説明

CO2捕捉を備える発電プラント及びその運転方法

電力を発生させるための化石燃料火力発電プラントは、水−蒸気循環路と、発電プラントから排出された排出ガスからCOを捕捉するためのプラント(10)と、発電プラントにおける低圧力抽出ポイントから又は中圧抽出ポイントから注入蒸気流を受け、その圧力を増大させるように構成され配置された蒸気噴射エゼクタ(24)を備える。蒸気噴射エゼクタ(24)は更に、発電プラントにおいて更なる抽出ポイントから駆動蒸気(25)を受けるようにも配置される。蒸気配管(27,22)は、圧力の増大した蒸気を蒸気噴射エゼクタ(24)からCO捕捉プラント(10)へと送る。本発明の発電プラントによると、CO捕捉プラントの運転のために低圧蒸気を用いることが可能となる。そのような蒸気の抽出は、現行の発電プラントと比較して、発電プラントの全体的な効率への影響が少ない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化石燃料の燃焼により発生した二酸化酸素を捕捉するためのプラントを備える、電力を発生させるための化石燃料火力発電プラントに関する。本発明は特に、二酸化炭素捕捉プラントを運転するために用いられる蒸気を提供する装置に関する。本発明は更に、そのような発電プラントを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果に大きく寄与することが知られている二酸化酸素(CO)ガスの大気中への排出を削減するために、化石燃料の燃焼に基づいて電力エネルギーを発生させる発電プラントに、COを捕捉するためのプラントを設けることが提案されている。ごく最近、そのような発電プラントが試験的に運転され始めている。
【0003】
公知の炭素捕捉プラントは、冷却アンモニア法又はアミン法に基づいて稼働するCO吸収装置を備え、更に、COの貯蔵及び/又は運搬が可能となるように、捕捉したCOを圧縮するためのCO圧縮機を数機備える。これらのCO捕捉及び圧縮プロセスは、熱及び蒸気圧の形態のエネルギーを必要とする。吸収プロセスでは、熱交換器における吸収剤を再生するための熱源が必要となり、CO圧縮では、タービンを駆動して圧縮機を駆動するための圧縮蒸気が必要となる。
【0004】
WO2008/090167には、CO捕捉及び圧縮プラントを備える発電プラントが開示されている。この発電プラントでは、熱回収蒸気発生器HRSGから抽出された蒸気を提供することにより、CO圧縮機用のタービンを駆動している。駆動を目的として更なる蒸気がHRSGによって提供され、HRSGにおいて更に燃料が燃焼される。圧縮機を駆動しているタービンからの低圧蒸気が吸収剤の再生に用いられる。
【0005】
EP551876には、CO捕捉及び圧縮プラントを備える発電プラントが開示されている。この発電プラントは、発電プラントの高圧蒸気タービンから、補足したCOの圧縮及び冷却用の圧縮機を駆動するためのタービンに通じる蒸気配管を備える。しかし、そのような高圧蒸気を使用した場合、発電器を駆動するタービンにおいて高圧蒸気の損失が生じるため、発電プラント全体として効率が低下してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、COを捕捉及び圧縮するためのプラントを備える、電力を発生させるための発電プラントであって、従来技術にて公知の同種の発電プラントと比較して、全体としてより効率が高く、CO捕捉プラントの運転の信頼性が高い発電プラントを提供することを目的とする。
【0007】
更に本発明は、この種の発電プラントを運転する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、発電プラントによって排出された排出ガスからCOを捕捉し圧縮するためのプラントを備える、電力を発生させるための化石燃料火力発電プラントは、水−蒸気循環路からの蒸気流を注入蒸気として蒸気配管を介して受けるとともに前記注入蒸気の圧力を増大し、更なる蒸気配管を介してそれを前記CO捕捉プラントに送るように構成され配置された蒸気噴射エゼクタを備える。前記蒸気噴射エゼクタは、前記注入蒸気の圧力増大を可能とする駆動蒸気流として蒸気流が流入するように構成され配置される。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記発電プラントは、中圧蒸気タービン又は、水−蒸気循環路における低圧又は中圧を送る前記中圧蒸気タービンよりも下流の抽出ポイントから前記蒸気噴射エゼクタへと通じる蒸気配管を備える。
