CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制するインヒビター、その同定方法、およびその薬学的組成物
【課題】CIITA活性を示しそしてMHCクラスII遺伝子の発現に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを提供すること。
【解決手段】インヒビターは、CIITA活性を有し、そして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産したタンパク質の使用により得られる:(a) ヒトMHCクラスII遺伝子発現制御に不可欠なトランスアクチベーターに由来し特定配列を有するDNA配列;(b) (a)のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列;(c) (a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または(d) (a)、(b)、または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として縮重しているDNA配列。
【解決手段】インヒビターは、CIITA活性を有し、そして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産したタンパク質の使用により得られる:(a) ヒトMHCクラスII遺伝子発現制御に不可欠なトランスアクチベーターに由来し特定配列を有するDNA配列;(b) (a)のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列;(c) (a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または(d) (a)、(b)、または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として縮重しているDNA配列。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎動物のMHCクラスII遺伝子発現の一般的な制御に不可欠なトランス作用性タンパク質の活性を抑制するインヒビターおよびその同定方法に関する。本発明はさらに、前記インヒビターを含む薬学的組成物、好ましくは、MHCクラスII遺伝子の異常な発現に関連する病気の治療のための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスII主要組織適合(MHC)抗原は、ヘテロダイマーのトランスメンブラン糖タンパク質である。抗原提示細胞の表面におけるそれらの発現には、T細胞レセプターによる外来抗原の認識が必要である。T細胞の活性化および抗原の提示は、個々の細胞におけるクラスII抗原の発現レベルに依存する。したがって、クラスII遺伝子の発現の調節は、正常および異常な免疫応答の両方の制御の重要な局面である。
【0003】
ヒトでは、HLA-DP、HLA-DQ、およびHLA-DRクラスII分子のa鎖およびb鎖をコードする遺伝子は、第6染色体上のMHCのD領域にクラスターしている。これらの遺伝子は、厳しくかつ複雑な調節制御を受けている。これらの発現は、一般に整合されており、そして主に免疫系の細胞(Bリンパ球、活性化Tリンパ球、マクロファージ、樹枝状細胞、ならびにクッパー細胞およびランゲルハンス細胞などのある種の特殊な細胞など)に限定される。あるクラスIIネガティブ細胞では、発現はインターフェロンγまたはインターロイキン4などのリンホカインによる刺激により誘導され得る。
【0004】
MHCクラスII遺伝子は、調節された遺伝子発現の特に複雑なケースを示している。ヘルパーT細胞に対する外来抗原の提示ならびにTリンパ球の胸腺刺激には、MHCクラスII分子の正常な発現が必須とされるので、これらの遺伝子の調節は正常に機能する免疫系に必要である。MHCクラスII抗原をコードする遺伝子は、最初は実際に「免疫応答遺伝子」と記載されていた[Benaceraff、Science212 (1981)、1229-1238]。この調節は、クラスII分子の発現レベルだけでなく、非常に限定された細胞タイプの特異性にも関連する。これは体内のほとんどの細胞は通常MHCクラスIIネガティブであることによる。この調節の複雑性は、2つの異なる制御態様、すなわち、Bリンパ球などの細胞での構成的発現、および単球または線維芽細胞などの細胞タイプでの誘導発現に関連する。最後に、この遺伝子ファミリーは、3つの異なるHLAクラスIIイソタイプのa鎖およびb鎖をコードし、そして一般に全体的に調節される。
【0005】
多くのタンパク質ファクターは、MHCクラスIIプロモーターの機能的に必須の配列モチーフ、特に保存されたXおよびYボックスに、インビトロで結合し得ることが示されている[Glimcherら、Ann.Rev. Immunol. 10 (1992)、13-49]。さらに、クラスIIプロモーターの占有状態は、インビボで分析されている[Karaら、Science252 (1991)、709-712]。
【0006】
これまでに、本発明者らは、MHCクラスII遺伝子の発現に不可欠なタンパク質(MHCクラスII遺伝子発現のトランスアクチベーター、CIITA)を単離し、同定し、そしてさらに、このタンパク質をコードする遺伝子を単離した(Steimleら、CELL 75 (1993)、135-146)。
【0007】
CIITAタンパク質およびこれに対応する遺伝子は、以下のアプローチにより得られ得る:
HLAクラスIIプロモーターに結合するタンパク質の検出可能な欠失を示さない調節変異B細胞株を用いて、MHCクラスIIポジティブB細胞由来のcDNAによる表現変異型の相補性テストを行い、影響を受けたMHCクラスII調節遺伝子をクローニングしおよび同定した。選択は、内因性のクラスII遺伝子の再発現だけでなく、抗生物質耐性の遺伝子を誘導する(変異体細胞で不活性な)MHCクラスIIプロモーターの再活性化に基づいて行った。ライゲーションで再結合し得ないクローニング部位を生成して、大きなcDNAの挿入の効率を確実にした。注意深くサイズ選択したcDNAを用い、そして4.5kbのCIITAのcDNAの選択がうまくできるようなcDNAライブラリーは、3.5kbより大きい平均サイズの挿入物を含んでいた。さらに、Bリンパ球のトランスフェクション条件およびマグネットビーズを用いる表面発現の免疫選択手順は、完全に最適化された。
【0008】
自由に入手可能なクラスIIネガティブB細胞株RJ2.25の相補性テストによるCIITAのcDNAのクローニングによって、以下の結果が導かれた:CIITAは、実際にこの変異体で影響を受けた遺伝子であり、そして2つのCIITAアレルの欠失は本来のCIITAのmRNAがないことを説明している。1つのアレルはCIITA遺伝子の内部欠失のみを有しており、そして転写リードスルーが短縮型転写物になるようである。CIITAcDNAによりMHCクラスII遺伝子発現が回復することで、Bリンパ球でのMHCクラスIIの構成的発現の制御におけるこのファクターの機能的役割を立証する。CIITAは、3つの全てのHLAクラスIIイソタイプ、DR、DQ、およびDPのトランスアクチベーターとして作用し、そしてこのファクターによる遺伝子座特異的制御の証拠はない。CIITAをコードするDNA配列およびその推定アミノ酸配列を、図3〜9に示す。
【0009】
CIITAは、1130アミノ酸からなるタンパク質であり、そのmRNAは低レベルで発現される。その構造は作用の態様に関してはあまり有益ではない。この分子のNH2末端部分は転写活性化ドメインにある保存に関与している(Mitchellら、Science245 (1989)、371-378)。特に、酸性アミノ酸領域に続くプロリン、スレオニン、およびセリン残基に富む3つの短い伸長の領域が寄与している。ある転写ファクターは、類似の活性化ドメインを有する。ATP/GTP結合部位に対応する配列は、アミノ酸420から427付近と考えられ、そしてこの位置での変異は有益である。最後に、アミノ酸979から1061付近にロイシンに富む領域があり、そこは、酵母のRNA結合タンパク質のNH2末端部分と弱い相同性を示す(Tragliaら、Mol.Cell. Biol. 9 (1989)、2989-2999)。この弱い相同性は主にロイシンに富む領域内の最初のロイシン残基に関連するので、進化的な関連性を示し得ない。CIITA配列中には明らかなDNA結合ドメインがないので、MHCクラスIIプロモーターのXおよびYボックスに結合することが知られているファクターと転写機構との間のアダプターとして機能し得ることが推測され得る。
【0010】
さらに、トランスアクチベーターCIITAは、Bリンパ球のような細胞中でMHCクラスII遺伝子の構成的発現を調節するだけでなく、他の細胞タイプでこれらと同様の遺伝子の誘導的発現(例えば、インターフェロンγまたはTNFによる誘導)も制御する。したがって、それは、MHCクラスII遺伝子発現の一般的制御に関連するファクターである。その構造は他のファクターに関連しない。
【0011】
いくつかの自己免疫疾患、例えば、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、および紅斑性エリテマトーデスなどは、少なくとも一部は、通常はHLAクラスII抗原を発現しない細胞上に抗原が異常に発現することによると考えられる。次いで、異常なT細胞活性化が自己免疫過程を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
その結果として、例えば、自己免疫疾患を予防または治療するために、あるいは臓器移植、特に骨髄移植の場合に、ならびにMHCクラスIIネガティブ動物を外来性の臓器ドナーとするために、MHCクラスII遺伝子の発現を抑制調節し得ることが非常に望まれている。したがって、MHCクラスII遺伝子発現を抑制調節する能力を有する物質へアクセスすることができれば、上述の疾患の治療方法を提供し得る。
【0013】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、CIITA活性を示しそしてMHCクラスII遺伝子の発現に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得る物質を単離かつ同定すること、およびその物質を精製形態で提供することである。さらに、技術的課題は、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得る物質を同定する方法を提供することである。さらに、技術的課題は、上記物質を含む薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術的課題は、請求項で特徴付けられる本発明の実施態様を提供することにより解決される。MHC遺伝子発現を抑制し得るインヒビターは、CIITA活性を有するタンパク質を用いることにより同定され得る。
【0015】
したがって、本発明の目的は、CIITA活性を示しそしてMHCクラスII遺伝子の発現の一般的制御に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを提供することであり、ここで、該インヒビターは、CIITA活性を有し、そして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産したタンパク質の使用により得られる:
(a) 配列表の配列番号5に示すDNA配列;
(b) (a)のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列;
(c) (a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または
(d) (a)、(b)、または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として縮重しているDNA配列。
【0016】
よって、本発明によって、以下が提供される:
(1) CIITA活性を示し、そして脊椎動物細胞でMHCクラスII遺伝子の発現の一般的な制御に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターであって、該インヒビターはCIITA活性を有しそして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産されたタンパク質を用いて得られる:
(a)配列表の配列番号5に示されるDNA配列;
(b)(a)のDNA配列とハイブリダイズするDNA配列;
(c)(a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または
(d)(a)、(b)または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として、縮重するDNA配列。
(2) 前記CIITA活性を有するタンパク質が配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する、項目1に記載のインヒビター。
(3) 前記インヒビターが前記CIITA活性を有するタンパク質の3次元構造を基礎として設計される、項目1または2に記載のインヒビター。
(4) 前記インヒビターが合成有機化学物質、天然発酵生産物、あるいは微生物、植物あるいは動物から抽出された物質、またはペプチドである、項目1から3のいずれかの項に記載のインヒビター。
(5) 前記インヒビターがCIITA活性を示すタンパク質のATP結合部位に結合する、項目1から4のいずれかの項に記載のインヒビター。
(6) 前記インヒビターがCIITA活性を示すタンパク質のN末端酸性活性化ドメインに結合する、項目1から4のいずれかの項に記載のインヒビター。
(7) CIITA活性を有し、そして項目1に記載の遺伝子にコードされるか、または配列表の配列番号6に示すアミノ酸配列を有する組換え生産されたタンパク質の、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定のための、使用。
(8) CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定する方法であって、該方法は適切な条件下で項目1または2に記載の組換えCIITAタンパク質に結合する該インヒビターの能力を利用することによるスクリーニングを包含する、方法。
(9) CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定する方法であって、該方法は項目1または2に記載の組換えCIITAタンパク質の3次元構造を基礎として適切なインヒビターを設計することを包含する、方法。
(10) 項目1から6のいずれかの項に記載のインヒビターを包含する薬学的組成物。
(11) MHCクラスII遺伝子の発現レベルの減少が所望されるMHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気の治療のため、または外来性移植組織のための臓器の供給源または万能細胞移植の細胞の供給源としてMHCクラスIIネガティブトランスジェニック動物を作るための項目10に記載の薬学的組成物。
(12) MHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気が、CIITA活性を有するタンパク質の異常な量の存在または他の因子により起こるのかどうかを決定するための項目10に記載の薬学的組成物。
(発明の効果)
