説明

CCB電極−膜−電極アセンブリを連続的に製造する方法

本発明は、ポリマー電解質膜(26)を備えるCCB電極−膜−電極アセンブリを連続的に製造する方法に関し、当該ポリマー電解質膜(26)上には、第1の活性層及び第1のガス拡散層から形成される第1の電極(21)が第1の面に、第2の活性層及び第2のガス拡散層から形成される第2の電極(21’)が第2の面にそれぞれ配置され、前記膜と前記二つの電極とは、100℃より低い温度で動的な加圧形成によって連続的に組み立てられ、前記膜の一方の側と接触する各電極の活性層の外表面は50℃〜200℃の温度に予熱されている。本方法は、ポリ電解質膜(26)及び二つの剥離式の接着裏地フィルム(23、23’)のロールを配置するステップ、並びに電極(21、21’)を切断して前記裏地フィルム(23、23’)上に配置するステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
技術分野
本発明は、CCB型の「電極−膜−電極」アセンブリを連続的に製造する方法に関する。
【0002】
背景技術
本発明の分野は、CCB(触媒コーティングされた裏地)型の「電極−膜−電極」(EME)アセンブリの分野に関する。
このようなEMEアセンブリ10は、図1に示すように、ポリマー電解質膜11を備え、このポリマー電解質膜11上に、第1の活性層13及び第1のガス拡散層14から形成される例えばアノード型の第1の電極12が第1の面に、第2の活性層16及び第2のガス拡散層17から形成される例えばカソード型の第2の電極15が第2の面に、それぞれ形成されている。
【0003】
このようなEMEアセンブリは、プロトン交換によって動作する電気化学システム、特にPEMFC(「プロトン交換膜燃料電池」)型の燃料電池で使用することができる。
EMEアセンブリの連続的な製造には二つの技術が利用されている。
【0004】
第1の技術はCCM(「触媒コーティングされた膜」)と呼ばれ、この技術では、両面をコーティングすることにより、アイオノマー膜の二つの面に連続的に触媒層を付着させる。この第1の技術を利用する一の方法は、特許文献1及び2に記載されている。この方法によって、触媒/膜の接触が向上し、製造条件による制限もそれ程大きくない。しかし、この方法では、膜の両面を同時に処理することはできない。さらに、拡散層の組み立ては、依然として手動で行わねばならず、燃料電池の組立て時のみに可能である。
第2の技術はCCB(「触媒コーティングされた裏地」)と呼ばれ、この技術では、まず各拡散層の表面に触媒層をコーティングする。それぞれ触媒層でコーティングされた二つの拡散層間に配置されたアイオノマー膜からなる多層アセンブリが、高温(120℃を超える温度)且つ高圧(9バールを超える圧力)で組み立てられる。このようなアセンブリの製造条件によって、特に薄膜の場合に膜の変形及び物理的な劣化が生じる。また拡散層の高密度化が起こり、これは、燃料電池型の使用に不都合である。この第2の技術を利用した一の方法が、特許文献3に記載されている。この方法では、共押出し、押出し及び/又は積層の異なる技術を組み合わせる。しかし、この方法は、予め規定された交互配列構造によるEMEアセンブリの作製には使用できない。この方法では、触媒層でコーティングされた各拡散層が長手方向に沿って膜に連続的に取り付けられ、この拡散層がEMEアセンブリを担持する。さらに、このようにして得られるEMEアセンブリの品質及び性能についての情報は開示されていない。
【特許文献1】米国特許第6500217号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/034674号明細書
【特許文献3】米国特許第6291091号明細書
【0005】
本発明の目的は、上述の欠点を克服した、バルク電極及び膜から開始されるCCB型EMEアセンブリの製造方法であり、このEMEアセンブリは、例えば燃料電池のような電気化学システムに使用可能である。
【0006】
本発明の提示
本発明は、ポリマー電解質膜を備えるCCB型の「電極−膜−電極」アセンブリを連続的に製造する方法に関し、この電解質膜上には、第1の活性層及び第1のガス拡散層から形成される第1の電極が第1の面に、第2の活性層及び第2のガス拡散層から形成される第2の電極が第2の面に、それぞれ堆積され、膜及び二つの電極が、100℃より低い温度での動的な圧力成形によって連続的に組み立てられ、膜の一面と接触する各電極の活性層の外表面が、最初に50℃〜200℃の温度に加熱される。本方法は、
