説明

CT画像処理装置およびCT画像処理方法

【課題】投影データを用いて強い同期信号をとることができ、簡易な同期処理を可能にし、オペレータの負担を軽減できるCT画像処理装置およびCT画像処理方法を提供する。
【解決手段】被検体の部位の周期運動に同期させて投影データを処理するCT画像処理装置5であって、対象となる被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIの特定情報を算出するROI算出部36を備える。これにより、強い同期信号を得て呼吸拍や心拍が十分に表れた特徴量を測定でき、投影データを用いて簡易な同期処理が可能になる。そして、ECGや呼吸計測器などの心拍や呼吸拍を得るための専用の装置を必要とせず、投影データのROI信号から心拍信号および呼吸拍信号を得ることができる。その結果、心拍による画像のブレを排除でき、画質が各段に向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の部位の周期運動に同期させてX線CT装置にて撮影し、得られた投影データを画像再構成処理するCT画像処理装置およびCT画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マウス、ラット等の動物の体内の観察にはX線CT撮影が有効である。しかし、動物は人の様にオペレータの指示に従いCT撮影中に息止めをすることができない。また、生体撮影では心臓を止めることはできない。そのため、心臓、肺および周辺の肝臓等の臓器の画像は心拍や呼吸の影響でブレてしまい精細な部位の観察や検査に適さなかった。
【0003】
このような背景から、呼吸拍同期撮影が可能なX線CT装置が開発されている。たとえば、特許文献1、2記載の装置は、被検体の周期的運動部位の領域を含むように関心領域を設定し、関心領域内にわたり積算して得られる特徴量を被検体の周期的運動の同期信号として算出している。そして、周期的運動の同期信号を用いて位相をずらしてガントリの回転を制御しX線CT撮影をし、複数回の回転で撮影したデータにより補間処理を行っている。
【0004】
また、非特許文献1記載の制御装置は、圧力センサーをサンプル胸部近傍に置くことで呼吸拍を得る一方で、サンプルの両肩および足部に電極を穿刺しECG測定を行い、心拍信号を得ている。そして、呼吸拍に対し位相をずらしながら数回のCT撮影を行い、同位相のCT角度データを選び1つのCTデータにまとめ、同期CTデータの画像再構成を行っている。
【0005】
一方、X線CT撮影装置には、撮影画像内に設定された領域に基づき、撮影角度に応じて領域の位置を計算するものがある。特許文献3に記載のX線血管造影装置は、検査部位および撮影角度に対してゲートエリアを記憶させておき、撮影画像一枚毎にその検査部位および撮影角度に対応して記憶しているゲートエリアを設定する。その際に、近傍の角度に対して登録されているゲートエリア情報から設定された撮影角度に対するゲートエリア情報を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−228828号公報
【特許文献2】特開2008−228829号公報
【特許文献3】特開2006−346263号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Dinkel et al, Intrinsic Gating for Small-Animal Computed Tomography A Robust ECG-Less Paradigm for Deriving Cardiac Phase Information and Functional Imaging, Journal OF THE American Heart Association, USA, American Heart Association, Circ Cardiovasc Imaging 2008;1;235-243
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、特許文献1、2記載の装置は、位相をずらしてガントリの回転を制御しX線CT撮影をすることで呼吸拍による画像のブレを防止している。しかしながら、このような同期算出装置では、部位の周期的運動に合せてガントリを機械的に制御する必要がある。また、小動物は心拍が速く、実質的にその影響を排除するのは困難である。また、非特許文献1記載の制御装置は、心拍の影響を排除できるが、オペレータの作業負担が大きく、電極の穿刺を伴うことからオペレータの安全性を確保できない。また、被検体に負担がかかる。撮影時間は長くなりやすく、心拍の影響を受ける部位についての画質は十分とはいえない。そして、電極の穿刺によりアーチファクト(偽像)が生じやすい。また、ECGは高価である。
【0009】
特許文献3記載のX線血管造影装置は、近傍の角度のゲートエリア情報から設定された撮影角度のゲートエリア情報を作成するが、その目的は、領域内の画像のコントラストを維持することであり、部位の周期的運動の影響を排除することとは大きく異なる。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、CT撮影により得られた投影データから同期信号を抽出し、簡易な同期処理で、同期したCT画像を得ることができるCT画像処理装置およびCT画像処理方法を提供することを目的とする。なお、透視データとは、所定の回転角度で被検体を透過して検出されたX線のデータをいい、透視画像とは、透視データを透視像として表示した画像をいう。また、投影データとは、回転撮影により被検体を透過して検出器で測定されたX線のデータをいい、CT画像データとは、投影データを用いて再構成された画像データをいう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係るCT画像処理装置は、被検体の部位の周期運動に同期させてX線の投影データを処理するCT画像処理装置であって、同期をとろうとする被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIの特定情報を算出するROI算出部を備えることを特徴としている。
