眼的データを示す図である。
【図2】実施例8の第1群の動物の1匹(Y13)の左右の膝の組織像を示す図である。
【図3】第1群の動物のBMP-7処置関節および対側の非処置関節ならびに第2群の非処置動物の墨汁保持により測定される、軟骨表面粗化の平方ミリメートルで表現される損傷後の軟骨保護を示す図である。
【図4】第1群の動物のBMP-7処置関節および対側の非処置関節ならびに第2群の非処置動物の、軟骨溶解の深さのグレードおよび墨汁染色領域のステージ(墨汁保持により測定される、軟骨表面粗化の平方ミリメートルで表現される)を割り当てるOARSIスコアリングを用いる定量的組織学的所見を示す図である。
【0045】
本願の一部として、以下の配列表もまた含まれる:配列番号1はイヌプレプロBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号2はイヌプレプロBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列であり、配列番号3はイヌプレプロBMP-7ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号4はtPAからの短いシグナルペプチド(23アミノ酸)のヌクレオチド配列であり、配列番号5はtPAからの短いシグナルペプチド(23アミノ酸)のアミノ酸配列であり、配列番号6はtPAからの長いシグナルペプチド(28アミノ酸)のヌクレオチド配列であり、配列番号7はtPAからの長いシグナルペプチド(28アミノ酸)のアミノ酸配列であり、配列番号8はウマIGF-1シグナルペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号9はウマIGF-1シグナルペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号10はウマプレプロBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号11はイヌIGF-1シグナルペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号12はイヌIGF-1シグナルペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号13はヒトプレプロBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号14はヒトプレプロBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列であり、配列番号15はヒトプレプロBMP-7ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号16はウマプレプロBMP-7ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号17はネコプレプロBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号18はネコプレプロBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列であり、配列番号19はネコプレプロBMP-7ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号20はPB1053プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号21はPB1063プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号22はPB1060プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号23はPB1062プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号24はPB1088プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号25はPB1089プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号26はPB1090プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号27はマウスプレプロBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号28はマウスプレプロBMP-7ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号29はLF189プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号30はLF190プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号31はLF191プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号32はLF192プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号33はDNAリンカーのヌクレオチド配列であり、配列番号34はLF327プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号35はLF324プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号36はLF326プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号37はLF325プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号38はLF361プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号39はLF334プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号40はLF437プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号41はLF172プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号42はLF159プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号43はLF377プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号44はLF378プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号45はSPH6Etr1プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号46はSPH6Etr2プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号47はSPH6Etr3プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号48はSPH6Etr4プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号49はSPH6Etr5プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号50はSPH6Etr6プライマー、のヌクレオチド配列であり、配列番号51はSPH6Etr7プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号52はSPH6Etr8プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号53はLF394プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号54はLF395プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号55はLF397プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号56はLF398プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号57はM13Rプライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号58はLF409プライマーのヌクレオチド配列であり、配列番号59はウマIL10ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号60はウマIL10ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号61はイヌIL10ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号62はイヌIL10ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号63はネコIL10ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号64はネコIL10ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号65はヒトIL10ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号66はヒトIL10ポリペプチドのアミノ酸配列であり、配列番号67はウイルスIL10ポリペプチドのヌクレオチド配列であり、配列番号68はウイルスIL10ポリペプチドのアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本発明の方法および組成物は、OAの治療処置に使用できる。用語“治療”または“治療処置”は、OAと関連するとき、そして本明細書ならびに獣医学およびヒト医学の分野において用いられるとき、すでにOAを患っている、あるいはOAから回復しつつある哺乳動物の治療またはOAを有すると診断された、あるいはその恐れがある哺乳動物における形態学的な軟骨病変進行を遅延するおよび/または退行させることを目的とした治療に関連する。特定の哺乳動物がOAを患っているかどうかは、関連する獣医学または医学分野の当業者は容易に決定できる。
【0047】
本明細書において、かなりな軟骨減少、摩耗粉の生成、軟骨下骨における滑膜肥厚および包障害ならびに関節辺縁における骨棘増殖と関連する関節機能の進行性喪失を患うと哺乳動物が合理的に予想される場合、哺乳動物はOAを患っている。哺乳動物におけるOAの主な結果は、限定するものではないが、跛行を含む。
【0048】
ヒトにおいては、OAの診断は、主として病歴および検診に基づくが、診断が不明の場合、非対称の関節腔狭窄(JSN)、軟骨下骨硬化症、骨棘形成、亜脱臼および変形性関節症変化の分布パターンを含むX線所見はすべて有用である。X線における構造的形態学的変化は、同様に、OAの進行を評価するための主要結果変数と考えられる。OAのX線学的進行を評価するために、個々のX線特徴(例えば、辺縁骨棘)、複合指標(例えば、Kellgren-Lawrenceスコアリングシステム)および定量的測定(例えば、関節腔径(JSW)測定)を含むいくつかの指標が現在使われている(Salaffi F. et al., Aging Clin. Exp. Res., 2003, 15(5): 391-404; Buckland-Wright, Osteoarthritis Cartilage, 1999, 7(4): 430-3)。監督官庁は、化合物が変形性関節症の進行を遅らせることができることが明らかになれば、その化合物をDMOAD適応と認める。単純X線における関節腔の狭窄(JSN)を測定することによる、構造変化の代用により、この遅延した関節腔の狭窄が臨床上の有用性になる限り、進行が測定されると考えられる。最近、従来のX線よりも前にOA関節の構造変化を検出することができる新しい磁気共鳴画像(MRI)技術が開発され、現在、OA患者における軟骨の形態学および完全性のパラメータを測定するために用いられている(Abadie E. et al., Osteoarthritis Cartilage, 2004, 12(4): 263-8)。
【0049】
診断法を用いる経時的評価なしには、OAは、それが進行するまで診断未確定のままである恐れがある。このことは、イヌ科、ネコ科またはウマ科などの哺乳動物においてしばしば見られ、これらの哺乳動物については、特に跛行などの進行した症状が現れてやっとOAが確認される。
【0050】
本発明は、in vivoでBMP-7ポリペプチドを発現することができるベクターを含む医薬組成物を用いるOAの治療法ならびに滑液BMP-7濃度の持続的増加を誘導する方法および組成物を提供する。
【0051】
本明細書において、本発明記載の医薬組成物は、OAを患っている哺乳動物被験者における疾患の臨床徴候または測定可能なマーカーの著明改善を引き起こすのに組成物の投与量が十分な場合、“治療効果”を有する、または“治療上有効である”といわれる。本明細書において、本発明記載の医薬組成物は、被験者におけるOAの発症を予防するのに組成物の投与量が十分な場合、“予防効果”を有する、または“有効である”といわれる。本明細書において、用語“治療上有効な”もまた、より一般的な意味で、OAを患っている哺乳動物被験者における疾患の臨床徴候または測定可能なマーカーの著明改善を引き起こすのに十分であるか、または被験者におけるOAの発症を予防するのに十分である組成物の量を指すために用いることができる。
【0052】
本発明の方法および組成物(例えばBMP-7またはBMP-7の機能的等価物を用いる遺伝子治療に有用な方法および組成物)の有効性の実験的証明は、種々の測定可能なマーカーを用いて、例えば、OAを患っている場合に、本発明の方法および組成物を用いて処置したヒトが、プラセボ処置ヒトと比較して、関節腔の狭窄(JSN)測定値の減少の著しい抑制を示すことを明らかにすることにより、あるいはOAを患っている場合に、本発明の方法および組成物を用いて処置した哺乳動物が、プラセボ処置哺乳動物と比較して、跛行の有意な低下および/またはX線における軟骨厚さ測定値の減少の著しい抑制を示すことにより行うことができる。ウマ科についての軟骨厚さの測定は、エコーグラフィーによっても行うことができる。
【0053】
一側面において、本発明は、宿主においてin vivoで、骨形成因子7(BMP-7)ポリペプチドまたはそのバリアントもしくはフラグメントを発現することができるベクターに関する。本明細書において、“BMP-7ポリペプチド”は、プレプロ、プロまたは成熟BMP-7ポリペプチドを指すために用いることができ、ここでプロおよび成熟BMP-7ポリペプチドは、BMP-7、IGF-1またはtPAシグナルペプチドに融合させることができる。本発明のBMP-7ポリペプチドは、好ましくはイヌ、ネコ、ウマまたはヒト由来のものである。一実施形態において、本ベクターは、遺伝子のプレプロBMP-7、プロBMP-7または成熟BMP-7ヌクレオチド配列を含みそれを宿主において発現することができる。プレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドまたは成熟BMP-7ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または遺伝子は、哺乳動物由来、例えばヒト、ネコ、ウマイヌ由来のものであることができる。好ましい実施形態において、BMP-7ヌクレオチド配列または遺伝子は、イヌ由来のものであることができる。他の好ましい実施形態において、BMP-7ヌクレオチド配列または遺伝子は、ネコ由来のものであることができる。他の好ましい実施形態において、BMP-7ヌクレオチド配列または遺伝子は、ウマ由来のものであることができる。他の好ましい実施形態において、BMP-7ヌクレオチド配列または遺伝子はヒト由来のものであることができる。
【0054】
BMP-7は、別名骨形成促進因子1すなわち“OP-1”であり、トランスフォーミング成長因子βすなわち“TGF-β”スーパーファミリーのメンバーである。これは、プロタンパク質がプロセシングを受けてカルボキシ末端成熟タンパク質となった分泌タンパク質である。成熟タンパク質内には、配列番号3、配列番号15、配列番号16および配列番号19のアミノ酸330〜アミノ酸430にわたるドメインを特徴づける保存された7つのシステイン残基のパターンが存在する。このタンパク質の活性体はジスルフィド結合したホモ二量体である。その成熟天然型において、天然に存在するBMP-7は、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(“SDS-PAGE”)で測定するとき、見かけの分子量約30〜36kDaのグリコシル化二量体である。還元すれば、この30〜36kDaタンパク質は、見かけの分子量約16kDaおよび18kDaを有する2つのグリコシル化ポリペプチドサブユニットを生じる。非グリコシル化BMP-7タンパク質は、見かけの分子量約27kDaを有する。還元すれば、この27kDa非グリコシル化タンパク質は、分子量約14kDaおよび16kDaを有する2つの非グリコシル化ポリペプチド鎖を生じる。
【0055】
一般的には、天然に存在するBMP-7タンパク質は、N末端シグナルペプチド配列、“プロ”ドメインおよび“成熟”タンパク質ドメインを有する前駆体として翻訳される。シグナルペプチドは長さ29残基であり、Von Heijne (1986), Nucleic Acid Research, 14; 4683-4691 の方法を用いて予測できる切断部位で翻訳後速やかに切除される。ヒト、イヌ、ネコ、ブタおよびウシBMP-7においては、“プロ”ドメインは264残基であり、マウスBMP-7においては、263残基である。プロBMP-7のN末端部分は切断されて139残基の“成熟”C末端ドメインを生じ、これは保存された102残基の7システインC末端ドメインを含む。本明細書においては、BMP-7ポリペプチドの“プロ型”は、一組のポリペプチドであって、それぞれがBMP-7ポリペプチドの成熟ドメインと共有結合または非共有結合したプロドメインを含むタンパク質のことを言う。プロ型は、培養哺乳動物細胞から分泌される主な型である。タンパク質の“成熟型”は、成熟C末端ドメインであって、プロドメインと共有結合的にも非共有結合的にも結合していないもののことを言う。
【0056】
