説明

CNTの長さを制御するための方法およびデバイス

所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための方法が開示される。方法は、1つまたは複数のCNTを配向させるように電場を生成することと、1つまたは複数の配向されたCNTを所定の位置で切断することとを含む。配向されたCNTのそれぞれを切断することは、1つまたは複数の配向されたCNTの所定の位置をエッチングすることと、1つまたは複数のエッチングされたCNTに電圧を印加することとを含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための方法およびデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(CNT)は、世界中に豊富に存在する炭素から構成される炭素同素体である。CNTは、1つの炭素元素が、六角形のハニカム構造をチューブ形に形成しながら他の炭素元素と結合して形成される。CNTの直径は、数ナノメートルのオーダーである。近年CNTは、バリスティック電子伝導、高い電流密度での電気泳動効果への耐性、および透明導電などのナノスケール寸法および顕著な材料特性により、次世代のナノ電子、機械およびナノ医療システムの基本要素として提案されている。しかし、一般的に合成されると、CNTは、その直径およびカイラル角が変動し、これらの物理的変動によって電子的および/または光学的挙動が変化することがある。
【発明の概要】
【0003】
1つの態様では、所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための方法は、1つまたは複数のCNTを配向させるように電場を生成することと、1つまたは複数の配向されたCNTを所定の位置で切断することとを含む。配向されたCNTは、1つまたは複数の配向されたCNTを所定の位置でエッチングし、1つまたは複数のエッチングされたCNTに電圧を印加することによって切断することができる。
【0004】
別の態様では、所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するためのデバイスは、ソース電極とドレイン電極との間でCNTを配向させる少なくとも一対のソースおよびドレイン電極と、ソース電極とドレイン電極との間に置かれた1つまたは複数のCNTを配向させるようにソース電極とドレイン電極との間に電場を生成し、1つまたは複数のCNTを所定の位置で切断するように電圧を印加する電子デバイスとを含む。
【0005】
上記の概要は例示のためのものに過ぎず、どのようにも限定するものではない。上記の例示された態様、実施形態、および特徴に加えて、他の態様、実施形態、および特徴は、図面および以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するためのデバイスの例示的な実施形態の概略図である。
【図2a】所定の長さのCNTを製造するためのデバイスの別の例示的な実施形態の概略図である。
【図2b】所定の長さのCNTを製造するためのデバイスの別の例示的な実施形態の概略図である。
【図3】図1に示すデバイスの部分「A」の概略的な上面図である。
【図4a】1つの実施例による配向およびエッチングプロセスを示すための図1のデバイスの部分「A」の上面図である。
【図4b】1つの実施例による配向およびエッチングプロセスを示すための図1のデバイスの部分「A」の上面図である。
【図5a】エッチングプロセスを示すための図1に示すデバイスの断面の概略図である。
【図5b】エッチングプロセスを示すための図1に示すデバイスの断面の概略図である。
【図6】1つの実施例による切断プロセスを示すための図1のデバイスの部分「A」の上面図である。
【図7】同一または実質的に同じ直径のCNTの切断された部分を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の詳細な説明では、本明細書の一部を形成する添付の図面を参照する。図面では、同様の記号は一般に、別段の記載がない限り、同様の部品を識別する。詳細な説明で説明される例示的な実施形態、図面および特許請求の範囲は、限定する意味はない。本明細書に示された主題の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実施形態を使用することもでき、他の変更を行うこともできる。本明細書で一般に説明され、図で示される本開示の態様は、多種多様な異なる構成に修正し、置換し、組み合わせ、分離し、設計することができ、それらはすべて本明細書で明示的に企図されていることが、容易に理解されるであろう。
【0008】
所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するためのデバイス
1つの態様では、所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するためのデバイスが提供される。本明細書で使用される場合、「カーボンナノチューブ(CNT)」とは、円筒形のナノ構造の炭素同素体のことである。CNTは単層または多層とすることができる。単層CNTとは1原子の厚さのグラファイトの層が円筒形に丸められたCNTのことであり、多層CNTとは複数枚のグラファイトが同心円筒形に配置されたCNTのことである。所定の長さのCNTとは、使用および/または用途に応じて所望される長さのCNTのことをいうことができる。例えば、比較的長い長さのCNTを電界放出ディスプレイ(FED)などの平面ディスプレイに使用することができ、より短い長さのCNTをスーパーキャパシタに使用することができる。それぞれのCNTの所定の長さは、約1〜500μm、約10〜400μm、または約100〜250μmとすることができる。
