説明

CMV/R核酸コンストラクトを含むAIDSに対するワクチン

本開示は、ヒト免疫不全ウイルスに対する免疫応答、例えば予防的免疫応答を誘導するための組成物を提供する。組成物は、複数の分岐群又は系統のHIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトを含む。被験体に組成物を投与することにより免疫応答を誘導する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本出願は、ワクチンの技術分野に関する。より詳細には、本出願は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の予防のためのマルチプラスミドワクチンに関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2004年7月16日に出願された米国特許仮出願第60/588,378号に対する優先権及びその利益を、並びに、共に係属中の2004年9月15日に出願されたPCT出願PCT/US2004/030284及び2005年4月12日に出願されたPCT/US2005/12291に対する優先権を主張する。これらのそれぞれの出願の開示は、その全体が本明細書に援用される。
【0003】
[政府支援の承認]
本開示の態様は、政府支援によりなされた。政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
4000万人を超える人々が、世界中でHIV−1に感染しており、毎日14,000人が新たに感染していると見積もられている。AIDSの最初の症例が1981年に認定されて以来、2500万人を超える人々がHIV/AIDSで死亡している(CDC, MMWR Morb. Mortal Wkly. Rep., 52: 1145-1148, 2003;UNAIDS, 2003 世界規模のAIDS拡大の要旨に関する報告, 2004)。世界的に重要性を有するHIV−1ワクチンの開発は、HIV/AIDS世界的流行病を制御するために重要である。
【0005】
転写における誤差の割合が高いこと及び組換えの頻度が高いことが組合わさることにより、HIV−1系統間の膨大な遺伝的多様性を生じ、ウイルス抗原の選択を困難にする。HIV遺伝子変異のその他の潜在的影響は、各個体内における突然変異の割合が高いことであり、これはウイルスがエピトープ特異的免疫応答から逃れる機会を作り、T細胞ベースのワクチンアプローチを非常に困難なものにする(Altfield et al., J. Virol., 77: 12764-12772, 2002;Bhardwaj et al., Nat. Med., 9: 13-14, 2003;Brander et al., Curr. Opin. Immunol., 11: 451-459, 1999;Letvin et al., Nat. Med., 9: 861-866, 2003)。HIV−1に対する有効な免疫を誘導するための、ワクチンを利用した種々の戦略が探究されてきた。それらの中で、HIVタンパク質抗原の遺伝子をコードするプラスミドDNAによる免疫化は、有望なワクチンアプローチである(Mascola et al., Curr. Opin. Immunol., 13: 489-494, 2001;Nabel, G.J., Nature, 410: 1002-1007, 2001)。遺伝子ベースの免疫化は、宿主細胞におけるウイルス抗原の合成及び発現、並びに細胞質中における生理学的翻訳後プロセシング及びフォールディングを促進する。従ってDNAによる免疫化は、動物モデルにおいて種々の免疫原を用いたCD4+及びCD8+Tリンパ球の両方の応答を誘導する(Graham, B.S., Annu. Rev. Med., 53: 207-221, 2002;Rollman et al., Gene Ther., 11: 1146-1154, 2004;Barouch et al., Science, 290: 486-492, 2000;Subbramanian et al., J. Virol., 77: 10113-10118, 2003;Mascola et al., J. Virol., 79: 771-779, 2005)。
【0006】
DNAプラスミドワクチンベクターによるウイルス抗原のデリバリーは、他のベクターデリバリーシステムを上回る潜在的利点、特に抗ベクター免疫の欠如を有する。しかしながら、マウス及びヒト以外の霊長類におけるワクチン誘導性防御に関する例が多数あるにもかかわらず、DNA免疫化は、ヒトにおいて限られた免疫原性しか示さなかった(Roll
man et al., Gene Ther., 11: 1146-1154, 2004;Donnelly et al., Nat. Med., 1: 583-587, 1995)。抗原処置されていないヒトにおいて免疫原性であることが実証された最初のDNAワクチンは、Biojector(登録商標)によりデリバリーされる熱帯熱マラリア原虫由来のスポロゾイト周囲抗原を発現するコンストラクトであった。この研究では、CD8+CTL応答は、エフェクターをin vitroで展開した後にのみ検出された(Wang et al., Science, 282: 476-480, 1998)。別の報告には、異なる無針注射装置であるPowderject(商標)によりデリバリーされるB型肝炎表面抗原を発現するDNAプラスミド、誘導抗体、並びに抗原処置されていないヒトにおけるワクチン特異的T細胞応答を記載されている(Roy et al., Vaccine, 19: 764-778, 2000)。HIV感染及びHIV非感染被験体において試験されたHIV−1Env及びRevタンパク質を発現するDNAプラスミドワクチン(MacGregor et al., J. Infect. Dis., 178: 92-100, 1998)は有害事象を伴わず、散在的なリンパ球増殖及び抗体応答のみが観察された(MacGregor et al., J. Infect. Dis., 181: 406, 2000;MacGregor et al., AIDS, 16: 2137-2143, 2002)。
【発明の開示】
【0007】
本開示は、ヒト免疫不全ウイルス1の複数の分岐群及び系統の重要な免疫原性エピトープに相当するHIV抗原の強い発現により、HIVに対して広範囲の免疫を誘導するワクチン組成物を記載する。本発明の上記の及びその他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら進行する以下の詳細な説明から、より明らかになる。
【0008】
[発明の概要]
本開示は、HIV抗原をコードする核酸コンストラクトに関する。これらの核酸コンストラクトは、複数の変異型HIVに対する免疫応答を誘導することが可能であり、治療的(例えば予防的)投与に適している。免疫原性組成物との関連において、複数の核酸が組合され、これらの各々はHIV抗原ポリペプチド、例えば異なるHIV抗原ポリペプチド(例えばGag、Pol及びNef)をコードする。単一の免疫原性組成物としては、複数の分岐群又は系統のHIVの抗原ポリペプチド、例えば複数の分岐群又は系統のGag、Pol又はNefをコードする核酸コンストラクト、或いはGag、Pol及びNefに関する複数の分岐群又は系統が挙げられる。このように、被験体に投与されると、組成物は、ヒト集団中で流行している複数の分岐群又は系統に対する免疫応答を誘導する。
【0009】
組成物の使用方法も記載される。このような方法は、例えば複数の分岐群又は系統のHIVに対する免疫応答を誘導するために、開示された核酸コンストラクトを含む組成物を被験体に投与することを含む。組成物は、単独で、又は更なる免疫原性組成物と組合せて投与することができる。
【0010】
本発明の上記及びその他の目的、特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら進行する以下の詳細な説明から、より明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[詳細な説明]
本発明の開示は、HIV−1の予防的ワクチンとして用いるのに適した核酸コンストラクトに関する。本明細書中に開示される組成物の具体例は、これまでのHIVワクチン候補と比べて2つの際立った利点を提供する。このような組成物は発現及び免疫原性の増大を示し、複数のHIVの系統に対する免疫応答を誘導することができる。ワクチンは異なる核酸コンストラクトの混合物を含み、ヒトの感染において単離される複数のHIV−1サブタイプに対する広範な免疫応答を誘導するためにGag、Pol、Nef及びEnv
HIV−1タンパク質を産生するよう設計される。最も典型的には、核酸はプラスミドベクター中に組み入れられる。マルチプラスミドワクチンの臨床的実施形態の例は、VRC−HIVDNA016−00−VPと呼ばれる。
【0012】
本明細書中に開示される例示的なワクチンの開発の原理は、融合タンパク質免疫原を産生する1つのコンストラクトを有するよりむしろ、これまでに開発されたHIVワクチンの場合と同様に、別個の核酸コンストラクト、例えばプラスミドにgag、pol及びnef遺伝子を分離することである。例示的な実施形態では、核酸コンストラクトは、in
vivoにおける免疫原性タンパク質産物の産生を増大するよう改変された。改変としては、1)これらのプラスミドに組み込まれるプロモーター中の改変、及び/又は2)gag遺伝子への68番アミノ酸の付加(例えばVRC4401(Gagタンパク質のみ)プラスミドにおける)が挙げられる。従来のHIVワクチンプラスミドが、抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の転写を調節するためにサイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーターを最も一般的に利用したのに対し、本明細書中に開示される核酸コンストラクトにおいては、免疫原性HIVポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列が、機能できる状態でCMV/Rと呼ばれるプロモーターと連結される。CMV/Rプロモーターは、公開済みの米国特許出願第20040259825号に記載されており、この開示内容は参照により全体が本明細書中に援用される。
【0013】
複数の分岐群及び/又は系統に対応する抗原が含まれる限り、本明細書中に開示される核酸コンストラクトは、本質的に任意のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を組み込むことができる。組成物は、VRC−HIVDNA016−00−VPワクチン組成物と総称される核酸コンストラクトの特定の例に関して詳細に記載される。この例示的な実施形態は、図1に示されている。
【0014】
ワクチン組成物VRC−HIVDNA016−00−VPとしては、6つの閉環プラスミドDNA高分子、VRC4401、VRC4409、VRC4404、VRC5736、VRC5737及びVRC5738が挙げられ、これらは例えば等濃度(mg/ml)で連結される。VRC4401は、ウイルスRNAをキャプシドで包み、高度に保存されたドメインを有する分岐群B HIV−1Gag構造コアタンパク質をコードする。VRC4409は、同様に高度に保存された分岐群Bポリメラーゼ(Pol)をコードし、VRC4404は、自然感染において活発なT細胞応答が備えられている付属タンパク質である分岐群B Nefをコードする。HIV−1 Polを発現するDNAプラスミドは、プロテアーゼ、逆転写酵素及びインテグラーゼ活性に影響を及ぼす領域に変化を組込むことにより潜在的毒性を低減するよう改変された。HIV−1 nef遺伝子のミリストイル化部位中の2つのアミノ酸は、Nefタンパク質によるMHCクラスI及びCD4+の発現減少を阻害するために除かれた。Gagのアミノ酸配列に対しては改変はなされなかった。他の3つのプラスミドは、HIV−1の3つの系統:VRC5736(分岐群A)、VRC5737(分岐群B)及びVRC5738(分岐群C)から、改変型、切断型エンベロープ糖タンパク質(gp145)の合成バージョンを発現する。EnvをコードするDNAプラスミドを作製するために用いられる配列は、3つのHIV−1 CCR5−親和性系統のウイルスに由来する。これらの遺伝子は、免疫原性を改善するよう改変されており、これはマウス及びサルで実証されている。ワクチンは、広範囲のHIV−1系統に対する免疫応答を誘導できるように設計される。
【0015】
特定の例では、Gag、Pol、Nef及びEnvの相補的DNA(cDNA)を含むプラスミドを用いて、CMV/Rプロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化配列を用いたプラスミドDNA発現ベクターへ挿入する、対応するインサートをサブクローニングした。HIV−1遺伝子を発現するプラスミドはすべて、ヒトにおいて典型的に見出されるコドンを用いたタンパク質発現を制限するウイルスRNA構造を破壊するように設計された配列を用いて合成的に作製し、それにより遺伝子発現が増大した。CMV最初期領域1エンハンサーの翻訳エンハンサー領域は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)の長末端反復(LTR)の5’非翻訳HTLV−1 R−U5領域により置換さ
れて、遺伝子発現が更に最適化される。
【0016】
DNAプラスミドは典型的には、カナマイシン選択培地を含有する細菌細胞培養物中で産生される。このような場合はすべて、細菌細胞の増殖は、プラスミドDNAの一部分によりコードされるカナマイシン耐性タンパク質の細胞発現によっている。プラスミドを有する細菌細胞の増殖後、プラスミドDNAは細胞構成成分から精製される。特定の例では、Gagプラスミド(VRC4401)は5886ヌクレオチド対長であり、およそ3.9MDaの分子量を有する;Polプラスミド(VRC4409)は7344ヌクレオチド対長であり、およそ4.8MDaの分子量を有する;Nefプラスミド(VRC4404)は5039ヌクレオチド対長であり、およそ3.3MDaの分子量を有する;分岐群A、B及びC Envプラスミド(VRC5736、5737及び5738)はそれぞれ6305、6338及び6298ヌクレオチド長であり、およそ4.2MDaの分子量を有する。
【0017】
このように本開示の一態様は、HIVに対する免疫応答を誘導することができる組成物に関する。例えば組成物は、単独又は少なくとも1つの更なる免疫原性組成物と組合せて投与される場合、HIVに対する防御的免疫応答を誘導することができる。抗原への曝露後に免疫応答を示す能力は、複雑な細胞性及び体液性プロセスの一機能であるということ、そして異なる被験体が免疫学的刺激に応答する種々の能力を有するということが、当業者により理解されよう。従って本明細書中に開示される組成物は、免疫正常者、即ち免疫学的刺激と特異的に相互作用する抗体の産生、及び/又は免疫学的刺激と特異的に相互作用する受容体を有する機能性T細胞(CD4+及び/又はCD8+T細胞)の産生などの実質的に正常な免疫応答を示すことにより、免疫学的刺激に生理学的に応答することができる被験体における免疫応答を誘導することができる。HIV感染特有の影響は、従来の免疫正常者を免疫不全にさせることであると更に理解される。したがって下記の治療方法に関して、HIVへの曝露の前(即ち予防的に、例えばワクチンとして)、又は抗原ポリペプチドのような刺激物に対する免疫応答を被験体が示すことができる間のHIVへの曝露後の時点で治療的に、被験体に組成物を投与するのが一般的に望ましい。
【0018】
組成物は、複数の(即ち、2、3、4、5、6又はそれより多い)異なる核酸コンストラクトを含む。異なる各々の核酸コンストラクトの複数のコピーが通常存在する。異なる各々の核酸コンストラクトは、全身又は局所投与後の被験体の細胞中におけるHIV抗原ポリペプチドの発現を調節する転写調節配列と機能可能な状態で連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。核酸コンストラクトの中に含まれるのは、HIVの2つ以上の(複数の)分岐群又は系統の抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列である。従って組成物は複数の核酸コンストラクトを含み、そのうちの少なくとも2つは、異なる分岐群又は系統由来のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を組み込む。しばしば、組成物は、少なくとも3つの異なる分岐群又は系統由来のHIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトを含む。
【0019】
一実施形態では、組成物は複数の別個の核酸コンストラクトを含み、その各々は、機能可能な状態でCMV/R転写制御配列と連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、CMV/R転写制御配列は配列番号26の配列を有する。別の実施形態では、組成物は複数の別個の核酸コンストラクトを含み、その各々が単一のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。特定の実施形態では、核酸コンストラクトはプラスミドである。
【0020】
組成物は典型的には、HIV Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸コンストラクト、HIV Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸コンストラクト、HIV Nefポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチド配列を含む第3の核酸コンストラクト、並びにHIV Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの更なる核酸コンストラクトを含む。組成物は、異なるHIV分岐群又は系統のEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む1つ又は複数の更なる核酸コンストラクトも包含し得る。
【0021】
例えば第1の核酸コンストラクトは、分岐群B Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得るし、第2の核酸コンストラクトは分岐群B Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得るし、第3の核酸コンストラクトは分岐群B Nefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。或いは第1、第2及び第3の核酸コンストラクトは、分岐群A又は分岐群C等のような異なる分岐群のGag、Pol及びNefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み得る。例えば組成物は、配列番号20と少なくとも約95%の配列相同性を有するGagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクト;配列番号21と少なくとも約95%の配列相同性を有するPolポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクト;及び/又は配列番号22と少なくとも約95%の配列相同性を有するNefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを含み得る。一実施形態では、免疫原性組成物は、配列番号20のGagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第1の核酸コンストラクト、配列番号21のPolポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第2の核酸コンストラクト;及び配列番号22のNefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第3の核酸コンストラクトを含む。例えば組成物は、配列番号1の1375〜2883位と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクト;配列番号2の1349〜4357位と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクト;及び/又は配列番号3の1392〜2006と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクト;或いは1つ又は複数の縮重コドンの置換により参照配列と異なる核酸コンストラクトを含み得る。一実施形態では、組成物は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3により表わされる核酸コンストラクト(プラスミドVRC4401、VRC4409及びVRC4404)、又はそれと少なくとも95%の配列相同性を有するコンストラクトを含む。
【0022】
更に組成物は、異なる分岐群又は系統由来のEnvポリペプチドをコードする複数の核酸コンストラクトを含み得る。例えば組成物は、分岐群A Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の更なる核酸コンストラクト、分岐群B Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の更なる核酸コンストラクト、更に分岐群C Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第3の更なる核酸コンストラクトを含み得る。一般に、分岐群A、分岐群B及び分岐群C Envポリペプチドは集合的に世界中のHIV感染で最も高い比率を占める分岐群A、B及びCとして利用される。しかしながらHIV分岐群又は系統の任意の組合せに由来するEnvポリペプチドを含む組成物が産生されると当業者は認識するだろう。特定の実施形態において免疫原性組成物は、配列番号23と少なくとも95%の配列相同性を有する分岐群A Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の更なる核酸コンストラクト;配列番号24と少なくとも95%の配列相同性を有する分岐群B Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の更なる核酸コンストラクト;及び/又は配列番号25と少なくとも95%の配列相同性を有する分岐群C Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第3の更なる核酸コンストラクトを含む。一実施形態において組成物は、配列番号23の分岐群A Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第1の更なる核酸コンストラクト;配列番号24の分岐群B Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第2の更なる核酸コンストラクト;及び配列番号25の分岐群C Envポリペプチドをコードするポリヌ