本願発明は、脊椎動物のMHCクラスIIの遺伝子発現の一般的なコントロールに必要であるトランス作用タンパク質の活性を抑制するインヒビターおよび同じ物を同定する方法に関する。本願発明は前記インヒビターを包含する薬剤組成物に関し、好ましくは、MHCクラスII遺伝子の異常型発現に関連する病気の治療に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記インヒビターを同定するためのタンパク質をコードする好ましい配列は、図3〜9に提供される。
【0018】
図3〜9に示す配列を提供された当業者には、哺乳類などの脊椎動物のゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー由来の、あるいは他のヒト個体由来の関連するDNA配列を単離するために、このDNA配列、その断片、または対応するオリゴヌクレオチドを使用することが理解される。関連するDNA配列は、例えば、対立ヒトDNA配列である。一方、実施例に示されるように、本発明のスクリーニング法が提供されると、当業者には、哺乳類などの他の脊椎動物由来のまたは他のヒト個人由来の対応するDNA配列を単離し得る。さらに、図3〜9に示されるDNA配列またはその関連のDNA配列は、化学合成により得られ得る。上記すべてのDNA配列は、本発明の範囲内である。したがって、本発明はまた、従来のハイブリダイゼーション条件下で図3〜9のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列に関する。
【0019】
上記インヒビターを同定するためのタンパク質をコードする、さらに好ましい配列は、遺伝子コードの縮重により上記DNA配列に関連するDNA配列、または、図3〜9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA配列である。
【0020】
本発明のインヒビターを同定するためのCIITA活性を有するタンパク質の組換え生産は、ベクターへの挿入に、上記DNA配列を用いて従来法により行われ得る。
【0021】
好ましい組換えベクターは、挿入された遺伝子が発現制御配列に作動可能に連結しているプラスミドである。他の好ましい組換えベクターは、pDVP10-1であり、これはヒトMHCクラスIIトランスアクチベーターをコードする4543bpのcDNA挿入物をプラスミドベクターDV中に含む。このcDNAはHLAクラスIIポジティブB細胞株RajiのmRNAから合成された。このプラスミドは、該プラスミドを含む大腸菌株(E.coli pDVP10-1)として1993年7月19日に寄託された。受託番号は、DMS 8422である。
【0022】
生物学的に活性なCIITAの組換え生産に有用な宿主生物体は、当業者に選択され得る。このような宿主生物体は、好ましくは、E. coliまたはBacillus subtilisなどの細菌、Saccharomycesの種または株(例えば、Saccharomyces cerevisiae)などの酵母、および、昆虫細胞または哺乳類細胞などの他の真核生物宿主細胞である。
【0023】
本発明の形質転換された宿主生物体は、培養培地中で適切な条件下で培養され、そして得られる発現産生物は培地から回収される。必要に応じて、回収された発現産生物は、イオン交換樹脂またはアフィニティークロマトグラフ用材料(例えばマトリックスに結合したモノクローナルまたはポリクローナル抗体)を用いるクロマトグラフィーなどの一般的な方法により精製され得る。
【0024】
本発明のインヒビターは、テスト混合物を調製することにより同定され得る。ここで、インヒビター候補物は、タンパク質が天然のコンフォメーションをとり得る適当な条件下でCIITA活性を有するタンパク質とともにインキュベートされる。このようなインビトロテストシステムは当該分野で周知の方法により確立され得る。CIITA活性を示すタンパク質のインヒビターは、例えば、まず組換えCIITAタンパク質に結合する合成または天然に存在する分子のいずれかをスクリーニングする工程、次いで、第2に、このようにして選択した分子を細胞アッセイでCIITAの阻害をテストしてMHCクラスII発現の阻害を反映するものとして同定され得た。
【0025】
組換えCIITAに結合する分子のスクリーニングは、合成および天然の分子の「ライブラリー」由来の候補分子の非常に多数についての大規模スクリーニングを容易に行い得た。結合は、とりわけ、組換えCIITAが他の分子に結合する際の構造および/またはサイズの微細な変化として、検出され得たが、それはタンパク質化学アッセイの技術水準で検出されるようなものである。これらには、蛍光屈折法(G.Turcattiら、Biochemistry、34:3972-3980、1995)および表面プラスモン共鳴(SPR)(D. J. O'Shannessyら、Methodsin Enzymology、240:323-349、1994、A. C. Greenlund、Immunity、2:677-687、1995)が含まれる。SPRは、固定化したCIITAまたは適当な支持体に固定化したインヒビター分子候補物のいずれかを用いて行い得る。SPRはまた、競合アッセイとして優れた感度で行い得る(R.Karlsson、Anal.Biochem.、221:142-151、1994)。
【0026】
第2の工程において、CIITA阻害についての細胞に基づくアッセイは、構成的プロモーターの制御下でCIITAのcDNAで安定にトランスフェクトされたCIITAネガティブ変異体B細胞株(RJ2.25またはRM3など)、および/またはCIITAのcDNAでこれもまた安定にトランスフェクトされたHeLa細胞などのMHCクラスIIネガティブ細胞株の両方によるものである。このアッセイは、標準的免疫蛍光法により測定されるHLA-DR分子の細胞表面発現の阻害による。上記のように、このように安定なトランスフェクタントは、CIITAインヒビターの細胞に基づくアッセイ用のツールとして研究室で生成した。
【0027】
あるいは、このような分子の同定は、実施例2、6、および7に記載の実施例に基づくインビボテストシステムを用いて行われ得る。好ましくは、CIITA活性を有するタンパク質を発現させるプラスミドを含むヒトの細胞であるHLAクラスIIネガティブ変異体細胞株(例えば、以下の実施例2に記載のRJ2.25、RM3、またはREM-34)を、インヒビター候補物に接触させ、次いで、HLAクラスII遺伝子の発現レベルをインヒビター候補物と接触させていないコントロール細胞のレベルと比較する。HLAクラスII遺伝子の発現の測定は、以下の実施例2に記載のように行い得る。
【0028】
好ましくは、本発明のインヒビターは、CIITA活性を示すタンパク質とMHCクラスII遺伝子の制御配列との相互作用を阻害し、それにより該遺伝子の発現の抑制調節を引き起こす。
【0029】
本発明のさらなる目的は、CIITAの3次元構造に基づいて設計されるインヒビターであり、その情報は、当業者の技術水準にある例えば、X線構造解析、分光学的方法などの技術を用いて組換えCIITAから得られ得る。
【0030】
本発明のさらなる目的は、合成有機化学物質、天然発酵産生物、あるいは微生物、植物、または動物から抽出される物質、あるいはペプチドであるインヒビターである。このようなインヒビター候補物は、上記のテストシステムの使用によりスクリーニングされ得る。
【0031】
さらに、CIITA活性を示すタンパク質のATP結合部位にまたはそのN末端酸性活性化ドメインに結合するインヒビターは、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制するために用いられ得る。このようなインヒビターはまた、上記のテストシステムによりスクレーニングされ得、ここで、タンパク質へのインヒビターの結合部位が決定されるか、または、CIITA活性を示すタンパク質の断片がその結合部位を含むように用いられる。このような断片は、例えば、図3〜9に示す配列に基づいて生成され得る:転写活性化ドメインに対応し得る酸性アミノ酸のN末端領域には、プロリン、スレオニン、およびセリン残基に富む3つの短い伸長が続き、アミノ酸420から427付近のこのアミノ酸配列は、ATP結合部位に対応し得る。
【0032】
本発明のさらなる目的は、CIITA活性を有し、そして配列表の配列番号5に示されるDNA配列、この配列とハイブリダイズするDNA配列、これらの配列のアレル誘導体またはその断片あるいは上記配列と縮重するDNA配列にコードされるか、または図3〜9に示すアミノ酸配列を有する組換え生産したタンパク質のCIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定のための使用である。
【0033】
本発明のさらなる目的は、CIITAを示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定方法であり、この方法は、適切な条件下でCIITA活性を示すタンパク質に結合する能力を利用することにより、該インヒビターについてスクリーニングする工程を含む。
【0034】
CIITA活性を有するタンパク質のこのような使用について、またはこのような方法について、上記のインビトロ−またはインビボ−テストシステムが好ましい。好ましくは、インヒビターは、ATP結合部位にまたはCIITA活性を示すタンパク質のN末端酸性活性化ドメインに結合するが、それは、例えば、上記のようにCIITAタンパク質の断片を用いてインヒビター候補物をアッセイすることにより同定される。
【0035】
本発明のさらなる目的は、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定するための方法であり、この方法は、組換えCIITAタンパク質の三次元構造に基づいて適切なインヒビターを設計する工程を含む。好ましくは、上記テストシステムは、このような方法に用いられる。
【0036】
本発明のさらなる目的は、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物である。この薬学的組成物はまた、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/または添加物を含む。用量は、被験体の状態および病気の症状に依存する。
【0037】
好ましくは、上記インヒビターを含む本発明の薬学的組成物は、MHCクラスII遺伝子の発現レベルの減少が望ましい病気の治療に用いられ得、あるいは、外来性の移植用の臓器の供給源としてまたは万能細胞移植用の細胞の供給源として、MHCクラスIIネガティブトランスジェニック動物の生成に用いられ得る。特に、これらは、特定の細胞表面でのHLAクラスII分子の異常なおよび過剰な発現が、自己免疫の病理学的過程の原因であると考えられる自己免疫疾患を含む。これらは、インスリン依存性糖尿病(IDD)、多発性硬化症(MS)、紅斑性エリテマトーデス(LE)、およびリウマチ様関節炎(RA)を含む。MHCクラスII遺伝子およびタンパク質の異常な発現は、これらの病気のある動物モデルで実証されている。さらに、これらのいくつかの自己免疫疾患の動物モデルは、MHCクラスII分子に対する抗体で、良好に治療されており、自己免疫疾患におけるMHCクラスII遺伝子の発現の抑制調節が望ましいことが、指摘されている。
【0038】
最後に、本発明は、MHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気が、CIITA活性を有するタンパク質が異常量存在することにより、または他のファクターにより引き起こされるかどうかを決定するための、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物に関する。例えば、MHCクラスII遺伝子の発現を低減または排除することにより特徴づけられる病気を有する被験体の細胞が、アッセイシステムで該インヒビターの存在下でポジティブな応答を示さない場合(例えば上記のように)、この病気がCIITAタンパク質の異常量の存在により引き起こされないが、例えば、MHCクラスII遺伝子自身でシス作用変異により引き起こされると結論し得る。このような結果に基づいて、理論を適切に応用し得る。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例により説明する:
実施例1
変異体RJ2.25の相補性による発現クローニング
クラスII調節変異体RJ2.25の遺伝的相補性による発現クローニングは、遺伝子欠陥の性質については偏りがなく、欠陥が単一遺伝子に関することを必要とする。選択マーカーとして内因性のHLAクラスII遺伝子の再発現を用いることに加えて、発明者らは、いくつかの異なる選択戦略を、別々にまたは組み合わせて可能にする、一連のcDNA発現ベクターを構築した。
【0040】
cDNA発現ベクターEBO-Sfiの構築
cDNA発現ベクターEBO-Sfi(図1)を以下のようにして構築した。EBO-pLPPのハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子hph[Spickofskyら、DNAProt.
Engin. Techn. 2 (1990)、14-18(R. F. Margolskee博士から供与)]を、pTG76の最適化hph遺伝子[Giordanoら、loc.cit.(W. T. McAllister博士により供与)]で置き換えた。SV40初期プロモーターの制御下のhph-76遺伝子を、PstI部分消化およびBamHI完全消化から得られる2,546bp断片としてpTG76から単離した(pTG76の1845位および4391位)。EBO-pLPPから、6,675bpのPstI-EcoRV(1859位、5765位)および615bpのBamHI-EcoRV断片(5141位、5756位)を単離し、そしてhph-76PstI-BamHI断片と連結した。得られたベクターにおいて、両方のSV40初期プロモーターのSfiI部位を、SfiI消化、3’オーバーハングの除去、および再連結により破壊した。これはプロモーター活性に影響しなかった。次に、EBO-pLPPポリリンカー(SacI〜KpnI、EBO-pLPPにおける1〜37位)を、SfiI-cDNAクローニングカセットで置き換えた。これについて、800bpの細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を、オリゴヌクレオチドアダプターを介してSacIおよびKpnI部位に挿入した。得られたEBO-Sfiベクターにおいて、cDNAクローニングカセットを構成する配列は、以下の通りである:5'GAGCTCGGCCTCACTGGCC-CAT-遺伝子-GGCCAGTGAGGCCGGTACC3'(配列番号1、配列番号2)。
【0041】
ベクターDVおよびDRA-CDの構築
ベクターDV(図1C)を、EBO-Sfiの唯一のHindIII部位とBgIII部位との間のSV40初期プロモーターを制御するhph-76遺伝子を、HLADRAプロモーターの300bp断片(-270位〜+30位;転写開始部位に対して)で置き換えることにより生成した。
【0042】
ベクターDVでは、ハイグロマイシンB耐性遺伝子を、HLA-DRAプロモーターの制御下に配置する。これにより、HLAクラスII転写の再活性化について抗生物質選択を可能にする。
【0043】
DRA-CDの構築(図1B)については、300bpのHLA DRAプロモーター、1,742bpヒトCD4cDNA遺伝子[Maddonら、loc. cit.]、およびpTG76の134bpのSmaI-
BamHIポリアデニル化シグナルからなるリポーター遺伝子カセットを、EBO-SfiのHindIII部位に挿入した。cDNAクローニングについて、プラスミドDNAをSfiIで完全に消化し、そして5%〜20%のショ糖勾配でCAT-スタファー(stuffer)から分離した。
【0044】
cDNAライブラリーおよびプラスミドプールの構築