【0009】
本開示ではCNTは、限定はされないが、当技術分野で周知である化学蒸着(CVD)、アーク放電、またはレーザーアブレーションを使用して作製することができる。例として、CNTは、基板上の約50〜100μm離間したリソグラフィパターンのストライプに鉄触媒を配置することによって、化学蒸着(CVD)を使用して成長する。CNTは触媒ストライプから触媒ストライプへと成長することができ、CNTが触媒ストライプ間に形成されるようになっている。CVDを使用するCNTの成長についてのさらなる詳細は、参照によって全体を本明細書に援用する、Seong Jun Kang,et al.の「High−performance electronics using dense,perfectly aligned arrays of single−walled carbon nanotubes」、nature nanotechnology、2007年3月25日、230−236、Vol.2、2007 Nature Publishing Groupを参照されたい。
【0010】
図1は、所定の長さのCNTを製造するためのデバイス100の例示的な実施形態の概略図である。図1は、基板110上に少なくとも一対のソースおよびドレイン電極111および112を含むデバイス100を示す。ソース電極111とドレイン電極112を明確に区別するために、ソース電極111は斜線で示されている。基板110は、1つまたは複数のCNTを支持するように構成されている。いくつかの実施形態では、基板110は、水晶ウエハ、シリコン(S)、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、ガリウムヒ素(GaAs)、またはサファイアウエハとすることができ、その上でCNTを配向させる。基板110は図1に図示された実施形態に限定されず、1つまたは複数のCNTを支持することができる限り、平坦な長方形または正方形タイプなど、どのような構成とすることもできる。
【0011】
図1に示すように、デバイス100は、少なくとも一対のソースおよびドレイン電極111および112、およびソースおよびドレイン電極111および112に動作可能に(例えば、電気的に)連結された電子デバイス120を含む。電子デバイス120は、ソース電極111とドレイン電極112との間に電場を生成して、ソース電極111とドレイン電極112との間に置かれた1つまたは複数のCNTを配向させるように構成されている。例えば、電子デバイス120はドレイン電極112に電圧を印加することができ、ソース電極111とドレイン電極112との間の電圧差によってCNTに電場を生成することができる。本明細書で使用される場合、「電場」という用語は、他の帯電した物体に力を加えることができる、エネルギー密度が電場強度の2乗に比例する電気エネルギーのことをいう。CNTは、後でより詳細に説明するが、生成された電場の方向に沿って配置することができる。電子デバイス120の例として、LED電圧源またはツェナー電圧源などの電圧源を使用することができる。電子デバイス120は、CNTを配向させるためにドレイン電極112に供給される電圧の大きさを制御することができる。いくつかの実施形態では、電子デバイス120はドレイン電極112に約AC1〜100V、または約AC10〜50Vを印加するように制御することができる。
【0012】
電子デバイス120はさらに、電圧を印加して1つまたは複数のCNTを所定の位置で切断するように構成されている。本明細書で使用される場合、「切断され」または「切断し」という用語は、CNTを物理的に分離(例えば、分割または切断)することをいう。「所定の位置」とは、CNTが切断される所望の位置のことをいう。CNTの所定の位置は、図4に関して詳細に説明される。ソースおよびドレイン電極111および112は、それらの間にCNTを配向させるように配置することができ、伝導性を有する周知の半導体材料、または金属などの任意の導電材料から構成することができる。
【0013】
少なくとも1つの配向領域113を形成するように、ソース電極111およびドレイン電極112を基板110上に配置することができる。本明細書で使用される場合、「配向領域」という用語は、1つまたは複数のCNTを配向させる領域のことをいう。「配向領域」という用語はさらに、1つまたは複数のCNTを受ける領域のことをいう。「配向領域」という用語はさらに、ソース電極111とドレイン電極112との間に形成される領域のことをいう。「配向領域」という用語はさらに、電子デバイス120の電圧に反応してソース電極111とドレイン電極112との間に生成される電場を受ける領域のことをいう。配向113の機能およびサイズは、以下に詳細に説明される。
【0014】