クレオチド配列を有する第3の更なる核酸コンストラクトを含む。例えば免疫原性組成物は、配列番号4の1392〜3272位と少なくとも約95%相同であるポリヌクレオチド配列を有する核酸コンストラクト;配列番号5の1384〜3312位と少なくとも約95%相同であるポリヌクレオチド配列を有する核酸コンストラクト;及び/又は配列番号6の1392〜3272位と少なくとも約95%相同であるポリヌクレオチド配列を有する核酸コンストラクトを含み得る。一実施形態において免疫原性組成物は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6により表わされる核酸コンストラクト(それぞれプラスミドVRC5736、5737及び5738)、又はそれと少なくとも95%の配列相同性を有するコンストラクト、或いは縮重コドンの置換により参照配列と異なるコンストラクトを含む。
【0023】
従って特定の実施形態において免疫原性組成物は、Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第1の核酸コンストラクト、Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第2の核酸コンストラクト、Nefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第3の核酸コンストラクト、分岐群A Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第4の核酸コンストラクト、分岐群B Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第5の核酸コンストラクト、及び分岐群C Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を有する第6の核酸コンストラクトを含む。このような一実施形態において第1の核酸コンストラクトは、配列番号20と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし;第2の核酸コンストラクトは、配列番号21と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし;第3の核酸コンストラクトは、配列番号22と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし;第4の核酸コンストラクトは、配列番号23と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし;第5の核酸コンストラクトは、配列番号24と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし;更に第6の核酸コンストラクトは、配列番号25と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードする。一実施形態において免疫原性組成物は6つの核酸コンストラクトを含み、その1つ又は複数が、配列番号1の1375〜2883位;配列番号2の1349〜4357位;配列番号3の1392〜2006位;配列番号4の1392〜3272位;配列番号5の1384〜3312位;及び配列番号6の1392〜3272位と少なくとも95%相同である。例えば組成物は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5及び配列番号6により表わされるポリヌクレオチド配列を有する6つの核酸コンストラクト(それぞれプラスミドVRC4401、VRC4409、VRC4404、VRC5736、VRC5737及びVRC5738)、又はそれと少なくとも95%の配列相同性を有するコンストラクト、或いは縮重コドンの置換により参照配列と異なるコンストラクトを含む。免疫原性組成物中に組み込まれた場合、核酸コンストラクトは実質的に等しい重量比(即ち、約1:1:1:1:1:1の比)で組み込まれる。
【0024】
いくつかの場合、組成物は、各々が単一の分岐群又は系統のHIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトを含む。他の場合、キメラEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を組み入れた核酸コンストラクトを含むことは有用である。従って、特定の実施形態では、核酸コンストラクトは配列番号7〜15のうちの1つによりコードされるポリペプチドと少なくとも95%の相同性を有するキメラEnvポリペプチドをコードすることができる。
【0025】
通常、被験体への投与のために処方される場合、組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤、例えばリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)又は別の中性生理学的塩溶液のような水性担体も含む。組成物は、アジュバント又は他の免疫刺激性分子も含み得る。組成物は、免疫応答を誘導するために、被験体に1回又は複数回投与され得る。例えば組成物は
、少なくとも約28日間隔又は物質輸送上又は治療上決定される異なる間隔で複数回投与され得る。
【0026】
このように本開示の特徴の一つは、HIV感染の治療又は予防のための薬学的組成物又は薬剤を含む。HIVの治療又は予防のための薬剤の生産における本明細書中に開示される組成物の使用も当然予期される。組成物に関して上で開示された制限又は処方のいずれかが、HIV感染治療のための薬剤におけるそれらの使用、又は薬剤として適用可能である。
【0027】
本開示の別の態様は、ヒト被験体に上記の組成物を投与することによりHIVに対する免疫応答を誘導するための方法に関する。免疫正常者に投与される場合、組成物は、HIVの複数の分岐群又は系統に対する免疫応答を誘導する。例えば一実施形態において該方法は、複数の異なる核酸コンストラクトを含む組成物で、その各々が機能可能な状態でCMV/R転写制御配列と連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物を投与することを含む。別の実施形態において該方法は、複数の異なる核酸コンストラクトで、その各々が単一のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む組成物を投与することを含む。特定の実施形態では、投与される核酸コンストラクトはプラスミドである。実際、上記組成物のいずれかは、本明細書中に開示される方法におけるヒト被験体への投与に適している。
【0028】
目的の特性、例えばHIV特異的抗体の産生又はHIVと反応する機能性T細胞の産生を有する免疫応答を誘導するために、1回量又は複数回量の組成物が被験体に投与される。特定の実施形態において組成物は、例えば無針デリバリー装置を用いて筋肉内投与される。或いは組成物は、静脈内、経皮、鼻内、経口(又は別の粘膜を介する)などの他の経路により投与される。
【0029】
いくつかの実施形態において該方法は、HIV抗原ポリペプチドをコードするウイルスベクターを、すでに記載された1つ又は複数の核酸コンストラクトの代わりに、又はそれと組合せて投与することも含む。いくつかの場合、ウイルスベクターは、アデノウイルスベクター(例えば複製欠損アデノウイルスベクター)である。例えば上に開示されたもののような「プライマー」組成物の1又は複数回量が被験体に投与され、その後、HIV抗原ポリペプチドをコードする複数のアデノウイルスベクターを含む1又は複数回量の「追加免疫」組成物が投与される。特定の実施形態においてアデノウイルスベクターは、プライマー組成物中で前に投与されたHIV抗原ポリペプチドと同一である1つ又は複数のHIV抗原ポリペプチドをコードする。例示的な組換えアデノウイルスベクターは、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号19により表わされる。もちろん、例えばこれらの配列のうちの1つによりコードされるポリペプチドと少なくとも約95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードする、或いはこれらの配列のうちの1つと少なくとも約95%の配列相同性を有する代替的なアデノウイルスベクターも用いられる。
【0030】
別の態様では、該開示は、機能可能な状態でCMV/R転写調節配列と連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離又は組換え核酸に関する。例えばこのような核酸は、プラスミド又はウイルスベクターである。ポリヌクレオチド配列は、HIV Gagポリペプチド、HIV Polポリペプチド、HIV Nefポリペプチド又はHIV Envポリペプチドをコードし得る。いくつかの例では、核酸コンストラクトによりコードされるHIVポリペプチドは、単離又は組換え核酸によりコードされる唯一のHIV抗原である。これらの核酸によりコードされる例示的なポリペプチドは、配列番号20〜25により表わされ、配列番号20〜25のアミノ酸配列と少なくとも95%相同である配列を含む。例えばこのような核酸は、配列番号1の1375〜2883位;配列番号2の1349〜4357位;配列番号3の1392〜2006位;
配列番号4の1392〜3272位;配列番号5の1384〜3312又は配列番号6の1392〜3272位と少なくとも95%相同であるポリヌクレオチド配列を含み、それらのいずれもが機能可能な状態でCMV/R転写制御配列と連結され得る。例えばCMV/R転写制御配列は、配列番号26と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列である。このような核酸の例示的な実施形態は、それぞれ配列番号1〜6により表わされるプラスミドVRC4401、VRC4409、VRC4404、VRC5736、VRC5737及びVRC5738を含む。
【0031】
他の実施形態では、核酸は、複数のHIV分岐群又は系統の少なくともサブシーケンスを組み込んだキメラHIVポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。例えばキメラHIVポリペプチドは、異なるHIV分岐群又は系統のサブシーケンスを含むキメラEnvポリペプチドである。このような核酸の例としては、配列番号7〜15、配列番号7〜15のうちの1つと少なくとも約95%の配列相同性を有するような実質的に同様のポリヌクレオチド配列、或いは1つ又は複数の縮重コドンが互いに置換されたポリヌクレオチド配列が挙げられる。或いは核酸は、機能可能な状態でCMV/R転写調節領域以外の転写調節配列(例えばCMV最初期プロモーター及び/又はエンハンサー、或いは後述するようなその他のプロモーター及び/又はエンハンサー)と連結されたキメラHIV Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。キメラEnvポリペプチドも、本開示の一つの特徴である。
【0032】
更なる技術的詳細は、以下の特定の題目の見出しの下において示される。本開示の種々の実施形態の検討を助ける、特定の用語について以下に説明を提示する:
【0033】
用語
別途記載しない限り、本明細書中で用いられる技術及び科学用語は全て、本開示が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。分子生物学における一般的用語の定義は、Benjamin Lewin, Genes V, Oxford University Press, 1994 (ISBN 0-19-854287-9);Kendrew et al.(eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd., 1994 (ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A. Meyers (ed.),
Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc., 1995 (ISBN 1-56081-569-8)に見出される。
【0034】
単数用語「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、複数の指示物を含む。同様に、「又は」という語は、文脈が明らかにそうでないと示さない限り、「及び」を含むよう意図される。「複数」という用語は、2又はそれ以上を指す。核酸又はポリペプチドに関して示される全ての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、並びに全ての分子量又は分子質量値はおよそのものであり、説明のために用いられると更に理解される。本明細書中に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料が本開示の実施又は試験に用いられ得るが、適切な方法及び材料が以下に記載される。「〜から成る」という用語は、「含む」を意味する。略語「e.g.」はラテン語のexempli gratiaに由来し、非限定的な例を示すために本明細書中で用いられる。従って、略語「e.g.」は、用語「例えば」と同義語である。
【0035】
本開示の種々の実施形態の検討を助けるために、特定の用語について以下に説明を提示する:
【0036】
アジュバント: 抗原性を増強するために用いられる媒体;例えばその上に抗原が吸着される無機物の懸濁液(ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム);又は抗原溶液が油中に乳化される(MF−59、フロイント不完全アジュバント)、時としては抗原性を更に増強する(抗原の分解を抑制する及び/又はマクロファージの流入を引き
起こす)ために死菌マイコバクテリアの封入を伴う(フロイント完全アジュバント)油中水乳濁液。アジュバントは、サイトカイン、共刺激性分子のような免疫刺激性分子、並びにCpGオリゴヌクレオチドのような免疫刺激性DNA又はRNA分子も含む。
【0037】
抗原: 動物における抗体産生又はT細胞応答を刺激し得る化合物、組成物又は物質で、動物中に注射されるか、吸収されるか又は別の方法で導入される組成物。「抗原」という用語は、すべての関連抗原エピトープを含む。「抗原ポリペプチド」とは、T細胞応答又は抗体応答のような免疫応答が刺激されるポリペプチドである。「エピトープ」又は「抗原決定基」とは、B及び/又はT細胞が応答する抗原上の部位を指す。一実施形態では、エピトープがMHC分子とともに提示される場合、T細胞はエピトープに対して応答する。エピトープは、連続アミノ酸、又は抗原ポリペプチドの三次元的フォールディングにより並列される非連続アミノ酸の両方から形成される。連続アミノ酸から形成されるエピトープは、通常、変性溶媒への曝露時に保持されるが、三次元的フォールディングにより形成されるエピトープは、通常、変性溶媒による処理時に失われる。エピトープは、通常少なくとも3、より頻繁には少なくとも5、約9又は約8〜10個のアミノ酸を特有の空間コンフォメーションで含む。エピトープの空間コンフォメーションの決定方法としては、例えばX線結晶学及び多次元核磁気共鳴分光学が挙げられる。
【0038】
抗体: 免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的活性部分、即ち抗原と特異的に結合する(免疫反応する)抗原結合部位を有する分子。天然抗体(例えばIgG、IgM、IgD)は、ジスルフィド結合により相互連結される4つのポリペプチド鎖、即ち2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む。「抗体応答」という語句は、抗原に特異的な抗体の分泌を含む、抗原に対する免疫学的応答を指す。抗体応答は、抗原(又はエピトープ)とB細胞の表面のB細胞受容体(膜結合IgD)との相互作用により開始されるB細胞媒介性免疫応答である。その同種抗原によるB細胞受容体の刺激の結合後、B細胞は、抗原特異的免疫グロブリンを分泌するプラズマ細胞に分化して、抗体応答を生じさせる。「中和抗体」とは、例えばプラーク中和検定で測定されるような、ウイルス上のエピトープと結合して感染及び/又は複製を抑制する抗体である。
【0039】
cDNA(相補的DNA): 内部非コードセグメント(イントロン)並びに転写を決定する調節配列を欠くDNA断片。cDNAは通常、細胞から抽出されたメッセンジャーRNAからの逆転写により実験室で合成される。HIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトを調製する際には、cDNAは、例えばHIV RNAゲノム(又はゲノムセグメント)からの逆転写又は増幅(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により)により調製される。
【0040】
宿主細胞: ポリヌクレオチドベクター又はウイルスベクターのようなポリヌクレオチドが増殖でき、、そのDNAが発現する細胞。細胞は、原核生物細胞又は真核生物細胞であり得る。該用語は、被験体の宿主細胞の全ての子孫細胞も含む。複製中に起こる突然変異が存在し得るため、全子孫細胞が親細胞と同一であるというわけではないと理解される。しかしながら、「宿主細胞」という用語が用いられる場合、このような子孫細胞が含まれる。従って本明細書中に記載される核酸コンストラクトは、それらのポリヌクレオチド配列(HIV抗原ポリペプチドをコードするものを含む)が発現し得る宿主細胞中に導入される。
【0041】
免疫応答: 刺激に対する、B細胞、T細胞又は単球のような免疫系細胞の応答。いくつかの場合、応答は特定の抗原に特異的である(即ち、「抗原特異的応答」)。いくつかの場合、免疫応答は、CD4+応答又はCD8+応答のようなT細胞応答である。或いは応答はB細胞応答であり、特異的抗体を産生する。「防御的免疫応答」は、病原体(HIVのような)の有害な機能又は活性を抑制する免疫応答であり、病原体による感染を低減
し、或いは病原体による感染に起因する症候(死亡を含む)を低減する。防御的免疫応答は、例えばプラーク低減アッセイ又はELISA−中和アッセイ(NELISA)におけるウイルス複製又はプラーク形成の抑制により、或いはin vivo実験系におけるウイルス攻撃に対する耐性を測定することにより測定される。
【0042】
免疫原性組成物: 免疫正常者に投与される場合に、測定可能なCTL応答を誘導するか又は測定可能なB細胞応答(例えばエピトープと特異的に結合する抗体の産生)を誘導するか、或いはその両方を誘導する病原性生物の少なくとも1つのエピトープを含む組成物。従って免疫原性組成物は、免疫正常者における免疫応答を誘導し得る組成物である。例えば免疫原性組成物は、エピトープを発現するために用いられる(従って、このポリペプチド、又は病原体により発現する関連ポリペプチドに対する免疫応答を誘導するために用いられる)HIV抗原ポリペプチドの1つ又は複数の免疫原性エピトープをコードする単離核酸コンストラクト(プラスミド又はウイルスベクターのような)を含む。in vitroにおける使用に関しては、免疫原性組成物は、単離核酸、タンパク質又はペプチドから成る。in vivoにおける使用に関しては、免疫原性組成物は通常、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤、及び/又はその他の物質、例えばアジュバント中で免疫原性エピトープを発現する核酸又はウイルスを含む。免疫原性ポリペプチド(HIV抗原のような)又は該ポリペプチドをコードする核酸は、当該技術分野で既知のアッセイにより、CTL又は抗体応答を誘導する能力に関して容易に試験される。
【0043】
薬学的に許容可能な担体及び/又は薬学的に許容可能な賦形剤: 薬学的に許容可能な担体又は賦形剤の使用は従来の通りである。Remington's Pharmaceutical Sciences, by E.W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition (1975)は、本明細書中に開示されるポリペプチド及びポリヌクレオチドの薬学デリバリーに適した組成物及び処方物を記載する。
【0044】
概して、担体の性質は、用いられる特定の投与方式によっている。例えば、非経口処方物は通常、媒体として、水、生理食塩水、平衡塩溶液、水性デキストロース、グリセロールのような薬学的及び生理学的に許容可能な流体を含む注射用流体を含有する。固体組成物(例えば粉末、ピル、錠剤又はカプセル形態)に関しては、通常用いられる非毒性固体担体として、例えば医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン又はステアリン酸マグネシウムが挙げられる。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるべき薬学的組成物は、酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタン等の湿潤剤又は乳化剤、防腐剤及びpH緩衝剤のような少量の非毒性補助物質を含有し得る。
【0045】
「治療的有効量」とは、被験体において目的の作用を達成するために用いられる組成物の量である。例えばこれは、ウイルス(又は他の病原体)の複製を抑制するために、或いはウイルス(又は他の病原体)感染の外見的症候を防止するか又はかなり改善するために必要な組成物の量である。被験体に投与される場合、in vitroにおける作用を達成することが示された標的組織濃度(例えばリンパ球中の)を達成する投薬量が一般的に用いられる。
【0046】
疾患の抑制又は治療: HIVへの感染の抑制とは、ヒト免疫不全ウイルスへの曝露により引き起こされる疾患の完全発症を抑制することを指す。例えばHIV感染の抑制は、ウイルスに曝露されたことが既知であるヒトにおける症候の発症を防止するというような、ウイルス感染に起因する症候を減少すること、或いはウイルスに曝露された被験体におけるウイルス負荷又はウイルスの感染性を低減することを指す。「処置」とは、被験体のウイルスへの感染に関連した疾患又は病理学的状態の兆候又は症候を改善するか又は抑制するか又はそうでなければ回避する治療的又は予防的介入を指す。
【0047】
被験体: ヒト及び非ヒト哺乳類を含み、ヒト及び獣医学的被験体の両方を含む部類である多細胞脊椎動物。HIVに関する臨床的設定では、被験体は通常はヒト被験体である。免疫正常者は、抗原性刺激に対して実質的に正常な免疫応答を生じ得る被験体である。
【0048】
T細胞: 免疫応答に重要な白血球。T細胞としては、CD4+T細胞及びCD8+T細胞が挙げられるが、これらに限定されない。CD4+Tリンパ球は、CD4として既知のマーカーをその表面上に有する免疫細胞、例えば「ヘルパー」T細胞がある。ヘルパーT細胞としても既知のこれらの細胞は、抗体応答、並びにキラーT細胞応答のような免疫応答を統合するのを手助けする。CD8+T細胞はCD8マーカーを有し、細胞傷害性又は「キラー」エフェクター機能を有するT細胞を含む。
【0049】
形質導入又はトランスフェクション: 形質導入細胞は、例えば分子生物学技法により、核酸分子が導入された細胞である。本明細書中で用いる場合、導入又は形質導入という用語は、核酸分子がこのような細胞中に導入されるすべての技法、例えばプラスミドベクターによる形質転換、ウイルスベクターによるトランスフェクション、並びにエレクトロポレーション、リポフェクション及びパーティクルガンによる裸DNAの導入を含む。
【0050】
ワクチン: ワクチンは、被験体における予防的又は治療的免疫応答を誘導する薬学的組成物である。いくつかの場合、免疫応答は防御的免疫応答である。典型的にはワクチンは、病原体の抗原に対する抗原特異的免疫応答を誘導する。この開示の中では、ワクチンはHIVに対する免疫応答を誘導する。本明細書中に記載されるワクチンは、HIV抗原をコードする核酸コンストラクト、例えばプラスミド又はウイルスベクターを含む。