2本鎖cDNAを、Raji細胞から調製された20μgのポリアデニル化mRNAからSuperscript逆転写酵素(Gibco-BRL)を用いて合成した。cDNAをパリンドロームでないSfiI-SalIアダプター(5'pTGGCCGTCGACTAC[配列番号3]、5'pGTAGTCGACGGCCAGTG[配列番号4])に連結した。アダプター連結cDNAを5%〜20%ショ糖勾配でサイズ分画し、そして2.5kbより大きな挿入物を、プラスミドベクターDVおよびDRA-CDのそれぞれに連結した。連結反応物をEscherichiacoli DH5A株にエレクトロポレーションし、このサイズの画分について5×107組換体以上の可能性のあるライブラリー力価を生じた。SalIまたはSfiI切断後、cDNAの平均挿入物サイズは約3〜3.5kbであった。組換え体を、50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-broth寒天を含む15cmペトリ皿につき5×104コロニーが出るように播いた。細胞をプレートを掻いて集め、5×105組換え体をプールし、そして-70℃でグリセロール貯蔵で一部保存し、残りの細菌をアルカリ溶解ミニプレップ法[Sambrookら、MolecularCloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]によりプラスミドDNAを単離するために用いた。
【0045】
RJ2.25トランスフェクション
細胞を10%胎児ウシ血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを添加したRPMI1640培地で37℃にて5%CO2中で培養した。
【0046】
RJ2.25をトランスフェクション実験前の限界希釈により再クローニングした。50×106のRJ2.25細胞を、20μlプラスミドDNAおよびキャリアとして800μlRPMI培地中の400μg E. coli tRNAを用いるエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。電気パルス放射後直ちに、1mlのFCSを各エレクトロポレーションキュベットに添加した。トランスフェクションの48時間後、ハイグロマイシンB(Calbiochem)を125μg/mlで添加した。この投与量を3日間隔の2工程で最終濃度250μg/mlまで増加した。細胞数は、1×105および1×106/mlの間で維持した。ハイグロマイシンB選択は2週間後に完了した。限界希釈実験により測定されたトランスフェクション効率は、ルーチンには、EBO-SfiおよびDRA-CDプラスミドを用いた25%の安定トランスフェクタントより良かった。Raji細胞にトランスフェクトした場合、DVプラスミドは、10〜15%の安定なトランスフェクタントを生じた;RJ2.25中へのトランスフェクション後、ハイグロマイシンB選択下で99.9%以上の細胞が死滅した。
【0047】
フローサイトメトリック分析
以下のHLAクラスII特異的モノルローナル抗体を用いた:2.06(DR、C. Epplenの贈与)、L243(DR)、B7/21(DP、N.Reinsmoenの贈与)、Tu22(DQ、A. Zieglerの贈与)。さらに、本願発明者らは、CD4特異性OKT4モノクローナル抗体(M. Hadamの贈与)を用いた。
【0048】
細胞(106)を、染色緩衝液(リン酸緩衝溶液、1%ウシ血清アルブミン、および2.5%熱不活性化ヒトAB血清)中で、モノクローナル抗体と4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、そしてFITC標識されたウサギ抗マウスIgG(SEROTEC)とインキュベートした。洗浄後、10,000の生存細胞をFACScanフローサイトメーター(Becton-Dickinson)を用いて分析した。死滅細胞は、ヨウ化プロピジウムを用いてそれらを染色することにより、そしてそれらの前方および側面の光散乱特性による分析から排除した。
【0049】
細胞ソーティング
トランスフェクトしたRJ2.25細胞は、トランスフェクション後、3日から5日のソーティングの第一ラウンドを受けた。3×107と1.2×108との間の細胞をトランスフェクションおよびソーティング工程あたり使用した。細胞を、遠心分離により回収し、PBS/BSAで1回洗浄し、そして次いでPBS/BSA中の2.06またはOKT4腹水抗体を用いて、2.5%熱不活性化ヒトAB血清の存在下で30分間氷上で染色した。洗浄後、細胞をマグネットビーズ(Dynal,Norway)と結合した5〜10μlヤギ抗マウスと、2.5%熱不活性化ヤギ血清を添加したPBS/BSA中で30分間氷上でインキュベートした。ビーズに結合した細胞を、マグネットの助けで染色されなかった細胞から分離し、数回洗浄しそして増殖させた。ビーズは、数日間細胞に付着するが、成長を阻害せず、そして除去されなかった。細胞集団が十分な数(3〜5×107)まで成長した時に、さらなる選択のラウンドを実施した。抗体の濃度は、細胞の生存を最適化するためにビーズ選択後1日または2日間は、しばしば減少させるが、ハイグロマイシンB選択を、この全体のプロセスの間維持した。ソートされた集団を、2.06またはL243で染色することによりおよび各選択のラウンド後のFACS分析によりHLADR発現について分析した。ハイグロマイシンB選択に加えて、免疫選択の2つのラウンドの後、5つのDV-cDNAプールの中からの得られた3つのトランスフェクタントの培養物は、強いHLA-DR発現を示した(図2A、パネル1、2、3)。
【0050】
プラスミドレスキュー
プラスミドを、細菌ミニプレップ法によく似たアルカリ溶解により、ソートされた細胞集団から単離した。レスキューしたプラスミドプールを、E. coli DH10B株(Gibco-BRLの寛大な贈呈)へのエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。数百のコロニーを寒天プレートからかきとり、増殖し、そしてプラスミドDNAを抽出した。これらのプラスミドプールの挿入物を、SfiI、SalI、SacIおよびKpnIを用いた切断により分析し、続いてゲル電気泳動を行った。ランダムに選んだ単一のコロニーからのプラスミドDNAを同様に分析し、そしてレスキューしたプールに優先的に見られるのと同じ型の挿入物を含むプラスミドを、RJ2.25細胞に再トランスフェクションするために用いた。
【0051】
これらの高度に選択された集団からレスキューされたプラスミドプールは、SalI、SfiI、SacIおよびKpnIで切断およびゲル電気泳動により、特徴的な挿入物由来のバンドの限定的なセットを示した。同じ4.5kbのcDNA挿入物は、レスキューしたプラスミドを用いて得られたランダムに選択した細菌のコロニーの50%以上に見られた。HLA-DR発現について試験した場合、ハイグロマイシンB耐性についてのみ選択したトランスフェクタントはネガティブであった。これらの細胞からレスキューしたプラスミドプールは、挿入物の大きさについてはランダムな分布を示した。
【0052】
最後に、ベクターDRA-CD中に調製されたcDNAライブラリーを用いて安定にトランスフェクトされたRJ2.25変異体細胞を、免疫選択により、HLA-DRの発現についておよびCD4発現について(2.06およびOKT4抗体ならびにマグネットビーズを用いる)の両方によりソートした。3つのラウンドのソーティングの後、選択したトランスフェクト集団は、上記のRJ2.25/DVプールよりも幾分弱いが、はっきりとHLA-DRまたはCD4発現を示した(図2A、パネル4)。HLA-DR発現単独についてソートされた細胞からレスキューしたプラスミドの約30%は、DVトランスフェクタント(上記参照)に見い出される挿入物と同じ優勢な4.5kb挿入物を示した。対照的に、CD4発現単独について選択されたトランスフェクタントからレスキューしたプラスミドはまた、異なる優勢なcDNA挿入物を示し、変異体細胞中の再トランスフェクションに際しては、HLAクラスII発現に有効でない(データを示さない)。これらのプラスミドは、まだそれほど分析されていない。
【0053】
実施例2
CIITA cDNAは、変異体細胞株で完全な野生型HLAクラスIIの表現型の発現を復帰する。
【0054】
HLA-DRを再発現する選択したトランスフェクタント中に、優勢に見い出される4.5kbのcDNA挿入物を有する個々のコロニー由来のプラスミド(上記参照)を単離し、そして次いで、クラスIIネガティブの変異体RJ2.25のB細胞に再トランスフェクトした。次いで、トランスフェクタントを、ハイグロマイシンB耐性のみについて選択した。HLAクラスII発現について任意の免疫選択をすることなく、安定なトランスフェクタントは、野生型レベルのHLA-DRを発現した(図2B、パネル2)。ハイグロマイシン耐性遺伝子が、SV40プロモーターによりまたはDRAプロモーターにより駆動されるにしろ、これらの相補実験で同一の結果を得た。調節変異体細胞株でHLA-DR遺伝子の発現を復帰し得ると見い出されたcDNAを「クラスIIトランスアクチベーター」の代わりにCIITAと名付けた。
【0055】
例外が記載されているが、異なるHLAクラスII遺伝子の発現は、一般に全体様式(globalfashion)で調節される[Machら、Cold SpringHarb. Symp.Quant. Biol. 51 (1986)、67-74]。CIITA cDNAで安定にトランスフェクトされたRJ2.25変異体細胞の細胞表面の分析は、野生型レベルのHLA-DR分子(復帰細胞の初期選択に使用されるクラスII分子)の発現のみならず、HLA-DPおよびHLA-DQアイソタイプの再発現を示した(図2B、パネル2−4)。従って、RJ2.25中で作用するCIITAトランスアクチベーターは、すべてのHLA-DR、-DQおよび-DPのaおよびb鎖遺伝子の全ての発現を修正し、そして変異体細胞株で正常かつ完全なHLAクラスIIポジティブ表現型を復帰するに十分である。
【0056】
実施例3
CIITA cDNAおよびタンパク質の配列
2本鎖DNAを、主としてPharmaciaのT7 G/A-deazaシークエンシングキットを用いるがBioradのBstシークエンシングキットもまた用いて、ジデオキシ鎖ターミネーション法により塩基配列を決定した。cDNAおよび翻訳されたタンパク質配列は、EMBL(リリース33)、GenBank(リリース74)、SWISS-PROT(リリース24)、およびdbESTデータベースにある配列に対する相同性を試べた。配列の分析をPC/Geneリリース6.7(Intelligenetics)、BLASTサーバー、およびPROSITE辞書を用いて行った。
【0057】
CIITA cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を図3〜9に示す。いくつかの独立したソーティング実験から得たCIITA cDNAクローンの5'末端は、配列が決定され、そしてそれらの開始点が図中で示されている。クローンpDVP10-1の完全な塩基配列が決定された。それは、長さが4,543bpであり、そして1130アミノ酸の推定タンパク質をコードし、ヌクレオチド116位に開始コドンを有する3390bpの読みとり枠を含む。同じ読み枠で20〜22位に停止コドンがある。この最初の読み枠が合ったATGコドン(116位)が翻訳開始部位にとって最も重要な基準を満たすが、塩基対188位(アミノ酸25位)の第2番目の読み枠があったATGコドンは、完全な「コザックボックス」の情報内にあり、そして1106アミノ酸のタンパク質になる開始コドンとしてまた働き得る。1130アミノ酸のタンパク質は推定分子量123.5kDを有し、これはインビトロでCIITAcDNAから翻訳されたタンパク質について観察された見かけ分子量135〜140kD(示していない)によく相当する。5'のUT領域は115bpの長さであり、そして3'のUT領域は1kbの長さである。
【0058】
CIITA cDNAの3'の非翻訳領域のAlu繰り返し(塩基対3890から4190)を除いて、入手出来るデータベースにあるヌクレオチドまたはタンパク質配列のいずれにも有意な相同性は検出されなかった。推定CIITAタンパク質配列中の既知または可能な機能的要素(モチーフ)についての調査は、アミノ酸420位から427位に潜在的なATP/GTP結合部位を明らかにした(図3〜9)。タンパク質のN末端部分は、30%のグルタミン酸/アスパラギン酸を含む50から137残基にわたる配列をともなう、酸性残基が豊富な領域を示し(アミノ酸30から160、図3〜9参照)。162から322の残基は、プロリン、セリンおよびトレオニンが豊富である。この領域の中で、3つの範囲(残基163〜195、209〜237および260〜322)は、20%から23%のプロリンおよび17%から28%のセリン/トレオニンを示す。従って、CIITAは新規な遺伝子であり、その機能はBリンパ球におけるMHCクラスII遺伝子発現に必須である。
【0059】
実施例4
変異体B細胞株におけるCIITA遺伝子欠陥の同定
HLAクラスIIネガティブ変異体RJ2.25は、欠失および染色体再配列を起こすことが知られている低線量の放射線照射で生成したので、本願発明者らはサザンブロットハイブリダイゼーションにより、RJ2.25中のCIITA遺伝子の構成を分析した。
【0060】
高分子量のDNAを、培養細胞から抽出した[Millerら、Nucl. Acids Res. 16
(1988)、1215]。制限エンドヌクレアーゼ切断したDNAを、0.7%アガロース/TBEゲルで分離し、そして正に帯電するナイロンメンブレン(Boehringer-Mannheim)に毛細管で移動した。サザンハイブリダイゼーションを、Quick-hybridisation Mix(Stratagene)にある32P標識したcDNA断片のランダム九量体を用いて、製造社の説明書に従って、競争剤として音波処理した一本鎖ヒト胎盤DNAの存在下で行った。ブロットを0.1%SDSを含む2×SSC中40℃で2回洗浄し、続いて0.1%SDSを含む0.1×SSC中65℃で2回洗浄し、その後、増強スクリーンを用いて-70℃でX-ARフィルムに感光した。
【0061】
親B細胞株RajiからのHindIII切断したゲノムDNAは、完全長のCIITA cDNAプローブとハイブリダイズした後、3本のポジティブのバンド、およびCIITAcDNAの3'の非翻訳領域にある先に記載したAlu繰り返し配列(上記を参照のこと)による高バックグランドシグナルを示した。従って、ハイブリダイゼーションは、CIITAcDNAの明確な断片を用いて行った。図10Bに示すように、CIITAcDNAの1.8kb中央のHindIII断片は、親B細胞株RajiのゲノムDNA内の3.8kb HindIII断片にハイブリダイズする。このバンドは、ブロットを長く感光した後でさえ、変異体細胞株RJ2.25からのDNAにおいては完全に存在しておらず(図10B、プローブb)、両方の染色体上にCIITA遺伝子のこの中央領域の欠失示す。CIITAcDNAの5'および3'のプローブに、それぞれハイブリダイズするゲノムHindIII断片は、両方に存在し、変異体細胞株からのDNAにおいて長さは、変化しない(図10B,プローブaおよびc)。しかし、これら2本のバンドは、野生型RajiDNAと比較して、RJ2.25ではシグナル強度が半分に過ぎず、変異体細胞ではこれら各2本の断片の1コピーのみの存在を示唆している。
【0062】
最後に、RNAse保護によるCIITA mRNAの分析は、サザンブロットで証明された完全な欠失から予想されるとおり、CIITA cDNAの欠失した中央部分内に位置するプローブとではシグナルの不在を示した(図11A)。興味深いことには、CIITAmRNAの3'末端に対応するプローブは保護され(図11B)、変異した遺伝子内に観察される内部欠失を横切るリードスルーを示唆する。
【0063】