図示された実施形態では、ソース電極111は、主部111aおよび主部111aから延びる1つまたは複数の分岐部111bを有するように構成することができる。ドレイン電極112は、主部112aおよび主部112aから延びる1つまたは複数の分岐部112bを有するように構成することができる。ソースおよびドレイン電極111および112は、配向領域113をソース電極111の分岐部111bとドレイン電極112の分岐部112bとの間に形成することができるように、基板110上に配置することができる。
【0015】
本明細書では、ソースおよびドレイン電極111および112の主部111aおよび112aとはそれぞれ、一方向(例えば、長手方向)に延びる部分のことをいう。ソースおよびドレイン電極111および112の分岐部111bおよび112bとはそれぞれ、主部111aおよび112aから、主部111aおよび112aに対して垂直に分岐した部分のことをいう。図1に示すように、分岐部111bおよび112bはそれぞれ、主部111aおよび112aから水平に分岐することができる。図1はソース電極111の3つの分岐部111bおよびドレイン電極112の3つの分岐部112bを示しているが、3つより多くの分岐部を主部111aおよび112aからそれぞれ分岐することができることが、当業者には明らかであろう。
【0016】
図1はさらに、ソース電極111の分岐部111bおよびドレイン電極112の分岐部112bを、ソース電極111とドレイン電極112との間に配向領域113を形成するように所定の距離「d1」を置いて、基板110上に交互に配置することができることを示す。所定の距離「d1」および配向領域113は、以下で図3を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1はソース電極111およびドレイン電極112の分岐部111bおよび112bが基板110上に交互に配置された迷路様のパターンを形成するソースおよびドレイン電極111および112を示すが、ソースおよびドレイン電極111および112は基板110上に配向領域113を形成するように様々な構成を有することができることが、当業者には明らかであろう。
【0018】
1つの実施形態によると、図2aは、それぞれジグザグ状構造を有するソース電極211およびドレイン電極212が、配向領域113を形成するように所定の距離「d1」を置いて、基板110上に配置されていることを示す。ソース電極211およびドレイン電極212はそれぞれ、所定の角度「α」の複数の角を有することによって、ジグザグ状構造を形成する。例として、所定の角度αは約90°〜180°または約120°〜150°とすることができる。
【0019】
別の実施形態によると、図2bは、棒状構造を有するソース電極221およびドレイン電極222が、配向領域113を形成するように所定の距離「d1」を置いて、基板110上に平行に配置されていることを示す。迷路様パターン、ジグザグパターンおよび平行棒パターンが図示されているが、本開示の範囲内で、配向領域113を形成するように様々なパターンのソースおよびドレイン電極を構成することができることが、当業者には明らかであろう。
【0020】
図3は、図1に示すデバイスの部分「A」の概略的な上面図である。図3は、ソースおよびドレイン電極111および112の主部111aおよび112a、分岐部111bおよび112bによって画成された配向領域113を示す。特に、配向領域113の幅は、ソース電極111の分岐部111bとドレイン電極112の分岐部112bとの間の所定の距離「d1」によって決定することができる。本明細書で使用される場合、所定の距離「d1」とは、以下でより詳細に説明するが、配向領域113で配向されるCNTの長さと等しい、またはそれより長い長さのこともいう。配向領域113の長さは、ソース電極111の主部111aとドレイン電極112の主部112aとの間の距離「d2」によって決定することができる。例えば、分岐部111bと分岐部112bとの間の所定の距離「d1」は、約2〜1000μm、約20〜800μm、または約200〜500μmとすることができる。主部111aと主部112aとの間の距離「d2」は、約10〜5000μm、約100〜4000μm、または約1000〜2500μmとすることができる。したがって、配向領域113のサイズは所定の距離「d1」および距離「d2」によって制御することができる。例として、分岐部111bと分岐部112bとの間の所定の距離「d1」がより長い場合、より長いCNTを配向領域113上に配向させることができるように、配向領域113の幅はより広くなる。さらに、主部111aと主部112aとの間の距離「d2」がより長い場合、多数のCNTを配向領域113上に配向させることができるように、配向領域113の長さはより長くなる。
【0021】
いくつかの実施形態では、分岐部111bと分岐部112bとの間の所定の距離「d1」は、配向領域113で配向される1つまたは複数のCNTの所望される長さに基づいて決定することができる。配向領域113で配向される1つまたは複数のCNTは、以下でより詳細に説明する切断プロセスによって2つのセグメントに切断されるので、所定の距離「d1」は、CNTの所望される長さを考慮して決定することができる。CNTの所望される長さが10μmでありCNTが2つのセグメントに切断されると仮定すると、所定の距離「d1」は約20μmである。しかし、所定の距離「d1」は、切断プロセス中のCNTの長さの損失を考慮して、20μmよりわずかに長くすることができる。
【0022】