【0051】
ベクター: 宿主細胞中に導入され、それにより形質転換宿主細胞を産生するような核酸分子。ベクターは、複製起点のように宿主細胞中で複製できる核酸配列を含む。ベクターは、1つ又は複数の選択可能マーカー遺伝子及び当該技術分野で既知のその他の遺伝子エレメントも含み得る。ベクターという用語は、プラスミド、線状核酸分子、並びにアデノウイルスベクター及びアデノウイルスのようなウイルスベクターを含む。アデノウイルスベクターという用語は、本明細書中では宿主細胞中でウイルス粒子を生じるアデノウイルスの1つ又は複数の構成成分を含む核酸を指すのに用いられる。このような粒子は、1又は複数回の感染及び複製が可能であり得るか、或いは、例えば突然変異のために複製欠損性であり得る。アデノウイルスは、集合ウイルスの少なくとも一部分をコードする核酸を含む。従って多くの状況では、該用語は互換的に用いられる。
【0052】
HIV抗原をコードする核酸コンストラクト
本開示は、ヒト免疫不全ウイルス−1(「HIV−1」又は単に「HIV」)の抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸コンストラクトに関する。ポリヌクレオチド又は核酸配列という用語は、少なくとも10塩基長ヌクレオチドの重合体形態を指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又はいずれかのヌクレオチドの改変体である。該用語は、一本鎖及び二本鎖のDNAを含む。この開示においては、核酸コンストラクトは「組換え」核酸である。組換え核酸は、天然でない配列を有するか、又は2つの異なる分離されたセグメントの人工的組合せにより作製された配列、例えば由来生物の天然ゲノム中では近接している(一方は5’末端、一方は3’末端)コード配列の両方と近接していない異種配列を有する核酸である。この人工的組合せは、しばしば、化学合成により、又は更に一般的には、例えば遺伝子工学処理技法のような、核酸の単離セグメントの人工的操作により成し遂げられる。
【0053】
いくつかの場合、核酸は「単離」核酸である。「単離」核酸(及び同様に単離タンパク質)は、核酸が天然に生じる生物体の細胞中の他の生物学的構成成分、例えば他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、タンパク質及び細胞小器官から実質的に分離又は精製さ
れた。「単離」された核酸及びタンパク質としては、標準的な精製法により精製される核酸及びタンパク質が挙げられる。該用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製される核酸及びタンパク質、並びに化学合成核酸も含む。
【0054】
「HIV抗原ポリペプチド」又は「HIV抗原」は、免疫が正常な哺乳類における免疫応答を誘導し得る任意のタンパク質様HIV分子又はその一部を含み得る。「HIV分子」は、ヒト免疫不全ウイルスの一部である分子であり、ヒト免疫不全ウイルスの核酸配列によりコードされるか、又は任意のこのような分子に由来するか若しくはこのような分子に基づいて合成される。免疫応答を誘導するHIV抗原をコードする核酸の投与は、好ましくはHIVに対する防御的免疫をもたらす。この点で、HIVに対する「免疫応答」は、任意の1つ又は複数のHIV抗原に対する免疫応答である。
【0055】
適切なHIV抗原の例としては、HIV Gag、Pol、Nef又はEnvタンパク質の全部又は一部が挙げられる。ウイルス中では、Gagタンパク質はウイルスキャプシドの構成成分である。Polポリタンパク質は、逆転写酵素(RT);インテグラーゼ(IN)及びプロテアーゼ(PR)の機能を提供し、これは、宿主細胞の染色体中に組み込まれる二本鎖DNAにウイルスRNAを逆転写し、gag−pol由来タンパク質を切断して、それぞれ機能性ポリペプチドにする。Nefポリペプチドは、感染後のウイルスの病原性の確定に関与する陰性調節因子である。Envタンパク質は、ウイルス付着及び標的細胞との融合に関与するエンベロープタンパク質である。ポリペプチドの機能的属性は、ポリペプチドの抗原特性を変更せずに変更され得る(例えば欠失される)、と当業者は認識するだろう。Gag、Pol、Nef又はEnvの各々の免疫原性バリアント又は断片も、本明細書中に開示される免疫原性組成物中に含まれるHIV抗原ポリペプチドである。免疫原性バリアントとしては、例えば配列番号20〜25と少なくとも90%、95%又は98%の配列相同性を有するもの、又はその免疫原性断片が挙げられる。本明細書中に開示される核酸ワクチンは、配列番号1〜19、又は配列番号20〜25のようなHIV抗原をコードする配列により表わされるもの、或いは配列番号20〜25と少なくとも90%、95%又は98%の配列相同性を有するHIV抗原を含む。
【0056】
適切なEnvタンパク質は当該技術分野で既知であり、例えばgp160、gp120、gp41及びgp140が挙げられる。HIV分岐群A、B、C等の任意の分岐群のHIVが抗原選択に適している。従って、以下のHIV抗原のうちの任意の1つ又は組合せが本発明の方法に用いられると理解される:HIV分岐群A gp140、Gag、Pol、Nef及び/又はEnv;HIV分岐群B gp140、Gag、Pol、Nef及び/又はEnvタンパク質;並びにHIV分岐群C gp140、Gag、Pol、Nef及び/又はEnvタンパク質。組成物及び方法はGag、Pol、Nef及び/又はEnvタンパク質に関して詳細に記載されるが、哺乳類における免疫応答を誘導し得る任意のHIVタンパク質又はその一部が、本発明の方法とともに用いられ得る。HIV分岐群A、B、C由来のHIV Gag、Pol、Nef及び/又はEnvタンパク質、並びにこのようなタンパク質をコードする核酸配列及びこのような核酸配列をベクター中で操作し、挿入するための方法は既知である(例えばHIV Sequence Compendium, Division of AIDS, National Institute of Allergy and Infectious Diseases, 2003, HIV Sequence Database(the world wide web at hiv-web.lanl.gov/content/hiv-db/mainpage.html上で)、Sambrook et al., Molecular Cloning, a Laboratory Manual, 2d edition, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989及びAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates and John Wiley & Sons,
New York, N.Y., 1994参照)。
【0057】
Gag、Pol、Nef及びEnvポリペプチド配列は当該技術分野で既知であり、複数のアミノ酸配列がGENBANK(登録商標)のような公的にアクセス可能なデータベ
ースから利用可能である。例えばHXB2系統のアミノ酸配列に相当するGagポリペプチドは、GENBANK(登録商標)寄託番号K03455の配列により表わされる。NL4−3系統のアミノ酸配列に相当するPol及びNefポリペプチドは、GENBANK(登録商標)寄託番号M19921の配列により表わされる。例えば分岐群A、B及びCに相当する例示的なEnvポリペプチドは、それぞれGENBANK(登録商標)寄託番号U08794、K03455及びAF286227の配列により表わされる。本明細書中に開示される核酸コンストラクトによりコードされる特定の例示的な配列は、それぞれGag、Pol、Nef、分岐群A Env、分岐群B Env及び分岐群C Envに相当する配列番号20〜25により表わされる。これらの例示的なポリペプチドのいくつかは機能的に改変されているが(実施例で更に詳細に示されるように)、それでもなお天然タンパク質の重要な抗原特質を保持する。
【0058】
完全な無傷のHIVタンパク質が、免疫応答を生じるために必要というわけではない。実際、HIVタンパク質の抗原エピトープのほとんどは相対的にサイズが小さい。従って、本明細書中に記載されるHIVタンパク質のいずれかのようなHIVタンパク質の断片(例えばエピトープ又は他の抗原断片)が、HIV抗原として用いられ得る。HIV Gag、Pol、Nef及び/又はEnvタンパク質の抗原断片及びエピトープ、並びにこのような抗原断片及びエピトープをコードする核酸配列が既知である(例えばHIV Immunology and HIV/SIV Vaccine Databases, Vol. 1, Division of AIDS, National Institute
of Allergy and Infectious Diseases, 2003参照)。
【0059】
核酸コンストラクトは、コンストラクト中に組み込まれたポリヌクレオチド配列が、抗原を構成するアミノ酸配列を生じる細胞転写及び翻訳プロセスによる認識及び活性により1つ又は複数のオープンリーディングフレームを含む場合、抗原を「コードする」といわれる。
【0060】
HIV抗原は、それらが異なる抗原アミノ酸配列を含む場合、「異なる」ものである。複数の異なるHIV抗原を参照すると、2つ以上の異なるHIV抗原が、本明細書中に記載された2つ以上(又は3、又は4、又は5、又は6、又はそれ以上)のHIV抗原のようなHIV抗原であり得る。異なるHIV抗原ポリペプチドは、HIVゲノム中の異なる遺伝子によりコードされるタンパク質である異なるHIVタンパク質由来の2つ以上の抗原ポリペプチドである(例えばHIV GagポリペプチドはHIV Polポリペプチドとは異なり、これはHIV Nefポリペプチドとは異なり、更にまたHIV Envポリペプチドとは異なる)。従ってGag、Pol、Nef及びEnvは、異なるHIVタンパク質又は抗原ポリペプチドである。或いは異なるHIV抗原ポリペプチドは、HIVの異なる系統又は分岐群由来の相同ゲノムセグメント(又は遺伝子)によりコードされる場合、異なっている。従って、分岐群A Envポリペプチドは分岐群B Envポリペプチドとは異なり、これは分岐群C Envポリペプチド等とは異なる。本明細書中に記載された免疫原性(例えばワクチン)組成物において、2つ以上の異なるHIV抗原は、分岐群A、B及びCのような3つ以上の異なるHIV分岐群由来の、或いは2つ以上の同一分岐群の変異体HIV系統由来のような、2つ以上の異なるHIV分岐群又は系統由来のHIV抗原を含む。異なるHIV抗原の「カクテル」に哺乳類の免疫系を曝露すると、単一のHIV抗原のみに免疫系を曝露するよりも広範なそしてより有効な免疫応答が誘導される。
【0061】
従って、単一のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を各々が含む複数の別個の核酸コンストラクトであって、複数の抗原ポリペプチド又は複数のHIV分岐群又は系統をコードする核酸コンストラクトは、同一の分岐群又は系統(例えばすべて分岐群B)の複数のコード化ポリペプチド、或いは異なる分岐群又は系統(例えばあるものは分岐群Aで他は分岐群B)のコード化ポリペプチドを含む。
【0062】
いくつかの特に開示された実施形態では、組成物は複数の異なる核酸コンストラクトを含む。核酸コンストラクトは、機能可能な状態で転写制御配列と連結される単一(1回だけ)のHIV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含み、該単一のHIV抗原は他の核酸コンストラクトとは異なる。特定の実施形態では、異なる核酸コンストラクトの異なる単一のHIV抗原は同一分岐群又は系統の異なるコード化ポリペプチドであるが、しかし同一分岐群又は系統を共有するコード化ポリペプチドと異なる分岐群又は系統の、異なるコンストラクトから発現される異なるコード化ポリペプチドを更に含む。例えば同一分岐群又は系統のHIV抗原をコードする異なる核酸コンストラクトは、コンストラクトの各々から発現される唯一のHIV抗原としてGag、Pol及びNefをそれぞれコードする3つの別個のコンストラクトであり、Gag、Pol及びNefの各々が同一分岐群又は系統(例えばすべて分岐群B)のものである。更に、いくつかの実施形態では、組成物は更に、異なる分岐群又は系統のEnv抗原をコードする別個の核酸コンストラクトを含む。例えば少なくとも3つの別個のコンストラクトは、独立して、それらの唯一のコード化HIV抗原として分岐群A Env、分岐群B Env及び分岐群C Envをコードする。
【0063】
例えば核酸コンストラクトは、単一のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。本明細書中に示される特定の例において核酸コンストラクトは、単一のGagポリペプチド、単一のPolポリペプチド、単一のNefポリペプチド又は単一のEnvポリペプチドをコードする。例えば核酸コンストラクトは、分岐群B Gagポリペプチド(例えば配列番号20のアミノ酸配列)のような単一のGagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;分岐群B Polポリペプチド(例えば配列番号21)のような単一のPolポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;分岐群B Nefポリペプチド(例えば配列番号22)のような単一のNefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列;又は分岐群A、分岐群B又は分岐群C Envポリペプチド(例えば配列番号23、配列番号24及び配列番号25)のような単一のEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。これらのポリペプチドをコードする例示的な核酸コンストラクトは、それぞれ配列番号1〜6により表わされる。
【0064】
或いは核酸コンストラクトは、複数の分岐群又は系統のサブシーケンスを含むHIV抗原ポリペプチド、即ち「キメラ」HIVポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む。キメラHIV抗原ポリペプチドは、3つ以上の異なる分岐群又は系統ののような、2つ以上の分岐群又は系統のサブシーケンスを含む。例えばキメラHIV Envポリペプチドは、1つ又は複数の分岐群A Envポリペプチドのサブシーケンスを、1つ又は複数の分岐群B Envポリペプチドのサブシーケンス及び/又は1つ又は複数の分岐群C Envポリペプチドのサブシーケンスと組合せて、或いは異なるアミノ酸配列を有するHIVの異なる分岐群A系統の1つ又は複数のサブシーケンスと組合せて含む。同様に、分岐群B及び分岐群C Envポリペプチドのサブシーケンスは、他の分岐群及び/又は系統のサブシーケンスと組合せられる。キメラEnvポリペプチドを含む核酸コンストラクトは、配列番号7〜15により表わされる。
【0065】
通常、HIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトはプラスミドである。しかしながら他のベクター(例えばウイルスベクター、ファージ、コスミド等)が、核酸を複製するために利用される。この開示において、核酸コンストラクトは典型的には、宿主の挿入遺伝子配列の効率的転写を促すプロモーター配列を有する発現ベクターである。発現ベクターは通常、複製起点、プロモーター、並びに形質転換細胞の表現型選択を可能にする特定の核酸配列を含む。例示的な核酸コンストラクトにおいて、コード配列は、ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV−1)の長い末端反復(LTR)のR領域由来の調節配列を含むよう改変されたヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期(IE)エン
ハンサー/プロモーターの転写制御下で、機能可能な状態で連結される。この転写調節配列は、「CMV/R」又は「CMV/Rプロモーター」と呼ばれる。CMV/R転写調節配列(或いは「転写制御配列」と呼ばれる)は、5’から3’方向に:CMV IEエンハンサー/プロモーター;HTLV−1 R領域;及びCMV IE3’イントロンの123塩基対(bp)断片を含有する。CMV/R転写調節領域は、発現並びにその制御下で機能可能な状態で連結されたHIV抗原に対する細胞免疫応答を実質的に増大させる。例示的なCMV/Rは、配列番号26により表わされる。しかしながら、配列番号26と少なくとも約90%又は95%又は98%相同である転写調節領域を含む、調節特性を保持するか又は発現が増大するよう改変された転写制御配列も用いられる。
【0066】
更に一般的には、HIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、宿主細胞中への導入後に核酸の発現を促進する任意のプロモーター及び/又はエンハンサーと機能可能な状態で連結される。プロモーターは、核酸の転写を導くする核酸制御配列のアレイである。プロモーターは、ポリメラーゼII型プロモーター(TATA因子)の場合のように、転写開始部位近く(に存在し得る)に必要な核酸配列を含む。プロモーターは、転写開始部位からほぼ数千塩基対付近に位置する遠位エンハンサー又はリプレッサー因子も含む。構成性及び誘導性プロモーターの両方が含まれる(例えばBitter et al., Methods in Enzymology 153: 516-544, 1987参照)。プロモーターの特定の非限定的な例としては、哺乳類細胞のゲノム由来のプロモーター(例えばメタロチオネインプロモーター)、又は哺乳類ウイルス由来のプロモーター(例えばサイトメガロウイルス最初期遺伝子プロモーター、レトロウイルスの長い末端反復;アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)が挙げられ、用いられる。組換えDNA又は合成的手法により産生されるプロモーターも用いられる。第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的関係で配置される場合、第1の核酸配列は機能可能な状態で第2の核酸配列と連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写又は発現に影響を及ぼす場合、プロモーターは機能可能な状態でコード配列と連結される。
【0067】
このような核酸コンストラクトを産生するために、HIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、CMV/Rプロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化配列を用いて発現を調節するプラスミド発現ベクターのような適切な発現ベクター中に挿入される。CMV/Rプロモーターは、遺伝子発現を最適化するために、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)長末端反復(LTR)の5’非翻訳HTLV−1 R−U5領域で置換されたCMV最初期領域1エンハンサー(CMV−IE)の翻訳エンハンサー領域から成る。HIV−1ポリヌクレオチド配列は、通常、ヒト細胞中での発現が最適化するよう改変される。プラスミド発現ベクターは、カナマイシン選択培地中における培養により増殖する、大腸菌のような細菌細胞中に導入される。すべての場合において、細菌細胞増殖は、プラスミドDNAの一部によりコードされるカナマイシン耐性タンパク質の細胞発現によっている。プラスミドを有する細菌細胞の増殖後、プラスミドDNAは細胞構成成分から精製される。HIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を産生するための手法、及びin vitroでそれらを操作するための手法は当業者に既知であり、例えば上述のSambrook及びAusubelに見出される。
【0068】
本明細書中に開示されるような配列番号1〜6(並びに配列番号7〜15により表わされるキメラEnvポリペプチドをコードする核酸、及び配列番号16〜19により表わされるアデノウイルスベクターをコードする核酸)のような、本明細書中に開示される配列番号20〜25により表わされるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に加えて、核酸コンストラクトは、配列番号20〜25と実質的に同様である(例えば配列番号1〜6及び/又は配列番号16〜19と実質的に同様である)ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドバリアント配列を含む。同様に、核酸コンストラクトは、配列番号7〜15によりコードされるものと実質的に同様であるキメラポリペプチドをコードするポリ
ヌクレオチドを含む。アミノ酸(及びポリヌクレオチド)配列間の相同性は、配列間の相同性として表され、配列相同性と呼ばれる。配列相同性は、しばしば、パーセンテージ相同性(又は相同性)として測定される;パーセンテージが高いほど、2つの配列の一次構造は類似する。概して、2つのアミノ酸配列の一次構造が類似するほど、フォールディング及びアセンブリーに起因する高次構造は類似する。HIV抗原ポリペプチドの(例えば特定分岐群の)バリアントは、1つ又は少数のアミノ酸欠失、付加又は置換を有し得るが、それにもかかわらず非常に高いパーセンテージのアミノ酸(及び一般的にはそれらのポリヌクレオチド配列)を共有する。サブタイプのバリアントが互いに異なる程度に、それらの全体的抗原特質は保持される。逆に、異なる分岐群のHIV抗原は、相同性が低いか、及び/又は抗原特質がもはや同一でないくらいに互いに異なる。従って核酸コンストラクトは、アミノ酸配列に関して配列番号20〜25のうちの1つと少なくとも約90%、95%又は98%相同であるか、或いは配列番号1〜19のうちの1つ又は複数と少なくとも約90%、95%又は98%の配列相同性を有するか、及び/又は縮重コドンの置換によりこれらの配列のうちの1つと異なるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0069】
配列相同性を決定する方法は、当該技術分野で既知である。種々のプログラム及びアラインメントアルゴリズムは、以下に記載されている:Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2: 482, 1981;Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443, 1970;Higgins and Sharp, Gene 73: 237, 1988;Higgins and Sharp, CABIOS 5: 151, 1989;Corpet et al., Nucleic Acids Research 16: 10881, 1988;及びPearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444, 1988。Altschul et al., Nature Genet. 6: 119, 1994は、配列アラインメント方法及び相同性算定についての詳細な考察を示す。NCBIベイシックローカルアラインメントサーチツール(BLAST)(Altschul et al., J. Mol. Biol.
