説明

CTLA−4遮断治療におけるCTLA−4多型の評価

本発明はCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測する方法を提供する。本発明は被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析する工程、及び、上記被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する上記被験体の反応性を予測する工程を包含する。この方法はさらに、上記被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択する工程を包含する。この方法はさらに、選択された治療計画に従って上記被験体に上記CTLA−4遮断薬を投与する工程を包含し得る。CTLA−4遮断薬及び1以上のCTLA−4多型を分析するための手段を含む、所望によりワクチンを含むキットもまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
CTLA−4は元々、マウス細胞傷害性T細胞cDNAライブラリーの示差的スクリーニングにより同定されたT細胞表面分子である(非特許文献1)。CTLA−4は免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーの一員であり、単一の細胞外Igドメインを含む。マウスCTLA−4cDNAに対するヒトの相当物が同定されており(非特許文献2)、この遺伝子はT細胞表面分子CD28と同じ染色体領域(2q33−34)にマップされている(非特許文献3)。CTLA−4及びCD28は相同性を示し、両者ともB細胞表面分子のB7−1及びB7−2に結合することが示されている。CD28Tは細胞の活性化に関し刺激性のある分子であることが立証されている一方、CTLA−4はT細胞活性化の抑制剤として逆の役割を有することが立証されている(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)。
【0002】
例えば、CTLA−4欠損マウスでは異常なまでのリンパ増殖が生じることが報告されている(非特許文献6)。CTLA−4遮断がインビトロ(非特許文献7)及びインビボ(非特許文献8)でT細胞反応性を増大させ、抗腫瘍免疫を激化させ(非特許文献9)、また自己免疫疾患を引き起こす(非特許文献10)ことも報告されている。特許文献1、特許文献2及び特許文献3は、例えば腫瘍を有する被験体における抗腫瘍反応性を増大させるために、抗CTLA−4抗体等のCTLA−4遮断薬を用いて抗原刺激に対する哺乳類T細胞の反応性を増大させる方法を記述する。
【0003】
非ヒトCTLA−4抗体は上述の各種研究において用いられている。さらに、ヒトCTLA−4に対するヒト抗体が記述されている(例えば、特許文献4及び特許文献5)。ヒト抗CTLA−4抗体はヒトにおいて臨床的に使用されており、抗腫瘍反応性等のT細胞反応性を増大させることが示されている(例えば、特許文献6)。抗CTLA−4治療はまた、自己免疫反応を導くことも示されており(例えば、特許文献7)、CTLA−4遮断が自己抗原に対する寛容を打ち破ることができることを示唆する。
【0004】
モノクローナル抗体治療は癌及びその他の疾患の治療において成功裏に用いられており、多数の(キメラ、ヒト化又は完全なヒト)モノクローナル抗体がヒトにおける使用に関しFDAによって認可されている。このような治療の成功が実証されている一方、処置される全ての被験体が、必ずしも抗体治療に対し反応を示す又は望んだ程度の反応を示すとは限らない。したがって、抗体治療の効果を予測し向上させるための方法に非常に関心が持たれている。
【特許文献1】米国特許第5,855,887号明細書
【特許文献2】米国特許第5,811,097号明細書
【特許文献3】米国特許第6,051,227号明細書
【特許文献4】国際公開第01/14424号パンフレット
【特許文献5】国際公開第00/37504号パンフレット
【特許文献6】米国特許出願公開第20040005318号明細書
【特許文献7】国際公開第00/3221号パンフレット
【非特許文献1】Brunetら,Nature,1987年,第328巻,p.267−270
【非特許文献2】Dariavachら,Eur.J.Immunol.,1988年,第18巻,p.1901−1905
【非特許文献3】Lafage−Pochitaloffら,Immuno−genetics,1990年,第31巻,p.198−201
【非特許文献4】Krummelら,J.Exp.Med.,1995年,第182巻,p.459−465
【非特許文献5】Krummelら,Int’l Immunol.,1996年,第8巻,p.519−523
【非特許文献6】Chambersら,Immunity.,1997年,第7巻,p.885−895
【非特許文献7】Walunasら,Immunity.,1994年,第1巻,p.405−413
【非特許文献8】Kearneyら,J.Immunol.,1995年,第155巻,p.1032−1036
【非特許文献9】Leachら,Science,1996年,第271巻,p.1734−1736
【非特許文献10】Luhderら,J Exp.Med.,1998年,第187巻,p.427−432
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の概要)
本発明は、処置される被験体におけるCTLA−4多型を調べることを含む、CTLA−4遮断薬を用いた治療効果を予測し向上させる方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、被験体におけるある種のCTLA−4多型対立遺伝子の存在が、CTLA−4遮断薬を用いた治療への反応性増大又は低減と関連するという観察に基づく。特に、自己免疫疾患に対する感受性増大と関連するCTLA−4多型対立遺伝子は、被験体における自己免疫反応の増大及び腫瘍プログレッションの低減からも明らかなように、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性増大と相関していることが見出されている。対照的に、自己免疫疾患に対する感受性低減と関連するCTLA−4多型対立遺伝子(すなわち、自己免疫疾患に対する感受性を保護する多型対立遺伝子)は、被験体における自己免疫反応の低減及び腫瘍プログレッションの増大からも明らかなように、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性低減と相関していることが見出されている。したがって、CTLA−4遮断薬治療を受けている被験体において、被験体における治療に対する反応性を予測するために、及び/又は適当な治療計画の選択を助けるために、CTLA−4多型を評価することができる。
【0006】
一態様において、本発明は、
被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること:及び、
その被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測すること、
を含む、CTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測する方法に関する。
【0007】
この方法は、被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択することをさらに含む。したがって、別の態様において、本発明は、
被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること:及び、
その被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4を用いた治療計画を選択すること、
を含む、CTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択する方法に関する。
【0008】
この方法は、被験体に対し、例えばその被験体における抗原刺激への反応性を増大させるために(例えば、腫瘍を有している被験体における抗腫瘍免疫を増大させるために)CTLA−4遮断薬を投与することをさらに含み得る。したがって、別の態様において、本発明は、
被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること:及び、
その被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4を用いた治療計画を選択すること:及び、
その被験体において抗原刺激に対する反応性が増大するような上記治療計画に従って、被験体に上記CTLA−4遮断薬を投与すること、
をさらに含む、被験体における抗原刺激に対する反応性を増大させるための方法に関する。
【0009】
本発明の方法において、分析されるCTLA−4多型は、例えば、自己免疫疾患に対する感受性に関連する一塩基多型(SNP)である。分析される好ましいSNPは、JO30 G/A多型である。分析されるその他の好ましいSNPは、CT60 G/A多型、JO31 G/T多型、JO27_1 T/C多型、CTAF343 T/C多型、rs1863800 C/T多型及びMH30 G/C多型である。
【0010】
他の実施形態において、分析されるCTLA−4多型は、CTLA−4エクソン1の49位のA/G多型、CTLA−4プロモーターの−318位のC/T多型、CTLA−4イントロン1の1822位のC/T多型、及びCTLA−4エクソン3のジヌクレオチド(AT)n反復多型からなる群から選択される、自己免疫疾患に対する感受性と関連する多型である。
【0011】
CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性を予測するための本発明の方法において、自己免疫疾患に対する感受性の増大に関連するCTLA−4多型対立遺伝子が上記被験体中に存在する場合には、この被験体は、上記対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性が増大するものと予測される。CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性増大は、抗原刺激に対するT細胞反応性の増大、抗腫瘍活性の増大、自己免疫出現事象(autoimmune breakthrough event)の増大、臨床的有害事象の増大、及び血清学的有害事象の増大からなる群から選択される少なくとも1つの反応を含み得る。
【0012】
CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性を予測するための本発明の方法において、自己免疫疾患に対する感受性の低減に関連するCTLA−4多型対立遺伝子が上記被験体中に存在する場合には、この被験体は、上記対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性が低減していることが予測される。CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性低減は、抗原刺激に対するT細胞反応性の低減、抗腫瘍活性の低減、自己免疫出現事象の低減、臨床的有害事象の低減、及び血清学的有害事象の現象からなる群から選択される少なくとも1つの反応を含み得る。
【0013】
CTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択するための好ましい方法においては、被験体はJO30 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)を発現し、選択されるこの治療計画は標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である。別の実施形態においては、被験体はCT60 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される治療計画は標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である。縮小された治療計画の例としては、標準的治療計画と比較して、より低投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より低頻度の上記CTLA−4遮断薬の投与、又はより短期間の上記CTLA−4遮断薬による治療期間を含む。
【0014】
CTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択するためのその他の好ましい方法においては、被験体はJO30 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)を発現し、選択されるこの治療計画は標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である。別の実施形態においては、被験体はJO30 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、CT60 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される治療計画は標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である。拡大された治療計画の例としては、標準的治療計画と比較して、より高投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より高頻度の上記CTLA−4遮断薬の投与、又はより長期間の上記CTLA−4遮断薬による治療期間を含む。
【0015】
本発明の方法において、CTLA−4多型は、好適な公知の技法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応−制限断片長多型(PCR−RFLP)分析により分析することができる。
【0016】
好ましいCTLA−4遮断薬は、キメラ、ヒト化又はヒト抗CTLA−4モノクローナル抗体等の抗CTLA−4モノクローナル抗体である。CTLA−4遮断薬のその他の例としては、CTLA−4に結合するアプタマー、CTLA−4の発現を低減させるアンチセンス物質、及びCTLA−4に結合する可溶性ペプチド又はタンパク質リガンドが挙げられる。
【0017】
本発明の方法に従い処置される好ましい被験体はヒト被験体である。
【0018】
本発明のその他の態様は、
CTLA−4遮断薬;及び、
1以上のCTLA−4多型を分析するための手段、
を含むキットに関する。
【0019】
好ましい遮断薬は、キメラ、ヒト化又はヒト抗CTLA−4モノクローナル抗体等の抗CTLA−4モノクローナル抗体である。好ましくは、1以上のCTLA−4多型を分析する手段は、その多型に特異的な1以上のポリヌクレオチドを含む。
【0020】
一実施形態において、キットは、腫瘍抗原又はGM−CSFを分泌するように形質導入された腫瘍細胞等のワクチンをさらに含む。腫瘍抗原の例としては、gp100ペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)又は、1)gp100ペプチド、2)MART−1ペプチド及び3)チロシナーゼペプチドを含む組成物が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、治療被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の発現に基づく、CTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測する方法、及び、CTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択する方法を提供する。本発明は、少なくとも部分的には、被験体における特定のCTLA−4多型対立遺伝子の存在がCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する反応性の増大又は低減と関連するという知見に基づいている(実施例1参照)。特に、被験体における自己免疫反応の増大及び疾患進行の低減からも明らかなように、自己免疫疾患に対する感受性の増大と関連するCTLA−4多型対立遺伝子は、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性の増大と相関することが見出されている。対照的に、被験体における自己免疫反応の低減及び疾患進行の増大からも明らかなように、自己免疫疾患に対する感受性の低減と関連するCTLA−4多型対立遺伝子(すなわち、自己免疫疾患に対する感受性にとって保護的な多型対立遺伝子)は、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性の低減と相関することが見出されている。したがって、治療に対する被験体の反応性を予測するために、且つ/又は適当な治療計画の選択に役立てるために、CTLA−4遮断薬治療を受けている被験体において、CTLA−4多型を評価することができる。
【0022】
本発明をより容易に理解し得るために、特定の用語がまず初めに定義される。さらなる定義は、詳細な説明を通じて示される。
【0023】
用語「Tリンパ球関連抗原−4」、「CTLA−4」、「CTLA4」、「CTLA−4抗原」及び「CD152」は同義的に使用され、同一のタンパク質を意味する。ヒトCTLA−4タンパク質をコードする完全cDNA配列はGenbank寄託番号L15006を有する。マウスCTLA−4タンパク質をコードする完全cDNA配列はGenbank寄託番号NM_009843を有する。
【0024】
用語「免疫反応」は、侵入病原体、病原体に感染した細胞若しくは組織、癌性細胞、又は、自己免疫若しくは病原性炎症の場合には正常なヒト細胞若しくは組織に対し、選択的傷害、破壊、又は人体からの排除をもたらす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球、及び上記細胞又は肝臓によって産生される可溶性巨大分子(抗体、サイトカイン、及び補体等)の作用を意味する。
【0025】
用語「CTLA−4遮断」は、免疫反応性がアップレギュレートされるようなCTLA−4の免疫阻害効果の妨害又は阻害を意味することが意図される。用語「CTLA−4遮断薬」は、免疫反応性がアップレギュレートされるように、CTLA−4の免疫阻害効果の破壊又は阻害し得る物質を意味することが意図される。
【0026】
本明細書中において言及される用語「抗体」は、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその一本鎖を含む。「抗体」は、ジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を意味する。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書中においてはVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書中においてはVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CL1を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存的な領域が組み入れられている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へと、さらに細かく分けられ得る。各VH及びVLは、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並ぶ、3つのCDR及び4つのFRから構成されている。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域が、各種免疫系細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系第1成分(CIq)等の宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を介在し得る。
【0027】
本明細書中で使用する時、抗体における「抗原結合部分」(又は単純に「抗体部分」)の用語は、抗原(例えば、EP−10)と特異的に結合する能力を保持する抗体の1以上の断片を意味する。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって機能され得ることが示されている。抗体の「抗原結合部分」の用語に包含される結合断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価の断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド結合によって連結されている2つのFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単腕のVL及びVHドメインからなるFv断片;(v)VHドメインからなるdAb断片(Wardら,(1989)Nature 341:544−546);及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別々の遺伝子によってコードされているが、それらをVL及びVH領域の対が一価の分子を形成している単一タンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;及びHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)として産生し得る合成リンカーによる組み換え方法を用いて両者を結合することができる。このような単一鎖抗体も、抗体における「抗原結合部分」の用語内に包含されることが意図される。これらの抗体断片は当業者に知られている通常の技法を用いて得られ、それらの断片は完全抗体と同様に有用性についてスクリーニングされる。
【0028】
本明細書中で使用する時、用語「モノクローナル抗体」又は「モノクローナル抗体組成物」は、単一分子組成物からなる抗体分子調製物を意味する。モノクローナル抗体組成物は、単一の結合特異性及び特定のエピトープに対する親和性を示す。
【0029】
本明細書中で使用する時、用語「ヒト抗体」は、フレームワーク及びCDR領域がいずれもヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を意味することが意図される。さらに、この抗体が定常領域を含む場合、この定常領域もまたヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダム若しくは部位特異的突然変異誘発又はインビボにおける体細胞変異によって導入された突然変異体)を含んでもよい。
【0030】
