説明

DC−DCコンバータ制御回路、DC−DCコンバータ、およびDC−DCコンバータ制御方法

【課題】DC−DCコンバータの立ち上げ時における各種の不具合の発生を防止すること。
【解決手段】DC−DCコンバータ制御回路2は、放電部12および22と、立ち上げ制御部13および23とを備える。放電部12および22は、第1チャンネルおよび第2チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、放電用トランジスタTr1およびTr2を導通状態とすることで、平滑コンデンサC1およびC2に蓄積された電荷を放電する。コンパレータCOMP1およびCOMP2において、出力電圧Vo1およびVo2が0(V)以下の値となることが検出されることに応じて、第1チャンネルおよび第2チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げが開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC−DCコンバータ制御回路、DC−DCコンバータ、およびDC−DCコンバータ制御方法に関し、特にDC−DCコンバータの立ち上げ時における各種の不具合の発生を防止することが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
図7に示す電源装置100が知られている。DC−DCコンバータDC/DC−1は動作を停止する際に、同期整流用トランジスタTr221 をONとして強制的に負荷容量を放電し,出力電圧Vo101は0(V)に達する。同様にDC−DCコンバータDC/DC−2は動作を停止する際に、同期整流用トランジスタTr222をONとして強制的に負荷容量を放電し,出力電圧Vo102も0(V)に達する。
【0003】
尚、上記の関連技術として特許文献1および特許文献2が開示されている。
【特許文献1】特開平9−154275号公報
【特許文献2】特開2002−84741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば電源装置100が緊急停止した場合などには、出力電荷が負荷容量に残った状態で停止状態に維持されることがある。そして出力電荷が残った状態から電源装置100を立ち上げると、立ち上り開始直後時に、ラッチアップや出力電圧のオーバーシュート等の不具合を起こす場合があるため問題である。
【0005】
本発明は前記背景技術の課題の少なくとも1つを解消するためになされたものであり、DC−DCコンバータの立ち上げ時における各種の不具合の発生を防止することが可能なDC−DCコンバータ制御回路、DC−DCコンバータ、およびDC−DCコンバータ制御方法を提供することを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、開示のDC−DCコンバータ制御回路では、DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電する放電部と、DC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値を下回ることを検出することに応じて、DC−DCコンバータの立ち上げを行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、開示のDC−DCコンバータでは、DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電する放電部と、DC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値以下の値となることを検出することに応じて、DC−DCコンバータの立ち上げを行う制御部とを備えることを特徴とする。
【0008】
放電部は、DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電する。制御部ではDC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値以下の値となることを検出することにより、放電部における放電の完了を検出することができる。そして当該検出が行われることに応じて、制御部は、DC−DCコンバータの立ち上げを行う。
【0009】