215: 403, 1990)は、配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastn及びtblastxとともに用いるために、いくつかの供給元、例えばNational Center for Biotechnology
Information(NCBI, Bethesda, MD)から、並びにインターネット上で利用可能である。このプログラムを用いて配列相同性を決定する方法についての説明は、インターネット上のNCBIウエブサイトで利用可能である。
【0070】
2つの核酸間の配列相同性の別の証拠は、ハイブリダイズする能力である。2つの核酸の配列が類似するほど、それらがハイブリダイズする条件はよりストリンジェントになる。ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーは配列依存性であり、異なる条件パラメーター下では異なる。従ってある程度のストリンジェンシーを生じるハイブリダイゼーション条件は、選択するハイブリダイゼーション方法の種類、並びにハイブリダイズした核酸配列の組成及び長さによって変わる。一般的に、ハイブリダイゼーションの温度及びハイブリダイゼーション緩衝液のイオン強度(特にNa+及び/又はMg++濃度)がハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定するが、しかし洗浄時間もストリンジェンシーに影響を及ぼす。一般に、ストリンジェントな条件は、限定イオン強度及びpHにおける特定の配列の熱融点(Tm)より約5℃〜20℃低いように選択される。Tmは、標的配列の50%が完全一致プローブとハイブリダイズする温度(限定イオン強度及びpH下での)である。核酸ハイブリダイゼーションに関する条件及びストリンジェンシーの算定は、例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 2001;Tijssen, Hybridization
With Nucleic Acid Probes, Part I: Theory and Nucleic Acid Preparation, Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Elsevier Science Ltd., NY, NY, 1993;及びAusubel et al. Short Protocols in Molecular Biology, 4th ed., John
Wiley & Sons, Inc., 1999に見出される。
【0071】
本発明の開示の目的のために、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーショ
ンがハイブリダイゼーション分子及び標的配列間の不一致が25%未満である場合にのみ起きる条件を含む。「ストリンジェントな条件」は、より正確に決定するために特定レベルのストリンジェンシーに分解される。従って、本明細書中で用いる場合、「適度にストリンジェント」な条件とは、配列の不一致が25%より高い分子がハイブリダイズしない条件であり;「中程度にストリンジェント」な条件とは、不一致が15%より高い分子がハイブリダイズしない条件であり、「高程度のストリンジェント」な条件とは、配列の不一致が10%より高い配列がハイブリダイズしない条件である。「極めて高程度のストリンジェント」な条件とは、配列の不一致が6%より高い配列がハイブリダイズしない条件である。逆に、「低程度のストリンジェント」な条件下でハイブリダイズする核酸は、配列相同性が非常に低いか、又は核酸の短いサブシーケンスのみに関して配列相同性を有するものを含む。例えば核酸コンストラクトは、高程度にストリンジェント又は極めて高程度にストリンジェントな条件下で、或いはそれより高いストリンジェントな条件下でさえ、配列番号20〜25のいずれか1つをコードするポリヌクレオチド配列とハイブリダイズするポリヌクレオチド配列を含む。同様に、核酸コンストラクトは、このような条件化で、配列番号1〜19のいずれか1つとハイブリダイズし得る。
【0072】
従って、配列番号20〜25により表わされる特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、例えば配列番号1〜19のコドン最適化コンストラクトにより表わされるポリヌクレオチドに加えて、ワクチン組成物中に用いられる核酸コンストラクトは、例えば高程度のストリンジェント又は極めて高程度のストリンジェントな条件下で(或いはそれより高いストリンジェントな条件下でさえ)、これらの配列のうちの1つとハイブリダイズする、高パーセンテージの配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含む。天然又は突然変異体系統のHIV中に見出される1つ又は複数の位置でのコドン組成物も、本明細書中に開示される核酸コンストラクト内に包含される。当業者は複数のHIVポリヌクレオチド配列を容易に同定し、コード化ポリペプチドのアミノ酸含量を実質的に変更せずにどのヌクレオチドが変更できるかを決定し得る。更に、少数のアミノ酸付加、欠失又は置換を有するバリアントをコードするポリヌクレオチド配列も、本明細書中に記載される核酸コンストラクト内に包含される。通常、任意のアミノ酸付加、欠失及び/又は置換は、抗原エピトープを変更せず、フォールディング或いはその他の翻訳又は翻訳後プロセッシングを妨害しない位置に配置される。最も一般的には、任意のアミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。例えばポリヌクレオチドバリアント配列は、1又は2又は3又は4又は5つ、或いはそれより多いアミノ酸付加、欠失又は置換を有するHIV抗原ポリペプチドをコードし得る。
【0073】
特定のアミノ酸の保存的バリアントは当該技術分野で既知であり、例えば表1に記述された組分けから選択され得る。
【0074】
【表1】

【0075】
免疫原性組成物
組合せて用いられる場合、配列番号1〜6により例示されるもののような核酸コンストラクトは、HIVに対する広範囲の免疫応答を誘導する免疫原性組成物を提供するために用いられる。核酸コンストラクトのこの特定の組合せは、本明細書中ではVRC−HIVDNA016−00−VPと呼ばれ、配列番号1〜6にそれぞれ相当するプラスミドVRC−4401、VRC−4409、VRC−4404、VRC−5736、VRC−5737及びVRC−5738が挙げられる。
【0076】
異なるHIV抗原をコードする2つ以上の核酸コンストラクトを含む組成物は、通常、その各々が単一のHIV抗原をコードする複数の核酸コンストラクトを含む組成物により提供される。まとめて、2つ以上の核酸コンストラクトは、2つ以上の分岐群又は系統からの、例えば2つ以上の分岐群又は系統から、或いは3つ以上の分岐群又は系統からの抗原をコードする。いくつかの場合において組成物は、キメラHIV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を、2つ以上の分岐群又は系統のサブシーケンスとともに含む。
【0077】
臨床目的のために、「Points to Consider in the Production and Testing of New Drugs and Biologicals Produced by Recombinant DNA Technology」 (1985)、「Supplement: Nucleic Acid Characterization and Genetic Stability」 (1992)及び「Points to Consider in Human Somatic Cell Therapy and Gene Therapy」 (1991, 1998)、「Points to Consider on Plasmid DNA Vaccines for Preventive Infectious Disease Indications」 (1996)の関連の節に従って、ワクチンの製造に用いられる、プラスミドのような全核酸コンストラクト及び宿主大腸菌株が特徴付けられる。更に、臨床試験及び使用のために、全ての組成物は、一般適正製造基準(cGMP)に従って製造される。
【0078】
従って一実施形態では、免疫原性組成物は、分岐群B HIV−1由来のGag、Pol及びNefタンパク質並びに分岐群A、B及びC由来のEnv糖タンパク質を発現するVRC−HIVDNA016−00−VP、6−構成成分多分岐群プラスミドDNAワクチンである。この組成物は、HIVの予防的処置のため、即ち予防用HIV−1ワクチンとして適している。ワクチンは、種々のHIV−1系統由来のいくつかのタンパク質に対
する免疫応答を誘導するよう設計されている。このワクチンは、2つの点で、従来の多分岐群ワクチン組成物とは大きく異なる。第1に、従来の組成物は、Gag−Pol−Nef融合タンパク質をコードする単一プラスミドによっていた。本明細書中に記載される特定の例では、これら3つのタンパク質は、独立して、Gag(VRC4401)、Pol(VRC4409)及びNef(VRC4404)をコードする3つの異なるプラスミドに分けられる。更に、従来の融合タンパク質組成物と比較して、gag遺伝子中に68のアミノ酸付加が存在する。第2に、プロモーターは、従来のコンストラクト中に用いられるCMV最初期領域1エンハンサーの翻訳エンハンサー領域の一部というよりむしろ、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV−1)長末端反復(LTR)の5’−非翻訳化HTLV−1 R−U5領域を含むよう改変される。CMV/R転写調節領域を含有するプラスミドを用いた、例えば非ヒト霊長類のワクチン接種は、非改変CVM IEプロモーター/エンハンサー配列を用いて構築されたプラスミドによるワクチン接種より高く、より強いHIV−1特異的細胞免疫応答を誘導した。
【0079】
VRC−HIVDNA016−00−VPは、種々のHIV−1系統由来のいくつかのタンパク質に対する免疫応答を誘導するよう設計される。このワクチン産物は、HIV−1分岐群B Gag−Pol融合タンパク質をコードする初期HIV−1 DNAプラスミド産物(VRC−4302;BB−IND9782)から生まれた。前臨床試験は小動物における免疫原性タンパク質の発現を証明し、継続的な第I段階臨床試験は、今日までに試験された用量での安全性を明示していない。VRC−HIVDNA009−00−VPワクチン(BB−IND 10681)は、HIV−1の複数のサブタイプ(分岐群)由来のタンパク質を含むという産物概念から発展し、高免疫原性調節タンパク質(Nef)、並びにアカゲザルにおける免疫応答を生じさせることができる改変エンベロープ糖タンパク質を含むようにワクチン構成成分の数を増大した。
【0080】
4プラスミド産物VRC−HIVDNA009−00−VPは、アカゲザル及びマウスにおいて実行される前臨床免疫原性試験、並びに同一の4つのプラスミド及び2つの更なるGag−Pol−Nef発現プラスミドから成るワクチン産物(VRC−HIVDNA006−00−VP)の前臨床安全性試験に基づいて臨床試験に進めるために選択された。これらのプラスミド産物の生物学的安全性試験、並びに候補ワクチンVRC−HIVDNA009−00−VP(BB−IND 10681)及びVRC−HIVDNA016−00−VP間の高度の相同性に基づいて、6プラスミドワクチンはヒト臨床試験に関して安全であることが確定された。
【0081】
治療方法
本明細書中に記載されるHIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、治療的、例えば予防的投与(例えばワクチン)に用いるための薬学的組成物(薬剤)として、例えば組合せて用いられ、HIVの1つ又は複数の分岐群又は系統に対する免疫応答を誘導するために被験体(例えばヒト被験体)に投与される。例えば本明細書中に記載される組成物は、ウイルス感染又はウイルスの複製を抑制するために、HIVへの感染の前にヒト(又は非ヒト)被験体に投与される。従って上記薬学的組成物は、HIVに対する防御的免疫応答を誘導するために被験体に投与される。免疫応答を誘導するために、治療的有効(例えば免疫学的有効)量の核酸コンストラクトが、、ヒト(又は非ヒト)被験体のような被験体に投与される。
【0082】
「治療的有効量」とは、治療対象の被験体において目的の作用を達成するために用いられる化学的組成物(核酸コンストラクト又はベクターなど)の量である。例えばこれは、抗体又はT細胞応答を誘導するために、或いはウイルス感染又はウイルスの複製を抑制するか又は防止するために、或いはウイルス感染により引き起こされる症候を防止、減少又は改善するために、適切な量の抗原を発現するのに必要な量である。被験体に投与される
場合、in vitroでの効果を達成するよう経験的に決定される標的組織又は全身濃度を達成する投薬量が一般に用いられる。このような投薬量は、過度の実験を伴わずに、当業者により決定される。例示的な投薬量は、実施例に詳細に記載される。
【0083】
HIVコード核酸コンストラクトを含む薬学的組成物は、筋肉内、皮下、又は静脈内注射のように当業者に既知の任意の手段(Banga, A., "Parenteral Controlled Delivery of Therapeutic Peptides and Proteins," Therapeutic Peptides and Proteins, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA, 1995;DNA Vaccines: Methods and Protocols (Methods in Molecular Medicine), Douglas B. Lowrie and Robert G. Whalen (Eds.), Humana Press, 2000参照)により投与されるが、しかし経口、鼻又は肛門投与も意図される。一実施形態では、投与は皮下又は筋肉内注射による。投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に既知であるか又は明らかであり、Remingtons Pharmaceutical Sciences, 19th Ed., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 1995のような出版物に更に詳細に記載されている。
【0084】
核酸コンストラクトに適切な処方物、例えば本明細書中に開示されるプライマー又は追加免疫組成物としては、酸化防止剤、緩衝剤及び静菌剤を含有してもよい水性及び非水性溶液等張滅菌溶液、並びに沈殿防止剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含有してもよい水性及び非水性滅菌懸濁液が挙げられる。処方物は、アンプル及びバイアルのような単位量又は複数回量の密封容器に存在し、フリーズドライ(凍結乾燥)条件中で保存され、使用直前に滅菌液体担体、例えば水を加えるだけでよい。その場で調合する溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製される。好ましくは担体は、緩衝生理食塩溶液である。更に好ましくは、本発明の方法において用いる組成物は、投与前に核酸コンストラクトが損傷しないよう処方される。例えば組成物は、発現ベクターを調製、保存又は投与するために用いられる、ガラス容器、注射器又は針のような用具によってアデノウイルスベクターの損失を低減するよう処方され得る。組成物は、構成成分の光感受性及び/又は温度感受性を低減するよう処方される。この目的のために、組成物は好ましくは薬学的に許容可能な液体担体、例えば上記のようなもの、並びにポリソルベート80、L−アルギニン、ポリビニルピロリドン、トレハロース及びそれらの組合せから成る群から選択される安定剤を含む。このようなアデノウイルスベクター組成物の使用は、ベクターの保存寿命を延長し、投与を促し、そして本発明の方法の効率を増大する。アデノウイルスベクター含有組成物の処方は更に、例えば米国特許第6,225,289号、第6,514,943号、米国特許出願公開第2003/0153065 A1号、及び国際特許出願公開WO00/34444に記載されている。アデノウイルスベクター組成物はまた、形質導入効率を増強するよう処方される。更に、組成物はその他の治療的又は生物学的に活性な物質を含み得ると当業者は理解するであろう。例えば、イブプロフェン又はステロイドのような炎症を制御する因子は、アデノウイルスベクターのin vivo投与に関連した腫脹及び炎症を低減するためのアデノウイルスベクター組成物の一部である。本明細書中で考察されるように、免疫系刺激剤は、抗原に対する任意の免疫応答を増強するために投与される。抗生物質、即ち殺微生物薬及び殺真菌薬は、既存の感染を治療し、且つ/又は遺伝子移入手法に関連した感染のようなさらなる感染の危険を低減するために存在する。
【0085】
組成物は、治療的処置のために投与される。治療的適用においては、HIVへの暴露又はそれへの感染の前又は後に、治療的有効量の組成物が被験体に投与される。曝露前に投与される場合、治療的適用は、予防的投与(例えばワクチン)と呼ばれる。組成物の1回又は複数回投与は、被験体に必要とされ、且つ耐容されるような投薬量及び頻度によって投与される。一実施形態では、投薬量はボーラスとして1回投与されるが、しかし別の実施形態では、防御的免疫応答のような治療結果が達成されるまで、定期的に適用される。一般に、用量は、被験体が許容不可能な毒性を生じることなく、疾患の症候又は兆候を治
療するか又は改善するのに十分である。全身又は局所投与が利用される。
【0086】
制御放出非経口処方物は、移植片、油状注射液として、又は粒子系として作製される。粒子系としては、ミクロスフィア、ミクロ粒子、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフィア、及びナノ粒子が挙げられる。約1μmより小さい粒子、ミクロスフィア及びミクロカプセルは、一般にそれぞれナノ粒子、ナノスフィア及びナノカプセルと呼ばれる。毛管は、ナノ粒子のみが静脈内に投与されるよう、約5μmの直径を有する。ミクロ粒子は、通常直径約100μmであり、皮下又は筋肉内に投与される(Kreuter, Colloidal Drug Delivery Systems, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, 219-342ページ, 1994;Tice & Tabibi, Treatise on Controlled Drug Delivery, A. Kydonieus,
ed., Marcel Dekker, Inc. New York, NY, 315-339ページ, 1992参照)。
【0087】
特定の実施形態では、薬学的組成物はアジュバントを含む。アジュバントは、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムの懸濁液のような抗原が吸着する無機物であるか、又は抗原溶液が油中に乳化される(MF−59、フロイント不完全アジュバント)油中水水型乳濁液、時としては抗原性を更に増強する(抗原の分解を抑制する且つ/又はマクロファージの流入を引き起こす)ために死菌マイコバクテリアの封入を伴う(フロイント完全アジュバント)油中水型乳濁液であり得る。核酸ワクチンにおいては、生得免疫に関与する受容体と結合し、それを刺激する天然又は合成免疫刺激性組成物が、HIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトとともに投与される。例えば特定のトール様受容体(TLR7、TLR8及びTLR9など)を刺激する物質が、HIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトと組合せて投与される。いくつかの実施形態では、核酸コンストラクトは、免疫刺激性CpGオリゴヌクレオチドと組合せて投与される。
【0088】
HIV抗原ポリペプチドをコードする核酸コンストラクトは、裸DNAプラスミドとしてin vivoで導入される。DNAベクターは、トランスフェクション、エレクトロポレーション(例えば経皮エレクトロポレーション)、マイクロインジェクション、形質導入、細胞融合、DEAEデキストラン、リン酸カルシウム沈降、遺伝子銃の使用又はDNAベクター運搬体の使用のような当該技術分野で既知の方法により、目的のの宿主細胞中に導入されるが、これらの方法に限定されない。(例えばWu他、 J. Biol. Chem., 267: 963-967ページ, 1992;Wu 及び Wu、 J. Biol. Chem., 263: 14621-14624ページ, 1988;及びWilliams他、 Pro. Natl. Acad. Sci. USA 88: 2726-2730ページ, 1991を参照)。実施例において詳細に記載されるように、治療用核酸コンストラクトをin vivoで導入するために、Biojector(登録商標)無針注射装置のような無針デリバリー装置が利用される。受容体媒介性DNAデリバリーアプローチも用いられる(Curiel他、 Hum. Gene Ther., 3: 147-154ページ, 1992;及びWu 及び Wu、 J. Biol. Chem., 262: 4429-4432ページ, 1987)。哺乳類筋肉組織に裸DNAを処方し、投与するための方法は、米国特許第5,580,859号及び第5,589,466号に開示されており、これらの記載内容はともに参照により本明細書中で援用される。陽イオン性オリゴペプチド(例えばWO95/21931)、DNA結合タンパク質由来のペプチド(例えばWO96/25508)又は陽イオン性ポリマー(例えばWO95/21931)のような他の分子も、in vivoでの核酸のトランスフェクションを促すために有用である。
【0089】
或いは、HIV抗原をコードする核酸コンストラクトを細胞中に導入するために、エレクトロポレーションを利用するのが便利である。エレクトロポレーションは当業者に既知である(例えば:Lohr他 Cancer Res. 61: 3281-3284ページ, 2001;Nakano他、 Hum Gene Ther. 12: 1289-1297ページ, 2001;Kim他、 Gene Ther. 10: 1216-1224ページ, 2003;Dean他、 Gene Ther. 10: 1608-1615ページ, 2003;及びYoung他、 Gene Ther 10: 1465-1470ページ, 2003参照)。例えばエレクトロポレーションにおいて、高濃度のベクター