用語「ヒトモノクローナル抗体」は、フレームワーク及びCDR領域の両者がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体を意味する。一実施形態において、ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物、例えば、不死化細胞と融合させたヒト重鎖トランスジーン及び軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウス由来のB細胞を含むハイブリドーマによって産生される。本明細書中で使用する時、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、手段によって調製、発現、作製又は単離される全てのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子をトランスジェニック又はトランスクロモソームされた動物(例えば、マウス)又はそこから調製されたハイブリドーマから単離された抗体(以下にさらに記載)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えば、トランスフェクトーマから、単離された抗体、(c)組み換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、及び、(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列からその他のDNA配列へのスプライシングを伴ういずれかのその他の手段により調製、発現、作製又は単離された抗体を含む。このような組み換えヒト抗体は、フレームワーク及びCDR領域がヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する。しかしながら、特定の実施形態においては、このような組み換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対するトランスジェニック動物を使用するときには、インビボ体細胞変異誘発)を受け得るので、組み換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列に由来し、関連する一方で、インビボにおいてはヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在しない場合もある。
【0031】
用語「ヒト化抗体」は、別の哺乳類種、例えば、マウスに由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を意味することが意図されている。さらなるフレームワーク領域修飾がヒトフレームワーク配列内に行われてもよい。
【0032】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を意味することが意図される。
【0033】
本明細書中で使用する時、用語「被験体」は、ヒト及びCTLA−4遮断薬治療に適している非ヒト動物、例えば、好ましくは、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ及びウシ等の哺乳類を含む。
【0034】
本発明の各種の態様は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記述される。
【0035】
(CTLA−4多型)
グレーブス病、自己免疫性甲状腺機能低下症(AIH)及び1型糖尿病(T1D)等の自己免疫疾患に対する感受性は、6.1kbのCTLA−4の非コード3’領域に位置されている(Ueda,H.ら(2003;Nature 423:506−511。補足情報A及びBを含むその全内容は、参照により本明細書中に具体的に組み入れるものとする)。7つの一塩基ヌクレオチド多型(SNP)が自己免疫疾患に対する感受性と最も緊密に関連しているとして同定された。これらのマーカーは、CT60、JO30、JO31、JO27_1、CTAF343、rs1863800及びMH30多型であり、実施例2においてさらに詳細に記述されている。
【0036】
CT60 G/A多型に対して、G対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、A対立遺伝子は保護的である(すなわち、「保護的な」対立遺伝子は自己免疫のリスク増大と関連しない)。
【0037】
JO30 G/A多型に対して、G対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、A対立遺伝子は保護的である。
【0038】
JO31 G/T多型に対して、G対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、T対立遺伝子は保護的である。
【0039】
JO27_1 T/C多型に対して、T対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、C対立遺伝子は保護的である。
【0040】
CTAF343 T/C多型に対して、T対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、C対立遺伝子は保護的である。
【0041】
rs1863800 C/T多型に対して、C対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、T対立遺伝子は保護的である。
【0042】
MH30 G/C多型に対して、G対立遺伝子は自己免疫に対する感受性と相関しており、C対立遺伝子は保護的である。
【0043】
本発明での使用のためのその他の好ましいCTLA−4多型はJ033 G/A多型であり、この多型においては、G対立遺伝子が自己免疫に対する感受性と相関しており、C対立遺伝子は保護的である(実施例1参照)。
【0044】
その他のCTLA−4多型が、様々な自己免疫疾患に対する感受性と関連することが報告されている。これらの例としては:
1)CTLA−4エクソン1 49位 A/G多型、この多型においては、G対立遺伝子が自己免疫に対する感受性と相関しており、A対立遺伝子は「保護的」である(例えば、Dormer,H.ら(1997)J.Clin.Endocrinol.Metab.82:4130−4132;Kouki,T.ら(2000)J.Immunol.165:6606−6611;Rau,H.ら(2001)J.Clin.Endocrinol.Metab.86:653−655参照);
2)CTLA−4プロモーター −318位 C/T多型、この多型においては、C対立遺伝子が自己免疫に対する感受性と相関しており、T対立遺伝子は「保護的」である(例えば、Park,YJ.ら(2000)Thyroid 10:453−459参照);
3)CTLA−4イントロン1 1822位 C/T多型、この多型においては、T対立遺伝子が自己免疫に対する感受性と相関しており、C対立遺伝子は「保護的」である(例えば、Vaidya,B.ら(2003)Clin.Endocrinol.58:732−735);及び
4)CTLA−4エクソン3 ジヌクレオチド(AT)n反復多型、この多型においては、106塩基対の対立遺伝子が自己免疫に対する感受性と相関している(例えば、Kotsa,K.ら(1997)Clin.Endocrinol.46:551−554;Kemp,E.H.ら(1998)Clin.Endocrinol.49:609−613参照)が挙げられる。
【0045】
上記のUedaらの研究は、これら4つの多型のいずれもが自己免疫感受性増大の原因となる変異ではなく、したがって、これらのマーカーとの何らかの相関は連鎖不均衡によるものであることを報告しているが、これらのマーカーが本発明の方法での使用に適し得るにも関わらず、JO30、CT60、JO31、JO27_1、CTAF343、rs1863800及びMH30多型は、自己免疫感受性とのそれらのより密接な相関により使用するのにより好ましい。分析するのに特に好ましい多型は、実施例1に記載されている、JO30多型である。
【0046】
機序により限定されることを意図するものではないけれども、Uedaらは、疾患に保護的なハプロタイプからの可溶性スプライシング変異形態のCTLA−4(sCTLA−4)のmRNAレベルが、疾患に影響を受けやすいハプロタイプからのsCTLA−4のmRNAレベルよりも高いことを報告している(Uedaら、前出)。したがって、本明細書中で記載されている多型の他に、本発明での使用に適し得るその他のCTLA−4多型としては、その多型が自己免疫感受性と相関することが示されているか否かに関わらず、sCTLA−4のmRNAレベルの低下と関連する多型が挙げられる。
【0047】
(CTLA−4多型の分析)
CTLA−4多型は、遺伝的多型を評価するための当技術分野において知られるいずれかの適当な技法を用いて、本発明の方法において分析し得る。例えば、多型を評価するための標準的方法は、ポリメラーゼ連鎖反応−制限断片長多型(PCR−RFLP)による。多数の一塩基ヌクレオチド多型(SNP)を迅速、効率的且つ正確にタイピングするために、Invader(登録商標)テクノロジーを使用し得る(Mein,C.ら(2000)Genome Research 10:330−343中にさらに記載されており、文献の内容は参照により本明細書中に明確に組み入れるものとする)。あるいは、SNPは、Perrey,C.ら(1999)Transplant Immunol.7:127−128に記載されているような増幅不応変異システム−ポリメラーゼ連鎖反応(ARMS−PCR)技法を用いて評価し得る。ジヌクレオチド反復多型、例えば、CTLA−4のエクソン3における(AT)n反復は、例えば、Polymorphisms,M.H.ら(1991)Nucl.Acids Res.19:4018に記載されている方法によって評価し得る。
【0048】
(CTLA−4遮断療法に対する反応性の予測)
実施例1においてさらに論じられるように、CTLA−4多型対立遺伝子の存在と自己免疫に対する感受性の増大及びCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する反応性の増大との間の相関が示されている。したがって、本発明は、
被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること;及び
被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測すること、を含む、CTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測する方法を提供する。
【0049】
本発明の予測方法において、自己免疫疾患に対する感受性の増大に関連するCTLA−4多型対立遺伝子が被験体中に存在する時、上記被験体は、この対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性が増大するものと予測される。CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性の増大は、抗原刺激に対するT細胞反応性の増大、抗腫瘍活性の増大、自己免疫出現事象の増大、臨床的有害事象の増大、及び血清学的有害事象の増大からなる群から選択される、少なくとも1つの反応を含み得る。
【0050】
本発明の予測方法において、自己免疫疾患に対する感受性の低減に関連するCTLA−4多型対立遺伝子(例えば、「保護的」対立遺伝子)が被験体中に存在する時、上記被験体は、この対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性が低減していることが予測される。CTLA−4遮断薬による治療に対する反応性の低減は、抗原刺激に対するT細胞反応性の低減、抗腫瘍活性の低減、自己免疫出現事象の低減、臨床的有害事象の低減、及び血清学的有害事象の低減からなる群から選択される、少なくとも1つの反応性を含み得る。
【0051】
(CTLA−4遮断薬治療計画の選択)
