説明

CPAP(持続気道陽圧)患者の順応を向上させるための方法および装置

睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法であって、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、患者に処置圧力を適用するステップ(301)と、発声出力について前記患者を監視するステップ(304)と、検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、前記信号に応答して前記患者に適用される処置圧力を減少させるステップと(305)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing(SDB))の機械的換気に関し、特に、持続気道陽圧(Continuous Positive Airway Pressure(CPAP))処置における患者の順応を向上させるための方法および装置に関する。
【0002】
<関連出願への相互参照>
本願は、2005年6月14日に出願されたオーストラリア特許出願第AU2005903089号明細書、2005年11月4日に出願されたオーストラリア特許出願第AU2005906122号明細書、2005年11月8日に出願されたオーストラリア特許出願第AU2005906193号明細書の利益を主張し、これらはその全体を引用してここに組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
機械的換気の包括的な背景技術の説明は、Martin J Tobin編集、McGraw-Hill Inc.出版、ISBN 0-07-064943-7の“Principles and Practice of Mechanical Ventilation”(1994年)に見出すことができる。
【0004】
閉塞性睡眠時無呼吸(Obstructive Sleep Apnea(OSA))を処置するための経鼻持続気道陽圧(CPAP)の使用は、Colin Sullivanによって発明された。米国特許第4,944,310号明細書を参照。一般に、処置は、空気供給ダクト、および、顔全体または鼻のマスクまたは鼻のプロング(prong)のような患者インタフェースを介して、送風機から患者に空気の供給または呼吸に適した気体を与えることを含む。処置が実施されている間、ある患者はそれが快適でないと感じる。患者の快適さおよび順応を向上させることは、継続している課題である。
【0005】
快適さを向上させる1つの方法は、より快適な患者インタフェースを提供することである。これに関して、ResMed社のMIRAGETMマスクは、快適さにおいて著しい向上を提供した。米国特許第6,112,746号明細書、米国特許第6,357,441号明細書、米国特許第6,581,602号明細書、米国特許第6,634,358号明細書を参照。より最新の開発は、ResMed社のMIRAGETM ACTIVATMマスクシリーズである。国際公開第01/97893号パンフレットを参照。
【0006】
OSAを処置するための初期の経鼻CPAPシステムにおいて、患者は、まず、最適な処置圧力を決定するために臨床試験において滴定された。滴定は、患者が診療所で終夜眠り、マスクおよびCPAP装置を用いて検査されることを含む。CPAP装置によって与えられる処置圧力は、無呼吸でなくなるまで調整される。処置圧力は、通常、4〜20cmHOの範囲内である。装置は、その圧力に設定され、家に持ち帰るために患者に与えられる。続く開発は、患者が家に持ち帰ることができる自動調整装置であった。自動調整装置は、いびきのような閉塞性睡眠時無呼吸の指標に基づいて処置圧力を上昇および/または下降させる。そのようなCPAP装置は、時々、総称的に自動気道陽圧(Automatic Positive Airway Pressure(APAP))装置と呼ばれる。米国特許第5,245,995号明細書、米国特許第6,398,739号明細書、米国特許第6,635,021号明細書を参照。
【0007】
もう1つの種類の経鼻CPAP装置は、吸気の間、第1圧力(IPAP(Inhalation Positive Airway Pressure)とも呼ばれる)および呼気の間、より低い第2圧力(EPAP(Exhalation Positive Airway Pressure)とも呼ばれる)を与える。これらの例は、ResMed社のVPAPTMシリーズおよびRespironics社のBiPAPシリーズを含む。2レベルのCPAP装置は、単一圧力のCPAP装置に順応しない患者のために処方することが可能である。ある患者は、少なくとも彼らが目覚めている間、呼気の間のより低い圧力はより快適であると認める。
【0008】
患者の快適さおよび順応を向上させるもう1つの方法は、眠りにつく間の感覚に患者を順応させることを可能とするために、低い治療圧力、例えば4cmHOで各々の治療セッションを開始し、最初の1時間にわたって十分な治療圧力に傾斜して上昇させることである。その代わりに、装置は、十分な治療圧力が適用される前に患者に眠りにつくための時間を与えるために、十分な治療圧力が適用される前に遅延時間を提供するように設定することが可能である。米国特許第5,199,424号明細書、米国特許第5,522,382号明細書を参照。
【0009】
自動調整CPAP装置のもう1つの形態は、ResMed社のAUTOSETTM SPIRITTM装置である。この装置において、CPAP圧力は、流れの平坦化、いびき、無呼吸、低呼吸のような流れの限界の指標に従って自動的に増加または減少される。米国特許第5,704,345号明細書、米国特許第6,029,665号明細書、米国特許第6,138,675号明細書、米国特許第6,363,933号明細書を参照。自動調整システムの利点は、特定の患者について必要とされる処置圧力が時間にわたって変動する可能性があり、訂正して機能する自動システムは、患者が続く睡眠試験のために戻る必要をなくすことができる。また、これらの特許は、いわゆる“中枢性”無呼吸と閉塞性無呼吸との間の区別のための方法よび装置を開示している。
【0010】
上述した特許の全ての内容は、相互参照によって組み込まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
あるOSA患者は、上記の装置を用いた処置が快適でないと感じ、彼らは治療に順応しなくなる。うっ血性心不全の心血管の患者、REM呼吸低下の患者、呼吸不全の患者のような他の患者は、治療のより快適および/または効果的な形態から利益を得ることができる。
【0012】
患者の順応における1つのハードルは処置の初期の段階において発生し、患者は治療の感覚への順応において困難を有する可能性があり、治療の利益が実現する前に治療をやめる可能性がある。
【0013】
患者が治療を受容するためのさらなるハードルは、患者インタフェース(例えば、マスク)の初期の取り付けに存在し、マスク取り付けは相対的に低い圧力および高い流れのもとで検査される。これはマスクを患者に適合させるときに、結果として、装置の騒がしい動作および高い流れの空気漏れとなり、患者にとって騒がしく、動揺させる初期の経験となり得る。
【0014】
患者の快適さおよび順応への他の障害は、処置が、臨床士(clinician)またはベッドパートナー(bed partner)と会話する患者の能力を妨害すること、または、患者またはベッドパートナーがマスクからの空気漏れによって悩まされることを含む。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、これらの不都合の1つまたは複数を克服し、または、改善する方法および装置に関する。