本明細書において、用語“プレプロBMP-7”、“プロBMP-7”、“成熟BMP-7”および“BMP-7”は、明細書および添付の配列表に図示されている特定のポリペプチドおよび配列ばかりでなく、限定するものではないが、誘導体、変異体、ホモログ、オルソログ、対立遺伝子バリアント、対立遺伝子多型、多型バリアント、系統発生的カウンターパートを含むタンパク質のありとあらゆる既知の天然に存在するバリアントを指すばかりでなく、誘導体、変異体、フラグメント、融合タンパク質などを含むが限定されないタンパク質のありとあらゆる天然に存在しないバリアントのことをもいう。本明細書において、用語“バリアント”は、天然に存在するバリアントおよび天然に存在しないバリアントをすべて含む。特に、本発明は、OAの治療または予防処置に有用な特徴を保持するバリアントおよび/またはBMP-7活性を保持するバリアントをすべて含む。
【0057】
これらの機能的に同等バリアント、誘導体およびフラグメントなどは、BMP-7活性を保持する能力を示す。本明細書において、機能的等価物は、以下の2つの基準のいずれかを満たす任意のBMP-7バリアント、誘導体、フラグメントなどのことを言う(a)本明細書記載のBMP-7のタンパク質配列との有意水準のアミノ酸配列相同性を有する、または本明細書記載のBMP-7のタンパク質配列との有意水準のヌクレオチド配列相同性を有するヌクレオチドによりコードされる;あるいは(b)哺乳動物における変形性関節症の実験モデル、例えば前述の外傷後変形性関節症モデル(PTOAモデル)(Hurtig MB et al., Proceedings Combined Orthopaedic Research Society, 070, October 2004 ; Bolam C.J. et al., AJVR, 2006, 67(3): 433-447 を参照のこと)において、プラセボ群と比較して、処置群において統計的有意差のある反応を示す能力を有する。典型的なPTOAモデルにおいて、0日目(D0)に、3cm低侵襲関節切開術を用いて動物の両方(左右)の内側顆に標準化30MPa衝撃外傷を実験的に与えた。7日目(D7)において、動物の半分に、本発明記載のBMP-7アデノウイルスベクター(Ad5-BMP-7)1mL量(109ウイルス粒子/mL)を、傷つけられた膝の1つの膝関節に投与した。シリンジおよび針を用いて、大腿膝蓋関節内に関節内投与を行った。種々の分析のために滑液(1mL)を採取後、注射を行った。対側の傷つけられた膝は、Ad5-BMP-7で処置しなかった。残り半分の動物には何ら処置をせず、陰性対照として残した。D0、D14、D21、D28、D60およびD90に血清および滑液を採取した。D90に、肉眼検査および組織学のために組織もまた採取した。左右の膝についての結果(すなわち、跛行の進行、D90の剖検における膝の肉眼的データ、組織学結果)を各動物に関して比較し、対照動物に対しても比較した。動物モデルは、例えばヒツジ(Hurtig MB et al., Proceedings Combined Orthopaedic Research Society, 070, October 2004 参照)であることもでき、ウマ (Bolam C.J. et al., AJVR, 2006, 67(3): 433-447 参照)であることもできる。
【0058】
本発明に含むことができるバリアント、誘導体などの実例として、限定するものではないが、本明細書に開示されたヌクレオチド配列と正確には同じではないヌクレオチド配列によりコードされるが、ヌクレオチド配列の変化が、コードされるアミノ酸配列を変化させないか、またはコードされるポリペプチドなどの性質に著しくは影響を与えない、アミノ酸残基の同類置換、1または数個のアミノ酸の欠失または付加、アミノ酸アナログによるアミノ酸残基の置換をもたらすBMP-7バリアント、誘導体などを含む。保存的アミノ酸置換の例は、グリシン/アラニン置換;バリン/イソロイシン/ロイシン置換;アスパラギン/グルタミン置換;アスパラギン酸/グルタミン酸置換;セリン/トレオニン/メチオニン置換;リジン/アルギニン置換;およびフェニルアラニン/チロシン/トリプトファン置換を含む。前述のような、機能的BMP-7誘導体をもたらす他の種類の置換、変異、付加、欠失および誘導体もまた本発明に含まれ、当業者には、このようなバリアントまたは誘導体の製造法、同定法または選択法およびこのようなバリアントまたは誘導体のBMP-7活性の試験法は明らかであろう。当業者は、潜在的スプライス部位を除去し、コドン使用頻度に適合させ、開始コドンの前にKozakコンセンサス配列を導入し、発現を改善するためにコドン使用頻度またはその組み合わせを変えることにより本発明のBMP-7ポリペプチドの発現を最適化することができる。
【0059】
他の実施形態において、本発明は、配列番号3の残基1〜431と少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、イヌプレプロBMP-7ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0060】
他の実施形態において、本発明は、配列番号15の残基1〜431と少なくとも98%、少なくとも98.5%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ヒトプレプロBMP-7ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0061】
他の実施形態において、本発明は、配列番号19の残基1〜431と少なくとも98.5%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ネコプレプロBMP-7ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0062】
他の実施形態において、本発明は、配列番号16の残基1〜431と少なくとも97.5%、少なくとも98%、少なくとも98.5%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ウマプレプロBMP-7ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0063】
本発明においては、配列同一性または相同性は、重なりおよび一致を最大にし、配列ギャップを最小にするようにアラインメントして配列を比較することにより決定できる。特に、配列同一性は、いくつかの数学的アルゴリズムのいずれかを用いて決定できる。限定するものではないが、2つの配列の比較のために用いられる数学的アルゴリズムの例として、Karlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1990, 87: 2264-2268、それを改良したKarlin & Altschul, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993, 90: 5873-5877 がある。
【0064】
配列の比較のために用いられる数学的アルゴリズムの他の例には、Myers & Miller, CABIOS 1988,4, 11-17 のアルゴリズムがある。このようなアルゴリズムは、GCG配列のアラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれる。アミノ酸配列を比較するためのALIGNプログラムを用いる場合、PAM120重み付き残基表、ギャップ長ペナルティ12およびギャップペナルティ4を用いることができる。局所的配列類似性領域同定およびアラインメントのためのさらに他の有用なアルゴリズムには、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988, 85, 2444-2448 に記載されているFASTA アルゴリズムがある。
【0065】
WU-BLAST(Washington University BLAST)バージョン2.0ソフトウェアは、本発明の使用に好都合である。いくつかのUNIXプラットフォームのためのWU-BLASTバージョン2.0実行可能プログラムは、ftp://BLAST.wustl.edu/BLAST/executablesからダウンロードできる。このプログラムは、WU-BLASTバージョン1.4に基づき、これはさらにパブリックドメインNCBI-BLASTバージョン1.4に基づく(Altschul & Gish, 1996, Local alignment statistics, Doolittle ed., Methods in Enzymology 266, 460-480; Altschul et al., Journal of Molecular Biology 1990, 215, 403-410; Gish & States, Nature Genetics, 1993, 3: 266-272; Karlin & Altschul, 1993,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 5873-5877; これらはすべて参照により本願に組み込まれる)。
【0066】
一般に、アミノ酸配列の比較は、既知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列と未知の構造のポリペプチドのアミノ酸配列とをアラインメントすることにより達成できる。次いで配列中のアミノ酸を比較し、相同のアミノ酸のグループをグループにまとめる。この方法により、保存されたポリペプチド領域が検出され、アミノ酸挿入および欠失が明らかとなる。アミノ酸配列間の相同性は市販アルゴリズムを用いて決定できる(上記の相同性の詳細な説明も参照のこと)。本明細書の他の部分の記載に加えて、(国立生物工学情報センター)National Center for Biotechnology Information が提供しているプログラムであるBLAST、gapped BLAST、BLASTN、BLASTPおよびPSI-BLASTも挙げられる。これらのプログラムは、この目的のために当該技術分野で広く使用されており、2つのアミノ酸配列の相同領域をアラインメントすることができる。
【0067】
スイート中のすべての検索プログラムにおいて、ギャップ有りアラインメントルーチンは、データベース検索と一体をなす。ギャッピングは、必要に応じてオフにすることができる。長さ1のギャップのギャップペナルティ(Q)は、タンパク質およびBLASTPについてはQ=9であり、BLASTNについてはQ=10であるが、任意の整数に変更することができる。残基あたりのデフォルトのギャップ(R)伸長ペナルティは、タンパク質およびBLASTPについてはR=2であり、BLASTNについてはR=10であるが、任意の整数に変更できる。配列をアラインメントするために、重なりおよび一致を最大にし、配列ギャップを最小にするように、QおよびRの値の任意の組み合わせを使用できる。デフォルトのアミノ酸比較マトリックスはBLOSUM62であるが、PAMなどの他のアミノ酸比較マトリックスを使用することもできる。
【0068】
好ましい実施形態において、本発明は、インサートとして、イヌプレプロBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、より好ましくは、配列番号3のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、このベクターは配列番号1のヌクレオチド1〜1296を含む。
【0069】
他の好ましい実施形態において、本発明は、インサートとしてヒトプレプロBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、より好ましくは配列番号15のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、このベクターは配列番号13のヌクレオチド1〜1296を含む。
【0070】
他の好ましい実施形態において、本発明は、インサートとして、ネコプレプロBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、より好ましくは、配列番号19のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、このベクターは配列番号17のヌクレオチド1〜1296を含む。
【0071】
他の好ましい実施形態において、本発明は、インサートとして、ウマプレプロBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクター、より好ましくは、配列番号16のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。好ましくは、このベクターは配列番号10のヌクレオチド1〜1296を含む。
【0072】
一実施形態において、ペプチドのシグナル(プレペプチド)配列は、位置(1)のMet残基から位置(29)のAla残基までにわたり、これらのアミノ酸残基の番号付けは、配列番号3、15、16または19として特定されるプレプロBMP-7配列のアミノ酸残基の番号付けである。シグナルペプチドの切断は、Ala(29)残基の後で生じうる。プレBMP-7ペプチドの切断後、プロBMP-7ポリペプチドは配列Arg-X-X-Arg(292)の後で二次的に切断されて成熟BMP-7ポリペプチドを生じる。
【0073】
本明細書において、用語“タンパク質”、“ポリペプチド”および“ポリペプチドフラグメント”は、任意の長さのアミノ酸残基のポリマーを指すために同義で使用される。
【0074】
特定の実施形態において、発現ベクターは、成熟BMP-7ポリペプチドであって、BMP-7シグナルペプチドであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であるペプチドシグナル配列に融合させた前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。他の実施形態において、シグナルペプチド配列は、他のシグナルペプチドであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であることができる。
【0075】
本発明は、さらに、プレBMP-7シグナルペプチドを欠失させ、異なる起源のペプチドシグナル配列をプロBMP-7ポリペプチドに融合させたプロBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み発現するベクターに関する。例えば、特定の実施形態において、ペプチドシグナル配列は、インスリン様成長因子1(IGF-1)または組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)のペプチドシグナル配列であることができる。好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドによりコードされるプロBMP-7は、イヌプロBMP-7ポリペプチドである。好都合には、プロBMP-7は、配列番号1のヌクレオチド88〜1296であるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であり、配列番号3のアミノ酸残基30〜431に対応するアミノ酸配列をコードするか、またはそれを含むヌクレオチドであるポリヌクレオチドによりコードされる。他の好ましい実施形態において、配列番号2に対応するコドン最適化イヌヌクレオチド配列が用いられる。
【0076】
他の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドによりコードされるプロBMP-7はヒトプロBMP-7ポリペプチドである。好都合には、プロBMP-7は、配列番号13のヌクレオチド88〜1296であるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であり、配列番号15のアミノ酸残基30〜431に対応するアミノ酸配列をコードするか、またはそれを含むヌクレオチドであるポリヌクレオチドによりコードされる。他の好ましい実施形態において、配列番号14に対応するコドン最適化ヒトヌクレオチド配列が用いられる。
【0077】
他の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドによりコードされるプロBMP-7はネコプロBMP-7ポリペプチドである。好都合には、プロBMP-7は、配列番号17のヌクレオチド88〜1296であるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であり、配列番号19のアミノ酸残基30〜431に対応するアミノ酸配列をコードするか、またはそれを含むポリヌクレオチドによりコードされる。他の好ましい実施形態において、配列番号18に対応するコドン最適化ネコヌクレオチド配列が用いられる。
【0078】
他の好ましい実施形態において、ポリヌクレオチドによりコードされるプロBMP-7はウマプロBMP-7ポリペプチドである。好都合には、プロBMP-7は、配列番号10のヌクレオチド88〜1296であるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であり、配列番号16のアミノ酸残基30〜431に対応するアミノ酸配列をコードするか、またはそれを含むポリヌクレオチドによりコードされる。
【0079】
異なる種間のコドン選択性は、著しく異なる場合がある。異種タンパク質の発現レベルを上昇させることは、異種タンパク質のコドン使用頻度を宿主発現系のものとマッチさせることと関連する(Kim et al., Gene, 1997, 199(1-2): 293-301)。コドン最適化はまた、mRNAの安定性およびその細胞質への排出プロセスも最適化する。コドン最適化には、コドン使用頻度以外の要素、例えばDNAモチーフおよび反復配列、二次構造、GC含量、反復コドン、制限エンドヌクレアーゼ部位、スプライス部位などの機能モチーフまたはターミネーター構造を考慮に入れることができる。最適のヌクレオチド配列の設計を容易にするためのアルゴリズムが作成されてきた。Geneart社(ドイツ・レーゲンスブルク)は、一回の操作で多パラメータ最適化を実行するGeneOptimizer(登録商標)ソフトウェア(WO-A-04/059556およびWO-A-06/013103)を開発した。最も重要なパラメータを並行して考慮して、ソフトウェアは、斬新的アプローチで全部で500,000までの標的配列の最適化バリアントを作成し、最も適したものを選択する。このような最適化遺伝子は、元の遺伝子配列と比較して、100倍までの発現収率の増強を示すことが報告されている(Bradel-Tretheway et al., J. Virol. Methods, 2003, 111(2): 145-56; Disbrow et al., Virology, 2003, 311(1): 105-14)。ヌクレオチド配列がコドン最適化される実施形態において、コドン最適化は、GeneOptimizer(登録商標)ソフトウェアを用い、Geneart社(ドイツ・レーゲンスブルク)により行うことができる。コドン最適化は、核酸配列のみを変更し、コードされるアミノ酸配列を変更しない。