これらの実験は、調製変異体RJ2.25でインタクトなCIITA遺伝子の欠損についての直接的な証拠を提供し、そして変異株をつくるために用いた放射線照射は、ある場合には、CIITAアレルの完全な損失に至り、その一方他の場合には内部欠失を誘導することを示す。
【0064】
実施例5
他のHLAクラスII調製変異体はまた、CIITAにより復帰する。
【0065】
HLAクラスIIネガティブ調節変異体Bリンパ芽球細胞株は、RJ2.25とは独立に、そして異なった変異誘発のプロトコルを含む異なった手法により生じた。本願発明者らは、RJ2.25(図12、パネル2)におけるようにCIITAcDNAがHLA-DR発現を復帰し得るかどうか探究するために2つの別のそのような細胞株を試験した。変異体RM3[Calmanら、J. Immunol. 139(1987)、2489-2495]は、化学的変異誘発により生成され、そしてRJ2.25のようにHLAクラスII調節においてで劣性欠陥に対応することを示した。クラスIIネガティブRM3変異体BをCIITAcDNAでトランスフェクトした場合、HLA-DRの正常な発現を、図12のパネル3に示すように復元した。RJ2.25変異体の場合におけるように、HLA-DQおよび-DP発現は同様に復元された(データは示さない)。発明者らはまた、同じRaji親B細胞株から、EMSを用いる変異誘発に続いて、HLAクラスIIネガティブ変異体を生成した。1つのこのような変異体(REM-34)を、CIITAcDNAでトランスフェクトし、そしてHLA-DR発現について分析した。2つの前の場合のように、CIITAは、HLAクラスII分子の発現を復元した(図12、パネル4)。
【0066】
CIITAの分化(differential)発現
MHCクラスII遺伝子は限られた数の細胞型においてのみ発現する。しかし、現在までのところ、MHCクラスII発現の制御に含まれるであろうと推測された因子は、MHCクラスII遺伝子の制御と関係する発現のパターンを示さなかった[Glimcherら、loc.cit.]。CIITAに関するこの疑問と取り組むために、RNAse保護実験を、いくつかのMHCクラスIIネガティブおよびポジティブ細胞株を用いて行った(図11C)。
【0067】
2つのCIITA cDNA断片を、RNAse保護プローブとして調製した。内部プローブは、225bpのCIITA mRNAを保護するヌクレオチド2049(SfiI)から1824(NcoI)をカバーしている。3'末端プローブは、CIITAのヌクレオチド4520から4340(HinfI)にわたる180bpの断片に相補的である。コントロールとして、TBPmRNAの275bp断片(塩基対1228から953)の断片を調製した。線状化した構築物から、32P-UTP標識リボプローブを、44bp、44bp、および60bpの非相補性のベクターにコードされるオーバーハングを残してインビトロ転写により生成した。10μgの全RNAを、酵母RNAを用いて50μgにし、80%ホルムアミド中で、500,000cpmのプローブと50℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
【0068】
RNAseAおよびT1[Sambrookら、loc. cit.]での切断後、保護断片を6%ポリアクリルアミド、8M尿素ゲルで電気泳動により分離し、そしてオートラジオグラフィーにより可視化した。いくつかのEBV形質転換されたB細胞株、およびクラスIIポジティブの結腸癌腫細胞株CO115は、CIITAmRNAの発現を示した。対照的に、3つのHLAクラスIIネガティブ細胞株、2102Ep、Andrews MOLT-4、およびSK-N-ASは、CIITAmRNA発現のシグナルを示さなかった(図11C)。この初期研究から、発明者らは、CIITA発現は遍在するのではなく、MHCクラスII発現と関連するように見えるパターンでそれ自身が調節されていると結論づけた。
【0069】
実施例6
CIITA cDNAは、遺伝性MHCクラスIIの欠陥を有する患者からの細胞においてMHCクラスII分子の発現を復元し得る。
【0070】
遺伝性MHCクラスIIの欠陥は、MHCクラスII遺伝子の発現を全体的に欠く主要な免疫欠損の形態である。この病気にかかっている患者は、しばしば多重感染により死亡する。CIITA遺伝子は、これらの患者のいくつかの例で遺伝欠陥を復帰することを見い出した(図13参照)。MHCクラスII欠陥を有する患者からのBリンパ球を、すべてのMHCクラスII遺伝子の再発現を生じる、適切なベクター中にあるCIITAcDNAでトランスフェクトし得る。クローン化遺伝子による生細胞中における遺伝子欠陥の復帰は、この病気の遺伝子治療への道を開く。
【0071】
実施例7
CIITA cDNAは、MHCクラスIIネガティブ細胞の異なるタイプにおいてMHCクラス分子の発現を誘導し得る。
【0072】
身体の大部分の細胞は、通常、MHCクラスIIネガティブである。癌細胞に対するワクチン化または免疫応答の誘導のような多くの状況では、通常はクラスIIネガティブの細胞をより免疫原性にするために、これらの細胞内でMHCクラスII遺伝子の発現を誘導または助長することが望まれる。図14に示したデータは、このことが実際に達成され得ることを示した。3つの異なるMHCクラスIIネガティブヒト細胞株を、CIITAcDNAでトランスフェクトし、CIITA cDNAは、高レベルのMHCクラスII表面分子の発現を誘導するに十分であった。CIITA cDNAのこの効果は、癌においてワクチン化および遺伝子治療について新しい戦略の明瞭に示唆する。
【0073】
実施例8
トランスアクチベーター遺伝子CIITAにより誘導されるMHCクラスII分子は、ペプチド結合およびペプチド特異的なTリンパ球活性化において非常に有効である。
【0074】
MHCクラスII分子の発現がトランスアクチベーター遺伝子CIITA(CIITA cDNAとして)により誘導された細胞を、外因性のペプチドに結合するそれらの能力およびT細胞クローンにこのようなペプチドを呈示するそれらの能力について試験した。これらのCIITAトランスフェクタントを、MHCクラスII発現がインターフェロンガンマにより誘導された同じ細胞と比較した。2つの型の細胞は、それらの表面で、同様なレベルでMHCクラスII分子を発現した。この実験は、適切なHLA-DR特異性の、および用いた特定の破傷風トキソイドペプチドに対して特異性を示すT細胞クローンを用いて行った。これらの2つの型のMHCクラスIIポジティブ細胞によるペプチド特異的なT細胞活性化を、刺激指標として表したH3-チミジン取り込みにより測定した。この特別な実験で、黒腫細胞を抗原存在細胞として用いた。
【0075】
図15に見られ得るように、MHCクラスIIネガティブの、トランスフェクトされていないコントロール細胞は、Tリンパ球を活性化しなかった。インターフェロンガンマで刺激されたMHCクラスIIポジティブ細胞はまた、高ペプチド濃度でさえ、顕著なT細胞活性化を誘導しなかった。その一方、CIITA cDNAでトランスフェクトされた細胞は、非常に有効な抗原提示細胞およびペプチド特異的T細胞アクチベーターとして挙動する。これらの機能的な結果と一致して、これら2つの型のMHCクラスIIポジティブ細胞のペプチド結合活性は劇的に異なり、インターフェロン活性化細胞では低く、そしてCIITAトランスフェクタントでは高い。従って、CIITAは、MHCクラスII分子の発現を誘導し、ペプチドを結合し、そしてTリンパ球にペプチドを提示するそれらの非常に有効な能力において通常ではないが、これらのリンパ球の活性化に至る。従って、CIITAは、非常に高いペプチド特異的な免疫原性を示す細胞を生成するために用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】EBO-Sfiおよびこれに由来するcDNA発現ベクターDRA-CDおよびDVの制限マップである。 (a)ベクターEBO-SfiはプラスミドpTG76由来のハイグロマイシン耐性遺伝子(hygr-76)を含む[Giordanoら、Gene 88 (1990)、285-288]。cDNAクローニングカセットは、細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子により分離される2つの反復SfiI部位からなる(SfiI-CAT遺伝子-SfiI)。クローン化cDNAはシミアンウイルス40初期(SV40e)プロモーターおよびポリアデニル化シグナル(Poly-A)により誘導される。白四角は、EBV複製起点(ORIP)、シミアンウイルス40後期プロモーター(SV40l)の制御下のEBV核抗原遺伝子1(EBNA-1)、および細菌性アンピシリン耐性遺伝子(amp)を示す。 (b)ベクターDRA-CDは、EBO-Sfiから生成されたが、それは300bpのHLA DRAプロモーターの制御下のCD4 cDNA[Maddonら、Cell42 (1965)、93-104]および130bpのポリアデニル化シグナルをEBO-Sfiの唯一のHindIII部位へ挿入して生成された。(c)ベクターDVの生成については、hygr-76遺伝子由来のSV40初期プロモーターが、唯一のHindIIIおよびBglII部位を介して、300bpのHLADRAプロモーターに置換された。
【図2】RJ2.25細胞でのHLAクラスII発現のクローニングおよび修正によるCIITAのcDNAの単離。(a)HLA-DRポジティブ細胞の選択を示す。DV-プールのDVP6、-7、および-10(パネル1〜3)および1つのDRA-CDプール(DRA-CDP1、パネル4)由来のプラスミドDNAでトランスフェクトしたRJ2.25細胞を、ハイグロマイシンB耐性について選択し、そしてHLA DR特異抗体2.06およびマグネットビーズで2回(DVトランスフェクタント)または3回(DRA-CDトランスフェクタント)選別した。選別した群を、HLA DR抗体L243で染色し、そしてFACSにより分析した(影で示すプロフィル)。ネガティブおよびポジティブコントロールとして、RJ2.25およびRaji細胞を同様に分析した(白抜きのプロフィル)。(b)CIITA cDNAは3つのすべてのHLAクラスIIイソタイプの発現を回復する。RJ2.25およびRaji細胞(パネル1、3、5)またはDRA-CDおよびDRA-CD/CIITAでトランスフェクトしたRJ2.25細胞(パネル2、4、6の白抜きおよび影のプロフィル)を、HLADR(L243;パネル1、2)、-DP(B7/21;パネル3、4)、および-DQ(Tu22;パネル5、6)に特異的な抗体で染色し、そしてFACS(蛍光活性化細胞選別器)により分析した。
【図3】CIITAcDNAのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を示す。cDNAクローンpDVP10-1の完全ヌクレオチド配列およびCIITAの推定アミノ酸配列を示す。グルタミン酸/アスパラギン酸に富むN末端領域(「acidic」で示す)およびプロリン/セリン/スレオニンに富む伸長(「I、II、III」で示す)を上線で示す。ATP/GTP結合カセットを二重下線で示す。プロテインキナーゼCおよびカゼインキナーゼII部位(13および15)と思われる部位が多数配列中に存在するが、図には示していない。
【図4】図3の続きである。
【図5】図4の続きである。
【図6】図5の続きである。
【図7】図6の続きである。
【図8】図7の続きである。
【図9】図8の続きである。
【図10】変異細胞株RJ2.25のCIITA遺伝子の欠失の証拠。(a)3つの内部HindIII部位(H)を有するCIITA cDNAの概略図である。サザーンハイブリダイゼーションプローブとして用いたCIITA cDNAの3つのフララグメントを黒塗りのバーで示す。(b)10μgのゲノムDNAをHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲルで分画し、変性し、転写し、そしてCIITAプローブまたはTBPプローブとハイブリダイズさせた。Raji(レーン1)およびRJ2.25(レーン2)由来のDNAを用いて2つの同一のフィルターを調製した。第1のフィルターをCIITAの5’末端由来の1.1kBのHindIIIプローブ(プローブA)とハイブリダイズさせた。ストリッピングした後、同じフィルターをプローブB(CIITAcDNAの中央の1.8kbのHindIII断片)と再ハイブリダイズさせた。第2のフィルターを、まず、CIITAの4152〜4520ヌクレオチドの範囲のプローブCとハイブリダイズさせた。次いで、両方のレーンのDNA量が等しいことを確認するために、このフィルターをストリップし、ヒトTBPcDNAの3’末端由来のプローブとハイブリダイズさせた[Kaoら、Science 248 (1990)、1646-1650]。CIITA特異的なバンドは、プローブA、B、およびCについてそれぞれ13kb、3.8kb、および14kbの長さであった。
【図11】CIITA発現のRNAse保護分析を示す。10μgの全RNAを80%ホルムアミド中で500,000cpmのプローブにハイブリダイズさせた。保護されたプローブを変性6%ポリアクリルアミドゲルで解離させた。(a、b)Raji(レーン2)およびRJ2.25(レーン3)の全RNAを、それぞれ、CIITAのヌクレオチド2049〜1824(a)およびヌクレオチド4520〜4340(b)に相補的なリボプローブにハイブリダイズさせた。未消化のプローブおよび酵母RNAコントロールをレーン1および4に示す。(c)種々の細胞株由来の全RNAを(a)で用いたのと同じ中央のCIITAプローブにハイブリダイズさせた。1、酵母コントロール;2、CO115結腸癌腫;3、4、Mann、QBLB-LCL;5、2102Ep奇形癌腫;6、MOLT4 Tリンパ腫;7、SK-N-AS神経芽細胞腫;8、未消化プローブ。RNAの量および質を、TBP特異的プローブにハイブリダイゼーションすることにより制御した(図示せず)。
【図12】CIITAcDNAが3つの異なるHLAクラスIIネガティブ変異細胞株を修正することを示す。RJ2.25(パネル2)、RM3(パネル3)、またはREM-34(パネル4)細胞を、EBO-Sfiにクローン化したCIITA cDNA(黒いプロフィル)で、またはEBO-Sfi単独(白いプロフィル)でトランスフェクトした。L243抗体を用いるFACSによる表面HLA DR発現の分析を、ハイグロマイシンB選択の2週間後(RJ2.25、RM3)またはたった5日後(REM-34)に行った。パネル1はネガティブコントロール(RJ2.25;EBO-Sfiトランスフェクトした)およびポジティブコントロール(Raji)を示す。
【図13】CIITA cDNAが、HLAクラスII欠失被験体由来のBリンパ球のHLAクラスII発現を十分に修正することを示す。被験体BLS1由来のBリンパ球を、CIITA cDNAでトランスフェクトした。ハイグロマイシンでの選択の後、細胞をHLA-DR、-DP、および-DQの表面発現について分析した。
【図14】CIITA遺伝子がクラスIIネガティブ細胞においてMHCクラスII遺伝子の発現を誘導することを示す。3つのタイプのMHCクラスIIネガティブ細胞を、CIITA cDNAでトランスフェクトした。ハイグロマイシンでの選択の後、細胞を、HLA-DR分子の表面発現について分析した。A.メラノーマ細胞株。B.線維芽細胞株、143B。C.HeLa細胞。
【図15】CIITAトランスフェクタントおよびAPO'sとして用いたインターフェロン刺激細胞を用いるヒトT細胞クローンの活性化を示す。3つのタイプの細胞をAPC'Sとしてテストした:非トランスフェクト化メラノーマ細胞株、MHCクラスIIネガティブ(黒丸);200μg/mlのインターフェロンγへの曝露の48時間後の同じ細胞株、MHCクラスIIポジティブ(黒四角);CIITA cDNAで以前にトランスフェクトした同じ細胞株、MHCクラスIIポジティブ(黒三角)。これらの細胞を、種々の濃度のp4、破傷風トキソイドペプチドで、図に示した濃度で処理し、UV光で固定化し、そしてそのペプチドに特異的な2つの異なるヒトT細胞クローンT-50およびT-87とともにインキュベートした。T細胞活性化の範囲をH3-チミジンの取り込みによる標準アッセイで測定し、そして「刺激インデックス」として表した。
