説明

C2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子及びその合成方法

本発明は、化学工業の技術分野におけるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子及び合成方法に係わるものである。本発明は、(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセンを最初原料とし、2ステップまたは3ステップの反応により目標化合物を作製する。まず、(1)(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセンをトリフルオロ酢酸の作用においてオキサゾリン環を開環してエステルアミド類化合物を得、次に、エステル交換または還元とアルキル化により目標化合物の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を得る。本発明により作製した配位子は、各種の金属触媒の非対称反応に適用することができ、高い反応活性と立体選択性をもつ。その構造式は下記の通りである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学工業技術分野におけるキラリティー配位子及びその合成方法に関し、特に、C2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子及びその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キラリティー薬物工業の速やかな興起は、主に非対称合成の方法学研究の大きな発展に恵まれているからであり、逆に、キラリティー薬物工業はまた非対称合成の方法学の研究を促進している。有機合成において非対称触媒はキラリティー化合物を取得するための最も有効で有利な方法の一つである。有機合成の非対称触媒の反応において、高い反応活性と高いキラリティー選択性を得るポイントはキラリティーホスフィン配位子の構造にある。従って、キラリティーホスフィン配位子の開発は学術界と産業界により注目されている重点的な研究分野となっている。
【0003】
1996年、張万斌と池田功グループは初めて面性キラリティーだけをもつC2−対称のフェロセンP,P−配位子を合成し、それをアリル置換反応に成功に適用し、94%e.eの高い光学収率を得た。
【0004】
2−対称の軸性キラリティー配位子と同様に、非対称触媒反応において、キラリティー配位子と金属配位が形成する二面角の大きさは触媒反応における非対称誘導に影響する鍵となる要因であることが多い。この角の微小な変換によって、非対称触媒反応の立体選択性に大きな影響を与える可能性がある。フェロセン類配位子の場合、ちょうどメタロセンの変換により、2つのシクロペンタジエニド環の間の距離を調整して、配位子が金属と配位するときに形成する二面角(捻り角)を変化させ、最終的に触媒反応のキラリティーフィールドを変化させることができると推定されている。本発明は、この概念により指導され、面性キラリティーだけをもつ新型のC2−対称のルテノセンビスホスフィン配位子を設計合成し、面性キラリティーにおける二面角の非対称触媒反応への影響を考察することにより、高い触媒活性と高いキラリティー選択性及び広い適用性をもつ新型触媒の選出を図っている。
【0005】
従来技術に関する文献を検索した結果、本発明のテーマと同様または類似の文献報告はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術の不足に対して、C2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を提供し、それによってより良好な非対称触媒効果をもつ面性キラリティー配位子の選出を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記の技術思想により実現する。本発明のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の構造式は下記(1a)又は(1b)の通りである。
【0008】
【化1】

【0009】
また、本発明の配位子の面性キラリティーは立体配置がS,Sである。
【0010】
また、本発明の配位子の面性キラリティーだけを持つルテノセン配位子において、構造式中のR1がフェニル基である。
【0011】
また、本発明はC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法であって、
ステップ(1)下記構造式(2)で表されるジオキサゾリン化合物と酸とを溶媒中で反応させてオキサゾリン環を開環し、次いで得られた化合物と無水酢酸とを反応させて、相当するエステルアミド類化合物を得るステップと、
ステップ(2A)該エステルアミド類化合物と、一般式;R−OM(但し、Rは前記と同義。Mはアルカリ金属原子を示す。)で表されるアルコラートとを反応させるステップとを含むことを特徴とする下記構造式(1a)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法である。
【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

【0014】
また、本発明はC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法であって、
ステップ(1)下記構造式(2)で表されるジオキサゾリン化合物と酸とを溶媒中で反応させてオキサゾリン環を開環し、次いで得られた化合物と無水酢酸とを反応させて、相当するエステルアミド類化合物を得るステップと、
ステップ(2B)該エステルアミド類化合物と強塩基とを反応させ、得られた生成物と一般式;R2SO4(但し、Rは前記と同義。)で表されるアルキル化剤とを塩基の存在下に反応させるステップとを含むことを特徴とする下記構造式(1b)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法である。
【0015】
【化4】