被験体における特定のCTLA−4多型対立遺伝子の有無が、CTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性に影響を与えるという知見が得られているので、特定のCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいて、被験体のための適当な治療計画を選択し得る。したがって、本発明は、被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること、及び、被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択すること、を含む、CTLA−4遮断薬を用いた治療のための治療計画を選択する方法を提供する。
【0052】
選択される治療計画は、例えば、標準的治療計画と比較して縮小された治療計画、又は、標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である。「標準的治療計画」は、被験体が治療前にCTLA−4多型についてスクリーニングされていなかった場合に被験体のために選択され得る処方計画であり、特定のCTLA−4多型対立遺伝子を有する特定の患者群における使用に限定されない当技術分野で認められた(例えば、FDAに認可された)治療計画を含む。
【0053】
自己免疫疾患に対する感受性と関連するCTLA−4多型対立遺伝子の存在がCTLA−4遮断薬治療に対する反応性の増大と相関することが示されていることから、自己免疫関連CTLA−4多型対立遺伝子を有する被験体のためには縮小された治療計画が選択され得る。この縮小された治療計画は、所望の免疫反応性(例えば、抗腫瘍免疫)の刺激への有効性を維持しながら、自己免疫が急進展する事象の程度、重篤度又は継続期間を低減させるために、被験体にとって好ましくあり得る。縮小された治療計画は、標準的治療計画と比較して、より低投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より低頻度のCTLA−4遮断薬の投与、又はより短期間のCTLA−4遮断薬による治療期間を含み得る。
【0054】
例えば、標準的治療計画が3mg/kgの物質の使用を含む場合、縮小された治療計画は3mg/kgより少ない、例えば、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg又は0.1mg/kgの物質の使用を含み得る。あるいは、標準的治療計画が5mg/kgの物質の使用を含む場合、縮小された治療計画は5mg/kgより少ない、例えば、4mg/kg、3mg/kg、2mg/kg、1mg/kg、0.5mg/kg又は0.1mg/kgの物質の使用を含み得る。
【0055】
あるいは、標準的治療計画が1mg/kgの物質の使用を含む場合、縮小された治療計画は1mg/kgより少ない、例えば、0.5mg/kg又は0.1mg/kgの物質の使用を含み得る。さらに、例えば、標準的治療計画が4週間毎の物質の投与を含む場合、縮小された治療計画はより頻度の少ない、例えば、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎又は12週間毎の投与を含み得る。
【0056】
あるいは、標準的治療計画が2週間毎の物質の投与を含む場合、縮小された治療計画はより頻度の少ない、例えば、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎又は12週間毎の投与を含み得る。また例えば、標準的治療計画が12ヶ月の期間の物質による治療を含む場合、縮小された治療計画は、より短い期間、例えば、3ヶ月、6ヶ月又は9ヶ月間の治療を含み得る。あるいは、標準的治療計画が6ヶ月の期間の物質による治療を含む場合、縮小された治療計画は、より短い期間、例えば、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月又は5ヶ月間の治療を含み得る。
【0057】
CTLA−4遮断薬を用いる治療のための治療計画を選択する好ましい方法において、被験体はJO30 G/A多型において2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)を発現し、選択される治療計画は標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である。別の実施形態において、被験体は、CT60 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される治療計画が標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である。
【0058】
別の実施形態においては、自己免疫に対するリスクの低減と関連するCTLA−4多型対立遺伝子の存在がCTLA−4遮断薬治療に対する反応性の低減と相関することが示されていることから、自己免疫に対して保護的なCTLA−4多型対立遺伝子を有する被験体のために拡大された治療計画が選択され得る。この拡大された治療計画は、CTLA−4阻害治療の有効性を向上させるため及び免疫反応性(例えば、抗腫瘍免疫)の所望の活性化を達成するために、被験体にとって好ましく又は必要であり得、なぜならば、(これらの被験体における自己免疫が急進展する事象の低減からも明らかなように)これらの被験体は免疫寛容の進展に対してより抵抗性を示し得る場合があるからである。拡大された治療計画は、標準的治療計画と比較して、より高投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より高頻度の上記CTLA−4遮断薬の投与、又はより長期間の上記CTLA−4遮断薬による治療期間を含み得る。
【0059】
例えば、標準的治療計画が3mg/kgの物質の使用を含む場合、拡大された治療計画は3mg/kgより多い、例えば、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg又は10mg/kgの物質の使用を含み得る。あるいは、標準的治療計画が1mg/kgの物質の使用を含む場合、拡大された治療計画は1mg/kgより多い、例えば、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg又は10mg/kgの物質の使用を含み得る。
【0060】
また例えば、標準的治療計画が4週間毎の物質の投与を含む場合、拡大された治療計画はより頻繁な、例えば、3週間毎、2週間毎又は1週間毎の投与を含み得る。あるいは、標準的治療計画が3ヶ月毎の物質の投与を含む場合、拡大された治療計画はより頻繁な、例えば、2ヶ月毎、1ヶ月毎、4週間毎、3週間毎、2週間毎又は1週間毎の投与を含み得る。
【0061】
また例えば、標準的治療計画が9ヶ月の期間の物質による治療を含む場合、拡大された治療計画は、より長い期間、例えば、10ヶ月、11ヶ月、12ヶ月、15ヶ月又は18ヶ月間の治療を含み得る。あるいは、標準的治療計画が6ヶ月の期間の物質による治療を含む場合、拡大された治療計画は、より長い期間、例えば、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月、10ヶ月11ヶ月、12ヶ月、15ヶ月又は18ヶ月間の治療を含み得る。
【0062】
CTLA−4遮断薬を用いる治療のための治療計画を選択する別の好ましい方法において、被験体はJO30 G/A多型において2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)を発現し、選択される治療計画は標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である。別の実施形態において、被験体は、CT60 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのG対立遺伝子(T/T遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのT対立遺伝子(C/C遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される治療計画が標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である。
【0063】
(CTLA−4遮断薬の投与)
一旦、適当な治療計画がCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいて被験体のために選択されたならば、被験体における抗原刺激に対する反応性を増大させるためにCTLA−4遮断薬が投与され得る。したがって、別の態様において、本発明は、被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析すること;被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいて、CTLA−4遮断薬による治療計画を選択すること;及び、被験体において抗原刺激に対する反応性が増大されるような治療計画にしたがって、被験体へCTLA−4遮断薬を投与すること;を含む、被験体において抗原刺激に対する反応性を増大させるための方法に関する。
【0064】
抗原刺激に対する反応性を増大させるための本発明の方法は、例えば、腫瘍を有する被験体において抗腫瘍免疫を増大させるため、細菌感染を示す被験体において抗細菌免疫を増大させるため、ウィルス感染を示す被験体において抗ウィルス活性を増大させるため、又は、病原体感染の予防的手段としてワクチン接種される被験体においてワクチン接種の効力を増大させるために、抗原反応性の増大が望ましい任意の臨床的適応又は状況において使用し得る。
【0065】
免疫反応性に対するCTLA−4のダウンレギュレート的効果を妨害又は阻害する任意のCTLA−4遮断薬が当該方法において使用し得る。好ましいCTLA−4遮断薬は、抗CTLA−4モノクローナル抗体、例えば、ヒト、ヒト化又はキメラモノクローナル抗体である。ヒト抗CTLA−4モノクローナル抗体は当技術分野において知られている。例えば、CTLA−4と結合する完全ヒト抗体の調製及び構造特性決定が、例えば、国際公開第01/14424号、国際公開第00/37504号及び米国特許第6,682,736号に詳細に記述されている。好ましい抗CTLA−4ヒトモノクローナル抗体はMDX−010(10D1としても知られている)であり、その構造は国際公開第01/14424号に記載されている。非ヒト抗CTLA−4抗体、例えば、マウス抗体、も当技術分野において知られている(例えば、Linsely,P.S.(1992)J.Exp.Med.176:1595−1604参照)。このような非ヒト抗CTLA−4抗体の可変領域、及びその中のCDR領域は、当技術分野において十分に確立されている技法を用いて、キメラ及びヒト化抗体を調製するために使用し得る。
【0066】
別のタイプのCTLA−4遮断薬はRNAアダプタマーである。インビトロにおいてCTLA−4の機能を阻害し、インビボにおいて腫瘍免疫を促進する、CTLA−4と高いアフィニティーで結合する多価アダプタマーは、記述されており(Santulli−Marotto,S.ら(2003)Cancer Res.63:7483−7489)、又、本発明の方法における治療に使用され得る。
【0067】
その他のタイプのCTLA−4遮断薬としては、CTLA−4の発現を低減させるアンチセンス物質、CTLA−4と結合してその活性を阻害するCTLA−4リガンド由来ペプチド(例えば、B7−1又はB7−2ペプチド)、並びに、CTLA−4の活性を阻害するために選択される小分子阻害物質が挙げられる。
【0068】
被験体への投与のために、CTLA−4遮断薬は通常、CTLA−4遮断薬及び薬学上許容し得る担体を含有する医薬組成物に製剤化される。治療組成物は通常、製造及び保存条件下で無菌及び安定でなければならない。本発明の医薬組成物は、組み合わせ治療として、すなわち、その他のCTLA−4遮断薬、その他の治療薬(例えば、腫瘍の治療のための化学治療薬)及び免疫反応性の増大が望まれる抗原を含むワクチンと組み合わせて投与し得る。
