説明

C型肝炎ウイルスの検出用プライマー及びプローブ

本発明は試験サンプル中のC型肝炎ウイルスを検出するためのプライマー、プローブ、プライマーセット、プライマーとプローブのセット、方法及びキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試験サンプル中のC型肝炎ウイルスを検出するためのプライマー、プローブ、プライマーセット、プライマーとプローブのセット、方法及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルス(HCV)はフラビウイルス科ヘパシウイルス属のメンバーである。ヌクレオチドレベルで相互に約25〜35%相違する6種類のクレードのHCVが現在確認されている。HCVの代表的な遺伝子型としては、HCV−10、HCV−11、HCV−1a、HCV−1b、HCV−2a、HCV−2b、HCV−3a、HCV−4a、HCV−5a及びHCV−6aが挙げられる。HCVは非経口伝播型非A非B肝炎の主因として認められている。慢性HCV感染は慢性肝炎、肝硬変及び肝細胞癌に至る可能性がある。HCV感染は通常では感染血液との接触により(例えば静注薬物使用により)生じるが、HCVが性感染する場合や、分娩時に母子感染する場合もある。
【0003】
世界人口の約3%(1億7千万人)がHCVに感染している。急性HCV感染は無症状であるか、又は軽度の臨床症状しか生じないが、急性感染者の75%〜85%で慢性HCV感染が発生し、慢性感染者の60%〜70%で慢性肝疾患が発症する(CDC.Recommendations for prevention and control of hepatitis C Virus(HCV)infection and HCV−related chronic disease.Morbid Mortal Wkly Rep 1998,47(RR−19):1−39)。慢性C型肝炎は米国における肝移植の筆頭原因である。HCVの正確な検出法はHCV感染の予防と治療を助長する強力な手段となろう。
【0004】
HCVゲノムは約3010〜3033アミノ酸の巨大なポリプロテインをコードする線状プラスセンス1本鎖RNAの9.6kb分子を含む(Choo et al.,Science(1989)244,359−362;Kato et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87,9524−9528)。HCVゲノムは遺伝子型間で相当の配列多様性を示すが、5’非翻訳領域(UTR)と3’UTRは比較的高度に保存されており、これらの領域が複製、翻訳及び/又はパッキングプロセスの制御に重要な機能的役割をもつのではないかと考えられる(Ito et al.,Virology(1999)254,288−296;Yamada et al.,Virology(1996)223,255−261)。5’UTRは配列内リボソーム進入部位と、HCVゲノム翻訳を制御すると思われる多数の宿主細胞因子の結合部位を含む(Ito et al.,Virology(1999)254,288−296)。3’UTR領域は21〜39ヌクレオチド(nt)の高度可変配列と、これに続く可変長(73〜98nt)のUCリッチ配列と、3’
末端の高度に保存された98nt配列の3領域を含む(Ito et al.,J Virol.(1997)71(11),8698−8706)。
【0005】
オリゴヌクレオチドベースの各種HCV検出法が考案されている。米国特許第5,714,596号はサンプル中のHCV変異体を同定するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのプローブハイブリダイゼーションアッセイ用として、HCVとフラビウイルス間で保存されたコーディング配列に特異的なオリゴマーを使用することを教示している。5’UTR領域と3’UTR領域が保存されていることが確認されると、これらの領域はサンプル中のHCVの検出用アッセイの重要な標的となった。例えば、米国特許第5,837,442号はHCVの5’UTRの1領域の逆転写PCR(RT−PCR)増幅用オリゴヌクレオチドプライマーを教示している。また、米国特許第6,297,003号は同一又は代替種における相補的配列及び関連クローンをスクリーニングするために3’UTRを標的とするオリゴヌクレオチドプライマー及びプローブを教示している。更に、多数の製造業者が各種HCVアッセイを開発しており、HCV感染個体に由来するヒト血清及び血漿中のHCVを検出するためにHCVの5’UTRを標的とするRealTime HCVアッセイ(Abbott Laboratories,DesPlaines,IL);5’UTR及びコア領域を標的とすることによりHCVを検出するために分岐DNA標識配列を使用するBayer Versant(登録商標)HCV RNA 3.0アッセイ(Bayer Diagnostics,Berkeley,CA);5’UTRを標的とするCobas Amplicor HCV Monitorバージョン2.0アッセイ(Roche Diagnostic Systems,Branchburg,N.J.)及びChiron Quantiplex(Chiron,Emeryville,CA)アッセイ;並びにHCVの3’UTRを標的とするために定量的RT−PCRを使用するApath 3’−UTR(Apath,LLC,St.Louis,MO)及びEraGen HCV(EraGen Biosciences,Madison,WI)アッセイが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,714,596号明細書
【特許文献2】米国特許第5,837,442号明細書
【特許文献3】米国特許第6,297,003号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】CDC.Recommendations for prevention and control of hepatitis C Virus(HCV)infection and HCV−related chronic disease.Morbid Mortal Wkly Rep 1998,47(RR−19):1−39
【非特許文献2】Choo et al.,Science(1989)244,359−362
【非特許文献3】Kato et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1990)87,9524−9528
【非特許文献4】Ito et al.,Virology(1999)254,288−296
【非特許文献5】Yamada et al.,Virology(1996)223,255−261
【非特許文献6】Ito et al.,J Virol.(1997)71(11),8698−8706
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、このような方法にも拘わらず、高スループットで効率的なワークフロー環境でより高い臨床感度と特異性を提供する新規方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1態様において、本発明は試験サンプル中のC型肝炎ウイルス(HCV)の増幅用プライマーに関する。前記プライマーは配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6並びにその相補配列から構成される群から選択される配列を有する。
【0010】
別の態様において、本発明は試験サンプル中のHCVの検出用プローブに関する。前記プローブは配列番号7、配列番号8及びその相補配列から構成される群から選択される配列を有する。
【0011】
更に別の態様において、本発明は試験サンプル中のHCVの増幅用プライマーセットに関する。前記プライマーセットは、
(a)配列番号1、配列番号2、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと;
(b)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマー
を含む。
【0012】
更に別の態様において、本発明は試験サンプル中のHCVの検出方法に関する。前記方法は、
(a)配列番号1及び配列番号2又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマーとに増幅条件下で試験サンプルを接触させ、第1の標的配列を作製する段階と;
(b)試験サンプル中のHCVの存在の指標として第1の標的配列と少なくとも1個のプローブのハイブリダイゼーションを検出する段階
を含み、少なくとも1個のプローブは配列番号7及び配列番号8又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する。
【0013】
上記方法において、増幅条件は試験サンプルを適切な増幅試薬の存在下で実施される増幅反応に付す工程を含む。更に、増幅反応はPCR、リアルタイムPCR(限定されないが、例えばTaq−Man(登録商標)アッセイ)又は逆転写PCR(RT−PCR)の少なくとも1種を使用する工程を含むことができる。
【0014】