【0016】
【化5】

【0017】
また、本発明は前記ステップ(1)において、酸がトリフルオロ酢酸であることを特徴とするC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法である。
【0018】
また、本発明は前記ステップ(1)において、トリフルオロ酢酸が存在する条件において、加水分解を行い、得られた加水分解生成物と無水酢酸とを塩基の存在下に反応させアシル化を行うことを特徴とするC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法である。
【0019】
また、本発明は前記ステップ(2B)において、強塩基がテトラヒドロリチウムアルミニウムであることを特徴とするC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配位子は、面性キラリティーだけをもつC2−対称のビスホスフィン配位子である。このような配位子は、非対称シクロプロパン化反応、アリル置換反応、官能基化または非官能基化のオレフィンおよびイミン類化合物の水素化など各種の金属触媒の非対称反応に適用することができ、高い反応活性と立体選択性をもち、応用の先行きが比較的広い。
【0021】
また、本発明により合成した配位子は、まったく新しいタイプの面性キラリティーだけをもつC2−対称のルテノセンに基づくビスホスフィン配位子である。さらに、この分野における配位子の構成・効果関係と非対称触媒の効果間の規律を見つけ、それを指導として高い触媒活性と高いキラリティー選択性をもつ広い適用性の新型触媒を設計合成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子は、下記構造式(1a)又は(1b)で表される。
【0023】
【化6】

【0024】
構造式(1a)又は(1b)の式中のRはメチル基又はエチル基を示す。R1は直鎖状又は分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基又はアラルキル基を示す。前記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチル基、n−デシル基、n−オクタデシル基、iso−オクタデシル基等の炭素数1〜18の直鎖状又は分岐状のアルキル基等が挙げられ、該アルキル基は炭素数1〜5の直鎖状又は分岐状のアルキル基が好ましい。前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。前記アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。これらの基の中、構造式中のR1はフェニル基が特に好ましい。
【0025】
前記構造式(1a)又は(1b)のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を得るには、下記反応スキーム(1)に従って構造式(2)で表されるジオキサゾリン化合物と酸とを溶媒中で反応させてオキサゾリン環を開環し(以下、「第1−1の反応」と呼ぶ)、次いで得られた化合物と無水酢酸とを反応させて(以下、「第1−2の反応」と呼ぶ)、相当するエステルアミド類化合物(構造式(3))を得るステップ(1)を行った後、後述するステップ(2A)又は(2B)を行うことにより製造することができる。
【0026】
【化7】