デバイス100はさらに、配向されたCNTの所定の位置をエッチングするエッチングデバイス(図示せず)を含むことができる。デバイス100のエッチングデバイスは、プラズマエッチングデバイスまたは反応性イオンエッチング(RIE)デバイスなど、CNTをエッチングするのに適切などのようなエッチングデバイスを含むこともできる。例として、プラズマエッチングデバイスは、プラズマ室、ガス入口、ガス排出孔、高周波(RF)源に連結された上部電極、接地された下部電極を含むことができる。プラズマエッチングは、例えば酸素含有気体などのガス混合物を、プラズマ室内部でイオン化してイオンを得ることによって実施することができる。気体のイオン化は上部電極によって放出されたRFの励起によって行われ、生成されたイオンは、例えば、下部電極の上に置かれたマスクされた部分を有するCNT層などのターゲット材料と反応する。
【0023】
さらに、デバイス100はさらに、CNTの直径にしたがってCNTを分離するセパレータを含むことができる。セパレータは、超遠心分離デバイス、低速遠心分離デバイス、または高速遠心分離デバイスなどの遠心分離デバイスを含むことができる。遠心分離デバイスは、CNTの浮遊密度、密度勾配の直径、またはCNTの電子タイプの違いに基づいて、CNTを分類することができる。分離についてのさらなる詳細は、以下で図7に関して説明する。
【0024】
所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造する方法
図4aは、1つまたは複数のCNTの配向を示す図1に示す箱形部分「A」の上面図である。1つの実施形態では、CNT溶液を配向領域113に付加し、溶液を配向領域113に注ぎ、配向領域113を有する基板110をCNT溶液に浸漬し、配向領域113を有する基板110をCNT溶液に浸し、CNT溶液を配向領域113に供給し、または任意のタイプの液体注入器を使用して、CNT溶液を基板110の配向領域113に注入することによって、1つまたは複数のCNT115を含むCNT溶液を基板110の配向領域113に提供することができる。本明細書では、上記のように、CVD、アーク放電、または大規模アブレーションなどの周知の技術を使用して、1つまたは複数のCNT115を作製することができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のCNT115がCVD技術を使用して成長するとき、フォトリソグラフィ法を使用して同じ長さを有するようにCNT115をパターニングすることによって、CNT115は実質的に同じ長さを有することができる。本明細書で使用される場合、CNT溶液は、CNT115を、水、または限定はされないが、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エーテル、窒素化合物および硫黄化合物などの他の溶媒に分散させることによって、作製することができる。CNT115は、約1〜20μm、5〜15μm、または8〜10μmの直径、および約2〜1000μm、約20〜800μm、または約200〜500μmの長さを有することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、配向領域113のサイズ(例えば、幅)は、上記のように、所定の距離「d1」によって決定することができる。所定の距離「d1」は、実質的にCNT115と等しい、またはそれより長い長さとすることができる。したがって、CNT溶液を基板110の配向領域113上に注ぐ場合、CNT溶液に含まれるCNT115を配向領域113に提供することができる。ここで、CNT115は配向領域113に分散することができる。分散されたCNTを、電場に反応して配向領域113で配向させることができる。特に、電子デバイス120(図1に示す)は、ソースおよびドレイン電極111および112に電圧を印加して、ソース電極111の分岐部111bとドレイン電極112の分岐部112bとの間に電場を生成することができる。図4aは、配向領域113に分散されたCNT115を、電場に反応して、CNT115に作用する静電力によって配向領域113の電場に平行に配向させることができることを示す。
【0026】
配向領域113で配向されたCNT115は、所定の位置で2つのセグメントに切断することができる。いくつかの実施形態では、CNT115は、配向されたCNTの所定の位置をエッチングし、CNTのエッチングされた所定の位置を切断するようにCNTに電圧を印加することによって、切断することができる。したがって、CNTは、CNTの所定の位置でCNTをエッチングおよび切断することによって、2つのセグメントに切断することができる。切断プロセスは、以下で詳細に説明する。
【0027】
図4bは、配向されたCNT115を、エッチングプロセスを施す所定の位置116とともに示す。所定の位置116は、CNT115の切断されるセグメントの所望される長さを得るように決定することができる。例えば、CNT115がそれぞれ2つのセグメントに切断され、それぞれのセグメントが同じ所望される長さを有する場合、所定の位置116は、CNT115のそれぞれの全長の中間とすることができる。
【0028】
