説明

CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンド、及びその合成方法

【課題】CXCR4に対するより強力なアンタゴニストとしてのCXCR4リガンド、その合成方法、及び該CXCR4リガンドからなるがん細胞検出用プローブ、或いは、該CXCR4リガンドを有効成分とするがんの転移抑制剤を提供すること。
【解決手段】一価型CXCR4リガンドに、複数の一価型CXCR4リガンドをテンプレート化合物を介しての結合するための結合部位を導入した一価型CXCR4リガンド誘導体を合成する工程、複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物を合成する工程、及び、該テンプレート化合物と、該一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合することにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成する工程によりCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドを合成する。本発明の多価型CXCR4リガンドは、強力なアンタゴニスト活性を有し、高感度のがん細胞検出用プローブや、がんの転移をより強力に抑制し得るがんの転移抑制剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケモカイン受容体CXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド、その合成方法、及び該多価型CXCR4リガンドを標識してなるがん細胞検出用プローブ、更には、該多価型標識CXCR4リガンドを有効成分とするがんの転移抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ケモカイン受容体CXCR4は、ケモカインであるstromal cell derived factor 1α(SDF−1α)(CXCL12とも呼ばれる)を内因性リガンドとする7回膜貫通G蛋白質共役型受容体(GPCR)である。CXCR4は、胎生期の血管新生、心形成、神経細胞の分化などの発生に関与する一方、乳がん等の固形がんの転移、HIV感染、白血病、関節リュウマチなど種々の難治性疾患の病態メカニズムに寄与している事が報告されている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献9)。更に、CXCR4は、メラノーマ、乳がん、卵巣がん、肺がん、リンパ腫、前立腺がん、すい臓がん、腎臓がん、甲状腺がん、星状細胞腫、脳腫瘍、結腸がん、口腔扁平上皮がん、頸部がん、神経芽細胞腫、横紋筋腫等のがん細胞に高発現しており(非特許文献4)、がん転移の方向性を決定していることも明らかにされている(非特許文献1、非特許文献2)。
【0003】
また、CXCR4は、他のGPCRと同様に多量体化することが知られており(非特許文献5参照)、CXCR4の二量体化はがん転移に関わることが示唆されている(非特許文献6参照)。そして、特許文献1には、CXCR4アンタゴニストが腫瘍の転移を阻害又は減少させる作用を有していることに着目して、CXCR4アンタゴニストを患者に投与することによって、がんを治療又は予防する方法や、腫瘍の転移を予防する方法が記載されている。
【0004】
また、本発明者らは、これまでに、カブトガニの自己防御ペプチドpolyphemusin IIを基にして、そのアミノ酸数を減少させていき、アミノ酸残基数が14であるペプチド性CXCR4アンタゴニストT140(図1左の「1」)を創出した(非特許文献7)。本発明者らは、このT140についてさらに構造活性相関研究を行い、CXCR4に対する結合活性に必須な4個のアミノ酸(Arg2、Nal3、Tyr5、Arg14)を同定した。次いで、これら4残基にGlyをスペーサーとして導入した環状ペンタペプチドライブラリーを構築し、このライブラリーの中から、高いCXCR4アンタゴニスト活性を有するFC131(図1右の「2」)の創出に成功した(非特許文献8)。
【0005】
更に、本発明者らは、T140の官能基を改変して最適化することによって、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストであるAc-TZ14011の創出に成功した(非特許文献9)。そして、本発明者らは、そのAc-TZ14011のD-Lysの部分をTAMRAで蛍光標識してTAMRA-Ac-TZ14011を作製し、更に、このTAMRA-Ac-TZ14011のCXCR4に対する結合活性を、SDF-1α(CXCR4の内因性リガンド)との競合アッセイにより測定した。また、膜上のCXCR4にTAMRA-Ac-TZ14011を結合させた後、共焦点顕微鏡で観察して、CXCR4のイメージングを行なった。
【0006】
しかし、CXCR4のイメージングをより高感度で行ったり、がんの転移をより強力に抑制するためには、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2006−524242号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】L. A. Liotta et al., Nature, 410, 24 (2001)
【非特許文献2】A. Muller, et al., Nature, 410, 50 (2001)
【非特許文献3】J. Wang, et al., J. Biol. Chem., 10, 1074 (2001)
【非特許文献4】F. Balkwill Semin., et al., Cancer Biol., 14, 171 (2004)
【非特許文献5】G. J. Babcock, et al., J. Biol. Chem., 278, 3378 (2003)
