説明

BRAF変異の検出に有用な方法、プライマー、プローブ、及びキット

本発明は、サンプル中の変異体BRAF配列を検出するために、特に、BRAF V600E、V600D、V600K、及びV600M変異の存在を検出するために有用な方法、プライマー、及びプローブに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、米国特許出願61/233,054(2009年8月11日出願);同61/237,078(2009年8月26日出願)、及び同61/301,790(2010年2月5日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、サンプル中の変異BRAF配列の存在を検出するために、特に、BRAF V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A変異の存在を検出するための方法、プライマー、及びプローブに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
正常な細胞が腫瘍性形質転換を経て悪性細胞に成る場合、癌が生じる。形質転換された(悪性)細胞は、細胞表現型を明示する及び細胞増殖を抑制する、正常な生理学的制御を免れる。個人の体における形質転換された細胞は、それ故増殖し、腫瘍を形成する。腫瘍が見つけられた場合、臨床の目的は、個人が受ける治療において、正常細胞に対して引き起こされる何らかの害を軽減する一方で、悪性細胞を選択的に破壊することである。
【0004】
B−raf(又はBRAF)は、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼに属するタンパク質をコードする。BRAFは、Ras/Raf/MEK/MAPシグナル伝達経路の一部であり、MAPキナーゼ/ERKシグナル伝達経路を調節する役割を果たす。この遺伝子における変異は、様々な癌、例えば結腸直腸癌(CRC)、非小細胞肺癌(NSCLC)、悪性メラノーマ、及び腺癌に関連している。そのほぼ全てがV600E変異であるBRAFにおける発癌性の変異は、結腸癌において報告されている(Davies H,et al.Nature 2002;417:949−54;Rajagopalan H,et al.,Nature 2002;418:934.)。V600E変異は、マイクロサテライト不安定性の癌の半数以上で、及び安定性の結腸癌のごく一部で観察されている(Wang L,et al.,Cancer Res 2003;63:5209−12)。V600E(以前はV599E)変異は、B−raf遺伝子(受託番号NM_04333.4)のエクソン15の1860(コード配列の1799)番に位置する。コード配列の1799番において、チミジンがアデノシンに変更され、それは野生型/変異のないB−rag遺伝子のバリン(V)から、変異された遺伝子におけるグルタミン(E)への変更をもたらす。加えて、まれな(<1%)V600K(1798‐1799GT>AA)変異はまた、存在する。さらに、V600D変異は実例の4.6%で存在し、V600A変異は実例の<1%で存在し、V600M変異は実例の<1%で存在する。加えて、V600R及びK601E BRAF変異が存在する。
【0005】
V600E BRAF変異は、以下:神経系、甲状腺、皮膚、胃腸管、大腸、胆管、卵巣、眼、前立腺、中枢神経系、肝臓、小腸、胸、膵臓、軟組織、上気道消化管、副腎、自律神経節、造血及びリンパ系組織、肺、食道、下垂体、及び胃を含む多数の組織/腫瘍種類で見つけられる。これらの任意の種類の組織のサンプルから抽出されるDNA又はRNAは、本発明のアッセイに用いられることができる。
【0006】
安定性及び不安定性癌の双方では、BRAF変異を伴う腫瘍の>90%は、CpGアイランドの広範囲のメチル化、又はCpGアイランドメチル化因子表現型(CIMP)として知られているものを有する。散発性結腸癌におけるマイクロサテライト不安定性(MIS)に関連する改善された生存率は報告されており(Samowitz WS,et al.,Cancer Epidemiol Biomarkers Prev 2001;10:917−23;Hailing KC,et al.,J Natl Cancer Inst 1999;91:1295−303)、散発性の不安定な腫瘍は一般的にCIMP(Toyota M,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 1999;96:8681−6;Toyota M,et al.,Proc Natl Acad Sci U S A 2000;97:710−5)及びBRAF(Kambara T,et al.,Gut 2004;53:l 137−44;Nagasaka T,et al.,J Clin Oncol 2004;22:4584−94)変異の双方を示すので、これらの特徴はまた、不安定性の腫瘍における改善された生存率と関連性を示すことを予測する。Samowitzは、マイクロサテライト安定性腫瘍におけるCIMPと生存率との関連性を研究しており、マイクロサテライト安定性結腸癌におけるBRAF変異と生存率のとの関連性は評価されている。