図5aおよび図5bは、エッチングプロセスを示すための、図1に示すデバイスの断面の例示的な実施形態を示す概略図である。CNT115の所定の位置116には、プラズマエッチングデバイスまたは反応性イオンエッチング(RIE)デバイスなどのエッチングデバイス(図示せず)によってエッチングプロセスが施される。CNT115の所定の位置116をエッチングするために、図5aに示すように、配向領域113で配向されたCNT115上にマスク層130を形成することができる。図5aは、ソース電極の分岐部111bとドレイン電極の分岐部112bとの間に少なくとも1つの配向領域113が形成された基板110、および配向領域113で配向された1つまたは複数のCNT115を示す。CNT115を覆うように、スリット131を有するマスク層130を配置することができる。スリット131(すなわち、マスク層130のマスクされていない部分)は、CNT115の所定の位置116と実質的に同じ幅「a」を有する。図5aはさらに、スリット131がCNT115の所定の位置116に置かれるように、マスク層130が基板110上に配置されていることを示す。
【0029】
いくつかの実施形態では、CNT115のマスク層130のスリット131を通して露出される部分は、例えば方向性エッチングなどのエッチングに利用可能である。本明細書で使用される場合、「方向性エッチング」という用語は、エッチャント物質を使用した物理的または化学的プロセスによる、基板からの材料の方向性除去のことをいう。エッチャント物質は、腐食液または化学的に活性化されたイオン化ガス(例えば、プラズマ)とすることができる。方向性エッチングは、限定はされないが、酸素プラズマエッチングまたは反応性イオンエッチング(RIE)を含むことができる。例えば、酸素プラズマエッチングは、例えば酸素含有気体などのガス混合物を、プラズマ室内部でイオン化してイオンを得ることによって実施することができる。気体のイオン化は上部電極によって放出されたRFの励起によって行われ、生成されたイオンは、例えば、下部電極の上に置かれたマスクされた部分を有するCNT層などのターゲット材料と反応する。さらに、反応性イオンエッチング(RIE)は、化学反応性プラズマを使用して材料(例えば、CNT)の所望される部分を除去するエッチング技術である。プラズマは、低圧(真空)下で電磁場によって生成される。プラズマからの高エネルギーイオンは材料と反応し、材料の所望される部分が除去される。
【0030】
CNT115の所定の位置116で行われた方向性エッチングの結果として、幅「a」を有するマスクされていない部分のみが方向的にエッチングされ、したがって図5bに示すように、幅「a」を有するエッチングされた部分117がCNT115の長さの中間に形成される。
【0031】
図6は、CNT115のエッチングされた部分117の切断を示す。図6は、1つの実施例による切断プロセスを示すための図1の箱形部分「A」の上面図である。CNT115のエッチングされた部分117(図5bに示す)は、ソース電極111とドレイン電極112(例えば、図1に示すソース電極111の分岐部111bとドレイン電極112の分岐部112b)との間に生成された電場に反応して切断することができる。電場は電子デバイス120(図1に示す)によって電圧を印加することによって生成することができる。いくつかの実施形態では、電子デバイス120からドレイン電極112へと電圧が印加され、したがって電流がCNT115を通って流入される。例えば、電圧は約2〜2.5V、約1〜5V、または約0.5〜10Vとすることができ、電流は約10〜15μA、約5〜30μA、または約2.5〜60μAとすることができる。CNT115のエッチングされた部分117を切断するために印加される電圧の範囲は、CNT115の直径に基づいて実験的に得ることができる。流入される電流の範囲は印加される電圧に応じて変化することができる。流入される電流に反応して、CNT115のエッチングされた部分117は弱くなり、CNT115は最終的に、エッチングされた部分117で2つのセグメントへと切断される。
【0032】
CNT115の切断されたセグメントはそれぞれ、約1〜500μm、10〜400μm、または100〜250μmの範囲の長さを有することができる。CNT115の切断されたセグメントは、CNT115の所定の位置に応じて実質的に同じ長さまたは異なる長さを有することができる。いくつかの実施形態では、それぞれのCNT115が1つの所定の位置116を有し、所定の位置116がCNT115のそれぞれの全長の中間にあるとき、CNT115の切断されたセグメントは実質的に同じ長さを有する。所定の位置116がCNT115のそれぞれの全長の3分の1にある別の実施形態では、それぞれのCNT115は、それぞれのCNTの全長の3分の1を有する1つのセグメントおよびそれぞれのCNTの全長の3分の2を有する他のセグメントを有することができる。
【0033】
