説明

CNC工作機械制御プログラムを作成する方法

【課題】補助動作、例えば、測定、工程制御、プログラム論理をCNC工作物製造プログラムの中に挿入するための入力操作を容易にする。
【解決手段】工作機械プログラムエディタ(42)が、補助動作、例えば、測定、工程制御、プログラム論理をCNC工作物製造プログラムの中に挿入するために使用される。エディタ(42)は、このプログラム中の正しい位置に配置され得る動作の表示(50、図3)を有する。表示が選択されるとき、パラメタの形でユーザ入力が促される。このプログラムは、後処理されて(46)、これらの動作が実行される工作機械(30)で実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNC工作機械制御プログラムの作成に関し、特に、このような工作機械における工作物測定動作および他の動作で使用するための制御プログラムの作成に関する。
【背景技術】
【0002】
CNC工作機械は、一般に低水準言語、例えば、ISO「G」コードで書かれたプログラムを読み取る。これらの低水準言語プログラムは、CNC工作機械制御装置のメモリに読み込むために幾つかの方式で作成され得る。
【0003】
工作機械プログラムを作成する基本的な方式は、このプログラムをテキスト形式のプログラムエディタにコマンドとして低水準言語で書くことによって創出するものであるが、これは労力を要する。ソフトウェアに表されている工作物の呼び寸法から機械切削命令を自動的に作成するCAD/CAM型プログラムが存在する。高水準言語命令のシーケンスが創出されかつ後処理されて、工作機械によって使用可能な低水準言語で切削プログラムを作成する。この切削プログラムはGコードコマンドのリストを有する。
【0004】
一旦プログラムが後処理されると、そのプログラムを低水準言語で編集することが可能である。しかし、この場合も大きな編集量に労力を要する。編集を補助するために、低水準言語プログラムの一部が切り取られ、かつ/または他の部分が貼り付けられ得る。
【0005】
工作物の進捗状況につれて検査が行われ得るように、工作物検査および測定動作にCNC切削プラグラムが交互配置されることが有利である。工作機械で使用される切削プログラムの中にプローブ検査Gコードコマンドを貼り付けるか、またはこれらのコマンドを直接キー入力することが知られている。しかし、Gコードコマンドが正しい場所にあり、当該目的に適切であることを保証する必要がある。例えば、貼り付けられた検査コマンドは、正しい位置データ、接触点の数、およびプローブ前進/後退経路を有しなければならない。貼り付けられた検査命令は、それらが正しいかどうかを保証するためにチェックされる必要がある。これは、使用されるGコードは解釈することが容易ではないので複雑である。
【0006】
より大幅に自動化するためには、プローブ検査動作に加えて、工程制御およびプログラム論理動作のような他の補助動作が望ましい。プローブ検査コマンドが追加されるとき、工程制御コマンドおよびプログラム論理コマンドの形で補助コマンドをCNCプログラムに挿入することが望ましい。通常、これらのコマンドは、プローブ情報の結果として必要である。工程制御コマンドの例は、CNCプログラムにおいて後から工具経路を変更するために使用され得る工作機械変数の更新、工具変数、例えば、切削工具の直径もしくは長さの更新、または工作物座標の更新である。プログラム論理命令の例は、プローブ検査データに基づいて決定するために使用されるif、then、while、else等である。
【0007】
上で述べられたすべての補助コマンドを工作機械プログラムに入力することは、本発明が登場するまでは、各コマンドの手入力が必要であったので非常に複雑であった。
【0008】
コマンドの自動作成は、それを座標測定機で測定動作を実行するために使用することが知られているが(例えば、特許文献1参照)、そのようなコマンドを工作物を製造するために使用されるプログラムに追加するために提供されてはいない。
【0009】
従来の座標測定機(CMM)で検査するために工作物の取出しが可能であるように、プログラムを停止する停止コード(M1)を有する工作機械切削プログラムの作成も説明されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第5970431号明細書
【特許文献2】欧州特許第0879674号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様によれば、CNC工作機械で工作物を製造するために使用され、少なくとも1つの測定命令を有するCNCプログラムを作成する方法であって、
CNC工作機械プログラム用のプログラムエディタを開くステップと、
CNC工作機械工作物製造プログラムをプログラムエディタへ読み込むステップと、
CNC工作機械の1つまたは複数の測定動作を実行するために、選択された測定命令をプログラム中の選択された箇所で挿入するステップとを含み、
プログラムエディタは、該または各測定動作を表す、CNCプログラムの言語で書かれていない表示を含むことを特徴とし、さらに本方法は、
必要な測定動作の表示を選択するステップと、