DNAが宿主細胞(単離自己由来末梢血又は骨髄細胞など)の懸濁液に加えられ、混合物は電場で通電される。経皮エレクトロポレーションは、in vivoで固形組織(筋肉など)の細胞中に非相同核酸を導入するために、動物及びヒトに利用される。通常、例えば1つ又は複数の電気パルスを送達するための電極とともに針又は外套針を用いて、DNAを含有する溶液を標的組織中に導入することにより、核酸コンストラクトがin vivoで組織中に導入される。例えば一連の電気パルスは、例えば100Vで50msecの3〜10回のパルスで、トランスフェクションを最適化するために利用される。いくつかの場合、複数回のセッション又は投与が実施される。
【0090】
HIV抗原をコードする核酸コンストラクトを宿主細胞中に導入するために用いられる別の既知の方法は、粒子衝撃(バイオリスティック形質転換としても既知)である。バイオリスティック形質転換は一般に、いくつかの方法のうちの1つで成し遂げられる。一つの一般的な方法は、細胞に不活性又は生物学的に活性な粒子を噴射することを含む。この手法は、例えば米国特許第4,945,050号、第5,036,006号及び第5,100,792号(全てSanford他による)に開示されており、これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される。この手法は一般的に、細胞の外表面を貫通し、粒子を内部に組み入れられるのに有効な条件下で、細胞に不活性又は生物学的に活性な粒子を噴射することを含む。不活性粒子が利用される場合、外因性DNAを含有するプラスミドで粒子をコーティングすることにより、プラスミドは細胞中に導入される。或いは標的細胞はプラスミドに取り囲まれ、プラスミドが粒子の通った跡により細胞中に運搬される。
【0091】
或いはベクターはリポフェクションによりin vivoで導入される。過去10年間に、in vitroにおける核酸の封入及びトランスフェクションのためのリポソームの使用が増大してきた。リポソーム媒介性トランスフェクションに伴って生じる困難及び危険を限定するために設計される合成陽イオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のin vivoトランスフェクションのためにリポソームを調製するために用いられる(Felgner他、 Pro. Natl. Acad. Sci. USA 84: 7413-7417ページ, 1987;Mackey他、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 8027-8031ページ, 1988;Ulmer他、 Science 259: 1745-1748ページ, 1993)。陽イオン性脂質の使用は負荷電核酸の封入を促進し、負荷電細胞膜との融合を促す(Felgner 及び Ringold Science 337: 387-388ページ, 1989)。核酸の導入に特に有用な脂質化合物及び組成物は、WO95/18863及びWO96/17823に、そして米国特許第5,459,127号に記載されており、これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される。
【0092】
他の実施形態では、核酸コンストラクトはウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築し、使用するための方法は、当該技術分野で既知である(例えばMiller 及び Rosman, BioTech., 7: 980-990ページ, 1992参照)。好ましくはウイルスベクターは複製欠陥性であり、即ちそれらは標的細胞中で自律的に複製できない。概して、本開示の範囲内で用いられる複製欠陥性ウイルスベクターのゲノムは、感染細胞中におけるウイルスの複製に必要である少なくとも1つの領域を欠く。これらの領域は、当業者に既知の任意の手法により、(全部又は一部)が除去されるか、又は非機能性にされる。これらの手法は、全体的除去、(他の配列による、特に挿入核酸による)置換、(複製のために)必須な領域に対する1つ又は複数の塩基の部分的欠失又は付加を含む。このような手法は、in vitroで実施される(例えば単離DNAに関して)。
【0093】
いくつかの場合には、複製欠陥性ウイルスは、ウイルス粒子のキャプシド形成に必要なゲノムの配列を保持する。DNAウイルスベクターは一般に、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、モロニー白血病ウイルス(MLV)及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)を含む弱毒化又は欠損DNAウイルスが挙げられるが、これらに限定
されない。ウイルス遺伝子を完全に又はほぼ完全に欠く欠損ウイルスは、細胞中への導入後は感染性でないので好ましい。欠損ウイルスベクターの使用は、ベクターが他の細胞を感染し得るという問題を伴わずに、特定の局在化領域での細胞への投与を可能にする。従って特定組織を、特に標的とすることが可能である。特定ベクターの例としては、欠損ヘルペスウイルス1(HSV1)ベクター(Kaplitt他、 Mol. Cell. Neurosci., 2: 320-330ページ, 1991)、糖タンパク質L遺伝子を欠く欠損ヘルペスウイルスベクター(例えば特許公開RD371005A参照)、又は他の欠損ヘルペスウイルスベクター(例えばWO94/21807及びWO92/05263参照); Stratford-Perricaudet他(J. Clin. Invest., 90: 626-630ページ 1992;La Salle他、 Science 259: 988-990ページ, 1993)により記載された弱毒化アデノウイルスベクター;及び欠損アデノ随伴ウイルスベクター(Samulski他、 J. Virol., 61: 3096-3101ページ, 1987;Samulski他、 J. Virol., 63: 3822-3828ページ, 1989;及びLebkowski他、 Mol. Cell. Biol., 8: 3988-3996ページ, 1988)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
一実施形態では、ベクターはアデノウイルスベクターである。アデノウイルスは、開示の核酸を種々の細胞型に効率的に送達するよう改変することができる真核生物DNAウイルスである。アデノウイルスの種々の血清型が存在する。これらの血清型のうち、2型又は5型ヒトアデノウイルス(Ad2又はAd5)、或いは動物起源のアデノウイルス(例えばWO94/26914参照)に対して本開示の範囲内で選択される。本開示の範囲内で用いられ得る動物起源のアデノウイルスとしては、イヌ、ウシ、ネズミ(例えばMav1、Beard他、 Virol., 75-81ページ, 1990)、ヒツジ、ブタ、鳥類及びサル(例えばSAV)起源のアデノウイルスが挙げられる。いくつかの実施形態では、動物起源のアデノウイルスは、CAV2アデノウイルス(例えばマンハッタン又はA26/61系統(ATCC VR−800))のようなイヌアデノウイルスである。
【0095】
本明細書中に記載される複製欠損性アデノウイルスベクターとしては、ITR、キャプシド形成配列及び該ポリヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、アデノウイルスベクターの少なくともE1領域は非機能性である。E1領域における欠失は、好ましくはAd5アデノウイルスの配列中のヌクレオチド455〜3329(PvuII−BglII断片)、又は382〜3446(HinfII−Sau3A断片)から伸長する。他の領域、特にE3領域(例えばWO95/02697)、E2領域(例えばWO94/28938)、E4領域(例えばWO94/28152、WO94/12649及びWO95/02697)、又は後期遺伝子L1〜L5のいずれかの領域も改変され得る。
【0096】
他の実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1領域における欠失を有する(Ad1.0)。E1−欠失アデノウイルスの例は、EP185,573に開示されており、この記載内容は参照により本明細書中で援用される。別の実施形態では、アデノウイルスベクターは、E1及びE4領域における欠失を有する(Ad3.0)。E1/E4欠失アデノウイルスの例は、WO95/02697及びWO96/22378に開示されている。
【0097】
本開示による複製欠損性組換えアデノウイルスは、当業者に既知の任意の手法により調製される(例えばLevrero他、 Gene 101: 195ページ, 1991;EP 185573;及びGraham EMBO J., 3: 2917ページ, 1984参照)。特にそれらは、目的のDNA配列を含むアデノウイルス及びプラスミド間の相同組換えにより調製される。相同組換えは、適切な細胞株中へのアデノウイルス及びプラスミドの同時トランスフェクション後に成し遂げられる。用いられる細胞株は、好ましくは(i)用いられる因子により形質転換可能であり、そして(ii)組換えの危険を回避するために好ましくは組込まれた形態で、複製欠損性アデノウイルスのゲノムの一部と相補的でありる配列を含有する。用いられる細胞株の例は、ヒト胚性腎細胞株293(Graham他、 J. Gen. Virol. 36: 59ページ, 1977)であり、これはそのゲノム中に組み込まれたAd5アデノウイルスのゲノムの左手部分(12%
)を含有し、出願WO94/26914及びWO95/02697に記載されたようなE1及びE4機能を補足し得る細胞株である。組換えアデノウイルスは、当業者に既知である標準的な分子生物学的手法を用いて回収、精製される。HIV抗原をコードする核酸は、例えばレンチウイルスベクター又はアデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターなどのレトロウイルスベクターのような他のウイルスベクターを用いても導入される。
【0098】
実施例に詳細に記載されるように、一実施形態では、HIVの複数の分岐群又は系統の抗原ポリペプチドに対応するHIV抗原をコードする核酸コンストラクトを含む薬学的組成物は、HIVへの曝露前に被験体中に導入されて、防御的免疫応答を誘導する。通常、核酸コンストラクトはプラスミドである。例えば、異なるHIV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含むいくつかのプラスミドは、薬学的組成物中に含まれる。例えば、異なるHIV分岐群又は系統の抗原ポリペプチドをコードする一群のプラスミドは、複数の分岐群又は系統のHIVへの感染に対して防御する免疫を誘導するために組成物中に含まれる。例示的な一実施形態では、組成物は6つのプラスミドを含む。プラスミドの各々は、in vivoにおける抗原ポリペプチドの発現を促進する転写調節配列と機能可能な状態で連結された、異なるHIV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む。例えば組成物は、Gagポリペプチド、Polポリペプチド、Nefポリペプチド、及び任意の異なる分岐群又は系統のEnvポリペプチド(例えば分岐群A Envポリペプチド、分岐群B Envポリペプチド及び/又は分岐群Cポリペプチド)をコードする異なるプラスミドを含む。特定の一実施形態では、ワクチン組成物は、6つのプラスミド(ぞれぞれ配列番号1〜6により表わされるVRC4409、VRC4401、VRC4404、VRC5736、VRC5737及びVRC5738)を含む。この特定の実施形態はVRC−HIVDNA016−00−VPと呼ばれ、実施例に更に詳細に記載される。
【0099】
典型的にはマルチプラスミド組成物は、実質的に等しい比率(例えば約1:1:1:1:1:1)で6つのプラスミドを含む。薬学的組成物は、1回又は複数回量で被験体に投与される。用量範囲は、被験体の身体的、代謝的及び免疫学的特質によって変えられるが、しかしながら少なくとも約1mg及び約12mg以下の用量が通常投与される。例えば1回量は、少なくとも約2mg、又は少なくとも約3mg、又は少なくとも約4mgの複合DNAである。通常、1回量は、約6mg、又は約8mg又は約10mgの複合DNAを超えない。実施例に記載されるように、約4mgの複合プラスミド重量という用量が、典型的には免疫が正常な成人における防御的免疫応答を誘導するために有効である。
【0100】
1回量又は時間間隔をおいて分けられる複数回量は、HIVに対する免疫応答を誘導するために投与される。例えば2回量又は3回量又は4回量又は5回量又は6回量又はそれ以上が、数週間、数ヶ月にわたって又は数年にわたって被験体に投与され、免疫応答を最適化する。
【0101】
いくつかの場合、核酸コンストラクトを含む薬学的組成物、例えばマルチプラスミドワクチンVRC−HIVDNA016−00−VPが、DNAワクチン初回刺激としてそれを用い、その後、アデノウイルスベクター追加免疫される組合せ療法処方に含まれる。初回刺激−追加免疫処方は、HIV感染の非ヒト霊長類モデルにおいて有望であることを示している。このような処方は、高レベルの免疫応答を誘導する能力を有する。例えばアデノウイルスベクター組成物のアデノウイルスベクターによりコードされるHIV抗原と同一である少なくとも1つのHIV抗原をコードする1つ又は複数の核酸コンストラクトを含む「初回刺激」組成物が、被験体に投与される。例えば初回刺激組成物は、1つ又は複数のアデノウイルスベクターを含む「追加免疫」組成物の投与の少なくとも約1週間前に投与される。初回刺激組成物(VRC−HIVDNA016−00−VPなど)の1つ又は複数の核酸配列は、遺伝子導入ベクターの一部又は裸DNAとして投与される。任意の遺伝子導入ベクターが初回刺激組成物中に用いられ、例としてはプラスミド、レトロウイ
ルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルス、ヘルペスウイルス又はアデノウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。例示的な一実施形態では、導入ベクターはプラスミドである。
【0102】
従って上記のマルチプラスミド組成物は、HIVに対する免疫応答を初回刺激するために、HIV抗原をコードする1つ又は複数のアデノウイルスベクターを含む組成物の投与と組合せて用いられる。例えばアデノウイルスベクター組成物は、(i)例えばGag−Pol−Nefポリペプチドをコードする融合タンパク質のようなポリタンパク質又は融合タンパク質として、2つ以上のHIV抗原をコードする単一アデノウイルスベクターを含む。或いはアデノウイルスベクター組成物は、(ii)各々がEnvポリペプチドのような単一のHIV抗原をコードする、2つ以上、例えば3、又は4つ以上のアデノウイルスベクターのような1つのHIV抗原をコードするマルチアデノウイルスベクターを含む。構成(i)と一致して、3つ以上の異なるHIV抗原(例えば3つ以上、4つ以上、或いは5つ以上の異なるHIV抗原)をコードするか又は同一抗原のマルチコピーをコードする核酸配列を含むアデノウイルスベクターを用いることは、本発明の範囲内であるが、アデノウイルスベクターが少なくとも2つ以上の異なるHIV抗原をコードすることを条件とする。同様に、構成(ii)と一致して、各々が異なるHIV抗原又は同一抗原のマルチコピーをコードするいくつかの核酸配列(例えば3つ以上、4つ以上、或いは5つ以上の異なる核酸配列)を含むアデノウイルスベクターを用いることは本発明の範囲内であるが、アデノウイルスベクターが少なくとも2つの異なるHIV抗原をコードすることを条件とする。構成(i)であっても(ii)であっても、アデノウイルスベクター組成物は、好ましくは、3つ以上、或いは4つ以上の異なるHIV抗原をコードする1つ又は複数のアデノウイルスベクターを含む(例えばこの場合、各ベクターは、3つ以上、或いは4つ以上の異なるHIV抗原をコードする核酸配列を含み、又は各ベクターは、3つ以上、或いは4つ以上の核酸配列を含み、そして各核酸配列は異なるHIV抗原をコードする)。特定の実施形態では、2つ以上、3つ以上、或いは4つ以上の異なるHIV抗原は、2つ以上、3つ以上、或いは4つ以上の異なるHIV分岐群由来のものである。用いられるアデノウイルスベクターの数、或いはそれによりコードされる異なるHIV抗原の数に上限はない。
【0103】
もちろん、アデノウイルスベクターの上記の構成の組合せは、単一の組成物中で用いられ得る。例えば本発明に従って用いられるアデノウイルスベクター組成物は、単一のHIV抗原をコードする第1のアデノウイルスベクター、並びに第1のアデノウイルスベクターによりコードされるHIV抗原とは異なる2つ以上のHIV抗原をコードする第2のアデノウイルスベクターを含み得る。本明細書中に開示されるアデノウイルスベクター構成の他の同様の組合せ及び順列は、当業者により容易に決定される。
【0104】
特定の実施形態では、追加免疫組成物はマルチアデノウイルスベクターを含む。例えば追加免疫は、その各々が異なる分岐群又は系統のEnvポリペプチドのようなHIV Envポリペプチドをコードする複数のアデノウイルスベクターを含み得る。更に、追加免疫組成物は、Gag、Pol及び/又はNefポリペプチドをコードするアデノウイルスベクターを含み得る。特定の一実施形態では、VRC−HIVDNA014−00VPと呼ばれる追加免疫組成物は、4つのアデノウイルスベクターを含み、そのうちの3つは異なる分岐群(即ち分岐群A、分岐群B及び分岐群C)のEnvポリペプチドをコードし、そして1つのアデノウイルスベクターはGag及びPol抗原(分岐群B)をコードする。もちろん、より少ない又はより多いアデノウイルスベクターを組み込む、及び/又は同一若しくは異なるHIV分岐群又は系統の抗原をコードする複数のバリアントが当業者により容易に設計される。
【0105】
追加免疫組成物の1つ又は複数の核酸配列によりコードされるHIV抗原はしばしば初
回刺激組成物の核酸コンストラクトによりコードされるHIV抗原と同一であるが、しかしいくつかの実施形態では、アデノウイルスベクター組成物によりコードされる抗原とは異なるHIV抗原をコードする1つ又は複数の核酸配列を含む初回刺激組成物を用いるのが適切である。例えば異なる分岐群又は系統のGag及び/又はPol及び/又はNef抗原、或いは異なる分岐群又は系統のEnv抗原。
【0106】
初回刺激組成物は、HIVに対する免疫応答を初回刺激するために哺乳類に投与される。2回以上の用量のプライマー組成物は、任意の適切な時間枠(例えば追加免疫前少なくとも約1週間、2週間、4週間、8週間、12週間、16週間、又はそれより長い期間)で提供される。好ましくは初回刺激組成物は、追加免疫組成物の投与の少なくとも3ヶ月(例えば3、6、9、12ヶ月又はそれ以上)前に哺乳類に投与される。最も好ましくは初回刺激組成物は、追加免疫組成物の投与の少なくとも約6ヶ月〜約9ヶ月前に哺乳類に投与される。2回以上の用量の追加免疫投与は、免疫を保持するために任意の適切な時間枠で提供される。
【0107】
哺乳類にアデノウイルスベクター組成物及び/又は初回刺激組成物をデリバリーするために、任意の投与経路が用いられる。実際、アデノウイルスベクター組成物及び/又は初回刺激組成物を投与するために2つ以上の経路が用いられるが、しかし特定経路は、別の経路より即時的且つより有効な反応を提供し得る。最も一般的には、アデノウイルスベクター組成物及び/又は初回刺激組成物は、筋肉内注射により投与される。アデノウイルスベクター組成物及び/又は初回刺激組成物は、体腔中に注入されるか又は滴注され、皮膚を通して吸収され(例えば経皮パッチにより)、吸入され、摂取され、組織に局所的に適用されるか、或いは例えば静脈内、腹腔内又は動脈内投与により非経口的に投与される。
【0108】
アデノウイルスプライマー組成物及び/又は追加免疫組成物は、スポンジ、生体適合性網目構造物、機械的レザバー、又は機械的埋込み物のような、制御又は持続的放出が可能な装置を用いて投与される。埋込み物(例えば米国特許第5,443,505号参照)、例えば高分子組成物で構成される機械的レザバー又は埋込み物又は装置などの埋込み可能装置のような装置(例えば米国特許第4,863,457号参照)は、組成物の投与のために特に有用である。アデノウイルスベクター組成物及び/又は初回刺激組成物は、例えばゲル発泡体、ヒアルロン酸、ゼラチン、硫酸コンドロイチン、ビス−2−ヒドロキシエチル−テレフタレート(BHETのようなポリホスホエステル、及び/又はポリ乳酸−グリコール酸を含む持続性放出処方物(例えば米国特許第5,378,475号参照)の形態でも投与される。
【0109】
追加免疫組成物は、少なくとも約1×105粒子(粒子単位とも呼ばれる)のアデノウイルスベクターを含むアデノウイルスベクターの1回量を含む。この用量は、好ましくは少なくとも約1×106粒子(例えば約1×106〜1×1012粒子)、更に好ましくは少なくとも約1×107粒子、更に好ましくは少なくとも約1×108粒子(例えば約1×108〜1×1011粒子又は約1×108〜1×1012粒子)、そして最も好ましくは少なくとも約1×109粒子(例えば約1×109〜1×1010粒子又は約1×109〜1×1012粒子)、或いは少なくとも約1×1010粒子(例えば約1×1010〜1×1012粒子)のアデノウイルスベクターである。或いはこの用量は、約1×1014粒子以下、好ましくは約1×1013粒子以下、更に好ましくは約1×1012粒子以下、更に好ましくは約1×1011粒子以下、そして最も好ましくは約1×1010粒子以下(例えば約1×109粒子以下)を含む。言い換えれば、アデノウイルスベクター組成物は、例えば約1×106粒子単位(pu)、2×106pu、4×106pu、1×107pu、2×107pu、4×107pu、1×108pu、2×108pu、4×108pu、1×109pu、2×109pu、4×109pu、1×1010pu、2×1010pu、4×1010pu、1×1011pu、2×1011pu、4×1011pu、1×1012pu、2×1012pu又は4×10
12puのアデノウイルスベクターを含むアデノウイルスベクターの1回用量を含む。
【実施例】
【0110】
実施例1:プラスミドの構築
