CATVシステムおよびCATV装置
【課題】伝送帯域の狭い既設のCATVシステムを,同軸ケーブルを取替えることなくより広帯域な伝送帯域に対応する。
【解決手段】引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を伝送経路の所定位置に介設して,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるようする。
【解決手段】引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を伝送経路の所定位置に介設して,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるようする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にCATV網からタップオフを介して引込まれた引込線に接続されるCATVシステムおよびCATV装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CATV網はそのサービス形態に合わせて伝送帯域を拡大してきた。しかしながらCATV網の中には,その伝送帯域が例えば250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯対応など,伝送帯域の異なる各種システムが現在も多数運用されている。このようなシステムの場合,例えばUHF帯(470から770MHzのテレビ信号の周波数帯であり,以下,特に明記しない限りUHF帯とはこの周波数帯のことを言う。)を使った地上アナログ放送は,VHF帯,ミッドバンド帯およびスーパーハイバンド帯等のチャンネルに周波数変換されてから伝送することでサービスを行っていた。
【0003】
ところが,近年開始された地上ディジタル放送は,UHF帯の低域側周波数帯を主に使用して放送されるため,CATV局側では次のような対応で地上ディジタル放送信号を送出することになる。それは,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)をセンター局にて受信し,該受信した信号を,チャンネルを変えることなくそのまま幹線へ伝送するパススルー方式や,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)を,CATVで伝送可能なVHF帯やミッドバンド帯やスーパーハイバンド帯等に周波数変換して伝送する周波数変換パススルー方式や,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)をセンター局にて受信して,BSディジタル放送の再送信と同じ方式(64QAM)に変換して伝送するトランスモジュレーション方式であり,CATV網を介して地上ディジタル放送を伝送しようとする場合は,採用する伝送方式に応じてCATV網の伝送帯域を広げる必要が生じる。特に,パススルー方式であれば,市販されている地上ディジタルチューナー,地上ディジタルチューナーを内蔵したテレビや,DVDを接続すれば地上ディジタル放送が見られるので利便性が良いのであるが,その方式に対応するためには,CATVシステムを少なくともUHF帯まで伝送するシステムに変更する必要が生じる。
【0004】
つまり,伝送帯域が450MHz帯までしか対応していないCATV網を,770MHz帯の伝送帯域を有するシステムに変更するには,CATV網の幹線や分岐線上に配設される幹線増幅器等の伝送機器を770MHzに対応させると共に,引込線に接続されたビルやマンション等のCATVシステムを構築している棟内増幅器,直列ユニットや同軸ケーブルなどのテレビ受信機器も,少なくとも770MHz若しくはそれ以上の周波数(例えば,衛星放送の中間周波数帯)まで対応した機器に変更することが必要となる。
しかしながら,ビルやマンション等のCATVシステムに設置された棟内増幅器や直列ユニット等は,一般的に収納ボックスやメンテナンスルームに設置されている場合が多く簡単に取替えができるが,引回された既設の同軸ケーブルは,天井裏や壁面内部に沿わせて配線するといった同軸ケーブルの敷設の方法から考えて,古いケーブルを取外して新たに同軸ケーブルを配線し直すのは困難であるのでそのまま使えることが望ましい。
ところが,同軸ケーブルは経年変化により物理的にも電気的にも影響を受ける事が分かっており,これらの変化の中でも特に同軸ケーブルの伝送特性に大きく影響するものとして,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象があり,その現象は,同軸ケーブルの種類や設置された年代によって発生する場合があることが報告されている。(例えば,非特許文献1参照)
【0005】
また,古いCATVシステムでは,もともと770MHz帯の伝送帯域を必要としなかったために,250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯等,それぞれの時代におけるサービスに適応するようにシステムが構築されていれば良く,それぞれのシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの規格が770MHzに対応していないことも考えられる。しかしながら,地上アナログ放送のVHF放送とUHF放送が行われていることから考えれば,一般的にはシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの規格が770MHzに対応しているはずであるが,実際には上述のようなディップ現象が見受けられなくても,UHF帯の高域側での伝送損失が,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量をはるかに上回る,すこぶる伝送特性の悪いシステムが存在する。このようなUHF帯の高域側の伝送特性が悪いシステムについて調べてみると,分配器や直列ユニットの伝送特性よりも,同軸ケーブルの伝送特性が大きく影響されることが調査で分かっている。その調査の結果の一例を挙げると,敷設されているケーブルが,同軸ケーブルとはいい難いシールド線のような外部導体である編組(網目状の導体細線)で構成された,高周波伝送には適さないような同軸ケーブルが見受けられた事例がある。
【0006】
【非特許文献1】昭和60年6月5日付 テレビ受信向上委員会 受信向上No.14 p16〜p18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
つまり,このようなCATVシステムを,地上ディジタル放送を伝送する方法の一つである上述のパススルー方式のように,チャンネルを変えることなくそのままの周波数帯で伝送してくるようなCATV網に接続しようとする場合は,CATVシステムの引込線以降に既に設置されている同軸ケーブルに,今まで気付かなかったディップ現象が発生していないかどうか,ディップ現象が発生していなくてもUHF帯の高域側における損失が,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から子想されるような値を示すかどうかを確認する必要が生じ,ディップ現象が確認されたリ,UHF帯の高域の通過損失が同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きかったりしたなら,既設の同軸ケーブルを取除いて新たに同軸ケーブルを配線し直すか,同軸ケーブルを建物の外壁に這わせてから,壁などに穴をあけて建物内に同軸ケーブルを引入れ,それぞれの部屋に引入れるなどしないと,地上ディジタル放送波の信号が伝送されないといった問題が発生したり,C/Nが劣化して受信できなかったりする場合があった。
しかしながら,同軸ケーブルは建物の天井や壁面等の内部に沿わせて引回されているので,取除くのも困難であるし,新しい同軸ケーブルを壁面内等に引回すのは更に困難である。また,これに代わる方法として,建物等の外壁を沿わせて各部屋に引き込み,更に各部屋の内壁に同軸ケーブルを這わせて配線する方法があるが,この方法は簡単に実現できるものの,建物を傷つけたり建物の美観を損ねたりするし,各部屋の配線も美観を損ねることなく行うことは困難であリ,延いては,ビルやマンション等の価値を下げるといった問題があった。
また,高出力タイプのブースターを用いて,伝送特性の悪い部分を含めて全体のレベルを上げる方法も考えられるのであるが,ブースターには,その最大出力には制限があリ,あまり高出力にはできなし,高出力化はその設計も難しいしコストも掛かる。また仮に全体のレベルを上げることができたとしても,伝送特性の悪くない周波数帯と伝送特性の悪い周波数帯(例えばVHF帯とUHF体の高域側)におけるレベル差が大きくなりすぎ,CATVシステムとして問題が生じる。
そこで本願においては,こうした問題点を解決するためになされたものであり,
その目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化した既設のCATVシステムを,同軸ケーブルを取替えることなく広帯域にわたって伝送できるCATVシステムを提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,同軸ケーブルを取替えることなくUHF帯まで伝送できるCATVシステムを提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,UHF帯が伝送できるようにするための改修工事が簡単に行えるCATV装置を提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,UHF帯が伝送できるようにするための改修工事が,視聴者が長時間に亘ってテレビの視聴を制限されることなくできるようにすることを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,簡単且つ安価に広帯域化することを課題とする
その他の目的も,以下に示す実施例の中で明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0009】
請求項2の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0010】
請求項3の発明は,該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0011】
請求項4の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した。
【0012】
請求項5の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した
【0013】
請求項6の発明は,請求項5に記載のCATVシステムの配線方法において,該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした
【0014】
請求項7の発明は,請求項1から請求項3の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納するように構成した。
【0015】
請求項8の発明は,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納するように構成した。
【0016】
請求項9の発明は,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6に記載のいずれか一項に記載のCATVシステムの配線方法及び請求項7または請求項8の何れか一項に記載のCATV機器において,前記信号処理手段は前記第2の周波数帯の高域側における信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側における信号レベルとの差を補償するように構成されたチルト回路であるように構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば,第1の周波数帯の一例としてのCATV網が450MHz帯までの帯域を使ったサービスから,伝送周波数帯を拡大した第2の周波数帯の一例としての770MHz帯を使ってパススルー方式等で地上ディジタル放送信号までを伝送するサービスに変更するような場合において,該CATV網に接続されたビルやマンション等のCATVシステムに敷設された伝送路(例えば,同軸ケーブル。以下,同軸ケーブルと記載する。)の伝送特性に同軸ケーブル固有の問題でUHF帯の高域側などにおいて,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波特性から予想される減衰量をはるかに上回る通過損失が発生していて端末側にテレビがきれいに見られるような信号レベル(所定値レベル)が伝送されず,しかもその通過損失の対策のために同軸ケーブルの再配線がし難い状況にあるような場合に,本発明の信号増幅器および信号処理手段を伝送経路に介設してCATVシステムを構成することによって,前記信号増幅器においては,第2の周波数帯における端末側のレベルが何れの伝送経路においても所定値レベル(即ち,テレビがきれいに見られるような信号レベル)以上となるように,各系統の伝送経路における伝送損失を補償するよう前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅し,前記信号処理手段においては,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差(例えば,前記第2の周波数帯の高域側の信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側の信号レベルとの間に発生する信号レベル差)を補償することができるので,
既設のCATVシステムに使われている伝送特性の不明な同軸ケーブルを,更に広帯域た周波数帯の信号の伝送に対応させようとする場合に,上述のような伝送上の問題である通過損失の劣化が発生していても,端末側において例えば第2の周波数帯における高域側の信号レベルが低く(即ち,所定値レベル以下)なりすぎてテレビが見られないといった問題を解決するばかりでなく,第2の周波数帯内に生じる信号レベル差を打ち消して端末側の信号レベルが略一定な値となるように第2の周波数帯の信号を伝送することができることによって,既に敷設されている同軸ケーブルを新しく配線しなおすことなく,ビルやマンションの各端末側に所定値レベルの信号が供給でき,同軸ケーブルの再配線がし難い既設のCATVシステムであっても,770MHz帯への改修工事が簡単且つ安価に可能になるのである。
そして,更に加えて建物の外壁に同軸ケーブルを這わせたり,外壁に穴をあけたりすることがないので建物の美観を損なうこともなく,これによる建物の価値を下げることもない。
更に加えて,同軸ケーブルを配線し直す事がなく,機器の交換や取付だけで改修工事がすむので,工事期間が短くて済み,その結果,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴ができないといった問題もなくなるのである。
【0018】
請求項2の発明によれば,既設のCATVシステムを構成している複数の伝送経路の引回し経路長がすこぶる長かったり,引回し経路長が長かったり短かかったりして線路長にバラツキがあって,第2の周波数帯の信号の通過損失が大きくなるような伝送経路を有するCATVシステムであっても,複数の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路には,所定長の伝送線路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設し,前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路には,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,しかも,前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するようにCATVシステムを構成することで,既設のCATVシステムであっても第2の周波数帯の信号を所定レベル以上で且つ全帯域に亘って信号レベル差の少ない極めた安定した信号を端末側に伝送できるようになる。
【0019】
請求項3の発明によれば,請求項2の効果に加え,第1信号増幅器および第2信号増幅器は,それぞれ第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅するように構成すると共に,信号処理手段の介設する位置を信号増幅器の出力側に備えさせるようにすることによって,信号増幅器が有する最大出力レベルを必要以上に高くしなくてもよくなり,信号増幅回路の回路設計が容易となるばかりでなく発熱等の対策も簡単となリ,延いては信号増幅器のコストを安価にすることができる。更に,信号処理回路を出力側に備えるようにすることによって,信号増幅器に入力される信号レベルを低下させることが無く,これによって信号増幅器よるC/N劣化が防止でき,後方に向かってC/Nのよい信号を送出することができる。
【0020】
つまり,CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送するような場合,例えば,第1の周波数帯の信号の一例としての90から450MHz帯の信号に対応させた既設のCATVシステムに,第2の周波数帯の信号の一例としての70から770MHz帯の信号を伝送させる場合に発生する次のような問題に素早く且つ安価に対応ができるのである。