Samowitz,Wade S.,et al.,Cancer Research 65,6063−6069,July 15,2005.を参照のこと。Samowitzは、生存率及び他の臨床病理学的な変数とのその関連性を決定するために、結腸癌に罹患している大集団に基づく個人のサンプルを評価している。V600E BRAF変異は、マイクロサテライト安定性腫瘍の5%、及びマイクロサテライト不安定性腫瘍の51.8%で見られた。マイクロサテライト安定性腫瘍では、この変異は、低い生存率、高CIMP、進行した対癌米国合同委員会(AJCC)ステージ、及び結腸直腸癌の家族暦に関連した。低い生存率は、5年生存率の単変量解析(16.7%対60.0%)において;年齢、ステージ、及び腫瘍部位について調整された分析において;ステージ特異的な、AJCCステージ2〜4について年齢で調整される分析において(それぞれHRR、4.88、3.60、及び2.04);及びAJCCステージ2〜4についてのカプラン・マイヤー(Kaplan−Meier)生存率評価において観察される。マイクロサテライト不安定性腫瘍は、V600E変異が存在しようがしまいが、優れた5年生存率に関連した(それぞれ76.2%及び75.0%)。Samowitzは、マイクロサテライト不安定性結腸癌におけるBRAF V600E変異は、ステージ2〜4の結腸癌における著しく低い生存率に関連するが、しかしマイクロサテライト不安定性腫瘍の優れた予後に対する効果はなかった、と結論付けた。
【0007】
さらに、BRAF変異は、MMR遺伝子MLH1及びMSH2における胚性突然変異を伴う、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌症候群(HNPCC)ファミリー由来の腫瘍に存在しないことを示した。これらのデータは、BRAFの腫瘍形成の活性化が、散発性直腸結腸腫瘍形成にのみ関連することを示す。結腸直腸癌における陽性BRAF−V600E変異の検出は、疾患の散発性起源、及びMLH1、MSH2の、及びまたMSH6の胚性変化の不在を示す。これらの発見は、HNPCC診断のための遺伝的検査に潜在的影響を与え、HNPCCのための除外基準として、又は散発性癌の分子マーカーとしてのBRAFの潜在的使用を提案する。Domingo et al,Oncogene(2005)24,3995−3998.を参照のこと。
【0008】
Solitのグループは、MEKの小分子阻害剤、及び統合された遺伝的及び薬理学的分析を用いて、「野生型」細胞又はRAS変異を含む細胞と比較した場合、BRAFの変異は、MEK阻害に対する増幅された及び選択的な感受性に関連することを発見した。このMEK依存性は、組織系統にかかわらずBRAF変異細胞で観察され、サイクリンD1タンパク質発現及びG1停止の誘導の双方の下方制御に相関した。RAS変異腫瘍が部分的にのみ阻害されたのに対し、薬理学的なMEK阻害は、BRAF変異異種移植片において腫瘍成長を完全に抑制した。これらのデータは、BRAF変異腫瘍において、MEK活性に関する非常に強い依存性を示唆し、この遺伝的に定義される腫瘍サブタイプについて合理的な治療戦略を提案する。Solit,David B.,et al.,Nature 439,358−362(19 January 2006)を参照のこと。
【0009】
加えて、ヒトメラニン細胞形質転換のモデルは、遺伝学研究、細胞生物学、分子病理学、及びマウスモデリングの結果に基づいて生じる。研究は、塩基性線維芽細胞成長因子生産、ERK活性化、及びメラノーマ組織において頻出するBRAF変異を含む様々な因子の関与を特定している。BRAFは、RASの下流で作用し、研究は、RAS及びBRAFにおいて同時に起こる変異が、メラノーマにおいて極めて希であることを示し、BRAF変異は、変異体RASの少なくとも一部の腫瘍形成機能と置き換わることを示唆する。
【0010】
転移するそれらのリスクについて、患者をさらに階層化するための腫瘍マーカーの開発は、盛んに調査されている。腫瘍マーカーの評価及び結果に基づく治療の選択は、ここ数年の結腸及び乳癌管理において、標準的な治療の一部であるが、そのようなマーカーは、メラノーマに存在しない。多くの研究は展望が示されているが、しかし開発の予備的ステージを通過して臨床的に有用なアッセイとなったものはない。
【0011】
メラノーマ生物学の研究における近年の進歩を除いて、メラノーマに罹患した患者の診断及び/又は観察のための有用な分子ツールの開発は、まだ比較的新しい。いくつかの前進は、疾患の再発について患者を観察するために、又は転移の進行についての高いリスクにおける患者を選択するために、設計されたプロトコールにおいてなされている。腫瘍ステージ、メラノーマからの生存の優れた予測は、従来の臨床病理的な変数、例えば、原発腫瘍の厚さ及び潰瘍、及び所属リンパ節又は遠位部位における転移性疾患の存在に基づく。顕微鏡で同一に見える中程度の厚さの原発腫瘍を有する二人の患者は、しかしながら、劇的に異なる生存率を有し得る。そのような評価のための改良された予測ツールの不在は、主治医が最良な治療戦略を決定することを困難にする。
【0012】