核酸コンストラクトは、ヒトCMV最初期(IE)エンハンサー、プロモーター及びイントロンを含む親1012DNAワクチンプラスミドから得られる。CMV/R調節エレメントを構築するために、CMV IEイントロンの大多数を含有する1012プラスミドのSacII/HpaI断片を、HTLV−1 R領域の227bp EcoRV/HpaI断片で置換した(Seiki et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80: 3618-3622ページ, 1983年)。生じたCMV/Rプラスミドは、ヒトCMV IEエンハンサー/プロモーターを、その後にHTLV−1 R領域及びCMV IE3’イントロンの123bp断片を含有する。R領域におけるスプライス・ドナー及びCMV IE3’イントロンにおけるスプライス・アクセプターは、一対のスプライシング・シグナルとして働く。同様に、CMV/RプラスミドのCMVエンハンサー/プロモーター領域をラウス肉腫ウイルス(RSV)エンハンサー/プロモーターの381bp AflIII/HindIII断片又はマウスユビキチンB(mUB)エンハンサー/プロモーターの842bp SpeI/EcoRV断片でそれぞれ置換することにより、RSV/R及びmUB/Rプラスミドを構築した。mUBエンハンサー/プロモーターは、前に記載されている(Yew他、 Mol. Ther. 4: 75-82ページ, 2001年)。
【0111】
CMV/R分岐群B Gag/h(VRC−4401)の構築
図1に示したDNAプラスミドVRC−4401を構築するために、HXB2(GENBANK(登録商標)、寄託番号K03455)由来のgagポリタンパク質のアミノ酸配列(Pr55、アミノ酸1〜432)を、ヒト細胞中での発現のために最適化されたコドンを用いてgag遺伝子の合成バージョンを作製するために用いた。合成gag遺伝子のヌクレオチド配列はHXB2遺伝子との相同性をほとんど示さないが、しかしコードされるタンパク質は同一である。Gag(B)をコードする合成遺伝子を含むSalI/BamHI断片を、pVR1012主鎖中に同一インサートを含むプラスミドVRC3900から切り出し、上記のCMV/R主鎖のSalI/BamHIサイト中にクローニングした。予測されるVRC−4401ドメインの概要を、表2に示す。プラスミドは5886ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ3.9MDaの分子量を有する。VRC−4401の配列は、配列番号1で示される。
【0112】
【表2】

【0113】
CMV/R分岐群B Pol/h(VRC−4409)の構築
図2に示したDNAプラスミドVRC−4409を構築するために、NL4−3(GENBANK(登録商標)、寄託番号M19921)由来のPolポリタンパク質のアミノ酸配列(アミノ酸3〜1003)を、ヒト細胞中での発現のために最適化されたコドンを用いてpol遺伝子の合成バージョンを作製するために用いた。Polの冒頭部分で翻訳を開始させるために、メチオニンコドンを合成ポリメラーゼ遺伝子の5’末端に付加して、Pol/h遺伝子を作製した。更にプロテアーゼ(PR)突然変異をアミノ酸553に導入し(AGG→GGC又はアミノ酸R→G)、逆転写酵素(RT)突然変異をアミノ酸771に導入し(GAC→CAC又はアミノ酸D→H)、そしてインテグラーゼ(IN)突然変異をアミノ酸1209に導入した(ACT→CAT又はアミノ酸D→A)。Polを発現する遺伝子を、上記のCMV/R主鎖中に導入した。予測されるVRC−4409ドメインの概要を、表3に示す。プラスミドは7344ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ4.8MDaの分子量を有する。VRC−4409の配列は、配列番号2で示される。
【0114】
【表3】

【0115】
CMV/R HIV−1 Nef/h(VRC−4404)の構築
図3に示したDNAプラスミドVRC−4404を構築するために、HIV−1 NY5/BRU(LAV−1)クローンpNL4−3(GENBANK(登録商標)、寄託番号M19921)由来のNefタンパク質のアミノ酸配列を、ヒト細胞中での発現のために最適化されたコドンを用いてNef遺伝子の合成バージョン(Nef/h)を作製するために用いた。ヌクレオチド配列Nef/hはウイルス遺伝子との相同性をほとんど示さないが、コードされるタンパク質は同一である。ミリストール部位(GGC−Gly、アミノ酸2〜3)を欠失させた。Nefをコードする断片を、それが元々挿入されていたpVR1012主鎖から、XbaI/BamHIで消化して、上記のCMV/R主鎖のXbaI/BamHIサイト中にクローニングした。予測されるVRC−4404ドメインの概要を、表4に示す。プラスミドは5039ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ3.3MDaの分子量を有する。VRC−4404の配列は、配列番号3で示される。
【0116】
【表4】

【0117】
CMV/R−HIV−1分岐群A Env/h(VRC−5736)
図4に示したDNAプラスミドVRC−5736を構築するために、92rw020(R5向性、GENBANK(登録商標)、寄託番号U08794)由来のエンベロープポリタンパク質(gp160)のアミノ酸配列を、ヒト細胞中での発現のために改変されたコドンを用いて遺伝子の合成バージョン(分岐群A gp145delCFI)を作製するために用いた。ヒト細胞中に典型的に見出されるコドンを用いることにより、タンパク質発現を制限するウイルスRNA構造を破壊するよう意図された配列を用いてHIV−1遺伝子を発現するプラスミドを合成的に製造した。ヌクレオチド配列R5gp145delCFIは92rw020遺伝子との相同性をほとんど示さないが、コードされるタンパク質は同一である。切頭化エンベロープポリタンパク質は、全SUタンパク質及びTMドメインを含有するが、融合ドメイン及び細胞質ドメインを欠く。Heptad(H)1、Heptad2及びそれらの間空(IS)は、オリゴマー形成に関与する。アミノ酸486〜519からなる融合及び切断(F/CL)ドメインは欠失している。Heptad(H)1及び2間のアミノ酸576〜604からなる間空(IS)は欠失している。XbaI(ATGから18ヌクレオチド上流)〜BamH1(ATGから1912ヌクレオチド下流)断片は、5’末端のポリリンカー、コザック配列及びATGを含有しており、これを上記のCMV/R主鎖のXbaI−BamHIサイト中にクローニングした。予測されるEnv AのVRC−5736ドメインの概要を、表5に示す。プラスミドは6305ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ4.2MDaの分子量を有する。VRC−5736の配列は、配列番号4で示される。
【0118】
【表5】

【0119】
CMV/R 分岐群B Env/h(VRC−5737)の構築
図5に示したDNAプラスミドVRC−5737を構築するために、HXB2(X4向性、GENBANK(登録商標)、寄託番号K03455)由来のエンベロープポリタンパク質(gp160)のアミノ酸配列を、ヒト細胞中での発現のために最適化されたコドンを用いて遺伝子の合成バージョン(X4gp160/h)を作製するために用いた。ヌクレオチド配列X4gp160/hはHXB2遺伝子との相同性をほとんど示さないが、コードされるタンパク質は同一で、以下のアミノ酸置換を有する:F53L、N94D、K192S、I215N、A224T、A346D及びP470L。エンベロープタンパク質(R5gp160/h)のR5向性バージョンを産生するために、X4gp160/h(VRC3300)由来のHIV−1エンベロープポリタンパク質のアミノ酸275〜361をコードする領域を、HIV−1のBaL系統(GENBANK(登録商標)、寄託番号M68893、この場合もヒトの好ましいコドンを用いる)由来の対応する領域で置換した。pR5gp160/h(VRC3000)由来のエンベロープタンパク質遺伝子の全長R5向性バージョンを、アミノ酸704に関するコドンの後で終結させた。切頭化エンベロープポリタンパク質(gp145)は、全SUタンパク質及び融合ドメインを含むTMタンパク質の一部、膜貫通ドメイン、及びオリゴマー形成のために重要な領域を含有する。Heptad(H)1、Heptad2及びそれらの間空(IS)は、オリゴマー形成に関与する。アミノ酸503〜536の融合及び切断(F/CL)ドメインは欠失している。Heptad(H)1及び2間のアミノ酸593〜620からなる間空(IS)は欠失している。発現ベクター主鎖は、上記のCMV/Rである。予測されるVRC−5737ドメインの概要を、表6に示す。プラスミドは6338ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ4.2MDaの分子量を有する。VRC−5737の配列は、配列番号5で示される。
【0120】
【表6】

【0121】
CMV/R HIV−1分岐群C Env/h(VRC−5738)の構築
図6に示したDNAプラスミドVRC−5738を構築するために、97ZA012(R5向性、GENBANK(登録商標)、寄託番号AF286227)由来のエンベロープポリタンパク質(gp145delCFI)のアミノ酸配列を、ヒト細胞中での発現のために最適化されたコドンを用いて遺伝子の合成バージョン(分岐群C gp145delCFI)を作製するために用いた。ヌクレオチド配列R5gp145delCFIは遺伝子97ZA012との相同性をほとんど示さないが、コードされるタンパク質は同一である。切頭化エンベロープポリタンパク質は、全SUタンパク質及びTMドメインを含有するが、しかし融合ドメイン及び細胞質ドメインを欠く。Heptad(H)1、Heptad2及びそれらの間空(IS)は、オリゴマー形成に関与する。アミノ酸487〜520の融合及び切断(F/CL)ドメインは欠失している。Heptad(H)1及び2間のアミノ酸577〜605からなる間空(IS)は欠失している。XbaI(ATGから18ヌクレオチド上流)〜BamH1(ATGから1914ヌクレオチド下流)断片は、5’末端のポリリンカー、コザック配列及びATGを含有しており、これをCMV/R主鎖のXbaI−BamHIサイト中にクローニングした。予測されるVRC−5738ドメインの概要を、表7に示す。プラスミドは6298ヌクレオチド塩基対(bp)長であり、およそ4.2MDaの分子量を有する。VRC−5738の配列は、配列番号6で示される。
【0122】
【表7】

【0123】
実施例2:CMV/R転写調節配列によるHIV抗原ポリペプチドの発現増大
CMV/R転写調節エレメントを含むプラスミド由来の抗原発現を評価するために、3T3細胞を上記の発現ベクターでトランスフェクトして、gp145ΔCFI発現をウエスタンブロットにより測定した。ネズミ繊維芽細胞3T3細胞を、リン酸カルシウムを用いて6−ウェルプレート中で、HIV−1 Env gp145ΔCFI(9)を発現する0.5μgの親1012(CMV)、CMV/R、RSV、RSV/R、mUB及びmUB/R DNAワクチンでトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後に、細胞を採取し、プロテアーゼ阻害剤を含む50mMのHEPES、150mMのNaCl、1%NP−40中に溶解した。10μgの総タンパク質をSDS−PAGEにより電気泳動し、gp145の発現をウエスタンブロット分析により評価した。ヒトHIV−IgGの5000倍希釈液を一次抗体として利用し、HRP標識ヤギ抗ヒトIgGの5000倍希釈液を二次抗体として利用した。ブロットを、ECLウエスタンブロット現像系(Amersham Biosciences, ピスカタウェイ, ニュージャージー州)を用いて現像した。
【0124】
CMV/Rプラスミド由来のgp145ΔCFIの発現は、親1012プラスミド由来の発現と比べて5〜10倍高かった(図8)。従って、HTLV−1 Rエレメントの付加は、CMVプロモーターにより促進される抗原発現を実質的に増大した。mUBプラスミド由来の基本発現は1012プラスミド由来のものより高かったが、Rエレメントの付加により更に増強されなかった(図8)。このことは、Rエレメント付加の効果がプロモーター依存性であることを実証した。RSVプラスミドと比較して、RSV/Rにおいて発現の増大が観察された(図8)。RSVプラスミド由来の発現は、1012プラスミド由来のものより決まって低い。
【0125】
実施例3:CMV/R多分岐群HIVワクチンの免疫原性
DNAプラスミドワクチンVRC−HIVDNA016−00−VPを含むプラスミドコンストラクト、並びに組換えアデノウイルスベクターワクチンVRC−HIVADV014−00−VPを用いたDNAプラスミド初回刺激/アデノウイルスベクター追加免疫投与で、マウス及び非ヒト霊長類において、非臨床免疫原性試験を実行した。免疫した動物からの末梢血単核球(PBMC)によるIFN−γの産生を定量的に測定するインターフェロンガンマ(IFN−γ)ELISPOTアッセイにより、これらの非臨床的免疫原性試験において細胞性免疫応答を試験した。HIV−1抗原(ワクチン中で発現されるタ
ンパク質の長さに及ぶ一連の短い重複ペプチド)にin vitroで細胞を曝露した。抗原刺激を受けたTリンパ球により産生されるIFN−γをアッセイプレートを被覆する抗体と結合させて、アルカリ性ホスファターゼ標識読出しシステムを用いてスポット形成細胞(SFC)として比色計で計数することができる。結果を、SFC/106PBMCとして表す。
【0126】
臨床等級ワクチンVRC−HIVDNA009−00−VP(4プラスミドワクチン、PCT公開番号WO/05034992)又はVRC−HIVDNA016−00−VPと組成が同一であるHIV−1遺伝子を発現するプラスミドを用いて、DNAプラスミド初回刺激を実施した。前臨床免疫学的試験に用いられる組換えアデノウイルスベクターワクチンは、GenVec, Inc.(ゲイサーズバーグ、メリーランド州)から供給される分岐群B
gag/pol及び分岐群A、B及びC Envをコードする4つのアデノウイルスベクターから成るGMP等級VRC−HIVADV014−00−VP(ロット番号026−03017、PCT出願番号PCT/US2005/12291、2005年4月12日出願)で構成される。表8は、プラスミドの概要を示す。
【0127】
マウス及び非ヒト霊長類で実施した免疫学的試験についての一覧を、表9に示す。
【0128】
【表8】

【0129】
【表9】

【0130】
gag−pol−nef融合タンパク質をコードするCMV/Rプラスミドによるワクチン接種は同一融合タンパク質をコードする非改変1012プラスミドより高いHIV−1特異的細胞性応答をマウスにおいて誘導する
抗原発現の増強がin vivoにおけるこれら新規のDNAワクチンの免疫原性を改善する可能性を調べるために、50μgの親1012DNAワクチン又はHIV−1 Env gp145ΔCFIを発現するCMV/R、RSV/R、mUB、又はmUB/R
DNAワクチンを用いてBalb/cマウス(N=5/群)を免疫した。0、2及び6週目に、マウスを3回免疫した。最終免疫の10日後に、IFN−γ及びTNF−α細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイにより、脾臓細胞のEnv特異的細胞性免疫応答を評価した。CMV/R DNAワクチンは、同一抗原を発現する親1012DNAワクチンと比較して、約2倍高いCD4+(p=0.15)及びCD8+(p=0.043)Tリンパ球応答を誘導した(図9)。逆に、RSV/R、mUB及びmUB/R DNAワクチンはCD8+免疫応答の増強を誘導しなかったが、これは、HTLV−1 RエレメントがCMVプロモーターに関連して、免疫原性を選択的に改善したことを示唆する。
【0131】
次に、親1012DNAワクチン及び別の抗原を発現するCMV/R DNAワクチンの免疫原性を比較した。偽プラスミド、又はHIV−1 Gag−Pol−Nef融合タ
ンパク質を発現するこれらのDNAワクチンを用いて、マウス(N=8/群)を免疫した。0及び6週目に、マウスを2回免疫し、初回免疫又は追加免疫の3週間後に採取した脾臓細胞を用いて、IFN−γ ELISPOTアッセイにより、細胞性免疫応答を評価した。標準生理食塩水中で希釈されるプラスミドを以下の投与計画を用いて、BALB/c雌マウス(8匹/群)の群を免疫した:
分岐群B g−p−n(1012):VRC−4306(50μg/動物);このプラスミドは融合タンパク質としてGag−Pol−Nefを発現し、4−プラスミドワクチンVRC−HIVDNA009−00−VP(BB−IND 10681)中に含入される;
分岐群B g−p−n(CMV/R):VRC−4400(50μg/動物);このプラスミドは融合タンパク質としてGag−Pol−Nefを発現する。
【0132】
総計50μlのDNAを筋肉内(i.m.)免疫化利用して、0日目のマウス四頭筋に注射した。免疫した21日後に、免疫学的アッセイのためにマウスを屠殺した。
【0133】
ICSアッセイ。 インターフェロン−ガンマ(IFN−γ)及び腫瘍壊死因子−アルファ(TNF−α)に関する細胞内サイトカイン染色(ICS)により、CD4+及びCD8+Tリンパ球応答を評価した。つまり、免疫化マウスから脾臓細胞を採取し、全長HIV−1 Envタンパク質を網羅する11アミノ酸(2.5μg/ml)で重複する15アミノ酸ペプチドのプールと共にインキュベートし、続いて10μg/mlのブレフェルジンA(Sigma, セントルイス, ミズーリ州)で処理した。次に細胞を固定し、透過化処理し、ラット抗マウスCD3、CD4、CD8、IFN−γ及びTNF−αモノクローナル抗体(BD Pharmingen, サンディエゴ, カリフォルニア州)を用いて染色した。CD4+及びCD8+細胞集団中のIFN−γ及びTNF−α陽性細胞を、FlowJoプログラム(Tree Star, アッシュランド, オレゴン州)を用いて分析した。
【0134】
脾臓細胞を無菌的に取り出して、ホモジナイズして単一細胞懸濁液を作製した。次に、ワクチン接種マウス由来の脾臓細胞を用いてIFN−γ ELISPOTアッセイを実施して、ワクチン誘発細胞性免疫応答の大きさを評価した。PBS中の10μg/mlのラット抗マウスIFN−γ(Pharmingen, サンディエゴ, カリフォルニア州)100μl/ウェルで一晩被覆した96ウェル・マルチスクリーン・プレート(Millipore, ベッドフォード, マサチューセッツ州)を、Tween−20を0.25%含有する内毒素を持たないダルベッコPBS(Life Technologies, ゲイサーズバーグ, ミズーリ州)で洗浄し、FBSを5%含有するPBSを用いて、37℃で2時間ブロッキングした。プレートをTween−20を0.25%含有するダルベッコPBSで3回洗浄し、FBSを10%含有するRPMI1640ですすぎ、プールペプチドを含む反応容積100μl中の5×105脾臓細胞/ウェルを用いてインキュベートし、三重反復試験を行った。HIV−1
Gag、Pol及びNefペプチドプール(VRC, ベテスダ, ミズーリ州)を用いて、応答を測定した。18時間インキュベーションを行った後、プレートを、0.25%Tween−20を含むダルベッコPBSで9回、そして蒸留水で1回洗浄した。次に5μg/mlのビオチニル化ラット抗マウスIFN−γ(Pharmingen, サンディエゴ, カリフォルニア州)を75μl/ウェルとなるよう加え、プレートを2時間インキュベートし、コールター洗浄液(Coulter Corporation, マイアミ, フロリダ州)で6回洗浄し、ストレプトアビジン−AP(Southern Biotechnology Associates, バーミンガム, アラバマ州)の500倍希釈液を加えて2時間インキュベートした。コールター洗浄液で5回、PBSで1回洗浄後、プレートをNBT/BCIP色原体(Pierce, ロックフォード, イリノイ州)で現像して、水道水で洗浄することにより停止させ、乾燥し、ELISPOTリーダー(Hitech Instruments, エッジモント, ペンシルベニア州)を用いて読み取った。
【0135】
標準誤差を伴う平均として、免疫学的データを示す。GraphPad Prismバージョン4.0
1(GraphPad Software, Inc., 2004年)を用いて、統計的分析を実施した。両側ノンパラメトリック・マン・ホイットニー検定により、動物の群間の平均細胞性免疫応答を比較した。すべての場合に、0.05未満のp値は有意であるとみなされた。
【0136】
従来の実験と一致して、初回免疫の後の親1012DNAワクチンと比較して、CMV/R DNAワクチンにより誘導される約2倍高いGag(p=0.038)及びPol特異的(p=0.020)応答を観察した(図10A)。追加免疫後、CMV/R DNAワクチンにより引き出される応答は、非分画化脾臓細胞(図10B)及びCD8欠損脾臓細胞(図10C)の両方を用いて親DNAワクチンにより誘導される応答より約2倍高いままであった。
【0137】
カニクイザルのDNA初回刺激/組換え体アデノウイルスベクター追加免疫の免疫原性
カニクイザルにおいて、親1012DNAワクチンの免疫原性を、多HIV−1抗原を発現するCMV/R DNAワクチンと比較した。成体カニクイザルの2つの群(N=6/群)を、1012の4−プラスミド、又は分岐群A、B及びC由来のHIV−1 Env gp145ΔCFIを発現するCMV/R DNAワクチン並びに分岐群BからのGag−Pol−Nef融合タンパク質の1:1:1:3比の混合物を用いて免疫した。この多分岐群多価DNAワクチンは以前に記載されており、現在、臨床試験で評価されつつある(VRC−HIVDNA009−00−VP;PCT公開番号WO/05034992)。Gag−Pol−Nef融合タンパク質を、別個のプラスミド上でコードされる別個の遺伝子に分離するとこれらの抗原(VRC−HIVDNA016−00−VP)に対する免疫応答が更に増大されるか否かを調べるために、第3の群のサルを加えた。この第3の群のサルには、分岐群A、B及びC由来のHIV−1 Env gp145、並びに分岐群B由来の別個のGag、Pol及びNefタンパク質をコードするCMV/R DNAワクチンを1:1:1:1:1:1の比で含む6−プラスミド混合物を投与した。全サルには、0、4及び8週目に、8mgの総DNAワクチンで3回免疫した。
【0138】
HIV−1 Gag、Pol、Nefタンパク質、又はGag−Pol−Nef融合タンパク質、及び分岐群A、B及びC Envを発現するプラスミドDNAベクター(Althea Technologies, Inc., サンディエゴ、カリフォルニア州)を、DNA初回免疫のために用いた。該プラスミドは、4−プラスミドワクチンVRC−HIVDNA009−00−VP及び6−プラスミドワクチンVRC−HIVDNA016−00−VP中に含まれるものと同一タンパク質を発現した。
【0139】
1012プラスミドVRC4306(分岐群B Gag−Pol−Nef)、VRC5305(分岐群A Env)、VRC2805(分岐群B Env)、及びVRC5309(分岐群C Env)を用いて、4−プラスミドの組合せを処方した。動物試験における3つの予定された注射のために必要な容積を得るために、3ロットの処方物質を調製した。3ロットを、50mLコニカルチューブ中で併合した。チューブを数回倒置して混合した後、15.6〜15.7mLの混合物を3つの50mLコニカルチューブ中の各々に分注した。チューブに試験番号、ロット番号、プラスミド番号、チューブ番号及び調製日を書いたラベルを貼った。配分するまでチューブを−20℃で保存した。
