説明

CATV保安器用コネクタ

【課題】 保安器への電磁波の侵入を有効に防止しうるCATV保安器用コネクタを提供すること。
【解決手段】 同軸型入力端子と同軸型出力端子とをそなえ、前記同軸型入力端子の中心導体と前記同軸型出力端子の中心導体との間が第1のコンデンサおよび保安回路を介して接続されており、前記入力端子の外側導体は接地され、前記出力端子の外側導体は第2のコンデンサを介して接地されたCATV保安器の前記出力端子として用いられるコネクタにおいて、前記第2のコンデンサCは、前記出力端子に対して同軸配置されるリング形状のコンデンサとして形成され、このリング形状のコンデンサは、少なくとも1つのリング状端面と他のリング状面とを有し、前記端面および前記他の面にそれぞれ一電極づつ配された一対の電極E1,E2が設けられ、前記一対の電極の一方は前記出力端子の外側導体に接続され、他方は前記保安器の接地部材に接続されることを特徴とするCATV保安器用コネクタ。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、ケーブル・テレビジョン・ネットワークつまりCATVに用いられる保安器に係り、とくにそのコネクタの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
CATV用の屋内保安器として、同軸型入力端子と同軸型出力端子との間が、保安回路とコンデンサとによって接続されて、雷サージなどを除去しつつテレビジョン信号を取り入れるように構成されたものが用いられている(実公昭59−8424号公報、実公平5−21946号公報、特開平1−160321号公報参照)。
【0003】
保安器の信号回路にコンデンサを挿入するのは、出力端子に接続されるテレビジョン受像機の接地部が商用電源の一方の線に接続されていることがあり、この場合に生じる短絡事故を防止するためである。
【0004】
このために、図6に示すように、入力端子INと出力端子OUTとの中心導体同士を有し、これら両端子IN,OUTの中心導体間を第1のコンデンサC1で接続し、かつインダクタンスLで接地し、出力端子OUTの外側導体を第2のコンデンサC2によって接地した接続をとっている。
【0005】
そして、この出力端子用のコネクタとして図7に示すものが用いられている。
このコネクタは、コネクタ本体11とナット12とからなり、ケース20に取付けられる。この際、コネクタをケース20に直接接続しないために、絶縁材31およびコンデンサCを介在させ、座金32を挿入してナット12により締め付ける。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
ここで、コンデンサCの構造をみると、図示上下方向に誘電体Dを間に挟んで2つの電極E1,E2が設けられており、電極E1は座金32およびナット12を介してコネクタ本体11に接続され、電極E2はケース20に接続されている。
【0007】
この構造であると、図に矢印付き破線で示すように、コネクタ自体としては電磁波の漏洩しうる経路が明確に存在する。この結果、図示下方から電磁波が図示上方にある機器内部に向かって侵入し、テレビジョン信号に有害な作用をなす。
【0008】
本考案は上述の点を考慮してなされたもので、保安器への電磁波の侵入を有効に防止しうるCATV保安器用コネクタを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、本考案では、 同軸型入力端子と同軸型出力端子とをそなえ、前記同軸型入力端子の中心導体と前記同軸型出力端子の中心導体との間が第1のコンデンサおよび保安回路を介して接続されており、前記入力端子の外側導体は接地され、前記出力端子の外側導体は第2のコンデンサを介して接地されたCATV保安器の前記出力端子として用いられるコネクタにおいて、前記第2のコンデンサは、前記出力端子に対して同軸配置されるリング形状のコンデンサとして形成され、このリング形状のコンデンサは、少なくとも1つのリング状端面と他のリング状面とを有し、前記端面および前記他の面にそれぞれ一電極づつ配された一対の電極が設けられ、前記一対の電極の一方は前記出力端子の外側導体に接続され、他方は前記保安器の接地部材に接続されることを特徴とするCATV保安器用コネクタ、 を提供するものである。
【0010】
【考案の実施の形態】
図1は、本考案の一実施例を縦断面として示したものである。この図1において、10はコネクタであり、コネクタ本体11とナット12とからなる。このコネクタ10は、ケース絶縁体31を介してケースの金属ベース21に固定される。この際、ケース絶縁体31がコネクタ20に当接して、金属ベース21は接触しないようにする。金属ベース21には、コネクタの機器内部側を囲うようにアース金具22が設けられている。
【0011】
そして、コネクタ本体11の外周であって金属ベース21とナット12との間に、皿形の座金32および絶縁体リング33を介挿し、この絶縁体リング33の径方向外方に、リング形状のコンデンサCを嵌め込む。
【0012】
このコンデンサCは、ナット12によって背後から押される保持金具32により金属ベース21に対して圧接されることにより、金属ベース21と保持金具32との間に支持され、かつ接続される。