【0016】
<‘イージースピーク’(easy speak)>
本発明の第1の態様は、睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法に関し、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して前記患者に適用される処置圧力を減少させるステップと、
を有する方法である。
【0017】
一実施形態において、前記信号に応答して、予め定められた期間について前記処置圧力が減少される。
【0018】
一実施形態において、前記患者を監視するステップは、前記患者によって生じる音を検知するステップと、発声を検出するために前記音を分析するステップと、を含む。前記分析は、発声でない音を除去するために前記音をフィルタリングするステップを含むことが可能である。
【0019】
もう1つの実施形態において、前記患者を監視するステップは、発声を示す呼気パターンを検出するステップを含む。前記患者を監視するステップは、前記装置によって圧力および/または流れの信号を検出するステップと、いびきを示す信号を除去するために前記信号をフィルタリングするステップと、前記フィルタリングされた信号を分析するステップと、を含む。
【0020】
もう1つの形態において、前記患者を監視するステップは、前記患者によって生じる音を検知するステップと、前記患者の覚醒状態を検出するステップと、を含む。例えば、前記患者が目覚めている間に生じる患者の音は、発声として識別されることが可能である。
【0021】
さらなる形態において、前記患者を監視するステップは、治療セッションの開始から予め定められた時間内に前記患者によって生じる音を監視するステップを含む。この機能は、前記セッションの開始から予め定められた時間の後に無効にされることが可能である。
【0022】
一形態において、前記発声はハミングを含む。
【0023】
その代わりに、前記患者を監視するステップは、例えば、前記患者の首において声帯の振動を検出することによって、発声を示す振動を検出するステップを含むことが可能である。
【0024】
本発明のさらなる態様は、睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法に関し、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して、前記装置の1つまたは複数の機能を制御するステップと、
を有する方法である。
【0025】
この形態において、前記患者を監視するステップは、前記装置にプログラムされた1つまたは複数の音声命令に対して前記発声を検査するステップと、前記発声と音声命令との間の合致を認識するステップと、前記音声命令と対応付けされた前記装置の機能を制御するステップと、を含む
【0026】
一形態において、前記患者を監視するステップは、選択的に、処置圧力の適用によってあまり影響されない発声の特性を検出することによって、処置圧力の適用による発声の特性における変化を補償する。
【0027】
本発明のもう1つの態様は、睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法に関し、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して、予め定められた期間について前記患者に適用される処置圧力を減少させるステップと、
を有する方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
添付図面は本発明の各種の実施形態の理解を容易にする。
<ハードウェア>
本発明の実施形態による気道陽圧(Positive Airway Pressure(PAP))装置は、送風機および送風機コントローラを含む。送風機は、陽圧2〜40cmHOで、しかし、一般に4〜20cmHOの範囲内で、空気供給ダクトを介して患者インタフェースに空気を供給することができる。
【0029】
また、この装置は、ダクトに沿って空気の流れを測定する流れセンサおよび送風機の排気口における気圧を測定する圧力センサを含む。
【0030】
一形態において、この装置は、代わりに、患者インタフェースにおける圧力を検出する追加の圧力センサを含む。
【0031】
例えば、図1は、本発明の実施形態による換気装置を表わす。表わされているように、換気装置は、サーボ制御された送風機2、流れセンサ4f、圧力センサ4p、マスク6、送風機2とマスク6との間の接続のための空気供給ダクト8を含み得る。排気は排出口13を介して出される。
【0032】
マスクの流れは、呼吸気流計、および、流れ信号F(t)を導き出す差圧トランスデューサのような流れセンサによって測定することが可能である。その代わりに、呼吸気流計は、送風機からの流れと並行に配置された小さいチューブの束によって、その束にわたって差圧トランスデューサによって測定された圧力差を用いて置き換えることが可能である。
【0033】
マスク圧力は、好ましくは、圧力信号Pmask(t)を導き出す圧力トランスデューサを使用して圧力タップにおいて測定される。この技術分野の当業者は流れおよび圧力をどのように測定するか分かっていると理解されるので、図1において圧力センサ4pおよび流れセンサ4fは単に記号的に表わされている。
【0034】
流れF(t)および圧力Pmask(t)の信号は、圧力要求信号PRequest(t)を導き出す、ここではプロセッサ15として参照される、コントローラまたはマイクロプロセッサに送信される。コントローラまたはマイクロプロセッサは、ここでより詳細に説明される方法論を実行するように構成および適合される。コントローラまたはマイクロプロセッサは、制御の方法論を実現する、集積チップ、メモリ、および/または、他の命令またはデータの記憶媒体を含むことが可能である。例えば、制御の方法論を用いてプログラムされた命令は、装置のメモリ内の集積チップ上に符号化されるか、または、ソフトウェアとしてロードされるかのいずれかである。この技術分野の当業者に理解されるように、制御装置内にアナログ装置を実現することも可能である。
【0035】
コントローラまたはプロセッサ15は、さらに、流れの平坦化、いびき、無呼吸、低呼吸、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index(AHI))のような流れの限界の指標を導き出し、および、レム睡眠とノンレム睡眠とを区別する、等のための患者の呼吸および睡眠のパターンを示すパラメータを導き出すように適合される。米国特許第5,704,345号明細書および米国特許第6,029,665号明細書を参照。
【0036】
図1の装置は、他のセンサ、通信インタフェース、ディスプレイ、サーボ、等および機能ブロックを含み、機能ブロックの詳細は本発明の理解のために必須ではない。
【0037】
<初回ユーザのための順応療法>
図2は、本発明の実施形態によるCPAP療法の新たなユーザのための順応療法を表わす。
【0038】
十分な治療圧力の設定(ステップ201)を含む、臨床士による初期設定の後、CPAPマスクおよび送風機とともに患者は家に帰される。
【0039】
順応療法の初めの数夜(例えば、2またはより多くの夜)について、患者にはヘッドギアおよびマスクが与えられ、肘管および気体ダクトは患者から外され、従って、患者が、送風機によって生成される騒音および気圧のような追加の障害なしで、睡眠の間、マスクおよびヘッドギアの感触に最初に慣れることを可能とする(ステップ202)。