CNC工作機械で測定動作を実行するために必要な少なくとも1つの測定命令を作成し、かつそれを工作物製造プログラム中の選択された箇所で挿入するステップとさらに含むことを特徴とする方法が提供される。
【0012】
したがって、本発明の実施形態は、検査プローブまたは非接触検出デバイスを使用して測定動作、例えば、工作物検査、工具の場所、長さ、位置、および工具破損検出と、好ましくは工程制御動作およびプログラム論理動作のような補助動作とを提供し、これらのすべてが手入力される必要がなく、表示(例えば、アイコン、メニュー項目、ホットキー、またはテキスト命令)として選択され、自動的に作成され、次いで補助動作を実行するために必要な補助命令の形でCNCプログラムに挿入され得る。
【0013】
測定命令は、残りのプログラムと一緒に、所望の測定動作を実行するために必要な機械使用可能Gコードコマンド、および工作物製造コマンドを作成するために後処理されるブロックの形であり得る。
【0014】
アイコン等の選択は、測定動作、工程制御動作、またはプログラム論理動作のパラメタの形で更なるユーザ入力を促すことが好ましい。
【0015】
動作がプロービング検査動作であれば、これらのパラメタは、形状構成の幾何学配置、プローブ経路、検査すべき箇所の数、プロービングデータで行われるべきこと、または公差を含む。
【0016】
動作が工程制御動作であれば、これらのパラメタは、工作機械の変数、例えば、切削速度、送出し、切削深さの更新、工具の変数、例えば、切削工具の直径もしくは長さの更新、または工作物座標の更新を含む。
【0017】
動作がプログラム論理動作であれば、これらのパラメタは、if、then、while、else、および同様の命令を含む。
【0018】
工作物製造プログラムは、プロービング検査動作と、工程制御動作と、プログラム論理動作との組合せを有することが好ましい。
【0019】
本発明は、上で説明された方法を実行するためのコンピュータプログラムに及ぶ。
【0020】
第2の態様によれば、本発明は、
第1の態様に従ってCNCプログラムを作成するステップと、
CNCプログラムをCNC制御装置へ読み込むステップと、
このプログラムを実行し、工作物を製造し、さらに該少なくとも1つの測定動作を実行するステップとを含む工作物を製造する方法にも及ぶ。
【0021】
本発明は、直ぐ上の方法を実行するための工作物製造CNCプログラムに及ぶ。
【0022】
ここで、図面を参照して本発明の実施形態が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】CNC工作機械切削プログラムエディタが常駐するフロントエンドPCを有するCNC工作機械を示す図である。
【図2】本発明に係るCNC工作機械切削プログラムを作成する実施例を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係るCNC工作機械切削プログラムの作成時に使用する際のプログラムエディタの画面を印刷したものを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、工作物34を切削するための(この場合では)CNC工作機械30を示す。これが行われるために、この機械は、実際には工作機械3の一部であるCNC制御装置(NC)10によって制御される。NCはサーボ機構(servos)36を動作させ、かつ位置フィードバックを有する。機械加工される工作物を測定するために、測定プローブ31が、通常は切削工具によって占有されている空洞の中へ挿入され得る。このプローブ31は、その針先38が工作物34の所望の箇所に接触するようにNC10によってこの工作物周りに移動される。
【0025】
この針先38が工作物34に接触するとき、NC10にフィードバックするために信号が無線(この場合では)遠隔受信機14に送信される。こうして、正確な制御によって、プローブ31は工作物を測定することが可能である。その寸法は、プローブ信号が受信機14から受信されるとき、サーボ機構の位置フィードバックから計算され得る。このプローブは、それがx、y、またはz方向に移動されるときに信号を供給することが可能である。
【0026】
上で説明されたように、従来では、プロービングを実行するために必要な動きをプログラミングすることは時間を消費し、さらに、使用される低水準なGコード言語の複雑さのせいで、かつ当該言語の数多くのバリアント(variants)が異なる機械に使用されるという理由で困難である。切削プログラムは、例えば、CNC機に物理的に接続されるいわゆるPCフロントエンドに常駐する従来のCAD/CAMパッケージ44を使用して作成および変更され得る。本発明によれば、プロービング動作および間接的な補助動作に必要な変更が、本発明の一部を構成するアクティブプログラムエディタ42で実行され得る。このプログラムは、一旦変更されると、後処理プロセッサ46によって後処理され、次いで工作物34を機械加工および検査するために使用準備ができているAPI(アプリケーションプログラムインターフェイス)18を経由してNC10のメモリに供給される。
【0027】