これにより、出力容量に電荷が蓄積された状態でDC−DCコンバータの立ち上げを行うことによる不具合(スイッチングトランジスタのラッチアップによる短絡の発生や、出力電圧のオーバーシュートなど)の発生を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のDC−DCコンバータ制御回路、DC−DCコンバータ、およびDC−DCコンバータ制御方法によれば、DC−DCコンバータの立ち上げ時における各種の不具合の発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の第1実施形態を、図1および図2を用いて説明する。図1に、第1実施形態に係る電源装置1を示す。電源装置1は、出力電圧Vo1を出力する第1チャンネル、および出力電圧Vo2を出力する第2チャンネルを有する、多チャンネルの電源装置である。また電源装置1は、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスが行われる装置である。電源装置1は、DC−DCコンバータ制御回路2、チョークコイルL1およびL2,平滑コンデンサC1およびC2、出力端子Tout1およびTout2を備える。出力端子Tout1とグランドとの間には平滑コンデンサC1が接続され、出力端子Tout1とDC−DCコンバータ制御回路2との間にはチョークコイルL1が接続される。同様に、出力端子Tout2とグランドとの間には平滑コンデンサC2が接続され、出力端子Tout2とDC−DCコンバータ制御回路2との間にはチョークコイルL2が接続される。出力端子Tout1からは出力電圧Vo1が出力され、出力端子Tout2からは出力電圧Vo2が出力される。なお、チョークコイルL1、L2に流れる電流を、それぞれ電流Lx1、Lx2と定義する。
【0012】
DC−DCコンバータ制御回路2は、第1チャンネルのDC−DCコンバータを構成するDC−DCコンバータ制御部11、放電部12、立ち上げ制御部13を備える。また、第2チャンネルのDC−DCコンバータを構成するDC−DCコンバータ制御部21、放電部22、立ち上げ制御部23を備える。また、第1チャンネルと第2チャンネルとの立ち上げシーケンスを制御する、シーケンス制御部31を備える。
【0013】
まず、第1チャンネルのDC−DCコンバータの構成を説明する。DC−DCコンバータ制御部11では、メインスイッチング素子であるトランジスタM11のドレイン端子に入力電圧Vinが入力され、ソース端子にチョークコイルL1の入力端子が接続される。また、同期整流スイッチング素子であるトランジスタM12のソース端子はグランドに接地され、ドレイン端子はチョークコイルL1の入力端子に接続される。またトランジスタM11およびM12のゲート端子には、スイッチング制御回路15から出力される信号VQ11およびVQ22がそれぞれ入力される。またスイッチング制御回路15には、出力端子Tout1が接続される。
【0014】
放電部12は、抵抗素子R1および放電用トランジスタTr1を備える。抵抗素子R1の一端は出力端子Tout1に接続され、他端は放電用トランジスタTr1のドレイン端子に接続される。また放電用トランジスタTr1のソース端子はグランドに接地される。
【0015】
立ち上げ制御部13は、コンパレータCOMP1、フリップフロップFF1、インバータINV1、アンド回路AND11およびAND12を備える。コンパレータCOMP1はヒステリシスコンパレータであり、反転入力端子は出力端子Tout1に接続され、非反転入力端子はグランドに接地され、信号Vc1が出力される。フリップフロップFF1には信号Vc1および制御信号Ctlが入力され、信号Vf1が出力される。アンド回路AND12には、信号Vf1がインバータINV1を介して入力されると共に、制御信号Ctlが入力される。アンド回路AND12から出力される信号Vg1は、放電用トランジスタTr1のゲート端子に入力される。アンド回路AND11には、信号Vf1、立ち上げ制御部23から出力される信号Vf2、および制御信号Ctlが入力される。アンド回路AND11から出力される信号Ven1は、スイッチング制御回路15に入力される。
【0016】
シーケンス制御部31は、発振器32およびカウンタ回路33を備える。シーケンス制御部31から出力されるクロック信号CLKはカウンタ回路33へ入力され、カウンタ回路33からは信号Vt3が出力される。
【0017】
次に、第2チャンネルのDC−DCコンバータの構成を説明する。立ち上げ制御部23のアンド回路AND21には、シーケンス制御部31から出力される信号Vt3と信号Vf2とが入力される。アンド回路AND21から出力される信号Ven2は、スイッチング制御回路25に入力される。なお第2チャンネルのDC−DCコンバータのその他の構成は、上述した第1チャンネルのDC−DCコンバータと同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0018】
図2のタイミングチャートを用いて、電源装置1の立ち上げ動作を説明する。例として、電源装置1の緊急停止などにより平滑コンデンサC1およびC2に出力電荷が残っており、出力電圧Vo1およびVo2がそれぞれ電圧Vo1i、Vo2i分高い状態で停止している場合における立ち上げ動作を説明する。
【0019】