【0012】
これにより、強い同期信号を得て呼吸拍や心拍が十分に表れた特徴量を測定でき、投影データを用いて簡易な同期処理が可能になる。そして、ECGや呼吸計測器などの心拍や呼吸拍を得るための専用の装置を必要とせず、容易にかつ低コストで投影データのROI信号から心拍信号および呼吸拍信号を得ることができる。その結果、心拍による画像のブレを排除でき、画質が各段に向上する。たとえば、拡張期と収縮期の両方の心臓同期画像を得ることができ、心機能検査に利用できる。そして、心臓、肺、肝臓およびその周辺の機器の診断が確実に向上する。
【0013】
また、針の穿刺が不要となり心拍同期撮影、呼吸同期撮影の作業性を改善できる。ECG電極を用いないで同期信号を得るので、穿刺での事故を無くすことができる。このように、オペレータの作業安全性を確保でき、被検体の負担を軽減することができる。そして、穿刺した電極によるアーチファクトの発生を防止できる。
【0014】
(2)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記ROI算出部が、複数の撮影角度の投影データに対して設定された同期用ROIに基づいて、他の撮影角度の投影データに対して同期用ROIの特定情報を算出することを特徴としている。これにより、対象となる被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIを特定できる。
【0015】
(3)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記ROI算出部が、投影データ上のX線照射の回転中心の位置を参照して、前記同期用ROIの位置および形状を算出することを特徴としている。これにより、同期をとろうとする対象部位を追跡するように各撮影角度で同期用ROIを設定でき、確実に部位の周期運動に同期させて処理できる。
【0016】
(4)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記ROI算出部が、互いのなす角度が90°の2つの撮影角度の投影データに対してそれぞれ設定された同期用ROIに基づいて、他の撮影角度の投影データの同期用ROIを算出していることを特徴としている。これにより、他の角度の同期用ROIを算出する際には、同期信号を見落とすことを低減できる。なお、同期用ROIは、互いのなす角度が90°であることが好ましいが、60°以上120°以下の2つの撮影角度の投影データに対してそれぞれ設定されていてもよい。
【0017】
(5)また、本発明に係るCT画像処理装置は、撮影角度と前記同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の呼吸拍の位相区分に各投影データを分類する呼吸同期処理部を更に備えることを特徴としている。これにより、たとえば、呼吸拍の拡張期以外の区分に投影データを分類できる。
【0018】
(6)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記呼吸同期処理部が、前記同期用ROIの特徴量を撮影角度で微分し、微分値を用いた所定のしきい値を基準に投影データを分類し抽出することを特徴としている。これにより、呼吸拍の拡張期のデータと収縮期のデータとを明確に分けることができる。心拍に対して呼吸拍の方が急峻なので、心拍による影響を受けることもない。
【0019】
(7)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記所定の呼吸拍の位相区分に分類された投影データを、その撮影角度と前記同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の心拍の位相区分に分類する心拍同期処理部を更に備えることを特徴としている。これにより、たとえば、分類されたデータをさらに心拍の拡張期の区分に分類し抽出することができる。
【0020】
(8)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記心拍同期処理部が、前記所定の呼吸拍の位相区分に分類された投影データについて、撮影角度に対する前記同期用ROIの特徴量の移動平均値を算出し、前記移動平均値を基準に投影データを分類し抽出することを特徴としている。このように移動平均値を基準にすることで、心拍の拡張期のデータと収縮期のデータとを分けることができる。移動平均はたとえば4値のものを用いる。
【0021】
(9)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記所定の呼吸拍または心拍の位相区分に分類された投影データでCT画像データを再構成する画像再構成部を更に備えることを特徴としている。これにより、特定の呼吸拍の位相区分および心拍の位相区分に分類された投影データを用いて、周期的に運動する部位についても鮮明なCT画像データを得ることができる。
【0022】
(10)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記画像再構成部が、前記投影データの分類により欠落した投影データをその撮影角度付近の投影データで補間して、CT画像を再構成することを特徴としている。これにより、投影データ不足により発生するアーチファクトを削減することができる。