【0069】
本明細書中で使用する時、「薬学上許容し得る担体」は、生理学的に適合し得る任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗体及び抗菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等を含む。好ましくは、担体は、(例えば、注射又は注入による)静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄内又は表皮への投与に適している。投与経路に応じて、活性化合物は、酸の作用及び活性化合物を不活性化し得るその他の自然の条件から活性化合物を保護する物質中で活性化合物をコーティングし得る。
【0070】
本発明の医薬化合物は1以上の薬学的に許容し得る塩を含んでいてもよい。「薬学的に許容し得る塩」とは、親化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない任意の毒性効果を与えない塩を意味する(例えば、Berge,S.M.,ら(1977)J.Pharm.Sd.66:1−19参照)。そのような塩の例としては、酸付加塩及び塩基付加塩が挙げられる。酸付加塩としては、非毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜リン酸等、に由来するもの、並びに、非毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等、に由来するものが挙げられる。塩基付加塩としては、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等、に由来するもの、並びに、非毒性の有機アミン類、例えば、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N−メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカイン等に由来するものが挙げられる。
【0071】
本発明の医薬組成物はまた、薬学的に許容し得る抗酸化剤を含んでいてもよい。薬学的に許容し得る抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等;(2)油溶性抗酸化剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ・トコフェロール等;(3)クエン酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤が挙げられる。
【0072】
本発明の医薬組成物中に使用し得る適当な水性及び非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びそれらの適当な混合物、オリーブ油等の植物油、並びに、オレイン酸エチル等の注射可能な有機エステル類が挙げられる。レシチン等のコーティング物質の使用により、分散状態において必要とされる粒径の維持により、及び、界面活性剤の使用により、適当な流動性が維持され得る。
【0073】
これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤等のアジュバントを含んでいてもよい。微生物の存在の防止は、前出の滅菌手順、並びに各種抗体及び、例えば、パラベン、クロロブタノール、ソルビン酸フェノール等の抗菌剤を含有させることの両方により保証され得る。糖類、塩化ナトリウム等の等張物質を組成物中に含有させることが望ましい場合もある。さらに、注射可能な医薬形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン等の吸収を遅くする物質を含有させることによりもたらせ得る。
【0074】
薬学的に許容し得る担体としては、無菌の水性の溶液又は分散液、及び無菌注射溶液又は分散液の即時調製のための無菌粉末が挙げられる。薬学的に活性な物質に対するこのような媒体及び物質の使用は当技術分野において知られている。任意の通常の媒体又は物質は活性化合物と適合し得ない場合を除き、本発明の医薬組成物中でのその使用が意図される。補助的な活性化合物もまた組成物中に組み入れることができる。
【0075】
本発明の物質は、当技術分野において知られている様々な方法の1以上を用いて、1以上の投与経路を介して投与することができる。当業者には明らかなように、投与経路及び/又は様式は所望の結果に応じて変化し得る。特に、抗体物質のための好ましい投与経路は、静脈注射又は注入である。その他の好ましい投与経路としては、筋肉内、皮内、腹腔内、皮下、脊髄、又は、例えば、注射若しくは注入によるその他の非経口的投与経路が挙げられる。本明細書中で使用する時、「非経口的投与」という表現は、通常は注射による、経腸及び局所以外の投与様式、を意味し、限定するものではないが、例として、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心腔内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外及び胸骨内注射及び注入が挙げられる。あるいは、本発明の物質は、非経口でない経路、例えば、鼻腔内、経口、経膣、経直腸、舌下若しくは局所等の局所的、表皮的又は粘膜的投与経路を介して投与され得る。
【0076】
治療計画がCTLA−4遮断薬以外の1以上のさらなる物質の使用を含む組み合わせ治療においても、CTLA−4遮断薬が使用され得る。組み合わせ治療のための好ましいさらなる物質は、免疫反応性の増大が望まれる抗原を含むワクチンである。例えば、腫瘍の治療のために、CTLA−4遮断薬を用いる治療は、腫瘍抗原を含有する腫瘍ワクチンを用いる治療と組み合わせることができる。腫瘍抗原の非限定的例としては、腫瘍細胞及びGM−CSFを分泌するように形質導入された腫瘍細胞において優先的に発現されるタンパク質由来の精製ペプチドが挙げられる。非限定的な腫瘍抗原の具体例としては、gp100ペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、又は、1)gp100ペプチド、2)MART−1ペプチド及び3)チロシナーゼペプチドを含む組成物が挙げられる。
【0077】
その他の形態の組み合わせ治療としては、被験体の腫瘍の治療における1以上の化学治療薬とCTLA−4遮断薬の投与又は被験体の細菌若しくはウィルス感染の治療における1以上の抗体若しくは抗ウィルス薬の投与が挙げられる。
【0078】
(本発明のキット)
本発明はまた、本発明の方法を実施する際に使用し得るキットを提供する。キットは、CTLA−4遮断薬、及び、1以上のCTLA−4多型を分析するための手段を含むことができる。
【0079】
好ましい遮断薬は、抗CTLA−4モノクローナル抗体、例えば、キメラ、ヒト化又はヒト抗CTLA−4モノクローナル抗体である。その他の遮断薬としては、前述のセクションにおいて記載されたものが挙げられる。
【0080】
好ましくは、1以上のCTLA−4多型を分析するための手段は、その多型に特異的な1以上のポリヌクレオチドを含む。この多型を分析するための手段は、例えば、多型を評価するアッセイで使用するためのバッファー又はその他の試薬及び多型を評価するアッセイを実行するための印刷された説明書も含むことができる。
【0081】
一実施形態において、キットはワクチンをさらに含むことができる。ワクチンはCTLA−4阻害治療を用いて免疫反応性が刺激され得る抗原、例えば、腫瘍抗原、細菌抗原又はウィルス抗原を含むことができる。腫瘍抗原の非限定的例としては、腫瘍細胞及びGM−CSFを分泌するように形質導入された腫瘍細胞において優先的に発現されるタンパク質からの精製ペプチドが挙げられる。非限定的な腫瘍抗原の具体例としては、gp100ペプチド、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、又は、1)gp100ペプチド、2)MART−1ペプチド及び3)チロシナーゼペプチドを含む組成物が挙げられる。
【0082】
本発明は、さらなる限定として解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本願の全体にわたって引用されている全ての参考文献、特許及び公開された特許出願は、参照により本明細書中に明確に組み入れられる。
【実施例】
【0083】
(実施例1:CTLA−4遮断薬治療に対する反応性増大と自己免疫疾患に関連したCTLA−4多型の存在との相関)
この実施例においては、進行した黒色腫を有するヒト患者をCTLA−4遮断薬(抗CTLA−4ヒトモノクローナル抗体MDX−010)及び3種の黒色腫抗原ペプチド(gp100、チロシナーゼ、MART−1)を含有するペプチドワクチンにより処置する臨床試験を実施した。ワクチンを伴う抗体の毒性及び最大耐量(MTD)をまず評価するために、3群のそれぞれに、ワクチンを伴う抗体の投与量を段階的に増やして投与した。MDX−010の薬物動態及び免疫反応性は副次的評価項目とした。
【0084】
抗CTLA−4治療に対する反応性を調べ、患者を自己免疫疾患に対する感受性に関連するCTLA−4JO30 G/A多型についてスクリーニングした。その結果は、疾患に関連するG/G遺伝子型の存在と、臨床毒性の発生率増大及び疾患進行率低減との間の相関を立証する。対照的に、保護的A対立遺伝子(A/A遺伝子型又はA/G遺伝子型)を有する患者は、臨床毒性の低減(A/A遺伝子型で最も低い毒性を呈する)及び疾患の進行率の増大(A/A遺伝子型遺伝子型で最大の進行を呈する)を呈した。この結果は、自己免疫疾患と関連するG/G多型の存在が、自己免疫の増大及び腫瘍進行の低減からも明らかなように、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性の増大と相関することを示唆する。対照的に、自己免疫疾患に対し保護的なA/A多型の存在は、自己免疫事象の低減(遮断薬が寛容の破綻においてはあまり効果がないことを示唆する)及び腫瘍進行の増大からも明らかなように、CTLA−4遮断薬治療に対する反応性の低減と相関することを示唆する。
【0085】
本研究における材料及び方法及び得られた結果を、以下に詳述する。
【0086】
(材料及び方法)
(患者)
患者は2001年に改変された対癌米国合同委員会のステージ進行システムによるステージIII又はIVの黒色腫を切除しており、外科的には疾患がない状態であった。彼らは治療4週間以内に行われた脳の核磁気共鳴映像撮影又はコンピュータ断層撮影スキャニング及び胸部、腹部及び骨盤のコンピュータ断層撮影スキャニングを受けており、疾患の徴候はなんら示されていなかった。適格性の基準には、年齢が18歳以上、クレアチニンが2.0mg/dl以下、ビリルビンが2.0mg/dl以下、血小板数が100,000/mcl以上、ヘモグロビンが9g/dl以上、及び総WBCが3000/mcl以上であることを含めた。ヒト免疫不全ウィルス、C型肝炎抗体及びB型肝炎表面抗原滴定は陰性であることを必須とした。全ての患者はDNAポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析によりHLA−A0201陽性であった。除外の基準には、活性な自己免疫疾患、ステロイド依存性及びMDX−010抗体又はMART−1、gp100及びチロシナーゼペプチドによる事前処置を含めた。
【0087】
(抗体材料)
MDX−010(抗CTLA4モノクローナル抗体)は完全ヒト免疫グロブリン(IgG)抗CTLA4モノクローナル抗体である。これは5又は10ml入りのバイアル中に5mg/mlの濃度で供給され、2℃〜8℃の温度で保管された。0.22μMのフィルターを通過させてMDX−010を取り出し、生理食塩水中に2.5mg/mlの濃度となるよう希釈して、90分間にわたり投与した。