【0080】
シグナルペプチドがIGF-Iシグナルペプチド由来である実施形態において、ペプチドシグナルは、ウマIGF-1ペプチドシグナルであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であることが好ましく、好ましくは配列番号9のアミノ酸残基1〜25により定義され、配列番号8のヌクレオチド1〜75によりコードされるペプチドシグナルである。代替実施形態において、IGF-1ペプチドシグナルは、イヌIGF-1ペプチドシグナルであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であることができ、好ましくは、配列番号12のアミノ酸残基1〜25により定義され、配列番号11のヌクレオチド1〜75によりコードされるイヌIGF-1ペプチドシグナルであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来である。
【0081】
他の実施形態において、ペプチドシグナルは、ヒトtPAシグナルペプチドなどのtPAペプチドシグナルであるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であることができる。好ましい実施形態において、用いられるtPAシグナルペプチドは、配列番号5のヒトtPAシグナルペプチド配列のアミノ酸残基1〜23であり、配列番号4のヌクレオチド1〜69によりコードされるか、またはそれを含むか、またはそれ由来である。別の実施形態において、ヒトtPAシグナルペプチドは、配列番号7のアミノ酸残基1〜28であり、配列番号6のヌクレオチド1〜84によりコードされるか、またはそれを含むか、またはそれ由来であることができるものを使用することができる。
【0082】
本発明の有利な実施形態によれば、発現ベクターは、シグナルペプチドを欠失させたプレプロBMP-7ポリペプチド(残基30〜残基431に対応する)に融合させた、配列番号5、7、9または12記載のIGF1またはtPAのシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。本発明の他の実施形態によれば、発現ベクターは、成熟BMP-7(残基293〜残基431に対応する)に融合させたIGF1またはtPAのシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、本発明は、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌ成熟BMP-7、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒト成熟BMP-7、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマ成熟BMP-7、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコ成熟BMP-7またはそのバリアントもしくはフラグメントを発現することができるベクターを含む。成熟BMP-7またはプロBMP-7については、ペプチドをコードするヌクレオチド配列は、細胞外培地へのBMP-7の分泌を容易にするためのペプチドシグナルをコードするヌクレオチド配列が、インフレームで直接に前にくることが好ましい。シグナル配列は、プレプロBMP-7からの天然配列であることができ、あるいは分泌タンパク質からのペプチドシグナル、例えば組織プラスミノーゲンアクチベータータンパク質(tPA)、特にヒトtPAからのシグナルペプチド(S. Friezner Degen et al J. Biol. Chem. 1996, 261, 6972-6985; R. Rickles et al J. Biol. Chem. 1988, 263, 1563-1569; D. Berg. et al Biochem. Biophys. Res. Commun. 1991, 179, 1289-1296)、またはインスリン様成長因子1(IGF1)、特に、ウマIGF1(K. Otte et al. Gen. Comp. Endocrinol. 1996, 102(1), 11-15)、イヌIGF1(P. Delafontaine et al. Gene 1993, 130, 305-306)、ネコIGF1(WO-A-03/022886)、ウシIGF1(S. Lien et al. Mamm. Genome 2000, 11(10), 877-882)、ブタIGF1(M. Muller et al. Nucleic Acids Res. 1990, 18(2), 364)、ニワトリIGF1(Y. Kajimoto et al. Mol. Endocrinol. 1989, 3(12), 1907-1913)、シチメンチョウIGF1(GenBankアクセッション番号AF074980)からのシグナルペプチドであることができる。IGF1からのシグナルペプチドは天然のものであることもでき、最適化されたもの、特に潜在的スプライス部位の除去および/またはコドン使用頻度への適合により最適化されたものであることもできる。
【0084】
本明細書において、用語“ポリヌクレオチド”は、任意の長さのヌクレオチド(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドを含む)の重合体を指すために用いられる。
【0085】
本発明はさらに、プロモーター配列および場合によりエンハンサーにも作動可能に連結されたBMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み発現するベクターを含む。有利な実施形態において、プロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)前初期遺伝子のプロモーター、好ましくはヒトまたはマウス由来CMVのプロモーターである。他の実施形態において、エンハンサーおよび/またはプロモーターは、当該技術分野で公知であり、本発明のベクターにおいてBMP-7の発現に適したプロモーターの中から選択されることができる。多くのこのようなプロモーターは当該技術分野で公知であり、当業者は適切なプロモーターを容易に選択することができる。例えば、種々の細胞および/または組織特異的プロモーター(例えば筋肉、内皮細胞、肝臓、体細胞および幹細胞特異的プロモーター)、種々のウイルスプロモーターおよびエンハンサーならびにBMP-7プロモーター、例えば各動物種に同質遺伝子的に特異的なBMP-7プロモーターが存在する。例えば、一実施形態において、イヌ滑膜細胞においてイヌBMP-7が発現される場合、イヌBMP-7の発現を所望の用途に最適化するために、イヌ滑膜細胞に特異的なエンハンサーおよび/またはプロモーターを用いることができる。
【0086】
本発明に使用可能なプロモーターおよびエンハンサーは、限定するものではないが、ラウス肉腫ウイルスのLTR、HSV-1のTK遺伝子、SV40の初期または後期プロモーター、アデノウイルス主後期プロモーター(MLP)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase)遺伝子、メタロチオネイン遺伝子、α-1アンチトリプシン遺伝子、アルブミン遺伝子、コラゲナーゼ遺伝子、エラスターゼI遺伝子、β-アクチン遺伝子、β-グロビン遺伝子、γ-グロビン遺伝子、α-フェトプロテイン遺伝子および筋クレアチンキナーゼ遺伝子のプロモーターおよびエンハンサーを含む。
【0087】
一般に、真核細胞内で機能する強力なプロモーターを用いることが有利である。好ましい強力なプロモーターには、ヒトまたはマウス起源の前初期サイトメガロウイルスプロモーター(CMV-IE)があるが、ラットまたはモルモットなどの他の起源を用いる場合もある。CMV-IEプロモーターは、エンハンサー部分と関連することもしないこともできる実際のプロモーター部分を含むことができる。EP-A-260148、EP-A-323597、米国特許第5,168,062号、第5,385,839号および第4,968,615号ならびにPCT出願第WO87/03905号を参照することができる。CMV-IEプロモーターは、好都合には、ヒトCMV-IE(Boshart M. et al., Cell., 1985, 41, 521-530)またはマウスCMV-IEである。
【0088】
より一般的には、プロモーターは、ウイルス起源か細胞起源のいずれかである。本発明の実施に用いて役に立つことのできるCMV-IE以外の強力なウイルスプロモーターは、SV40ウイルスの初期/後期プロモーターまたはラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実施に用いて役に立つことのできる強力な細胞プロモーターは、滑膜細胞に特異的な遺伝子のプロモーターである。
【0089】
これらのプロモーターの機能的サブフラグメント、すなわち、適切な促進活性を維持するこれらのプロモーターの部分は本発明の範囲内であり、例えばPCT出願第WO98/00166号または米国特許第6,156,567号記載の短縮型CMV-IEプロモーターを本発明の実施に用いることができる。従って、本発明の実施におけるプロモーターは、適切な促進活性、好ましくは、誘導体またはサブフラグメントが誘導される実際または完全長プロモーターの促進活性と実質的に同様な促進活性を維持し、従ってプロモーターとして機能する完全長プロモーターの誘導体およびサブフラグメントを含む。例えば、完全長CMV-IEプロモーターの活性に対する米国特許第6,156,567号の短縮型CMV-IEプロモーターの活性と類似するものである。従って、本発明の実施におけるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターの完全長プロモーターおよび/またはエンハンサー部分のプロモーター部分ならびに誘導体およびサブフラグメントを含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなる。
【0090】
好ましくは、ベクターは他の発現調節因子を含む。安定化配列(単数または複数)、例えば、イントロン配列(単数または複数)、好ましくはhCMV-IEの第1イントロン(PCT出願第WO89/01036号)、ウサギβ-グロビン遺伝子の第2イントロン(van Ooyen et al., Science, 1979, 206, 337-344)を組み込むことは特に有利である。ポックスウイルス以外のウイルスベクターのポリアデニル化シグナル(polyA)に関しては、ウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリ(A)シグナル(米国特許第5,122,458号参照)またはウサギβ-グロビン遺伝子のポリ(A)シグナルまたはSV40ウイルスのポリ(A)シグナルをより使用することができる。
【0091】
本明細書において、用語“ベクター”は、例えば、in vivoで標的細胞に送達される異種ポリヌクレオチドを含む組換えアデノウイルスのことを言う。異種ポリヌクレオチドは、治療目的の目的とする配列を含むことができ、場合により発現カセットの形にすることができる。異種ポリヌクレオチドは、さらなる配列、例えば、同じ転写ユニット内のさらなるコード配列、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位などの調節因子、同一または異なるプロモーターの調節下にあるさらなる転写ユニット、クローニング、発現、相同組換えおよび宿主細胞の形質転換を可能にする配列ならびに本発明の実施形態するために望ましい任意の構築物を含むことができる。
【0092】
本明細書において、用語“組換え”は、半合成または合成起源のポリヌクレオチドを意味し、これらは自然界に存在しないか、あるいは自然界に見られない配置の他のポリヌクレオチドに結合されている。
【0093】
本明細書において、用語“異種”は、比較される残りの実体とは遺伝的に異なった実体に由来することを意味する。例えば、遺伝子工学技術により、ポリヌクレオチドは異なる供給源由来のプラスミドまたはベクターに挿入することができ、従って異種ポリヌクレオチドである。天然コード配列から除去され、天然配列以外のコード配列に作動可能に連結されているプロモーターは、従って異種プロモーターである。
【0094】
イヌBMP-7またはネコBMP-7またはヒトBMP-7またはウマBMP-7の発現のための因子は、発明のベクターに好都合に存在する。最小限として、この因子は、特定のベクター、例えばポックスウイルス以外のウイルスベクターに関する開始コドン(ATG)、終止コドンおよびプロモーターならびに場合によりポリアデニル化配列を含むことができるか、または本質的にそれからなることができるか、またはそれからなることができる。ポリヌクレオチドが、ベクターにおいてポリペプチドフラグメント、好都合には例えばイヌBMP-7をコードする場合、リーディングフレームの5'にATGを配置し、3'に終止コドンを配置することができる。発現を調節する他の因子、例えばエンハンサー配列、イントロンなどの安定化配列およびタンパク質の分泌を可能にするシグナル配列などを存在させることができる。
【0095】
本発明の遺伝子の遺伝子産物をin vivoで発現させるためのベクターまたは組換え体の製造方法および/または投与方法は、任意の望ましい方法であることができるが、例えば下記において開示された方法または下記において引用された文献中に開示された方法によるか、またはそれに類似した方法であることができる:Chroboczek J et al., Virol. 1992, 186: 280-285; Yarosh et al., Vaccine, 1996, 14(13):1257-64; Lutze-Wallace et al., Biologicals, 1995, 23(4):271-7; Falloux F. et al., Human Gene Therapy, 1998, 9: 1909-1917; Shriver J. et al., Nature, 2002, 415: 331-335; Graham F. et al., Methods in Molecular Biology, Vol .7: Gene Transfer and Expression Protocols Edited by E. Murray, The Human Press Inc, 1991, p 109-128; Ilan Y. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1997, 94: 2587-2592; Tripathy S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 1994, 91: 11557-11561; Tapnell B., Adv. Drug Deliv. Rev., 1993, 12: 185-199; Danthinne X. et al., Gene Therapy, 2000, 7: 1707-1714; Berkner K., Bio Techniques, 1988, 6: 616-629; Berkner K. et al., Nucl. Acid Res., 1983, 11: 6003-6020; Chavier C. et al., J. Virol., 1996, 70: 4805-4810 。
【0096】
本発明の一実施形態によれば、発現ベクターはウイルスベクター、特にin vivo発現ベクターであることができる。有利な実施形態において、発現ベクターはアデノウイルスベクターであることができる。好都合には、アデノウイルスは、E1欠失および/またはE3欠失hAd5であるヒトアデノウイルス5型(hAd5)ベクターであることができる。好都合には、アデノウイルスは、E3欠失CAV-2および/またはE4領域と右ITR領域の間に位置する領域に挿入したCAV-2であるイヌアデノウイルス2型(CAV-2)ベクターであることができる。
【0097】