【0021】
まず第1の問題は分配器や分岐器および同軸ケーブル等の周波数特性によるものである。一般的にこれらの機器を通過する信号の周波数帯が高くなるほど通過損失が大きくなることから,450MHz帯に対応するように構成されたCATVシステムに770MHz帯の信号を伝送しようとすれば,UHF帯の高域側の伝送経路の通過損失が大きく,端末側に信号がうまく伝わらずに,端末側の信号レベルが所定値レベルに達しない場合が考えられる。この場合の所定値レベルはテレビがきれいに見られる信号レベルである。しかしながら例えば一般的な4分配器であれば,450MHzにおける分配損失が略7dBに対して,770MHzにおける分配損失は略8dB程度となり,同軸ケーブルであればたとえば一般的な5CFVの10mあたりの減衰量は,450MHzにおいて略1.5dBに対して,770MHzにおいては略2dBであり,それぞれの損失の増加は僅かであるから,既設のCATVシステムであってもそのまま770MHz帯に対応できそうである。ところが実際には既設のCATVシステムに第2周波数帯の信号を伝送させると,その伝送特性は特に敷設されている同軸ケーブルによる影響を強く受ける事が分かっており,この同軸ケーブルが高周波信号の伝送に適さない(例えば,線径が細い。編組が網状になっていないなどの原因によって。)ものであったり,経年変化による高周波特性の劣化が著しいものであったりすれば,端末側において,例えば第2の周波数帯の高域側の信号レベルと低域側の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じるばかりか,高域側における通過損失が予想される減衰量より極めて大きくて所定値レベルが得らないCATVシステムとなってしまうのである。
【0022】
次に第2の問題は特定の同軸ケーブルが持つ固有の問題である。即ち,同軸ケーブルは経年変化により物理的にも電気的にも影響を受ける事が分かっており,これらの変化の中でも特に同軸ケーブルの伝送特性に大きく影響するものとして,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象があり,その現象は,同軸ケーブルの種類や設置された年代によって発生する場合がある。このような特定の同軸ケーブルを用いた既設のCATVシステムでは,従来のように450MHz帯の伝送では,ディップ現象が起きていても伝送する信号がなかったので問題とならなかったが,このCATVシステムに770MHz帯までの信号を伝送しようとすると,端末側において,ディップ現象が発生した周波数帯の信号とその周波数帯の前後の周波数帯の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じるばかりか,ディップ現象が発生した周波数帯の信号の通過損失が極めて大きくて所定値レベルが得らないCATVシステムとなってしまうのである。
【0023】
そして,上述のような伝送特性に問題を有するCATVシステムは全国的に多数存在する。しかも,2011年には地上アナログ放送が完全停波してしまうことから,全施設を地上ディジタル放送に対応させることが必要となり,その一つの方法として,第1の周波数帯の一例としての450MHz帯までを伝送すればよかった既設のCATVシステムに対して,伝送周波数帯を拡大した第2の周波数帯の一例としての770MHz帯を伝送するように改修して,地上ディジタル放送信号をそのまま伝送するパススルー方式に対応させる方法が考えられている。
そこで,本発明は,例えば450MHz帯に対応していて770MHz帯までは対応していない既設のCATVシステムを770MHz帯に対応させるための改修工事において,特に,伝送経路の伝送特性に上述のような問題があるものの,同軸ケーブルが壁面内部に設置されていたりして,既設の同軸ケーブルを取外し新たに同軸ケーブルを壁面内部に配線することによる対応が難しいシステムであっても,敷設された同軸ケーブルを交換することなくそのまま使って改修工事が行え,しかもその工事が簡単且つ安価できるようにするものであり,加えて,既設の同軸ケーブルを使い,信号増幅器の交換や信号処理手段の取付けだけで改修工事がすむので,770MHz帯の信号を引込むために,同時ケーブルを建物の外壁に沿わせて新しく配線することも,建物の外壁に穴をあけて同軸ケーブルを引込む事も必要が無く,このため建物の美観や建物の価値を下げることもないし,また,工事期間が短くて済むことから,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴が制限されることのないCATVシステムが実現できる有用性の高いものである。
同様に,以下に示すように,770MHz帯より狭い周波数帯に対応する既設のCATVシステムを,770MHz帯を含む広帯域な周波数帯のシステムとして構築するための簡便な配線方法が実現できるし,また,前記CATVシステムや前記配線方法を実現するために用いるために好適なCATV機器が提供できることから,地上ディジタル放送への完全移行にあたり極めて有益な有効な発明を提供することができるのである。
【0024】
請求項4から請求項6の発明によれば,既設のCATVシステムに対して,請求項1から請求項3に示される信号増幅器や信号処理手段を伝送経路の所定位置に備えさせるだけで簡単且つ安価にシステムの改修が行えるCATVシステムの配線方法を提供できる。
また,建物の外壁に同軸ケーブルを這わせたり,外壁に穴をあけたりすることがないので建物の美観を損なうこともなく,これによる建物の価値を下げることもない。
更に加えて,同軸ケーブルを配線し直す事がなく,機器の交換や取付だけで改修工事がすむので,工事期間が短くて済み,その結果,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴ができないといった問題に対して極めて好適なCATVシステムの配線方法を提供できる。
【0025】
請求項7の発明によれば,請求項1または請求項2の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項3または請求項4の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納するように構成したので,既設のCATVシステムにおける例えば収納ボックスに簡単に取付けることができ,しかも省スペースで設置できることから,第2の周波数帯に対応するためのCATVシステムの改修工事に対してすこぶる利便性の良いCATV機器を提供できる。
【0026】
請求項8の発明によれば,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納するように構成したので,既設のCATVシステムにおける例えば収納ボックスに簡単に取付けることができ,しかも,例えば既設の信号分配器をなくすことで,更に省スペース化が図れることから,収納ボックス等の限られたスペースに対する設置が容易にでき,第2の周波数帯に対応するためのCATVシステムの改修工事に対して極めて利便性の良いCATV機器を提供できる。
加えて,前記信号増幅器と前記信号処理手段と前記信号分配器を同一筐体に収納したことによって,信号分配器による分配後の出力レベルが,TVブースターに決められた最大値を超えない範囲で信号増幅器の出力レベルを高出力化することによって信号分配器の分配損失を補うことができ,従来のように信号増幅器と信号分配器を個別に接続したときと比べて,レベルの高い信号を端末側に向かって送出できることから,第1の周波数帯に比べて広帯域な第2の周波数帯に対応させるためのCATVシステムの改修工事に対して,すこぶる利便性が良く且つ汎用性の高いCATV機器を提供できる。
【0027】
請求項9の発明によれば,第1の周波数帯の信号の一例としての90から450MHz帯の信号に対応させた既設のCATVシステムに,第2の周波数帯の信号の一例としての70から770MHz帯の信号を伝送した場合であって,特に第2周波数帯の高域側における通過損失が同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きく,第2の周波数帯の高域側の信号レベルと低域側の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じてしまっているようなCATVシステムであったとしても,信号増幅器と,信号処理回路の一例としてのチルト回路を備えさせることによって,端末側に所定レベル以上で且つ全帯域に亘って信号レベル差の少ない極めた安定した信号を伝送できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
図1は従来のCATVシステムの一例を示す概略構成図であり,図2は本発明に係る信号増幅器と信号処理回路を備えたCATVシステムの一例を示す概略構成図である。図3(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性であり,(b)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの70から770MHzまでの周波数特性である。図4(a),(b),(c),(d)は信号増幅器と信号処理手段の配列状態を示す概略構成図である。図5(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性の異なる例であり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの70から770MHzまでの周波数特性であり,(c)は第2の実施例として示される信号処理手段20Cの70から770MHzまでの周波数特性である。図6(a)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数が固定のものであり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数を調整可能に構成されたものである。図7は第2の実施例として示される信号処理手段20Cの具体的な回路構成を示す。図8は第4の実施例として示される信号処理手段20Eの回路構成を示し,(a)は概略構成図であり,(b)は具体的な回路構成を示す。図9は従来のCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。図10は本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。図11は信号増幅器と信号処理手段の組合せを2つ備えた場合の配列状態を示すCATVシステムの一部を取出した図である。図12は信号増幅器と信号処理手段の異なる位置に配設した例を示すCATVシステムの一部を取出した図であリ,(a)は引込線の途中に配設した例であり,(b)は直列ユニットとテレビ等の端末側装置との間に配設した例である。
【実施例1】
【0029】
図1は従来からあるビルやマンション等に設置されたCATVシステムの概略構成を示す図であり,例えば下り帯域信号として第1の周波数帯(例として450MHz帯若しくは450MH以下の伝送帯域)の信号を使ってサービスを行うCATV網に接続された既設のCATVシステムである。この図において1は図には示されていないセンター局と接続されている幹線から分岐された分岐線を示し,この分岐線1はタップオフ2を介してさらに先に延設されている。そしてタップオフ2には引込線3,4が接続され,この引込線4を介してビルやマンション等のCATVシステムはCATV網に接続されている。図における実施例では引込線4は5に示されるビルやマンション等に設置された保安器6に接続され,この保安器6から先は,同軸ケーブル7によっての建物5に引き込まれている。
【0030】
建物5に引き込まれた同軸ケーブル7は,一度建物5の屋上や建物内のメンテナンスルームなどに設置された図には示されていない収納ボックス等まで引回されている。この収納ボックスは,内部にテレビ受信機器等を収納するための収納空間を有し,この収納空間の奥底には,テレビ受信機器等の取付けをするための板体等が備えられると共に,AC100Vの商用電源が得られるACコンセント等が敷設されている。そして,この収納ボックスには14に示される信号増幅器が取付けられており,収納ボックスまで引回された前記同軸ケーブル7はこの信号増幅器14に接続されている。この実施例では信号増幅器14はCATVシステムに適した450MHz帯対応の棟内ブースターである。
更に,信号増幅器14の先には同軸ケーブル8が接続されており,同軸ケーブル8のその先には分岐器9が接続されている。
本発明の実施例では,分岐器9は4分岐器であり,それぞれの分岐端子からは同軸ケーブル10や13などを介して,建物5の上の階から下の階にかけて中継用の直列ユニット11を3つと端末の直列ユニット12が接続されており,各直列ユニットは建物5の各階にある部屋にそれぞれ配設された複数の伝送経路を形成している。そして,これらの分岐器9,直列ユニット11,12,同軸ケーブルなどは,少なくとも450MHz帯の信号が伝送できる周波数特性を有するもので構成されており,実施例ではこれらの機器を使って建物5内で16端子に分配するCATVシステムが構成されている。
尚,分岐器,直列ユニット等の下限の使用周波数は例えば70MHzのものでも良いが,例えば下限の使用周波数が10MHzのものを使用し,信号増幅器も10から55MHz帯の上り帯域信号を増幅若しくは通過する上り信号回路を有するようにしてあれば双方向CATVシステムにも対応できる。
【0031】
このように構成されたCATVシステムは,CATV局から送られてくる例えば70から450MHz帯の下り帯域信号を使ったサービスを受けているのであるが,CATV局において,更なる多チャンネル化や,UHF帯の低域側で行われている地上ディジタル放送の信号をパススルー方式等を使ってサービスを開始するために,CATV網の伝送帯域を下り帯域信号として第2の周波数帯(例として770MHz帯までの帯域)の信号まで拡大することになれば,加入者(CATVシステム)側においてこれらのサービスを受けるためには,建物5内のCATVシステムを770MHz帯に対応させる必要がある。普通,テレビ受信に一般的に使用されている分岐器,直列ユニット,同軸ケーブルなどは,既に放送が行われているVHFとUHFの地上アナログ放送を受信するために,少なくとも770MHz帯まで対応する周波数特性を有する機器で構成されているはずであるから,既設のCATVシステムであっても770MHz帯まで伝送でき,例えば既設の450MHz帯対応の棟内ブースター14を770MHz帯対応のブースターに変更すれば770MHz帯のサービスに対応させることができると考えられる。
【0032】
ところが建物5内に敷設されている同軸ケーブル7,8,10,13等は,古いCATVシステムでは,もともと770MHz帯までの伝送帯域を必要としなかったために,250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯等,それぞれの時代におけるサービスに適応するようにシステムが構築されていれば良く,それぞれのシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの周波数特性の規格が770MHzに対応していないことも考えられる。この原因として,広帯域な高周波伝送には向かない線径の細い同軸ケーブルが使用されていたり,シールド線のような外部導体(編組)からなる粗悪なケーブルが用いられていたりしていること等が考えられる。このようなシステムの場合には,使用している同軸ケーブルの周波数特性の良し悪しが全体の伝送特性に大きく影響を与え,伝送帯域の高域側,特に770MHz付近における伝送損失が,同軸ケーブルの伝送損失の周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きな損失をもつことによって,伝送帯域の高域側で伝送損失が極めて大きくなリ,端末側における低域側と高域側の信号レベルがすこぶる大きいものとなるし,更には高域側における信号レベルが所定値レベルより低くなってしまうといった問題が発生する。(第1の問題)
【0033】
また,建物5内の共同受信システムが設置された時代によっては,テレビ受信用として一般的に使用されていた同軸ケーブルが持つ固有の問題によって,その伝送特性に特有の問題が発生する場合があり,棟内ブースターの変更だけでは770MHz帯に対応できないことがある。つまり,同軸ケーブルは経年変化によって物理的にも電気的にもその影響を受け,ある時期まで使われていた同軸ケーブルでは,これらの影響のうち極めて大きな問題となるのは,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象の発生であり,UHF帯のテレビ信号を使った地上ディジタル放送信号をそのままで伝送するパススルー方式を行うのに支障をきたすのである。(第2の問題)
【0034】