【非特許文献6】J. Wang, et al., Mol. Cancer. Ther., 5, 2474 (2006)
【非特許文献7】H. Tamamura, N. Fujii, et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 253, 877 (1998)
【非特許文献8】H. Tamamura, N. Fujii, et al., J. Med. Chem., 48, 380 (2005)
【非特許文献9】W. Nomura, et al., bioconjugate chem., 19, 1917 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
CXCR4のリガンドにより、CXCR4のイメージングをより高感度で行ったり、或いは、CXCR4のリガンドを用いて、がんの転移をより強力に抑制するためには、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストが求められる。そこで、該要求を満たし、更には、該アンタゴニストの利用を図るために、本発明の課題は、CXCR4のイメージングをより高感度で行ったり、がんの転移をより強力に抑制し得る、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストとしてのCXCR4リガンド、その合成方法、及び該CXCR4リガンドからなるがん細胞検出用プローブ、或いは、該CXCR4リガンドを有効成分とするがんの転移抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、がん転移の方向性の決定に関し、CXCR4の多量体化とCXCR4リガンドのアンタゴニスト活性との関係について、そのメカニズム等を鋭意検討する中で、CXCR4リガンドを、特定のリンカー化合物としてのテンプレート化合物を介して結合し、多価型CXCR4リガンドとすることにより、CXCR4の多量体をより強力に認識し、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストとしての活性を得ることができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明者らは、がん転移の方向性の決定に関し、CXCR4の多量体化とCXCR4リガンドとのアンタゴニスト活性のメカニズムについて、鋭意検討する中で、二分子のCXCR4リガンドを様々な長さのリンカーで結合して種々の二価体リガンド(以下、「二価型CXCR4リガンド」という)を創製し、これらの二価型CXCR4リガンドのCXCR4結合活性を[125I]-SDF-1αを用いた競合阻害アッセイにより評価したところ、リンカーの長さが5.5〜6.5nmの二価型リガンドのIC50値が特に低いこと、すなわち、リンカー長が前述の範囲のときに、二価型CXCR4リガンドのCXCR4に対する結合活性が特に高いことを見い出した。このことは、前述の範囲のリンカー長を有する二価型CXCR4リガンドが、CXCR4二量体を認識し、CXCR4二量体に対してより強力に結合することによるものと推定された(図2)。
【0012】
すなわち、メカニズム的には、二価型CXCR4リガンドが、CXCR4二量体に対して、複数のリガンド結合部位で結合することにより、相乗的な結合活性を示して、より強力に結合することにより、高いアンタゴニスト活性を示しているものと推測される。
【0013】
また、本発明者らは、該CXCR4二量体を認識する二価型CXCR4リガンドを蛍光標識して得られた蛍光標識二価型CXCR4リガンドを用いて、ヒトT細胞株に発現するCXCR4二量体について蛍光イメージングを行ない、標識二価型CXCR4リガンドにより、ヒト細胞上のCXCR4二量体を高感度に検出し得ることを見い出した。
【0014】
更に、本発明においては、二価型CXCR4リガンドに続いて、本発明におけるリンカー化合物を用いて、三価型CXCR4リガンド、四価型CXCR4リガンドのような多価型CXCR4リガンドの合成を行った。本発明の多価型CXCR4リガンドの合成に際しては、テンプレート化合物のリンカーの長さを適宜調整して、多価型CXCR4リガンドのCXCR4多量体への複数の結合部位間における距離を調整することができる。
【0015】
すなわち具体的には本発明は、(1)一価型CXCR4リガンドに、複数の一価型CXCR4リガンドをテンプレート化合物を介して結合するための結合部位を導入した一価型CXCR4リガンド誘導体を合成する工程、複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物を合成する工程、及び、該テンプレート化合物と、該一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合することにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成する工程からなることを特徴とするCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、(2)一価型CXCR4リガンドの誘導体を合成する工程が、一価型CXCR4リガンドに、テンプレート化合物と結合するために必要なシステインを導入するものであることを特徴とする上記(1)に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、(3)一価型CXCR4リガンド誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする上記(2)に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、
【0016】
【化1】