【0040】
順応療法の次のステップのために、肘管および気体ダクトがマスクに接続され、送風機がターンオンされる。
【0041】
送風機は“第1タイマーモード”(ここでは“Max Ramp”または“AccliMATE”モードとも呼ぶ)に設定され、このモードにおいて、第1CPAPセッションの全体についての処置圧力が、治療圧力以下の圧力、例えば2cmHOにおいて与えられる(ステップ203)。
【0042】
第2CPAPセッションの開始前に、一連の予めプログラムされた患者および/またはベッドパートナーの反応の質問が機器のディスプレイに表示され、それに対する回答が次のセッションのための処置圧力の設定において使用される。例えば、患者は、処置の快適さに関する質問に対してはい/いいえの回答または10のうちの割合を与えるように求められ、患者および/またはベッドパートナーは、患者の不穏状態および睡眠の質に関する質問に回答することを求められる。
【0043】
患者および/またはベッドパートナーは、患者が治療の感覚に順応していることを示すために十分に良好であるならば、処置セッションの記録される測定は、患者のかなりの治療への順応を示し(ステップ204および205)、次のセッションについての圧力は、例えば1cmHOだけ逐次増加される(ステップ206)。回答が患者の順応を示さず、または、セッションについての患者の順応の他の指標が否定的ならば(例えば、かなりの期間について患者がマスクを取り外したことを示すこと)(ステップ204および205)、処置圧力は増加されず(ステップ207)、例えば、圧力は不変である。
【0044】
次の治療セッションについての圧力が設定され(ステップ208)、患者の反応および処置圧力における逐次増加の処理は、十分な治療圧力に到達するまで、例えば、7またはより多くのセッションの後まで繰り返される(ステップ209)。APAP処置の場合において、処置圧力が4cmHOの治療圧力に到達すると、処置圧力はセッションについて制限された最大圧力となり得る。2レベルCPAP処置の場合において、吸気(IPAP)圧力のみ制限されるか、または、IPAPおよび呼気(EPAP)圧力の両方が対応してスケールダウンされるかのいずれかが可能である。
【0045】
予め定められた数より多くの引き続くまたは累積する否定的な反応の回答が記録されるならば、コントローラは、臨床士に連絡することを患者にアドバイスするメッセージを表示させる。装置が外部通信、例えば電話網に接続されているならば、通知は臨床士に直接に送信される、例えば、データが記録され、臨床士に通知される(ステップ210)ことが可能である。
【0046】
患者の反応の回答の詳細および処置圧力は、臨床士による後の閲覧のためにコントローラ内に記憶することが可能である。
【0047】
一実施形態において、コントローラは、‘初回’モードのパラメータを変更するために、例えば、患者の睡眠呼吸障害の重大さ、および、CPAP療法の感覚に順応するために患者がどのぐらいの長さを要するかについての臨床士の見解に従って初期治療セッション圧力および/または日々の圧力増加を設定するために、メニューシステムを使用して臨床士によってプログラム可能とし得る。
【0048】
従って、順応療法は、患者の反応に従って制御される順応の進行のプロフィールを用いて、CPAP療法の感覚に患者が徐々に順応することを可能とする。このアプローチの採用は、治療の早期段階の間、患者の順応の機会を増加させ、したがって、長期の受容および順応を増加させることが期待される。
【0049】
図2Aは、初回CPAPユーザのための順応療法の変形を表わし、適切な最大処置圧力の設定に役立つように改良されている。
【0050】
図2Aの実施形態において、臨床士によって滴定調査において臨床で導き出される患者の十分な治療圧力が決定される(ステップ201A)。
【0051】
順応療法において、CPAP装置は、プログラムされた日数について最大圧力を維持し(209A)、その圧力が正しいものであるかどうか検査するResMed社製機器のResTraxxTM機能のような装置の監視機能を介して患者の呼吸事象を監視するようにプログラムされた‘最大傾斜(Max Ramp)’機能を含む。ステップ202A〜207Aは、上述した図2のステップ203〜207および210と同様である。滴定された最大圧力に対する予め設定されたパーセンテージまたは圧力差に到達する(ステップ208A)まで、最大圧力を日毎に逐次増加させ、監視された処置の効果、呼吸事象の存否、臨床士の評価に基づいて、または、図2に表わされているようなユーザ/ベッドパートナーの反応、快適さおよび順応に基づいて、それを維持し(ステップ215A)、または、増加させる(ステップ214A)。最大圧力に到達し(ステップ213A)、かつ/または、治療セッションが処置の成功を示す(ステップ212A)と、治療圧力は固定され(ステップ216A)、データが記録され、臨床士に通知される(ステップ217A)。
【0052】
例えば、新たなCPAP患者は睡眠調査において滴定され、12cmHOの最大処置圧力が指示され得る。処置の最初の夜において、処置は、最初の45分にわたって4cmから5cmへ傾斜する。その次の夜において、圧力は、45分にわたって5cmから6cmへ傾斜し、予め定められた量、例えば4cmHO、または、指示された最大処置圧力の予め定められたパーセンテージ、例えば80%、の範囲内に到達するまで同様である。この例において、CPAP機器の監視機能を使用して患者の気道を監視するために、一連の日数(例えば7日間)について8(すなわち、12−4)cmHOの圧力で日毎の増加を停止するように、臨床士によってCPAP機器がプログラムされることが可能である。患者が例えば10cmの圧力において不都合な呼吸事象を有さないならば、最大処置圧力は、最初に指示された12のレベルに進むのではなく、そのレベルに固定することが可能である。患者が12の圧力においてまだ不都合な呼吸事象を有するならば、機器はそれを増加させるか、または、処置圧力を増加させるか否かについての判断のために患者を臨床士に問い合わせさせる。
【0053】
この順応療法は、自動設定CPAP機器の自動設定機能の利点の少なくともいくつかを与えることを意図するが、結果として、多くの医師/臨床士が呼吸毎に処置圧力の調整を自動設定するよりも快適である固定された圧力となる。これは設定圧力のより大きな管理を臨床士の手元に置き、ある患者および臨床士はより快適であり得る。また、この順応療法は、患者および臨床士を自動設定機能に慣れさせる足がかりとして使用することが可能である。
【0054】
図2Aのフローチャートにおいて、太字の項目は、臨床士によって予め設定または指示されることが可能である(例えば、最初の治療圧力以下の圧力、増加圧力、最大圧力、予めの制限圧力または最大圧力のうちのパーセンテージ、予めの制限圧力または最大圧力のうちのパーセンテージに維持する日数X、事象の数、または処置の成功を示す他の基準)。点線の囲みは選択的に省略可能である。
【0055】