BRAF腫瘍遺伝子における変異は、メラノーマ組織の最大80%で発見されており、この疾患において、頻度は他の分子変異よりも著しく高い。BRAF変異はまた、癌の他の種類から、腫瘍組織中で検出されている。実験的な研究は、いくつかのBRAF変異、特に、メラノーマにおいてBRAF変異の90%をしめるT1799A(以前にはT1796Aと指定された)ホットスポット変異は、培養中に線維芽細胞に転換し得ることを示している。ごく最近、メラノーマ細胞培養における変異BRAFの発現を阻止する実験は、細胞成長を阻害し、且つ細胞死を促進することを示し、BRAF阻害剤は、メラノーマ治療を著しく強化し得ることが示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明は、サンプル中のBRAF V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A変異を検出する方法を開示する。本発明は、サンプル中に存在するV600E、V600D、V600K、V600M、又はV600A変異BRAF配列の増幅及び検出に用いられる、プライマー及びプローブ配列を含む組成物を開示する。本明細書に開示されるように、特定のプライマーの組み合わせは、特定のBRAF変異を増幅することに用いられる。1798−1799GT>AA二重変異に特異的なプライマーを設計することもまたできることは、当業者により評価される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、BRAF変異の増幅及び検出に用いられるプライマー及びプローブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本発明は、BRAF変異の検出のために有用な方法、プライマー、プローブ及びキットを提供する。本発明の方法、プライマー、プローブ及びキットは、多数の様々な細胞種類において、BRAF V600E、V600D、V600K、V600M及びV600A変異を検出するために用いられることができ、それ故、例えばメラノーマ、結腸直腸癌、肺癌、及び甲状腺癌であるがこれに限定されない多数の様々な癌の診断に用いられることができる。本発明の方法は、癌患者についての、結果の予測として有用であり得る。何らかの疾患、及び特に癌に罹患した患者のための改善された転帰に寄与する重要な要因の一つは、その進行する侵襲的な性質のために、早期の正確な診断である。本発明の方法は、その存在が転移する疾患の陽性指標である、変異BRAF配列を検出するための迅速、非侵襲、且つ正確なスクリーニングアッセイのための切望される需要に対処する。そのようなものとして、それは、より積極的な治療計画で治療されることを必要するそれらの患者を同定する。さらに、本発明はDNA又はRNAを用いることができ、サンプル調製は容易であるので、従って、サンプル調製に関連する検査技師の専門的レベルにおける違いからもたらされ得るアッセイ変動性は減少する。
【0016】
非限定的な例として、本発明の方法は、進行した、転移性メラノーマ(ステージIII/IV)に罹患した患者を観察するために用いられ得る。これらの患者は、疾患進行について最も高いリスクに存し、疾患活性における上昇の早期検出は、早期治療及びは転帰における改善を導く。本発明の方法はまた、それらの疾患の転移拡散のリスクがある疾患の初期のステージ(ステージI/II)に罹患した患者を試験することが意図される。さらに、さらなる診断検査及び治療を伴う早期介入は、改善された患者の生存を導く。
【0017】
本発明は、サンプル中のBRAF変異の存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルは核酸配列を含む;(b)前記サンプルの前記核酸配列の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9である第一のプライマーと、BRAF配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる配列番号10である第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF配列の異なる鎖にアニールし、ここで増幅反応は、サンプルの配列が前記BRAF配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(c)前記増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここでBRAF変異体特異的増幅産物の検出は、前記サンプル中のBRAF変異の存在の陽性指標である、を含む方法、を提供する。
【0018】
本発明は、サンプル中の転移性メラノーマの存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルは核酸配列を含む;(b)前記サンプルの前記核酸配列の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9である第一のプライマーと、BRAF配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる配列番号10である第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF配列の異なる鎖にアニールし、ここで増幅反応は、サンプルの配列が前記BRAF配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(c)前記増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここでBRAF変異体特異的増幅産物の検出は、前記サンプル中の転移性メラノーマの陽性指標である、を含む方法、を提供する。