このよう伝送上の問題が発生した既設のCATVシステムにおける770MHz帯までの伝送特性を図3(a)及び図5(a)に示す。このデータは図1に示すCATVシステムのX点とY点(2階部分に設置された直列ユニット11の壁面端子)との間の通過損失を測定したものである。図3(a)に示されるデータは前記第1の問題である同軸ケーブルの周波数特性に起因する伝送特性(実線で示される)を示しており,このデータによればUHF帯の高域側の伝送損失が同軸ケーブルの減衰特性から予測される値(破線で示される)に比べてすこぶる大きくなっており,UHF帯の高域側の信号は端末側まで最適レベルで伝送することができないことになる。また,図5(a)に示されるデータは前記第2の問題である同軸ケーブルが持つ固有の問題に起因する伝送損失を示しており,このデータによれば略450MHzを中心周波数とするディップが発生しており,この周波数帯の信号は端末側まで最適レベルで伝送することができない。
これに対応するためには,同軸ケーブルを新しく張り替えれば良いのであるが,既設の同軸ケーブルは,建物の壁面等の内部に引回されているので,取外すのも困難であるばかりか,新しく配線するのも極めて難しい。そこで本発明は,例えば450MHz帯までの帯域に対応していて770MHz帯までは対応していない既設のCATVシステムを770MHz帯に対応させるための改修工事において,たとえ,すでに敷設されている同軸ケーブルの伝送特性に上述のような問題があるものの,同軸ケーブルが壁面内部に設置されていたりして,既設の同軸ケーブルを取外し新たに同軸ケーブルを壁面内部に配線することによる対応が難しいシステムであっても,敷設された同軸ケーブルを交換することなくそのまま使って770MHz対応の改修工事が行えるようにするためのものである。
【0035】
(第1の問題に対する実施例)
先ず,同軸ケーブルの一般的な周波数特性に起因する問題に対応する方法について説明する。この実施例では図2および図4に示すように,前記信号増幅器14に変わって,CATV機器の一例として信号増幅器19と信号処理手段20とを同一の筐体に収納してなる信号処理装置15を備えさせようにしたものである。尚,この実施例では,信号増幅器19と信号処理手段20とを同一の筐体に収納した例を示したが,信号増幅器19と信号処理手段20とを別体で構成してもよい。以下の実施例についても同様である。
この実施例では,引込線から伝送されてくる下り帯域信号としての第2の周波数帯の信号(本発明の実施例では70から770MHz)を所定量だけ増幅する信号増幅器19を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための信号処理手段20を前記信号増幅器19の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成したものである。尚,ここでいう所定値レベルとは例えば端末側にテレビ等を接続したときにテレビがきれいに見える信号レベルである。
図4は本発明の実施例における前記信号増幅器19と信号処理手段20の配設順について信号処理装置15の例を用いて説明したものであり,図4(a)は信号増幅器19,信号処理手段20の順で配設された例を示しており,図4(b)に示されるように信号処理手段20,信号増幅器19の順のように配列を逆にしても良い。また,図4(c)に示されるように信号増幅器19を挟んで前後に信号処理手段20a,20bを配列しても良いし,図4(d)のように信号処理手段20を挟んで前後に信号増幅器19a,19bを配列しても良いなど特にその構成は限定されるものではない。尚,これらの例は,信号処理装置15を用いて示したが,前記信号増幅器19と信号処理手段20を個別に備えたものでも同様である。
【0036】
ここで,信号増幅器19について説明する。この信号増幅器19は例えば高周波素子としてのトランジスタやICから構成された所定の利得を有する増幅回路からなり,その増幅帯域は下り帯域信号に対応して70から770MHzの帯域を増幅するように構成されている。この信号増幅器19の利得は,少なくとも,前記第2の周波数帯の信号が伝送経路を通過することによって生じる最大通過損失を補償して,端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるような増幅度であればよいが,端末側の受信端末レベルを最適化できるように利得が高くて高出力タイプの増幅器がよい。そして更に利得調整回路を備えることで利得を連続的若しくは段階的に可変できるようにすれば,端末レベルの最適化が簡単にできる利便性の良い信号増幅器19となる。
尚,信号増幅器19は下り帯域信号を増幅するように構成された説明したが,CATV上り帯域信号用の通過回路や増幅回路を備えて双方向CATVシステムに対応させるように構成したものでも良く,実施例に限定されるものではない。
【0037】
次に信号処理手段20の実施例について説明する。尚,この実施例の信号処理手段は第1の実施例であり,以下の説明では信号処理手段20Aと記載する。
この実施例では,信号処理手段20Aを構成する信号処理回路201は,図3(b)の周波数特性に示されるように,通過損失がUHF帯の高域側(例えば略770MHz)において最小値を示し,少なくとも,下り帯域信号の低域側,即ちVHF帯の低域側(例えば略70MHz)において通過損失が最大値となるように,所定の傾きの周波数特性を有するチルト回路であるように構成されている。
図6(a)に具体的な回路構成を示す。図6(a)において示される信号処理回路201は,チルト量及びチルトの基準となる周波数(例えば,770MHz)が一定となるように構成されたものである。この図において27,28,29,30は抵抗であり,31,34はコンデンサーであり,32,33はコイルである。
【0038】
つまり,この信号処理手段20Aの回路構成によると,既設のCATVシステムに帯域の広い第2の周波数帯の信号を伝送したときに,システム上に発生した伝送帯域の高域側の減衰特性が極めて大きい伝送特性を示すな場合に対応するように,下り帯域信号に対してチルト量が適宜な値になるように設定するなどの信号処理を予め下り帯域信号の施すと共に,前記信号増幅器19によって適宜に増幅することによって,既設の同軸ケーブルを使ったままであっても,端末側における第2の周波数帯の高域側(770MHzの近傍)の信号レベルが低く(即ち,所定値レベル以下)なりすぎてテレビが見られないといった問題を解決するばかりでなく,第2の周波数帯の信号を伝送することによって帯域内に生じる信号レベル差(例えば低域側の信号レベルと高域側の信号レベルの差)を打ち消して,端末側の信号レベルが略一定な値となるように第2の周波数帯の信号を伝送することができるのである。尚,チルト量を手動若しくは電気的な制御によって連続的若しくは段階的に可変できるようにすれば汎用性の高い信号処理手段を提供できる。また,チルトの周波数特性は第2の周波数帯の帯域内で一定の傾きを有するように構成しても良いし,所定の帯域ごとに傾きを変えるように構成しても良いな特にその構成は限定されるものではない。
【0039】
(第2の問題に対する実施例の1)
この実施例は伝送経路に同軸ケーブルの固有の問題であるディップ現象が発生した場合の実施例である。尚,信号増幅器19は上記実施例と同様な構成であるので,以下の説明では特に必要とする場合を除いて詳細な説明は省略する。この実施例にかかる信号処理手段は図6(a)で示される第1の実施例と同様な構成の信号処理手段20A若しくは図6(b)で示される第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bである。これらの信号処理手段は,図3(b)の周波数特性に示されるように,下り帯域信号の中から基準周波数(例えば,ディップが最大減衰量を示す周波数)を選択的に通過するように構成され,その通過損失は略基準周波数において最小値を示し,少なくとも,下り帯域信号の略最小周波数において通過損失が最大値となるように,略基準周波数より周波数の低い側に所定の傾きの周波数特性を有したチルト回路であるように構成されている。
【0040】
図6に具体的な回路構成を示す。図6(a)においてに示される第1の実施例の信号処理回路201は前記実施例と回路構成は同様であるが,チルト量及びチルトの基準となる中心周波数をディップが発生している周波数やレベル差に対応するように構成したものである。尚,この実施例において,抵抗29,30を例えば可変抵抗器等で構成して,その抵抗値を同時に可変できるようにすればチルト量を可変できるし,加えて,コンデンサー31,34をトリマコンデンサーのような半固定コンデンサー等で構成してその容量を同時に可変できるようにすればチルトの基準となる基準周波数を可変できるので,上述に示す何れの第1及び第2の問題にも同じ信号処理手段で対応することができ信号処理回路に汎用性を持たせることができる。
【0041】
この制御を電気的に行うように構成したものが図6(b)に示される第1の実施例の信異なる例の信号処理手段20Bである。この信号処理手段20Bを構成する信号処理回路202において,27,28は抵抗であり,35はコンデンサーであり,32,33はコイルであり,加えて,可変容量ダイオード34aと該可変容量ダイオード34aに対して中心周波数の制御信号を供給する周波数制御信号ライン38と,この制御信号を供給すると共に高周波信号を阻止するためのチョークコイル37aとで周波数制御ができ,36で示されるPINダイオードと,該PINダイオード36にチルト量の制御信号を供給するチルト量制御信号ライン39と,この制御信号を供給すると共に高周波信号を阻止するためのチョークコイル37bとでチルト量制御ができるように構成されていることによって,設置現場等において簡単且つ素早く調整することができるのである。
【0042】
つまり,この第1の実施例で示される信号処理手段によれば,既設のCATVシステム上に発生したディップ特性に対応するように,下り帯域信号の中から基準周波数を設定若しくは調整すると共に,下り帯域信号の最小周波数(例えば,70MHz)におけるチルト量が適宜な値になるように設定若しくは調整するなどの信号処理を予め下り帯域信号の施すと共に,前記信号増幅器19と合わせて端末側におけるディップの影響をなくすと共にレベル差の少ない最適なレベルの信号を供給できるのである
【0043】
(第2の問題に対する実施例の2)
次に,ディップ現象に対応するための信号処理手段の第2の実施例を説明する。この実施例では信号処理手段20Cは信号処理回路203からなる。図7によく示されるように,入力端21aから入力される下り帯域信号を出力端21bから主線路25aに出力すると共に,下り帯域信号の一部を分岐して分岐端21cから分岐路25bに出力するように構成された,例えばフェライトにポリウレタン線を巻きまわしてなる一対の分岐器からなる分岐手段21を,主線路25a同士および分岐路25b同士を接続するように対向配設し,その主線路25aには下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,所定帯域幅の信号を通過するように構成された第1フィルタ手段22を介設し,その分岐路25bには下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,前記第1フィルタ手段22が通過する所定帯域幅の信号の通過を阻止するように構成された第2フィルタ手段24を介設するように構成したフィルタ回路から構成されている。更に,この第1の実施例では,分岐路25bには,分岐路25bを通過する信号を連続的若しくは所定の間隔のステップで減衰させるための信号減衰回路23が備えられている。
つまり,この信号処理手段20Cは,主線路25aは,第1のフィルタ手段22を介して通過させたい基準周波数を中心とした帯域(この場合,ディップ現象による最大のディップ点を示す中心周波数が基準周波数となり,この中心周波数を挟んで所定帯域幅の信号)を選択的に通過させ,分岐路25bは,第1のフィルタ手段22で選択的に決められた帯域幅を阻止帯域として,その阻止帯域の前後の帯域の信号を,分岐手段21の分岐量(この場合,分岐手段21の2つ分の分岐量の合計)だけ減衰させて通過するように構成したことによって,図5(c)の周波数特性によく示されるような周波数特性を有したフィルタ回路203が構成される。
【0044】
このフィルタ回路203の構成によると,ビルやマンション等のCATVシステム上に発生したディップ特性の最大減衰量と,この最大減衰量を示す周波数を中心周波数としたディップの帯域幅と,この帯域幅の下限周波数もしくは上限周波数における減衰量とのレベル差などに対応して,第1のフィルタ手段22及び第2のフィルタ手段の基準周波数と帯域幅を設定若しくは調整すると共に,前記分岐手段21の分岐量を適宜な値に設定若しくは調整して,信号処理手段20が図5(c)の周波数特性に示されるような,ディップ特性とは逆特性を有するようにする。加えて,前記信号増幅器19によって下り帯域信号の信号を所定量だけ増幅してから端末側に向かって送出することによって,端末側においては,同軸ケーブルによって発生するディップの影響が少なくすることができると共に最適なレベルの信号を供給できるのである。
また,この第2の実施例の信号処理手段20Cは,分岐手段としての一対の分岐器21から構成されていることから,この信号処理手段20Cの入力側と出力側の定在波比(VSWR)が広帯域に亘って良好な値を有するので,この信号処理手段20Cの介設によって,インピーダンスの不整合の発生を極めて小さいものにすることができるし,広帯域な第2の周波数帯の信号を伝送しても良好に信号処理することができる高性能な信号処理手段19を実現できる。
【0045】
尚,前記第1のフィルタ手段22及び第2のフィルタ手段24はディップ特性に合わせて基準周波数,帯域幅や阻止量等を電気的に制御して調整自在になるように構成しても良いし,手動で調整ができるように構成しておいてもよい。また,基準周波数等を選択的に調整可能である例を示したが,特にこの実施例に限定されるものではなく,これらのフィルタ手段をユニット化し,予め数種類の基準周波数や帯域幅等を有するフィルタ手段を作成しておいて,必要に応じで取替えができるように構成しておいてもよく,その実施の形態は実施例に限定されるものではない。
また,本発明の実施例では分岐路25bに第2のフィルタ回路24を介設するような構成を示したが,分岐手段21が所定量以上の分岐量を有していれば,特に分岐路25bに第2のフィルタ手段介設することなく合成できるので,第2のフィルタ手段24がない構成でも良い。
また,分岐路25bには,上述のように分岐路25bを通過する信号を減衰させる信号減衰手段23を備えることで,任意のレベル差を有した逆特性が簡単に得られるので,CATVシステムによって発生状態の異なるディップ特性に対して工事現場などでの対応が素早くできる極めて優れた操作性の高い信号処理手段20Cが実現できる。この信号減哀手段23は複数の減衰素子(減衰量が異なる固定ATTを数種類備える)をスイッチ等の操作手段で切替えることで段階的に減衰量を選択できるようにしても良いし,減衰素子としてのピンダイオード等を使って電気的な制御によって連続的に減衰量を可変できるように構成しても良い。尚,この第2の実施例においても信号増幅器19と信号処理手段20Cの配列は,図4に示すような組合せであっても良い。また,同一筐体に収納してもよいし,別体で備えさせるようにしてもよい。
【0046】
(第2の問題に対する実施例の3)
この第3の実施例の信号処理手段を構成する信号処理回路は,引込線に伝送される下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,その通過損失が略基準周波数において最小値となるように信号を通過し,下り帯域信号の略最小周波数において所定量の阻止帯域減衰量を有するように構成されたバンドパスフィルタ回路から構成されている。この場合においても,基準周波数は調整可能に構成されていなくても良く,この場合は,基準周波数の異なる複数のバンドパスフィルタを予め作成しておけばよい。更に,下り帯域信号の略最小周波数における阻止帯域減衰量が異なる複数のバンドパスフィルタを作成しておけば更に適応性の良い信号処理手段20を提供できる。
【0047】
(第2の問題に対する実施例の4)
この実施例における第4の実施例の信号処理手段20Eは,上記第1の実施例から第3の実施例に示される何れかの信号処理回路と並列に,下り帯域信号を通過させるだけの信号通過回路200を設け,更には,下り帯域信号の通過する経路が,前記信号処理回路か前記信号通過回路200を選択的に切換可能であるように構成された選択手段18を備えた構成となっている。図8(a)にはこの実施例の信号処理手段20Eと信号増幅器19とを備えた信号処理装置15の構成図が示されている。尚,信号増幅器19と信号処理手段20Eの配列は,図4に示すような組合せであっても良いし,別体で構成してもよい。
本発明の信号処理手段20Eの具体的な実施例を図8(b)に示す。この実施例の信号処理手段20Eを構成する信号処理回路は,第2の実施例に示す分岐器で構成した信号処理回路203を用いている。また,200で示される信号通過回路は,下り帯域信号に対して信号処理することなく最小限の通過損失で通過するよう構成された,例えば,プリント基板に備えられた導電材やジャンパー線等からなる高周波信号の通過回路である。選択手段18は本発明の実施例では切換スイッチによって構成されており,この切換スイッチ18の切換操作によって信号処理回路20か信号通過回路200のどちらかの信号経路を選択的に選べるのである。尚,切換スイッチ18はマニュアルで切換えできるようにしても良いし,電気的に切換えできるようにしても良い。
【0048】
このように構成された第4の実施例によれば,システムの改修の際に,同軸ケーブルが原因でCATVシステムにディップ(トラップ)が生じているような場合は,選択手段18としての切換スイッチを信号処理回路201側にすることによって,下り帯域信号の信号に対して上述の所定の処理をされると共に,前記信号増幅器19と合わせて,端末側に向かって適正レベルの信号が送出される。