【0077】
(配列表)
【0078】
【数1−1】
【0079】
【数1−2】
【0080】
【数1−3】
【0081】
【数1−4】
【0082】
【数1−5】
【0083】
【数1−6】
【0084】
【数1−7】
【0085】
【数1−8】
【0086】
【数1−9】
【0087】
【数1−10】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎動物のMHCクラスII遺伝子発現の一般的な制御に不可欠なトランス作用性タンパク質の活性を抑制するインヒビターおよびその同定方法に関する。本発明はさらに、前記インヒビターを含む薬学的組成物、好ましくは、MHCクラスII遺伝子の異常な発現に関連する病気の治療のための薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
クラスII主要組織適合(MHC)抗原は、ヘテロダイマーのトランスメンブラン糖タンパク質である。抗原提示細胞の表面におけるそれらの発現には、T細胞レセプターによる外来抗原の認識が必要である。T細胞の活性化および抗原の提示は、個々の細胞におけるクラスII抗原の発現レベルに依存する。したがって、クラスII遺伝子の発現の調節は、正常および異常な免疫応答の両方の制御の重要な局面である。
【0003】
ヒトでは、HLA-DP、HLA-DQ、およびHLA-DRクラスII分子のa鎖およびb鎖をコードする遺伝子は、第6染色体上のMHCのD領域にクラスターしている。これらの遺伝子は、厳しくかつ複雑な調節制御を受けている。これらの発現は、一般に整合されており、そして主に免疫系の細胞(Bリンパ球、活性化Tリンパ球、マクロファージ、樹枝状細胞、ならびにクッパー細胞およびランゲルハンス細胞などのある種の特殊な細胞など)に限定される。あるクラスIIネガティブ細胞では、発現はインターフェロンγまたはインターロイキン4などのリンホカインによる刺激により誘導され得る。
【0004】
MHCクラスII遺伝子は、調節された遺伝子発現の特に複雑なケースを示している。ヘルパーT細胞に対する外来抗原の提示ならびにTリンパ球の胸腺刺激には、MHCクラスII分子の正常な発現が必須とされるので、これらの遺伝子の調節は正常に機能する免疫系に必要である。MHCクラスII抗原をコードする遺伝子は、最初は実際に「免疫応答遺伝子」と記載されていた[Benaceraff、Science212 (1981)、1229-1238]。この調節は、クラスII分子の発現レベルだけでなく、非常に限定された細胞タイプの特異性にも関連する。これは体内のほとんどの細胞は通常MHCクラスIIネガティブであることによる。この調節の複雑性は、2つの異なる制御態様、すなわち、Bリンパ球などの細胞での構成的発現、および単球または線維芽細胞などの細胞タイプでの誘導発現に関連する。最後に、この遺伝子ファミリーは、3つの異なるHLAクラスIIイソタイプのa鎖およびb鎖をコードし、そして一般に全体的に調節される。
【0005】
多くのタンパク質ファクターは、MHCクラスIIプロモーターの機能的に必須の配列モチーフ、特に保存されたXおよびYボックスに、インビトロで結合し得ることが示されている[Glimcherら、Ann.Rev. Immunol. 10 (1992)、13-49]。さらに、クラスIIプロモーターの占有状態は、インビボで分析されている[Karaら、Science252 (1991)、709-712]。
【0006】
これまでに、本発明者らは、MHCクラスII遺伝子の発現に不可欠なタンパク質(MHCクラスII遺伝子発現のトランスアクチベーター、CIITA)を単離し、同定し、そしてさらに、このタンパク質をコードする遺伝子を単離した(Steimleら、CELL 75 (1993)、135-146)。
【0007】
CIITAタンパク質およびこれに対応する遺伝子は、以下のアプローチにより得られ得る:
HLAクラスIIプロモーターに結合するタンパク質の検出可能な欠失を示さない調節変異B細胞株を用いて、MHCクラスIIポジティブB細胞由来のcDNAによる表現変異型の相補性テストを行い、影響を受けたMHCクラスII調節遺伝子をクローニングしおよび同定した。選択は、内因性のクラスII遺伝子の再発現だけでなく、抗生物質耐性の遺伝子を誘導する(変異体細胞で不活性な)MHCクラスIIプロモーターの再活性化に基づいて行った。ライゲーションで再結合し得ないクローニング部位を生成して、大きなcDNAの挿入の効率を確実にした。注意深くサイズ選択したcDNAを用い、そして4.5kbのCIITAのcDNAの選択がうまくできるようなcDNAライブラリーは、3.5kbより大きい平均サイズの挿入物を含んでいた。さらに、Bリンパ球のトランスフェクション条件およびマグネットビーズを用いる表面発現の免疫選択手順は、完全に最適化された。
【0008】
自由に入手可能なクラスIIネガティブB細胞株RJ2.25の相補性テストによるCIITAのcDNAのクローニングによって、以下の結果が導かれた:CIITAは、実際にこの変異体で影響を受けた遺伝子であり、そして2つのCIITAアレルの欠失は本来のCIITAのmRNAがないことを説明している。1つのアレルはCIITA遺伝子の内部欠失のみを有しており、そして転写リードスルーが短縮型転写物になるようである。CIITAcDNAによりMHCクラスII遺伝子発現が回復することで、Bリンパ球でのMHCクラスIIの構成的発現の制御におけるこのファクターの機能的役割を立証する。CIITAは、3つの全てのHLAクラスIIイソタイプ、DR、DQ、およびDPのトランスアクチベーターとして作用し、そしてこのファクターによる遺伝子座特異的制御の証拠はない。CIITAをコードするDNA配列およびその推定アミノ酸配列を、図3〜9に示す。
【0009】
CIITAは、1130アミノ酸からなるタンパク質であり、そのmRNAは低レベルで発現される。その構造は作用の態様に関してはあまり有益ではない。この分子のNH2末端部分は転写活性化ドメインにある保存に関与している(Mitchellら、Science245 (1989)、371-378)。特に、酸性アミノ酸領域に続くプロリン、スレオニン、およびセリン残基に富む3つの短い伸長の領域が寄与している。ある転写ファクターは、類似の活性化ドメインを有する。ATP/GTP結合部位に対応する配列は、アミノ酸420から427付近と考えられ、そしてこの位置での変異は有益である。最後に、アミノ酸979から1061付近にロイシンに富む領域があり、そこは、酵母のRNA結合タンパク質のNH2末端部分と弱い相同性を示す(Tragliaら、Mol.Cell. Biol. 9 (1989)、2989-2999)。この弱い相同性は主にロイシンに富む領域内の最初のロイシン残基に関連するので、進化的な関連性を示し得ない。CIITA配列中には明らかなDNA結合ドメインがないので、MHCクラスIIプロモーターのXおよびYボックスに結合することが知られているファクターと転写機構との間のアダプターとして機能し得ることが推測され得る。
【0010】
さらに、トランスアクチベーターCIITAは、Bリンパ球のような細胞中でMHCクラスII遺伝子の構成的発現を調節するだけでなく、他の細胞タイプでこれらと同様の遺伝子の誘導的発現(例えば、インターフェロンγまたはTNFによる誘導)も制御する。したがって、それは、MHCクラスII遺伝子発現の一般的制御に関連するファクターである。その構造は他のファクターに関連しない。
【0011】
いくつかの自己免疫疾患、例えば、インスリン依存性糖尿病、多発性硬化症、リウマチ様関節炎、および紅斑性エリテマトーデスなどは、少なくとも一部は、通常はHLAクラスII抗原を発現しない細胞上に抗原が異常に発現することによると考えられる。次いで、異常なT細胞活性化が自己免疫過程を引き起こす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
その結果として、例えば、自己免疫疾患を予防または治療するために、あるいは臓器移植、特に骨髄移植の場合に、ならびにMHCクラスIIネガティブ動物を外来性の臓器ドナーとするために、MHCクラスII遺伝子の発現を抑制調節し得ることが非常に望まれている。したがって、MHCクラスII遺伝子発現を抑制調節する能力を有する物質へアクセスすることができれば、上述の疾患の治療方法を提供し得る。
【0013】
したがって、本発明の根底にある技術的課題は、CIITA活性を示しそしてMHCクラスII遺伝子の発現に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得る物質を単離かつ同定すること、およびその物質を精製形態で提供することである。さらに、技術的課題は、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得る物質を同定する方法を提供することである。さらに、技術的課題は、上記物質を含む薬学的組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記技術的課題は、請求項で特徴付けられる本発明の実施態様を提供することにより解決される。MHC遺伝子発現を抑制し得るインヒビターは、CIITA活性を有するタンパク質を用いることにより同定され得る。
【0015】
したがって、本発明の目的は、CIITA活性を示しそしてMHCクラスII遺伝子の発現の一般的制御に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを提供することであり、ここで、該インヒビターは、CIITA活性を有し、そして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産したタンパク質の使用により得られる:
(a) 配列表の配列番号5に示すDNA配列;
(b) (a)のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列;
(c) (a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または
(d) (a)、(b)、または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として縮重しているDNA配列。
【0016】
よって、本発明によって、以下が提供される:
(1) CIITA活性を示し、そして脊椎動物細胞でMHCクラスII遺伝子の発現の一般的な制御に不可欠なタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターであって、該インヒビターはCIITA活性を有しそして以下から選択される遺伝子によりコードされる組換え生産されたタンパク質を用いて得られる:
(a)配列表の配列番号5に示されるDNA配列;
(b)(a)のDNA配列とハイブリダイズするDNA配列;
(c)(a)または(b)のDNA配列のアレル誘導体または断片;または
(d)(a)、(b)または(c)のDNA配列と、遺伝子コードの結果として、縮重するDNA配列。
(2) 前記CIITA活性を有するタンパク質が配列表の配列番号6に示されるアミノ酸配列を有する、項目1に記載のインヒビター。
(3) 前記インヒビターが前記CIITA活性を有するタンパク質の3次元構造を基礎として設計される、項目1または2に記載のインヒビター。
(4) 前記インヒビターが合成有機化学物質、天然発酵生産物、あるいは微生物、植物あるいは動物から抽出された物質、またはペプチドである、項目1から3のいずれかの項に記載のインヒビター。
(5) 前記インヒビターがCIITA活性を示すタンパク質のATP結合部位に結合する、項目1から4のいずれかの項に記載のインヒビター。
(6) 前記インヒビターがCIITA活性を示すタンパク質のN末端酸性活性化ドメインに結合する、項目1から4のいずれかの項に記載のインヒビター。
(7) CIITA活性を有し、そして項目1に記載の遺伝子にコードされるか、または配列表の配列番号6に示すアミノ酸配列を有する組換え生産されたタンパク質の、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定のための、使用。
(8) CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定する方法であって、該方法は適切な条件下で項目1または2に記載の組換えCIITAタンパク質に結合する該インヒビターの能力を利用することによるスクリーニングを包含する、方法。
(9) CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定する方法であって、該方法は項目1または2に記載の組換えCIITAタンパク質の3次元構造を基礎として適切なインヒビターを設計することを包含する、方法。
(10) 項目1から6のいずれかの項に記載のインヒビターを包含する薬学的組成物。
(11) MHCクラスII遺伝子の発現レベルの減少が所望されるMHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気の治療のため、または外来性移植組織のための臓器の供給源または万能細胞移植の細胞の供給源としてMHCクラスIIネガティブトランスジェニック動物を作るための項目10に記載の薬学的組成物。
(12) MHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気が、CIITA活性を有するタンパク質の異常な量の存在または他の因子により起こるのかどうかを決定するための項目10に記載の薬学的組成物。
(発明の効果)
本願発明は、脊椎動物のMHCクラスIIの遺伝子発現の一般的なコントロールに必要であるトランス作用タンパク質の活性を抑制するインヒビターおよび同じ物を同定する方法に関する。本願発明は前記インヒビターを包含する薬剤組成物に関し、好ましくは、MHCクラスII遺伝子の異常型発現に関連する病気の治療に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記インヒビターを同定するためのタンパク質をコードする好ましい配列は、図3〜9に提供される。
【0018】
図3〜9に示す配列を提供された当業者には、哺乳類などの脊椎動物のゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリー由来の、あるいは他のヒト個体由来の関連するDNA配列を単離するために、このDNA配列、その断片、または対応するオリゴヌクレオチドを使用することが理解される。関連するDNA配列は、例えば、対立ヒトDNA配列である。一方、実施例に示されるように、本発明のスクリーニング法が提供されると、当業者には、哺乳類などの他の脊椎動物由来のまたは他のヒト個人由来の対応するDNA配列を単離し得る。さらに、図3〜9に示されるDNA配列またはその関連のDNA配列は、化学合成により得られ得る。上記すべてのDNA配列は、本発明の範囲内である。したがって、本発明はまた、従来のハイブリダイゼーション条件下で図3〜9のDNA配列にハイブリダイズするDNA配列に関する。
【0019】
上記インヒビターを同定するためのタンパク質をコードする、さらに好ましい配列は、遺伝子コードの縮重により上記DNA配列に関連するDNA配列、または、図3〜9に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするDNA配列である。