【0017】
(4)複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、2本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、
【0018】
【化2】


(但し、nは整数を表す。)
【0019】
【化3】


(但し、mは整数を表す。)
【0020】
(5)上記(4)に記載の一般式(2)又は(3)で表される化合物において、nが10〜26の範囲内の整数であり、mが4〜17の範囲内の整数であることを特徴とする上記(4)に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、(6)複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、3本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(4)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法や、
【0021】
【化4】

【0022】
(7)複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、4本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(5)又は(6)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法からなる。
【0023】
【化5】

【0024】
【化6】



【0025】
また本発明は、(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドの合成方法によって合成されたCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンドや、(9)CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、2本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された2価型CXCR4リガンドであることを特徴とする上記(8)に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンドや、
【0026】
【化7】


(但し、nは整数を表す。)
【0027】
【化8】


(但し、mは整数を表す。)
【0028】
(10)2本の等価なリンカー構造を持つ上記(9)に記載の一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物において、nが10〜26の範囲内の整数であり、mが4〜17の範囲内の整数であることを特徴とする上記(9)に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンドや、(11)CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、3本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(4)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された3価型CXCR4リガンドであることを特徴とする上記(8)に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンドや、
【0029】
【化9】

【0030】
(12)CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、4本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(5)又は(6)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された4価型CXCR4リガンドであることを特徴とする上記(8)に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンドからなる。
【0031】
【化10】

【0032】
【化11】

【0033】
さらに本発明は、(13)上記(8)〜(12)のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドを、標識化合物で標識してなるがん細胞検出用プローブからなる。
【0034】
また本発明は、(14)上記(8)〜(12)のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドを有効成分とするがんの転移抑制剤からなる。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、CXCR4多量体を認識し、CXCR4多量体に対してより安定した結合活性を有する多価型CXCR4リガンドを提供することができ、CXCR4に対するより強力なアンタゴニストを提供することができる。該多価型CXCR4リガンドの提供により、がん細胞検出プローブや、がんの転移抑制剤の提供が可能となる。本発明のがん細胞検出プローブは、がん細胞に発現するCXCR4多量体に対して優れた結合活性を有するため、がん細胞を高感度で検出することができる。また、本発明の多価型CXCR4リガンドは、ガンの転移に関わるCXCR4多量体を、より強力に認識し、したがって、がんの転移を効果的に抑制することができるため、がん転移抑制剤として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】CXCR4リガンドの構造を示す図である。
【図2】がん細胞選択式プローブの模式図である。
【図3】二価型CXCR4リガンドの合成スキームを示す図である。
【図4】各種の二価型CXCR4リガンド、及び、該CXCR4リガンドのCXCR4への結合活性の評価を示す図である。
【図5】二価型CXCR4リガンドについてのCXCR4レセプター結合アッセイの結果を示す図である。図5左;PPリンカーを持つテンプレート化合物を用いて合成した二価型CXCR4リガンドについてのCXCR4レセプター結合アッセイの結果を示す図である。図5右;PP−PEGリンカーを持つテンプレート化合物を用いて合成した二価型CXCR4リガンドについてのCXCR4レセプター結合アッセイの結果を示す図である。
【図6】CXCR4二量体におけるリガンド結合部位同士間の推定距離を示す図である。図6左;二価型CXCR4リガンドのIC50(nM)と、該リガンドのリンカー長の長さ(nm)との関係を示す図である。図6右;CXCR4の二量体におけるリガンド結合部位同士間の推定距離を示す図である。
【図7】TAMRA-18Pro-FC131二量体でHela細胞を染色したものを蛍光観察又は微分干渉観察した図である。
【図8】TAMRA-6PP-FC131単量体及びAC6PP-FC131単量体でHela細胞を染色したものを蛍光観察又は微分干渉観察した図である。
【図9】三価型テンプレート化合物の合成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、一価型CXCR4リガンドに、複数の一価型CXCR4リガンドをテンプレート化合物を介して結合するための結合部位を導入した一価型CXCR4リガンド誘導体(以下、単に「一価型CXCR4リガンド誘導体」とも表示する。)を合成する工程、複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物(以下、単に「本発明のテンプレート化合物」とも表示する。)を合成する工程、及び、該テンプレート化合物と、該一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合することにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成する工程からなることを特徴とするCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンド(以下、「本発明の多価型CXCR4リガンド」とも表示する。)の合成方法(以下、単に「本発明の多価型CXCR4リガンドの合成方法」とも表示する。)からなる。
【0038】
上記の一価型CXCR4リガンドとしては、一量体のCXCR4に対するリガンドである限り特に制限されず、アゴニストであってもアンタゴニストであってもよいが、がんの転移を抑制する場合は、アンタゴニストである必要がある。一価型CXCR4アンタゴニストとしては、以下の一般式(7)で表されるT140や、一般式(8)で表されるFC131を好適に例示することができる。
【0039】
【化12】