【0010】
第1の特定の実施形態において、前記発電プラントは、中圧蒸気タービンと低圧蒸気タービンとの間のクロスオーバー蒸気配管から前記蒸気噴射エゼクタへと通じる蒸気配管を備える。出力蒸気配管は、圧力の増大した前記蒸気を前記蒸気噴射エゼクタから前記CO捕捉プラントへ送る。
【0011】
本発明の第2の特定の実施形態において、前記発電プラントは、前記中圧蒸気タービンにおける抽出ポイントから前記蒸気噴射エゼクタへと通じる低圧蒸気配管、及び、前記蒸気噴射エゼクタから前記CO捕捉プラントへと通じる更なる蒸気配管を備える。
【0012】
本発明の第3の実施形態において、前記発電プラントは、前記低圧蒸気タービンにおける抽出ポイントから前記蒸気噴射エゼクタへと通じる低圧蒸気配管、及び、前記蒸気噴射エゼクタから前記CO捕捉プラントへと通じる更なる蒸気配管を備える。
【0013】
本発明の第4の実施形態において、前記発電プラントは、前記圧縮器における抽出ポイントから前記蒸気噴射エゼクタへと通じる低圧蒸気配管、及び、前記蒸気噴射エゼクタから前記CO捕捉プラントへと通じる更なる蒸気配管を備える。
【0014】
上述した本発明の実施形態のそれぞれにおいて、前記発電プラントは、蒸気を駆動蒸気として前記蒸気噴射エゼクタに導く蒸気配管を備える。前記駆動蒸気は、前記中圧蒸気タービン(前記注入蒸気の前記抽出ポイントから上流に設けられる)における抽出ポイント、又は、前記中圧蒸気タービンにおける該抽出ポイントから前記水−蒸気循環路において上流の任意のポイントから抽出される。例えば、駆動蒸気配管は、前記高圧蒸気タービンからボイラ又は熱回収蒸気発生器へと通じる再加熱配管、あるいは、前記ボイラ又は前記熱回収蒸気発生器から前記中圧蒸気タービンへと通じる再加熱配管から導くことができる。前記駆動蒸気は、前記生蒸気配管、又は、前記高圧蒸気タービンにおける抽出ポイントからも取り出すことができる。これらの配管は、駆動蒸気として適度な温度及び圧力の大量の蒸気流を含む。これらの蒸気配管からの駆動蒸気のために少量の蒸気を抽出しても、これらの配管における蒸気流に対する影響は小さいので、前記発電プラントの全体効率への影響も小さくとどまる。
【0015】
本発明に係る発電プラントは、COの捕捉及び圧縮プラント用に前記発電プラントの水−蒸気循環路からの低圧蒸気を送るよう構成される。高圧蒸気を抽出するのではなく低圧蒸気を抽出すると、使用蒸気流の減少が少ないため、前記蒸気タービンの全体効率への影響が小さい。前記蒸気噴射エゼクタによって、前記CO捕捉に導かれる蒸気が前記CO捕捉プラントの運転に必要な圧力に達する。特に、前記蒸気噴射エゼクタは、前記発電プラントの水−蒸気循環路から抽出された前記低圧蒸気が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な蒸気よりも少ない場合であっても、必要な蒸気圧を提供する。そのため、十分な蒸気圧が常時、前記発電プラント運転状態がいかなるものであっても保証される。
【0016】
特に、本発明に係る前記発電プラントは、該発電プラントが部分負荷、ターンダウン状態又は変圧モードで稼働している場合であっても、前記CO捕捉プラントが継続的に稼動することを可能とする。部分負荷運転中に水−蒸気循環路から入手可能な蒸気圧は低下するので、前記CO捕捉プラントの運転には不十分となる可能性がある。そのため、蒸気噴射エゼクタを設けることで、部分負荷運転中の継続したCO捕捉動作に十分な蒸気圧が提供可能となる。
【0017】
本発明の更なる具体的な実施形態において、前記蒸気噴射エゼクタは、前記CO捕捉プラントにおけるCO吸収剤を再生させるための熱交換器に稼働可能に接続される。
【0018】
本発明の更なる具体的な実施形態において、前記CO捕捉プラントは、冷却アンモニア法に基づいて稼働し、前記蒸気噴射エゼクタは、水からアンモニアを取り外すための装置に稼働可能に接続される。
【0019】
本発明更なる実施形態において、前記発電プラントは、前記水−蒸気循環路から前記蒸気噴射エゼクタをバイパスする前記CO捕捉プラントに通じる低圧蒸気用の更なる蒸気配管を備える。前記蒸気圧が、前記CO捕捉プラントに必要な蒸気圧以上であり前記CO捕捉プラントの運転に十分である場合、低圧蒸気は、該蒸気配管を通じて前記CO捕捉プラントへと送られ、その運転に使用される。
【0020】