一実施形態において、ウイルスベクターは、ヒトアデノウイルス、特に、Genbankアクセッション番号M73260で開示され、かつ引用文献J. Chroboczek et al Virol. 1992, 186, 280-285 に開示されたhAd5の配列を参照することにより、ウイルスゲノムのE1領域、特に約ヌクレオチド459〜約ヌクレオチド3510を欠失させて複製能力をなくしたアデノウイルス5型であることができる。欠失アデノウイルスは、E1発現HEK293(F. Graham et al J. Gen. Virol. 1977, 36, 59-72) またはPER細胞、特にPER.C6細胞株(F. Falloux et al Human Gene Therapy 1998, 9, 1909-1917)のいずれかにおいて増殖させることができる。あるいは、Ad5ベクターは、ウイルスの欠失E1ゲノム領域に対するトランス相補性を提供する任意の細胞株において増殖させることができる。ヒトアデノウイルスは、E3領域、特に約ヌクレオチド28592〜約ヌクレオチド30470において欠失させることもできる。さらにまた、E1領域の欠失は、E3領域の欠失と組み合わせて行うことができる(例えば、J. Shriver et al. Nature, 2002, 415, 331-335, F. Graham et al Methods in Molecular Biology Vol .7: Gene Transfer and Expression Protocols Edited by E. Murray, The Human Press Inc, 1991, p 109-128; Y. Ilan et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1997, 94, 2587-2592; 米国特許第6,133,028号; 米国特許第6,692,956号; S. Tripathy et al Proc. Natl. Acad. Sci. 1994, 91, 11557-11561; B. Tapnell Adv. Drug Deliv. Rev.1993, 12, 185-199;X. Danthinne et al Gene Thrapy 2000, 7, 1707-1714; K. Berkner Bio Techniques 1988, 6, 616-629; K. Berkner et al Nucl. Acid Res. 1983, 11, 6003-6020; C. Chavier et al J. Virol. 1996, 70, 4805-4810 を参照のこと)。挿入部位は、最終的に、E1および/またはE3領域の部分的または完全な欠失後に、E1および/またはE3遺伝子座(領域)であることができる。好都合には、ポリヌクレオチドは、真核細胞内で機能するプロモーター、例えば強力なプロモーター、好ましくはサイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV-IEプロモーター)、特にM. Boshart et al Cell 1985, 41, 521-530 における約ヌクレオチド-734〜約ヌクレオチド+7のエンハンサー/プロモーター領域またはPROMEGA社のpCIベクターのエンハンサー/プロモーター領域の制御下に挿入される。CMV-IEプロモーターは、好都合には、マウスまたはヒト由来である。伸長因子1αのプロモーターもまた使用できる。プラスミドベクターに関する強力なプロモーターもまた、本明細書で説明されている。一実施形態において、スプライシング配列は、エンハンサー/プロモーター領域の下流にあることができる。例えば、CMV-IE遺伝子から単離された第1イントロン(R. Stenberg et al J. Virol. 1984, 49, 190)、ウサギまたはヒトβ-グロビン遺伝子から単離されたイントロン、特にβ-グロビン遺伝子からの第2イントロン、免疫グロブリン遺伝子から単離されたイントロン、SV40初期遺伝子からのスプライシング配列またはマウス免疫グロブリン受容体配列に融合させたヒトβ-グロビンドナー配列を含むPromega社からのpCIベクターから単離されたキメライントロン配列(Genbankアクセッション番号CVU47120における約ヌクレオチド890〜約ヌクレオチド1022)。発現されるポリヌクレオチドの下流に、ポリ(A)配列およびターミネーター配列、例えばウシ成長ホルモン遺伝子、特にGenbankアクセッション番号BOVBMP-7における約ヌクレオチド2339〜約ヌクレオチド2550、ウサギβ-グロビン遺伝子またはSV40後期遺伝子のポリアデニル化シグナルを挿入することができる。
【0098】
他の実施形態において、ウイルスベクターは、イヌアデノウイルス(CAV)、特にCAV-2(例えば L. Fischer et al. Vaccine, 2002, 20, 3485-3497; 米国特許第5,529,780号;米国特許第5,688,920号;国際公開第WO95/14102号参照)であることができる。CAVに関しては、挿入部位は、E3領域および/またはE4領域と右ITR領域との間に位置する領域にあることができる(米国特許第6,090,393号;米国特許第6,156,567号参照)。一実施形態において、ベクターはCAV-2であることができ、インサートは、サイトメガロウイルス前初期遺伝子プロモーター(CMV-IEプロモーター)などのプロモーターまたはヒトアデノウイルスベクターに関して既述のプロモーターの調節下にあるイヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7またはイヌ成熟BMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列であることができる。発現されるポリヌクレオチドの下流に、ポリ(A)配列およびターミネーター配列、例えばウシ成長ホルモン遺伝子またはウサギβ-グロビン遺伝子のポリアデニル化シグナルを挿入することができる。
【0099】
各ヒトアデノウイルスベクターは、プレプロBMP-7、プロBMP-7または成熟BMP-7ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに加えて、プロモーターに作動可能に連結されたまたはプロモーターの調節下にあるまたはプロモーターに依存する、好ましくはイヌ由来、ウマ由来、ネコ由来、ヒト由来のBMP-7ポリペプチド、バリアント、アナログまたはフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むことができる、またはそれを含むことができる、または本質的にそれからなることができる。
【0100】
本発明はまた、適切なもしくは適している条件下で、適切な宿主細胞において、in vivoで発現するベクターを含む医薬組成物に関する。医薬組成物は、薬学的または獣医学的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中に、場合によりBMP-7、IGF-1またはtPAシグナルペプチドに融合させたBMP-7ポリペプチドをコードする1以上のポリヌクレオチドを含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなり、それを発現する1以上のベクター、例えば、発現ベクター、例えばin vivo発現ベクターを含むことができるか、または本質的にそれからなることができるか、またはそれからなることができる。好都合には、ベクターは、ヒトアデノウイルスであることができ、薬学的または獣医学的に許容される担体、賦形剤またはビヒクル中に、場合によりBMP-7、IGF-1またはtPAシグナルペプチドに融合させたイヌBMP-7ポリペプチドまたはウマBMP-7ポリペプチドまたはネコBMP-7ポリペプチドまたはヒトBMP-7ポリペプチドをコードする少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むことができるか、または本質的にそれからなることができるか、またはそれからなることができ、それを発現する。従って、本発明の実施形態によれば、組成物中の他のベクター(単数または複数)は、イヌBMP-7ポリペプチドまたはウマBMP-7ポリペプチドまたはネコBMP-7ポリペプチドまたはヒトBMP-7ポリペプチド以外の1以上の他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードし、適切な環境下で発現するポリヌクレオチドを含むことができる。
【0101】
1以上のベクターを含む組成物は、イヌBMP-7ポリペプチドまたはウマBMP-7ポリペプチドまたはネコBMP-7ポリペプチドまたはヒトBMP-7ポリペプチドあるいはその融合タンパク質をコードし、好都合にはin vivoで発現するポリヌクレオチドを含むことができるか、または本質的にそれからなることができるか、またはそれからなることができる。
【0102】
有利な実施形態において、本発明は、BMP-7ポリペプチドの標的細胞への送達およびそこにおける発現のための製剤の治療的有効量の投与を提供することができる。一実施形態において、製剤は、BMP-7ポリペプチドを発現するポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび薬学的または獣医学的に許容される担体、ビヒクルまたは賦形剤を含む。有利な実施形態において、薬学的または獣医学的に許容される担体、ビヒクルまたは賦形剤は、トランスフェクションを促進することができる、および/またはベクターの保存を改善することができる。
【0103】
例えば、薬学的または獣医学的に許容される担体またはビヒクルまたは賦形剤は、水または0.9%NaCl(例えば、生理食塩水)溶液またはリン酸緩衝液であることができる。本発明の方法に使用できる他の薬学的または獣医学的に許容される担体またはビヒクルまたは賦形剤は、限定するものではないが、ポリ(L-グルタメート)またはポリビニルピロリドンを含む。Ad5ベクターに関しては、薬学的または獣医学的に許容される担体またはビヒクルまたは賦形剤は、10mMトリスHCl、1mM MgCl2、150mM NaCl、54mg/Lツイーン-80、1Mサッカロース(pH8.5)である。薬学的または獣医学的に許容される担体またはビヒクルまたは賦形剤は、ベクターの投与を容易にするか、発現レベルを増加させるか、または発現期間を増加させる任意の化合物または化合物の組み合わせであることができる。本明細書において、投与量および投与容量は、一般的な記載において説明されており、当業者は、過度の実験を要することなく、当該技術分野での知識と共に本開示を読むことにより決定することもできる。
【0104】
Ad5ウイルスベクターは、他の複製欠損型組換えアデノウイルスベクターと同様に、強い自然免疫および適応免疫反応を引き起こす傾向により限定を受ける。実際、宿主によるベクターに対する体液性免疫反応の発生は中和抗体をもたらし、反復投与の有効性を妨げることが示されている。
【0105】
Ad5ウイルスの表面へのポリエチレングリコールポリマー(PEG)の共有結合は、ベクター表面をマスキングにより中和抗体を回避する戦略である。Ad5のPEG化(PEGylation)は、ウイルスの感染性と適合し、中和抗体からウイルスをマスクするので、PEG化は、反復ベースでAd5ベクターを投与する能力を改善する。
【0106】
本発明の特定の実施形態において、Ad5ウイルスベクターがPEG化されている、すなわち、PEGポリマーがAd5ウイルスの表面に共有結合していることができる。
【0107】
このようなPEG化は、以下の段階を含む方法により行うことができる:
(1)Ad5の表面へのPEGの共有結合は、ウイルスのヘキソン、ファイバーおよびペントン基部のリジン残基のイプシロンアミノ末端と選択的に反応するが、粒子と感染単位の比率が100以下に保たれる活性化PEGであるトレシルモノメトキシポリエチレングリコール(TMPEG)を用いて達成できる。Delgado C. et al., Biotechnol. Appl. Biochem., 1990, 12(2):119-28 の手順に従って製造されたTMPEGは、Shearwater Polymers社(アラバマ州Hultsville)から商業的に入手できる。TMPEGの利点は、穏やかな生理的条件下でカップリングを行うことができるので、より強い生物活性をもたらすという事実に関連する。
(2)TMPEGでのPEG化の前に、ウイルス調製物(PBS5%ショ糖溶液)を、5%ショ糖含有130mMリン酸ナトリウム(pH7)で2倍に希釈し、ウイルスの最終濃度をおおよそ1x1012粒子/mlにする。
(3)ウイルスの感染性を最大限に維持するために、5%(w/v)のTMPEGを用い、PEG対ウイルス比5:1(モル:モル)を用いてPEG化を行う。PEGカップリング反応は、ロータリーミキサーを用い、室温で(通例23〜24℃)30分間行う。続いて、反応温度を4℃に低下させることにより、反応を停止させる。
(4)TMPEGでのPEG化レベルをあげるために、出発TMPEGを30分間10%(w/v)に増加させることができる。しかしながらこの手順は、pHの低下を伴い、これはウイルスおよびその反応のどちらにも有害である。pHの調節は重要であるため、pHの安定性を2時間にわたって提供し、従って10%TMPEGを用いるPEG化を可能にする130mMリン酸(pH7)中で反応を行うことができる。
(5)PEG化されたベクターは、続いて、CsCl勾配遠心分離またはPBS-ショ糖(5%)に対する透析により、未反応のPEGから分離される。
【0108】
特定の実施形態において、処置される関節内にin vivoで医薬組成物を直接に投与することができ、コードされた産物がベクターにより宿主の関節内で発現される。BMP-7ポリペプチド、好都合には、イヌBMP-7ポリペプチドまたはウマBMP-7ポリペプチドまたはネコBMP-7ポリペプチドまたはヒトBMP-7ポリペプチドをコードするベクターをin vivoで関節内に送達する方法を、本発明のBMP-7ポリペプチドをヒト、イヌ科、ウマ科またはネコ科に、特に男性、女性、小児、イヌ、雌犬、子犬、ウマ、雌馬、子馬、ネコまたは子猫に送達するために改変することができる。ヒトまたは獣医学の当業者は、本明細書記載のBMP-7をコードし発現するベクターの関節内in vivo送達を行うことができる。
【0109】
好都合には、本発明記載の医薬組成物および/または製剤は、本明細書で述べたように、治療反応を誘導するための1以上の発現ベクターの有効量を含むか、または本質的にそれからなるか、またはそれからなり、過度の実験を要することなく、本明細書に組み込まれた文献および当該技術分野の知識を含む本開示から有効量を決定できる。
【0110】
治療組成物および/または医薬組成物は、1回あたり、BMP-7ポリペプチドを発現する組換えヒトアデノウイルスを約107〜約1011、好都合には約108〜約1010、より好都合には約109〜約1010ウイルス粒子(VP)含む。治療組成物および/または医薬組成物がPEG化ヒトアデノウイルスベクター、特にPEG化hAd5ベクターをベースとする場合、上記の投与量範囲は依然として利用可能である。イヌアデノウイルスベクター、特にCAV-2ベクターをベースとする治療組成物および/または医薬組成物の場合は、投与量は、イヌBMP-7ポリペプチドを発現する組換えイヌアデノウイルス約105VP〜約109VP、好都合には約106〜約108、より好都合には約106〜約107VPであることができる。ウイルス粒子(VP)により発現されるアデノウイルスの力価は、Roitsch C. et al., J Chromatography, 2001, 752: 263-280 のパラグラフ2.3に記載されているHPLCおよびクロマトグラフィーを用いて測定することができる。
【0111】
アデノウイルスベクターをベースとする哺乳動物用組成物の投与容量、例えばイヌ用組成物の投与容量は、一般には約0.1〜約2.0ml、好ましくは約0.1〜約1.0ml、より好ましくは約0.5ml〜約1.0mlであることができる。
【0112】
本発明は、本発明により製造された治療用組成物の有効量の、哺乳動物への少なくとも1つの投与を考えることができる。哺乳動物は、雄、雌、妊娠雌であることができる。有利な実施形態において、哺乳動物はヒト、イヌ科またはウマ科またはネコ科であることができ、特に男性、女性、小児、イヌ、雌犬、子犬、ウマ、雌馬、子馬、ネコ、雌猫または子猫であることができる。
【0113】
本発明記載の治療用組成物は、シリンジおよび針により関節内投与できる。投与は、処置される関節の滑膜表層を突き通して滑液内に本発明記載の治療用組成物を注射することにより行うことができる。
【0114】
本発明の組成物の投与に関する本明細書の開示は例として提供されたものであって、本発明は、記載された具体例に限定されないことは、当業者には明らかであろう。本明細書の開示および当業者の知識から、過度の実験を要することなく、本発明の組成物の各投与のために使用される投与回数、投与経路および投与量を当業者は決定することができる。
【0115】
好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌBMP-7成熟ポリペプチド、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒト成熟BMP-7、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマBMP-7成熟ポリペプチド、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコ成熟BMP-7またはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。
【0116】
in vivoでBMP-7ポリペプチドを発現することができ、OAの治療を提供するベクターを含む本発明記載の医薬組成物は、少なくとも1つの活性非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)成分で同時に処置された哺乳動物被験者に投与することもできる。
【0117】
本発明はまた、変形性関節症を患っている哺乳動物被験者を治療する方法であって、薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクル、プロモーターに作動可能に連結されているBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えアデノウイルスベクターを含む組成物の治療的有効量を前記哺乳動物被験者の関節内に投与することを含み、少なくとも1つの活性NSAID成分で哺乳動物被験者が同時に処置され、BMP-7ポリペプチドが哺乳動物被験者においてin vivoで発現される前記方法を提供する。
【0118】
特定の実施形態において、活性NSAID成分は、BMP-7ポリペプチドを発現することができるベクターを含む医薬組成物のin vivoでの投与の約10日前から約10日後まで、処置される哺乳動物被験者に投与される。好ましくは、活性NSAID成分は、BMP-7ポリペプチドを発現することができるベクターを含む医薬組成物のin vivoでの投与の約5日前から約5日後まで投与される。最も好ましくは、活性NSAID成分は、BMP-7ポリペプチドを発現することができるベクターを含む医薬組成物のin vivoでの投与の約2日前から約2日後まで投与される。
【0119】
NSAIDは、通常の無毒の薬学的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含む投与単位製剤で、経口、局所、非経口、吸入スプレーまたは直腸内投与することができる。用語非経口は、本明細書において、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を含む。
【0120】
活性NSAID成分を含む医薬組成物は、経口投与に適した形態、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉剤もしくは顆粒、エマルジョン、硬もしくは軟カプセルまたはシロップもしくはエリキシル剤であることができる。経口投与を対象とした組成物は、医薬組成物の製造のための、当該技術分野で公知の任意の方法により製造でき、このような組成物は、薬学的に上質で味のよい製剤を提供するために、甘味剤、風味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1以上の薬剤を含むことができる。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性NSAID成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤、例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;顆粒化および崩壊剤、例えば、コーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチンまたはアカシアゴム、ならびに滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクであることができる。錠剤はコーティングされていないこともできるし、消化管における崩壊および吸収を遅延させ、それによって長期間にわたる持続作用を提供するために公知の技術でコーティングされていることもできる。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質を用いることができる。これらはまた、徐放性のための浸透圧性治療用錠剤を製造するために、米国特許第4,256,108号;第4,166,452号;および第4,265,874号に記載の技術によりコーティングされていることもできる。