上記方法では、少なくとも1個のプローブを検出可能なラベルで標識する。当分野で公知の通り、検出可能なラベルは少なくとも1個のプローブに直接結合することができる。更に、検出可能なラベルは直接検出可能なものとすることができる。例えば、検出可能なラベルは少なくとも1個のプローブの5’末端に結合した蛍光部分から構成することができる。更に、少なくとも1個のプローブは3’末端に結合したクエンチャー部分も含むことができる。検出可能なラベルとクエンチャー部分を5’末端と3’末端で逆にしてもよい。更に本願では、プローブがその標的配列に結合していない間は、クエンチャーが検出可能なラベルの検出を阻止するように、検出可能なラベルとクエンチャー部分を可逆的に近接するように維持することも想定される。検出されたラベルを定量することにより、標的HCVコピー数を決定できる。本願での使用に想定される定量アッセイを2〜3例挙げると、例えば、TaqMan(登録商標)アッセイ、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ及び不均一検出システムが挙げられる。
【0015】
あるいは、検出可能なラベルを少なくとも1個のプローブに間接的に結合することもできる。あるいは、検出可能なラベルを間接的に検出可能なものとすることもできる。
【0016】
更に、上記方法は、
(a)配列番号1又はその相補配列の配列を有するフォワードプライマーと、配列番号3又はその相補配列の配列を有するリバースプライマーとに増幅条件下で試験サンプルを接触させ、第2の標的配列を作製する段階と;
(b)試験サンプル中のHCVの存在の指標として第2の標的配列と配列番号7又はその相補配列の配列を有するプローブのハイブリダイゼーションを検出する段階
を含む。
【0017】
更に別の側面において、本発明は試験サンプル中のHCVの検出用キットに関する。前記キットは、
(a)配列番号1、配列番号2、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと;
(b)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマーと;
(c)増幅試薬
を含む。
【0018】
上記キットは更に少なくとも1個のプローブを含むこともでき、前記少なくとも1個のプローブは配列番号7、配列番号8及びその相補配列から構成される群から選択される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は試験サンプル中のHCVを増幅及び/又は検出するために使用することができるプライマー、プローブ、プライマーセット及びプライマーとプローブのセットに関する。本発明は本願に記載するプライマーとプローブのセットを使用して試験サンプル中のHCVを検出する方法にも関する。本発明は試験サンプル中のHCV配列の検出用キットにも関する。
【0020】
本発明のプライマーとプローブのセットは高い臨床感度及び特異性を達成する。最後に、本発明のプライマーとプローブのセットは高スループットで効率的なワークフローを提供する。
【0021】
A.定義
本願で使用する単数形の不定冠詞と定冠詞はそうでないことが内容から明白である場合を除き、複数の記載を包含する。本願で数値範囲を記載する場合には、同一精度の両端間の各数値が明白に想定される。例えば、6〜9の範囲では、6と9以外に7と8の数値も想定され、6.0〜7.0の範囲では、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9及び7.0の数値が明白に想定される。
【0022】
a)アンプリコン
本願で使用する「アンプリコン」なる用語は増幅反応の産物を意味する。アンプリコンの1例はPCR、リアルタイムPCR、RT−PCR、競合RT−PCR、リガーゼ連鎖反応(LCR)、ギャップLCR、鎖置換増幅法(SDA)、核酸配列ベース増幅法(NASBA)、転写介在増幅法(TMA)等の結果として生成されるDNA又はRNA産物(通常は遺伝子、DNA又はRNAのセグメント)である。
【0023】
b)増幅、増幅法又は増幅反応
本願で使用する「増幅」、「増幅法」又は「増幅反応」なる用語は同義に使用し、試験サンプル中の特定核酸(全種のDNA又はRNA)配列(例えば標的配列又は標的核酸)の集団の発現量を増加する方法又は工程を意味する。本発明で使用することができる増幅法の例としては、限定されないが、PCR、リアルタイムPCR、RT−PCR、競合RT−PCR等が挙げられ、いずれも当業者に公知である。
【0024】
c)増幅条件
本願で使用する「増幅条件」なる用語はプライマー配列のアニーリング及び/又は伸長を促進する条件を意味する。このような条件は当分野で周知であり、選択する増幅法により異なる。例えば、PCR増幅条件は一般に熱サイクリング(例えば2以上の温度間の反応混合物のサイクリング)を含む。等温増幅反応では、熱サイクリングなしに増幅が生じるが、反応を開始するために初期温度上昇が必要な場合もある。増幅条件は全反応条件を包含し、限定されないが、温度及び温度サイクリング、緩衝液、塩、イオン強度、pH等が挙げられる。
【0025】
d)増幅試薬
本願で使用する「増幅試薬」なる用語は増幅反応で使用される試薬を意味し、限定されないが、緩衝液、試薬、逆転写酵素及び/又はポリメラーゼもしくはエキソヌクレアーゼ活性をもつ酵素、酵素補因子(例えばマグネシウムやマンガン)、塩類、並びにデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)(例えばデオキシアデノシン三リン酸(dATP)、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)、デオキシチミジン三リン酸(dTTP)及びデオキシウリジン三リン酸(dUTP))が挙げられる。増幅試薬は利用する増幅法に応じて当業者が容易に選択することができる。
【0026】
e)直接検出可能及び間接的に検出可能
検出可能なラベル又は検出可能な部分に関して本願で使用する「直接検出可能」なる用語は検出可能なラベル又は検出可能な部分を検出可能にするために他の反応又は操作を必要としないことを意味する。例えば、蛍光部分は蛍光分光法により直接検出可能である。他方、検出可能なラベル又は検出可能な部分に関して本願で使用する「間接的に検出可能」なる用語は検出可能なラベル又は検出可能な部分が他の反応又は操作後に検出可能になることを意味する。例えば、ハプテンは蛍光色素等のレポーターに結合した適切な抗体と反応後に検出可能になる。
【0027】
f)フルオロフォア、蛍光部分、蛍光ラベル又は蛍光色素
「フルオロフォア」、「蛍光部分」、「蛍光ラベル」及び「蛍光色素」なる用語は本願では同義に使用し、ある波長の電磁波の量子を吸収し、これに応答して一般には前記波長よりも長い別の波長の1個以上の光子を放出する分子を意味する。各種構造及び特徴の多数の蛍光色素が本発明の実施で使用するのに適している。核酸分子を蛍光標識するための方法と材料は公知である(R.P.Haugland,“Molecular Probes:Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals 1992−1994,”5th Ed.,1994,Molecular Probes,Inc.参照)。好ましくは、蛍光ラベル又は部分は高い効率で吸光・発光し(例えば、使用する励起波長でモル吸光係数が高く、蛍光量子収率が高い)、光安定性である(例えば、分析を行うために必要な時間内で光励起後にさほど分解しない)。蛍光色素のうちには、それ自体直接検出可能ではなく、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)と呼ばれるプロセスで別の蛍光色素にエネルギーを移動し、検出されたシグナルを第2の色素から発生するものがある。このようなFRET蛍光色素対も「蛍光部分」なる用語に含まれる。物理的に連結した蛍光レポーター/クエンチャー部分の使用も本発明の範囲内に含まれる。これらの側面では、蛍光レポーターとクエンチャー部分がプローブの両端等で極近接するように維持されているとき、クエンチャー部分はレポーター部分から蛍光シグナルが検出されないようにする。DNAポリメラーゼによる開裂後のように2部分が物理的に分離されると、レポーター部分からの蛍光シグナルは検出可能になる。
【0028】
g)ハイブリダイゼーション
本願で使用する「ハイブリダイゼーション」なる用語はワトソン・クリック塩基対合又は非カノニカル塩基対合により複合体を形成するために十分に相補的な核酸配列間の複合体の形成を意味する。例えば、プライマーが標的配列(鋳型)と「ハイブリダイズ」するとき、このような複合体(ないしハイブリッド)はDNA合成を開始するために例えばDNAポリメラーゼにより必要とされるプライミング機能を行うために十分に安定している。当業者に自明の通り、相互にハイブリダイズする配列は安定なハイブリッドを形成するために完全な相補性をもつ必要はない。多くの状況では、ミスマッチが塩基の約10%未満であるならば、安定なハイブリッドが形成されよう。従って、本願で使用する「相補的」なる用語は、一般に約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94% 約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%以上の相同度が存在する場合に、アッセイ条件下でその相補配列と共に安定なデュプレクスを形成するオリゴヌクレオチドを意味する。少なくとも所望レベルの相補性をもつ配列同士が安定にハイブリダイズし、それよりも相補性の低い配列同士がハイブリダイズしないようにハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを推定及び調節する方法は当業者に自明である。ハイブリダイゼーション条件及びパラメータの例については、例えばSambrook et al.,“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”1989,Second Edition,Cold Spring Harbor Press:Plainview,NY;F.M.Ausubel,“Current Protocols in Molecular Biology”1994,John Wiley & Sons:Secaucus,NJを参照されたい。