図7は、同一または実質的に同じ直径を有する図6のCNT115のCNTの切断されたセグメント118の群を示す概略図である。CNT115の切断されたセグメント118は、基板110(図1に示す)から切り離すことができ、様々な直径を有するCNTの切り離されたセグメント118を遠心分離で分類することができる。遠心分離の例として、密度の差を使用する超遠心分離を使用することができる。例えば、求心力に反応して、異なる直径を有する切断されたセグメント118を、浮遊密度の差によって遠心分離管の異なる層に分離することができる。本明細書では、浮遊密度とは、CNTの容積あたりの質量をいうことができる。より小さい直径を有する切断されたセグメント118の群は、遠心分離管のより高い層に位置することができ、より大きい直径を有する切断されたセグメント118の群は、遠心分離管のより低い層に位置することができる。したがって、遠心分離管から層ごとの除去を実施することによって、それぞれの層を抽出することができる。例えば、遠心分離管から最も高い層を除去することによって、最小の直径を有するCNT115の切断されたセグメント118を抽出することができる。浮遊密度の差を使用した分類方法のさらなる詳細については、参照によって全体を本明細書に援用する「Sorting carbon nanotubes by electronic structure using density differentiation」、Michael S.Arnoldら、Nature nanotechnology、vol.1(2006年10月出版)を参照されたい。
【0034】
他の分類方法では、CNT115は密度勾配の直径、または電子タイプによって分類することができる。密度勾配の直径、および電子タイプを使用する分類方法のさらなる詳細については、参照によって全体を本明細書に援用する「Enrichment of single−walled carbon nanotubes by diameter in density gradients」、Arnold,M.S.ら、Nano Lett.5、713−718(2005);および参照によって全体を本明細書に援用する「Bulk separative enrichment in metallic or semiconducting single−walled carbon nanotubes」、Chen,Z.H.ら、Nano Lett.3、1245−1249(2003)を参照されたい。
【0035】
別の実施形態では、直径によるCNT115の分類を切断プロセスの前に実施することができる。例えば、様々な直径を有するCNT115を上述の分類方法によって直径にしたがって分類することができ、次いで、図4〜図6に関して図示されているように、同一または同様の直径を有するCNT115に切断プロセスを施すことができる。
【0036】
上記のように、1つまたは複数のCNTを、CNTの所定の位置をエッチングし、CNTのエッチングされた部分に電場を印加することによって、所望される長さ2つのセグメントに切断することができる。さらに、CNTの所定の位置は、CNTのセグメントの長さまたはCNTのセグメントの数を調整するように制御することができる。したがって、単純かつ費用効果的な方法で、所望される長さのCNTを製造することができる。
【0037】
本明細書で開示された上記および他のプロセスおよび方法には、プロセスおよび方法で実施される機能を、異なる順序で実施することもできることが、当業者には明らかであろう。さらに、概説したステップおよび動作は、例として述べたものに過ぎず、開示された実施形態の本質から逸脱することなく、ステップおよび動作のいくつかを任意とすることができ、より少ない数のステップおよび動作に組み合わせることができ、または追加的なステップおよび動作へと拡張することができる。
【0038】
本開示は、様々な態様の例示であることが企図され、本出願に説明された特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく、多くの修正および変形を行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に均等な方法および装置は、上記の説明から当業者には明らかであろう。そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれるものである。本開示は、添付の特許請求の範囲の言葉ならびにそのような特許請求の範囲が与えられた均等物のすべての範囲によってのみ限定されるものである。本開示は、当然変化することがあり得る、特定の方法、試薬、化合物、組成または生体系に限定されないことが理解されよう。本明細書で使用された用語は、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、限定するものではないことも理解されよう。
【0039】
本明細書における実質的にすべての複数形および/または単数形の用語の使用に対して、当業者は、状況および/または用途に適切なように、複数形から単数形に、および/または単数形から複数形に変換することができる。様々な単数形/複数形の置き換えは、理解しやすいように、本明細書で明確に説明することができる。
【0040】