【0019】
本発明の実施形態は、BRAF V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A変異体特異的プライマーを含む。典型的なBRAF V600E変異体特異的プライマー対は、配列番号1、配列番号2又は配列番号9、及び配列番号10を含む。典型的なBRAF V600 D変異体特異的プライマー対は、配列番号1、配列番号2、配列番号4又は配列番号7、及び配列番号10を含む。典型的なBRAF V600K変異体特異的プライマー対は、配列番号1、配列番号4、配列番号5又は配列番号6、及び配列番号10を含む。典型的なBRAF V600M変異体特異的プライマー対は、配列番号6又は配列番号8、及び配列番号10を含む。典型的なBRAF V600A変異体特異的プライマー対は、配列番号3、及び配列番号10を含む。これらのプライマーは、任意の知られているBRAF多様性を避けて設計された。本明細書で記述されるように、そのようなオリゴヌクレオチドは、検出可能なように標識化されることができる。
【0020】
BRAF V600変異体特異的プライマー(配列番号1;配列番号2;配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10)、又は適切なBRAF変異体特異的プライマー対は、生物学的に適合する塩溶液、及び/又は他のバッファ、又は成分を含む組成物の成分でもよい。
【0021】
本発明の実施形態は、オリゴヌクレオチドプローブ配列である配列番号11、及び配列番号12を含み、ここでオリゴヌクレオチドは、BRAF変異体配列の検出のためのプローブとして用いられる。このプローブは、任意の知られているBRAF多様性を避けて設計された。任意で、オリゴヌクレオチドは、検出可能であるように標識化される。
【0022】
本発明はまた、配列番号1〜12の少なくとも一つを含むキットを提供する。
【0023】
本発明の実施形態は、V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A BRAF変異を検出するために使用され得る。
【0024】
サンプル
本方法は、対象(例えば哺乳動物)から組織または体液のサンプルを得ることを含み、ここでサンプルは核酸を含む。用いられ得る組織又は体液の非限定的な例は、血液、血漿、リンパ液、腫瘍生検標本、体組織を含む。一つの実施形態では、組織サンプルは、パラフィン包理組織標本を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、デオキシリリボ核酸(DNA)である。いくつかの実施形態では、核酸は、リボ核酸(RNA)である。
【0025】
本方法は、患者由来の任意の種類の組織に適用され得る。そのような組織の供給源は、神経系、甲状腺、皮膚、胃腸管、大腸、胆管、卵巣、眼、前立腺、中枢神経系、肝臓、小腸、胸、膵臓、軟組織、上気道消化管、副腎、自律神経節、造血及びリンパ系組織、肺、食道、下垂体、及び胃を含むがこれに限定されない。腫瘍組織の抵抗性の実験のために、腫瘍組織を調査することが好ましい。好ましい実施形態では、腫瘍が得られる患者由来の正常な組織の一部はまた、調査される。
【0026】
本発明の方法は、幅広い範囲の腫瘍種類に亘って適用されることができる。これは、BRAF V600E、V600D、V600K、V600M、又はV600A変異体配列の発現レベルが、個別の患者サンプルにおいて決定され、様々な化学療法に対する反応が予測される、個人の「腫瘍発現プロファイル」の作成を可能にする。特定の実施形態では、本発明の方法は、結腸癌又はメラノーマ腫瘍に適用される。
【0027】
核酸の単離
本発明の実施形態では、当業者に知られているDNA単離の方法を用いる。一般的に、目的は、他の細胞成分から細胞の核に存在するDNAを分離することである。DNAの単離は、通常、組織又は細胞の溶解又は分解と共に始まる。このプロセスは、タンパク質構造の破壊が必須であり、核からの核酸の放出を可能にする。溶解は、タンパク質を変性させる界面活性剤、又はプロテアーゼ(タンパク質を分解する酵素)、例えばプロテイナーゼK、場合により双方、を含む塩溶液中で行われる。それは、細胞の分解及び膜の溶解をもたらす。DNA単離の方法は、フェノール:クロロホルム抽出、高塩析沈殿、アルカリ変性、イオン交換カラムクロマトグラフィー、樹脂結合、及び常磁性ビーズ結合を含むがこれに限定されない。
【0028】