【0027】
ステップ(1)で使用する出発原料のジオキサゾリン化合物の構造式(2)中のRは、前記と同義である。R2はアルキル基を示し、該アルキル基の種類は特に制限されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜5の低級アルキル基が好ましい。
【0028】
第1−1の反応で使用する酸の種類は、例えば、塩酸、硫酸、蓚酸、燐酸、過塩素酸、過ヨウ素酸、フッ化水素酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、氷酢酸等の1種又は2種以上を組み合わせて用いることが出来、これらの中、トリフルオロ酢酸が特に好ましい。酸の使用量は構造式(2)のジオキサゾリン化合物に対して1〜50倍モル、好ましくは15〜35倍モルが望ましい。また、使用する溶媒は、水、低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、低級ジアルコキシエタン、脂肪族アミド等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種叉は2種以上の混合溶媒として用いられる。有機溶媒としては例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等の低級ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のジ低級アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジベンジルオキシエタン等の低級ジアルコキシエタン、ジメチルホルムアミド等の脂肪族アミド等が挙げられる。本発明において、第1−1の反応で使用する溶媒は、水とテトラヒドロフランの混合溶媒が好ましい。
【0029】
第1−1の反応の反応条件は反応温度が40℃以下、好ましくは−20〜30℃で、反応時間は5時間以上、好ましくは10〜30時間で、ジオキサゾリン化合物の開環反応を行う。
【0030】
ステップ(1)では、前記第1−1の反応に引き続き、第1−2の反応を行い前記ジオキサゾリン化合物の開環反応で得られた化合物と無水酢酸とを溶媒中で反応させる。
【0031】
無水酢酸の添加量は、前記構造式(2)のジオキサゾリン化合物に対して2〜50倍モル、好ましくは30〜40倍モルになるように添加することが望ましい。また、第1−2の反応で使用できる溶媒は、低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、低級ジアルコキシエタン、脂肪族アミド等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種叉は2種以上の混合溶媒として用いられる。具体的には例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等の低級ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のジ低級アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジベンジルオキシエタン等の低級ジアルコキシエタン、ジメチルホルムアミド等の脂肪族アミド等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いられる。また、かかる反応において、塩基の存在下に反応を行うことにより、反応効率を高めることができる。使用できる塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア等の無機塩基類、トリメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、4−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、1,3−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、N−エチルピペリジン、キノリン、イソキノリン、N,N−ジメチルピペラジン、N,N−ジエチルピペラジン、キナルジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、4−メチルモルホリン、2,4,6−コリジン等の有機塩基類、ピリジル基やジメチルアミノベンジル基を有するイオン交換樹脂等が挙げられ、これらの塩基の中、特にピリジンが好ましい。塩基の添加量は、前記構造式(2)のジオキサゾリン化合物に対して10〜100倍モル、好ましくは35〜65倍モルになるように添加することが望ましい。
【0032】
第1−2の反応の反応条件は反応温度が−10〜50℃、好ましくは10〜35℃で、反応時間は5時間以上、好ましくは10〜30時間である。
【0033】
反応終了後、反応溶液から溶媒を除去して目的物を回収し、エステルアミド類化合物(構造式(3))を得る。
【0034】
本発明では前記ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物を用いて、ステップ(2A)又は(2B)を行うことにより目的とする構造式(1a)又は(1b)のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を製造することができる。
【0035】
ステップ(2A)では、ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物(構造式(3))と、一般式;R−OM(但し、Rは前記と同義。Mはアルカリ金属原子を示す。)で表されるアルコラートとを溶媒中で反応させ、下記構造式(1a)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を得る。
【0036】
【化8】

【0037】
ステップ(2A)で使用するアルコラートは、一般式;R−OMで示され、式中のRは、前記構造式(1a)の式中のRに相当する基であり、具体的には、前述したとおり、Rはメチル基又はエチル基を示す。また、式中のMはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子を示す。
【0038】
アルコラートの添加量は、ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物(構造式(3))に対して10〜100倍モル、好ましくは30〜50倍モルである。
【0039】
また、使用できる溶媒としては、例えば低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、低級ジアルコキシエタン、脂肪族アミド等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種叉は2種以上の混合溶媒として用いられる。具体的には例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等の低級ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のジ低級アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジベンジルオキシエタン等の低級ジアルコキシエタン、ジメチルホルムアミド等の脂肪族アミド等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いられる。
【0040】
反応条件は、反応温度が−10〜100℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は5時間以上、好ましくは12〜24時間である。
【0041】
ステップ(2B)では、前記ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物(構造式(3))と強塩基とを反応させ、得られた生成物と一般式;R2SO4(但し、Rは前記と同義。)で表されるアルキル化剤とを塩基の存在下に反応し、下記構造式(1b)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を得る。
【0042】
【化9】