時刻t1において、DC−DCコンバータ制御回路2に入力される制御信号Ctlがハイレベルに遷移される。ここで制御信号Ctlは電源装置1の起動信号であり、制御信号Ctlがハイレベルの期間は電源装置1が稼働状態に維持される。制御信号Ctlの例としては、パソコンの電源スイッチをオン状態としたときに発せられる信号が挙げられる。ハイレベルの制御信号Ctlが入力されることに応じて、コンパレータCOMP1およびCOMP2は動作を開始する。時刻t1では、出力電圧Vo1およびVo2は、それぞれ電圧Vo1i、Vo2iとなっているため、コンパレータCOMP1およびCOMP2から出力される信号Vc1およびVc2はそれぞれローレベルとされる。またハイレベルの制御信号Ctlが入力されることに応じて、フリップフロップFF1およびFF2は動作を開始し、ローレベルの信号Vf1およびVf2が出力される。
【0020】
アンド回路AND12には、インバータINV1でハイレベルに反転された信号Vf1およびハイレベルの制御信号Ctlが入力される。よって、信号Vg1はハイレベルとされ、放電用トランジスタTr1は導通状態とされるため、平滑コンデンサC1から抵抗素子R1、放電用トランジスタTr1を介してグランドへ至る放電経路が形成され、平滑コンデンサC1に蓄積された電荷が放電される(矢印A1)。また同様にして、アンド回路AND22から出力される信号Vg2はハイレベルとされ、放電用トランジスタTr2は導通状態とされるため、平滑コンデンサC2から抵抗素子R2、放電用トランジスタTr2を介してグランドへ至る放電経路が形成され、平滑コンデンサC2に蓄積された電荷が放電される。
【0021】
またシーケンス論理回路31では、ハイレベルの制御信号Ctlが入力されることに応じて、発振器32が起動し、クロック信号CLKを出力する。カウンタ回路33では、クロック信号CLKのカウントを行うことで、一定時間TTの計測が開始される。
【0022】
時刻t2において、出力電圧Vo1は0(V)まで低下する。コンパレータCOMP1は、出力電圧Vo1が0(V)まで低下したことを検出するため、信号Vc1はハイレベルへ遷移する(矢印A2)。これにより、コンパレータCOMP1によって、平滑コンデンサC1の放電の完了が報知される。なお、コンパレータCOMP1がヒステリシスコンパレータとされることで、出力電圧Vo1が揺らぐ場合においても正確に平滑コンデンサC1の放電の完了を検出する事が可能とされる。またフリップフロップFF1はハイレベルの信号Vc1をラッチし、ハイレベルの信号Vf1を出力する。そして、アンド回路AND12から出力される信号Vg1はローレベルに遷移するため、放電用トランジスタTr1は非導通状態とされ、放電が終了される(矢印A3)。
【0023】
時刻t3において、出力電圧Vo2は0(V)まで低下する。コンパレータCOMP2は、出力電圧Vo2が0(V)まで低下したことを検出するため、信号Vc2はハイレベルへ遷移する(矢印A4)。これにより、コンパレータCOMP2によって、平滑コンデンサC2の放電の完了が報知される。またフリップフロップFF2はハイレベルの信号Vc2をラッチし、ハイレベルの信号Vf2を出力する。そして、アンド回路AND22から出力される信号Vg2はローレベルに遷移するため、放電用トランジスタTr2は非導通状態とされ、放電が終了される(矢印A5)。
【0024】
そして、アンド回路AND11に入力される制御信号Ctl、信号Vf1およびVf2は、全てハイレベルとされるため、信号Ven1はハイレベルに遷移する。スイッチング制御回路15は、ハイレベルの信号Ven1が入力されることに応じて動作を開始するため、第1チャンネルのDC−DCコンバータが動作を開始する。よって出力電圧Vo1は上昇を開始する。
【0025】
このように、第1チャンネルのDC−DCコンバータは、出力電圧Vo1およびVo2の両方が0(V)に低下するまで、立ち上がり動作を行わないように待機する。
【0026】
時刻t4において、出力電圧Vo1が設定電圧Vset1まで上昇すると、コンパレータCOMP1から出力される信号Vc1はローレベルへ遷移する。また、フリップフロップFF1はローレベルの信号Vc1をラッチし、ローレベルの信号Vf1を出力する。
【0027】
時刻t5において、時刻t1から一定時間TTが経過したことがカウンタ回路33で計測されると、カウンタ回路33からはハイレベルの信号Vt3が出力される。そして、アンド回路AND21に入力される信号Vt3および信号Vf2は、全てハイレベルとされるため、信号Ven2はハイレベルに遷移する(矢印A6)。スイッチング制御回路25は、ハイレベルの信号Ven2が入力されることに応じて動作を開始するため、第2チャンネルのDC−DCコンバータが動作を開始する。よって出力電圧Vo2は上昇を開始する。
【0028】