【0049】
つまり,770MHz帯に対応するためのグレードアップを行う際に,CATVシステムにディップ現象が表れていなくても,システムの設置年数等から鑑みて,何れの時点かにディップ現象の発生が予想される現場であれば,既設の,例えば450MHz帯対応の棟内ブースターに変わって,この実施例に示される770MHz帯まで対応する信号増幅器19と信号処理手段20Eを設置することによって,万が一にディップが発生しても,選択手段18の簡単な切換操作で対応できる,極めて利便性の高いシステムを提供できるのである。特に,CATVシステムに発生するディップ現象が同軸ケーブルによるものである場合は,その発生周波数がUHF帯の低域側に略決まっていることから,信号処理回路は特に下り帯域信号の全般にわたって対応させるよう構成する必要がないので,その回路構成が簡単になることから,設計も簡単にできるし,延いては製品が安価にできる。
【0050】
以上,本発明によれば,例えば,今まで450MHz帯までの帯域を使ったCATVサービスに加入していたビルやマンション等の建物5に導入されている既存のCATVシステムを,地上ディジタル放送の信号をそのまま伝送するためのパススルー方式等に対応した770MHz帯を使ったサービスに対応させようとする場合に,たとえ,すでに敷設されている同軸ケーブルに伝送特性上の問題があっても,同軸ケーブルを張替えることなく,敷設された同軸ケーブルを使ったままで,770MHz帯の伝送ができるように改修することができ,既設のCATVシステムであっても770MHz帯に対応するための改修工事を簡単且つ安価に実施することができるのである。
また,既設のCATVシステムを地上ディジタル放送対応にすることによって,入居者は個別のアンテナを設けなくても地上ディジタル放送を見ることができるので,入居者にとって便利であると共に,ビルの管理者や所有者にとってはビルやマンションの価値を向上させることができるし,更には,ケーブルをビルの外壁に沿わせるように這わせたり,各部屋に同軸ケーブルを引込んだりしなくても良いので,ビルやマンションの美観を損なうことがなく,この点においてもビルやマンションの価値を損なうことがないCATVシステム,CATVシステムの配線方法及びCATV機器を提供できるのである。
更には,その改修工事は,同軸ケーブルを張替えることなく,引込線側にある既存の450MHz帯対応の棟内ブースターなどが設置されている収納ボックス等において,機器の入替え工事によっておこなわれるので,信号増幅器19や信号処理手段20を設置するスペースも新たに設ける必要がないし,商用電源のACコンセントも新たに設ける必要もないので改修工事が比較的簡単にできるし,更に,加入者が長時間にわたってテレビの視聴を制限されるといった問題にも対応できる,優れた特徴を有するのである。
【0051】
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,以下に例示するように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
例えば図2に示されるCATVシステムにおいて,信号増幅器19と信号処理手段20(以下の説明では,説明を簡略化するために信号増幅器19と信号処理手段20を備えた信号処理装置15の例で示す。)より後方側に延設されている同軸ケーブル8が長かったり,分岐器9若しくは分配器によって複数の伝送経路を形成したために,それ以降の伝送損失が大きかったりするような場合は,図11(a),(b),(c)に示されるように信号処理装置15を第1の信号処理装置15aと第2の信号処理装置15bとに分け,所定長の同軸ケーブル48を介して配列した構成にしても良い。
【0052】
この実施例について図9に示す従来のCATVシステムの異なる実施例を基に更に具体的に説明する。このシステムは例えばマンション等の各部屋の北側と南側にテレビ端子を備えるために複数の伝送経路に分配したシステムである。この例の場合,信号増幅器14や分配器の設置場所によっては各部屋までの同軸ケーブルの引回しの線路長が大きく異なる場合が生じる。例えば部屋2−6に引回される伝送経路(同軸ケーブル48,48−1,分配器13a,13b等からなる伝送経路)に比べて,部屋3−1に引回される伝送経路(同軸ケーブル48,48−2,分配器13a,13b等からなる伝送経路)が長くなる。このような場合は,図10に示されるように例えば端末までの伝送経路の線路長が短い経路と長い経路とを組分けするように分配し,更に長い経路のうちで,伝送損失が所定値より大きくなる経路に第2の信号処理装置15bを備えさせることで対応ができるのである。つまり伝送損失が所定量より大きい伝送経路には,所定長の伝送経路48を介して,その前方側には引込線に介設した第1の信号処理装置15aを備え,後方側には第2の信号処理装置15bを備えることになるのである。従って,経路が短い線路は前記第2の信号処理装置15aが備えられることになる。
この場合,第1の信号処理装置15aを構成する信号処理手段20a(請求項に記載の第1信号処理手段)は,前記所定長の伝送経路48を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,第2の信号処理装置15bを構成する信号増幅器19b(請求項に記載の第2信号増幅器)に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路48より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成すればよい。この実施例では,信号の増幅や周波数特性の補償をそれぞれに適宜に按分すればよいので,それぞれの回路構成が簡単になり設計が容易にできることからコストダウンにもなるし対応が素早くできる。
【0053】
具体的には,複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路48を介して,所定長の伝送経路48の前方側には第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器19aと該第1信号増幅器19aの出力側における所定位置に第1信号処理手段20aを介設し,所定長の伝送経路48の後方側には第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第2信号増幅器19bと該第2信号増幅器19bの出力側における所定位置に第2信号処理手段20bを介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器19aと前記第1信号処理手段20aを介設し,
前記第1信号処理手段20aは,前記所定長の伝送経路48を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路19bに過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段20bは,前記所定長の伝送経路48より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成すれば,信号増幅器19が有する最大出力レベルを必要以上に高くしなくてもよくなり,信号増幅器19の回路設計が容易となるばかりでなく発熱等の対策も簡単となリ,延いては信号増幅器19のコストを安価にすることができる。更に,信号処理手段20を信号増幅器の出力側に備えるように限定することによって,信号増幅器19に入力される信号レベルを低下させることが無く,これによって信号増幅器よるC/N劣化が防止でき,後方に向かってC/Nのよい信号を送出することができる。
【0054】
また,図2に示されるCATVシステムにおいて,図12に示されるように分岐器9の分岐端子から先の伝送経路に信号処理装置15を介設しても良い。この実施例は,分岐器9以降の同軸ケーブルが同軸ケーブル10と同軸ケーブル11のように異なることによって,伝送帯域の高域側における伝送損失が違ったり,ディップ現象が発生する周波数帯が違ったりする場合に対応できるようにしたものであり,図12(a)では分岐器9のすぐ後に伝送経路ごとに最適化された上述の信号処理装置15bおよび信号処理装置15cを介設した例を示し,図12(b)ではテレビ等の端末側装置と直列ユニットとの間に介設した例を示す。これらの例によれば,伝送経路ごとに適切な対応ができるのでより安定したCATVシステムが構成できるのである。この実施例の場合,分岐器9は図には示されていない前記収納ボックス等に収納されていたり,メンテナンスが容易な場所に設置されていたりする可能性が高いので,既設のシステムであっても信号処理装置の接続は建物等に邪魔されることないし,電源等の配線もする必要がないので問題なくできる。尚,分岐器9の前に示されている信号処理装置15aは伝送特性に応じて有っても良いし無くても良い。
また,上記のように信号処理装置を2つ以上設ける場合は,信号処理手段は上記実施例の何れか(若しくは,同軸ケーブルの伝送特性の逆特性を示すものなら実施例の構成でなくても良い。)によって構成されるのはもちろんであるけれども,CATVシステムによっては,任意の実施例を組み合わせて構成しても良い。
また,信号増幅器19と信号処理手段20を別体で構成して信号処理装置15を構成してもよいし,1つの筐体に収納して信号処理装置としても良い。また,実施例に示される分配器等を信号増幅器19と信号処理手段20と一緒に1つの筐体に収納してCATV装置の一例としての信号処理装置を構成するようにしてよい。
更に,本発明はCATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムに対応する例を示したが,例えばビル影や山影等による電波障害対策のために,ビルの屋上や山頂等の見通しの良い受信点にアンテナを設置し,該アンテナによって受信した信号を住宅などに引込線で引込んで受信するように構成された難視対策のための地上アナログ放送受信用のシステムを,地上ディジタル放送の受信に対応するように変更するような場合においても使用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来のCATVシステムを示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの概略構成図である。
【図3】(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性であり,(b)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの70から770MHzまでの周波数特性である。
【図4】図4(a),(b),(c),(d)は信号増幅器19と信号処理装置20の配列状態を示す概略構成図である。
【図5】(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性の異なる例であり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bにおける70から770MHzまでの周波数特性であり,(c)は第2の実施例として示される信号処理手段20Cにおける70から770MHzまでの周波数特性である。
【図6】(a)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数が固定のものであり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数を調整可能に構成されたものである。
【図7】第2の実施例として示される信号処理手段20Cの具体的な回路構成を示す。
【図8】第4の実施例として示される信号処理手段20Eの回路構成を示し,(a)は概略構成図であり,(b)は具体的な回路構成を示す。
【図9】従来のCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。
【図10】本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。
【図11】信号増幅器と信号処理手段の組合せを2つ備えた場合の配列状態を示すCATVシステムの一部を取出した図である。
【図12】信号増幅器と信号処理手段の異なる位置に配設した例を示すCATVシステムの一部を取出した図であリ,(a)は引込線の途中に配設した例であり,(b)は直列ユニットとテレビ等の端末側装置との間に配設した例である。
【符号の説明】
【0056】
1…分岐線,2…タップオフ,3…引込線,4…引込線,5…建物,6…保安器,7・8・10・13…同軸ケーブル,9…分岐器,11…中継用の直列ユニット,12…端末用の直列ユニット,13(13a,13Bb,13c)…分配器,14…棟内ブースター(450MHz対応),15…信号処理装置,16…入力端,17…出力端,18…選択手段,19…信号増幅器,20(20A,20B,20C,20E)…信号処理手段,201・202・203…信号処理回路,21…分岐手段(分岐器),21a…入力端(出力端),21b…出力端(入力端),21c…分岐端,22…第1のフィルタ手段,23…信号減衰手段,24…第2のフィルタ手段,25a…主線路,25b…分岐路,27・28・29・30…抵抗,31・34…コンデンサー,32・33・35…コイル,34a…可変容量ダイオード,36…PINダイオード,37a・37b…チョークコイル,38…周波数制御信号ライン,39…チルト量制御信号ライン,48…所定長の伝送経路(同軸ケーブル)。
【技術分野】
【0001】
本発明は,主にCATV網からタップオフを介して引込まれた引込線に接続されるCATVシステムおよびCATV装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CATV網はそのサービス形態に合わせて伝送帯域を拡大してきた。しかしながらCATV網の中には,その伝送帯域が例えば250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯対応など,伝送帯域の異なる各種システムが現在も多数運用されている。このようなシステムの場合,例えばUHF帯(470から770MHzのテレビ信号の周波数帯であり,以下,特に明記しない限りUHF帯とはこの周波数帯のことを言う。)を使った地上アナログ放送は,VHF帯,ミッドバンド帯およびスーパーハイバンド帯等のチャンネルに周波数変換されてから伝送することでサービスを行っていた。
【0003】
ところが,近年開始された地上ディジタル放送は,UHF帯の低域側周波数帯を主に使用して放送されるため,CATV局側では次のような対応で地上ディジタル放送信号を送出することになる。それは,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)をセンター局にて受信し,該受信した信号を,チャンネルを変えることなくそのまま幹線へ伝送するパススルー方式や,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)を,CATVで伝送可能なVHF帯やミッドバンド帯やスーパーハイバンド帯等に周波数変換して伝送する周波数変換パススルー方式や,放送局から送られたUHF帯の地上ディジタル放送波(OFDM)をセンター局にて受信して,BSディジタル放送の再送信と同じ方式(64QAM)に変換して伝送するトランスモジュレーション方式であり,CATV網を介して地上ディジタル放送を伝送しようとする場合は,採用する伝送方式に応じてCATV網の伝送帯域を広げる必要が生じる。特に,パススルー方式であれば,市販されている地上ディジタルチューナー,地上ディジタルチューナーを内蔵したテレビや,DVDを接続すれば地上ディジタル放送が見られるので利便性が良いのであるが,その方式に対応するためには,CATVシステムを少なくともUHF帯まで伝送するシステムに変更する必要が生じる。
【0004】
つまり,伝送帯域が450MHz帯までしか対応していないCATV網を,770MHz帯の伝送帯域を有するシステムに変更するには,CATV網の幹線や分岐線上に配設される幹線増幅器等の伝送機器を770MHzに対応させると共に,引込線に接続されたビルやマンション等のCATVシステムを構築している棟内増幅器,直列ユニットや同軸ケーブルなどのテレビ受信機器も,少なくとも770MHz若しくはそれ以上の周波数(例えば,衛星放送の中間周波数帯)まで対応した機器に変更することが必要となる。
しかしながら,ビルやマンション等のCATVシステムに設置された棟内増幅器や直列ユニット等は,一般的に収納ボックスやメンテナンスルームに設置されている場合が多く簡単に取替えができるが,引回された既設の同軸ケーブルは,天井裏や壁面内部に沿わせて配線するといった同軸ケーブルの敷設の方法から考えて,古いケーブルを取外して新たに同軸ケーブルを配線し直すのは困難であるのでそのまま使えることが望ましい。
ところが,同軸ケーブルは経年変化により物理的にも電気的にも影響を受ける事が分かっており,これらの変化の中でも特に同軸ケーブルの伝送特性に大きく影響するものとして,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象があり,その現象は,同軸ケーブルの種類や設置された年代によって発生する場合があることが報告されている。(例えば,非特許文献1参照)
【0005】