− ポリ電解質膜及び二つの剥離式接着裏地フィルム用のロールを配置するステップ、並びに
− 電極を切り出して、前記裏地フィルム上に配置するステップ
を含むことを特徴とする。
【0007】
例示的な一実施形態では、各電極の活性層は、微粉化された貴金属によって被覆されたカーボンブラック又は多孔質グラファイトを含む多孔質材料と、イオン性導電性ポリマーの薄い堆積物とからなっている。よって、各電極の活性層は、触媒及びポリマー電解質を含んでいる。
各電極の拡散層は、処理によって疎水化されたカーボンブラック又は多孔質グラファイトを含む多孔質材料を含んでいる。
【0008】
有利な一実施形態では、本方法は、
− 電極を加熱するステップ
− 冷間圧延によって膜に電極を取り付けるステップ、
− 受容リール上で、裏地フィルムを分離し、回収するステップ、
− リール上で、EMEアセンブリを連続的に回収するか、又はこのアセンブリをユニット毎に切断して包装するステップ
を含む。
有利には、この方法は、押出し機又はコーティングベンチの出力において直ちに実施することができ、これにより、膜の製造とEMEアセンブリの製造とを組み合わせることができる。
【0009】
有利には、このCCB型のEMEアセンブリの製造方法を、燃料電池の製造に使用することができる。
有利には、本発明による方法は、公知の技術による方法よりも、簡単で効率的であり、且つ工業的な制約に良好に適合する。
【0010】
50℃〜200℃の温度に予め加熱した電極を、動的な冷間加圧によって膜に連続的に取り付けることによって、活性層の表面を溶融させ、膜と電極とを密に接触させることが可能となる。このような接触の特徴は、製造コストが小さいことである。
有利には、二つの電極からなるアセンブリの支持体として働く膜が、このアセンブリを連続的に担持する。
【0011】
本発明による方法は、以下の利点も有している。
− 膜にかかる熱的ストレスが無視できる程度である(膜の特性は維持される)。
− 熱的ストレスは、各電極の表面に掛かるに過ぎない。
− 接着物質を使用しない。
− バルク電極が、膜の各面においてx、y座標により選択的に配置される。
【0012】
特定の実施形態の詳細な開示
図1に示すようなCCB型のEMEアセンブリの従来の製造方法では、このアセンブリはポリマー電解質膜を備え、該膜上には、第1の活性層及び第1のガス拡散層から形成される第1の電極が第1の面に、第2の活性層及び第2のガス拡散層から形成される第2の電極が第2の面に、それぞれ形成される。
図2に示すように、本発明による方法は、100℃より低い温度での動的加圧成形によって連続的に(移動18)、前記膜11の各面に電極12及び15を取り付ける方法である。予備的ステップにおいて各電極の活性層の外表面を50℃〜200℃の温度に加熱した後で膜の面と接触させると、活性層の表面が溶融しているので、膜と接触する各電極に良好な結合が得られる。
【0013】
よって、本発明による方法で使用される電極12及び15は、「バルク」電極であって、通常「活性」層と「拡散」層とを備えている。
活性層は、例えば「テフロンコーティングされた」、つまりPTFEで被覆された多孔質材料(フェルト、紙、布)等の、微粉化された貴金属、例えば白金粒子によって被覆されたカーボンブラック又は多孔性グラファイトを含む触媒と、膜の構造に概ね類似する構造を有するイオン性導電性ポリマーの薄い堆積物とから構成することができる。
【0014】
拡散層は、例えばPTFE堆積等の処理によって疎水化されているカーボンブラック又は多孔質グラファイトを含む、例えばテフロンでコーティングされた多孔質材料から構成することができる。この疎水性によって、燃料電池の作動中に水分を排除することが可能となる。
本発明による方法の一実施形態では、第1のステップでテープ20を切り出し、そのようにして切り出されたバルク電極21を、その活性ゾーン22を上にして、図3に示す種類の二枚の剥離式の接着裏地フィルム23上に配置する。このような動作は、一般に自動化されている。
【0015】