図2Aの順応療法のあり得る効果は、患者を処置するセラピストの時間の結果的な削減とともに、指示された圧力が高過ぎ、または低過ぎる患者の処置における改善を含む。そのような患者は、過大にまたは過少に処置され、さらにこれらの患者は多くの場合、満足でない/順応しないので、現在、処置のためにかなりのセラピストの時間を要する。‘最大傾斜’機能の階段ステップアプローチは、最小のセラピストの介在で適切な圧力の決定に役立つことによって、そのような患者の処置のコストを削減することができる。この方法は、十分な自動設定機能を有する機器より低価格な機器であるResMed Elite機器またはResMed ResTraxx機器に基づく修正を用いて実行することが可能である。指示された圧力が誤っていることが判定されたならば、家庭医療機器(home medical equipment(HME))プロバイダは圧力を変更するように患者に案内状を送ることができ、これは簡単でコスト効果が高い。また、この方法は、患者の最小の作業を含み、これは新たな患者の処置への順応および受容を達成するために役立つ。
【0056】
本発明のさらなる実施形態は、臨床士がより大きな管理を有する簡単化された順応療法(“最大傾斜”)モードを提供する。
【0057】
この実施形態において、機器は、時間にわたって自動的に最大処置圧力を増加させるようにプログラムされる。臨床士は開始圧力、例えば4cmをプログラムし、装置を、患者の関与なしで設定された期間にわたって指示された圧力に傾斜して増加させる。
【0058】
例えば、開始圧力は4cmに設定し、最大圧力は10に設定することが可能である。臨床士は、6日の最大傾斜を指示することが可能である。第1日において、装置は4cmで開始し、終夜4cmに維持される。第2日において、装置は4で開始し、設定傾斜時間(最大1時間)に応じて5cmまで傾斜して停止する。第3日において、4cmで開始し、6cmまで傾斜し、設定最大治療圧力に到達するまで同様である。
【0059】
臨床士は、最大傾斜が生じる日数を選択し、装置は線形または他の予め定められた方法で日毎の増加を計算する。その代わりに、臨床士は開始圧力および開始最大傾斜特性を設定することができる。例えば、開始圧力4cm、開始最大傾斜特性7cmにおいて停止し、最大圧力12cmである。このシナリオにおいて、第1日において、装置は4cmで開始し、傾斜時間(最大1時間)にわたって7cmまで傾斜し、第1夜の間、そこで維持する。第2日において、装置は4cmで開始し、8cmまで(最大1時間)傾斜し(または、任意の線形計算および停止)、最大傾斜のための設定時間を通して同様である。
【0060】
選択的に、臨床士は、圧力が高くなり過ぎていると患者が感じるならば、さらに一夜について患者が圧力を維持することを可能とする機器モードを選択することができる。これは、装置の一連のボタンを押すことによって行うことができる。また、この機器モードは、臨床士によるプログラミングで順応療法(“最大傾斜”)モードにおける境界条件を設定することを可能とする。
【0061】
例えば、機器のディスプレイは、日毎のセッションの終わりにおいて、患者が、治療にどのように対処しているかを示す反応を入力するように促すことが可能である。患者は、“良好(Okay)”または“良好でない(Not okay)”を押すことができる。多くの引き続く日々が“良好”であるならば、機器は、指示された最大治療圧力に、より積極的に傾斜させるように日々の傾斜の増分を増加させ、従って、できる限り早期に患者に治療をもたらす。患者の反応が、患者が治療への順応に苦労していることを示す(例えば、連続2日の“良好でない”)ならば、日々の傾斜の増分は、臨床士が設定した範囲内で、順応期間を延長するために減少される。
【0062】
予め設定された数より多くの、日々の“良好でない”は、装置が、補助の説明(視覚的および/または聴覚的な方法)を用いて患者を促し、かつ/または、治療に落胆し過ぎる前に臨床士に連絡することを患者に要請することを引き起こすことが可能であり、従って、潜在的に脱落者をさらに減少させる。装置が通信機能を有する場合、装置は、患者と直接に接触するように臨床士に連絡することが可能である。
【0063】
処理フェーズ、機器モード、この実施形態の例のさらなる詳細を以下で説明する。
A.順応処理フェーズ:
順応療法は3つのフェーズを行う。
1.<初期フェーズ>:医師または臨床士は“順応”モードを指示する。
2.<順応フェーズ>:順応モードは、医師または臨床士による最終的な設定点のCPAP圧力に到達するまで、毎晩のCPAP圧力を自動的に調整する。
3.<標準CPAPフェーズ>:流れ発生器は、標準CPAPモードで動作する。
B.順応モードの詳細:
1.医師/臨床士の調整可能なパラメータ
(a)調整期間(設定可能な範囲):1〜30日
(b)最終目標CPAP設定(“T”):4〜20cmH
(c)開始の夜の#1 CPAP設定(“S”):4〜*cmHO(“S”<“T”である場合のみ設定可能)
(d)選択的な患者の“スヌーズ(snooze)”ボタン機能。患者によって押されると、これは、任意の個々の圧力において医師/臨床士が設定した制限された日数について前日のCPAP圧力設定を維持する。設定可能な範囲は0〜5日である。このスヌーズ機能は、ターンオフすることができ、または、CPAP順応フェーズの間、患者が次の夜のセッションの開始において“スヌーズ”ボタンを押すと、患者が制限された日数についてある圧力に維持することを可能とする。
注釈:4cmHOからその夜の設定点までの標準の毎晩の傾斜は、標準の傾斜関数を使用して、0〜45分から標準として設定することができる。
2.機器計算モード
(a)線形的
(b)対数的
(c)指数的
(d)階段関数(0.5cm/日、1cm/日、2cm/日、3cm/日、等)
(e)他の数式
C.例:
臨床士/医師の設定:
(a)調整期間=7日
(b)最終目標CPAP=10cmH
(c)開始CPAP=4cmH
(d)患者のスヌーズ=0日(すなわち、オフ)
【0064】
【表1】

【0065】
<イージースピーク(easy speak)>
図3に表わされた、本発明のさらなる実施形態は、患者による臨床士またはベッドパートナーへの言葉による意志伝達を容易にする。
【0066】
治療セッションの開始において(ステップ301)、コントローラのセッションタイマーが開始され(ステップ302)、送風機の‘イージースピーク’モードが起動される(ステップ303)。
【0067】
このモードにおいて、コントローラは患者による発声(speech)を判定するように構成される(ステップ304)。そのような検出は、例えば、いびきではなく発声の音を示す周波数およびパターンの間を識別するように構成されたフィルタリングまたは信号処理手段とともに、コントローラの背面に接続された、患者インタフェースにおける(図示しない)マイクロホン手段によるもの、または、呼気パターンまたは発声の典型的な他の呼吸パターンの検出によるものとすることが可能である。圧力/マイクロホン信号(またはそれから導き出されるある信号)と、流れまたは流れの変化率とを組み合わせることによって、より正確な発声検出が可能であり得る。
【0068】
発声の判定を実現する1つの手段は音声認識技術の利用であり、それ自体、ハンズフリータイピングソフトウェアおよび携帯電話におけるような他の分野でよく知られている。音声認識技術は、同じ環境の中で、特定の人物による発声と他の音および他の人々の発声との間で、識別を行うことを可能とする。音の種類の間での識別における他の開発は、米国のBose社による開発のようなノイズキャンセルヘッドホンにおいて利用される技術を含む。
【0069】
装置は、患者が話した一定の音声命令を認識するようにプログラムすることが可能であり、装置は、音声命令をそのプログラムされた用語と照合すると、装置の対応付けされた制御機能を実行する。例えば、以下で説明するように、流れ生成器を停止させる“ストップ”、再スタートさせる“スタート”、発声モードを実行する“トーク”といった患者が話す言葉を認識するように機器を‘訓練’することが可能である。この方法において、機器は制御することが可能である。