【0020】
本発明のインヒビターを同定するためのCIITA活性を有するタンパク質の組換え生産は、ベクターへの挿入に、上記DNA配列を用いて従来法により行われ得る。
【0021】
好ましい組換えベクターは、挿入された遺伝子が発現制御配列に作動可能に連結しているプラスミドである。他の好ましい組換えベクターは、pDVP10-1であり、これはヒトMHCクラスIIトランスアクチベーターをコードする4543bpのcDNA挿入物をプラスミドベクターDV中に含む。このcDNAはHLAクラスIIポジティブB細胞株RajiのmRNAから合成された。このプラスミドは、該プラスミドを含む大腸菌株(E.coli pDVP10-1)として1993年7月19日に寄託された。受託番号は、DMS 8422である。
【0022】
生物学的に活性なCIITAの組換え生産に有用な宿主生物体は、当業者に選択され得る。このような宿主生物体は、好ましくは、E. coliまたはBacillus subtilisなどの細菌、Saccharomycesの種または株(例えば、Saccharomyces cerevisiae)などの酵母、および、昆虫細胞または哺乳類細胞などの他の真核生物宿主細胞である。
【0023】
本発明の形質転換された宿主生物体は、培養培地中で適切な条件下で培養され、そして得られる発現産生物は培地から回収される。必要に応じて、回収された発現産生物は、イオン交換樹脂またはアフィニティークロマトグラフ用材料(例えばマトリックスに結合したモノクローナルまたはポリクローナル抗体)を用いるクロマトグラフィーなどの一般的な方法により精製され得る。
【0024】
本発明のインヒビターは、テスト混合物を調製することにより同定され得る。ここで、インヒビター候補物は、タンパク質が天然のコンフォメーションをとり得る適当な条件下でCIITA活性を有するタンパク質とともにインキュベートされる。このようなインビトロテストシステムは当該分野で周知の方法により確立され得る。CIITA活性を示すタンパク質のインヒビターは、例えば、まず組換えCIITAタンパク質に結合する合成または天然に存在する分子のいずれかをスクリーニングする工程、次いで、第2に、このようにして選択した分子を細胞アッセイでCIITAの阻害をテストしてMHCクラスII発現の阻害を反映するものとして同定され得た。
【0025】
組換えCIITAに結合する分子のスクリーニングは、合成および天然の分子の「ライブラリー」由来の候補分子の非常に多数についての大規模スクリーニングを容易に行い得た。結合は、とりわけ、組換えCIITAが他の分子に結合する際の構造および/またはサイズの微細な変化として、検出され得たが、それはタンパク質化学アッセイの技術水準で検出されるようなものである。これらには、蛍光屈折法(G.Turcattiら、Biochemistry、34:3972-3980、1995)および表面プラスモン共鳴(SPR)(D. J. O'Shannessyら、Methodsin Enzymology、240:323-349、1994、A. C. Greenlund、Immunity、2:677-687、1995)が含まれる。SPRは、固定化したCIITAまたは適当な支持体に固定化したインヒビター分子候補物のいずれかを用いて行い得る。SPRはまた、競合アッセイとして優れた感度で行い得る(R.Karlsson、Anal.Biochem.、221:142-151、1994)。
【0026】
第2の工程において、CIITA阻害についての細胞に基づくアッセイは、構成的プロモーターの制御下でCIITAのcDNAで安定にトランスフェクトされたCIITAネガティブ変異体B細胞株(RJ2.25またはRM3など)、および/またはCIITAのcDNAでこれもまた安定にトランスフェクトされたHeLa細胞などのMHCクラスIIネガティブ細胞株の両方によるものである。このアッセイは、標準的免疫蛍光法により測定されるHLA-DR分子の細胞表面発現の阻害による。上記のように、このように安定なトランスフェクタントは、CIITAインヒビターの細胞に基づくアッセイ用のツールとして研究室で生成した。
【0027】
あるいは、このような分子の同定は、実施例2、6、および7に記載の実施例に基づくインビボテストシステムを用いて行われ得る。好ましくは、CIITA活性を有するタンパク質を発現させるプラスミドを含むヒトの細胞であるHLAクラスIIネガティブ変異体細胞株(例えば、以下の実施例2に記載のRJ2.25、RM3、またはREM-34)を、インヒビター候補物に接触させ、次いで、HLAクラスII遺伝子の発現レベルをインヒビター候補物と接触させていないコントロール細胞のレベルと比較する。HLAクラスII遺伝子の発現の測定は、以下の実施例2に記載のように行い得る。
【0028】
好ましくは、本発明のインヒビターは、CIITA活性を示すタンパク質とMHCクラスII遺伝子の制御配列との相互作用を阻害し、それにより該遺伝子の発現の抑制調節を引き起こす。
【0029】
本発明のさらなる目的は、CIITAの3次元構造に基づいて設計されるインヒビターであり、その情報は、当業者の技術水準にある例えば、X線構造解析、分光学的方法などの技術を用いて組換えCIITAから得られ得る。
【0030】
本発明のさらなる目的は、合成有機化学物質、天然発酵産生物、あるいは微生物、植物、または動物から抽出される物質、あるいはペプチドであるインヒビターである。このようなインヒビター候補物は、上記のテストシステムの使用によりスクリーニングされ得る。
【0031】
さらに、CIITA活性を示すタンパク質のATP結合部位にまたはそのN末端酸性活性化ドメインに結合するインヒビターは、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制するために用いられ得る。このようなインヒビターはまた、上記のテストシステムによりスクレーニングされ得、ここで、タンパク質へのインヒビターの結合部位が決定されるか、または、CIITA活性を示すタンパク質の断片がその結合部位を含むように用いられる。このような断片は、例えば、図3〜9に示す配列に基づいて生成され得る:転写活性化ドメインに対応し得る酸性アミノ酸のN末端領域には、プロリン、スレオニン、およびセリン残基に富む3つの短い伸長が続き、アミノ酸420から427付近のこのアミノ酸配列は、ATP結合部位に対応し得る。
【0032】
本発明のさらなる目的は、CIITA活性を有し、そして配列表の配列番号5に示されるDNA配列、この配列とハイブリダイズするDNA配列、これらの配列のアレル誘導体またはその断片あるいは上記配列と縮重するDNA配列にコードされるか、または図3〜9に示すアミノ酸配列を有する組換え生産したタンパク質のCIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定のための使用である。
【0033】
本発明のさらなる目的は、CIITAを示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターの同定方法であり、この方法は、適切な条件下でCIITA活性を示すタンパク質に結合する能力を利用することにより、該インヒビターについてスクリーニングする工程を含む。
【0034】
CIITA活性を有するタンパク質のこのような使用について、またはこのような方法について、上記のインビトロ−またはインビボ−テストシステムが好ましい。好ましくは、インヒビターは、ATP結合部位にまたはCIITA活性を示すタンパク質のN末端酸性活性化ドメインに結合するが、それは、例えば、上記のようにCIITAタンパク質の断片を用いてインヒビター候補物をアッセイすることにより同定される。
【0035】
本発明のさらなる目的は、CIITA活性を示すタンパク質の活性を抑制し得るインヒビターを同定するための方法であり、この方法は、組換えCIITAタンパク質の三次元構造に基づいて適切なインヒビターを設計する工程を含む。好ましくは、上記テストシステムは、このような方法に用いられる。
【0036】
本発明のさらなる目的は、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物である。この薬学的組成物はまた、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリアおよび/または添加物を含む。用量は、被験体の状態および病気の症状に依存する。
【0037】
好ましくは、上記インヒビターを含む本発明の薬学的組成物は、MHCクラスII遺伝子の発現レベルの減少が望ましい病気の治療に用いられ得、あるいは、外来性の移植用の臓器の供給源としてまたは万能細胞移植用の細胞の供給源として、MHCクラスIIネガティブトランスジェニック動物の生成に用いられ得る。特に、これらは、特定の細胞表面でのHLAクラスII分子の異常なおよび過剰な発現が、自己免疫の病理学的過程の原因であると考えられる自己免疫疾患を含む。これらは、インスリン依存性糖尿病(IDD)、多発性硬化症(MS)、紅斑性エリテマトーデス(LE)、およびリウマチ様関節炎(RA)を含む。MHCクラスII遺伝子およびタンパク質の異常な発現は、これらの病気のある動物モデルで実証されている。さらに、これらのいくつかの自己免疫疾患の動物モデルは、MHCクラスII分子に対する抗体で、良好に治療されており、自己免疫疾患におけるMHCクラスII遺伝子の発現の抑制調節が望ましいことが、指摘されている。
【0038】
最後に、本発明は、MHCクラスII遺伝子の異常発現に関連する病気が、CIITA活性を有するタンパク質が異常量存在することにより、または他のファクターにより引き起こされるかどうかを決定するための、本発明のインヒビターを含む薬学的組成物に関する。例えば、MHCクラスII遺伝子の発現を低減または排除することにより特徴づけられる病気を有する被験体の細胞が、アッセイシステムで該インヒビターの存在下でポジティブな応答を示さない場合(例えば上記のように)、この病気がCIITAタンパク質の異常量の存在により引き起こされないが、例えば、MHCクラスII遺伝子自身でシス作用変異により引き起こされると結論し得る。このような結果に基づいて、理論を適切に応用し得る。
【実施例】
【0039】
本発明を以下の実施例により説明する:
実施例1
変異体RJ2.25の相補性による発現クローニング
クラスII調節変異体RJ2.25の遺伝的相補性による発現クローニングは、遺伝子欠陥の性質については偏りがなく、欠陥が単一遺伝子に関することを必要とする。選択マーカーとして内因性のHLAクラスII遺伝子の再発現を用いることに加えて、発明者らは、いくつかの異なる選択戦略を、別々にまたは組み合わせて可能にする、一連のcDNA発現ベクターを構築した。
【0040】
cDNA発現ベクターEBO-Sfiの構築
cDNA発現ベクターEBO-Sfi(図1)を以下のようにして構築した。EBO-pLPPのハイグロマイシンB耐性を付与する遺伝子hph[Spickofskyら、DNAProt.
Engin. Techn. 2 (1990)、14-18(R. F. Margolskee博士から供与)]を、pTG76の最適化hph遺伝子[Giordanoら、loc.cit.(W. T. McAllister博士により供与)]で置き換えた。SV40初期プロモーターの制御下のhph-76遺伝子を、PstI部分消化およびBamHI完全消化から得られる2,546bp断片としてpTG76から単離した(pTG76の1845位および4391位)。EBO-pLPPから、6,675bpのPstI-EcoRV(1859位、5765位)および615bpのBamHI-EcoRV断片(5141位、5756位)を単離し、そしてhph-76PstI-BamHI断片と連結した。得られたベクターにおいて、両方のSV40初期プロモーターのSfiI部位を、SfiI消化、3’オーバーハングの除去、および再連結により破壊した。これはプロモーター活性に影響しなかった。次に、EBO-pLPPポリリンカー(SacI〜KpnI、EBO-pLPPにおける1〜37位)を、SfiI-cDNAクローニングカセットで置き換えた。これについて、800bpの細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子を、オリゴヌクレオチドアダプターを介してSacIおよびKpnI部位に挿入した。得られたEBO-Sfiベクターにおいて、cDNAクローニングカセットを構成する配列は、以下の通りである:5'GAGCTCGGCCTCACTGGCC-CAT-遺伝子-GGCCAGTGAGGCCGGTACC3'(配列番号1、配列番号2)。
【0041】
ベクターDVおよびDRA-CDの構築
ベクターDV(図1C)を、EBO-Sfiの唯一のHindIII部位とBgIII部位との間のSV40初期プロモーターを制御するhph-76遺伝子を、HLADRAプロモーターの300bp断片(-270位〜+30位;転写開始部位に対して)で置き換えることにより生成した。
【0042】
ベクターDVでは、ハイグロマイシンB耐性遺伝子を、HLA-DRAプロモーターの制御下に配置する。これにより、HLAクラスII転写の再活性化について抗生物質選択を可能にする。
【0043】
DRA-CDの構築(図1B)については、300bpのHLA DRAプロモーター、1,742bpヒトCD4cDNA遺伝子[Maddonら、loc. cit.]、およびpTG76の134bpのSmaI-
BamHIポリアデニル化シグナルからなるリポーター遺伝子カセットを、EBO-SfiのHindIII部位に挿入した。cDNAクローニングについて、プラスミドDNAをSfiIで完全に消化し、そして5%〜20%のショ糖勾配でCAT-スタファー(stuffer)から分離した。
【0044】
cDNAライブラリーおよびプラスミドプールの構築
2本鎖cDNAを、Raji細胞から調製された20μgのポリアデニル化mRNAからSuperscript逆転写酵素(Gibco-BRL)を用いて合成した。cDNAをパリンドロームでないSfiI-SalIアダプター(5'pTGGCCGTCGACTAC[配列番号3]、5'pGTAGTCGACGGCCAGTG[配列番号4])に連結した。アダプター連結cDNAを5%〜20%ショ糖勾配でサイズ分画し、そして2.5kbより大きな挿入物を、プラスミドベクターDVおよびDRA-CDのそれぞれに連結した。連結反応物をEscherichiacoli DH5A株にエレクトロポレーションし、このサイズの画分について5×107組換体以上の可能性のあるライブラリー力価を生じた。SalIまたはSfiI切断後、cDNAの平均挿入物サイズは約3〜3.5kbであった。組換え体を、50μg/mlアンピシリンを含有するLuria-broth寒天を含む15cmペトリ皿につき5×104コロニーが出るように播いた。細胞をプレートを掻いて集め、5×105組換え体をプールし、そして-70℃でグリセロール貯蔵で一部保存し、残りの細菌をアルカリ溶解ミニプレップ法[Sambrookら、MolecularCloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)]によりプラスミドDNAを単離するために用いた。
【0045】
RJ2.25トランスフェクション
細胞を10%胎児ウシ血清、ペニシリン、ストレプトマイシン、およびグルタミンを添加したRPMI1640培地で37℃にて5%CO2中で培養した。
【0046】