【0023】
(11)また、本発明に係るCT画像処理装置は、前記画像再構成部が、撮影角度の近い複数のデータについて平均化された投影データを、平均化された撮影角度に対する投影データとしてCT画像データの再構成に使用することを特徴としている。これにより、高速なCT画像再構成演算処理を実行することができる。
【0024】
(12)また、本発明に係るCT画像処理装置は、撮影時に、複数の撮影角度の投影データに対して設定された前記同期用ROIを投影データに対応付けて記憶させるROI設定部を更に備えることを特徴としている。このように複数の撮影角度で同期用ROIを設定できるため、設定された同期用ROIを用いてその他の角度の同期用ROIを算出することができる。
【0025】
(13)また、本発明に係るCT画像処理方法は、コンピュータを用いて、被検体の部位の周期運動に同期させてX線の投影データを処理するCT画像処理方法であって、同期をとろうとする被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIの特定情報を算出するステップを実行することを特徴としている。
【0026】
これにより、投影データを用いて簡易な同期処理が可能になる。ECGや呼吸計測器などの心拍や呼吸拍を得るための専用の装置を必要とせず、投影データのROI信号から心拍信号および呼吸拍信号を得ることができる。その結果、心拍による画像のブレを排除でき、画質が各段に向上する。そして、拡張期と収縮期の両方の心臓同期画像を得ることができ、心機能検査に利用できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の撮影角度で設定された同期用ROIを基に、他の撮影角度でも同期用ROIを設定できる。その結果、投影データを用いて細かく同期信号をとることができ、簡易な同期処理を可能にし、オペレータの負担を軽減できる。そして、心臓、肺、肝臓およびその周辺の機器の診断が確実に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るX線CT装置を示す概略図である。
【図2】本発明に係るX線CT装置を示すブロック図である。
【図3】本発明に係るX線CT装置の使用手順および動作を示すフローチャートである。
【図4】同期用ROIの設定画面を示す図である。
【図5】同期処理表示画面を示す図である。
【図6】(a)、(b)それぞれ撮影角度0°および90°における透視画像と同期用ROIの位置を示す図である。
【図7】撮影角度に対する同期用ROIの特徴量を示すグラフである。
【図8】(a)、(b)いずれも撮影部の側面透視図である。
【図9】撮影角度に対する同期用ROIの変化を示すサイノグラム画像を示す図である。
【図10】(a)撮影角度0°から360°までの同期用ROIの特徴量を示すグラフ、(b)そのグラフの一部を用いて処理手順を示した図である。
【図11】撮影角度に対する同期用ROIの特徴量、特徴量の撮影角度についての微分値、補間後の特徴量を示すグラフである。
【図12】(a)呼吸同期処理を行わなかったときのマウスの胴体の断面画像を示す図、(b)呼吸同期処理を行ったときのマウスの胴体の断面画像を示す図である。
【図13】心拍同期処理の手順を示すための特徴量のグラフである。
【図14】心拍同期処理なしの画像例を示す図である。
【図15】心拍同期処理により心臓の拡張期の投影データを特定し、画像再構成により得られたCT画像例を示す図である。
【図16】心拍同期処理により心臓の収縮期の投影データを特定し、画像再構成により得られたCT画像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0030】
(X線CT装置の構成)
図1は、X線CT装置1の概略図である。図1に示すように、X線CT装置1は、撮影部2、画像リコンPC5(CT画像処理装置)、入力部6、表示部8を備えている。撮影部2は、ガントリ制御ユニット11、ガントリ12を有し、保持した被検体に対してガントリ12を回転させてX線CT撮影を行う。撮影部2は、算出されたCT撮影開始のタイミングでCT撮影を行い、被検体の投影データを撮影する。撮影したCTデータは、画像リコンPC5に送信される。また、撮影部2は呼吸同期させたCT撮影を行い、被検体の投影データを撮影することが可能である。
【0031】
ガントリ12は、所定の回転角度で被検体の透視データを得たり、回転撮影により投影データを得たりするために、被検体の周囲を回転できるように設けられている。ガントリ12は、回転アーム15、X線管16、検出器17およびアーム回転モータ18を備えている。回転アーム15には、X線管16および検出器17が固定されている。回転アーム15は、X線管16と検出器17との間の点を中心として回転可能にガントリ12内に設置されている。
【0032】
X線管16は、X線を発生させ検出器17に向けて照射する。検出器17は、X線を受光する受光面を有し、パネル状に形成されている。X線は、X線管16から照射され被検体を透過して検出器17で検出される。アーム回転モータ18は、回転アーム15を回転させることで、ガントリ12全体を回転させる。アーム回転モータ18は、CT撮影時に設定された速度でガントリ12を回転させることが可能である。また、撮影終了後には、元の位置までガントリ12を逆に回転させることができる。なお、上記ではX線CT装置1をアームタイプの装置として説明しているが、本発明の適用は必ずしもこのタイプに限定されない。
【0033】