【0040】
【化13】

【0041】
また、上記の「複数の一価型CXCR4リガンドをテンプレート化合物を介して結合するための結合部位」としては、一価型CXCRリガンドを本発明のテンプレート化合物に結合させ得る結合部位である限り特に制限されないが、Cys(システイン)残基を好適に例示することができる。
【0042】
本発明における一価型CXCR4リガンド誘導体の好ましい例として、FC131(一価型CXCR4リガンド)にD-Cys残基を導入したD-Cys-FC131を好適に例示することができる。このD-Cys-FC131の構造式は上記一般式(1)で表される。
【0043】
本発明における、一価型CXCR4リガンド誘導体を合成する工程において、一価型CXCR4リガンド誘導体を合成する方法としては、一価型CXCR4リガンドに、前述の結合部位を導入する方法である限り特に制限されないが、一価型CXCR4リガンドの特定の基又は原子を、上記結合部位となり得る置換基(好ましくはCys残基)で置換する方法(Angew. Chem. Int. Ed., 42(28), 3251-3253 (2003)参照)を好適に例示することができる。一価型CXCR4リガンドは、公知のものを適宜合成することができ、例えばFC131は、Angew. Chem. Int. Ed., 42(28), 3251-3253 (2003)記載の合成方法により合成することができ、T140は、Biochem. Biophys. Res. Commun., 253(3), 877-882 (1998)やBioorg. Med. Chem., 6(2), 231-238 (1998)に記載の合成方法により合成することができる。
【0044】
複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物を合成する工程における本発明のテンプレート化合物としては、複数本の等価なリンカー構造を持ち、かつ、一価型CXCR4リガンド誘導体と結合することにより、本発明の多価型CXCR4リガンドを合成し得る化合物である限り特に制限されないが、2本の等価なリンカー構造を持つ上記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩や、3本の等価なリンカー構造を持つ上記一般式(4)で表される化合物又はその塩や、4本の等価なリンカー構造を持つ上記一般式(5)又は(6)で表される化合物又はその塩を好適に例示することができ、中でも、2本の等価なリンカー構造を持つ上記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩を特に好適に例示することができる。また、一般式(2)におけるnとしては、10〜26の範囲内の整数を好適に例示することができ、17〜19の範囲内の整数をより好適に例示することができ、一般式(3)におけるmとしては、4〜17の範囲内の整数を好適に例示することができ、8〜13の範囲内の整数をより好適に例示することができる。なお、上記に例示される本発明のペプチド性テンプレート化合物を合成するには、Fmoc solid-phase peptide synthesis(SPPS)を用いることができる(Hirokazu Tamamura et al. Bioorganic & Medicinal Chemistry 6 (1998)1033-1041や、"Solid phase peptide synthesis - a practical approach" by E Atherton & R C Sheppard IPI PRESS参照)。すなわち、固相合成法により、主鎖アミノ基の保護基である9−fluorenylmethoxycarbonyl(Fmoc)基の選択的脱保護と縮合反応の操作を繰り返し、最後に樹脂からの脱樹脂、脱保護を行なうことにより、目的とするペプチド性テンプレートか化合物を合成することができる。
【0045】
本発明のテンプレート化合物は、酸付加塩又は塩基付加塩などの塩の形態であってもよい。例えば、酸付加塩としては、塩酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、吉草酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩などの鉱酸塩や、シュウ酸塩、若しくは酒石酸塩などの有機酸塩を挙げることができる。また、塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、若しくはカルシウム塩などの金属塩や、アンモニウム塩、又はトリエチルアミン塩若しくはエタノールアミン塩などの有機アミン塩などを挙げることができる。また、本発明のテンプレート化合物は、本発明に用い得る限り、1又は2個以上の任意の置換基を有していてもよい。2個以上の置換基を有する場合には、それらは同一でも異なっていてもよい。本発明に用い得る限り、置換基の存在位置は限定されず、置換可能な任意の部位に存在することができる。置換基の種類は特に限定されない。
【0046】