また,古いCATVシステムでは,もともと770MHz帯の伝送帯域を必要としなかったために,250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯等,それぞれの時代におけるサービスに適応するようにシステムが構築されていれば良く,それぞれのシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの規格が770MHzに対応していないことも考えられる。しかしながら,地上アナログ放送のVHF放送とUHF放送が行われていることから考えれば,一般的にはシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの規格が770MHzに対応しているはずであるが,実際には上述のようなディップ現象が見受けられなくても,UHF帯の高域側での伝送損失が,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量をはるかに上回る,すこぶる伝送特性の悪いシステムが存在する。このようなUHF帯の高域側の伝送特性が悪いシステムについて調べてみると,分配器や直列ユニットの伝送特性よりも,同軸ケーブルの伝送特性が大きく影響されることが調査で分かっている。その調査の結果の一例を挙げると,敷設されているケーブルが,同軸ケーブルとはいい難いシールド線のような外部導体である編組(網目状の導体細線)で構成された,高周波伝送には適さないような同軸ケーブルが見受けられた事例がある。
【0006】
【非特許文献1】昭和60年6月5日付 テレビ受信向上委員会 受信向上No.14 p16〜p18
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
つまり,このようなCATVシステムを,地上ディジタル放送を伝送する方法の一つである上述のパススルー方式のように,チャンネルを変えることなくそのままの周波数帯で伝送してくるようなCATV網に接続しようとする場合は,CATVシステムの引込線以降に既に設置されている同軸ケーブルに,今まで気付かなかったディップ現象が発生していないかどうか,ディップ現象が発生していなくてもUHF帯の高域側における損失が,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から子想されるような値を示すかどうかを確認する必要が生じ,ディップ現象が確認されたリ,UHF帯の高域の通過損失が同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きかったりしたなら,既設の同軸ケーブルを取除いて新たに同軸ケーブルを配線し直すか,同軸ケーブルを建物の外壁に這わせてから,壁などに穴をあけて建物内に同軸ケーブルを引入れ,それぞれの部屋に引入れるなどしないと,地上ディジタル放送波の信号が伝送されないといった問題が発生したり,C/Nが劣化して受信できなかったりする場合があった。
しかしながら,同軸ケーブルは建物の天井や壁面等の内部に沿わせて引回されているので,取除くのも困難であるし,新しい同軸ケーブルを壁面内等に引回すのは更に困難である。また,これに代わる方法として,建物等の外壁を沿わせて各部屋に引き込み,更に各部屋の内壁に同軸ケーブルを這わせて配線する方法があるが,この方法は簡単に実現できるものの,建物を傷つけたり建物の美観を損ねたりするし,各部屋の配線も美観を損ねることなく行うことは困難であリ,延いては,ビルやマンション等の価値を下げるといった問題があった。
また,高出力タイプのブースターを用いて,伝送特性の悪い部分を含めて全体のレベルを上げる方法も考えられるのであるが,ブースターには,その最大出力には制限があリ,あまり高出力にはできなし,高出力化はその設計も難しいしコストも掛かる。また仮に全体のレベルを上げることができたとしても,伝送特性の悪くない周波数帯と伝送特性の悪い周波数帯(例えばVHF帯とUHF体の高域側)におけるレベル差が大きくなりすぎ,CATVシステムとして問題が生じる。
そこで本願においては,こうした問題点を解決するためになされたものであり,
その目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化した既設のCATVシステムを,同軸ケーブルを取替えることなく広帯域にわたって伝送できるCATVシステムを提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,同軸ケーブルを取替えることなくUHF帯まで伝送できるCATVシステムを提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,UHF帯が伝送できるようにするための改修工事が簡単に行えるCATV装置を提供することを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,UHF帯が伝送できるようにするための改修工事が,視聴者が長時間に亘ってテレビの視聴を制限されることなくできるようにすることを課題とする。
他の目的は,同軸ケーブルのUHF帯の高域側で伝送特性の劣化したUHF帯には対応していない既設のCATVシステムを,簡単且つ安価に広帯域化することを課題とする
その他の目的も,以下に示す実施例の中で明確になるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために,請求項1の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0009】
請求項2の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0010】
請求項3の発明は,該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成した。
【0011】
請求項4の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した。
【0012】
請求項5の発明は,CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した
【0013】
請求項6の発明は,請求項5に記載のCATVシステムの配線方法において,該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした
【0014】
請求項7の発明は,請求項1から請求項3の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納するように構成した。
【0015】
請求項8の発明は,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納するように構成した。
【0016】
請求項9の発明は,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6に記載のいずれか一項に記載のCATVシステムの配線方法及び請求項7または請求項8の何れか一項に記載のCATV機器において,前記信号処理手段は前記第2の周波数帯の高域側における信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側における信号レベルとの差を補償するように構成されたチルト回路であるように構成した。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば,第1の周波数帯の一例としてのCATV網が450MHz帯までの帯域を使ったサービスから,伝送周波数帯を拡大した第2の周波数帯の一例としての770MHz帯を使ってパススルー方式等で地上ディジタル放送信号までを伝送するサービスに変更するような場合において,該CATV網に接続されたビルやマンション等のCATVシステムに敷設された伝送路(例えば,同軸ケーブル。以下,同軸ケーブルと記載する。)の伝送特性に同軸ケーブル固有の問題でUHF帯の高域側などにおいて,同軸ケーブルの減衰特性が有する周波特性から予想される減衰量をはるかに上回る通過損失が発生していて端末側にテレビがきれいに見られるような信号レベル(所定値レベル)が伝送されず,しかもその通過損失の対策のために同軸ケーブルの再配線がし難い状況にあるような場合に,本発明の信号増幅器および信号処理手段を伝送経路に介設してCATVシステムを構成することによって,前記信号増幅器においては,第2の周波数帯における端末側のレベルが何れの伝送経路においても所定値レベル(即ち,テレビがきれいに見られるような信号レベル)以上となるように,各系統の伝送経路における伝送損失を補償するよう前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅し,前記信号処理手段においては,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差(例えば,前記第2の周波数帯の高域側の信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側の信号レベルとの間に発生する信号レベル差)を補償することができるので,
既設のCATVシステムに使われている伝送特性の不明な同軸ケーブルを,更に広帯域た周波数帯の信号の伝送に対応させようとする場合に,上述のような伝送上の問題である通過損失の劣化が発生していても,端末側において例えば第2の周波数帯における高域側の信号レベルが低く(即ち,所定値レベル以下)なりすぎてテレビが見られないといった問題を解決するばかりでなく,第2の周波数帯内に生じる信号レベル差を打ち消して端末側の信号レベルが略一定な値となるように第2の周波数帯の信号を伝送することができることによって,既に敷設されている同軸ケーブルを新しく配線しなおすことなく,ビルやマンションの各端末側に所定値レベルの信号が供給でき,同軸ケーブルの再配線がし難い既設のCATVシステムであっても,770MHz帯への改修工事が簡単且つ安価に可能になるのである。
そして,更に加えて建物の外壁に同軸ケーブルを這わせたり,外壁に穴をあけたりすることがないので建物の美観を損なうこともなく,これによる建物の価値を下げることもない。
更に加えて,同軸ケーブルを配線し直す事がなく,機器の交換や取付だけで改修工事がすむので,工事期間が短くて済み,その結果,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴ができないといった問題もなくなるのである。
【0018】
請求項2の発明によれば,既設のCATVシステムを構成している複数の伝送経路の引回し経路長がすこぶる長かったり,引回し経路長が長かったり短かかったりして線路長にバラツキがあって,第2の周波数帯の信号の通過損失が大きくなるような伝送経路を有するCATVシステムであっても,複数の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路には,所定長の伝送線路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設し,前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路には,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,しかも,前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するようにCATVシステムを構成することで,既設のCATVシステムであっても第2の周波数帯の信号を所定レベル以上で且つ全帯域に亘って信号レベル差の少ない極めた安定した信号を端末側に伝送できるようになる。
【0019】
請求項3の発明によれば,請求項2の効果に加え,第1信号増幅器および第2信号増幅器は,それぞれ第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅するように構成すると共に,信号処理手段の介設する位置を信号増幅器の出力側に備えさせるようにすることによって,信号増幅器が有する最大出力レベルを必要以上に高くしなくてもよくなり,信号増幅回路の回路設計が容易となるばかりでなく発熱等の対策も簡単となリ,延いては信号増幅器のコストを安価にすることができる。更に,信号処理回路を出力側に備えるようにすることによって,信号増幅器に入力される信号レベルを低下させることが無く,これによって信号増幅器よるC/N劣化が防止でき,後方に向かってC/Nのよい信号を送出することができる。
【0020】
つまり,CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送するような場合,例えば,第1の周波数帯の信号の一例としての90から450MHz帯の信号に対応させた既設のCATVシステムに,第2の周波数帯の信号の一例としての70から770MHz帯の信号を伝送させる場合に発生する次のような問題に素早く且つ安価に対応ができるのである。
【0021】
まず第1の問題は分配器や分岐器および同軸ケーブル等の周波数特性によるものである。一般的にこれらの機器を通過する信号の周波数帯が高くなるほど通過損失が大きくなることから,450MHz帯に対応するように構成されたCATVシステムに770MHz帯の信号を伝送しようとすれば,UHF帯の高域側の伝送経路の通過損失が大きく,端末側に信号がうまく伝わらずに,端末側の信号レベルが所定値レベルに達しない場合が考えられる。この場合の所定値レベルはテレビがきれいに見られる信号レベルである。しかしながら例えば一般的な4分配器であれば,450MHzにおける分配損失が略7dBに対して,770MHzにおける分配損失は略8dB程度となり,同軸ケーブルであればたとえば一般的な5CFVの10mあたりの減衰量は,450MHzにおいて略1.5dBに対して,770MHzにおいては略2dBであり,それぞれの損失の増加は僅かであるから,既設のCATVシステムであってもそのまま770MHz帯に対応できそうである。ところが実際には既設のCATVシステムに第2周波数帯の信号を伝送させると,その伝送特性は特に敷設されている同軸ケーブルによる影響を強く受ける事が分かっており,この同軸ケーブルが高周波信号の伝送に適さない(例えば,線径が細い。編組が網状になっていないなどの原因によって。)ものであったり,経年変化による高周波特性の劣化が著しいものであったりすれば,端末側において,例えば第2の周波数帯の高域側の信号レベルと低域側の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じるばかりか,高域側における通過損失が予想される減衰量より極めて大きくて所定値レベルが得らないCATVシステムとなってしまうのである。
【0022】
次に第2の問題は特定の同軸ケーブルが持つ固有の問題である。即ち,同軸ケーブルは経年変化により物理的にも電気的にも影響を受ける事が分かっており,これらの変化の中でも特に同軸ケーブルの伝送特性に大きく影響するものとして,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象があり,その現象は,同軸ケーブルの種類や設置された年代によって発生する場合がある。このような特定の同軸ケーブルを用いた既設のCATVシステムでは,従来のように450MHz帯の伝送では,ディップ現象が起きていても伝送する信号がなかったので問題とならなかったが,このCATVシステムに770MHz帯までの信号を伝送しようとすると,端末側において,ディップ現象が発生した周波数帯の信号とその周波数帯の前後の周波数帯の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じるばかりか,ディップ現象が発生した周波数帯の信号の通過損失が極めて大きくて所定値レベルが得らないCATVシステムとなってしまうのである。
【0023】
そして,上述のような伝送特性に問題を有するCATVシステムは全国的に多数存在する。しかも,2011年には地上アナログ放送が完全停波してしまうことから,全施設を地上ディジタル放送に対応させることが必要となり,その一つの方法として,第1の周波数帯の一例としての450MHz帯までを伝送すればよかった既設のCATVシステムに対して,伝送周波数帯を拡大した第2の周波数帯の一例としての770MHz帯を伝送するように改修して,地上ディジタル放送信号をそのまま伝送するパススルー方式に対応させる方法が考えられている。
そこで,本発明は,例えば450MHz帯に対応していて770MHz帯までは対応していない既設のCATVシステムを770MHz帯に対応させるための改修工事において,特に,伝送経路の伝送特性に上述のような問題があるものの,同軸ケーブルが壁面内部に設置されていたりして,既設の同軸ケーブルを取外し新たに同軸ケーブルを壁面内部に配線することによる対応が難しいシステムであっても,敷設された同軸ケーブルを交換することなくそのまま使って改修工事が行え,しかもその工事が簡単且つ安価できるようにするものであり,加えて,既設の同軸ケーブルを使い,信号増幅器の交換や信号処理手段の取付けだけで改修工事がすむので,770MHz帯の信号を引込むために,同時ケーブルを建物の外壁に沿わせて新しく配線することも,建物の外壁に穴をあけて同軸ケーブルを引込む事も必要が無く,このため建物の美観や建物の価値を下げることもないし,また,工事期間が短くて済むことから,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴が制限されることのないCATVシステムが実現できる有用性の高いものである。