X線CT装置1は、高速な検出器17を用い高速に多量のデータを収集でき、撮影時間を短縮できる。また、高速なデータ収集により体動の影響を低減できる。フレームレートは30fps以上であることが好ましく、100fps以上であると更に好ましい。フレームレートを30fps以上とすることで、マウスのような小動物の心拍の拡張期と収縮期とが同一フレームで撮影されるのを防止できる。また、合計で3600〜14400フレームの投影データを得ておくことが好ましい。ただし、同期処理は、特別なハードウェアは必要とせず、ソフトウェアのみで行える。
【0034】
画像リコンPC5(CT画像処理装置)は、撮影された投影データを取得し、投影データをもとに呼吸または心拍の同期信号として特徴量を算出する。そして、その呼吸同期信号を用いて3次元CT画像データの再構成を行う。また、画像リコンPC5は、撮影部2に撮影条件等を送信し、撮影部2の動作を制御する機能も有している。キーボードやマウス等の入力部6はユーザからの入力を受けて画像リコンPC5に入力信号を伝える。
【0035】
ディスプレイ等の表示部8は、透視画像や得られた同期信号の表示を行う。また、CT撮影中に投影データを表示し、画像再構成後にCT画像データを表示する。ガントリ制御ユニット11は画像リコンPC5からの指示を受けて、指示された速度でガントリ12の回転を制御し、X線管16および検出器17によるCT撮影を制御する。
【0036】
(画像リコンPCの構成)
次に、画像処理の機能をさらに詳細に説明する。図2は、X線CT装置1のブロック図である。図2に示すように、画像リコンPC5は、キーボード、マウス等の入力部6からユーザの入力を受ける。一方で、画像リコンPC5は、ディスプレイ等の表示部8には透視画像や入力画面等を表示する。撮影の際には、画像リコンPC5は、ユーザから入力された制御情報を撮影部2に送信する。
【0037】
また、画像リコンPC5は、データ取得部31、記憶部32、輝度値算出部34(特徴量算出部)、ROI設定部35、ROI算出部36、呼吸同期処理部37、心拍同期処理部38、画像再構成部39を備えており、被検体の部位の周期運動に同期させて投影データを処理する。各部は、制御バスLにより情報を送受できる。なお、画像リコンPC5は、実質的にはCPUおよびメモリまたはハードディスク等により構成されている。
【0038】
データ取得部31は、被検体の透視データや投影データを撮影部2から取得する。記憶部32は、取得された被検体の投影データを記憶する。また、記憶部32は、輝度値算出部34が算出した輝度値を記憶する。
【0039】
輝度値算出部34は、取得された投影データに設定された同期用ROI(Region of Interest;関心領域)内にわたり輝度値を積算して、その同期用ROIのピクセル数で除する。これにより、呼吸同期信号として輝度値の平均値(特徴量)を算出することができる。なお、特徴量は、必ずしも輝度値である必要はなく、一定領域の積算値に対応する値であればよい。なお、同期用ROIの計算は、データ収集中または収集後に行う。なお、同期用ROIは、観察のためのROIとは用途が異なり、周期的運動の強い信号を把握するためのものである。
【0040】
ROI設定部35は、透視時に、複数の角度の透視データに対して設定された同期用ROIを投影角度に対応付けて記憶させる。同期用ROIの設定は、ユーザが入力部6から入力することで行う。複数の撮影角度は、互いのなす角度が60°以上120°以下の2つの撮影角度であることが好ましく、互いに直交する2つの角度であることがなお好ましい。これにより、他の角度の同期用ROIを算出する際には、設定誤差を低減できる。なお、3つ以上の撮影角度で同期用ROIを設定してもよい。
【0041】
このとき、画像リコンPC5は、設定のための同期用ROIを表示させるとともに、設定のための同期用ROI内のX線の特徴量をリアルタイムに表示させることが好ましい。たとえば、ユーザは特徴量のグラフの表示を確認し、強い信号が得られているか否かで同期用ROIの設定が適切かを判断できる。
【0042】
このように、画像リコンPC5は、複数の撮影角度で設定された同期用ROIを基に、他の撮影角度でも同期用ROIを設定できる。その結果、呼吸拍および心拍を十分に表した特徴量を測定することができ、投影データを用いて簡易な同期処理が可能になる。ECGや呼吸計測器等の心拍や呼吸拍を検知する専用の装置が不要となり、投影データの同期用ROIから心拍信号および呼吸拍信号を得られる。そして、心拍による画像のブレを排除でき、画質が各段に向上する。また、拡張期と収縮期の両方の心臓同期画像を得ることができ、心機能検査に利用できる。
【0043】
また、ECG測定を伴わないため、針の穿刺が不要となり心拍同期撮影、呼吸同期撮影の作業性が改善し、穿刺での事故が生じることはない。このように、オペレータの作業安全性を確保できるとともに、被検体の負担を軽減できる。
【0044】
ROI算出部36は、複数の撮影角度の透視データに対して設定された同期用ROIに基づいて、他の撮影角度の投影データに対して同期用ROIの特定情報を算出する。このようにして、同期用ROIの設定のあった角度以外の角度について同期用ROIを補間し、同期をとろうとする部位を追跡するように同期用ROIを特定することができる。
【0045】
心臓は、被検体から見て正面の左の奥側に位置し、被検体をステージに載せて回転撮影する際には楕円状に移動することになる。したがって、固定されたROIでは、心臓の同期信号を十分に捕捉することができない。しかし、上記の同期用ROIの算出処理により、この移動に応じて追跡することができる。このようにして、心拍について強い同期信号を検知することができる。なお、算出の際には、投影データ上のX線照射の回転中心の位置を参照して、同期用ROIの位置および形状をその特定情報として算出する。同期用ROIを補間する処理の詳細は後述する。
【0046】