【0070】
患者による発声を検出すると、送風機によって供給される圧力は、第1所定時間について、例えば、5〜60秒間、または、より好ましくは、検出された発声の全体の期間の間、一時的に減少または停止し、従って、抵抗する圧力なしで患者が話すことを可能とする。この時間内に、患者が第2所定時間の間(例えば、2〜5秒)、話すことを中止するならば、処置圧力を回復させ、または徐々に増加させることが可能である(ステップ306)。Autoset(登録商標)装置において、圧力を最小圧力に回復させることが可能である。また、イージースピークモードによって発声が検出されないならば、処置圧力は不変で回復する(ステップ310)。
【0071】
患者が話すことを試みているときに処置圧力を減少させることによって、患者が話すときに飛び出す空気の感覚、中には不快と感じる患者もいる、が最小化され、患者のベッドパートナーおよび/または家族との意志伝達、または、臨床士との意志伝達がより容易になる。これは治療に順応することをより容易にし、患者が治療に順応することへのもう1つの障害を減少させると考えられる。
【0072】
発声の偽陽性(false positive)検出の可能性、および、これが引き起こし得る治療のふさわしくない中断を減少させるために、治療セッションの一定時間が経過すると(ステップ307)、イージースピークモードをターンオフする(ステップ308)ようにコントローラがプログラムされる。望まれるならば、この期間は、ある制限内で、送風機の設定メニューを介して患者によって選択可能とし得る。例えば、その患者が眠りに付くために典型的に要する長さに応じて、患者が15〜60分の時間を入力することを可能とし得る。また、機器の設定メニューは、患者がイージースピークモードを全てターンオフすることを可能とし得る。イージースピークモードがターンオフされた後、治療セッションが十分な治療圧力で続く(ステップ309)。
【0073】
流れ生成器が、各々の処置セッションの開始において5〜20分間にわたって処置圧力が傾斜して増加する種類である場合、‘イージースピーク’モードは、圧力が増加される最初の期間の間のみ作動させ、流れ生成器が十分な治療圧力に到達すると無効にすることが可能である。
【0074】
また、装置がフィッティングモード(fitting mode)に設定されるときにイージースピークモードを作動させることが可能であり、マスクを合わせるときに患者の臨床士との意思伝達が向上する。
【0075】
イージースピークモードを作動させるか否かを制御するためにコントローラがセッションタイマーを使用する説明した実施形態に代えて、またはこれに加えて、患者が目覚めているときにイージースピークを作動させるために、患者の睡眠状態の他の指標を使用することが可能である。
【0076】
例えば、コントローラは、目覚めている状態を表わす換気レベル、呼吸速度、呼吸パターンの検出によって、または、患者が起き上がっていることを検出する水準検出器によって、患者が目覚めていることを検出することが可能である。
【0077】
その代わりに、送風機制御は、‘イージースピーク’モードをオフすることによって睡眠を示す信号または導き出された指標に応答することが可能である。例えば、急速眼球運動(rapid eye movement(REM))は、睡眠のあるフェーズの容易に検出可能な指標であり、熟睡も検出することが可能である。
【0078】
その代わりに、イージースピークモードは、処置セッションの全体期間についてスタンバイモードにとどまり、患者による睡眠が検出されるときはいつでも作動されることが可能である。ある患者は、睡眠の間、ひとりでに話し得る。イージースピークモードは、そのような睡眠中の話の間、口の外に流れ出る空気を減少させることによって患者の覚醒状態または乱れを減少させるためにさらに役立つことが可能である。
【0079】
一実施形態において、装置は患者の声を拾うマイクロホンを含む。このマイクロホンは、(その電子的インタフェースとともに)流れ生成器に組み込まれ、または、流れ生成器から独立とし、流れ生成器に接続するケーブルを有することが可能である。これは、流れ生成器、マスク、チューブ、または、寝具またはベッドにさえもマイクロホンを配置することを可能とする。好ましくは、マイクロホンは、異なるマスクまたは他の構成要素と置き換えることを必要としないように、空気の経路、および、チューブまたは独立のコネクタの一部に存在する。
【0080】
図3Aは、図3の方法の変形を表わし、命令の発声作動を含む。
【0081】
ステップ301A〜310Aは、上述した図3のステップ301〜310と同様である。(ステップ305Aにおいて)処置圧力を減少させると、予め定められた時間内、例えば、2〜60秒内で発生するユーザから認識される音声命令を検出する(ステップ311A)ように機器がプログラムされる。そのような命令が検出されないならば、図3のように(ステップ306Aにおいて)処置圧力が回復される。しかし、認識される音声命令が予め設定された時間内に検出されるならば、プロセッサは命令を実行し(ステップ312A)、選択的に、ユーザへの応答、可聴の、触感のある、または視覚的な応答を与え(ステップ313A)、予め定められた時間について音声命令検出を継続する。さらなる音声命令が検出されないならば、(ステップ306Aにおいて)処置圧力は回復される。
【0082】
話すことを検出し、発声または音声命令のために準備ができた圧力に下げるために、流れ生成器における組み込み圧力センサを使用することができる。
【0083】
これは、現在のResMed S8 Autoset機器に使用されているいびきセンサと類似し得る。センサは任意の種類のマイクロホンセンサとすることが可能であるが、一実施形態において、我々のいびきセンサのように流れ生成器の排気口に取り付けられたピエゾ抵抗性または容量性の圧力センサのような、圧力または流れセンサとすることが可能である。迅速な応答時間、例えば約1msの応答が好しく、信号は増幅され、フィルタリングされることが可能である。好ましくは、より高い周波数の発声の周波数帯域を含む周波数帯域が使用されるが、圧力の制御のために、発声およびおそらく簡単な命令を可能とするために、Autosetのいびきの信号における帯域のような30〜200Hzの帯域が十分であり得る。
【0084】
いびきと発声との間の区別を助けるために、発声がサイクルの呼気成分に存在する確からしさを使用することができ、いびきは(そうであるとは限らないが)吸気に存在することが多い。従って、発声の検出は、呼吸サイクルの呼気部分に制限することが可能である。
【0085】
どのような事象においても、上述したように、イージースピーク機能は、好ましくは、傾斜期間の後、および、患者がいびきをかくことがありそうにない傾斜期間の間、無効にされる。また、イージースピークオプションは、好ましくは、‘スマートスタート(smartstart)’機能(米国特許第6,240,921号明細書)がオフされた後にのみオンされる。
【0086】
いびきと発声を区別するために使用することが可能な他の発声を識別する特性は、波形、振幅、および、発声の反復性でない性質である。
【0087】
発声は一般に呼気において生じるので、使用可能なさらなる軽減機能は、発声が検出されたときのみのEPR(expiration pressure(呼気圧力))の低減、および、迅速な圧力上昇時間を有する連続した吸気圧力サポートの利用である。従って、発声の偽陽性検出の事象において、処置は吸気において停止しない。
【0088】