このように、第2チャンネルのDC−DCコンバータは、出力電圧Vo2が0(V)以下の値となり、かつ、時刻t1から一定時間TTが経過したことに応じて、立ち上げを開始する。
【0029】
時刻t6において、出力電圧Vo2が設定電圧Vset2まで上昇すると、コンパレータCOMP2から出力される信号Vc2はローレベルへ遷移する。また、フリップフロップFF2はローレベルの信号Vc2をラッチし、ローレベルの信号Vf2を出力する。
【0030】
電源装置1における第1の効果を説明する。電源装置1の緊急停止などにより、平滑コンデンサC1およびC2に出力電荷が残っており、出力電圧Vo1およびVo2がそれぞれ電圧Vo1i、Vo2i分高い状態で停止している場合において、電源装置1を立ち上げる場合には、各種の不具合が発生するおそれがある。
【0031】
例えば、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げ時に、まず同期整流スイッチング素子(トランジスタM12)を導通状態とする場合には、ラッチアップが生じるおそれがある。ラッチアップが発生すると、トランジスタM11およびM12が導通状態で維持されることになるため、入力電圧Vinからグランドへの電流経路が形成される。すると入力電圧Vinを供給するバッテリーの消耗や、トランジスタの焼損などが発生するため問題である。
【0032】
また例えば、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げ時に、まずメインスイッチング素子(トランジスタM11)を導通状態とする場合には、出力電圧Vo1のフィードバックがかかる前に出力電圧Vo1を設定電圧Vset1まで上昇させるようにDC−DCコンバータが動作するため、出力電圧Vo1にオーバーシュートが発生するおそれがある。すると、出力電圧Vo1が供給される回路に過電圧が供給されるため問題である。
【0033】
しかし第1実施形態に係る電源装置1では、放電部12は、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、平滑コンデンサC1に蓄積された電荷を放電する。また立ち上げ制御部13のコンパレータCOMP1では、出力電圧Vo1が0(V)以下の値となることを検出することにより、放電部12における放電の完了を検出することができる。そして当該検出が行われることに応じて、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げが開始される。これにより、平滑コンデンサC1やC2の電荷が必ず放電された状態で、DC−DCコンバータの立ち上げを行うことができるため、スイッチングトランジスタのラッチアップによる短絡の発生や、出力電圧のオーバーシュートなどの発生を防止することが可能となる。
【0034】
また、電源装置1における第2の効果を説明する。DC−DCコンバータ制御回路2は、第1チャンネルおよび第2チャンネルの2つのDC−DCコンバータを制御する回路である。シーケンス制御部31は、電源装置1の起動開始時点(時刻t1)から、一定時間TTの計測を開始する。そして立ち上げ制御部23は、第2チャンネルのDC−DCコンバータの出力電圧Vo2が0(V)以下の値となることを検出し、かつ、シーケンス制御部31から一定時間TTが経過したことが報知されることに応じて第2チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げを開始する。これにより、2チャンネルの出力系統を有する電源装置1において、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスを実現することができる。
【0035】
また、電源装置1における第3の効果を説明する。第1チャンネルのDC−DCコンバータにおいて平滑コンデンサC1の電荷を放電する際に、例えば、チョークコイルL1を経由してグランドに放電する放電経路を用いる場合を説明する。この場合、放電時において、平滑コンデンサC1からグランドへ向かう向きのエネルギーがチョークコイルL1に蓄積される。よって出力電圧Vo1が負電圧へ引っ張られ、出力電圧Vo1のアンダーシュートが発生するため、出力電圧Vo1が供給される回路に影響を与えるおそれがある。
【0036】
しかし第1実施形態に係る電源装置1では、放電部12によって、チョークコイルL1を経由しない、平滑コンデンサC1の放電専用の電流経路を形成することができる。よって、平滑コンデンサC1の電荷を放電時に、出力電圧Vo1のアンダーシュートが発生することを防止することができる。
【0037】
本発明の第2実施形態を、図3および図4を用いて説明する。図3に、第2実施形態に係る電源装置1aを示す。電源装置1aは、第1実施形態に係る電源装置1のシーケンス制御部31に代えて、シーケンス制御部31aを備える。そして電源装置1aでは、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスが行われる。