通常、本明細書において、特に添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本体部)において使用される用語は、全体を通じて「オープンな(open)」用語として意図されていることが、当業者には理解されよう(例えば、用語「含む(including)」は、「含むがそれに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、用語「有する(having)」は、「少なくとも有する(having at least)」と解釈されるべきであり、用語「含む(includes)」は、「含むがそれに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきである、など)。導入される請求項で具体的な数の記載が意図される場合、そのような意図は、当該請求項において明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しないことが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、理解の一助として、添付の特許請求の範囲は、導入句「少なくとも1つの(at least one)」および「1つまたは複数の(one or more)」を使用して請求項の記載を導くことを含む場合がある。しかし、そのような句の使用は、同一の請求項が、導入句「1つまたは複数の」または「少なくとも1つの」および「a」または「an」などの不定冠詞を含む場合であっても、不定冠詞「a」または「an」による請求項の記載の導入が、そのように導入される請求項の記載を含む任意の特定の請求項を、単に1つのそのような記載を含む実施形態に限定する、ということを示唆していると解釈されるべきではない(例えば、「a」および/または「an」は、「少なくとも1つの」または「1つまたは複数の」を意味すると解釈されるべきである)。同じことが、請求項の記載を導入するのに使用される定冠詞の使用にも当てはまる。また、導入される請求項の記載で具体的な数が明示的に記載されている場合でも、そのような記載は、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることが、当業者には理解されよう(例えば、他の修飾語なしでの「2つの記載(two recitations)」の単なる記載は、少なくとも2つの記載、または2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、BおよびC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、およびCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。「A、B、またはC、などの少なくとも1つ」に類似の慣例表現が使用されている事例では、通常、そのような構文は、当業者がその慣例表現を理解するであろう意味で意図されている(例えば、「A、B、またはCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、AおよびBを共に、AおよびCを共に、BおよびCを共に、ならびに/またはA、B、およびCを共に、などを有するシステムを含むが、それに限定されない)。2つ以上の代替用語を提示する事実上いかなる離接する語および/または句も、明細書、特許請求の範囲、または図面のどこにあっても、当該用語の一方(one of the terms)、当該用語のいずれか(either of the terms)、または両方の用語(both terms)を含む可能性を企図すると理解されるべきであることが、当業者にはさらに理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」あるいは「AおよびB」の可能性を含むことが理解されよう。
【0041】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュグループで記載されている場合、当業者は、本開示がマーカッシュグループのいずれかの個々の部材または部材のサブグループについても説明されていることを理解するであろう。
【0042】
当業者には理解されるように、書面の提供などに関して、いずれかおよびあらゆる目的において、本明細書に開示したすべての範囲は、あらゆる可能な部分的範囲およびそれらの部分的範囲の組み合わせも包含する。あらゆる記載された範囲は、その範囲が少なくとも2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分割されることが十分に説明され可能である、と容易に理解することができる。非限定的な例として、本明細書で説明した各範囲は、下位の3分の1、中位の3分の1および上位の3分の1などに容易に分解することができる。同じく当業者には明らかなように、「まで」、「少なくとも」などのすべての用語は、記載された数を含み、次いで上記のような部分的範囲に分解することができる範囲のことをいう。最後に、当業者には明らかなように、範囲は、個々の部材のそれぞれを含む。したがって、例えば、1〜3セルを有する群とは1、2または3セルを有する群のことである。同様に、1〜5セルを有する群とは1、2、3、4または5セルを有する群のことである。
【0043】
上記から、本開示の様々な実施形態は例示のために本明細書に記載され、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されよう。したがって、本明細書に開示された様々な実施形態は限定的なものではなく、真の範囲および趣旨は添付の特許請求の範囲によって示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するための方法であって、
1つまたは複数のCNTを配向させるように電場を生成することと、
前記1つまたは複数の配向されたCNTを所定の位置で切断することとを含む方法。
【請求項2】
前記1つまたは複数の配向されたCNTを切断することが、