呼吸同期処理部37は、撮影角度と同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の呼吸拍の位相区分に各投影データを分類し抽出する。所定の呼吸拍の位相区分とは、たとえば、肺の収縮期、拡張期である。具体的には、同期用ROIの特徴量を撮影角度で微分し、所定のしきい値を基準に投影データを分類し抽出する。呼吸拍により生じる横隔膜の運動は心拍と比較して大きな振幅で急峻な変化として特徴量に表れるため、肺の拡張期と収縮期とで微分値が大きく異なる。これを利用して肺の拡張期と収縮期とでデータを分けることができる。
【0047】
このようにして、呼吸拍の位相区分および心拍の位相区分に投影データを分類し抽出することができる。たとえば、肺の拡張期以外の区分に投影データを分類し、分類されたデータをさらに心拍の拡張期の区分に分類することができる。なお、心拍に対して呼吸拍の方が急峻なので、心拍による影響を受けることはほとんどない。
【0048】
心拍同期処理部38は、呼吸同期処理部37において所定の呼吸拍の位相区分に分類された投影データを、その撮影角度と同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の心拍の位相区分に分類する。所定の心拍の位相区分とは、たとえば心臓の拡張期と収縮期である。分類の処理は、撮影角度に対する同期用ROIの特徴量の移動平均値を算出し、移動平均値を基準に投影データを分類することが好ましい。このように移動平均値を基準にすることで、心拍の拡張期のデータと収縮期のデータとを分けることができる。移動平均はたとえば4値を用いて行なう。
【0049】
画像再構成部39は、所定の呼吸拍または心拍の位相区分に分類された投影データで3次元CT画像データを再構成する。これにより、特定の呼吸拍の位相区分および心拍の位相区分に分類された投影データを用いて、周期的に運動する部位についても鮮明なCT再構成画像を得ることができる。画像再構成部39は、同期処理がなされたガントリの1回転分のデータで、必要な投影データを抽出しCT画像データを再構成する。その結果、アーチファクトが無く、ブレの少ないCT画像データを得ることができる。
【0050】
再構成処理の際には、投影データの分類により欠落した投影データをその撮影角度付近の投影データで補間して、CT画像データを再構成することが好ましい。これにより、効率良く鮮明なCT画像データを得ることができる。たとえば、撮影角度の近い複数のデータについて平均化された投影データを、平均化された撮影角度に対する投影データとしてCT画像データの再構成に使用する。なお、再構成時には、1000フレーム程度の投影データに基づいて再構成を行うことが好ましい。計算対象となる投影データが多すぎると、計算の処理負担が大きくなるためである。その場合には、たとえば16の投影データに対して、1つの使用可能な投影データを用いてCT画像データを再構成する。
【0051】
(使用手順および装置動作)
次に、このように構成されているX線CT装置1の使用手順および装置の動作の一例を説明する。図3は、X線CT装置1の使用手順および動作を示すフローチャートである。
【0052】
まず、ユーザは、マウス、ラット等の被検体を撮影部2が備えるベッドに設置する(ステップS1)。そして、事前撮影により被検体にX線を照射し、透視データを取得する。事前撮影は5秒程度のもので十分であり、ガントリは回転させない。このとき、即時処理を行い、呼吸同期信号を算出してグラフを表示する。得られた透視データの心臓部位を示す領域に、同期用ROIを設定する(ステップS2)。この際に、X線CT装置1は、ユーザから同期用ROIを特定する位置、形状の情報を受け付ける。たとえば、マウスによりドラッグアンドドロップの操作をして対角線を設定することで長方形の同期用ROIを設定可能にする。ユーザは、横隔膜より頭部側で心臓の対向する側壁を含むように同期用ROIを設定するのが好ましい。なお、同期用ROIの形状は必ずしも長方形である必要はない。
【0053】
次いで、ステップS2で同期用ROIを設定した撮影角度に直交する角度でX線照射を行い、得られた投影データの心臓部位に同期用ROIを設定する(ステップS3)。そして、被検体のX線CT撮影を行い、投影データを取得し、撮影された投影データに対し、同期用ROIが設定された撮影角度以外の角度について同期用ROIの位置およびサイズを算出する(ステップS4)。すなわち、X線CT装置1は、ユーザからの撮影開始の入力を受けてガントリを回転させ、撮影を開始し、トリガ信号に応じて被検体の投影データを撮影し、各投影データについて同期用ROIの位置およびサイズを算出して記憶する。
【0054】
そして、X線CT装置1は、カウント値(輝度値)の同期用ROI内での平均値を算出する(ステップS5)。カウント値の平均値は、ROI内でカウント値を積算し、ピクセル数で割ることにより、算出することができる。このようにして得られた各撮影角度の投影データについて、同期用ROIの特徴量の撮影角度による微分値を求め、肺の収縮期の投影データを特定する(ステップS6)。
【0055】
次に、ユーザは、呼吸同期画像が得られれば十分か、心拍同期画像まで得たいかを判断し、指示を入力する(ステップS7)。X線CT装置1は、呼吸同期画像で十分という指示を受けたときには、呼吸同期により肺の収縮期に分類された投影データを3次元CT画像データの再構成のために特定し(ステップS8)、処理を終了する。
【0056】
一方、心拍同期画像まで得たい指示を受けた場合には、X線CT装置1は、肺の収縮期のデータとして特定された投影データについて移動平均を求める(ステップS9)。そして、ユーザは、心臓の拡張期または収縮期のいずれを取得したいかを指定し、X線CT装置1は、指定に応じて、取得するのは心臓の拡張期のデータか収縮期のデータかを判定する(ステップS10)。