【0121】
経口投与用製剤は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと活性成分が混合された硬ゼラチンカプセルとして提供されることもでき、水または混和性溶媒、例えばプロピレングリコール、PEGおよびエタノールまたは油性媒体、例えば落花生油、流動パラフィンもしくはオリーブ油と活性成分が混合された軟ゼラチンカプセルとして提供されることもできる。
【0122】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性NSAID材料を含む。このような賦形剤は縣濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガントガムおよびアカシアゴムであり;分散剤または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、例えばレシチン、または脂肪酸とアルキレンオキシドとの縮合物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、または長鎖脂肪族アルコールとエチレンオキシドとの縮合物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または脂肪酸由来の部分エステルを有するエチレンオキシドとヘキシトールとの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または脂肪酸由来の部分エステルを有するエチレンオキシドとヘキシトール無水物との縮合物、例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであることができる。水性懸濁液はまた、1以上の防腐剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチルまたはn-プロピル、1以上の着色剤、1以上の風味剤および1以上の甘味剤、例えばショ糖、サッカリンまたはアスパルテームを含むこともできる。
【0123】
活性NSAID成分を植物油、例えば、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油または鉱油、例えば流動パラフィンに懸濁することにより油性懸濁液を製剤化することができる。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含むことができる。味のよい経口製剤を提供するために、甘味剤、例えば上記のものおよび風味剤を添加することができる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を添加することにより保存することができる。
【0124】
水の添加による水性懸濁液の製造に適した分散性粉剤および顆粒は、分散剤または湿潤剤、縣濁化剤および1以上の防腐剤と混合した活性NSAID成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および縣濁化剤は、すでに上で述べたもので例示される。さらなる賦形剤、例えば、甘味剤、風味剤および着色剤を含ませることもできる。
【0125】
NSAIDは、水中油型エマルジョンの形態であることもできる。油相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィン、またはこれらの混合物であることができる。適切な乳化剤は、天然に存在するホスファチド、例えば大豆レシチン、脂肪酸およびヘキシトール無水物由来のエステルまたは部分エステル、例えば、モノオレイン酸ソルビタンならびに前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであることができる。エマルジョンは甘味剤および風味剤も含むことができる。
【0126】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはショ糖を用いて製剤化できる。このような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤および風味剤および着色剤も含むことができる。NSAID組成物は、滅菌注射用の水性または油性懸濁液の形態であることができる。この懸濁液は、上で述べた適切な分散剤または湿潤剤および縣濁化剤を用い、公知技術に従って製剤化できる。滅菌注射剤は、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒を用いた滅菌注射液または懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール溶液であることもできる。許容されるビヒクルおよび使用可能な溶媒には水、リンゲル液および生理食塩液がある。補助溶剤、例えばエタノール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールもまた使用できる。さらに、溶媒または縣濁化剤として滅菌固定油が常法に従って用いられる。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含む任意の無菌固定油を用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸もまた注射剤の製造に使用される。
【0127】
NSAID化合物は、薬物の直腸投与のための座剤の形態で投与されることもできる。これらの組成物は、常温では固体であるが、直腸温では液体である適切な非刺激性の賦形剤と薬物を混合することにより製造でき、従って、直腸で溶けて薬物を放出する。このような材料はカカオバターおよびポリエチレングリコールである。
【0128】
局所投与のために、NSAID化合物を含むクリーム、軟膏、ゲル、溶液または懸濁液などが用いられる。局所製剤は、一般に、医薬担体、補助溶剤、乳化剤、透過促進剤、防腐剤系および皮膚軟化薬で構成されることができる。
【0129】
上記の疾患の治療において、1日当たり約0.01mg〜約140mg/体重(kg)あるいは患者1人当たり1日当たり約0.5mg〜約7gのレベルの投与量レベルが有用である。例えば、体重1kgあたり1日当たり化合物約0.01〜50mgあるいは患者1人当たり1日当たり約0.5mg〜約3.5gの投与により、炎症を効果的に治療できる。
【0130】
単回剤形を製造するために担体材料と混合することができる活性NSAID成分の量は、治療受容者および特定の投与方法に従って変化する。例えば、ヒトの経口投与を対象とした製剤は、全組成物の約5〜約95パーセントの間で変化しうる適切かつ便利な量の担体材料と混合された活性成分0.5mg〜5gを含むことができる。投与単位剤型は、一般に、活性成分約1mg〜約500mgを含み、一般的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、または1000mgを含む。
【0131】
しかしながら、特定の患者の特定の用量レベルは、年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与回数、投与経路、排泄率、薬物の組み合わせおよび変形性関節炎の重症度を含む種々の要素によって決まることは明らかであろう。
【0132】
特定の実施形態において、NSAIDはCOX-2(シクロオキシゲナーゼ-2)阻害薬であることができる。COX-2阻害薬は、既述のように、OAの治療および/または予防のための本発明記載の治療用組成物の関節内注射により治療される哺乳動物被験者に同時投与されることができる。他のNSAIDと同様に、COX-2阻害薬は、炎症、鎮痛および発熱などのシクロオキシゲナーゼ媒介疾患の治療に有効である。これらの化合物は、癌、関節リウマチおよび変形性関節症の治療に特に有効である。これらの化合物は、消化管および腎血流量の完全性に影響を与えないという利点を有する。これらの化合物の例は、(メチルスルホニル)フェニル-2-5(H)-フラノン誘導体を含む。これらの誘導体は、例えば、US-B1-5.981.576に記載されている。好ましくは、COX-2阻害薬は、取得特許US-B1-6.169.188に記載されている式Iの化合物の中から選択される。特に好ましいCOX-2阻害薬は、3-(シクロプロピルメトキシ)-5,5-ジメチル-4-(4-メチルスルホニル)フェニル)-5H-フラン-2-オンor3-(シクロプロピルエトキシ)-5,5-ジメチル-4-(4-メチルスルホニル)フェニル)-5H-フラン-2-オンまたはこれらの化合物の薬学的に許容される塩もしくは水和物を含む。特に好ましいCox-2阻害薬は、3-(シクロプロピルメトキシ)-4-[4(メチルスルホニル)フェニル]-5,5-ジメチル-5H-フラン-2-オンの多形体Bである。
【0133】
ウマに関しては、COX-2阻害薬の投与量は、経口または非経口投与(特に静脈内、皮下または筋肉内投与)で、12〜24時間当たり約0.05〜約0.5mg/kgであり、より好ましくは24時間当たり約0.1mg/kgであることができる。好ましくは、COX-2阻害薬は、経口液体懸濁液もしくは溶液、粘性液体、ゲル、ペーストまたは静脈内/皮下/筋肉内製剤である。
【0134】
イヌに関しては、COX-2阻害薬の投与量は、12〜24時間当たり約2〜約10mg/kgであり、好ましくは24時間当たり約5〜約10mg/kgであり、より好ましくは24時間当たり約5mg/kgであることができる。好ましくは、COX-2阻害薬は、経口錠剤(古典的硬質錠剤、咀嚼錠もしくは軟質咀嚼錠)、経口液体懸濁液もしくは溶液または静脈内/皮下/筋肉内製剤である。
【0135】
COX-2阻害薬を含むペーストのいくらかの例が、特許出願EP-A1-1.688.149、特に表10〜12に記載されている。
【0136】
本発明は、さらに、in vivoでBMP-7ポリペプチドおよび少なくとも1つのインターロイキン-10(IL10)を発現し、それによって、滑液BMP-7濃度およびIL10濃度の持続的増加を誘導する方法および組成物を提供することができるベクターを含む医薬組成物を用いるOAの治療法を提供する。
【0137】
本発明は、さらに、変形性関節症を患っている哺乳動物被験者を治療する方法であって、薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクル、プロモーターに作動可能に連結されているBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えアデノウイルスベクターおよびIL10ポリペプチドに作動可能に連結されているプロモーターをコードする核酸配列を含む組換えウイルスベクターを含む組成物の治療的有効量を前記哺乳動物被験者の関節内に投与することを含み、BMP-7ポリペプチドおよびIL10ポリペプチドが哺乳動物被験者においてin vivoで発現される前記方法を提供する。
【0138】
他の特定の実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌBMP-7成熟ポリペプチド、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒト成熟BMP-7、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマBMP-7成熟ポリペプチド、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコ成熟BMP-7、またはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターおよびインターロイキン-10(IL10)、特にウマIL10、イヌIL10、ネコIL10、ヒトIL10ウイルスIL10をコードし発現することができる他のウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターおよびイヌIL10をコードし発現することができる他のウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターおよびウマIL10をコードし発現することができる他のウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターおよびネコIL10をコードし発現することができる他のウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒトBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントをコードし発現することができるウイルスベクターおよびヒトIL10をコードし発現することができる他のウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。好ましくは、“他のウイルスベクター”はアデノウイルスベクターであり、特にヒトアデノウイルスまたはイヌアデノウイルスであり、特にhAd5ベクターまたはCAV2ベクターである。このようなベクターの組み合わせが用いられる場合、治療組成物および/または医薬組成物が、1回あたり、BMP-7ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約107〜約1011VPおよびIL10ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約107〜約1011VPを含むという条件下で、好都合には、BMP-7ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約108〜約1010VPおよびIL10ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約108〜約1010VPを含むという条件下で、より好都合には、BMP-7ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約109〜約1010VPおよびIL10ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクター約109〜約1010VPを含むという条件下で、BMP-7ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクターのみを含む組成物に関して既述したように投与を行う。イヌアデノウイルスベクター、特にCAV-2ベクターをベースとする治療組成物および/または医薬組成物の場合は、投与量は組換えイヌアデノウイルス約105VP〜約109VPであることができ、好都合にはイヌアデノウイルス約106〜約108であることができ、より好都合にはイヌアデノウイルス約106〜約107VPであることができる。
【0139】
本発明は、さらに、変形性関節症を患っている哺乳動物被験者を治療する方法であって、薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクル、プロモーターに作動可能に連結されているBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えアデノウイルスベクターおよび第2プロモーターに作動可能に連結されているIL10ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組成物の治療的有効量を前記哺乳動物被験者の関節内に投与することを含み、BMP-7ポリペプチドおよびIL10ポリペプチドが哺乳動物被験者においてin vivoで発現される前記方法を提供する。
【0140】
他の特定の実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌBMP-7成熟ポリペプチド、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒト成熟BMP-7、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマBMP-7成熟ポリペプチド、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコ成熟BMP-7またはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントおよびインターロイキン-10(IL10)、特にウマIL10、イヌIL10、ネコIL10、ヒトIL10を共にコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、イヌプレプロBMP-7、イヌプロBMP-7、イヌBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントおよびイヌIL10を共にコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ウマプレプロBMP-7、ウマプロBMP-7、ウマBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントおよびウマIL10を共にコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ネコプレプロBMP-7、ネコプロBMP-7、ネコBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントおよびネコIL10を共にコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。他の好ましい実施形態において、本発明は、関節内注射によるOAの治療および/または予防のための、ヒトプレプロBMP-7、ヒトプロBMP-7、ヒトBMP-7成熟ポリペプチドまたはそのバリアント、誘導体もしくはフラグメントおよびヒトIL10を共にコードし発現することができるウイルスベクターを含む組成物およびその使用に関する。このようなインサート2つのベクターが用いられる場合、BMP-7ポリペプチドを発現するアデノウイルスベクターのみを含む組成物に関して既述したように投与を行う。