同様に,以下に示すように,770MHz帯より狭い周波数帯に対応する既設のCATVシステムを,770MHz帯を含む広帯域な周波数帯のシステムとして構築するための簡便な配線方法が実現できるし,また,前記CATVシステムや前記配線方法を実現するために用いるために好適なCATV機器が提供できることから,地上ディジタル放送への完全移行にあたり極めて有益な有効な発明を提供することができるのである。
【0024】
請求項4から請求項6の発明によれば,既設のCATVシステムに対して,請求項1から請求項3に示される信号増幅器や信号処理手段を伝送経路の所定位置に備えさせるだけで簡単且つ安価にシステムの改修が行えるCATVシステムの配線方法を提供できる。
また,建物の外壁に同軸ケーブルを這わせたり,外壁に穴をあけたりすることがないので建物の美観を損なうこともなく,これによる建物の価値を下げることもない。
更に加えて,同軸ケーブルを配線し直す事がなく,機器の交換や取付だけで改修工事がすむので,工事期間が短くて済み,その結果,加入者が長時間に渡ってテレビの視聴ができないといった問題に対して極めて好適なCATVシステムの配線方法を提供できる。
【0025】
請求項7の発明によれば,請求項1または請求項2の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項3または請求項4の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納するように構成したので,既設のCATVシステムにおける例えば収納ボックスに簡単に取付けることができ,しかも省スペースで設置できることから,第2の周波数帯に対応するためのCATVシステムの改修工事に対してすこぶる利便性の良いCATV機器を提供できる。
【0026】
請求項8の発明によれば,請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器において,前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納するように構成したので,既設のCATVシステムにおける例えば収納ボックスに簡単に取付けることができ,しかも,例えば既設の信号分配器をなくすことで,更に省スペース化が図れることから,収納ボックス等の限られたスペースに対する設置が容易にでき,第2の周波数帯に対応するためのCATVシステムの改修工事に対して極めて利便性の良いCATV機器を提供できる。
加えて,前記信号増幅器と前記信号処理手段と前記信号分配器を同一筐体に収納したことによって,信号分配器による分配後の出力レベルが,TVブースターに決められた最大値を超えない範囲で信号増幅器の出力レベルを高出力化することによって信号分配器の分配損失を補うことができ,従来のように信号増幅器と信号分配器を個別に接続したときと比べて,レベルの高い信号を端末側に向かって送出できることから,第1の周波数帯に比べて広帯域な第2の周波数帯に対応させるためのCATVシステムの改修工事に対して,すこぶる利便性が良く且つ汎用性の高いCATV機器を提供できる。
【0027】
請求項9の発明によれば,第1の周波数帯の信号の一例としての90から450MHz帯の信号に対応させた既設のCATVシステムに,第2の周波数帯の信号の一例としての70から770MHz帯の信号を伝送した場合であって,特に第2周波数帯の高域側における通過損失が同軸ケーブルの減衰特性が有する周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きく,第2の周波数帯の高域側の信号レベルと低域側の信号レベルとのあいだで極めて大きな信号レベル差が生じてしまっているようなCATVシステムであったとしても,信号増幅器と,信号処理回路の一例としてのチルト回路を備えさせることによって,端末側に所定レベル以上で且つ全帯域に亘って信号レベル差の少ない極めた安定した信号を伝送できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に,本発明を具体化した実施形態の例を,図面を基に詳細に説明する。
図1は従来のCATVシステムの一例を示す概略構成図であり,図2は本発明に係る信号増幅器と信号処理回路を備えたCATVシステムの一例を示す概略構成図である。図3(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性であり,(b)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの70から770MHzまでの周波数特性である。図4(a),(b),(c),(d)は信号増幅器と信号処理手段の配列状態を示す概略構成図である。図5(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性の異なる例であり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの70から770MHzまでの周波数特性であり,(c)は第2の実施例として示される信号処理手段20Cの70から770MHzまでの周波数特性である。図6(a)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数が固定のものであり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数を調整可能に構成されたものである。図7は第2の実施例として示される信号処理手段20Cの具体的な回路構成を示す。図8は第4の実施例として示される信号処理手段20Eの回路構成を示し,(a)は概略構成図であり,(b)は具体的な回路構成を示す。図9は従来のCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。図10は本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。図11は信号増幅器と信号処理手段の組合せを2つ備えた場合の配列状態を示すCATVシステムの一部を取出した図である。図12は信号増幅器と信号処理手段の異なる位置に配設した例を示すCATVシステムの一部を取出した図であリ,(a)は引込線の途中に配設した例であり,(b)は直列ユニットとテレビ等の端末側装置との間に配設した例である。
【実施例1】
【0029】
図1は従来からあるビルやマンション等に設置されたCATVシステムの概略構成を示す図であり,例えば下り帯域信号として第1の周波数帯(例として450MHz帯若しくは450MH以下の伝送帯域)の信号を使ってサービスを行うCATV網に接続された既設のCATVシステムである。この図において1は図には示されていないセンター局と接続されている幹線から分岐された分岐線を示し,この分岐線1はタップオフ2を介してさらに先に延設されている。そしてタップオフ2には引込線3,4が接続され,この引込線4を介してビルやマンション等のCATVシステムはCATV網に接続されている。図における実施例では引込線4は5に示されるビルやマンション等に設置された保安器6に接続され,この保安器6から先は,同軸ケーブル7によっての建物5に引き込まれている。
【0030】
建物5に引き込まれた同軸ケーブル7は,一度建物5の屋上や建物内のメンテナンスルームなどに設置された図には示されていない収納ボックス等まで引回されている。この収納ボックスは,内部にテレビ受信機器等を収納するための収納空間を有し,この収納空間の奥底には,テレビ受信機器等の取付けをするための板体等が備えられると共に,AC100Vの商用電源が得られるACコンセント等が敷設されている。そして,この収納ボックスには14に示される信号増幅器が取付けられており,収納ボックスまで引回された前記同軸ケーブル7はこの信号増幅器14に接続されている。この実施例では信号増幅器14はCATVシステムに適した450MHz帯対応の棟内ブースターである。
更に,信号増幅器14の先には同軸ケーブル8が接続されており,同軸ケーブル8のその先には分岐器9が接続されている。
本発明の実施例では,分岐器9は4分岐器であり,それぞれの分岐端子からは同軸ケーブル10や13などを介して,建物5の上の階から下の階にかけて中継用の直列ユニット11を3つと端末の直列ユニット12が接続されており,各直列ユニットは建物5の各階にある部屋にそれぞれ配設された複数の伝送経路を形成している。そして,これらの分岐器9,直列ユニット11,12,同軸ケーブルなどは,少なくとも450MHz帯の信号が伝送できる周波数特性を有するもので構成されており,実施例ではこれらの機器を使って建物5内で16端子に分配するCATVシステムが構成されている。
尚,分岐器,直列ユニット等の下限の使用周波数は例えば70MHzのものでも良いが,例えば下限の使用周波数が10MHzのものを使用し,信号増幅器も10から55MHz帯の上り帯域信号を増幅若しくは通過する上り信号回路を有するようにしてあれば双方向CATVシステムにも対応できる。
【0031】
このように構成されたCATVシステムは,CATV局から送られてくる例えば70から450MHz帯の下り帯域信号を使ったサービスを受けているのであるが,CATV局において,更なる多チャンネル化や,UHF帯の低域側で行われている地上ディジタル放送の信号をパススルー方式等を使ってサービスを開始するために,CATV網の伝送帯域を下り帯域信号として第2の周波数帯(例として770MHz帯までの帯域)の信号まで拡大することになれば,加入者(CATVシステム)側においてこれらのサービスを受けるためには,建物5内のCATVシステムを770MHz帯に対応させる必要がある。普通,テレビ受信に一般的に使用されている分岐器,直列ユニット,同軸ケーブルなどは,既に放送が行われているVHFとUHFの地上アナログ放送を受信するために,少なくとも770MHz帯まで対応する周波数特性を有する機器で構成されているはずであるから,既設のCATVシステムであっても770MHz帯まで伝送でき,例えば既設の450MHz帯対応の棟内ブースター14を770MHz帯対応のブースターに変更すれば770MHz帯のサービスに対応させることができると考えられる。
【0032】
ところが建物5内に敷設されている同軸ケーブル7,8,10,13等は,古いCATVシステムでは,もともと770MHz帯までの伝送帯域を必要としなかったために,250MHz帯,300MHz帯,450MHz帯等,それぞれの時代におけるサービスに適応するようにシステムが構築されていれば良く,それぞれのシステムに敷設されている機器や同軸ケーブルの周波数特性の規格が770MHzに対応していないことも考えられる。この原因として,広帯域な高周波伝送には向かない線径の細い同軸ケーブルが使用されていたり,シールド線のような外部導体(編組)からなる粗悪なケーブルが用いられていたりしていること等が考えられる。このようなシステムの場合には,使用している同軸ケーブルの周波数特性の良し悪しが全体の伝送特性に大きく影響を与え,伝送帯域の高域側,特に770MHz付近における伝送損失が,同軸ケーブルの伝送損失の周波数特性から予想される減衰量よりはるかに大きな損失をもつことによって,伝送帯域の高域側で伝送損失が極めて大きくなリ,端末側における低域側と高域側の信号レベルがすこぶる大きいものとなるし,更には高域側における信号レベルが所定値レベルより低くなってしまうといった問題が発生する。(第1の問題)
【0033】
また,建物5内の共同受信システムが設置された時代によっては,テレビ受信用として一般的に使用されていた同軸ケーブルが持つ固有の問題によって,その伝送特性に特有の問題が発生する場合があり,棟内ブースターの変更だけでは770MHz帯に対応できないことがある。つまり,同軸ケーブルは経年変化によって物理的にも電気的にもその影響を受け,ある時期まで使われていた同軸ケーブルでは,これらの影響のうち極めて大きな問題となるのは,UHF帯内の特定周波数(特に,UHF帯の低域側に発生する。)で減衰量が大きく増加するディップ現象の発生であり,UHF帯のテレビ信号を使った地上ディジタル放送信号をそのままで伝送するパススルー方式を行うのに支障をきたすのである。(第2の問題)
【0034】
このよう伝送上の問題が発生した既設のCATVシステムにおける770MHz帯までの伝送特性を図3(a)及び図5(a)に示す。このデータは図1に示すCATVシステムのX点とY点(2階部分に設置された直列ユニット11の壁面端子)との間の通過損失を測定したものである。図3(a)に示されるデータは前記第1の問題である同軸ケーブルの周波数特性に起因する伝送特性(実線で示される)を示しており,このデータによればUHF帯の高域側の伝送損失が同軸ケーブルの減衰特性から予測される値(破線で示される)に比べてすこぶる大きくなっており,UHF帯の高域側の信号は端末側まで最適レベルで伝送することができないことになる。また,図5(a)に示されるデータは前記第2の問題である同軸ケーブルが持つ固有の問題に起因する伝送損失を示しており,このデータによれば略450MHzを中心周波数とするディップが発生しており,この周波数帯の信号は端末側まで最適レベルで伝送することができない。
これに対応するためには,同軸ケーブルを新しく張り替えれば良いのであるが,既設の同軸ケーブルは,建物の壁面等の内部に引回されているので,取外すのも困難であるばかりか,新しく配線するのも極めて難しい。そこで本発明は,例えば450MHz帯までの帯域に対応していて770MHz帯までは対応していない既設のCATVシステムを770MHz帯に対応させるための改修工事において,たとえ,すでに敷設されている同軸ケーブルの伝送特性に上述のような問題があるものの,同軸ケーブルが壁面内部に設置されていたりして,既設の同軸ケーブルを取外し新たに同軸ケーブルを壁面内部に配線することによる対応が難しいシステムであっても,敷設された同軸ケーブルを交換することなくそのまま使って770MHz対応の改修工事が行えるようにするためのものである。
【0035】
(第1の問題に対する実施例)
先ず,同軸ケーブルの一般的な周波数特性に起因する問題に対応する方法について説明する。この実施例では図2および図4に示すように,前記信号増幅器14に変わって,CATV機器の一例として信号増幅器19と信号処理手段20とを同一の筐体に収納してなる信号処理装置15を備えさせようにしたものである。尚,この実施例では,信号増幅器19と信号処理手段20とを同一の筐体に収納した例を示したが,信号増幅器19と信号処理手段20とを別体で構成してもよい。以下の実施例についても同様である。
この実施例では,引込線から伝送されてくる下り帯域信号としての第2の周波数帯の信号(本発明の実施例では70から770MHz)を所定量だけ増幅する信号増幅器19を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための信号処理手段20を前記信号増幅器19の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成したものである。尚,ここでいう所定値レベルとは例えば端末側にテレビ等を接続したときにテレビがきれいに見える信号レベルである。
図4は本発明の実施例における前記信号増幅器19と信号処理手段20の配設順について信号処理装置15の例を用いて説明したものであり,図4(a)は信号増幅器19,信号処理手段20の順で配設された例を示しており,図4(b)に示されるように信号処理手段20,信号増幅器19の順のように配列を逆にしても良い。また,図4(c)に示されるように信号増幅器19を挟んで前後に信号処理手段20a,20bを配列しても良いし,図4(d)のように信号処理手段20を挟んで前後に信号増幅器19a,19bを配列しても良いなど特にその構成は限定されるものではない。尚,これらの例は,信号処理装置15を用いて示したが,前記信号増幅器19と信号処理手段20を個別に備えたものでも同様である。
【0036】
ここで,信号増幅器19について説明する。この信号増幅器19は例えば高周波素子としてのトランジスタやICから構成された所定の利得を有する増幅回路からなり,その増幅帯域は下り帯域信号に対応して70から770MHzの帯域を増幅するように構成されている。この信号増幅器19の利得は,少なくとも,前記第2の周波数帯の信号が伝送経路を通過することによって生じる最大通過損失を補償して,端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるような増幅度であればよいが,端末側の受信端末レベルを最適化できるように利得が高くて高出力タイプの増幅器がよい。そして更に利得調整回路を備えることで利得を連続的若しくは段階的に可変できるようにすれば,端末レベルの最適化が簡単にできる利便性の良い信号増幅器19となる。
尚,信号増幅器19は下り帯域信号を増幅するように構成された説明したが,CATV上り帯域信号用の通過回路や増幅回路を備えて双方向CATVシステムに対応させるように構成したものでも良く,実施例に限定されるものではない。
【0037】
次に信号処理手段20の実施例について説明する。尚,この実施例の信号処理手段は第1の実施例であり,以下の説明では信号処理手段20Aと記載する。
この実施例では,信号処理手段20Aを構成する信号処理回路201は,図3(b)の周波数特性に示されるように,通過損失がUHF帯の高域側(例えば略770MHz)において最小値を示し,少なくとも,下り帯域信号の低域側,即ちVHF帯の低域側(例えば略70MHz)において通過損失が最大値となるように,所定の傾きの周波数特性を有するチルト回路であるように構成されている。