本発明の実施形態は、当業者に知られているRNA単離の方法を用いる。RNAは、Trizol(登録商標)、及びグアニジンチオシアナート‐フェノール‐クロロホルム抽出を含むが、これに限定されない様々な方法により、ハイブリダイゼーションのために単離及び調製され得る。RNA単離の原理は、細胞/組織溶解、その後の抽出、沈殿、及び洗浄に基づく。RNA単離の選択は、サンプルの種類に依存することは、当業者により理解される。腫瘍遺伝子マーカー試験の一般的な供給源である、パラフィン包理組織からのRNA単離の方法を対象にするUS12/144,388は、参照により援用される。
【0029】
増幅
本発明の実施形態は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ヘリカーゼ依存性増幅(HDA)、及び核酸配列ベース増幅(NASBA)、及び増幅難治性変異系(ARMS)を含むがこれに限定されない、熱及び等熱増幅方法を用いる。好ましい実施形態では、プライマー及びプローブはARMSに用いられる。
【0030】
検出
本発明の実施形態は、増幅産物が検出可能なマーカーで標識されるような、増幅ステップの間に用いられるプライマーを標識すること、及び増幅産物と検出可能なマーカーで標識されたオリゴヌクレオチドプローブとがハイブリダイズさせることを含むが、これに限定されない検出方法を用いる。検出可能なマーカーは、化学発光タグ、蛍光タグ、及び放射性タグを含むがこれに限定されない。標識された増幅産物は、当業者に知られている方法に従って用いられる標識の種類に対応する方法を用いて直接測定され得る。標識されたプローブは、当業者に知られている方法により、増幅産物とハイブリダイズされ得る。
【0031】
本発明の方法の実施では、BRAF V600E変異体体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(prognosticate)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。本発明の方法の実施では、BRAF V600E変異体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(predict)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。本発明の方法の実施では、BRAF V600D変異体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(predict)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。本発明の方法の実施では、BRAF V600K変異体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(predict)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。本発明の方法の実施では、BRAF V600M変異体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(predict)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。本発明の方法の実施では、BRAF V600A変異体発現レベルは、治療計画の有効性を予測(predict)するために、患者腫瘍サンプルにおいて評価される。
【0032】
本発明のこの実施形態の方法を実施では、腫瘍細胞は、好ましくは、患者から単離される。固形又はリンパ系腫瘍又はその一部は、患者から手術で摘出される、又は日常的な生検により得られる。凍結又は新鮮なサンプルから単離されたRNAは、当該技術分野において典型的な任意の方法、例えば、Sambrook,Fischer and Maniatis,Molecular Cloning,a laboratory manual,(2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,(1989).により細胞から抽出される。好ましくは、抽出プロセスの間、RNAの分解を避けるための注意が払われる。
【0033】
【表1】

【実施例】
【0034】
実施例1:本発明のプライマーの試験
合成V600E構築物は、BRAF V600E変異を含む核酸を特異的に増幅するための、本発明のプライマー及びプローブの能力を試験するために作られた。BRAF V600E変異のためのプライマー/プローブの2セットは、検証のために用いられた。V600E合成構築物は、gDNAのバックグラウンドにおいて、17倍に段階的に希釈(1:2)された(0.67ng/μL、5ng/PCR)。変異濃度は、10fM〜0.15aMに及んだ。それぞれの希釈されたサンプルは、対照(エクソン13)及びV600E変異について、二重に6回試験された(合計12回)。
【0035】
実施例2:V600K BRAF変異の検出
希なV600K BRAF変異は、V600E変異のために設計されたプライマーの同じ対を用いることで検出され得る。V600K変異は、1798−1799GT>AA二重変異である。配列番号2は、一重1799T>A変異の存在下でのみ、増幅産物をもたらす非常に特異的なプライマーを含む。従って、プライマー対:配列番号1及び配列番号10を用いる増幅反応、及びプライマー対:配列番号2及び配列番号10を用いる同じサンプルに関する別の反応を行う場合、最初の反応は、増幅生成物を与える(陽性)一方で、第二の反応は、生成物を与えない(陰性)。陽性及び陰性の結果のこの組み合わせは、V600K変異の存在を示す。