【0043】
ステップ(2B)では、まず、前記ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物(構造式(3))と、強塩基とを溶媒中で反応させる。使用する強塩基としては、例えば金属ナトリウム、金属カリウム、アルキル化リチウム、テトラヒドロリチウムアルミニウム等が挙げられ、これらの中、テトラヒドロリチウムアルミニウムが特に好ましい。強塩基の添加量は、前記ステップ(1)で得られたエステルアミド類化合物(構造式(3))に対して1〜20倍モル、好ましくは3〜10倍モルである。使用する溶媒としては、例えば低級ハロゲン化炭化水素、芳香族炭化水素、ジ低級アルキルエーテル、環状エーテル、低級ジアルコキシエタン、脂肪族アミド等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種叉は2種以上の混合溶媒として用いられる。具体的には例えばクロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素等の低級ハロゲン化炭化水素、ベンゼン、クロルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル等のジ低級アルキルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,2−ジベンジルオキシエタン等の低級ジアルコキシエタン、ジメチルホルムアミド等の脂肪族アミド等が挙げられ、これらの溶媒は1種又は2種以上で用いられる。
【0044】
反応条件は反応温度が−10〜100℃、好ましくは5〜30℃であり、反応時間は1時間以上、好ましくは1〜8時間である。
【0045】
次いで、ステップ(2B)では前記で得られた生成物(以下、「生成物(2b1)」と呼ぶ)とアルキル化剤とを溶媒中で反応させる。
【0046】
使用するアルキル化剤は、一般式;R2SO4(但し、Rは前記と同義。)で表されるアルキル硫酸エステルを使用することができ、式中のRは、前記構造式(1b)の式中のRに相当する基であり、具体的には、前述したとおり、Rはメチル基又はエチル基を示す。
【0047】
アルキル化剤の添加量は前記生成物(2b1)に対して1〜6倍モル、好ましくは2〜4倍モルである。
【0048】
前記塩基は、例えば水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア等の無機塩基類、トリメチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、4−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン、1,3−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、N−エチルピペリジン、キノリン、イソキノリン、N,N−ジメチルピペラジン、N,N−ジエチルピペラジン、キナルジン、2−エチルピリジン、4−エチルピリジン、3,5−ルチジン、2,6−ルチジン、4−メチルモルホリン、2,4,6−コリジン等の有機塩基類、ピリジル基やジメチルアミノベンジル基を有するイオン交換樹脂等が挙げられ、これらの塩基の中、特に水酸化ナトリウムが好ましい。塩基の使用量は前記生成物(2b1)に対して1〜10倍モル、好ましくは5〜8倍モルである。
【0049】
使用できる溶媒は、生成物に対して不活性溶媒が用いられ、例えば、N−メチル−2−ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3−ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、蟻酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、ジエチルエーテル、1,3−プロパンサルトン、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の非プロトン性有機溶媒の1種または2種以上を混合した溶媒が挙げられる。
【0050】
反応条件は反応温度が−10〜100℃、好ましくは20〜50℃であり、反応時間は5時間以上、好ましくは8〜48時間である。
【0051】
前記ステップ(2A)又は(2B)において、反応終了後、必要により精製を行って構造式(1a)又は(1b)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子を得る。
【0052】
〔実施例1〕
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
1.アミドエステル(3)の調製
(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセン(1.65g、2mmol)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解させた後、順次水(2mL)、トリフルオロ酢酸(3.8mL、49.4mmol)、無水硫酸ナトリウムNa2SO4(18.8g)を加え、懸濁液を室温において撹拌して1夜置き、濾過して、溶剤を蒸発除去し、残留物をジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、順次ピリジン(7.2mL、89mmol)、酸無水物(12.0mL、76.4mmol)を加え、室温において撹拌して1夜置き、混合物をジクロロメタン(80mL)で希釈し、それぞれ希塩酸(10%)、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル)、目標生成物1.56gを得、y=82.8%である。
【0053】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.14(m,20H,ArH),6.59−6.58(brs,2H,NH),5.39(brs,2H,RcH),4.83(brs,2H,RcH),4.39−4.34(dd,J=4Hz,15.6,2H,OCH),4.05−4.01(dd,J=3.6Hz,11.2H,OCH),3.90(m,2H,NCH),3.82(brs,2H,FCH),2.18−2.17(m,2H,Me2CH),2.16(s,6H,COCH3),1.02−1.00(d,J=8.8Hz,6H,CH3),0.99−0.97(d,J=8.8Hz,6H,CH3)。
【0054】