図6(a)に具体的な回路構成を示す。図6(a)において示される信号処理回路201は,チルト量及びチルトの基準となる周波数(例えば,770MHz)が一定となるように構成されたものである。この図において27,28,29,30は抵抗であり,31,34はコンデンサーであり,32,33はコイルである。
【0038】
つまり,この信号処理手段20Aの回路構成によると,既設のCATVシステムに帯域の広い第2の周波数帯の信号を伝送したときに,システム上に発生した伝送帯域の高域側の減衰特性が極めて大きい伝送特性を示すな場合に対応するように,下り帯域信号に対してチルト量が適宜な値になるように設定するなどの信号処理を予め下り帯域信号の施すと共に,前記信号増幅器19によって適宜に増幅することによって,既設の同軸ケーブルを使ったままであっても,端末側における第2の周波数帯の高域側(770MHzの近傍)の信号レベルが低く(即ち,所定値レベル以下)なりすぎてテレビが見られないといった問題を解決するばかりでなく,第2の周波数帯の信号を伝送することによって帯域内に生じる信号レベル差(例えば低域側の信号レベルと高域側の信号レベルの差)を打ち消して,端末側の信号レベルが略一定な値となるように第2の周波数帯の信号を伝送することができるのである。尚,チルト量を手動若しくは電気的な制御によって連続的若しくは段階的に可変できるようにすれば汎用性の高い信号処理手段を提供できる。また,チルトの周波数特性は第2の周波数帯の帯域内で一定の傾きを有するように構成しても良いし,所定の帯域ごとに傾きを変えるように構成しても良いな特にその構成は限定されるものではない。
【0039】
(第2の問題に対する実施例の1)
この実施例は伝送経路に同軸ケーブルの固有の問題であるディップ現象が発生した場合の実施例である。尚,信号増幅器19は上記実施例と同様な構成であるので,以下の説明では特に必要とする場合を除いて詳細な説明は省略する。この実施例にかかる信号処理手段は図6(a)で示される第1の実施例と同様な構成の信号処理手段20A若しくは図6(b)で示される第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bである。これらの信号処理手段は,図3(b)の周波数特性に示されるように,下り帯域信号の中から基準周波数(例えば,ディップが最大減衰量を示す周波数)を選択的に通過するように構成され,その通過損失は略基準周波数において最小値を示し,少なくとも,下り帯域信号の略最小周波数において通過損失が最大値となるように,略基準周波数より周波数の低い側に所定の傾きの周波数特性を有したチルト回路であるように構成されている。
【0040】
図6に具体的な回路構成を示す。図6(a)においてに示される第1の実施例の信号処理回路201は前記実施例と回路構成は同様であるが,チルト量及びチルトの基準となる中心周波数をディップが発生している周波数やレベル差に対応するように構成したものである。尚,この実施例において,抵抗29,30を例えば可変抵抗器等で構成して,その抵抗値を同時に可変できるようにすればチルト量を可変できるし,加えて,コンデンサー31,34をトリマコンデンサーのような半固定コンデンサー等で構成してその容量を同時に可変できるようにすればチルトの基準となる基準周波数を可変できるので,上述に示す何れの第1及び第2の問題にも同じ信号処理手段で対応することができ信号処理回路に汎用性を持たせることができる。
【0041】
この制御を電気的に行うように構成したものが図6(b)に示される第1の実施例の信異なる例の信号処理手段20Bである。この信号処理手段20Bを構成する信号処理回路202において,27,28は抵抗であり,35はコンデンサーであり,32,33はコイルであり,加えて,可変容量ダイオード34aと該可変容量ダイオード34aに対して中心周波数の制御信号を供給する周波数制御信号ライン38と,この制御信号を供給すると共に高周波信号を阻止するためのチョークコイル37aとで周波数制御ができ,36で示されるPINダイオードと,該PINダイオード36にチルト量の制御信号を供給するチルト量制御信号ライン39と,この制御信号を供給すると共に高周波信号を阻止するためのチョークコイル37bとでチルト量制御ができるように構成されていることによって,設置現場等において簡単且つ素早く調整することができるのである。
【0042】
つまり,この第1の実施例で示される信号処理手段によれば,既設のCATVシステム上に発生したディップ特性に対応するように,下り帯域信号の中から基準周波数を設定若しくは調整すると共に,下り帯域信号の最小周波数(例えば,70MHz)におけるチルト量が適宜な値になるように設定若しくは調整するなどの信号処理を予め下り帯域信号の施すと共に,前記信号増幅器19と合わせて端末側におけるディップの影響をなくすと共にレベル差の少ない最適なレベルの信号を供給できるのである
【0043】
(第2の問題に対する実施例の2)
次に,ディップ現象に対応するための信号処理手段の第2の実施例を説明する。この実施例では信号処理手段20Cは信号処理回路203からなる。図7によく示されるように,入力端21aから入力される下り帯域信号を出力端21bから主線路25aに出力すると共に,下り帯域信号の一部を分岐して分岐端21cから分岐路25bに出力するように構成された,例えばフェライトにポリウレタン線を巻きまわしてなる一対の分岐器からなる分岐手段21を,主線路25a同士および分岐路25b同士を接続するように対向配設し,その主線路25aには下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,所定帯域幅の信号を通過するように構成された第1フィルタ手段22を介設し,その分岐路25bには下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,前記第1フィルタ手段22が通過する所定帯域幅の信号の通過を阻止するように構成された第2フィルタ手段24を介設するように構成したフィルタ回路から構成されている。更に,この第1の実施例では,分岐路25bには,分岐路25bを通過する信号を連続的若しくは所定の間隔のステップで減衰させるための信号減衰回路23が備えられている。
つまり,この信号処理手段20Cは,主線路25aは,第1のフィルタ手段22を介して通過させたい基準周波数を中心とした帯域(この場合,ディップ現象による最大のディップ点を示す中心周波数が基準周波数となり,この中心周波数を挟んで所定帯域幅の信号)を選択的に通過させ,分岐路25bは,第1のフィルタ手段22で選択的に決められた帯域幅を阻止帯域として,その阻止帯域の前後の帯域の信号を,分岐手段21の分岐量(この場合,分岐手段21の2つ分の分岐量の合計)だけ減衰させて通過するように構成したことによって,図5(c)の周波数特性によく示されるような周波数特性を有したフィルタ回路203が構成される。
【0044】
このフィルタ回路203の構成によると,ビルやマンション等のCATVシステム上に発生したディップ特性の最大減衰量と,この最大減衰量を示す周波数を中心周波数としたディップの帯域幅と,この帯域幅の下限周波数もしくは上限周波数における減衰量とのレベル差などに対応して,第1のフィルタ手段22及び第2のフィルタ手段の基準周波数と帯域幅を設定若しくは調整すると共に,前記分岐手段21の分岐量を適宜な値に設定若しくは調整して,信号処理手段20が図5(c)の周波数特性に示されるような,ディップ特性とは逆特性を有するようにする。加えて,前記信号増幅器19によって下り帯域信号の信号を所定量だけ増幅してから端末側に向かって送出することによって,端末側においては,同軸ケーブルによって発生するディップの影響が少なくすることができると共に最適なレベルの信号を供給できるのである。
また,この第2の実施例の信号処理手段20Cは,分岐手段としての一対の分岐器21から構成されていることから,この信号処理手段20Cの入力側と出力側の定在波比(VSWR)が広帯域に亘って良好な値を有するので,この信号処理手段20Cの介設によって,インピーダンスの不整合の発生を極めて小さいものにすることができるし,広帯域な第2の周波数帯の信号を伝送しても良好に信号処理することができる高性能な信号処理手段19を実現できる。
【0045】
尚,前記第1のフィルタ手段22及び第2のフィルタ手段24はディップ特性に合わせて基準周波数,帯域幅や阻止量等を電気的に制御して調整自在になるように構成しても良いし,手動で調整ができるように構成しておいてもよい。また,基準周波数等を選択的に調整可能である例を示したが,特にこの実施例に限定されるものではなく,これらのフィルタ手段をユニット化し,予め数種類の基準周波数や帯域幅等を有するフィルタ手段を作成しておいて,必要に応じで取替えができるように構成しておいてもよく,その実施の形態は実施例に限定されるものではない。
また,本発明の実施例では分岐路25bに第2のフィルタ回路24を介設するような構成を示したが,分岐手段21が所定量以上の分岐量を有していれば,特に分岐路25bに第2のフィルタ手段介設することなく合成できるので,第2のフィルタ手段24がない構成でも良い。
また,分岐路25bには,上述のように分岐路25bを通過する信号を減衰させる信号減衰手段23を備えることで,任意のレベル差を有した逆特性が簡単に得られるので,CATVシステムによって発生状態の異なるディップ特性に対して工事現場などでの対応が素早くできる極めて優れた操作性の高い信号処理手段20Cが実現できる。この信号減哀手段23は複数の減衰素子(減衰量が異なる固定ATTを数種類備える)をスイッチ等の操作手段で切替えることで段階的に減衰量を選択できるようにしても良いし,減衰素子としてのピンダイオード等を使って電気的な制御によって連続的に減衰量を可変できるように構成しても良い。尚,この第2の実施例においても信号増幅器19と信号処理手段20Cの配列は,図4に示すような組合せであっても良い。また,同一筐体に収納してもよいし,別体で備えさせるようにしてもよい。
【0046】
(第2の問題に対する実施例の3)
この第3の実施例の信号処理手段を構成する信号処理回路は,引込線に伝送される下り帯域信号の中から基準周波数を選択的に設定若しくは調整可能であると共に,その通過損失が略基準周波数において最小値となるように信号を通過し,下り帯域信号の略最小周波数において所定量の阻止帯域減衰量を有するように構成されたバンドパスフィルタ回路から構成されている。この場合においても,基準周波数は調整可能に構成されていなくても良く,この場合は,基準周波数の異なる複数のバンドパスフィルタを予め作成しておけばよい。更に,下り帯域信号の略最小周波数における阻止帯域減衰量が異なる複数のバンドパスフィルタを作成しておけば更に適応性の良い信号処理手段20を提供できる。
【0047】
(第2の問題に対する実施例の4)
この実施例における第4の実施例の信号処理手段20Eは,上記第1の実施例から第3の実施例に示される何れかの信号処理回路と並列に,下り帯域信号を通過させるだけの信号通過回路200を設け,更には,下り帯域信号の通過する経路が,前記信号処理回路か前記信号通過回路200を選択的に切換可能であるように構成された選択手段18を備えた構成となっている。図8(a)にはこの実施例の信号処理手段20Eと信号増幅器19とを備えた信号処理装置15の構成図が示されている。尚,信号増幅器19と信号処理手段20Eの配列は,図4に示すような組合せであっても良いし,別体で構成してもよい。
本発明の信号処理手段20Eの具体的な実施例を図8(b)に示す。この実施例の信号処理手段20Eを構成する信号処理回路は,第2の実施例に示す分岐器で構成した信号処理回路203を用いている。また,200で示される信号通過回路は,下り帯域信号に対して信号処理することなく最小限の通過損失で通過するよう構成された,例えば,プリント基板に備えられた導電材やジャンパー線等からなる高周波信号の通過回路である。選択手段18は本発明の実施例では切換スイッチによって構成されており,この切換スイッチ18の切換操作によって信号処理回路20か信号通過回路200のどちらかの信号経路を選択的に選べるのである。尚,切換スイッチ18はマニュアルで切換えできるようにしても良いし,電気的に切換えできるようにしても良い。
【0048】
このように構成された第4の実施例によれば,システムの改修の際に,同軸ケーブルが原因でCATVシステムにディップ(トラップ)が生じているような場合は,選択手段18としての切換スイッチを信号処理回路201側にすることによって,下り帯域信号の信号に対して上述の所定の処理をされると共に,前記信号増幅器19と合わせて,端末側に向かって適正レベルの信号が送出される。
【0049】
つまり,770MHz帯に対応するためのグレードアップを行う際に,CATVシステムにディップ現象が表れていなくても,システムの設置年数等から鑑みて,何れの時点かにディップ現象の発生が予想される現場であれば,既設の,例えば450MHz帯対応の棟内ブースターに変わって,この実施例に示される770MHz帯まで対応する信号増幅器19と信号処理手段20Eを設置することによって,万が一にディップが発生しても,選択手段18の簡単な切換操作で対応できる,極めて利便性の高いシステムを提供できるのである。特に,CATVシステムに発生するディップ現象が同軸ケーブルによるものである場合は,その発生周波数がUHF帯の低域側に略決まっていることから,信号処理回路は特に下り帯域信号の全般にわたって対応させるよう構成する必要がないので,その回路構成が簡単になることから,設計も簡単にできるし,延いては製品が安価にできる。
【0050】
以上,本発明によれば,例えば,今まで450MHz帯までの帯域を使ったCATVサービスに加入していたビルやマンション等の建物5に導入されている既存のCATVシステムを,地上ディジタル放送の信号をそのまま伝送するためのパススルー方式等に対応した770MHz帯を使ったサービスに対応させようとする場合に,たとえ,すでに敷設されている同軸ケーブルに伝送特性上の問題があっても,同軸ケーブルを張替えることなく,敷設された同軸ケーブルを使ったままで,770MHz帯の伝送ができるように改修することができ,既設のCATVシステムであっても770MHz帯に対応するための改修工事を簡単且つ安価に実施することができるのである。
また,既設のCATVシステムを地上ディジタル放送対応にすることによって,入居者は個別のアンテナを設けなくても地上ディジタル放送を見ることができるので,入居者にとって便利であると共に,ビルの管理者や所有者にとってはビルやマンションの価値を向上させることができるし,更には,ケーブルをビルの外壁に沿わせるように這わせたり,各部屋に同軸ケーブルを引込んだりしなくても良いので,ビルやマンションの美観を損なうことがなく,この点においてもビルやマンションの価値を損なうことがないCATVシステム,CATVシステムの配線方法及びCATV機器を提供できるのである。
更には,その改修工事は,同軸ケーブルを張替えることなく,引込線側にある既存の450MHz帯対応の棟内ブースターなどが設置されている収納ボックス等において,機器の入替え工事によっておこなわれるので,信号増幅器19や信号処理手段20を設置するスペースも新たに設ける必要がないし,商用電源のACコンセントも新たに設ける必要もないので改修工事が比較的簡単にできるし,更に,加入者が長時間にわたってテレビの視聴を制限されるといった問題にも対応できる,優れた特徴を有するのである。
【0051】
尚,本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく,以下に例示するように,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成を適宜に変更して実施することも可能である。
例えば図2に示されるCATVシステムにおいて,信号増幅器19と信号処理手段20(以下の説明では,説明を簡略化するために信号増幅器19と信号処理手段20を備えた信号処理装置15の例で示す。)より後方側に延設されている同軸ケーブル8が長かったり,分岐器9若しくは分配器によって複数の伝送経路を形成したために,それ以降の伝送損失が大きかったりするような場合は,図11(a),(b),(c)に示されるように信号処理装置15を第1の信号処理装置15aと第2の信号処理装置15bとに分け,所定長の同軸ケーブル48を介して配列した構成にしても良い。
【0052】
この実施例について図9に示す従来のCATVシステムの異なる実施例を基に更に具体的に説明する。このシステムは例えばマンション等の各部屋の北側と南側にテレビ端子を備えるために複数の伝送経路に分配したシステムである。この例の場合,信号増幅器14や分配器の設置場所によっては各部屋までの同軸ケーブルの引回しの線路長が大きく異なる場合が生じる。例えば部屋2−6に引回される伝送経路(同軸ケーブル48,48−1,分配器13a,13b等からなる伝送経路)に比べて,部屋3−1に引回される伝送経路(同軸ケーブル48,48−2,分配器13a,13b等からなる伝送経路)が長くなる。このような場合は,図10に示されるように例えば端末までの伝送経路の線路長が短い経路と長い経路とを組分けするように分配し,更に長い経路のうちで,伝送損失が所定値より大きくなる経路に第2の信号処理装置15bを備えさせることで対応ができるのである。つまり伝送損失が所定量より大きい伝送経路には,所定長の伝送経路48を介して,その前方側には引込線に介設した第1の信号処理装置15aを備え,後方側には第2の信号処理装置15bを備えることになるのである。従って,経路が短い線路は前記第2の信号処理装置15aが備えられることになる。