本発明のテンプレート化合物と、本発明の一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合することにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成する工程においては、本発明のテンプレート化合物と、本発明の一価型CXCR4リガンド誘導体とを、phosphate buffer中で攪拌することにより、複数本の等価なリンカー構造を持つ本発明のテンプレート化合物と、本発明の一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合させ、これにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成することができる(図3参照)。
【0047】
本発明の合成方法によって合成し得る多価型CXCR4リガンドは、CXCR4多量体を認識し、また、一価型CXCR4リガンドがCXCR4単量体と結合するよりも、より強力にCXCR4多量体に結合することができる。本発明の多価型CXCR4リガンドは、CXCR4多量体との間に、より多くの結合部位を生じ得るからである。そのため、本発明の多価型CXCR4リガンドは、がん細胞に発現するCXCR4により強く結合することによって、がん細胞をより高感度で検出することが可能ながん細胞検出プローブとして用いることができる。
【0048】
本発明におけるがん細胞検出プローブとしては、本発明における多価型CXCR4リガンドを標識化合物で標識したものである限り特に制限されないが、検出が容易であることから、標識化合物としては蛍光標識化合物を好適に例示することができ、中でもRhodamineやFluoresceinをより好適に例示することができる。
【0049】
また、本発明の多価型CXCR4リガンドが、多価型CXCR4に対するアンタゴニスト(以下、「本発明の多価型CXCR4アンタゴニスト」とも表示する。)である場合は、該アンタゴニストをがんの転移抑制剤として用いることができる。CXCR4アンタゴニストが腫瘍の転移を阻害又は減少させる作用を有していることは、背景技術の特許文献1に記載されている。
【0050】
本発明のがんの転移抑制剤を調製するには、アンタゴニスト(好ましくはペプチド性のアンタゴニスト)を有効成分とした薬剤において通常採用される製剤の形態、或いは、補助剤、添加剤を用いることができる。
【実施例1】
【0051】
[二価型CXCR4リガンドの設計、及び、合成スキーム]
CXCR4二量体はその詳細な構造が明らかになっていないため、CXCR4間の距離の推定は困難である。そのため、本発明のテンプレート化合物における最適なリンカー長を検討する必要があるが、結合間距離が固定されていないリンカーでは正確な検討を行うことが出来ない。そこで、構造安定性の高いpolyproline helix 2 構造を有するPPリンカーに着目した。PPリンカーはその結合距離が明らかにされており(3残基=9Å)、分子メジャーとして用いられている。そのため、異なる鎖長をもつPPリンカーを合成・検討することで、CXCR4二量体間の距離をより正確に特定できると考えた。更にPPリンカーの検討に加え、CXCR4におけるFC131の結合ポケットの深さも考慮し、柔軟な構造を有するpolyethylene glycol リンカーを、PPリンカーの末端に修飾したPP−PEGリンカーも併せて検討した(図4参照)。また、これらリンカー部の合成に関してはFmoc固相合成法を用いた(図3参照)。CXCR4アンタゴニストFC131はリンカー導入を行うための反応点を持たないことから、スペーサー部位のGlyをD-Cysで置換した誘導体D-Cys FC131を設計・合成し、リンカーとのコンジュゲートを行った。以上の設計、及び、合成スキームに基づいて、まずは、テンプレート化合物の合成を試みた。
【実施例2】
【0052】
[テンプレート化合物の合成]
1.D−システイン負荷2−クロロトリチル樹脂の調製
D−システイン負荷2−クロロトリチル樹脂(1.4mmol/g)を、CH2Cl2/DMF(10.00mL)中において、Fmoc-D-Cys-OH(0.88mmol)及びN,N-diisopropylethylamine(DIPEA)(1.75mmol)で1.5時間処理した。処理後の上記樹脂をDMF及びCH2Cl2で洗浄し、その樹脂を真空乾燥した。その樹脂におけるD−システインの負荷の程度は、ピペリジンで処理したサンプル、すなわち、Fmoc-D-Cys-(2-Cl)-Trt-resin(0.45mmol/g)の290nmでの紫外線吸収を測定することによって決定した。
【0053】
2.Fmoc固相合成法によるペプチドの合成
保護されたペプチド樹脂は、0.5mmolスケールにて手作業で構築した。Fmoc-アミノ酸は、DMF(1.0mL)中において、0.039mL(0.25mmol)の1,3-diisopropylcarbodiimide(DIPCI)、及び、38 mg(0.25 mmol)のN-hydroxybenzotriazole hydrate(HOBt・H2O)を用いて、1.5時間カップリングさせた。Tetramethylrhodamine単位をカップリングさせるために、93mg(0.25mmol)のHATU及び34mg(0.25mmol)の1-hydroxy-7-azabenzotriazole(HOAt)を、DIPCI/HOBtの代わりに使用した。20% (v/v) のpiperidine-DMFで15分間処理して、Fmoc基を脱保護した。
【0054】
このFmoc固相合成法により、図4記載の各種テンプレート化合物を合成した。なお、図4のLinker名における“Prox”とは、一般式(2)におけるnがXである化合物を表し、“PEG-Proy-PEG”とは、一般式(3)におけるnがYである化合物を表す。また、PEG-Acとは、図4右のPEGにアセチルとFC131単量体が結合した化合物を表し、Ac-Pro6とは、一般式(2)の括弧内のプロリンが6分子連結した化合物にアセチルとFC131単量体が結合した化合物を表す。