【0013】
ここで、コンデンサCは、図1に断面として示すように、両端面に溝が全周にわたって形成されている。この溝は、図示のように保持金具32の周縁が当接してコンデンサCを押圧支持するために機能するものであるから、溝の斜面は保持金具32の周縁の図示下側と当接してコンデンサCを芯出ししながら支持する。
【0014】
また、溝はその内面を利用して電極E1が形成され、保持金具32はその際に電極E1とコネクタ本体11との接続部材として機能するものでもある。
【0015】
このように溝は、コンデンサCを機械的に支持するための機能と、コンデンサCの電極を接続するための機能とを併せ持つ訳であるが、それらの意味では両端面に溝を形成する必要はない。したがって、溝は一方の端面だけに形成してもよい。他方の端面にも溝を形成すると、この溝の掘り下げ分だけ電極E2の面積を大きくすることができる。
【0016】
また、両端面に溝を形成する場合、コンデンサCを形成するための素材としてみれば、何れの端面だけを利用してもよい点で作業性が良好になる。
【0017】
そして、図示下側の機器外部側から図示上側の機器内部側を見た場合、電磁波が漏洩する経路つまり電磁遮蔽体が存在しない部分は、ケース絶縁体31、絶縁体リング33、コンデンサCの誘電体Dを経る部分である。この経路は、図1から見て取れるように、狭隘であること、屈曲しかつ長いこと、から電磁波漏洩を防止するには非常に効果的である。また、電磁波漏洩経路に対して垂直関係にあるレジストRに電磁波漏洩を防止する材料を混入すれば、より効果的である。
【0018】
図2は、図1の断面がどのような切断面を示しているかを示す本考案の一実施例の正面図である。そして、この図2におけるA−A線に沿って切断した縦断面を図1に示す。また、図3は、同実施例の斜視外観を示したものである。
【0019】
これら図2および図3に示すように、コネクタ本体11は、ナット12によって金属ベース21およびケース絶縁体31に対して固定接続されている。コネクタ本体11と金属ベース21との間は、保持金具32とコンデンサCとにより機械的に固定されつつ電気的には絶縁された状態が得られている。
【0020】
コネクタ本体11の機器内部側つまり図示上側の部分は、とくに周囲の2方向がシールド部材22によって囲まれており、機器内部の他の要素との電磁的遮蔽が図られている。
【0021】
図4(a)、(b)は、図1ないし図3に示した実施例に使用するコンデンサCの詳細構造例をそれぞれ示したものである。
【0022】
これらのうち図4(a)に示すものは、図1に断面形状を示したコンデンサCと同一のものである。そして、このコンデンサCは、断面形状がほぼ矩形をなす基材を全体形状がほぼリング状に成形したものである。リングの基材Dは誘電体であり、リングの外周面に電極および電極間表面の絶縁耐性を改善するためのレジスト膜が設けられている。
【0023】
リングを径方向に切断したときの断面形状は、ほぼ矩形形状の上限各面にそれぞれコ字型で開口部を上向きにした溝が設けられている。
【0024】
図4(a)の場合は、図示上側の溝がより幅広に形成され、図示下側の溝がやや狭幅に形成されているが、これは適宜選択できる。つまり、図示上側、下側ともに同一幅、同一深さの溝であってもよいし、それぞれ異なる幅、深さを持っていてもよい。そして、図1に関連して説明したように、保持金具32との係合を良好にするには溝の側壁面は開口端が広くなるようにやや傾斜している方が望ましい。
【0025】
図示上側の溝は、その内壁面つまり両側面および底面により一方の電極E1を構成し、他方の溝はその内面つまり両側面および底面とともにリングの上面を除く外周面とともに他方の電極E2を構成する。そして、リングの溝を除く上面には、レジスト膜Rが形成されて両電極E1、E2間の絶縁耐性を向上させている。
【0026】
図4(b)の場合は、図4(a)の場合に比べてリング断面の凹凸関係が反対、つまりリングの厚みを図4(a)の場合よりも薄くし、かつ図4の場合の溝が矩形断面の凸部に置き換えられて断面形状がほぼ十字型である実施例を示している。すなわち、図におけるリングの、上側凸部の図示上面および図示両側面の外周が電極E1、下側凸部の図示下面および図示両側面を含み、リングの内外側面およびこれら両側面と下側凸部との間の下向き面に連なる面が電極E2として構成される。そして、リングの内外側面およびこれら両側面と上側凸部との間の上向き面にはレジスト膜Rが形成される。
【0027】
これにより、リング状のコンデンサCが形成される。
【0028】
図5は、図4に示したコンデンサCを保持するための保持金具32の外観斜視形状を示したものである。この保持金具32は、ほぼ皿形形状つまり円形平面状の底壁32aと円錐面状の側壁32bとからなり、底壁の中央には円形の穴32cが開いており、側壁の端部には適宜間隔で切り込み32dが設けられている。
【0029】
この保持金具32は、側壁端部がコンデンサCの一方の電極に対して当接された状態で底壁外側から押圧されてコンデンサCを保持する。その際、保持金具32自体が持つ弾性によってコンデンサCを強固に保持することができる。
【0030】