この場合,第1の信号処理装置15aを構成する信号処理手段20a(請求項に記載の第1信号処理手段)は,前記所定長の伝送経路48を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,第2の信号処理装置15bを構成する信号増幅器19b(請求項に記載の第2信号増幅器)に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路48より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成すればよい。この実施例では,信号の増幅や周波数特性の補償をそれぞれに適宜に按分すればよいので,それぞれの回路構成が簡単になり設計が容易にできることからコストダウンにもなるし対応が素早くできる。
【0053】
具体的には,複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路48を介して,所定長の伝送経路48の前方側には第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器19aと該第1信号増幅器19aの出力側における所定位置に第1信号処理手段20aを介設し,所定長の伝送経路48の後方側には第2の周波数帯の信号のなかで通過損失が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第2信号増幅器19bと該第2信号増幅器19bの出力側における所定位置に第2信号処理手段20bを介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器19aと前記第1信号処理手段20aを介設し,
前記第1信号処理手段20aは,前記所定長の伝送経路48を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路19bに過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段20bは,前記所定長の伝送経路48より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成すれば,信号増幅器19が有する最大出力レベルを必要以上に高くしなくてもよくなり,信号増幅器19の回路設計が容易となるばかりでなく発熱等の対策も簡単となリ,延いては信号増幅器19のコストを安価にすることができる。更に,信号処理手段20を信号増幅器の出力側に備えるように限定することによって,信号増幅器19に入力される信号レベルを低下させることが無く,これによって信号増幅器よるC/N劣化が防止でき,後方に向かってC/Nのよい信号を送出することができる。
【0054】
また,図2に示されるCATVシステムにおいて,図12に示されるように分岐器9の分岐端子から先の伝送経路に信号処理装置15を介設しても良い。この実施例は,分岐器9以降の同軸ケーブルが同軸ケーブル10と同軸ケーブル11のように異なることによって,伝送帯域の高域側における伝送損失が違ったり,ディップ現象が発生する周波数帯が違ったりする場合に対応できるようにしたものであり,図12(a)では分岐器9のすぐ後に伝送経路ごとに最適化された上述の信号処理装置15bおよび信号処理装置15cを介設した例を示し,図12(b)ではテレビ等の端末側装置と直列ユニットとの間に介設した例を示す。これらの例によれば,伝送経路ごとに適切な対応ができるのでより安定したCATVシステムが構成できるのである。この実施例の場合,分岐器9は図には示されていない前記収納ボックス等に収納されていたり,メンテナンスが容易な場所に設置されていたりする可能性が高いので,既設のシステムであっても信号処理装置の接続は建物等に邪魔されることないし,電源等の配線もする必要がないので問題なくできる。尚,分岐器9の前に示されている信号処理装置15aは伝送特性に応じて有っても良いし無くても良い。
また,上記のように信号処理装置を2つ以上設ける場合は,信号処理手段は上記実施例の何れか(若しくは,同軸ケーブルの伝送特性の逆特性を示すものなら実施例の構成でなくても良い。)によって構成されるのはもちろんであるけれども,CATVシステムによっては,任意の実施例を組み合わせて構成しても良い。
また,信号増幅器19と信号処理手段20を別体で構成して信号処理装置15を構成してもよいし,1つの筐体に収納して信号処理装置としても良い。また,実施例に示される分配器等を信号増幅器19と信号処理手段20と一緒に1つの筐体に収納してCATV装置の一例としての信号処理装置を構成するようにしてよい。
更に,本発明はCATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムに対応する例を示したが,例えばビル影や山影等による電波障害対策のために,ビルの屋上や山頂等の見通しの良い受信点にアンテナを設置し,該アンテナによって受信した信号を住宅などに引込線で引込んで受信するように構成された難視対策のための地上アナログ放送受信用のシステムを,地上ディジタル放送の受信に対応するように変更するような場合においても使用しても良いことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】従来のCATVシステムを示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの概略構成図である。
【図3】(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性であり,(b)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの70から770MHzまでの周波数特性である。
【図4】図4(a),(b),(c),(d)は信号増幅器19と信号処理装置20の配列状態を示す概略構成図である。
【図5】(a)は図1に示されるCATVシステムにおけるX点とY点間の伝送損失を示す70から770MHzまでの周波数特性の異なる例であり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bにおける70から770MHzまでの周波数特性であり,(c)は第2の実施例として示される信号処理手段20Cにおける70から770MHzまでの周波数特性である。
【図6】(a)は第1の実施例として示される信号処理手段20Aの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数が固定のものであり,(b)は第1の実施例の異なる例として示される信号処理手段20Bの具体的な回路構成を示し,チルト量とチルトの基準となる基準周波数を調整可能に構成されたものである。
【図7】第2の実施例として示される信号処理手段20Cの具体的な回路構成を示す。
【図8】第4の実施例として示される信号処理手段20Eの回路構成を示し,(a)は概略構成図であり,(b)は具体的な回路構成を示す。
【図9】従来のCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。
【図10】本発明に係る信号増幅器と信号処理手段を備えたCATVシステムの異なる例を示す概略構成図である。
【図11】信号増幅器と信号処理手段の組合せを2つ備えた場合の配列状態を示すCATVシステムの一部を取出した図である。
【図12】信号増幅器と信号処理手段の異なる位置に配設した例を示すCATVシステムの一部を取出した図であリ,(a)は引込線の途中に配設した例であり,(b)は直列ユニットとテレビ等の端末側装置との間に配設した例である。
【符号の説明】
【0056】
1…分岐線,2…タップオフ,3…引込線,4…引込線,5…建物,6…保安器,7・8・10・13…同軸ケーブル,9…分岐器,11…中継用の直列ユニット,12…端末用の直列ユニット,13(13a,13Bb,13c)…分配器,14…棟内ブースター(450MHz対応),15…信号処理装置,16…入力端,17…出力端,18…選択手段,19…信号増幅器,20(20A,20B,20C,20E)…信号処理手段,201・202・203…信号処理回路,21…分岐手段(分岐器),21a…入力端(出力端),21b…出力端(入力端),21c…分岐端,22…第1のフィルタ手段,23…信号減衰手段,24…第2のフィルタ手段,25a…主線路,25b…分岐路,27・28・29・30…抵抗,31・34…コンデンサー,32・33・35…コイル,34a…可変容量ダイオード,36…PINダイオード,37a・37b…チョークコイル,38…周波数制御信号ライン,39…チルト量制御信号ライン,48…所定長の伝送経路(同軸ケーブル)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成したことを特徴としたCATVシステム。
【請求項2】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成したことを特徴としたCATVシステム。
【請求項3】
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした請求項2に記載のCATVシステム。
【請求項4】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴としたCATVシステムの配線方法。
【請求項5】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴としたCATVシステムの配線方法。
【請求項6】
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした請求項5に記載のCATVシステムの配線方法。
【請求項7】
前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納したことを特徴とした請求項1から請求項3の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器。
【請求項8】
前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納したことを特徴とした請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4または請求項5の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器。
【請求項9】
前記信号処理手段は前記第2の周波数帯の高域側における信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側における信号レベルとの差を補償するように構成されたチルト回路からなることを特徴とした請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4からは請求項6に記載のいずれか一項に記載のCATVシステムの配線方法及び請求項7または請求項8の何れか一項に記載のCATV機器。
【請求項1】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても所定値レベル以上となるように構成したことを特徴としたCATVシステム。
【請求項2】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムにおいて,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成したことを特徴としたCATVシステム。
【請求項3】
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした請求項2に記載のCATVシステム。
【請求項4】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
各系統の伝送経路における伝送損失を補償するための前記第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器を伝送経路の所定位置に介設するのに加え,前記伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するための第1信号処理手段を前記信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における伝送経路の所定位置に介設することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴としたCATVシステムの配線方法。
【請求項5】
CATV網からタップオフを介して引き込まれた引込線に接続されるCATVシステムであって,少なくとも,引込線によって引込まれた下り帯域信号としての第1の周波数帯の信号を分配若しくは分岐して複数の系統の伝送経路で端末側に伝送するように構成されたCATVシステムの配線方法において,
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号を所定量だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の入力側および出力側の両方若しくはいずれか一方における所定位置に第2信号処理手段を介設してあり,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設してあり,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴としたCATVシステムの配線方法。
【請求項6】
該CATVシステムに伝送する下り帯域信号として,前記第1の周波数帯の信号に変わって,前記第1の周波数帯を含み,少なくとも該第1の周波数帯の最大周波数より高い周波数を有する第2の周波数帯の信号を伝送した時に,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より大きい伝送経路があれば,該伝送経路の内における所定長の伝送経路を介して,所定長の伝送経路の前方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ信号を増幅する第1信号増幅器と該第1信号増幅器の出力側における所定位置に第1信号処理手段を介設し,所定長の伝送経路の後方側には第2の周波数帯の信号が前記伝送経路を通過することによって伝送損失の値が最大減衰量を示す周波数における端末側の信号レベルと前記所定値レベルとの差の略1/2だけ増幅する第2信号増幅器と該第2信号増幅器の出力側における所定位置に第2信号処理手段を介設し,
前記複数の系統の伝送経路のうち,伝送損失が所定値より小さい伝送経路があれば,前記第1信号増幅器と前記第1信号処理手段を介設し,
前記第1信号処理手段は,前記所定長の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償すると共に,前記第2信号増幅回路に過大入力が入力されるのを阻止するように構成し,
前記第2信号処理手段は,前記所定長の伝送経路より端末側の伝送経路を前記第2の周波数帯の信号が通過することによって発生する信号レベル差を補償するように構成することによって,前記第2の周波数帯における端末側の信号レベルが何れの系統の伝送経路においても前記所定値レベル以上となるように構成した,ことを特徴とした請求項5に記載のCATVシステムの配線方法。
【請求項7】
前記信号増幅器と前記信号処理手段を同一の筐体に収納したことを特徴とした請求項1から請求項3の何れか一項に記載のCATVシステム及び請求項4から請求項6の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器。
【請求項8】
前記信号増幅器と前記信号処理手段と,前記信号増幅器において所定量増幅され前記信号処理手段において所定の信号処理された信号を所定数に分配する信号分配器を同一の筐体に収納したことを特徴とした請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4または請求項5の何れか一項に記載のCATVシステムの配線方法に用いるためのCATV機器。
【請求項9】
前記信号処理手段は前記第2の周波数帯の高域側における信号レベルと前記第2の周波数帯の低域側における信号レベルとの差を補償するように構成されたチルト回路からなることを特徴とした請求項1から請求項3に記載のいずれか一項に記載のCATVシステム及び請求項4からは請求項6に記載のいずれか一項に記載のCATVシステムの配線方法及び請求項7または請求項8の何れか一項に記載のCATV機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−219841(P2008−219841A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94422(P2007−94422)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000113665)マスプロ電工株式会社 (395)
【Fターム(参考)】
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