【0038】
シーケンス制御部31aは、コンパレータ35およびインバータINV3を備える。コンパレータ35の反転入力端子には出力端子Tout1が接続され、出力電圧Vo1がフィードバックされる。また、コンパレータ35の非反転入力端子には、しきい電圧Vthが入力される。しきい電圧Vthは第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上がり動作が完了したか否かを判定するための電圧値であり、予め定められる所定値である。コンパレータ35の出力はインバータINV3に入力される。インバータINV3から出力される信号Vt3aは、アンド回路AND21に入力される。なお、電源装置1aのその他の構成は、前述した第1実施形態に係る電源装置1(図1)と同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0039】
図4のタイミングチャートを用いて、電源装置1aの立ち上げ動作を説明する。例として、平滑コンデンサC1およびC2に出力電荷が残った状態で停止している電源装置1aを立ち上げる場合を説明する。時刻t1aないしt3aまでの期間における電源装置1aの立ち上げ動作は、前述した第1実施形態に係る電源装置1の立ち上げ動作(図2)と同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0040】
時刻t4aにおいて、出力電圧Vo1がしきい電圧Vthまで上昇すると、コンパレータ35の出力信号が反転するため、信号Vt3aはハイレベルへ遷移する。これにより、コンパレータ35において、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げ完了が検出される。そして、アンド回路AND21に入力される信号Vt3aおよび信号Vf2は、全てハイレベルとされるため、信号Ven2はハイレベルに遷移する(矢印A6a)。スイッチング制御回路25は、ハイレベルの信号Ven2が入力されることに応じて動作を開始するため、第2チャンネルのDC−DCコンバータが動作を開始する。よって出力電圧Vo2は上昇を開始する。
【0041】
時刻t5aにおいて、出力電圧Vo1が設定電圧Vset1まで上昇すると、コンパレータCOMP1から出力される信号Vc1はローレベルへ遷移する。また、時刻t6aにおいて、出力電圧Vo2が設定電圧Vset2まで上昇すると、コンパレータCOMP2から出力される信号Vc2はローレベルへ遷移する。
【0042】
電源装置1aにおける効果を説明する。DC−DCコンバータ制御回路2aは、第1チャンネルおよび第2チャンネルの2つのDC−DCコンバータを制御する回路である。シーケンス制御部31aのコンパレータ35は、第1チャンネルのDC−DCコンバータの出力電圧Vo1がしきい電圧Vthを超えることを検出することで、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げ完了を報知する。そして、立ち上げ制御部23は、第2チャンネルのDC−DCコンバータの出力電圧Vo2が0(V)以下の値となることを検出し、かつ、シーケンス制御部31aから第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げが完了したことが報知されることに応じて、第2チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げを開始する。これにより、2チャンネルの出力系統を有する電源装置1において、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスを実現することができる。
【0043】
本発明の第3実施形態を、図5および図6を用いて説明する。図5に、第3実施形態に係る電源装置1bを示す。電源装置1bは、第1実施形態に係る電源装置1の放電部12および22に代えて、放電部12bおよび22bを備える。そして電源装置1bでは、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスが行われる。
【0044】
第1チャンネルのDC−DCコンバータに備えられる放電部12bは、トランジスタM11bおよびM12b、抵抗素子R1b、インバータINV1bを備える。トランジスタM11bのソース端子には電源電圧Vccが入力され、ドレイン端子は抵抗素子R1bを介してノードN1に接続される。トランジスタM12bのソース端子は接地され、ドレイン端子はノードN1に接続される。またノードN1は、スイッチング制御回路15の出力端子およびトランジスタM12のゲート端子に接続される。トランジスタM11bのゲート端子には、アンド回路AND12から出力される信号Vg1がインバータINV1bを介して入力される。また、トランジスタM12bのゲート端子には、信号Vg1が入力される。