RJ2.25をトランスフェクション実験前の限界希釈により再クローニングした。50×106のRJ2.25細胞を、20μlプラスミドDNAおよびキャリアとして800μlRPMI培地中の400μg E. coli tRNAを用いるエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。電気パルス放射後直ちに、1mlのFCSを各エレクトロポレーションキュベットに添加した。トランスフェクションの48時間後、ハイグロマイシンB(Calbiochem)を125μg/mlで添加した。この投与量を3日間隔の2工程で最終濃度250μg/mlまで増加した。細胞数は、1×105および1×106/mlの間で維持した。ハイグロマイシンB選択は2週間後に完了した。限界希釈実験により測定されたトランスフェクション効率は、ルーチンには、EBO-SfiおよびDRA-CDプラスミドを用いた25%の安定トランスフェクタントより良かった。Raji細胞にトランスフェクトした場合、DVプラスミドは、10〜15%の安定なトランスフェクタントを生じた;RJ2.25中へのトランスフェクション後、ハイグロマイシンB選択下で99.9%以上の細胞が死滅した。
【0047】
フローサイトメトリック分析
以下のHLAクラスII特異的モノルローナル抗体を用いた:2.06(DR、C. Epplenの贈与)、L243(DR)、B7/21(DP、N.Reinsmoenの贈与)、Tu22(DQ、A. Zieglerの贈与)。さらに、本願発明者らは、CD4特異性OKT4モノクローナル抗体(M. Hadamの贈与)を用いた。
【0048】
細胞(106)を、染色緩衝液(リン酸緩衝溶液、1%ウシ血清アルブミン、および2.5%熱不活性化ヒトAB血清)中で、モノクローナル抗体と4℃で30分間インキュベートした。細胞を洗浄し、そしてFITC標識されたウサギ抗マウスIgG(SEROTEC)とインキュベートした。洗浄後、10,000の生存細胞をFACScanフローサイトメーター(Becton-Dickinson)を用いて分析した。死滅細胞は、ヨウ化プロピジウムを用いてそれらを染色することにより、そしてそれらの前方および側面の光散乱特性による分析から排除した。
【0049】
細胞ソーティング
トランスフェクトしたRJ2.25細胞は、トランスフェクション後、3日から5日のソーティングの第一ラウンドを受けた。3×107と1.2×108との間の細胞をトランスフェクションおよびソーティング工程あたり使用した。細胞を、遠心分離により回収し、PBS/BSAで1回洗浄し、そして次いでPBS/BSA中の2.06またはOKT4腹水抗体を用いて、2.5%熱不活性化ヒトAB血清の存在下で30分間氷上で染色した。洗浄後、細胞をマグネットビーズ(Dynal,Norway)と結合した5〜10μlヤギ抗マウスと、2.5%熱不活性化ヤギ血清を添加したPBS/BSA中で30分間氷上でインキュベートした。ビーズに結合した細胞を、マグネットの助けで染色されなかった細胞から分離し、数回洗浄しそして増殖させた。ビーズは、数日間細胞に付着するが、成長を阻害せず、そして除去されなかった。細胞集団が十分な数(3〜5×107)まで成長した時に、さらなる選択のラウンドを実施した。抗体の濃度は、細胞の生存を最適化するためにビーズ選択後1日または2日間は、しばしば減少させるが、ハイグロマイシンB選択を、この全体のプロセスの間維持した。ソートされた集団を、2.06またはL243で染色することによりおよび各選択のラウンド後のFACS分析によりHLADR発現について分析した。ハイグロマイシンB選択に加えて、免疫選択の2つのラウンドの後、5つのDV-cDNAプールの中からの得られた3つのトランスフェクタントの培養物は、強いHLA-DR発現を示した(図2A、パネル1、2、3)。
【0050】
プラスミドレスキュー
プラスミドを、細菌ミニプレップ法によく似たアルカリ溶解により、ソートされた細胞集団から単離した。レスキューしたプラスミドプールを、E. coli DH10B株(Gibco-BRLの寛大な贈呈)へのエレクトロポレーションによりトランスフェクトした。数百のコロニーを寒天プレートからかきとり、増殖し、そしてプラスミドDNAを抽出した。これらのプラスミドプールの挿入物を、SfiI、SalI、SacIおよびKpnIを用いた切断により分析し、続いてゲル電気泳動を行った。ランダムに選んだ単一のコロニーからのプラスミドDNAを同様に分析し、そしてレスキューしたプールに優先的に見られるのと同じ型の挿入物を含むプラスミドを、RJ2.25細胞に再トランスフェクションするために用いた。
【0051】
これらの高度に選択された集団からレスキューされたプラスミドプールは、SalI、SfiI、SacIおよびKpnIで切断およびゲル電気泳動により、特徴的な挿入物由来のバンドの限定的なセットを示した。同じ4.5kbのcDNA挿入物は、レスキューしたプラスミドを用いて得られたランダムに選択した細菌のコロニーの50%以上に見られた。HLA-DR発現について試験した場合、ハイグロマイシンB耐性についてのみ選択したトランスフェクタントはネガティブであった。これらの細胞からレスキューしたプラスミドプールは、挿入物の大きさについてはランダムな分布を示した。
【0052】
最後に、ベクターDRA-CD中に調製されたcDNAライブラリーを用いて安定にトランスフェクトされたRJ2.25変異体細胞を、免疫選択により、HLA-DRの発現についておよびCD4発現について(2.06およびOKT4抗体ならびにマグネットビーズを用いる)の両方によりソートした。3つのラウンドのソーティングの後、選択したトランスフェクト集団は、上記のRJ2.25/DVプールよりも幾分弱いが、はっきりとHLA-DRまたはCD4発現を示した(図2A、パネル4)。HLA-DR発現単独についてソートされた細胞からレスキューしたプラスミドの約30%は、DVトランスフェクタント(上記参照)に見い出される挿入物と同じ優勢な4.5kb挿入物を示した。対照的に、CD4発現単独について選択されたトランスフェクタントからレスキューしたプラスミドはまた、異なる優勢なcDNA挿入物を示し、変異体細胞中の再トランスフェクションに際しては、HLAクラスII発現に有効でない(データを示さない)。これらのプラスミドは、まだそれほど分析されていない。
【0053】
実施例2
CIITA cDNAは、変異体細胞株で完全な野生型HLAクラスIIの表現型の発現を復帰する。
【0054】
HLA-DRを再発現する選択したトランスフェクタント中に、優勢に見い出される4.5kbのcDNA挿入物を有する個々のコロニー由来のプラスミド(上記参照)を単離し、そして次いで、クラスIIネガティブの変異体RJ2.25のB細胞に再トランスフェクトした。次いで、トランスフェクタントを、ハイグロマイシンB耐性のみについて選択した。HLAクラスII発現について任意の免疫選択をすることなく、安定なトランスフェクタントは、野生型レベルのHLA-DRを発現した(図2B、パネル2)。ハイグロマイシン耐性遺伝子が、SV40プロモーターによりまたはDRAプロモーターにより駆動されるにしろ、これらの相補実験で同一の結果を得た。調節変異体細胞株でHLA-DR遺伝子の発現を復帰し得ると見い出されたcDNAを「クラスIIトランスアクチベーター」の代わりにCIITAと名付けた。
【0055】
例外が記載されているが、異なるHLAクラスII遺伝子の発現は、一般に全体様式(globalfashion)で調節される[Machら、Cold SpringHarb. Symp.Quant. Biol. 51 (1986)、67-74]。CIITA cDNAで安定にトランスフェクトされたRJ2.25変異体細胞の細胞表面の分析は、野生型レベルのHLA-DR分子(復帰細胞の初期選択に使用されるクラスII分子)の発現のみならず、HLA-DPおよびHLA-DQアイソタイプの再発現を示した(図2B、パネル2−4)。従って、RJ2.25中で作用するCIITAトランスアクチベーターは、すべてのHLA-DR、-DQおよび-DPのaおよびb鎖遺伝子の全ての発現を修正し、そして変異体細胞株で正常かつ完全なHLAクラスIIポジティブ表現型を復帰するに十分である。
【0056】
実施例3
CIITA cDNAおよびタンパク質の配列
2本鎖DNAを、主としてPharmaciaのT7 G/A-deazaシークエンシングキットを用いるがBioradのBstシークエンシングキットもまた用いて、ジデオキシ鎖ターミネーション法により塩基配列を決定した。cDNAおよび翻訳されたタンパク質配列は、EMBL(リリース33)、GenBank(リリース74)、SWISS-PROT(リリース24)、およびdbESTデータベースにある配列に対する相同性を試べた。配列の分析をPC/Geneリリース6.7(Intelligenetics)、BLASTサーバー、およびPROSITE辞書を用いて行った。
【0057】
CIITA cDNAのヌクレオチドおよび推定アミノ酸配列を図3〜9に示す。いくつかの独立したソーティング実験から得たCIITA cDNAクローンの5'末端は、配列が決定され、そしてそれらの開始点が図中で示されている。クローンpDVP10-1の完全な塩基配列が決定された。それは、長さが4,543bpであり、そして1130アミノ酸の推定タンパク質をコードし、ヌクレオチド116位に開始コドンを有する3390bpの読みとり枠を含む。同じ読み枠で20〜22位に停止コドンがある。この最初の読み枠が合ったATGコドン(116位)が翻訳開始部位にとって最も重要な基準を満たすが、塩基対188位(アミノ酸25位)の第2番目の読み枠があったATGコドンは、完全な「コザックボックス」の情報内にあり、そして1106アミノ酸のタンパク質になる開始コドンとしてまた働き得る。1130アミノ酸のタンパク質は推定分子量123.5kDを有し、これはインビトロでCIITAcDNAから翻訳されたタンパク質について観察された見かけ分子量135〜140kD(示していない)によく相当する。5'のUT領域は115bpの長さであり、そして3'のUT領域は1kbの長さである。
【0058】
CIITA cDNAの3'の非翻訳領域のAlu繰り返し(塩基対3890から4190)を除いて、入手出来るデータベースにあるヌクレオチドまたはタンパク質配列のいずれにも有意な相同性は検出されなかった。推定CIITAタンパク質配列中の既知または可能な機能的要素(モチーフ)についての調査は、アミノ酸420位から427位に潜在的なATP/GTP結合部位を明らかにした(図3〜9)。タンパク質のN末端部分は、30%のグルタミン酸/アスパラギン酸を含む50から137残基にわたる配列をともなう、酸性残基が豊富な領域を示し(アミノ酸30から160、図3〜9参照)。162から322の残基は、プロリン、セリンおよびトレオニンが豊富である。この領域の中で、3つの範囲(残基163〜195、209〜237および260〜322)は、20%から23%のプロリンおよび17%から28%のセリン/トレオニンを示す。従って、CIITAは新規な遺伝子であり、その機能はBリンパ球におけるMHCクラスII遺伝子発現に必須である。
【0059】
実施例4
変異体B細胞株におけるCIITA遺伝子欠陥の同定
HLAクラスIIネガティブ変異体RJ2.25は、欠失および染色体再配列を起こすことが知られている低線量の放射線照射で生成したので、本願発明者らはサザンブロットハイブリダイゼーションにより、RJ2.25中のCIITA遺伝子の構成を分析した。
【0060】
高分子量のDNAを、培養細胞から抽出した[Millerら、Nucl. Acids Res. 16
(1988)、1215]。制限エンドヌクレアーゼ切断したDNAを、0.7%アガロース/TBEゲルで分離し、そして正に帯電するナイロンメンブレン(Boehringer-Mannheim)に毛細管で移動した。サザンハイブリダイゼーションを、Quick-hybridisation Mix(Stratagene)にある32P標識したcDNA断片のランダム九量体を用いて、製造社の説明書に従って、競争剤として音波処理した一本鎖ヒト胎盤DNAの存在下で行った。ブロットを0.1%SDSを含む2×SSC中40℃で2回洗浄し、続いて0.1%SDSを含む0.1×SSC中65℃で2回洗浄し、その後、増強スクリーンを用いて-70℃でX-ARフィルムに感光した。
【0061】
親B細胞株RajiからのHindIII切断したゲノムDNAは、完全長のCIITA cDNAプローブとハイブリダイズした後、3本のポジティブのバンド、およびCIITAcDNAの3'の非翻訳領域にある先に記載したAlu繰り返し配列(上記を参照のこと)による高バックグランドシグナルを示した。従って、ハイブリダイゼーションは、CIITAcDNAの明確な断片を用いて行った。図10Bに示すように、CIITAcDNAの1.8kb中央のHindIII断片は、親B細胞株RajiのゲノムDNA内の3.8kb HindIII断片にハイブリダイズする。このバンドは、ブロットを長く感光した後でさえ、変異体細胞株RJ2.25からのDNAにおいては完全に存在しておらず(図10B、プローブb)、両方の染色体上にCIITA遺伝子のこの中央領域の欠失示す。CIITAcDNAの5'および3'のプローブに、それぞれハイブリダイズするゲノムHindIII断片は、両方に存在し、変異体細胞株からのDNAにおいて長さは、変化しない(図10B,プローブaおよびc)。しかし、これら2本のバンドは、野生型RajiDNAと比較して、RJ2.25ではシグナル強度が半分に過ぎず、変異体細胞ではこれら各2本の断片の1コピーのみの存在を示唆している。
【0062】
最後に、RNAse保護によるCIITA mRNAの分析は、サザンブロットで証明された完全な欠失から予想されるとおり、CIITA cDNAの欠失した中央部分内に位置するプローブとではシグナルの不在を示した(図11A)。興味深いことには、CIITAmRNAの3'末端に対応するプローブは保護され(図11B)、変異した遺伝子内に観察される内部欠失を横切るリードスルーを示唆する。
【0063】
これらの実験は、調製変異体RJ2.25でインタクトなCIITA遺伝子の欠損についての直接的な証拠を提供し、そして変異株をつくるために用いた放射線照射は、ある場合には、CIITAアレルの完全な損失に至り、その一方他の場合には内部欠失を誘導することを示す。
【0064】
実施例5
他のHLAクラスII調製変異体はまた、CIITAにより復帰する。
【0065】
HLAクラスIIネガティブ調節変異体Bリンパ芽球細胞株は、RJ2.25とは独立に、そして異なった変異誘発のプロトコルを含む異なった手法により生じた。本願発明者らは、RJ2.25(図12、パネル2)におけるようにCIITAcDNAがHLA-DR発現を復帰し得るかどうか探究するために2つの別のそのような細胞株を試験した。変異体RM3[Calmanら、J. Immunol. 139(1987)、2489-2495]は、化学的変異誘発により生成され、そしてRJ2.25のようにHLAクラスII調節においてで劣性欠陥に対応することを示した。クラスIIネガティブRM3変異体BをCIITAcDNAでトランスフェクトした場合、HLA-DRの正常な発現を、図12のパネル3に示すように復元した。RJ2.25変異体の場合におけるように、HLA-DQおよび-DP発現は同様に復元された(データは示さない)。発明者らはまた、同じRaji親B細胞株から、EMSを用いる変異誘発に続いて、HLAクラスIIネガティブ変異体を生成した。1つのこのような変異体(REM-34)を、CIITAcDNAでトランスフェクトし、そしてHLA-DR発現について分析した。2つの前の場合のように、CIITAは、HLAクラスII分子の発現を復元した(図12、パネル4)。
【0066】
CIITAの分化(differential)発現
MHCクラスII遺伝子は限られた数の細胞型においてのみ発現する。しかし、現在までのところ、MHCクラスII発現の制御に含まれるであろうと推測された因子は、MHCクラスII遺伝子の制御と関係する発現のパターンを示さなかった[Glimcherら、loc.cit.]。CIITAに関するこの疑問と取り組むために、RNAse保護実験を、いくつかのMHCクラスIIネガティブおよびポジティブ細胞株を用いて行った(図11C)。
【0067】