【実施例3】
【0055】
[FC131誘導体の合成]
一価型CXCR4リガンドとしてFC131を用意した。このFC131に、Angew. Chem. Int. Ed., 42(28), 3251-3253 (2003)記載の方法を適用することによって、FC131の水素原子をD-Cys残基で置換し、FC131誘導体(D-Cys-FC131;一般式(1)参照)を合成した。
【実施例4】
【0056】
[二価型CXCR4リガンドの合成]
pH7.8のPhosphate bufferに、実施例2で合成したテンプレート化合物と、実施例3で合成したFC131誘導体とを溶解し、この溶液を攪拌した。これにより、1分子のテンプレート化合物に、2分子のFC131誘導体が結合した二価型CXCR4リガンドを合成した。
【実施例5】
【0057】
[CXCR4レセプター結合アッセイ]
実施例4において合成した各種の二価型CXCR4リガンドについて、CXCR4結合活性の評価を試みた。この評価は、CXCR4の公知のリガンドである[125I]-SDF-1αを用いた競合阻害アッセイにより行なった。具体的には、以下の方法を用いた。
【0058】
まず、細胞膜上でCXCR4を発現する細胞として、ヒトT細胞株であるJurkat細胞を用意した。加熱して不活性化したウシ胎仔血清を10%含むRPMI 1640培地で、前述のJurkat細胞を培養した。培養したJurkat細胞を採取し、1000rpmで5分間遠心分離した。回収した細胞をRPMI buffer (20mM HEPES, 0.5% ウシ血清アルブミン)に再懸濁し、シリコンでコートされたチューブにその再懸濁液を120μL(5.0×105 cells)入れた。冷却したSDF−1溶液(最終濃度1μM)、及び、様々な濃度の試験化合物の10% DMSO溶液を1チューブ当たりそれぞれ15μLずつ前述のチューブ内に添加し、次いで、0.05nMの[125I]-SDF-1α(Perkin-Elmer Life Sciences社製)を、1チューブ当たり15μLずつ添加した。それらのチューブを氷上で1時間インキュベーションした後、オイル(dibutyl phthalate : olive oil = 4 : 1 (v/v))を1チューブ当たり500μL/wellずつ添加し、次いで、14,000 rpmで2分間遠心分離した。チューブ内の水層と有機層を除去し、チューブの底部を切断した後、その底部をRadioimmunoassay(RIA)チューブに配置し、γ-counterによってcount per minute(CPM)を計測した。FC131アナログの[125I]-SDF-1αに対する結合の阻害率(%)は、以下の等式によって算出した。
阻害率(%)=(Et−Ea)/(Et−Ec)×100
Et:試験化合物が不存在の場合の放射線の量
Ec:試験化合物として冷却したSDF-1αを存在させた場合の放射線の量
Ea:試験化合物を存在させた場合の放射線の量
【0059】
PPリンカーを持つテンプレート化合物を用いて合成した二価型CXCR4リガンドについての結果を図5左に示し、PP−PEGリンカーを持つテンプレート化合物を用いて合成した二価型CXCR4リガンドについての結果を図5右に示す。また、これらの結果を元に、算出したIC50(nM)を図4に示す。また、図4のIC50値(nM)を縦軸に、リンカー部分の長さ(linker length(nm))を横軸にとってグラフ化した図を図6左に示す。図6左の結果から分かるように、二価型CXCR4リガンドの結合活性は、二価型CXCR4リガンドにおけるリンカーの長さに依存するような増減を示した。例えば、Pro18リンカーを持つテンプレート化合物に、2分子のFC131が結合した18PP-FC131二量体では、Ac-Pro6リンカーを持つテンプレート化合物に、1分子のFC131が結合したAC6PP-FC131単量体の6倍という高いCXCR4結合活性を示した。また、PEG-Pro12-PEGリンカーを持つテンプレート化合物に、2分子のFC131が結合した12PP PEG-FC131二量体では、PEG-Acリンカーを持つテンプレート化合物に、1分子のFC131が結合したPEG AC-FC131単量体の20倍という高いCXCR4結合活性を示した。このように、PPリンカー及びPEGリンカーのいずれを用いた場合も、リンカー長が5.5−6.5nmのときに、二価型CXCR4リガンドのCXCR4結合活性が著しく上昇した。このことから、二価型CXCR4リガンドにおいて、FC131とテンプレート化合物とが結合している部位同士間の距離は5.5−6.5nmであること、及び、CXCR4の二量体におけるリガンド結合部位同士間の距離も5.5−6.5nmであること(図6右)が考えられた。また、CXCR4等を含むG蛋白質共役型受容体(GPCR)は、通常、アゴニスト依存的に二量体化すると考えられているが、FC131はCXCR4のアンタゴニストであるにもかかわらず、二価型の状態でCXCR4への結合活性が相乗的に上昇した。このことは、CXCR4が細胞に多量体として存在する事を示唆するものであり、CXCR4等のGPCRの二量体化機構に対する新たな知見を提供するものと考えられる。
【実施例6】
【0060】
[共焦点顕微鏡システムを用いた蛍光イメージ解析]