【0029】
h)標識又は検出可能なラベルで標識
本願で使用する場合、「標識」なる用語と「検出可能なラベル(又は物質もしくは部分)で標識」なる用語は本願では同義に使用し、ある物質(例えばプライマー又はプローブ)を例えば別の物質(例えば増幅産物ないしアンプリコン)と結合後に可視化できることを意味する。好ましくは、検出可能なラベルはその強度が結合した物質の量に相関(例えば比例)する測定可能なシグナルを発生するように選択される。プライマーやプローブ等の核酸分子を標識及び/又は検出するための各種システムが当分野で周知である。標識核酸は分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的、化学的又は他の手段により直接又は間接的に検出可能なラベルの付加又はこのようなラベルとの共役により作製することができる。適切な検出可能な物質としては、限定されないが、放射性核種、フルオロフォア、化学発光物質、微粒子、酵素、色差ラベル、磁気ラベル、ハプテン、分子ビーコン、アプタマービーコン等が挙げられる。
【0030】
i)プライマー
「プライマー」なる用語はヌクレオチドと核酸重合剤(例えばDNA依存性又はRNA依存性ポリメラーゼ)の存在下で適切な増幅条件(例えば緩衝液、塩、温度及びpH)下においたときに核酸(全種のDNA又はRNA)の相補鎖であるプライマー伸長産物の合成開始点として機能することが可能なオリゴヌクレオチドを意味する。プライマーは1本鎖でも2本鎖でもよい。2本鎖の場合には、伸長産物を作製するために使用する前にその鎖の分離を可能にするように先ずプライマーを処理(例えば変性)すればよい。このような変性工程は一般には熱を使用して実施されるが、アルカリを使用して実施した後に中和してもよい。本発明のプライマーは約15〜約50ヌクレオチド長、好ましくは約20〜約40ヌクレオチド長、最も好ましくは約22〜約30ヌクレオチド長とすることができる。本発明のプライマーは本願により詳細に記載するヌクレオチドに加え、他のヌクレオチドも含むことができる。例えば、SDAで使用されるプライマーは標的結合配列の5’側に制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むことができ(米国特許第5,270,184号及び5,455,166号参照)、NASBA用及びTMA用プライマーはプライマーの標的結合配列に連結したRNAポリメラーゼプロモーターを含むことができる。選択した増幅反応で使用するためにこのような特殊配列を標的結合反応と連結する方法は当業者に周知である。
【0031】
「フォワードプライマー」なる用語は標的配列(例えば鋳型鎖)とハイブリダイズ(又はアニール)するプライマーを意味する。「リバースプライマー」なる用語は標的配列の相補鎖とハイブリダイズ(又はアニール)するプライマーを意味する。フォワードプライマーはリバースプライマーに対して5’側で標的配列とハイブリダイズする。
【0032】
j)プライマーセット
本願で使用する「プライマーセット」なる用語は、共働して該当標的配列又は標的核酸(例えばHCV内の標的配列)の増幅を開始することが可能な2個以上のプライマーを意味する。所定態様において、「プライマーセット」なる用語は増幅しようとする標的配列又は標的核酸の5’末端とハイブリダイズする5’(上流)プライマー(ないしフォワードプライマー)と、増幅しようとする標的配列又は標的核酸の相補配列とハイブリダイズする3’(下流)プライマー(ないしリバースプライマー)を含む1対のプライマーを意味する。このようなプライマーセット又はプライマー対はPCR増幅反応で特に有用である。
【0033】
k)プローブ
本願で使用する「プローブ」なる用語は適切なハイブリダイゼーション条件下で標的配列の少なくとも一部(例えば、増幅された標的配列の一部)と選択的にハイブリダイズすることが可能なオリゴヌクレオチドを意味する。本発明のプローブは約10〜50ヌクレオチド長、好ましくは約12〜35ヌクレオチド長、最も好ましくは14〜25ヌクレオチド長である。所定の場合では、プローブを検出可能なラベルで標識することができる。
【0034】
l)プライマーとプローブのセット
本願で使用する「プライマーとプローブのセット」なる用語は、共働して標的配列又は標的核酸の増幅を開始することが可能な2個以上のプライマーと、標的配列又は標的核酸を検出することが可能な少なくとも1個のプローブを含む組合せを意味する。プローブは一般に増幅産物(ないしアンプリコン)の鎖とハイブリダイズし、当業者に公知の日常的技術を使用して検出することが可能な増幅産物/プローブハイブリッドを形成する。
【0035】
m)標的配列又は標的核酸
「標的配列」なる用語と「標的核酸」なる用語は本願では同義に使用し、その有無を検出することが所望されるものを意味する。本発明の関連では、標的配列は1個以上のプライマーと共に複合体を形成する核酸配列を含むことが好ましい。標的配列は更に適切な増幅条件下でプローブと共に安定なハイブリッドを形成するプローブハイブリダイズ領域を含むことができる。当業者に自明の通り、標的配列は1本鎖でも2本鎖でもよい。本発明の関連では、該当標的配列はHCVの3’UTR内に位置する。
【0036】
n)試験サンプル
本願で使用する「試験サンプル」なる用語は一般にHCV配列等の該当検体を含むか否かを試験する生物材料及び/又は該当検体を含む疑いのある生物材料を意味する。試験サンプルは子宮頚管、膣もしくは肛門スワブないしブラシ擦過検体や、限定されないが、全血、血清、血漿、間質液、唾液、水晶体液、脳脊髄液、汗、尿、母乳、腹水、粘液、鼻汁、喀痰、腹腔液、膣液、経血、羊水、精液等を含む体液等の任意生物ソースに由来することができる。試験サンプルは生物ソースから採取したまま使用してもよいし、サンプルの特性を改変するように前処理後に使用してもよい。例えば、このような前処理としては、血液からの血漿調製、粘液希釈等が挙げられる。前処理方法としては更に、濾過、沈殿、希釈、蒸留、混合、濃縮、凍結乾燥、妨害成分の不活性化、試薬添加、溶解等も挙げられる。更に、液体媒体を形成したり、検体を遊離させるように固体試験サンプルを改変すると有益な場合もある。好ましくは、サンプルは血漿とすることができる。
【0037】
B.プライマー、プローブ及びプライマーとプローブのセット
1態様において、本発明は試験サンプル中のHCVを増幅するための1種以上のプライマーに関する。前記1種以上のプライマーとしては、下表1に示す配列のいずれか、下表1に示す配列のいずれかの相補配列並びに下表1に示す配列及び/又はその相補配列の任意組合せを含むか又はそれらから構成される配列を有するプライマーが挙げられる。下表1の候補プライマー配列は後記実施例3、表9に示すように、交差遺伝子型特異性を示す。
【0038】
【表1】

1側面において、本発明は試験サンプル中のHCVの増幅用プライマーセットであって、表1に記載するプライマーの1種以上を含むプライマーセットに関する。具体的には、前記プライマーセットは、
(a)配列番号1及び配列番号2、その相補配列(例えば、配列番号1又は配列番号2の1種以上の相補配列)並びにその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと;
(b)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、その相補配列(例えば、配列番号3、配列番号4、配列番号5又は配列番号6の1種以上の相補配列)及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマー
を含むことができる。
【0039】
別の態様において、本発明は試験サンプル中のHCVを検出するための1種以上のプローブに関する。前記1種以上のプローブとしては、下表2に示す配列のいずれか、下表2に示す配列のいずれかの相補配列並びに下表2に示す配列及び/又はその相補配列の任意組合せを含むか又はそれらから構成される配列を有するプローブが挙げられる。例えば、前記1種以上のプローブは下表2に示す単独プローブでもよいし、下表2に示すプローブの1種(例えば配列番号7又は配列番号8)の単独相補配列でもよいし、下表2に示す全プローブの相補配列(配列番号7及び8の相補配列)でもよいし、その任意組合せ及び/又は下表2に示すプローブの相補配列の組合せ(例えば(a)配列番号7と配列番号8;(b)配列番号7と配列番号8の相補配列;(c)配列番号7の相補配列と配列番号8;及び(d)配列番号7の相補配列と配列番号8の相補配列)でもよい。
【0040】
【表2】

【0041】
別の態様において、本発明は試験サンプル中のHCVを検出するためのプライマーとプローブのセットであって、上記表1に示したプライマーの1種以上と、上記表2に示したプローブの1種以上を含むセットに関する。例えば、プライマーとプローブのセットは、