2.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス(メトキシカルボニル)ルテノセン(1)の調製
アミドエステル(0.30g、0.32mmol)をテトラヒドロフラン(8mL)に溶解させた後、室温においてその中にナトリウム(0.3g、40equiv.)とメタノール(10mL)によるメトキシドナトリウム溶液を加え、室温において撹拌して1夜置く。25%(v/v)酢酸のメタノール溶液でpHを中性に調整して、溶剤を蒸発除去し、ジクロロメタン(20mL)に溶解させ、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:6)、薄い緑色の固体0.17gを得、y=71.5%である。
【0055】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.17(m,20H,ArH),5.42−5.41(brs,2H,FCH),4.70−4.67(t,J=5.2Hz,2H,FcH),3.87(brs,2H,FcH),3.70(s,6H,OCH3)。
【0056】
〔実施例2〕
1.アミドエステル(3)の調製
(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセン(1.65g、2mmol)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解させた後、順次水(2mL)、トリフルオロ酢酸(3.8mL、49.4mmol)、無水硫酸ナトリウムNa2SO4(18.8g)を加え、懸濁液を室温において撹拌して1夜置き、濾過して、溶剤を蒸発除去し、残留物をジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、順次ピリジン(7.2mL、89mmol)、酸無水物(12.0mL、76.4mmol)を加え、室温において撹拌して1夜置き、混合物をジクロロメタン(80mL)で希釈し、それぞれ希塩酸(10%)、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル)、目標生成物1.56gを得、y=82.8%である。
【0057】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.14(m,20H,ArH),6.59−6.58(brs,2H,NH),5.39(brs,2H,RcH),4.83(brs,2H,RcH),4.39−4.34(dd,J=4Hz,15.6,2H,OCH),4.05−4.01(dd,J=3.6Hz,11.2H,OCH),3.90(m,2H,NCH),3.82(brs,2H,FCH),2.18−2.17(m,2H,Me2CH),2.16(s,6H,COCH3),1.02−1.00(d,J=8.8Hz,6H,CH3),0.99−0.97(d,J=8.8Hz,6H,CH3)。
【0058】
2.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス(オキスエチルカルボニル)ルテノセン(1)の調製
アミドエステル(0.335g、0.36mmol)をテトラヒドロフラン(20mL)に溶解させた後、室温においてその中にナトリウム(0.6g、70equiv.)とエタノール(40mL)によるナトリウムエトキシド溶液を加え、室温において撹拌して1夜置く。25%(v/v)酢酸のメタノール溶液でpHを中性に調整して、溶剤を蒸発除去し、ジクロロメタン(20mL)に溶解させ、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:6)、薄い緑色の固体0.19gを得、y=73.7%である。
【0059】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.30−7.16(m,20H,ArH),5.42−5.41(brs,2H,FcH),4.78−4.79(t,J=2.4Hz,2H,FcH),4.24−4.08(m,4H,OCH2),3.84−3.83(brs,2H,FcH),1.13−1.10(s,6H,CH3)。
【0060】
〔実施例3〕
1.アミドエステル(3)の調製
(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセン(1.65g、2mmol)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解させた後、順次水(2mL)、トリフルオロ酢酸(3.8mL、49.4mmol)、無水硫酸ナトリウムNa2SO4(18.8g)を加え、懸濁液を室温において撹拌して1夜置き、濾過して、溶剤を蒸発除去し、残留物をジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、順次ピリジン(7.2mL、89mmol)、酸無水物(12.0mL、76.4mmol)を加え、室温において撹拌して1夜置き、混合物をジクロロメタン(80mL)で希釈し、それぞれ希塩酸(10%)、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル)、目標生成物1.56gを得、y=82.8%である。
【0061】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.14(m,20H,ArH),6.59−6.58(brs,2H,NH),5.39(brs,2H,RcH),4.83(brs,2H,RcH),4.39−4.34(dd,J=4Hz,15.6,2H,OCH),4.05−4.01(dd,J=3.6Hz,11.2H,OCH),3.90(m,2H,NCH),3.82(brs,2H,FCH),2.18−2.17(m,2H,Me2CH),2.16(s,6H,COCH3),1.02−1.00(d,J=8.8Hz,6H,CH3),0.99−0.97(d,J=8.8Hz,6H,CH3)。
【0062】
2.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ジメチロールルテノセン(1)の調製