本発明の更なる実施形態において、前記発電プラントは、蒸気配管を介して前記水−蒸気循環路から抽出された低圧蒸気を受け、駆動蒸気流によってこの注入蒸気の圧力を増大し、更なる蒸気配管を介して圧力の増大した蒸気を前記CO捕捉プラントへと送るように構成され配置された追加的な蒸気噴射エゼクタ(前記第1の蒸気噴射エゼクタと並列に配置される)を備える。タービン効率の著しい低下を避けるために、前記第2の蒸気噴射エゼクタ用に抽出された蒸気を、前記中圧蒸気タービンにおけるポイントから、又は、水−蒸気循環路における前記中圧蒸気タービンよりも下流のポイントから再び抽出する。上述したように稼働蒸気配管は、水−蒸気循環路における適当なポイントから前記第2の蒸気噴射エゼクタに通じる。
【0021】
前記第2の蒸気噴射エゼクタは、前記第1の蒸気噴射エゼクタを用いた蒸気圧増大が、前記CO捕捉プラントの運転に十分な圧力を提供しない場合に起動される。前記第2の蒸気噴射エゼクタは、前記第1の蒸気噴射エゼクタ以上に圧力を増大させるように構成され配置される。
【0022】
前記第2の蒸気噴射エゼクタは、前記第1の蒸気噴射エゼクタと並列又は直列に配置することができる。
【0023】
CO捕捉プラントを備える発電プラントを運転するための方法は、中圧蒸気タービン又は、中圧蒸気タービンよりも下流におけるポイントで前記発電プラントの水−蒸気循環路から蒸気を抽出し、それを第1の蒸気噴射エゼクタへ送る工程と、その圧力を前記CO捕捉プラントを運転するために必要な圧力以上の圧力に増大させる工程と、該蒸気を前記CO捕捉プラントへと送る工程と、前記CO2捕捉プラント内の稼働にそれを用いる工程とを有する。例えば、これは、CO吸収剤の再生用熱交換器又は、アンモニア−水取り出し装置用熱交換器を運転するためのものとすることができる。前記抽出した蒸気の圧力が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な圧力のレベルより低い場合に適用可能となる。これは、前記発電プラントの全負荷又は部分負荷運転中に起こる。
【0024】
そのような発電プラントを運転するための特定の方法は、前記発電プラントを全負荷又は部分負荷の範囲内で運転する場合に、前記発電プラントの水−蒸気循環路から蒸気を抽出することによって前記CO捕捉プラントを運転する工程と、前記蒸気噴射エゼクタをバイパスする配管を通してそれを前記CO捕捉プラントまで直接導く工程とを有する。これは、この範囲の前記負荷又は部分負荷運転中に、前記抽出された蒸気の圧力が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な圧力以上となる場合に適用可能となる。前記抽出した蒸気の前記圧力が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な圧力よりも低い場合、本方法を上述したように適用する。このため、前記CO捕捉プラントに直接蒸気を導く前記配管は閉ざされ、前記抽出された蒸気用の配管が開かれ、抽出された蒸気は圧力増大のために前記蒸気噴射エゼクタへとそれを送られる。
【0025】
発電プラントを運転する更なる特定の方法を、上述した方法のうちの何れか1つの他に適用する。前記発電プラントを更なる部分負荷運転の範囲で運転する場合、前記蒸気噴射エゼクタによって発生した前記蒸気の圧力が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な圧力を下回ると、前記第1の蒸気噴射エゼクタへの前記配管が閉じられ、前記水−蒸気循環路から抽出された蒸気は、第2の蒸気噴射エゼクタへと送られる。前記第2の蒸気噴射エゼクタは、前記蒸気圧を少なくとも必要な蒸気圧のレベルまで増大する。その後、前記蒸気噴射エゼクタからの蒸気は、前記CO捕捉プラントへと送られる。
【0026】
これらの方法により、前記CO捕捉プラントが常時かつ、発電プラントの全負荷運転及び部分負荷運転中にも可能となる。例えば、発電プラントがプラントのターンダウン中に変圧モードで稼働している場合、水−蒸気循環路から抽出することができる蒸気圧は、継続的に低下する。前記CO捕捉プラントを運転するために必要な蒸気圧に対する前記抽出した蒸気の圧力に基づいて、前記バイパス配管又は個々のエゼクタに通じる蒸気配管を開閉することで、いずれの蒸気噴射エゼクタも稼働させない、又は、第1又は第2の蒸気噴射エゼクタを稼働させる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】蒸気噴射エゼクタを有する、本発明に係る発電プラントの第1の実施形態の概略図である。