図2は、本発明に係るエディタ42における動作の実施例を示す。アクティブエディタ42は、いわゆるGコードで書かれた切削工具プログラムを読み取って、それらを内部言語に変換する。しかし、Gコードは、切削コマンドのリストとしてユーザ画面上に表示され得る。プロービングまたは他の補助動作が必要な場合には、ユーザはGコードリスト中の適切な場所を選択して命令を挿入することが可能である。これらの命令は、適切なアイコン、メニュー項目、またはホットキーを選択することによって挿入される。一旦選択されると、ユーザはプロービングのパラメタを入力するように促される。これらのパラメタは、一旦入力されると、命令リストに変えられ、選択された場所に挿入される。他の間接動作が必要であれば、これらは同じ方式で挿入され得る。これらの命令は、一旦挿入されると、NC10のメモリに読み込むためにGコードに変換されるべく後処理される。
【0028】
以下は、上で説明されたエディタを使用して工作機械の切削プログラムを変更する実施例である。この実施例は、それが荒削りの成型品を機械加工するように要求されているものと想定する。この成型品は、成型品のほぼ中心にボスを有する。このボスの要求仕上げサイズは50mm径である。鋳造されたボスサイズは、60と75mmとの間にあるべきであるが、位置が異なる。他の形状構成はボスの中心から寸法決めされる。
【0029】
仕上がり図面から正確に作成された切削プログラムは、ボスの機械加工から始まる正しい切削経路を有する。ボスの厳密な位置は知られていないので、その場合に廃棄を回避するために、機械加工が行われる前に、鋳造されたボスの中心を見つけ、次いでその中心からの工作物座標をデータ化することが有益であろう。これは、本発明のエディタ42を使って、単に、切削プログラムを読み込み、外部円検査アイコンを選択し、さらにボスのほぼ中心周りの4点で100mm径から中へ徐々に測定するようにパラメタを設定することによって迅速に行われ得る。この動作を実行するために必要なプロービング命令は、切削プログラムの開始時点に挿入されることになる。他の形状構成が正しい寸法で機械加工され得るように、一旦ボスが機械加工されたら、ボスの中心までの加工物座標を更新する工程制御アイコン等が選択され得る。これが行われるために必要な命令も追加され得る。
【0030】
「もし」ボスの直径が初期に50mm未満であれば、「その場合には」工作機械プログラムを停止せよというプログラム論理を切削プログラムに追加することが必要になり得る。このボスは寸法不足であり、正確に機械加工され得ない。このような動作に対する命令は、プロービングおよび工程制御命令が追加されたのと同じ方式で切削プログラムに追加され得る。プログラム全体は、特定の工作機械に適切であるように後処理され、かつ切削、プロービング、工程制御、およびプログラム論理のコマンドとしてNC10へ読み込まれる。
【0031】
図3は、アクティブエディタプログラムをPC画面上に視覚化したものを示す。ツールバー50は、上で述べられたプログラム補助動作を選択するために必要なアイコンおよびドロップダウンメニューを含む。図示の実施例では、内部円(円1)51がツールバーから選択され、かつGコードを表す命令ブロック53中の動作として挿入される。測定されるべき円のパラメタに関連する入力を要求するウインドウ52がアクティブになっている。この場合では、呼び中心点および直径ばかりでなく検査経路も要求される。これらのデータは、一旦入力されると、選択された箇所51に保存され、更なる動作が挿入され得る。すべての動作が完了するとき、プログラム全体はGコードコマンドを獲得するために後処理され得る。必要であれば、このプログラムが再読込みされかつ再び変更され得る。
【0032】
補助動作がCNCプログラムに挿入されるべき箇所を厳密に決定することが困難である恐れがあるので、本発明の実施形態は、工作物と、CNCプログラム中の選択箇所における工作機械切削経路とを視覚化することを組み込む。したがって、検査を要する工作物の形状構成が容易に識別可能であり、適切な命令が正しい箇所に挿入され得る。
【0033】
したがって、エディタ42を使用して、CNCプログラムを読み込むこと、およびこのプログラムがCNC機で実行されたら製造されることになる工作物の形状構成を表示することが可能である。次いで、本エディタのユーザは、検査されるべき形状構成を選択することが可能であり、次いで、エディタは例えば、CNC工作機械でプログラムを実行する間に当該形状構成の製造状況に従って、適切な補助命令を正しい箇所に自動的に挿入することになる。
【0034】
本実施形態は、既存のCNCプログラム、恐らくは工作物に関するCADモデルが存在しないプログラムのデータを逆設計するために使用されてもよい。CNCプログラムだけから一部を視覚化することが可能である。
【0035】
説明された本実施形態は、CNC工作機械における切削プログラムの変更に関する。本発明は、切削以外の工程、例えば、研削、溶接、研磨、ばり取り、プレス加工、成形、折曲げ、型打ち、穴抜き、型押し等(これらのすべてがCNC制御機械で実行され得る)を含めて、工作物を製造するためのすべてのプログラムの作成に及ぶことが企図されている。
【0036】