(a)配列番号1及び配列番号2又はその相補配列の配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6又はその相補配列の配列を有する少なくとも1個のリバースプライマーと;
(b)配列番号7、配列番号8又はその相補配列の配列を有する少なくとも1個のプローブ
を含むことができる。
【0042】
1態様において、プライマーとプローブのセットは、
(a)配列番号1又はその相補配列の配列を有する1個のフォワードプライマーと、配列番号3又はその相補配列の配列を有する1個のリバースプライマーと;
(b)配列番号8又はその相補配列の配列を有する1個のプローブ
を含む。
【0043】
本発明のプライマーとプローブに基づいて1個以上のオリゴヌクレオチドアナログを作製することができる。このようなアナログはペプチド核酸ないし「PNA」(例えば、天然核酸のリン酸糖鎖主鎖の代わりにペプチド様主鎖をもつ分子)等の代替構造を含むことができる。これらの代替構造も本発明に含まれる。同様に、当然のことながら、本発明のプライマーとプローブはこれらの配列の特性に負の影響を与えない範囲で核酸塩基の欠失、付加及び/又は置換を含むことができる。特に、このような変異の結果、本願に記載するプライマーとプローブのハイブリダイジング特性が有意に低下しないようにすべきである。
【0044】
本発明のプライマーとプローブは当分野で公知の各種方法のいずれかにより作製することができる(例えば、Sambrook et al.,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual,”1989,2.Supp.Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;“PCR Protocols.A Guide to Methods and Applications,”1990,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;P.Tijssen“Hybridization with Nucleic Acid Probes−Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(Parts I and II),”1993,Elsevier Science;“PCR Strategies,”1995,M.A.Innis(Ed.),Academic Press:New York,NY;及び“Short Protocols in Molecular Biology,”2002,F.M.Ausubel(Ed.),5.Supp.Ed.,John Wiley & Sons:Secaucus,NJ参照)。例えば、本願に記載するプライマーとプローブは、例えばNarang et al.,Meth.Enzymol,1979,68:90−98;Brown et al.,Meth.Enzymol.,1979,68:109−151及びBelousov et al.,Nucleic Acids Res.,1997,25:3440−3444に記載されているように鋳型に基づく化学合成と重合により作製することができる。
【0045】
合成はPerkin Elmer/Applied Biosystems,Inc.(Foster City,CA)、DuPont(Wilmington,DE)又はMilligen(Bedford,MA)の市販品等のオリゴ合成装置で実施することができる。あるいは、本発明のプライマーとプローブは、例えばMidland Certified Reagent Company(Midland,TX)、ExpressGen,Inc.(Chicago,IL)、Operon Technologies,Inc.(Huntsville,AL)、BioSearch Technologies,Inc.(Novato,CA)及び他の多数の企業を含む当分野で周知の各種商業ソースから注文作製してもよい。
【0046】
必要又は所望される場合、本発明のプライマーとプローブの精製は当分野で周知の各種方法のいずれかにより実施することができる。プライマーとプローブの精製は天然アクリルアミドゲル電気泳動、例えばPearson et al.,J.Chrom.,1983,255:137−149に記載されているようなアニオン交換HPLC又は逆相HPLC(McFarland et al.,Nucleic Acids Res.,1979,7:1067−1080参照)により実施することができる。
【0047】
先述のように、当分野で公知の数種の手段のいずれかを使用して修飾型プライマー及びプローブを作製することができる。このような修飾の非限定的な例としては、メチル化、アナログによる天然ヌクレオチドの1個以上の置換、及び例えば非荷電結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメート等)又は荷電結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等)による修飾等のヌクレオチド間修飾が挙げられる。プライマー及びプローブは例えば蛋白質(例えばヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジン等)、インターカレーター(例えばアクリジン、プソラレン等)、(例えば金属、放射性金属、酸化性金属等をキレート化するための)キレート剤、及びアルキル化剤等の1種以上の他の共有結合部分を含むことができる。メチルもしくはエチルホスホトリエステル又はアルキルホスホロアミデート結合の形成によりプライマー及びプローブを誘導体化してもよい。更に、本発明のプライマー及び/又はプローブは検出可能なラベルで修飾してもよい。
【0048】
上記に示唆したように、本発明の所定態様では、プライマー及び/又はプローブを1種以上の増幅/検出法で使用する前に検出可能なラベル又は部分で標識することができる。本願に記載する方法で使用するには、1個以上のラベルを検出可能なラベル又は部分で標識することが好ましい。検出可能なラベルの役割は増幅した標的配列(例えばアンプリコン)の可視化及び/又は検出を可能にすることである。好ましくは、検出可能なラベルはその強度が分析下の試験サンプル中の増幅産物の量に相関(例えば比例)する測定可能なシグナルを発生するように選択される。
【0049】
1個以上の標識プローブと検出可能なラベルの結合は共有的でも非共有的でもよい。標識プローブは検出可能な部分の付加又はこのような部分との共役により作製することができる。ラベルは核酸配列に直接結合することもできるし、(例えばリンカーを介して)間接的に結合することもできる。種々の長さのリンカーないしスペーサーアームが当分野で公知で市販されており、立体障害を減らすように、又は得られる標識分子に他の有用もしくは望ましい性質を付与するように選択することができる(例えば、Mansfield et al.,Mol.Cell.Probes,1995,9:145−156参照)。
【0050】
プライマー及び/又はプローブ等のオリゴヌクレオチドの標識方法は当業者に周知である。標識プロトコルとラベル検出技術の解説については、例えばL.J.Kricka,Ann.Clin.Biochem.,2002,39:114−129;van Gijlswijk et al.,Expert Rev.Mol.Diagn.,2001,1:81−91;及びJoos et al.,J.Biotechnol.,1994,35:135−153を参照されたい。標準核酸標識方法としては、放射性物質の添加、蛍光色素(Smith et al.,Nucl.Acids Res.,1985,13:2399−2412参照)又は酵素(Connoly et al.,Nucl.Acids.Res.,1985,13:4485−4502参照)の直接結合;免疫化学的又は他のアフィニティ反応により核酸分子を検出可能にする化学修飾(Broker et al.,Nucl.Acids Res.,1978,5:363−384;Bayer et al.,Methods of Biochem.Analysis,1980,26:1−45;Langer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1981,78:6633−6637;Richardson et al.,Nucl.Acids Res.,1983,11:6167−6184;Brigati et al.,Virol.,1983,126:32−50;Tchen et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1984,81:3466−3470;Landegent et al.,Exp.Cell Res.,1984,15:61−72;及びA.H.Hopman et al.,Exp.Cell Res.,1987,169:357−368参照);並びにランダムプライミング、ニック翻訳、PCR及びターミナルトランスフェラーゼによるテーリング等の酵素介在標識法(酵素標識の解説については、例えばTemsamani et al.,Mol.Biotechnol.,1996,5:223−232参照)が挙げられる。
【0051】