【図2】蒸気噴射エゼクタを有する、本発明に係る発電プラントの第2の実施形態の概略図である。
【図3】蒸気噴射エゼクタを有する、本発明に係る発電プラントの第3の実施形態の概略図である。
【図4】蒸気噴射エゼクタが追加された、本発明に係る発電プラントの第4の実施形態の概略図である。
【図5】2つの蒸気噴射エゼクタを稼働させることによりCO捕捉プラントに蒸気圧が提供される模様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1−図3はそれぞれ、高圧蒸気、中圧蒸気及び低圧蒸気によってそれぞれ駆動される蒸気タービン1,2,3を有する本発明に係る発電プラントを示す図である。これら蒸気タービンは共通軸4に取り付けられ、発電器5を駆動し、電力を発生させる。タービン用の蒸気は、化石燃料だきボイラ又は、ガスタービンSからの高温排出ガスによって運転される熱回収蒸気発生器HRSG6などの蒸気発生器によって発生する。生蒸気は、配管16を通じて高圧蒸気タービン1に供給される。蒸気タービン1,2,3は、再加熱蒸気配管26及びクロスオーバー蒸気配管36により接続される。図1−図3の発電プラントの水−蒸気循環路は、低圧蒸気タービン3によって排出された蒸気を凝縮する凝縮器7、給水及び復水の再加熱及び脱気のための特定の装置(図示せず)及び、ボイラ又はHRSG6に通じる戻り配管8から成る。
【0029】
図1−図3の発電プラントはそれぞれ、ボイラ又は、COの捕捉及び圧縮のためのプラント10に通じるHRSG6からの排ガス用の配管を更に備える。このプラントとしては、例えば、冷却アンモニア法又はアミン法に基づいて稼働する吸収装置及び、排出ガスから抽出されたCOを圧縮する、一つ以上のCO圧縮機を備える。捕捉され圧縮されたCOは、配管11を通じて貯蔵又は運搬設備に運ばれる。COを含まないガスは、大気中に放出されるか、配管12を通り更なる分離又は処理が施される。配管13を通過し、捕捉プロセスを経た復水が、給水としてHRSG又はボイラ6に送られる。
【0030】
本発明では、注入蒸気流よりも出力蒸気流を高圧とするために、発電プラントに蒸気噴射エゼクタ24を設ける。蒸気噴射エゼクタ24には、蒸気配管20及び23を通じて低圧注入蒸気流が流入し、蒸気配管25を通じて駆動蒸気が流入する。出力蒸気配管27により、蒸気噴射エゼクタ24からの出力蒸気がCO捕捉プラントに通じる蒸気配管22へ送られる。CO捕捉プラントにおいて、蒸気はCO圧縮機を駆動するためタービン駆動する又は、CO捕捉剤の再生のための熱交換媒体として使用される。
【0031】
配管20により、クロスオーバーする配管からの蒸気を、中圧蒸気タービン2から低圧蒸気タービン3に分流させ、蒸気配管23に抽出された蒸気を蒸気噴射エゼクタ24へと導く。蒸気配管25は、高圧蒸気タービン1とHRSG6との間の再加熱蒸気配管26から抽出された蒸気を導く。
【0032】
この構成により、発電プラントの水−蒸気循環路における高圧蒸気源から蒸気を抽出する必要なく高圧蒸気をCO捕捉プラントに送ることができるため、全体効率に悪影響を及ぼすことがない。
【0033】
追加の蒸気配管21は、CO捕捉プラントに通じる蒸気配管20から蒸気配管22に直接つながり、逆止め弁21’を有する。この配管及び弁は、水−蒸気循環路によって提供された蒸気の圧力がCO捕捉プラントの運転に十分である場合、低圧蒸気をCO捕捉プラントへ直接送ることが可能とする。
【0034】
図2は、蒸気噴射エゼクタを配置した本発明の更なる実施形態を示す。蒸気噴射エゼクにタには、配管30及び配管23を通じて低圧蒸気タービン3から抽出した注入蒸気流が送られる。本実施形態において、蒸気噴射エゼクタ24用の駆動蒸気は、HRSG6と中圧蒸気タービン2との間の再加熱配管26から配管31を介して抽出される。
【0035】
図1の実施形態同様、発電プラントは、蒸気配管21及び逆止め弁21’を含む。それにより水−蒸気循環路からの蒸気の圧力が運転に十分である場合に、蒸気圧を増大させることなく、中圧蒸気をCO捕捉プラントに直接送ることができる。
【0036】
図3は、蒸気噴射エゼクタ24を備える本発明の更なる実施形態を示す。蒸気噴射エゼクタ24には、注入蒸気として低圧タービン排出蒸気の一部が送られる。注入蒸気配管40は、低圧蒸気タービン3と凝縮器7との間の抽出ポイントから、蒸気噴射エゼクタに通じる蒸気配管23へと通じる。駆動蒸気41用の配管は、中圧蒸気タービン2における抽出ポイントから蒸気噴射エゼクタ24へと通じる。