【0057】
心臓の拡張期のデータを用いる場合には、同期用ROIの特徴量が移動平均値より大きい撮影角度の投影データでCT画像を再構成する(ステップS11)。また、心臓の収縮期のデータを用いる場合には、同期用ROIの特徴量が移動平均値より小さい撮影角度の投影データを特定する(ステップS12)。最後に特定された撮影角度の投影データでCT画像を再構成して(ステップS13)、処理を終了する。
【0058】
(同期用ROIの設定)
次に、同期用ROIの設定手順の詳細を説明する。図4は、同期用ROIの設定画面を示す図である。図4に示すように、表示部8には、透視画像画面51、グラフ表示画面52、コントロールパネル61が表示される。透視画像画面51には、透視画像および同期用ROI200の位置および大きさが表示される。グラフ表示画面52には、特徴量のグラフ55、撮影角度0°における同期用ROI決定ボタン56、撮影角度90°における同期用ROI決定ボタン57が表示されている。
【0059】
特徴量のグラフ55では、回転による緩やかな波形上に長周期で生じている大きなピークと、大きなピーク間に短周期で生じている小さなピークを観測できる。大きなピークは、呼吸拍における肺の拡張期を表わしており、小さなピークは心拍における心臓の拡張期を表わしている。呼吸拍のピークは、心拍のピークの10倍程度大きく、急峻に変化する。ユーザは、特徴量のグラフ55を観察しつつ、呼吸拍だけでなく心拍の信号も十分に大きく捉えられる位置および大きさで同期用ROI200を設定する。
【0060】
コントロールパネル61には、呼吸同期処理の選択ボタン63、心拍同期処理の選択ボタン62、透視開始ボタン65、CT撮影開始ボタン64が表示されており、ユーザはこれらのGUIを操作して撮影や処理を指示可能になっている。
【0061】
同期用ROIを設定する場合には、まず、透視画像撮影を開始する。そして、0°の撮影角度で、同期用ROIの枠を移動、調整し、同期用ROI決定ボタン56で同期用ROI200を決定する。同様に、90°の撮影角度で、同期用ROI200の枠を移動、調整し、同期用ROI決定ボタン57で同期用ROIを決定する。そして、透視画像撮影を終了し、CT撮影ボタンを押すと、画像リコンPC5は、CT撮影を開始し、投影データと同期用ROIの値を取得する。次に自動で同期処理ソフトを起動し、同期により分類された投影データを抽出する。図5は、同期処理表示画面を示す図である。画面上のProgress表示が100%まで進行すると、画像再構成処理に移行する。
【0062】
図6(a)(b)は、それぞれ撮影角度0°および90°における投影データと同期用ROI200の位置を示す図である。このように同期用ROI200は、撮影角度に応じて投影データ上の位置や形状が異なる。これにより、周期的運動を行う部位を追跡するように同期用ROI200を算出し、同期用ROI内の特徴量で確実に心拍を捉えることができる。
【0063】
(同期用ROI設定の検証)
撮影角度に応じて同期用ROIの位置や大きさを変えない場合と複数角度での設定に応じて変える場合について特徴量を比較した。図7は、撮影角度に対する同期用ROIの特徴量を示すグラフである。図7において、撮影角度に応じて同期用ROIの位置や大きさを変えない場合のグラフ75では、呼吸拍信号は十分に処理可能な程度の大きさを検知できたが、心拍信号は小さく十分とはいえなかった。一方、複数角度での設定に応じて同期用ROIを変える場合のグラフ76では、呼吸拍信号も心拍信号も十分に処理可能な大きさで検知できた。このように同期用ROIは、投影データ上の一定位置に固定するより、撮影角度に応じて同期をとろうとする部位の動きに合わせて追跡する方が十分な呼吸拍や心拍をとれることが実証された。
【0064】
(同期用ROIの補間の算出原理)
次に、同期用ROIの算出の原理を説明する。図8(a)、(b)は、撮影部の側面透視図である。図8に示すように、まず、0°および90°の各撮影角度において同期用ROI200が設定されることで、0°および90°の各撮影角度のそれぞれの同期用ROI200の中心位置を求めることができる。回転中心Cは既知であるため、各撮影角度における回転中心Cと同期用ROI200の中心位置との距離を求めることができる。0°および90°の各撮影角度における回転中心Cと同期用ROIの中心位置との距離をそれぞれ底辺長さb、対辺長さaとすると、三平方の定理によりθ=atan(a/b)を用いて、同期用ROIの中心位置の角度θを求めることができる。また、同様に斜辺長さhもh=O(a+b)により求めることができる。
【0065】
そして、現在フレーム数/総フレーム数から現在フレームの撮影角度を算出でき、この現在フレームの撮影角度を任意角度とすれば、x=h・cos(θ+任意角度)により、同期用ROIの中心の0°方向座標xを求めることができる。また、y=h・sin(θ+任意角度)により、同期用ROI200の中心の90°方向座標yを求めることができる。このようにして、中心の0°方向座標xおよび90°方向座標yから同期用ROI200の枠を算出する。このようにして、中心の位置座標(x,y)に0°および90°の各撮影角度において設定された同期用ROI200の形状から任意角度における同期用ROIの位置および形状を算出することができる。たとえば、図8(b)に示すような180°、270°の撮影角度における同期用ROI200の位置および形状を算出できる。
【0066】
なお、同期用ROIの設定なしに、周期的運動をする部位を自動認識させてガントリの撮影角度が動くたび部位を自動認識させながら追尾して、各角度の同期用ROIを算出してもよい。このような場合には、デジカメなどでペットや人の動きにあわせ顔の自動認識が追尾するように、被検体の周りを撮影するときに心臓を自動認識させて360度回転する間追尾して同期用ROIを決定する。これにより、自動認識させながら撮影が可能になり、撮影角度0°および90°を基準とした自動調整と同様な結果が得られる。