本発明の二価型CXCR4リガンドが、CXCR4に特異的に結合するかどうかを確認するために、共焦点顕微鏡システムを用いた蛍光イメージ解析を行なった。具体的には以下の方法で行なった。
【0061】
まず、本発明の二価型CXCR4リガンドとして、18Pro-FC131二量体を用意し、コントロールの一価型CXCR4リガンドとして、6PP-FC131単量体及びAC6PP-FC131単量体を用意した。これらの3種類のCXCR4リガンドをそれぞれ蛍光色素(TAMRA)で標識し、TAMRA-18Pro-FC131二量体、TAMRA-6PP-FC131単量体、及びTAMRA-AC6PP-FC131単量体を作製した。
【0062】
CXCR4−GFP融合タンパク質を安定発現する又はしないHela細胞を、10%のウシ胎仔血清(FBS)を補充したDMEM(Dulbecco's Modified Eagle Medium)を含む直径1.4cmのガラス底培養皿に、1皿当たり5×104 cellsずつ播種した。37℃、5%CO条件下で2日間インキュベートした後、ガラス底培養皿から培地を除去し、残った細胞を、20mM HEPES(pH7.4)を含むDMEMで3回洗浄した。上記の3種類の蛍光標識CXCR4リガンドをそれぞれのガラス底培養皿に添加し、その混合物を15分間室温でインキュベートした。次いで、ガラス底培養皿から培地を除去し、フェノールレッドを含まないDMEMで細胞を3回洗浄した。洗浄した各細胞をLSM 510 laser-scanning confocal microscope (Zeiss GmbH社製, Oberkochen, Germany)で観察した。その結果を図7及び図8に示す。図7の4つのパネルは、TAMRA-18Pro-FC131二量体を25nMとなるようにガラス底培養皿に添加したものの観察結果であり、図8の4つのパネルは、TAMRA-6PP-FC131単量体及びAC6PP-FC131単量体の両方をそれぞれ25nMとなるようにガラス底培養皿に添加したものの観察結果である。図7及び図8のそれぞれ4つのパネルのうち、左上のパネルはGFPの緑色を検出したパネルであり、右上のパネルは微分干渉により対象を観察したパネルであり、左下のパネルはTAMRAの赤色を検出したパネルであり、右下のパネルは、左上のパネルと右上のパネルと左下のパネルとを重ね合わせたパネルである。
【0063】
図7及び図8の結果から分かるように、一価型CXCR4リガンド(TAMRA-6PP-FC131単量体及びAC6PP-FC131単量体)はCXCR4に結合しなかったものの、二価型CXCR4リガンド(TAMRA-18Pro-FC131二量体)は、CXCR4に特異的に結合していることが確認された(図7左下パネル、及び、図8左下パネル参照)。また、これらの蛍光イメージ解析の結果から、本発明の二価型CXCR4リガンドは、がん細胞を高感度で検出し得るがん細胞検出プローブとして用い得ることが示された。
【実施例7】
【0064】
[三価型テンプレート化合物、及び、四価型テンプレート化合物の合成]
図9に示される化合物及び反応を利用して、上記の一般式(4)に示される三価型のテンプレート化合物を合成した。また、上記の一般式(5)や(6)に示される四価型のテンプレート化合物を合成した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の多価型CXCR4リガンドの合成方法によれば、一価型CXCR4リガンド誘導体やテンプレート化合物を用いて、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを得ることができる。本発明の多価型CXCR4リガンドは、がん細胞に発現するCXCR4多量体に対して優れた結合活性を有するため、がん細胞の高感度検出の分野に有用である。また、本発明の多価型CXCR4リガンドが多価型CXCR4アンタゴニストである場合は、がんの転移を効果的に抑制することができるため、がん転移抑制剤の分野に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一価型CXCR4リガンドに、複数の一価型CXCR4リガンドをテンプレート化合物を介して結合するための結合部位を導入した一価型CXCR4リガンド誘導体を合成する工程、複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物を合成する工程、及び、該テンプレート化合物と、該一価型CXCR4リガンド誘導体とを結合することにより、一価型CXCR4リガンド誘導体がテンプレート化合物を介して結合した多価型CXCR4リガンドを合成する工程からなることを特徴とするCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【請求項2】
一価型CXCR4リガンドの誘導体を合成する工程が、一価型CXCR4リガンドに、テンプレート化合物と結合するために必要なシステインを導入するものであることを特徴とする請求項1に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【請求項3】
一価型CXCR4リガンド誘導体が、下記一般式(1)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする請求項2に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【化1】