【0088】
(ペプチドワクチン材料)
チロシナーゼ368−376(370D)ペプチド[NSC#699048]、MART−126−35(27L)ペプチド[NSC#709401]、及びgp100209−217(210M)ペプチド、[NSC#683472]HLA−A0201拘束性9又は10アミノ酸エピトープペプチドをGMPグレードで調製し、上述のように投与した(Pullarkatら(2003)Clin.Cancer Res.4:1301−1312)。それらはBen Venue Laboratories,Inc.(Bedford,OH)より供給された。
【0089】
Montanide ISA−51(不完全フロイントアジュバント又はIFAとしても知られている)はSeppic,Inc.,(Franklin Lakes,NJ)により製造され、CTEP/NCIにより、保存剤を含まない滅菌アジュバント溶液3mlが入ったガラス製アンプルで供給された。
【0090】
(治療計画)
MDX−010を、4週毎に6ヶ月間、次いで12週毎に6ヶ月間、90分間にわたり静脈内投与した。抗体の注入は、1回あたり不完全フロイントアジュバント(Montanide ISA 51)中にエマルジョン化した1mgの各ペプチドを3回に分けて皮下注射するものとした。患者群はMDX−010を0.3、1.0又は3.0mg/kg注射され、次いでチロシナーゼ368−376(370D)、gp100209−217(210M)及びMART−126−35(27L)ペプチドの皮下注射を受けた。
【0091】
免疫分析のための末梢血液単核細胞を得るため、最初のワクチン接種直前及び接種6ヶ月後に、5〜7リットルの交換による白血球分離採血法手順を実行した。患者を再発まで追跡した。
【0092】
分離したサンプルを上述のように、PBMCを精製するために処理し、−168℃で凍結した(Leeら(200I)J.Clin.Oncol.19:3836−3847)。
【0093】
(試験評価項目)
試験の主たる評価項目は、MDX−010処置における副作用及び耐性の判断及び、ワクチン投与計画と共に投与されたときのMDX−010最大耐量(MTD)の決定である。2次的な評価項目は、MDX−010の薬物動態及びMDX−010を伴うワクチンに対する免疫反応性を含む。
【0094】
(ELISPOT及びテトラマー分析)
PBMCを解凍し、一晩培養後、上述のように設定したELISPOT分析において試験した(Pullarkatら、前出)。メンブレンプレート(MAHA S45−10、ミリポア、Bedford,MA)については、1次抗γ−インターフェロン抗体(MabTech,Nacka,スウェーデン)を添加し、冷蔵庫中に一晩置くことによって準備した。翌日、プレートを洗浄し、ブロッキング緩衝液(10%のヒトAB血清を含むAIM−V培地)と共に少なくとも1時間、37℃でインキュベートした。PBMCを、3連で、総容量100μl中、ウェルあたり166,000、83,000及び41,500細胞となるように添加した。陽性対照として10μg/mlのPHAを6つのウェルに添加し、陰性対照としてAIM−V培地を添加した。ペプチドを次いで全てのその他のウェルに5μg/mlで添加した。次いでプレートを5%のCOインキュベーター中で4時間、37℃インキュベートし、次いで洗浄した。次に2次抗体(MabTech)を1mg/mlで添加した。このプレートを4℃で一晩インキュベートし、洗浄後に水滴を取り、1%のBSA(Sigma)と共にストレプトアビジン/アルカリホスファターゼ(MabTech)を添加した。BCIP/NBT(Kirkegaard & Perry,Gaithersburg,MD)を添加し、現像のためプレートを暗所でインキュベートした。次いで流水で洗浄することにより比色反応を停止した。処理後、KS Elispot reader(Carl Zeiss,Thornwood,NY)上で、ELISPOTプレートを読み取った。値をCD8 T細胞100,000個あたりのスポット数に標準化した。陰性対照は、特徴として幾何平均値が10細胞あたり10スポット未満であるHPV E7 86−93 A0201拘束性ペプチドを含むものとした。分析は置換gp100209−217(210M)、MART−126−35(27L)及びチロシナーゼ368−376(370D)、ならびに野生型gp100209−217及びMART−127−35ペプチドの両方を用いて実行した。
【0095】
分析に用いるための、gp100209−217(210M)、MART−126−35(27L)及びチロシナーゼ368−376(370D)ペプチドを含むテトラマーは、Altaianの方法に従って製造した(Altaianら(1998)Science 274:94−96)。テトラマー分析技法は既に公表されている(Weber,J.ら(2003)Cancer 97:186−200;Pullarkatら、前出)。
【0096】
各テトラマーは、被験体のペプチドに関連したHLA−A2に特異的なCTL系列又はクローンに対する染色によって確認した。検出限界は上述のようにCD8+ T細胞の0.01%とした(Pullarkatら、前出)。
【0097】
ELISPOT及びテトラマー分析に関するgp100209−217(210M)、MART−126−35(27L)及びチロシナーゼ368−376(370D)ペプチドの値の、ワクチン接種前及び後の統計学的差異を調べた。陽性反応は、ワクチン接種前の値における平均の標準偏差の少なくとも3倍、ワクチン接種前の値よりも大きくなっているワクチン接種後の値として定義した。群の間の差異を比較するために、ノンパラメトリック検定(Wilcoxon Rank Sum)を使用した。
【0098】
(皮膚テスト)
前述のように皮膚テストを実施した(Lee,Pら(2001)J.Clin.Oncol.19:3836−3847)。
【0099】
全ての患者は治療前及びワクチン接種に訪れる度に、白斑についてスクリーニングするため皮膚の精密検査を受けた。眼への毒性は上述の通りに調べた(Pullarkatら、前出)。
【0100】
(FACS分析)
患者から得たPBMCはFITC標識抗CD8、抗CCR9、抗CLA、PE−コンジュゲートペプチド/HLA−A2.1テトラマーならびにCCR4抗体、及びCy5標識抗CD4、14及び19抗体を用いて、4℃、30分間染色した。細胞を洗浄し、FACSCalibur(Becton Dickinson,San Jose,CA)(Pullarkatら、前出)上で、上述のように分析した。
【0101】
(免疫組織化学)
HMB−45(gp100)、MART−1及びチロシナーゼに関する、スライドグラス上のパラフィン包埋切片の免疫組織化学染色を、上述のように実行した(Pullarkatら、前出)。分析毎に適当な陰性及び陽性対照を含めた。
【0102】
保存用にホルマリン固定されパラフィン包埋された組織を5μm間隔で切片化し、荷電したスライド(ProbeOn+ Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)上に載せた。組織切片を脱パラフィンし、段階的なアルコールを通して再水和させた。組織を次いで抗原検索へと供した。その後、組織をブロッキング血清(通常5%ウマ血清)と共にインキュベートした。次いでブロッキング血清を吸引し、1次モノクローナル抗体を適当な希釈率で適用した。抗CD4及び抗CD8モノクローナル抗体(Becton Dickinson,Mountain View,カリフォルニア)を、スライドグラス上でのパラフィン包埋切片の免疫組織学的染色のために使用した。1次抗体とのインキュベーションは、(各抗体に応じて最適化される)系に依存して、室温又は40℃で、通常1時間あるいは一晩行った。洗浄がこれに続き、またその後に、クロモゲンとして0.03%のジアミノベンジジン(DAB)、及び対比染色剤としてヘマトキシリンを用いたアビジン−ビオチン複合体免疫ペルオキシダーゼ系(Vector Labs,Burlingame,カリフォルニア)による可視化を行った。IHC反応の質を評価するために、全ての場合において、好適な箇所で、外部対照及び内部対照の両方を使用した。
【0103】
(MDX−010の血漿レベル)
血漿サンプルを分析まで−80℃で保存した。MDX−010の血漿レベルを調べるために定量的な機能的ELISAを用いた。この分析において、血漿サンプルを、組み換えヒトCTLA4融合タンパク質でコーティングしたプレート上でインキュベートした。結合したMDX−010は、抗ヒトIgG、F(ab)’2アルカリホスファターゼプローブを用いて検出した。標準的曲線を作成し、この標準曲線の直線部分から血漿レベルを計算した。
【0104】
(抗MDX−010の血漿レベル)
抗MDX−010抗体分析のための血漿サンプルを分析まで−80℃で保存した。血漿抗MDX−010 IgGのレベルを決定するために半定量ELISAを用いた。MDX−010 F(ab’)2を用いてプレートをコーティングし、抗ヒト IgG、Fc特異的なコンジュゲートプローブを用いて抗体を検出した。バックグラウンド値である0.100に最も近い補正されたOD値を生じた血漿サンプルにおける、最も高い希釈の逆数として、データを表した。各サンプルについての結果を、前処理済みサンプルに対する相対的な増大倍率として表した。4倍を超える増大を伴うサンプルを陽性と判断した。抗MDX−010抗体が循環中のMDX−010と結合すると考えられるため、循環レベルのMDX−010を有するサンプルは実際の力価よりも低い値となり得るであろう。
【0105】
(CTLA−4多型分析)
ゲノムDNAを、QiaAmp kit(Qiagen,Valencia,CA)を用いて末梢血液単核細胞から単離した。CTLA−4JO30 G/A多型に関する遺伝子型を、上述のPCR−RFLP手法を用いて分析した(Perrey,C.ら(1999)Transplant Immunology 7:127 −128)。
【0106】
(結果)
(人口統計)
19名の患者をこのフェーズ1の試験で処置した。7名の患者はステージIVの疾患を切除されており、残る12名はステージIIIの疾患を切除されていた。8名の患者は細胞ワクチン又はα−インターフェロンを用いた事前の免疫治療を受けており、2名は生化学的治療を受けており、また全ての患者は外科手術を受けていた。最初の診断からの期間の中央値は20ヶ月であった。7名の患者はMDX−010を投与あたり0.3mg/kgで投与され(1群)、7名は1.0mg/kg(2群)、及び5名は3.0mg/kg(3群)で投与された。FDAの要求により、1番目の群における7名の患者は、計画された注入の1週間前における彼らの血清抗体レベルが≦2μg/mlであった場合のみに、MDX−010を4週間毎に投薬された。この必要性は、2番目の群における患者番号8の後に高まった。
【0107】
(自己免疫毒性)
この試験において、主にグレードI及びIIの患者の大半において、発熱及びインフルエンザに似た症状を伴う局所的な痛み、腫れ、肉芽腫形成を含む、ペプチドワクチン試験前に記述された毒性も観察された。観察された異常な毒性は、1名の患者におけるブドウ膜炎及び胃腸(GI)毒性、及び2群のその他2名の患者における発疹、及び3群の5名全ての患者におけるGI毒性であった。3群における3名の患者はグレードIIの下痢に悩まされ、この群の残る2名はグレードIIIの下痢を発症した。ブドウ膜炎及びグレードIIIの出血性下痢を発症した2群の患者は入院を必要とした。3群の1名の患者は、静脈内鎮痛剤及び支援管理を必要とする重篤なグレードIIIの腹痛及びグレードIIの下痢の認定を必要とした。8名の患者は、MDX−010に関連すると考えられ、病因となる自己免疫であり得る毒性の徴候を有した。
【0108】