【0140】
CMV/RプラスミドVRC4401(分岐群B Gag)、VRC4409(分岐群B Pol)、VRC4404(分岐群B Nef)、VRC5736(分岐群A Env)、VRC5737(分岐群B Env)及びVRC5738(分岐群C Env)を用いて、6−プラスミドの組合せを処方した。動物試験における3つの予定された注射のために必要な容積を得るために、3ロットの処方物質を調製した。3ロットを、滅菌容器中で併合した。容器を数回倒置して混合した後、16.8mLの混合物を3つの50mLコニカルチューブ中の各々に分注した。チューブに試験番号、ロット番号、プラスミド番
号、チューブ番号及び調製日を書いたラベルを貼って、配分するまで−20℃で保存した。
【0141】
VRC−HIVADV014−00−VP(ロット番号026−03024)をrAd追加免疫として用いた。
【0142】
非近交系成体カニクイザル(6匹/群)にDNAワクチン初回刺激をワクチン接種し、Biojectorにより、0、4及び8週目に筋肉内デリバリーした。各々の場合、3号Biojector注射器(BIOJECT)を用いて、四頭筋への2回の0.5ml注射としてプラスミドワクチンをデリバリーした。38週目(群1)及び24週目(群2)に、針及び注射器により、rAdワクチン追加免疫を筋肉内デリバリーした。以下のワクチン接種計画で投与した:
群1:1012プラスミドDNA初回刺激(4−プラスミドの組合せ):分岐群B Gag−Pol−Nef融合タンパク質(4mg)、分岐群A Env(1.3mg)、分岐群B Env(1.3mg)及び分岐群C Env(1.3mg)の組合せとしてデリバリーされる8mgの総用量。これは、VRC−HIVDNA009−00−VP臨床産物(BB−IND 10681)の非GMPバージョンである。rAdワクチン追加免疫:VRC−HIVADV014−00−VP(1011PU総用量;GMPロット番号026−03024)。
群2:CMV/RプラスミドDNA(6−プラスミドの組合せ):分岐群B Gag(1.3mg)、分岐群B Pol(1.3mg)、分岐群B Nef(1.3mg)、分岐群A Env(1.3mg)、分岐群B Env(1.3mg)及び分岐群C Env(1.3mg)の組合せとしてデリバリーされる8mgの総用量。これは、VRC−HIVDNA016−00−VP臨床産物(このIND寄託の対象)の非GMPバージョンである。rAdワクチン追加免疫:VRC−HIVADV014−00−VP(GMPロット番号026−03024)。
群3:CMV/RプラスミドDNA(4−プラスミドの組合せ):分岐群B Gag−Pol−Nef融合タンパク質(4mg)、分岐群A Env(1.3mg)、分岐群B Env(1.3mg)及び分岐群C Env(1.3mg)の組合せとしてデリバリーされる8mgの総用量。rAdワクチン追加免疫:VRC−HIVADV014−00−VP(GMPロット番号026−03024)。
群4:1012プラスミドDNA(6−プラスミドの組合せ):分岐群B Gag(1.3mg)、分岐群B Pol(1.3mg)、分岐群B Nef(1.3mg)、分岐群A Env(1.3mg)、分岐群B Env(1.3mg)及び分岐群C Env(1.3mg)の組合せとしてデリバリーされる8mgの総用量。rAdワクチン追加免疫:VRC−HIVADV014−00−VP(GMPロット番号026−03024)。
【0143】
免疫後42週目の間に種々の間隔でサルを放血させた。
【0144】
ELISPOTアッセイを利用して、複数のウイルス抗原に対するワクチン誘発性T細胞免疫応答の発生をモニタリングした。ワクチン免疫原の配列と一致するHIV−1 Gag、Pol、Nef、分岐群A Env、分岐群B Env及び分岐群C Envタンパク質を網羅する11アミノ酸で重複する15アミノ酸ペプチドのプールを用いて、各動物に関して別個のアッセイを実施した。内毒素を持たないダルベッコのPBS(D−PBS)中の5μg/mlの抗ヒトIFN−γ(B27;BD Pharmingen)100μl/ウェルで、96ウェル・マルチスクリーン・プレートを一晩被覆した。次にプレートを、0.25%Tween−20を含むD−PBS(D−PBS/Tween)で3回洗浄し、5%FBSを含有するD−PBSを用いて、37℃で2時間ブロッキングし、D−PBS/Tweenで3回洗浄し、10%FBSを含有するRPMI1640ですすいでTwee
n−20を除去し、ペプチドプール及び反応容積100μl中の2×105PBMCと共にインキュベートし、三重反復試験を行った。37℃で18時間インキュベーションした後、プレートを、D−PBS/Tweenで9回、蒸留水で1回洗浄した。次に2μg/mlのビオチニル化ウサギ抗ヒトIFN−γ(Biosource)と共にプレートを室温で2時間インキュベートし、コールター洗浄液(Beckman-Coulter)で6回洗浄し、ストレプトアビジン−AP(Southern Biotechnology)の500倍希釈液で2.5時間インキュベートした。コールター洗浄液で5回、PBSで1回洗浄後、プレートをNBT/BCIP色原体(Pierce)で現像し、水道水で洗浄することにより停止させ、乾燥して、ELISPOTリーダー(Hitech Instruments)を用いて読み取った。スポット形成細胞(SFC)/106PBMCを算定した。培地バックグラウンドは、全て<15スポット形成細胞/106PBMCであった。
【0145】
Env分岐群A、Env分岐群B、Env分岐群C、並びに分岐群B由来のGag、Pol及びNefに対する細胞性免疫応答を、CMV(1012)(群1)又はCMV/R調節エレメント(群3)の制御下で4−プラスミド混合物を摂取したサルにおいて比較した。親1012DNAワクチンで免疫したサルは、6週目の二次免疫の2週間後にEnvに対する低く、散発性のIFN−γELISPOT応答を示し、バックグラウンドを上回る顕著な応答は、Gag、Pol及びNefに対しては検出されなかった(図11A)。逆に、類似のCMV/R DNAワクチンで免疫したサルは、全ての抗原に対して有意に高い応答を示した(図11B)。この時点では、親1012DNAワクチンと比較して、CMV/R DNAワクチンは、Gag(p=0.0022)、Pol(p=0.0043)及びNef(p=0.041)に対しては10倍より高いELISPOT応答を、並びにEnv分岐群A(p=0.026)、B(p=0.0087)及びC(p=0.030)に対しては7〜9倍高い応答を誘導した。これらの結果は、CMV/R DNAワクチンが、非ヒト霊長類における多HIV−1抗原に関して親1012DNAワクチンより顕著に免疫原性が高かったということを実証する。
【0146】
Gag−Pol−Nef融合タンパク質を、異なるプラスミド上で発現する個々の遺伝子に分離すると、これらの応答は更に改善された。特に、Gag−Pol−Nef融合タンパク質を含むCMV/R DNAワクチンの4−プラスミド混合物を摂取した動物(図11B)と比較して、CMV/R DNAワクチン(群2)の6−プラスミド混合物を摂取したサルは、Gagに対しては4倍高い応答(p=0.0022)を、Polに対しては2倍高い応答(p=0.19)傾向を、そしてNefに対しては4倍高い応答(p=0.049)を示した(図11C)。CMV/R DNAワクチンの4−プラスミド及び6−プラスミド混合物を摂取したこれら2つの群間のサルのEnv特異的応答は同程度であった(p=0.48)。
【0147】
これらのサルの群における平均IFN−γELISPOT応答の進行を、0、2、6、10及び12週目に評価した。8週目の3回目のDNA免疫後、応答は全てのサルの群において増大した(図12)。10週目では、親1012DNAワクチンはEnv−及びPol特異的応答を大多数の動物において誘導したが、しかしGag−及びNef特異的応答は依然として低かった(図12A)。逆にCMV/R DNAワクチンは、全ての抗原に対して強力且つ広範な応答を誘導した(図12B及び図12C)。10週目では、4−プラスミド親1012DNAワクチン(図12A)と比較して、4−プラスミドCMV/R DNAワクチン(図12B)は、Gag(p=0.0022)及びNef(p=0.0022)に対しては10倍より高いELISPOT応答を、Pol(p=0.043)に対しては4倍高いELISPOT応答を、Env分岐群A、B及びCに対しては1.5〜4倍高い応答傾向を誘導した(図12B)。Gag−、Pol−及びNef特異的応答は、別個のプラスミド上でコードされるこれらの遺伝子を有する6−プラスミドCMV/R DNAワクチンを摂取した動物においては依然として最高であった(図12C)。応
答は全て、rAdで顕著に増加した。これらの試験は、親1012DNAワクチンと比較して、CMV/R DNAワクチンは多抗原に対して実質的に大きく、且つ広範な細胞性免疫応答を誘導するということを確証する。従って、HTLV−1 Rエレメントを含むこと、Gag、Pol及びNef遺伝子を分離することは、非ヒト霊長類におけるHIV−1 DNAワクチンの免疫原性を有意に増大した。
【0148】
マウス及びカニクイザルの両方において、HIV−1抗原を発現するCMV/R DNAワクチンは、同一抗原を発現する親1012DNAワクチンより高い細胞性免疫応答を誘導した。しかしながら、観察された効果の大きさは2つの種の間で実質的に異なった。CMV/R DNAワクチンがマウスにおいて2倍高い応答を誘導しただけであった(図10)のに対し、CMV/R DNAワクチンはカニクイザルにおいては、2回の免疫後、Gag、Pol及びNefに対しては10倍より高い細胞性免疫応答を、Envに対しては7〜9倍高い応答を誘導した(図11、図12)。この差は、非ヒト霊長類において親1012DNAワクチンの基線免疫原性がより低いことを反映しており、Rエレメントの有益な効果が限られた状況において顕著であるということを示す。この観察と一致して、Rエレメントは、Gag及びNefに対する親1012DNAワクチンにより誘導される最も弱い応答の増強に対して最大の効果を有した。しかしながら、CMV/R DNAワクチンにより誘導される場合、親1012DNAワクチンと比較してEnv−及びPol特異的細胞性免疫も有意に高かった。
【0149】
別個のプラスミド上にGag、Pol及びNefを含むCMV/R DNAワクチンの6−プラスミド混合物は、Gag−Pol−Nef融合タンパク質を含むCMV/R DNAワクチンの4−プラスミド混合物と比較して、これらの抗原に対する有意に高い細胞性免疫応答を誘導した。別個のGag、Pol及びNefプラスミドは、Gag−Pol−Nef融合タンパク質をコードするプラスミドの用量の3分の1で各々利用されるため、これらの効果は特に顕著である。理論にとらわれずに考えると、この免疫原性の増大は、融合遺伝子と比較して、より短い遺伝子の翻訳又はmRNA安定性増強を反映し得るが、これは、抗原プロセッシング及び提示に潜在的に影響を及ぼし得る。
【0150】
データの蓄積によって、ヒトにおけるHIV−1複製及びアカゲザルにおけるSIV複製の制御における細胞性免疫応答の重要性が実証された。更に、ウイルス特異的細胞性免疫応答を誘導することを目的としたワクチンは、アカゲザルにおけるSHIV及びSIV感染の部分的制御をもたらした。従って、本発明の研究において非ヒト霊長類のCMV/R DNAワクチンによりもたらされるHIV−1特異的細胞性免疫応答の大きさ及び幅の顕著な増大は、HIV−1及びその他の病原体のための第2の世代DNAワクチンの開発に有益であると考えられる。特に、HTLV−1 Rエレメントを組込むこと、融合遺伝子の代わりに個別の遺伝子を利用することは、これらのワクチンを臨床用途に適したものにするためにDNAワクチンを改良するための簡単且つ実際的な戦略を示す。
【0151】
実施例4:臨床的使用のための材料の調製
VRC−HIVDNA016−00−VP薬剤産物の製造、充填及び包装方法は、大腸菌発酵、精製、並びに筋肉内注射用の滅菌液体注射剤形としての処方を含む。この裸DNA産物は、脂質、ウイルス又は細胞性ベクター構成成分を包含しない。
【0152】
ワクチンVRC−HIVDNA016−00−VPは、6つの閉環プラスミドDNA高分子(VRC−4401、4409、4404、5736、5737及び5738)の組合せで構成される。臨床的使用のためのプラスミドの調製のために、各起源プラスミド(VRC−4401、4409、4404、5736、5737及び5738)に関してマスターセルバンド(MCB)を調製した。これらのMCBの各々からのプラスミドDNA試料の同一性及び組成を、配列分析により確認した。制限酵素分析及び微生物分析(カビ
及び酵母を含む)も、同一性及び滅菌性を確認するために実施した。
【0153】
カナマイシン選択培地を含有する細菌細胞培養から、大量のプラスミド調製物を調製した。すべての場合、細菌細胞増殖は、プラスミドDNAの一部によりコードされるカナマイシン耐性タンパク質の細胞性発現によっていた。プラスミドを有する細菌細胞の増殖後、プラスミドDNAを細胞構成成分から精製した。
【0154】
cGMP条件下で、臨床試験ワクチンを調製した。ワクチンは、投与前にロット放出規定を合わせた。リン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)中に4.0mgの用量で、DNAワクチンを製造した。1:1:1:1:1:1の比で6つのプラスミド1.2mL容積を無菌的にバイアルに充填した。4.0mgプラスミドDNAワクチンバイアルを、ドライアイス上で試験薬学者に輸送し、非盲検化し、使用するまで−20℃以下で保存した。2.4mLのPBS、pH7.2±0.2のプラゼボ対照バイアルを、Bell-More Labs, Incorporated (ハムステッド、メリーランド州)から入手した。
【0155】
個々のプラスミド及び最終処方薬剤産物の発現試験を、ワクチン産物の放出前に実行した。同一条件下での標準的実行によるウエスタンブロットに基づいた反応タンパク質バンドと比較することにより、プラスミドタンパク質の定性的発現を検証した。プラスミドを結合したら、同様の検定手法を用いて発現を検証した。トランスフェクト化293ヒト胚性腎臓(HEK)細胞により発現されるタンパク質を検出することにより発現を確定した。トランスフェクションに関しては、リン酸カルシウム法を用いて、1〜5μgのプラスミドDNAで105〜106細胞をトランスフェクトした。細胞を14〜20時間インキュベートして、DNAを取り込ませた。培地を取り替えた後、細胞を更に24〜48時間増殖させた後採取した。同一主鎖の既知の類似ベクターを用いて、トランスフェクション効率をモニタリングした。細胞溶解後、10μgの適量の総細胞タンパク質をSDS−PAGEゲル上に載せて、粗溶解物タンパク質を分離した。
【0156】
約1.5時間の電気泳動後、ウエスタンブロット分析のためにタンパク質をニトロセルロース膜(0.45μm)に転写した。スキムミルクで膜をブロッキングして、非特異的結合相互作用を阻害した後、一次抗体とともに60分間インキュベートした。洗浄後、HRP標識二次抗体とともに45分間、膜をインキュベートした。化学発光物質と共に膜をインキュベートし、X線フィルムに2分間又は適切な時間露出することにより、タンパク質バンドを可視化した。ウエスタンブロット上の発現タンパク質の強度を観察することにより、トランスフェクト化細胞により産生されるタンパク質の発現を確認した。ワクチンプラスミドによるタンパク質発現の半定量的分析を可能にするために、アッセイ法が更に開発されている。
【0157】
実施例5:ヒトにおける臨床的安全性
臨床的使用のために、VRC−HIVDNA016−00−VPは、ワクチンの各々16.67%(重量で)を占める6つの閉環DNAプラスミドで構成された。このワクチン中の6つのプラスミドの各々は、単一遺伝子産物を発現した。プラスミドVRC4401、VRC4409及びVRC4404は、それぞれ分岐群B HIV−1 Gag、Pol及びNefを発現するよう設計された。VRC5736、VRC5737及びVRC5738は、それぞれ分岐群A、分岐群B及び分岐群C由来のHIV−1 Env糖タンパク質を発現するよう設計された。4mg/mLとなるようにワクチンバイアルを作製した。各DNA投与は、Biojector2000(登録商標)無針注射操作システム(商標)を用いた筋肉内(三角筋中)へデリバリーされるワクチン組成物1mLである。
【0158】
このワクチンの安全性の評価は、実験室試験、病歴、臨床医による身体査定、並びに日誌で報告される被験体の自己査定を含む。免疫計画を続行する前に、考え得る副作用を更
に評価した。0日目は、登録及び初回注射日と定義した。初回注射前0日目評価は、その後の安全性査定のための基準である。ワクチン接種の日程は、0日目、28±7日目、56±7日目(注射日間に少なくとも21日の間隔を置く)である。Biojector2000(登録商標)無針注射操作システムを用いて、4mgの用量でVRC−HIVDNA016−00−VPの筋肉内投与により、全試験注射を施した。
【0159】
試験注射後、最低30秒間、被験体を観察した。免疫後30〜45分に、生命徴候(温度、血圧、脈拍及び呼吸速度)を調べた。局所反応の証拠に関して、注射部位を検査した。5日間毎日温度及び症候を記録するための「日誌」を被験体に渡した。各注射後1日目及び2日目に、電話で、被験体が良好状態であるかの追跡調査を実施した。電話インタビューにより指摘された場合には、来院した。各注射日(注射の前)及び各注射後14±3日目に、臨床検査及び実験室試験により試験被験体を評価した。長期追跡調査来院は、12週±7日、24週±14日及び32週±14日目であった。試験中に間を置いて、免疫学的アッセイのために被験体から採血した。用いられなかった任意の細胞、血清又は血漿を、将来のウイルス学的及び免疫学的アッセイのために保存した。更にまた、社会的不自由、例えば雇用、旅行、移住、保険に入る権利、医学的又は歯科学的ケア、並びに家族、友人及び同僚からの否定的な反応に伴う問題に関して、最終来院時(32週目)に被験体と面談した。
【0160】
生成物の安全性の査定は、血液学的及び化学的パラメーターの臨床的観察及びモニタリングを含む。以下のパラメーターを査定した:局所反応原性兆候及び症状;全身反応原性兆候及び症状;安全性の実験室測定値;並びに有害及び重度有害経験。
【0161】
主要免疫原性の終点を、0週目(基準)、並びに6、8、10及び12週目(細胞性免疫応答に関して)に測定したが、それは、細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイにより測定されるような、HIV−1特異的T細胞応答から成る。他の試験時点でのICS、並びにHIV特異的抗体アッセイにより測定されるようなHIV−1特異的体液性免疫応答を、探索的評価として行った。
【0162】
会社の指示に従いBiojector2000(登録商標)無針注射操作システムを用いて、ワクチン組成物の投与を実施した。注射する物質及び三角筋注射部位皮膚調製物も、標準手順により調整することができる。つまり、注射部位を消毒し、その領域を完全に乾燥させた。注射器を注射部位に対して90°の角度で配置しながら、注射部位周囲の皮膚をしっかり保持した。作動装置を押して、該物質を筋肉中に放出した。3秒間、しっかり保持し続けた。注射後、該部位を滅菌カバーで被覆し、3本指で1分間押さえた。Biojector2000(登録商標)は、1.0mLまでの種々の用量の薬剤投与のための滅菌使い捨て注射器を使用する。Biojector(登録商標)の内部に収容された圧縮CO2ガスカートリッジにより、圧力下で試験作用物質をデリバリーした。Biojector(登録商標)の作動装置が押し下げられると、CO2が放出され、プランジャーが試験物質を滅菌注射器から押し出して、皮膚を通して、その下の組織中にデリバリーする。試験物質は、1秒の何分の一の高速で、微小開口を通して押出されて、皮膚を貫通する。CO2は注射物とは接触せず、注射器設計は、被験体の組織による、装置のいかなる逆跳ね返り又は汚染をも防止する。
【0163】
15人の被験体は、0、1、2ヶ月のスケジュールで4mg/mLでの1mL用量を3回摂取した。Biojector2000(登録商標)を用いてワクチンを筋肉内投与した。15人の被験体のうちの14人の被験体は、Biojector2000(登録商標)により投与されるワクチン4mg用量の筋肉内注射を3回受けた;1人の被験体は、2回のワクチン接種後、追跡調査できなくなった。ワクチン接種後に発熱を報告した被験体はいなかった。反応原性は無し乃至軽度であったが、但し、2人の被験体が中等度の注射部位疼痛を報告し、そして1人の被験体が中等度の悪心及び倦怠感を報告した。INDスポンサーへの迅速報告を要
する唯一の有害事象は、等級3の汎発性蕁麻疹であった。該被験体は初回ワクチン接種後約2週間での抗ヒスタミン薬の開始を報告したが、しかしその時点で、理由はラテックスアレルギーと報告した。ロールオーバー追加免疫試験、VRC010に関してスクリーニングする間に、抗ヒスタミン薬の供給が尽きると、2回目のワクチン接種の時期辺りで被験体は汎発性蕁麻疹を発症することが判明した。被験体は、抗ヒスタミン薬により良好に制御される慢性蕁麻疹を有する。評価は進行中である。病因は不明であるが、この時点で、慢性蕁麻疹は試験ワクチンにおそらくは関連すると査定される。今日まで、おそらくはワクチンが関与する2つの中等度(等級2)の有害事象が認められている。これらは、1人の被験体(この被験体は症候の再発を伴わずに3回目のワクチン接種を受けた)において、2回目のワクチン接種後13日目に始まり、2日間持続する間欠性眩暈であり、そして別の被験体では無症候性低血糖症で、最初に気づいたのは3回目のワクチン接種後14日目の追跡調査来院時であった。追跡調査できなかった被験体の最終安全性評価は、2回目のワクチン接種後1日目の電話によるものであった;その時点で、被験体はワクチン接種による副作用を全く報告しなかった。
【0164】
このDNAワクチンに関する予期せぬ局所注射部位反応が観察された。ワクチン接種部位に軽度皮膚病変(直径0.5〜1.0cm)が、投与した44例のうち4例(9%)に生じた;これらは、15人の被験体中3人の被験体(20%)に生じた。試験ワクチン接種後に何らかの異常な問題を経験した場合には、被験体には決まって電話するよう求めた。次の定期的予定来院前にVRCクリニックに来院するように被験体に認識させるには、ワクチン接種部位の皮膚病変では十分でなかった。振り返ってみると、3人の被験体は、ワクチン接種後3日以内に小丘疹又は小胞として始まった皮膚病変を経験したと報告した。数日後、丘疹又は小胞は表面が剥がれて、痂皮が生じた。周囲の軽度紅斑及び軽度硬結が認められた。痂皮が剥がれた後、皮膚は治療せずに治癒した。膿胞性滲出物、発熱、発疹又は蕁麻疹を伴わない皮膚病変はなかった。それらは、局所感染であるか又はアレルギー反応であるとは考えられなかった。