【0037】
配管21が配管40から逆止め弁21’を介して蒸気配管22へ直接通じるため、抽出した蒸気流の圧力がCO捕捉プラントの運転に十分である場合、CO捕捉プラントにおいて低圧蒸気を水蒸気循環路から直接用いることが可能となる。
【0038】
図4は、図1の発電プラントの蒸気噴射エゼクタに加え、エゼクタ24に対し並列に配置された追加の蒸気噴射エゼクタ52を有する発電プラントを示す。蒸気配管50は、クロスオーバー配管36からの抽出配管20から伸び、注入蒸気を蒸気噴射エゼクタ52へと送る。駆動蒸気配管51は、配管16からの生蒸気の一部を蒸気噴射エゼクタ52へ送る。図1−3に示したように、蒸気噴射エゼクタ52へ通じる他の駆動蒸気配管も配置可能である。エゼクタ52により圧力が増大した蒸気は、配管53,27,22を通じてCO捕捉プラント10へと送られる。例えば、蒸気噴射エゼクタ24による蒸気がCO捕捉プラントの蒸気圧要件を満たさなくなった場合、蒸気噴射エゼクタ52が起動される。例えば、ターンダウン運転では、部分負荷が減り、最終的に蒸気噴射エゼクタ24による蒸気の圧力は、CO捕捉プラントに必要な蒸気圧よりも低くなる。そのような場合、蒸気噴射エゼクタ24への配管23は閉ざされ、配管50が代わりに開く。
【0039】
図5は、図4に示したようなCO捕捉プラントを備える発電プラントの運転方法を示す。CO捕捉プラントに提供された蒸気の圧力Pは、発電プラントの部分負荷運転率の関数として与えられる。CO捕捉プラントを効果的に運転するための必要最低圧力は、P(CO)の値で破線によって示される。発電プラント自体の運転モードに係らず、この圧力要件は、全ての部分負荷運転モードに渡って一定である。
【0040】
運転Iの第1範囲では、発電プラントは全負荷又は高率部分負荷で運転している。この範囲では、抽出された蒸気P1(21)の圧力は、CO捕捉プラントを運転するために必要となる蒸気圧よりも高い。例えば、全負荷の80−100%のこの範囲Iでは、バイパス弁21’が開いており、抽出された蒸気を直接用いてCO捕捉プラントを運転することができ、圧力を増大させる必要はない。例えば、発電プラントのターンダウンの間に部分負荷率が低下すると、抽出された蒸気の圧力も低下し、最終的にはCO捕捉プラント運転P(CO)に必要となる最低圧力のレベルにまで低下してしまう。(蒸気噴射エゼクタ24を起動させずに発電プラントが更にターンダウンされると、抽出された蒸気圧は、PI(21)によって示したように一定の割合で低下し続ける)。
【0041】
抽出された蒸気圧PI(21)がP(CO)に達するポイントでは、発電プラントは、部分負荷運転範囲IIで稼働している。本発明によると、バイパス弁21’が閉じ、水−蒸気循環路から抽出された蒸気が、蒸気配管23を介して第1の蒸気噴射エゼクタ24へと送られる。蒸気圧は、要求された圧力レベルP(CO)よりも高いベレルPII(27)まで増大し、配管27を通じてCO捕捉プラントへ送られる。PII(27)は、蒸気噴射なしの抽出蒸気圧による圧力であり、P(CO)や配管25におけるPII(27)よりも高いレベルの駆動蒸気圧よりも低い。
【0042】
発電プラントの部分負荷は、例えば、全負荷の60−80%の部分負荷範囲II内で更に低下するので、配管27における抽出した蒸気PII(27)の圧力は再び低下する。蒸気噴射エゼクタ24による蒸気の圧力も低下し、結果として、必要蒸気圧P(CO)のレベルに到達する。(また、第2の蒸気噴射エゼクタ52を起動させない場合、CO捕捉プラントへの蒸気圧は、PII(27)において示した割合で低下し続ける)この時点で発電プラントは、部分負荷範囲IIIにおいて稼働している。本発明によると、蒸気噴射エゼクタ24への配管23は閉じられ、第2の蒸気噴射エゼクタ52が開かれる。例えば、全負荷の40−60%の部分負荷範囲IIIにおいて稼働中に、蒸気エゼクタ24は、CO捕捉プラントへの蒸気の圧力を、CO捕捉プラントの運転を確実にするために必要なP(CO)よりも高いレベルPIII(53)まで増大させる。ここでも、抽出された蒸気圧PIII(53)は、蒸気噴射エゼクタを用いずに、P(CO)よりも十分低い抽出蒸気圧及びPIII(53)よりも十分高い配管51における駆動蒸気圧によるものである。
【0043】
本発明の更なる実施形態、特に、蒸気噴射エゼクタ及び駆動蒸気配管への注入蒸気配管のその他組み合わせが、本開示の範囲内で可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 高圧蒸気タービン