特に鼻マスクが使用されるとき、患者の発声の音素成分は、処置圧力の適用によって引き起こされる口からの漏れに変えられ、音声認識システムは、好ましくは、これを補償する機能を有する。例えば、認識は、(力点(stress)、リズム、声の高さ(pitch)のような)処置圧力によってあまり影響されない発声の特性を強調し、または、紛失した発声の要素を識別および回復するように音を処理することが可能である。その代わりに、または、それに加えて、音声認識は、処置圧力を適用しても適用しなくても命令の代替の形態を認識するようにプログラムすることが可能である。
【0089】
流れが口を出るときに十分な信号を保証するために、マスクまたはチューブに取り付けられた圧力信号またはマイクロホンではなくハミングが使用されるならば、鼻マスクを使用して、イージースピーク機能を作動させるために、流れ生成器における圧力信号を生成するためにハミングを使用することが可能である。どのような事象においても、発声または音声命令が生じる前に、処置圧力が低減されることを引き起こすためにハミングが良い方法であり得る。この方法において、処置圧力は発声の前に減少させることが可能であり、鼻マスクを使用した発声の多くの場合の不快な感覚を避けることが可能である。
【0090】
顔全体のマスクが使用される場合、マスクを使用した発声の感覚はそれほど不快ではなく、イージースピークおよび音声命令機能のためのトリガーとしてハミングまたは発声のいずれかを使用することが可能である。
【0091】
もう1つの実施形態において、イージースピークのアルゴリズムは発声を検出し、そしてある期間、例えば5秒間、圧力を、例えば4cmHOに低下させることが可能である。5秒のタイムアウトは、発声が検出されるごとにリセットされる。従って、圧力は、患者が話すことをやめた後、5秒まで低く維持される。このアルゴリズムは、既存の装置、例えばResMed社のS8 Autosetにおいて実現することが可能である。例えば、このアルゴリズムは純粋なソフトウェアのソリューションとして実現することが可能である。従って、電子的または機械的な改良は必要ない。
【0092】
このアルゴリズムへの入力は、流れ生成器の出力の流れおよびいびきの信号を含む。いびきの信号は、AC圧力信号の“rms(実効値)”と同様に、ハイパスフィルタされた圧力のローパスフィルタされた絶対値とすることが可能である。
【0093】
このアルゴリズムにおいて、流れの導関数が計算される。いびきの計算において多数のフィルタが存在し得る。これはいびきの信号を遅延させ得る。従って、閾値の比較のタイミングを容易にするために流れの導関数を遅延させることが可能である。例えば、ある実装における遅延は310msに対応する31個のサンプルとすることが可能である。
【0094】
一実施形態において、イージースピークは2つの方法によって起動させることが可能である。第1は、比較的大きいいびきの信号を引き起こす患者のハミングとすることが可能である。第2は、鼻マスクを使用するとき、話すために口を開けるとき、空気の急激な流れが口から放出されると想定することが可能である。これは大きな正の流れの導関数に対応する。
【0095】
このアルゴリズムは、経験的に決定された閾値に対してこれらの信号を検査し、イージースピークはこれらの信号が閾値より上であるとき起動される。そのため、いびきの信号が比較的大きい、または、流れの導関数およびいびきの信号が高いならば、イージースピークは起動される。
【0096】
例えば、
【0097】
【表2】

【0098】
典型的な経験的に導き出された定数が下記の表に表わされている。この表は、閾値の間の差の大きさを表わす。
【0099】
【表3】

【0100】
呼吸/漏れによる流れの雑音は通常の発声信号に類似の大きさであるので、流れの導関数およびいびきの信号の組み合わせを使用することが可能である。これは、話すとき口からの空気の急激な流れが存在しないなので、顔全体のマスクのためにこれを修正する必要があり得る。
【0101】
<マスク漏れ制御>
図4および図5を参照して説明される本発明のさらなる実施形態において、患者インタフェースにおける過度の空気漏れを示す変化への送風機の応答は、向上した患者の快適さおよび順応、および、減少された乱れの可能性のために制御される。
【0102】
図4は、患者の顔にマスクが正しく位置しておらず、十分に密閉されていない場合、例えば、マスクおよびヘッドギアが最適に調整されなかった場合、または、患者が睡眠中にマスクを部分的に取り払った場合のマスク漏れを表わす流れ生成器の圧力に対するマスク圧力のグラフである。
【0103】
図4を参照すると、x軸に送風機設定圧力、y軸にマスク圧力が存在する。
【0104】
マスク漏れによる圧力損失は、マスク圧力の曲線と45°の直線との間の垂直距離であることが理解される。典型的な場合において、より低い送風機圧力におけるマスク漏れは、送風機圧力とほぼ線形であるが、ある送風機圧力より上で、増加する圧力はマスク漏れにおいて著しい増加を引き起こすので、送風機圧力からより著しく離れ始める。この離脱が始まる点およびこの離脱の傾斜は、患者へのマスクの種類および適合性に依存し、患者の寝ている位置に応じて、1つのセッションから次へ、または、治療セッション内で、変化し得る。
【0105】
先行技術のAPAP機器において、マスクにおける空気漏れは、マスク圧力における降下によって検出され、コントローラによって管理されるような送風機の応答は、送風機圧力を補償するように増加される。しかし、ある場合において、この増加された圧力は、患者の顔へのマスクの密閉をさらに減少させるためにのみ働き、増加された圧力は増加された漏れによって全面的にまたは大量に失われる。そのような場合において、治療の効能へのわずかなまたは正味のない利益とともに、および、患者および/またはベッドパートナーへの覚醒状態または乱れの増加された機会とともに、漏れている空気の量は増加される。
【0106】
本発明のここでの実施形態において、マスク漏れの検出への送風機の応答は修正される。
【0107】
図5は、本発明の実施形態によるマスク漏れ制御方法のステップを表わすフローチャートである。
【0108】
例えば、低いマスク圧力によって、送風機圧力とマスクにおける圧力との間の過度の差によって、または、ある閾値より下である計算されたマスク障害パラメータによって判定されるような、過度のマスク漏れの最初の検出において(ステップ501)、送風機のコントローラは、漏れを補償し、治療圧力を望ましいレベルに維持するために、送風機圧力における増加を引き起こし(ステップ502)、従って、図4のマスク圧力の曲線に沿ってさらに右に移動する。
【0109】
マスク漏れのもう1つの判定が行われ(ステップ503)、増加された送風機圧力が、漏れを補償するためにマスク圧力を調整したならば、より高い送風機圧力が継続される(ステップ504)。患者は覚醒状態について監視され続ける(ステップ505)。
【0110】
しかし、増加された送風機圧力が、結果として、マスクにおいて予め定められた圧力の増加より小さいか、または、予め定められた流量の増加より大きいならば、これは、送風機が図4のマスク圧力の曲線の低い傾斜の部分において動作していることを意味する。この場合において、コントローラは、圧力の増加が全面的にまたは大部分はマスクにおける増加された漏れのために効果的でなかったことを認識するようにプログラムされる
【0111】
この状態を検出すると、コントローラは、(例えば処置圧力の設定されたパーセンテージだけ、または、傾斜開始圧力に)送風機圧力を減少させるように、または、流れ生成器の出力圧力におけるさらなる増加を阻止するようにプログラムされる(ステップ506)。