【0067】
(同期用ROIの軌跡)
実際に上記のように、撮影角度に応じた同期用ROI200の位置および形状の変化を算出した。図9は、撮影角度に対する同期用ROI200の変化を示すサイノグラム画像を示す図である。図9に示すように、0°、90°、180°、270°の同期用ROIの位置および形状に対してすべての撮影角度について重ね合わせると、らせん状のサイノグラム画像が得られた。すなわち、算出された同期用ROIは、撮影角度の変化に応じてらせん状の軌跡を描きながら、適した形状で対象の部位を追跡していることが分かる。
【0068】
(呼吸同期処理)
次に、呼吸同期処理を説明する。図10(a)は、撮影角度0°から360°までの同期用ROIの特徴量を示すグラフであり、図10(b)は、そのグラフの一部を用いた処理手順を示した図である。図10(a)に示すように、同期用ROIの特徴量は、撮影角度の変化に対して、緩やかな周期的カーブの上に肺の拡張期を示すピークを生じるように変化する。呼吸同期処理においては、肺の拡張期を示すピークのデータを除去して残りのデータで肺の収縮期を3次元画像の再構成用に特定するのが好ましい。このような計算により、同期をとろうとする対象部位を追跡するように同期用ROIを設定できる。そして、確実に部位の周期運動に同期させた処理を行うことができる。
【0069】
図10(b)に示すように、肺の拡張期を示すピークのデータを除去し、残りのデータで除去されたピーク区間のデータを補間する。その際には、所定の撮影角度と投影データを対応付けて補間する。付近の撮影角度の投影データを用いて平均値により特定の撮影角度の投影データを補間してもよい。処理に用いられる投影データは、1回転分として3600フレーム以上利用できることが好ましい。多くのデータを利用することで、除去されたデータを容易に補間することができる。
【0070】
(ピーク除去処理)
上記のように肺の拡張期を示すピークのデータを除去する処理の詳細を説明する。撮影角度による特徴量の微分値の絶対値がしきい値より大きい撮影角度に対して、呼吸拍のピークと判断できる。呼吸拍のピークは、心拍のピークに比べて著しく大きいため、このように判断して位相区分を分類できる。しきい値は、ユーザが試験的に撮影した投影データについて特徴量の微分値を把握しておき、適当に設定することができる。なお、実際のピークの除去処理の際には、たとえばしきい値より大きい微分値が得られた撮影角度の上下3°を除去する等、余裕を見て適宜条件を設定する方が好ましい。
【0071】
(ピーク除去処理の検証結果)
上記のピーク除去の処理を実際に撮影された投影データに適用した。図11は、撮影角度に対する同期用ROIの特徴量、特徴量の撮影角度についての微分値、補間後の特徴量を示すグラフである。図11に示すように、肺の拡張期を示すピークの付近では明らかに特徴量の微分値が大きくなっている。そこで、微分値が50より大きい撮影角度とその前後数度をピークに対応する撮影角度の範囲としてデータを除去し、それ以外の撮影角度の投影データで除去したピーク分を補完した。これにより、肺の収縮期のみのデータを残すことができ、肺の収縮期の3次元CT画像データを再構成できる。
【0072】
図12(a)は、呼吸同期処理を行わなかったときのマウスの胴体の断面画像を示す図である。また、図12(b)は、呼吸同期処理を行ったときのマウスの胴体の断面画像を示す図である。図12(a)では、断面に示される内臓81内の各部位がぼやけて表示されているが、図12(b)では、内臓81内の各部位が鮮明に表示されている。ただし、心拍同期処理は行っていないため、いずれの図においても心臓82は不鮮明に表示されている。
【0073】
(心拍同期処理)
次に、心拍同期処理について説明する。図13は、心拍同期処理の手順を示すための特徴量のグラフである。図13に示すように、呼吸拍のピークを除去した特徴量のグラフには、心拍による短周期の小さいピークが生じている。これらのデータについて、各撮影角度による特徴量の移動平均を算出する。移動平均の算出条件の設定は、適宜ユーザが設定できるが、4値の移動平均が好ましい。
【0074】
そして、特定の撮影角度の特徴量が移動平均より大きい場合には心臓の拡張期と判断し、移動平均より小さい場合には心臓の収縮期と判断する。このようにして、心拍同期処理により心臓の拡張期と収縮期の位相区分で投影データを分類し抽出できる。移動平均を利用する場合にピーク除去により空いた撮影角度については、その角度範囲の端の値に異常値が生じやすいので中心値を用いることが好ましい。
【0075】
なお、移動平均値からのオフセットを設定しておき、移動平均の上下に幅をとって、オフセット以上またはオフセット以下のデータを心臓の拡張期と収縮期の位相区分に分類すれば、もっと正確にデータ収集ができる。とくに、100fpsのように撮影フレーム速度が大きくなった場合には、しきい値を上げることが効果的である。
【0076】
(心拍同期処理の検証結果)
実際の呼吸同期処理済みのデータに対して、上記の心拍同期処理を行った結果として、特徴量のグラフが図13に示されている。図13において、ひし形で表したのが呼吸同期後のデータであり、正方形で表したのが移動平均のデータである。そして、移動平均を下回るデータを三角、移動平均を上回るデータを×印で表わしている。図13に示すように、特徴量の移動平均に対して心拍同期処理後のデータの上下が明確に判断できる。このようにして、心臓の拡張期と収縮期のデータを明確に分類することができる。
【0077】