本発明では、多様な検出可能なラベルのいずれも使用することができる。適切な検出可能なラベルとしては、限定されないが、各種リガンド、放射性核種ないし放射性同位体(例えば、32P,35S,H,14C,125I,131I等);蛍光色素;化学発光物質(例えばアクリジニウムエステル、安定化ジオキセタン等);分光分解可能な無機蛍光半導体ナノ結晶(例えば量子ドット)、金属ナノ粒子(例えば金、銀、銅及び白金)又はナノクラスター;酵素(例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);色差ラベル(例えば色素、金コロイド等);磁気粒子(例えばDynabeads(登録商標));及びビオチンとジオキシゲニン、又は他のハプテンと抗血清もしくはモノクローナル抗体用蛋白質が利用可能である。
【0052】
所定態様では、該当プローブを蛍光標識する。多様な化学構造及び物理的特性の多数の公知蛍光標識部分が本発明の実施で使用するのに適切である。適切な蛍光色素としては、限定されないが、Biosearch Technologies,Novato,CAから市販されているQuasar(登録商標)色素、フルオレセイン及びフルオレセイン色素(例えばフルオレセインイソチオシアニン(FITC)、ナフトフルオレセイン、4’,5’−ジクロロ−2’,7’−ジメトキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン(例えばFAM)、VIC、NED、カルボシアニン、メロシアニン、スチリル色素、オキソノール色素、フィコエリスリン、エリスロシン、エオシン、ローダミン色素(例えばカルボキシテトラメチルローダミンないしTAMRA、カルボキシローダミン6G、カルボキシ−X−ローダミン(ROX)、リサミンローダミンB、ローダミン6G、ローダミングリーン、ローダミンレッド、テトラメチルローダミンないしTMR)、クマリン及びクマリン色素(例えばメトキシクマリン、ジアルキルアミノクマリン、ヒドロキシクマリン及びアミノメチルクマリンないしAMCA)、オレゴングリーン色素(例えばオレゴングリーン488、オレゴングリーン500、オレゴングリーン514)、テキサスレッド、テキサスレッド−X、Spectrum Red(登録商標)、Spectrum Green(登録商標)、シアニン色素(例えばCy−3(登録商標)、Cy−5(登録商標)、Cy−3.5(登録商標)、Cy−5.5(登録商標))、Alexa Fluor色素(例えばAlexa Fluor 350、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 660及びAlexa Fluor 680)、BODIPY色素(例えばBODIPY FL、BODIPY R6G、BODIPY TMR、BODIPY TR、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665)、IR色素(例えばIRD40、IRD 700、IRD 800)等が挙げられる。使用可能な他の適切な蛍光色素と、蛍光色素をプローブ等のオリゴヌクレオチドに結合又は付加するための方法の例はRP Haugland,“The Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals”,Publisher,Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oreg.(June 1992))に記載されている。蛍光色素と標識キットは例えばAmersham Biosciences,Inc.(Piscataway,N.J.)、Molecular Probes Inc.(Eugene,OR)、及びNew England Biolabs Inc.(Beverly,MA)から市販されている。
【0053】
蛍光基(供与体)のうちには、それ自体直接検出可能ではなく、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プロセスで別の蛍光基(受容体)にエネルギーを移動し、検出可能な蛍光シグナルを第2の基から発生するものがある。これらの態様では、プローブは例えば、増幅された標的配列とハイブリダイズすると、検出可能になる。本発明で使用するのに適したFRET受容体/供与体対の例としては特に、例えばフルオレセイン/テトラメチルローダミン、IAEDANS/FITC、IAEDANS/5−(ヨードアセトアミド)フルオレセイン、B−フィコエリスリン/Cy−5及びEDANS/Dabcylが挙げられる。
【0054】
FRET対としては物理的に連結した蛍光レポーター/クエンチャー対の使用も挙げられる。例えば、検出可能なラベルとクエンチャー部分を各々プローブの5’末端又は3’末端に結合し、従って、検出可能なラベルとクエンチャー部分をプローブの両端に配置してもよいし、プローブの長手方向に相互に離間して配置してもよい。この間にプローブはその標的配列と結合していないので、検出可能なラベルとクエンチャー部分はクエンチャーが検出可能なラベルの検出を阻止するように可逆的に近接するように維持される。プローブが標的配列と結合すると、検出可能なラベルとクエンチャー部分は分離されるので、適切な条件下で検出可能なラベルを検出することが可能になる。
【0055】
このようなシステムを(例えば米国特許第5,210,015号、5,804,375号、5,487,792号及び6,214,979号に記載されているような)TaqMan(登録商標)アッセイで使用することや、(例えばTyagi et al.,Nature Biotechnol.,1996,14:303−308;Tyagi et al.,Nature Biotechnol,1998,16:49−53;Kostrikis et al.,Science,1998,279:1228−1229;Sokol et al.,Proc.Natl Acad.Sci.USA,1998,95:11538−11543;Marras et al.,Genet.Anal,1999,14:151−156;並びに米国特許第5,846,726号、5,925,517号、6,277,581号及び6,235,504号に記載されているような)分子ビーコンとして使用することは当業者に周知である。TaqMan(登録商標)アッセイフォーマットでは、増幅反応産物が「リアルタイム」で形成されるにつれて検出することができ、即ち、反応混合物が増幅条件下にある間に増幅産物/プローブハイブリッドが形成及び検出される。
【0056】
本発明の所定態様において、PCR検出プローブは5’末端を蛍光部分で標識し、3’末端をクエンチャー部分で標識したTaqMan(登録商標)様プローブであり、あるいは蛍光部分とクエンチャー部分を逆に配置してもよく、あるいは蛍光部分の満足な検出を可能にするようにプローブが標的配列とハイブリダイズするときに適切な分離が得られるように配列の長手方向に配置してもよい。TaqMan(登録商標)様プローブで使用するのに適した適切なフルオロフォアとクエンチャーは米国特許第5,210,015号、5,804,375号、5,487,792号及び6,214,979号、並びにWO01/86001に開示されている。クエンチャーの例としては、限定されないが、DABCYL(例えば4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸スクシンイミジルエステル)、ジアリールローダミンカルボン酸スクシンイミジルエステル(ないしQSY−7)、及び4’,5’−ジニトロフルオレセインカルボン酸スクシンイミジルエステル(ないしQSY−33)(いずれもMolecular Probes(現在はInvitrogen,Carlsbad,CAと合併)の製品)、クエンチャー1(Q1;Epoch Biosciences,Bothell,WAの製品)、又は「Black Hole Quencher」BHQ−1、BHQ−2及びBHQ−3(BioSearch Technologies,Inc.,Novato,CAの製品)が挙げられる。所定態様において、PCR検出プローブは5’末端をFAMで標識し、3’末端をBlack Hole Quencher(登録商標)又はBlack Hole Quencher(登録商標)plus(Biosearch Technologies,Novato,CA)で標識したTaqMan(登録商標)様プローブである。
【0057】
通常型又は修飾型ヌクレオチドの「テール」を検出用プローブに付加することもできる。テールに相補的であり、1個以上の検出可能なラベル(例えばフルオロフォア、酵素又は放射性標識した塩基)を含む核酸との第2のハイブリダイゼーションにより、アンプリコン/プローブハイブリッドの可視化が可能になる。
【0058】
特定標識技術の選択は状況により異なり、標識方法の容易さと費用、使用する種々の検出可能なラベル間のスペクトル間隔、所望されるサンプル標識品質、ハイブリダイゼーション反応(例えばハイブリダイゼーション工程の速度及び/又は効率)に及ぼす検出可能な部分の影響、使用する増幅方法の種類、検出システムの種類、検出可能なラベルにより発生されるシグナルの種類と強度等の数個の因子により決定することができる。
【0059】
C.増幅方法
試験サンプル中のHCV標的配列を増幅するための本発明のプライマー又はプライマーセットの使用は特定核酸増幅技術又はその特定変法に限定されない。実際に、本発明のプライマー及びプライマーセットは当分野で公知の各種核酸増幅法のいずれでも利用することができる(例えば、Kimmel et al.,Methods Enzymol.,1987,152:307−316;Sambrook et al.,“Molecular Cloning.A Laboratory Manual”,1989,2.Supp.Ed.,Cold Spring Harbour Laboratory Press:New York,NY;“Short Protocols in Molecular Biology”,F.M.Ausubel(Ed.),2002,5.Supp.Ed.,John Wiley & Sons:Secaucus,NJ参照)。