【0045】
なお、第2チャンネルのDC−DCコンバータに備えられる放電部22bの構成は、上述した放電部12bと同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。また、電源装置1bのその他の構成は、前述した第1実施形態に係る電源装置1(図1)と同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0046】
図6のタイミングチャートを用いて、電源装置1bの立ち上げ動作を説明する。例として、平滑コンデンサC1およびC2に出力電荷が残った状態で停止している電源装置1bを立ち上げる場合を説明する。
【0047】
時刻t1bにおいて、DC−DCコンバータ制御回路2bに入力される制御信号Ctlがハイレベルに遷移される。アンド回路AND12から出力される信号Vg1はハイレベルとされ、トランジスタM11bおよびM12bが導通状態とされる(矢印A1b)。よって、信号VQ12の電圧値(トランジスタM12のゲート電圧値)は、電源電圧Vccと抵抗素子R1bでの電圧降下値とに応じて定まる電圧Von11とされる。ここで、電圧Von11の値が、トランジスタM12が非飽和領域(ハーフオン状態)で導通状態となる値になるように、抵抗素子R1bの抵抗値を適宜定めればよい。そして、平滑コンデンサC1からチョークコイルL1、トランジスタM12を介してグランドへ至る放電経路が形成され、平滑コンデンサC1に蓄積された電荷が放電される。
【0048】
時刻t2bにおいて、コンパレータCOMP1で出力電圧Vo1が0(V)まで低下したことが検出されると、信号Vc1およびVf1はハイレベルへ遷移する(矢印A2b)。そして、アンド回路AND12から出力される信号Vg1はローレベルに遷移するため、トランジスタM11bおよびM12bは非導通状態とされる(矢印A3b)。これにより、時刻t1bからt2bまでの期間において、トランジスタM12を非飽和領域で導通状態とすることで、平滑コンデンサC1に蓄積された電荷が放電される(領域R1)。
【0049】
時刻t3bにおいて、ハイレベルの信号Ven1が入力されることに応じて、第1チャンネルのDC−DCコンバータが動作を開始する。このとき、信号VQ12の電圧値(トランジスタM12のゲート電圧値)は、Von11よりも高い電圧Von12とされる。ここで電圧Von12の値は、スイッチング制御回路15によって、トランジスタM12が飽和領域(フルオン状態)でスイッチング動作が行われる値とされる。
【0050】
また同様にして、第2チャンネルのDC−DCコンバータでは、トランジスタM22は、時刻t1bからt3bまでの期間では、放電部22bによって、非飽和領域で導通状態とされ、平滑コンデンサC2に蓄積された電荷が放電される(領域R2)。また時刻t3b以降の期間では、トランジスタM22は、スイッチング制御回路25によって、飽和領域でスイッチング動作が行われる。なお、その他の期間における電源装置1bの立ち上げ動作は、前述した第1実施形態に係る電源装置1の立ち上げ動作(図2)と同様のため、ここでは詳細な説明は省略する。
【0051】
電源装置1bにおける効果を説明する。同期整流用トランジスタは近年高効率化が進み、オン抵抗が小さくされている。この場合例えば、第1チャンネルのDC−DCコンバータにおいて平滑コンデンサC1の電荷を放電する際に、同期整流用トランジスタM12を経由してグランドに放電する放電経路を用いると、放電時に放電経路に大電流が流れるおそれがある。すると、第1に、配線の許容電流密度を超えた大電流によって配線が断線する問題がある。また、第2に、放電時において、平滑コンデンサC1からグランドへ向かう向きの大きなエネルギーがチョークコイルL1に蓄積されるため、出力電圧Vo1に大きなアンダーシュートが発生する問題がある。
【0052】
しかし第3実施形態に係る電源装置1bでは、放電部12bによって、同期整流用トランジスタM12を非飽和領域(ハーフオン状態)で導通状態とすることができる。すなわち、放電部12bによって、平滑コンデンサC1の電荷を放電する際に、同期整流用トランジスタM12のオン抵抗値を制御することが可能とされる。これにより、放電時に放電経路に流れる電流値を制御することができるため、大電流によって配線が断線する事態を防止することができる。また、出力電圧Vo1に大きなアンダーシュートが発生する事態を防止することができる。また、同期整流用トランジスタM12を、平滑コンデンサC1の放電経路にも流用することが可能となる。