【0036】
実施例3:BRAF T1799A/GT1798−1799AA/TG1799−1800AT変異排他性試験
【0037】
A)試験材料
1.BRAF V600D、E、及びK変異を含むDNA合成フラグメントは生成された。
a.BRAF V600D:
AGTAAAAATAGGTGATTTTGGTCTAGCTACAGATAAATCTCGAT
GGAGTGGGTCCCATCAGTTTGAACAGTTGTCTGGATCCATTT
b.BRAF V600E
c.BRAF V600K:
ACAGTAAAAATAGGTGATTTTGGTCTAGCTACAAAGAAATCTC
GATGGAGTGGGTCCCATCAGTTTGAACAGTTGTCTGGATCCATTTT
【0038】
2.BRAF変異V600D、E、及びK変異について配列特異的なプライマー/プローブ配列(表1に列挙された配列)
a.1799A_1GT(1799TからAの塩基対変化に特異的(V600E、V600D、及びV600K)
b.V600D_2GA(V600Dに特異的)
c.V600K_2AT(V600Kに特異的)
【0039】
B.手順
1.3つの合成フラグメントのそれぞれを、0.667ng/μlのゲノムDNA(Promega Corp.‐ヒトゲノムDNA、100μg)中200aMの濃度に希釈する。
2.全ての3つのプライマーセット(それぞれの変異に特異的)で、それぞれの変異についての合成特異的フラグメントをPCR増幅する。
3.排他性を分析する。
【0040】
C.排他性の分析
下記の二つのプライマー/プローブセットは、特定の変異を増幅するために設計されている。これらのプライマーは、排他性について試験するためにそれぞれの合成フラグメントで試験された。
a.1799A_1GT(V600E、V600D及びV600Kを増幅) このプライマー/プローブセットは、1799塩基におけるTからAの変化を増幅するために、アッセイ開発セクション(7)で記述されている。
b.V600D_2GA(V600Dに特異的) このプライマー/プローブセットは、1799−1800塩基において、TAへのTG変化を増幅するために、アッセイ開発セクション(7)で記述されている。
c.V600K_2AT(V600Kに特異的) このプライマー/プローブセットは、1798−1799塩基において、AAへのCT変化を増幅するために、アッセイ開発セクション(7)で記述されている。
【0041】
全てのプライマー及びプローブは、排他性試験に用いられた。
【0042】
結果:下記の表は、特異的なプライマープローブセットで首尾よく増幅されたフラグメントを記載する。プラス(+)は、特異的フラグメントが増幅されたことを表す。
【0043】
表2:それぞれの変異体型を特定するためのプライマーの組み合わせは以下である。
【0044】
【表2】

【0045】
結果:
本発明者らは、それぞれの合成及びプライマー/プローブ組み合わせについてのCtデータを回収した。
【0046】
【表3】

【0047】
排他性は、それぞれの鋳型について特異的及び非特異的であるように設計されたプライマー/プローブセットを用いて、それぞれの鋳型のPCR増幅のCtsを引き算することにより決定された。
【0048】
【表4】

【0049】
デルタCtsは以下:のように決定された:
例:
V600D合成フラグメントについてのV600D_2GAの排他性=0
鋳型としてV600Dフラグメントを用いて、増幅はV600D_2GAプライマー/プローブで行われた。
dCt=30.39−30.39=0(排他的)
鋳型としてV600Dフラグメントを用いて、増幅は1799A_1GTプライマー/プローブで行われた。
dCT=30.34−30.39=−0.05(排他的)
鋳型としてV600Dフラグメントを用いて、増幅はV600K_2ATプライマー/プローブで行われた。
dCT=39.06−30.39=8.67(非特異的)
【0050】
合否基準
dCT(フラグメントに特異的なプライマーを用いたCt−フラグメントに非特異的なプライマーを用いたCt)≦4
プリセット合否基準(アッセイ開発‐以下の表を参照のこと)は、プライマー/プローブ1799A_1GTが1799におけるTからA塩基対変化を検出し、それ故全ての変異を検出する、セクション7で記述された。
【0051】
結果:
V600K_2ATは、V600K変異について排他的である。
V600D_2ATは、V600D変異について排他的である。
1799A_1GTは、それは全ての3つの変異(V600E、V600E、及びV600K)に含まれている、1799TからAへの変化について、排他的である。
【0052】
表3:それぞれの変異体型を定義するためのプライマーの組み合わせ