【請求項4】
複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、2本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【化2】


(但し、nは整数を表す。)
【化3】


(但し、mは整数を表す。)
【請求項5】
請求項4に記載の一般式(2)又は(3)で表される化合物において、nが10〜26の範囲内の整数であり、mが4〜17の範囲内の整数であることを特徴とする請求項4に記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【請求項6】
複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、3本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(4)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【化4】

【請求項7】
複数本の等価なリンカー構造を持つテンプレート化合物が、4本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(5)又は(6)で表される化合物又はその塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のCXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドの合成方法。
【化5】


【化6】

【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドの合成方法によって合成されたCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド。
【請求項9】
CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、2本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された2価型CXCR4リガンドであることを特徴とする請求項8に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド。
【化7】


(但し、nは整数を表す。)
【化8】


(但し、mは整数を表す。)
【請求項10】
2本の等価なリンカー構造を持つ請求項9に記載の一般式(2)又は(3)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物において、nが10〜26の範囲内の整数であり、mが4〜17の範囲内の整数であることを特徴とする請求項9に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド。
【請求項11】
CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、3本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(4)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された3価型CXCR4リガンドであることを特徴とする請求項8に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド。
【化9】

【請求項12】
CXCR4多量体を認識する多価型CXCR4リガンドが、4本の等価なリンカー構造を持つ下記一般式(5)又は(6)で表される化合物又はその塩からなるテンプレート化合物によって結合された4価型CXCR4リガンドであることを特徴とする請求項8に記載のCXCR4多量体を高感度に認識する多価型CXCR4リガンド。
【化10】


【化11】

【請求項13】
請求項8〜12のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドを、標識化合物で標識してなるがん細胞検出用プローブ。
【請求項14】
請求項8〜12のいずれかに記載の多価型CXCR4リガンドを有効成分とするがんの転移抑制剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−12035(P2011−12035A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159771(P2009−159771)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究(健康安心イノベーションプログラム「分子イメージング機器研究開発プロジェクト/新規悪性腫瘍分子プローブの基盤技術開発/分子プローブ要素技術の開発」)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】