【0141】
IL10をコードする核酸配列は、インターネットのデータベース、特にGenbankデータベースのアクセッション番号U38200において見られ、ウマIL10については領域[1-537]、XM_850467.1、イヌIL10については領域[2-541]、NM_001009209.1、ネコIL10については領域[1-537]、NM_000572.2、ヒトIL10については領域[60-596]であり、ウイルスIL10についてはAF182315において見られる。
【0142】
BMP-7に関して定義したように、IL10の機能的等価物、IL10のバリアント、IL10の誘導体などは本発明に含まれる。IL10の機能的等価物は、IL10の生物活性および特性によって定義され、その活性および特性は、特に、Schlaak JF et al., J Immunol Methods, 1994, 168(1): 49-54 に記載されている。
【0143】
特定の実施形態において、本発明は、配列番号60と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ウマIL10ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0144】
他の特定の実施形態において、本発明は、配列番号62と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、イヌIL10ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0145】
他の特定の実施形態において、本発明は、配列番号64と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ネコIL10ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0146】
他の特定の実施形態において、本発明は、配列番号66と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の相同性を有するかまたは一致する、ヒトIL10ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0147】
他の特定の実施形態において、本発明は、配列番号68と少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%相同性を有するかまたは一致する、ウイルスIL10ポリペプチドの機能的等価物を含むことができる。
【0148】
IL10の発現のためのプロモーターは、BMP-7発現に関して前述したプロモーターと同じである。
【0149】
ここで、限定するものではない以下の実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0150】
(実施例1)
ネコBMP-7遺伝子の作成
ネコ腎細胞からの精製RNAを用いて、RT-PCRにより、BMP-7 cDNAを得た。製造業者のプロトコルに従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen社、フランス・Courtaboeuf)を用い、子馬の腎臓から得たネコ腎細胞から全RNAを調製した。
【0151】
製造業者のプロトコルに従って、One Step Superscript III Kit(Invitrogen社、米国ニュージャージ州、Ref:12574.035)を用いて逆転写酵素(RT)段階を行った。次いで、GenBankで入手可能な配列(ヒトBMP-7:アクセッション番号AL122058、マウスBMP-7:アクセッション番号NM_007557およびイヌBMP-7:アクセッション番号XM_862341)に従って、2対のプライマーPB1053-PB1063およびPB1060-PB1062を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりネコBMP-7遺伝子に対応するcDNAフラグメントを増幅した。
PB1053(配列番号20)(31mer):
5’GGATCCCTAGTGGCAGCCACAGGCTCGGACG3’
PB1063(配列番号21)(24mer):
5’GCCACCAGCAACCACTGGGTGGTC3’
PB1060(配列番号22)(24mer):
5’TTCAGCCTGGACAACGAGGTGCAC3’
PB1062(配列番号23)(20mer):
5’TGGTTGGTGGCGTTCATGTA3’
【表1】

【0152】
転写産物の5’末端に追加のAを組み込むことを可能にするために、Taq Polymerase(Life Technologies社、フランス・セルジ・ポントワーズ)を用いて最終サイクルを行った。
【0153】
UltraClean(登録商標)15DNA精製キット(MoBio Laboratories社、米国)を用いて、アガロースゲルからPCRフラグメント(698塩基対(bp)-プライマーPB1053-PB1063での増幅)を精製し、pCR2.1ベクター(TAクローニングキット、Invitrogen社、ref:45-0641)にクローニングしてプラスミドpPB759(4546bp)を作成した。
【0154】
UltraClean(登録商標)15DNA精製キット(MoBio Laboratories社、米国)を用いて、アガロースゲルからPCRフラグメント(1036bpプライマーPB1060-PB1062での増幅)を精製し、pCR2.1ベクター(TAクローニングキット、Invitrogen社ref:45-0641)にクローニングしてプラスミドpPB761(4968bp)を作成した。
【0155】
プラスミドpPB759をBstEIIおよびNotIで消化してBstEII-NotIフラグメント(394bp)を得た。プラスミドpPB761をBstEIIおよびNotIで消化してBstEII-NotIフラグメント(4749bp)を得た。2つのフラグメントを連結してプラスミドpPB758(5143bp)を作成した。
【0156】
pPB758の同定は、BamHIおよびPstI消化により確認した。
【0157】
ネコBMP-7の5’隣接領域のクローニングは、異なる種に関するBMP-7遺伝子の下流のイントロン配列の強い相同性に基づく。
【0158】
イントロンの配列に位置する順方向プライマーPB1088ならびに2つの異なる逆方向プライマーPB1089およびPB1090を用いるセミネステッドPCRを行った。
【0159】
第1PCRは、プライマーPB1088-PB1089および、鋳型としてのCRFK細胞(Crandell-Ressネコ腎細胞)からのDNAゲノム抽出物およびPhusion(登録商標)High Fidelity DNA Polymerase(Finnzymes社、ref:F-518)を用いて行った。
【表2】

【0160】
鋳型として100倍希釈した第1PCR反応物を用い、プライマーPB1088およびプライマーPB1090を用いて第2PCR(ネステッドPCR)を行った。第1反応と同一条件下で反応を進行させた。
PB1088(配列番号24)(23mer):
5’GGGTAGCGCGTAGAGCCGGCGCG3’。
PB1089(配列番号25)(22mer):
5’CGTCGGTGAGGAAGCGGCTCTA3’。
PB1090(配列番号26)(22mer):
5’GGATCTCGCGCTGCATCTCCCG3’。
【0161】
UltraClean(登録商標)15DNA精製キット(MoBio Laboratories社、米国)を用いて、アガロースゲルからPCRフラグメント(190bpプライマーPB1088-PB1090で増幅)を精製し、pCR2.1ベクター(TAクローニングキット、Invitrogen社ref:45-0641)にクローニングしてプラスミドpPB770(4129bp)を作成した。
【0162】
ネコBMP-7のオープンリーディングフレーム(ORF)を完全に配列決定し、そのヌクレオチド配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号17および配列番号19に示した。
【0163】
(実施例2)
マウスBMP-7インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
マウスBMP-7の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号NM_007557として入手可能である。
【0164】
マウスBMP7のORFは、1293bpのヌクレオチド配列(配列番号27)からなり、430アミノ酸のポリペプチド(配列番号28)をコードする。
【0165】
アデノウイルスベクターを作成するために、FseIおよびAscI制限部位をそれぞれ5'および3'末端に加えるプライマーを用いて、PCRにより、マウスBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列配列番号27を増幅した。PCR反応において、完全長BMP-7 cDNAを含む鋳型と共にPCRプライマーを用いた。次のとおりである:95℃で5分間のインキュベーション;続いて、95℃で1分間、58℃で1分間および72で1.5分間を15サイクル;続いて、72℃で7分間;続いて、4℃でソーク(soak)。反応生成物をTAE緩衝液に溶解して1.2%(低融点)(SeaPlaque GTG(登録商標);FMC社、米国メイン州ロックランド)ゲルに添着した。BMP-7 PCR産物をゲルから切除し、シリカゲル膜を含有するスピンカラム(QIAquick(登録商標)ゲル抽出キット;Qiagen社、米国カリフォルニア州バレンシア)を用い、キットの使用説明書に従って精製した。次いでBMP-7産物をFseIおよびAscI酵素で消化した。1%低融点アガロースゲルでcDNAを単離し、次いでゲルから切除した。ゲルスライスを70℃で溶解し、等容量のトリス緩衝フェノールで2回抽出し、EtOHで沈殿させた。DNAをH2O 10μlに再懸濁した。
【0166】
BMP-7 cDNAを、pAdTrack CMVプラスミド(He et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1998, 95: 2509-2514)のFseI-AscI部位にクローニングした。この構築物は、さらに緑色蛍光タンパク質(GFP)マーカー遺伝子、CMVプロモーターおよびSV40ポリアデニル化シグナルを含有していた。プラスミドを線状化するために、プラスミドおおよそ5μgをPmeI酵素で消化した。スーパーコイルpAdEasy(Heら、前出)200ngと共に線状化されたプラスミドおおよそ1μgを用いて、BJ5183細菌細胞に同時形質転換を行った。2.5kV、200オームおよび25μFでBio-Rad Gene Pulserを用いて同時形質転換を行った。25μg/mlカナマイシンを含む4LBプレートに全同時形質転換物をプレーティングした。最小のコロニーを拾い、LB/カナマイシンに広げ、標準的なDNAミニプレップ法で組換えアデノウイルスDNAを同定した。FseIおよびAscIを用いる組換えアデノウイルスDNAの消化によりBMP-7DNAの存在を確認した。組換えアデノウイルスミニプレップDNAを大腸菌(E.coli)DH10Bコンピテント細胞(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD USA)にトランスフォームし、それからDNAを調製した。
【0167】
PacI 20-30Uを含む反応容量100μl中、37℃で3時間、組換えアデノウイルスDNAおおよそ5μgをPacI酵素(New England Biolabs社)で消化した。消化したDNAを等容量のフェノール/クロロホルムで2回抽出し、エタノールで沈殿させた。DNAペレットを蒸留水10μlに再懸濁した。前日に播種し、60〜70%コンフルエンスに達したT25フラスコのQBI-293A細胞(Quantum Biotechnologies社、カナダ・モントリオール)を、PacIで消化したDNAでトランスフェクトした。PacIで消化したDNAを、滅菌HBS(150mM NaCl、20mM HEPES)で全量50μlに希釈した。別のチューブにおいて、1mg/ml N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチル-アンモニウムメチルスルファート(DOTAP;ベーリンガーマンハイム)20μlをHBSで希釈して全量100μlにした。DOTAPにDNAを加え、上下にピペッティングして穏やかに混合し、室温で15分間放置した。293A細胞から培地を除去し、1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies社)、0.1mM MEM非必須アミノ酸(Life Technologies社)および25mM HEPES緩衝液(Life Technologies社)を含む無血清MEM-α(Life Technologies社、米国メリーランド州ゲーサーズバーグ)5mlで洗浄した。無血清MEM 5mlを加え、細胞を37℃に維持した。フラスコにDNA/脂質混合物を滴下し、穏やかに混合し、37℃で4時間インキュベートした。4時間後、DNA/脂質混合物を含む培地を吸引で除き、5%ウシ胎児血清を含む完全MEM 5mlと交換した。GFP発現および増殖巣(ウイルスのプラーク)の形成に関してトランスフェクトされた細胞をモニターした。
【0168】
組換えアデノウイルスDNAでの293A細胞のトランスフェクション7日後、GFPを発現する細胞は増殖巣を形成し始める。細胞を採取するためのセルスクレイパーを用いて粗ウイルス溶解物を採取した。溶解物を50mlコニカルチューブに移した。細胞からウイルス粒子の大部分を放出させるために、ドライアイス/エタノール槽および37°C水槽で凍結融解サイクルを3回行った。
【0169】
感染の20時間前に、ほぼ集密的な(80〜90%)293A細胞の10cmプレート10枚をセットアップした。粗溶解物を増幅して(第1増幅)、BMP-7組換えAd5ウイルス(rAd5ウイルス)溶解物の作業ストックを得た。粗rAd5ウイルス溶解物200mlを各10cmプレートに加え、プレートを48〜72時間モニターして、白色光顕微鏡下で細胞変性効果(CPE)を調べ、蛍光顕微鏡下でGFPの発現を調べた。全ての細胞がCPEを示したとき、この第1ストック溶解物を採取し、前述のように凍結融解サイクルを行った。
【0170】
80〜90%集密的な293A細胞の15cm組織培養ディッシュ20枚から、BMP-7rAd5ウイルスの第2(2nd)増幅を得た。5%MEM培地を20mlを残して除去し、各ディッシュに第1増幅rAd5ウイルス溶解物300〜500mlを播種した。48時間後、ウイルス産生細胞を溶解し、250mlポリプロピレン遠心ボトルに溶解物を採取し、rAd5ウイルスを精製した。
【0171】
全細胞を溶解するために、粗溶解物のボトルにNP-40界面活性剤を最終濃度0.5%になるまで加えた。ボトルを回転プラットフォームに10分間置き、できるだけすばやく回転させた。20,000X Gで15分間、遠心分離により細胞の破片をペレット化した。上清を250mlポリカーボネイト遠心ボトルに移し、0.5倍量の20%PEG8000/2.5M NaCl溶液を加えた。氷上でボトルを終夜振盪した。ボトルを20,000X Gで15分間遠心分離し、上清を漂白液中に捨てた。スピンマークの両側のボトル壁に沿った2本の垂直線に白色沈殿物(沈殿したウイルス/PEG)が形成された。滅菌セルスクレイパーを用いて、2つのボトルからの沈殿物をPBS 2.5mlに再懸濁した。ウイルス溶液を2mlマイクロ遠心チューブに入れ、微量遠心機を用いて14,000X Gで10分間遠心分離し、細胞破片をさらに除去した。2mlマイクロ遠心チューブからの上清を15mlポリプロピレン・スナップキャップチューブに移し、CsClで密度1.34g/mlに調節した。ウイルス溶液の容量を量り、0.55g/mlのCsClを添加した。CsClを溶解し、この溶液1mlの重さを量った。溶液をポリカーボネイト製厚肉3.2ml遠心管(Beckman社)に移し、25℃で3〜4時間、348,000X Gで遠心分離した。ウイルスが白色バンドを形成した。広い口径のピペットチップを用い、ウイルスのバンドを採取した。
【0172】
グラジエントから回収されたウイルスは大量のCsClを含んでいたので、細胞に用いるにはそれを取り除く必要があった。ウイルス調製物を脱塩するために、Sephadex(登録商標)G-25M(Pharmacia社)でプレパックされたPharmacia PD-10カラムを用いた。PBS20mlでカラムを平衡化させた。ウイルスをカラムにのせ、それに流入させた。PBS 5mlをカラムに加え、8〜10滴の分画を採取した。分光光度計により、1:50希釈の各分画の260nmでの吸光度を測定し、明確な吸光度ピークを特定した。ピーク分画をプールし、1:25希釈の吸光度(OD)を測定した。式(260nmでのOD)(25)(1.1x1012)=ビリオン/mlを用い、ODをウイルス濃度に変換した。
【0173】
ウイルスを保存するために、最終濃度15%になるまで精製ウイルスにグリセロールを添加し、穏やかに混合し、アリコートにして-80℃で保存した。
【0174】
(実施例3)
ヒトBMP-7インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ヒトBMP-7の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号AL122058として入手可能である。
【0175】
コドン最適化ヒトBMP-7オープンリーディングフレーム(“ORF”)は1296bp(配列番号14)からなり、431アミノ酸のポリペプチド(配列番号15)をコードする。
【0176】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、出発物質として、ヒトBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列配列番号14を用いる。
【0177】
実施例2に記載されているようにして、インサートとしてヒトBMP-7のコドン最適化ヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0178】
(実施例4)
イヌBMP-7インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