【0053】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは言うまでもない。第1ないし第3実施形態では、DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電する場合を説明したが、この形態に限られない。DC−DCコンバータの立ち下げ時においても、平滑コンデンサに蓄積された電荷を放電してもよいことは言うまでもない。例えば、電源装置1および1aでは、制御信号Ctlがローレベルに遷移しDC−DCコンバータの立ち下げが指示されることに応じて、放電用トランジスタTr1およびTr2を導通状態にして放電を開始すればよい。そして、コンパレータCOMP1およびCOMP2によって、出力電圧Vo1およびVo2が0(V)まで低下したことを検出することに応じて、放電用トランジスタTr1およびTr2を非導通状態にして放電を終了すればよい。同様に、電源装置1bでは、制御信号Ctlがローレベルに遷移することに応じて、同期整流用トランジスタM12およびM22を非飽和領域で導通状態にして放電を開始すればよい。そして、コンパレータCOMP1およびCOMP2によって、出力電圧Vo1およびVo2が0(V)まで低下したことを検出することに応じて、同期整流用トランジスタM12およびM22を非導通状態にして放電を終了すればよい。これにより、次回に電源装置を立ち上げる際に、立ち上げに先立つ放電にかかる時間を無くすことができるため、立ち上げ時間を短縮化することが可能となる。
【0054】
また電源装置1および1aでは、放電部12の抵抗素子R1の一端は出力端子Tout1に接続されるとしたが、この形態に限られない。例えば、抵抗素子R1の一端がチョークコイルL1に接続される形態としてもよい。この場合、平滑コンデンサC1からチョークコイルL1、抵抗素子R1、放電用トランジスタTr1を介してグランドへ至る放電経路が形成される。抵抗素子R1の一端が出力端子Tout1に接続される場合には、出力電圧Vo1のフィードバックループを放電経路に用いることになるが、当該フィードバックループには各種の抵抗成分(出力電圧Vo1の設定電圧値の設定用の外付け抵抗など)が存在するために、放電時間などがこれらの抵抗成分の影響を受けて変動する場合がある。しかし、抵抗素子R1の一端がチョークコイルL1に接続される場合には、放電経路にフィードバックループが含まれないため、各種の抵抗成分の影響を排除することが可能となる。
【0055】
また第1ないし第3実施形態では、出力電圧Vo1、出力電圧Vo2の順番で出力電圧が立ち上がるシーケンスを例として説明したが、これに限られない。例えば、出力電圧Vo1およびVo2が共に0(V)まで低下したことを検出することに応じて、第1チャンネルのDC−DCコンバータおよび第2チャンネルのDC−DCコンバータを同時に立ち上げるシーケンスとしてもよいことは言うまでもない。
【0056】
また第1ないし第3実施形態では、第1チャンネルおよび第2チャンネルの2つのDC−DCコンバータをシーケンス制御する場合を説明したが、これに限られず、3つ以上のDC−DCコンバータのシーケンス制御も可能であることは言うまでもない。
【0057】
また第1ないし第3実施形態では、コンパレータCOMP1およびCOMP2では、出力電圧Vo1およびVo2が0(V)まで低下したことを検出することで、平滑コンデンサの放電完了を検出するとしたが、この形態に限られない。出力電圧Vo1およびVo2が任意の電圧値まで低下したことを検出する形態としてもよい。
【0058】
また第1実施形態では、一定時間TTの計測の開始時点は、電源装置1の起動時(時刻t1)であるとしたが、この形態に限られない。例えば、第1チャンネルのDC−DCコンバータの立ち上げ時(時刻t3)を、一定時間TTの計測の開始時点としてもよいことは言うまでもない。また、一定時間TTの値は、DC−DCコンバータの立ち上がり時間などに応じて適宜決定すればよいことは言うまでもない。
【0059】
なお、0(V)は第1所定値の一例、一定時間TTは所定時間の一例、シーケンス制御部31は第1シーケンス制御部の一例、シーケンス制御部31aは第2シーケンス制御部の一例、第1チャンネルのDC−DCコンバータは第1DC−DCコンバータの一例、第2チャンネルのDC−DCコンバータは第2DC−DCコンバータの一例である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】電源装置1の一実施例における回路図
【図2】電源装置1の一実施例におけるタイミングチャート
【図3】電源装置1aの一実施例における回路図
【図4】電源装置1aの一実施例におけるタイミングチャート
【図5】電源装置1bの一実施例における回路図
【図6】電源装置1bの一実施例におけるタイミングチャート
【図7】電源装置100の回路図
【符号の説明】
【0061】
1、1a、1b 電源装置