上記のようにして形成されてフィルム23(23’)の表面上に配置された電極21(21’)のアセンブリ24(24’)上において、次いで各電極の活性層を、各電極の活性面に適した特定の加熱システム25(25’)、例えば電磁照射、赤外線照射等によって加熱する。この50℃〜200℃の温度は、膜を取り付ける前に、各電極の活性層を溶融させることができる。
膜及び二つの電極は、従来の「ロールツーロール」式の方法を使用して、上記のように電極で覆われた電極の裏地フィルム用の二つの巻き戻しユニットと、ポリ電解質膜ロール26とを供給源とする異なるフィルムを使用するシステムによって組み立てられる。次いで電極21及び21’は、膜26の各側で互いに向き合うように調節される。次に、組み立てられた積層体は、2シリンダ式圧延装置27で圧延される。
【0016】
圧延後、二つの電極23及び23’の裏地フィルムを分離し、剥離に必要な張力を保持する二つの受容リールに回収する。
上記のようにして作製された連続するEMEアセンブリ29は、モータ駆動式受容リール上に直接回収されるか、又は図1に示すモデルのように、ユニット毎に直ちに切断され包装される。
【0017】
よって、本発明による方法は、
− ポリ電解質膜(26)及び二つの剥離式接着裏地フィルム(23、23’)用ロールを配置するステップ、
− 電極(21、21’)を切り出し、それを前記裏地フィルム(23、23’)上に配置するステップ、
− 電極(25、25’)を加熱するステップ、
− 冷間圧延(27)によって、前記膜に電極を取り付けるステップ、
− 受容リール上で、裏地フィルム(23、23’)を分離し、回収するステップ、
− リール上でEMEアセンブリ(29)を連続的に回収するか、又はこのアセンブリ(29)をユニットに切断して包装するステップ
を含む。
【0018】
「ロールツーロール」、特定の表面の電磁加熱及び低温積層技術を組み合わせた本発明による方法は、アセンブリ内で電解質膜の完全性を維持し、取付けを簡単にし、製造速度を高めることを可能にする。
本発明による方法によって、押出し機又はコーティングベンチの出力において直ちに一体化することも可能となり、膜の製造とEMEアセンブリの製造とを組合せることも可能となる。
【0019】
例示的な実施形態
本発明による方法を利用したEMEアセンブリの例示的な実施形態では、本発明によって作製されたアセンブリのインサイツでの電気化学的特性を、手動で作製された従来のアセンブリと比較して示す。
【0020】
1.従来の方法による製造
従来のEMEアセンブリの例示的な実施形態では、まず、膜と電極を所望の寸法に切断する。つまり、NAFION(Dupount de Nemours Companyの登録商標)ロールを用いて最小寸法90mm×90mmの膜を切り出し、標準E-TEK型の電極ロールを用いて最小寸法53mm×53mmの二つの電極を切り出すことができる。
この膜を、二つの向き合う電極間に手動で配置する。次に、このようにして形成されたアセンブリを、150℃で3分間に亘り0バールのプレス下に置き、続いて同じ温度で4分間に亘り40バール下に置くことにより、良好な電極−膜−電極結合を得る。
【0021】
2.本発明による方法を利用した実施形態
本方法は、幅400mm及び長さ10リニアメートルの、NAFIONタイプのパーフルオロ膜(perfluorated membrane)ロール117(厚さ175ミクロン、イオン交換容量1.1meq/g)を用いて開始する。

最初の電極は、標準のE-TEK電極ロールを供給源として、片面が白金コーティングされた炭素繊維布から構成され(製造者の表示によれば:Double Side Electrode、Vulcan XC-72に20%Pt、0.35mg/cm Pt/C)、幅365mm、長さ10メートルである。
【0022】
上述したように、且つ図3に示すように、電極ロールを包装する、つまり切断して接着トランスファーフィルム上に配置する。次に、電極の表面を、制御下で(曝露時間及び照射出力に関して)、1500ワットの出力の電気赤外線加熱によって約150℃の温度まで加熱する。
続いて、図4に示すように、膜及び二つの電極裏地フィルムからなるアセンブリを周囲温度において1m/分の速度で圧延する。
【0023】
3.インサイツでの特性:燃料電池におけるアセンブリの試験