【0060】
このような核酸増幅法としては、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が挙げられる。PCRは多数の文献に記載されており、限定されないが、“PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications”,M.A.Innis(Ed.),1990,Academic Press:New York;“PCR Strategies”,M.A.Innis(Ed.),1995,Academic Press:New York;“Polymerase chain reaction:basic principles and automation in PCR.A Practical Approach”,McPherson et al.(Eds.),1991,IRL Press:Oxford;Saiki et al.,Nature,1986,324:163;並びに米国特許第4,683,195号、4,683,202号及び4,889,818号等が挙げられる。TaqMan(登録商標)アッセイ(Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,1991,88:7276−7280参照)や逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(ないしRT−PCR、例えば米国特許第5,322,770号及び5,310,652号に記載)等のPCRの変法も含まれる。
【0061】
一般に、PCRでは、対象から得られた過剰の試験サンプルに1対のプライマーを添加し(従って、試験サンプルと接触させ)、標的核酸の相補鎖とハイブリダイズさせる。標的配列を鋳型としてプライマーを各々DNAポリメラーゼにより伸長させる。伸長産物は元の標的鎖から解離(変性)後にそれ自体標的となる。次に新規プライマーをハイブリダイズさせ、ポリメラーゼにより伸長させ、アンプリコン数を指数的に増加するようにサイクルを反復する。PCR反応でプライマー伸長産物を生成することが可能なDNAポリメラーゼの例としては、限定されないが、大腸菌DNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIのKlenowフラグメント、T4 DNAポリメラーゼ、各種ソース(例えばPerkin Elmer,Waltham,MA)から入手可能なThermus aquaticus(Taq)、Thermus thermophilus(USB Corporation,Cleveland,OH)、Bacillus stereothermophilus(Bio−Rad Laboratories,Hercules,CA)から単離された熱安定性DNAポリメラーゼ、AmpliTaq Gold(登録商標)Enzyme(Applied Biosystems,Foster City,CA)、組換えThermus thermophilus(rTth)DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems,Foster City,CA)又はThermococcus litoralis(「ベント」ポリメラーゼ,New England Biolabs,Ipswich,MA)が挙げられる。RNA標的配列は上記のように、先ずmRNAをcDNAに逆転写(RT)した後にPCR(RT−PCR)を実施することにより増幅することができる。あるいは、米国特許第5,322,770号に記載されているように単一酵素を両方の工程で使用してもよい。
【0062】
上記酵素熱増幅法以外に、本発明のプライマー及びプライマーセットを使用してHCV配列を増幅するために等温酵素増幅反応を利用することもできる(Andras et al.,Mol.Biotechnol.,2001,19:29−44)。これらの方法としては、限定されないが、転写介在増幅法(TMA;TMAはKwoh et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1989,86:1173−1177;Giachetti et al.,J.Clin.Microbiol,2002,40:2408−2419;及び米国特許第5,399,491号に記載されている);自家持続配列複製法(3SR;3SRはGuatelli et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1990,87:1874−1848;及びFahy et al.,PCR Methods and Applications,1991,1:25−33に記載されている);核酸配列ベース増幅法(NASBA;NASBAはKievits et al.,J.Virol.Methods,1991,35:273−286;及び米国特許第5,130,238号に記載されている)及び鎖置換増幅法(SDA;SDAはWalker et al.,PNAS,1992,89:392−396;EP 0 500 224 A2に記載されている)が挙げられる。
【0063】
D.検出方法
本発明の所定態様において、本願に記載するプローブは増幅反応により生成された増幅産物を検出するために使用される。本願に記載するプローブは各種周知均一又は不均一法を使用して利用することができる。
【0064】
均一検出法としては、限定されないが、プローブに結合され、標的配列の存在下でシグナルを発生するFRETラベルの使用、分子ビーコン(Tyagi et al.,Nature Biotechnol.,1996,14:303−308;Tyagi et al.,Nature Biotechnol,1998,16:49−53;Kostrikis et al.,Science,1998,279:1228−1229;Sokol et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,1998,95:11538−11543;Marras et al.,Genet.Anal,1999,14:151−156;並びに米国特許第5,846,726号、5,925,517号、6,277,581号及び6,235,504号参照)、及びTaqMan(登録商標)アッセイ(米国特許第5,210,015号、5,804,375号、5,487,792号及び6,214,979号並びにWO01/86001参照)が挙げられる。これらの検出技術を使用すると、増幅反応産物が形成されるにつれて、即ちリアルタイムで検出することができる。その結果、反応混合物が増幅条件下にある間に増幅産物/プローブハイブリッドが形成され、検出される。
【0065】
所定態様において、本発明のプローブはTaqMan(登録商標)アッセイで使用される。TaqMan(登録商標)アッセイでは、蛍光シグナルの発生をモニターすることにより熱サイクリングと共に分析を実施する。アッセイシステムは標的コピー数の決定を可能にする定量データを生成することができる。例えば、未知サンプルを比較することができる1個以上のHCV配列の予め定量された懸濁液の系列希釈を使用して標準曲線を作成することができる。TaqMan(登録商標)は例えば上記のように蛍光レポーター色素とクエンチャー部分の両方で標識したプローブを消化するために内在5’ヌクレアーゼ活性をもつAmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼを使用して好適に実施される。プローブが消化されるにつれて増幅サイクル中に生じる蛍光の変化を測定し、蛍光部分とクエンチャー部分を分離し、標的配列の増幅に比例する蛍光シグナルを増加させることにより、アッセイ結果が得られる。
【0066】
均一検出方法の他の例としては、ハイブリダイゼーションプロテクションアッセイ(HPA)が挙げられる。このようなアッセイでは、非ヌクレオチドリンカーアーム化学(米国特許第5,585,481号及び5,185,439号参照)を使用して高度化学発光性分子であるアクリジニウムエステル(AE)でプローブを標識する(Weeks et al.,Clin.Chem.,1983,29:1474−1479;Berry et al.,Clin.Chem.,1988,34:2087−2090参照)。アルカリ過酸化水素によるAE加水分解により化学発光が誘起されると、N−メチルアクリドンが励起された後、光子を放出しながら失活する。標的配列の不在下ではAE加水分解は迅速である。他方、プローブが標的配列と結合しているときにす、AE加水分解速度は著しく低下する。従って、ハイブリダイズしたAE標識プローブとハイブリダイズしていないプローブを物理的分離の必要なしに溶液中で直接検出することができる。
【0067】
不均一検出システムも当分野で周知であり、一般に増幅配列を反応混合物中の他の物質から分離するために捕捉剤を利用する。捕捉剤は一般に1個以上の特定結合配列をコーティングした固体支持体材料(例えばマイクロタイターウェル、ビーズ、チップ等)を含む。結合配列は本発明のオリゴヌクレオチドプローブに付加するテール配列に相補的なものとすることができる。あるいは、結合配列はプローブのテール配列に相補的な配列をそれ自体含む捕捉オリゴヌクレオチドの配列に相補的なものとすることができる。捕捉剤に結合した増幅産物/プローブハイブリッドを残りの反応混合物から分離後、本願に記載する方法等の任意検出方法を使用して増幅産物/プローブハイブリッドを検出することができる。