2 中圧蒸気タービン
3 低圧蒸気タービン
4 シャフト
5 発電器
6 ボイラ又は熱回収蒸気発生器 HRSG
7 凝縮器
8 復水/給水配管
9 排出ガス用配管
10 CO捕捉及び圧縮プラント
11 CO貯蔵又は運搬設備
12 COを含まないガス
13 戻り復水用配管
16 高圧蒸気タービンへの生蒸気用配管
20 蒸気噴射エゼクタへの注入蒸気流用配管
21 CO捕捉プラントへの低圧蒸気用配管
21’ 逆止め弁
22 CO捕捉プラントへの蒸気配管
23 蒸気噴射エゼクタ24への注入蒸気流用配管
24 蒸気噴射エゼクタ
25 駆動蒸気用配管
26 再加熱用配管
30 蒸気噴射エゼクタ24への注入蒸気流用配管
31 駆動蒸気用配管
40 蒸気噴射エゼクタ24への注入蒸気流用配管
41 駆動蒸気用配管
50 蒸気噴射エゼクタ52への抽出蒸気配管、注入蒸気配管
51 駆動蒸気用配管
52 第2の蒸気噴射エゼクタ
53 CO捕捉プラントへの蒸気配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水−蒸気循環路と、発電プラントによって排出された排出ガスからCOを捕捉するためのプラント(10)とを備える、電力を発生させるための化石燃料火力発電プラントにおいて、
蒸気配管(20,30,40,23)を介して前記発電プラントの前記水−蒸気循環路から抽出された注入蒸気流を受け、蒸気配管(25,31,41)を介して前記水−蒸気循環路から抽出された駆動蒸気流を受け、前記注入蒸気流の前記圧力を増大させるように構成され配置された蒸気噴射エゼクタ(24)を備えるとともに、
前記蒸気噴射エゼクタ(24)から前記CO捕捉プラント(10)へと通じる出力蒸気流用の配管(27,22)を更に備える
ことを特徴とする発電プラント。
【請求項2】
前記水−蒸気循環路から抽出された前記注入蒸気流用の前記蒸気配管(20,30,40,23)は、前記発電プラントの中圧蒸気タービン(2)における抽出ポイントから、又は、前記水−蒸気循環路における前記中圧蒸気タービン(2)の抽出ポイントよりも下流のポイントから伸びることを特徴とする、請求項1に記載の発電プラント。
【請求項3】
中圧蒸気タービン(2)と低圧蒸気タービン(3)との間のクロスオーバー配管(36)から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じる蒸気配管(20,23)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発電プラント。
【請求項4】
低圧蒸気タービン(3)から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じる蒸気配管(30,23)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発電プラント。
【請求項5】
低圧蒸気タービン(3)と凝縮器(7)との間の排出蒸気配管から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じる蒸気配管(40,23)を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の発電プラント。
【請求項6】
高圧蒸気タービン(1)と中圧蒸気タービン(2)との間の再加熱配管(26)から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じる駆動蒸気用の蒸気配管(25,31)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項7】
前記駆動蒸気用の蒸気配管(25)は、前記高圧蒸気タービン(1)からボイラ又は熱回収蒸気発生器(6)へと通じている前記再加熱配管(26)から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じることを特徴とする、請求項6に記載の発電プラント。
【請求項8】
前記駆動蒸気用の蒸気配管(31)は、ボイラ又は熱回収蒸気発生器(6)から前記中圧蒸気タービン(2)へと通じている前記再加熱配管(26)から前記蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じることを特徴とする、請求項6に記載の発電プラント。