単一の電池試験ベンチを使用して行うEMEアセンブリの燃料電池中での電気化学的性能の試験では、ガスの分散を可能にする二つのグラファイトプレート(単極プレート)間でEMEアセンブリを試験する。
図5は、NAFION膜に最適な動作条件(80℃、1.5バール、H/Oガスの供給)下で実施された燃料電池試験の結果を示す。
【0024】
同じ基本材料を使用して作製された標準アセンブリ(曲線30)と本発明によるアセンブリ(曲線31)に得られた電流密度j(A/cm)の関数としてのバイアス電圧u(ボルト)を示す曲線の比較により、本発明による連続的な方法に得られた性能は(標準的なアセンブリと)同等であるか、むしろ良好であることが示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来技術によるEMEアセンブリを示す。
【図2】本発明による方法を示す。
【図3】本発明による方法で行われる、電極を切断して裏地フィルム上に配置する方法を示す。
【図4】本発明によるEMEアセンブリの連続的製造方法の一実施形態を示す。
【図5】標準の方法を使用して作製されたEMEアセンブリと、本発明による方法を使用して作製されたEMEアセンブリの、分極曲線を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー電解質膜(26)を備えたCCB型の「電極−膜−電極」アセンブリを連続的に製造する方法であって、ポリマー電解質膜(26)上には、第1の活性層及び第1のガス拡散層から形成される第1の電極(21)が第1面に、第2の活性層及び第2のガス拡散層から形成される第2の電極(21’)が第2面に、それぞれ形成され、膜と二つの電極が、100℃より低い温度で動的な加圧成形によって連続的に組み立てられ、膜の面と接触する各電極の活性層の外表面が、最初に50℃〜200℃の温度に加熱される方法であって、
− ポリ電解質膜(26)及び二つの剥離式接着裏地フィルム(23、23’)用のロールを配置するステップ、並びに
− 電極(21、21’)を切り出して前記裏地フィルム(23、23’)上に配置するステップ
を含む方法。
【請求項2】
各電極の活性層が、微粉化された貴金属で被覆されたカーボンブラック又は多孔性グラファイトを含む多孔性材料と、イオン性導電性ポリマーの薄い堆積物とから構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各電極の活性層が触媒及びポリマー電解質を備える、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各電極の拡散層が、処理によって疎水化されたカーボンブラック又は多孔性グラファイトを含む多孔性材料を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
− 電極を加熱するステップ(25、25’)、
− 冷間圧延(27)によって、膜に電極を取り付けるステップ、
− 受容リール上で、裏地フィルム(23、23’)を分離及び回収するステップ、
− リール上にEMEアセンブリ(29)を連続的に再生するか、又は当該アセンブリ(29)をユニット毎に切断して包装するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
押出し機又はコーティングベンチの出力において直ちに実施して、膜の製造とEMEアセンブリの製造とを組み合わせる、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
燃料電池の製造に使用できるCCB型のEMEアセンブリを製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−515296(P2009−515296A)
【公表日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538350(P2008−538350)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2006/067928
【国際公開番号】WO2007/051775
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(502124444)コミッサリア タ レネルジー アトミーク (383)
【Fターム(参考)】