【0068】
E.試験サンプル中のHCVの検出
本発明は試験サンプル中のHCVの存在の検出方法を提供する。更に、1個以上のHCV配列の予め定量された懸濁液の系列希釈を使用して作成した標準曲線又は他の標準化HCVプロファイルと試験サンプル検出値を比較することにより、試験サンプル当たりのHCV濃度を定量することができる。
【0069】
一般に、本発明の方法は先ず対象から試験サンプルを採取する。該当対象としては、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ、非ヒト霊長類及び好ましくはヒト等の任意哺乳動物が挙げられる。試験サンプルは当業者に公知の日常的技術を使用して対象から採取することができる。好ましくは、試験サンプルは少なくとも1種のHCV遺伝子型を含んでいるか、又は前記遺伝子型を含んでいる疑いがある。
【0070】
対象から試験サンプルを採取した後、本願に開示するプライマーセット又はプライマーとプローブのセットの少なくとも1種からのプライマー(及び場合により1個以上のプローブ)と試験サンプルを接触させ、反応混合物を形成する。次に反応混合物を増幅条件下に置く。プライマーは試験サンプル中の相補的HCV核酸とハイブリダイズする。サンプル中のHCV核酸とハイブリダイズしたプライマーを増幅し、少なくとも1個の増幅産物(即ち少なくとも1個の標的配列)を生成する。
【0071】
少なくとも1個の増幅産物と本発明のプローブの少なくとも1個(例えば本願に記載するプライマーとプローブのセットからの1個以上のプローブ)のハイブリダイゼーションを検出することにより、少なくとも1個の増幅産物を検出する。具体的には、配列番号7、配列番号8又はその相補配列の配列を有するプローブの1個以上で少なくとも1個の増幅産物が検出されたならば、試験サンプル中に少なくとも1種のHCV遺伝子型が存在すると判定する。
【0072】
F.キット
別の態様において、本発明は本願に記載する方法によるHCV検出に有用な材料及び試薬を含むキットを提供する。前記キットは診断検査所、実験研究所又は開業医が使用することができる。所定態様において、キットは本願のセクションBに記載したプライマーセット又はプライマーとプローブのセットの少なくとも1種と、場合により増幅試薬を含む。各キットは特定増幅法の適した増幅試薬を含むことが好ましい。従って、NASBA用キットは標的結合配列に連結したRNAポリメラーゼプロモーターと共にプライマーを含むことが好ましく、SDA用キットは標的結合配列の5’側に制限エンドヌクレアーゼ認識部位を含むプライマーを含むことが好ましい。同様に、TaqMan(登録商標)アッセイ等の5’ヌクレアーゼアッセイ用にキットを利用する場合には、本発明のプローブは少なくとも1個の蛍光レポーター部分と少なくとも1個のクエンチャー部分を含むことができる。
【0073】
適切な増幅試薬としては更に、例えば緩衝液、試薬、逆転写酵素及び/又はポリメラーゼ活性もしくはエキソヌクレアーゼ活性をもつ酵素、酵素補因子(例えばマグネシウムやマンガン)、塩類、増幅反応を実施するのに適したデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)の1種以上が挙げられる。
【0074】
手法に応じて、キットは更に洗浄用緩衝液、ハイブリダイゼーション緩衝液、標識緩衝液、検出手段及び他の試薬の1種以上を含むことができる。緩衝液及び/又は試薬はキットを利用する特定増幅/検出技術に合わせて最適化することが好ましい。手法の各工程を実施するためのこれらの緩衝液及び試薬のプロトコルもキットに含むことができる。
【0075】
更に、増幅の失敗による偽陰性試験結果の発生を防ぐため、細胞妥当性、サンプル抽出等を確認するために、増幅効率試験等の内部対照をキットに加えてもよい。最適な内部対照配列は増幅反応で標的核酸配列と競合しないように選択される。このような内部対照反応は当分野で公知である。
【0076】
更に核酸抽出前に増幅前の試験サンプルから核酸を単離するための試薬をキットに加えてもよい。
【0077】
試薬は固体(例えば凍結乾燥)又は液体形態で供給することができる。本発明のキットは場合により各緩衝液及び/又は試薬用の各種容器(例えばバイアル、アンプル、試験管、フラスコ又はボトル)を含むことができる。各成分は一般に夫々の容器に分注又は濃縮形態で提供するのに適切である。増幅/検出アッセイの所定工程を実施するのに適した他の容器も提供することができる。個々の容器を市販用に密封状態に維持することが好ましい。
【0078】
キットは更に、本願に記載する増幅試薬とプライマーセット又はプライマーとプローブのセットを使用するため、即ち試験サンプルを処理し、核酸を抽出し、及び/又は試験を実施するため、並びに得られた結果を解釈するための説明書と、法令による注意書きを含むことができる。このような説明書は場合により印刷物でもよいし、CD、DVD又は他のフォーマットの記録媒体でもよい。
【0079】
非限定的な例示として、本願開示の実施例を以下に記載する。
【実施例1】
【0080】
材料及び方法
A.HCVプライマー及びプローブの設計
実施例で使用した全オリゴヌクレオチドは当業者に公知の標準オリゴヌクレオチド合成法を使用して合成した。全プローブは1本鎖オリゴヌクレオチドであり、当分野で公知の日常的技術を使用して5’末端をフルオロフォアで標識し、3’末端をクエンチャー部分で標識した。例えば、配列番号8では、5’ラベルをFAMとし、3’ラベルをBHQ1−dT等のBlack Hole Quencher(BHQ)とする。プライマー(配列番号1及び配列番号3)は標識しない。
【0081】
B.リアルタイムPCR
核酸を捕捉して粒子を洗浄し、未結合サンプル成分を除去する磁気微粒子技術を使用してサンプルからHCV RNAを抽出、濃縮、精製した(例えば米国特許第5,234,809号参照)。結合した核酸を溶出させ、PCR反応混合物にそのまま加えた。単一管反応で逆転写PCR反応とリアルタイムPCR反応を実施した。配列番号1(フォワード)と配列番号3(リバース)を含むHCVプライマーミックス(本願では「HCVプライマーミックス」と総称する)を使用し、HCVゲノム配列を増幅した。HCV特異的プローブ(配列番号8)を使用してHCV 3’UTRのシグナルを発生させた。プライマーとプローブ以外に、PCR反応はrTth酵素10単位、(活性化試薬として)塩化マンガン2.5mM、及び他の増幅試薬(Bicene緩衝液中に0.3mM dNTP類,15nM ROX参照色素、200nMアプタマーを含有)から構成した。溶出した核酸50μLと上記PCR反応混合物50μLを96ウェル反応プレートの各ウェルに加え、光学接着カバーで密閉した。このプレートを以下のように増幅した。
【0082】
95℃、45秒及び62℃、30分を1サイクル;95℃、45秒及び60℃、45秒を50サイクルのサイクリング条件を使用してAbbott m2000rt機器(Abbott Molecular Inc.,Des Plaines,IL)でリアルタイム増幅/検出を実施した。50サイクルの読取り工程(60℃)中に蛍光測定値を記録した。
【実施例2】
【0083】
感度
他のHCV検出アッセイに対する本願に開示するアッセイ(「3’UTRアッセイ」)の相対感度を判定するために、各種起源のHCV標的を使用して検出限界性能を評価した。
【0084】
A.合成RNA構築物に対する感度
(実施例1のHCVプライマーミックスとリアルタイムPCRを使用して)RealTime HCVアッセイと3’UTRアッセイの検出限界を比較する試験で、Apath(St.Louis,MO)から入手した5’UTR及び3’UTR配列の両方を含むインビトロRNA構築物標的を使用した。(下記)表3では、3’UTRアッセイとRealTimeアッセイのどちらも153.77IU/mlでは3/3のヒットを示し、2.97IU/mlでは夫々3/3のヒットと1/3のヒット、2.00IU/mlでは各々1/3のヒットを示した。
【0085】
【表3】

表3からのデータは合成RNA構築物標的を使用した場合のRealTime HCVアッセイの予想検出限界3.31IU/mlと本願に開示する3’UTR HCVアッセイの2.05IU/mlに対応する(下表4参照)。
【0086】
【表4】

表3及び4の上記データは、本願に開示する3’UTRアッセイが(5’UTRを標的とする)RealTime HCVアッセイと同等の感度であることを立証している。従って、これらのデータは、本願に開示する3’UTRアッセイが3’UTRを標的としながら5’UTRアッセイと同等感度でHCVを検出するための代替アッセイとなることを立証している。
【0087】
B.検体由来HCVに対する感度
ProMedDx(Norton,MA)から入手した患者検体に由来する遺伝子型3をもつ高力価HCVウイルス溶出液を系列希釈し、(実施例1のHCVプライマーミックスとリアルタイムPCRを使用して)RealTime HCVアッセイにより定量した。この希釈系列を使用し、本願に開示する3’UTRアッセイの検出限界性能をRealTime HCVアッセイの検出限界性能に比較した。
【0088】
【表5】