2群における患者8は、2回目のワクチンを伴うMDX−010注射後に左胸部にグレードIIの発疹を生じた。生検の結果、脈管炎を伴わない皮膚の肥厚及び血管周囲細胞浸潤(peri−vascular cuffing)を伴うCD4+ T細胞の深い真皮内浸潤が明らかになった。CD8+細胞による、より軽度な浸潤も見られた。患者のワクチン接種計画が中断されなかった発疹は、6ヶ月を超えてゆっくりと消失した。
【0109】
2群の患者19は、1回目のMDX−010注入後に、自然治癒性のグレードIIの下痢を発症した。2回目の注入後1週間、この患者は出血性の下痢、視覚症状、羞明、発熱及び倦怠感を呈した。
【0110】
結腸鏡検査により、潰瘍形成を伴わない直腸における広汎な炎症が明らかになった。結腸鏡検査時に得られた直腸の生検から、腺には及ばない顕著なCD4+T細胞浸潤が明らかになった。CD8+ T細胞による、直腸間質の、より軽度の浸潤もみられた。この者は、ブドウ膜炎及び結腸炎の治療のためのステロイドを必要とし、60日以内の全症状の消失を伴う唯一の患者であった。
【0111】
(実験値)
総白血球数(WBC)、ヘモグロビン及び血小板数を、最初の3回のMDX−010処置期間中、0、28及び56日目に測定した。経時的な又は群の間での血液学的パラメーターの顕著な変化は何らみられなかった。
【0112】
上述のように、1回目、2回目及び3回目のMDX−010注入時に、PBMC検体におけるフローサイトメトリー分析を実行した。CD3+、CD4+、CD8+ T細胞、CD56+ NK細胞、及びand CD 19+ B細胞を列挙した。これらの小集合において一貫性のある経時的な変化はみられなかった。活性化マーカーCD69及びHLA−DR、ならびに調節マーカーCD25もまたT細胞において測定した。注目された唯一の変化は、1mg/kg及び3mg/kgの投与量における、活性化されたヘルパーT細胞の数の増大を反映したCD4+/HLA−DR+ T細胞の経時的増大であった。
【0113】
(自己免疫パラメーター)
MDX−010によるCTLA−4シグナリングの阻害によってもたらされる自己免疫の副作用が、先の試験において記述されているため、自己免疫反応と関連する血清学的あるいは臓器機能的な変化をモニターした。赤血球沈降速度(ESR)、抗核抗体(ANA)、及び甲状腺刺激ホルモンを、全ての患者において2ヶ月毎に測定した。血清学的あるいはTSHな結果における変化は見られなかった。特に、顕著な皮膚又はGI自己免疫副作用の徴候を伴う患者においてさえも、ESR又はANAにおける変化は見られなかった。患者は2ヶ月毎に細隙灯検査による眼科的な評価を受けた。ワクチン/MDX−010の2回目の投与後にブドウ膜炎を発症した患者19で、細隙灯検査においてはっきりとした前房における炎症細胞の徴候が見られ、それは局所的なプレドニソロンの1日2回の点眼及び徐々に低減させた静脈内のデカドロン投与、その後の4週間にわたるプレドニソンの経口投与後、60日を超えてゆっくりと消失した。このことが唯一の、何らかの眼科的な評価における症状としての異常であった。
【0114】
(pK分析)
血清MDX−010レベルの薬物動態学的分析が、最初の注入の時点において6時間以上行われた。底値のレベルは続くそれぞれの注入の前に出され、ピークサンプルを各注入の1時間後に得た。80〜90μg/mlまでの投与量依存的なピーク値が、最初の注入から240分後に見られた。10μg/mlの底値は、最も高投与量のMDX−010を受けた患者において生じた。このレベルは、インビトロのCTLA−4シグナリングを阻害するために使用される時、抗体の活性な範囲内に十分入るものである。
【0115】
(免疫反応性)
19名の患者のうち18名は、試験開始前及びペプチド/IFA及びMDX−010を伴うワクチン接種後6ヶ月に、白血球分離を完了した。MART−1、gp100及びチロシナーゼに対する免疫反応性の分析を、ELISPOT及びテトラマー分析を用いて実行した。
【0116】
ELISPOTは、γ−インターフェロンを分泌するCD8+ T細胞の抗原特異的な活性化を測定する機能的分析である。18名の患者が評価されるサンプルを有していた。7名(39%)の患者は、ワクチン接種後に、gp100209−217(210M)に対し統計学的に顕著な免疫反応性を有した。さらに4名の患者が予め示されたMART−1免疫を有していたにも関わらず、3名(17%)の患者のみが、MART−126−35(27L)に対する反応性における統計学的に顕著な増大を有した。gp100に対する事前のワクチン反応性が一般的に低い一方、MART−1に対する高レベルの事前のワクチン反応性が見られた。患者数が限られていることが信頼性の高い相関形成を妨げてはいるが、ワクチン投与量に対する又は自己免疫毒性の進展に対するELISPOT反応性の明確な相関は見られなかった。同様の数の患者が野生型gp100209−217(6/18)及びMART−127−35ペプチド(3/18)に対する免疫反応性を有していたが、その反応性は、より低いものであった。チロシナーゼに対する顕著なELISPOTの反応性は観察されなかった。
【0117】
テトラマー分析は、MHC−クラスIペプチドの組み合わせに特異的な単細胞CD8+T細胞を列挙する。6回のワクチン接種に続く6ヶ月目のワクチン前及びワクチン後のgp100209−217(210M)テトラマー分析の結果を判断した。gp100に対する事前の反応性は観察されなかったが、ワクチン接種後に8/16(50%)の患者は、gp100−209−217(210M)特異的なT細胞数の顕著な増大を示した。16名中9名(56%)の患者では、ワクチン接種後のMART−1−26−35(27L)特異的T細胞数の顕著な増大があった。予め存在するMART−1に対する強い反応性が明確に示される。チロシナーゼに対するテトラマーの顕著な反応性は観察されなかった。類似の割合の患者においてgp100209−217(7/16)及びMART−127−35(8/16)野生型ペプチドに対する反応性の徴候があったが、反応性のレベルは、より低いものであった。
【0118】
(CCR9発現に関するフローサイトメトリー)
自己免疫の副作用を有する患者において観察される皮膚反応及び消化器症状の発現を抑えるMDX−010/ワクチンで処置された患者において、皮膚(CLA及びCCR4)及び胃腸粘膜(CCR9)に関するT細胞ホーミング受容体が上方調節され得る。治療計画開始前及び開始後6ヶ月に得た全PBMC試料を用いたフローサイトメトリー分析を実行し、次いで、上記マーカーに関し抗体を用いた染色を行った。CCR9発現に関する結果を調べ、特に2つの高投与量群において、MDX−010に加えたワクチン接種後にCD4+ T細胞におけるCCR9の発現が増大する傾向があることを示す。13名の患者のうち8名(62%)でCCR9に関するCD4+ T細胞の染色における顕著な増大があった。より少ない投与量群においては5名中1名のみで増大があったのに対して、高投与量群において試験された4名の患者のうち3名で増大があった。CD4/CLA又はCD4/CCR4染色に関する変化は見られなかった。
【0119】
(多型)
CTLA−4に関するいくつかの一塩基ヌクレオチド多型が同定されている。これらの一つであるJO30は、T細胞上でのCTLA−4発現レベルと相関する3つの対立遺伝子をコードする。多型に関するGG対立遺伝子は、「低い」CTLA−4レベルと相関し、また、若年型糖尿病及びその他の自己免疫疾患と関連することが示された(Uedaら(2003)Nature 423:506−511)。我々は、「低い」CTLA−4対立遺伝子(GG)を有する患者がCTLA−4遮断を伴う自己免疫進行におけるより高い機会を有するであろうこと、また「高い」CTLA−4対立遺伝子(AA又はAG)がMDX−010遮断から受ける影響はより少なく、自己免疫進行の機会がより少ないであろうことを仮定した。実際に、「低い」CTLA−4対立遺伝子(GG)を有する患者4名のうち3名(75%)で自己免疫症状が進行し、これら4名のうち1名(25%)のみの患者が再発した。4名全ての患者は1mg/kg又は3mg/kgのMDX−010投与を受けた。AA又はAG対立遺伝子のいずれかを有する残り15名の患者のうち、5名(33%)のみで自己免疫症状が進行し、10名(67%)が再発した。結果を図1に示すグラフ中にまとめる。
【0120】
(臨床的結果)
続く24ヶ月で、この試験で処置された19名の患者のうち11名は再発し、3名は死亡した。自己免疫の徴候を有さない11名の患者のうち、9名(82%)は再発し、2名は死亡した。再発までの平均期間は7ヶ月であった。19名のうち8名(42%)の患者は自己免疫症状を示した;2名は再発し、1名は死亡した。最も高投与量群(3mg/kg)における5名全て(100%)の患者は自己免疫の徴候を有した;2名は(40%)再発し、4名は生存し、1名は疾患を有していた。
【0121】
2つのより低投与量群における14名の患者のうち、3名(21%)のみが自己免疫効果に苦しみ、9名(64%)の患者は再発し、2名は死亡した。これらの結果は、自己免疫の進行と再発防止との相関可能性を提起する。興味深いことに、血清学的な自己免疫であるという一貫した証拠は見出されず、抗MDX−010抗体反応が進行した患者はみられなかった。
【0122】
(実施例2:CTLA−4多型の評価)
グレーブス病、自己免疫性甲状腺機能低下症(AIH)及びタイプ1糖尿病(TlD)等の自己免疫疾患に対する感受性は、CTLA−4の6.1 kbの非コード3’領域にマッピングされている(Ueda,H.ら(2003;Nature 423:506−511,補足情報A及びBを含むその全文を、参照により本明細書中に具体的に組み入れるものとする)。この研究において、108の一塩基ヌクレオチド多型(SNP)及びCTLA−4(AT)n −3’非翻訳領域(UTR)マーカーが、384のグレーブス病のケース及び652の対照、228のAIHのケース及び844の対照、及び3,671のTlDファミリーにおいて遺伝子型タイピングされた。自己免疫疾患に対する感受性と最も密接に関連する7つのSNPは、CT60、JO30、JO31、JO27_1、CTAF343、rs1863800及びMH30マーカーであった。これらのSNPの配列は以下の通りであり、多型ヌクレオチドの位置を、疾患に関係する対立遺伝子を表す1番目のヌクレオチド及び、疾患に関係しない対立遺伝子を表す2番目のヌクレオチドを伴って括弧内に示す:
【0123】
【化1】

CTLA−4遮断薬治療を受けている被験体におけるCTLA−4多型の発現を調べるために、標準的方法により、末梢血液リンパ球からゲノムDNAを単離した。SNPを評価するための好ましい方法は、Mein,C.ら(2000)によりGenome Research 10:330−343に記載されたInvader(登録商標)技法である(その内容を参照により本明細書中に明示的に組み入れるものとする)。あるいは、SNPは、Perrey,C.ら(1999)Transplant Immunol.7:127−128中に記載されるようなamplification refractory mutation system−ポリメラーゼ連鎖反応(ARMS−PCR)技法を用いて評価する。分析される多型を特異的に検出するためのプローブのセットは公知の方法論に従って設計し、合成する。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】図1は、JO30 A/ A多型、JO30 A/G多型又はJO30 G/G多型を有する被験体における、MDX−010及びペプチドワクチンを用いた処置後に続く臨床毒性の発生率及び疾患進行をまとめた棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CTLA−4遮断薬を用いた治療に対する被験体の反応性を予測する方法であって、
該被験体における少なくとも1つのCTLA−4多型を分析する工程、及び、