【0112】
増加したマスク漏れが比較されるマスク漏れ閾値(ステップ508)は、固定された量または比率とすることが可能であり、例えば、送風機における2cmHOの増加は、結果として、マスクにおける1cmHOより小さい圧力増加となる。
【0113】
その代わりに、マスク漏れ閾値は、患者がより深い睡眠フェーズにあるならば、従って、乱されていそうにないならば、または、呼吸速度のような患者の乱れの他の指標が低いままであるならば、より大きいマスク漏れの量が許容されるように、患者の睡眠フェーズの指標の関数として変化し得る。睡眠フェーズの指標は、それ自体、睡眠医療において知られ、脳波および/または呼吸の監視を含む。
【0114】
この実施形態のさらなる代替の形態において、マスク漏れ閾値は、流れの平坦化、いびき、無呼吸および低呼吸、または、無呼吸低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index(AHI))のような、流れの限界の指標の関数として変化し得るので、患者がより高い処置圧力をより必要としているならば、より大きなマスク漏れの量が許容される。送風機のコントローラは、好ましくは、患者のために履歴に基づく高い流れの限界基準を用いて、マスク漏れ閾値を調整するように、または、マスク漏れ制御機能をターンオフするように臨床士によってプログラムされる。
【0115】
先行技術において行われたようにさらに圧力を増加させるのではなく、高いマスク漏れの状況において送風機設定圧力を減少させ、または、制限することによって、雑音による患者および/またはベッドパートナーの乱れ、または、過度の空気漏れによって引き起こされる空気の流れは最小化される。最適圧力以下の圧力において治療が継続する間、いくらかの気道支持を提供し続け、これは多くの場合において患者を目覚めさせ、または、睡眠中に患者にマスクを外させるより好ましいと考えられる。前者はかなりの患者の快適さおよび順応の課題であり、後者は患者に治療の全体の利益を否定させ得る。
【0116】
さらに、過度のマスク漏れに応答して送風機設定圧力を減少させることによって、マスクは、患者の顔との向上した順応に落ち着かせることが可能であり、マスク漏れが減少され、従って、図4に表わされているマスク圧力の曲線を45°の直線により近いものに変える。
【0117】
マスクと患者の密閉の質を再評価するために予め定められた期間、例えば15分が経過した後に、送風機圧力を傾斜して増加させるように1つまたはより多くのさらなる試みを行うようにコントローラをプログラムすることが可能である。
【0118】
また、患者のAHIおよび他の患者の覚醒状態および流れの限界の指標をリアルタイムに監視し、より低い圧力において治療の有効性における減少を検出するようにコントローラをプログラムすることが可能である。指標が、気道の安定のために不十分な処置圧力を示す、増加された流れの限界および/またはより低い処置圧力における患者の覚醒状態を表わすならば、コントローラは送風機圧力を再度増加させる(ステップ507)。
【0119】
また、体の姿勢を監視することによって患者の覚醒状態を検知することが可能である。高い漏れにとともに検出されるならば、継続的な動きはマスク漏れによる患者の覚醒状態を示し得る。
【0120】
いびきは気道が狭まっていることを示し、処置圧力が低過ぎ、漏れに関係なく増加させなければならないことの指標として使用することが可能である。
【0121】
本質的に、この実施形態は、患者を有効に処置するために必要な最低圧力を適用することを求め、マスク漏れの場合において最大圧力を制限する。ここで、以前の処置は前者のみ行っていた。この方法において、患者の治療への順応の維持に役立つように、マスク漏れによる患者の覚醒状態と処置の有効性との間のバランスが達成される。
【0122】
コントローラは、患者のためのマスクの選択および調整に役立つように臨床士による続く評価のために、過度のマスク漏れに応答して送風機圧力が減少される場合を示す記録を保持する。
【0123】
また、過度のマスク漏れが検出されたセッションの終了において、コントローラは、患者にマスクの取り付けを調整し、かつ/または、臨床士に連絡する必要性を警告するメッセージを機器に表示させることが可能である。
【0124】
CPAP機器は、2つの漏れ制御モードを有することが可能であり、例えば、患者の好みおよび順応のレベルに応じてそれらのモードの間で選択するために制御する。例えば、あまり順応していない患者のために選択され得るこれらのモードの第1において、漏れの検出において機器は処置の流れ/圧力を減少させ、患者の顔に対してマスクが密閉することを可能とするために十分な治療圧力より下である圧力において圧力を維持する。
【0125】
漏れ制御方法の第2のモードにおいて、患者の顔に対してマスクが再度密閉することを可能とするために、予め定められた短い期間、例えば、15〜60秒について、治療圧力以下の圧力に流れ/圧力が減少され、そして、治療圧力に傾斜して増加し戻される。
【0126】
さらなる実施形態において、マスク密閉検査およびマスク取り付け措置が設けられ、ここで、臨床環境および“マスク取り付け”動作モードに切り換えられた装置においてマスクが患者に取り付けられる。このモードにおいて、マスクのための換気流れ速度にほぼ等しい、または、わずかに上回る流れに制限された流れ速度を用いて、流れ生成器は通常の範囲の処置圧力を適用するように制御される。
【0127】
マスクの密閉が十分であるならば、マスクにおける圧力は、十分な治療圧力に、または、その近くにある。かなりのマスク漏れがあるならば、これは、先行技術の低圧−大量のマスクフィッティングモードの措置である騒音を出す動作および大量の空気漏れなしで、マスクにおける不十分な圧力によって検出することが可能である。この方法において、ふさわしくない騒音および患者の顔に流れ出す大量の空気の流れなしで、マスク取り付けを調整することが可能であり、患者の治療の採用および治療への順応へのさらなる障害が減少される。
【0128】
この明細書において、用語“有する”は“オープン”な意味、すなわち、“含む”の意味に解釈されるべきであり、従って、“クローズ”な意味、すなわち、“のみから成る” の意味に限定されるべきでない。
【0129】
本発明は、現在、最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明されたが、本発明は開示された実施形態に限定されないと解釈されるべきであり、逆に、本発明の思想および範囲内に含まれる各種の変形および均等な構成を包含することが意図される。また、上述した各種の実施形態は他の実施形態とともに実現することが可能であり、例えば、一実施形態の態様はさらに他の実施形態を実現するためにもう1つの実施形態の態様と組み合わせることが可能である。さらに、本発明はOSAに悩む患者への特定の適用を有するが、他の疾病に悩む患者(例えば、うっ血性心不全、糖尿病、病的肥満、脳卒中、肥満外科、等)は、上記の教示から利益を引き出すことができることを理解すべきである。さらに、上記の教示は、患者および医療でない応用における非患者に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明の実施形態による方法を実現するための本発明の実施形態による換気装置を表わす。
【図2】本発明の実施形態によるCPAP処置の新たなユーザのための順応療法を表わすフローチャートである。