保持金具32の形状は、図5に示したものでは皿形形状であるが、コンデンサCの電極が設けられた面の形状および傾斜角度によっては、より適合し易くするように変形することができる。
【0031】
【考案の効果】
本考案は上述のように、同軸型入力端子と同軸型出力端子とをそなえ、両者間を第1のコンデンサおよび保安回路によって接続し、入力端子の外側導体は接地して出力端子の外側導体は第2のコンデンサを介して接地したCATV保安器における、前記第2のコンデンサを前記出力端子に対して同軸配置されて端面に電極が形成されたリング形状のコンデンサとして形成したため、電磁波漏洩経路が十分に狭隘かつ屈曲した構造になり、アイソレーション効果の高いCATV保安器用コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の一実施例の構成を示す説明図。
【図2】本考案の一実施例の正面図であり、かつ図1の断面がどのような切断面を示しているかを示す説明図。
【図3】図1の実施例の外観斜視図。
【図4】図4(a)、(b)は、図1ないし図3に示した実施例に使用するコンデンサCの詳細構造例をそれぞれ示した外観斜視図。
【図5】コンデンサCを保持するための保持金具32の一例の外観斜視図。
【図6】従来のCATV保安器の回路構成を示す図。
【図7】従来のCATV保安器の出力端子用のコネクタを示す図。
【符号の説明】
10 コネクタ
11 コネクタ本体
12 ナット
20 ケース
21 金属ベース
22 アース金具
31 ケース絶縁体
32 座金
33 絶縁体リング
32a 底壁
32b 側壁
32c 穴
32d 切り込み
C コンデンサ
E 電極
R レジスト

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】同軸型入力端子と同軸型出力端子とをそなえ、前記同軸型入力端子の中心導体と前記同軸型出力端子の中心導体とが第1のコンデンサおよび保安回路を介して接続されており、前記入力端子の外側導体は接地され、前記出力端子の外側導体は第2のコンデンサを介して接地されたCATV保安器の前記出力端子として用いられるコネクタにおいて、前記第2のコンデンサは、前記出力端子に対して同軸配置されるリング形状のコンデンサとして形成され、このリング形状のコンデンサは、少なくとも1つのリング状端面と他のリング状面とを有し、前記端面および前記他の面にそれぞれ一電極づつ配された一対の電極が設けられ、前記一対の電極の一方は前記出力端子の外側導体に接続され、他方は前記保安器の接地部材に接続されることを特徴とするCATV保安器用コネクタ。
【請求項2】請求項1記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記リング形状のコンデンサにおける前記リング状端面に当接され、かつ前記出力端子の外側導体に接続固定された保持金具を有するCATV保安器用コネクタ。
【請求項3】請求項1記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記リング形状のコンデンサにおける前記リング状端面は、段差を伴い前記リング状端面を一周する複数の面を有し、これら複数の面にそれぞれ電極が形成されたCATV保安器用コネクタ。
【請求項4】請求項3記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記リング状端面には、前記リング状端面を一周する溝が設けられ、この溝の底面を含む面を一方の電極とし、この溝の外に他方の電極が設けられたCATV保安器用コネクタ。
【請求項5】請求項3記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記リング状端面には、前記リング状端面を一周する凸部が設けられ、この凸部の頂面を含む面を一方の電極とし、この凸部の外に他方の電極が設けられたCATV保安器用コネクタ。
【請求項6】請求項3ないし5の何れかに記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記電極相互間の面には、レジストが塗布されてなるCATV保安器用コネクタ。
【請求項7】請求項2記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記保持金具は、ほぼ皿形に形成されたCATV保安器用コネクタ。
【請求項8】請求項7記載のCATV保安器用コネクタにおいて、前記保持金具は、その周縁に複数の切り込みが設けられたCATV保安器用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【登録番号】実用新案登録第3073455号(U3073455)
【登録日】平成12年9月6日(2000.9.6)
【発行日】平成12年11月30日(2000.11.30)
【考案の名称】CATV保安器用コネクタ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2000−3432(U2000−3432)
【出願日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【出願人】(000120076)宇呂電子工業株式会社 (19)