2つのCIITA cDNA断片を、RNAse保護プローブとして調製した。内部プローブは、225bpのCIITA mRNAを保護するヌクレオチド2049(SfiI)から1824(NcoI)をカバーしている。3'末端プローブは、CIITAのヌクレオチド4520から4340(HinfI)にわたる180bpの断片に相補的である。コントロールとして、TBPmRNAの275bp断片(塩基対1228から953)の断片を調製した。線状化した構築物から、32P-UTP標識リボプローブを、44bp、44bp、および60bpの非相補性のベクターにコードされるオーバーハングを残してインビトロ転写により生成した。10μgの全RNAを、酵母RNAを用いて50μgにし、80%ホルムアミド中で、500,000cpmのプローブと50℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
【0068】
RNAseAおよびT1[Sambrookら、loc. cit.]での切断後、保護断片を6%ポリアクリルアミド、8M尿素ゲルで電気泳動により分離し、そしてオートラジオグラフィーにより可視化した。いくつかのEBV形質転換されたB細胞株、およびクラスIIポジティブの結腸癌腫細胞株CO115は、CIITAmRNAの発現を示した。対照的に、3つのHLAクラスIIネガティブ細胞株、2102Ep、Andrews MOLT-4、およびSK-N-ASは、CIITAmRNA発現のシグナルを示さなかった(図11C)。この初期研究から、発明者らは、CIITA発現は遍在するのではなく、MHCクラスII発現と関連するように見えるパターンでそれ自身が調節されていると結論づけた。
【0069】
実施例6
CIITA cDNAは、遺伝性MHCクラスIIの欠陥を有する患者からの細胞においてMHCクラスII分子の発現を復元し得る。
【0070】
遺伝性MHCクラスIIの欠陥は、MHCクラスII遺伝子の発現を全体的に欠く主要な免疫欠損の形態である。この病気にかかっている患者は、しばしば多重感染により死亡する。CIITA遺伝子は、これらの患者のいくつかの例で遺伝欠陥を復帰することを見い出した(図13参照)。MHCクラスII欠陥を有する患者からのBリンパ球を、すべてのMHCクラスII遺伝子の再発現を生じる、適切なベクター中にあるCIITAcDNAでトランスフェクトし得る。クローン化遺伝子による生細胞中における遺伝子欠陥の復帰は、この病気の遺伝子治療への道を開く。
【0071】
実施例7
CIITA cDNAは、MHCクラスIIネガティブ細胞の異なるタイプにおいてMHCクラス分子の発現を誘導し得る。
【0072】
身体の大部分の細胞は、通常、MHCクラスIIネガティブである。癌細胞に対するワクチン化または免疫応答の誘導のような多くの状況では、通常はクラスIIネガティブの細胞をより免疫原性にするために、これらの細胞内でMHCクラスII遺伝子の発現を誘導または助長することが望まれる。図14に示したデータは、このことが実際に達成され得ることを示した。3つの異なるMHCクラスIIネガティブヒト細胞株を、CIITAcDNAでトランスフェクトし、CIITA cDNAは、高レベルのMHCクラスII表面分子の発現を誘導するに十分であった。CIITA cDNAのこの効果は、癌においてワクチン化および遺伝子治療について新しい戦略の明瞭に示唆する。
【0073】
実施例8
トランスアクチベーター遺伝子CIITAにより誘導されるMHCクラスII分子は、ペプチド結合およびペプチド特異的なTリンパ球活性化において非常に有効である。
【0074】
MHCクラスII分子の発現がトランスアクチベーター遺伝子CIITA(CIITA cDNAとして)により誘導された細胞を、外因性のペプチドに結合するそれらの能力およびT細胞クローンにこのようなペプチドを呈示するそれらの能力について試験した。これらのCIITAトランスフェクタントを、MHCクラスII発現がインターフェロンガンマにより誘導された同じ細胞と比較した。2つの型の細胞は、それらの表面で、同様なレベルでMHCクラスII分子を発現した。この実験は、適切なHLA-DR特異性の、および用いた特定の破傷風トキソイドペプチドに対して特異性を示すT細胞クローンを用いて行った。これらの2つの型のMHCクラスIIポジティブ細胞によるペプチド特異的なT細胞活性化を、刺激指標として表したH3-チミジン取り込みにより測定した。この特別な実験で、黒腫細胞を抗原存在細胞として用いた。
【0075】
図15に見られ得るように、MHCクラスIIネガティブの、トランスフェクトされていないコントロール細胞は、Tリンパ球を活性化しなかった。インターフェロンガンマで刺激されたMHCクラスIIポジティブ細胞はまた、高ペプチド濃度でさえ、顕著なT細胞活性化を誘導しなかった。その一方、CIITA cDNAでトランスフェクトされた細胞は、非常に有効な抗原提示細胞およびペプチド特異的T細胞アクチベーターとして挙動する。これらの機能的な結果と一致して、これら2つの型のMHCクラスIIポジティブ細胞のペプチド結合活性は劇的に異なり、インターフェロン活性化細胞では低く、そしてCIITAトランスフェクタントでは高い。従って、CIITAは、MHCクラスII分子の発現を誘導し、ペプチドを結合し、そしてTリンパ球にペプチドを提示するそれらの非常に有効な能力において通常ではないが、これらのリンパ球の活性化に至る。従って、CIITAは、非常に高いペプチド特異的な免疫原性を示す細胞を生成するために用い得る。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】EBO-Sfiおよびこれに由来するcDNA発現ベクターDRA-CDおよびDVの制限マップである。 (a)ベクターEBO-SfiはプラスミドpTG76由来のハイグロマイシン耐性遺伝子(hygr-76)を含む[Giordanoら、Gene 88 (1990)、285-288]。cDNAクローニングカセットは、細菌性クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子により分離される2つの反復SfiI部位からなる(SfiI-CAT遺伝子-SfiI)。クローン化cDNAはシミアンウイルス40初期(SV40e)プロモーターおよびポリアデニル化シグナル(Poly-A)により誘導される。白四角は、EBV複製起点(ORIP)、シミアンウイルス40後期プロモーター(SV40l)の制御下のEBV核抗原遺伝子1(EBNA-1)、および細菌性アンピシリン耐性遺伝子(amp)を示す。 (b)ベクターDRA-CDは、EBO-Sfiから生成されたが、それは300bpのHLA DRAプロモーターの制御下のCD4 cDNA[Maddonら、Cell42 (1965)、93-104]および130bpのポリアデニル化シグナルをEBO-Sfiの唯一のHindIII部位へ挿入して生成された。(c)ベクターDVの生成については、hygr-76遺伝子由来のSV40初期プロモーターが、唯一のHindIIIおよびBglII部位を介して、300bpのHLADRAプロモーターに置換された。
【図2】RJ2.25細胞でのHLAクラスII発現のクローニングおよび修正によるCIITAのcDNAの単離。(a)HLA-DRポジティブ細胞の選択を示す。DV-プールのDVP6、-7、および-10(パネル1〜3)および1つのDRA-CDプール(DRA-CDP1、パネル4)由来のプラスミドDNAでトランスフェクトしたRJ2.25細胞を、ハイグロマイシンB耐性について選択し、そしてHLA DR特異抗体2.06およびマグネットビーズで2回(DVトランスフェクタント)または3回(DRA-CDトランスフェクタント)選別した。選別した群を、HLA DR抗体L243で染色し、そしてFACSにより分析した(影で示すプロフィル)。ネガティブおよびポジティブコントロールとして、RJ2.25およびRaji細胞を同様に分析した(白抜きのプロフィル)。(b)CIITA cDNAは3つのすべてのHLAクラスIIイソタイプの発現を回復する。RJ2.25およびRaji細胞(パネル1、3、5)またはDRA-CDおよびDRA-CD/CIITAでトランスフェクトしたRJ2.25細胞(パネル2、4、6の白抜きおよび影のプロフィル)を、HLADR(L243;パネル1、2)、-DP(B7/21;パネル3、4)、および-DQ(Tu22;パネル5、6)に特異的な抗体で染色し、そしてFACS(蛍光活性化細胞選別器)により分析した。
【図3】CIITAcDNAのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列を示す。cDNAクローンpDVP10-1の完全ヌクレオチド配列およびCIITAの推定アミノ酸配列を示す。グルタミン酸/アスパラギン酸に富むN末端領域(「acidic」で示す)およびプロリン/セリン/スレオニンに富む伸長(「I、II、III」で示す)を上線で示す。ATP/GTP結合カセットを二重下線で示す。プロテインキナーゼCおよびカゼインキナーゼII部位(13および15)と思われる部位が多数配列中に存在するが、図には示していない。
【図4】図3の続きである。
【図5】図4の続きである。
【図6】図5の続きである。
【図7】図6の続きである。
【図8】図7の続きである。
【図9】図8の続きである。
【図10】変異細胞株RJ2.25のCIITA遺伝子の欠失の証拠。(a)3つの内部HindIII部位(H)を有するCIITA cDNAの概略図である。サザーンハイブリダイゼーションプローブとして用いたCIITA cDNAの3つのフララグメントを黒塗りのバーで示す。(b)10μgのゲノムDNAをHindIIIで消化し、0.7%アガロースゲルで分画し、変性し、転写し、そしてCIITAプローブまたはTBPプローブとハイブリダイズさせた。Raji(レーン1)およびRJ2.25(レーン2)由来のDNAを用いて2つの同一のフィルターを調製した。第1のフィルターをCIITAの5’末端由来の1.1kBのHindIIIプローブ(プローブA)とハイブリダイズさせた。ストリッピングした後、同じフィルターをプローブB(CIITAcDNAの中央の1.8kbのHindIII断片)と再ハイブリダイズさせた。第2のフィルターを、まず、CIITAの4152〜4520ヌクレオチドの範囲のプローブCとハイブリダイズさせた。次いで、両方のレーンのDNA量が等しいことを確認するために、このフィルターをストリップし、ヒトTBPcDNAの3’末端由来のプローブとハイブリダイズさせた[Kaoら、Science 248 (1990)、1646-1650]。CIITA特異的なバンドは、プローブA、B、およびCについてそれぞれ13kb、3.8kb、および14kbの長さであった。
【図11】CIITA発現のRNAse保護分析を示す。10μgの全RNAを80%ホルムアミド中で500,000cpmのプローブにハイブリダイズさせた。保護されたプローブを変性6%ポリアクリルアミドゲルで解離させた。(a、b)Raji(レーン2)およびRJ2.25(レーン3)の全RNAを、それぞれ、CIITAのヌクレオチド2049〜1824(a)およびヌクレオチド4520〜4340(b)に相補的なリボプローブにハイブリダイズさせた。未消化のプローブおよび酵母RNAコントロールをレーン1および4に示す。(c)種々の細胞株由来の全RNAを(a)で用いたのと同じ中央のCIITAプローブにハイブリダイズさせた。1、酵母コントロール;2、CO115結腸癌腫;3、4、Mann、QBLB-LCL;5、2102Ep奇形癌腫;6、MOLT4 Tリンパ腫;7、SK-N-AS神経芽細胞腫;8、未消化プローブ。RNAの量および質を、TBP特異的プローブにハイブリダイゼーションすることにより制御した(図示せず)。
【図12】CIITAcDNAが3つの異なるHLAクラスIIネガティブ変異細胞株を修正することを示す。RJ2.25(パネル2)、RM3(パネル3)、またはREM-34(パネル4)細胞を、EBO-Sfiにクローン化したCIITA cDNA(黒いプロフィル)で、またはEBO-Sfi単独(白いプロフィル)でトランスフェクトした。L243抗体を用いるFACSによる表面HLA DR発現の分析を、ハイグロマイシンB選択の2週間後(RJ2.25、RM3)またはたった5日後(REM-34)に行った。パネル1はネガティブコントロール(RJ2.25;EBO-Sfiトランスフェクトした)およびポジティブコントロール(Raji)を示す。
【図13】CIITA cDNAが、HLAクラスII欠失被験体由来のBリンパ球のHLAクラスII発現を十分に修正することを示す。被験体BLS1由来のBリンパ球を、CIITA cDNAでトランスフェクトした。ハイグロマイシンでの選択の後、細胞をHLA-DR、-DP、および-DQの表面発現について分析した。
【図14】CIITA遺伝子がクラスIIネガティブ細胞においてMHCクラスII遺伝子の発現を誘導することを示す。3つのタイプのMHCクラスIIネガティブ細胞を、CIITA cDNAでトランスフェクトした。ハイグロマイシンでの選択の後、細胞を、HLA-DR分子の表面発現について分析した。A.メラノーマ細胞株。B.線維芽細胞株、143B。C.HeLa細胞。
【図15】CIITAトランスフェクタントおよびAPO'sとして用いたインターフェロン刺激細胞を用いるヒトT細胞クローンの活性化を示す。3つのタイプの細胞をAPC'Sとしてテストした:非トランスフェクト化メラノーマ細胞株、MHCクラスIIネガティブ(黒丸);200μg/mlのインターフェロンγへの曝露の48時間後の同じ細胞株、MHCクラスIIポジティブ(黒四角);CIITA cDNAで以前にトランスフェクトした同じ細胞株、MHCクラスIIポジティブ(黒三角)。これらの細胞を、種々の濃度のp4、破傷風トキソイドペプチドで、図に示した濃度で処理し、UV光で固定化し、そしてそのペプチドに特異的な2つの異なるヒトT細胞クローンT-50およびT-87とともにインキュベートした。T細胞活性化の範囲をH3-チミジンの取り込みによる標準アッセイで測定し、そして「刺激インデックス」として表した。
【0077】
(配列表)
【0078】
【数1−1】
【0079】
【数1−2】
【0080】
【数1−3】
【0081】
【数1−4】
【0082】
【数1−5】
【0083】
【数1−6】
【0084】
【数1−7】
【0085】
【数1−8】
【0086】
【数1−9】
【0087】
【数1−10】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
実施例に記載の組成物。
【請求項1】
実施例に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−298923(P2006−298923A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−122727(P2006−122727)
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【分割の表示】特願平7−219341の分割
【原出願日】平成7年8月28日(1995.8.28)
【出願人】(595123807)
【氏名又は名称原語表記】Bernard MACH
【住所又は居所原語表記】45 Route de Pregny,1292 Chambesy,Geneva,Switzerland
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月26日(2006.4.26)
【分割の表示】特願平7−219341の分割
【原出願日】平成7年8月28日(1995.8.28)
【出願人】(595123807)
【氏名又は名称原語表記】Bernard MACH
【住所又は居所原語表記】45 Route de Pregny,1292 Chambesy,Geneva,Switzerland
【Fターム(参考)】
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