【0053】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のBRAF変異の存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルはDNA配列を含む;(b)前記サンプルの前記DNA配列の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF DNA配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9である第一のプライマーと、BRAF DNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF DNA配列の異なる鎖にアニールし、ここで増幅反応は、サンプルのDNA配列が前記BRAF DNA配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF DNA配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(c)前記増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここでBRAF変異体特異的増幅産物の検出は、前記サンプル中のBRAF変異の陽性指標である、を含む方法。
【請求項2】
サンプル中のBRAF変異の存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルはRNA配列を含む;(b)前記サンプルの前記RNA配列の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF RNA配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、又は配列番号9である第一のプライマーと、BRAF RNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF RNA配列の異なる鎖にアニールし、ここで増幅反応は、サンプルのRNA配列が前記BRAF RNA配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF RNA配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(c)前記増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここでBRAF変異体特異的増幅産物の検出は、前記サンプル中のBRAF変異の陽性指標である、を含む方法。
【請求項3】
前記BRAF変異の存在が、前記サンプル中の転移性メラノーマの陽性指標である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記BRAF変異の存在が、前記サンプル中の転移性メラノーマの陽性指標である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記BRAF変異の存在が、BRAF V600E、BRAF V600D、BRAF V600K、BRAF V600M、及びBRAF V600A変異から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記サンプルが、血液、組織、又は細胞から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記の組織サンプルが、ホルマリン固定されたパラフィン包理組織である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
BRAF核酸配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる前記の第二のプライマーが、配列番号10である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
患者において、腫瘍を治療するための化学療法計画を決定するための方法であって、以下:(a)固定された腫瘍サンプルを得るために、腫瘍の組織サンプルを得て、サンプルを固定すること;(b)固定された腫瘍サンプルからmRNAを単離すること;(c)BRAF増幅産物を得るために、BRAF遺伝子の領域を増幅することができる一対のオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、mRNAを増幅に供すること;(d)増幅されたサンプル中のBRAFmRNAの量を測定すること;(e)ステップ(d)からのBRAFmRNAの量を、内部対照遺伝子のmRNAの量と比較すること;及び(e)増幅されたサンプル中のBRAFmRNAの量、及びBRAF遺伝子発現についての閾値に基づいて化学療法計画を決定すること、を含む方法。
【請求項10】
前記オリゴヌクレオチドプライマーが、オリゴヌクレオチドプライマー対:配列番号1及び配列番号10、又は配列番号2及び配列番号10、配列番号3及び配列番号10、配列番号4及び配列番号10、配列番号5及び配列番号10、配列番号6及び配列番号10、配列番号7及び配列番号10、配列番号8及び配列番号10、配列番号9及び配列番号10、又は少なくともそれと80%同一であるオリゴヌクレオチドプライマーの対から成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