テトラヒドロフラン(8mL)とテトラヒドロリチウムアルミニウム(46mg、6equiv.)を含む懸濁液にアミドエステル(188g、0.2mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、室温において2〜3h撹拌し、氷水浴において丁寧に飽和硫酸ナトリウムを加えた後、3倍の体積の酢酸エチルで希釈し、順次10%の塩酸溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾燥後の残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:4)、生成物のグリコール110mgを得、y=89.5%である。
【0063】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.43−7.22(m,20H,Ar−H),4.96(b,2H,RcH),4.48(d,J=12.8Hz,2H,−OCH2),4.23(b,2H,RcH),4.05(d,J=12.8Hz,−OCH2),3.92(b,2H,RcH),3.34(b,2H,−OH)。
【0064】
3.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス(メトキシメチル)ルテノセン(1)の調製
グリコール(14mg、0.022mmol)をDMF(5mL)に溶解させ、水酸化ナトリウム(5mg、6equiv.)とMe2SO4(8.4μL)を加え、20〜50℃において8h反応させ、反応液をジクロロメタンで希釈し、それぞれ水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:8)、目標化合物12.4mgを得、y=82.0%である。
【0065】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.22(m,20H,Ar−H),4.83(b,2H,RcH),4.33−4.29(dd,J=2.8,11.2Hz,2H,−OCH2),4.25(b,2H,RcH),4.05(d,J=11.2Hz,−OCH2),3.83(b,2H,RcH),3.17(s,6H,−OCH3)。
【0066】
〔実施例4〕
1.アミドエステル(3)の調製
(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス((S)−4−イソプロピルオキサゾリン)ルテノセン(1.65g、2mmol)をテトラヒドロフラン(40mL)に溶解させた後、順次水(2mL)、トリフルオロ酢酸(3.8mL、49.4mmol)、無水硫酸ナトリウムNa2SO4(18.8g)を加え、懸濁液を室温において撹拌して1夜置き、濾過して、溶剤を蒸発除去し、残留物をジクロロメタン(40mL)に溶解させた後、順次ピリジン(7.2mL、89mmol)、酸無水物(12.0mL、76.4mmol)を加え、室温において撹拌して1夜置き、混合物をジクロロメタン(80mL)で希釈し、それぞれ希塩酸(10%)、水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル)、目標生成物1.56gを得、y=82.8%である。
【0067】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.34−7.14(m,20H,ArH),6.59−6.58(brs,2H,NH),5.39(brs,2H,RcH),4.83(brs,2H,RcH),4.39−4.34(dd,J=4Hz,15.6,2H,OCH),4.05−4.01(dd,J=3.6Hz,11.2H,OCH),3.90(m,2H,NCH),3.82(brs,2H,FCH),2.18−2.17(m,2H,Me2CH),2.16(s,6H,COCH3),1.02−1.00(d,J=8.8Hz,6H,CH3),0.99−0.97(d,J=8.8Hz,6H,CH3)。
【0068】
2.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ジメチロールルテノセン(1)の調製
テトラヒドロフラン(8mL)とテトラヒドロリチウムアルミニウム(46mg、6equiv.)を含む懸濁液にアミドエステル(188g、0.2mmol)のテトラヒドロフラン(2mL)溶液を加え、室温において2〜3h撹拌し、氷水浴において丁寧に飽和硫酸ナトリウムを加えた後、3倍の体積の酢酸エチルで希釈し、順次10%の塩酸溶液、飽和炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、蒸発乾燥後の残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:4)、生成物のグリコール110mgを得、y=89.5%である。
【0069】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.43−7.22(m,20H,Ar−H),4.96(b,2H,RcH),4.48(d,J=12.8Hz,2H,−OCH2),4.23(b,2H,RcH),4.05(d,J=12.8Hz,−OCH2),3.92(b,2H,RcH),3.34(b,2H,−OH)。
【0070】
3.(S)−(S)−1,1’−ビス(ジフェニルフォスフィン)−2,2’−ビス(オキスエチルメチル)ルテノセン(1)の調製
グリコール(33mg、0.05mmol)をDMSO(10mL)に溶解させ、水酸化ナトリウム(12mg、6equiv.)とEt2SO4(14.2μL,3equiv.)を加え、20〜50℃において8h反応させ、反応液をジクロロメタンで希釈し、それぞれ水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶剤を蒸発除去して、残留物についてカラムクロマトグラフィーを行い(酢酸エチル/石油エーテル=1:8)、目標化合物27.9mgを得、y=78%である。
【0071】
1H NMR(400MHz,CDCl3):δ7.51−7.19(m,20H,Ar−H),4.83(b,2H,RcH),4.35−4.32(dd,J=11.6,2Hz,2H,RcCH2),4.26(b,2H,RcH),4.10(d,J=11.6Hz,2H,RcH),3.82(b,2H,RcH),3.40−3.24(m,4H,OCH2),0.89(t,J=6.8Hz,6H,−CH3)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子であって、その構造式が下記(1a)又は(1b)の通りであることを特徴とするルテノセンビスホスフィン配位子。
【化1】