12、22 放電部
12b、22b 放電部
13、23 立ち上げ制御部
Tr1、Tr2 放電用トランジスタ
C1、C2 平滑コンデンサ
COMP1、COMP2 コンパレータ
Vo1、Vo2 出力電圧
TT 一定時間
31、31a シーケンス制御部
M12、M22 トランジスタ
L1、L2 チョークコイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電する放電部と、
前記DC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値以下の値となることを検出することに応じて、前記DC−DCコンバータの立ち上げを行う制御部と
を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ制御回路。
【請求項2】
前記DC−DCコンバータ制御回路は複数のDC−DCコンバータを制御する回路であり、
前記DC−DCコンバータ制御回路の立ち上げ開始からの所定時間を計測する第1シーケンス制御部を備え、
前記制御部は、前記複数のDC−DCコンバータのうちの何れかのDC−DCコンバータの出力電圧が前記第1所定値以下の値となることを検出し、かつ、前記第1シーケンス制御部から前記所定時間が経過したことが報知されることに応じて、前記何れかのDC−DCコンバータの立ち上げを開始する
ことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ制御回路。
【請求項3】
前記DC−DCコンバータ制御回路は複数のDC−DCコンバータを制御する回路であり、
前記複数のDC−DCコンバータに含まれる第1DC−DCコンバータの出力電圧が第2所定値以上の値となることを検出する第2シーケンス制御部を備え、
前記制御部は、前記複数のDC−DCコンバータに含まれる第2DC−DCコンバータの出力電圧が前記第1所定値以下の値となることを検出し、かつ、前記第2シーケンス制御部から検出が行われたことが報知されることに応じて、前記第2DC−DCコンバータの立ち上げを開始する
ことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ制御回路。
【請求項4】
前記放電部は、前記DC−DCコンバータの出力端子と接地電位との間を接続する放電用スイッチング素子を備え、
前記放電用スイッチング素子は、前記DC−DCコンバータの立ち上げに先立って導通状態とされ、前記制御部で前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記第1所定値以下の値となることが検出されることに応じて非導通状態とされる
ことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ制御回路。
【請求項5】
前記放電部は、一端が接地され他端がインダクタに接続される同期整流用スイッチング素子を備え、
前記同期整流用スイッチング素子は、前記DC−DCコンバータの立ち上げに先立って非飽和領域で導通状態とされ、前記制御部で前記DC−DCコンバータの出力電圧が前記第1所定値以下の値となることが検出されることに応じて非導通状態とされる
ことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ制御回路。
【請求項6】
DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電する放電部と、
前記DC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値以下の値となることを検出することに応じて、前記DC−DCコンバータの立ち上げを行う制御部と
を備えることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項7】
DC−DCコンバータの立ち上げに先立ち、出力容量に蓄積された電荷を放電し、
前記DC−DCコンバータの出力電圧が第1所定値以下の値となることを検出することに応じて、前記DC−DCコンバータの立ち上げを行う
ことを特徴とするDC−DCコンバータの制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−41766(P2010−41766A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199116(P2008−199116)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(308014341)富士通マイクロエレクトロニクス株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】