イヌBMP-7の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号XM_862341として入手可能である。
【0179】
コドン最適化イヌBMP-7オープンリーディングフレーム(“ORF”)は1296bp(配列番号2)からなり、431アミノ酸のポリペプチド(配列番号3)をコードする。
【0180】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、イヌBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列配列番号2を出発物質として用いる。
【0181】
実施例2に記載されているようにして、インサートとしてイヌBMP-7のコドン最適化ヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0182】
(実施例5)
ネコBMP-7インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ネコBMP-7の核酸およびアミノ酸配列は、実施例1に記載されている物である。
【0183】
コドン最適化ネコBMP-7オープンリーディングフレーム(“ORF”)は1296bp(配列番号18)からなり、431アミノ酸のポリペプチド(配列番号19)をコードする。
【0184】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ネコBMP-7ポリペプチドのコドン最適化ヌクレオチド配列配列番号18を出発物質として用いる(実施例1のpPB770プラスミド)。
【0185】
実施例2に記載されているようにして、インサートとしてネコBMP-7のコドン最適化ヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0186】
(実施例6)
ウマBMP-7インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ウマBMP-7の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号XM_001489796として入手可能である。
【0187】
ウマBMP-7オープンリーディングフレーム(“ORF”)は1296bp(配列番号10)からなり、431アミノ酸のポリペプチド(配列番号16)をコードする。
【0188】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ウマBMP-7ポリペプチドのヌクレオチド配列配列番号10を出発物質として用いた。
【0189】
実施例2に記載されているようにして、インサートとしてウマBMP-7のヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0190】
(実施例7)
イヌBMP-7インサートを有するCAV-2アデノウイルスベクターの構築
7.5%ウシ胎児血清、ピルビン酸ナトリウム(最終1mM)、グルタミン(最終2mM)、ペニシリン(50U/ml)、ストレプトマイシン(50mg/ml)および非必須アミノ酸(最終0.1mM)を添加したMEMに、Madin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞浮遊液を播種する。集密的細胞をCAV2ワクチン株(US-A-6.090.393;US-A-6.156.567)の連続希釈液で感染させ、0.6%アガロースオーバーレイ下で培養する。CAV2に、数ラウンドのプラーク精製を行う。
【0191】
全E3領域を含むDNAフラグメントを同定するために、精製CAV2 DNAアリコートをBamHI、BglI、HindII、HindIIIおよびPstIで消化し、Sambrook J. et al., Molecular cloning: a laboratory manual, 2nd edition Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Laboratory, 1989 に記載されているように、サザンブロット法により分析する。CAV2PVIII配列の3’末端またはCAV2ファイバー遺伝子の5’末端のぞれぞれに特異的な分子プローブを作成するために、プライマー対LF189配列番号29(21mer)5'-TCAGTCATAGCCATCGACAGA-3'/LF190配列番号30(21mer)(5'-GTGCTGGCTGGCACGGGCATT-3')およびLF191配列番号31(21mer)(5'-ATGTCCACCAAAGTCCCCTCT-3')/LF192配列番号32(21mer)(5'-CCCGGGGCGTCGTATGGATAT-3')を設計する。PVIIIおよびファイバープローブの両方により認識される、最大の単離された制限フラグメントに対応するHindIIIフラグメントA(4.0Kbp)を、ベクターpBluescript SK+(Stratagene社)にクローニングし、pLF027を作成する。両鎖について、全pLF027 E3インサートの配列決定を行う。
【0192】
次のクローニング戦略を容易にするために、2ラウンドのPCR増幅手順により、BglIIおよびMluIの唯一の制限部位を含むDNAリンカー(配列番号33)(24mer)5'-GATACGCGTTCCATTAGCAGATCT-3'をCAV2 E3領域に導入する。pLF027 DNAを鋳型として用い、以下のプライマー対[LF327配列番号34(24mer)5'-GGACACCTTTCTGATCAGTTCATT-3'/LF324配列番号35(45mer)5'-GATACGCGTTCCATTAGCAGATCTTTGAGGGGCCTGGAAATAGGC-3']および[LF326配列番号36(24mer)5'-GGTTGTGTGGAAGACCCGGGGGCG-3'/LF325配列番号37(45mer)5'-AGATCTGCTAATGGAACGCGTATCGCTGCCCCCACAGTACAGCAA-3']を用いて1回めのPCR増幅を行い、部分的にオーバーラップする2つのDNAフラグメント、それぞれ838bpおよび956bpを作成する。PCR増幅の第2ラウンドは、部分的にオーバーラップする2つの精製DNAフラグメントおよび2つの外部プライマーLF327およびLF326の存在下で行う。精製890bp PstI/AatIIフラグメントとpLF027の6069bp PstI/AatII DNAフラグメントとを連結してpLF047Aを作成する。CAV2 E3領域の一部を欠失させるために、pLF047A MluI部位の下流(3)'に428bp欠失を操作する。pLF027鋳型を用い、プライマー対LF361配列番号38(38mer)5'-CTAGTCATCTTAACGCGTGTCCTCAACATCACCCGCGA-3'/LF334配列番号39(21mer)5'-CTTGCTTGTTATTAAAAAAAG-3'を用いて、PCRにより537bp DNAフラグメントを作成する。精製551bp MluI/AatI DNAフラグメントをpLF047Aの6944bp MluI/AatII DNAフラグメントと連結し、pLF086を作成する。E3領域内により大きな欠失を操作するために、鋳型としてpLF027 DNAを用い、プライマーLF437配列番号40(33mer)5'-ATCTTAACGCGTCCCTCAGCCTTCTAATGGGAC-3'およびLF334を用いてPCR増幅を行う。287bp MluI/SmaI増幅DNAフラグメントとpLF086の6079bp MluI/SmaI DNAフラグメントとを連結し、pLF095を作成する。
【0193】
発現カセットのサイズをできるだけ小さくする目的で、鋳型としてhCMV DNAを用い、プライマーLF172配列番号41(31mer)5'-ATCGTAAAGCTTAATGTCGTAATAACCCCGC-3'およびLF159配列番号42(32mer)5'-TCTACTGCAGCCGGTGTCTTCTATGGAGGTCA-3'を用いるPCRにより、短縮型hCMV IEプロモーターを作成する。精製HindIII/PstI 166bp DNAフラグメントを、pCAT basicベクター(Promega社)の対応する部位にクローニングしてpLF022を作成する。ポリアデニル化カセットのサイズをさらに小さくするために、プライマーLF377配列番号43(24mer)5'-TCTTCGCCCCCGTTTTCACCATGG-3'およびLF378配列番号44(34mer)5'-ATCACGCCGCGGCTTAAAAAAATTACGCCCCGCC-3'を用い、鋳型としてpLF022 DNAを用いるPCRにより、170bp DNAフラグメントを増幅する。精製DNAフラグメントをクレノウ処理し、NcoIで消化し、pLF022の3655bp NcoI/BsaBI DNAフラグメントと連結してpLF062を作成する。CAV2複製開始後の組換え抗原の発現を改善するために、pLF062におけるhCMV IEプロモーターの下流にヒトアデノウイルス2(hAd2)トリパータイトリーダー(TPL)を導入する。オリゴヌクレオチドSPH6Etr1配列番号45(71mer)5'-AATTCGGTACCAAGCTTCTTTATTCTATACTTAAAAAGTGAAAATAAATACAAAGGTTCTTGACTCTCTTC-3'、SPH6Etr2配列番号46(70mer)5'-CGCATCGCTGTCTGCGAGGGCCAGCTGTTGGGCTCGCGGTTGAGGACAAACTCTTCGCGGTCTTTCCAGT-3'、SPH6Etr3配列番号47(70mer)5'-ACTCTTGGATCGGAAACCCGTCGGCCTCCGAACGTACTCCGCCACCGAGGGACCTGAGCGAGTCCGCATC-3'、SPH6Etr4配列番号48(60mer)5'-GACCGGATCGGAAAACCTCTCGAGAAAGGCGTCTAACCAGTCACAGTCGCAAGCCCGGGT-3'、SPH6Etr5配列番号49(51mer)5'-CTTTGTATTTATTTTCACTTTTTAAGTATAGAATAAAGAAGCTTGGTACCG-3'、SPH6Etr6配列番号50(72mer)5'-GAAGAGTTTGTCCTCAACCGCGAGCCCAACAGCTGGCCCTCGCAGACAGCGATGCGGAAGAGAGTCAAGAAC-3'、SPH6Etr7配列番号51(73mer)5'-GCTCAGGTCCCTCGGTGGCGGAGTACGTTCGGAGGCCGACGGGTTTCCGATCCAAGAGTACTGGAAAGACCGC-3'およびSPH6Etr8配列番号52(75mer)5'-CTAGACCCGGGCTTGCGACTGTGACTGGTTAGACGCCTTTCTCGAGAGGTTTTCCGATCCGGTCGATGCGGACTC-3'をキナーゼ処理し、アニーリングさせ、271bp産物をゲル精製した。プライマーLF394配列番号53(36mer)5'-ATCGTCCTGCAGACTCTCTTCCGCATCGCTGTCTGC-3'およびLF395配列番号54(29mer)5'-GCTCTAGACTTGCGACTGTGACTGGTTAG-3'を用い、鋳型として前述のゲル精製しアニーリングさせたオリゴヌクレオチドを用いるPCRにより、PstIおよびXbaI制限部位に隣接する全hAd2 TPLを含む220bp DNAフラグメントを作成し、続いて3800bp PstI/XbaI pLF062フラグメントと連結させてpLF066を作成する。発現カセットのサイズをさらに小さくするために、pLF066の3936bp SacI/PstIフラグメントと、アニーリングさせオリゴヌクレオチドLF397配列番号55(20mer)5'-CGTTTAGTGAACCGTCTGCA-3'およびLF398配列番号56(20mer)5'-GACGGTTCACTAAACGAGCT-3'とを連結して、hCMV IEプロモーターの5'UTRがhAd2TPLに置換されたpLF069を作成する。
【0194】
イヌBMP-7の発現増加のために、Genbank配列P34819に基づいてコドン最適化cDNA配列を化学合成し、続いてpLF069にサブクローニングしてpLF1000を作成する。pLF1000プラスミドは、pLF069バックボーン中に右向きにコドン最適化イヌBMP-7 cDNAを含む。ポリアデニル化カセットのサイズをさらに小さくするために、プライマーM13R配列番号57(18mer)5'-GTAAAAACGACGGCCAGT-3'およびLF409配列番号58(33mer)5'-ATCGTCCCGCGGAATTGTTGTTGTTAACTTGTT-3'を用い、鋳型としてpCAT Basic DNAを用いて、160bp DNAフラグメントを増幅する。増幅した145bp KspI/BamHI DNAフラグメントとpLF1000の5002bp KspI/BamHI DNAフラグメントとを連結してpLF1001を作成する。これは、より短いポリアデニル化カセットに隣接するコドン最適化イヌBMP-7 cDNAを含む。
【0195】
製造業者(Gibco Lifesciences社)の記載に従って、リポフェクタミンを用いて、精製CAV2 DNA 5μgでMDCK細胞にトランスフェクトする。37℃で24時間インキュベーションした後、無血清培地を除去し、添加MEM培地に置き換える。培養物を37℃で8日間インキュベートし、3日目にはそれに添加MEM培地を添加する。このインキュベーション中には細胞変性効果(CPE)の徴候は見られない。トランスフェクトされたMDCK細胞を8日目に採取する。氷上で超音波処理した後、集密的MDCK単層を感染させるために、トランスフェクトされた培養物を2ml用いる。5日後に、一般的には少なくとも2,000pfu/精製DNA10μgの収率でプラークが出現する。
【0196】
前述の発現調節配列に隣接して右向きにイヌBMP-7 cDNAを含むpLF1001 DNAフラグメントをGeneCleanで精製し、10ng/mlの濃度に再懸濁し、続いて、製造業者の記載に従って、リポフェクタミンの存在下で精製CAV2 DNAとin vitroで組換えする。
【0197】
前述のように、CAV2 DNA/リポソーム複合体を添加MEM培地(無血清)で穏やかに混合し、MDCK細胞にトランスフェクトする。フィルターハイブリダイゼーション法により、組換えウイルスに関してプラークをスクリーニングする。簡潔に言えば、プラークをニトロセルロースフィルターに転写し、次いでオリジナルフィルターからレプリカフィルターに転写した。イヌBMP-7遺伝子を含むプラークを同定するために、特定のDNAプローブでオリジナルフィルターをハイブリダイズする。レプリカフィルター上の対応するプラークから組換えウイルスを回収する。
【0198】
(実施例8)
動物実験および結果
外傷後変形性関節症の進行を妨げるBMP-7遺伝子治療の能力を明らかにするための試験をヒツジで行った。
【0199】
1.5〜5.0歳、40〜70kgの去勢雄または非妊娠雌成体Arcottヒツジ14匹を無作為に2群(第1群および第2群)に割付けた。
【0200】
全身麻酔下、無菌操作を用い、3cm低侵襲関節切開術を用いてすべてのヒツジの両方(左右)の内側顆に標準化30MPa衝撃外傷を与えた。簡潔に言えば、脂肪体の膝蓋下関節切開術および部分切除を長さ2cmで行って、両方の膝関節の内側顆を露出させた。直径6mmのチップおよびインライン力変換器を備えた手持ち型バネ付き衝撃装置を用いて、分界線に対して1cm遠位にオーバーラップする2つの30MPa衝撃損傷を与えた。これは試験の0日目(D0)に行った。
【0201】
7日目に、以下の処置を可能にするために、ヒツジにジアゼパム(10mg/kg)およびケタミン(3〜5mg/kg)で鎮痛剤投与を行った。第1群のヒツジには、膝の1つの膝関節にマウスBMP-7Ad5ベクター(実施例2)(109ウイルス粒子/mL)1mL量を投与した。鎮痛剤を投与し、直立させて手足を伸びさせた動物に、シリンジおよび針を用いて大腿膝蓋関節に関節内投与を行った。滑液(1mL)を採取後に注射を行った。他の膝は処置しなかった。第1群の各動物の各膝に施した処置に関する情報を図1に示す。第2群のヒツジには何ら処置を施さず、対照として残した。
【0202】
D0、D14、D21、D28、D60およびD90に、血清および滑液を採取した。D90に、肉眼検査および組織学のために組織もまた採取した。
【0203】
試験期間中、1日に1回、ストール側の臨床徴候を記録した。毎日、0〜5スケールで跛行を記録した。0は正常であり、5は不負重性である。7日間を超えてスコアが>2/5である動物は検査し、敗血症の可能性を排除するために関節穿刺を行う。7日間スコアが>3/5である動物には、跛行が改善するまでか、または動物が試験から除かれるまで鎮痛剤(フェンタニルパッチ1mg/kg、5日間)を投与する。
【0204】
試験中、敗血症および肺炎により、第1群の動物1匹を安楽死させた。
【0205】
図1に、D90における剖検での肉眼的データを示す。この図は、肉眼的評価項目を用いて明らかにされたこの処置の有益な効果を示している(p<0.05)。
【0206】
図2は、第1群の動物の1匹、Y13の左右の膝の画像を示す。
【0207】
図3は定量的肉眼的所見を示し、処置動物と対照動物間の軟骨損傷における明確な改善を示している(p<0.001)。損傷後の軟骨保護の肉眼的指標には、墨汁保持により測定される表面粗化の低下を含めた。簡潔に言えば、墨汁染色を用いて異常軟骨領域の輪郭を描いた。墨汁の取り込みをプラスチックフィルムに複写し、半自動化形態計測ソフトウェア(Northern Eclipse(登録商標))を用いて面積測定することにより染色領域を算出した。
【0208】
図4は、軟骨溶解の深さのグレードおよび墨汁染色領域のステージを割り当てるOARSIスコアリングを用いる定量的組織学的所見(OARSIスコアについては、Pritzker KPH et al., Osteoarthritis and Cartilage, 2006, 14: 13-29 を参照のこと)を示す。線形モデル統計分析において、処置群1の関節は、第2群の対照(p<0.0007)および第1群の対側の関節(p<0.004)よりも改善された。
【0209】
対側の関節および対照動物の関節と比較しての処置関節における疾患進行遅延は、実験欠損から離れた部位におけるコラーゲン分解CII3/4 shortエピトープの非存在(軟骨分解およびOA進行の顕著な特徴)により確認された;
・対照(第2群)関節8つの内7つは、前述のようにCII3/4 shortエピトープの存在により進行性変性の根拠を示した。
対側の関節4つ(試験した)の内3つは、損傷から離れたCII3/4 short染色を示した。
Ad5BMP-7処置膝関節7つの内、損傷部位から離れたC3/4shortエピトープ染色の根拠を示したものは0であった。
【0210】