前記1つまたは複数の配向されたCNTの所定の位置をエッチングすることと、
前記1つまたは複数のエッチングされたCNTに電圧を印加することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
化学蒸着(CVD)を使用して、1つまたは複数の配向されたCNTをさらに形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電場を生成することが、
前記1つまたは複数のCNTを含む溶液を基板上に提供することと、
前記電場を生成して前記基板上で前記CNTを配向させるように、電圧を印加することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電場を生成することが、
前記1つまたは複数のCNTを2つの電極間に置くことと、
前記2つの電極間に前記電場を生成して前記CNTを前記2つの電極に垂直に配向させるように、電圧を印加することとを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記CNTの所定の位置をエッチングするように、前記配向されたCNT上に、スリットを有するマスク層を配設することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記エッチングが方向性エッチングによって実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方向性エッチングが、酸素プラズマエッチングまたは反応性イオンエッチング(RIE)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記切断されたCNTを前記CNTのそれぞれの直径によって分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分離が遠心分離によって実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記所定の位置が前記CNTのそれぞれの全長の中間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記切断されたCNTの長さが実質的に同じである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記CNTのそれぞれの所定の長さが約1〜500μmである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
所定の長さのカーボンナノチューブ(CNT)を製造するためのデバイスであって、
ソース電極とドレイン電極との間でCNTを配向させるように構成された少なくとも一対のソースおよびドレイン電極と、
前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に置かれた前記1つまたは複数のCNTを配向させるように前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に電場を生成し、前記1つまたは複数のCNTを所定の位置で切断するように電圧を印加するように構成された電子デバイスとを含むデバイス。
【請求項15】
方向性エッチングを使用して、前記配向されたCNTの所定の位置をエッチングするエッチングデバイスをさらに含む、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記方向性エッチングが、酸素プラズマエッチングまたは反応性イオンエッチング(RIE)を含む、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記電子デバイスが、前記CNTのそれぞれの所定の位置で前記CNTを切断するために、前記エッチングされたCNTに電圧を印加する、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記所定の位置が前記CNTのそれぞれの全長の中間である、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
前記切断されたCNTを前記CNTの直径によって分離するセパレータをさらに含む、請求項16に記載のデバイス。
【請求項20】
前記ソースおよびドレイン電極のそれぞれが、前記ソース電極およびドレイン電極の分岐部が交互に配置され均一に離間されるように、主部および前記主部に垂直な1つまたは複数の分岐部を含む、請求項14に記載のデバイス。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−515667(P2013−515667A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545860(P2012−545860)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際出願番号】PCT/KR2010/009305
【国際公開番号】WO2011/081364
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(510056353)コリア・ユニバーシティ・リサーチ・アンド・ビジネス・ファウンデーション (15)
【Fターム(参考)】