【0165】
最初の3つの皮膚病変は、最初のワクチン接種後来院時(14±3日目)に発見された;その時点で、それらは大部分は分解された。4番目の皮膚病変は、まだ活動期の間に該クリニックで検査され、ワクチン接種後6日目に生検された。この生検は、顕微鏡的皮下及び真皮性血管周囲リンパ球浸潤物を示した。浸潤物はほとんど、CD4+及びCD8+の両方を含むCD3陽性細胞で構成された。まれに好酸球が存在し、まれに巨大細胞が認められた。そのプロセスは主として、皮膚症状発現を伴う、ワクチン接種に対する皮下及び真皮性応答であると思われた。
【0166】
これらの反応がワクチン誘導性免疫応答の強度と相関するか否かは、未だ不明である。追跡調査中である14人の被験体のうち8人の被験体は、1つ又は複数の時点での市販試験によるワクチン誘導性陽性HIV ELISAを示した;これは、皮膚病変を有した全3被験体を含む。6−プラスミドDNAに関する予備的免疫原性データは、Env特異的T細胞応答が4−プラスミドDNAで観察されたものと類似すること、そしてGag−及びNef特異的応答も存在することを示す。
【0167】
細胞内サイトカイン染色(ICS)及びフローサイトメトリーにより、被験体における細胞性応答を測定して、ウイルス抗原を提示するペプチドプールによる刺激後のCD4+及びCD8+Tリンパ球の両方におけるIFN−γ又はIL−2を検出した(図13)。個々の被験体に関するデータを縦列に示す。各ペプチドプールに対する応答を横列に示す。各ボックスは、前ワクチン接種から12週間(最終免疫後4週間)までの全時間経過を表す。各ボックスのスケールは、試験した全CD4+又はCD8+集団の0〜0.2%である。CD4+応答を赤色で、CD8+応答を緑色で示す。ほぼすべての被験体が、Envペプチドに対して検出可能な応答を有する。4−プラスミド産物と対比して、被験体の
大多数がGagに対して検出可能応答を有し、Nefに対して応答するものも存在する。
【0168】
実施例6:キメラEnvタンパク質の免疫原性
中和抗体の誘導における異なる遺伝子配列の役割を示すために、2つの異なる分岐群由来のウイルスエンベロープの、異なる領域を有するキメラ抗原ポリペプチドを発現する核酸コンストラクトを産生した。分岐群C Envポリペプチド及び分岐群B Envポリペプチドの異なる部分をコードする核酸コンストラクトを分析し、分岐群C Envポリペプチドと比較した。分岐群B主鎖上への近位25%の分岐群Cの転位は、種々の分岐群B単離物に対する中和の潜在力及び幅の増大、並びに分岐群C単離物の中和の改善を示した。分岐群C Envによる分岐群B Envの遠位領域の置換は、分岐群B単離物に対する中和改善を生じたが、これは、分岐群B単離物中のV3を含有する領域が種々の多様なウイルス単離物を抑制する能力に寄与ことを示す。これらの核酸コンストラクトは、配列番号7〜15により表わされる。従って、開示される組成物の特定の実施形態は、多分岐群を併せ持つキメラEnvポリペプチドをコードするコンストラクトを含む。
【0169】
代替的な分岐群中のV領域の役割を示すために、分岐群A、B及びCのV12並びにV3領域の両方に突然変異を加えた。分岐群A中のV12の役割を示すために、分岐群A原型を、V1及びV2領域の欠失を含有するものと比較した。V12及び/又はV3の除去は、分岐群A Envポリペプチドの能力を増強し、種々の分岐群B単離物を中和する免疫応答を誘導したが、これらの領域の欠失が、抗原ポリペプチドの、中和抗体を広範に引き出す能力を増大する(例えば交差反応性抗体を誘導する特異的エピトープへの接近可能性を増大することによる)ことを示す。従って、本明細書中に開示される特定の実施形態では、核酸コンストラクトはV1、V2及び/又はV3領域の欠失を含む。
【0170】
分岐群C由来の非相同的V3に対する分岐群B中のV12の役割を確認するために、南アフリカ分岐群C単離物由来のV3を分岐群BからのV3の代わりに挿入し、分岐群B V3ループを用いて中和を増強することが示されている基部短縮化バージョンと比較した。中和抗体を誘導する組換えアデノウイルス追加免疫と組合せたこれらのプラスミドDNAベクターの能力を、表示された系統に対して評価した。両V3置換による免疫は分岐群A、B及びC由来のウイルス単離物の中和を可能にしたが、応答の大きさは基部短縮化1ABV3より大きかった。更に、ペプチド抑制は、この応答で誘導される中和抗体がより大きな幅を有し且つ多様な分岐群A、B及びC由来のV3領域と相互作用したことを示した。従って、分岐群C V3ループは広範に反応性V3中和抗体を誘導すると思われた。
【0171】
これらのエンベロープのV1及びV2領域の欠失は、中和抗体応答を誘導する能力を改善する。これらの応答は、大部分は多様な分岐群中のV3領域に対して向けられる。異なる分岐群由来の代替的なV領域の使用は、これらのV領域が系統特異的応答を誘導する能力の差も示ことを実証する。例えば、分岐群C由来のV3領域の含入は、種々の分岐群B単離物の中和並びに多様な系統からのV3ペプチドによるより大きな幅の中和を可能にした。従って、V1及びV2領域の両方の排除、並びにより広範な反応性のV3の提示は、Env抗原ポリペプチドにより媒介される中和の幅を増強し得る。
【0172】
3媒介性中和の他に、V3が曝露されない場合は、他の可変部がウイルス中和に関与する。これらの間で、V1中の高度曝露領域が同定された。この領域は系統特異的変異を示す可能性が大いにあるが、この可変ループに対する免疫応答の幅の増大に寄与するV1内の保存サブ領域も存在する。
【0173】
ウイルス多様性に基づいた遺伝子情報を用いて免疫原改良を限定する能力は、有効なHIVワクチンを設計する能力を改善し得る。上記の結果は、遺伝子型配列変異が分岐群と関係のない中和感受性を生じ得ることを示す。この知見は、遺伝子配列に基づいた改良型
HIV免疫原の設計のための重要な示唆を有する。
【0174】
開示された本発明の原理が適用され得る複数の考えられる実施形態に鑑みて、例証された実施形態は本発明の好ましい例に過ぎないと認識されるべきであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきでない。むしろ本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲により規定される。従って、これらの特許請求の範囲の範囲及び精神内に含まれるもの全てを、我々の発明として主張する。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】多分岐群、多価HIVワクチン組成物の模式図である。
【図2】プラスミドVRC4401の模式図である。
【図3】プラスミドVRC4409の模式図である。
【図4】プラスミドVRC4404の模式図である。
【図5】プラスミドVRC5736の模式図である。
【図6】プラスミドVRC5737の模式図である。
【図7】プラスミドVRC5738の模式図である。
【図8】A:異なる転写調節配列を有する抗原発現コンストラクトを模式的に表す図である。B:種々のコンストラクトの相対的発現を示すウエスタンブロットの画像である。
【図9】異なる転写調節配列を有する発現プラスミドで免疫感作下マウスにおけるCD4+及びCD8+T細胞応答を例示する棒グラフである。
【図10】CMV/R転写制御配列又はCMV IE転写制御配列を有する核酸コンストラクトで免疫感作したマウスにおけるHIV Gag、Pol及びNef抗原に対する相対的免疫応答を例示する棒グラフである。
【図11】異なるワクチン組成物で免疫感作したカニクイザルにおけるHIV Gag、Pol、Nef及びEnv抗原に対する相対的免疫応答を例示する棒グラフである。
【図12】異なるワクチン組成物によるカニクイザルの免疫感作後のHIV抗原に対する免疫応答の発生の時間経過を例示する棒グラフである。
【図13】VRC−HIVDNA016−00−VPで免疫感作したヒトにおける細胞内サイトカイン染色(ICS)により測定した細胞免疫応答を例示する一連の棒グラフである。
【0176】
[配列表の簡単な説明]
配列番号1〜6は、それぞれVRC−HIVDNA016−00−VPプラスミド4401、4409、4404、5736、5737及び5738を表す。これらのプラスミドの各々は、単一HIV抗原ポリペプチドを発現するための核酸コンストラクトである。
配列番号7〜15は、キメラEnvプラスミドを表す。
配列番号16〜19は、アデノウイルスベクターを表す。
配列番号20〜25は、それぞれ例示的なGag、Pol、Nef、分岐群A Env、分岐群B Env及び分岐群C Envポリペプチドを表す。
配列番号26は、CMV/R転写調節配列を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫正常者においてHIVに対する免疫応答を誘導可能な組成物であって、
各々が、CMV/R転写制御配列に機能できるように連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、複数の異なる核酸コンストラクトであって、複数のHIV分岐群又は系統の抗原ポリペプチドをコードする前記核酸コンストラクトを含む組成物。
【請求項2】
免疫正常者においてHIVに対する免疫応答を誘導可能な組成物であって、
各々が、単一のHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、複数の異なる核酸コンストラクトであって、複数のHIV分岐群又は系統の抗原ポリペプチドをコードする前記核酸コンストラクトを含む組成物。
【請求項3】
複数の核酸コンストラクトが、
HIV Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸コンストラクト、
HIV Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸コンストラクト、
HIV Nefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第3の核酸コンストラクト、及び、
HIV Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つ核酸コンストラクトを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
各々が異なるHIV分岐群又は系統のEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む複数の核酸コンストラクトを更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
第1の核酸コンストラクトが分岐群B Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、
第2の核酸コンストラクトが分岐群B Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、
第3の核酸コンストラクトが分岐群B Nefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項3に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
第1の核酸コンストラクトが配列番号20と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし、
第2の核酸コンストラクトが配列番号21と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし、且つ/又は
第3の核酸コンストラクトが配列番号22と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードする、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
複数の更なる核酸コンストラクトを含み、
第1の更なる核酸コンストラクトが分岐群A Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、
第2の更なる核酸コンストラクトが分岐群B Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、
第3の更なる核酸コンストラクトが分岐群C Envポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
第1の更なる核酸コンストラクトが配列番号23と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし、
第2の更なる核酸コンストラクトが配列番号24と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードし、及び/又は
第3の更なる核酸コンストラクトが配列番号25と少なくとも95%の配列相同性を有するポリペプチドをコードする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
複数の異なるHIV分岐群又は系統の少なくともサブシーケンスを含むキメラEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの更なる核酸コンストラクトを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
複数の異なる核酸コンストラクトが、
Gagポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の核酸コンストラクト、
Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の核酸コンストラクト、
Nefポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第3の核酸コンストラクト、
分岐群AのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第4の核酸コンストラクト、
分岐群BのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第5の核酸コンストラクト、及び、
分岐群CのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第6の核酸コンストラクトを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項11】
第1の核酸コンストラクトが配列番号1と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含み、
第2の核酸コンストラクトが配列番号2と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含み、
第3の核酸コンストラクトが配列番号3と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含み、
第4の核酸コンストラクトが配列番号4と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含み、
第5の核酸コンストラクトが配列番号5と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含み、及び/又は
第6の核酸コンストラクトが配列番号6と少なくとも95%の配列相同性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
第1の核酸コンストラクトが配列番号1のポリヌクレオチド配列を含み、
第2の核酸コンストラクトが配列番号2のポリヌクレオチド配列を含み、
第3の核酸コンストラクトが配列番号3のポリヌクレオチド配列を含み、
第4の核酸コンストラクトが配列番号4のポリヌクレオチド配列を含み、
第5の核酸コンストラクトが配列番号5のポリヌクレオチド配列を含み、
第6の核酸コンストラクトが配列番号6のポリヌクレオチド配列を含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
実質的に等しい重量比の前記6つの各核酸コンストラクトを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
単独又は少なくとも1つの更なる免疫原性組成物と組合せて投与した場合に、免疫が正常なヒト被験体においてHIVに対する防御的免疫応答を誘導可能な、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項15】
複数の異なるコンストラクトが複数のプラスミドを含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項16】
薬学的に許容可能な担体を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項17】
アジュバントを更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項18】
CMV/R転写制御配列が配列番号26のポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
免疫正常者においてHIVに対する免疫応答を誘導可能な組成物であって、
各々が、転写制御配列と機能できるように連結された単一のHIV抗原をコードするポリヌクレオチド配列を含む複数の異なる核酸コンストラクトを含む組成物。
【請求項20】
HIVに対する免疫応答を誘導する方法であって、ヒト被験体に請求項1、2又は19に記載の組成物を投与することを含む方法。
【請求項21】
免疫応答がHIVの複数の分岐群又は系統に対する防御的免疫応答である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
複数の核酸コンストラクトを筋肉注射で投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
無針デリバリー装置を用いて複数の核酸コンストラクトを投与することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
複数のウイルスベクターを投与することを更に含み、該複数のウイルスベクターがHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を少なくとも1つ含み、該少なくとも1つのポリヌクレオチドが、前記組成物の核酸によりコードされるポリペプチドと同一の抗原ポリペプチドをコードする、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
ウイルスベクターが組換えアデノウイルスベクターを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
組換えアデノウイルスベクターが複製欠損性アデノウイルスベクターである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
複数のアデノウイルスベクターが、
HIV Gagポリペプチド及びHIV Polポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第1の組換えアデノウイルスベクター、
分岐群AのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第2の組換えアデノウイルスベクター、
分岐群BのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第3の組換えアデノウイルスベクター、及び、
分岐群CのEnvポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む第4の組換えアデノウイルスベクターを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第1の組換えアデノウイルスベクターが配列番号16を含み、
第2の組換えアデノウイルスベクターが配列番号17を含み、
第3の組換えアデノウイルスベクターが配列番号18を含み、そして、
第4の組換えアデノウイルスベクターが配列番号19を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
CMV/R転写調節配列と機能できるように連結されたHIV抗原ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離又は組換え核酸。
【請求項30】
プラスミドを含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
ウイルスベクターを含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項32】
ポリヌクレオチド配列がHIV Gagポリペプチド、HIV Polポリペプチド、HIV Nefポリペプチド又はHIV Envポリペプチドをコードする、請求項29、30又は31に記載の核酸。
【請求項33】
ポリヌクレオチド配列が、複数のHIV分岐群又は系統の少なくともサブシーケンスを含むキメラHIVポリペプチドをコードする、請求項32に記載の核酸。
【請求項34】
キメラHIVポリペプチドがHIV Envポリペプチドである、請求項33に記載の核酸。
【請求項35】
ポリヌクレオチド配列が配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14及び配列番号15から成る群から選択される、請求項29、30又は31に記載の核酸。
【請求項36】
請求項35に記載のポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−508866(P2008−508866A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521694(P2007−521694)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/025219
【国際公開番号】WO2006/020071
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(504334290)ジェンベック, インコーポレイテッド (2)
【Fターム(参考)】