説明された本実施形態は、例えば、従来の工作物接触プローブを使用するプロービング動作に関する。しかし、本発明は、限定されるものではないが、工作物接触および非接触表面検知、表面粗度検知、カメラに依拠する測定システム、測定器械、工具サイズ、位置センサ、および工具破損検出器を包含する測定動作全般に関するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CNC工作機械で工作物を製造するために使用され、少なくとも1つの測定命令を有するCNCプログラムを作成する方法であって、
CNC工作機械プログラム用のプログラムエディタを開くステップと、
CNC工作機械工作物製造プログラムを前記プログラムエディタへ読み込むステップと、
前記CNC工作機械の1つまたは複数の測定動作を実行するために、選択された測定命令を前記プログラム中の選択された箇所で挿入するステップとを含み、
前記プログラムエディタは、前記または各測定動作を表す、前記CNCプログラムの言語で書かれていない表示を含み、さらに前記方法は、
必要な前記測定動作の表示を選択するステップと、
前記CNC工作機械で前記測定動作を実行するために必要な前記少なくとも1つの測定命令を作成し、かつそれを前記工作物製造プログラム中の前記選択された箇所で挿入するステップとをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記方法は、工程制御動作およびプログラム論理動作の表示を選択するステップと、前記工程制御動作および論理動作を実行するために必要な補助命令の形で、前記工程制御動作およびプログラム論理動作を前記CNCプログラムの中に挿入するステップとをさらに提供することを特徴とする請求項1に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項3】
前記測定命令は、残りのプログラムと一緒に、前記測定動作を実行するための機械使用可能コマンド、および工作物製造コマンドを作成するために後処理されるブロックの形にあることを特徴とする請求項2に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項4】
前記表示の前記選択は、前記測定動作、工程制御動作、またはプログラム論理動作のパラメタの形でユーザ入力を促すことを特徴とする請求項1、2、または3に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項5】
前記測定動作の前記パラメタは、形状構成の幾何学配置、プローブ経路、検査すべき箇所の数、プロービングデータで行われるべきこと、または幾何学的公差を含むことを特徴とする請求項4に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項6】
前記工程制御動作のパラメタは、切削速度、送出し、切削の深さを含む工作機械変数の更新、切削工具の直径もしくは長さ、工具の幾何学形状、工具の摩耗を含む工具変数の更新、または工作物座標の更新を含むことを特徴とする請求項4に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項7】
前記プログラム論理動作の前記パラメタは、if、then、while、およびelse命令のようなプログラムフローを制御するための命令を含むことを特徴とする請求項4に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項8】
前記工作物製造プログラムは、測定動作、工程制御動作、およびプログラム論理動作を有することを特徴とする請求項2から7までのいずれか一項に記載のCNCプログラムを作成する方法。
【請求項9】
コンピュータで実行されるとき、請求項1から8までのいずれか一項に記載の前記方法を実行することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項10】
請求項1から8までのいずれか一項に記載のCNCプログラムを作成するステップと、 前記CNCプログラムをCNC制御装置へ読み込むステップと、
前記プログラムを実行し、前記工作物を製造するステップと、
前記少なくとも1つの測定動作を実行するステップとを任意の所望の順序で含むことを特徴とする工作物を製造する方法。
【請求項11】
CNC工作機械制御装置で実行されるとき、請求項10に記載の前記方法を実行することを特徴とする工作物製造CNCプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−178177(P2012−178177A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113680(P2012−113680)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【分割の表示】特願2007−519861(P2007−519861)の分割
【原出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(391002306)レニショウ パブリック リミテッド カンパニー (166)
【氏名又は名称原語表記】RENISHAW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】