該被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療に対する該被験体の反応性を予測する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
前記被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の有無に基づいてCTLA−4遮断薬を用いた治療計画を選択する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体において抗原刺激に対する反応性が増大するような治療計画に従って該被験体に前記CTLA−4遮断薬を投与する工程をさらに包含する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記CLTA−4多型が、自己免疫疾患に対する感受性に関連する一塩基多型(SNP)である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記SNPがJO30 G/A多型である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記SNPが、JO30 G/A多型、CT60 G/A多型、JO31 G/T多型、JO27_1 T/C多型、CTAF343 T/C多型、rs1863800 C/T多型及びMH30 G/C多型からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記CTLA−4多型が、CTLA−4エクソン1の49位のA/G多型、CTLA−4プロモーターの−318位のC/T多型、CTLA−4イントロン1の1822位のC/T多型、及びCTLA−4エクソン3のジヌクレオチド(AT)n反復多型からなる群から選択される、自己免疫疾患に対する感受性と関連する多型である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項8】
自己免疫疾患に対する感受性の増大に関連するCTLA−4多型対立遺伝子が前記被験体中に存在し、該被験体は、該対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する増大した反応性を有すると予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
CTLA−4遮断薬による治療に対する増大した反応性が、抗原刺激に対するT細胞反応性の増大、抗腫瘍活性の増大、自己免疫出現事象の増大、臨床的有害事象の増大、及び血清学的有害事象の増大からなる群から選択される少なくとも1つの反応を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
自己免疫疾患に対する感受性の低減に関連するCTLA−4多型対立遺伝子が前記被験体中に存在し、該被験体は、該対立遺伝子を有さない被験体と比較して、CTLA−4遮断薬による治療に対する低減した反応性を有すると予測される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
CTLA−4遮断薬による治療に対する低減した反応性が、抗原刺激に対するT細胞反応性の低減、抗腫瘍活性の低減、自己免疫出現事象の低減、臨床的有害事象の低減、及び血清学的有害事象の低減からなる群から選択される少なくとも1つの反応を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記被験体がJO30 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)を発現し、選択される前記治療計画が標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
前記被験体がJO30 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、CT60 G/A多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される前記治療計画が標準的治療計画と比較して縮小された治療計画である、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記縮小された治療計画が、標準的治療計画と比較して、より低投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より低頻度の該CTLA−4遮断薬の投与、又はより短期間の該CTLA−4遮断薬による治療期間を包含する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記被験体がJO30 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)を発現し、選択される前記治療計画が標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である、請求項2に記載の方法。
【請求項16】
前記被験体がJO30 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、CT60 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型を発現し、選択される前記治療計画が標準的治療計画と比較して拡大された治療計画である、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
前記拡大された治療計画が、標準的治療計画と比較して、より高投与量のCTLA−4遮断薬の使用、より高頻度の該CTLA−4遮断薬の投与、又はより長期間の該CTLA−4遮断薬による治療期間を包含する、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記CTLA−4多型がポリメラーゼ連鎖反応−制限断片長多型(PCR−RFLP)分析により分析される、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項19】
前記CTLA−4遮断薬が抗CTLA−4モノクローナル抗体である、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項20】
前記抗CTLA−4モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記被験体がヒトである、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項22】
CTLA−4遮断薬、及び
1以上のCTLA−4多型を分析するための手段、
を含むキット。
【請求項23】
ワクチンをさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記CTLA−4遮断薬が抗CTLA−4モノクローナル抗体である、請求項22又は23に記載のキット。
【請求項25】
前記抗CTLA−4モノクローナル抗体がヒトモノクローナル抗体である、請求項24に記載のキット。
【請求項26】
前記1以上のCTLA−4多型を分析する手段が、該多型に対して特異的な1以上のポリヌクレオチドを含む、請求項22又は23に記載のキット。
【請求項27】
前記ワクチンが腫瘍抗原を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項28】
前記ワクチンがGM−CSFを分泌するように形質導入された腫瘍細胞を含む、請求項23に記載のキット。
【請求項29】
前記腫瘍抗原がgp100ペプチドを含む、請求項27に記載のキット。
【請求項30】
前記腫瘍抗原が、gp100ペプチド、MART−1ペプチド及びチロシナーゼペプチドを含む、請求項27に記載のキット。
【請求項31】
前記腫瘍抗原が前立腺特異的膜抗原(PSMA)を含む、請求項27に記載のキット。
【請求項32】
CTLA−4遮断薬による治療を受けている被験体の自己免疫障害に対する感受性の増大を予測する方法であって、該方法は、以下:
(a) CTLA−4遮断薬による治療を受けている該被験体における、少なくとも1つのCTLA−4多型について分析する工程、及び
(b) 該被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の存在に基づいて、該被験体の自己免疫障害に対する感受性の増大を予測する工程、
を包含する、方法。
【請求項33】
前記CTLA−4多型対立遺伝子が、CT60 G/A多型、JO30 G/A多型、JO31 G/T多型、JO27_1 T/C多型、CTAF343 T/C多型、rs1863800 C/T多型及びMH30 G/C多型からなる群から選択されるCTLA−4多型の2つのG対立遺伝子(G/G遺伝子型)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
自己免疫障害に対する増大した感受性を有すると予測される被験体において、標準的な治療計画と比較してCTLA−4遮断薬の治療計画を縮小することを包含する、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
CTLA−4遮断薬による治療を受けている被験体の自己免疫障害に対する感受性の低減を予測する方法であって、該方法は、以下:
(a) CTLA−4遮断薬による治療を受けている該被験体における、少なくとも1つのCTLA−4多型について分析する工程、及び
(b) 該被験体におけるCTLA−4多型対立遺伝子の存在に基づいて、該被験体の自己免疫障害に対する感受性の低減を予測する工程、
を包含する、方法。
【請求項36】
前記CTLA−4多型対立遺伝子が、CT60 G/A多型における2つのA対立遺伝子(A/A遺伝子型)、JO31 G/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)、JO27_1 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、CTAF343 T/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)、rs1863800 C/T多型における2つのT対立遺伝子(T/T遺伝子型)及びMH30 G/C多型における2つのC対立遺伝子(C/C遺伝子型)からなる群から選択される遺伝子型である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
自己免疫障害に対する低減した感受性を有すると予測される被験体において、標準的な治療計画と比較してCTLA−4遮断薬治療計画を拡大することを包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記CTLA−4遮断薬が抗CTLA−4抗体である、請求項32又は35に記載の方法。
【請求項39】
前記抗CTLA−4抗体がMDX−010である、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−512092(P2008−512092A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−530411(P2007−530411)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/031379
【国際公開番号】WO2006/028999
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(504378238)メダレックス インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】