処置関節における疾患進行遅延は、TUNEL染色によっても確認された(軟骨への機械的損傷後に、処置がプログラム細胞死をブロックするかどうかを測定する;TUNEL染色については、Echigo R. et al., J. Vet. Med. Sci., 2006, 68(8): 899-902) を参照のこと):
・Ad5BMP-7処置関節7つの内、7つは損傷部位で陽性であり、2つは周囲の軟骨において陰性であり、残りの5つは実験的衝撃領域から離れた部位でTUNEL染色の低下が認められた。
・すべての対側の関節は、欠損部位および周囲の軟骨の両方でTUNEL陽性を示した。
・すべての対照は、欠損部位および周囲の軟骨の両方でTUNEL陽性を示した。
【0211】
対側の関節にまさる、Ad5BMP-7でトランスフェクトされた関節の改善の根拠は、処置関節における疾患進行遅延を示す、OA進行および細胞損失の欠如により得られた。このデータは、変形性関節症の大変重篤な実験モデルにおけるBMP-7アデノウイルスベース遺伝子治療の有益な効果を明確に示している。
【0212】
(実施例9)
ウマIL10インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ウマインターロイキン-10(IL10)の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号U38200として入手可能である。
【0213】
ウマIL10オープンリーディングフレーム(“ORF”)は、537bp(配列番号59)からなり、178アミノ酸のポリペプチド(配列番号60)をコードする。
【0214】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ヌクレオチド配列配列番号59を出発物質として用いる。
【0215】
実施例2に記載されているようにして、インサートとしてウマIL10のヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0216】
(実施例10)
イヌIL10インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
イヌインターロイキン-10(IL10)の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号XM_850467.1として入手可能である。
【0217】
イヌIL10 ORFは540bp(配列番号61)からなり、179アミノ酸のポリペプチド(配列番号62)をコードする。
【0218】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ヌクレオチド配列配列番号61を出発物質として用いる。
【0219】
実施例2に記載されているように、インサートとしてイヌIL10のヌクレオチド配列、を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0220】
(実施例11)
ネコIL10インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ネコインターロイキン-10(IL10)の核酸およびアミノ酸配列はGenBankデータベースからアクセッション番号NM_001009209.1として入手可能である。
【0221】
ネコIL10 ORFは537bp(配列番号63)からなり、178アミノ酸のポリペプチド(配列番号64)をコードする。
【0222】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ヌクレオチド配列配列番号63を出発物質として用いる。
【0223】
実施例2に記載されているように、インサートとしてネコIL10のヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0224】
(実施例12)
ヒトIL10インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ヒトインターロイキン-10(IL10)の核酸およびアミノ酸配列はGenBankデータベースからアクセッション番号NM_000572.2として入手可能である。
【0225】
ヒトIL10 ORFは537bp(配列番号65)からなり、178アミノ酸のポリペプチド(配列番号66)をコードする。
【0226】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ヌクレオチド配列配列番号65を出発物質として用いる。
【0227】
実施例2に記載されているように、インサートとしてヒトIL10のヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0228】
(実施例13)
ウイルスIL10インサートを有するAd5アデノウイルスベクターの構築
ウイルスインターロイキン-10(IL10)の核酸およびアミノ酸配列は、GenBankデータベースからアクセッション番号AF182315として入手可能である。
【0229】
ウイルスIL10 ORFは528bp(配列番号67)からなり、175アミノ酸のポリペプチド(配列番号68)をコードする。
【0230】
実施例2に記載の方法に従ってアデノウイルスベクターを調製するために、ヌクレオチド配列配列番号67を出発物質として用いる。
【0231】
実施例2に記載されているように、インサートとしてウイルスIL10のヌクレオチド配列を含む組換えAd5ウイルスを採取し、精製し、保存する。
【0232】
以下の番号付けされたパラグラフで、本発明をさらに詳細に説明する:
1.変形性関節症を患っている哺乳動物被験者を治療する方法であって、薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクルおよびプロモーターに作動可能に連結されているBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えアデノウイルスベクターを含む組成物の治療的有効量を前記哺乳動物被験者の関節内に投与することを含み、BMP-7ポリペプチドが哺乳動物被験者においてin vivoで発現される前記方法。
2.組換えアデノウイルスベクターがヒトアデノウイルスである、パラグラフ1記載の方法。
3.ヒトアデノウイルスがヒトアデノウイルス5型(hAd5)である、パラグラフ2記載の方法。
4.ヒトアデノウイルス5型(hAd5)がPEG化されている、パラグラフ3記載の方法。
5.組換えアデノウイルスベクターがイヌアデノウイルスである、パラグラフ1記載の方法。
6.イヌアデノウイルスがイヌアデノウイルス2型(CAV2)である、パラグラフ5記載の方法。
7.哺乳動物被験者がヒト、イヌ科、ウマ科およびネコ科からなる群から選択される、パラグラフ1記載の方法。
8.哺乳動物被験者がイヌ、雌犬または子犬である、パラグラフ1記載の方法。
9.哺乳動物被験者がネコまたは子猫である、パラグラフ1記載の方法。
10.哺乳動物被験者がウマ、雌馬または子馬である、パラグラフ1記載の方法。
11.BMP-7ポリペプチドが、プレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドおよび成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択される、パラグラフ1記載の方法。
12.BMP-7ポリペプチドが、イヌプレプロBMP-7ポリペプチド、イヌプロBMP-7ポリペプチド、イヌ成熟BMP-7ポリペプチド、ネコプレプロBMP-7ポリペプチド、ネコプロBMP-7ポリペプチド、ネコ成熟BMP-7ポリペプチド、ウマプレプロBMP-7ポリペプチド、ウマプロBMP-7ポリペプチド、ウマ成熟BMP-7ポリペプチド、ヒトプレプロBMP-7ポリペプチド、ヒトプロBMP-7ポリペプチドおよびヒト成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択される、パラグラフ1記載の方法。
13.BMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号17、配列番号18ならびにBMP-7活性を有するポリペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択される、パラグラフ1記載の方法。
14.BMP-7ポリペプチドが、配列番号3、配列番号15、配列番号16、配列番号19ならびにBMP-7活性を有するそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、パラグラフ1記載の方法。
15.BMP-7ポリペプチドがシグナルペプチドを含む、パラグラフ1記載の方法。
16.シグナルペプチドが、BMP-7シグナル配列、IGF-1シグナル配列およびtPAシグナル配列からなる群から選択される、パラグラフ15記載の方法。
17.シグナルペプチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号11ならびにシグナルペプチド活性を有するペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされる、パラグラフ15記載の方法。
18.シグナルペプチドが、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号12ならびにシグナルペプチド活性を有するそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、パラグラフ15記載の方法。
19.プロモーターが、CMV IEプロモーター、RSVプロモーター、HSV-1 TKプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、アデノウイルス主後期プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、α-1アンチトリプシン遺伝子プロモーター、アルブミン遺伝子プロモーター、コラゲナーゼ遺伝子プロモーター、エラスターゼI遺伝子プロモーター、β-アクチン遺伝子プロモーター、β-グロビン遺伝子プロモーター、γ-グロビン遺伝子プロモーター、α-フェトプロテイン遺伝子プロモーターおよび筋クレアチンキナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択される、パラグラフ1記載の方法。
20.BMP-7ポリペプチドが、イヌプレプロBMP-7ポリペプチド、イヌプロBMP-7ポリペプチド、イヌ成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択され、プロモーターがイヌ滑膜細胞特異的プロモーターである、パラグラフ1記載の方法。
21.BMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1、配列番号2、ならびにBMP-7活性を有するポリペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択され、プロモーターがイヌ滑膜細胞特異的プロモーターである、パラグラフ1記載の方法。
22.パラグラフ1〜21のいずれか1つに記載の組換えアデノウイルスベクターおよび薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクルを含む医薬組成物。
【0233】
このように、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明してきたが、上記パラグラフで定義される本発明は、本発明の精神または範囲から逸脱することなくその多くの見かけの変形が可能であるので、上記説明に記載の特定の詳細に限定されるべきではないことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変形性関節症を患っている哺乳動物被験者を治療する方法であって、薬学的または獣医学的に許容される少なくとも1つの担体、賦形剤またはビヒクルおよびプロモーターに作動可能に連結されているBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えアデノウイルスベクターを含む組成物の治療的有効量を前記哺乳動物被験者の関節内に投与することを含み、BMP-7ポリペプチドが哺乳動物被験者においてin vivoで発現される前記方法。
【請求項2】
組換えアデノウイルスベクターがヒトアデノウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ヒトアデノウイルスがヒトアデノウイルス5型(hAd5)である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヒトアデノウイルス5型(hAd5)がPEG化されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
組換えアデノウイルスベクターがイヌアデノウイルスである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
イヌアデノウイルスがイヌアデノウイルス2型(CAV2)である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物被験者がヒト、イヌ科、ウマ科およびネコ科からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
哺乳動物被験者がイヌ、雌犬または子犬である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
哺乳動物被験者がネコまたは子猫である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
哺乳動物被験者がウマ、雌馬または子馬である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
BMP-7ポリペプチドが、プレプロBMP-7ポリペプチド、プロBMP-7ポリペプチドおよび成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
BMP-7ポリペプチドが、イヌプレプロBMP-7ポリペプチド、イヌプロBMP-7ポリペプチド、イヌ成熟BMP-7ポリペプチド、ネコプレプロBMP-7ポリペプチド、ネコプロBMP-7ポリペプチド、ネコ成熟BMP-7ポリペプチド、ウマプレプロBMP-7ポリペプチド、ウマプロBMP-7ポリペプチド、ウマ成熟BMP-7ポリペプチド、ヒトプレプロBMP-7ポリペプチド、ヒトプロBMP-7ポリペプチドおよびヒト成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
BMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1、配列番号2、配列番号10、配列番号13、配列番号14、配列番号17、配列番号18ならびにBMP-7活性を有するポリペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項14】
BMP-7ポリペプチドが、配列番号3、配列番号15、配列番号16、配列番号19ならびにBMP-7活性を有するそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
BMP-7ポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
シグナルペプチドが、BMP-7シグナル配列、IGF-1シグナル配列およびtPAシグナル配列からなる群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項17】
シグナルペプチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号11ならびにシグナルペプチド活性を有するペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるヌクレオチド配列によりコードされる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
シグナルペプチドが、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号12ならびにシグナルペプチド活性を有するそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項15記載の方法。
【請求項19】
プロモーターが、CMV IEプロモーター、RSVプロモーター、HSV-1 TKプロモーター、SV40初期プロモーター、SV40後期プロモーター、アデノウイルス主後期プロモーター、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子プロモーター、メタロチオネイン遺伝子プロモーター、α-1アンチトリプシン遺伝子プロモーター、アルブミン遺伝子プロモーター、コラゲナーゼ遺伝子プロモーター、エラスターゼI遺伝子プロモーター、β-アクチン遺伝子プロモーター、β-グロビン遺伝子プロモーター、γ-グロビン遺伝子プロモーター、α-フェトプロテイン遺伝子プロモーターおよび筋クレアチンキナーゼ遺伝子プロモーターからなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
BMP-7ポリペプチドが、イヌプレプロBMP-7ポリペプチド、イヌプロBMP-7ポリペプチド、イヌ成熟BMP-7ポリペプチドからなる群から選択され、プロモーターがイヌ滑膜細胞特異的プロモーターであるか、あるいはBMP-7ポリペプチドをコードする核酸配列が、配列番号1、配列番号2、ならびにBMP-7活性を有するポリペプチドをコードするそのフラグメント、バリアント、誘導体およびホモログからなる群から選択され、プロモーターがイヌ滑膜細胞特異的プロモーターである、請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−505151(P2012−505151A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−528222(P2010−528222)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/079090
【国際公開番号】WO2009/046464
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(304040692)メリアル リミテッド (73)
【Fターム(参考)】