心拍同期処理を行い、心臓の拡張期と収縮期のそれぞれのデータに対して画像再構成を行なった。図14は、心拍同期処理なしの画像例を示す図である。図15は、心拍同期処理により心臓の拡張期の投影データを抽出し、画像再構成を行った画像例を示す図である。図16は、心拍同期処理により心臓の収縮期の投影データを抽出し、画像再構成を行った画像例を示す図である。図14では、心臓の境界が不鮮明であるのに対して、図15、図16では、心臓の境界が鮮明に表示されている。このように、心拍同期処理により、心臓の拡張期と収縮期とでそれぞれ明瞭な再構成画像が得られることが実証できた。これにより、心臓の射出量、容積率等を正確に計算することも可能になる。
【符号の説明】
【0078】
1 X線CT装置
2 撮影部
5 画像リコンPC(CT画像処理装置)
6 入力部
8 表示部
11 ガントリ制御ユニット
12 ガントリ
15 回転アーム
16 X線管
17 検出器
18 アーム回転モータ
31 データ取得部
32 記憶部
34 輝度値算出部
35 ROI設定部
36 ROI算出部
37 呼吸同期処理部
38 心拍同期処理部
39 画像再構成部
51 透視画像画面
52 グラフ表示画面
56 0°同期用ROI決定ボタン
57 90°同期用ROI決定ボタン
61 コントロールパネル
62 心拍同期処理の選択ボタン
63 呼吸同期処理の選択ボタン
64 撮影開始ボタン
65 透視開始ボタン
200 同期用ROI
C 回転中心
L 制御バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の部位の周期運動に同期させてX線の投影データを処理するCT画像処理装置であって、
同期をとろうとする被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIの特定情報を算出するROI算出部を備えることを特徴とするCT画像処理装置。
【請求項2】
前記ROI算出部は、複数の撮影角度の透視データに対して設定された同期用ROIに基づいて、他の撮影角度の投影データに対して同期用ROIの特定情報を算出することを特徴とする請求項1記載のCT画像処理装置。
【請求項3】
前記ROI算出部は、投影データ上のX線照射の回転中心の位置を参照して、前記同期用ROIの位置および形状を算出することを特徴とする請求項2記載のCT画像処理装置。
【請求項4】
前記ROI算出部は、互いのなす角度が90°の2つの撮影角度の投影データに対してそれぞれ設定された同期用ROIに基づいて、他の撮影角度の投影データの同期用ROIを算出していることを特徴とする請求項2または請求項3記載のCT画像処理装置。
【請求項5】
撮影角度と前記同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の呼吸拍の位相区分に各投影データを分類する呼吸同期処理部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のCT画像処理装置。
【請求項6】
前記呼吸同期処理部は、前記同期用ROIの特徴量を撮影角度で微分し、微分値を用いた所定のしきい値を基準に投影データを分類し抽出することを特徴とする請求項5記載のCT画像処理装置。
【請求項7】
前記所定の呼吸拍の位相区分に分類された投影データを、その撮影角度と前記同期用ROIの特徴量との関係に基づいて、所定の心拍の位相区分に分類し抽出する心拍同期処理部を更に備えることを特徴とする請求項5または請求項6記載のCT画像処理装置。
【請求項8】
前記心拍同期処理部は、前記所定の呼吸拍の位相区分に分類された投影データについて、撮影角度に対する前記同期用ROIの特徴量の移動平均値を算出し、前記移動平均値を基準に投影データを分類し抽出することを特徴とする請求項7記載のCT画像処理装置。
【請求項9】
前記所定の呼吸拍または心拍の位相区分に分類された投影データでCT画像データを再構成する画像再構成部を更に備えることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれかに記載のCT画像処理装置。
【請求項10】
前記画像再構成部は、前記投影データの分類により欠落した投影データをその撮影角度付近の投影データで補間して、CT画像を再構成することを特徴とする請求項9記載のCT画像処理装置。
【請求項11】
前記画像再構成部は、撮影角度の近い複数のデータについて平均化された投影データを、平均化された撮影角度に対する投影データとしてCT画像データの再構成に使用することを特徴とする請求項10記載のCT画像処理装置。
【請求項12】
撮影時に、複数の撮影角度の投影データに対して設定された前記同期用ROIを投影データに対応付けて記憶させるROI設定部を更に備えることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載のCT画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータを用いて、被検体の部位の周期運動に同期させてX線の投影データを処理するCT画像処理方法であって、
同期をとろうとする被検体の部位を追跡するように、各撮影角度について同期用ROIの特定情報を算出するステップを実行することを特徴とするCT画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−187350(P2012−187350A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55494(P2011−55494)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000250339)株式会社リガク (206)
【Fターム(参考)】