【請求項9】
中圧蒸気タービン(2)から蒸気噴射エゼクタ(24)へと通じる駆動蒸気用の蒸気配管(41)を備えることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項10】
前記水−蒸気循環路から抽出された注入蒸気用の配管(20,30,40)から前記蒸気を前記CO捕捉プラント(10)へ直接送る配管(22)へと通じるバイパス蒸気配管(21)を備えることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項11】
前記バイパス蒸気配管(21)は、逆止め弁(21’)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の発電プラント。
【請求項12】
配管(50)を介して前記水−蒸気循環路における抽出ポイントから注入蒸気を受け、前記水−蒸気循環路から抽出された駆動蒸気流(51)を受け、前記注入蒸気流の圧力を増大し、出力蒸気流を配管(53)を介して前記CO捕捉プラント(10)へと送るように構成され配置された更なる蒸気噴射エゼクタ(52)を備えることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発電プラント。
【請求項13】
前記ボイラ又は熱回収蒸気発生器(6)と前記高圧蒸気タービン(1)との間の生蒸気配管(16)から、又は、前記高圧蒸気タービン(1)から前記蒸気噴射エゼクタ(24,52)へと通じる、前記蒸気噴射エゼクタ(24,52)の一方又は両方のための駆動蒸気用の配管を備えることを特徴とする、請求項12に記載の発電プラント。
【請求項14】
前記発電プラントを全負荷又は部分負荷範囲(I,II,III)内で運転する場合に、中圧蒸気タービン(2)又は該中圧蒸気タービンの下流のポイントにおいて前記発電プラントの前記水−蒸気循環路から蒸気を抽出し、それを第1の蒸気噴射エゼクタ(24)へと送る工程と、前記抽出した蒸気の圧力を前記CO捕捉プラントの運転に必要な圧力P(CO)以上の圧力に増大する工程と、前記蒸気噴射エゼクタ(24)からの前記蒸気を前記CO捕捉プラントへと送る工程と、前記蒸気を用いて前記CO捕捉プラント(10)を運転する工程とを含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の発電プラントを運転する方法。
【請求項15】
前記発電プラントを全負荷又は部分負荷範囲(I,II,III)内で運転する場合に、前記発電プラントの前記水−蒸気循環路から蒸気(20,30,40)を抽出する工程と、前記抽出された蒸気流の圧力が前記CO捕捉プラントを運転するために必要な蒸気圧(PCO)よりも低い場合、前記CO捕捉プラント(10)を運転するために、前記抽出された蒸気流を、前記蒸気噴射エゼクタ(24)をバイパスする配管(21)を介して前記CO捕捉プラント(10)に直接導く工程とを含むことを特徴とする、請求項14に記載の発電プラントを運転する方法。
【請求項16】
前記発電プラントを部分負荷範囲(III)内で運転する場合に、前記第1の蒸気噴射エゼクタ(24)によって発生した前記蒸気圧が前記CO捕捉プラント(10)を運転するために必要圧力(PCO)よりも低い場合、前記水−蒸気循環路から前記第1の蒸気噴射エゼクタ(24)への抽出された蒸気流(20,30,40)用の配管(23)を閉じ、前記抽出された蒸気流(20,30,40)を第2の蒸気噴射エゼクタ(52)へと送る工程と、前記抽出した蒸気の圧力を増大する工程と、前記蒸気を前記CO捕捉プラント(10)へ送る工程とを含むことを特徴とする、請求項13〜15のいずれか1項に記載の発電プラントを運転する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−513063(P2013−513063A)
【公表日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542452(P2012−542452)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/068425
【国際公開番号】WO2011/069857
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5400 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】