表5からのデータは検体由来HCVを使用した場合のRealTime HCVアッセイの予想検出限界1.26IU/mlと本願に開示する3’UTR HCVアッセイの9.26IU/mlに対応する(下表6参照)。
【0089】
【表6】

表5及び6の上記データは先に開示したデータと一致し、本願に開示する3’UTRアッセイが(5’UTRを標的とする)RealTime HCVアッセイと同等の感度であることを立証している。
【実施例3】
【0090】
複数遺伝子型検出
本願に開示する3’UTRアッセイが各種HCV遺伝子型を検出する能力を判定するために、HCV遺伝子型1〜6に相当するTeragenix(Ft.Lauderdale,FL)からの32個の患者検体を作製し、(実施例1のHCVプライマーミックスとリアルタイムPCRを使用して)3’UTRアッセイを使用して定量した。全検体結果を先に得られたRealTimeアッセイ(5’UTR)結果と比較した(表7)。
【0091】
【表7】


表7の結果は、本願に開示する3’UTRアッセイがHCV遺伝子型1〜6を検出できることを立証している。更に、各遺伝子型に対する本願に開示する3’UTRアッセイの感度はRealTime HCVアッセイの感度と同等である。
【実施例4】
【0092】
代替HCVプライマーミックス−複数リバースプライマー
以下の実施例では配列番号1(フォワード)、配列番号3(リバース)及び配列番号6(リバース)を含むHCVプライマーミックスを使用してHCVゲノム配列を増幅した。HCV特異的プローブ(配列番号7)を使用してHCV 3’UTRのシグナルを発生させた。本実施例にも上記PCR反応及びサイクリング条件を適用する。本願に開示する3’UTRアッセイとRealTime HCVアッセイの両方で遺伝子型1aと遺伝子型3の2個の高力価検体の希釈液を試験した。
【0093】
【表8】

第2のリバースプライマー(配列番号6)を添加すると、(表8で認められる)HCV遺伝子型3検体3個で認められた閾値サイクル遅延が部分的に補償され、本願に開示する3’UTRアッセイの感度は増加する。認められる感度増加は配列番号3によるミスマッチを補償する第2のリバースプライマー(配列番号6)により標的配列の増幅が向上することにより達成されると考えられる。
【0094】
当業者に容易に理解される通り、本発明は記載した目的を実施し、結果及び利点を得ると共に、内在する目的を実施し、結果及び利点を得るために好適である。本願に記載する分子複合体と方法、手法、処理、分子及び特定化合物は好ましい態様の現在の代表例であり、例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。当業者に容易に理解される通り、本発明の範囲と趣旨から離れずに本願に開示するような発明に各種置換及び変更を実施することができる。
【0095】
本明細書に記載する全特許及び刊行物は本発明が属する分野の当業者の水準を示す。全特許及び刊行物を本願に援用する。
【0096】
本願に具体的に記載する発明は本願に具体的に開示しない全要素、限定の不在下で適切に実施することができる。使用した用語及び表現は限定ではなく、説明として使用しており、このような用語及び表現を使用する場合には、表示及び記載した構成又はその部分の等価物を排除する意図はない。当然のことながら、特許請求の範囲に記載する発明の範囲内で各種変更が可能である。従って、好ましい態様により本発明を具体的に開示したが、当然のことながら、当業者は本願に開示する概念の他の構成、変更及び変形を利用することができ、このような変更及び変形も以下の特許請求の範囲に記載する本発明の範囲に含まれるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの増幅用プライマーであって、前記プライマーが配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6及びその相補配列から構成される群から選択される配列を有する前記プライマー。
【請求項2】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの検出用プローブであって、前記プローブが配列番号7、配列番号8及びその相補配列から構成される群から選択される配列を有する前記プローブ。
【請求項3】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの増幅用プライマーセットであって、前記プライマーセットが、
(a)配列番号1、配列番号2、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと;
(b)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマー
を含む前記プライマーセット。
【請求項4】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスを検出するためのプライマーとプローブのセットであって、前記セットが、
(a)配列番号1及び配列番号2又はその相補配列の配列を有する2個のフォワードプライマーと、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6又はその相補配列の配列を有する4個のリバースプライマーと;
(b)配列番号7及び配列番号8又はその相補配列の配列を有する2個のプローブ
を含む前記プライマーとプローブのセット。
【請求項5】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの検出方法であって、前記方法が、
(a)配列番号1及び配列番号2又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマーとに増幅条件下で試験サンプルを接触させ、第1の標的配列を作製する段階と;
(b)試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの存在の指標として第1の標的配列と少なくとも1個のプローブのハイブリダイゼーションを検出する段階
を含み、少なくとも1個のプローブが配列番号7もしくは配列番号8又はその相補配列から構成される群から選択される配列を有する前記方法。
【請求項6】
増幅条件が試験サンプルを適切な増幅試薬の存在下で実施される増幅反応に付す工程を含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
増幅反応が、
a)PCR;
b)リアルタイムPCR;又は
c)逆転写PCR(RT−PCR)
の少なくとも1種を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1個のプローブを検出可能なラベルで標識する請求項5に記載の方法。
【請求項9】
検出可能なラベルを少なくとも1個のプローブに直接結合する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
検出可能なラベルを少なくとも1個のプローブに間接的に結合する請求項8に記載の方法。
【請求項11】
検出可能なラベルが直接検出可能である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
検出可能なラベルが間接的に検出可能である請求項8に記載の方法。
【請求項13】
検出可能なラベルが少なくとも1個のプローブの5’末端に結合した蛍光部分を含む請求項8に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1個のプローブが更に少なくとも1個のプローブの3’末端に結合したクエンチャー部分を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
更に、
(a)配列番号1又はその相補配列の配列を有するフォワードプライマーと、配列番号3又はその相補配列の配列を有するリバースプライマーとに増幅条件下で試験サンプルを接触させ、第2の標的配列を作製する段階と;
(b)試験サンプル中のHCVの存在の指標として第2の標的配列と配列番号7又はその相補配列の配列を有するプローブのハイブリダイゼーションを検出する段階
を含む請求項5に記載の方法。
【請求項16】
試験サンプル中のC型肝炎ウイルスの検出用キットであって、
(a)配列番号1、配列番号2、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のフォワードプライマーと;
(b)配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、その相補配列及びその任意組合せから構成される群から選択される配列を有する少なくとも1個のリバースプライマーと;
(c)増幅試薬
を含む前記キット。
【請求項17】
更に少なくとも1個のプローブを含み、前記少なくとも1個のプローブが配列番号7、配列番号8及びその相補配列から構成される群から選択される請求項16に記載のキット。

【公表番号】特表2012−513757(P2012−513757A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−543708(P2011−543708)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/069641
【国際公開番号】WO2010/078291
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】