【請求項2】
面性キラリティーがS,S体であることを特徴とする、請求項1に記載のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子。
【請求項3】
前記構造式中のR1がフェニル基であることを特徴とする、請求項1に記載のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子。
【請求項4】
2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法であって、
ステップ(1)下記構造式(2)で表されるジオキサゾリン化合物と酸とを溶媒中で反応させてオキサゾリン環を開環し、次いで得られた化合物と無水酢酸とを反応させて、相当するエステルアミド類化合物を得るステップと、
ステップ(2A)該エステルアミド類化合物と、一般式;R−OM(但し、Rは前記と同義。Mはアルカリ金属原子を示す。)で表されるアルコラートとを反応させるステップと、を含むことを特徴とする下記構造式(1a)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法。
【化2】

【化3】

【請求項5】
2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法であって、
ステップ(1)下記構造式(2)で表されるジオキサゾリン化合物と酸とを溶媒中で反応させてオキサゾリン環を開環し、次いで得られた化合物と無水酢酸とを反応させて、相当するエステルアミド類化合物を得るステップと、
ステップ(2B)該エステルアミド類化合物と強塩基とを反応させ、得られた生成物と一般式;R2SO4(但し、Rは前記と同義。)で表されるアルキル化剤とを塩基の存在下に反応させるステップと、を含むことを特徴とする下記構造式(1b)で表されるC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法。
【化4】

【化5】

【請求項6】
前記ステップ(1)において、酸がトリフルオロ酢酸であることを特徴とする請求項4又は5記載のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法。
【請求項7】
前記ステップ(1)において、トリフルオロ酢酸が存在する条件において、加水分解を行い、得られた加水分解生成物と無水酢酸とを塩基の存在下に反応させアシル化を行うことを特徴とする請求項4又は5記載のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法。
【請求項8】
前記ステップ(2B)において、強塩基がテトラヒドロリチウムアルミニウムである請求項5記載のC2−対称の面性キラリティーだけをもつルテノセンビスホスフィン配位子の合成方法。

【公表番号】特表2009−539781(P2009−539781A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513539(P2009−513539)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/CN2007/001824
【国際公開番号】WO2007/140717
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(507190994)上海交通大学 (16)
【Fターム(参考)】