オリゴヌクレオチドプライマー対:配列番号1及び配列番号10、又は配列番号2及び配列番号10、配列番号3及び配列番号10、配列番号4及び配列番号10、配列番号5及び配列番号10、配列番号6及び配列番号10、配列番号7及び配列番号10、配列番号8及び配列番号10、配列番号9及び配列番号10、又は少なくともそれと80%同一であるオリゴヌクレオチドプライマーの対を含む、BRAF遺伝子の発現を検出するためのキット。
【請求項12】
BRAF V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A変異に特異的な核酸プローブであって、配列番号11を含むプローブ。
【請求項13】
BRAF V600E、V600D、V600K、V600M、及びV600A変異に特異的な核酸プローブであって、配列番号12を含むプローブ。
【請求項14】
プローブを添加することを含む、変異体BRAF核酸配列の存在を検出する方法であって、前記プローブが配列番号11又は配列番号12のオリゴヌクレオチド配列を含む方法。
【請求項15】
サンプル中のBRAF V600K変異の存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルはDNA配列を含む;(b)前記サンプルの前記DNA配列の第一の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF DNA配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1である第一のプライマーと、BRAF DNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF DNA配列の異なる鎖にアニールし、ここで、増幅反応は、サンプルのDNA配列が前記BRAF DNA配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF DNA配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;(c)前記サンプルの前記DNA配列の第二の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、配列番号2である第一のプライマーと、BRAF DNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで第一のプライマーの厳密性のために、増幅反応はBRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(d)前記第一の増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここで一つのサンプル中のBRAF変異体特異的増幅産物の検出、及び第二の反応からの増幅産物の不在は、前記サンプル中のBRAF V600K変異の陽性指標である、を含む方法。
【請求項16】
サンプル中のBRAF V600K変異の存在を検出するための方法であって、以下:(a)前記サンプルから核酸を単離すること、ここでサンプルはRNA配列を含む;(b)前記サンプルの前記RNA配列の第一の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、BRAF RNA配列中の第一の位置でBRAF変異体配列と特異的にアニーリングすることができる配列番号1である第一のプライマーと、BRAF RNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで前記第一及び第二のプライマーは、二本鎖BRAF RNA配列の異なる鎖にアニールし、ここで増幅反応は、サンプルのRNA配列が前記BRAF RNA配列の前記第一の位置で変異体配列を含むBRAF RNA配列を含む場合、BRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;(c)前記サンプルの前記RNA配列の第二の増幅反応を行うこと、ここで前記増幅反応は、配列番号2である第一のプライマーと、BRAF RNA配列中の第二の位置で特異的にアニーリングすることができる第二のプライマーとを含み、ここで第一のプライマーの厳密性のために、増幅反応はBRAF変異体特異的増幅産物を生成することができる;及び(d)前記第一の増幅反応により生成された増幅産物を視覚化すること、ここで一つのサンプル中のBRAF変異体特異的増幅産物の検出、及び第二の反応からの増幅産物の不在は、前記サンプル中のBRAF V600K変異の陽性指標である、を含む方法。

【公表番号】特表2013−501523(P2013−501523A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524782(P2012−524782)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/044997
【国際公開番号】WO2011/019704
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(503198817)レスポンス ジェネティクス,インコーポレイティド (9)
【Fターム(参考)】