【図2A】本発明のもう1つの実施形態による新たなCPAPユーザのための順応療法のフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態による、処置の間、患者による発声を容易にするCPAP療法の制御方法を表わすフローチャートである。
【図3A】本発明の実施形態による発声で作動する命令の検出および実行を含む、図3の方法の改良のフローチャートである。
【図4】マスク漏れを表わす、送風機設定圧力に対するマスク圧力のグラフである。
【図5】本発明の実施形態によるマスク漏れ制御を表わすフローチャートである。
【符号の説明】
【0131】
2 送風機
4f 流れセンサ
4p 圧力センサ
6 マスク
8 空気供給ダクト
13 排気口
15 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法であって、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して、前記患者に適用される処置圧力を減少させるステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記処置圧力を減少させるステップは、予め定められた期間について前記処置圧力を減少させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処置圧力を減少させるステップは、5〜60秒間、前記処置圧力を減少させるステップを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記患者を監視するステップは、前記患者によって生じる音を検知するステップと、発声を検出するために前記音を分析するステップと、を含む請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記音を分析するステップは、発声でない音を除去するために前記音をフィルタリングするステップを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記患者を監視するステップは、発声を示す呼気パターンを監視するステップを含む請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記患者を監視するステップは、前記装置によって圧力および/または流れの信号を検出するステップと、いびきを示す信号を除去するために前記信号をフィルタリングするステップと、前記フィルタリングされた信号を分析するステップと、を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記患者を監視するステップは、前記患者によって生じる音を検知するステップと、前記患者の覚醒状態を検出するステップと、を含む請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記患者を監視するステップは、治療セッションの開始から予め定められた時間内に前記患者によって生じる音を監視するステップを含む請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記患者を監視するステップは、治療セッションの開始から2〜60秒以内に前記患者によって生じる音を監視するステップを含む請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記治療セッションの開始から予め定められた時間の後に発声の検出が無効にされる請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記発声はハミングを含む請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記患者を監視するステップは、発声を示す振動を検出するステップを含む請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記振動を検出するステップは、前記患者の首において声帯の振動を検出するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法であって、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して、前記装置の1つまたは複数の機能を制御するステップと、
を有する方法。
【請求項16】
前記患者を監視するステップは、前記装置にプログラムされた1つまたは複数の音声命令に対して前記発声を検査するステップと、前記発声と音声命令との間の合致を認識するステップと、前記音声命令と対応付けされた前記装置の機能を制御するステップと、を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記患者を監視するステップは、処置圧力の適用による発声の特性における変化を補償するステップを含む請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記発声の特性における変化を補償するステップは、処置圧力の適用によってあまり影響されない発声の特性を検出するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
睡眠呼吸障害(SDB)を処置するための装置を動作させる方法であって、前記装置は睡眠中に持続気道陽圧を与え、
患者に処置圧力を適用するステップと、
発声出力について前記患者を監視するステップと、
検出された前記患者の発声に応答して信号を生成するステップと、
前記信号に応答して、予め定められた期間について前記患者に適用される処置圧力を減少させるステップと、
を有する方法。
【請求項20】
前記処置圧力を減少させるステップは、前記処置圧力を4cmHOに減少させるステップを含む請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記予め定められた期間は5秒である請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
発声が検出されるごとに前記予め定められた期間をリセットするステップをさらに有する請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記患者を監視するステップはハミングを検出するステップを含む請求項19から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記患者を監視するステップは流れの導関数を検出するステップを含む請求項19から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24のいずれか1項に記載の方法を実行するためのPAP(気道陽圧)装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−546432(P2008−546432A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−516072(P2008−516072)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000824
【国際公開番号】WO2006/133495
【国際公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(500046450)レスメド・リミテッド (192)
【氏名又は名称原語表記】RESMED LTD
【Fターム(参考)】